図1〜図3は、本発明の実施形態に係る転写装置1の全体的構成を例示するものであって、図1、図2において、符号1は転写装置、3は本体フレームである。本体フレーム3は、図1に示すように、側面視した場合の形状は概ねL字型をしており、下部側にベースフレームとしての四角形状の下部フレーム7が一体的に取り付けられている。下部フレーム7の4隅には、それぞれタイバー9が本体フレーム3の垂直部と平行に立設され、タイバー9の上端には、駆動手段を支持するための支持フレームとしての四角形状の上部フレーム5が取り付けられている。タイバー9には、前記上部フレーム5と下部フレーム7との間において、四角形状の可動体19がタイバー9に沿う方向(後述するテーブル11に対し接近しまたは離反する方向))すなわち上下に移動自在に遊嵌されている。
本体フレーム3の上部は、上部フレーム5及び可動体19の左右両側面における前後方向のほぼ半分(中間)の位置に達するように前方(図1において右方)に突出し、その先端には上下に伸びるリニアガイド(案内手段)21が取り付けられている。上部フレーム5と可動体19の左右両側面には、リニアガイド21に係合して、例えば零クリアランスの状態で上下に精密に案内移動されるスライダ23、24が取り付けられている。
上記説明より理解されるように、前記本体フレーム3は、前記下部フレーム(ベースフレーム)7を支持するフレーム支持部3Aを一端側(下端側)に備えることにより、側面視したときに、図1に示すように概ねL字形を呈するものである。そして、前記本体フレーム3の他端側(上端側)の左右両側(図1において紙面に垂直な方向の両側)に、前記リニアガイド21を備えたガイドフレーム3Bを前方に突出して備えることにより、上端側(他端側)に凹部を形成した構成である。
そして、前記上部フレーム5及び前記可動体19は、図3に示すように、本体フレーム3における左右の前記ガイドフレーム3Bの間に配置してあり、前記上部フレーム5、可動体19に備えた前記スライダ23、24は、上部フレーム5、可動体19の前後方向(図1、図3において左右方向)及び左右方向(図1において紙面に垂直な方向、図3において上下方向)の中心を中心として対称的な位置において前記リニアガイド21に移動可能に係合してある。なお、図1には、前記リニアガイド21は、前記スライダ23、24に共通化してあるが、前記スライダ23、24にそれぞれ対応したリニアガイドを別個に設けることも可能である。しかし、加工の容易性、互いの平行度の加工精度を考慮すると、スライダ23、24に対してリニアガイド21を共通に設けることが望ましいものである。
ここに、上部フレーム5は、タイバー9を介して下部フレーム7及び本体フレーム3に固定されているが、後述する型の押し付け力や温度変化等によりタイバー9が伸縮したとき、上部フレーム5の上下動を許すと共に、タイバー9の曲がりや伸縮によって生じるタイバー9と垂直な面内における上部フレーム5の位置ずれ(横ずれ)を防止するために、上記リニアガイド21とスライダ23が設けられている。これは、上部フレーム5の位置ずれ(横ずれ)をより確実に防止するためのものであり、上部フレーム5は、本体フレーム3から切り離し、タイバー9により下部フレーム7に連結固定するのみでもよい。
可動体19は、上記のようにタイバー9には遊嵌されているため、リニアガイド21とスライダ24により上下方向への移動を精密に案内される。
上記リニアガイド21及びスライダ23,24は、上部フレーム5及び可動体19自体の温度変化による位置ずれ(横ずれ)を防止するため、上部フレーム5及び可動体19の前後左右の中心に対して対称の位置に配置することが好ましい。
下部フレーム7の上面中央には、上に向かって垂直に伸びる固定台10が取り付けられている。固定台10の上には、図2に示すように、X,Yテーブル等のX,Y方向(前後左右方向)へ移動可能かつ微調整して位置決め可能な可動テーブル11が設けられ、この可動テーブル11の上には、被成形品13を支持する支持台15が設けられている。そして、被成形材料が供給された基板(被成形品)13が、可動テーブル11に搭載されるようになっている。可動テーブル11は、リニアガイドとスライダにより案内され、サーボモータにより駆動されるもので、公知の構成であるため、詳述を避ける。
被成形品(被成形対象)13は、例えば、シリコン、ガラス、セラミック等の適宜な材料よりなる基板の上面に紫外線硬化樹脂等からなるレジストを用いた被成形層(図示せず;成形材料)を数10nm〜数μmの厚さに塗布した薄膜を備えた構成である。
図2に示すように、可動体19の下面中央(前記ベースフレームに対向した対向面の中央)には、型41の被成形品13への押し当て力を検出する検出手段の例であるロードセル46を介して、旋回台47が可動体19の下面中央を中心として旋回可能かつ所定の角度位置に固定可能に取り付けられている。この旋回台47には、ジンバル機構45を介して型支持プレート(型保持体)43が取り付けられ、この型支持プレート43に型41が着脱可能に装着されるようになっている。
ジンバル機構45は、型41の型表面(図2において下面)中央を中心とする球面を有し、型41が上記型表面の中央を中心として自在に傾動可能になっている。詳しくは後述するが、型41は型表面(図2において下面)にリソグラフィ技術を用いて微細な凹凸のパターンが形成されている。上記型支持プレート43、ジンバル機構45、旋回台47及びロードセル46は、いずれも中央に紫外線を通過するための貫通孔を有している。
支持フレームとしての前記上部フレーム5には、前記可動体19を移動する(上下方向に進退駆動せしめる)ための駆動手段の一例としてのサーボモータ33が装着支持されている。サーボモータ33の出力軸35は、軸受29により上部フレーム5に回転のみ自在に取り付けられた中空軸31に連結され、中空軸31の下端には、ボールねじ機構25を構成するボールねじナット26が取り付けられている。このボールねじナット26には、可動体19の前後左右の中央部(中心)に垂直に取り付け固定されたボールねじ軸27が係合し、可動体19を所定の速度及びトルクで上下に移動させるようになっている。なお、参照符号33Aはサーボモータ33の回転位置を検出するロータリーエンコーダである。
上部フレーム5には、バランス取り手段の一例としてのバランスシリンダ50が、図3に示すように、可動体19の中心を中心として対称な位置に複数設けられている。これらのバランスシリンダ50のピストンロッド52は、それぞれ可動体19に連結され、重力による可動体19の下向きの荷重を相殺するようになっている。
可動体19の下面には、型支持プレート43等を囲むリング状の上カバー54が取り付けられている。他方、下部フレーム7側には、下端を固定台10の周面に移動可能に係合され、上端を上記上カバー54の下端に当接可能に形成されて可動テーブル11等を囲む同じくリング状の下カバー56が取り付けられている。この下カバー56は、下部フレーム7に取り付けられた上下動用アクチュエータの一例としての複数のシリンダ58により上下に移動され、上カバー54とにより、型支持プレート43及び可動テーブル11の周囲に開閉可能な成形室60を形成するようになっている。
次いでこの転写装置の作用について説明する。上下動用アクチュエータとしてのシリンダ58により下カバー56を下降させて成形室60を開き、型41を型支持プレート43に取り付け、型41の中央を中心とする水平な回転方向の取り付け角度(型の方向性)を旋回台47により微調整する。なお、この型41の取り付け角度調整は、型取り付け時のみでなく、マークを用いた公知の位置合わせ手段により、支持台15上にセットされた被成形品13に合わせてその都度、自動的に微調整するようにしてもよい。
上記のように型41をセットした後、上面に被成形層を塗布した被成形品13を支持台15上にセットする。
次いでシリンダ58により下カバー56を上昇させて成形室60を閉じ、サーボモータ33のトルクを比較的小さな値に設定した状態で可動体19を下降させて型41を被成形品13に接近移動し、型41を被成形品13の上面に比較的小さな押し付け力で押圧する。
このとき、可動体19は、左右両側方に配置されたリニアガイド21及びスライダ24により、移動方向に対して直交する方向への位置ずれ(横ずれ)をより小さく抑えられて下降し、被成形品13の所定位置に向けて押し付けられる。また、このとき、可動体19は、バランスシリンダ50により重力による下向きの荷重を相殺されているため、サーボモータ33はより小さなトルクで作動可能であり、トルク及び速度をより正確に制御されて下降する。
型41が被成形品13に押し付けられる際、両者の当接面(接触面)の平行度にずれがあると、型41はジンバル機構45により傾動自在に支持されているため、被成形品13の上面に倣って型41の全面が均一な面圧で押し付けられる。このとき、ジンバル機構45は、型41の型表面(図2において下面)中央を中心とする球面により、型表面の中央を中心として傾動するため、横方向(水平方向)の位置ずれを生じない。
上記押し付け力は、ロードセル46により検出され、サーボモータ33にフィードバックされて所定の値に保たれる。このときにも、可動体19の荷重は、バランスシリンダ50により相殺され、サーボモータ33のトルクはより小さな値であるため、トルク制御がより正確に行われる。
こうして比較的小さな押し付け力による押し付けが完了したところで、ジンバル機構45の空気軸受をたとえば負圧にして(詳しくは、ジンバル機構45の詳しい説明のところで後程述べるように真空吸着等して)型41の姿勢を不動状態に固定した後、サーボモータ33のトルクを増加させる。このトルク増加により型41は、被成形品13の上面に塗布された被成形層に強く押し付けられ、型41の表面に形成された微細な凹凸のパターンを被成形品13の被成形層に転写する。
この型41の強い押し付け力により、タイバー9はごく僅かではあるが伸び、上部フレーム5を上方向へ変位させる。この上部フレーム5の変位はリニアガイド21とスライダ23により吸収され、本体フレーム3の上部を図1において左方へ反らせるような不具合は生じない。そこで、型41の押し付けに伴う型41の移動方向に対して直交する方向の位置ずれ(横ずれ)が抑えられる。
また、上部フレーム5は、上記リニアガイド21とスライダ23により支持されているため、複数のタイバー9の伸びに差が生じるような場合にも、上部フレーム5の位置ずれ(横ずれ)は小さく抑えられ、型41の位置ずれ(横ずれ)を小さく抑える。
なお、このタイバー9の伸びの差は、型41の押し付け力が比較的小さい場合には、極めてわずかであるため、上記リニアガイド21とスライダ23による上部フレーム5の案内手段は省略してもよい。
上記転写の後、被成形層を硬化させ、被成形層を硬化させた後、型41の姿勢を固定したままサーボモータ33により可動体19を上昇させて型41を被成形品13から離す。次いでシリンダ58により下カバー56を下降させて成形室60を開き、被成形品13を取り出して一連の転写動作を終了する。
ここで、ジンバル機構45について詳しく説明する。
図4〜図6は、ジンバル機構45の詳細を示す図であり、図4はジンバル機構45の垂直方向縦断面図、図5はジンバル機構45の球面部およびこの近傍の拡大図、図6は第2のジンバル部材203の球面部を示す図であると共に図5におけるVI矢視図である。
図4において、中心部に貫通孔を備えて上方に凸球面部を有する下側ジンバル部材(第1のジンバル部材)201と、中心部に貫通孔を備えて下方に凹球面部を有する上側ジンバル部材(第2のジンバル部材)203とが対接配置されている。なお、下側ジンバル部材201に凹球面部を設け上側ジンバル部材203に凸球面部を設けた構成にしてもよい。
下側ジンバル部材201の下部には型保持体(型支持プレート)43が固定(保持)されている。型支持プレート43の中心部にも貫通孔が設けられており、型保持体43の下面(テーブル11の面側)には型41が取り付けられている。
そして、紫外線発生装置(図示せず)が発生した紫外線が、各ジンバル部材201、203、型保持体43の貫通孔を通って型41まで到達し、さらに型41を透過して、被成形品13まで届くようになっている。
ジンバル機構45には、下側ジンバル部材201の姿勢を調整保持する姿勢調整及び保持手段が設けられている。
前記姿勢調整及び保持手段は、上側ジンバル部材203から下側ジンバル部材201に向けてエアーを噴射するためのエアー噴出用の管路213と、この管路213に接続しているエアー源(圧縮エアー供給源)217とを備えて構成されている。管路213は、上側ジンバル部材203の内部に形成され且つ上側ジンバル部材203の凹球面部に開口している。
また、前記姿勢調整及び保持手段は、下側ジンバル部材201を上側ジンバル部材203に向けて真空引きするための真空引き用の管路211と、この管路211に接続されている真空引き装置(負圧発生手段)215とを備えて構成されている。管路211は、上側ジンバル部材203の内部に形成され且つ上側ジンバル部材203の凹球面部に開口している。
そして、図示しない制御装置の制御の下、被成形品13の成形中において、型41の基板(被成形品13)への押し当て力をロードセル46で検出し、前記押し当て力が所定の値よりも小さい場合は、前記真空引き(管路211からの真空引き)を停止しておくと共に前記エアーの噴出を行い、ロードセル46により検出された押し当て力が所定の値よりも大きくなった場合にエアーの噴出(管路213からのエアーの噴出)を停止すると共に前記真空引きを開始するように構成されている。
さらに説明すると、上側ジンバル部材203には、前記対接面(凹球面部)に開口する大気開放用管路216が設けられている。
また、図6に示すように、上側ジンバル部材203の球面部には、リング状の各溝301、303、305、307、309が設けられている。これらの各リング状の溝は、上側ジンバル部材203の球面部の中心を中心とする同心円になっていると共に、互いが離れて設けられている。また、最も内側に位置している溝301と最も外側に位置している溝309とには、真空引き装置215へ接続されている吸引用管路211が連通しており、前記各溝301、309の間に位置している溝303、307には、大気開放用管路216が連通しており、前記溝303、307の間に位置している溝305には、圧縮エアー供給源217へ接続されている浮上用管路213が連通している。
このように、溝301と溝305との間に溝303が設けられ、溝305と溝309との間に溝307が設けられていることにより、管路213から噴出したエアーが管路211に入り込むことを防止することができる。
下側ジンバル部材201の凸球面部には、この凸球面部に隣接して張出し部の傾斜面219が形成されている。この傾斜面219は、図4に示すように、下側ジンバル部材201の軸心に対して上側が離反するように傾斜した傾斜面又は上部側が大径となるテーパ面に形成してある。また、上側ジンバル部材203にも、前記傾斜面219に対向した傾斜面(テーパ面)220が形成されている。傾斜面219と傾斜面220とは、ごく僅かに離れている。
参照符号218は調整ライナであって、下側ジンバル部材201の傾斜面219と上側ジンバル部材203の対向面(傾斜面)220との間隔を調整するものである。
上側ジンバル部材203の上面には回動部材235が固定されており、回動部材235の内周側には回転軸受237を介して内側固定部材239が配設されている。さらに、内側固定部材239の上面にはプレート241が取り付け固定されている。前記プレート241及び内側固定部材239には圧縮エアーを導入する管路(たとえば、圧縮エアー供給源217に接続されている管路)243が形成されている。この圧縮エアーは図示の如く回動部材235を上下方向で静圧的に浮上させている。
回動部材235は一対のピエゾハンマー221A、221Bにより時計方向及び反時計方向に回動されることが可能である。なお、ピエゾハンマー221A、221Bはそのフレームがプレート241に固定されている。
上述のピエゾハンマー221A、221Bはそれぞれオプションとして設けることができる。即ち、CD、DVDなどのように円周上に微細な凹凸が形成されたものを成形品とする場合のように、ジンバル機構45の旋回、回動をさせる必要がない場合は前記回動部材235、内側固定部材239及びピエゾハンマー221A、221Bを省略することが可能である。
図4において、プレート241の上面にはロードセル46が一体的に設けられている。参照符号46Aは信号取り出し用端子である。ロードセル46の上面は、可動体9に一体的に設置されている。
なお、上側ジンバル部材203から下側ジンバル部材201に向けてエアーを噴射する代わりに、下側ジンバル部材201から上側ジンバル部材203に向けてエアーを噴射してもよい。また、下側ジンバル部材201を上側ジンバル部材203に向けて真空引きする際、真空引き用の管路を下側ジンバル部材201に設けてもよい。
次に、転写装置1で転写を行う場合におけるジンバル機構45等の動作について説明する。
まず、初期状態として、可動体19が上昇していると共に、型41、被成形品13がセットされているものとする。また、各管路211、213を用いた真空引きやエアー噴出を停止してあるものとする。
この初期状態から、図示しない制御手段の制御の下、可動体19が所定の位置(型41と被成形品13とが僅かに離れている位置)まで高速下降する。
所定の位置まで下降したら、可動体19の下降速度を低速に切り換えると共に、管路213よりエアーを噴出して上側ジンバル部材203の球面部と下側ジンバル部材201の球面部との間にごく僅かな隙間を形成し、上側ジンバル部材203に対して下側ジンバル部材201が旋回しやすいようにする。この際、管路211からの真空引きは停止してある。
続いて、ロードセル46により検出された力が所定の値を超えたか否かを検出する。なお、ロードセル46により検出された力が所定の値を超えるときに、型41が被成形品13の姿勢に倣うものである。
力が所定の値を超えたときには、管路213からのエアーの噴出を停止すると共に管路211からの真空引きを行ない、下側ジンバル部材201の球面部を上側ジンバル部材203の球面部に真空吸着し上側ジンバル部材203に対して下側ジンバル部材201が旋回等(揺動等)しないように固定する。
続いて、型41を被成形品13に所定の力で所定の時間押し付け被成形品13の被成形材料を紫外線硬化させて転写を行ない、転写終了後は、可動体19を高速上昇させて次の転写に備える。
ところで、転写装置1において真空引きを行うための管路211等を削除し、被成形品13の成形動作中(下側ジンバル部材201の姿勢を調整している間も含む)において、継続して管路213からエアーを噴出していてもよい。また、被成形品13の成形中において、ロードセル46により検出された押し当て力が所定の値よりも小さい場合はエアーの噴出を行ない、ロードセル16により検出された押し当て力が所定の値よりも大きくなった場合に前記エアーの噴出を停止するように構成してもよい。
また、転写装置1においてエアーの噴出を行うための管路213等を削除し、被成形品13の成形中において、ロードセル46により検出された押し当て力が所定の値よりも小さい場合は真空引きを停止しておき、ロードセル46により検出された押し当て力が所定の値よりも大きくなった場合に前記真空引きを開始するように構成してもよい。
なお、前述した転写装置1(ジンバル機構45)の動作では、型41を被成形品13の成形面に直接押し当てて型41を倣わせているが、被成形品13のたとえば近くに調整用の面を設け、この調整用の面に型41を押し当てて型41を倣わせてもよい。
また、図1や図2に示した構成を上下逆にすることや、横にすることも可能である。すなわち、前記説明においては縦型の構成の場合について例示したが、縦型であって上下逆の構成や横型の構成とすることも可能であり、種々の構成を採用することができる。
さらに、図4に二点鎖線で示すように流体圧シリンダ(たとえば、空気圧シリンダ)257を適宜設け、下側ジンバル部材201の傾斜面219を付勢し、下側ジンバル部材201の球面部を上側ジンバル部材203の球面部に押し付けてもよい。また、流体圧シリンダ257に代えてまたは加えて弾性体(たとえば圧縮コイルばね)を用いて、下側ジンバル部材201の傾斜面219を付勢し、下側ジンバル部材201の球面部を上側ジンバル部材203の球面部に押し付けてもよい。
次に、転写用の型41について詳しく説明する。
図7は、転写用の型41の概略構成等を示す図であり、図8は、図7におけるVIII矢視図である。
前述したように、転写用の型(型)41が、被成形対象13に所定の力で押し当てられることによって、被成形対象13に微細なパターンが転写されるものであり、型41は、拘束部材101により、型保持体43に一体的に取り付けられている。
型41は、ベース部材103と型部材104とを備えて構成されている。ベース部材103は、転写を行うための転写装置1に着脱自在になっている。ベース部材103は、転写装置1に取り付けられるときに受ける力、転写装置1に取り付けられた状態で受ける力、転写装置1に取り付けられ被成形対象13への押し当て(転写のための押し当て)がされたときに受ける力に対して、十分な剛性を備えている。
より詳しく説明すると、ベース部材103は、所定の高さ(厚さ)の四角錐台状に形成されている。換言すれば厚い平板状に形成されている。拘束部材101は、ベース部材103の側面(斜めな側面)に係合している。また、拘束部材101には、セットスクリュ105が螺合している。
そして、拘束部材101をボルト等の締結部材で型保持体43に固定し、セットシュー107を介してセットスクリュ105でベース部材103を押すことにより、ベース部材103の側面が拘束部材101に押し付けられ、ベース部材103の底面(厚さ方向の両面のうちで面積の大きい方の面;図3ではベース部材103の上方に存在している面)が型保持体43に押し付けられ、ベース部材103が型保持体43に一体的に取り付けられる(設置される)ようになっている。また、セットスクリュ105を緩め拘束部材101を型保持体43から取り外せば、ベース部材103を型保持体43から取り外すことができるようになっている。
型41(ベース部材103)が転写装置1に取り付けられるときもしくは取り付けられた状態では、ベース部材103に力がかかりまたはかかっているので、ベース部材103は変形するが、この変形量はごく僅かであり、このごく僅かな変形が生じても被成形対象13に転写される微細な転写パターンの精度に悪影響を与えないようになっている。
なお、図7や図8から理解されるように、型保持体43に設置されたベース部材103をこの厚さ方向から眺めると、ベース部材103は、型保持体43に設けられている紫外線照射のための貫通孔を覆って蓋しており、ベース部材103の環状の周辺部が型保持体43に接することにより、ベース部材103が型保持体43に設置されている。
このように、ベース部材103が、環状の周辺部で型保持体43に支持されているので、転写のための押し当て(型41の被成形対象13への押し当て)によってベース部材103に力がかかると、ベース部材103は前記貫通孔の部位で変形しやすいのであるが、ベース部材103が厚く形成されているので前記変形量はごく僅かであり、このごく僅かな変形が生じても被成形対象13に転写される前記微細な転写パターンの精度に悪影響を与えないようになっている。
型部材104の一部の部位には、微細な転写パターンが形成されており、型部材104は他の一部の部位で、たとえば紫外線硬化式の接着剤109を介して、ベース部材103に一体的に貼り付けられている。
より詳しくは、型部材104は、ベース部材103の形態に対応して、たとえばベース部材103よりも薄い矩形な平板状に形成されており、厚さ方向の一方の面(図7では下側の面)に微細な転写パターンが形成されている。また、厚さ方向の他方の面(図7では上側の面)の全面が接着剤109を介して四角錐台のベース部材103の上面(厚さ方向の両面のうちで面積の小さい方の面;図3ではベース部材103の下方に存在している面)に貼り付けられている。
なお、薄い平板状に形成された型部材104は、剛性が小さく外力に対して前記平面が曲面になるような変形を容易に起こすものであるが、接着剤109を介してベース部材103に一体的に貼り付けられていることにより、外力に対しては、ベース部材103と同様に、ごく僅かしか変形しないようになっている。
すなわち、型部材104だけを用いて転写をすべく、型部材104だけを転写装置1に取り付けて押し当てをすると、転写装置1への取り付けや転写のための押し当てによってかかる力により型部材104が、特に紫外線照射用の貫通孔のところで大きく変形してしまい、精度良い転写を行うことができないのであるが、ベース部材103に一体的に貼り付けられていることにより、前記取り付けや押し当てによる力が型部材104にかかっても、ベース部材103と同様に型部材104はほとんど変形しないようになっている。そして、微細な転写パターンの精度に悪影響を与えることなく転写を行うことができるようになっている。
なお、図8に示すように、ベース部材103に型部材104が貼り付けられた転写用の型41をこの厚さ方向から眺めると、型部材104はベース部材103よりも小さく、ベース部材103の内側に型部材104が収まっているが、ベース部材103と型部材104との大きさをほぼ同じにしてベース部材103と型部材104とが互いにほぼ一致して重なり合っていてもよい。
また、ベース部材103、型部材104は、石英ガラス、その他のガラス、樹脂材料等の透明な材料で構成され紫外線を透過するようになっている。接着剤109も紫外線を透過するようになっている。接着剤として、たとえば光ファイバの接合に用いられる光路結合用接着剤、硬化時に透明化する精密接着剤を採用することができる。
さらに、図7や図8に示すベース部材103や型部材104は、これらの厚さ方向から眺めると矩形状に形成されているが、円形状等の他の形状に形成されていてもよい。さらに、平板状に限定されるものではなく、たとえば、ベース部材103の円柱側面形状や球面形状等の曲面に型部材104が貼り付けられる構成であってもよい。
また、型部材104のベース部材103への貼り付けは、前述した転写の場合と同様に、転写装置1を用いて行なわれている。たとえば、ベース部材103を型保持体43に設置し、紫外線硬化樹脂が塗布されている型部材104を支持台15上にセットし、ベース部材103で型部材104を押圧し、紫外線を照射すれば、型部材104のベース部材103への貼り付けがなされる。
転写用の型41によれば、型41が剛性を備えた厚いベース部材103と薄い型部材104とを備えて構成されているので、薄い型部材104を作成する際に半導体製造装置を用いることができ、型41の製造が容易になっていると共に、被成形対象13に転写すべく型41(型部材104、ベース部材103)に押圧力がかかっても型41がほとんど変形せず、的確な転写を行うことができる。
また、薄いがゆえに材料費が安価な型部材104に、微細な転写パターンを設けるので、この微細な転写パターンを設ける工程で失敗が生じても材料費の損失を小さく抑えることができる。
また、転写用の型41によれば、ベース部材103と型部材104との間に薄い接着剤109の層が存在しておりこの接着剤109の層の剛性がベース部材103や型部材104の剛性よりも低いので、換言すれば、接着剤109のほうがベース部材103や型部材104よりも弾性が大きいので、接着剤109が微妙なクッションになり、転写のための押圧のときに、たとえばジンバル機構45を使用しなくても、被成形対象13の被転写面と型41の微細なパターンが形成されている面との平行度を良好な状態にすることができ、正確な転写を行うことができる。
また、ベース部材103と型部材104とが接着剤109で互いに貼り付けられているので、微細な転写パターンの形態を変更する際、ベース部材103から型部材104を剥がして、他の微細な転写パターンが形成されている型部材をベース部材103に貼り付ければよく、材料費の節減をはかることができる。
また、型部材104のベース部材103への貼り付けを、転写装置1を用いて行えば、別途装置を必要とすることなく、型部材104のベース部材103への貼り付けを容易に行うことができる。
さらに、ベース部材103では、転写装置1の型41を保持する部位(型保持体43の部位)に紫外線照射用の孔があいているが、ベース部材103が十分な厚さを備えているので、転写のための押圧の際、型41に力がかかっても前記孔に対向していない部位(型41の周辺部位)のみならず前記孔に対向している部位(型41の中央部位)でさえ型41はほとんど変形せず、正確な転写を行うことができる。
なお、転写装置1では、型41の上方から紫外線を当てているが、被成形対象13が透明である場合には、紫外線を被成形対象13の下方から被成形対象13に照射してもよい。また、被成形対象13に熱硬化性樹脂からなるレジストを用いた被成形層を形成し、紫外線の代わりに熱により転写を行ってもよい。これらの場合、型保持体43の貫通等と紫外線照射装置とは不要になる、また、接着剤109として熱硬化性接着剤を採用してもよい。