JP2007535957A - Es細胞からの神経細胞分化方法 - Google Patents

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Abstract

胚性幹細胞のニューロン前駆体への分化を誘導する方法、並びにニューロン前駆または祖先細胞のアッセイおよび神経突起の縮退の増大を阻害または低減する物質の同定方法が提供される。

Description

発明の分野
本発明は、インビトロにおける、多能性細胞、特にES細胞からのニューロンの前駆もしくは祖先細胞、またはニューロンの生成に関する。
胚性癌腫(EC)細胞および胚性幹(ES)細胞などの多能性細胞は、インビトロでニューロンに分化させられることが長く知られてきた。原則として、ES細胞を用いる研究は、選択された分化段階で細胞を単離し、ニューロン前駆体を特徴解析する可能性を創成する。ES細胞は、分子および遺伝学的発生経路のインビトロの研究を助長し、また、神経疾患を処置するための脳への移植用の細胞の潜在的な供給源でもある。
しかしながら、これらおよび他の適用は、培養におけるニューロンの発生の、不均一で、無秩序な、しばしば複製不可能な性質により妨げられてきた。細胞の不均一性は、神経細胞を生成させるためのES細胞の使用に伴う大問題である(総説として、参考文献3、4を参照)。典型的には、ES細胞に由来するニューロンの培養物は、様々な異なるニューロンのサブタイプおよび膠細胞を含むニューロンではない細胞を含有する。定義された一様な表現型の十分に多数の細胞が欠けていることは、神経生物学の大きな難点である。これまで、ES細胞からニューロンを生成する方法はなく、このことは、一貫した数のニューロンまたはそれらの定義された集団、従って均一な細胞集団を、生化学的アプローチを使用して脳のニューロンを特徴解析するのに十分な量で入手できないようにしている。また、ニューロンの直前の前駆体との系譜(lineage)関係は、不明なままであった。
ES細胞由来ニューロンの移植への使用に関して、分裂し続け腫瘍を形成し得るものを含む細胞混合物と対照的に、既知の子孫を生じさせる定義された前駆細胞を得るのが望ましい(参考文献3、4)。不均一な細胞は、移植組織の脳への統合を促進する、宿主組織からの栄養および/または誘導シグナルに干渉し得る。移植する細胞タイプは、機能的に重要なものであり、例えば、ドーパミン作動性ニューロンはパーキンソン病などの疾患の処置に特に必要とされ得るので、生成される前駆体およびニューロンの細胞のサブタイプの制御の増強は、かかる医療適用に望ましい。細胞の不均一性の低減は、望まざる副作用の低減および腫瘍のリスクの低下、並びに所望のニューロンの系譜である細胞の割合を高めることによる治療能力の改善に必要である。
近年、誘導シグナルおよび転写因子の使用を介して、特にドーパミン作動性ニューロンおよび運動ニューロンを含むニューロンのサブタイプを実質的に富化させる進歩があった。このように、Nurr1(参考文献5)などの転写因子または幹細胞の他のタイプとの共培養(参考文献6)は、ドーパミン作動性ニューロンの生成を顕著に増加させ、一方、ソニックヘッジホッグ(sonic hedgehog)を含む外因子の添加は、運動ニューロンのそれを増加させ、これは、移植後に宿主組織に統合されることも示された(参考文献7)。しかし、この進展にも関わらず、特定のニューロン表現型を生じさせ得る定義されたニューロンの前駆体のインビトロ生成については、依然として殆どわかっていない。
ニューロンおよび膠細胞の生成を記載している数々の異なるプロトコールが存在する(参考文献14、15、25−31)。胚性癌腫細胞株P19について早くから認識されていた通り、多能性細胞集合体のレチノイン酸による処理は、ニューロンの分化の引き金となる(参考文献32)。その後、ES細胞由来の胚様体(EB)のRAによる処理が、神経を促進し、中胚葉の遺伝子発現を抑えることも観察された(参考文献33)。EBは、ES細胞の集合および増殖により生じる三次元の集合体である。EBは、ES細胞をそれらが接着できない基板上で、典型的には細菌用培養ディッシュで培養することにより、作成され得る(例えば参考文献41参照)。
ES細胞から神経細胞を生成させる1つの方法は、Bain et al. (参考文献14) および Li et al.(参考文献10)に例示されている通り、
ES細胞を培養すること;
EB形成させること;
EBをレチノイン酸(RA)と接触させること;
EBを分離させること;および、
分離したEB細胞をプレートに播き、培養すること、
の段階を含む。
通常、初期のES細胞培養は、フィーダー細胞の支持層(不活性化された線維芽細胞)の上で行い、多能性非分化ES細胞のコロニーの形態でES細胞を維持する。線維芽細胞は、ES細胞の非分化状態を支持すると考えられている。白血病阻害因子(LIF)を培養培地に含めて分化を阻害し得る。しかしながら、LIFの存在下でさえ、いくつかのES細胞は分化する傾向があり、EB形成の間に異なる系譜の細胞が観察され得ることが観察された(参考文献3、34)。
Bain et al. および Li et al.(参考文献10、14、15)に記載の方法では、培養ES細胞をトリプシンで処理し、かつ/または、小さい塊に破砕し、次いで、EB形成のために、それらを非接着の細胞培養でプレートに播いた。細胞をRAなしで4日間、次いで、培地中のRAと共に4日間培養し、その後、EBを分離させ、ラミニン被覆ディッシュのプレートに播いた。プレートに播いた細胞を血清含有培地で培養した。
この方法を使用して、Bain et al. は、ラミニン被覆基板に緊密に接着している扁平細胞の集合、および、大部分が扁平細胞の上に載っているニューロン様細胞の集合からなる培養物の作成を報告している。約38%の細胞が、2日間の培養後にニューロンの形態を有することが観察された。これらの培養物は、様々なタイプのニューロン、特にGABA作動性ニューロンからなる混合組成のものであった。
いくつかのアプローチは、ニューロン前駆体の選択マーカーを利用し、それにより分化操作の間にニューロン前駆体以外の細胞を排除した。ES細胞から生成させた神経前駆体は、ネスチン(参考文献9)などの中間径フィラメントマーカーの発現により、または、sox遺伝子(参考文献10)などの転写因子により、大部分定義される。Li et al. は、系譜選択を使用して、Sox2陰性細胞を排除することにより、彼らの不均一な細胞集団で、Sox2発現細胞を富化させた(参考文献10)。選択方法はニューロン前駆体を富化させるのに有用であると証明されたが、選択された前駆体を定義されたニューロンの表現型の生成に使用できるか否かは疑わしい。Li et al. で入手できるデータは、定義されたサブリネージ(sub-lineage)と対照的に、Sox陽性細胞が、中枢神経系(CNS)に見出される殆どの細胞タイプを生じさせ得ることを示す。従って、Sox陽性細胞の選択は、ES細胞由来集団中のニューロン前駆細胞の割合を増加させ得るが、かかる選択は、ニューロン前駆体またはニューロンの単一のサブタイプを特異的に富化させるのに使用できないように思われる。
RAを使用しない他の方法が確立された。例えば、Okabe et al.(参考文献27、参考文献43)で使用された方法はRAを使用しないが、形成されたEBを、分離前に、接着基板上で特別な培地中に培養する中間段階を含む。中間段階は、Abe et al.(参考文献30)でも使用され、ここでは、培養したEBを、それらが接着できる基板に移す。次いで、トリプシンによる分離に先立ち、それらを接着状態で培養する。
Abe et al.(参考文献30)および Okabe et al.(参考文献27)のものなどのいくつかの方法は、塩基性線維芽細胞増殖因子の使用を含んだ。Abe et al は、その後、有糸分裂阻害剤を使用し、それは、ニューロンおよび非ニューロン細胞の死を引き起こした(参考文献30)。
本発明
我々は、ES細胞の神経細胞への分化を最適化して、定義された神経細胞系譜の生成および神経細胞集団の均一性に関して驚くべき利点をもたらすことができる手段を見出した。従って、本発明は、ES細胞から神経細胞をインビトロで生成させるための、ES細胞のニューロンまたはニューロン前駆もしくは祖先細胞への発生および/または分化を誘導および/または促進する改良された方法を提供する。
好ましい実施態様では、本発明の方法は、実質的に均一な神経細胞集団の作成を可能にする。ここで、神経細胞は、実質的に全て単一の定義されたニューロンの系譜、表現型、細胞タイプであり、かつ/または、同じ分化段階にある。
本明細書の他の箇所で詳細に説明する通り、我々は、均一なニューロン前駆体を得る操作を考案し、それは、放射状膠細胞と同定された。その後の培養の間に、ES細胞由来の放射状膠細胞は、段々と錐体ニューロンに分化した。本発明の方法により生成される前駆体およびニューロンは、実質的に均一であり、先行技術の方法と比較して高い単一の系譜のニューロン細胞の収率%を示した。
従って、より好ましい実施態様では、本発明の方法は、ES細胞を使用する先行技術では生成が困難であった皮質の最も重要なニューロンの集団の1つである、放射状膠細胞および錐体ニューロンの実質的に純粋な集団を作成できる。
本発明により、高レベルの神経の前駆/祖先細胞の均一性がもたらされるので、これらの細胞は、定義された系譜のニューロンの細胞を作成するための、さらなる分化および/または成熟化に適する。前駆/祖先細胞を分化させ、本明細書で示す通りに錐体ニューロンを作成し得るか、または、外因子または内因子により操作して、他のニューロン集団を生成させ得る。
本発明により提供される細胞の数と均一性における利点は、先行技術の神経形成および神経細胞分化の方法により作成される細胞と、そして、マウスまたはラットの脳から調製し得る初代ニューロンの限定された数と、対照的である。
生化学的研究は、過去に、先行技術の方法により便利に作成できる神経細胞の数が限定されていたことにより、妨害された。本発明は、神経細胞の発生、特に神経前駆体からニューロン細胞への移行に関与する、生化学的および遺伝学的メカニズムの研究を助長する。ES細胞は、容易に遺伝学的に操作でき、無制限な数で作成でき、そして、本発明は、生化学的研究用の、定義された系譜の多数のニューロンの作成に理想的に適する。
加えて、ES細胞は容易に遺伝学的に操作できるか、または、関連する突然変異を有するマウスから単離できるので、本発明は、野生型と突然変異のニューロンの比較および神経変性疾患において特定の細胞タイプの喪失を引き起こすメカニズムの同定を助長する。ES細胞の遺伝子操作は容易であるが、初代ニューロンの操作、特に安定な操作は、極度に困難である。ES細胞の遺伝子操作は、全子孫が同じ突然変異を含有する均一な改変された株を提供でき、1または2ヶ月で入手できるが、一方、安定な突然変異を有するマウスの系統を樹立するには、数年を要し得る。従って、前駆、先祖およびニューロン細胞をインビトロでES細胞から作成する方法を提供することにより、本発明は、トランスジェニックマウス系統を樹立する必要性を回避し、それにより過去には実用的でなかったレベルで変異ニューロンの研究を可能にする。
本発明の方法は、また、ニューロン用の細胞のアッセイ系(例えば、神経突起の伸長、ニューロンの細胞死、神経形成およびシナプス形成)も提供する。かかるアッセイは、当分野で必要とされているが、それらの使用および性能は、ニューロンを十分な量で便利に作成できなかったので、限定されてきた。本発明は、以前より大量の、はるかに均一性の高いニューロンの作成を可能にし、かくしてニューロンのアッセイの実施を可能にする。
本発明により作成されるニューロンおよび/またはニューロン前駆/祖先細胞は、また、神経変性疾患またはニューロンの喪失を処置するための、脳への移植などの医療適用にも適する。本発明により作成される所望のサブタイプの神経細胞の均一性はより高いので、処置の治療能力は改善され、移植後の腫瘍のリスクは低減される。
発明の詳細な説明
本発明は、神経細胞、例えばニューロンおよび/またはニューロン前駆/祖先細胞の作成または生成方法、ES細胞のニューロン前駆または祖先細胞への分化の促進または誘導方法、および前駆または祖先細胞のニューロンへの分化または成熟化の促進または誘導方法に関する。
本発明は、胚性幹(ES)細胞のニューロン前駆もしくは祖先細胞またはニューロンへの発生および/または分化を誘導および/または促進する、および/または、神経細胞を作成または生成する、改良されたインビトロの方法に関し、その方法は、
ES細胞を培養すること;
胚様体(EB)を形成させること;
EBをレチノイン酸(RA)と接触させること;および、
EBを分離させること;
を、以後に記載する1またはそれ以上のさらなる特徴または段階と組み合わせて含む。
本発明の方法では、分離したEB細胞は、ニューロン前駆細胞またはニューロン祖先細胞である。従って、EBの分離により、ニューロン前駆または祖先細胞の培養物を作成できる。
場合により、本方法は、さらに、
分離したEB細胞をプレートに播き、それによりニューロン前駆または祖先細胞のプレート上の培養物を得ること、
を含む。
本方法は、ニューロン前駆または祖先細胞を培養して、ニューロンを作成することを含み得る。従って、いくつかの実施態様では、本発明の方法は、分離したEB細胞をプレートに播き、培養して、ニューロンを作成することを含む。
本発明の方法は、さらに、下記の通りの1つまたはそれ以上の特徴/段階を含む。文脈により断りの無い限り、任意の特徴または段階を単独で使用してもよく、または、任意の他の特徴または段階と組み合わせて使用してもよい。
フィーダーを使用しないES細胞の培養
好ましくは、本方法は、フィーダー細胞(典型的には、不活性化された線維芽細胞)の非存在下でES細胞を培養することを含む。方法は、ES細胞をフィーダー細胞と共に最初に培養し、続いてフィーダー細胞なしで培養することを含み得る。フィーダー細胞は、ES細胞を繰り返し植え継ぐことにより、希釈して除去し得る。フィーダー細胞なしで、少なくとも1回、より好ましくは少なくとも2回の植え継ぎを胚様体形成の前に実施することが好ましい。従って、フィーダー細胞は、好ましくは、EB形成に使用するES細胞培養には存在しない。「植え継ぎ」は、細胞を分離し、多数の細胞を再びプレートに播くことを含む。例えば、植え継ぎは、培養ディッシュから細胞を剥離/分離すること(通常、トリプシンを使用する)、細胞の集合体の分離および数々の分離したES細胞を再びプレートに播くこと(接着培養)、およびES細胞を培養することを含み得る。
適切な培養培地は、本明細書の他の箇所で記載する。ES細胞培養培地に白血病阻害因子(LIF)を場合により含めてよい。
EB形成のためのES細胞の選択とプレーティング(Plating)
我々は、ES細胞の増殖状態がそれらの多能性に影響を与え、本方法でプレートに播いた細胞の密度が、それらの分化の能力および傾向に影響力を有することを認識した。我々は、増殖しているES細胞を制御された細胞密度で選択し、プレートに播くことにより、より多数の定義された細胞系譜を有するニューロン前駆体を入手し得、より不均一な細胞は殆ど作成されないことを見出した。
好ましくは、本発明の方法は、増殖性の高い、かつ/または、形態学的に均一なES細胞を、EB形成のために選択することを含む。好ましくは、方法は、測定/評価/定義/決定された数または密度の該ES細胞を、EB形成用にプレートに播くことを含む。好ましくは、本方法は、プレートに播いてEBを作成するために、測定、評価、定義または決定されたES細胞の数を選択することを含む。
本方法は、好ましくは、
ES細胞の増殖状態(倍加時間、細胞数の増加、または任意の他の適切な尺度の決定により測定または評価し得る);
ES細胞の形態;および/または
EB形成のためにプレートに播くES細胞の数または密度、
を測定、評価、観察または決定することを含む。
従って、好ましくは、測定、評価または決定された密度で、細胞をプレートに播く。細胞数の測定、評価または決定は、当分野で既知の任意の方法によるものであり得、例えば、所定の面積の細胞を顕微鏡下で計数すること、または、Casy(登録商標)1 (Schaerfe System GmbH)のような常套の細胞カウンターを使用することを含む。細胞の形態は、顕微鏡観察により観察し得る。
これらの点の各々は、下記でより詳細に論ずる。
増殖性の高い細胞の作成および選択
増殖性の高い細胞は、本明細書に記載する通り、特定の培養方法により作成される細胞であり得る。我々は、ES細胞の増殖状態は、ES細胞の培養方法により変動し得ることを見出した。
ES細胞の培養または植え継ぎは、好ましくは増殖性の高い細胞を作成する。好ましくは、植え継ぎは約2日毎に繰り返し、ES細胞培養は、好ましくは少なくとも2回のフィーダー細胞上の植え継ぎ、続いて少なくとも2回のフィーダー細胞なしでの植え継ぎを含む。ES細胞は、例えば、10cmディッシュのフィーダー細胞上のES細胞を分割し、フィーダーなしで再びプレートに播く(例えば、体積で1/4の細胞懸濁液を取り、元の培地体積で再びプレートに播く)ことにより、増殖性の高い状態でフィーダーを除かれるべきであり、60%コンフルエントのES細胞培養を翌日に既に再度もたらすべきである。フィーダーなしの植え継ぎは、細胞約0.5x10個/cmでプレートに播くことを含み得る。
好ましくは、ES細胞の培養は、ES細胞培養用にプレートに播いた細胞の数または密度の測定、評価または決定を含む。
増殖性の高いES細胞は、実質的に以下の通りに(通常フィーダー細胞なしで)ES細胞を培養または植え継ぎすることにより作成されたES細胞であり得る:
ES細胞を、細胞約0.3x10ないし4x10個/cm、例えば、細胞約0.5ないし2x10個、好ましくは約1x10個/cmの密度でプレートに播く;そして、
プレートに播いた2日後にES細胞を回収/分離し、場合により再びプレートに播く。
ES細胞は、プレートに播いた2日後に分割(分離)することにより、回収するべきである。通常、この培養手順(植え継ぎ)は、EB形成用に増殖性の高い細胞を選択する前に、少なくとも2回または3回実施するべきである。
例えば、約2x10個の細胞を、10cm細胞培養ディッシュのプレートに播き得る。上記の手順により、通常、細胞10x10個ないし35x10個/10cm、例えば10ないし20x10個を、2日後に回収できる。
増殖状態は、ES細胞の倍加時間の観点で測定し得る。本発明の方法は、ES細胞の倍加時間を測定し、増殖性の高い細胞を選択することを含み得る。例えば、増殖性の高い細胞は、8時間またはそれより短い、16時間またはそれより短い、または、24時間またはそれより短い、通常8ないし24時間の倍加時間を有し得る。
形態学的特徴
EB形成に使用するES細胞は、好ましくは、形態学的に均一であり、全てまたは実質的に全てのES細胞が同じまたは類似の形態学的特徴を有する。
好ましくは、本発明の方法は、形態学的に均一なES細胞をEB形成用に選択し、これらの細胞をEB形成用にプレートに播くことを含む。好ましくは、EB形成用に選択された全てまたは実質的に全て(例えば、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%または少なくとも99%)のES細胞は、1つまたはそれ以上の、最も好ましくは全ての、以下の形態学的特徴を有する(フィーダー細胞なしの培養で):平坦な単層での増殖;相互に直接接触せずに隣り合う細胞(しかし、それでも密に詰まっている);大きい核;多くの仁;相互の上に増殖しない、または、コロニー様形態ではない細胞。好ましくは、細胞は密に詰まっており、例えば、細胞は、10cmディッシュにつき細胞約20x10個(細胞2x10個/cm)の密度、好ましくは、10cmディッシュにつき細胞約10−30x10個、例えば細胞15−25x10個/の密度である。本方法は、1つまたはそれ以上の好ましいES細胞の形態学的特徴を観察すること、および/または、1つまたはそれ以上のこれらの特徴を有する細胞を選択することを含み得る。
細胞の形態は、増殖状態の指標としても使用し得る。増殖性の高い細胞は、好ましくは、1つまたはそれ以上の、好ましくは全ての、上記で列挙した形態学的特徴を有する。
好ましくは、培養する全てのES細胞は、単一のES細胞に由来する。例えば、本方法の初期段階は、単一のES細胞のコロニーを選択し、そのコロニーからES細胞を培養することを含み得る。これにより、その培養におけるES細胞の形態学的均一性を含む一様性および均一性を高めることができる。
プレートに播く密度
EB形成のために、かくして生成された増殖性の高い細胞および/または形態学的に均一な細胞を、通常、細胞約0.5x10ないし5x10個/EB形成用培養培地15ml、好ましくは培地15ml中に細胞2.5−2.5x10個、例えば細胞3x10個を使用して、プレートに播くべきである。通常、細胞約0.3ないし3.5x10個ml−1、好ましくは細胞1.6−2.5x10個ml−1、最も好ましくは細胞2x10個ml−1をプレートに播くべきである。通常、10cmのプレートで、15mlの培地が好ましい体積であるが、10mlまたは10ないし15mlを使用できる。
EB形成用にプレートに播く細胞の密度は、使用するES細胞の増殖状態に従って合わせるべきである。従って、ES細胞培養がより密であるならば、より多くの細胞をプレートに播くべきであり、一方、培養があまり密でないならば、より少ない細胞をプレートに播くべきである。我々は、最良の結果は、最も速く増殖しているES細胞を使用して得られることを見出した。
例として、倍加時間約12−16時間の均一な形態のES細胞を選択し、細胞約0.5x10個/cmの密度でプレートに播き得る。
細胞の分離
本発明の方法では、一般的に、細胞の分離は、好ましくは細胞(ES細胞またはEB)を分離して、実質的に2個または3個の細胞の集合体を欠く、単一の細胞の懸濁液を形成することを含む。好ましくは、懸濁液は、完全に単一に分離された細胞からなるものである(即ち、懸濁液は細胞の集合体を有さない)。好ましくは、90%、95%、98%または99%より多い懸濁液中の細胞が、単一に分離されている。好ましくは、懸濁液中の5%より少ない細胞が、4個またはそれ以上の細胞の集合体を形成している。
トリプシン(例えば0.05%)および/または破砕は、本明細書の別の箇所で詳細に説明する方法を使用して、細胞の分離に使用し得る。
ES細胞は、EB形成用にプレートに播くのに先立ち、十分に分離するべきである。従って、好ましくは、本発明の方法は、ES細胞を分離して、実質的に2個または3個の細胞の集合体を欠く単一の細胞の懸濁液を形成することを含む。好ましくは、懸濁液は、完全に単一に分離された細胞からなる(即ち、懸濁液は細胞の集合体を全く有さない)。好ましくは、90%、95%、98%または99%より多い懸濁液中の細胞が、単一に分離されている。好ましくは、懸濁液中の5%より少ない細胞が、4個またはそれ以上の細胞集合体を形成している。
本発明の方法は、ES細胞の分離レベルを決定または評価することを含み得る。好ましくは、方法は、ES細胞を分離し、本発明により分離した細胞の懸濁液を選択することを含む。顕微鏡観察または常套の細胞カウンターを使用して、分離の程度を決定または評価し得る。例えば、Casy(登録商標)1 細胞カウンターを使用して、集合体が存在する場合に、直径の大きい細胞のピークを検出する。
EB細胞の直接的分離
EBは、懸濁培養で培養し、次いで、EB細胞を分離し、分離したEB細胞の懸濁液を作成する。通常、EBを8日後に、即ち、EB形成用に細胞をプレートに播いてから8日目に、または、RA添加の4日後に、分離する。分離は、これより早くても遅くてもよいが、通常、RA添加の3ないし5日後である。当業者は、分離に最適な時期を実験により決定できる。
好ましくは、EBは、分離に先立ち接着基板のプレートに播かないが、むしろ、細胞の分離まで、非接着培養で維持する。従って、EBは、好ましくはプレートに播くのに先立ち分離し、直接プレートに播くべきではない。
EBの分離は、通常、EBをトリプシン(通常0.05%、または0.01ないし0.5%)とインキュベートすることを含む。好ましくは、本発明の方法は、分離したEBの懸濁液を濾過して細胞の塊を除去することを含む。例えば、細胞は、メッシュまたはストレイナー、典型的にはナイロンメッシュまたはストレイナーを通して、濾過し得る。通常、40μmの細胞メッシュまたはストレイナーを使用する。本発明の実施態様では、孔またはメッシュの直径は、好ましくは、少なくとも20、30または40μm、好ましくは100、80、60または50μmであるか、またはそれより小さい。
EB細胞の保存
本発明の方法は、分離したEB細胞を保存すること、例えば、細胞を液体窒素中で凍結することを含み得る。例えば、保存は、細胞を遠心分離し、遠心分離後の細胞をEB培地+10%DMSOに再懸濁し、細胞を液体窒素中で凍結することを含み得る。従って、いくつかの実施態様では、本方法は、EBを分離し、分離したEB細胞を保存することを含む。かくして、神経前駆体の便利で容易な供給を達成し得る。
凍結保存物は、例えばプレートに播き、培養してニューロンを作成するために、必要に応じて必要な時に融解し得る。かかる前駆体を後の使用のために保存できることは、当分野で過去に公表されなかった。通常、細胞を融解し、融解直後に培地、典型的には10mlのN2培地に再懸濁し、遠心分離(典型的には5分間、1000rpm、室温)し、再懸濁(典型的にはN2培地中)する。
分離したEB細胞をプレートに播く密度
EB細胞をプレートに播く態様において、我々は、EB細胞をプレートに播く密度が、細胞の生存および分化に重要であることを見出した。プレートに薄く播きすぎると細胞の生存率を低下させ、一方、プレートに濃く播きすぎると分化速度に悪影響を与える。プレートに播く密度は、培養の純度、即ち、非ニューロン細胞の量対ニューロン細胞の量にも影響を与える。好ましくは、分離したEB細胞約0.5x10個ないし2.5x10個/cm、例えば細胞約1ないし2x10個、最も好ましくは約1ないし1.5x10個/cmを、プレートに播くべきである。
本発明の方法は、本明細書の他の箇所で記載する方法を使用して、プレートに播くEB細胞の数または密度を測定、評価または決定することを含み得る。
培養培地の交換
我々は、分離したEB細胞をプレートに播いた約2時間後に培養培地を交換すると、細胞生存率の顕著な、大幅な上昇を達成できることを観察した。この知見は、当分野で今まで稀であった、長期のニューロンの培養をもたらす可能性を開く。
この文脈で、培養培地の交換は、培養培地を新しくするか、または置き換えることを意味する。新しい培地は、好ましくは、分離したEB細胞が初めにまたは以前にプレートに播かれた培地と同じ組成のものである。即ち、同じタイプの培地を使用する。類似の組成の培地を使用してもよいが、好ましくは、組成は以前に使用したものと同じである。例えば、培地は、N2培地であり得る。
従って、本発明の方法は、好ましくは、EBを分離して、分離したEB細胞を培養培地中でプレートに播くのに続き、培養培地を交換することを含む。好ましくは、培養培地は、プレートに播いた約1ないし6時間後に交換する。
培養培地は、プレートに播いた6時間以内に、好ましくは、プレートに播いた5、4、3または2.5時間以内に交換し得る。培養培地は、プレートに播いた少なくとも約1時間、1.5時間または2時間後に交換し得る。
最も好ましくは、培養培地は、プレートに播いた約1ないし3時間後に、より好ましくは約1.5ないし2.5時間後に、最も好ましくは約2時間後に交換する。
プレートに播いた分離したEB細胞の培養
分離したEB細胞は、好ましくはN2培地中でプレートに播く。
2日後、好ましくは、「完全培地」(実施例参照)などのニューロンの分化に適する培地に、培地を交換する。培地の選択および組成は、所望のニューロンの系譜に依存し得る。例えば、ここで使用する完全培地は、ブリューワー(Brewer)の培地を基礎とし、錐体ニューロンの発生を促進するように設計された。他の培地または因子、例えばコリン作動性運動ニューロンをもたらすShh(ソニックヘッジホッグ)を選択して、異なるニューロンの系譜を支持し得る。
我々は、本発明により作成される前駆体は、ニワトリ胚に移植した後、運動ニューロンを含む数々の異なる特定のニューロンの系譜に分化できることを見出した。
いくつかの実施態様では、培養培地はT3を含有しないことが好ましい。ここで使用する完全培地は、ブリューワーの培地を基礎としたが、T3を組成から除いた。FCS中に見出されるT3は、ニューロンの分化を阻害し得る可能性がある。
好ましくは、Neurobasal 培地は使用しない。Neurobasal 培地+B27添加物(両方とも、GIBCOから入手可能)は、先行技術では典型的にニューロンの培養に使用される。しかしながら、我々は、Neurobasal 培地が、ニューロン細胞の発生よりもむしろ膠細胞の発生を促進し得ることを観察した。従って、Neurobasal 培地の使用は、作成されるニューロン細胞の中に、望まざる膠細胞の存在を導き得る。対照的に、本発明で使用する完全培地は、ニューロンの発生に都合よく、膠細胞の発生を抑制すると思われる。
好ましくは、プレートに播いた細胞(分離したEB細胞、ニューロン前駆/祖先細胞)は、血清の非存在下で培養し、血清の存在下で培養しない。(細胞分離後にトリプシンを不活性化するために血清を使用し得るが、その後、例えば遠心分離して細胞をペレットにし、実質的に上清を完全に除去することにより、除去すべきである。)
好ましくは、増殖因子(特に、EGF、FGF/bFGFおよびPDGF)は、培養培地中に存在せず、前駆または祖先細胞は、これらまたはその他の増殖因子の存在下で培養しない。
方法は、ニューロンを培養することを含み得る。ニューロンも、また、好ましくは血清の存在下で培養せず、好ましくは、増殖因子、特にEGF、FGF/bFGFまたはPDGFの存在下で培養しない。
さらに、本発明の方法は、神経細胞またはニューロンを富化させるために、正または負の選択段階、例えばSox−2遺伝子選択を必要とせず、好ましくは含まないが、所望により、かかる選択操作を使用してもよい。本発明の方法は、選択段階がなくても、実質的に均一な神経細胞集団を作成する。好ましくは、本発明の方法は、非神経または非ニューロンの細胞タイプ(例えば分裂している細胞)に対する負の選択段階を含まない。好ましくは、本発明の方法は、神経細胞またはニューロンを富化させるための、正の選択段階を含まない。既知の選択方法には、例えばSox−2陰性細胞に対するSox−2選択などの遺伝学的選択、および、非神経または非ニューロンの細胞を阻害および/または殺傷するために、細胞を負の選択物質と接触させること、例えば、細胞をAraCまたはFRDUなどの抗分裂促進因子と接触させ、分裂している細胞を阻害および/または殺傷することが含まれる。
ES細胞
胚性幹細胞は、哺乳動物の胚盤胞の内側細胞塊から単離される多能性幹細胞である。本発明で使用する胚性幹細胞は、ヒトまたは非ヒト、例えばモルモット、ラット、マウスまたは他の齧歯類、ネコ、イヌ、ブタ、ヒツジ、ヤギ、ラクダ、ウマまたは霊長類、例えばサル由来であり得る、任意の哺乳動物に由来し得る。典型的には、マウスのES細胞を使用する。
本発明では、ES細胞は、通常、多能性細胞であり、全能性細胞ではなく、生殖細胞を作成できない。本明細書の実施例で使用するES細胞は、多能性である。場合により、全能性ES細胞を使用し得る。
数々のES細胞株が当分野で知られており、本発明で使用し得る(例えばJ1、E14)。
選択手順、例えばSox2選択を可能にするように設計されたES細胞を使用し得る。
本明細書の他の箇所で記載する通り、本発明で使用するES細胞は、導入遺伝子または変異遺伝子を含有するか、または内在性遺伝子を過剰発現する、標的化細胞株または遺伝子操作された株であり得る。
プロモーター(例えばニューロン特異的発現用のプロモーター)に機能し得るように連結したレポーター遺伝子を含む、ES細胞株を使用し得る。我々は、Tau−GFP株の使用を本明細書に記載する。Tau遺伝子座の特性には、挿入されたcDNAの高い対応する発現レベル、高い組換え効率、ニューロンのみでの発現が含まれ、Tauノックアウトには明らかな表現型はない。我々は、tau遺伝子座を使用して、調べるcDNAを挿入した。Tauは、様々なcDNAで容易に置き換えることができるか、または、cDNAをTau遺伝子座に容易に挿入し得(それらの発現がTauプロモーターと機能し得るように連結するように)、ニューロン特異的な安定な高レベル発現を迅速に確立できる(参考文献42)。
神経細胞
本明細書で使用するとき、神経細胞は、神経系の細胞であり、文脈で断りのない限り、神経幹細胞、ニューロン前駆または祖先細胞、およびニューロン(ニューロン細胞)を含む。用語「ニューロン」および「ニューロン細胞」は、互換的に使用する。
「幹細胞」は、自己再生でき、多能性または神経幹細胞であるならば、ニューロン、星状細胞および乏突起膠細胞を含む神経系の全ての細胞タイプを生じさせられる、任意の細胞タイプを意味する。幹細胞は、以下のマーカーの1種またはそれ以上を発現し得る:Oct−4;Sox1−3;段階特異的胚抗原(SSEA−1、−3および−4)(Tropepe. et al., 2001, Neuron 30, 65-78)。神経幹細胞は、以下のマーカーの1種またはそれ以上を発現し得る:ネスチン;p75ニューロトロフィン受容体;Notch1、SSEA−1(Capela and Temple, 2002, Neuron 35, 865-875)。
「神経前駆細胞」は、神経幹細胞の娘または子孫を意味し、幹細胞と比較して、より分化した表現型、および/または、より低下した分化能を有する。前駆細胞は、発生中にニューロンと直接の系譜関係にあるかまたはないが、しかし、定義された環境条件下では、ニューロンの表現型に分化形質転換(transdifferentiate)するか、または再分化するか、またはそれを獲得するように誘導され得る、任意の他の細胞を意味する。
「系譜」は、ある定義された細胞タイプの子孫、または、それに由来する細胞を意味する。「サブリネージ」は、ある系譜のサブタイプを意味する。
マーカーの検出および細胞タイプの同定
本発明の方法は、好ましくは、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%または少なくとも95%の細胞が、ニューロン前駆/祖先細胞、例えば放射状膠細胞、またはニューロン、例えば錐体ニューロンである、細胞集団を作成する。方法は、好ましくは、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%または少なくとも99%の細胞を、ニューロン前駆/祖先細胞、例えば放射状膠細胞、またはニューロン、例えば錐体ニューロンと同定することを含む。本発明のニューロン細胞の培養方法は、好ましくは、5%より少ない星状細胞、例えば4%、3%、2%または1%を有する細胞集団を作成する。
上記した通りの本発明の方法は、好ましくは、これらの割合を達成するようなものである。本発明は、上記の通りの1つまたはそれ以上の方法の段階および特徴を使用して、これらの細胞の割合を達成、作成または生成する方法を提供する。
本発明の方法は、分離したEB細胞を、ニューロン前駆体、または、(プレートに播かれた培養の後に)ニューロンと同定することを含み得る。本方法は、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%または少なくとも95%の細胞を、決定、観察または確認し、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%または少なくとも99%の細胞を、ニューロン前駆/祖先細胞、例えば放射状膠細胞、またはニューロン、例えば錐体ニューロンと同定することを含み得る。典型的に、本明細書に記載のニューロンの細胞培養方法で作成される5%より少ない、例えば4%、3%、2%または1%より少ない細胞が、星状細胞である。
細胞の形態を、例えば顕微鏡検査により観察することにより、細胞の系譜および/または細胞タイプを決定し得る。本方法は、少なくともこれらの生成された細胞の部分において、ニューロン前駆体/祖先の形態またはニューロン細胞の形態を、観察することを含み得る。ニューロン前駆体/祖先は、伸長された、および/または、二極性紡錘体の形態を有し得る。ニューロンの系譜は、ニューロンの形態を観察することにより決定し得、例えば、錐体ニューロンは、三角形であり、分枝する神経突起の伸長を有し、一方、コリン作動性ニューロンは、二極性の形態を有する。
本発明の方法により生成される細胞は、代替的または追加的に、マーカー、典型的には、抗体により認識される細胞表面マーカーの検出を介して同定され得る。本方法は、1種またはそれ以上のマーカーを検出することを含み得る。その存在は、細胞が特定の系譜もしくはサブリネージ、または特定の細胞タイプもしくはサブタイプであることを示す。当業者は、系譜または細胞タイプの指標として同定および使用され得るマーカーを知っている。
例えば、本方法は、細胞上のマーカーPax6の存在を検出し、その細胞をニューロン前駆体、例えば放射状膠細胞と同定することを含み得る。検出し得る他のマーカーには、放射状膠細胞に存在するネスチン、RC2およびBLBP、並びに、ある種のニューロン細胞に存在するp75、GluR1、シナプトフィジン、Trks(例えばTrkA、TrkB、TrkC)およびAPPが含まれる。
本方法は、ニューロン前駆体マーカーを発現している高い割合の細胞、例えば、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%または少なくとも95%の細胞を検出し、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%または少なくとも99%の細胞をニューロン前駆体と同定することを含み得る。
本方法は、ニューロン細胞マーカーを発現している高い割合の細胞、例えば、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%または少なくとも95%の細胞を検出し、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%または少なくとも99%の細胞をニューロンと、好ましくは、定義された系譜のニューロン、例えば錐体ニューロンまたはドーパミン作動性ニューロンと同定することを含み得る。
従って、本方法は、実質的に均一なニューロン前駆細胞またはニューロンの集団を作成し得る。少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%または少なくとも99%の細胞は、同じタイプ/系譜またはサブタイプ/系譜のもの、例えば放射状膠細胞などの同じタイプのニューロン前駆体、または、錐体ニューロンなどの同じ系譜のニューロンであり得る。
本明細書の実施例は、様々なマーカーの発現の時間経過および期間に亘る形態学的発生の詳細を提供する。本発明の方法は、EB分離後の一定の時間に、マーカーを検出すること、および/または、特定の形態を観察すること(実施例に記載の通り)、例えばニューロンの形態をEB分離後2日以内に観察すること、および/または、Trk受容体の発現を約7日後に検出することを含み得る。例えば、本発明では、分離したEB細胞の99%によるRC2+発現を検出することにより示される通り、本発明の方法により作成された細胞の約99%が放射状膠細胞であると証明される。本発明では、EB分離の約7日後にvGLUT1およびGFPの発現を測定するか、またはそれらを計数することにより示される通り、少なくとも80%のニューロンが本発明の方法により日常的に作成され得ることも示される。
百分率は、生細胞中の%または核マーカー、例えばDAPIまたはヘキストを発現している細胞中の%として算出し得る。
EBの形成およびRA処理
本発明の方法では、一般的に、EBを形成させ、培養培地中で培養する。EB形成および培養の間、培養培地は、典型的には2日毎に交換する。
通常、本発明の方法では、1日またはそれ以上、典型的には2、3または好ましくは4日、または5、6、7または8日まで、RAの存在下でEBを培養する。EBは、RAと接触させるのに先立ち、最初にRAの非存在下で、1日またはそれ以上、通常2ないし6日間、典型的には2、3または好ましくは4日間、または5ないし6日まで培養し得る。4−日/4+日の手順は、Bain et al. および Li et al. により使用された。
当業者は、RAの適切な濃度を選択できる。例えば、その濃度は、例えば少なくとも0.25μM、少なくとも0.5μMまたは少なくとも1μMであり得る。その濃度は、例えば10μMまたはそれ以下、7.5μMまたはそれ以下、または、5μMまたはそれ以下であり得る。好ましくは、その濃度は、両端を含めて0.5ないし5μMである。例えば、その濃度は、1μMまたは5μMであり得る。
神経細胞アッセイ
本発明のさらなる態様は、ニューロン前駆もしくは祖先細胞またはニューロン細胞で実施される細胞アッセイ方法を提供する。それは、通常、インビトロで生成された細胞(初代ニューロンではない)であり、好ましくは、本発明の方法により作成される細胞である。そのアッセイ方法は、ニューロン前駆もしくは祖先細胞またはニューロンを作成するために、本明細書に記載の本発明の方法を含み得る。本発明の方法は、神経分化(ニューロン前駆もしくは祖先細胞またはニューロンの作成)のために本明細書に記載の本発明の方法を実施することを含み得、さらに、本明細書に記載の細胞アッセイ方法の段階を含む。
従って、上記の神経分化方法を、アッセイに関して使用し得る。
さらに、我々は、ニューロン前駆もしくは祖先またはニューロン細胞の実質的に均一な培養物/集団を初めて提供したので、本発明は、ニューロン前駆もしくは祖先またはニューロン細胞の実質的に均一な培養物/集団を用いて実施するアッセイ方法をさらに提供する。それは、本発明の神経分化方法により作成されてもされなくてもよいが、通常は、インビトロの方法により作成される。
本発明のアッセイ方法は、1つまたはそれ以上のニューロン前駆もしくは祖先細胞またはニューロンの特徴(「ニューロンの特徴」)、例えば神経突起の増殖または神経突起の伸長/縮退、ニューロンの形、ニューロンの細胞死、神経形成、ニューロンの分化、電気的活性、シナプス形成および/またはニューロンの細胞マーカーを検出、定量、観察または決定することを含み得る。
いくつかの実施態様では、本発明のアッセイ方法は、ニューロン前駆もしくは祖先細胞またはニューロン細胞を作成するために、本明細書に記載の神経分化方法を含み得、ここで、本方法は、ES細胞および/またはEBを試験条件下で培養し;そして、ニューロン前駆もしくは祖先細胞またはニューロン細胞の1つまたはそれ以上のニューロンの特徴を検出、定量、観察または決定することをさらに含む。
他の実施態様では、本発明のアッセイ方法は、ニューロン前駆もしくは祖先またはニューロンの細胞を試験条件下で培養し;そして、その細胞の1つまたはそれ以上のニューロンの特徴を検出、定量、観察または決定することを含み得る。場合により、細胞は、本明細書の他の箇所に記載の神経分化方法に従い、作成および/または培養され得る。
アッセイ方法は、場合により、試験条件(「試験培養」)下のニューロンの特徴を、第2の条件(「対照培養」)下で培養した細胞のニューロンの特徴と、場合により、第2の条件下で培養した細胞の歴史的データと、比較することを含み得る。方法は、細胞を第2の条件下で培養することを含み得る。
従って、アッセイ方法は、ニューロン前駆もしくは祖先細胞またはニューロン細胞を作成するために、本明細書に記載の神経分化方法を含み得る。それは、第1および第2の条件下でES細胞またはEBを培養し;そして、第1の条件下で培養したニューロン前駆もしくは祖先細胞またはニューロン細胞の1つまたはそれ以上のニューロンの特徴を、第2の条件下で培養したニューロン前駆もしくは祖先細胞またはニューロン細胞の同じニューロンの特徴と、各々比較することを含む。
試験条件または第1の条件下で培養することは、細胞を試験化合物と接触させるか、または、細胞を試験化合物にさらすか、または、培養培地に添加または含有され得る試験化合物の存在下で細胞を培養することを含み得る。第2の条件下で培養することは、細胞を試験化合物の非存在下で培養するか、または、細胞を試験化合物に接触または露出しないことを含む。
試験化合物は、任意の分子であり得、試験化合物のライブラリー由来のものであり得る。いくつかの実施態様では、試験化合物は二本鎖RNA(dsRNA)分子であり、第1または試験条件下で培養することは、ES細胞またはEB細胞を二本鎖RNA分子にさらし、それによりRNA干渉(RNAi)を介して細胞の遺伝子を阻害することを含む。
dsRNAは、単独のセンスまたはアンチセンス鎖よりも、遺伝子サイレンシングに一層より効果的であると見出された(Fire A. et al Nature, Vol 391, (1998))。dsRNAに媒介されるサイレンシングは、遺伝子特異的であり、しばしばRNA干渉(RNAi)と呼ばれる(Fire (1999) Trends Genet. 15: 358-363, Sharp (2001) Genes Dev. 15: 485-490, Hammond et al. (2001) Nature Rev. Genes 2: 1110-1119 および Tuschl (2001) Chem. Biochem. 2: 239-245 も参照)。
RNA干渉は、2段階の過程である。第1に、dsRNAは、細胞内で切断され、5'末端のリン酸および3'の短いオーバーハング(〜2nt)を有する長さ約21−23ntの短い干渉RNA(siRNA)をもたらす。siRNAは、対応するmRNA配列を特異的に破壊の標的にする(Zamore P.D. Nature Structural Biology, 8, 9, 746-750, (2001))。
RNAiは、3'オーバーハング末端を有する同じ構造の化学合成されたsiRNA二本鎖を使用して、効果的に誘導し得る(Zamore PD et al Cell, 101, 25-33, (2000))。合成siRNA二本鎖は、幅広い範囲の哺乳動物細胞株において、内在性の異種遺伝子の発現を特異的に抑制すると示された(Elbashir SM. et al. Nature, 411, 494-498, (2001))。阻害しようとする配列の20ないし25bp、より好ましくは21ないし23bpを含有するsiRNA二本鎖を使用し得る。
あるいは、siRNAは、インビトロ(回収および使用のために)またはインビボで、ベクターから作成され得る。
他の実施態様では、試験化合物は、遺伝子をコードしていることもある核酸(DNA、cDNAまたはRNA)、例えばcDNAであり得る。従って、試験化合物は、遺伝子をコードするベクターであり得、核酸またはベクターに細胞をさらすことは、その遺伝子が細胞で発現されることをもたらす。ある実施態様では、ベクターは、RNAとして発現されるとセンスおよびアンチセンスの部分が会合して二本鎖RNAを形成するように、センスおよびアンチセンスの両方の方向で、本発明による核酸配列を含み得る。これは、例えば、長い二本鎖RNA(例えば、23ntより長い)であり得、これは、細胞中で加工されてRNAi用のsiRNAを作成し得る(例えば、Myers (2003) Nature Biotechnology 21:324-328 参照)。
他の実施態様では、試験化合物は抗体であり得る。
従って、アッセイ方法は、関心のある特徴を増大または低減させる化合物または条件を同定し得る。
比較は、典型的には、例えば分離したEB細胞をプレートに播いた1週間後に、ニューロン細胞と実施する。
試験および対照培養は、典型的には、2つの別個の培養であり、それ以外は同一の条件下で培養する。その条件が試験化合物の存在である場合、特にそれが核酸である場合、試験または第1条件下での培養は、細胞(典型的にES細胞または分離したEB細胞)を試験化合物にさらし、次いでそれらの細胞を培養することを含み得る。
ニューロンの特徴(例えば、神経突起の増殖または神経突起の伸長)は、ニューロン特異的レポーター遺伝子の発現を引き起こすか、または可能にし、そのレポーター遺伝子の発現を検出または定量することにより検出し得る。レポーター遺伝子は、蛍光タンパク質、例えば緑色蛍光タンパク質(GFP)をコードしていてもよい。レポーター遺伝子は、tau遺伝子座またはニューロン特異的発現用のプロモーターなどのニューロン特異的遺伝子座またはプロモーターに標的化されるか、または機能し得るように連結していてよい。tau遺伝子座からのニューロン特異的レポーター遺伝子の発現は、記載された(Tucker et al. (42))。レポーター遺伝子の発現は、細胞がニューロンに分化するとすぐにニューロンのみでスイッチが入り、前駆体または神経系の他の細胞タイプでは入らない。ニューロン細胞のアッセイを含む本発明の方法は、ニューロン特異的発現のあるレポーター遺伝子を含有する細胞株(ES細胞)を使用し得、レポーター遺伝子は、ニューロンのみで発現されるプロモーターまたは遺伝子座に機能し得るように連結されている(例えば、本明細書の他の箇所で記載する通りのTau−GFP系統)。
本発明は、ニューロンの特徴を増加させるか、または、特徴の増加に関連すると知られている条件(例えば、いくつかの実施態様では、条件はアミロイドベータペプチドの存在下で培養することである)によりもたらされるニューロンの特徴の増加を阻害または低減する物質を同定する、即ち、そのような条件に関連する効果を低減または阻害する物質を同定する、アッセイ方法も提供する。
そのようなアッセイは、以下を含み得る:
試験物質の存在下、そして、ニューロンの特徴を増加させると知られているか、またはその増加と関連する条件下で、ニューロン前駆もしくは祖先またはニューロン細胞を培養すること;
試験物質の非存在下、そして、ニューロンの特徴を増加させると知られている条件下で、ニューロン前駆もしくは祖先またはニューロン細胞を培養すること;
ニューロンの特徴のレベルを定量または決定すること;および、
試験物質の存在下のニューロンの特徴のレベルを、試験物質の非存在下のニューロンの特徴のレベルと比較すること;
ここで、試験物質の非存在下と比較して、試験物質の存在下で低いニューロンの特徴のレベルは、その物質が、その条件によりもたらされるか、またはそれに関連するニューロンの特徴の増加を、阻害または低減することを示す。
ニューロンの特徴を増加させると知られているか、またはその増加に関連する条件は、本発明のアッセイ方法により、ニューロンの特徴を増加させる条件であると同定される条件であり得る。
例えば、試験化合物が核酸(例えばdsRNA)である場合、ニューロンの特徴を増加させると知られている条件下で培養することは、細胞を核酸にさらし、次いで細胞を培養することを含み得る。
試験物質との培養および条件下での培養は、同時に実施してもよく、または、試験物質との培養は、条件下での培養の前に実施してもよく、または条件下での培養は、試験物質との培養の前に実施してもよい。当業者は、適切な順番を決定でき、いくつかの実施態様では、ある順番が他の順番よりも好ましいことがある。例えば、細胞は、好ましくは核酸にさらし、次いで標的物質の存在下で培養する。
神経突起の伸長と縮退
本発明の方法は、神経突起の増殖、神経突起の伸長または神経突起の縮退を定量することを含み得る。定量は、神経突起特異的タンパク質の発現レベルの決定を含み得る。ここで、高い発現レベルは、高いレベルの神経突起の増殖および/または神経突起の伸長、および/または低いレベルの神経突起の縮退を示し、低い発現レベルは、低いレベルの神経突起の増殖および/または神経突起の伸長、および/または高いレベルの神経突起の縮退を示す。定量は、ニューロン特異的レポーター遺伝子の発現を引き起こすか、または可能にし、レポーター遺伝子の発現レベルを測定し、それにより神経突起の増殖、神経突起の伸長または神経突起の縮退を定量することを含み得る。例えば、レポーター遺伝子がGFPなどの蛍光タンパク質をコードするとき、発現レベルの測定は、蛍光の測定を含む。本発明の方法は、ニューロンを神経突起マーカー(例えば、チューブリン、ニューロフィラメント、シナプトフィジン)に対する抗体と接触させ、マーカーへの抗体の結合を決定または定量し、それにより神経突起の伸延または伸長を検出または定量することにより、神経突起の増殖、神経突起の伸長または神経突起の縮退を定量することを含み得る。
ニューロンを抗体と接触させることは、細胞を(例えば、ウエスタンブロットで)溶解した後、細胞抽出液を用いて実施し得る。あるいは、ニューロン全体を抗体と接触させ得る。
アッセイの方法は、ニューロン前駆もしくは祖先またはニューロン細胞を、第1および第2の条件下で各々培養し、第1の条件下で培養したニューロン前駆もしくは祖先またはニューロン細胞の神経突起の増殖、伸長または縮退のレベルを、第2の条件下で培養したニューロン前駆もしくは祖先またはニューロン細胞と、各々比較することを含み得る。例えば、第1の条件下で培養した細胞の神経突起の増殖、伸長または縮退のレベル(例えば、神経突起特異的タンパク質の発現レベルの上昇/低下により示される、上記参照)が、第2の条件下で培養した細胞よりも高い場合、このことは、第1の条件が(第2の条件と相対的に)、神経突起の増殖、伸長または縮退を各々増加させることを示す。
好ましい実施態様では、第1の条件下で培養することは、細胞を試験化合物の存在下で培養することを含み、試験化合物は、好ましくはアミロイドβ(Aβ)ペプチド(アミロイド前駆体タンパク質、APPに由来するもの)である。
本発明は、神経突起の縮退を増加させると知られている条件(例えば、その条件はアミロイドベータペプチドの存在下で培養することである)によりもたらされる神経突起の縮退の増加を、阻害または低減させる物質を同定する、即ち、そのような条件に関連する効果を低減または阻害する物質を同定する、アッセイ方法を提供する。そのアッセイは、以下を含み得る:
試験物質の存在下、そして、神経突起の縮退を増加させると知られている条件下で、ニューロン前駆もしくは祖先またはニューロン細胞を培養すること;
試験物質の非存在下、そして、神経突起の縮退を増加させると知られている条件下で、ニューロン前駆もしくは祖先またはニューロン細胞を培養すること;
試験物質の存在下および非存在下の神経突起の縮退のレベルを定量または決定すること;および、
試験物質の存在下の神経突起の縮退のレベルを、試験物質の非存在下の神経突起の縮退のレベルと比較すること;
ここで、試験物質の非存在下と比較して、試験物質の存在下で低い神経突起の縮退のレベルは、その物質が、その条件によりもたらされるか、またはそれに関連する神経突起の縮退の増加を、阻害または低減することを示す。
上記の通り、神経突起の縮退のレベルの比較は、神経突起特異的タンパク質の発現レベルの比較を含み得る。ここで、試験物質の非存在下と比較して試験物質の存在下で高いレベルの発現(低いレベルの分解)は、試験物質が、その条件によりもたらされる神経突起の縮退の増加を阻害または低減することを示す。
その条件は、ある化合物の存在であり得る。それは、本発明のアッセイ方法を介して神経突起の縮退を増加させられると同定される化合物、Aβペプチドであり得る。
ニューロンの細胞死
ニューロンの細胞死のアッセイの必要性が当分野に存在し、かかるアッセイが本発明により提供される。
ニューロンの細胞死のアッセイは、ニューロンまたはニューロン細胞集団の、所定の条件、例えば1種またはそれ以上の化合物の存在への感受性を試験または決定するのに、例えば、ニューロンの細胞死を増加または低減させる条件(例えば化合物)を同定するのに、使用し得る。
例えば、本発明によるアッセイは、以下を含み得る:
ニューロンを第1の条件下で培養すること(「試験培養」);
ニューロンを第2の条件下で培養すること(「対照培養」);
第1および第2の条件下で、ニューロンの細胞死を定量または決定すること;および、
第1の条件下のニューロンの細胞死のレベルを、第2の条件下のニューロンの細胞死のレベルと比較すること;
ここで、第2の条件下と比較して第1の条件下で高いニューロンの細胞死のレベルは、第1の条件が細胞死を増加させることを示し;かつ/または、
ここで、第2の条件下と比較して第1の条件下で低いニューロンの細胞死のレベルは、第1の条件がニューロンの細胞死を低減させることを示す。
ニューロンの細胞死のアッセイ、特にニューロンの細胞死を低減させる条件を同定するためのアッセイでは、ニューロンは、好ましくは、遺伝的にアポトーシスしやすいものである。例えば、ニューロンは、p75ニューロトロフィン受容体を発現していてよく、かつ/または、ニューロン特異的プロモーター(例えばTau遺伝子座)に機能し得るように連結したアポトーシスのタンパク質(例えばカスパーゼ)を発現していてよい。従って、ニューロンの細胞死のアッセイ用のニューロンを作成するために本発明で使用するES細胞は、ニューロン特異的プロモーター(例えばTau遺伝子座)に機能し得るように連結したアポトーシスのタンパク質(例えばカスパーゼ)を発現していてよい。
ニューロンの細胞死のアッセイは、ニューロンの細胞死を増加させると知られている条件によりもたらされるニューロンの細胞死の増加を阻害または低減する物質、即ち、かかる条件の効果を低減または阻害する物質の同定に使用し得る。アッセイは、以下を含み得る:
試験物質の存在下、そして、ニューロンの細胞死を増加させると知られている条件下で、ニューロンを培養すること;
試験物質の非存在下、そして、ニューロンの細胞死を増加させると知られている条件下で、ニューロンを培養すること;
試験物質の存在下および非存在下のニューロンの細胞死のレベルを定量または決定すること;および、
試験物質の存在下のニューロンの細胞死のレベルを、試験物質の非存在下のニューロンの細胞死のレベルと比較すること;
ここで、試験物質の非存在下と比較して、試験物質の存在下で低いニューロンの細胞死のレベルは、その物質が、その条件によりもたらされるニューロンの細胞死の増加を、阻害または低減することを示す。
細胞死は、当分野で知られている方法により、例えば、ニューロンにおけるアポトーシス誘導メカニズムの決定により、決定し得る。決定し得る細胞死の指標には、アポトーシスのタンパク質(例えば、カスパーゼ、特にカスパーゼ−3、参考文献43参照)の誘導、ヨウ化プロピジウムによる染色および/またはDNAの断片化および/またはヌクレオソームの崩壊(例えば、DNAおよび/またはヒストンタンパク質に対する抗体の結合により検出可能、参考文献44参照)が含まれる。
神経形成およびニューロンの分化
本発明の方法は、神経形成またはニューロンの分化のアッセイを含み得る。このアッセイでは、ニューロンの作成もしくは生成、またはES細胞並びに/またはニューロン前駆および/もしくは祖先細胞の分化を、検出および/または定量する。本方法は、1種またはそれ以上のニューロン特異的マーカーの検出および/または定量を含み得る。本発明の方法は、選択したマーカーに応じて、1種またはそれ以上の特定のニューロンのサブタイプまたは系譜の神経形成のレベル、または、一般的なニューロンのレベルをモニターすることを含み得る。定義された系譜のニューロンの生成は、系譜特異的マーカーの検出および/または定量によりアッセイし得る。方法は、細胞を細胞マーカーに対する抗体と接触させ、結合を決定することを含み得る。ここで、マーカーの存在(そして、故に抗体の結合)は、その細胞が特定の細胞タイプ、サブタイプ、系譜またはサブリネージであることを示す。方法は、抗体結合のレベルを決定または定量し、それにより分化のレベル、その細胞の分化段階、および/または特定のタイプ、サブタイプ、系譜またはサブリネージの、または特定の分化段階での%細胞を、決定または定量することを含み得る。マーカーの検出および細胞タイプの同定の詳細は、本明細書の他の箇所に含まれ、適するマーカーは、当業者に知られている。
本発明のニューロン分化のアッセイ方法は、ES細胞および/または神経細胞を特定の分化段階で同定するために、または、細胞のタイプまたはサブタイプを同定するために使用し得、従って細胞の分化段階または細胞タイプまたはサブタイプを示すマーカーの決定に適する。例えば、アッセイ方法は、ES細胞の分化を誘導するか、または可能にし、ニューロン前駆または祖先細胞を作成すること、および/または、ニューロン前駆または祖先細胞を培養してニューロンを作成すること(好ましくは、本明細書の他の箇所で記載した通りの神経分化方法を使用する);ある分化段階の細胞におけるタンパク質の発現レベルを、第2の分化段階の細胞におけるタンパク質の発現レベルと比較すること;および、発現レベルが第1と第2の分化段階の細胞で異なるタンパク質を同定することを含み得る。発現レベルの差異は、そのタンパク質を、細胞の分化段階、タイプまたはサブタイプを示す、かつ/または、第1および第2の分化段階にある細胞を区別するマーカーとして使用し得ることを示す。発現レベルは、当業者が決定できる任意の適切な方法を使用して比較し得る。好ましくは、例えば、細胞または細胞抽出物を抗体の表面発現ライブラリーと接触させ、結合を決定し、細胞表面で発現されるタンパク質の発現を比較する。例えば、本方法は、ニューロン前駆/祖先細胞(例えば放射状膠細胞)におけるタンパク質の発現を、ES細胞と比較することを含み得る。
発現レベルの差異は、例えば、少なくとも1.2倍、少なくとも1.5倍、少なくとも1.6倍、少なくとも1.8倍、少なくとも2倍、少なくとも3倍、少なくとも5倍、少なくとも10倍、またはそれ以上であり得る。発現は、第1の分化段階にある細胞で検出され、第2の分化段階にある細胞では全く検出されなくてもよい。
電気的活性
ニューロンの電気的活性のレベル、例えば特定のチャネル(例えばイオンチャネル)の開口を示す電気的活性を、観察、検出、決定または定量し得る。
ニューロンの電気的活性を調節できる化合物の同定に、アッセイ方法を使用し得る。方法は、ニューロンを第1の条件下で培養すること、ニューロンを第2の条件下で培養すること、および、第1の条件下で培養したニューロンの電気的活性を、第2の条件下で培養したニューロンの電気的活性と各々比較することを含み得る。電気的活性の差異は、その条件が電気的活性を調節することを示す。
シナプス形成
アッセイ方法は、ニューロン細胞におけるシナプス形成を検出または定量することを含み得る。検出または定量は、細胞の電気生理学的活性の測定、および/または、シナプス形成の指標である1種またはそれ以上のマーカー、例えばシナプトフィジンの発現の検出または測定を含み得る。
遺伝的に別個のニューロンの比較
本発明は、参照(通常野生型)ニューロン前駆もしくは祖先細胞またはニューロンを、変異型ニューロン前駆もしくは祖先細胞またはニューロンと比較する方法を提供する。これらのニューロンは、様々な遺伝子型を有する。本方法は、上記の神経細胞を生成するための方法を含み得る。
従って、本発明は、以下を含む方法を提供する:
第1および第2のニューロン細胞またはニューロン前駆もしくは祖先細胞の培養を提供すること、ここで、第1の培養の細胞は、第2の培養の細胞と異なる遺伝子型を有する;および、
第1の培養のニューロン前駆もしくは祖先細胞またはニューロンを、第2の培養のニューロン前駆もしくは祖先細胞またはニューロンと比較すること。
関心のある遺伝子に突然変異があるか、またはないニューロン前駆もしくは祖先またはニューロン細胞を比較し得る。突然変異は、例えば、遺伝子の全部または一部の欠失、遺伝子プロモーターおよび/またはエンハンサーの全部または一部の欠失、または、コード領域、プロモーターまたはエンハンサー中の1個またはそれ以上のヌクレオチドの置換であり得る。通常、突然変異は、変更(低減または上昇)されたレベルの遺伝子発現、または、変異型タンパク質(例えば、切断されているか、または、そのアミノ酸配列に1個またはそれ以上の欠失または置換を含有する)の発現をもたらす。あるいは、第1の培養のニューロン前駆もしくは祖先またはニューロン細胞は、導入された遺伝子(例えば挿入遺伝子または挿入cDNA)を含有するか、または、内在性遺伝子を過剰発現していてよく、一方、第2の培養のニューロン前駆もしくは祖先またはニューロン細胞は、そうではない。
ES細胞は、遺伝子操作し得、ES細胞に突然変異を導入し得、または、ES細胞は、突然変異を保有する動物から単離し得、例えば関心のある突然変異を有するマウスES細胞である。本発明の方法は、関心のある突然変異を有するES細胞、および有さないものを使用して、関心のある突然変異を有するか、または有さない神経細胞、例えばニューロンまたはニューロンの祖先/前駆細胞を、各々生成させ得る。従って、本発明は、変異型および野生型の神経細胞、例えばニューロンまたはニューロンの祖先/前駆細胞を作成し得る。例えば、異なるES細胞タイプ(一方は関心のある突然変異を有し、他方は有さない)から作成される神経細胞の比較を実施して、神経変性疾患における神経細胞タイプの喪失を担うか、またはそれに貢献するメカニズムを同定し、疾患の表現型に関連する標的を同定し得る。
いくつかの実施態様では、本方法は、第1と第2のES細胞培養から各々ニューロン前駆/祖先細胞またはニューロンを作成することを含み得、ここで、第1と第2の培養のES細胞は、異なる遺伝子型を有する。場合により、ニューロン前駆/祖先細胞またはニューロンは、本明細書の他の箇所で記載する通りの本発明の方法により、ES細胞から作成し得る。第1の培養のES細胞は、関心のある遺伝子に突然変異を含有し得、一方、第2の培養のES細胞は、その突然変異を含有しない(例えば野生型細胞)。あるいは、第1の培養のES細胞は、導入された遺伝子を含有し得るか、または、内在性遺伝子を過剰発現してよく、一方第2の培養のES細胞は、そうではない。
遺伝的に別個のES細胞の使用の代替法として、分離したEB細胞を遺伝子操作し得る。方法は、第1の分離したEB細胞またはニューロン前駆もしくは祖先細胞の培養に、核酸コンストラクトで形質移入し、それによち第1の培養の細胞の遺伝子型を、第2の培養の細胞と比較して変更することを含み得る。例えば、核酸コンストラクトは、内在性遺伝子をコードしても、突然変異を含有する関心のある遺伝子をコードしてもよい。そのような本発明の方法は、通常、核酸コンストラクトから発現(通常、約2、3または4日間続く一過性発現)させることを含む。本方法は、これらの細胞を培養してニューロン細胞を作成することを含み得る。第1の培養の細胞を、第2の培養のニューロン前駆、祖先またはニューロン細胞と比較する。ここで、第2の培養の細胞は、核酸コンストラクト、導入された遺伝子および/または突然変異を含有しない。
ニューロン前駆もしくは祖先細胞またはニューロンの比較は、神経突起の増殖または神経突起の伸長、ニューロンの形、ニューロンの細胞死、神経形成、ニューロンの分化、電気的活性、シナプス形成、および/またはニューロン細胞マーカーなどの、1つまたはそれ以上の特徴を比較(および、通常決定または定量)することを含み得る。他の実施態様では、比較は、関心のある遺伝子、例えば、導入された、または変異した、または過剰発現された遺伝子の読み出し、またはその遺伝子の効果を比較することを含み得る。読み出しの性質は遺伝子次第であるが、当業者は所定の遺伝子について決定できる。かくして、ニューロンのシグナル伝達メカニズムを明らかにし、遮断し、および/または操作し得る。
ニューロン前駆もしくは祖先またはニューロン細胞の比較は、1つまたはそれ以上の細胞の特徴を、試験条件下で比較することを含み得る。そして、遺伝的に別個のニューロン前駆もしくは祖先細胞またはニューロン細胞を比較する方法を、本明細書の他の箇所で記載したアッセイ方法の文脈で使用し得る。従って、好ましい実施態様では、第1および第2の細胞培養を、各々試験条件下で培養し、細胞のニューロンの特徴を比較する。さらに、方法および変法は、細胞アッセイについて上記した通りである。例えば、試験条件下の培養は、Aβペプチドの存在下の培養を含み得る。
抗体
本明細書で使用するとき、「抗体」は、必要な特異性のある結合ドメインを有する特異的結合物質を包含する。従って、この用語は、抗体フラグメント、誘導体、機能的均等物および抗体のホモログを包含し、天然または合成のいずれでもよい免疫グロブリン結合ドメインを含む任意のポリペプチドを含む。従って、他のポリペプチドに融合された免疫グロブリン結合ドメインまたは均等物を含むキメラ分子が含まれる。キメラ抗体のクローニングおよび発現は、EP−A−0120694およびEP−A−0125023に記載されている。
抗体全体のフラグメントは、結合抗原の機能を果たせることが示された。結合フラグメントの例は、(i)VL、VH、CLおよびCH1ドメインからなるFabフラグメント;(ii)VHおよびCH1ドメインからなるFdフラグメント;(iii)単一の抗体のVlおよびVHドメインからなるFvフラグメント;(iv)VHドメインからなるdAbフラグメント(Ward, E.S. et al., Nature 341, 544-546 (1989));(v)単離したCDR領域;(vi)F(ab')2フラグメント、2個の連結したFabフラグメントを含む二価のフラグメント;(vii)VHドメインおよびVLドメインが、2つのドメインを会合させて抗原結合部位を形成させるペプチドリンカーにより連結している、一本鎖Fv分子(scFv)(Bird et al, Science, 242, 423-426, 1988; Huston et al, PNAS USA, 85, 5879-5883, 1988);(viii)二重特異性一本鎖Fvダイマー(PCT/US92/09965)および(ix)遺伝子融合により構築される多価または多重特異性フラグメントである「二重特異性抗体(diabody)」(WO94/13804;P Holliger et al Proc. Natl. Acad. Sci. USA 90 6444-6448, 1993)である。
二重特異性抗体は、ポリペプチドの多量体であり、各々のポリペプチドは、免疫グロブリン軽鎖の結合領域を含む第1のドメインおよび免疫グロブリン重鎖の結合領域を含む第2のドメインを含み、2つのドメインは、(例えばペプチドリンカーにより)連結しているが、相互に会合して抗原結合部位を形成できない:抗原結合部位は、多量体中のあるポリペプチドの第1のドメインと、多量体中の別のポリペプチドの第2のドメインの会合により形成される(WO94/13804)。
抗体は、数々のやり方で改変し得る。例えば、蛍光標識で標識化し、抗体結合を蛍光レベルの測定により定量できるようにし得る。
様々なさらなる本発明の態様および実施態様は、本開示に照らして当業者に明らかであろう。
本明細書で言及した全文献は、出典明示により全体を本明細書の一部とする。
ここで、本発明のある態様および実施態様を、例示のためだけに、図1を参照して例示説明する。それは、分離したEB細胞をプレートに播いた後、選択された時点での%Pax6陽性細胞を示す。Pax−6は、最初に殆どの細胞により発現されるが、急速に消失する。結果は、2つの異なるES細胞株で実施した4回の独立実験の平均を表す。それらは、DAPI陽性の核の数を100%として、%±SDで表現される。
実施例
ES細胞の培養
ES細胞からのニューロンの生成を導く操作は、以下の通りにまとめられる次の段階を含んだ:
1.フィーダー層上で培養した細胞は、コロニーとして増殖するが、フィーダー排除後、それらは平坦な単層として増殖する。
2.非接着性細菌用ディッシュ上のES細胞は、懸濁状態で増殖する細胞集合体(EB)を形成する。
3.EB形成の4日後、RAをさらに4日間にわたり添加した。
5.全部で8日後に、EBを分離し、N2培地中、PDL/ラミニン被覆ディッシュのプレートに播いた。
6.2時間後、そして12−24時間後に再度、N2培地を交換した。この段階で、殆どの前駆細胞は、紡錘形の形態である。ニューロン分化培地を30−48時間後に添加する。
この操作は、tau遺伝子座からGFPを発現するES細胞(参考文献13)を使用して開発した。内在性プロモーターからのGFPの発現は、UV光源下でニューロンおよびその変化(process)の可視化を可能にする。そして、我々は、それを使用して蛍光細胞の生成を最大化した。
融解後、ES細胞を最初にフィーダー細胞上で、2ないし3回の植え継ぎの間培養し、次いで、徐々にフィーダー細胞を除いた。定めた数(3x10)の細胞を使用して集合体(胚様体、EB)を形成させ、それを非接着性細菌用ディッシュ中で8日間インキュベートした(10cmディッシュ、培地15ml)。レチノイン酸(RA、5μM)を4日後に添加し、最後の4日間そのままにした。重要な段階は、均一で平坦な形態および高い増殖速度を有する、フィーダーを除かれたES細胞の選択であった(材料と方法を参照)。
8日後に、新たに調製したトリプシン懸濁液を用いてEBを分離し、ポリ−D−リジン(PDL)およびラミニンからなる基板のプレートに播いた。プレートに播く密度(細胞1.5x10個/cm)は、低密度では細胞が急速に死ぬ傾向があるので、重大であると判明した。分離した細胞を血清不含培地中でプレートに播き、それをプレートに播いた2時間後に交換してごみと死んだ細胞を除去した。培地を1日(おおよそ24時間)後に再度交換した。48時間後、添加物で富化した血清不含培地により培地を置き換えた(参考文献12)。両方のtau対立遺伝子からGFPを発現するES細胞に加えて、我々は、本研究で報告するものと区別できない結果をもたらす7種以上の他のES細胞株も使用した。これらには、野生型J1およびE14ES細胞、並びにtau対立遺伝子の一方または両方にGFPを有するJ1が含まれる。我々は、混合されたBL6/SV129バックグラウンドの胚盤胞から4種の異なるES細胞株も単離し、それらを我々の分化プロトコールに供し、同様の結果を得た。
ニューロン前駆体
ES細胞は、均一な放射状膠細胞の集団に分化した。
EBから分離した細胞は、放射状膠細胞の形を思わせる、明確な伸びた紡錘形の形態をとる(参考文献16参照)。位相差像は、分化の2時間で二極性紡錘形態を示した。
これらの細胞は、中間径フィラメントタンパク質ネスチン(参考文献9)に対する抗体での染色により、神経前駆細胞と同定された。プレートに播いた2時間後、核染色により定量したプレートに播かれた細胞の総数と比較して、圧倒的多数の細胞がネスチン陽性であると判明した(表I)。
次いで、我々は全ての放射状膠細胞により発現されるマーカーであるRC2を使用した。ほぼ全ての細胞が陽性であると判明した(表I)。発生中のCNS中の放射状膠細胞によっても発現される抗原である、脳脂肪結合タンパク質(brain lipid binding protein;BLBP)(参考文献18)に対する抗体による染色は、EBから新たに分離した細胞の正体をさらに裏付けた(表I)。ホメオドメイン転写因子Pax−6は、全ての皮質の放射状細胞により発現され(参考文献19)、EB中の本質的に全ての細胞は、それらの分離前にそれを発現すると見出された。このことは、この段階で、それらは既に前駆体であることを意味する。
プレートに播いた2時間後の定量は、細胞の圧倒的多数が依然としてPax−6陽性であり(図1)、その発現は、それに続く日々の間に急速に低下し、7日後には本質的に存在しなくなる(図1)ことを明らかにした。
表1
Figure 2007535957
プレートに播いた2時間後の%ニューロン前駆体。分離したEBをプレートに播いた2時間後に、ネスチン、RC2、BLBP、Pax−6を、免疫組織化学により分析した。陽性細胞の百分率(±SD)を、核マーカーDAPIにより染色される総細胞数と比べて決定した。
ニューロンの分化
ニューロンの形態を有する細胞は、EB分離の2日後より早く現れ始めた。全ての分化細胞はGFPを発現した。このことは、それらがニューロンであることを示し、結論は、チューブリンのニューロン特異的形態を認識する抗体を使用する染色実験により支持された。
4日後、細胞の約85%はGFPおよびチューブリン陽性であった。位相差および蛍光の両方により、我々はニューロン細胞体の著しく均一な出現に圧倒された。培養の時間がたつにつれて、それらは段々と齧歯類の海馬から単離された細胞で観察されるピラミッド形をとった(参考文献20)。シナプトフィジンに対する抗体で染色すると、GFP陽性の変化を示す多数のクラスターが見られた。このことは、我々の培養においてシナプス接触が発生し得ることを示す。
これらのニューロンがグルタミン酸を神経伝達物質として使用するか否かを試験するために、我々はこれらの細胞を、大脳皮質および海馬の殆どの錐体ニューロンにより発現される膜タンパク質である小胞性グルタミン酸トランスポーター、vGlut1に対する抗体で染色した(参考文献21)。培養の7日後、93±4.7%の細胞がvGlut1抗体で染色された。vGlut1抗体による知見は、これらのニューロンの錐体細胞としての同定と一致する。EB分離後1週間目の終わりに、0.1%より少ない細胞が、Isl−1、チロシンヒドロキシラーゼおよびコリンアセチルトランスフェラーゼに陽性であると染色された。5%未満が、3週間後にGABA陽性であった。
放射状膠細胞からニューロンへの移行中に発現されるタンパク質を同定するために、我々は、異なる時間の間隔で調製したインビトロで分化したニューロンを使用して、ウエスタンブロット分析を実施した。
放射状膠細胞の溶解物では検出できないが、AMPA受容体サブユニットGluR1は、シナプトフィジンと同様に、培養数日後に明らかに検出可能であった。GluR1およびシナプトフィジンのタンパク質レベルは、ニューロンが分化し始めるにつれて上昇した。
錐体ニューロンは、大脳皮質および海馬の両方で高レベルのTrk受容体を発現するので(参考文献22)、我々はまた、これらのニューロトロフィン受容体の細胞内ドメインに対する抗血清を使用してそれらの発現を分析した。Trk受容体は5日目に検出し難かったが、それらのレベルはその後の日々に亘り劇的に上昇した。実質的なTrk受容体の発現は、約7日後にインビトロで観察され、その時間の後劇的に増加した。逆に、ニューロトロフィン受容体p75のレベルは、ニューロンの成熟化の過程で低下することが判明し、それは、それらがインビボで低下するのとかなり似ている(参考文献23)。
最後に、我々は、アミロイド前駆体タンパク質(APP)の発現を試験した。この膜タンパク質は、放射状膠細胞(参考文献24)により、そして、発生の後期においてニューロンを含む数々の細胞により、発現されると示された。我々の結果は、試験した他の膜タンパク質と異なり、APPは、放射状膠細胞の溶解物中で明らかに検出可能であることを立証する。発現レベルは、その後、恐らくニューロンの突起の顕著な成長を含むニューロンの成熟化の結果として、上昇する。
移植された前駆体のインビボでの分化
本発明のニューロン前駆細胞を、その中でそれらが運動ニューロンを含む異なる特定のニューロンの系譜に分化し得るニワトリ胚に移植することにより、それらの発生的潜在能力を試験した。
電気生理学
電気生理学的実験は、ニューロンがシナプスを形成し、APを示し、そして電気生理学的特徴において非常に均一であることを示した。ニューロンは主にグルタミン作動性であり(NBQXによるシナプス電流の遮断、vGAT染色により示される)、いくらかのGABA作動性入力(ビククリンによる遮断、そうでなければ培養は生存できないであろう)を伴う。電気生理学は、使用した条件下で他のニューロン細胞のタイプが存在しないことを明確に示した。
我々のES細胞由来ニューロンの電気生理学的特性を特徴解析するために、10ないし22日に亘り培養した細胞で、全細胞パッチクランプ記録を実施した。調べた全ての細胞(n=22)は、自発性の、または脱分極に誘導される活動電位を示し、全ての場合でこれらはテトロドトキシンの適用により遮断され得た。また、調べた細胞の電気生理学的特徴は、それらが機能的特性に関してかなり均一であり、以前に錐体ニューロンについて記載されたものと類似することを示した。自発性シナプス電位(spontaneous synaptic current;SSC)が観察され得、それは、NBQX/AP−5およびビククリンの、または、NBQX/AP−5単独の添加により、完全に遮断され得た。これらの結果は、ES細胞由来ニューロンが、神経伝達物質としてグルタミン酸を利用する機能的シナプスを形成することを示す。これらの実験は、長期培養における機能的GABAシナプスの存在も明らかにしたので、我々は、3週間後にGABA−ニューロンの数も定量した。小胞膜トランスポーターvGATに対する抗体を用いて、我々は、これらの細胞の約5%が3週間後にこのマーカーに陽性であることを見出した。グルタミン酸およびGABAの系に無関係の神経伝達物質の染色がないことと一致して、我々は、グルタミン酸またはGABAを原因としないシナプス活動を検出しなかった。
考察
マウスのES細胞を使用して、放射状膠細胞と定義される事実上純粋なニューロン前駆体の集団の生成を導く条件を見出した。次いで、これらの細胞は、錐体細胞の特徴を有する均一なニューロンの集団の生成に至る。
増殖性が高い、中立的な幹細胞をEB形成のために選択するとき、我々は、RA処理が、細胞集団全体を定義されたタイプのニューロン前駆体に変換することを見出した。LIFの存在下でさえ、いくつかのES細胞は分化する傾向があり、EB形成中に様々な系譜の細胞がしばしば観察され得るので(総説として、参考文献3、34参照)、中立的なES細胞の選択が重要である。
増殖性が高いES細胞を選択するために、フィーダー細胞の漸進的除去に続き、我々は、定義された細胞数でEB形成を始める前に、細胞計数、細胞の位相差の外観、並びに達する集密度(confluency)の度合いにより、分裂速度をモニターした。
分離していないEBにおける放射状膠細胞の存在は、ES細胞またはP19胚性癌細胞のいずれかを使用して、既に報告された(参考文献35)。EBをポリリジン基板のプレートに播くと、EBから離れて急速に移動する、段々と星状細胞に変形する、細長い細胞が観察できた(参考文献35)。我々がEBの分離により観察した細胞の同定は、それらの形態並びにRC2−、BLBP−およびPax−6−抗体による染色の定量に基づいている。このマーカーのセットは、以前に、皮質の放射状膠細胞により発現されると示された(参考文献11、16)。注目すべきは、全ての放射状膠細胞がPax−6を発現するわけではないという事実である。特に、神経節隆起に位置するものはPax−6を発現せず、神経性ではない(参考文献11)。興味深いことに、最近、EBへのRAの添加が、Wntシグナル伝達アンタゴニストsFRP2の誘導を導くことが立証された(参考文献36)。そこで、発生中の前脳に存在する分子によるWntシグナル伝達の阻害が、細胞に放射状膠細胞の表現型をとらせると考えられる。sFRP1の空間的および時間的発現パターンは、この見方と合致する(参考文献37)。
我々のインビトロ条件下で、RAの添加は決定的である(参考文献38)。RA処理の4日後に事実上全ての細胞がEB中でPax−6を発現するが、RAの非存在下ではPax−6−陽性細胞は観察されず、非処理EBの分離後にニューロンは得られなかった。RAは発生中の皮質においてPax−6の誘導に生理的役割を果たさないように思われるが、これは発生中のCNSの他の部分では十分該当し得る。むしろ、Pax−6は、大脳皮質を含むCNS中で限定された発現パターンを有するが、それは発生中に腹側神経管の大部分でも発現され、そして、最近の結果は、体節由来RAが神経管の腹側パターン形成に生理的役割を果たすことを示唆している(参考文献39、40)。RA処理EBに関し、Renoncourt et al.(参考文献28)および Wichterle et al.(参考文献7)も、RA処理後のEB中のいくつかの細胞がPax−6−陽性であることを観察した。しかしながら、Pax−7−陽性細胞も同様の存在量で観察され(参考文献7)、このことは、RA処理EBの細胞組成の不均一性を示唆している。
ラミニン被覆されたポリカチオンの基板上で、放射状膠細胞は急速にそれらの典型的な紡錘形の形態を喪失する。我々のEGP−ES株を使用したとき、我々は、蛍光細胞の数が急速に増加し、ニューロンが全て顕著にそれらの細胞体の形と大きさに関して類似して見えることに注目した。分離後4日目までに、事実上全ての細胞が既にニューロンの特徴を有した。時間が経つにつれて、本質的に全てのニューロンがピラミッド形をとり、また、小胞性グルタミン酸トランスポーター陽性であると判明した。全細胞が、それらの正体に関係なく、全時点で染色された。対照的に、培養1週間後にIsl−1、チロシンヒドロキシラーゼまたはコリンアセチルトランスフェラーゼに対する抗体で染色すると、細胞の0.1%未満が明らかに陽性であった。5%未満が3週間後にvGAT陽性であった。GABAおよびIsl−1染色がないことは、それらの多くもまたインビボでPax−6陽性細胞から誘導される、数々の介在ニューロンおよび特に運動ニューロンを含む長い突起のニューロンを除外する。
恐らく、Pax−6−陽性放射状膠細胞の子孫をこの特定の分化経路に沿わせるには、ソニックヘッジホッグなどの誘導シグナルが存在する必要がある(参考文献7)。我々のニューロンのグルタミン酸作動性の表現型は、それらの形が示す通り、皮質の錐体ニューロンとしてのそれらの正体と一致する。最も重要なことには、この指摘は、これらのニューロンが全て放射状膠細胞に由来するという観察と一致する。実際に、Malatesta et al.(参考文献11)は、皮質の放射状膠細胞の子孫は錐体ニューロンであり、全皮質層および海馬を占めることを最近立証した。故に、我々の培養条件は、放射状膠細胞に固有の分化プログラムをインビトロでほどかせる、「寛大」なものであると記載できる。これに一致して、我々が使用した培地は、当初は、胚性齧歯類海馬から単離された錐体ニューロンの生存および分化を支持するために開発されたものであった(参考文献12)。この培地の特性は、また、星状細胞などの細胞の増殖を防止または抑制することである。これらの細胞も放射状膠細胞の子孫に属するので、我々の培養中に存在すると予期され得る。
GFAP抗体を使用して、我々は、我々の培養中に少数の分枝型星状細胞の発生を観察した。しかしながら、それらの数は非常に少ない(3週間後の細胞総数の1−2%の範囲にある)。
我々のニューロン培養の相対的一様性は、発生の特定の時点で発現されると知られている膜タンパク質の発現を我々に調べさせた。インビボの結果と一致して(参考文献23)、我々は、p75発現が、我々の培養におけるニューロンの出現と密接に相関し、その後下方調節されることを見出した。対照的に、Trk受容体の発現は早期の時点では検出できないが、それは数日後に劇的に増加し、このことは、ニューロンが同調して発生することを示唆する。高レベルのTrk受容体発現は、インビボで錐体ニューロンの特徴である(参考文献22)。RT PCR実験は、TrkBとTrkCの両方がpan−Trk抗体を使用して得られるシグナルに貢献するが、一方TrkA発現は、インビトロで最初の数日の後にかろうじて検出可能であることを示唆する。p75およびTrk受容体と対照的に、APPは、EB分離の2時間後に既に明らかに検出でき、そのレベルはニューロンの分化の過程で上昇する。これは、発生している齧歯類の皮質中でAPPが特異的に放射状膠細胞を標識することを示す免疫組織化学実験の結果と一致する(参考文献24)。
材料と方法
材料
ES細胞培養培地の成分は Gibco から、LIFは Chemicon から、PDL並びにN2および完全培地の原液は Sigma から入手した。BSA粉末画分Vは、Gibco からであった。ラミニンは、Engelbreth-Holm-Swarm 肉腫 (Roche) から単離した。RAは、Sigma から入手し、異なるバッチを使用しても、結果に差異は観察されなかった。
抗体
免疫組織化学の一次抗体は、マウスモノクローナル抗体抗ネスチン(rat401、IgG1;1:10;Developmental Studies Hybridoma Bank, DSHB)、マウスモノクローナル抗体RC2(IgM;1:4;DSHB)、ウサギポリクローナル抗体抗−BLBP(1:2000;M. Goetz に N. Heintz, Rockefeller University, New York より親切にも提供された)、マウスモノクローナル抗体抗−Pax6(IgG1;1:100;DSHB)、マウスモノクローナル抗体抗−βチューブリンIII(IgG2b;1:100;Sigma)およびウサギポリクローナル抗体抗−vGlut1(1:5000;SYSY)であった。サブクラス特異的Cy2−またはCy−3−結合抗血清を二次抗体として使用した。ウエスタンブロット用に、我々はマウスモノクローナル抗体抗−シナプトフィジン(IgG1;1:1000;Sigma)、ウサギポリクローナル抗体抗−GluR1(1:1000;Upstate)、ウサギポリクローナル抗体抗−Trk(C−14、sc−11;1:1000;Santa Cruz)、ウサギポリクローナル抗体抗−APP(1:3000;P. Paganetti, Novartis, Basel より親切にも提供された)およびウサギポリクローナル抗体抗−p75(1:2000;Promega)を使用した。
培地
Figure 2007535957
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P/Sは、抗生物質、例えばペニシリン/ストレプトマイシンを表す。それはここでは場合により培地から除き、等体積のDMEMで置き換えてもよい。
N2培地用の原液:
BSA Gibco #A-9418 Powder Fraction V 100 g
10mg/mlのアリコートを−20℃で保存
最終濃度50μg/ml
インシュリン Sigma I-6634 100 mg
原液はHO中、5mg/ml(濃HCl1滴でpH2に酸性化し、インシュリンを溶解する)
−80℃で保存
トランスフェリン Sigma #T-1147 アポ−トランスフェリンヒト100 mg
原液は、HO中、2mg/ml
−80℃で保存
プロゲステロン Sigma #P-8783 5 g
原液は、EtOH中2mM、−80℃で保存
作業溶液は、HO中の原液の20μM希釈、−80℃で保存
プトレシン Sigma #P-5780
原液は、HO中100μM、−80℃で保存
亜セレン酸ナトリウム Sigma #S-5261 25 g
原液は、HO中300μM、4℃で保存
完全培地:
Figure 2007535957
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を、DMEM400mlに溶解し、上記の溶液を添加する。
ES細胞培養
最初に、ES細胞を、マイトマイシン−非活性化マウス胚線維芽細胞からなるフィーダー細胞上で、融解後少なくとも2回の植え継ぎの間培養した。続く植え継ぎでは、ES細胞をフィーダー細胞なしで培養し、フィーダー細胞なしで少なくとも2回植え継いだ直後に、または、フィーダー不含ES細胞の凍結保存物から、分化を開始させ得る。分化に使用する保存物は、手順を開始する前に少なくとも2回植え継いだ。ES細胞をフィーダー細胞上で培養した後、フィーダーなしでの最初の植え継ぎが重要であった。分化の成功は、この最初の植え継ぎに使用するES細胞の密度に依存する。ES細胞は、分割の1日後に、プレートの少なくとも3分の1を占めるべきである。ES培地は、15%FCS(ES細胞培養と続くニューロンの分化のために特別に試験したもの)、LIF(1000U/ml)、非必須アミノ酸およびβ−メルカプトエタノールを含有するDMEMを基礎とした。細胞培養プレートは、常に、0.2%ゼラチン溶液で少なくとも10分間被覆した。インキュベーションの温度は、ニューロンの分化が37℃より高くては成功しなかったので、重要な要因であることが判明した。最高温度37℃で、7%CO/空気雰囲気中、ES細胞を維持した。全ての培地は、37℃で予熱した。
ES細胞を2日毎に分割し、プレートに播く密度は、10cm細胞培養プレート(Corning)上で細胞1.5x10ないし4x10個であった。2日後に細胞10−25x10個を回収できる。そして、高い増殖率は、実験の成功の必要条件である。細胞は、急速な増殖期にあらなければならず、平坦な単層を形成する。
細胞の分割は、2xPBS洗浄、および細胞をトリプシン溶液(1x溶液トリプシン Gibco、0.02%EDTA中、0.05%)の薄膜と37℃、7%COで、3分間インキュベートすることにより行い、プレートは手で振盪でき、細胞は離れ、ピペットで上下させることにより新しいES培地に再懸濁される(トリプシンの不活性化)。5分間、1000rpm、室温での遠心分離が続く。ペレットを、数回ピペットで上下させることにより、再び新しいES培地に再懸濁する。細胞は単一細胞培養に分離されるべきであるが、2−3個の細胞の集合体は存在してもよい;より大きい塊は生じるべきではない。所望の量の細胞を再びゼラチンコートプレートに播く。
ES細胞からフィーダーを除くために、それらを融解後約2回フィーダー上で培養し、次いで少なくとも2回のフィーダー細胞なしでの植え継ぎを実施し、線維芽細胞が希釈されてなくなるようにする。それにより、ES細胞はコロニー様の形から、平坦な形態に変化する。
ES細胞の融解には、約3x10個のES細胞の保存物のバイアルを急速に溶解し、細胞を10mlのES培地に再懸濁し、5分間、1000rpm、室温で遠心分離することが含まれる。細胞のペレットを、再度ES培地に再懸濁し、その細胞の量を6cmの細胞培養ディッシュに播く。ES細胞の凍結は、トリプシン処理後の分割および遠心分離のときに、細胞をES培地+10%DMSO中に再懸濁することにより行う。
ニューロン分化のプロトコール
EB形成用に、ES細胞3x10個を非接着性細菌用ディッシュ(Greiner)に、EB培地(LIFなし、および10%のみのFCSのES培地)15ml中で播き、8日間インキュベートした。
全細胞培養を細菌用ディッシュから取り出し (50 ml Falcon チューブ中に)、EBを落ち着かせる(約3−5分間)ことにより、2日毎に培地を交換した。次いで、上清を注意深く吸い出し、EBを再度EB培地15mlに回収する。EBは、十分に広い開口を有するピペット(例えば10mlのプラスチックピペット)を使用してEBを損傷または分離するのを回避して、ピペッティングにより注意深く培地中に再懸濁するべきである。
5μM RA(Sigma)を4日後にディッシュに直接添加し、プレートを緩やかに振盪することにより分散させた。RAは光感受性であるので、光の下に長時間放置するべきではない。次いで、EBを分離し、以下の通りに細胞をPDL/ラミニン被覆プレートに播いた。
細胞培養ディッシュを、ホウ酸塩バッファー(150mMpH8.4)中の10μg/mlのPDL溶液で被覆し、終夜インキュベーター中に置いた(37℃、7%CO)。ポリオルニチンも100μg/mlで使用し、同様の結果であった。プレートを3回PBS(ポリオルニチンの場合、HO)で洗浄した後、ラミニン(約0.5μg/cm)をPBS溶液に直接添加し、プレートをインキュベーターに少なくとも2時間戻した。
EB形成の8日後、EBをPBSで2回洗浄し、3分間37℃の水浴において、0.04%EDTA/PBS中の0.05%トリプシン溶液(トリプシン粉末、TPCK−処理、Sigma で新たに調製した)の中でインキュベートすることにより、トリプシン処理した。インキュベーション時間中に Falcon チューブを注意深く手で2回振盪すべきである。EBの崩壊は、容易に見ることができる。次いで、分離したEBを穏やかに、しかし徹底的に、トリプシンの不活性化のために血清を含有するEB培地10mlに再懸濁した。分離は、約5回ピペットで上下することにより行うことができる。最良の破砕は、先端を炎で平滑にした小容量(約1.5ml)のパスツールピペットで2回、次いで、5mlのプラスチックピペットによるものであった。破砕に続き、5分間、1000rpm、室温で遠心分離した。次いで、上清を全部除去し、ペレットをN2培地に再懸濁し、細胞懸濁液を40μmナイロン細胞ストレイナー(Falcon)で濾過した。
被覆プレートからラミニンを除去し、プレートを乾燥させずに細胞懸濁液をすぐに添加した。分離した細胞を細胞1.5x10個/cmの密度でプレートに播いた。N2培地を2時間後に、そして1日後に再度交換した。2日後、グルタミン酸、HEPES、コルチコステロン、リポ酸およびT3を省略する改変を加えた Brewer and Cotman(参考文献12)に記載の富化血清不含培地により、培地を置き換えた。
ニューロンの分化は続き、ニューロンの培養を数週間維持できる。
免疫組織化学
ガラスのカバースリップを、水中で洗浄し、65%硝酸中で1ないし2日間インキュベートすることにより調製した。その後、それをHO中で数時間浮動させ、エタノールですすぎ、空気乾燥し、UV光源下で滅菌した。細胞を4%パラホルムアルデヒド(PFA)で10分間固定し、PBS中で洗浄し、ブロッキングバッファー(0.03%カラゲナン、10%NGS、0.3% Triton X-100)中で1時間ブロックした。マウントは、AquaPoly/Mount (Polysciences) 中であった。
ウエスタンブロット
分離したEBを上記の通りにプレートに播き、ウエスタンブロット用のサンプルを示した時点で回収した。回収前に、氷冷PBSでプレートを2回洗浄した。6cmプレート用に、プロテアーゼ阻害剤カクテル(Roche)を添加した溶解バッファー(50mM TrispH7.4、150mM NaCl、10%グリセロール、1% Triton X-100)750μl中で、細胞全体の抽出物を調製した。Eppendorf 遠心機中、30分間4200rpmで遠心分離した後、上清を取り出し、タンパク質含有量をDCタンパク質アッセイ(BioRad)で決定した。サンプルを Laemmli バッファー中で煮沸し、5μgをポリアクリルアミドゲルに載せた。ブロットを5%ミルク溶液でブロックし、インキュベーションは、一次抗体で終夜、そして二次抗体で2時間であった。検出は、ECL Plus (Amersham)で実施した。
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図1は、分離したEB細胞をプレートに播いた後、選択された時点での%Pax6陽性細胞を示す。

Claims (54)

  1. 胚性幹(ES)細胞のニューロン前駆または祖先細胞への分化を誘導する方法であって、
    ES細胞を培養すること;
    胚様体(EB)を形成させること;
    EBをレチノイン酸(RA)と接触させること;および
    EBを分離させてニューロン前駆細胞の培養物を作成すること;
    を含み、ここで、EBを形成させることが、増殖性の高いES細胞を選択し、それらの細胞を定められた密度でプレートに播き、EBを形成させることを含むものである、方法。
  2. 細胞を約0.5x10個ないし5x10個/mlの密度でプレートに播く、請求項1に記載の方法。
  3. EBを形成させることが、ES細胞を細胞約2.5x10個ないし3.5x10個/mlの密度でプレートに播くことを含む、請求項2に記載の方法。
  4. EB細胞の分離まで、EBを非接着培養で維持する、請求項1、請求項2または請求項3に記載の方法。
  5. 該方法が、ES細胞の形態を観察し、形態学的に均一なES細胞をEB形成のために選択することを含む、請求項1ないし請求項4のいずれかに記載の方法。
  6. 該方法が、以下の形態学的特徴:平坦な単層での増殖;相互に直接接触せずに隣り合う細胞;大きい核;多くの仁;相互の上に増殖しない、または、コロニー様形態ではない細胞の1つまたはそれ以上を有するES細胞を選択することを含む、請求項5に記載の方法。
  7. 該方法が、ES細胞の増殖状態を決定し、増殖性の高い細胞をEB形成のために選択することを含む、請求項1ないし請求項6のいずれかに記載の方法。
  8. ES細胞を培養することが、ES細胞をフィーダー細胞の非存在下で植え継ぐことを含む、請求項1ないし請求項7のいずれかに記載の方法。
  9. ES細胞を培養することが、ES細胞を細胞約0.5ないし2x10個/cmの密度でプレートに播き、プレートに播いた2日後にES細胞を分離させることにより植え継ぐことを含む、請求項1ないし請求項8のいずれかに記載の方法。
  10. フィーダー細胞の非存在下で少なくとも2回植え継ぎを繰り返す、請求項9に記載の方法。
  11. 該方法が、ES細胞を分離させて単一の細胞の懸濁液を形成させること(ここで、該懸濁液中の約5%未満の細胞が4個またはそれ以上の細胞の集合体を形成している)、および、該細胞をプレートに播いてEBを形成させることを含む、請求項1ないし請求項10のいずれかに記載の方法。
  12. EBを分離することが、EB細胞をトリプシンで分離させて分離したEB細胞の懸濁液を形成させ、次いで、懸濁液を濾過して細胞の塊を除去することを含む、請求項1ないし請求項11のいずれかに記載の方法。
  13. 分離したEB細胞を約40μmのメッシュを通して濾過する、請求項12に記載の方法。
  14. 分離したEB細胞を、該細胞を凍結させることにより保存することを含む、請求項1ないし請求項13のいずれかに記載の方法。
  15. 分離したEB細胞をプレートに播き、培養して、ニューロンを作成し、場合によりニューロンを培養することをさらに含む、請求項1ないし請求項14のいずれかに記載の方法。
  16. 分離したEB細胞を細胞約0.5x10ないし2.5x10個/cmの密度でプレートに播く、請求項15に記載の方法。
  17. 分離したEB細胞を細胞約1x10ないし1.5x10個/cmの密度でプレートに播く、請求項16に記載の方法。
  18. 分離したEB細胞の培養培地を、分離したEB細胞をプレートに播いてから約1ないし6時間後に交換することを含む、請求項15ないし請求項17のいずれかに記載の方法。
  19. プレートに播いてから約1ないし3時間後に培養培地を交換することを含む、請求項18に記載の方法。
  20. 分離したEB細胞またはニューロンを血清の存在下で培養しない、請求項15ないし請求項19のいずれかに記載の方法。
  21. ニューロン前駆、祖先またはニューロン細胞を増殖因子の存在下で培養しない、請求項15ないし請求項20のいずれかに記載の方法。
  22. ニューロン前駆、祖先またはニューロン細胞を、Neurobasal 培地中で培養しない、請求項15ないし請求項21のいずれかに記載の方法。
  23. 該方法が負の選択段階を含まない、請求項1ないし請求項22のいずれかに記載の方法。
  24. ES細胞が非ヒトES細胞である、請求項1ないし請求項23のいずれかに記載の方法。
  25. 分離したEB細胞の少なくとも80%をニューロン前駆または祖先細胞と同定することを含む、請求項1ないし請求項24のいずれかに記載の方法。
  26. 分離したEB細胞の少なくとも99%をニューロン前駆または祖先細胞と同定することを含む、請求項1ないし請求項25のいずれかに記載の方法。
  27. 細胞の少なくとも80%をニューロンと同定することを含む、請求項15ないし請求項22のいずれかに記載の方法。
  28. 細胞の少なくとも90%をニューロンと同定することを含む、請求項27に記載の方法。
  29. ニューロン前駆もしくは祖先細胞またはニューロン細胞の1つまたはそれ以上の特徴を決定することを含むアッセイ方法。
  30. 特徴が、神経突起の増殖または神経突起の伸長/縮退、ニューロンの形、ニューロンの細胞死、神経形成、ニューロンの分化、電気的活性、シナプス形成および/またはニューロン細胞マーカーの1つまたはそれ以上である、請求項29に記載のアッセイ方法。
  31. 該細胞が、請求項1ないし請求項28のいずれかに記載の方法により作成されるものである、請求項29または請求項30に記載のアッセイ方法。
  32. 請求項1ないし請求項28のいずれかに従い、ES細胞のニューロン前駆もしくは祖先細胞またはニューロン細胞への分化を誘導すること;および、
    試験条件下でニューロン前駆もしくは祖先細胞またはニューロン細胞の1つまたはそれ以上の特徴を決定すること、
    を含む、請求項31に記載のアッセイ方法。
  33. ニューロン前駆もしくは祖先またはニューロン細胞を第1の条件下で培養すること;
    ニューロン前駆もしくは祖先またはニューロン細胞を、第2の第2の条件下で培養すること;
    該細胞の1つまたはそれ以上のニューロンの特徴を、決定または定量すること;および、
    第1の条件下で培養した細胞の1つまたはそれ以上のニューロンの特徴を、第2の条件下で培養した細胞の同じニューロンの特徴と各々比較すること、
    を含む、請求項29ないし請求項32のいずれかに記載のアッセイ方法。
  34. ニューロンの特徴が神経突起の伸長であり、該方法が、
    神経突起特異的タンパク質の発現レベルを定量すること;および、
    神経突起特異的タンパク質の発現レベルを比較すること;
    を含み、第1の条件下でより高い発現レベルは、第1の条件が神経突起の伸長を増加させることを示す、
    請求項33に記載のアッセイ方法。
  35. ニューロンの特徴が神経突起の縮退であり、該方法が、
    神経突起特異的タンパク質の発現レベルを定量すること;および、
    神経突起特異的タンパク質の発現レベルを比較すること;
    を含み、第1の条件下でより低い発現レベルは、第1の条件が神経突起の縮退を増加させることを示す、
    請求項33に記載のアッセイ方法。
  36. 神経突起の縮退を増加させると知られている化合物によりもたらされる神経突起の縮退の増加を阻害または低減する物質の同定方法であって、
    試験物質の存在下、そして、神経突起の縮退を増加させると知られている条件下で、ニューロン前駆もしくは祖先またはニューロン細胞を培養すること;
    試験物質の非存在下、そして、神経突起の縮退を増加させると知られている条件下で、ニューロン前駆もしくは祖先またはニューロン細胞を培養すること;
    試験物質の存在下および非存在下の神経突起の縮退のレベルを定量または決定すること;および、
    試験物質の存在下の神経突起の縮退のレベルを、試験物質の非存在下の神経突起の縮退のレベルと比較すること;
    を含み、
    ここで、試験物質の非存在下と比較して、試験物質の存在下で低い神経突起の縮退のレベルは、その物質が、その条件によりもたらされるか、またはそれに関連する神経突起の縮退の増加を、阻害または低減することを示す、
    方法。
  37. 神経突起特異的タンパク質の発現レベルの定量により神経突起の縮退のレベルを定量し、ここで、試験物質の非存在下と比較して、試験物質の存在下で神経突起特異的タンパク質の発現レベルが高いことは、試験物質が、その条件によりもたらされるか、またはそれに関連する神経突起の縮退の増加を阻害または低減することを示す、請求項36に記載の方法。
  38. ニューロンの特徴がニューロンの細胞死であり、該方法が、
    ニューロンを第1の条件下で培養すること;
    ニューロンを第2の条件下で培養すること;
    第1および第2の条件下で培養した細胞の、ニューロンの細胞死を定量または決定すること;および、
    第1の条件下のニューロンの細胞死のレベルを、第2の条件下のニューロンの細胞死のレベルと比較すること;
    を含み、
    ここで、第2の条件下と比較して第1の条件下で高いニューロンの細胞死のレベルは、その化合物が細胞死を増加させることを示し;かつ/または、
    ここで、第2の条件下と比較して第1の条件下で低いニューロンの細胞死のレベルは、その条件がニューロンの細胞死を低減させることを示す、
    請求項33に記載の方法。
  39. ニューロンがp75ニューロトロフィンおよび/またはアポトーシスのタンパク質を発現する、請求項38に記載のアッセイ方法。
  40. ニューロンの細胞死を増加させると知られている条件によりもたらされるニューロンの細胞死の増加を阻害または低減する物質の同定方法であって、
    試験物質の存在下、そして、ニューロンの細胞死を増加させると知られている条件下で、ニューロンを培養すること;
    試験物質の非存在下、そして、ニューロンの細胞死を増加させると知られている条件下で、ニューロンを培養すること;
    試験物質の存在下および非存在下のニューロンの細胞死のレベルを定量または決定すること;および、
    試験物質の存在下のニューロンの細胞死のレベルを、試験物質の非存在下のニューロンの細胞死のレベルと比較すること;
    を含み、
    ここで、試験物質の非存在下と比較して、試験物質の存在下で低いニューロンの細胞死のレベルは、その物質が、その条件によりもたらされるニューロンの細胞死の増加を、阻害または低減することを示す、
    方法。
  41. 第1の条件下で培養することが、試験化合物の存在下で培養するか、または細胞を試験化合物にさらすことを含み、第2の条件下で培養することが、該試験化合物の非存在下で培養するか、または、細胞を試験化合物にさらさないことを含む、請求項33ないし請求項35、請求項38および請求項39のいずれかに記載のアッセイ方法。
  42. 細胞の分化状態を示すマーカーを同定するための、請求項29ないし請求項31のいずれかに記載のアッセイ方法であって、
    ES細胞の分化を誘導し、ニューロン前駆または祖先細胞を作成すること;および/または、
    ニューロン前駆または祖先細胞を培養してニューロンを作成すること;
    ある分化段階の細胞におけるタンパク質の発現レベルを、第2の分化段階の細胞におけるタンパク質の発現レベルと比較すること;および
    発現レベルが第1および第2の分化段階の細胞で異なるタンパク質を同定すること、
    を含み、
    ここで、発現レベルの差異は、該タンパク質を、細胞の分化状態を示すマーカーとして使用し得ることを示す、
    方法。
  43. ニューロンの特徴がシナプス形成であり、該方法が、細胞の電気生理学的活性の測定、および/または、シナプス形成の指標である1種またはそれ以上のマーカーの発現の検出または測定を含む、請求項29ないし請求項32のいずれかに記載のアッセイ方法。
  44. 第1および第2のニューロン細胞またはニューロン前駆もしくは祖先細胞の培養を提供すること、ここで、第1の培養の細胞は、第2の培養の細胞と異なる遺伝子型を有する;および、
    第1の培養のニューロン前駆もしくは祖先細胞またはニューロンを、第2の培養のニューロン前駆もしくは祖先細胞またはニューロンと比較すること、
    を含む方法。
  45. 第1の培養の細胞が、関心のある遺伝子に突然変異を有し、第2の培養の細胞がその突然変異を含有しない、請求項44に記載の方法。
  46. 第1の培養の細胞が、導入された遺伝子を含有し、第2の培養の細胞がその導入された遺伝子を含有しない、請求項44に記載の方法。
  47. 第1の培養の細胞が、内在性遺伝子を過剰発現し、第2の培養の細胞がその内在性遺伝子を過剰発現しない、請求項44に記載の方法。
  48. 請求項1ないし請求項28のいずれかに記載の方法に従い、ES細胞のニューロン前駆もしくは祖先細胞またはニューロン細胞への分化を誘導することを含む、請求項44ないし請求項47のいずれかに記載の方法。
  49. 第1の培養では、ES細胞が、関心のある遺伝子に突然変異を有し、第2の培養では、細胞がその突然変異を含有しない、請求項48に記載の方法。
  50. 分離したEBの第1の培養物に核酸コンストラクトで形質移入し、それにより第1の培養の細胞の遺伝子型を第2の培養の細胞と比較して変更する、請求項48に記載の方法。
  51. ニューロン前駆もしくは祖先またはニューロン細胞の第1および第2の培養物を、試験条件下で培養すること;
    それらの細胞の1つまたはそれ以上のニューロンの特徴を、検出、定量、観察または決定すること;そして、
    第1の培養の細胞のニューロンの特徴を、第2の培養の細胞のニューロンの特徴と比較すること、
    をさらに含む、請求項44ないし請求項50のいずれかに記載の方法。
  52. 第1の条件下で培養することが、細胞をAβペプチドの存在下で培養することを含み、第2の条件下で細胞を培養することが、細胞をAβペプチドの非存在下で培養することを含む、請求項51に記載の方法。
  53. ニューロンの特徴が神経突起の分解である、請求項52に記載の方法。
  54. 本明細書に実質的に記載されている方法。
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