JP2008001122A - ステンレス鋼製モール - Google Patents

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Shuichi Sugita
修一 杉田
Kazumi Matsubara
和美 松原
Kenichi Okubo
謙一 大久保
Koji Mori
浩治 森
Soichiro Sugawara
宗一郎 菅原
Tomofumi Kabe
友文 加辺
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Abstract

【課題】ステンレス鋼特有の美麗な外観を呈し、簡略化された製造工程で製造されるステンレス鋼製モールを提供する。
【解決手段】プレコートステンレス鋼板から機械加工で所定形状に成形されたモール芯材21の適宜個所に合成樹脂製又はゴム製のリップ22,23が固着されている。リップ22,23のない部分24ではステンレス鋼の地肌がクリア塗膜を透かして観察される。プレコートステンレス鋼板を素材に使用しているので、複雑形状に入り組んだモールにあってもモール芯材21の表面がクリア塗膜で覆われ、機械加工後の塗装を必要としない。
【選択図】図2

Description

本発明は、ステンレス鋼特有の表面光沢を活用し、指紋付着,油汚れ等を抑えたステンレス鋼製モールに関する。
自動車の窓ガラス周囲,ルーフ周縁,車体側面等には、気密性向上,アクセント付与,部材保護等を狙って種々のモールが装着される。この種のモールは、押出成形時に金属製の芯材を着色合成樹脂又は着色塗膜で被覆し、或いは着色処理された金属材料を機械加工することにより製造されている。しかし、合成樹脂や塗料で着色したモールは高級感に欠けるため、芯材に使用するステンレス鋼板の一部を露出させたモールが好まれている。
無垢表面を露出させたステンレス鋼を芯材に使用すると、指紋付着,油汚れ等が目立ち却って高級感が損なわれる。車体の表側となるステンレス鋼露出部にCrめっきを施し、樹脂製の縁部,盛上げ部との調和を図ったモールディング(特許文献1)が知られているが、機械加工時に亀裂,剥離等の欠陥が硬質のCrめっき層に入りやすいことから、機械加工後のCrめっきを余儀なくされ、生産性向上のネックになっている。
特開平2-99326号公報
半透明有色塗膜,不透明合成樹脂皮膜を光輝部,非光輝部で使い分けたカラーモールディング(特許文献2)も知られている。この場合にも、ロール成形後に塗料を塗布し、樹脂で被覆しているので、製造工程が複雑化し、塗膜や樹脂被覆層も不揃いになりがちである。たとえば、金属板を複雑形状にロール成形した後で塗料を塗布すると、隘路には塗料が供給され難く塗膜のない部分が生じ、或いは塗膜の膜厚が変動しやすい。逆に、過剰量の塗料が塗布された部分では、焼付け時にブツ等の塗膜欠陥が生じやすくなる。
特開平5-92697号公報
クリア塗膜を設けたプレコートステンレス鋼板をモール芯材に使用できると、芯材形状に加工された後での塗装を省略できるモール芯材が得られる。また、クリア塗膜で覆われているので下地の露出がなく、ステンレス鋼特有の美麗な光沢面が指紋付着,油汚れ等から保護される。しかも、モール製造者側での塗装を要せず、高品質のモールを高生産性で製造できる。
そこで、芯材形状に加工しても塗膜剥離が生じないプレコートステンレス鋼板について種々調査・検討した。その結果、クロムフリー化成皮膜を介しアクリル樹脂,ポリエステル樹脂,フッ素樹脂等のクリア塗膜を設けると塗膜密着性が向上し、モール芯材への加工に十分耐えるプレコート鋼板となることを見出した。
本発明は、かかる知見をベースとし、特定された組合せで化成皮膜,クリア塗膜が設けられたプレコートステンレス鋼板をモール芯材に使用することにより、ステンレス鋼特有の金属光沢を呈し、指紋付着,油汚れ等がないステンレス鋼製モールを提供することを目的とする。
本発明のステンレス鋼製モールは、不溶性金属塩,可溶性金属塩を含むクロムフリーの化成皮膜を介してクリア塗膜が設けられたプレコートステンレス鋼板をモール芯材に使用している。クロムフリーの化成皮膜には、リン酸塩皮膜,タンニン酸皮膜,微細シリカエマルジョン皮膜,フルオロアシッド被膜等がある。なかでも、H2TiF6,H2ZrF6,H2HfF6,H2SiF6,H2GeF6,H2SnF6,HBF4等のフルオロアシッド皮膜が好適であり、H2TiF6が最もクリア塗膜の密着性を向上させる。
クリア塗膜は、透明度が高く、ステンレス鋼板に対する密着性が良好で耐食性,耐候性に優れた塗料から成膜される。たとえば、アクリル系,ポリエステル系又はフッ素系の有機樹脂をベースとする塗料が使用される。必要に応じ下塗り塗膜を設けても良く、下塗り塗膜にも同様な塗料が使用され、メラミン,イソシアネート等の硬化剤を適宜配合して塗装される。
発明の効果及び実施の形態
塗膜密着性の改善にはクロメート処理が従来から採用されているが、クロメート処理は環境負荷が大きく、クロメート皮膜が塗膜を黄変させやすいことも欠点であり、特にステンレス鋼特有の金属光沢を活用するステンレス鋼製モールには不向きである。そこで、本発明では、クロメート処理に代えてクロムフリーの化成処理を採用し、リン酸塩皮膜,タンニン酸皮膜,微細シリカエマルジョン皮膜,フルオロアシッド皮膜等のクロムフリー皮膜を設けている。クロムフリー化成処理で生成した皮膜は、クロメート皮膜に匹敵する塗膜密着性改善効果を呈し、加工後にも下地鋼との密着性が良好なクリア塗膜の形成を可能とする。
塗装原板には、フェライト系,オーステナイト系等の各種ステンレス鋼板が使用され、ニーズに応じてBA仕上げ,研磨仕上げ,マット仕上げ等の表面に調整される。
塗膜密着性を改善するため、脱脂・酸洗後にリン酸塩処理,クロムフリー処理等で化成皮膜が塗装原板に形成される。具体的には、アルカリ脱脂,酸洗等で鋼板表面を清浄化した後、必要に応じリン酸塩処理で鋼板表面の濡れ性を改善し、クロムフリー処理を施す。クロムフリー処理では、ロールコータ,カーテンフローコータ,浸漬引上げ等で処理液を鋼板表面に塗布し、ローラ等で絞った後、水洗せずに80〜200℃で乾燥することにより化成皮膜を形成する。
化成皮膜は、下地ステンレス鋼板の塗膜密着性向上に有効な厚みで形成される。たとえば、リン酸塩皮膜では5〜500mg/m2,タンニン酸皮膜では10〜200mg/m2,微細シリカエマルジョン皮膜ではSi換算で1〜100mg/m2,フルオロアシッド皮膜ではフッ素付着量又は総金属付着量として0.1〜500mg/m2となるように化成皮膜を設けることにより、下地ステンレス鋼板に対する下層塗膜の密着性が向上する。
クリア塗料は、特にベース樹脂に制約を受けるものではなく、透明度,塗膜硬度の高いアクリル系,優れた延性を示すポリエステル系,耐候性に優れたフッ素系,更にはこれらの混合樹脂を使用でき、モールの要求特性に応じ適宜選択される。クリア塗膜は、透明感を損なわない程度に染料,顔料,発色顔料(透明金属酸化物で被覆した透明又は半透明顔料)等で着色しても良い。少量の着色は、化学発色法,電解着色法等で色付けされたステンレス鋼板に類似する高級意匠感を醸し出す。更に、下地ステンレス鋼板の表面仕上げ感を損なわない程度に艶消し剤を配合することにより、マット調の半透明クリア塗膜にしても良い。
プレコート金属板の製造に通常使用されているロールコート,フローコート,カーテンフロー,スプレー等の方法でステンレス鋼板に樹脂塗料を塗布し、常法に従って到達板温:200〜280℃×30〜120秒で焼き付けることにより、乾燥塗膜:3〜30μmのクリア塗膜が形成される。3μm未満の薄膜では膜厚制御,製造性に問題が生じることがあり、逆に30μmを超える厚膜では焼付け時にワキが発生しやすくなり、塗膜表面が柚子肌状になって外観が劣化しやすい。このようにして、下地ステンレス鋼板の表面仕上げ感を損なわずに、耐指紋付着性,耐油汚れ性に優れ深み感に富むクリア塗装ステンレス鋼板が得られる。
製造されたプレコートステンレス鋼板10は、下地鋼11に化成皮膜12を介しクリア塗膜13が設けられているので、加工性の良好なプレコート鋼板となる(図1)。しかも、化成皮膜12がフロムフリー皮膜であるため、クリア塗膜13に黄変がなく、ステンレス鋼特有の金属光沢を活かした表面を有する。クリア塗膜13には、透明感を損なわない程度に防錆顔料,着色顔料,着色染料,発色顔料,艶消し剤,潤滑剤等、適宜の添加剤を配合しても良い。また、必要に応じ同様なクリア塗料から成膜した下塗り塗膜14を化成皮膜12/クリア塗膜13間に介在させても良い。
該プレコートステンレス鋼板10は、塗膜密着性が良好なため目標のモール形状にロール成形してもクリア塗膜13で下地鋼11が覆われている。たとえば、ドアモール20(図2)では、所定形状に成形されたモール芯材21を押出成形機に通し、合成樹脂製のリップ22,23を固着している。このとき、モール芯材21の全面にクリア塗膜13があり、クリア塗膜13と合成樹脂との馴染みが良いため、リップ22,23はクリア塗膜13の樹脂と融合し強固に固着される。しかも、リップ22,23のない表面部24では、クリア塗膜13を透かしてステンレス鋼の光沢表面が観察されるため、アクセントの強いドアモール20となる。また、成形後のモール芯材21を塗装する必要がないため、製造工程も大幅に簡略化される。
板厚:0.4mmのSUS430ステンレス鋼にNo.4仕上げ(JIS R6001に規定される150〜180メッシュの研磨材と塗布したベルトによる研磨)を施して塗装原板を用意した。塗装原板を2%塩酸で酸洗し、酸系の表面処理を施した後、総金属付着量が20mg/m2となるように次のフルオロアシッド処理液を塗布し、100℃で乾燥した。
Figure 2008001122
クリア塗料には、アクリル樹脂塗料(C951:日本ファインコーティングス株式会社製)を用い、塗布後に到達板温:230℃×60秒で加熱し乾燥膜厚:10μmのクリア塗膜を形成した。
クリア塗装ステンレス鋼板を所定幅にスリット加工し、ロール成形機に通して所定の断面形状に成形した。たとえば、自動車のドアモール(図2)ではJ字型断面形状に、サッシモールでは角Cチャンネル形状に成形した。
ロール成形後の長尺クリア塗装ステンレス鋼板を芯材として押出成形機に通し、モール芯材21の背面及び正面側の下縁に軟質合成樹脂製のリップ22,23を一体成形したドアモール20を製造した。リップ22,23の固着位置は、ドアモール,サッシモール等に応じて代わるものの、押出成形でモール芯材21に一体化されることでは共通している。
一体成形されたドアモール20を定寸切断し、自動車のドア形状に合わせてベンダー曲げ加工した。そして、エンドキャップの一体成形等により端末処理した。
得られたドアモール20は、クリア塗装ステンレス鋼板をモール芯材21に使用しているので、リップ22,23がなく鋼板表面が直接観察される部分でも指紋付着や油汚れ等がなくステンレス鋼本来の美麗な外観が維持された。しかも、モール芯材21とリップ22,23との界面に腐食因子が侵入した場合でも良好な耐食性を示し、モール芯材21とリップ22,23との剥離も生じなかった。
更に、本発明に従って得られたモール材を他のクロムめっき樹脂部品と組み合わせると、クリア塗膜を透かして観察されるモール材の表面光沢,鮮映性,深み感がクロムめっき部品と同等の意匠感を発現するので、一体感が向上した外観を自動車に付与できる。
以上に説明したように、プレコートステンレス鋼板を素材とするとき、目標のモール芯材形状に機械加工した後で塗装を必要としないため、製造工程が大幅に簡略化される。しかも、複雑に入り組んだ部分でもクリア塗膜がステンレス鋼表面にあるので、耐指紋付着性,耐油汚れ性に優れ、長期にわたってステンレス鋼特有の美麗な外観を維持するモールとなる。
クリア塗膜ステンレス鋼板の表面構成を示すモデル図 プレコートステンレス鋼板から作製されたモール芯材を有するモールの透視図
符号の説明
10:プレコートステンレス鋼板 11:下地鋼 12:化成皮膜 13:クリア塗膜 14:下塗り塗膜
20:ドアモール 21:モール芯材 22,23:リップ 24:クリア塗膜を透かしてステンレス鋼表面が観察される部分

Claims (2)

  1. 不溶性金属塩及び可溶性金属塩を含むクロムフリー化成皮膜を介してクリア塗膜を設けたプレコートステンレス鋼板から作製されたモール芯材を有し、該モール芯材の所定個所に合成樹脂製のリップが固着され、リップのない個所ではクリア塗膜を透かしてステンレス鋼表面が観察されることを特徴とするステンレス鋼製モール。
  2. クリア塗膜がアクリル系,ポリエステル系又はフッ素系塗料から成膜されている請求項1記載のステンレス鋼製モール。
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