JP2007537133A - 免疫原性を低減した分子の取得方法 - Google Patents

免疫原性を低減した分子の取得方法 Download PDF

Info

Publication number
JP2007537133A
JP2007537133A JP2006517860A JP2006517860A JP2007537133A JP 2007537133 A JP2007537133 A JP 2007537133A JP 2006517860 A JP2006517860 A JP 2006517860A JP 2006517860 A JP2006517860 A JP 2006517860A JP 2007537133 A JP2007537133 A JP 2007537133A
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
protein
peptide
protein complex
complex
cross
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Granted
Application number
JP2006517860A
Other languages
English (en)
Other versions
JP5009614B2 (ja
Inventor
マーシャル,クリストファー,ピー.
Original Assignee
アバター バイオテクノロジーズ,インク.
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by アバター バイオテクノロジーズ,インク. filed Critical アバター バイオテクノロジーズ,インク.
Publication of JP2007537133A publication Critical patent/JP2007537133A/ja
Application granted granted Critical
Publication of JP5009614B2 publication Critical patent/JP5009614B2/ja
Anticipated expiration legal-status Critical
Expired - Fee Related legal-status Critical Current

Links

Images

Classifications

    • CCHEMISTRY; METALLURGY
    • C07ORGANIC CHEMISTRY
    • C07KPEPTIDES
    • C07K1/00General methods for the preparation of peptides, i.e. processes for the organic chemical preparation of peptides or proteins of any length
    • C07K1/107General methods for the preparation of peptides, i.e. processes for the organic chemical preparation of peptides or proteins of any length by chemical modification of precursor peptides
    • C07K1/1072General methods for the preparation of peptides, i.e. processes for the organic chemical preparation of peptides or proteins of any length by chemical modification of precursor peptides by covalent attachment of residues or functional groups
    • C07K1/1075General methods for the preparation of peptides, i.e. processes for the organic chemical preparation of peptides or proteins of any length by chemical modification of precursor peptides by covalent attachment of residues or functional groups by covalent attachment of amino acids or peptide residues
    • CCHEMISTRY; METALLURGY
    • C07ORGANIC CHEMISTRY
    • C07KPEPTIDES
    • C07K14/00Peptides having more than 20 amino acids; Gastrins; Somatostatins; Melanotropins; Derivatives thereof
    • C07K14/435Peptides having more than 20 amino acids; Gastrins; Somatostatins; Melanotropins; Derivatives thereof from animals; from humans
    • C07K14/52Cytokines; Lymphokines; Interferons
    • C07K14/54Interleukins [IL]
    • C07K14/55IL-2
    • AHUMAN NECESSITIES
    • A61MEDICAL OR VETERINARY SCIENCE; HYGIENE
    • A61KPREPARATIONS FOR MEDICAL, DENTAL OR TOILETRY PURPOSES
    • A61K38/00Medicinal preparations containing peptides

Landscapes

  • Chemical & Material Sciences (AREA)
  • Organic Chemistry (AREA)
  • Health & Medical Sciences (AREA)
  • Life Sciences & Earth Sciences (AREA)
  • Proteomics, Peptides & Aminoacids (AREA)
  • Molecular Biology (AREA)
  • Biochemistry (AREA)
  • Biophysics (AREA)
  • General Health & Medical Sciences (AREA)
  • Genetics & Genomics (AREA)
  • Medicinal Chemistry (AREA)
  • Toxicology (AREA)
  • Zoology (AREA)
  • Gastroenterology & Hepatology (AREA)
  • Chemical Kinetics & Catalysis (AREA)
  • General Chemical & Material Sciences (AREA)
  • Analytical Chemistry (AREA)
  • Peptides Or Proteins (AREA)
  • Medicines That Contain Protein Lipid Enzymes And Other Medicines (AREA)
  • Steroid Compounds (AREA)
  • Polysaccharides And Polysaccharide Derivatives (AREA)
  • Medicines Containing Antibodies Or Antigens For Use As Internal Diagnostic Agents (AREA)
  • Enzymes And Modification Thereof (AREA)
  • Preparation Of Compounds By Using Micro-Organisms (AREA)

Abstract

【課題】
【解決課題】本発明は、個体におけるペプチド、タンパク質またはタンパク質複合体の免疫原性を低減させる方法を提供する。
【解決手段】個体におけるペプチド、タンパク質またはタンパク質複合体の2アミノ酸間にインビボにおいて安定または不可逆な少なくとも1つの架橋を導入することを含み、この場合、少なくとも1つの架橋により、個体における該ペプチド、タンパク質またはタンパク質複合体の免疫原性が前記架橋を施されていない同一ペプチド、タンパク質またはタンパク質複合体に比較して低減される方法を提供する。
【選択図】 なし

Description

本発明は、ポリペプチド、タンパク質およびタンパク質複合体を改変(engineering)して、免疫原性エピトープをマスクする(製薬的、治療的、および産業的)方法、および前記改変を施されたポリペプチド、タンパク質およびタンパク質複合体に関する。
本出願は、2003年7月3日提出の米国第60/484,880号の優先権を主張する。
本特許の開示内容は、著作権保護の対象である物件を含有する。本著作権の所有者は、米国特許商標局の特許書類または記録中に認められるとおりの複製に異論はないが、そうでない場合は、任意のすべての著作権についての権利を留保する。
本明細書中で引用される文献の開示内容は、ここに、引用によりその全体が本出願中に包含される。その目的は、本明細書中で記載され、特許請求される発明の日付の時点において、本技術分野の当業者に既知の技術水準をより完全に説明するためである。
ヒトゲノムプロジェクトおよび大規模な生物医学研究の結果により、例えば注射、吸入、または経口で患者に投与されるタンパク質ベースの治療用および診断用製品についての開発期間および市販化の時期が、化学的に製造された製品より大きく短縮されていると考えられる。さらにまた、その高い分子特異性の恩恵により、生物学的に開発されたタンパク質ベースの治療薬は、その対応する化学小分子より効果的であり、また副作用がより少ないと考えられる。したがって、近年の製薬およびバイオテクノロジー産業では、タンパク質ベースの治療薬の開発に相当の重点が置かれ、そしてかなりの資源が割り当てられている。
例えば、治療薬および診断用物質の両者としての、抗体の潜在的な有用性が多年にわたって認識されている。抗体ベースの製品を開発および改変する多数の技術および方法が過去10年またはそれ以上の間に出現しており、現在、免疫グロブリンベースの製品が製薬産業の最大かつ最も急速に成長するセグメントの1つを構成している。
本発明は、個体におけるペプチド、タンパク質またはタンパク質複合体の免疫原性を低減させる方法であって、ペプチド、タンパク質またはタンパク質複合体の2アミノ酸間にインビボにおいて安定または不可逆な少なくとも1つの架橋を導入することを含み、この場合、この少なくとも1つの架橋により、個体における該ペプチド、タンパク質またはタンパク質複合体の免疫原性が前記架橋を施されていない同一ペプチド、タンパク質またはタンパク質複合体に比較して低減させる方法を提供する。
本発明は、個体におけるペプチド、タンパク質またはタンパク質複合体の免疫原性を低減させる方法であって、ペプチド、タンパク質またはタンパク質複合体の2アミノ酸間に少なくとも1つのジチロシン架橋を導入することを含み、この場合、少なくとも1つのジチロシン架橋により、個体における該ペプチド、タンパク質またはタンパク質複合体の免疫原性が前記架橋を施されていない同一ペプチド、タンパク質またはタンパク質複合体に比較して低減される方法を提供する。
本発明は、個体におけるペプチド、タンパク質またはタンパク質複合体の免疫原性を低減させる方法であって、ペプチド、タンパク質またはタンパク質複合体の2アミノ酸間に少なくとも1つのジチロシン架橋を導入することを含み、この場合、ジチロシン架橋の少なくとも1つのチロシンは別のアミノ酸残基のチロシンへの点変異に由来し、かつこの少なくとも1つのジチロシン架橋により、個体における該ペプチド、タンパク質またはタンパク質複合体の免疫原性が前記架橋を施されていない同一ペプチド、タンパク質またはタンパク質複合体に比較して低減される方法を提供する。
本発明は、個体におけるペプチド、タンパク質またはタンパク質複合体の免疫原性を低減させる方法であって、ペプチド、タンパク質またはタンパク質複合体に少なくとも2つの修飾を導入することを含み、この場合、第一の修飾は該ペプチド、タンパク質またはタンパク質複合体の2アミノ酸間における少なくとも1つの架橋を含み、かつ第一の修飾および第二の修飾により、個体における該ペプチド、タンパク質またはタンパク質複合体の免疫原性が前記修飾を施されていない同一ペプチド、タンパク質またはタンパク質複合体に比較して低減される方法を提供する。
本発明は、個体におけるペプチド、タンパク質またはタンパク質複合体の免疫原性を低減させる方法であって、ペプチド、タンパク質またはタンパク質複合体に少なくとも2つの修飾を導入することを含み、この場合、第一の修飾は該ペプチド、タンパク質またはタンパク質複合体の2アミノ酸間における少なくとも1つのジチロシン架橋を含み、かつ第一の修飾および第二の修飾により、個体における該ペプチド、タンパク質またはタンパク質複合体の免疫原性が前記修飾を施されていない同一ペプチド、タンパク質またはタンパク質複合体に比較して低減される方法を提供する。
本発明は、個体におけるペプチド、タンパク質またはタンパク質複合体の免疫原性を低減させる方法であって、ペプチド、タンパク質またはタンパク質複合体に少なくとも2つの修飾を導入することを含み、この場合、第一の修飾は該ペプチド、タンパク質またはタンパク質複合体の2アミノ酸間における少なくとも1つのジチロシン架橋を含み、この少なくとも1つのジチロシン架橋の少なくとも1つのチロシンは別のアミノ酸残基のチロシンへの点変異に由来し、かつ第一の修飾および第二の修飾により、個体における該ペプチド、タンパク質またはタンパク質複合体の免疫原性が前記修飾を施されていない同一ペプチド、タンパク質またはタンパク質複合体に比較して低減される方法を提供する。
本発明は、個体におけるペプチド、タンパク質またはタンパク質複合体の免疫原性を低減させる方法であって、ペプチド、タンパク質またはタンパク質複合体の2アミノ酸間にインビボにおいて安定/不可逆な少なくとも1つの架橋を導入することを含み、この場合、この架橋により、個体における該ペプチド、タンパク質またはタンパク質複合体の免疫原性が架橋を施されていない同一ペプチド、タンパク質またはタンパク質複合体に比較して低減され、かつ架橋を施されたペプチド、タンパク質またはタンパク質複合体は、該少なくとも1つの架橋が不存在の場合に該ペプチド、タンパク質またはタンパク質複合体が有する少なくとも1つの機能を保持する方法を提供する。
本発明は、個体におけるペプチド、タンパク質またはタンパク質複合体の免疫原性を低減させる方法であって、ペプチド、タンパク質またはタンパク質複合体の2アミノ酸間にインビボにおいて安定/不可逆な少なくとも1つのジチロシン架橋を導入することを含み、この場合、この少なくとも1つのジチロシン架橋により、個体における該ペプチド、タンパク質またはタンパク質複合体の免疫原性が前記架橋を施されていない同一ペプチド、タンパク質またはタンパク質複合体に比較して低減され、かつ少なくとも1つのジチロシン架橋を施されたペプチド、タンパク質またはタンパク質複合体は、該少なくとも1つの架橋が不存在の場合に該ペプチド、タンパク質またはタンパク質複合体が有する少なくとも1つの機能を保持する方法を提供する。
本発明は、個体におけるペプチド、タンパク質またはタンパク質複合体の免疫原性を低減させる方法であって、ペプチド、タンパク質またはタンパク質複合体の2アミノ酸間に少なくとも1つのジチロシン架橋を導入することを含み、この場合、このジチロシン架橋の少なくとも1つのチロシンは別のアミノ酸残基のチロシンへの点変異に由来し、かつこの少なくとも1つのジチロシン架橋により、個体における該ペプチド、タンパク質またはタンパク質複合体の免疫原性が前記架橋を施されていない同一ペプチド、タンパク質またはタンパク質複合体に比較して低減され、かつ少なくとも1つのジチロシン架橋を施されたペプチド、タンパク質またはタンパク質複合体は、該少なくとも1つの架橋が不存在の場合に該ペプチド、タンパク質またはタンパク質複合体が有する少なくとも1つの機能を保持する方法を提供する。
本発明は、個体におけるペプチド、タンパク質またはタンパク質複合体の免疫原性を低減させる方法であって、このペプチド中にインビボにおいて安定/不可逆な少なくとも1つの架橋を導入し、ならびにこのペプチド中にインビボにおいて安定/不可逆な少なくとも1つの他の修飾を導入することを含み、この場合、少なくとも1つの架橋および少なくとも1つの他の修飾により、個体における該ペプチド、タンパク質またはタンパク質複合体の免疫原性が無修飾のペプチド、タンパク質またはタンパク質複合体と比較して低減され、かつ架橋および修飾を施されたペプチド、タンパク質またはタンパク質複合体は、該少なくとも1つの架橋および該少なくとも1つの他の修飾が不存在の場合に該ペプチド、タンパク質またはタンパク質複合体が有する少なくとも1つの機能を保持する方法を提供する。
本発明は、個体におけるペプチド、タンパク質またはタンパク質複合体の免疫原性を低減させる方法であって、このペプチド中に少なくとも1つのジチロシン架橋を導入し、ならびにこのペプチド中にインビボにおいて安定/不可逆な少なくとも1つの他の修飾を導入することを含み、この場合、少なくとも1つの架橋および少なくとも1つの他の修飾により、個体における該ペプチド、タンパク質またはタンパク質複合体の免疫原性が無修飾のペプチド、タンパク質またはタンパク質複合体に比較して低減され、ならびにジチロシン架橋および別の修飾を施されたペプチド、タンパク質またはタンパク質複合体は、該少なくとも1つの架橋および該少なくとも1つの他の修飾が不存在の場合に該無修飾のペプチド、タンパク質またはタンパク質複合体が有する少なくとも1つの機能を保持する方法を提供する。
本発明は、個体におけるペプチド、タンパク質またはタンパク質複合体の免疫原性を低減させる方法であって、このペプチド中に少なくとも1つのジチロシン架橋を導入し、この場合、このジチロシン架橋の少なくとも1つのチロシンは別のアミノ酸残基のチロシンへの点変異由来し、ならびにこのペプチド中にインビボにおいて安定および/または不可逆な少なくとも1つの他の修飾を導入することを含み、この場合、この架橋および他の修飾により、個体における該ペプチド、タンパク質またはタンパク質複合体の免疫原性が無修飾のペプチド、タンパク質またはタンパク質複合体と比較して低減され、かつジチロシン架橋および別の修飾を施されたペプチド、タンパク質またはタンパク質複合体は、該少なくとも1つの架橋および該少なくとも1つの他の修飾が不存在の場合に該ペプチド、タンパク質またはタンパク質複合体が有する少なくとも1つの機能を保持する方法を提供する。
本発明は、ペプチド、タンパク質またはタンパク質複合体の免疫原性を低減させる方法であって、以下の段階を含む方法を提供する:(a)架橋対象のペプチド、タンパク質またはタンパク質複合体の少なくとも1つの免疫原性エピトープを同定または選択する段階;および(b)該エピトープの2アミノ酸間に少なくとも1つの架橋を導入する段階、この場合、この架橋はインビボにおいて安定および/または不可逆であり、この架橋を施されたペプチド、タンパク質またはタンパク質複合体は、架橋を施されていないペプチド、タンパク質またはタンパク質複合体に比較して免疫原性が低減される。
本発明は、ペプチド、タンパク質またはタンパク質複合体の免疫原性を低減させる方法であって、以下の段階を含む方法を提供する:(a)ペプチド、タンパク質またはタンパク質複合体の少なくとも1つの免疫原性エピトープを同定または選択する段階;および(b)該エピトープの2アミノ酸間に少なくとも1つのジチロシン架橋を導入する段階、この場合、ジチロシン架橋を施されたペプチド、タンパク質またはタンパク質複合体は、前記架橋を施されなかった同一ペプチド、タンパク質またはタンパク質複合体に比較して免疫原性が低減される。
本発明は、ペプチド、タンパク質またはタンパク質複合体の免疫原性を低減させる方法であって、以下の段階を含む方法を提供する:(a)ペプチド、タンパク質またはタンパク質複合体の少なくとも1つの免疫原性エピトープを同定または選択する段階;および(b)該エピトープの2アミノ酸間に少なくとも1つのジチロシン架橋を導入する段階、この場合、この架橋の少なくとも1つのチロシンは別のアミノ酸残基のチロシンへの点変異に由来し、かつジチロシン架橋を施されたペプチド、タンパク質またはタンパク質複合体は、前記架橋を施されなかった同一ペプチド、タンパク質またはタンパク質複合体に比較して免疫原性が低減される。
本発明は、ペプチド、タンパク質またはタンパク質複合体の免疫原性を低減させる方法であって、以下の段階を含む方法を提供する:(a)ペプチド、タンパク質またはタンパク質複合体の少なくとも1つの免疫原性エピトープを同定または選択する段階;および(b)ペプチド、タンパク質またはタンパク質複合体の2アミノ酸間に少なくとも1つのジチロシン架橋を導入する段階、この場合、該エピトープの免疫原性は、前記架橋を施されなかった同一ペプチド、タンパク質またはタンパク質複合体の免疫原性に比較して低減あるいは阻害される。
本発明は、ペプチド、タンパク質またはタンパク質複合体の免疫原性を低減させる方法であって、以下の段階を含む方法を提供する:(a)ペプチド、タンパク質またはタンパク質複合体の少なくとも1つの免疫原性エピトープを同定または選択する段階;および(b)ペプチド、タンパク質またはタンパク質複合体の2アミノ酸間に少なくとも1つのジチロシン架橋を導入する段階、この場合、少なくとも1つのジチロシン架橋の少なくとも1つのチロシンは別のアミノ酸残基のチロシンへの点変異に由来し、かつ該エピトープの免疫原性は、前記架橋を施されなかった同一ペプチド、タンパク質またはタンパク質複合体の免疫原性に比較して低減あるいは阻害される。
本発明は、ペプチド、タンパク質またはタンパク質複合体の免疫原性を低減させる方法であって、以下の段階を含む方法を提供する:(a)ペプチド、タンパク質またはタンパク質複合体の少なくとも1つの免疫原性エピトープを同定または選択する段階;および(b)該エピトープの2アミノ酸(amo acids)間に少なくとも1つのジチロシン架橋を導入し、ならびに該エピトープ中に少なくとも1つの他の修飾を導入する段階、この場合、この架橋および修飾を施されたペプチド、タンパク質またはタンパク質複合体は、架橋を施されていないペプチド、タンパク質またはタンパク質複合体に比較して免疫原性が低減または減少される。
本発明は、ペプチド、タンパク質またはタンパク質複合体に応答する、個体におけるT細胞活性化を低減させる方法であって、ペプチド、タンパク質またはタンパク質複合体の2アミノ酸間にインビボにおいて安定または不可逆な少なくとも1つの架橋を導入することを含み、この場合、この架橋を施されたペプチド、タンパク質またはタンパク質複合体は、前記架橋を施されていない同一ペプチド、タンパク質またはタンパク質複合体に比較して、個体におけるT細胞活性化が低減される方法を提供する。
本発明は、ペプチド、タンパク質またはタンパク質複合体に応答する、個体におけるT細胞活性化を低減させる方法であって、ペプチド、タンパク質またはタンパク質複合体の2アミノ酸間に少なくとも1つのジチロシン架橋を導入することを含み、この場合、この架橋を施されたペプチド、タンパク質またはタンパク質複合体は、前記架橋を施されていない同一ペプチド、タンパク質またはタンパク質複合体に比較して個体におけるT細胞活性化が低減される方法を提供する。
本発明は、ペプチド、タンパク質またはタンパク質複合体に応答する、個体におけるT細胞活性化を低減させる方法であって、ペプチド、タンパク質またはタンパク質複合体の2アミノ酸間に少なくとも1つのジチロシン架橋を導入することを含み、この場合、このジチロシン架橋の少なくとも1つのチロシンは別のアミノ酸残基のチロシンへの点変異に由来し、かつジチロシン架橋を施されたペプチド、タンパク質またはタンパク質複合体は、前記架橋を施されていない同一ペプチド、タンパク質またはタンパク質複合体に比較して個体におけるT細胞活性化が低減される方法を提供する。
本発明は、ペプチド、タンパク質またはタンパク質複合体に応答する、個体におけるT細胞活性化を低減させる方法であって、ペプチド中に少なくとも1つのジチロシン架橋を導入し、ならびにペプチド中にインビボにおいて安定または不可逆な少なくとも1つの他の修飾を導入することを含み、この場合、少なくとも1つの架橋および少なくとも1つの他の修飾により、前記架橋を施されていない同一ペプチド、タンパク質またはタンパク質複合体に比較して個体におけるT細胞活性化が低減される方法を提供する。
本発明は、ペプチド、タンパク質またはタンパク質複合体に応答する、個体におけるT細胞活性化を低減させる方法であって、ペプチド中の少なくとも1つのジチロシン架橋を導入し、この場合、ジチロシン架橋の少なくとも1つのチロシンは別のアミノ酸残基のチロシンへの点変異に由来し、ならびにペプチド中にインビボにおいて安定または不可逆な少なくとも1つの他の修飾を導入することを含み、この場合、この架橋および他の修飾により、前記架橋を施されていない同一ペプチド、タンパク質またはタンパク質複合体に比較して個体におけるT細胞活性化が低減される方法を提供する。
本発明は、個体の疾患または障害の治療に使用されるペプチド、タンパク質またはタンパク質複合体の有効性を増加させる方法であって、ペプチド、タンパク質またはタンパク質複合体の2アミノ酸間にインビボにおいて安定または不可逆な少なくとも1つの架橋を導入することによって、ペプチド、タンパク質またはタンパク質複合体を修飾することを含み、この場合、この架橋を施されたタンパク質は、架橋を施されていないペプチド、タンパク質またはタンパク質複合体に存在する少なくとも1つの機能を保持し、ならびに架橋を施されたペプチド、タンパク質またはタンパク質複合体は、架橋を施されていない同一ペプチド、タンパク質またはタンパク質複合体に比較して個体の疾患または障害の治療においてより有効である方法を提供する。
本発明は、個体の疾患または障害の治療に使用されるペプチド、タンパク質またはタンパク質複合体の有効性を増加させる方法であって、ペプチド、タンパク質またはタンパク質複合体の2アミノ酸間に少なくとも1つのジチロシン架橋を導入することによって、ペプチド、タンパク質またはタンパク質複合体を修飾することを含み、この場合、この架橋を施されたタンパク質は、架橋を施されていないペプチド、タンパク質またはタンパク質複合体に存在する少なくとも1つの機能を保持し、ならびに架橋を施されたペプチド、タンパク質またはタンパク質複合体は、前記架橋を施されていない同一ペプチド、タンパク質またはタンパク質複合体に比較して個体の疾患または障害の治療においてより有効である方法を提供する。
本発明は、個体の疾患または障害の治療に使用されるペプチド、タンパク質またはタンパク質複合体の有効性を増加させる方法であって、ペプチド中に少なくとも1つのジチロシン架橋、この場合、ジチロシン架橋の少なくとも1つのチロシンは別のアミノ酸残基のチロシンへの点変異に由来し、ならびにペプチド中にインビボにおいて安定または不可逆な少なくとも1つの他の修飾を導入することによって、ペプチド、タンパク質またはタンパク質複合体を修飾することを含み、この場合、少なくとも1つのジチロシン架橋および少なくとも1つの他の修飾を含むタンパク質は、前記架橋または修飾を施されていないペプチド、タンパク質またはタンパク質複合体が有する少なくとも1つの機能を保持し、かつこのペプチド、タンパク質またはタンパク質複合体中の架橋および修飾により、疾患または障害の治療におけるペプチド、タンパク質またはタンパク質複合体の有効性が前記架橋または修飾を施されていない同一ペプチド、タンパク質またはタンパク質複合体に比較して増加される方法を提供する。
本発明は、少なくとも1つのジチロシン架橋および、点変異、1つまたはそれ以上のアミノ酸の欠失、1つまたはそれ以上のアミノ酸の挿入、ペグ化(PEGylation)、グリコシル化、アセチル化、アミド化、ホルミル化およびその任意の組み合わせからなる群から選択される少なくとも1つの他の修飾を含む、単離されたペプチド、タンパク質またはタンパク質複合体であって、前記架橋または修飾を施されていない同一ペプチド、タンパク質またはタンパク質複合体の少なくとも1つの機能を保持するペプチド、タンパク質またはタンパク質複合体を提供する。
本発明は、少なくとも1つのジチロシン架橋を含み、この場合、ジチロシン架橋の少なくとも1つのチロシンは別のアミノ酸残基のチロシンへの点変異に由来し、ならびに点変異、1つまたはそれ以上のアミノ酸の欠失、1つまたはそれ以上のアミノ酸の挿入、ペグ化、グリコシル化、アセチル化、アミド化、ホルミル化、およびその任意の組み合わせからなる群から選択される少なくとも1つの他の修飾を含む、単離されたペプチド、タンパク質またはタンパク質複合体であって、前記架橋および修飾を施されていない同一ペプチド、タンパク質またはタンパク質複合体の少なくとも1つの機能を保持するペプチド、タンパク質またはタンパク質複合体を提供する。
本発明は、個体におけるペプチド、タンパク質、またはタンパク質複合体の免疫原性を低減させる方法であって、2アミノ酸間に少なくとも1つの架橋を導入することを含み、この場合、この架橋により抗原提示細胞の抗原プロセシングが妨害を受け、それにより、個体における該ペプチド、タンパク質、またはタンパク質複合体の免疫原性が前記架橋または修飾を施されていない同一ペプチド、タンパク質、またはタンパク質複合体に比較して低減される方法を提供する。
一実施態様では、架橋または修飾により、抗原プロセシング、HLA−DMペプチド積載(loading)、エキソペプチダーゼ媒介性のタンパク質分解による分解、HLA−DM媒介性のペプチド編集およびT細胞シグナル伝達複合体の組立ておよび活性化が妨害を受ける。
別の実施態様では、ペプチド、タンパク質、またはタンパク質複合体は、治療用生成物、診断用生成物、酵素、ホルモン、受容体、成長因子、抗体またはその断片を含む。
別の実施態様では、架橋は、ホモ架橋、ヘテロ架橋、二官能性架橋、光反応性架橋、ペプチドに包含された非標準アミノ酸間の架橋、または酸化的架橋を含む。
本発明は、ポリペプチド、タンパク質、およびタンパク質複合体を改変/修飾して、望ましくない免疫応答を低減させ、ならびに/あるいは予防するための方法を提供する。ポリペプチド、タンパク質、およびタンパク質複合体が修飾されると、これら分子のタンパク質分解断片であってMHCの溝に表示されないものが抗原化プロセシングの結果として生じ、および/またはこれらのペプチドに特異的なTヘルパー細胞が全くあるいは低い程度にしか活性化されなくなる。本発明を適用してポリペプチド、タンパク質、および/またはタンパク質複合体を改変/修飾すると、これらは所望の活性および/または特異性を保持したまま、しかしAPCにおいてT細胞を活性化させる特異的な生物学的プロセスの構造上の必要要件には適合しなくなる。
APCにおける特異的な生物学的プロセスであって、本発明の適用により阻害または変更を受け、かつMHC拘束性抗原提示およびT細胞活性化を変化させるプロセスは以下に挙げるものである:
抗原プロセシング、すなわちAPCのエンドソーム/リソソーム区画におけるタンパク質分解による分解;
HLA−DM媒介性のペプチド積載;
エキソペプチダーゼ媒介性タンパク質分解による、「ダングリング(dangling)」配列、すなわちMHCの溝の片側を超えて伸長した配列の分解(「レトロフィッティング(retrofitting)」、上記参照のこと);
HLA−DM媒介性のペプチド編集;
T細胞シグナル伝達複合体の組立ておよび活性化。
ポリペプチド、タンパク質、およびタンパク質複合体を改変する方法には、分子生物学的な点変異、指揮された(directed)または指揮されなかった(undirected)架橋、既知の保護/ブロック基を使用しておよび使用せずに行う誘導体化および翻訳後修飾、酸化または還元、ホルミル化、アセチル化、アミド化等が挙げられるが、これらに限定されない。ポリペプチド、タンパク質およびタンパク質複合体を修飾すると、以下に挙げる効果に至る:
架橋すると、抗原プロセシング中のタンパク質分解によるそれらの完全分解が阻害される;
抗原プロセシングから生じるペプチドが修飾されると、MHCの溝にペプチド積載および/または結合されるための構造上の必要要件に不適合になる;
抗原プロセシングから生じるペプチドが修飾されると、その結果、MHCの溝に結合する親和性が低くなり、ゆえにHLA−DM感受性となり編集の対象になる;
抗原プロセシングから生じるペプチドが修飾されると、その結果、それらはエキソペプチダーゼ媒介性の「レトロフィッティング」のための構造上の必要要件に不適合になり、ゆえにHLA−DM感受性になる;
抗原プロセシングから生じるペプチドが修飾されると、その結果、それらはT細胞シグナル伝達複合体が組立てられおよび活性化されるための構造上の必要要件を妨害する。
「HLA−DM感受性」ペプチドは、表示ペプチドのレパートリーから排除される(上記参照のこと)。ペプチド表示が阻害または妨害された場合、ペプチド特異的T細胞活性化および、結果的に特異的体液性免疫応答もまた阻害または妨害される。T細胞シグナル伝達が不完全に阻害された場合は、活性化されたT細胞の媒介により、生物はペプチド特異的な寛容を獲得する。
本発明の部分として、ポリペプチド、タンパク質、およびタンパク質複合体を改変/修飾することによって、所望の活性および/または特異性を改変/修飾の結果として保持しまたは取得する方法が提供される。さらに本発明は、活性および/または特異性が保持されおよび/または所望され、かつ免疫原性が低減および/または排除された改変ポリペプチド、タンパク質、およびタンパク質複合体を提供する。
以後、添付の図面に関連して本発明を説明する。本発明は、本明細書中に挙げる具体的実施態様の詳細な説明と組み合わせて、1つまたはそれ以上の該図面を参照することによって、より十分に理解されるであろう。本発明は、開示される実施態様に限定されると解釈されるべきではなく、これらは開示される発明の非限定的な例であることが理解されるべきである。
ポリペプチド、タンパク質、およびタンパク質複合体は、多様な製品、例えば限定されないが、食物および洗剤において、多様な消費者製品、例えば限定されないが、繊維、紙、ビタミン、食物成分、および化粧品の生産、製造、および製作において、ならびに多数の産業プロセス、例えば限定されないが、ファインケミカル、医薬品、および多数の他の製造プロセスにおいて、成分として使用される。
体液性免疫応答−ヒト免疫系が可溶性タンパク質抗原、例えばタンパク質ベースの治療薬(「生物学的製剤」)に対する応答を開始するために、B細胞は抗体(免疫グロブリン分子)を生産および分泌する。抗体は抗原に結合し、抗原を隔離し、そして失活させる(体液性免疫応答)。B細胞活性化は以下の2組の生化学的シグナル伝達経路がともに活性化されることを必要とする:(i)B細胞受容体がそのリガンドに結合することによってトリガーされるシグナル伝達経路、および(ii)抗原特異的CD4+Tヘルパー細胞によってトリガーされるシグナル伝達経路(群)、この細胞も逆に活性化されねばならない(Villadangos JA et al., 1999. Immunol. Rev. 172: 109-120)。T細胞が活性化されなければ、タンパク質に対する体液性免疫応答はトリガーされない(下記参照のこと)。
B細胞が活性化すると、抗原に特異的な抗体のクローン増殖および分泌が生じる。B細胞受容体は直接抗原に結合する。この受容体は、B細胞が活性化して生産および分泌した特異的免疫グロブリン分子の膜結合型変異体である。他方、T細胞活性化には、プロセシングされた抗原断片をT細胞に提示する抗原提示細胞(APC)の協力が必要である。この抗原断片は主要組織適合複合体(MHC)の溝において表示される。T細胞は、MHCによって表示された抗原断片を各T細胞に特異的なT細胞受容体(TCR)を介して認識すると活性化される。B細胞受容体(抗体)がほとんどすべての種類の分子に結合するに比較すると、T細胞受容体は、ペプチド−MHC複合体(pMHC)の表面のより保存されている構造に結合するので、TCR/pMHCの構造上の多様性はかなり制限される。したがって、T細胞活性化を防止することは、望ましくない免疫応答を阻害する有効な方法である。
活性化時に、Tヘルパー細胞はクローン増殖し、エフェクター細胞(B細胞、上記参照のこと)を活性化し、そして記憶細胞を生産する。記憶細胞は、同一抗原に再度晒されることに対して免疫系が迅速かつ効率的に応答することを可能にする。エンドサイトーシス経路によってAPCに入ったタンパク質、すなわち核質または細胞質に由来しないタンパク質は、ほとんどがMHCクラスII(MHCII)によって表示される。プロセシングされたタンパク質断片のMHCII表示には、受容体媒介性のエンドサイトーシス(encocytosis)、食作用、マクロピノサイトーシス(macropinocytosis)、および/または自己貪食によるタンパク質の取り込み(Watts C, 1997. Annu. Rev. Immunol. 15: 821-850, Seglen PO & Bohley P., 1992. Experientia 48: 158-172, Villadangos JA et al., 1999. Immunol. Rev. 172: 109-120)、エンドサイトーシス小胞中のタンパク質分解による消化(Nakagawa TY & Rudensky AY, 1999. Immunol. Rev. 172: 121-129; Villadangos JA et al., 1999. Immunol. Rev. 172: 109-120)、生じたペプチド断片のMHCII溝中への積載、およびペプチドが積載したMHCII(pMHCII)の原形質膜への輸送(Alfonso C et al., 1999. Immunol. Rev. 172: 255-266; Kropshofer H et al., 1999. Immunol. Rev. 172: 267-278)が包含されている。
抗原プロセシング−APCにおいて、MHCクラスII分子によって提示された抗原はエンドサイトーシス小胞中に取り込まれ、この小胞は次第に酸性化され、そして小胞中でタンパク質は酸性pHが至適条件であるプロテアーゼ、例えばエンドペプチダーゼであるカテプシンSおよびL、およびエキソペプチダーゼであるカテプシンA、BおよびHによって分解される(Nakagawa TY & Rudensky AY, 1999. Immunol. Rev. 172: 121-129; Villadangos JA et al., 1999. Immunol. Rev. 172: 109-120)。タンパク質分解による消化前に、チオールレダクターゼ、例えばガンマインターフェロン誘導性リソソーム性チオールレダクターゼ(GILT)によってジスルフィド結合が分解される。このチオールレダクターゼはAPCにおいて構成的に発現され、MHCクラスII含有リソソーム区画に局在し、低pHの活性最適条件を有する(Phan UT、et al., 2000. J. Biol. Chem. 275 (34): 25907-14)。未だ明らかには立証されていないかもしれないが、N連結型グリコシル化はエンドサイトーシスおよびリソソーム区画で除去されず、そしてNおよびO連結型の糖はMHCクラスII分子の溝において提示されると考えられる(Gad M et al., 2003. Eur. J. Immunol 33 (6): 1624-32; Vlad AM et al., 2002, J. Exp. Med. 196 (11): 1435-46; Rudd PM et al., 2001. Science 291: 2370-76)。
MHC積載およびペプチド編集−ペプチド積載区画(「PLC」;初期および後期エンドソームおよびリソソーム区画において、ペプチドはMHCII分子の溝中に積載される。この積載は「生合成」経路、または「交換」経路によって生じる。生合成経路では、後期エンドソームおよびリソソーム区画でのHLA−DM媒介性のプロセスにおいてペプチドが積載され、インバリアント鎖(Ii)由来CLIPペプチドがこのペプチドによって置換される;交換経路におけるペプチド積載は初期エンドソーム区画において生じ、そして同様にHLA−DM媒介性である(Alfonso C et al., 1999. Immunol. Rev. 172: 255-266; Kropshofer H et al., 1999. Immunol. Rev. 172: 267-278)。ペプチド編集、すなわちMHCII溝から特定の抗原が再度除去されるプロセスは、HLA−DMおよびHLA−DO媒介性である。編集されるペプチドは、主として、MHCの溝への結合親和性が低いか、あるいはMHCの溝を超えて伸長した(「ダングリング(懸垂)」している)、特にN末端において伸長した配列を有すると考えられる。pMHC複合体の親和性は以下によって決定される:(a)ペプチドアンカー、特に一次(primary)アンカーの位置が、積載されたペプチドの配列において特異な位置に存在する疎水性のアミノ酸側鎖であるか否か;(b)ペプチドアンカーがMHCの溝中の対応する結合部位と空間を置いて立体的に適合しているか否か;および(c)ペプチドアンカー間のアミノ酸位置に不安定化残基(プロリンおよびグリシンであることが多い)が存在するか否か(Kropshofer H et al., 1999. Immunol. Rev. 172: 267-278)。
HLA−DOおよびHLA−DM系によって編集されたペプチドはDM感受性と称され、また編集されずに認識および活性化のためにT細胞に提示されたペプチドはpMHCがAPCの表面にいったん到達するとDM耐性と称される(Kropshofer H et al., 1999. Immunol. Rev. 172: 267-278)。
T細胞活性化−T細胞活性化は、pMHCがその特異的TCRに結合し、細胞外および細胞内シグナル伝達複合体が組立てられ、そして細胞内シグナル伝達経路が活性化した後に続く。これらのすべての現象が生じるためには、TCR−pMHC複合体が組立てられてその複合体にシグナル伝達複合体の他のメンバーも結合可能となり、それらによって生化学的な、転写上の、細胞での活性化が招来されなければならない。
一般にTCRは、pMHCの表面を横切る対角線上に配向するので、中心に位置するCDR3はMHCの溝に結合しているペプチドの中心の、上向き(up facing)アミノ酸側鎖と相互作用すると考えられる。TCRのCDR1および2はMHCのより保存されているエレメント、おそらく例えば保存されているらせん構造/残基と接触する。TCRのアルファ鎖はMHCに結合したペプチドのN末端上に位置して、それと接触し、ベータ鎖はそのC末端上に位置する。結合時に、TCRおよびpMHCの両者に立体配置上の大きな変化が生じる可能性があり、この変化によって、発生するシグナル伝達の種類が修飾されるかもしれず、またこの変化は生化学的シグナル伝達経路の活性化に直接関与するかもしれない(Garcia KC, 1999. Immunol. Rev. 172: 73-85)。
有害な体液性免疫応答
毒性−抗体産生の対象である相当量のタンパク質、例えば限定されないが、タンパク質ベースの治療薬、代用血液、サイトカイン、サイトカイントラップ、抗体、抗体断片、融合タンパク質、および生体触媒/工業用酵素が存在する場合に抗体−抗原複合体が、例えば限定されないが腎機能に関して有毒な作用を有する恐れがある。その場合、例えばインターフェロンアルファおよびインターフェロンベータの場合のように、該複合体が糸球体を「ふさぎ」、そして腎臓が有毒な物質をろ過し、身体から分泌するのを妨害してしまう恐れがある(Mire-Sluis A et al., 2003. Dev Bio (Basel) 112: 153-63)(表1を参照のこと)。
アナフィラキシーショック−免疫原性ペプチド、ポリペプチド、タンパク質、またはタンパク質複合体が、例えば限定されないが、吸入によって生物に取り込まれ、これにより免疫原性ペプチドが血流に到達し、そして免疫応答を生じさせる場合、例えば限定されないが細菌タンパク質、例えばプロテアーゼであるサブチリシンに対する強力な免疫応答がアナフィラキシーショックを起し、そして場合によっては死を招く恐れがある(Malkiel S & Hargis BJ, 1971. J Allergy Clin Immunol. 48 (4): 220-3)。
効力の低下−治療用タンパク質の開発は薬剤開発の最も有望な領域の1つであると考えられる。その理由は、例えば、その構造上の複雑さに起因して治療上の特異性を達成することができ、また短期間での市販化が予測されるからである。しかし、このような治療用タンパク質候補、例えば限定されないが、代用血液、サイトカイン、サイトカイントラップ、抗体、抗体断片、融合タンパク質、および誘導体、例えば限定されないが、放射性標識された抗体、および概して任意の種類のタンパク質ベースの生成物(製品)に対する免疫応答は、これらの分子に特異的な抗体の生産を生じさせ、この抗体はこれらの分子に結合し、それを失活させ、ならびに/あるいは隔離し、そしてその治療効力を低下させ、時には無効にさえする(Mire-Sluis A et al., 2003. Dev Bio (Basel) 112: 153-63)。
治療効力を有する2つまたは複数のタンパク質の間で指向する免疫応答のエピトープが共有され、あるいは類似である場合に、1タンパク質に対する免疫応答によって産生された抗体が他のタンパク質(群)にも同様に結合し、それを失活させ、ならびに/あるいは隔離し、その結果患者は有望な医薬や治療方法を全て尽くしても治療不能になる。
表1:バイオ医薬品選択のための免疫応答臨床結果報告
Figure 2007537133
出典「インターフェロン免疫原性の評価(Assessing Interferon Immunogenicity);」Ron Bordens提供
交差反応性および自己免疫−非自己のタンパク質に免疫応答して抗体が産生されると、その抗体は身体自身が生産するタンパク質と交差反応をするので、この身体自身が生産するタンパク質が認識され、不活性化され、および/または隔離され、重要な機能を果たす身体能力にネガティブな作用が及ぶ可能性がある。例えば、エリスロポエチンに対する免疫反応は、生命を危うくする障害である(不可逆な)真性赤血球系形成不能のいくつかの症例を生じさせ(Berry JD, et al., 2003. Hybrid Hybridomics 22(1): 23-31)、またPEG MDGFに対する免疫反応は血小板減少を生じさせた(表1を参照のこと)。さらにまた、交差反応性免疫応答の誘発は自己免疫性障害を生じさせる可能性がある。
免疫回避の方策−非自己の、すなわち外来のタンパク質が免疫認識を回避することを可能にするいくつかの機構が知られている。これらの機構には、天然に発生した機構およびタンパク質工学の産物である機構の両者がある。
天然の場合−抗原プロセシング中に除去されないタンパク質が翻訳後修飾、例えばグリコシル化されると、このようなタンパク質のプロセシングから生じる修飾ペプチドはMHC提示に不適合になる可能性があり、ゆえに該修飾ペプチドは免疫応答を違法な(illicit)しないか、あるいはできない(Surman S et al., 2001. PROC NATL ACAD SCI USA 98(8): 4587-92; Rudd PM et al., 2001. Science 291: 2370-76)。これは、ヒト生理機能が自己および非自己ポリペプチド、タンパク質およびタンパク質複合体、例えばMHCクラスIおよびII自体、抗体、および多数の他の重要な細胞内および細胞外タンパク質を識別するために利用する機構の1つである。また、病原性ウイルスおよび細胞内細菌および寄生虫が免疫応答を回避または破壊する、天然において既知の多数の機構が存在する。そのほとんどには、MHCクラスIおよびクラスII表示の調節および/または妨害が関与する。多数のこれらの系では、宿主および/またはその免疫系および病原体および/またはその免疫回避策の共進化がはっきりと認められる(Brodsky FM et al., 1999. Immunol. Rev. 168: 199-215; Bennett EM et al., 1999. J Immunol. 162 (9): 5049-52)。
例えば、アデノウイルスのE19タンパク質は、以下に挙げる2つの機構を通してMHCI発現を阻害することによりMHCクラスI(MHCI)抗原提示を妨害する:(i)MHCI重鎖に直接結合して、細胞質保持を達成(すなわちMHCI重鎖がペプチド積載区画および原形質膜に移動するのを妨害)し、ゆえにペプチド積載およびMHC表示を阻害する;(ii)細胞質の抗原プロセシングから生じるペプチドのペプチド積載区画へのペプチド転位に関与するTAPタンパク質に直接結合し、ゆえにペプチド積載を阻害する。
別の例はエプスタインバールウイルスである。このウイルスは抗原プロセシングを回避することによって抗原プロセシングおよび表示を回避するように進化した。Proc Natl Acad Sci USA 94,12616-21)。この論点に関しては多数の文献が存在する(例えばFruh K et al., 1997, Ploegh HL,1998; Tortorella D et al, 2000; Yewdell JW & Bennink JR, 1999; Hengel H & Kaszinowski UH, 1997; Peters VB & Sperber KE, 1999; Maksymowych WP & Kane KP, 2000; Yewdell JW & Hill AB, 2002を参照のこと)。
]
タンパク質改変−タンパク質ベースの治療薬(生物学的製剤)および他のタンパク質ベースの生成物に対する免疫応答の作用が非常にネガティブであることが多いことを考えると、タンパク質の免疫系回避を可能にする技術の開発には重要な意義がある。現在、市販されている製品および開発中の製品には、いくつかの技術が適用されている。このような技術には、例えばペグ化およびエピトープ同定およびその後の、例えば(点)変異(群)の導入のような分子生物学的方法の適用によるアミノ酸配列修飾が含まれる。
タンパク質のペグ化には、タンパク質表面に対するポリエチレングリコール(PEG)部分の結合が関与し、これによりタンパク質は受容体の認識を回避するので免疫系の視野から消える。PEG部分の化学構造により、ペグ化タンパク質の表面は構造的に水と紛らわしいものになる。さらにまた、ペグ化は抗原プロセシング(タンパク質分解による分解、上記参照のこと)を妨げることが実証されている(So T et al., 1996. Immunology Letters 49 (1-2): 91-97)。しかし、ペグ化は必ずしもペプチド提示を妨げない。その根拠は、ペグ化ペプチドがMHC分子の溝と安定な複合体を形成することが実証されているからである(Bouvier M & Wiley DC, 1996. Proc Natl Acad Sci U S A. 93(10): 4583-8)。この技術は非常に成功し、現在も非常に成功しているが、その適用可能性には限界がある:例えば、活性部位または重要なタンパク質−タンパク質相互作用部位中に存在するタンパク質上の免疫原性エピトープは、ほとんどの場合、免疫応答を回避するように改変することができない。
エピトープ同定およびその後のアミノ酸配列修飾もまた製品開発において広く適用されるアプローチである。免疫原性エピトープの同定は、物理的に、あるいは計算によって達成される。エピトープ同定の物理的方法には、例えば質量分析および組織培養/細胞技術が含まれる。計算によるアプローチは、抗原プロセシングから生じる可能性があり/生じるはずであろう、そしてMHCの溝における良好な結合特性を有する見込みがある非自己ペプチドを同定するために、抗原プロセシング、積載および表示、構造データおよび/またはプロテオームデータに関して得られる情報を利用する。次いで所望のタンパク質(群)の発現を指揮する遺伝子(群)に1つまたはそれ以上の変異を導入する。この変異は、その機能性を維持し、同時に、同定されたエピトープの免疫原性を低下または無効にする。
タンパク質修飾−抗原プロセシング中に可逆/除去可能ではなく、抗原プロセシングおよびペプチド積載を妨げるためにペプチド、タンパク質、またはタンパク質複合体の構造中に改変することができるはずのポリペプチド、タンパク質、およびタンパク質複合体の修飾のいくつかの例が既知である。例えば、上記グリコシル化およびペグ化である。
タンパク質架橋−また、分子内(intro-)および分子間でタンパク質を架橋することについて、多数の文献、および多様な方法が既知である。この場合、可変長のスペーサーアームを使用し、精製用の蛍光および官能基を使用するか、使用しない。これらの方法には、以下の架橋剤の使用が含まれる:ヘテロ二官能性架橋剤(例えばスクシンイミジルアセチルチオアセテート(SATA)、トランス−4−(マレイミジルメチル)シクロヘキサン−1−カルボキシラート(SMCC)、およびスクシンイミジル3−(2−ピリジルジチオ)プロピオナート(SPDP))、ホモ二官能性架橋剤(例えばスクシンイミジル3−(2−ピリジルジチオ)プロピオナート)、光反応性架橋剤(例えば4−アジド−2,3,5,6−テトラフルオロ安息香酸、STPエステル、ナトリウム塩(ATFB、STPエステル)、4−アジド−2,3,5,6−テトラフルオロ安息香酸、スクシンイミジルエステル(ATFB、SE)、4−アジド−2,3,5,6−テトラフルオロベンジルアミン、塩酸塩、ベンゾフェノン−4−イソチオシアネート、ベンゾフェノン−4−マレイミド、4−ベンゾイル安息香酸、スクシンイミジルエステル、N−((2−ピリジルジチオ)エチル)−4−アジドサリチルアミド(PEAS;AET)、チオール反応性架橋剤(例えばマレイミドおよびヨードアセトアミド)、アミン反応性架橋剤(例えばグルタルアルデヒド(glutaraldyde)、ビス(イミドエステル)、ビス(スクシンイミジルエステル)、ジイソシアネートおよび二酸クロライド)。アミン基と比較して、チオール基は非常に反応性であり、ほとんどのタンパク質において比較的まれであるため、チオール反応性架橋が概して好ましい。ポリペプチド、タンパク質、およびタンパク質複合体の構造中の適切な部位にチオール基が存在しない場合、いくつかのチオール化法の1つを使用してこれらを導入することができる。例えば、スクシンイミジルトランス−4−(マレイミジルメチル)シクロヘキサン−1−カルボキシラートを使用して、アミン部位にチオール反応基を導入することができる。
さらにまた、いくつかの酸化的架橋が既知である。例えば、非常に安定で、抗原プロセシング条件下で不可逆なジチロシン結合がある。
ジチロシン結合−ジチロシン(「DT」)結合はタンパク質酸化の産物として天然に存在する。この化学的過程は、DT結合の形成がこの結合の特性を利用するために発達した生理機能系の部分であるか(下記参照のこと)、あるいは酸化的ストレスおよび/または加齢の結果であり、後者は、ほとんどの場合、タンパク質の変性および不活性化を生じさせる(Kanwar & Balasubramanian, 2000, Biochemistry 39, 14976)。DT結合の形成は任意のおよびすべての生理的条件下で不可逆であると考えられ、ゆえに血清DT濃度は酸化的ストレスおよび加齢に関する有効な診断マーカーとして使用される(Galeazzi L et al., 1999, Amyloid 6: 7-13; Pennathur S et al., 1999. J. Biol. Chem. 274: 34621-28; Ziouzenkova O et al., 1999. J. Biol. Chem. 274: 18916-18924; Leeuwenbergh C et al., 1997. J. Biol. Chem. 272: 3520-3526; Abdelrahim M et al., 1997. J. Chromatogr., B: Biomed. Sci. 696: 175-82; Kato Y et al., 1998. FEBS Lett. 439: 231-234; van der Vliet A et al., 1998. J. Biol. Chem. 273: 31860-31866; Garcia-Castineiras S et al., 1987. Exp. Eye Res. 26: 464-476; Wells-Knecht MC et al., 1993. J. Biol. Chem. 268: 12348-52; Onorato JM et al., 1998. Ann. N. Y. Acad. Sci. 854: 277-90; Leeuwenbergh C et al., 1999. Free Radical Biol. Med. 27, 186-92)。いくつかのタンパク質がその機能的状態でDT結合を含有することが報告されており、その機能はDT結合の存在に依存するとも考えられている。しかし、このようなタンパク質は生物学的系にあまり豊富ではなく、これもまた、おそらくこの架橋の不可逆性に相関するものである。機能に関してDT結合を必要とすると考えられるタンパク質の例には、大動脈壁のニワトリエラスチン(LaBella F et al., 1967. Biochem. Biophys. Res. Commun. 26, 748)、昆虫のクチクラに存在するタンパク質であるレシリン(Andersen, SO, 1966. Acta Physiol. Scand. 66 Suppl., 263)、タケ細胞壁タンパク質(Totsune et al., 1993. Biochem. Biophys. Res. Commun. 194: 1025)、およびヒト歯周靭帯コラーゲン(Tenovuo, J. and Paunio, K. , 1979. Arch. Oral Biol. 24, 591)が含まれる。さらにまた、DT結合は食物、例えばパンにおいてグルテンの構造および機能の分子的基礎を提供する(Tilley KA, 2001. J. Agric. Food Chem 49, 2627)。
ゆえに、DT結合は有毒またはそれ自体が免疫原性ではありそうもなく、そして本発明の目的のために特に重要なのは、抗原プロセシング中にAPCのエンドサイトーシス小胞およびリソソーム中で非常に安定であることである。
DT結合は長さゼロの架橋であり、すなわち原子は付加されず、2個の水素プロトンが失われるだけであり、ゆえにポリペプチド、タンパク質、またはタンパク質複合体の活性、特異性、および構造上の統合性を保存する観点から、標的化DT架橋はタンパク質工学の有益な方法であると考えられる。さらにまた、(i)DT結合の形成を生じさせる酸化的条件下ではチロシル側鎖しか架橋を形成しないこと、および(ii)構造上非常に近接しているチロシル側鎖しかDT結合を形成しないことが示されている。ゆえにDT結合をポリペプチド、タンパク質、またはタンパク質複合体の構造内の特定位置に向けることが可能であり、特許され(Marshall CP et al.,米国特許出願第09/837,235号)、そして実証されている(Brown KC et al., 1998. Biochemistry 37: 4397-4406.)。
非標準アミノ酸側鎖を含有するポリペプチドおよびタンパク質−タンパク質合成法、構造予測アルゴリズム、および/または進化的(evolutionary)技術の方法および機能的特性に基づく選択方法が進歩向上するにつれて、下記の非標準アミノ酸を包含させることが、いよいよ経済的に実行可能なタンパク質ベースの生成物の製造方法になりつつある。非標準アミノ酸は反応基を含有してよく、ゆえにタンパク質ベースの生成物中に架橋されたアミノ酸側鎖を改変することは興味深いものになるであろう。
本発明の適用に適したポリペプチド、タンパク質およびタンパク質複合体−本明細書中に記載の方法によって改変することができるポリペプチド、タンパク質、およびタンパク質複合体は、少なくとも6アミノ酸、10アミノ酸、20アミノ酸、50アミノ酸、100アミノ酸、200アミノ酸、500アミノ酸、1000アミノ酸、2000アミノ酸、または少なくとも5000アミノ酸からなるポリペプチド、および2つまたはそれ以上のポリペプチドからなる、本発明の適用時に機能的に活性なままである複合体を含む。また、前記ポリペプチドをエンコードする核酸を提供する。本明細書中で使用される用語「機能的に活性な」物質とは、複合体の1つまたはそれ以上のポリペプチドと関連する1つまたはそれ以上の機能活性または機能性を示す物質を表す。このような活性または機能性は、ポリペプチド複合体の元来の、天然の、すなわち野生型の活性または機能性であってよく、あるいは設計および/または改変されていてもよい。このような設計および/または改変は、例えば、1つの、任意の、両方の、いくつかの、あるいはすべてのポリペプチドの部分からアミノ酸を欠失させるか、あるいはそれらの部分にアミノ酸を付加することによって、種々のタンパク質またはタンパク質複合体のポリペプチドを融合させることによって、翻訳後修飾を付加するか、あるいは欠失させることによって、化学修飾または付加物を付加することによって、あるいは以下に詳細に記載されるこの目的のための当技術分野において既知の任意の方法によって任意の他の変異を導入することによって達成してよい。
本組成物は、本質的に、複合体のポリペプチド、およびその断片、類似体、および誘導体から構成されていてよい。あるいはタンパク質およびその断片および誘導体は、他の成分、例えば希釈剤、例えば生理食塩水、製薬的に許容される担体または賦形剤、培地、等を含む組成物の成分であってよい。
特定の実施態様では、本発明は、少なくとも6アミノ酸、10アミノ酸、20アミノ酸、50アミノ酸、100アミノ酸、200アミノ酸、500アミノ酸、1000アミノ酸、2000アミノ酸、または少なくとも5000アミノ酸からなる、改変されたポリペプチドまたはポリペプチド複合体の断片を提供する。
ポリペプチド誘導体および類似体−タンパク質の誘導体または類似体には、タンパク質またはその断片に実質的に相同な(例えば、種々の実施態様において、同一サイズのアミノ酸または核酸配列に対して、あるいは例えば当技術分野において既知のコンピュータホモロジープログラムによってアライメントが行われる場合のアライメント対象の配列と比較された場合に、少なくとも40%または50%または60%または70%または80%または90%または95%同一性の)領域を含むそのような分子または、高ストリンジェント、中ストリンジェント、または低ストリンジェント条件下でそのエンコード核酸がコーディング遺伝子配列にハイブリダイズ可能であるそのような分子が含まれる。
さらに、配列内の1つまたはそれ以上のアミノ酸残基を、機能的等価物として作用し、サイレントな変化を生じさせる、類似の極性の別のアミノ酸によって置換することができる。配列内のアミノ酸に対する置換物は、該アミノ酸が属するクラスの他のメンバーから選択してよい。例えば、無極性(疎水性)アミノ酸には、アラニン、ロイシン、イソロイシン、バリン、プロリン、フェニルアラニン、トリプトファンおよびメチオニンが含まれる。極性の中性アミノ酸には、グリシン、セリン、スレオニン、システイン、チロシン、アスパラギン、およびグルタミンが含まれる。正の荷電(塩基性)アミノ酸には、アルギニン、リシンおよびヒスチジンが含まれる。負の荷電(酸性)アミノ酸には、アスパラギン酸およびグルタミン酸が含まれる。このような置換は、一般に、保存された置換であると理解される。
本発明の適用によって改変される対象の複合体のポリペプチドについての誘導体および類似体は、当技術分野において既知の種々の方法によって製造することができる。その生産を導く操作は、遺伝子またはタンパク質レベルで行うことができる。例えば、当技術分野において既知の多数のストラテジーのいずれかによって、クローニングされている遺伝子配列を修飾することができる。
異なるタンパク質のアミノ酸配列に対してペプチド結合によってそのアミノまたはカルボキシ末端が連結されている、本発明による改変対象の複合体の1つまたはいくつか(複数)のポリペプチド、または(好ましくは、改変対象のタンパク質複合体の少なくとも1ドメイン、または該タンパク質の少なくとも6、好ましくは少なくとも10アミノ酸からなる)その断片、誘導体、類似体を含むキメラポリペプチドを作成することができる。このようなキメラポリペプチドは任意の既知の方法によって製造することができる。この方法には以下に挙げるものが含まれる:(異なるポリペプチドのコード配列にインフレームで連結されているポリペプチドコード配列を含む)該ポリペプチドをエンコードする核酸を組換え発現させる方法;所望のアミノ酸配列をエンコードする適切な核酸配列を適正なコーディングフレームにおいて相互に連結し、そしてキメラ産物を発現させる方法;および、例えばペプチドシンセサイザーを使用してタンパク質を合成する技術。
タンパク質レベルでのタンパク質配列の操作−本発明の範囲内には、翻訳または合成中またはその後に、例えば架橋、グリコシル化、アセチル化、リン酸化、アミド化、既知の保護/ブロック基による誘導体化、タンパク質分解による分解、等によって特別に修飾されているポリペプチド、ポリペプチド断片、または他の誘導体または類似体が含まれる。既知の技術によって任意の多数の化学修飾を実施してよい。この技術には、限定されないが、以下の物質による特異的な化学分解、臭化シアン、トリプシン、キモトリプシン、パパイン、V8プロテアーゼ、NaBH4、アセチル化、ホルミル化、酸化、還元、ツニカマイシン存在下での代謝的合成、等が含まれる。さらに、本発明の方法を使用して安定化することができるポリペプチド、ポリペプチド断片、または他の誘導体または類似体は、化学的に合成することができる。例えば、ペプチドシンセサイザーを使用して、タンパク質の部分に相当するペプチドを合成することができる。さらにまた、所望であれば、ある複合体の1つの、任意の、両方の、いくつかの、あるいはすべてのポリペプチドの配列中に置換および/または付加物として非標準アミノ酸または化学的なアミノ酸類似体を導入することができる。
非標準(non-classical)アミノ酸には、限定されないが、一般的なアミノ酸のD異性体、フルオロ−アミノ酸、デザイナーアミノ酸、例えばβ−メチルアミノ酸、Cγ−メチルアミノ酸、Nγ−メチルアミノ酸、およびアミノ酸類似体全般が含まれる。非標準アミノ酸の例には、以下に挙げるものが含まれる:α−アミノカプリル酸、Acpa;(S)−2−アミノエチル−L−システイン/HCl、Aecys;アミノフェニルアセテート、Afa;6−アミノヘキサン酸、Ahx;γ−アミノイソ酪酸およびα−アミノイソ酪酸(α-aminoisobytyric acid)、Aiba;アロイソロイシン、Aile;L−アリルグリシン、Alg;2−アミノ酪酸、4−アミノ酪酸、およびα−アミノ酪酸、Aba;p−アミノフェニルアラニン、Aphe;b−アラニン、Bal;p−ブロモフェニルアラニン、Brphe;シクロヘキシルアラニン、Cha;シトルリン、Cit;β−クロロアラニン、Clala;シクロロイシン、Cle;p−クロロフェニルアラニン(p-cholorphenylalanine)、Clphe;システイン酸、Cya;2,4−ジアミノ酪酸、Dab;3−アミノプロピオン酸および2,3−ジアミノプロピオン酸、Dap;3,4−デヒドロプロリン(3,4-dehydroproline)、Dhp;3,4−ジヒドロキシルフェニルアラニン、Dhphe;p−フルオロフェニルアラニン(p-flurophenylalanine)、Fphe;D−グルコサミン酸(D-glucoseaminic acid)、Gaa;ホモアルギニン、Hag;δ−ヒドロキシリシン/HCl、Hlys;DL−β−ヒドロキシノルバリン、Hnvl;ホモグルタミン、Hog;ホモフェニルアラニン、Hoph;ホモセリン、Hos;ヒドロキシプロリン、Hpr;p−ヨードフェニルアラニン、Iphe;イソセリン、Ise;α−メチルロイシン、Mle;DL−メチオニン−S−メチルスルホニウムクロライド(DL-methionine-S-methylsulfoniumchloide)、Msmet;3−(1−ナフチル)アラニン、1Nala;3−(2−ナフチル)アラニン、2Nala;ノルロイシン、Nle;N−メチルアラニン、Nmala;ノルバリン、Nva;O−ベンジルセリン、Obser;O−ベンジルチロシン、Obtyr;O−エチルチロシン、Oetyr;O−メチルセリン、Omser;O−メチルスレオニン、Omthr;O−メチルチロシン、Omtyr;オルニチン、Orn;フェニルグリシン;ペニシラミン、Pen;ピログルタミン酸、Pga;ピペコリン酸、Pip;サルコシン、Sar;t−ブチルグリシン;t−ブチルアラニン;3,3,3−トリフルオロアラニン(3,3,3-trifluroalanine)、Tfa;6−ヒドロキシドーパ、Thphe;L−ビニルグリシン、Vig;(−)−(2R)−2−アミノ−3−(2−アミノエチルスルホニル)プロパン酸ジヒドロキソクロライド(dihydroxochloride)、Aaspa;(2S)−2−アミノ−9−ヒドロキシ−4,7−ジオキサノナン酸、Ahdna;(2S)−2−アミノ−6−ヒドロキシ−4−オキサヘキサン酸、Ahoha;(−)−(2R)−2−アミノ−3−(2−ヒドロキシエチルスルホニル)プロパン酸、Ahsopa;(−)−(2R)−2−アミノ−3−(2−ヒドロキシエチルスルファニル)プロパン酸、Ahspa;(2S)−2−アミノ−12−ヒドロキシ−4,7,10−トリオキサドデカン酸、Ahtda;(2S)−2,9−ジアミノ−4,7−ジオキサノナン酸、Dadna;(2S)−2,12−ジアミノ−4,7,10−トリオキサドデカン酸、Datda;(S)−5,5−ジフルオロノルロイシン、Dfnl;(S)−4,4−ジフルオロノルバリン、Dfnv;(3R)−1−1−ジオキソ−[1,4]チアジアン−3−カルボン酸((3R)-1-1-dioxo-[1,4]thiaziane-3-carboxylic acid)、Dtca;(S)−4,4,5,5,6,6,6−ヘプタフルオロノルロイシン、Hfnl;(S)−5,5,6,6,6−ペンタフルオロノルロイシン、Pfnl;(S)−4,4,5,5,5−ペンタフルオロノルバリン、Pfnv;および(3R)−1,4−チアジナン−3−カルボン酸、Tca。さらにまた、該アミノ酸はD(右旋性)またはL(左旋性)であり得る。標準および非標準アミノ酸のレビューに関しては、Sandberg et al.(Sandberg M. et al. J. Med. Chem. 41(14): pp. 2481-91, 1998)を参照のこと。
分子生物学的方法−本発明の方法によって改変される対象の1つまたはそれ以上のポリペプチドをエンコードする核酸が提供される。複合体のポリペプチド、その誘導体、類似体、および/またはキメラ(chimers)は、当技術分野において既知の任意の方法により、それらをエンコードするDNA配列をインビトロまたはインビボで発現させることによって作成することができる。本発明の方法による安定化対象である複合体の1つの、任意の、両方の、いくつかの、あるいはすべての誘導体、類似体、および/またはキメラをエンコードする核酸は、機能的に活性な分子を提供する置換、付加(例えば挿入)または欠失により該ポリペプチドまたはポリペプチド群をエンコードする核酸配列を改変することによって作成することができる。本配列は、制限エンドヌクレアーゼ(群)を用いて適切な部位で切断し、次いで所望であればさらに酵素によって修飾し、単離し、そしてインビボまたはインビトロで連結することができる。さらに、インビトロまたはインビボで核酸配列を変異させて、翻訳、開始、および/または終止配列を創出および/または破壊するか、あるいはコード領域に変異(variations)を創出し、ならびに/あるいは新規制限エンドヌクレアーゼ部位を形成させるか、あるいは既存の制限エンドヌクレアーゼ部位を破壊して、以後のインビトロ修飾を容易にすることができる。ヌクレオチドコード配列の縮重のために、改変対象の複合体の1つの、任意の、両方の、いくつかの、あるいはすべてのポリペプチドと実質的に同一のアミノ酸配列をエンコードする多数の異なる核酸配列を本発明の実施において使用してよい。これらには、配列内で、同一アミノ酸、または機能的に等価なアミノ酸残基をエンコードし、ゆえに「サイレントな」(機能または表現型的に実際的な影響がない)変化を生じさせる異なるコドンの置換により改変されているドメイン全体または部分を含むヌクレオチド配列が含まれ得る。当技術分野において既知の任意の変異誘発技術を使用することができる。この技術には、限定されないが、化学的変異誘発、例えばQuikChange Site-Directed Mutagenesis Kit(Stratagene)を使用するインビトロ部位特異的変異誘発、等が含まれる。
免疫回避技術の適用
タンパク質修飾−ポリペプチド、タンパク質およびまたはタンパク質複合体を、インビボおよび/または抗原プロセシングの条件下で修飾が不可逆であるように化学的に修飾して、免疫原性であると同定される無修飾タンパク質のエピトープ(上記参照のこと)がもはやMHCII分子によって表示されず、ゆえにもはや免疫原性ではないようにする。このような不可逆な修飾には、例えば限定されないが、架橋、例えば限定されないが、生成架橋、例えば限定されないが、アミンおよび/またはチオール基と反応するホモおよびヘテロ二官能性架橋物質、光反応性架橋試薬の使用から生じる架橋、上記のようにポリペプチド、タンパク質、またはタンパク質複合体の構造中に包含されている非標準アミノ酸間で形成されてよい任意の架橋、および任意の酸化的架橋、例えば限定されないが、上記ジチロシン結合が含まれるであろう。
これらの修飾は、ポリペプチド、タンパク質、およびタンパク質複合体の構造における、該分子/複合体の所望の特異性および/または活性が維持されるか、あるいは所望の特異性および/または活性が部分的に該修飾の結果であるような部位に配置/標的化される。あるいは、化学的、物理的、および/または機能的特性に基づいて、所望の修飾を有するタンパク質および有さないタンパク質を含む修飾および無修飾タンパク質の混合物から、所望の修飾を有するポリペプチド、タンパク質、および/またはタンパク質複合体を単離してよい。このような特性には、例えば限定されないが、分子量、分子体積、任意およびすべてのクロマトグラフィー特性、任意のすべての形式の電気泳動における移動度、任意およびすべての生化学的特性、蛍光ならびに任意およびすべての他の生物物理学的特性、諸濃度の溶液中の他の分子(例えばイオン)の存在または不存在下での水性溶液、(有機)溶媒、および/または混成溶液中の溶解度、モノおよび/またはポリクローナル抗体に対する親和性、以下の物質に対する親和性、受容体、他のタンパク質、DNA、RNA、脂質、他の生体−および非生体−有機分子および複合体、無機分子および複合体、イオン、任意およびすべての構造上の特性、酵素的、免疫学的、組織培養的、診断的、医薬的、および任意の他の活性または活性群、および多数の他の特性が含まれてよい。
改変、阻害、または妨害対象の、APCにおける標的生物学的プロセス−本発明は、APC表面でのMHC拘束性抗原提示、Tヘルパー細胞活性化、および体液性免疫応答の誘発を導く、APCにおける生物学的プロセスを阻害および/または改変する方法を提供する。本発明の適用によって影響を受ける具体的な生物学的プロセスは以下に挙げるものである:
抗原プロセシング、すなわちAPCのエンドソーム/リソソーム区画におけるタンパク質分解による分解;
HLA−DM媒介性のペプチド積載;
エキソペプチダーゼ媒介性のタンパク質分解による、「ダングリング」配列、すなわちMHCの溝の片側を超えて伸長している配列の分解(「レトロフィッティング」、上記参照のこと);
HLA−DM媒介性のペプチド編集;
T細胞シグナル伝達複合体の組立ておよび活性化。
発明を適用することができる製品−本発明は、任意およびすべてのタンパク質ベースの製品(生成物)であって、(i)免疫原性であるか、あるいは免疫原性エピトープを有するタンパク質ベースの製品、および(ii)治療薬(治療用物質)、診断薬(診断用物質)、食物または洗剤添加物、工業用酵素としてのその効力に関して、ならびに市場において、該免疫原性からネガティブな結果をこうむるタンパク質ベースの製品(上記参照のこと)に有意義に適用される。適用が円滑であるのは、上記のように当業者に既知の任意の方法を使用して同定可能であるか、あるいは同定された個別の免疫原性エピトープを有する製品に本技術が適用される場合である。本発明を適用可能なタンパク質および/またはタンパク質誘導体は、任意のカテゴリーのタンパク質ベースの製品、例えば治療用および診断用タンパク質、製品、例えば限定されないが食物および洗剤に含まれるタンパク質、製品、例えば限定されないが繊維および紙、等の製造工程において使用されるタンパク質、および工業生産において重要なタンパク質、例えば生体触媒、および任意の前記タンパク質の任意の誘導体に分類してよい。
治療用製品−本発明を適用可能な治療用のタンパク質ベースの製品は、例えば、標的細胞の表面上の受容体に結合し、そしてそれを活性化することによって、生化学的シグナル伝達カスケード、および細胞応答および生理学的反応をトリガー/誘発するサイトカインとして作用してよい。サイトカインの非限定的な例には、任意のインターフェロン、任意のインターロイキン、NFG/TGFファミリーのメンバー(例えばNGF、TGF、BDNF、NT−3、NT−4/5、NT−6、TRAIL、OPG、およびFasL)、任意のコロニー刺激因子(例えばM−CSF、G−CSF、およびGM−CSF)、任意のFGFファミリー、インシュリンファミリーの任意のメンバー、EGFおよび関連サイトカイン、VEGF、およびPDGFおよび関連サイトカインが含まれる。一方では、本発明を適用可能な、治療用の、タンパク質ベースの製品は、サイトカイントラップとして作用してよい。サイトカイントラップは、サイトカイン受容体の細胞外ドメインを含むタンパク質構築物であり、内因性サイトカインに結合し、それを隔離し、そして失活させる。サイトカイントラップの非限定的な例には、IL−1、IL−4/13、およびVEGFトラップ(Regeneron Inc.)が含まれる。
また、本発明を適用可能な治療用のタンパク質ベースの製品は、免疫グロブリンベースの製品であってよい。このような製品は完全な免疫グロブリン分子複合体であってよく、あるいはその断片だけからなるものであってよい。このような断片は、補体結合ドメインを有するFc断片および補体結合ドメインを有さないFc断片、Fabおよび/またはF(ab)2断片、当業者に既知の任意の方法によって安定化されたFv断片、例えば単鎖Fv断片(「scFv」)、ジスルフィドFv断片(「dsFv」)、および/または同時に適用される方法の任意の組み合わせを含有してよい。
本発明を適用可能な他の製品は、触媒活性を有するポリペプチド、タンパク質およびタンパク質複合体−酵素−代用血液製品、例えば限定されないが、ヘモグロビンおよび因子IIX、細胞外および細胞内基質タンパク質、ペプチドホルモン、および天然に存在し、ならびに/あるいは別の様式で発生し、選択され、ならびに/あるいは設計された任意の他のポリペプチド、タンパク質、タンパク質複合体であってよい。
さらにこのような製品は、部分的に、例えば完全な免疫グロブリンまたはその1つまたはそれ以上のドメインまたはセグメント、アルブミン、または任意の細胞外基質タンパク質分子および/または複合体からなる融合タンパク質であってよい。このような製品は、例示的に、所望の活性、例えば酵素活性またはサイトカイン(cytokinetic)活性を有するタンパク質ドメインまたはセグメント(「エフェクタードメイン」)を、融合タンパク質またはタンパク質複合体を標的に向けるドメイン、例えば免疫グロブリン分子の可変、抗原結合ドメイン(Fv断片)または細胞外基質結合ドメイン(「ターゲティングドメイン」)と融合させることによって、特定の分子、複合体、細胞、組織、および/または器官を標的化されていてよい。表1には、本発明の適用で利益を受ける可能性がある、認可済みの治療用製品が列挙されている。
診断用製品−また、経口、注射、吸入、または当技術分野において既知の任意の他の許容される方法によって、診断目的で患者に投与されるタンパク質ベースの製品は、本発明を適用可能なポリペプチド、タンパク質、およびタンパク質複合体のサブセットを構成する。これらの製品は、例えば、シグナルまたはトレーサーを標的の特定組織、器官、腫瘍、または任意の他の身体部分に向けてよい。そしてその使用により、異常、症状、および疾患を可視化および診断することができる。また、該製品は、上記のように有害な作用を有する免疫応答を誘発する可能性がある。これらの製品は、任意の上記カテゴリーのポリペプチド、タンパク質、タンパク質複合体、および/またはその誘導体ベースであり得る。
他の製品−食品、洗剤、および任意の他の消費者製品の成分として使用され、あるいは任意の他の様式において皮膚またはヒト身体の任意の他の器官に摂取、吸入、または接触させることができ、ならびに上記のように有害な作用を有する免疫応答を生じさせることができるか、あるいは生じさせるかもしれないポリペプチド、タンパク質およびタンパク質複合体は、本発明を適用可能なポリペプチド、タンパク質、およびタンパク質複合体のサブセットを構成する。
表2:6クラスの免疫原性バイオ医薬品
Figure 2007537133
出典「バイオ医薬品の免疫原性、欧州における展望(Immunogenicity of biopharmaceutical, the European perspective)」Huub Schelecken提供。
改変対象のポリペプチド、タンパク質およびタンパク質複合体の取得−当業者に既知の任意の方法を使用して、本発明の方法に基づく改変の対象であるポリペプチドまたはポリペプチド複合体を取得してよい。
ポリペプチドの精製−本発明の方法を使用して改変される対象の複合体のポリペプチドまたはポリペプチド群は、例えば当技術分野において既知の任意のタンパク質精製法によって取得してよい。このような方法には、限定されないが、クロマトグラフィー(例えばイオン交換、アフィニティー、および/またはサイズ分別カラムクロマトグラフィー)、硫安塩析、遠心分離、溶解度差、またはタンパク質精製に関する任意の他の標準的技術による方法が含まれる。安定化対象の所望の複合体の複合体の1つの、任意の、両方の、いくつかの、あるいはすべてのポリペプチドを生産する任意の供給源からポリペプチドを精製してよい。例えば、ポリペプチドを精製してよい対象の供給原には、原核生物、真核生物、単細胞、多細胞、動物、植物、真菌、脊椎動物、哺乳類、ヒト、ブタ、ウシ、ネコ、ウマ、イヌ、トリ、組織培養細胞、および任意の他の天然、修飾型、改変型、または任意の別の形式の天然に存在しない供給源が含まれる。純度は様々であってよいが、諸実施態様では、精製タンパク質は総タンパク質mgの50%、75%、85%、95%、99%、または99.9%を超える。ゆえに、粗製の細胞ライセートの場合は精製タンパク質には含まれないであろう。
精製タンパク質またはタンパク質複合体に変異を導入する必要がある場合、タンパク質(群)をマイクロシークエンシングして部分的アミノ酸配列を決定することができる。そして部分的アミノ酸配列を、当技術分野において周知のライブラリスクリーニングおよび組換え核酸法とともに使用して、所望の変異を導入するのに必要なクローンを単離することができる。
ポリペプチドをエンコードするDNAの発現
DNAの供給源
分子クローニング用の核酸供給源として任意の原核細胞または真核細胞を利用することができる。改変対象のタンパク質またはドメインをエンコードする核酸配列は、原核生物、真核生物、単細胞、多細胞、動物、植物、真菌、脊椎動物、哺乳類、ヒト、ブタ、ウシ、ネコ、ウマ、イヌ、トリ、等を含む供給源から単離してよい。
当技術分野において既知の標準的手順によって、クローニングされているDNA(例えばDNA「ライブラリ」)から、化学合成によって、cDNAクローニングによって、所望の細胞から精製されたゲノムDNAまたはその断片のクローニングによって、DNAを取得してよい(例えばSambrook et al., 1985. Glover (ed.). MRL Press, Ltd., Oxford, U. K.; vol. I, IIを参照のこと)。また、細胞性RNAを逆転写することによってDNAを取得してもよい。これは当技術分野において既知の任意の方法、例えばランダムプライマーまたはポリAプライマーによる逆転写によって調製される。当技術分野において既知の任意の方法、例えばPCRおよび5’RACE技術を使用して該DNAを増幅してもよい(Weis J.H. et al.,, 1992. Trends Genet. 8(8): 263-4; Frohman MA,, 1994. PCR Methods Appl. 4(1): S40-58)。
いずれの供給源であれ、遺伝子は、該遺伝子の増産に適切なベクターに分子クローニングが好ましい。さらに、諸制限酵素を使用して特定部位でDNAを切断してよく、マンガンの存在下でDNA分解酵素を使用してよく、あるいは例えば超音波処理によってDNAを物理的に剪断することができる。そして、標準的技術、例えばアガロースおよびポリアクリルアミドゲル電気泳動およびカラムクロマトグラフィーにより、線状DNA断片をサイズにしたがって分離することができる。
クローニング
DNA断片を作成した後、多数の様式で、所望の遺伝子を含有する特定DNA断片の同定を達成してよい。例えば、所望の配列に特異的な2オリゴヌクレオチドを使用するか、あるいは所望の配列に特異的な単一オリゴヌクレオチドを使用してよい、例えば5’RACE系を使用するPCR技術を使用することによってクローンを単離することができる(Cale JM et al., 1998. Methods Mol. Biol. 105: 351-71; Frohman MA, 1994. PCR Methods Appl. 4(1): S40-58)。このオリゴヌクレオチドは変性(degenerate)ヌクレオチド残基を含有してもしなくてもよい。あるいは、遺伝子の部分またはその特異的RNAまたはその断片が入手可能であり、精製および標識可能であれば、標識されたプローブに対する核酸のハイブリダイゼーションによって、生成DNA断片をスクリーニングしてよい(例えばBenton and Davis, 1977. Science 196(4286): 180-2)。プローブに対して実質的な相同性を有するDNA断片をハイブリダイズする。また、(複数回の)制限酵素消化を行い、入手可能であれば既知の制限酵素地図にしたがって予想されるサイズと断片サイズを比較することによって、適切な断片を同定することが可能である。遺伝子の性質に基づいて追加選択を実施することができる。
所望の遺伝子の存在は、その発現産物の物理的、化学的、または免疫学的特性に基づくアッセイによって検出してもよい。例えば、cDNAクローン、または適正なmRNAをハイブリッド選択(hybrid-select)するDNAクローンを選択し、発現させて、例えば、あるタンパク質に関して既知のデータと同様または同一の電気泳動による移動度、等電点電気泳動挙動、タンパク質分解による消化地図、ホルモン性または他の生物学的活性、結合活性、または抗原性を有するタンパク質を製造することができる。
既知のタンパク質に対する抗体を使用し、例えばELISA(酵素結合免疫吸着検定)型の手順において、発現された推定タンパク質に対する標識された抗体の結合により他のタンパク質を同定してよい。さらに、既知のタンパク質に特異的な結合タンパク質を使用し、インビトロまたは適切な細胞系、例えば酵母二重ハイブリッド系において、該タンパク質に対する結合により他のタンパク質を同定してよい(例えばClemmons DR, 1993. Mol. Reprod. Dev. 35: 368-74; Loddick SA, 1998 et al. Proc. Natl. Acad. Sci., U.S.A. 95: 1894-98)。
また、核酸ハイブリダイゼーション、次いでインビトロ翻訳を使用するmRNA選択によって遺伝子を同定することができる。この手順では、断片を使用して、ハイブリダイゼーションにより相補mRNAを単離する。該DNA断片は、入手可能な、別の種(例えばショウジョウバエ、マウス、ヒト)の精製DNAであってよい。単離されたmRNAの単離産物のインビトロ翻訳産物を免疫沈降分析または機能アッセイ(例えばインビトロでの凝集能、受容体に対する結合、等)に付して、該mRNAを同定し、したがって所望の配列を含有する相補DNA断片を同定する。
さらに、タンパク質を特異的な標的にする固定された抗体に対する、細胞から単離されたポリソームの吸着によって特定mRNAを選択してよい。選択されたmRNA(吸着されたポリソーム由来)を鋳型として使用し、放射性標識されたcDNAを合成することができる。そして、放射性標識されたmRNAまたはcDNAをプローブとして使用し、他のゲノムDNA断片のうちからDNA断片を同定してよい。
ゲノムDNAを単離する代替法には、既知の配列から遺伝子配列そのものを化学的に合成する方法または、タンパク質をエンコードする、mRNAに対するcDNAを作成する方法が含まれる。例えば、遺伝子のcDNAクローニング用のRNAを、該遺伝子を発現する細胞から単離することができる。
ベクター
次に、同定および単離された遺伝子を適切なクローニングまたは発現ベクターに挿入することができる。当技術分野において既知の多数のベクター−宿主系を使用してよい。ベクター候補には、プラスミドまたは修飾型ウイルスが含まれるが、ベクター系は、使用される宿主細胞と適合するものでなければならない。このようなベクターには、バクテリオファージ、例えばラムダ誘導体、またはプラスミド、例えばPBR322またはpUCプラスミド誘導体またはBluescriptベクター(Stratagene)が含まれる。
クローニングベクターへの挿入は、例えば、相補的な付着末端を有するクローニングベクター中にDNA断片を連結することによって達成することができる。しかし、クローニングベクター中にDNAの寸断に使用される相補的な制限部位が存在しなければ、DNA分子の末端を酵素によって修飾してよい。あるいは、DNA末端にヌクレオチド配列(リンカー)を連結することによって任意の望ましい部位を作り出してよい;これらの連結型リンカーは、制限エンドヌクレアーゼ認識配列をエンコードする特定の化学合成オリゴヌクレオチドを含んでよい。さらにまた、遺伝子および/またはベクターを増幅してよい。この増幅には、PCR技術および、所望の相補的な付着末端を提供する追加のヌクレオチドを含有する、該遺伝子および/またはベクターの末端に特異的なオリゴヌクレオチドを使用する。代替法では、切断されたベクターおよび遺伝子をホモポリマーテーリングによって修飾してよい(Cale JM et al., 1998. Methods Mol. Biol. 105: 351-71)。形質転換、トランスフェクション、感染、エレクトロポレーション、等によって宿主細胞中に組換え分子を導入し、多数コピーの該遺伝子配列を生成させることができる。
DNAの調製
特定の実施態様では、単離された遺伝子、cDNA、または合成DNA配列を包含する組換えDNA分子で宿主細胞を形質転換することにより、多数(複数)コピーの該遺伝子の生成が可能になる。ゆえに、形質転換体を培養し、形質転換体から組換えDNA分子を単離し、そして必要な場合には、単離された組換えDNAから挿入遺伝子を回収することによって、大量の遺伝子を取得してよい。
本発明によって提供される配列には、ネイティブのタンパク質において認められる配列と実質的に同一のアミノ酸配列をエンコードするヌクレオチド配列、および機能的に等価なアミノ酸を有する、エンコード対象のアミノ酸配列、ならびに、誘導体および類似体に関して以下に記載されるような、他の誘導体または類似体をエンコードする配列が含まれる。
遺伝子およびタンパク質の構造
タンパク質のアミノ酸配列は、DNA配列から導き出すか、あるいは例えば自動アミノ酸シーケンサーを用いるタンパク質のダイレクトシークエンシングによって得ることができる。
親水性の分析によってタンパク質配列をさらに特徴付けすることができる(Hopp TP & Woods KR, 1981. Proc. Natl. Acad. Sci., U.S.A. 78: 3824)。親水性プロファイルを使用して、タンパク質の疎水性および親水性領域ならびに該領域をエンコードする遺伝子配列の対応する領域を同定することができる。
また二次構造の分析(Chou PY & Fasman GD, 1974. Biochemistry 13(2): 222-45)を行って、特定の二次構造を呈するタンパク質の領域を同定することができる。また、操作、翻訳、および二次構造予測、オープンリーディングフレーム予測およびプロット、ならびに配列相同性の決定は、当技術分野において利用可能なコンピュータソフトウェアプログラムを使用して達成することができる。構造解析の他の方法には、X線結晶構造解析、核磁気共鳴分光法およびコンピュータモデリングが含まれる。
改変に適切な残基
ターゲティングストラテジー
当業者に既知の任意の方法を使用して、免疫原性のポリペプチド、タンパク質、またはタンパク質複合体のT細胞エピトープを同定し、この同定により該潜在T細胞エピトープは、タンパク質配列内のいずれかのペプチドであって、MHC分子の溝に結合して免疫系への提示が可能なペプチドであると定義してよい。 該エピトープ候補のMHC結合は、当業者に既知の任意の計算方法または物理的方法によって測定される。T細胞エピトープはT細胞受容体によって認識され、そしてMHC提示の関連で該エピトープに特異的なT細胞受容体を有するT細胞が存在すれば、該T細胞の活性化がトリガーされる。このような方法は、非限定的な例として、以下に挙げる方法に基づくものであってよい:Estell DA, 2003.(米国特許第6,642,011号,「ヒトプロテアーゼおよび製薬上の適用および非ヒトタンパク質のアレルゲン性の低減に関する該プロテアーゼの使用(Human protease and use of such protease for pharmaceutical applications and for reducing the allergenicity of non-human proteins)」)、Estell DA & Harding FA, 2001(米国特許第6,218,165号,「ヒトにおける低アレルゲン応答を有する変異タンパク質および該タンパク質の構築、同定および製造方法(Mutant proteins having lower allergenic response in humans and methods for constructing, identifying and producing such proteins)」)、PCT国際公開第WO-A-9852976号に記載の方法、計算アルゴリズム、例えば計算スレッディング法(computational threading methods)を使用するMHC結合ペプチドの同定(Altuvia et al., 1995. J. Mol. Biol. 249 244-250)、任意の物理的方法、例えば、タンパク質をAPCに曝露した際の表示ペプチドの質量分析、APCのエンドサイトーシス/リソソーム区画におけるタンパク質のタンパク質分解による分解に関与することが既知のプロテアーゼによって分解された標識および非標識型のポリペプチド、タンパク質、およびタンパク質複合体のクロマトグラフィーおよび/または電気泳動(electorphoretic)分析、APCを放射性または他の形式で標識されたタンパク質に曝露した際の表示ペプチドのクロマトグラフィーおよび/または電気泳動分析、T細胞活性化アッセイ、例えば限定されないが、T細胞増殖アッセイ(Adorini L et al., 1988. J. Exp. Med. 168: 2091; So T. et al., 1996. Immunol. Let. 49: 91-97)およびCTLL−2細胞の増殖応答アッセイによるIL−2または他のサイトカイン生産(Gillis S et al., 1978. J. Immunol. 120: 2027; So T. et al., 1996. Immunol. Let. 49: 91-97)およびペプチドの組換え発現、ペプチド合成、または酵素によるタンパク質分解をT細胞活性化アッセイおよび/または組織培養の方法と組み合わせた方法。
該免疫原性エピトープを含有する、抗原プロセシングから生じるペプチドに含有される残基を、分子生物学的、および/または化学的方法によって修飾する。この方法には、限定されないが、標的化または非標的化架橋、既知の保護/ブロック基使用および不使用の誘導体化および翻訳後修飾、酸化または還元、ホルミル化、アセチル化、アミド化、等が含まれる。特に、ポリペプチド、タンパク質およびタンパク質複合体を修飾すると、以下に挙げる効果に至る:
架橋すると、抗原プロセシング中のタンパク質分解によるそれらの完全分解が阻害される;
抗原プロセシングから生じるペプチドが修飾されると、MHCの溝にペプチド積載および/または結合されるための構造上の必要要件に不適合になる;
抗原プロセシングから生じるペプチドが修飾されると、その結果、MHCの溝に結合する親和性が低くなり、ゆえにHLA−DM感受性となり編集の対象になる;
抗原プロセシングから生じるペプチドが修飾されると、その結果、それらはエキソペプチダーゼ媒介性の「レトロフィッティング」のための構造上の必要要件に不適合になり、ゆえにHLA−DM感受性になる;
抗原プロセシングから生じるペプチドが修飾されると、その結果、それらはT細胞シグナル伝達複合体が組立てられおよび活性化されるための構造上の必要要件を妨害する。
ポリペプチド、タンパク質、およびタンパク質複合体は、それらが、架橋に応じてプロセシングされないか、あるいは不完全にしかプロセシングされず、ならびに抗原プロセシング中に、それらまたはその中間分解産物が、エンドペプチダーゼ活性およびタンパク質分解による分解のための構造上の必要要件を妨げる分子内構造および/またはフォールディングを取得または保持するように修飾してよい。例えば、このような構造および/またはフォールディングは、エンドペプチダーゼがプロテアーゼ分解部位にアクセスすることを妨害してよい。また、このような構造および/またはフォールディングは、MHCの溝におけるペプチド積載および/または高親和性の結合を妨げてもよい。あるいは、同構造および/またはフォールディングに起因し、したがってまた、不完全なプロセシングの結果として、生じるペプチドは「レトロフィッティング」されない可能性があり、そして「ダングリング」配列を保持するであろう。上記のように、これによりペプチドはHLA−DM感受性になり、編集の対象になる。
またポリペプチド、タンパク質、およびタンパク質複合体は、その抗原プロセシングから生じる修飾ペプチドが、MHCの溝における積載および/または高親和性の結合に関する構造上の必要条件を妨げる分子内構造を達成するように改変してもよい。特定の実施態様では、本発明の適用により、抗原プロセシングにおいて非線状ペプチドを生じさせ、これによりさもなければ架橋された残基がMHCの溝内に表示されるであろう架橋型ポリペプチド、タンパク質、またはタンパク質複合体を提供する。それによって、抗原プロセシングから生じるこれらの分子のタンパク質分解による断片は、
1つまたはそれ以上のペプチドループを含有するか;あるいは
架橋されたアミノ酸対から伸長する4ペプチドアームを有する架橋型ジペプチドである。
通常、MHCにおいて積載され、提示されるペプチドは線状である。上記いずれの場合でも、抗原プロセシングから生じる修飾ペプチドは、MHCの溝にペプチド積載および/または結合するための構造上の必要条件に不適合であるか、あるいはMHCの溝に対するその親和性が低下し、それによってHLA−DM感受性になる。
さらにまたポリペプチド、タンパク質、およびタンパク質複合体は、抗原プロセシング、およびMHCの溝へのペプチド積載は影響を受けないが、MHCの溝における修飾ペプチドの「レトロフィッティング」が阻害され、ダングリング配列が除去されないように修飾してよい。本発明の特定の実施態様では、抗原プロセシングから生じるペプチドが架橋されていて、そして結果として生じる上記構造が、エキソペプチダーゼ媒介性のレトロフィッティングのための構造上の必要要件に不適合である。上記のように、ダングリング配列によって該ペプチドはHLA−DM感受性になり、編集の対象になる。
最後に、抗原提示は影響を受けないが、表示ペプチドが、T細胞受容体媒介性のシグナル伝達複合体の組立てのための構造上の必要要件に不適合であり、ゆえにT細胞活性化が阻害または妨害されるように、ポリペプチド、タンパク質、およびタンパク質複合体を修飾してよい。
「HLA−DM感受性」ペプチドは、上記HLA−DMおよびHLA−DO媒介性の編集プロセスによって表示ペプチドのレパートリーから排除される。ペプチド表示が阻害または妨害された場合、ペプチド特異的T細胞活性化および、結果的に特異的体液性免疫応答もまた阻害または妨害される。
T細胞シグナル伝達が不完全に阻害された場合、活性型T細胞は、生物がペプチド特異的寛容を獲得することを媒介する。
タンパク質の活性および/または特異性の維持−当業者に既知の任意の方法を使用して、低下した免疫原性を有するタンパク質が、その活性および/または特異性を維持するか、あるいは修飾によって所望の活性または特異性を持つことを保証する修飾用の残基を同定し、選択し、ならびに/あるいは標的化してよい。あるいは上記のように、化学的、物理的、および/または機能的特性に基づいて、所望の修飾を有するタンパク質および有さないタンパク質を含む修飾および無修飾タンパク質の混合物から、低下した免疫原性および保持された活性および/または特異性を有する修飾ポリペプチド、タンパク質、および/またはタンパク質複合体を単離してよい。
DNAベクター構築物−ポリペプチド、または複合体の1つの、任意の、両方の、いくつかの、あるいはすべてのポリペプチド、またはその機能的に活性な類似体または断片または他の誘導体をコードするヌクレオチド配列は、適切な増殖(expansion)または発現ベクター、すなわち挿入されるタンパク質コード配列(群)の転写のみ、または転写および翻訳に必要なエレメントを含有するベクターに挿入することができる。またネイティブの遺伝子および/またはそのフランキング配列は必要な転写および/または翻訳シグナルを供給することができる。
ポリペプチドまたはペプチド断片をエンコードする核酸配列の発現を第二の核酸配列によって制御し、組換えDNA分子で形質転換された宿主においてポリペプチドが発現されるようにしてよい。例えば、当技術分野において既知の任意のプロモーター/エンハンサーエレメントによってポリペプチドの発現をコントールしてよい。
遺伝子発現をコントロールするのに使用してよいプロモーターには、例えば、SV40初期プロモーター領域、ラウス肉腫の3’末端反復配列に含有されるプロモーター、ヘルペスチミジンキナーゼプロモーター、メタロチオネイン遺伝子の制御配列;原核生物の発現ベクター、例えばβ−ラクタマーゼプロモーター、またはlacプロモーター;植物の発現ベクター、例えばノパリン合成酵素プロモーターまたはカリフラワーモザイクウイルス35S RNAプロモーター、および光合成酵素であるリブロース二リン酸カルボキシラーゼ(ribulose biphosphate carboxylase)のプロモーター;酵母または他の真菌由来のプロモーターエレメント、例えばGal4プロモーター、アルコール脱水素酵素プロモーター、ホスホグリセロールキナーゼプロモーター、アルカリホスファターゼプロモーター、および以下に挙げる動物の転写調節領域、これは組織特異性を示し、トランスジェニック動物において利用されている:膵腺房細胞において活性なエラスターゼI遺伝子調節領域(Swift et al., 1984. Cell 38: 639-46);膵臓ベータ細胞において活性な遺伝子調節領域(Hanahan D, 1985. Nature 315: 115-22)、リンパ球において活性な免疫グロブリン遺伝子調節領域(Grosschedl R et al., 1984. Cell; 38: 647-58)、精巣、乳房、リンパ球および肥満細胞において活性なマウス乳癌ウイルス調節領域(Leder A et al., 1986. Cell; 45: 485-95)、肝臓において活性なアルブミン遺伝子調節領域(Pinkert CA et al.,1987. Genes Dev. 1: 268-76)、肝臓において活性なアルファ−フェトプロテイン遺伝子調節領域(Krumlauf R et al., 1985. Mol. Cell. Biol. 5: 1639-48);肝臓において活性なアルファ1−アンチトリプシン遺伝子調節領域(Kelsey GD et al., 1987. Genes Dev. 1: 161-71)、骨髄性細胞において活性なベータ−グロビン遺伝子調節領域(Magram J et al., 1985 Nature 315: 338-40);脳のオリゴデンドロサイト細胞において活性なミエリン塩基性タンパク質遺伝子調節領域(Readhead C et al., 1987 Cell 48: 703-12);骨格筋において活性なミオシン軽鎖−2遺伝子調節領域(Shani M, 1985. Nature 314: 283-86)、および視床下部において活性な性腺刺激放出ホルモン遺伝子調節領域(Mason AJ et al., 1986. Science 234: 1372-78)が含まれる。
特定の実施態様では、遺伝子核酸に作動可能に連結されたプロモーター、1つまたはそれ以上の複製起点、および場合により、1つまたはそれ以上の選択用マーカー(例えば抗生物質耐性遺伝子)を含むベクターを使用する。細菌では、ベクター含有細菌選択用のlac応答系を発現系に含ませてよい。発現構築物は、例えばそれぞれの、あるいは任意のpGEXベクター(Pharmacia)の1制限部位にコード配列をサブクローニングすることによって作成することができる(Smith DB & Johnson KS, 1988. Gene 67: 31-40)。これによりタンパク質産物の発現が可能になる。
遺伝子挿入を含有するベクターは以下3つの一般的アプローチによって同定することができる:(a)DNA自体の、特定の1つまたはいくつかの属性の同定、例えば、制限エンドヌクレアーゼ処理によって生じる断片長、ダイレクトシークエンシング、PCR、または核酸ハイブリダイゼーション;(b)「マーカー(標識)」遺伝子機能の存在または不存在;および、ベクターが発現ベクターである場合、(c)挿入配列の発現。第一のアプローチでは、例えばシークエンシング、PCRまたは核酸ハイブリダイゼーションによって、挿入遺伝子に相同な配列を含むプローブを使用して、ベクターに挿入された遺伝子の存在を検出することができる。第二のアプローチでは、ベクター中の遺伝子挿入に起因する特定の「マーカー」遺伝子機能(例えばチミジンキナーゼ活性、抗生物質に対する耐性、形質転換表現型、バキュロウイルスにおける封入体(occlusion body)形成、等)の存在または不存在に基づいて、組換えベクター/宿主系を同定および選択することができる。例えば、遺伝子がベクターの標識遺伝子配列内に挿入されている場合、標識遺伝子機能の不存在によって、挿入を含有する組換え体が同定される。第三のアプローチでは、挿入配列を含有する組換え発現ベクターの発現産物をアッセイすることによって、組換え発現ベクターを同定することができる。このようなアッセイは、例えばインビトロアッセイ系におけるタンパク質の物理的または機能的特性、例えば抗タンパク質抗体との結合に基づくものであり得る。
特定の組換えDNA分子を同定および単離した後、当技術分野において既知のいくつかの方法を使用して、該分子を複製させてよい。適切な宿主系および培養条件を確立した後、組換え発現ベクターを複製させ、多量に調製することができる。使用可能な発現ベクターをいくつか挙げれば、ヒトまたは動物のウイルス、例えばワクシニアウイルスまたはアデノウイルス;昆虫ウイルス、例えばバキュロウイルス;酵母ベクター;バクテリオファージベクター(例えばラムダファージ)、およびプラスミドおよびコスミドDNAベクターが含まれる。
所望の配列の発現を指揮する組換えベクターを同定した後、遺伝子産物を分析することができる。これは該産物の物理的または機能的特性に基づくアッセイ、例えば該産物を放射性標識し、その後ゲル電気泳動、イムノアッセイ、等によって分析することによって達成する。
遺伝子発現およびタンパク質精製の系
種々の宿主−ベクター系を利用して、タンパク質コード配列を発現させてよい。これらには、例えば、ウイルス(例えばワクシニアウイルス、アデノウイルス、等)で感染させた哺乳類細胞系;ウイルス(例えばバキュロウイルス)で感染させた昆虫細胞系;微生物、例えば酵母ベクターを含有する酵母、またはバクテリオファージ、DNA、プラスミドDNA、またはコスミドDNAで形質転換された細菌が含まれる。ベクターの発現エレメントの強度および特異性は様々である。利用される宿主−ベクター系に応じて、いくつかの適切な転写および翻訳エレメントのうちのいずれかを使用してよい。
特定の実施態様では、プロテアーゼ欠損の、例えばIPTGを培地に加えることによって誘導可能な発現ベクターが使用される場合に、構成的発現レベルが低く、誘導される発現レベルが高い細菌において遺伝子を発現させてよい。
さらに別の特定実施態様では、シグナルペプチド、例えば、pelB細菌シグナルペプチドを用いて、ポリペプチド、または複合体の1つの、任意の、両方の、いくつかの、あるいはすべてのポリペプチドを発現させてよい。このシグナルペプチドはタンパク質を細菌ペリプラズムへ導くものである(Lei et al., 1987. J. Bacterol. 169: 4379)。あるいは、タンパク質に封入体を形成させ、その後再可溶化し、リフォールディングさせてよい(Kim SH et al., 1997. Mol. Immunol 34: 891)。
さらに別の実施態様では、ポリペプチド、または複合体の1つの、任意の、両方の、いくつかの、あるいはすべてのポリペプチドの断片であって、タンパク質の1つまたはそれ以上のドメインを含む断片を発現させる。以前に報告された、DNA断片をベクターに挿入するための任意の方法を使用して、適切な転写/翻訳調節シグナルおよびタンパク質コード配列からなるキメラ遺伝子を含有する発現ベクターを構築してよい。これらの方法には、インビトロ組換えDNAおよび合成技術およびインビボ組換え体(遺伝子組換え)が含まれるであろう。
さらに、挿入配列の発現を調節するか、あるいは所望の特定様式で遺伝子産物を修飾およびプロセシングする宿主細胞株を選択してよい。特定のプロモーターからの発現は特定の誘導物質の存在下で高めることができる;このように遺伝子改変ポリペプチドの発現をコントールしてよい。さらにまた、諸宿主細胞は、翻訳および翻訳後のプロセシングおよび修飾(例えばタンパク質のグリコシル化、リン酸化)に関して特徴的かつ特定の機構を有する。適切なセルラインまたは宿主系を選択して、発現される外来性ポリペプチド(群)の所望の修飾およびプロセシングを確保することができる。例えば、細菌系における発現を使用して、非グリコシル化コアタンパク質産物を生産させることができる。酵母における発現では、グリコシル化産物が生産される。哺乳類細胞における発現を使用して、異種性タンパク質の「ネイティブの」グリコシル化を保証することができる。さらにまた、種々のベクター/宿主発現系により、種々の程度のプロセシング反応を達成してよい。
本発明の他の実施態様では、ポリペプチドまたは、複合体の1つの、任意の、両方の、いくつかの、あるいはすべてのポリペプチド、および/またはその断片、類似体、または誘導体(群)を、融合タンパク質産物またはキメラタンパク質産物(例えば、ペプチド結合によって、異なるタンパク質の異種性タンパク質配列に連結されているタンパク質、断片、類似体、または誘導体)として発現させてよい。このようなキメラ産物は、当技術分野において既知の方法により、適正なコーディングフレームにおいて、所望のアミノ酸配列をエンコードする適切な核酸配列を相互に連結し、そして当技術分野において一般に知られている方法によって該キメラ産物を発現させることによって作成することができる。あるいは、タンパク質合成技術、例えばペプチドシンセサイザーの使用によって該キメラ産物を作成してもよい。
複合体のポリペプチド群は、同一の細胞において、同一または独立した転写および/または翻訳シグナルによって駆動される同一ベクター上で、あるいは別の発現ベクター上で、例えば同時トランスフェクションまたは同時形質転換および、例えば両ベクターの個別の選択マーカーに基づいてよい選択によって、一緒に発現させてよい。あるいは、複合体の1つの、任意の、両方の、いくつかの、あるいはすべてのポリペプチドを別々に発現させてもよい;これらは同一発現系または異なる発現系において発現させてよく、元のポリペプチドの断片、誘導体または類似体として個別または包括的に発現させてよい。
ポリペプチド、蛋白質、および蛋白質複合体の設計
上記のように、ひとたび、本発明を適用することができる蛋白質を調製し、発現させ、かつ/または精製したならば、化学的改変を利用しMHCでの免疫原性ペプチド表示の提示、および/または前記免疫原性エピトープに特異的なTヘルパー細胞の活性化を回避することができる。上記の標的戦略および蛋白質修飾法のいずれか1つまたは任意の組合せを使用してもよい。あるいは、修飾を標的としなくてもよく、修飾および未修飾蛋白質の混合物から所望の修飾、活性、および/または特異性を有する蛋白質を単離してよい。
Dt結合形成 − 具体的な一実施形態では、上記のポリペプチド、蛋白質、または蛋白質複合体の構造中の特定の残基に対してジチロシン(「DT」)結合/架橋が標的となっており、この場合には例えばそれら残基対が近接しているのでDT結合が形成されまたは形成されると予想される。標的残基対にチロシル側鎖が既に存在するが、例えばそれらが互いに十分近接していないために他のチロシル側鎖によるDT結合が形成されないまたは形成されないと予想される蛋白質でも、それとのDT結合が標的となる。これら以外の場合は、ポリペプチドおよび蛋白質に設計を加えることにより、標的残基対にチロシル側鎖を存在させ、かつDT架橋を形成させたくない残基ではチロシル側鎖の少なくとも1個をフェニルアラニン側鎖に置換する(Marshall CPら、米国特許出願第09/837,235号)。これは、例えば、ポリペプチド、蛋白質、または複合体蛋白質の発現を指揮する遺伝子中のチロシンに、当業者に公知の任意の方法により点変異を導入して達成してよい。あるいは、ポリペプチド、蛋白質、および複合体蛋白質は、当業者に公知の任意の方法によって合成し、精製し、または産生してもよい(上記参照)。
次いで、標的残基対にチロシル側鎖を有する蛋白質をDT結合の形成をもたらす反応条件にさらす。DT結合の形成反応は酸化架橋なので、そのような条件は酸化反応条件であり、またはそのようになる。好ましい実施形態での反応条件によって生産した蛋白質は別の条件では修飾されない、または検出可能な程度に修飾されない。そのような条件は、H22の形成を触媒する酵素、例えばペルオキシダーゼの使用によって得られる。DT結合の形成は、励起波長320nmでの分光測定によってモニタし、蛍光を波長400nmで測定するが、チロシルの蛍光の損失を標準操作によってモニタする。チロシルの蛍光の損失がDT結合の形成ともはや化学量論的でなくなったら、当業者に公知の任意の方法、例えば、還元剤添加に続いて試料の冷却(氷上)または凍結によって反応を中止する。
設計したポリペプチド、蛋白質、および蛋白質複合体の精製
設計したポリペプチド、蛋白質、または蛋白質複合体は、反応物中の他の蛋白質、または他の望ましくない任意の副生成物から単離精製するが、その方法は標準的方法、例えばクロマトグラフィー(例えば、サイズ選別カラムクロマトグラフィー、グリセロール勾配、アフィニティー)、遠心分離、または他の任意の標準的な蛋白質精製技術によってよい。具体的実施形態として、架橋していないが結合が高親和性であるために他のポリペプチドとホモまたはヘテロ二量体化しているポリペプチドは分離する必要があるかもしれない。分離は、当技術分野で公知の任意の手段、例えば洗浄剤および/または還元剤の添加によって達成してよい。
機能的に設計したポリペプチド、蛋白質、および蛋白質複合体の収量は、当技術分野で公知の任意の手段によって、例えば上記のように精製した設計物質の量と出発物質とを対比することによって決定することができる。蛋白質濃度は、例えば、BradfordまたはLowrieの蛋白質アッセイなど、標準手順によって決定する。Bradfordアッセイは、還元剤および変性剤と適合性があり(Bradford, M, 1976. Anal. Biochem. 72: 248)、Lowryアッセイは洗剤と適合性がより高く、蛋白質濃度および読取り値に関して反応はより直線的である(Lowry, O J, 1951. Biol. Chem. 193: 265)。
設計したポリペプチド、蛋白質、および蛋白質複合体の測定
免疫原性 − ポリペプチド、蛋白質、または蛋白質複合体の免疫原性は、当業者に公知の任意の方法によって測定してよい。最も一般的には、生体内に産生した抗体の存在(または非存在)、力価、親和性、結合活性などを標準的な方法、例えば限定されないがELISA測定法により試験する、すなわちその測定法により生物(または患者)の血清中に存在する免疫グロブリンについて上のパラメータを試験する。T細胞ハイブリドーマの産生およびAPCと抗原の存在下での活性化の測定(Surman S et al., 2001 Proc. Natl. Acad. Sci. USA98: 4587-92、下記)、標識または未標識のMHCで提示されるペプチドをクロマトグラフィー、電気泳動法、および/または質量分光法、T細胞活性化測定法、例えば限定されないがT細胞増殖測定法により検査(Adorini L et al. , 1988. J. Exp. Med.168: 2091;So T. et al., 1996. Immunol. Let. 49: 91-97)、CTLL‐2細胞の増殖応答アッセイによるIL‐2産生(Gillis S et al., 1978. J. Immunol. 120: 2027;So T. et al., 1996. Immunol. Let. 49: 91-97)、その他の多くの追加の方法を利用して、免疫応答のより特異的な側面またはそれらの欠損、例えば抗原の免疫原性T細胞エピトープの同一性を判定してよい。
非限定的な具体例として、試験管内T細胞アッセイを実施してもよく、これによって、ポリペプチド、蛋白質、または蛋白質複合体を加工し、それらを適切な抗原提示細胞(APC)によって同系T細胞に対しMHC分子の溝において提示させることができる。T細胞応答は、単純な増殖測定によって、または活性化細胞による特異的サイトカインの放出を測定することによって測定してよい、またAPCは照射等の処理をして増殖を防止することによって測定結果の解釈を容易にしてよい。異なるMHCアロタイプに関連するエピトープの免疫原性を判定するためには、同系APCおよびアロタイプ範囲のT細胞を使用する生体内アッセイを実施し、個体または患者の範囲のT細胞エピトープを試験してもよい。
あるいは、ヒト(または他の任意の種)由来MHC分子を発現する遺伝子組換え動物を使用してT細胞エピトープをアッセイしてよく、また好ましい実施形態では、内在性MHCレパートリーをノックアウトした遺伝子組換え動物で、より好ましくは、内在性MHC/T細胞受容体複合体の1個または複数の他の付属分子もヒト分子(または他の任意の種の分子)、例えばCD4分子で置換した遺伝子組換え動物でこのアッセイを実施する。
さらに、直接生体内で、例えば臨床研究および動物研究で抗蛋白質/抗原抗体を検出するために、ELISA測定法、例えば、固相間接ELISA測定法を使用して抗体の結合を検出してよい。特定の一実施形態では、適当な濃度の当該ペプチド、蛋白質、または蛋白質複合体を用いて適当な緩衝液中でマイクロタイタープレートをインキュベートする。適当な洗浄液、例えばPBS(pH7.4)、1%BSAと0.05%Tween20を含有するPBS、または適当と思われるその他の任意の溶液で洗浄後、血清試料を例えばPBS/BSAで希釈し、2組のウェルに等量の試料を加える。プレートをインキュベートし、例えばPBSでさらに洗浄後、放射性同位元素やアルカリホスファターゼなどのレポーターに結合/接合させた抗免疫グロブリン抗体を適当な濃度でそれぞれのウェルに加えインキュベートする。次いで、ウェルを再度洗浄し、例えば、レポーターとしてアルカリホスファターゼを使用した場合には、比色分析用基質、例えばジエタノールアミン緩衝液(pH9.8)中のp‐ニトロフェニルリン酸塩を使用して酵素反応を行えば、この基質の405nmの吸光度を、例えば自動ELISAリーダー(例えば、Multiskan PLUS; Labsystems)で読み取ることができる。
別の限定しない例として、患者および動物の血清中の抗体を検出するために、免疫ブロット法を利用することもできる。特定の一実施形態では、各試料/レーンにつき適当量の当該ペプチド、蛋白質、または蛋白質複合体を還元および/または非還元条件下でゲル(例えば、ポリアクリルアミド)上に泳動させ、その蛋白質を、例えば、PVDF膜などの膜に転写する。またサイズによって蛋白質を分離する他の任意の方法を使用すれば、続いて蛋白質を膜へ転写することができる。例えば、粉乳の5%(w/v)PBS溶液を使用し膜をブロックする。次いで、試料を入手できるならば、血清試料をブロッキング液中に種々に希釈(注射レジメの前後で)したものおよび対照の抗抗原と共にブロットをインキュベートする。ブロットを適当な洗浄液で4回洗浄し、適当な/所定の希釈のレポーター接合抗免疫グロブリンと、適当な/所定の時間、適当な/所定の条件下でさらにインキュベートする。ブロットを再度適当な洗浄液で洗浄し、例えば、西洋わさびペルオキシダーゼ接合抗免疫グロブリンを使用する場合には、アマシャム(英国Bucks)から市販されている高感度化学発光試薬を使用し、免疫反応性蛋白質のバンドを可視化する。
(患者または動物)生体内で生じた抗体の中和効果を試験するにあたり、当該ペプチド、蛋白質、または蛋白質複合体の生物活性を、バイオアッセイ、例えば当該ペプチド、蛋白質、または蛋白質複合体で曝露/免疫化した個体または動物の血清濃度を種々に変えて細胞増殖を測定することにより定量することができる。マイクロタイタープレート中に当該ペプチド、蛋白質、または蛋白質複合体の段階希釈を調製する。指数関数的に増殖する細胞を洗浄し、増殖培地でムラのない適当な濃度に再懸濁し、各ウェルに一定分量を加える。プレートを(細胞に応じて)適当な時間インキュベートし、適当な/所定の時間生体染色でパルスし回収した。染色細胞を顕微鏡下でカウントした。中和には、細胞を添加する前に、生体内曝露(免疫化)前後の血清の希釈系列を当該ペプチド、蛋白質、または蛋白質複合体と共に適当な時間プレインキュベートした。血清は、アッセイに使用する前に熱失活させておくことが好ましい。
保持されている機能
機能 − ポリペプチド、蛋白質、または蛋白質複合体の性質に応じて、保持されている機能を試験することができ、例として上記のように設計した設計物質の機能を、設計前物質、別の方法によって設計した物質、または例えばポリペプチドの会合を調節する翻訳後修飾によって自然に修飾された物質の機能と比較することによって試験することができる。保持機能アッセイは、例えば、試験管内アッセイ系、例えば、試験管内キナーゼアッセイなど、蛋白質の物理的特性または機能特性に基づいてよい。あるいは、複合体の生物活性に基づくアッセイを使用することによって、設計した物質の機能について試験することができる。例えば、IL‐8ファミリの構成員など、増殖因子複合体の活性を走化性細胞の移動アッセイまたはβ‐グルクロニダーゼ放出アッセイで試験することができる(Leong SR et al., 1997. Protein Sci. 6 (3): 609-17)。
特異性 − ポリペプチド、蛋白質、または蛋白質複合体の性質に応じて、保持される特異性を試験することができ、例として、設計物質の特異性を設計前物質、別の方法によって設計した物質、または翻訳後修飾によって自然に修飾された物質の特異性と比較することによって試験できる。保持特異性アッセイは、例えば、酵素の基質特異性またはELISA型手順に基づいてよい。
安定性
試験管内 − 設計した物質の安定性を試験管内で、例として、それだけには限らないが、様々な蛋白質濃度および温度で複合体をインキュベートする経時実験で試験してよく、設計した物質の安定性も様々なpHレベルおよび様々な酸化還元条件で試験してよい。上の条件の全てに関して、機能性複合体の残りの水準を上記のようにアッセイすることによって決定する(機能、安定性)。
生体内 − 医薬適用の最良の試験は生体内である。物質の生体内安定性は、血清で、例としてそれだけには限らないが、設計した物質を様々な温度(例えば、37、38、39、40、42、45℃)および異なる血清濃度の経時実験でインキュベートし、機能性複合体の残りの水準についてアッセイし試験してよい。さらに、様々な条件下(例えば、異なる濃度の様々な洗剤)、様々な温度(例えば、37、38、39、40、42、45℃)で溶解した細胞可溶化物での経時実験で、機能性ポリペプチド、蛋白質、または蛋白質複合体の残りの水準についてアッセイし細胞質内物質の安定性を試験してよい。より直接的には、設計した物質で組織培養細胞をスクレープローディング(scrape‐loading)し、機能性複合体の残りの水準についてアッセイすることによって、細胞質内物質の安定性を経時実験で試験してよい。
体内分布 − 設計したポリペプチド、蛋白質、または蛋白質複合体の有用性をより直接的に定量するために、体内分布および/または他の薬物動態学的特質を定量することができる。特定の実施形態では、設計した物質をモデル生物に注入し、例えば、それだけには限らないが、125Iや18F放射標識などのマーカーを追跡(Choi CW et al, 1995. Cancer Research 55: 5323-29)し、および/または上記のように活性を追跡(Colcher D et al., 1998. Q. J. Nucl. Med. 44 (4): 225-41)することによってアッセイしてよい。例えば、関連の情報は、例えば腫瘍など、特異的標的組織への浸透のために医薬上活性があると推定され得る機能材料の量を定量することによって得られる。この意味において、循環および特異的標的組織での半減期、腎クリアランス、免疫原性、および浸透速度も定量してもよい。
動物および臨床研究 − 接合の有用性に関する最も決定的な測定によって、動物研究でまたは臨床的にその薬理学的活性を直接判定する。特定の実施形態では、そのような測定には、例えば、抗癌薬理作用剤としてデザインした設計物質によって一動物モデルまたは一人もしくは数人の患者を治療後、腫瘍の進行または退行をモニタする測定を含めてよい。別の実施形態では、そのような測定には、例えば、抗閉経期骨損失薬理作用剤としてデザインした設計物質によって、一動物モデルまたは一人もしくは数人の患者を治療後にX線測定するなどの骨量測定を含めてよい。
残基選択プロセス用ソフトウェア − 本発明は、ポリペプチド、蛋白質、または蛋白質複合体を改変し得る適当な残基を自動的に選択できるようにするソフトウェアを提供する。そのようなソフトウェアは、上記のように抗原プロセシングを考慮した選択過程、ならびに米国特許出願の安定化蛋白質(Marshall CPら、米国特許出願第09/837,235号、特に、第5項の『反応に適当な残基対の同定法、残基選択プロセスに適当なソフトウェア(Identification of Suitable Residue Pairs for the Reaction, Software for the Residue Selection Process)』、および第6項の『残基対選択フローチャート(the Residue Pair Selection Flowchart)』を参照)に記載されたものなど、幾何的、物理的、および化学的判定基準に従って使用することができる。
医薬組成物 − 一実施形態では、本発明は、設計したポリペプチド、蛋白質、または蛋白質複合体の有効量、ならびに医薬上許容される担体を含む医薬組成物を提供する。本明細書で使用する「有効量」は所望の最終結果を実現するのに必要な量を意味する。所望の最終結果を実現するのに必要な量は、治療する疾病または疾患の性質に依存し、標準的臨床技術によって決定することができる。さらに、試験管内アッセイを任意選択で使用して最適の用量範囲の同定に役立ててよい。使用する正確な用量は、投与経路、疾病または疾患の重症度にも依存し、専門家の判断および各対象の状態によって決定すべきである。有効用量は、試験管内または動物モデル試験系から得た用量応答曲線から推定してよい。
様々な送達系が知られており、本発明の医薬組成物を投与するために使用することができる。導入方法には、それだけには限らないが、皮内、筋肉内、腹腔内、静脈内、皮下、鼻腔内、硬膜外、および経口経路が含まれる。任意の好都合な経路よって、例えば、注入または大量瞬時注射、(例えば、経口粘膜、直腸、腸粘膜など)上皮内側または粘膜皮膚内側を通す吸収によって化合物を投与してもよく、他の生物活性剤と共に投与してもよい。投与は全身的でも局所的でもよい。さらに、本発明の医薬組成物は、脳室内および、くも膜下腔内注射を含むいかなる適当な経路により、中枢神経系に導入することが望ましく、例えば、オンマヤ貯留槽などの貯蔵部に取り付けた脳室内カテーテルによって脳室内注射を促進してよい。経肺投与では、例えば、吸入器や噴霧器、エアロゾル化薬剤を含む製剤の使用によって利用することもできる。
特定の実施形態では、治療を必要とする領域に局所的に本発明の医薬組成物を投与することが望ましいと思われ、これは、例えば、限定しないが、手術中の局所注入、注射、カテーテル、インプラントによって実現してよく、前記インプラントは唾液用膜や繊維などの膜を含む多孔質、非多孔質、またはゼリー状物質であってよい。一実施形態では、悪性腫瘍、新生物、または新生物発生前組織部位(または前記部位)への直接注射によって投与することができる。
別の実施形態では、細菌または細菌ベクターを制御放出系で送達することができる。一実施形態では、ポンプを使用してよい(Langer上掲;Sefton, 1987. CRC Crit. Ref. Biomed. Eng. 14: 201;Buchwald et al., 1980. Surgery88: 507;Saudek et al., 1989. N. Engl. J. Med. 321: 574を参照)。別の実施形態では、ポリマー物質を使用することができる(制御放出の医療用途(Medical Applications of Controlled Release), Langer and Wise (編), 1974. CRC Pres., Boca Raton, Florida;制御薬物生体利用能(Controlled Drug Bioavailability), 1984. 製剤デザインおよび性能(Drug Product Design and Performance), Smolen and Ball (編), Wiley, New York;Ranger & Peppas, 1983 Macromol. Sci. Rev. Macromol. Chem.23: 61を参照、同様にLevy et al., 1985. Science 228: 190;During et al, 1989. Ann. Neurol. 25: 351;Howard et al., 1989. J. Neurosurg 71: 105参照)。さらに別の実施形態では、制御放出系を治療標的すなわち脳に近接して入れ、それによって全身用量の一画分のみを必要とすることもできる(参照、例えば、Goodson, 1984, 制御放出の医療用途(Medical Applications of Controlled Release), supra, vol. 2: 115-138)。他の制御放出系についてはLangerの概説に記載されている(Langer, 1990. Science; vol. 249: pp. 527-1533)。
好ましい実施形態では、組成物は、ヒトへの静脈内投与に適合させた医薬組成物として定型手順に従って製剤化される。典型的には、静脈内投与組成物は、滅菌等張水性緩衝液である。必要に応じて、組成物には、可溶化剤、および注射部位の疼痛を軽減するためにリドカインなどの局所麻酔薬を含めてもよい。一般には、成分は、別々にまたは単位剤形に一緒に混合して提供され、例えば、活性剤量を示すアンプルや分包など、密封容器中の凍結乾燥粉または無水濃縮物として提供される。組成物を注入投与する場合、組成物は、滅菌医薬品等級水または生理食塩水を含む注入ボトルによって分配することができる。組成物を注射投与する場合、注射用滅菌水または生理食塩水のアンプルを提供することができ、そのために投与前に成分を混合してよい。
医薬組成物への配慮 − 本発明の設計したポリペプチド、蛋白質、または蛋白質複合体は、医薬上許容される担体で投与すべきである。用語「医薬上許容される」は、連邦もしくは州政府の、または米国薬局方に収載されている規制当局、薬局方に一般に認識されている他の規制当局によって認可され、あるいは動物で、より具体的にはヒトで使用するための、1つまたは複数の一般に認識されている規制官庁から特定のまたは個別に承認を受けていることを意味する。用語「担体」は、それと共に治療薬を投与する希釈剤、アジュバント、賦形剤、または媒体をさす。そのような医薬用担体は、水などの滅菌液体;ピーナッツ油、大豆油、鉱油、ゴマ油など、石油、動物、植物、または合成起源のものを含む、ある種のアルコールや油などの有機溶媒であってよい。医薬組成物を静脈内投与する場合、緩衝生理食塩水が好ましい担体である。食塩水、水性デキストロース、およびグリセロール溶液も、特に注入可能溶液用に液体担体として使用することができる。必要に応じて組成物には少量の湿潤剤、乳化剤、またはpH緩衝剤を含めてもよい。これらの組成物は、溶液、懸濁液、乳濁液などの形を取ってよい。適当な医薬用担体の例は、E. W. Martinによる『Remington’s Pharmaceutical Sciences』に記載されている。患者への投与に適切な形態を提供するように、そのような組成物には治療有効量の治療剤が、好ましくは精製形で、適当な量の担体と共に含まれる。製剤は、投与方式に合わせるべきである。好ましい実施形態では、ヒトへの静脈内投与に適合させた医薬組成物として定型手順に従って組成物を製剤化する。典型的には、静脈内投与組成物は滅菌等張水性緩衝液である。
本発明の目的のためには、「投与」は、当業者に知られている医薬組成物投与の標準的方法のどれをも意味する。例には、それだけには限らないが、静脈内、腹腔内、筋肉内投与;アデノウイルスベクターまたは他のベクター(リポソーム)による試験管内遺伝子治療、生体外遺伝子治療、経口、吸入などが含まれる。本発明の別の実施形態では、投与は注射、経口投与、または局所投与によって行う。本発明の一実施形態では、対象は、哺乳動物、例えば、マウスやヒトである。哺乳動物はヒトであることが好ましい。本発明の別の実施形態では、「導入」または投与は、アデノウイルス感染、リポソーム介在移送、細胞への局所使用、および微量注入からなる群から選択した手段によって実施する。本発明の別の実施形態では、担体は水性担体、リポソーム、または脂質担体である。
本明細書で使用する「核酸分子」には、DNAおよびRNAが含まれ、特に明記しない限り、二本鎖および一本鎖核酸を含む。同様に含まれるものには、DNA‐RNAハイブリッドなどのハイブリッドがある。核酸配列への言及は、修飾が核酸による蛋白質などのリガンドの結合またはWatson-Crick型塩基対を著しく妨害しない限り修飾塩基を含んでよい。
ヌクレオチドまたはアミノ酸の少なくとも約80%(好ましくは少なくとも約90%、最も好ましくは少なくとも約95%)が所定の分子長にわたって合致するとき、2本のDNAまたはポリペプチド配列は「実質上相同」である。本明細書では、「実質上相同」は、所定のDNAまたはポリペプチド配列に同一性を示す配列をもさす。実質上相同であるDNA配列は、サザンハイブリッド形成法、その特定の系に定義したような例えば厳密な条件下での実験で同定することができる。適当なハイブリッド形成条件を決定することは、当技術分野の技術範囲内である。例えば、上掲Sambrookら、上掲のDNAクローニング、第I巻、第II巻、上掲の核酸ハイブリッド形成(Nucleic Acid Hybridization)を参照のこと。
DNA「コード配列」、または特定の蛋白質を「コードするヌクレオチド配列」は、適当な調節配列の制御下に配置した場合、生体内または試験管内でポリペプチドに転写し翻訳されるDNA配列である。コード配列間の境界は、5’‐(アミノ)末端の開始コドンおよび3’‐(カルボキシ)末端の翻訳終止コドンによって決定する。コード配列には、それだけには限らないが、原核種の配列、真核生物mRNAのcDNA、真核生物(例えば哺乳動物)源のゲノムDNA配列、ウイルスRNAもしくはDNA、合成ヌクレオチド配列さえも含めることができる。通常、転写停止配列はコード配列の3’に位置する。
「動作可能に結合」は、ヌクレオチド配列エレメントの配列をさし、そのように記載された成分は、その通常の機能を実施するように構成されている。したがって、コード配列に動作可能に結合された制御配列は、コード配列を発現させることができる。制御配列は、その配列がコード配列の発現を指揮するように機能する限り、コード配列に隣接している必要はない。すなわち、例えば、翻訳されないが転写される介在配列がプロモーター配列とコード配列の間に存在してもよく、それでもプロモーター配列はコード配列に「動作可能に結合」していると見なされる。
外来DNAが細胞膜内側に導入されている場合、細胞はそのような外来DNAによって「形質転換」されている。外来DNAは、細胞のゲノムを構成する染色体DNA中に組込まれて(共有結合)いても、いなくてもよい。例えば、原核生物および酵母では、外来DNAは、プラスミドなどエピソームエレメント上に維持されていてよい。真核生物細胞では、安定して形質転換された細胞は、一般に、外来DNAが染色体中に組込まれ、その結果染色体の複製によって娘細胞に外来DNAが受け継がれるもの、または安定して維持された染色体外プラスミドを含むものである。この安定性は、外来DNAを含む娘細胞集団から構成された細胞系またはクローンを確立する核生物細胞の能力によって実証される。
医薬組成物は、さらに医薬上許容される担体を含む。担体は希釈剤を含む。担体にはまた、適当なアジュバント、ヘルペスウイルス、アデノウイルス、リポソーム、マイクロエンカプセル、ポリマー被包化細胞、またはレトロウイルスベクターが含まれていてよい。医薬上許容される担体は、エアロゾル、静脈内、経口、または局所担体であってよい。
本明細書および添付の特許請求の範囲の使用では、単数形「a」「an」および「the」は、内容がそうでない場合を明瞭に指示しない限り複数を言及するものとする。
本発明を以下の実施例の節に例示する。この節は本発明の理解に役立てるために記載するが、その後に続く請求項に記載する本発明を決して制限するものではなく、制限すると解釈すべきではない。
以下の実施例は、蛋白質に対する免疫応答の低減に向けて本発明の方法のある種の変形形態を例示する。これらの実施例は例証のために提示され、本発明の範囲を限定するために提示するものではない。
インターロイキン‐2
近年、顕著な治療および商業価値を有する数種のポリペプチドおよびポリペプチド複合体が同定されている。以下の節では、大量のデータを利用することができるそのようなポリペプチド、インターロイキン2(IL‐2)に対する免疫応答を低減する方法を詳述する。特に、以下に記載するものは、適当な修飾、ジチロシン結合(以下を参照)、点変異の導入、ポリペプチドの細菌発現およびその精製、架橋反応条件の調整、架橋反応自体、ならびに得られた蛋白質の分析を標的とする選択プロセスである。
IL‐2生物学 − 当初、T細胞増殖因子(TCGF)と名付けられたインターロイキン2は、単離精製され、分子レベルで特徴付けられた最初のサイトカインであった。構造的には、IL‐2は、多くのインターロイキン、造血サイトカイン、および成長ホルモンやプロラクチンなど、他のある種のペプチドホルモンもしくは蛋白質ホルモンに関与する。これは、4個の両親媒性逆平行へリックスから構成された低分子量の15kDaの球状糖蛋白である(Robb RJ & Smith KA,1981. Mol Immunol. 18,1087-94;Taniguchi T et al., 1983. Nature 302: 305-10.)。抗原により活性化したT細胞しかIL‐2を産生せず、IL‐2に応答する細胞は(A)抗原活性化T細胞とB細胞、および(B)ナチュラルキラー(NK)細胞に限定される。
IL‐2は、T細胞およびNK細胞の増殖、分化、および生存を促進する。試験管内で、IL‐2は、抗原活性化T細胞の増殖拡大速度、大きさ、および持続時間を調節する(Cantrell DA and Smith KA, 1984. Science 224: 1312-16.)。生体内では、IL‐2が、抗原活性化CD4+T細胞(ThlおよびTh2)およびCD8+T細胞のクローン増殖を担う。この拡大の後、ヘルパーT細胞(CD4+)およびT細胞溶解性細胞(CD8+)の分化した機能はIL‐2に依存したままである。さらに、拡大したT細胞クローンの維持/生存‐したがってT細胞記憶‐はIL‐2に依存する(Schorle et al., 1991. Nature 352: 621-24.;Sadlack et al., 1993. Cell 75:253-61.;Sadlack et al., 1995. Eur. J. Immunol.25, 3053-59)。
試験管内では、IL‐2の供給によってアポトーシスは回避され、抗原が拡大した抗原反応性細胞の損失を防止した後、生体内にIL‐2を投与することによっても同様である(Kuroda K et al., 1996. J. Immunol. 157: 1422-31)。免疫療法として、またはワクチンのアジュバントとしてIL‐2の使用を考慮する場合、これらの知見は重要である。
IL‐2活性は、以下のように発現する特異的受容体が媒介する:
ヘテロ三量体のαβγ鎖(kD:10‐11)から構成された高親和性IL‐2Rが、抗原活性化T細胞およびB細胞およびNK細胞の10%の表面に一時的に発現し、
ヘテロ二量体βγ鎖(kD:10‐9)から構成された中親和性IL‐2Rが、ほとんどのNK細胞の表面に構成的に発現する。
したがって、IL‐2濃度100pM未満が高親和性ヘテロ三量体IL‐2受容体を飽和させるのに対して、IL‐2濃度10nMは中親和性IL‐2受容体を飽和させる(Smith KA, 1993. Blood 81: 1414-23)。
治療剤としてのIL‐2
IL‐2は、治療に使用された初めてのインターロイキンであり、現在、癌治療に向けて免疫系を追加免疫する治療剤として使用される。組換えIL‐2は、米国カリフォルニア州EmeryvilleのChiron Corporationからプロリュウキン(商標名)として入手でき、腎細胞悪性腫瘍および悪性黒色腫の治療に認可されている。この生成物は、大腸菌中で産生され、(i)グリコシル化されていない点、(ii)N末端アラニンを欠きC125A点変異を含む点で天然IL‐2とは異なる。動物モデルではIL‐2の用量依存的作用が示唆され、これによりNCIによる高用量治療計画が開発された。(Rosenberg SA et al., 1985. J. Exp. Med. 161: 1169-88)。この高用量大量瞬時投与IL‐2治療計画は、FDAにより1992年に初めて転移性腎細胞悪性腫瘍に、より最近では1998年に転移性黒色腫に認可された。スケジュール、用量、および投与経路は、IL‐2の治療活性の重要な決定要因である。
黒色腫の治療には、高用量IL‐2療法(6〜12週間空けて5コースまで)によって目標応答率16%、永続性のある完全寛解率4%がもたらされることが数回の臨床試験の結果によって実証されている。重要なことには、応答患者の28%が、その患者のうち59%が完全寛解を達成したことを含め、依然として追跡中央値62ヵ月で進行が見られず、数人の患者は治癒したと思われることが示唆されている(Atkins MB et al., 1999. J Clin Oncol 17: 2105-16.)。腎細胞悪性腫瘍を患う個人での高用量IL‐2療法によって、約15%で抗腫瘍応答がもたらされ、長期完全寛解を達成した個人は約5%であり、患者サブセットに顕著な生存恩恵がもたらされている(Bleumer I et al., 2003. Eur. Urol. 44: 65-75)。
こうした抗腫瘍応答の正確な機序は依然として不明である。しかし、MHCと関連して黒色腫患者の宿主T細胞によって認識される広範に増加する範囲の蛋白質およびその構成成分ペプチドは限定されている(Bakker ABH et al., 1994. J Exp Med. 179: 1005-09;Wolfel T et al., 1994. Eur J Immunol. 24: 759-64))。いくつかのグループが、gap100、MART‐1/Melan A、チロシナーゼなどの抗原から得たペプチドの臨床試験を実施しており(Marchand M et al., 1995.Int J Cancer. 63: 883-85;Traversari C et al., 2002. Clin. Oncol. 20(8): 2045-52; van der Bruggen P et al., 1994.Eur J Immunol. 24 (12): 3038-43;Zhai Y et al., 1996.J Immunol. 156 (2): 700-10;Cormier JN et al., 1997. Cancer J. Sci. Am. 3(1): 37-44)、現在、IL‐2は治療用癌ワクチンのためのアジュバントとして臨床的に開発中であり有望な結果が得られている。例えば、19人の患者において、転移性黒色腫の治療に向けた小規模第II相試行で、改変MART‐1ペプチド(ワクチン抗原)による免疫化が、高用量大量瞬時投与IL‐2と組み合わされ、そのうち8人が目標応答‐応答率42%を達成した(Rosenberg SA et al., 1998. Nat. Med. 4: 321-7)。
IL‐2の構造
サイトカインは、わずか数種の構造的分類に振り分けられる。短鎖4α‐ヘリックス束ファミリにはそれだけには限らないが、コロニー刺激因子M‐CSFおよびGM‐CSF、IL2、IL3、IL4、IL5、IL7、IL9、IL13、SCF、およびIFN‐γが含まれ、長鎖4α‐ヘリックス束ファミリには、それだけには限らないが、エリスロポエチン、IFN‐α、IFN‐β、成長ホルモン、G‐CSF、IL6、IL10、IL11、IL12α、PRL、CNTF、LIF、OSMが含まれる。一般に三量体形成し、3個の受容体サブユニットを束ね、細胞表面に結合していることが多い長鎖β‐シート、ゼリーロールのファミリ‐内には、それだけには限らないが、TNAaおよびTNAb、4‐1BB‐L、APRIL、BAFF、CD27L、CD30L、CD40L、FasL、LIGHT、Ox‐40‐L、TRANCE、TRAIL、AND TWEAKが含まれ、β‐トレフォイルには、それだけには限らないが、IL1aおよびILb、ac.FGF、bas.FGF、INT‐2、およびKGFが含まれ、一般に3個のジスルフィド結合をホモ二量体化し含有するシスチンノット−サイトカインの大ファミリ−には、それだけには限らないが、TGFβ1、2、および3、アクチビン、インヒビン、(30を超える)BMP、PDGFaおよびb、VEGF、PIGF、NGF、BDNF、NT3およびNT4/5が含まれる。短鎖α/βサイトカインには、それだけには限らないが、EGF‐ドメイン、EGF,TGF‐α、β‐セルリン、SCDGF、CCGF、アンフィレグリン、およびHB‐EGFが含まれる。ケモカイン(C‐C、C‐X‐C、およびC‐XXX‐C、同様にα+構造として分類)には、それだけには限らないが、MCP‐1、MCP‐2およびMCP‐3、RANTES、MIP1‐αおよびMIP1‐β、IL‐8、GRO、PF‐4、MIP‐2、NAP‐2、GCP‐2、ENA‐78およびIP‐10が含まれる。インスリン様サイトカインには、それだけには限らないが、インスリン、IGF IおよびII、リラキシン、およびボンビキシンが含まれる。数種のサイトカインは、HGF、IL12、Ig‐EGF‐TK‐Cyt、HRGαおよびβ、NDF、ARIA、およびGGFを含むがそれだけには限らないモザイク構造を有する。
IL2は、短鎖α‐ヘリックス束ファミリに属し、その構造は(A‐Dと称する)4へリックス束を含み、2本の短いへリックスおよび数個の余り定義されていないループ(図5参照)を側置する。二次構造分析では、IL4および顆粒球‐マクロファージコロニー刺激因子(GMCSF)とのある種の類似が示唆されている。
多くのサイトカインが、同様の構造を有し、受容体を共有するが、例えば、相同のサイトカインが、共有する受容体との相互作用するその方式で相当に異なることもあるので機能は著しく異なる。I型インターフェロン(IFN‐α/β)が違法な(illicit)多面的生物活性。こうした異なるIFNサブタイプは、同じ細胞表面受容体複合体を活性化して可変性応答を媒介する。IFN‐αおよびIFN‐β中の重要なアミノ酸残基の違いが、リガンド−受容体間相互作用およびその生物学的応答の性質を決定付けている。
インターロイキン‐2(IL‐2)の高親和性受容体には、IL‐2Rα、β、およびγと呼ぶ3個のサブユニットが含まれる。低親和性受容体は、IL‐2Rαおよびβからなるにすぎない。ヒトおよびマウスIL‐2についての変異誘発研究によって、AB−ループ、B‐へリックス、CD‐ループ、およびD‐へリックスに位置する残基が、IL2受容体のαサブユニットとの相互作用関与することが実証された。初期の研究では、(ヒトIL‐2と65%相同する)マウスIL‐2中には、変異分析から機能的重要性が割り当てられた44個の残基があることが示された。これらの残基のうち21個は構造的であり、(蛋白質構造の3領域の)19個の残基はIL‐2Rαとの相互作用に重要であり、(蛋白質構造の2領域の)3つの残基はIL‐2Rβとの相互作用に重要であり、1個の残基はIL‐2Rγとの相互作用に重要である(Zurawski SM et al., 1993. EMBO J. Dec 15; 12 (13): 5113-9)。
IL‐2への免疫応答
治療剤として投与した場合、多くのサイトカインは体液性免疫応答を引き出すことが報告されており、インターフェロンα、β、IL‐11、成長ホルモン、インスリン、GM‐CSF、BMP‐7およびPEG化MDGF、VIIIおよびIX因子、数種の治療用モノクローナル抗体、融合蛋白質、治療用酵素が含まれる(Schellekens H, 10月31日から11月2日に開催された2001. Presentation、2001 IABs国際会議: http://www. iabs.org/Pagel21. html.;Bordens R, 10月31日から11月2日に開催された2001. Presentation、2001 IABs 国際会議. http://www. iabs.org/Pagel21. html.;Prummer O, 1997. Biotherapy 10(1): 15-24)。より最近では、生物医薬に対する免疫応答がFDAおよび生物医薬業界の主要な焦点になってきた。多くの場合、これらによって次のことがもたらされることが示されているからである。
生物治療効力の部分的および全体的損失
免疫複合体疾病、
ある場合には赤血球形成不全(Epogen(商標))や血小板減少症(MGDF)などの重篤な生命を危うくする疾患を招く恐れがある内在性蛋白質への交差反応性応答。
IL‐2は、生物治療剤としてのその効力を損なう中和化抗IL‐2抗体の産生を引き出すことが報告されている。組換えIL‐2治療が誘発する抗IL‐2抗体の割合は50%を超える。IL‐2治療の持続時間、累積用量、および投与経路が、抗IL‐2抗体の抗体陽転速度、組成、および特性を決定する可能性が高い。抗IL‐2抗体は、組換えIL‐2型および天然IL‐2型と反応し、生体内でIL‐2‐依存性蛋白質の発現を制限することが多い(Prummer O, 1997. Biotherapy 10 (1): 15-24)。
より容易に許容されるIL‐2の低用量治療計画による長時間の治療では、内在性IL‐2と交差反応するより高い力価の中和化抗体が産生され、患者を外来性IL‐2の供給に依存的にする。
チロシル‐チロシル架橋の利点
ジチロシン(DT)架橋化学の本質を図3に示すが、高度に安定した共有結合性C‐C結合は、2個のチロシン残基間の酸化架橋反応の結果である。単一で折り畳まれたポリペプチド鎖中で、または複合体中の密接に相互作用する蛋白質ドメイン上で、これらのチロシンは互いに密接して位置していなければならない。というのは、チロシル側鎖の近接は結合形成の前提条件(Brown K et al., 1998. Biochemistry 37 (13): 4397-406)であり、かつこうした結合形成に原子が添加されないからであり、得られた「とじ金」は蛋白質構造に対して非破壊的である。
ジスルフィド結合(DS結合)は、多様な機能の多くの真核生物の蛋白質中にも見出されており、これらの結合は自然発生的に形成し得る。分子内S‐S架橋は、蛋白質ドメインを安定させることが多いが、分子間S‐S結合は、多くの蛋白質複合体の四次構造を安定させる。蛋白質設計ツールとしてジスルフィド結合を導入することによって、蛋白質の活性または特異性を損なうことなく蛋白質を見事なほど安定させることができる。例えば、ジスルフィド結合を使用し免疫グロブリンFv断片複合体を安定させることは、その目的に最も有効な技術の1つである。しかし、ジスルフィド結合は本質的に不安定であり、自然の生物活性がある真核生物蛋白質の細菌産生は、ジスルフィド結合および多サブユニット蛋白質には困難である(Mantile G et al., 2000.Biotechnol Prog. 16(1): 17-25.)。したがって、ジスルフィド結合は、蛋白質設計における非ペプチド共有結合の莫大な利点を考慮すると、生物医薬開発では認可されていたとしても広くは使用されていない。その一方で、ジチロシン結合は極めて安定している。DTの蛋白質の折畳みへの干渉は、DS結合とは対照的にDTが自然発生的に形成されないことから予測されない。さらに、DT結合蛋白質は、見事な活性水準を保持していると思われてきた:サブチリシンE‐80%(データなし)、RNaseA‐100%、キモトリプシン‐50%(Aeschbach et al., 1976. Biochim Biophys Acta 439: 292-301)、ラクトペルオキシダーゼ‐100%(Lardinois et al., 1999.J Biol Chem. 274 (50):35441-8)。
DT結合は、ヒト蛋白質中に偏在して存在している。例えば、ペルオキシダーゼが触媒する生理学的経路によって、DT結合をヒト歯周靭帯コラーゲン構造中に導入する(Tenovuo J & Paunio K, 1979. Arch. Oral Biol. 24,591;Tenovuo J & Paunio K, 1979. Acta Odontol Scand. 37 (3): 147-52)。より興味深いことに、DT結合は、例えば、混合し、ベーク中のパン生地中のコムギグルテンの格子構造−グルテニンサブユニットを含む第四級蛋白質構造‐を形成することも分かってきた。(Tilley KA, 2001. J. Agric. Food Chem 49,2627)。したがって、結合したチロシンアミノ酸は、(1)有毒ではなく、(2)免疫応答を引き起こすこともない可能性がとても高い。
生物医薬の設計は、極めて重篤な免疫応答を引き起こし得ることが知られている。このような効果は、薬物の治療可能性および効力の中和から免疫複合体疾まで、現在数例の事例では赤血球形成不全や血小板減少症など、生命に関わる疾患までの範囲にわたるが、原因は抗生物医薬抗体の内在性蛋白質(EpogenおよびMGDF、それぞれ)との交差反応性である。
DT結合が免疫応答を引き出さないことは、上記したが、グルテン‐多くのヒト食中の主要な基本食品の蛋白質構成成分‐および他のヒト内在性蛋白質中に、これらが存在することよって裏付けられる。さらに、蛋白質治療薬と関連して、APC表面上の抗原提示をMHCに制限させ、ヘルパーT細胞を活性化し、体液性免疫応答を誘発するT細胞エピトープがDT架橋によってもたらされる可能性は低い。これらが、エンドソーム小胞およびリソソーム小胞条件下で安定し、MHC提示に構造的に適合するからである。DT結合ジペプチドがMHC提示と適合しないのは、HLA分子の異種性とは無関係である。HLA分子により免疫系は非常に広範囲のエピトープを認識する能力を得る
指揮されたDT架橋の主要な利点の概要:
連鎖安定性:得られたC‐Cは、実際の全ての生理学的条件、例えばGI管のおよび抗原掲示細胞(APC)の細胞内およびリソソームの小胞の全てのセグメントが存在する環境の下で安定している。
構造的および機能的非破壊性:チロシル側鎖が近接していることがDT結合の形成に必要とされ(茶褐色ら、1998)、これらの結合の形成に原子は添加されないので、得られた架橋は蛋白質構造および機能に対して非破壊性である。DTは自然発生的に形成されないので、蛋白質の折畳みにDTが干渉するとは思われない。数個のDT結合蛋白質は、見事な水準の活性を保持することが示されている。
無毒:DT結合は、最も一般的食物の1つ、コムギベースのパンに大量に存在し、DT結合蛋白質はヒトに存在する。したがって、DT結合およびDT結合蛋白質は無毒である可能性が非常に高い。
非免疫原性:
T細胞エピトープ:抗原プロセシング(図1参照)から得られたDT結合ジペプチドは、MHC提示と構造的に適合性があり、したがって、DT結合がTヘルパー細胞、続いてB細胞の活性化、および抗体産生をもたらす新規なT細胞エピトープを導入する可能性はきわめて低い。
B細胞エピトープ:さらに、DT結合は、数種の最も一般的なヒトの食品に大量に存在し、DT結合蛋白質はヒトに存在する。したがって、DT結合は、自体として免疫系に知られていると思われ、B細胞を活性化し有害な抗体を産生するB細胞エピトープを提供する可能性は低い。
ジチロシン結合の導入には2つの主要な要素(i)2個のチロシンを十分に近接させて設置する設計能力、および(ii)反応実施後、免疫応答を低減できる実現の能力がある。
上記の2点に焦点を当てた調査を行うに当たり、モデル酵素として高度に乱雑なメチオニンプロテアーゼであるプロテアーゼサブチリシンEを使用した。先の特許出願(安定化蛋白質、Marshallら、2001年4月18日出願米国出願第09/837,235号、および1999年10月15日出願米国出願第60/159,763号、および2000年10月16日出願PCT国際出願PCT/USOO/28595を参照)に記載されている選択法を使用し、DT架橋の候補残基を同定した。標的残基をチロシンに変異させ、蛋白質を発現、精製し、当業者に知られている標準手順に従って架橋した。K237Y中のDT結合の形成は、蛍光分光法によって確認され、DT架橋したプロテアーゼは野生型蛋白質の酵素活性の約80%維持していた(データなし)。蛋白質の不活化は阻害されたように見えた(図2参照)。LC‐MSによって蛋白質構造の改変は他に観察されなかった。追加のピークは観察されず、主ピークの広幅化もなかった(図4参照)。
これらのデータは、サブチリシンEが自己分解によって不活化され、基質の蛋白質分解を損なうと仮定した場合、DT結合はその他の点では蛋白質構造を変化させることなく、未架橋蛋白質の活性を高度に維持しながら、蛋白質構造中で標的となり得ることを実証している。したがって、蛋白質抗原の部分的蛋白質分解を含む抗原プロセシングも阻害でき、免疫原性ペプチドのMHCディスプレイに向かうこの経路およびT細胞の活性化を阻止することによって、免疫応答を低減させ、または防止することができると思われる。
チロシル‐チロシル架橋のための残基
以下の問題点を評価する構造測定を基に架橋反応を指揮する最適の残基を選択した。
ジチロシン結合が形成するか:すなわち、チロシル側鎖は近接しているか、
チロシンに所要の点変異(1、2個の)を導入し架橋したときに蛋白質は構造的機 能的に無傷であるか。
表3:tyr‐tyr架橋が可能な残基対
Figure 2007537133
IL‐2構造中のアミノ酸は比較的少数であると仮定するならば(図6参照)、以下に詳述するように、α炭素間距離が6.5オングストローム未満(グリシンを含む残基対を除去)の残基対の組を同定し、点変異体である架橋を発生させ、活性および免疫原性を保持した架橋蛋白質構築体を試験することが最も効率的手法である。表3には、この実験セットに適当なIL2の構造中の26残基対のセットが含まれる。各残基対に対して、α炭素間距離、ならびにファンデルワールス量と既存のアミノ酸の疎水性、およびファンデルワールス量とチロシンの疎水性の差を算出して、チロシンへの点変異の導入に際して構造および機能を保持する可能性によって構築体を順位付ける。
Tyrl07およびTyr45が近接していると仮定するならば、野生型IL2を架橋条件に曝露した時に既にDT結合が形成されている可能性がある。このような場合には、DT結合構築体は点変異前の活性および免疫原性を保持していると評価される。この結合が望ましくないと判った場合は、Tyrl07およびTyr45の両方を別々の構築体においてPheに変異させ、これらTyrからPheへの変異を既に含む構築体において点変異を行いさらに評価する。
分子生物学および蛋白質発現
構築体および発現系 − TEV切断部位を有する(ヒス)6‐タグ付き構築体として、IL‐2蛋白質構築体を発現させるが、この切断部位は生体内実験でタグを除去して精製が促進されるようにする。生化学実験および試験管内実験では、タグを除去する必要はない。大腸菌BL21(DE3)中で高レベルのIL‐2の発現を指揮する、細菌発現プラスミド中のヒスタグ付きヒトIL‐2遺伝子を使用(pETベクター、Novagen、Madison、WI)することが好ましい。
点変異 − 構造/機能(上記参照)分析(およびコンピュータモデリングも利用してよい)に基づく構造分析によってチロシンへ変異させるために選択した残基をQuikChange(商標)部位特異的変異導入キット(ストラタジーン、カタログ#200518)を使用し変異させる。チロシン残基が望ましくないDT結合を形成する(例えば、Tyr45およびTyr107が形成する結合が活性を損なう)と同定された場合、対の1つまたはそれぞれをフェニルアラニンに変異させ、構築体を保持している活性についてアッセイする(以下を参照)。
蛋白質の発現 − 大腸菌BL21(DE3)中で高レベルに発現したIL‐2蛋白質は封入体を形成し、この蛋白質は尿素変性を使用して再度折畳まれ、続いて漸進的に透析される((Wilson D, PromAb, personal communication)。
蛋白質の精製 − 蛋白質構築体を採取し、または50mMのPBS、1mMのイミダゾールpH7.5中で透析し、M‐NTA‐His‐Bind(商標)樹脂カラム(Novagen)に加える。本質的に同じ緩衝液(10mMのイミディゾール)によって十分に洗浄後、200mMのイミダゾールpH7.5によって蛋白質を溶出させ、終夜透析し、凍結保存する。蛋白質の純度をSDS‐PAGEおよび銀染色によって決定する。
DT架橋および精製 − ひとたび、発現系を確立し、組換え構築体を得、精製したならば、最適化条件下で蛋白質を架橋する(Marshallら、2001年4月18日出願米国出願第09/837,235号、および1999年10月15日出願米国出願第60/159,763号、および2000年10月16日出願PCT国際出願PCT/US00/28595を参照)。市販のペルオキシダーゼを使用し酵素的に、または化学的架橋を実施する。各構築体に対して条件を最適化するために、数個のパラメータは変化させる。例えば、反応緩衝液のpHを変動/調整し、続いて水混和性有機溶媒を添加することが、効率に最も顕著に作用すると思われる。2種の化学的方法、すなわちクロロ‐マンゲン(MnE)‐テトラ(p‐スルホナト)フェニルポルフィリン(MnTPPS)+KHSO5およびルテニウム(II)トリス‐ビピリジル+(NH4228)もこれらの実験に使用する。DT IL‐2構築体の調製に向けて最良の実施方法/実験条件セットを採用する。
DT結合の明瞭な蛍光特性およびアッセイ感受性のために、0.1mol/DT mol程度と低い酵素の検出も容易である。蛍光をベースにしたアッセイは、高処理量フォーマット、例えば、96穴または384穴プレートリーダーを使用するに容易に翻訳され、したがって反応条件最適化および比較的多数の触媒/酸化体対の評価がこの調査では容易である。敏感で単純な蛍光ベース高処理量スクリーンによってDT結合の形成を辿る能力によって、最適に設計した構築体の生成は促進され、おそらくさらに重要なことは、初期の生産的でない変異が迅速に除去される。280nmおよび320nmの励起波長で蛍光を分析し、最大発光は、それぞれ、チロシンおよびDTの310nmおよび410nmである。チロシン残基もトリプトファン残基もDTの蛍光に干渉しない(Kanwar & Balasubramanian, 2000. Biochemistry 39: 14976;Malencik DA & Anderson SR, 1994). Biochemistry 33: 13363-13376)。架橋した蛋白質は、標準的方法によって、例えば、ゲル‐ろ過HPLCにより精製する。
DT IL‐2構築体の分析
蛋白質の無傷性および保持活性
アミノ酸分析 − 架橋した構築体をLC‐MSにより分析して蛋白質の統合性を確認する。得られた断片の部分的蛋白質分解消化およびLC‐MS分析によって、蛋白質構造中の予想した位置におけるDT結合形成の確認に向けても同じMS技術を適用する。
蛋白質の完全加水分解によってこの分析結果をさらに検証する(6N HCl、24時間)。例えば、4’‐ジメチルアミノアゾベンゼン‐4‐スルホニル(ダブシル)クロリドによるアミノ酸のプレカラム修飾、続く逆相HPLCによって、適当な基準を用いる較正後、他の全ての構成アミノ酸に沿ってジチロシンの分離および数量化が可能になる(Malencik DA et al., 1990. Anal Biochem., 184,353-359)。
さらに、蛋白質を完全に加水分解(6N HCl、1%のフェノール、110℃24時間)することによって、架橋および未架橋蛋白質複合体のアミノ酸分析を実施し、続いて標準的な公開された手順(例えば、Tilley KA, 2001. J. Agric. Food Chem 49,2627)にしたがってLC‐MS分析を実施する。
保持活性の組織培養評価 − IL‐2生物アッセイは、原型の試験管内サイトカインアッセイである。Balb/Cマウスから得られた脾細胞を96穴マイクロタイタープレート中、IL‐2活性の存在および非存在下で濃度5×106/mlでインキュベートし、37℃で終夜培養する。比較にEC50を使用し、検量線と比較することによって実験試料を制御する。アッセイは1pMの濃度に感受性であり、IL‐2用量応答曲線は1〜100pMで生じる。精製した均質なIL‐2の国際標準比活性は1500万IU/mg IL‐2蛋白質および1IU/mL=4.5pMとして定義される(Gillis S et al., 1978. J. Immunol. 120, 2027-32;Robb RJ et al., 1981. J. Exp. Med. 154: 1455-74.)。
数種の濃度の対照(プロリュウキン)およびDT IL−2構築体を5pM〜50pMの範囲で加え、DNAを合成する細胞の比率を生体染色の取込み(Gillis S et al., 1978. J. Immunol. 120,2027-32)によって定量しプロットする。
薬物動態分析 − Balb/cマウスに10,000、50,000、および250,000IU/m2の用量で対照およびDT IL‐2を皮下注射し体内分布および薬物動態分析を実施し、対照と比較することによって吸収速度、血管保持、血清中構築体半減期、および構築体クリアランス速度を確立する。
6〜8週齡の雌雄同数のBalb/Cマウス(例えばHarlanスプロージドーリー)で全生体内研究を実施する。30ゲージ針から50ゲル容量の皮下注射によって、マウスに10,000、50,000、および250,000および1,000,000IU/m2の用量で対照IL‐2およびDT IL‐2を投与する。この研究の目的において、両構築体でのIUは、1IUはIL‐2=4.5pMであるという定義に基づく。麻酔にはエーテルを使用し動物に自由に飲水、摂食させる。
標準的経時実験0〜144時間で採血し、各アッセイ時、各1処置群につき5頭のマウスで採血を繰り返す。各血液試料を氷上で貯蔵した後、遠心分離(12000g、5分間、4℃)し、アッセイまで血清を‐20℃で貯蔵する。
血清中のIL‐2の検出は、市販のヒトIL‐2 ELISA(例えば、Immunotech、フランス)を使用し製造業者が推奨する手順に従って実施する。このキットには、マウスモノクローナル抗(ヒトIL‐2)抗体でコートしたマイクロタイタープレートが含まれている。レポーター酵素に結合する第2の抗ヒトIL‐2モノクローナル抗体が結合したIL‐2を数量化する。洗浄後、同じくキットに含まれる比色分析用基質で結合酵素活性を測定する。最初に、両抗ヒトIL‐2抗体をDT IL‐2構築体に結合するその能力について試験する。
抗ヒトIL‐2ウエスタンブロット分析を実施して生体内でのIL‐2構築体の蛋白質分解をモニタする。市販の抗IL‐2抗体を使用するが、これはDT IL‐2構築体を認識しヒトIL‐2に特異的である。
血清処置しマウス血清を回収した後、生体内での対照(プロリュウキンおよびDT IL‐2構築体として同じ系で発現させ精製したwt IL‐2)およびDT IL‐2蛋白質(上記参照)の生物活性を確認するために、T細胞増殖アッセイを実施する。マウス血清(Sigma)中で10,000単位/mlの濃度で、対照Il‐2およびDT IL‐2構築体蛋白質をインキュベートし、37℃で0〜144時間の範囲でインキュベートする。1:10、続いて段階希釈の血清を含む組織培地をCTLLの増殖を誘発するその能力について試験する。注射したマウスから採取した血清も組織培地で希釈し、CTLLの増殖を誘発するその能力について分析する。
全身性炎症応答症候群(SIRS)または血管漏出症候群(VLS)の代理として、炎症誘発性サイトカイン血清中のTNFα、Infγ、およびGM‐CSFを(プロリュウキンおよびDT IL‐2構築体として同じ系で発現させ精製したwt IL‐2)およびDTL‐2を先の濃度で投与した前後に定量する。
薬物動態学的データ分析には、アッセイ回数を注射から採取までの時間として算出する。標準的ソフトウェアパッケージを使用しt1/2計算を実施する。皮下注射後、非線形回帰法により血清濃度を時間に対してプロットする。『癌化学療法および生物療法:原理および実施(Cancer chemotherapy and biotherapy: principles and practice)』(Collins JM, 1996. In: Chabner BA, Longo DL (編) 癌化学療法および生物療法:原理および実施(Cancer chemotherapy and biotherapy: principles and practice). Lippincott-Raven, Philadelphia, p 17)に記載されているように、半減期および曲線下面積(AUC)を算出する。最初の測定可能なアッセイ時点で算出したt1/2を基準として、対照hIL‐2およびDT IL‐2構築体の開始時濃度を推定する。
IL‐2に対する免疫応答
以下の実験セットでは、中和化抗体および非中和化抗体を産生する、対照およびDT IL‐2構築体に対する免疫応答を検査する。
マウスIL‐2処置計画 − ヒトにおける高用量治療計画ではIL‐2免疫原性が観察されるので、6〜8週齡の雌雄のBalb/Cマウスに皮下注射によって1日2回10日間、2.4×106IU/m2の対照(プロリュウキン)およびDT IL‐2構築体蛋白質を投与し、4週間毎に延べ4サイクルの処置サイクルを繰り返す。最初の注射前と、毎処置サイクルの1日目および10日目の注射3時間後に滅菌チューブに静脈血試料を採取する。上記のように血清を分離し凍結保存し、対照およびDT IL‐2の血清濃度を上記のようにアッセイする。
抗IL‐2抗体の検出
ELISAアッセイ − 固相間接ELISAを使用して抗IL‐2抗体の結合を検出する。100μl/ウェルのIL‐2(プロリュウキン、0.25μg/ml)を含む50mMの炭酸塩‐炭酸水素塩緩衝液(pH9.7)を用いて、マイクロタイタープレートを終夜4℃でインキュベートする。PBS(pH7.4)で3回洗浄した後、1%のBSAおよび0.05%のTween 20を含有するPBSをそれぞれのウェルに加え、37℃で1時間プレートをインキュベートする。血清試料をPBS/BSAで1:20に希釈し、100μlの試料を二通りウェルに加える。37℃で2時間プレートをインキュベートする。PBSでさらに3回洗浄した後、PBSで1:1000に希釈した100μlのアルカリホスファターゼ接合抗マウス抗体(Sigma Chemical Co.)をそれぞれのウェルに加え37℃で2時間インキュベートする。次いで、ウェルを3回洗浄した後、p‐ニトロフェニルリン酸塩(1mg/ml、Sigma Chemical Co.)を含むジエタノールアミン緩衝液(pH9.8)を使用し室温で酵素反応させる。自動ELISAリーダー(例えば、Multiskan PLUS; Labsystems)で405nmの吸光度を読み取る。
IL‐2抗体の免疫ブロット。還元および非還元条件下で12.5%のアクリルアミドゲル上に1試料/レーンにつき3μgのIL‐2蛋白質(プロリュウキン)を泳動させ、蛋白質をPVDF膜に転写する。粉乳の5%(w/v)PBS溶液を使用しロータリーシェーカーで30分間膜をブロックする。次いで、PBS/乳での希釈が1:200および1:1000の血清試料(注射処置計画前後)、ならびに市販の対照抗ヒトIL‐2を用いて終夜室温にてロータリーシェーカー上でブロットをインキュベートする。ブロットをPBS/乳で4回洗浄し、さらに、PBS/乳溶液での希釈が約1:2000の西洋わさびペルオキシダーゼ接合抗マウス免疫グロブリン(例えばSigma Chemical Co.)を用いて、ロータリーシェーカー上で1時間インキュベートする。再度、ブロットをPBS/0.05%のTween 20で4回洗浄し、高感度化学発光試薬(アマシャム、英国Bucks)を使用して免疫反応性蛋白質バンドを可視化した。
中和化IL‐2抗体検出用CTLL増殖アッセイ。
上記のように、CTLL増殖生物アッセイ法を使用しIL‐2の生物活性を定量する。50μl容量の96穴マイクロタイタープレートに段階希釈のIL‐2(プロリュウキン)を調製する。指数関数的に増殖するCTLL細胞を洗浄し、10%のFCSを含むRPMI1640が1ml当たり100の濃度になるように再懸濁し、各ウェルに対して50μlの一定分量で添加する。プレートを24時間インキュベートし、生体染色で4時間パルスし、回収し、染色細胞を顕微鏡下でカウントする。中和には、処置計画前後に最終希釈が1:20〜1:2560のマウス血清をもたらす2倍希釈系列をIL‐2(2IU/ml)で細胞を添加する前に少なくとも1時間プレインキュベートする。アッセイで使用する前に56℃で30分間血清を熱失活させる。
上記方法および組成物では、記載した本発明の範囲と趣旨から逸脱することなしに様々な変更を行うことができるので、添付図面に示しまたは添付の特許請求の範囲で定義した上の説明に含まれる主題は全て例として解釈され、制限的な意味を持たないものとする。
図1は、免疫原性ペプチドのMHCII提示を生じさせる生化学的経路およびT細胞活性化をブロックする発明者らのアプローチの模式的/簡略化表現である。AWTは抗原プロセシング(部分的なタンパク質分解による分解)前の無修飾型(「野生型」)タンパク質の構造を表す;AXLは架橋後のタンパク質の構造を表す;免疫原性エピトープは「img.-epi」と標識される。BWTは、無修飾型タンパク質の抗原プロセシングから生じるペプチドセットを表し、免疫原性ペプチドは「img-pep」と標識される;BDTは、架橋型タンパク質の抗原プロセシングから生じるペプチドセットのセットを表す。Cはペプチド積載型MHCを表す。Aの免疫原性エピトープは架橋され、「non-img-epi」と標識される。D.DDTは、架橋型タンパク質の抗原プロセシングから生じるペプチドセットを表し、Bの免疫原性ペプチドは架橋され、「non-img-pep」と標識される。AからBへの矢印はタンパク質分解の経路を表す;BからCへの矢印は、安定なペプチド−MHC(pMHC)複合体が形成されるに至る経路、例えばペプチド積載、HLA−DM媒介性の編集、およびダングリング配列のエキソタンパク質分解による「トリミング(trimming)」を表す。矢を横切るX印は、本発明の適用によってこの経路が妨害またはブロックされるであろうことを表す。 図2A〜2Bは、架橋した複雑なプロテアーゼの自己タンパク質分解による分解の低減である。図2A:酸化的架橋前にK237Yのチロシンへの点変異を施されたサブチリシンEの構造図。図の上部付近の環構造は、架橋の標的にされるチロシン残基(Y21、K237Y)であり、底部付近の構造は活性部位の残基である。図2B:DT架橋型(DT)および野生型(WT)サブチリシンEを用いる55℃での経時熱失活実験(比色アッセイ)。これらの結果は、タンパク質構造が標的された(ジチロシン)架橋によって安定化され、自己タンパク質分解による分解が妨害され、これにより経時実験において延長された活性が生じることを示す。 図3は、酸化的条件下でジチロシン結合の形成を生じさせる推定の化学反応および中間体についての模式図である。 図4A〜4Bは、ジチロシン架橋前後のK237YサブチリシンEタンパク質の質量分析についてのグラフである。図4A:架橋前の主要ピークの質量:28,282Da。B:架橋後の主要ピークの質量:28,278Da。予測される重量減少は2水素原子の喪失に相当する2Daである(図3を参照のこと)。図4Aまたは4Bには、いかなる追加ピークもほとんど存在しない。本アッセイの精度は約+/−.01%である。これらの結果は、タンパク質が架橋条件に晒されても無傷のままであることを実証する。 図5はヒトIL−2の構造図である。IL−2は短鎖4アルファ−らせん束の一員であり、(アルファらせん状二次構造を有する)4または5ヘリックス束を有するサイトカインセットに属する。

Claims (32)

  1. 個体におけるペプチド、タンパク質またはタンパク質複合体の免疫原性を低減させる方法であって、そのペプチド、タンパク質またはタンパク質複合体の2アミノ酸間にインビボにおいて安定なまたは不可逆な少なくとも1つの架橋を導入することを含み、この場合、その少なくとも1つの架橋により、個体における該ペプチド、タンパク質またはタンパク質複合体の免疫原性が前記架橋を施していない同一ペプチド、タンパク質またはタンパク質複合体に比較して低減される方法。
  2. 個体におけるペプチド、タンパク質またはタンパク質複合体の免疫原性を低減させる方法であって、そのペプチド、タンパク質またはタンパク質複合体の2アミノ酸間に少なくとも1つのジチロシン架橋を導入することを含み、この場合、その少なくとも1つのジチロシン架橋により、個体における該ペプチド、タンパク質またはタンパク質複合体の免疫原性が前記架橋を施していない同一ペプチド、タンパク質またはタンパク質複合体に比較して低減される方法。
  3. 個体におけるペプチド、タンパク質またはタンパク質複合体の免疫原性を低減させる方法であって、そのペプチド、タンパク質またはタンパク質複合体の2アミノ酸間に少なくとも1つのジチロシン架橋を導入することを含み、この場合、そのジチロシン架橋の少なくとも1つのチロシンは別のアミノ酸残基のチロシンへの点変異に由来し、かつその少なくとも1つのジチロシン架橋により、個体における該ペプチド、タンパク質またはタンパク質複合体の免疫原性が前記架橋を施していない同一ペプチド、タンパク質またはタンパク質複合体に比較して低減される方法。
  4. 個体におけるペプチド、タンパク質またはタンパク質複合体の免疫原性を低減させる方法であって、そのペプチド、タンパク質またはタンパク質複合体に少なくとも2つの修飾を導入することを含み、この場合、第一の修飾は該ペプチド、タンパク質またはタンパク質複合体の2アミノ酸間における少なくとも1つの架橋を含み、かつ第一の修飾および第二の修飾により、個体における該ペプチド、タンパク質またはタンパク質複合体の免疫原性が前記修飾を施していない同一ペプチド、タンパク質またはタンパク質複合体に比較して低減される方法。
  5. 個体におけるペプチド、タンパク質またはタンパク質複合体の免疫原性を低下させる方法であって、そのペプチド、タンパク質またはタンパク質複合体に少なくとも2つの修飾を導入することを含み、この場合、第一の修飾は該ペプチド、タンパク質またはタンパク質複合体の2アミノ酸間における少なくとも1つのジチロシン架橋を含み、かつ第一の修飾および第二の修飾により、個体における該ペプチド、タンパク質またはタンパク質複合体の免疫原性が前記修飾を施していない同一ペプチド、タンパク質またはタンパク質複合体に比較して低減される方法。
  6. 個体におけるペプチド、タンパク質またはタンパク質複合体の免疫原性を低減させる方法であって、そのペプチド、タンパク質またはタンパク質複合体に少なくとも2つの修飾を導入することを含み、この場合、第一の修飾は該ペプチド、タンパク質またはタンパク質複合体の2アミノ酸間における少なくとも1つのジチロシン架橋を含み、その少なくとも1つのジチロシン架橋の少なくとも1つのチロシンは別のアミノ酸残基のチロシンへの点変異に由来し、ならびに第一の修飾および第二の修飾により、個体における該ペプチド、タンパク質またはタンパク質複合体の免疫原性が前記修飾を施していない同一ペプチド、タンパク質またはタンパク質複合体に比較して低減される方法。
  7. 個体におけるペプチド、タンパク質またはタンパク質複合体の免疫原性を低減させる方法であって、そのペプチド、タンパク質またはタンパク質複合体の2アミノ酸間にインビボにおいて安定/不可逆な少なくとも1つの架橋を導入することを含み、この場合、その架橋により、個体における該ペプチド、タンパク質またはタンパク質複合体の免疫原性が架橋を施していない同一ペプチド、タンパク質またはタンパク質複合体に比較して低減され、かつその架橋を施したペプチド、タンパク質またはタンパク質複合体は、該少なくとも1つの架橋が不存在の場合にそのペプチド、タンパク質またはタンパク質複合体が有する少なくとも1つの機能を保持する方法。
  8. 個体におけるペプチド、タンパク質またはタンパク質複合体の免疫原性を低減させる方法であって、そのペプチド、タンパク質またはタンパク質複合体の2アミノ酸間にインビボにおいて安定/不可逆な少なくとも1つのジチロシン架橋を導入することを含み、この場合、その少なくとも1つのジチロシン架橋により、個体における該ペプチド、タンパク質またはタンパク質複合体の免疫原性が前記架橋を施していない同一ペプチド、タンパク質またはタンパク質複合体に比較して低減され、かつ少なくとも1つのジチロシン架橋を施したペプチド、タンパク質またはタンパク質複合体は、該少なくとも1つの架橋が不存在の場合にその該ペプチド、タンパク質またはタンパク質複合体が有する少なくとも1つの機能を保持する方法。
  9. 個体におけるペプチド、タンパク質またはタンパク質複合体の免疫原性を低減させる方法であって、そのペプチド、タンパク質またはタンパク質複合体の2アミノ酸間に少なくとも1つのジチロシン架橋を導入することを含み、この場合、ジチロシン架橋の少なくとも1つのチロシンは、別のアミノ酸残基のチロシンへの点変異に由来し、かつその少なくとも1つのジチロシン架橋により、個体における該ペプチド、タンパク質またはタンパク質複合体の免疫原性が前記架橋を施していない同一ペプチド、タンパク質またはタンパク質複合体に比較して低減され、かつ少なくとも1つのジチロシン架橋を施したペプチド、タンパク質またはタンパク質複合体は、該少なくとも1つの架橋が不存在の場合にそのペプチド、タンパク質またはタンパク質複合体が有する少なくとも1つの機能を保持する方法。
  10. 個体におけるペプチド、タンパク質またはタンパク質複合体の免疫原性を低減させる方法であって、そのペプチド中にインビボにおいて安定/不可逆な少なくとも1つの架橋ならびにそのペプチド中にインビボにおいて安定/不可逆な少なくとも1つの他の修飾を導入することを含み、この場合、少なくとも1つの架橋ならびに少なくとも1つの他の修飾により、個体における該ペプチド、タンパク質またはタンパク質複合体の免疫原性が無修飾のペプチド、タンパク質またはタンパク質複合体に比較して低減され、かつ架橋および修飾を施したペプチド、タンパク質またはタンパク質複合体は、該少なくとも1つの架橋および該少なくとも1つの他の修飾が不存在の場合にそのペプチド、タンパク質またはタンパク質複合体が有する少なくとも1つの機能を保持する方法。
  11. 個体におけるペプチド、タンパク質またはタンパク質複合体の免疫原性を低減させる方法であって、ペプチド中に少なくとも1つのジチロシン架橋ならびにそのペプチド中にインビボにおいて安定/不可逆な少なくとも1つの他の修飾を導入することを含み、この場合、少なくとも1つの架橋および少なくとも1つの他の修飾により、個体における該ペプチド、タンパク質またはタンパク質複合体の免疫原性が無修飾のペプチド、タンパク質またはタンパク質複合体に比較して低減され、かつジチロシン架橋および別の修飾を施されたペプチド、タンパク質またはタンパク質複合体は、該少なくとも1つの架橋および該少なくとも1つの他の修飾が不存在の場合に該無修飾のペプチド、タンパク質またはタンパク質複合体が有する少なくとも1つの機能を保持する方法。
  12. 個体におけるペプチド、タンパク質またはタンパク質複合体の免疫原性を低減させる方法であって、ペプチド中に少なくとも1つのジチロシン架橋を導入し、この場合、ジチロシン架橋の少なくとも1つのチロシンは別のアミノ酸残基のチロシンへの点変異に由来し、ならびにそのペプチド中にインビボにおいて安定および/または不可逆な少なくとも1つの他の修飾を導入することを含み、この場合、架橋および他の修飾により、個体における該ペプチド、タンパク質またはタンパク質複合体の免疫原性が無修飾のペプチド、タンパク質またはタンパク質複合体に比較して低減され、かつジチロシン架橋および別の修飾を施したペプチド、タンパク質またはタンパク質複合体は、該少なくとも1つの架橋および該少なくとも1つの他の修飾が不存在の場合に該ペプチド、タンパク質またはタンパク質複合体が有する少なくとも1つの機能を保持する方法。
  13. ペプチド、タンパク質またはタンパク質複合体の免疫原性を低減させる方法であって、以下の段階を含む方法:(a)架橋対象のペプチド、タンパク質またはタンパク質複合体の少なくとも1つの免疫原性エピトープを同定または選択する段階;および(b)該エピトープの2アミノ酸間に少なくとも1つの架橋を導入する段階、この場合、その架橋はインビボにおいて安定および/または不可逆であり、その架橋を施したペプチド、タンパク質またはタンパク質複合体の免疫原性は架橋を施していないペプチド、タンパク質またはタンパク質複合体に比較して低減される。
  14. ペプチド、タンパク質またはタンパク質複合体の免疫原性を低減させる方法であって、以下の段階を含む方法:(a)ペプチド、タンパク質またはタンパク質複合体の少なくとも1つの免疫原性エピトープを同定または選択する段階;および(b)該エピトープの2アミノ酸間に少なくとも1つのジチロシン架橋を導入する段階、この場合、ジチロシン架橋を施したペプチド、タンパク質またはタンパク質複合体の免疫原性は前記架橋を施さなかった同一ペプチド、タンパク質またはタンパク質複合体に比較して低減される。
  15. ペプチド、タンパク質またはタンパク質複合体の免疫原性を低減させる方法であって、以下の段階を含む方法:(a)ペプチド、タンパク質またはタンパク質複合体の少なくとも1つの免疫原性エピトープを同定または選択する段階;および(b)該エピトープの2アミノ酸間に少なくとも1つのジチロシン架橋を導入する段階、この場合、架橋の少なくとも1つのチロシンは別のアミノ酸残基のチロシンへの点変異に由来し、かつジチロシン架橋を施したペプチド、タンパク質またはタンパク質複合体の免疫原性は前記架橋を施さなかった同一ペプチド、タンパク質またはタンパク質複合体に比較して低減される。
  16. ペプチド、タンパク質またはタンパク質複合体の免疫原性を低減させる方法であって、以下の段階を含む方法:(a)ペプチド、タンパク質またはタンパク質複合体の少なくとも1つの免疫原性エピトープを同定または選択する段階;および(b)ペプチド、タンパク質またはタンパク質複合体の2アミノ酸間に少なくとも1つのジチロシン架橋を導入する段階、この場合、該エピトープの免疫原性は、前記架橋を施されなかった同一ペプチド、タンパク質またはタンパク質複合体の免疫原性に比較して低減されあるいは阻害される。
  17. ペプチド、タンパク質またはタンパク質複合体の免疫原性を低減させる方法であって、以下の段階を含む方法:(a)ペプチド、タンパク質またはタンパク質複合体の少なくとも1つの免疫原性エピトープを同定または選択する段階;および(b)ペプチド、タンパク質またはタンパク質複合体の2アミノ酸間に少なくとも1つのジチロシン架橋を導入する段階、この場合、少なくとも1つのジチロシン架橋の少なくとも1つのチロシンは別のアミノ酸残基のチロシンへの点変異に由来し、かつ該エピトープの免疫原性は、前記架橋を施されなかった同一ペプチド、タンパク質またはタンパク質複合体の免疫原性に比較して低減されあるいは阻害される。
  18. ペプチド、タンパク質またはタンパク質複合体の免疫原性を低減させる方法であって、以下の段階を含む方法:(a)ペプチド、タンパク質またはタンパク質複合体の少なくとも1つの免疫原性エピトープを同定または選択する段階;および(b)該エピトープの2アミノ酸間に少なくとも1つのジチロシン架橋を導入ならびに該エピトープ中に少なくとも1つの他の修飾を導入する段階、この場合、架橋および修飾を施されたペプチド、タンパク質またはタンパク質複合体の免疫原性は、架橋を施されていないペプチド、タンパク質またはタンパク質複合体に比較して低減されまたは減少する。
  19. ペプチド、タンパク質またはタンパク質複合体に応答する、個体におけるT細胞活性化を低減させる方法であって、そのペプチド、タンパク質またはタンパク質複合体の2アミノ酸間にインビボにおいて安定または不可逆な少なくとも1つの架橋を導入することを含み、この場合、架橋を施したペプチド、タンパク質またはタンパク質複合体は、前記架橋を施されていない同一ペプチド、タンパク質またはタンパク質複合体に比較して、個体におけるT細胞活性化が低減される方法。
  20. ペプチド、タンパク質またはタンパク質複合体に応答する、個体におけるT細胞活性化を低減させる方法であって、ペプチド、タンパク質またはタンパク質複合体の2アミノ酸間に少なくとも1つのジチロシン架橋を導入することを含み、この場合、架橋を施したペプチド、タンパク質またはタンパク質複合体は、前記架橋を施されていない同一ペプチド、タンパク質またはタンパク質複合体と比較して、個体におけるT細胞活性化が低下される、方法。
  21. ペプチド、タンパク質またはタンパク質複合体に応答する、個体におけるT細胞活性化を低減させる方法であって、ペプチド、タンパク質またはタンパク質複合体の2アミノ酸間に少なくとも1つのジチロシン架橋を導入することを含み、この場合、ジチロシン架橋の少なくとも1つのチロシンは、別のアミノ酸残基のチロシンへの点変異に由来し、かつ4ジチロシン架橋を施したペプチド、タンパク質またはタンパク質複合体は、前記架橋を施されていない同一ペプチド、タンパク質またはタンパク質複合体に比較して、個体におけるT細胞活性化が低下される方法。
  22. ペプチド、タンパク質またはタンパク質複合体に応答する、個体におけるT細胞活性化を低減させる方法であって、ペプチド中に少なくとも1つのジチロシン架橋を導入し、ならびにペプチド中にインビボにおいて安定または不可逆な少なくとも1つの他の修飾を導入することを含み、この場合、少なくとも1つの架橋および少なくとも1つの他の修飾により、個体におけるT細胞活性化が前記架橋を施されていない同一ペプチド、タンパク質またはタンパク質複合体に比較して低減される方法。
  23. ペプチド、タンパク質またはタンパク質複合体に応答する、個体におけるT細胞活性化を低減させる方法であって、ペプチド中に少なくとも1つのジチロシン架橋を導入し、この場合、ジチロシン架橋の少なくとも1つのチロシンは別のアミノ酸残基のチロシンへの点変異に由来し、ならびにペプチド中にインビボにおいて安定または不可逆な少なくとも1つの他の修飾を導入することを含み、この場合、その架橋および他の修飾により、個体におけるT細胞活性化が前記架橋を施されていない同一ペプチド、タンパク質またはタンパク質複合体に比較して低減される方法。
  24. 個体の疾患または障害の治療に使用されるペプチド、タンパク質またはタンパク質複合体の有効性を増加させる方法であって、ペプチド、タンパク質またはタンパク質複合体の2アミノ酸間にインビボにおいて安定または不可逆な少なくとも1つの架橋を導入することによって、ペプチド、タンパク質またはタンパク質複合体を修飾することを含み、この場合、架橋を施されたタンパク質は、架橋を施されていないペプチド、タンパク質またはタンパク質複合体に存在する少なくとも1つの機能を保持し、かつ架橋を施されたペプチド、タンパク質またはタンパク質複合体は、架橋を施されていない同一ペプチド、タンパク質またはタンパク質複合体に比較して、個体の疾患または障害の治療においてより有効である方法。
  25. 個体の疾患または障害の治療に使用されるペプチド、タンパク質またはタンパク質複合体の有効性を増加させる方法であって、ペプチド、タンパク質またはタンパク質複合体の2アミノ酸間に少なくとも1つのジチロシン架橋を導入することによって、ペプチド、タンパク質またはタンパク質複合体を修飾することを含み、この場合、架橋を施されたタンパク質は、架橋を施されていないペプチド、タンパク質またはタンパク質複合体に存在する少なくとも1つの機能を保持し、ならびに架橋を施されたペプチド、タンパク質またはタンパク質複合体は、前記架橋を施されていない同一ペプチド、タンパク質またはタンパク質複合体に比較して、個体の疾患または障害の治療においてより有効である方法。
  26. 個体の疾患または障害の処置に使用されるペプチド、タンパク質またはタンパク質複合体の有効性を増加させる方法であって、ペプチド中に少なくとも1つのジチロシン架橋を導入し、この場合、ジチロシン架橋の少なくとも1つのチロシンは別のアミノ酸残基のチロシンへの点変異に由来し、ならびにペプチド中にインビボにおいて安定または不可逆な、少なくとも1つの他の修飾を導入することによって、ペプチド、タンパク質またはタンパク質複合体を修飾することを含み、この場合、少なくとも1つのジチロシン架橋および少なくとも1つの他の修飾を含むタンパク質は、前記架橋または修飾を施されていないペプチド、タンパク質またはタンパク質複合体の少なくとも1つの機能を保持し、ならびにペプチド、タンパク質またはタンパク質複合体中の架橋および修飾により、疾患または障害の治療におけるペプチド、タンパク質またはタンパク質複合体の有効性が前記架橋または修飾を施されていない同一ペプチド、タンパク質またはタンパク質複合体に比較して増加される方法。
  27. 少なくとも1つのジチロシン架橋ならびに、点変異、1つまたはそれ以上のアミノ酸の欠失、1つまたはそれ以上のアミノ酸の挿入、ペグ化、グリコシル化、アセチル化、アミド化、ホルミル化およびその任意の組み合わせからなる群から選択される少なくとも1つの他の修飾を含む、単離されたペプチド、タンパク質またはタンパク質複合体であって、前記架橋または修飾を施されていない同一ペプチド、タンパク質またはタンパク質複合体の少なくとも1つの機能を保持するペプチド、タンパク質またはタンパク質複合体。
  28. 少なくとも1つのジチロシン架橋、この場合、ジチロシン架橋の少なくとも1つのチロシンはアミノ酸残基のチロシンへの点変異に由来し、ならびに点変異、1つまたはそれ以上のアミノ酸の欠失、1つまたはそれ以上のアミノ酸の挿入、ペグ化、グリコシル化、アセチル化、アミド化、ホルミル化、およびその任意の組み合わせからなる群から選択される少なくとも1つの他の修飾を含む、単離されたペプチド、タンパク質またはタンパク質複合体であって、前記架橋および修飾を施されていない同一ペプチド、タンパク質またはタンパク質複合体の少なくとも1つの機能を保持するペプチド、タンパク質またはタンパク質複合体。
  29. 個体におけるペプチド、タンパク質、またはタンパク質複合体の免疫原性を低減させる方法であって、2アミノ酸間に少なくとも1つの架橋を導入することを含み、この場合、この架橋により抗原提示細胞の抗原プロセシングが妨害を受け、それにより、個体における該ペプチド、タンパク質、またはタンパク質複合体の免疫原性が前記架橋または修飾を施されていない同一ペプチド、タンパク質、またはタンパク質複合体に比較して低減される方法。
  30. 架橋または修飾によって、抗原のプロセシング、HLA−DMペプチドの積載、エキソペプチダーゼ媒介性のタンパク質分解による分解、HLA−DM媒介性のペプチド編集およびT細胞シグナル伝達複合体の組立ておよび活性化が妨害を受ける、請求項1〜29のいずれか一項の方法。
  31. ペプチド、タンパク質、またはタンパク質複合体が、治療用生成物、診断用生成物、酵素、ホルモン、受容体、成長因子、抗体またはその断片を含む、請求項1〜29のいずれか一項の方法。
  32. 架橋が、ホモ架橋、ヘテロ架橋、二官能性架橋、光反応性架橋、ペプチドに組み込まれた非標準アミノ酸間の架橋、または酸化的架橋を含む、請求項1〜29のいずれか一項の方法。
JP2006517860A 2003-07-03 2004-07-06 免疫原性を低減した分子の取得方法 Expired - Fee Related JP5009614B2 (ja)

Applications Claiming Priority (3)

Application Number Priority Date Filing Date Title
US48488003P 2003-07-03 2003-07-03
US60/484,880 2003-07-03
PCT/US2004/021859 WO2005051975A2 (en) 2003-07-03 2004-07-06 Methods for obtaining molecules with reduced immunogenicity

Publications (2)

Publication Number Publication Date
JP2007537133A true JP2007537133A (ja) 2007-12-20
JP5009614B2 JP5009614B2 (ja) 2012-08-22

Family

ID=34632731

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2006517860A Expired - Fee Related JP5009614B2 (ja) 2003-07-03 2004-07-06 免疫原性を低減した分子の取得方法

Country Status (7)

Country Link
US (1) US20050054572A1 (ja)
EP (1) EP1641813B1 (ja)
JP (1) JP5009614B2 (ja)
AT (1) ATE532793T1 (ja)
AU (2) AU2004293371A1 (ja)
CA (1) CA2530756C (ja)
WO (1) WO2005051975A2 (ja)

Cited By (1)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2015518819A (ja) * 2012-05-09 2015-07-06 マーシャル, クリストファー, パトリックMARSHALL, Christopher, Patrick 立体構造的に特異的なウイルス免疫原

Families Citing this family (11)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
NZ575571A (en) * 2006-10-04 2011-11-25 Janssen Pharmaceutica Nv Preparation of inactivated artificial antigen presenting cells and their use in cell therapies
EP2701743A4 (en) 2011-04-27 2015-08-19 Univ Northwestern SELECTIVE ANTIBODIES FOR TAU PATHOLOGICAL DIMERS AND PRE-FIBRILLARY TAU PATHOLOGICAL OLIGOMERS AND THEIR USE IN THE TREATMENT, DIAGNOSIS AND MONITORING OF TAUOPATHIES
EP3024483B1 (en) 2013-07-25 2020-01-15 Calder Biosciences Inc. Conformationally stabilized rsv pre-fusion f proteins
EP3805254A1 (en) 2013-08-03 2021-04-14 Calder Biosciences Inc. Methods of making and using influenza virus hemagglutinin complexes
AU2018313000A1 (en) 2017-08-07 2020-02-27 Calder Biosciences Inc. Conformationally stabilized RSV pre-fusion F proteins
EP3806888B1 (en) 2018-06-12 2024-01-31 Obsidian Therapeutics, Inc. Pde5 derived regulatory constructs and methods of use in immunotherapy
EP3870600A1 (en) 2018-10-24 2021-09-01 Obsidian Therapeutics, Inc. Er tunable protein regulation
WO2020185632A1 (en) 2019-03-08 2020-09-17 Obsidian Therapeutics, Inc. Human carbonic anhydrase 2 compositions and methods for tunable regulation
WO2020252405A1 (en) 2019-06-12 2020-12-17 Obsidian Therapeutics, Inc. Ca2 compositions and methods for tunable regulation
US20220267398A1 (en) 2019-06-12 2022-08-25 Obsidian Therapeutics, Inc. Ca2 compositions and methods for tunable regulation
WO2021046451A1 (en) 2019-09-06 2021-03-11 Obsidian Therapeutics, Inc. Compositions and methods for dhfr tunable protein regulation

Citations (1)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
US20020061549A1 (en) * 1999-10-15 2002-05-23 Marshall Christopher P. Stabilized proteins

Family Cites Families (7)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
US5747654A (en) * 1993-06-14 1998-05-05 The United States Of America As Represented By The Department Of Health And Human Services Recombinant disulfide-stabilized polypeptide fragments having binding specificity
US6410022B1 (en) * 1995-05-01 2002-06-25 Avant Immunotherapeutics, Inc. Modulation of cholesteryl ester transfer protein (CETP) activity
DE69833755T2 (de) * 1997-05-21 2006-12-28 Biovation Ltd. Verfahren zur herstellung von nicht-immunogenen proteinen
US6642011B2 (en) * 1998-04-15 2003-11-04 Genencor International, Inc. Human protease and use of such protease for pharmaceutical applications and for reducing the allergenicity of non-human proteins
US6835550B1 (en) * 1998-04-15 2004-12-28 Genencor International, Inc. Mutant proteins having lower allergenic response in humans and methods for constructing, identifying and producing such proteins
US6514729B1 (en) * 1999-05-12 2003-02-04 Xencor, Inc. Recombinant interferon-beta muteins
WO2002080963A1 (en) * 2001-04-05 2002-10-17 Virginia Mason Research Center Methods of mhc class ii epitope mapping, detection of autoimmune t cells and antigens, and autoimmune treatment

Patent Citations (1)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
US20020061549A1 (en) * 1999-10-15 2002-05-23 Marshall Christopher P. Stabilized proteins

Cited By (5)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2015518819A (ja) * 2012-05-09 2015-07-06 マーシャル, クリストファー, パトリックMARSHALL, Christopher, Patrick 立体構造的に特異的なウイルス免疫原
JP2018150330A (ja) * 2012-05-09 2018-09-27 マーシャル, クリストファー, パトリックMARSHALL, Christopher, Patrick 立体構造的に特異的なウイルス免疫原
JP2020125323A (ja) * 2012-05-09 2020-08-20 マーシャル, クリストファー, パトリックMARSHALL, Christopher, Patrick 立体構造的に特異的なウイルス免疫原
JP2022163180A (ja) * 2012-05-09 2022-10-25 マーシャル,クリストファー,パトリック 立体構造的に特異的なウイルス免疫原
JP7472209B2 (ja) 2012-05-09 2024-04-22 マーシャル,クリストファー,パトリック 立体構造的に特異的なウイルス免疫原

Also Published As

Publication number Publication date
CA2530756A1 (en) 2005-06-09
AU2011200649A1 (en) 2011-03-10
WO2005051975A2 (en) 2005-06-09
EP1641813A4 (en) 2006-08-30
ATE532793T1 (de) 2011-11-15
AU2004293371A1 (en) 2005-06-09
EP1641813A2 (en) 2006-04-05
EP1641813B1 (en) 2011-11-09
CA2530756C (en) 2012-10-16
US20050054572A1 (en) 2005-03-10
JP5009614B2 (ja) 2012-08-22
WO2005051975A3 (en) 2005-12-29

Similar Documents

Publication Publication Date Title
AU2011200649A1 (en) Methods for obtaining molecules with reduced immunogenicity
Han et al. IL-15: IL-15 receptor alpha superagonist complex: high-level co-expression in recombinant mammalian cells, purification and characterization
Halin et al. Enhancement of the antitumor activity of interleukin-12 by targeted delivery to neovasculature
JP7121496B2 (ja) 癌治療で使用するためのペグ化インターロイキン-10
Chertova et al. Characterization and favorable in vivo properties of heterodimeric soluble IL-15· IL-15Rα cytokine compared to IL-15 monomer
US10851145B2 (en) Methods for treating inflammation with fusion proteins comprising interleukin-2 and interleukin-33
TWI821287B (zh) 介白素-2突變形成之蛋白質與第i型干擾素所構成之融合蛋白質
JP2002534959A (ja) 免疫原性タンパク質の改変方法
US20140219959A1 (en) Human fusion proteins comprising interferons and targeted modified ubiquitin proteins
KR20170068553A (ko) 인터류킨-15 조성물 및 이의 용도
JPS6140221A (ja) 腫瘍壊死因子
CN1960766A (zh) 新的g-csf轭合物
Hsu et al. Selective deamidation of recombinant human stem cell factor during in vitro aging: isolation and characterization of the aspartyl and isoaspartyl homodimers and heterodimers
EP4115898A1 (en) Use of group of snake nerve growth factors and snake nerve growth factor precursors in treatment of senile dementia
US10618970B2 (en) Method of treating cancer with IL-10 and antibodies that induce ADCC
CN116096730A (zh) 细胞因子结合物
US20120083008A1 (en) Methods for obtaining molecules with reduced immunogenicity
JP2002534089A (ja) 顆粒球形成活性を有するg−csf変異体相当核酸およびタンパク質
JP7432516B2 (ja) ブタトリプシンの変異体
CN116375880A (zh) 融合蛋白及其制备方法和应用
WO2021178833A2 (en) Designed il-2 variants
RU2783315C2 (ru) Варианты свиного трипсина
CN114245802A (zh) 修饰的il-2蛋白、peg偶联物及其用途
CN1246532A (zh) 人热休克关联蛋白编码序列、其编码的多肽及制备方法
KR100490447B1 (ko) 인터페론-γ의생산을유도하는폴리펩피드,이폴리펩티드에특이적인모노클로날항체및감수성질환체

Legal Events

Date Code Title Description
A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20100511

A601 Written request for extension of time

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A601

Effective date: 20100806

A602 Written permission of extension of time

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A602

Effective date: 20100817

A601 Written request for extension of time

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A601

Effective date: 20100825

A602 Written permission of extension of time

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A602

Effective date: 20100901

A601 Written request for extension of time

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A601

Effective date: 20101004

A602 Written permission of extension of time

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A602

Effective date: 20101013

A521 Request for written amendment filed

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20101110

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20111004

A601 Written request for extension of time

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A601

Effective date: 20111228

A602 Written permission of extension of time

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A602

Effective date: 20120111

A601 Written request for extension of time

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A601

Effective date: 20120203

A602 Written permission of extension of time

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A602

Effective date: 20120210

A601 Written request for extension of time

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A601

Effective date: 20120302

A602 Written permission of extension of time

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A602

Effective date: 20120309

A521 Request for written amendment filed

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20120404

TRDD Decision of grant or rejection written
A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

Effective date: 20120508

A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

A61 First payment of annual fees (during grant procedure)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61

Effective date: 20120531

R150 Certificate of patent or registration of utility model

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20150608

Year of fee payment: 3

LAPS Cancellation because of no payment of annual fees