JP2007531704A5 - - Google Patents

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JP2007531704A5
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Description

触媒を用いたプロキラル環状無水物およびメソ環状無水物の不斉脱対称化
関連出願
本発明は、2003年6月12日に受理されたアメリカ合衆国特許出願第10/460,051号、2003年6月11日に受理されたアメリカ合衆国特許出願第60/477,531号および2003年7月1日に受理されたアメリカ合衆国特許出願第60/484,218号についての優先権の利益を享受する。
政府からの援助
本発明は、国立衛生研究所からの資金援助によって行われたものである(補助金番号GM-61591)。従って、政府は本発明に関して部分的に権利を有する。
近年、鏡像異性体として純粋な化合物に対する需要が急速に高まっている。そのような、キラル非ラセミ化合物の重要な用途の1つは、製薬業界における合成の中間体としての利用である。例えば、鏡像異性体として純粋な薬物は、ラセミ混合物よりも多数の利点を有することが次々と明らかになっている。これらの利点としては、鏡像異性体として純粋な化合物であることに基づく副作用の軽減および効果の増強などが挙げられる。
従来から行われている有機合成法は、ラセミ材料の生成を最適化することが多かった。歴史的には、鏡像異性体として純粋な材料の生成は、次の2つの方法のうちの1つを利用して行われてきた:天然資源(いわゆる、「キラルプール」)に由来する、鏡像異性体として純粋な出発材料の使用;および、古典的技法によるラセミ混合物の分割。しかしながら、これらの方法は、いずれも重大な欠点を有する。キラルプールは、自然界において発見された化合物に限定されるため、特定の構造および配置の化合物しか利用できない。ラセミ体の分割には分割剤を必要とし、不便かつ時間の浪費である。
鏡像異性体として純粋な材料を入手する1つの方法は、メソ、プロキラルおよびラセミ環状無水物(EACA)のエナンチオ選択的(鏡像異性体選択的)アルコリシスを利用する方法である。これらの反応は、多様な重要なキラル構成要素、例えば、ヘミエステル、α−アミノ酸およびα−オキシカルボン酸などの研究室レベルおよび工業レベルの不斉合成に広く応用することができると考えられる。
本発明の1つの態様は、基本骨格がシンコナアルカロイドである触媒に関する。ある実施形態においては、基本骨格がキニジンである触媒は、ケトン基、エステル基、アミド基、シアノ基またはアルキニル基を有する。好ましい実施形態においては、触媒は、QD-IP、QD-(-)-MNまたはQD-(-)-MNまたはQD-ADである。別の実施形態においては、基本骨格がシンコナアルカロイドである触媒はQ-ADである。
本発明を別の側面から見ると、塩基および適切な脱離基を有する化合物とシンコナアルカロイドを反応させることにより、シンコナアルカロイド誘導体触媒を調製する方法に関する。ある実施形態においては、脱離基は、Cl、Br、I、OSO2CH3またはOSO2CF3である。好ましい実施形態においては、脱離基はClである。好ましい実施形態においては、塩基は金属ヒドリドである、好ましい実施形態においては、シンコナアルカロイドのヒドロキシル基は塩化アルキルと反応して触媒を形成する。
本発明の1つの態様は、プロキラル置換環状無水物またはメソ置換環状無水物からキラル非ラセミ化合物を調製する方法に関するものであり、該方法は、キラル非ラセミ三級アミン触媒の存在下において、プロキラル置換環状無水物またはメソ置換環状無水物を求核剤と反応させる工程を含み、このとき、該プロキラル置換環状無水物または該メソ置換環状無水物は、内部対称面もしくは対称点のいずれか、または両方を有しており;該メソ置換環状無水物は少なくとも2個のキラル中心を有し;さらに、該求核剤は、アルコール、チオールまたはアミンであり;それによって、キラル非ラセミ化合物が生成される。
上記の方法のある実施形態においては、前記プロキラル置換環状無水物または前記メソ置換環状無水物は、置換コハク酸無水物または置換グルタル酸無水物である。
上記の方法のある実施形態においては、前記求核剤はアルコールである。
上記の方法のある実施形態においては、前記求核剤は一級アルコールである。
上記の方法のある実施形態においては、前記求核剤は、メタノールまたはCF3CH2OHである。
上記の方法のある実施形態においては、前記キラル非ラセミ三級アミン触媒は、Q-PP、Q-TB、QD-PP、QD-TB、(DHQ)2PHAL、(DHQD)2PHAL、(DHQ)2PYR、(DHQD)2PYR、(DHQ)2AQN、(DHQD)2AQN、DHQ-CLB、DHQD-CLB、DHQ-MEQ、DHQD-MEQ、DHQ-AQN、DHQD-AQN、DHQ-PHNまたはDHQD-PHNである。
上記の方法のある実施形態においては、前記キラル非ラセミ三級アミン触媒は、DHQD-PHNまたは(DNQD)2AQNである。
上記の方法のある実施形態においては、前記キラル非ラセミ三級アミン触媒は、Q-PP、Q-TB、QD-PPまたはQD-TBである。
上記の方法のある実施形態においては、前記キラル非ラセミ三級アミン触媒は、QD-PPである。
上記の方法のある実施形態においては、前記プロキラル置換環状無水物またはメソ置換環状無水物は、置換コハク酸無水物または置換グルタル酸無水物であり;前記求核剤はアルコールであり;さらに、前記キラル非ラセミ三級アミン触媒は、Q-PP、Q-TB、QD-PP、QD-TB、(DHQ)2PHAL、(DHQD)2PHAL、(DHQ)2PYR、(DHQD)2PYR、(DHQ)2AQN、(DHQD)2AQN、DHQ-CLB、DHQD-CLB、DHQ-MEQ、DHQD-MEQ、DHQ-AQN、DHQD-AQN、DHQ-PHNまたはDHQD-PHNである。
上記の方法のある実施形態においては、前記プロキラル置換環状無水物またはメソ置換環状無水物は、置換コハク酸無水物または置換グルタル酸無水物であり;前記求核剤は一級アルコールであり;さらに、前記キラル非ラセミ三級アミン触媒は、Q-PP、Q-TB、QD-PP、QD-TB、(DHQ)2PHAL、(DHQD)2PHAL、(DHQ)2PYR、(DHQD)2PYR、(DHQ)2AQN、(DHQD)2AQN、DHQ-CLB、DHQD-CLB、DHQ-MEQ、DHQD-MEQ、DHQ-AQN、DHQD-AQN、DHQ-PHNまたはDHQD-PHNである。
上記の方法のある実施形態においては、前記プロキラル置換環状無水物またはメソ置換環状無水物は、置換コハク酸無水物または置換グルタル酸無水物であり;前記求核剤はメタノールまたはCF3CH2OHであり;さらに、前記キラル非ラセミ三級アミン触媒は、Q-PP、Q-TB、QD-PP、QD-TB、(DHQ)2PHAL、(DHQD)2PHAL、(DHQ)2PYR、(DHQD)2PYR、(DHQ)2AQN、(DHQD)2AQN、DHQ-CLB、DHQD-CLB、DHQ-MEQ、DHQD-MEQ、DHQ-AQN、DHQD-AQN、DHQ-PHNまたはDHQD-PHNである。
上記の方法のある実施形態においては、前記プロキラル置換環状無水物またはメソ置換環状無水物は、置換コハク酸無水物または置換グルタル酸無水物であり;前記求核剤はアルコールであり;さらに、前記キラル非ラセミ三級アミン触媒は、DHQD-PHNまたは(DHQD)2AQNである。
上記の方法のある実施形態においては、前記プロキラル置換環状無水物またはメソ置換環状無水物は、置換コハク酸無水物または置換グルタル酸無水物であり;前記求核剤は一級アルコールであり;さらに、前記キラル非ラセミ三級アミン触媒は、DHQD-PHNまたは(DHQD)2AQNである。
上記の方法のある実施形態においては、前記プロキラル置換環状無水物またはメソ置換環状無水物は、置換コハク酸無水物または置換グルタル酸無水物であり;前記求核剤はメタノールまたはCF3CH2OHであり;さらに、前記キラル非ラセミ三級アミン触媒は、DHQD-PHNまたは(DHQD)2AQNである。
上記の方法のある実施形態においては、前記プロキラル置換環状無水物またはメソ置換環状無水物は、置換コハク酸無水物または置換グルタル酸無水物であり;前記求核剤はアルコールであり;さらに、前記キラル非ラセミ三級アミン触媒は、Q-PP、Q-TB、QD-PPまたはQD-TBである。
上記の方法のある実施形態においては、前記プロキラル置換環状無水物またはメソ置換環状無水物は、置換コハク酸無水物または置換グルタル酸無水物であり;前記求核剤は一級アルコールであり;さらに、前記キラル非ラセミ三級アミン触媒は、Q-PP、Q-TB、QD-PPまたはQD-TBである。
上記の方法のある実施形態においては、前記プロキラル置換環状無水物またはメソ置換環状無水物は、置換コハク酸無水物または置換グルタル酸無水物であり;前記求核剤はメタノールまたはCF3CH2OHであり;さらに、前記キラル非ラセミ三級アミン触媒は、Q-PP、Q-TB、QD-PPまたはQD-TBである。
上記の方法のある実施形態においては、前記プロキラル置換環状無水物またはメソ置換環状無水物は、置換コハク酸無水物または置換グルタル酸無水物であり;前記求核剤はアルコールであり;さらに、前記キラル非ラセミ三級アミン触媒は、QD-PPである。
上記の方法のある実施形態においては、前記プロキラル置換環状無水物またはメソ置換環状無水物は、置換コハク酸無水物または置換グルタル酸無水物であり;前記求核剤は一級アルコールであり;さらに、前記キラル非ラセミ三級アミン触媒は、QD-PPである。
上記の方法のある実施形態においては、前記プロキラル置換環状無水物またはメソ置換環状無水物は、置換コハク酸無水物または置換グルタル酸無水物であり;前記求核剤はメタノールまたはCF3CH2OHであり;さらに、前記キラル非ラセミ三級アミン触媒は、QD-PPである。
上記の方法のある実施形態においては、前記キラル非ラセミ三級アミン触媒の量は、前記プロキラル置換環状無水物またはメソ置換環状無水物の量に対して約30モル%以下である。
上記の方法のある実施形態においては、前記キラル非ラセミ三級アミン触媒の量は、前記プロキラル置換環状無水物またはメソ置換環状無水物の量に対して約20モル%以下である。
上記の方法のある実施形態においては、前記キラル非ラセミ三級アミン触媒の量は、前記プロキラル置換環状無水物またはメソ置換環状無水物の量に対して約10モル%以下である。
本発明の別の態様は、プロキラル環状無水物またはメソ環状無水物からキラル非ラセミ化合物を調製する方法に関するものであり、該方法は、触媒の存在下において、プロキラル環状無水物またはメソ環状無水物を求核剤と反応させる工程を含み、このとき、該プロキラル置換環状無水物または該メソ置換環状無水物は、内部対称面もしくは対称点のいずれかまたは両方を有しており;それによって、キラル非ラセミ化合物が生成され;このとき、前記触媒はシンコナアルカロイド誘導体である。好ましい実施形態においては、触媒は、QD-IP、QD-(-)-MNまたはQD-ADである。ある実施形態においては、求核剤は一級アルコールである。
好ましい実施形態においては、求核剤はメタノールまたはCF3CH2OHである。ある実施形態においては、プロキラル環状無水物またはメソ環状無水物は、置換コハク酸無水物または置換グルタル酸無水物である。ある実施形態においては、触媒の量は、前記プロキラル環状無水物またはメソ環状無水物の量に対して約70モル%以下である。好ましい実施形態においては、触媒の量は、前記プロキラル環状無水物またはメソ環状無水物の量に対して約10モル%以下である。ある実施形態においては、キラル非ラセミ化合物のエナンチオマー過乗率は、約90%以上である。ある実施形態においては、前記触媒は、Q-IP、Q-PC、Q-ADまたはQ-(-)-MNである。
本発明の別の態様は、動力学的分割の方法に関するものであり、該方法は、シンコナアルカロイド誘導体触媒の存在下において、ラセミ環状無水物をアルコールと反応させる工程を含む。好ましい実施形態においては、触媒は、QD-IP、QD-(-)-MNまたはQD-ADである。好ましい実施形態においては、アルコールは一級アルコールである。ある実施形態においては、触媒は、Q-IP、Q-PC、Q-ADまたはQ-(-)-MNである。
上記の方法のある実施形態においては、前記キラル非ラセミ三級アミン化合物のエナンチオマー過乗率は約50%以上である。
上記の方法のある実施形態においては、前記キラル非ラセミ三級アミン化合物のエナンチオマー過乗率は約70%以上である。
上記の方法のある実施形態においては、前記キラル非ラセミ三級アミン化合物のエナンチオマー過乗率は約90%以上である。
上記の方法のある実施形態においては、前記キラル非ラセミ三級アミン化合物のエナンチオマー過乗率は約95%以上である。
本発明に関する特定の好ましい実施形態について示している実施例を参照にしながら、本発明を詳細に記載する。しかしながら、本発明は多数の別異の様式を包含しており、本明細書中に記載されている実施形態に限定されるべきではなく、むしろ、当業者に対して、本発明を完全かつ完璧に開示し、さらに本発明の範ちゅうを余すところなく伝えるためにこれらの実施形態を記載している。
プロキラル化合物またはメソ化合物から、鏡像異性体に富んだ、または鏡像異性体として純粋なキラル化合物への選択的変換能は、広範な用途があり、特に、農業および製薬産業ならびにポリマー産業において使用される。本明細書において記載しているように、本発明は、プロキラル化合物およびメソ化合物などを触媒を用いて不斉脱対称化する方法および触媒に関する。以下に記載しているように、そのような方法の主要構成要素は、次のようなものである:非ラセミキラル三級アミンを含む触媒;プロキラル基質もしくはメソ基質(一般的には、内部対称面または対称点によって関連づけられている一対の親電子原子を含む複素環式化合物);求核剤(一般的には溶媒であり、反応条件下において、上述の2個の親電子原子のうちの1個を選択的に攻撃し、鏡像異性体に富んだキラル生成物を生成する)。さらに、本発明の触媒および方法は、ラセミ混合物などの効率的な動力学的分割に利用することができる。
定義
利便を図るため、請求項、明細書および実施例中に使用している特定の語句を本項に集めておく。
「求核剤」は当該分野において既知であり、本明細書においては、反応性電子対を有する化学部位を意味する。求核剤の例としては、水、アミン類、メルカプタン類およびアルコール類などの非電荷化合物、また、アルコキシド類、チオレート類、カーバニオン類、ならびに有機性および無機性の多様な陰イオン類などの電荷部位が挙げられる。陰イオン性求核剤の例としては、単純陰イオン類、例えば、水酸基、アジド、シアニド、チオシアナート、アセタート、ホルメートもしくはクロロホルメートおよびビスルファイトなどが挙げられる。有機水銀、有機亜鉛、有機リチウム、グリニャール試薬、エノラート類、アセチリド類などのような有機金属試薬は、適切な反応条件下においては相応の求核剤として作用する。基質の還元が所望される場合には、ヒドリドも適切な求核剤として作用する。
「親電子剤」とは、当該分野において既知であり、上述の求核剤から一対の電子対を受け入れることができる化学部位をさす。本発明に従う方法において有用な親電子剤としては、エポキシド類、アジリジン類、エピスルフィド類、環状スルフェート類、カーボネート類、ラクトン類、ラクタム類などの環状化合物が挙げられる。非環状親電子剤としては、スルフェート類、スルホネート類(例えば、トシレート類など)、塩化物類、臭化物類、ヨウ化物類などが挙げられる。
本明細書において使用している「親電子原子」、「親電子中心」および「反応中心」とは、求核剤に攻撃されて新規な結合を形成する基質の原子をさす。多くの場合には(全ての場合ではないが)、そのような原子は、脱離基がはずれる場所でもある。
「電子吸引基」とは、当該分野において既知であり、本明細書において使用しているように、同一位置において、水素原子よりも電子を引き寄せる力が強い官能基を意味する。電子吸引基の例としては、ニトロ、ケトン、アルデヒド、スルホニル、トリフルオロメチル、−CN、塩化物などが挙げられる。本明細書において使用されているように、「電子供与基」とは、同一位置において、水素原子よりも電子を引き寄せる力が弱い官能基を意味する。電子供与基の例としては、アミノ、メトキシなどが挙げられる。
「ルイス塩基」および「ルイス塩基性」とは、当該分野において既知であり、特定の反応条件下において、一対の電子対を供与することができる化学部位をさす。ルイス塩基性部位の例としては、アルコール類、チオール類、オレフィン類、アミン類などのような非電荷化合物、ならびに、アルコキシド類、チオレート類、カーバニオン類、およびその他の多様な有機性陰イオン類などのような電荷部位が挙げられる。
「ルイス酸」および「ルイス酸性」とは、当該分野において既知であり、ルイス塩基から一対の電子対を受け取ることができる化学部位をさす。
「メソ化合物」とは、当該分野において既知であり、少なくとも2つのキラル中心を有するが、内部対称面または対称点が存在するためにアキラルである化合物を意味する。
「キラル」とは、鏡像体の一方に他方を重ね合わせることができないという特性を有する分子をさし、「アキラル」とは、鏡像体の一方の他方を重ね合わせることができる分子をさす。「プロキラル分子」とは、特定の過程においてキラル分子に転換する能力を有するアキラル分子である。
「立体異性体」とは、同一の化学組成を有するが、空間内の原子または基の配置に関して異なっている化合物をさす。特に、「鏡像異性体」とは、互いに重ね合わせることができない鏡像体であるような化合物の2つの立体異性体をさす。一方、「ジアステレオマー」とは、2つまたはそれ以上の不斉中心を有し、互いに鏡像体ではない一対の立体異性体間の関係をさす。
さらに、「立体選択的過程」とは、反応生成物の特定の立体異性体を、その生成物について得られる可能性のある他方の立体異性体よりも多量に生成する過程である。「鏡像異性体選択的過程」とは、反応生成物について生成する可能性のある2つの鏡像異性体のうちの一方を優先的に生成する過程である。そのような方法は、生成物の特定の立体異性体の収量が、キラル触媒を用いずに同一の反応を行って得られる該立体異性体のそれよりも統計的に有意に多い場合には、「立体選択性に富んだ」生成物(例えば、鏡像異性体選択性に富んだ、またはジアステレオ選択性に富んだ生成物)を生成するといわれる。例えば、本発明のキラル触媒のうちの1つによって触媒された鏡像異性体選択的反応では、特定の鏡像異性体に対するe.e.は、キラル触媒無しの反応におけるe.e.よりも大きい。
「位置異性体」とは、同一の分子式を有するが、原子の結合が異なっている化合物をさす。従って、「位置選択的過程」は、特定の位置異性体を他の物よりも優先的に生成する過程であり、例えば、反応によって、特定の位置異性体を統計的に有意に優勢に生成する場合などである。
「反応生成物」とは、求核剤と基質との反応によって得られた化合物を意味する。一般的には、「反応生成物」という語は、安定で単離可能な化合物をさすものとして用いられ、不安定な中間体または遷移状態をさすものではない。
「基質」とは、本発明に従う求核剤または環拡張剤と反応することができ、ステレオジェン中心を有する少なくとも1つの生成物が得られるような化合物を意味する。
「触媒量」とは、当該分野において既知であり、反応物に対して化学量論以下の量を意味する。本明細書において使用されているように、触媒量とは、反応物に対して0.0001〜90モル%であり、より好ましくは、0.001〜50モル%であり、さらに好ましくは、0.01〜10モル%であり、さらにまた好ましくは、反応物に対して0.1〜5モル%である。
以下にさらに詳細に記載しているように、本発明における反応とは、鏡像異性体選択的、ジアステレオ選択的、および/または位置選択的である反応を含む。鏡像異性体選択的反応は、アキラルな反応物を鏡像異性体のうちの1つに富んだキラル生成物に転換する反応である。一般的に、鏡像異性体選択性は、「エナンチオマー過乗率」(ee)として定量化され、以下のように定義される:
Aのエナンチオマー過乗率%(ee)=(鏡像異性体Aの%)−(鏡像異性体Bの%)
このとき、AおよびBは、生成した鏡像異性体である。鏡像異性体選択性と合わせて用いられるさらなる語句としては、「光学純度」または「光学活性」が挙げられる。鏡像異性体選択的反応により、e.e.がゼロより大きい生成物が得られる。好ましい鏡像異性体選択的反応においては、e.e.が20%以上の生成物が得られ、より好ましくは50%以上、さらに好ましくは70%以上、最も好ましくは80%以上の生成物が得られる。
ジアステレオ選択的反応とは、キラル反応物(ラセミ性または鏡像異性体として純粋な反応物)を鏡像異性体のうちの1つに富んだ生成物に転換する反応である。キラル反応物がラセミ性である場合には、キラル非ラセミ反応試薬または触媒の存在下において、反応物の1つの鏡像異性体は、他の異性体よりもゆっくりと反応する。この種の反応は動力学的分割と称され、反応速度が異なることによって反応物の鏡像異性体が分割され、鏡像異性体に富んだ生成物と鏡像異性体に富んだ未反応基質とが得られる。通常、動力学的分割は、反応物の1つの鏡像異性体のみが反応するのに十分量の試薬を用いる(すなわち、ラセミ基質1モルにつき、試薬は1/2モル)ことによって達成される。ラセミ反応物の動力学的分割に使用されてきた触媒反応の例としては、シャープレスエポキシ化およびノヨリ水素化が挙げられる。
位置選択的反応とは、他の非同一(non-identical)反応中心よりもある1つの反応中心において優先的に生じる反応である。例えば、非対称置換エポキシド基質の位置選択的反応は、2個のエポキシド環炭素のうちの1つにおける優先的反応である。
キラル触媒に関して「非ラセミ性である」とは、与えられた鏡像異性体を50%以上、より好ましくは少なくとも75%含む触媒調製物を意味する。「実質的に非ラセミ性である」とは、触媒中の与えられた鏡像異性体についてeeが90%以上、より好ましくはeeが95%以上である触媒調製物をさす。
「アルキル」という語は、飽和脂肪族基のラジカルをさし、直鎖アルキル基、分岐鎖アルキル基、シクロアルキル(脂環式)基、アルキル置換シクロアルキル基およびシクロアルキル置換アルキル基などが挙げられる。好ましい実施形態においては、直鎖または分岐鎖アルキルは、骨格内の炭素原子数が30個もしくはそれ以下であり(例えば、直鎖についてはC1〜C30、分岐鎖については、C3〜C30など)、より好ましくは20個もしくはそれ以下である。同様に、好ましいシクロアルキルは、環構造中に4〜10個の原子を有しており、より好ましくは、環構造中に5、6または7個の原子を有する。
特に炭素数を指定していない場合には、本明細書において使用している「低級アルキル」とは、上に定義しているように、骨格内の炭素原子数が1〜10個、より好ましくは1〜6個であるアルキル基を意味する。同様に、「低級アルケニル」および「低級アルキニル」も炭素鎖の長さは類似している。
「アルケニル」および「アルキニル」とは、炭素数および置換の可能性に関して、上述のアルキルと類似しているが、少なくとも1個の二重もしくは三重の炭素−炭素結合を有する不飽和脂肪族基をさす。
本明細書において使用している「アルコキシル」または「アルコキシ」という語は、上で定義したようなアルキル基に酸素ラジカルが付加しているものをさす。代表的なアルコキシル基としては、メトキシ、エトキシ、プロピルオキシ、tert−ブトキシなどが挙げられる。「エーテル」は、2個の炭化水素が酸素によって共有結合しているものである。従って、アルキルをエーテルにするようなアルキルの置換基はアルコキシまたはそれに類似したものであり、例えば、−O−アルキル、−O−アルケニル、−O−アルキニル、−O−(CH2m−R8などと表すことができ、mおよびR8は上述の通りである。
本明細書において使用しているように、「アミノ」とは−NH2を意味し、「ニトロ」とは−NO2を意味し、「ハロゲン」とは、−F、−Cl、−Brまたは−Iをさし、「チオール」とは−SHを意味し、「ヒドロキシル」とは−OHを意味し、「スルホニル」とは、−SO2−を意味し、「有機金属」とは、ジフェニルメチルシリル基などのように、炭素原子に直接結合した、金属原子(例えば、水銀、亜鉛、鉛、マグネシウムもしくはリチウムなど)またはメタロイド(例えば、シリコーン、ヒ素もしくはセレンなど)をさす。
「アミン」および「アミノ」という語は当該分野において既知であり、非置換および置換アミン類をさし、例えば、下記の一般式で表される部位などである:
Figure 2007531704
ここで、R9、R10およびR'10は、それぞれ別異に、原子価則に則った基を表す。
「アシルアミノ」という語は当該分野において既知であり、下記の一般式で表される部位をさす:
Figure 2007531704
ここで、R9は上で定義したとおりであり、R'11は、水素、アルキル、アルケニルまたは−(CH2m−R8を表し、mおよびR8は上述の通りである。
「アミド」という語は、アミノ置換カルボニルとして当該分野において既知であり、下記の一般式で表される部位を有する:
Figure 2007531704
ここで、R9およびR10は上で定義したとおりである。アミドの好ましい実施形態においては、不安定なイミドを含まない。
「アルキルチオ」という語は、上で定義したアルキル基に硫黄ラジカルが結合したものをさす。好ましい実施形態においては、「アルキルチオ」部位は、−S−アルキル、−S−アルケニル、−S−アルキニルおよび−S−(CH2m−R8で表され、mおよびR8は上述の通りである。代表的なアルキルチオ基としては、メチルチオ、エチルチオなどが挙げられる。
「カルボニル」という語は当該分野において既知であり、下記の一般式で表される部位を有する:
Figure 2007531704
ここで、Xは、結合であるかまたは酸素もしくは硫黄を表し、R11は、水素、アルキル、アルケニル、−(CH2m−R8または薬剤学的に許容される塩を表し、R'11は、水素、アルキル、アルケニルまたは−(CH2m−R8を表し、mおよびR8は上述の通りである。Xが酸素であり、R11およびR'11が水素ではない場合には、上記の構造式は「エステル」を表す。Xが酸素であり、R11が上の定義通りである場合には、該部位はカルボキシル基と称され、特にR11が水素である場合には、上記の構造式は「カルボン酸」を表す。Xが酸素であり、R'11が水素である場合には、上記の構造式は「ホルメート」を表す。一般的に、上記の構造式の酸素原子を硫黄に置き換えると、該構造式は「チオカルボニル」基を表す。Xが硫黄であり、R11およびR'11が水素ではない場合には、上記の構造式は「チオエステル」を表す。Xが硫黄でありR11が水素である場合には、上記の構造式は「チオカルボン酸」を表す。Xが硫黄であり、R'11が水素である場合には、上記の構造式は「チオホルメート」を表す。一方、Xが結合であり、R11が水素ではない場合には、上記の構造式は「ケトン」基を表す。Xが結合でありR11が水素である場合には、上記の構造式は「アルデヒド」基を表す。
「スルホネート」は当該分野において既知であり、下記の一般式で表される部位を有する:
Figure 2007531704
ここで、R41は、電子対、ハロゲン、アルキル、シクロアルキル、またはアリールである。 「スルホニルアミノ」は当該分野において既知であり、下記の一般式で表される部位を有する:
Figure 2007531704
「スルファモイル」は当該分野において既知であり、下記の一般式で表される部位を有する:
Figure 2007531704
本明細書において使用している「スルホニル」は、下記の一般式で表される部位を有する:
Figure 2007531704
ここで、R44は、水素、アルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、複素環、アリールまたはヘテロアリールを含む群から選択される。
本明細書において使用している「スルホキシド」は、下記の一般式で表される部位を有する:
Figure 2007531704
ここで、R44は、水素、アルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、複素環、アラルキルまたはアリールを含む群から選択される。
本明細書において使用している「スルフェート」は、上で定義したようなスルホニル基に2個のヒドロキシ基またはアルコキシ基が結合しているものを意味する。従って、好ましい実施形態においては、スルフェートは下記の構造を有する:
Figure 2007531704
ここで、R40およびR41はそれぞれ別異に、空位、水素、アルキルまたはアリールである。さらに、R40およびR41は、スルホニル基およびそれらが結合している酸素原子と共に、5〜10員の環構造を形成する。
アルケニルおよびアルキニル基に対して同様の置換を行うことにより、例えば、アルケニルアミン類、アルキニルアミン類、アルケニルアミド類、アルキニルアミド類、アルケニルイミン類、アルキニルイミン類、チオアルケニル類、チオアルキニル類、カルボニル置換アルケニル類もしくはアルキニル類、アルケノキシル類、アルキノキシル類、金属アルケニル類ならびに金属アルキニル類などを形成することができる。
本明細書において使用している「アリール」という語は、0〜4個のヘテロ原子を含む4、5、6および7員の単環芳香族基を含み、例えば、ベンゼン、ナフタレン、アントラセン、ピレン、ピロール、フラン、チオフェン、イミダゾール、オキサゾール、チアゾール、トリアゾール、ピラゾール、ピリジン、ピラジン、ピリダジンおよびピリミジンなどが挙げられる。環構造内にヘテロ原子を有するこれらのアリール基は、「複素環アリール」と称する場合もある。芳香環は、1またはそれ以上の位置において、上述した置換基で置換することができ、そのような置換基としては、例えば、ハロゲン類、アルキル類、アルケニル類、アルキニル類、ヒドロキシル、アミノ、ニトロ、チオール、アミン類、イミン類、アミド類、ホスホネート類、ホスフィン類、カルボニル類、カルボキシル類、シリル類、エーテル類、チオエーテル類、スルホニル類、セレノエーテル類、ケトン類、アルデヒド類、エステル類、−(CH2m−R7 、−CF3、−CNなどが挙げられる。
「複素環」または「複素環式基」とは、4〜10員環構造、より好ましくは5〜7員環構造をさし、該環構造に1〜4個のヘテロ原子を含む。複素環式基としては、ピロリジン、オキソラン、チオラン、イミダゾール、オキサゾール、ピペリジン、ピペラジン、モルホリンなどが挙げられる。複素環は、1つまたはそれ以上の位置において、上述したような置換基で置換することができ、そのような置換基としては、例えば、ハロゲン類、アルキル類、アルケニル類、アルキニル類、ヒドロキシル、アミノ、ニトロ、チオール、アミン類、イミン類、アミド類、ホスホネート類、ホスフィン類、カルボニル類、カルボキシル類、シリル類、エーテル類、チオエーテル類、スルホニル類、セレノエーテル類、ケトン類、アルデヒド類、エステル類、または−(CH2m−R7 、−CF3、−CNなどが挙げられる。
「多環」または「多環式基」という語は、2個またはそれ以上の環(例えば、シクロアルキル類、シクロアルケニル類、シクロアルキニル類、アリール類、および/またはヘテロ環など)をさし、このとき、2個またはそれ以上の炭素が2つの隣接する環に共用されており、例えば、そのような環は「融合環」と称される。非隣接原子を介して結合している環は、「橋かけ」環と称される。環を構成する各環は、1つまたはそれ以上の位置において、上述したような置換基で置換することができ、そのような置換基としては、例えば、ハロゲン類、アルキル類、アルケニル類、アルキニル類、ヒドロキシル、アミノ、ニトロ、チオール、アミン類、イミン類、アミド類、ホスホネート類、ホスフィン類、カルボニル類、カルボキシル類、シリル類、エーテル類、チオエーテル類、スルホニル類、セレノエーテル類、ケトン類、アルデヒド類、エステル類、−(CH2m−R7 、−CF3、−CNなどが挙げられる。
本明細書において使用している「ヘテロ原子」とは、炭素または水素以外の任意の元素の原子の意味である。好ましいヘテロ原子は、窒素、酸素、硫黄、リンおよびセレンである。
本発明の目的を達成するためには、化学元素は、元素周期律表(CAS版、化学および物理学ハンドブック(Handbook of Chemistry and Physics)、第67版、1986−87年、表紙の内側)に従って確認する。
オルト、メタおよびパラという語は、それぞれ、1,2−、1,3−および1,4−置換ベンゼンをさす。例えば、1,2−ジメチルベンゼンとオルト−ジメチルベンゼンとは同義である。
トリフリル、トシル、メシルおよびノナフリルという語は当該分野において既知であり、それぞれ、トリフルオロメタンスルホニル基、p−トルエンスルホニル基、メタンスルホニル基およびノナフルオロブタンスルホニル基をさす。トリフラート、トシラート、メシラートおよびノナフラートという語は当該分野において既知であり、それぞれ、トリフルオロメタンスルホネートエステル官能基、p−トルエンスルホネートエステル官能基、メタンスルホネートエステル官能基およびノナフルオロブタンスルホネートエステル官能基、ならびにそれらの基を含む分子をさす。
Me、Et、Ph、Tf、Nf、TsおよびMsという略語は、それぞれ、メチル、エチル、フェニル、トリフルオロメタンスルホニル、ノナフルオロブタンスルホニル、p−トルエンスルホニルおよびメタンスルホニルをさす。通常の技量を有する有機化学者利用される略号についてのより包括的な表は、Journal of Organic Chemistryの各巻の第1号に掲載されており、この表には、通常、略号標準表(Standard List of Abbreviations)という題が付けられている。該表に含まれている略号、および通常の技量を有する有機化学者によって利用される全ての略号を参照として本明細書中に取り入れておく。
本明細書において使用されている「保護基」という語は、一時的な置換基であって、所望しない化学的変換から反応性官能基を保護する置換基を意味する。そのような保護基の例としては、カルボン酸類のエステル類、アルコール類のシリルエーテル類、ならびに、アルデヒド類およびケトン類のアセタール類およびケタール類などが挙げられる。保護基化学の分野については、総説が書かれている(グリーン(Greene),T.W.;ヴッツ(Wuts),P.G.M.;有機合成における保護基(Protective Groups in Organic Synthesis)、第2版、ウィレー(Wiley)社、ニューヨーク、1991年)。
本明細書において使用しているように、「置換された」という語は、有機化合物において許容される全ての置換基を含む。広義には、許容される置換基としては、有機化合物の非環式および環式、分岐鎖または非分岐鎖、炭素環式および複素環式、芳香環式および非芳香環式置換基が挙げられる。置換基の例としては、例えば、上述した基が挙げられる。許容される置換基は、適切な有機化合物に対して、1個もしくはそれ以上を用いることができ、かつ、同一または別異の基を用いることができる。本発明の目的を達成するためには、窒素などのヘテロ原子は、水素置換基、および/または、本明細書に記載されている有機化合物中の許容される任意の置換基であって、ヘテロ原子の原子価を満たすものを有する。本発明は、如何なる場合においても、有機化合物中の許容される置換基によって制限されはしない。
「1−アダマンチル」という語は、当該分野において既知であり、下記の一般式で表される部位を有する:
Figure 2007531704
「(−)−メンチル」という語は、当該分野において既知であり、下記の一般式で表される部位を有する:
Figure 2007531704
「(+)−メンチル」という語は、当該分野において既知であり、下記の一般式で表される部位を有する:
Figure 2007531704
「イソボルニル」という語は、当該分野において既知であり、下記の一般式で表される部位を有する:
Figure 2007531704
「イソピノカンフィル」という語は、当該分野において既知であり、下記の一般式で表される部位を有する:
Figure 2007531704
「(+)−フェンチル」という語は、当該分野において既知であり、下記の一般式で表される部位を有する:
Figure 2007531704
「QD」という語は、下記の一般式で表される:
Figure 2007531704
「Q」という語は、下記の一般式で表される:
Figure 2007531704
本発明に従う触媒
本方法において使用した触媒は、非ラセミキラルアミン類であり、それらは、不斉環境を提供することにより、プロキラル分子またはメソ分子(すなわち、少なくとも2個のキラル中心を有する分子、ならびに、内部対称面もしくは対称点、またはそれらの両方を有する分子)内において対称の関係にある2つもしくはそれ以上の部位の間に差異をもたらす。一般的に、本発明に用いられる触媒は、多数の特徴によって特性付けることができる。例えば、本発明において期待される各触媒の顕著な面は、三級アミン部位に結合させた不斉二環式または多環式骨格の使用に関することであり、そのような構造は、アミンの窒素原子付近に強固または準強固な環境をもたらす。このような特徴は、骨格内に存在する1個またはそれ以上の不斉中心の近傍のアミン窒素に構造的な強さをもたらすことを介して、変換反応全体にわたり、対応するジアステレオ異性遷移状態のエネルギーに重要な差異を生み出すことに関与している。さらに、基質の選択も触媒の反応性に影響を与える。例えば、一般的に、触媒上の置換基がかさ高い場合には、触媒の回転数が多くなることが見出されている。
上述の各実施形態に対する好ましい実施形態においては、触媒の分子量は2,000g/モル未満、より好ましくは1,000g/モル未満、さらに好ましくは500g/モル未満である。さらに、触媒上の置換基を選択することにより、特定の溶媒系における触媒の溶解性に影響を与えることができる。
特定の実施形態においては、キラル非ラセミ三級アミン触媒は、1−アザビシクロ[2,2,2]オクタン部位または1,4−ジアザビシクロ[2,2,2]オクタン部位を有する。特定の実施形態においては、キラル非ラセミ三級アミン触媒は、シンコナアルカロイド、Q-PP、Q-TB、QD-PP、QD-TB、(DHQ)2PHAL、(DHQD)2PHAL、(DHQ)2PYR、(DHQD)2PYR、(DHQ)2AQN、(DHQD)2AQN、DHQ-CLB、DHQD-CLB、DHQ-MEQ、DHQD-MEQ、DHQ-AQN、DHQD-AQN、DHQ-PHNまたはDHQD-PHNである。特定の実施形態においては、キラル非ラセミ三級アミン触媒は、DHQD-PHNまたは(DHQD)2AQNである。特定の実施形態においては、キラル非ラセミ三級アミン触媒は、Q-PP、Q-TB、QD-PPまたはQD-TBである。特定の実施形態においては、キラル非ラセミ三級アミン触媒は、QD-PPである。
上に概説したように、触媒置換基の選択は、触媒の電気的性質にも影響を与える。触媒を電子に富んだ(電子供与)部位(例えば、アルコキシまたはアミノ基など)で置換すると、三級アミン窒素の位置において触媒の電子密度が上昇し、より強力な求核剤ならびに/またはブレンステッド塩基および/もしくはルイス塩基になる。逆に、電子欠乏部位(例えば、クロロまたはトリフルオロメチル基など)で触媒を置換すると、三級アミン窒素の位置において触媒の電子密度が低下し、より弱い求核剤ならびに/またはブレンステッド塩基および/もしくはルイス塩基になる。この考察をまとめると、三級アミン窒素の位置における電子密度が、窒素のルイス塩基性および求核性に影響を及ぼすことから、触媒の電子密度が重要である。従って、適切な置換基を選択することにより、反応速度および反応の立体選択性の「調節」をすることができる。
本発明の1つの態様は、化学式Iによって表される化合物に関する:
Figure 2007531704
ここで、Rは、−C(O)R2、−(C(R3)2)nCO2R4、−(C(R3)2)nC(O)N(R5)2、−(C(R3)2)nCN、−(C(R3)2)nC(O)R5、−C(C(R3)2)nC≡CR6、−(C(R3)2)nOPO(OR5)2、−(C(R3)2)nOR5、−(C(R3)2)nN(R5)2、−(C(R3)2)nSR5または−(C(R3)2)nNO2を表し;
R1は、アルキルまたはアルケニルを表し;
R2は、アルキル、シクロアルキル、またはアルケニルを表し;
R3は、それぞれ別異に、H、アルキル、アルケニル、アリール、シクロアルキル、アラルキル、ヘテロアルキル、ハロゲン、シアノ、アミノ、アシル、アルコキシル、シリルオキシ、ニトロ、チオール、アミン、イミン、アミド、ホスホネート、ホスフィン、カルボニル、カルボキシル、シリル、エーテル、チオエーテル、スルホニル、セレノエーテル、ケトン、アルデヒドまたはエステルを表し;
R4は、シクロアルキル、−CH(R3)2、アルケニル、アルキニル、アリールまたはアラルキルを表し;
R5は、それぞれ別異に、H、アルキル、アルケニル、アリール、シクロアルキルまたはアラルキルを表し;
R6は、必要に応じて置換されたアルキル、アルケニル、アリールまたはアラルキルであり;さらに、
nは1〜10である。
特定の実施形態においては、本発明に従う化合物は、化学式Iで表され、ここで、Rは、−C(O)R2、−(C(R3)2)nCO2R4、−(C(R3)2)nC(O)N(R5)2、−(C(R3)2)nCN、−(C(R3)2)nC(O)R5または−C(C(R3)2)nC≡CR6を表す。
特定の実施形態においては、本発明に従う化合物は、化学式Iで表され、ここで、R1
エチルである。
特定の実施形態においては、本発明に従う化合物は、化学式Iで表され、ここで、R1
−CH=CH2である。
特定の実施形態においては、本発明に従う化合物は、化学式Iで表され、ここで、Rは
−C(O)R2である。
特定の実施形態においては、本発明に従う化合物は、化学式Iで表され、ここで、Rは−C(O)R2であり、R2はアルキルである。。
特定の実施形態においては、本発明に従う化合物は、化学式Iで表され、ここで、Rは−(C(R3)2)nCO2R4である。
特定の実施形態においては、本発明に従う化合物は、化学式Iで表され、ここで、Rは−(C(R3)2)nCO2R4であり、R4は−CH(R3)2である。
特定の実施形態においては、本発明に従う化合物は、化学式Iで表され、ここで、Rは−(C(R3)2)nCO2R4であり、R4は−CH(R3)2であり、nは1である。
特定の実施形態においては、本発明に従う化合物は、化学式Iで表され、ここで、Rは−(C(R3)2)nCO2R4であり、R4はシクロアルキルである。
特定の実施形態においては、本発明に従う化合物は、化学式Iで表され、ここで、Rは−CH2CO2R4であり、R4はシクロアルキルである。
特定の実施形態においては、本発明に従う化合物は、化学式Iで表され、ここで、Rは−CH2CO2R4であり、R4はシクロアルキルであり、R1は−CH=CH2である。
特定の実施形態においては、本発明に従う化合物は、化学式Iで表され、ここで、Rは−CHCO2R4であり、R4は(−)−メンチル、1−アダマンチル、イソボルニル、(−)−イソピノカンフィルまたは(+)−フェンチルであり、R1は−CH=CH2である。
特定の実施形態においては、本発明に従う化合物は、化学式Iで表され、ここで、Rは−(C(R3)2)nC(O)N(R5)2である。
特定の実施形態においては、本発明に従う化合物は、化学式Iで表され、ここで、Rは−(C(R3)2)nC(O)N(R5)2であり、R1は−CH=CH2である。
特定の実施形態においては、本発明に従う化合物は、化学式Iで表され、ここで、Rは−CH2C(O)NH−1−アダマンチルであり、R1は−CH=CH2である。
特定の実施形態においては、本発明に従う化合物は、化学式Iで表され、ここで、Rは−(C(R3)2)nCNである。
特定の実施形態においては、本発明に従う化合物は、化学式Iで表され、ここで、Rは−CH2CNであり、R1は−CH=CH2である。
特定の実施形態においては、本発明に従う化合物は、化学式Iで表され、ここで、Rは−(C(R3)2)nCOR5である。
特定の実施形態においては、本発明に従う化合物は、化学式Iで表され、ここで、Rは−CH2C(O)R5であり、R5はアルキルである。
特定の実施形態においては、本発明に従う化合物は、化学式Iで表され、ここで、Rは−CH2C(O)C(CH3)3であり、R1は−CH=CH2である。
特定の実施形態においては、前記化合物は、QD-IP、QD-PC、QD-AD、QD-(-)-MN、QD-(+)-MN、QD-AC、QD-Piv、QD-PH、QD-AN、QD-NT、QD-CN、QD-CH、QD-IB、QD-EF、QD-AA、QD-MPまたはQD-IPCである。
特定の実施形態においては、前記化合物はQD-IP、QD-(-)-MNまたはQD-ADである。
本発明の別の態様は、化学式IIで表される化合物に関する:
Figure 2007531704
ここで、Rは、−C(O)R2、−(C(R3)2)nCO2R4、−(C(R3)2)nC(O)N(R5)2、−(C(R3)2)nCN、−(C(R3)2)nC(O)R5、−C(C(R3)2)nC≡CR6、−(C(R3)2)nOPO(OR5)2、−(C(R3)2)nOR5、−(C(R3)2)nN(R5)2、−(C(R3)2)nSR5または−(C(R3)2)nNO2を表し;
R1は、アルキルまたはアルケニルを表し;
R2は、アルキル、シクロアルキル、またはアルケニルを表し;
R3は、それぞれ別異に、H、アルキル、アルケニル、アリール、シクロアルキル、アラルキル、ヘテロアルキル、ハロゲン、シアノ、アミノ、アシル、アルコキシル、シリルオキシ、ニトロ、チオール、アミン、イミン、アミド、ホスホネート、ホスフィン、カルボニル、カルボキシル、シリル、エーテル、チオエーテル、スルホニル、セレノエーテル、ケトン、アルデヒドまたはエステルを表し;
R4は、シクロアルキル、−CH(R3)2、アルケニル、アルキニル、アリールまたはアラルキルを表し;
R5は、それぞれ別異に、H、アルキル、アルケニル、アリール、シクロアルキル、アラルキルを表し;
R6は、必要に応じて置換されたアルキル、アルケニル、アリールまたはアラルキルであり;さらに、
nは1〜10である。
特定の実施形態においては、前記化合物は、Q-IP、Q-PC、Q-AD、Q-(-)-MN、Q-(+)-MN、Q-AC、Q-Piv、Q-PH、Q-AN、Q-NT、Q-CN、Q-CH、Q-IB、Q-EF、Q-AA、Q-MPまたはQ-IPCである。
本発明に従う方法−不斉三級アミンを含む触媒の調製
本発明の特定の態様は、三級アミン類を調製する方法に関し、該三級アミン類は、本発明に従う脱対称化法に有用である。特定の実施形態においては、三級アミン類は一般的な方法に従って合成され、このとき、ジアミンは、2当量のキラル非ラセミグリシジルスルホネートまたはハロゲン化物と反応する。例えば、以下のスキームは、これらの方法の例を図示したものであり、このとき、エチレンジアミンと2当量のキラル非ラセミグリシジルノシラートが反応して、キラル非ラセミビス三級アミンが得られる。実施例2を参照のこと。
Figure 2007531704
本発明の1つの態様は、スキーム1であらわされるようなシンコナアルカロイド誘導体触媒の調製法に関する:
Figure 2007531704
ここで、Xは、Cl、Br、I、OSO2CH3またはOSO2CF3を表し;
Rは、−C(O)R2、−(C(R3)2)nCO2R4、−(C(R3)2)nC(O)N(R5)2、−(C(R3)2)nCN、−(C(R3)2)nC(O)R5、−C(C(R3)2)nC≡CR6、−(C(R3)2)nOPO(OR5)2、−(C(R3)2)nOR5、−(C(R3)2)nN(R5)2、−(C(R3)2)nSR5または−(C(R3)2)nNO2を表し;
R1は、アルキルまたはアルケニルを表し;
R2は、アルキル、シクロアルキル、またはアルケニルを表し;
R3は、それぞれ別異に、H、アルキル、アルケニル、アリール、シクロアルキル、アラルキル、ヘテロアルキル、ハロゲン、シアノ、アミノ、アシル、アルコキシル、シリルオキシ、ニトロ、チオール、アミン、イミン、アミド、ホスホネート、ホスフィン、カルボニル、カルボキシル、シリル、エーテル、チオエーテル、スルホニル、セレノエーテル、ケトン、アルデヒドまたはエステルを表し;
R4は、シクロアルキル、−CH(R3)2、アルケニル、アルキニル、アリールまたはアラルキルを表し;
R5は、それぞれ別異に、H、アルキル、アルケニル、アリール、シクロアルキル、アラルキルを表し;
R6は、必要に応じて置換されたアルキル、アルケニル、アリールまたはアラルキルであり
nは1〜10であり;さらに、
塩基はブレンステッド塩基である。
特定の実施形態においては、本発明は、上述の方法に関し、ここで、Xは、Clまたは、Brである。
特定の実施形態においては、本発明は、上述の方法に関し、ここで、該塩基は、金属ヒドリド、アルコキシドもしくはアミド、またはカーバニオンである。
特定の実施形態においては、本発明は、上述の方法に関し、ここで、該塩基は、NaH、CaH2、KHまたはNaである。
特定の実施形態においては、本発明は、上述の方法に関し、ここで、Rは、−C(O)R2、−(C(R3)2)nCO2R4、−(C(R3)2)nC(O)N(R5)2、−(C(R3)2)nCN、−(C(R3)2)nC(O)R5、−C(C(R3)2)nC≡CR6である。
特定の実施形態においては、本発明は、上述の方法に関し、ここで、R1はエチルである。
特定の実施形態においては、本発明は、上述の方法に関し、ここで、R1は−CH=CH2である。
特定の実施形態においては、本発明は、上述の方法に関し、ここで、Rは−C(O)R2である。
特定の実施形態においては、本発明は、上述の方法に関し、ここで、Rは−C(O)R2であり、R2はアルキルである。
特定の実施形態においては、本発明は、上述の方法に関し、ここで、Rは−C(O)C(CH3)3であり、R1は−CH=CH2である。
特定の実施形態においては、本発明は、上述の方法に関し、ここで、Rは−(C(R3)2)nCO2R4である。
特定の実施形態においては、本発明は、上述の方法に関し、ここで、Rは−(C(R3)2)nCO2R4であり、R4は−CH(R3)2 である。
特定の実施形態においては、本発明は、上述の方法に関し、ここで、Rは−(C(R3)2)nCO2R4であり、R4は−CH(R3)2 であり、nは1である。
特定の実施形態においては、本発明は、上述の方法に関し、ここで、Rは−CH2CO2CH(CH3)2であり、R1は−CH=CH2である。
特定の実施形態においては、本発明は、上述の方法に関し、ここで、Rは−CH2CO2CH2CH(CH3)2であり、R1は−CH=CH2である。
特定の実施形態においては、本発明は、上述の方法に関し、ここで、Rは−(C(R3)2)nCO2R4であり、R4はシクロアルキルである。
特定の実施形態においては、本発明は、上述の方法に関し、ここで、Rは−CH2CO2R4であり、R4はシクロアルキルである。
特定の実施形態においては、本発明は、上述の方法に関し、ここで、Rは−CH2CO2R4であり、R4はシクロヘキシルであり、R1は−CH=CH2である。
特定の実施形態においては、本発明は、上述の方法に関し、ここで、Rは−CH2CO2R4であり、R4は、(−)−メンチル、1−アダマンチル、イソボルニル、(−)−イソピノカンフィルまたは(+)−フェンチルであり、R1は−CH=CH2である。
特定の実施形態においては、本発明は、上述の方法に関し、ここで、Rは−CH2CO2R4であり、R4は、(−)−メンチルまたは1−アダマンチルであり、R1は−CH=CH2である。
特定の実施形態においては、本発明は、上述の方法に関し、ここでRは、−(C(R3)2)nC(O)N(R5)2である。
特定の実施形態においては、本発明は、上述の方法に関し、ここでRは、−CH2C(O)N(R5)2であり、R1は−CH=CH2である。
特定の実施形態においては、本発明は、上述の方法に関し、ここでRは、−CH2C(O)NH−1−アダマンチルであり、R1は−CH=CH2である。
特定の実施形態においては、本発明は、上述の方法に関し、ここでRは、−(C(R3)2)nCNである。
特定の実施形態においては、本発明は、上述の方法に関し、ここでRは、−CH2CNであり、R1は−CH=CH2である。
特定の実施形態においては、本発明は、上述の方法に関し、ここでRは、−(C(R3)2)nC(O)C(O)R5である。
特定の実施形態においては、本発明は、上述の方法に関し、ここでRは、−CH2C(O)R5であり、R5はアルキルである。
特定の実施形態においては、本発明は、上述の方法に関し、ここでRは、−CH2C(O)C(CH3)3であり、R1は−CH=CH2である。
特定の実施形態においては、本発明は、上述の方法に関し、ここで、該触媒は、QD-IP、QD-PC、QD-AD、QD-(-)-MN、QD-(+)-MN、QD-AC、QD-Piv、QD-PH、QD-AN、QD-NT、QD-CN、QD-CH、QD-IB、QD-EF、QD-AA、QQD-MPまたはQD-IPCである。
特定の実施形態においては、本発明は上述の方法に関し、ここで、該触媒はQD-IP、QD-(-)-MNまたはQD-ADである。
本発明の別の態様は、スキーム2で表されるシンコナアルカロイド誘導体触媒の調製法に関する:
Figure 2007531704
ここで、Xは、Cl、Br、I、OSO2CH3またはOSO2CF3を表し;
Rは、−C(O)R2、−(C(R3)2)nCO2R4、−(C(R3)2)nC(O)N(R5)2、−(C(R3)2)nCN、−(C(R3)2)nC(O)R5、−C(C(R3)2)nC≡CR6、−(C(R3)2)nOPO(OR5)2、−(C(R3)2)nOR5、−(C(R3)2)nN(R5)2、−(C(R3)2)nSR5または−(C(R3)2)nNO2を表し;
R1は、アルキルまたはアルケニルを表し;
R2は、アルキル、シクロアルキル、またはアルケニルを表し;
R3は、それぞれ別異に、H、アルキル、アルケニル、アリール、シクロアルキル、アラルキル、ヘテロアルキル、ハロゲン、シアノ、アミノ、アシル、アルコキシル、シリルオキシ、ニトロ、チオール、アミン、イミン、アミド、ホスホネート、ホスフィン、カルボニル、カルボキシル、シリル、エーテル、チオエーテル、スルホニル、セレノエーテル、ケトン、アルデヒドまたはエステルを表し;
R4は、シクロアルキル、−CH(R3)2、アルケニル、アルキニル、アリールまたはアラルキルを表し;
R5は、それぞれ別異に、H、アルキル、アルケニル、アリール、シクロアルキル、アラルキルを表し;
R6は、必要に応じて置換されたアルキル、アルケニル、アリールまたはアラルキルであり;
nは1〜10であり;さらに、
塩基はブレンステッド塩基である。
特定の実施形態においては、本発明は上述の方法に関し、ここで該触媒は、Q-IP、Q-PC、Q-AD、Q-(-)-MN、Q-(+)-MN、Q-AC、Q-Piv、Q-PH、Q-AN、Q-NT、Q-CN、Q-CH、Q-IB、Q-EF、Q-AA、Q-MPまたはQ-IPCである。
本発明に従う方法−触媒反応
1つの側面から見ると、プロキラルまたはメソ出発材料から、少なくとも1個のステレオジェン中心を有する化合物を立体選択的に生成する方法を提供する。本発明の長所は、プロキラルまたはラセミ反応物から鏡像異性体に富んだ生成物が合成できることである。もう1つの長所は、所望しない鏡像異性体を生成することによる収率の低下を実質的に抑制できる、または排除できることである。
一般的には、本発明の特徴は、求核性反応物、プロキラルもしくはキラル環状基質、および、特徴的な特性(上述)を有する非ラセミキラル触媒を触媒量以上使用することによる、立体選択的開環過程である。この反応における環状基質は、求核剤の攻撃を受けやすい親電子原子を有する炭素環または複素環を含む。上記の組み合わせは、求核反応物との反応により、親電子原子の位置において環状基質が立体選択的に開環する反応をキラル触媒が触媒するのに適した条件下において維持される。この反応は、鏡像異性体選択的過程およびジアステレオ選択的過程に応用することができる。この反応は、位置選択的反応にも適用することができる。本発明に従って触媒される鏡像異性体選択的反応、動力学的分割、位置選択的反応の例は以下に示す。
本発明の別の態様においては、鏡像異性体の動力学的分割は、キラル触媒を用い、ラセミ基質の転換を触媒することによって行う。本発明に従うラセミ基質の動力学的分割過程においては、一方の鏡像異性体は未反応基質として回収され、他方は所望する生成物に変換される。勿論、求核剤を用いて反応させることによって所望しない鏡像異性体を除去し、反応混合物から、所望する鏡像異性体を未変化体として回収することによって動力学的分割を行うことも可能である。本方法の顕著な利点は、鏡像異性体として純粋な高価な出発材料ではなく、安価なラセミ出発物質を使用できることである。特定の実施形態においては、本発明に従う触媒は、ラセミ環状基質の動力学的分割に使用することができ、このとき、求核剤は共溶媒である。このような系の適切な求核剤としては、水、アルコール類およびチオール類などが挙げられる。
本発明に従う方法により、非常に高い立体選択性(例えば、鏡像異性体選択性またはジアステレオ選択性など)または位置選択性を有する光学活性生成物を提供することができる。本発明に従う脱対称反応の好ましい実施形態においては、生成物のエナンチオマー過乗率は約50%以上、約70%以上、約90%以上であり、最も好ましくは、約95%以上である。本発明に従う方法は、商業ベースでの使用に適した反応条件下で実施することができ、一般的には、大規模操作に適した反応速度で進行させることができる。
特定の実施形態においては、キラル非ラセミ三級アミン触媒の量は、プロキラル出発材料の量に対して約30モル%以下である。特定の実施形態においては、キラル非ラセミ三級アミン触媒の量は、プロキラル出発材料の量に対して約20モル%以下である。特定の実施形態においては、キラル非ラセミ三級アミン触媒の量は、プロキラル出発材料の量に対して約10モル%以下である。特定の実施形態においては、キラル非ラセミ三級アミン触媒の量は、プロキラル出発材料の量に対して約5モル%以下である。
上述の論考から明らかなように、本発明に従う不斉合成法によって生成されたキラル生成物をさらに反応にかけることにより、所望するそれらの誘導体を得ることができる。そのような誘導体化反応は、当該分野において既知の従来から行われている方法に従って行うことができる。例えば、可能な誘導体化反応としては、エステル化、アミド類のN−アルキル化などが挙げられる。本発明は、特に、心血管薬、非ステロイド性抗炎症薬、中枢神経系作用薬および抗ヒスタミン剤の調製もしくは開発、またはこれら両者に有用な最終生成物ならびに合成中間体の調製を企図している。
本発明の1つの態様は、プロキラル環状無水物またはメソ環状無水物からキラル非ラセミ化合物を調製する方法に関するものであり、該方法は、触媒の存在下、プロキラル環状無水物またはメソ環状無水物を求核剤と反応させる工程を含み、このとき、該プロキラル環状無水物または該メソ環状無水物は、内部対称面もしくは対称点のいずれか、または両方を有しており;それによってキラル非ラセミ化合物が生成され;このとき、該触媒は化学式Iで表され;
Figure 2007531704
ここで、Rは、−C(O)R2、−(C(R3)2)nCO2R4、−(C(R3)2)nC(O)N(R5)2、−(C(R3)2)nCN、−(C(R3)2)nC(O)R5、−C(C(R3)2)nC≡CR6、−(C(R3)2)nOPO(OR5)2、−(C(R3)2)nOR5、−(C(R3)2)nN(R5)2、−(C(R3)2)nSR5または−(C(R3)2)nNO2を表し;
R1は、アルキルまたはアルケニルを表し;
R2は、アルキル、シクロアルキル、またはアルケニルを表し;
R3は、それぞれ別異に、H、アルキル、アルケニル、アリール、シクロアルキル、アラルキル、ヘテロアルキル、ハロゲン、シアノ、アミノ、アシル、アルコキシル、シリルオキシ、ニトロ、チオール、アミン、イミン、アミド、ホスホネート、ホスフィン、カルボニル、カルボキシル、シリル、エーテル、チオエーテル、スルホニル、セレノエーテル、ケトン、アルデヒドまたはエステルを表し;
R4は、シクロアルキル、−CH(R3)2、アルケニル、アルキニル、アリールまたはアラルキルを表し;
R5は、それぞれ別異に、H、アルキル、アルケニル、アリール、シクロアルキル、アラルキルを表し;
R6は、必要に応じて置換されたアルキル、アルケニル、アリールまたはアラルキルであり;さらに
nは1〜10である。
特定の実施形態においては、本発明は、上述の方法に関し、ここで、Rは、−C(O)R2、−(C(R3)2)nCO2R4、−(C(R3)2)nC(O)N(R5)2、−(C(R3)2)nCN、−(C(R3)2)nC(O)R5、−C(C(R3)2)nC≡CR6である。
特定の実施形態においては、本発明は、上述の方法に関し、ここで、R1はエチルである。
特定の実施形態においては、本発明は、上述の方法に関し、ここで、R1は−CH=CH2である。
特定の実施形態においては、本発明は、上述の方法に関し、ここで、Rは−C(O)R2である。
特定の実施形態においては、本発明は、上述の方法に関し、ここで、Rは−C(O)R2であり、R2はアルキルである。
特定の実施形態においては、本発明は、上述の方法に関し、ここで、Rは−(C(R3)2)nCO2R4である。
特定の実施形態においては、本発明は、上述の方法に関し、ここで、Rは−(C(R3)2)nCO2R4であり、R4は−CH(R3)2 である。
特定の実施形態においては、本発明は、上述の方法に関し、ここで、Rは−(C(R3)2)nCO2R4であり、R4は−CH(R3)2 であり、nは1である。
特定の実施形態においては、本発明は、上述の方法に関し、ここで、Rは−(C(R3)2)nCO2R4であり、R4はシクロアルキルである。
特定の実施形態においては、本発明は、上述の方法に関し、ここで、Rは−CH2CO2R4であり、R4はシクロアルキルである。
特定の実施形態においては、本発明は、上述の方法に関し、ここで、Rは−CH2CO2R4であり、R4はシクロヘキシルであり、R1は−CH=CH2である。
特定の実施形態においては、本発明は、上述の方法に関し、ここで、Rは−CH2CO2R4であり、R4は、(−)−メンチル、1−アダマンチル、イソボルニル、(−)−イソピノカンフィルまたは(+)−フェンチルであり、R1は−CH=CH2である。
特定の実施形態においては、本発明は、上述の方法に関し、ここでRは、−(C(R3)2)nC(O)N(R5)2である。
特定の実施形態においては、本発明は、上述の方法に関し、ここでRは、−(C(R3)2)nC(O)N(R5)2であり、R1は−CH=CH2である。
特定の実施形態においては、本発明は、上述の方法に関し、ここでRは、−CH2C(O)NH−1−アダマンチルであり、R1は−CH=CH2である。
特定の実施形態においては、本発明は、上述の方法に関し、ここでRは、−(C(R3)2)nCNである。
特定の実施形態においては、本発明は、上述の方法に関し、ここでRは、−CH2CNであり、R1は−CH=CH2である。
特定の実施形態においては、本発明は、上述の方法に関し、ここでRは、−(C(R3)2)nC(O)C(O)R5である。
特定の実施形態においては、本発明は、上述の方法に関し、ここでRは、−CH2C(O)R5であり、R5はアルキルである。
特定の実施形態においては、本発明は、上述の方法に関し、ここでRは、−CH2C(O)C(CH3)3であり、R1は−CH=CH2である。
特定の実施形態においては、本発明は、上述の方法に関し、ここで、該触媒は、QD-IP、QD-PC、QD-AD、QD-(-)-MN、QD-(+)-MN、QD-AC、QD-Piv、QD-PH、QD-AN、QD-NT、QD-CN、QD-CH、QD-IB、QD-EF、QD-AA、QD-MPまたはQD-IPCである。
特定の実施形態においては、本発明は上述の方法に関し、ここで、該触媒はQD-IP、QD-(-)-MNまたはQD-ADである。
特定の実施形態においては、本発明は上述の方法に関し、ここで、該求核剤はアルコールである。
特定の実施形態においては、本発明は上述の方法に関し、ここで、該求核剤は一級アルコールである。
特定の実施形態においては、本発明は上述の方法に関し、ここで、該求核剤はメタノールまたはCF3CH2OHである。
特定の実施形態においては、本発明は上述の方法に関し、ここで、該プロキラル環状無水物またはメソ環状無水物は、置換コハク酸無水物または置換グルタル酸無水物である。
特定の実施形態においては、本発明は上述の方法に関し、ここで、該触媒の量は、プロキラル環状無水物またはメソ環状無水物の量に対して約70モル%以下である。
特定の実施形態においては、本発明は上述の方法に関し、ここで、該触媒の量は、プロキラル環状無水物またはメソ環状無水物の量に対して約40モル%以下である。
特定の実施形態においては、本発明は上述の方法に関し、ここで、該触媒の量は、プロキラル環状無水物またはメソ環状無水物の量に対して約10モル%以下である。
特定の実施形態においては、本発明は上述の方法に関し、該キラル非ラセミ化合物はエナンチオマー過乗率が50%以上である。
特定の実施形態においては、本発明は上述の方法に関し、該キラル非ラセミ化合物はエナンチオマー過乗率が70%以上である。
特定の実施形態においては、本発明は上述の方法に関し、該キラル非ラセミ化合物はエナンチオマー過乗率が90%以上である。
特定の実施形態においては、本発明は上述の方法に関し、該キラル非ラセミ化合物はエナンチオマー過乗率が95%以上である。
特定の実施形態においては、本発明は上述の方法に関し、このとき、Rは−CH2CO2R4であり、R4は、(−)−メンチル、1−アダマンチル、イソボルニル、(−)−イソピノカンフィルまたは(+)−フェンチルであり、R1は−CH=CH2であり、さらに、該求核剤はアルコールである。
特定の実施形態においては、本発明は上述の方法に関し、Rは−CH2CO2R4であり、R4は、(−)−メンチルまたは1−アダマンチルであり、R1は−CH=CH2であり、さらに、該求核剤はアルコールである。
特定の実施形態においては、本発明は上述の方法に関し、Rは−CH2CO2R4であり、R4は、(−)−メンチルまたは1−アダマンチルであり、R1は−CH=CH2であり、さらに、該求核剤はメタノールまたはCF3CH2OHである。
本発明の別の態様は、プロキラル環状無水物またはメソ環状無水物からキラル非ラセミ化合物を調製する方法に関するものであり、該方法は、触媒の存在下、プロキラル環状無水物またはメソ環状無水物を求核剤と反応させる工程を含み、このとき、該プロキラル環状無水物またはメソ環状無水物は、内部対称面もしくは対称点のいずれか、または両方を有しており;それによってキラル非ラセミ化合物が生成され;このとき、該触媒は化学式IIによって表され:
Figure 2007531704
ここで、Rは、−C(O)R2、−(C(R3)2)nCO2R4、−(C(R3)2)nC(O)N(R5)2、−(C(R3)2)nCN、−(C(R3)2)nC(O)R5、−C(C(R3)2)nC≡CR6、−(C(R3)2)nOPO(OR5)2−(C(R3)2)nOR5、−(C(R3)2)nN(R5)2、−(C(R3)2)nSR5または−(C(R3)2)nNO2を表し;
R1は、アルキルまたはアルケニルを表し;
R2は、アルキル、シクロアルキル、またはアルケニルを表し;
R3は、それぞれ別異に、H、アルキル、アルケニル、アリール、シクロアルキル、アラルキル、ヘテロアルキル、ハロゲン、シアノ、アミノ、アシル、アルコキシル、シリルオキシ、ニトロ、チオール、アミン、イミン、アミド、ホスホネート、ホスフィン、カルボニル、カルボキシル、シリル、エーテル、チオエーテル、スルホニル、セレノエーテル、ケトン、アルデヒドまたはエステルを表し;
R4は、シクロアルキル、−CH(R3)2、アルケニル、アルキニル、アリールまたはアラルキルを表し;
R5は、それぞれ別異に、H、アルキル、アルケニル、アリール、シクロアルキルまたはアラルキルを表し;
R6は、必要に応じて置換されたアルキル、アルケニル、アリールまたはアラルキルであり;さらに
nは1〜10である。
特定の実施形態においては、前記化合物は、Q-IP、Q-PC、Q-AD、Q-(-)-MN、Q-(+)-MN、Q-AC、Q-Piv、Q-PH、Q-AN、Q-NT、Q-CN、Q-CH、Q-IB、Q-EF、Q-AA、Q-MPまたはQ-IPCである。
特定の実施形態においては、本発明は上述の方法に関し、ここで、該求核剤はアルコールである。
特定の実施形態においては、本発明は上述の方法に関し、ここで、該求核剤は一級アルコールである。
特定の実施形態においては、本発明は上述の方法に関し、ここで、該求核剤はメタノールまたはCF3CH2OHである。
特定の実施形態においては、本発明は上述の方法に関し、ここで、該プロキラル環状無水物またはメソ環状無水物は、置換コハク酸無水物または置換グルタル酸無水物である。
特定の実施形態においては、本発明は上述の方法に関し、ここで、該触媒の量は、プロキラル環状無水物またはメソ環状無水物の量に対して約70モル%以下である。
特定の実施形態においては、本発明は上述の方法に関し、ここで、該触媒の量は、プロキラル環状無水物またはメソ環状無水物の量に対して約40モル%以下である。
特定の実施形態においては、本発明は上述の方法に関し、ここで、該触媒の量は、プロキラル環状無水物またはメソ環状無水物の量に対して約10モル%以下である。
特定の実施形態においては、本発明は上述の方法に関し、該キラル非ラセミ化合物はエナンチオマー過乗率が50%以上である。
特定の実施形態においては、本発明は上述の方法に関し、該キラル非ラセミ化合物はエナンチオマー過乗率が70%以上である。
特定の実施形態においては、本発明は上述の方法に関し、該キラル非ラセミ化合物はエナンチオマー過乗率が90%以上である。
特定の実施形態においては、本発明は上述の方法に関し、該キラル非ラセミ化合物はエナンチオマー過乗率が95%以上である。
特定の実施形態においては、本発明は上述の方法に関し、このとき、Rは−CH2CO2R4であり、R4は、(−)−メンチル、1−アダマンチル、イソボルニル、(−)−イソピノカンフィルまたは(+)−フェンチルであり、R1は−CH=CH2であり、さらに、該求核剤はアルコールである。
特定の実施形態においては、本発明は上述の方法に関し、Rは−CH2CO2R4であり、R4は、(−)−メンチルまたは1−アダマンチルであり、R1は−CH=CH2であり、さらに、該求核剤はアルコールである。
特定の実施形態においては、本発明は上述の方法に関し、Rは−CH2CO2R4であり、R4は、(−)−メンチルまたは1−アダマンチルであり、R1は−CH=CH2であり、さらに、該求核剤はメタノールまたはCF3CH2OHである。
本発明に従う方法−動力学的分割
本発明の別の態様においては、鏡像異性体の動力学的分割は、キラル触媒を用い、ラセミ基質の転換を触媒することによって行う。本発明に従うラセミ基質の動力学的分割過程においては、一方の鏡像異性体は未反応基質として回収され、他方は所望する生成物に変換される。勿論、求核剤を用いて反応させることによって所望しない鏡像異性体を除去し、反応混合物から、所望する鏡像異性体を未変化体として回収することによって動力学的分割を行うことも可能である。本方法の顕著な利点は、鏡像異性体として純粋な高価な出発材料ではなく、安価なラセミ出発物質を使用できることである。特定の実施形態においては、本発明に従う触媒は、ラセミ環状基質の動力学的分割に使用することができ、このとき、求核剤は共溶媒である。このような系の適切な求核剤としては、水、アルコール類およびチオール類などが挙げられる。
本発明の1つの態様は、動力学的分割に関するものであり、下記の化学式Iで表される触媒の存在下、アルコールとラセミ環状無水物を反応させる工程を含み:
Figure 2007531704
ここで、Rは、−C(O)R2、−(C(R3)2)nCO2R4、−(C(R3)2)nC(O)N(R5)2、−(C(R3)2)nCN、−(C(R3)2)nC(O)R5、−C(C(R3)2)nC≡CR6、−(C(R3)2)nOPO(OR5)2、−(C(R3)2)nOR5、−(C(R3)2)nN(R5)2、−(C(R3)2)nSR5または−(C(R3)2)nNO2を表し;
R1は、アルキルまたはアルケニルを表し;
R2は、アルキル、シクロアルキル、またはアルケニルを表し;
R3は、それぞれ別異に、H、アルキル、アルケニル、アリール、シクロアルキル、アラルキル、ヘテロアルキル、ハロゲン、シアノ、アミノ、アシル、アルコキシル、シリルオキシ、ニトロ、チオール、アミン、イミン、アミド、ホスホネート、ホスフィン、カルボニル、カルボキシル、シリル、エーテル、チオエーテル、スルホニル、セレノエーテル、ケトン、アルデヒドまたはエステルを表し;
R4は、シクロアルキル、−CH(R3)2、アルケニル、アルキニル、アリールまたはアラルキルを表し;
R5は、それぞれ別異に、H、アルキル、アルケニル、アリール、シクロアルキル、アラルキルを表し;
R6は、必要に応じて置換されたアルキル、アルケニル、アリールまたはアラルキルであり;
nは1〜10であり;さらに、
該動力学的分割反応が完結または中断したときに、任意の未反応環状無水物のエナンチオマー過乗率がゼロ以上であり、かつ、生成物のエナンチオマー過乗率がゼロ以上である。
特定の実施形態においては、本発明は、上述の方法に関し、ここで、Rは、−C(O)R2、−(C(R3)2)nCO2R4、−(C(R3)2)nC(O)N(R5)2、−(C(R3)2)nCN、−(C(R3)2)nC(O)R5、−C(C(R3)2)nC≡CR6である。
特定の実施形態においては、本発明は、上述の方法に関し、ここで、R1はエチルである。
特定の実施形態においては、本発明は、上述の方法に関し、ここで、R1は−CH=CH2である。
特定の実施形態においては、本発明は、上述の方法に関し、ここで、Rは−C(O)R2である。
特定の実施形態においては、本発明は、上述の方法に関し、ここで、Rは−C(O)R2であり、R2はアルキルである。
特定の実施形態においては、本発明は、上述の方法に関し、ここで、Rは−(C(R3)2)nCO2R4である。
特定の実施形態においては、本発明は、上述の方法に関し、ここで、Rは−(C(R3)2)nCO2R4であり、R4は−CH(R3)2 である。
特定の実施形態においては、本発明は、上述の方法に関し、ここで、Rは−(C(R3)2)nCO2R4であり、R4は−CH(R3)2 であり、nは1である。
特定の実施形態においては、本発明は、上述の方法に関し、ここで、Rは−(C(R3)2)nCO2R4であり、R4はシクロアルキルである。
特定の実施形態においては、本発明は、上述の方法に関し、ここで、Rは−CH2CO2R4であり、R4はシクロアルキルである。
特定の実施形態においては、本発明は、上述の方法に関し、ここで、Rは−CH2CO2R4であり、R4はシクロヘキシルであり、R1は−CH=CH2である。
特定の実施形態においては、本発明は、上述の方法に関し、ここで、Rは−CH2CO2R4であり、R4は、(−)−メンチル、1−アダマンチル、イソボルニル、(−)−イソピノカンフィルまたは(+)−フェンチルであり、R1は−CH=CH2である。
特定の実施形態においては、本発明は、上述の方法に関し、ここでRは、−(C(R3)2)nC(O)N(R5)2である。
特定の実施形態においては、本発明は、上述の方法に関し、ここでRは、−CH2C(O)N(R5)2であり、R1は−CH=CH2である。
特定の実施形態においては、本発明は、上述の方法に関し、ここでRは、−CH2C(O)NH−1−アダマンチルであり、R1は−CH=CH2である。
特定の実施形態においては、本発明は、上述の方法に関し、ここでRは、−(C(R3)2)nCNである。
特定の実施形態においては、本発明は、上述の方法に関し、ここでRは、−CH2CNであり、R1は−CH=CH2である。
特定の実施形態においては、本発明は、上述の方法に関し、ここでRは、−(C(R3)2)nCOR5である。
特定の実施形態においては、本発明は、上述の方法に関し、ここでRは、−CH2C(O)R5であり、R5はアルキルである。
特定の実施形態においては、本発明は、上述の方法に関し、ここでRは、−CH2C(O)C(CH3)3であり、R1は−CH=CH2である。
特定の実施形態においては、本発明は、上述の方法に関し、ここで、該触媒は、QD-IP、QD-PC、QD-AD、QD-(-)-MN、QD-(+)-MN、QD-AC、QD-Piv、QD-PH、QD-AN、QD-NT、QD-CN、QD-CH、QD-IB、QD-EF、QD-AA、QD-MPまたはQD-IPCである。
特定の実施形態においては、本発明は上述の方法に関し、ここで、該触媒はQD-IP、QD-(-)-MNまたはQD-ADである。
特定の実施形態においては、本発明は上述の方法に関し、ここで、該求核剤は一級アルコールである。
特定の実施形態においては、本発明は上述の方法に関し、ここで、該求核剤はメタノールまたはCF3CH2OHである。
本発明の1つの態様は、動力学的分割に関するものであり、下記の化学式IIで表される触媒の存在下、アルコールとラセミ環状無水物を反応させる工程を含み:
Figure 2007531704
ここで、Rは、−C(O)R2、−(C(R3)2)nCO2R4、−(C(R3)2)nC(O)N(R5)2、−(C(R3)2)nCN、−(C(R3)2)nC(O)R5、−C(C(R3)2)nC≡CR6、−(C(R3)2)nOPO(OR5)2、−(C(R3)2)nOR5、−(C(R3)2)nN(R5)2、−(C(R3)2)nSR5または−(C(R3)2)nNO2を表し;
R1は、アルキルまたはアルケニルを表し;
R2は、アルキル、シクロアルキル、またはアルケニルを表し;
R3は、それぞれ別異に、H、アルキル、アルケニル、アリール、シクロアルキル、アラルキル、ヘテロアルキル、ハロゲン、シアノ、アミノ、アシル、アルコキシル、シリルオキシ、ニトロ、チオール、アミン、イミン、アミド、ホスホネート、ホスフィン、カルボニル、カルボキシル、シリル、エーテル、チオエーテル、スルホニル、セレノエーテル、ケトン、アルデヒドまたはエステルを表し;
R4は、シクロアルキル、−CH(R3)2、アルケニル、アルキニル、アリールまたはアラルキルを表し;
R5は、それぞれ別異に、H、アルキル、アルケニル、アリール、シクロアルキル、アラルキルを表し;
R6は、必要に応じて置換されたアルキル、アルケニル、アリールまたはアラルキルであり;
nは1〜10であり;さらに、
該動力学的分割反応が完結または中断したときに、任意の未反応環状無水物のエナンチオマー過乗率がゼロ以上であり、かつ、生成物のエナンチオマー過乗率がゼロ以上である。
特定の実施形態においては、前記化合物は、Q-IP、Q-PC、Q-AD、Q-(-)-MN、Q-(+)-MN、Q-AC、Q-Piv、Q-PH、Q-AN、Q-NT、Q-CN、Q-CH、Q-IB、Q-EF、Q-AA、Q-MPまたはQ-IPCである。
特定の実施形態においては、本発明は上述の方法に関し、ここで、該求核剤は一級アルコールである。
特定の実施形態においては、本発明は上述の方法に関し、ここで、該求核剤はメタノールまたはCF3CH2OHである。
求核剤
本発明において有用な求核剤は、いくつかの基準に従い、当業者によって決定することができる。一般的には、適切な求核剤は、次の特性のうちの1つまたはそれ以上を有する:1)所望する親電子部位において基質と反応することができる;2)基質との反応によって有用生成物が得られる;3)所望する親電子部位以外の官能基においては基質と反応しない;4)少なくとも部分的には、キラル触媒による触媒機構を通して基質と反応する;5)所望する方向性において基質との反応が終了した後は、所望しない反応は実質的に進行しない;さらに、6)実質的に、触媒とは反応せず、または、触媒を分解しない。所望しない副反応(触媒の分解など)が生じるかもしれないが、そのような反応の反応速度は、反応物および条件を選択することにより、所望する反応の反応速度より遅くすることができる。
上記の基準を満たす触媒は、各基質に対して選択することができ、基質の構造および所望する生成物に応じて異なる。通常の実験を行うことにより、与えられた変換に対する好ましい求核剤を判断することができるであろう。例えば、含窒素求核剤が所望される場合には、アンモニア、フタルイミド、ヒドラジン、アミンなどから選択することができる。同様に、水、水酸基、アルコール類、アルコキシド類、シロキサン類、カルボキシレート類またはパーオキシド類などのような含酸素求核剤を用いて酸素を導入することができ;メルカプタン類、チオラート類、ビスルファイト、チオシアナートなどを用いて含硫黄部位を導入することができる。さらなる求核剤についても、有機化学についての通常の知識を有する当業者には自明である。
陰イオンとして存在する求核剤に対しては、対イオンは、アルカリおよびアルカリ土類陽イオン類ならびにアンモニウム陽イオン類を含む多様な従来型陽イオンを用いることができる。
特定の実施形態においては、求核剤は基質の一部であり、その結果分子内反応が生じる。
基質
上述したように、本発明に従う方法においては、多様な基質を用いることができる。基質の選択は、使用する求核剤、所望する生成物などの多数の因子によって決まり、当業者においては、適切な基質は明らかである。好ましい基質は、干渉作用を有する官能基を含まないことは理解できるであろう。一般的には、適切な基質(プロキラル化合物またはメソ化合物など)は、内部対称面または対称点によって関連付けられた反応性の親電子中心または部位を少なくとも1対有しており、触媒の補助の下に、求核剤は該対称平面または対称点を攻撃する。これらの親電子中心のうちの1つに対して、触媒作用下、立体選択的に求核剤が攻撃を行うことにより、キラル非ラセミ生成物が生成する。
本発明に従う方法において使用が考えられる基質の大多数は、3〜7個の原子によって構成される少なくとも1個の環を有する。小さい環は緊張している場合が多く、反応性が高められている。しかしながら、いくつかの実施形態においては、環状基質は緊張しておらず、すなわち、親電子中心を有する大きな環を有する。本発明に従う方法において開環することができる適切な環状基質の例としては、環状無水物、環状イミド類などが挙げられる。
好ましい実施形態においては、環状基質はプロキラル化合物またはメソ化合物である。別の実施形態、例えば、動力学的分割においては、環状基質は、キラル化合物である、特定の実施形態においては、基質はラセミ混合物である。特定の実施形態においては、基質はジアステレオ異性体の混合物である。
好ましい実施形態においては、親電子原子は炭素であり、例えば、無水物またはイミドに含まれるカルボニル部位の炭素などである。しかしながら、特定の実施形態においては、親電子原子はヘテロ原子である。
反応条件
本発明に従う不斉反応は、広範な条件下において実施することができ、本明細書に記載している溶媒および温度範囲は、制限を設定するためのものではなく、本発明に従う方法の好ましい状態を示すのみであることは理解できるはずである。
一般的には、基質、触媒または生成物に悪影響を与えないような緩和な条件を用いて反応を行うことが望ましい。例えば、反応温度は、反応速度のみならず、反応物、生成物および触媒の安定性にも影響を与える。通常、反応は−78℃〜100℃の範囲で行い、より好ましくは、−30℃〜30℃、さらに好ましくは、−30℃〜0℃の範囲で行う。
一般的には、本発明に従う不斉合成反応は、液体反応媒体中で行う。しかしながら、溶媒を添加することなく反応を行うこともできる。別の方法としては、不活性溶媒、好ましくは、触媒を含む反応材料が実質的に可溶な溶媒中で反応を行うことができる。適切な溶媒としては、ジエチルエーテル、1,2−ジメトキシエタン、ジグリム、t−ブチルメチルエーテル、テトラヒドロフランなどのエーテル類;クロロホルム、ジクロロメタン、ジクロロエタン、クロロベンゼンなどのハロゲン化溶媒;ベンゼン、トルエン、ヘキサン、ペンタンなどの脂肪族または芳香族炭化水素溶媒;酢酸エチル、アセトンおよび2−ブタノンなどのエステル類ならびにケトン類;アセトニトリル、ジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミドなどの極性溶媒;または、2種類もしくはそれ以上の溶媒の組み合わせなどが挙げられる。さらに、特定の実施形態においては、使用する反応条件下において基質に対して活性な溶媒を用いることが好都合であり、例えば、所望する求核剤がエタノールである場合に、溶媒としてエタノールを使用することなどが挙げられる。水または水酸基が求核剤として好ましくないような実施形態においては、無水条件下で反応を行うことができる。特定の実施形態においては、エーテレアルまたは芳香族炭化水素溶媒が好ましい。特定の好ましい実施形態においては、溶媒はジエチルエーテルまたはトルエンである。好ましい求核剤が水または水酸基であるような実施形態においては、適量の水および/または水酸基を含む溶媒混合物中で反応を行うことができる。
本発明は、溶媒の二層性混合物中、エマルションもしくはサスペンション中、または、脂質小胞もしくは二重層中での反応も企図している。特定の実施形態においては、固相上で触媒反応を行うことが好ましい。さらに、いくつかの好ましい実施形態においては、反応性気体雰囲気下において反応を行う。例えば、求核剤としてシアニドを用いた脱対称化は、HCN気体雰囲気下で行う。反応性気体の分圧は、0.1〜1000気圧であり、より好ましくは、0.5〜100気圧であり、最も好ましくは、約1〜約10気圧である。一方、特定の実施形態においては、窒素またはアルゴンなどの不活性気体雰囲気下において反応を行うことが好ましい。
本発明に従う不斉合成法は、連続的、半連続的、またはバッチ様式で行うことができ、所望に応じて、液体のリサイクルおよび/または気体のリサイクル操作を行う。しかしながら、本発明に従う方法は、バッチ様式で行うことが好ましい。同様に、反応原料、触媒および溶媒の添加法または添加順序は重要ではなく、従来から行われている任意の様式で行うことができる。
反応は、単一の反応帯内、または、一連の、もしくは平行な複数の反応帯内で行うことができ、あるいは、バッチ方式で、または、長いチューブ状の反応帯もしくは一連のそのような反応帯内で連続的に行うことができる。反応帯の構築に使用する材料は、反応の間、出発材料に対して不活性でなければならず、装置の構成は、反応温度および圧力に絶え得るものでなければならない。反応過程中に、バッチ方式もしくは連続的に反応帯に導入する出発材料または原料の導入法ならびに/または量の調製法は、反応中に適宜利用することにより、出発材料の所望するモル比を特に維持することができる。反応工程は、他の材料に対して出発材料のうちの1つを増加添加することによって影響を受ける。また、反応工程は、出発材料を光学活性金属リガンドコンプレックス触媒と合わせて添加することにより、組み合わせることができる。完全な転換を所望しない場合、または完全な転換が行われなかった場合には、生成物から出発材料を分離し、反応帯に戻すことができる。
本発明に従う方法は、ガラス張りのステンレススチールまたは同様な造りの反応装置内で行うことができる。反応帯は、過度の温度上昇を制御する、または反応温度の「放出」の可能性を阻止することを目的として、1つもしくはそれ以上の内部ならびに/または外部熱交換器に連結する。
さらに、キラル触媒は、ポリマーもしくはその他の不溶性マトリックス内部に固定化するかまたは組み込むことができ、例えば、1個もしくはそれ以上の置換基を介してポリマーまたは固体支持体に共有結合させる。固定化触媒は、例えば、ろ過もしくは遠心分離などの手段により、反応後に容易に回収することができる。またさらに、基質もしくは求核剤は、ポリマーもしくはその他の不溶性マトリックス内部に固定化するかまたは組み込むことができ、例えば、1個もしくはそれ以上の置換基を介してポリマーまたは固体支持体に共有結合させる。そのような方法は、固体支持体に繋がれた化合物のコンビナトリアルライブラリー調製のための基礎である。
鏡像異性体選択的アルコリシス
変形シンコナアルカロイド由来の多様な触媒について、置換コハク酸無水物および置換グルタル酸無水物を用いて実験を行い、その結果を図19〜45にまとめた。シス−1,3−ジベンジル−テトラヒドロ−2H−フロ[3,4−d]イミダゾール−2,4,6−トリオンの脱対称化に対してQD-(-)-MNを触媒として用いた実験も行ったが、これは、ビオチンの合成に重要である。触媒は、抽出法を用いることにより、95%以上を容易に回収できることも示された。
図19および20には、室温、Et2O中、2,3−ジメチルコハク酸無水物の濃度が0.02Mのときのメタノリシスに対する多様な触媒の効率を比較した実験の結果をまとめている。アルキルアセタート側鎖を有する変形シンコナアルカロイドモノマー類、QD-AD、QD-(+)-MN、QD-(-)-MN、QD-IP、QD-TB、QD-IBおよびQD-EFの全体的な効率(活性+選択性)は、(DHQD)2AQNと同等、またはより優れていることが示された。しかしながら、重要な点は、QD-AD、QD-(+)-MN、QD-(-)-MNは、納得のいく収率で調製することができ、かつ、(DHQD)2AQNよりも遥かに安価(アルドリッヒ( Aldrich)社の出発材料に基づいて計算すると、0.5%未満)に調製できることである。さらに、後ほど詳細に記載するが、QD-(-)-MNは、酸に対して非常に安定であることが示されており、単純な抽出法を用いることにより、高収率で回収することができる。一方、初期実験から、QD-TBは酸に対する感受性が強すぎて、同様の抽出法によって回収することはできないことが示唆されている。
トリフルオロエタノリシス反応における多様な変形シンコナアルカロイドモノマー類の効率について実験を行った。図21は、室温、Et2O中、2,3−ジメチルコハク酸無水物の濃度が0.02Mのときのメタノリシスに対する多様な触媒の効率を比較した実験の結果をまとめている。データから、不斉アルコリシスに対してトリフルオロエタノールを使用した場合には、(DHQD)2AQNよりもQD-AD、QD-(+)-MNおよびQD-(-)-MNは効率が高いことが示唆される。興味深いことに、これらの3種類の触媒をトリフルオロエタノールと組み合わせることによって得られた鏡像異性体選択性は、(DHQD)2AQNとメタノールとを組み合わせることによって得られたそれと同等、またはそれ以上であった。
基質の能力を評価することを目的として、3−メチルグルタル酸無水物のアルコリシスに関する実験を行った。3−メチルグルタル酸無水物の濃度が0.02Mおよび0.2Mのときのアルコリシスの結果を図22および23にまとめている。3−置換グルタル酸無水物類は、環状無水物の中で最も反応が起こりやすい。対応する開環生成物である3−置換ヘミエステル類は、有機合成において最も有用なキラル構成要素である。しかしながら、この分類に属する無水物は、活性が低く、触媒に対する生成物阻害が強いことから、アルコリシスに対しては、最も手強い化合物である。(DHQD)2AQNを触媒としてプロキラルグルタル酸無水物のメタノリシスを行うことにより、eeが90%以上のヘミエステルが得られるが、基質を低濃度(0.02M)にして触媒を多量(30モル%)に用いて反応を行わねばならない。さらに、変換反応は完結せず、大量操作に応用することは困難である。故に、QD-ADがグルタル酸無水物の濃度が比較的高い(0.2M)状態でのアルコリシス開環反応を触媒し、eeが高いヘミエステルを生成できることは、非常に有意義である。触媒添加量は100〜110モル%であるが、QD-ADは安価な出発材料から調製でき、効率的に回収できることから、この方法は実用的である。注目すべきことは、3−置換グルタル酸無水物を用いた変換において、非変形キニジンは無効である。
触媒の影響を評価することを目的として、溶媒としてトルエンを用いて実験を行った。図24には、トルエン中、3−メチルグルタル酸無水物の濃度が0.2Mのときに別異の触媒を用いて行ったメタノリシスの結果を示している。これらの条件下で(DHQD)2AQNと比較すると、QD-ADおよびQD-MNは、同等の鏡像異性体選択性を示し、活性はわずかに低かった。一方、QD-PPは、鏡像異性体選択性および活性が著しく低かった。コストおよびこれらの触媒の触媒特性の両方を考慮すると、QD-ADおよびQD-MNは明らかに優れていた。
図25は、トルエン中、3−メチルグルタル酸無水物の濃度が0.2Mのときに多様な触媒を用いて行ったトリフルオロエタノリシスの結果を示す。これらの条件下において(DHQD)2AQNまたはQD-PPと比較すると、QD-ADおよびQD-MNは鏡像異性体選択性および活性が高かった。QD-(-)-MNとトリフルオロエタノールとの組み合わせによって得られた効率は、(DHQD)2AQNとメタノールとの組み合わせによって得られたそれと同等であった。再度、コストおよびこれらの触媒の触媒特性の両方を考慮すると、QD-ADおよびQD-MNは、ダイマー触媒よりも明らかに優れていた。
図26は、トルエン中、3−フェニルグルタル酸無水物の濃度が0.2Mのときに別異の触媒を用いて行ったメタノリシスの結果をまとめている。結果から、3−アルキルグルタル酸無水物および3−アリールグルタル酸無水物に対しては、QD-ADおよびQD-(-)-MNが有効であることが示唆された。これらの条件下で(DHQD)2AQNと比較すると、QD-ADおよびQD-MNは、鏡像異性体選択性がわずかに低く、また、活性はわずかに低かった。一方、QD-PPは、鏡像異性体選択性および活性が著しく低かった。コストおよびこれらの触媒の触媒特性の両方を考慮すると、QD-ADおよびQD-MNはダイマー触媒よりも優れていた。
図27は、トルエン中、3−フェニルグルタル酸無水物の濃度が0.2Mのときに別異の触媒を用いて行ったトリフルオロエタノリシスの結果をまとめている。これらの条件下で(DHQD)2AQNまたはQD-PPと比較すると、QD-ADおよびQD-MNは、より良好な鏡像異性体選択性および活性を示した。QD-(-)-MNとトリフルオロエタノールとの組み合わせによって得られた効率は、(DHQD)2AQNとメタノールとの組み合わせによって得られたそれと同等であった。再度、コストおよびこれらの触媒の触媒特性の両方を考慮すると、QD-ADおよびQD-MNはダイマー触媒よりも優れていた。
図28は、トルエン中、3−イソプロピルグルタル酸無水物の濃度が0.2Mのときに別異の触媒を用いて行ったメタノリシスの結果をまとめている。まず始めに、図に示されている結果から、QD-ADおよびQD-(-)-MNは、分岐鎖置換基を有する3−アルキルグルタル酸無水物に対して有効であることが示唆された。これらの条件下で(DHQD)2AQNと比較すると、QD-ADおよびQD-MNは、同程度の鏡像異性体選択性および活性を示した。一方、QD-PPは、鏡像異性体選択性および活性が著しく低かった。コストおよびこれらの触媒の触媒特性の両方を考慮すると、QD-ADおよびQD-MNはダイマー触媒よりも明らかに優れていた。
図29は、トルエン中、3−イソプロピルグルタル酸無水物の濃度が0.2Mのときに別異の触媒を用いて行ったトリフルオロエタノリシスの結果をまとめている。これらの条件下で(DHQD)2AQNまたはQD-PPと比較すると、QD-ADおよびQD-MNは、より良好な鏡像異性体選択性および活性を示した。QD-(-)-MNとトリフルオロエタノールとの組み合わせによって得られた効率は、(DHQD)2AQNとメタノールとの組み合わせによって得られたそれと同等であった。再度、コストおよびこれらの触媒の触媒特性の両方を考慮すると、QD-ADおよびQD-MNはダイマー触媒よりも優れていた。
図30は、トルエン中、3−OTBSグルタル酸無水物の濃度が0.2Mのときに別異の触媒を用いて行ったメタノリシスの結果をまとめている。これらの条件下で(DHQD)2AQNと比較すると、QD-ADおよびQD-MNは、同程度の鏡像異性体選択性を示し、活性は若干低かった。一方、QD-PPは、触媒特性が著しく劣っていた。コストおよびこれらの触媒の触媒特性の両方を考慮すると、QD-ADおよびQD-MNはダイマー触媒よりも明らかに優れていた。
図31は、トルエン中、3−OTBSグルタル酸無水物の濃度が0.2Mのときに別異の触媒を用いて行ったトリフルオロエタノリシスの結果をまとめている。これらの条件下で(DHQD)2AQNまたはQD-PPと比較すると、QD-ADおよびQD-MNは、より良好な鏡像異性体選択性および活性を示した。再度、コストおよびこれらの触媒の触媒特性の両方を考慮すると、QD-ADおよびQD-MNはダイマー触媒よりも優れていた。
図32および33は、キニン由来のモノマー触媒(Q-AD)を用いて行った3−置換グルタル酸無水物のメタノリシスおよびトリフルオロエタノリシスの結果をまとめている。生成物は、キニジン由来のモノマー触媒を用いて得られた生成物の対掌体である。
本方法に適用できる基質の範囲をさらに見極めることを目的として、1,2,3,6−テトラヒドロフタル酸無水物のアルコリシスを行った。シス−1,2,3,6−テトラヒドロフタル酸無水物およびコハク酸無水物のメタノリシスならびにトリフルオロエタノリシスの結果は、図34および35にまとめている。求核剤としてメタノールを用いた場合には、活性および選択性の点では、QD-ADは(DHQD)2AQNと同等であった。求核剤としてトリフルオロエタノールを用いた場合には、QD-ADおよびQD-MNは、(DHQD)2AQNよりも高い活性を示し、選択性は同等であった。しかしながら、QD-PPの選択性は若干悪かった。
構造的に独特な多様な無水物のアルコリシスの結果を図36〜43に示す。図36および37は、シス−1,2−シクロヘキサンジカルボン酸無水物のメタノリシスおよびトリフルオロエタノリシスの結果をまとめている。求核剤としてトリフルオロエタノールを用いた場合には、QD-ADおよびQD-MNは、(DHQD)2AQNと同等の活性および選択性を示し、QD-PPよりも触媒特性に優れていた。図38および39は、メタノリシスおよび三環性コハク酸無水物についての結果をまとめている。QD-ADおよびQD-MNは、(DHQD)2AQNおよびQD-PPよりも高い活性および選択性を示した。図40および41は、トルエンおよびエーテル中、シス−1,2,3,6−テトラヒドロフタル酸無水物の濃度が0.2Mのときのトリフルオロエタノリシスの結果をまとめている。トルエン中では、使用するアルコールの量が反応の鏡像異性体選択性に影響を与えた。図42は、トルエン中、シス−1,2,3,6−テトラヒドロフタル酸無水物の濃度が0.5Mのときのトリフルオロエタノリシスの結果をまとめている。モレキュラーシーブの使用は反応に有効であった。図43は、Q-ADを用いた多様なコハク酸無水物のアルコリシスの結果をまとめている。
本発明について一般的な記載を行ってきたが、以下の実施例を参照することにより、よりよく理解できるはずである。以下の実施例は、本発明の特定の態様について具体的に説明することを目的とするものであり、本発明を制限するためのものではない。
実施例1
触媒を用い、環状メソ無水物に対して鏡像異性体選択性の高い脱対称化を行う方法
攻撃を受けやすいメソ環状無水物を鏡像異性体選択的に開環させることにより、1個もしくは複数のステレオジェン中心、ならびに化学的に異なる2個のカルボニル官能基を有し、鏡像異性体に富んだキラルヘミエステルが生成した(式1)。これらの光学活性二官能ヘミエステルは、不斉合成における多目的構成要素である(文献1,2,3,4,5,6,7,8,9)。有機合成に対する該化合物の利用度が非常に高いことから、メソ環状無水物に対する鏡像異性体選択性の高い脱対称化法の開発は、強く望まれている研究対象である(文献10,11,12,13,14,15)。合成上有用な選択性は、化学量論的量のキラル補助剤またはキラル媒介物質によって脱対称化を補佐することによって得られる(文献10,11)。相当な努力を重ねたにもかかわらず(文献11-15)、メソ環状無水物に対する触媒を用いた一般的かつ効果的な脱対称化法は確立されておらず、故に、希求され、非常に達成しがたい目標である。
Figure 2007531704
発明者らは、キラルルイス塩基の不斉触媒作用に関して一般的な関心を抱いていたことから、アミン触媒による環状無水物のアルコリシスに着目した。オダ(Oda)により、シンコナアルカロイド類が多様なモノおよびビシクロ無水物の不斉メタノリシスを触媒することが初めて報告された(文献12)。後にアトキン(Atkin)は、この反応を特定の三環式無水物の脱対称化にも適用した(文献13)。反応は良好な収率で進行したが、得られたヘミエステルのエナンチオマー過乗率は低〜中程度であった。モノ塩酸キニンは、鏡像異性体選択性を伴わずに環状無水物のメタノリシスを触媒することがアトキン(Atkin)によって報告されていることから(文献13a)、発明者らは、キノリン窒素による非選択的触媒作用が部分的に関与することにより、鏡像異性体選択性が十分に発揮されないのだと考えた。酸性ヘミエステルによるキヌクリジン窒素の水素付加によって触媒が失活した結果、キヌクリジン窒素触媒による鏡像異性体選択的反応の速度が急激に低下する場合には、反応が高速転換で進行するにつれて、このキノリン窒素触媒によるラセミ経路は競合性が増すはずである。原理的には、キノリン窒素を持たないシンコナアルカロイド類のアナログを触媒として使用することにより、ラセミ経路を抑制することができる。しかしながら、そのようなアナログ類の調製には相当な努力を要するので、そのような方法の実施は実際上は困難である(文献16)。さらに、化学量論的でない場合には、反応を促進して完結させるためには、大量のキヌクリジン触媒が必要である。発明者らは、キヌクリジン窒素の塩基性を低下させるための別の方法を開発することに関心を抱き、酸塩基反応の平衡から遊離アミン触媒の形成に転じた。そのような戦略をとることにより、酸性ヘミエステルによる遊離塩基アミン触媒の失活を最小限に抑え、不斉触媒の効率および選択性を著しく向上させることができた。さらに、本方法は、シンコナアルカロイドに単純な変形を施してキヌクリジン窒素の周囲環境を変えることにより、容易に実行することができる。発明者らは、かさ高いアルキルまたはアリール基を用いてC-9アルコールを直接誘導体化することにより、シンコナアルカロイド類のエーテル類を合成することができたが、このとき、該シンコナアルカロイド類は、イオン溶媒和に対する立体障害の創出を介してアンモニウムイオンxを不安定化させることにより、キヌクリジン窒素の塩基性を低下させた。最後に、オダ(Oda)らによって報告されている条件(文献12)に従い、市販されているシンコナアルカロイド類の多様なアリールエーテル類およびエステル類について、2,3−ジメチルコハク酸無水物の鏡像異性体選択的メタノリシスに対する触媒能のスクリーニングを行った。スクリーニング実験の結果は図1に示す。
アリールエーテルによって媒介されるモノシンコナアルカロイド類(DHQD-PHN)およびビスシンコナアルカロイド類((DHQD)2AQN)の反応においては、鏡像異性体選択性が非常に良好であることを見出した(文献17)。両アルカロイド類は効果的な触媒であるが、一般的には後者の方が鏡像異性体選択性が高い。触媒として5モル%のDHQD-PHNまたは(DHQD)2AQNを用い、乾燥トルエン中、10当量のメタノールで1当量の無水物3を処理した場合、反応は2〜4時間で完結し、eeがそれぞれ81%および85%の対応するヘミエステルが得られた。変形シンコナアルカロイド類のアリール基の構造は、触媒の選択性に劇的な影響を与える。PHNまたはAQNなどのかさ高い芳香族基を有する触媒は、鏡像異性体選択性が高いが、O−9位に置換基として比較的小さい複素環を有する触媒(図1の実験番号2、3、6、7)では、鏡像異性体選択性の劇的な低下が観察された。反応をさらに最適化し、溶媒としてエーテルを用いることにより、室温においてeeが非常に高い(93%)生成物が得られた。
これらの有望な結果に勇気づけられ、触媒を用いた多様な環状無水物の脱対称化について研究を行った。結果は図2〜4にまとめている。反応は汎用性があり、多様なメソ環状無水物の脱対称化に関して、鏡像異性体選択性および収率が優れていた。無水物3、ならびに実験で使用した各二環式無水物に対しては、非常に高い鏡像異性体選択性が観察された(図2〜4の実験番号1、5、6および7)。単環式および三環式無水物を用いた場合(図2〜4の実験番号2、3、8、9、10および11)は、鏡像異性体選択性が非常に高く、鏡像異性体に非常に富んだ非環式および二環式キラルヘミエステル類が得られた。環状無水物以外に複素環を含む基質も、鏡像異性体選択性が非常に高い、所望する生成物に転換された(図2〜4の実験番号10、11)。比較的多量の触媒を必要とするものの、β−メチル置換基を有する単環式無水物も89%のeeで変換されることは注目に値する。1,2−シクロペンチル無水物の開環反応(図2〜4の実験番号5)の鏡像異性体選択性は、化学量論的量のキラル促進剤を用いた反応によって得られたそれよりも遥かに高いことを考えると、特筆に値する(文献11)。さらに、加水分解酵素に基づく合成経路では、eeが低いシクロペンチルヘミエステルしか得られない。(DHQ)2AQNを用いて2,3−ジメチルコハク酸無水物3の開環を触媒した場合には、対応するヘミエステルとは逆の鏡像異性体が96%のeeで得られたことから、本明細書に記載している反応を介して直接的かつ高い鏡像異性体選択性を伴ってヘミエステルのいずれの鏡像異性体をも調製できることは、特に注目すべきである。(DHQD)2AQNで触媒した2,4−ジメチルグルタル酸無水物の開環反応では、所望するヘミエステルの収率は良好であったが、eeは非常に低かった(30%)ことは驚きであった。しかしながら、(DHQD)2PHALによって反応を促進した場合には、鏡像異性体選択性は著しく向上した(図2〜4の実験番号4)。
予備的スケールで反応を行い、本発明に従う触媒を用いた脱対称化の実用性を示した。触媒添加量を5モル%とし、5mmolの無水物3をee98%以上の対応するヘミエステルに変換した。出発材料が消費された時点(24時間)において、HCl水溶液(1N)を用いて反応混合物を単純抽出することにより、生成物から触媒を分離した。有機溶媒を留去することにより、所望する生成物が高純度(NMRレベルで純粋)かつ高収量(95%)で得られた。触媒は、容易に定量的に回収された。KOHを用いて水層をアルカリ性にした後、EtOAcを用いてアルカリ性水層を抽出し、有機溶媒を除去することにより、高純度(NMRレベルで純粋)の触媒が回収された。回収触媒は、別の予備的スケールの反応への使用に対してさらなる処理を行わずに使用したが、新しいバッチの生成物のeeおよび収率は低下していなかった。
発明者らは、市販のシンコナアルカロイド類のアリールエーテルによって触媒されるメソ環状無水物の新規な脱対称化法は、一般的であり、選択性が高く、かつ、実用的な、触媒不斉変換反応であることを示した。本明細書に記載している反応は、有用な多様なキラルヘミエステルの鏡像異性体を共に高光学純度で直接的に得ることができる初めての触媒反応である。これらのキラルヘミエステルの大多数は、多様な天然生成物および生物学的に重要な化合物の合成に利用されることは特筆すべきである(文献1〜8)。触媒の利用度、単純な実験手順、および触媒の定量的回収の容易さの点から、本反応は非常に魅力的な合成法である。本反応の合成上の利用範囲の拡大、および触媒の選択性の高さの原因についての機構的洞察を行う実験については現在進行中である。
実施例1に関する参考文献および注
Figure 2007531704
Figure 2007531704
Figure 2007531704
実施例2
三級アミン触媒の一般的な合成法
Figure 2007531704
室温、窒素雰囲気下において、ジアミン1(1.40g、4.67mmol)の乾燥テトラヒドロフラン(93ml)溶液中に、水素化ナトリウム(鉱油中の60%懸濁液、1.87g、46.7mmol)を加えた。混合物を10分間撹拌し、グリシドールノシラート2を加えた。88時間撹拌した後、混合物をろ過し、減圧下、ろ液を濃縮した。得られた残渣をクロマトグラフィー(塩基性酸化アルミニウム、CH3OH:CH2Cl2(1:100〜1:20))によって精製し、白色固体のキラル三級アミン3(667mg、収率35%)を得た。
実施例3
触媒を用いた含尿素メソ二環式コハク酸無水物の脱対称化
Figure 2007531704
−40℃において、無水物(16.8mg、0.05mmol)およびDHQD-PHN(20モル%、5mg)の混合物のEt2O(2.5ml)溶液中に、−20℃に冷却した無水MeOH(0.5mmol。20.2μl)を一度に加えた。得られた混合物は、TLC(CH2Cl2中、20%MeOH)でモニターしながら、反応が完結するまで(約30時間)撹拌した。HCl水溶液(1N、3ml)を用いて反応を停止した。水層をEtOAc(2×10ml)で抽出した。合わせた有機層をMgSO4で乾燥させ、濃縮した。フラッシュクロマトグラフィー(100%CH2Cl2〜CH2Cl2中、10%MeOH)で残渣を精製し、ヘミエステル(16.7mg、収率91%)を得た。ヘミエステルの(R)-1-(1-ナフチル)エチルアミンとの反応を介して、ヘミエステルを対応するエステルアミドに転換することにより、ヘミエステルのeeは93%と判断された(J.Chem.Soc.Perkin. Trans. I 1987,1053)。キラルHPLC(Chiralpak、OD、280nm、0.6ml/分;対応するジアステレオ異性体の保持時間は、それぞれ、20.030分および25.312分)によってエステルアミドを分析した。
実施例4
触媒を用いた含ケトンメソ二環式コハク酸無水物の脱対称化
Figure 2007531704
−16〜−17℃において、無水物(0.1mol、15.4mg)および(DHQD)2AQN(12モル%、10.3mg)のt-ブチルメチルエーテル溶液を撹拌しながら、乾燥メタノール(32mg、1.0mmol)を滴下した。同温度で反応混合物を80時間撹拌した後、HCl(1N、3ml)を用いて反応を停止した。水層をEtOAc(2×15ml)で抽出した。有機層を合わせてNa2SO4で乾燥させ、減圧下、溶媒を除去した。ヘミエステルの(R)-1-(1-ナフチル)エチルアミンとの反応を介して、ヘミエステルを対応するエステルアミドに転換することにより、ヘミエステルのeeは84%と判断された(J.Chem.Soc.Perkin. Trans. I 1987,1053)。HPLC(Hypersil SI 4.6×200mm、280nm、0.5ml/分、ヘキサン:i-プロパノール=9:1;対応するジアステレオ異性体の保持時間は、それぞれ、28.040分および33.479分)によって分析を行った。
実施例5
触媒としてQD-PPを用いた2,3−ジメチルコハク酸無水物のアルコリシスに関する一般的方法
Figure 2007531704
図に示した温度において、無水物(0.1〜0.2mmol)およびQD-PP(20〜100モル%)のエーテル(0.5〜5.0ml)溶液にアルコール(0.1〜1.0mmol)を添加した。始めに反応混合物を撹拌し、その後、TLC分析またはキラルGC分析(β−CD)によって出発材料の消費が確認されるまで(TLCでは43時間、キラルGCでは0.5〜101時間)、同じ温度で放置した。HCl(1N、5ml)を一度に加えて反応を停止した。水層をエーテル(2×20ml)で抽出した。有機層を合わせてNa2SO4で乾燥させ、濃縮することにより、さらに精製を要することなく、所望する生成物が得られた。文献記載の方法の変形(J.ヒラタケ(Hiratake)、M.イナガキ(Inagaki)、Y.ヤマモト(Yamamoto)、J.オダ(Oda)、J.Chem.Soc.Perkin. Trans.1 1987,1053)またはキラルGC分析に従い、ヘミエステルから調製された対応するエステルアミドのジアステレオ異性体混合物をHPLC分析することにより、各生成物のeeを判断した。
Figure 2007531704
0℃において、ヘミエステル(0.1mmol)の乾燥トルエン(3ml)溶液に塩化チオニル(14.3mg、0.12mmol)を加えた。混合物を0℃で10分間撹拌した後、(R)-1-(1-ナフチル)エチルアミン(18.8mg、0.11mmol)およびトリエチルアミン(33.4mg、0.33mmol)をそれぞれ加えた。得られた混合物を0℃で30分間撹拌した後、室温でさらに30分間撹拌した。HCl(1N、5ml)を加えて反応を停止し、EtOAc(20ml)を加えて希釈した。飽和NaHCO3(5ml)および飽和ブライン(5ml)を用いてそれぞれ洗浄を行った。有機層をNa2SO4で乾燥させた。
実施例6
エーテル中、QD-PPを用いたメソ置換コハク酸無水物のアルコリシスに関する一般的方法
Figure 2007531704
図に示した反応温度において、無水物(0.1mmol)およびQD-PP(20〜100モル%)のエーテル(5.0ml)溶液にアルコール(1.0mmol)を添加した。例えば、図11および12を参照。始めに反応混合物を撹拌し、その後、TLCによって出発材料の消費が確認されるまで(2〜72時間)、同じ温度で放置した。HCl(1N、3ml)を一度に加えて反応を停止した。水層をエーテル(2×10ml)で抽出した。有機層を合わせてNa2SO4で乾燥させ、濃縮することにより、さらに精製を要することなく、所望する生成物が得られた。生成物は、NMRによって純粋であることを確認した。文献記載の方法の変形(J.ヒラタケ(Hiratake)、M.イナガキ(Inagaki)、Y.ヤマモト(Yamamoto)、J.オダ(Oda)、J.Chem.Soc.Perkin. Trans.1 1987,1053)に従い、ヘミエステルから調製された対応するエステルアミドのジアステレオ異性体混合物をHPLC分析することにより、各生成物のeeを判断した。
Figure 2007531704
0℃において、ヘミエステル(0.1mmol)の乾燥トルエン(3ml)溶液に塩化チオニル(14.3mg、0.12mmol)を加えた。混合物を0℃で10分間撹拌した後、(R)-1-(1-ナフチル)エチルアミン(18.8mg、0.11mmol)およびトリエチルアミン(33.4mg、0.33mmol)をそれぞれ加えた。得られた混合物を0℃で30分間撹拌した後、室温でさらに30分間撹拌した。EtOAc(20ml)を加えて反応物を希釈し、続いてHCl(1N、10ml)、飽和NaHCO3(10ml)および飽和ブライン(10ml)でそれぞれ洗浄を行った。有機層をNa2SO4で乾燥させた。
実施例7
アダマンチルクロロアセタート2の調製
Figure 2007531704
N2雰囲気下、10℃において、1−アダマンタノール(11.4g、75mmol)およびMgO(4.5g、113mmol)のCHCl3(150mmol)懸濁物中に、クロロアセチルクロリド(9ml、113mmol)をゆっくり加えた。混合物を加熱して43時間穏やかに還流させた後、室温まで冷却した。不溶性材料をろ去し、溶媒を留去した。ヘキサン中で残渣を結晶化させることにより、白色固体の2(6.324g、収率37%)を得た。米国特許第4,456,611号;Helv.Chim.Acta 1988, 71,1553
実施例8
(−)−メンチルクロロアセタート4aの調製
Figure 2007531704
0℃において、(−)−メントール3a(12.5g、80mmol)およびピリジン(6.5ml、80mmol)の無水ジエチルエーテル(160ml)溶液に、クロロアセチルクロリド(6.4ml、80mmol)の無水ジエチルエーテル(40ml )溶液を2時間以内に滴下した。室温に戻した後、白色懸濁物を2時間撹拌し、得られた混合物をろ過した。ろ液は、HCl(2N、60ml)、飽和NaHCO3(60ml)およびブラインでそれぞれ洗浄し、Na2SO4で乾燥させた。溶媒を除去し、減圧下で乾燥させることにより、(−)−メンチルクロロアセタート4a(17.64g、収率94%)が得られ、さらに精製することなく次の反応に使用した。米国特許第4,456,611号;Helv.Chim.Acta 1988, 71,1553
実施例9
(+)−メンチルクロロアセタート4bの調製
Figure 2007531704
先の実施例に記載した方法を40mmolスケールで行うことにより、(+)−メントール3bから収率95%で(+)−メンチルクロロエステル4bを合成した。米国特許第4,456,611号;Helv.Chim.Acta 1988, 71,1553
実施例10
クロロアセタートエステル5の合成
Figure 2007531704
0℃において、イソボルネオール(9.255g、0.06mmol)、ピリジン(4.9ml、0.06mmol)の無水ジエチルエーテル(120ml)溶液に、クロロアセチルクロリド(4.78ml、0.06mmol)の無水ジエチルエーテル(30ml)溶液を2時間かけて滴下した。反応混合物を室温に戻し、さらに3時間撹拌した。得られた混合物は、Celiteを用いてろ過し、ジエチルエーテル(30ml)で洗浄した。合わせた有機層は、HCl水溶液(2N、45ml)、飽和NaHCO3(45ml)およびブライン(45ml)でそれぞれ洗浄し、Na2SO4で乾燥させ、濃縮することにより、黄緑色油状の物質(13.10g、収率95%)を得(NMRレベルで純粋)、さらに精製することなく次の反応に使用した。
実施例11
(1R,2R,3R,5S)−(−)−イソピノカンフィルクロロアセタート6の合成
Figure 2007531704
0℃において、(1R,2R,3R,5S)−(−)−イソピノカンフェノール(9.255g、0.06mmol)、ピリジン(4.9ml、0.06mmol)の無水ジエチルエーテル(120ml)溶液に、クロロアセチルクロリド(4.78ml、0.06mmol)の無水ジエチルエーテル(30ml)溶液を2時間かけて滴下した。反応混合物を室温に戻し、さらに3時間撹拌した。得られた混合物は、Celiteを用いてろ過し、ジエチルエーテル(30ml)で洗浄した。合わせた有機層は、HCl水溶液(2N、45ml)、飽和NaHCO3(45ml)およびブライン(45ml)でそれぞれ洗浄し、Na2SO4で乾燥させ、濃縮することにより、黄緑色油状の物質(13.13g、収率95%)を得(NMRレベルで純粋)、さらに精製することなく次の反応に使用した。
実施例12
(1R)−エンド−(+)−フェンチルクロロアセタート(EF、7)の合成
Figure 2007531704
0℃において、(1R)−エンド−(+)−フェンチルアルコール(12.25g、79.5mmol)およびピリジン(6.5ml、80mmol)の無水ジエチルエーテル(160ml)溶液に、クロロアセチルクロリド(6.4ml、80mmol)の無水ジエチルエーテル(40ml)溶液を2時間かけて滴下した。反応混合物を室温に戻した後、さらに2.5時間撹拌した。沈殿物をろ去し、ジエチルエーテル(30ml)で洗浄した。合わせた有機層は、HCl水溶液(2N、60ml)、飽和NaHCO3(60ml)および飽和NaCl(60ml)でそれぞれ洗浄し、Na2SO4で乾燥させた。溶媒を除去して減圧乾燥することにより、(1R)−エンド−(+)−フェンチルクロロアセタート(17.33g、収率94.5%)を得、さらに精製することなく次の反応に使用した。
実施例13
O−[(−)−メンチルアセタート)]キニジン(QD-(-)-MN)およびO−[(+)−メンチルアセタート]キニジン(QD-(+)-MN)の合成
Figure 2007531704
方法A(クロマトグラフィー精製を利用)
窒素雰囲気下、NaH(60mg、1.5mmol、鉱油中60%)をヘキサン(2×3ml)で洗浄し、DMF(5ml)に懸濁した。この混合物に、キニジン(0.324g、1.0mmol)を少量ずつ加えた。溶液の色が黄色になるまで混合物を撹拌し(約3時間)、0℃に冷却した。冷却した反応混合物に、(−)−メンチルクロロアセタート4a(0.349g、1.5mmol)を1分以上かけて滴下した。反応混合物を0℃で1.5時間撹拌した後、室温に戻し、そのまま1.5時間放置した。H2O(10ml)を加えて注意深く反応を停止し、酢酸エチル(15ml)と混合した。有機層と水層とを分離した。水層を酢酸エチル(15ml)で抽出した。有機層を合わせ、飽和NaHCO3(10ml)、水(3×10ml)およびブライン(10ml)でそれぞれ洗浄し、Na2SO4で乾燥させ、減圧濃縮した。フラッシュクロマトグラフィー(酢酸エチル:メタノール=10:1)で褐色残渣を精製することにより、白色泡状のO-((−)-メンチルアセタート)キニジン(0.2752g、収率53%)が得られた。1H NMR(CDCl3):δ0.73(d,J=6.8Hz,3H),0.76-1.10(m,9H),1.22-1.40(m,2H),1.40-1.60(m,3H),1.60-1.72(m,2H),1.72-1.84(m,2H),1.93-2.20(m,1H),2.14-2.32(m,2H),2.70-2.90(m,3H),3.04-3.16(m,1H),3.28-3.44(br,1H),3.89(d,J=16.4Hz,1H),3.93(s,3H),4.06(d,J=16.0Hz,1H),4.77(td,J=11.2,4.4,1H),5.08-5.15(m,2H),5.20-5.45(br,1H),6.12-6.21(m,1H),7.20-7.50(m,3H),8.04(d,J=8.8,1H),8.76(d,J=4.4,1H)
O-((+)-メンチルアセタート)キニジン(QD-(+)-MN)の合成
上述の方法を用いることにより、白色泡状のO-((+)-メンチルアセタート)キニジンを収率43%で得た。1H NMR(CDCl3):δ0.75(d,J=7.2Hz,3H),0.85(d,J=7.6Hz,3H),0.90(d,J=6.8,3H),0.78-1.12(m,3H),1.20-1.40(m,2H),1.42-1.94(m,7H),1.97-2.06(m,1H),2.26-2.48(m,2H),2.80-3.30(m,4H),3.46-3.90(br,1H),3.99(d,J=16Hz,1H),4.00(s,3H),4.08(d,J=16.0Hz,1H),4.79(td,J=10.8,4.8Hz,1H),5.10-5.30(m,2H),5.46-6.10(br,1H),6.10-6.24(m,1H),7.36-7.56(m,3H),8.04(d,J=9.2Hz,1H),8.76(d,J=4.4Hz,1H)
方法B(クロマトグラフィー分離を行わない精製)によるQD-(-)-MNの調製
窒素雰囲気下、NaH(0.52g、12.9mmol、鉱油中60%)をヘキサン(2×9ml)で洗浄し、DMF(43ml)に懸濁した。この混合物に、キニジン(2.786g、8.6mmol)を少量ずつ加えた。溶液の色が黄色になるまで混合物を撹拌し(約2.5時間)、0℃に冷却した。冷却した反応混合物に、(−)−メンチルクロロアセタート(3.0g、12.9mmol)を1分以上かけて滴下した。反応混合物を0℃で1時間、さらに室温で1.5時間撹拌した。反応混合物を再度0℃に戻し、H2O(60ml)を加えて注意深く反応を停止した後、酢酸エチル(60ml)を加えた。有機層と水層とを分離した。水層を酢酸エチル(30ml)で抽出した。有機層を合わせ、飽和NaHCO3(30ml)、水(3×30ml)および飽和NaCl(30ml)でそれぞれ洗浄した後、5%(w/w)のHCl(3×40ml)で抽出した。合わせた酸性の水層をCH2Cl2(2×50ml)で抽出した。合わせた有機層を5%(w/w)のHCl(25ml)で洗浄し、減圧濃縮した。褐色残渣を100mlの0.1N HClに溶解した。50mlのEt2Oを用いて水層を抽出することによって微量の不純物を除去し、KOHを加えて塩基性(pH=11)にし、エーテル(2×50ml)で抽出した。合わせた有機層をNa2SO4で乾燥させ、減圧濃縮することにより、黄色泡状の粗O-((−)-メンチルアセタート)キニジンが得られた。この粗生成物を無水ジエチルエーテル(40ml)に溶解し、塩酸の1.0Mジエチルエーテル(アルドリッヒ( Aldrich)社)溶液(0.95当量)を滴下することにより、O-((-)-メンチルアセタート)キニジン塩酸塩を沈殿させた。分取した沈殿物をジエチルエーテル(2×10ml)で洗浄し、空気乾燥させ、H2O(50ml)に懸濁した。KOHを用いて溶液のpHを11に調整し、得られた混合物をジエチルエーテル(3×50ml)で抽出した。合わせた有機層をNa2SO4で乾燥させ、減圧濃縮することにより、白色結晶性泡状のO-((−)-メンチルアセタート)キニジン(1.783g、収率40%)が得られた。
実施例14
O-(1-アダマンチルアセタート)キニジン(QD-AD)の合成
Figure 2007531704
窒素雰囲気下、NaH(80mg、2mmol、鉱油中60%)をヘキサン(2×3ml)で洗浄し、DMF(3ml)に懸濁した。この混合物に、キニジン(0.1944g、0.6mmol)を少量ずつ加えた。溶液の色が黄色になるまで混合物を撹拌し(約2時間)、0℃に冷却した。冷却した反応混合物に、1−アダマンチルクロロアセタート(0.2285g、1mmol)を少しずつ加えた。反応混合物を室温で3時間撹拌した後、0℃に冷却し、H2O(5ml)を加えて注意深く反応を停止した後、トルエン(4×10ml)で抽出した。有機層を合わせ、水(5×5ml)で洗浄、Na2SO4で乾燥させ、減圧濃縮した。フラッシュクロマトグラフィー(酢酸エチル:メタノール=9:1)で褐色残渣を精製することにより、白色泡状のO-(1-アダマンチルアセタート)キニジン(0.1640g、収率53%)が得られた。1H NMR(CDCl3):δ1.22-1.38(m,1H),1.44-1.59(m,2H),1.59-1.69(m,6H),1.74-1.80(m,1H),2.04-2.12(m,6H),2.12-2.18(m,3H),2.18-2.31(m,2H),2.70-3.15(m,4H),2.30-3.48(m,1H),3.78(d,J=16Hz,1H),3.94(s,3H),3.95(d,J=16Hz,1H),5.08-5.15(m,2H),5.20-5.50(br,1H),6.11-6.22(m,1H),7.27-7.50(m,3H),8.04(d,J=9.2Hz,1H),8.76(d,J=4Hz,1H)
実施例15
O-(イソプロピルアセタート)キニジン(QD-IP)の合成
Figure 2007531704
窒素雰囲気下、NaH(160mg、4mmol、鉱油中60%)をヘキサン(2×5ml)で洗浄し、DMF(15ml)に懸濁した。この混合物に、キニジン(0.972g、3mmol)を少量ずつ加えた。溶液の色が黄色になるまで混合物を撹拌し(約2時間)、0℃に冷却した。冷却した反応混合物に、イソプロピルクロロアセタート(0.683g、5mmol)を一度に添加した。反応混合物を0℃で3時間、次に室温で25時間撹拌した。さらに、追加のイソプロピルクロロアセタート(0.342g、2.5mmol)を一度に添加した。混合物を室温で13時間撹拌した後、H2O(20ml)を加えて注意深く反応を停止し、トルエン(20ml)を加えた。有機層と水層とを分離した。水層をトルエン(3×10ml)で抽出した。有機層を合わせ、水(5×10ml)で洗浄、Na2SO4で乾燥させ、減圧濃縮した。フラッシュクロマトグラフィー(酢酸エチル:メタノール=10:1)で褐色残渣を精製することにより、明黄色油状のO-(イソプロピルアセタート)キニジン(0.1884g、収率15%)が得られた。1H NMR(CDCl3):δ1.23(d,J=6.0Hz,6H),1.20-1.38(m,1H),1.42-1.60(m,2H),1.75-1.84(m,1H),2.16-2.32(m,2H),2.71-3.02(m,3H),3.05-3.18(m,1H),3.30-3.50(m,1H),3.86(d,J=16.8Hz,1H),3.94(s,3H),4.04(d,J=16.4Hz,1H),5.02-5.20(m,3H),5.26-5.44(br,1H),6.11-6.24(m,1H),7.24-7.54(m,3H),8.04(d,J=9.2,1H),8.76(d,J=4.4,1H)
実施例16
イソボルニルキニジンの合成
Figure 2007531704
窒素雰囲気下、NaH(300mg、7.5mmol、鉱油中60%)をヘキサン(2×5ml)で洗浄し、DMF(25ml)に懸濁した。この混合物に、キニジン(1.62g、5.0mmol)を少量ずつ加えた。溶液の色が黄色になるまで混合物を撹拌し(約2時間)、0℃に冷却した。冷却した反応混合物に、イソボルニルクロロアセタート(1.728g、7.5mmol)を2分以上かけて滴下した。反応混合物を0℃で1時間、次に室温で1時間撹拌した。H2O(35ml)を加えて注意深く反応を停止し、酢酸エチル(35ml)を加えた。有機層と水層とを分離した。水層を酢酸エチル(35ml)で抽出した。有機層を合わせ、飽和NaHCO3(17ml)、水(3×17ml)、飽和NaCl(17ml)でそれぞれ洗浄し、Na2SO4で乾燥させ、減圧濃縮した。フラッシュクロマトグラフィー(酢酸エチル:メタノール=20:1)で褐色残渣を精製することにより、白色泡状の(イソボルニルアセタート)キニジン(1.218g、収率47%)が得られた。
実施例17
(1R,2R,3R,5S)−イソピノカンフィルキニジン(QD-(-)-IPC)の合成
Figure 2007531704
先の実施例に記載されている方法に従い、白色泡状の(1R,2R,3R,5S)−(−)−(イソピノカンフィルクロロアセタート)キニジン(QD-(-)-IPC)を45%の収率で得た。
実施例18
O-((1R)−エンド−(+)−フェンチルアセタート)キニジンの合成
Figure 2007531704
窒素雰囲気下、NaH(0.3g、7.5mmol、鉱油中60%)をヘキサン(2×5ml)で洗浄し、DMF(25ml)に懸濁した。この混合物に、キニジン(1.620g、5mmol)を少量ずつ加えた。溶液の色が黄色になるまで混合物を撹拌し(約2.5時間)、0℃に冷却した。冷却した反応混合物に、(1R)−エンド−(+)−フェンチルクロロアセタート(1.728g、7.5mmol)を1分以上かけて滴下した。反応混合物を0℃で1時間、次に室温で1.5時間撹拌した。H2O(35ml)を加えて注意深く反応を停止し、酢酸エチル(35ml)を加えた。有機層と水層とを分離した。水層を酢酸エチル(35ml)で抽出した。有機層を合わせ、飽和NaHCO3(17ml)、水(3×17ml)、飽和NaCl(17ml)でそれぞれ洗浄し、Na2SO4で乾燥させ、減圧濃縮した。フラッシュクロマトグラフィー(酢酸エチル:メタノール=9:1)で褐色残渣を精製することにより、明黄色泡状の((1R)−エンド−(+)−フェンチルアセタート)キニジン(1.0119g、収率39%)が得られた。
実施例19
O−シアノメチルキニジン(QD-CN)の合成
Figure 2007531704
窒素雰囲気下、NaH(0.266g、6.66mmol、鉱油中60%)をヘキサン(2×10ml)で洗浄し、DMF(10ml)に懸濁した。この混合物に、キニジン(0.648g、2mmol)を少量ずつ加えた。溶液の色が黄色になるまで混合物を撹拌し(約2時間)、0℃に冷却した。冷却した反応混合物に、クロロアセトニトリル(0.227g、3mmol)を5分以上かけて滴下した。反応混合物を0℃で1.5時間、次に室温で1.5時間撹拌した(TLCによって確認したところ、転換率は40%、酢酸エチル:メタノール=5:2)。混合物を再度0℃に冷却し、クロロアセトニトリル(0.227g、3mmol)を5分以上かけて滴下し、反応混合物を室温で一晩撹拌した。(TLCによって確認したところ、転換は進んでいなかった。酢酸エチル:メタノール=5:2)混合物を0℃に冷却し、H2O(13ml)を加えて注意深く反応を停止し、トルエン(13ml)を加えた。有機層と水層とを分離した。水層をトルエン(3×7ml)で抽出した。有機層を合わせ、飽和NaHCO3(7ml)、飽和NaCl(7ml)、水(5×7ml)、でそれぞれ洗浄し、Na2SO4で乾燥させ、減圧濃縮した。フラッシュクロマトグラフィー(酢酸エチル:メタノール=5:2)で黒色残渣を精製することにより、淡褐色粘性油状のO−シアノメチルキニジン(85.4mg、収率12%)が得られた。1H NMR(CDCl3):δ1.32-1.88(m,4H),1.95-2.10(m,1H),2.25-2.36(m,1H),2.70-2.89(m,2H),2.91-3.03(m,1H),3.05-3.22(m,2H),3.97(s,3H),4.03(d,J=16.0Hz,1H),4.31(d,J=16.0Hz,1H),5.09-5.18(m,2H),5.33-5.56(br,1H),5.99-6.11(m,1H),7.30-7.46(m,3H),8.05(d,J=9.2,1H),8.77(d,J=4.8,1H)
実施例20
O-(1−ピナコロン)キニジン(QD-PC)の合成
Figure 2007531704
窒素雰囲気下、NaH(160mg、4mmol、鉱油中60%)をヘキサン(2×5ml)で洗浄し、DMF(15ml)に懸濁した。この混合物に、キニジン(0.972g、3mmol)を少量ずつ加えた。溶液の色が黄色になるまで混合物を撹拌し(約2時間)、0℃に冷却した。冷却した反応混合物に、1−クロロピナコロン(0.670g、5mmol)を一度に加えた。反応混合物を0℃で0.5時間、次に室温で3.5時間撹拌した。さらに追加の1−クロロピナコロン(0.670g、5mmol)を一度に加えた。混合物を室温で36時間撹拌し、H2O(20ml)を加えて注意深く反応を停止し、トルエン(20ml)を加えた。有機層と水層とを分離した。水層をトルエン(2×20ml)で抽出した。有機層を合わせ、水(5×10ml)、で洗浄、Na2SO4で乾燥させ、減圧濃縮した。フラッシュクロマトグラフィー(酢酸エチル:メタノール=5:1)で褐色残渣を精製することにより、無色油状のO−(1−ピナコロン)キニジン(0.3296g、収率26%)が得られた。1H NMR(CDCl3):δ1.06(s,9H),1.23-1.38(m,1H),1.45-1.63(m,2H),1.76-1.84(m,1H),2.22-2.38(m,2H),2.72-3.20(m,4H),3.32-3.54(m,1H),3.95(s,3H),4.20(d,J=18.0Hz,1H),4.29(d,J=17.2Hz,1H),5.10-5.20(m,2H),5.26-5.48(m,1H),6.16-6.26(m,1H),7.30-7.48(m,3H),8.04(d,J=9.2,1H),8.75(d,J=4.4,1H)
実施例21
O−ピバロイルキニジン(QD-Piv)の合成
Figure 2007531704
0℃、トルエンにキニジン(0.972g、3mmol)を加えてできた懸濁物を撹拌しながら、ピバロイルクロリド(0.362g、3mmol)を滴下し、続いてトリエチルアミン(1ml)を加えた。反応混合物を室温で9.5時間撹拌した。追加のピバロイルクロリド(0.362g、3mmol)を一度に加えた。混合物を室温で13時間撹拌し、H2O(20ml)を加えて注意深く反応を停止し、トルエン(20ml)を加えた。有機層と水層とを分離した。水層をトルエン(2×20ml)で抽出した。有機層を合わせ、飽和NaHCO3(10ml)、飽和NaCl(2×10ml)でそれぞれ洗浄し、Na2SO4で乾燥させ、減圧濃縮した。フラッシュクロマトグラフィー(酢酸エチル:メタノール=10:1)で褐色残渣を精製することにより、無色油状のO−ピバロイルキニジン(0.5582g、収率46%)が得られた。1H NMR(CDCl3):δ1.22(s,9H),1.48-1.66(m,3H),1.74-1.86(m,2H),2.30-2.52(m,1H),2.65-2.82(m,2H),2.92(d,J=8.8Hz,2H),3.26-3.38(m,1H),3.96(s,3H),5.06-5.15(m,2H),5.97-6.08(m,1H),6.44(d,J=8.0Hz,1H),7.31-7.45(m,3H),8.00(d,J=9.2,1H),8.73(d,J=4.4,1H)
実施例22
O−(1−アダマンチルアセタート)キニン(Q-AD)の合成
Figure 2007531704
窒素雰囲気下、NaH(180mg、4.5mmol、鉱油中60%)をヘキサン(2×5ml)で洗浄し、DMF(15ml)に懸濁した。この混合物に、キニン(0.972g、3mmol)を少量ずつ加えた。溶液の色が黄色になるまで混合物を撹拌し(約4.5時間)、0℃に冷却した。冷却した反応混合物に、1−アダマンチルクロロアセタート(1.028g、4.5mmol)を少量ずつ加えた。反応混合物を0℃で1時間、次に室温で1時間撹拌し、H2O(20ml)を加えて注意深く反応を停止し、酢酸エチル(20ml、10ml)で抽出した。有機層を合わせ、飽和NaHCO3(10ml)、水(3×10ml)、飽和NaCl(10ml)でそれぞれ洗浄し、Na2SO4で乾燥させ、減圧濃縮した。フラッシュクロマトグラフィー(酢酸エチル:メタノール=10:1)で褐色残渣を精製することにより、白色泡状のO−(1−アダマンチルアセタート)キニン(0.4222g、収率27%)が得られた。1H NMR(CDCl3):δ1.48-1.76(m,8H),1.78-2.01(m,3H),2.04-2.12(m,6H),2.12-2.20(m,3H),2.24-2.39(m,1H),2.56-2.80(m,2H),3.03-3.27(m,2H),3.44-3.72(m,1H),3.76(d,J=16Hz,1H),3.96(s,3H),3.97(d,J=16Hz,1H),4.90-5.01(m,2H),5.20-5.56(br,1H),5.70-5.80(m,1H),7.30-7.50(m,3H),8.04(d,J=9.2,1H),8.76(d,J=4.4,1H)
実施例23
2,3−ジメチルコハク酸無水物のアルコリシスに関する一般的方法
Figure 2007531704
表に示した反応温度において、無水物(0.05〜0.2mmol)および触媒(5〜110モル%)を溶媒(0.5〜5.0ml)に溶解した溶液にアルコール(0.1〜1.0mmol)を加えた。始めに反応混合物を撹拌し、その後、TLC分析*またはキラルGC(β−CD、130℃/20分)**分析によって出発材料の消費が確認されるまで(0.5時間〜37日)そのままの温度で放置した。HCl(1N、5ml)を一度に加えて反応を停止した。水層をエーテル(2×20ml)で抽出した。有機層を合わせ、Na2SO4で乾燥させ、減圧濃縮した。文献記載の方法の変形(トリフルオロエチルエステルの場合)またはキラルGC分析(β−CD、130℃/20分)(メチルエステルの場合)に従い、生成物から調製された対応するアミドエステルのジアステレオ異性体混合物をHPLC分析することにより、各生成物のeeを判断した。
実施例24
プロキラル環状無水物のアルコリシスに関する一般的方法
Figure 2007531704
表に示した反応温度において、無水物(0.1mmol)および触媒(20〜110モル%)を溶媒(0.5〜5.0ml)に溶解した溶液にアルコール(0.15〜1.0mmol)を加えた。始めに反応混合物を撹拌し、その後、GC(β−CD)分析によって出発材料の消費が確認されるまで(19〜141時間)そのままの温度で撹拌した。HCl(1N、4ml)を一度に加えて反応を停止した(3−tert−ブチルジメチルシリルグルタル酸無水物などのように、酸に対する感受性が高い基質の場合には、H3PO4(1.0M)を用いて反応を停止した)。水層をエーテル(40ml)で抽出した。有機層をさらにHCl(1N、4ml)*で洗浄し、Na2SO4で乾燥させ、減圧濃縮した。フラッシュクロマトグラフィーでさらに精製を行い、または行わずに、所望する生成物が得られた。文献記載の方法の変形またはキラルGC分析に従い、ヘミエステルから調製された、対応するアミドエステルのジアステレオ異性体混合物をHPLC分析することにより、各生成物のeeを判断した。
実施例25
ee分析用のアミドエステルの調製
(J.ヒラタケ(Hiratake)、M.イナガキ(Inagaki)、Y.ヤマモト(Yamamoto)、J.オダ(Oda)、J.Chem.Soc.Perkin. Trans.1 1987,1053を参照)
Figure 2007531704
トルエン(3mmol)にヘミエステル(0.1mmol)およびSOCl2(14.3mg、0.12mmol)を加えた混合物を0℃に冷却し、10分間温度を維持した。得られた溶液に、(R)−1−(1−ナフチル)エチル−アミン(18.8mg、0.11mmol)およびトリエチルアミン(33.4mg、0.33mmol)を加えた。得られた混合物を0℃で30分間撹拌し、その後室温で30分撹拌した。HCl(1N、5ml)を加えて反応を停止し、EtOAc(20ml)を加えて希釈し、さらに、飽和NaHCO3(5ml)およびブライン(5ml)でそれぞれ洗浄した。Na2SO4を用いて有機層を乾燥させた。
実施例26
プロキラル環状無水物のアルコリシスに関する一般的方法
Figure 2007531704
表に示した反応温度において、無水物(0.1mmol)および触媒(20〜110モル%)を溶媒(0.5〜5.0ml)に溶解した溶液にアルコール(0.15〜1.0mmol)を加えた。始めに反応混合物を撹拌し、その後、TLC分析によって出発材料の消費が確認されるまで(2〜186時間)そのままの温度で放置した。HCl(1N、3ml)を一度に加えて反応を停止した。水層をエーテル(2×10ml)で抽出した。有機層を合わせてHCl(1N、2×3ml)で洗浄し、Na2SO4で乾燥させ、濃縮することにより、さらなる精製を要せずに所望する生成物が得られた。NMRにより、生成物は純粋であると判断した。文献記載の方法の変形に従い、ヘミエステルから調製された、対応するアミドエステルのジアステレオ異性体混合物をHPLC分析することにより、各生成物のeeを判断した。
実施例27
シス−1,3−ジベンジル−テトラヒドロ−2H−フロ[3,4-d]イミダゾール−2,4,6−トリオンのトリフルオロエタノリシス法
Figure 2007531704
無水トルエンにD-(-)-MN(57.2mg、0.11mmol)および4Åモレキュラーシーブ(22mg)を加えた混合物を室温で5分間撹拌し、シス−1,3−ジベンジル−テトラヒドロ−2H−フロ[3,4-d]イミダゾール−2,4,6−トリオン(33.6mg、0.10mmol)を添加した後、混合物を−43℃に冷却し、さらに10分間撹拌した。CF3CH2OHを一度に加えた。TLC分析(メタノール20%の塩化メチレン溶液)によって出発材料の消費が確認されるまで(9時間)、そのままの温度で撹拌を続けた。HCl(1N、4ml)を加えて反応を停止した。水層をジエチルエーテル(40ml)で抽出した。有機層を合わせてさらにHCl(1N、4ml)で洗浄し、Na2SO4で乾燥させ、減圧濃縮することにより、白色固体のヘミエステル(38.8mg、収率89%)が得られ、NMRによって純粋であることを確認した。文献記載の方法の変形に従い、ヘミエステルから調製された、対応するアミドエステルのジアステレオ異性体混合物をHPLC分析することにより、各生成物のeeを判断した。
実施例28
ee分析の方法
(J.ヒラタケ(Hiratake)、M.イナガキ(Inagaki)、Y.ヤマモト(Yamamoto)、J.オダ(Oda)、J.Chem.Soc.Perkin. Trans.1 1987,1053を参照)
Figure 2007531704
0℃で、乾燥トルエン(6ml)および塩化メチレン(6ml)にヘミエステル(0.1mmol)を溶解した溶液に、塩化チオニル(14.3mg、0.12mmol)を加えた。混合物を0℃で15分間撹拌した後、(R)−1−(1−ナフチル)エチルアミン(18.8mg、0.11mmol)およびトリエチルアミン(33.4mg、0.33mmol)を加えた。得られた混合物を0℃で1時間撹拌し、その後室温で1時間撹拌した。HCl(1N、5ml)を加えて反応を停止し、EtOAc(40ml)を加えて希釈し、さらに、飽和NaHCO3(5ml)および飽和ブライン(5ml)でそれぞれ洗浄した。Na2SO4を用いて有機層を乾燥させ、始めの容量の半分まで濃縮した。
実施例29
1.0mmolスケールでのシス−1,2,3,6−テトラヒドロフタル酸無水物のアルコリシス法および触媒の回収法
Figure 2007531704
無水トルエンにD-(-)-MN(ヒドロクロリド塩から精製)(572mg、1.1mmol)および4Åモレキュラーシーブ(220mg)を加えた混合物を室温で10分間撹拌し、シス−1,2,3,6−テトラヒドロフタル酸無水物(152mg、1.0mmol)を添加した後、混合物を−27℃に冷却し、さらに15分間撹拌した。トリフルオロエタノールを1分以内に滴下した。TLC分析(酢酸エチル:ヘキサン=1:1)によって出発材料の消費が確認されるまで(4時間)、そのままの温度で撹拌を続けた。HCl(1N、10ml)を加えて反応を停止した。水層をジエチルエーテル(50ml)で抽出した。有機層をHCl(1N、2×10ml)で洗浄し、Na2SO4で乾燥させ、濃縮することにより、さらなる精製を要することなく、無色油状のヘミエステル(239.7mg、収率95%、98%ee)が得られた。
触媒の回収
触媒QD-(-)-MNを回収することを目的として、水層にKOHを加えて溶液のpHを11に調整した。得られた混合物を酢酸エチル(3×15ml)で抽出した。合わせた有機層はNa2SO4で乾燥させ、濃縮することにより、触媒が得られた(定量的。回収率は95%以上)。回収された触媒をシス−1,2,3,6−テトラヒドロフタル酸無水物(1.0mmol)のアルコリシスの新規バッチに使用したところ、99%eeのヘミエステルが95%の収率で得られた。
実施例30
Helv.Chim.Acta.,1988,71,1553の記載と同様な方法を用いたN−(1−アダマンチル)クロロアセタミドの合成
Figure 2007531704
0℃において、無水ジエチルエーテル(40ml)に1−アダマンタンアミン(3.0g、20mmol)およびピリジン(1.63ml、20mmol)を加えた溶液に、クロロアセチルクロリド(1.6ml、20mmol)の無水ジエチルエーテル(10ml)溶液を5分以内に滴下した。そのままの温度で黄色懸濁物を1時間撹拌した。沈殿をろ取し、ジエチルエーテル(10ml)で洗浄した。合わせた有機溶液は、HCl(2N、2×15ml)で洗浄した後、飽和NaHCO3(15ml)および飽和NaCl(15ml)でそれぞれ洗浄し、Na2SO4で乾燥させた。減圧下、溶媒を除去し、残渣をジエチルエーテル−ヘキサンから再結晶させることにより、黄色固体のN−(1−アダマンチル)クロロアセタミド(1.551g、収率34%)が得られた。
実施例31
O−(1−アダマンチルアセタミド)キニジンの合成(クロマトグラフィーによって精製)
Figure 2007531704
窒素雰囲気下、NaH(0.12g、3.0mmol、鉱油中60%)をヘキサン(2×5ml)で洗浄し、DMF(10ml)に懸濁した。この混合物に、キニジン(0.652g、2.0mmol)を少量ずつ加えた。溶液の色が黄色になるまで混合物を撹拌し(約2時間)、0℃に冷却した。冷却した反応混合物に、N−(1−アダマンチル)クロロアセタミド(0.683g、3.0mmol)を少しずつ加えた。反応混合物を0℃で2時間撹拌し、H2O(14ml)を加えて注意深く反応を停止し、酢酸エチル(14ml)を加えた。有機層と水層とを分離した。水層を酢酸エチル(2×14ml)で抽出した。有機層を合わせ、飽和NaHCO3(14ml)、水(3×14ml)、飽和NaCl(14ml)でそれぞれ洗浄し、Na2SO4で乾燥させ、減圧濃縮した。フラッシュクロマトグラフィー(酢酸エチル:メタノール=9:1)で褐色残渣を精製することにより、白色結晶性泡状のO−(1−アダマンチルアセタミド)キニジン(0.8383g、収率81%)が得られた。1H NMR(CDCl3):δ1.27-1.39(m,1H),1.48-1.64(m,2H),1.65-1.76(br,6H),1.85(s,1H),1.91-2.07(m,1H),2.02(s,6H),2.07-2.14(br,3H),2.26-2.38(m,1H),2.71-3.27(m,5H),3.81(s,2H),3.96(s,3H),5.05-5.20(m,2H),5.20-5.50(br.,1H),5.96-6.07(m,1H),6.30-6.50(br,1H),7.20-7.43(m,3H),8.05(d,J=9.2,1H),8.77(d,J=4.8,1H)
実施例32
2−メチルプロピルクロロアセタートの合成
(Helv.Chim.Acta 1988,71,1553を参照)
Figure 2007531704
0℃において、無水ジエチルエーテル(80ml)に2−メチルプロパノール(2.96g、40mmol)およびピリジン(3.25ml、40mmol)を加えた溶液に、クロロアセチルクロリド(3.2ml、40mmol)の無水ジエチルエーテル(20ml)溶液を1時間以内に滴下した。室温に戻した後、白色懸濁物を3時間撹拌した。沈殿をろ取し、ジエチルエーテル(15ml)で洗浄した。合わせた有機溶液は、HCl(2N、30ml)で洗浄した後、飽和NaHCO3(30ml)および飽和NaCl(30ml)でそれぞれ洗浄し、Na2SO4で乾燥させた。約60mmHg/30℃で溶媒を除去することにより、2−メチルプロピルクロロアセタート(5.65g、収率94%)が得られ、さらに精製することなく、次の反応に使用した。
実施例33
O−(2−メチルプロピルアセタート)キニジンの合成(クロマトグラフィーによって精製)
Figure 2007531704
窒素雰囲気下、NaH(0.12g、3mmol、鉱油中60%)をヘキサン(2×3ml)で洗浄し、DMF(10ml)に懸濁した。この混合物に、キニジン(0.648g、2mmol)を少量ずつ加えた。溶液の色が黄色になるまで混合物を撹拌し(約2時間)、0℃に冷却した。冷却した反応混合物に、2−メチルプロピルクロロアセタート(0.452g、3mmol)を1分以上かけて滴下した。反応混合物を0℃で4時間撹拌し、H2O(14ml)を加えて注意深く反応を停止し、酢酸エチル(14ml)を加えた。有機層と水層とを分離した。水層を酢酸エチル(2×14ml)で抽出した。有機層を合わせ、飽和NaHCO3(14ml)、水(3×14ml)、飽和NaCl(14ml)でそれぞれ洗浄し、Na2SO4で乾燥させ、減圧濃縮した。フラッシュクロマトグラフィー(酢酸エチル:メタノール=9:1)で褐色残渣を精製することにより、淡褐色油状のO−(2−メチルプロピルアセタート)キニジン(0.278g、収率32%)が得られた。1H NMR(CDCl3):δ0.90(d,J=6.8Hz,6H),1.22-1.39(m,1H),1.48-1.69(m,2H),1.79-1.86(br,1H),1.86-1.98(m,1H),2.21-2.39(m,2H),2.75-3.22(m,4H),3.44-3.67(br,1H),3.88-4.04(m,6H),4.12(d,J=16.4Hz,1H),5.08-5.23(m.,2H),5.44-5.60(br,1H),6.10-6.24(m,1H),7.32-7.54(m,3H),8.04(d,J=9.2,1H),8.76(d,J=4.4,1H)
参考文献の取込み
本明細書中に引用している全ての米国特許および米国公開公報を参考として本明細書中に取り入れておく。
等価性
当業者であれば、通常の実験を行うことにより、本明細書に記載している特定の実施例と等価の実施形態に気付くはずである。そのような等価な実施形態は、請求の範囲に包含される。
シス−2,3−ジメチルコハク酸無水物の不斉脱対称化によって得られた生成物のエナンチオマー過剰率(使用した溶媒および触媒の関数として得られた) 多様なメソ環状無水物の不斉脱対称化によって得られた生成物のエナンチオマー過剰率(使用した反応条件の関数として得られた)。各生成物の絶対配置は、基準試料と比較することによって決定した。エナンチオマー過乗率は、キラルGCまたは文献記載の方法を用いて求めた。実験番号1〜3において、かっこ内に記載しているエナンチオマー過乗率は、触媒として(DHQ)2AQNを用いて得られた、逆の絶対配置を有する生成物についての値である。実験番号4においては、触媒として(DHQD)2PHALを使用した。 多様なメソ環状無水物の不斉脱対称化によって得られた生成物のエナンチオマー過剰率(使用した反応条件の関数として得られた)。各生成物の絶対配置は、基準試料と比較することによって決定した。エナンチオマー過乗率は、キラルGCまたは文献記載の方法を用いて求めた。実験番号7および8においては、触媒として(DHQD)2PHALを使用した。 多様なメソ環状無水物の不斉脱対称化によって得られた生成物のエナンチオマー過剰率(使用した反応条件の関数として得られた)。各生成物の絶対配置は、基準試料と比較することによって決定した。エナンチオマー過乗率は、キラルGCまたは文献記載の方法を用いて求めた。実験番号9および11においては、触媒として(DHQD)2PHALを使用した。 本発明に従う方法において使用したある種の触媒の構造、およびそれらに対する本明細書において使用している略語。 本発明に従う方法において使用したある種の触媒の構造、およびそれらに対する本明細書において使用している略語。 本発明に従う方法において使用したある種の触媒の構造、およびそれらに対する本明細書において使用している略語。 多様なメソ環状無水物の不斉脱対称化によって得られた生成物のエナンチオマー過剰率(使用した反応条件の関数として得られた)。 多様なメソ環状無水物の不斉脱対称化によって得られた生成物のエナンチオマー過剰率(使用した反応条件の関数として得られた)。各生成物の絶対配置は、基準試料と比較することによって決定した。エナンチオマー過乗率は、キラルGCまたは文献記載の方法を用いて求めた。 一群のプロキラル環状無水物の脱対称化の結果。各実験において、基質量は0.1mmol、基質濃度は0.2M、基質量に対する触媒量は110モル%、アルコール量は1.5当量、溶媒はトルエン、反応温度は−43℃とした。 一群のメソ環状無水物の脱対称化の結果。各実験において、基質量は0.1mmol、基質濃度は0.02M、溶媒はエーテルとした。 一群のメソ環状無水物の脱対称化の結果。各実験において、基質量は0.1mmol、基質濃度は0.02M、溶媒はエーテルとした。 シス−2,3−ジメチルコハク酸無水物の脱対称化の結果。各実験において、基質量は0.1mmol、基質濃度は0.2M、触媒はQD-PP、基質量に対する触媒量は20モル%、アルコール量は10当量、反応温度は周囲温度とした。 シス−2,3−ジメチルコハク酸無水物の脱対称化の結果。各実験において、基質量は0.1mmol、基質濃度は0.2M、触媒はQD-PP、アルコールはメタノール、反応温度は周囲温度とした。 シス−2,3−ジメチルコハク酸無水物の脱対称化の結果。各実験において、基質量は0.1mmol、基質濃度は0.2M、触媒はQD-PP、アルコールはメタノール、反応温度は−25℃とした。 シス−2,3−ジメチルコハク酸無水物の脱対称化の結果。各実験において、基質量は0.2mmol、基質濃度は0.4M、触媒はQD-PP、アルコールはメタノール、反応温度は−25℃、反応時間は6時間とした。 シス−2,3−ジメチルコハク酸無水物の脱対称化の結果。各実験において、基質濃度は0.02M、基質量に対する触媒量は20モル%、アルコール量は10当量、反応温度は周囲温度とした。 QD-PH、QD-AN、QD-NT、QD-ACおよびQD-CHの構造 Et2O中、2,3−ジメチルコハク酸無水物の濃度が0.02Mのときのメタノリシスに対する触媒効率の比較 Et2O中、2,3−ジメチルコハク酸無水物の濃度が0.02Mのときのメタノリシスに対する触媒効率の比較 Et2O中、2,3−ジメチルコハク酸無水物の濃度が0.02Mのときのトリフルオロエタノリシスに対する触媒効率の比較 Et2O中、3−メチルグルタル酸無水物の濃度が0.02Mのときのメタノリシスに対する反応条件の最適化 3−メチルグルタル酸無水物の濃度が0.2Mのときのアルコリシスに対する反応条件のスクリーニング トルエン中、3−メチルグルタル酸無水物の濃度が0.2Mのときのメタノリシスに対する触媒効率の比較 トルエン中、3−メチルグルタル酸無水物の濃度が0.2Mのときのトリフルオロエタノリシスに対する触媒効率の比較 トルエン中、3−フェニルグルタル酸無水物の濃度が0.2Mのときのメタノリシスに対する触媒効率の比較 トルエン中、3−フェニルグルタル酸無水物の濃度が0.2Mのときのトリフルオロエタノリシスに対する触媒効率の比較 トルエン中、3−イソプロピルグルタル酸無水物の濃度が0.2Mのときのメタノリシスに対する触媒効率の比較 トルエン中、3−イソプロピルグルタル酸無水物の濃度が0.2Mのときのトリフルオロエタノリシスに対する触媒効率の比較 トルエン中、3−TBSOグルタル酸無水物の濃度が0.2Mのときのメタノリシスに対する触媒効率の比較 トルエン中、3−TBSOグルタル酸無水物の濃度が0.2Mのときのトリフルオロエタノリシスに対する触媒効率の比較 トルエン中、Q-ADを触媒とし、3−置換グルタル酸無水物の濃度が0.2Mのときのメタノリシス トルエン中、Q-ADを触媒とし、3−置換グルタル酸無水物の濃度が0.2Mのときのトリフルオロエタノリシス Et2O中、シス−1,2,3,6−テトラヒドロフタル酸無水物の濃度が0.02Mのとき、メタノールを用いたアルコリシスに対する触媒効率の比較 Et2O中、シス−1,2,3,6−テトラヒドロフタル酸無水物の濃度が0.02Mのとき、トリフルオロエタノールを用いたアルコリシスに対する触媒効率の比較 QD-ADを触媒とし、Et2O中、1,2−シクロヘキサンジカルボン酸無水物の濃度が0.02Mのときのアルコリシス Et2O中、1,2−シクロヘキサンジカルボン酸無水物の濃度が0.02Mのとき、トリフルオロエタノールを用いたアルコリシスに対する触媒効率の比較 Et2O中、シス−ノルボルネン−エンド−2,3−ジカルボン酸無水物の濃度が0.02Mのときのアルコリシスに対する触媒効率の比較 Et2O中、エクソ−3,6−エポキシ−1,2,3,6−テトラヒドロフタル酸無水物の濃度が0.02Mのときのアルコリシスに対する触媒効率の比較 Et2O中、シス−1,2,3,6−テトラヒドロフタル酸無水物の濃度が0.02Mのときのアルコリシスに対する反応条件の最適化 トルエン中、シス−1,2,3,6−テトラヒドロフタル酸無水物の濃度が0.2Mのときのアルコリシスに対する反応条件の最適化 トルエン中、シス−1,2,3,6−テトラヒドロフタル酸無水物の濃度が0.5Mのときのアルコリシスに対する反応条件の最適化 Q-ADを用いたコハク酸無水物のアルコリシス Et2O中、2,3−ジメチルコハク酸無水物の濃度が0.02Mのときのメタノリシスに対する触媒効率の比較 トルエン中、3−イソプロピルグルタル酸無水物の濃度が0.2Mのときのトリフルオロエタノリシスに対する触媒効率の比較

Claims (37)

  1. 下記の化学式Iで表される化合物:
    Figure 2007531704
    Rは、−(C(R3)2)nCO2R4、−(C(R3)2)nC(O)N(R5)2または−(C(R3)2)nC(O)R5を表し;
    R1は、アルキルまたはアルケニルを表し;
    R2は、アルキル、シクロアルキルまたはアルケニルを表し;
    R3は、それぞれ別異に、Hまたはアルキルを表し;
    R4は、シクロアルキル、アルケニル、アルキニル、アリールまたはアラルキルを表し;
    R5は、それぞれ別異に、アルケニル、アリール、シクロアルキルまたはアラルキルを表し;さらに
    nは1〜10である。
  2. Rが−CH2CO2R4であり、R4がシクロヘキシルであり;さらに、R1が−CH=CH2であることを特徴とする請求項1記載の化合物。
  3. Rが−CH2CO2R4であり;R4が(−)−メンチル、1−アダマンチル、イソボルニル、(−)−イソピノカンフィルまたは(+)−フェンチルであり; R1が−CH=CH2であることを特徴とする請求項1記載の化合物。
  4. Rが−CH2C(O)N(R5)2であり、R1が−CH=CH2であることを特徴とする請求項1記載の化合物。
  5. Rが−CH2C(O)NH−1−アダマンチルであり、R1が−CH=CH2であることを特徴とする請求項1記載の化合物。
  6. 下記の化合物よりなる群から選択されることを特徴とする請求項1記載の化合物。
    Figure 2007531704
  7. QD-(-)-MNまたはQD-ADであることを特徴とする請求項6記載の化合物。
  8. 下記の化学式IIで表される化合物:
    Figure 2007531704
    Rは、−(C(R3)2)nCO2R4、−(C(R3)2)nC(O)N(R5)2または−(C(R3)2)nC(O)R5を表し;
    R1は、アルキルまたはアルケニルを表し;
    R2は、アルキル、シクロアルキルまたはアルケニルを表し;
    R3は、それぞれ別異に、Hまたはアルキルを表し;
    R4は、シクロアルキル、アルケニル、アルキニル、アリールまたはアラルキルを表し;
    R5は、それぞれ別異に、アルケニル、アリール、シクロアルキルまたはアラルキルを表し;さらに、
    nは1〜10である。
  9. 下記の化合物よりなる群から選択されることを特徴とする請求項8記載の化合物。
    Figure 2007531704
  10. Q-ADまたはQ-(-)-MNであることを特徴とする請求項9記載の化合物
  11. プロキラル環状無水物またはメソ環状無水物からキラル非ラセミ化合物を調製する方法であって、
    触媒の存在下、プロキラル環状無水物またはメソ環状無水物を求核剤と反応させる工程を含み、ここで、前記プロキラル環状無水物またはメソ環状無水物は、内部対称面もしくは対称点のいずれか、または両方を有しており;前記触媒は下記の化学式Iで表されることを特徴とする方法:
    Figure 2007531704
    ここで、Rは、−(C(R3)2)nCO2R4、−(C(R3)2)nC(O)N(R5)2または−(C(R3)2)nC(O)R5を表し;
    R1は、アルキルまたはアルケニルを表し;
    R2は、アルキル、シクロアルキルまたはアルケニルを表し;
    R3は、それぞれ別異に、Hまたはアルキルを表し;
    R4は、シクロアルキル、アルケニル、アルキニル、アリールまたはアラルキルを表し;
    R5は、それぞれ別異に、アルケニル、アリール、シクロアルキルまたはアラルキルを表し;さらに、
    nは1〜10である。
  12. Rが−CH2CO2R4であり、R4がシクロヘキシルであり;さらに、R1が−CH=CH2であることを特徴とする請求項11記載の方法。
  13. Rが−CH2CO2R4であり;R4が(−)−メンチル、1−アダマンチル、イソボルニル、(−)−イソピノカンフィルまたは(+)−フェンチルであり; R1が−CH=CH2であることを特徴とする請求項11記載の方法。
  14. Rが−CH2C(O)N(R5)2であり、R1が−CH=CH2であることを特徴とする請求項11記載の方法。
  15. Rが−CH2C(O)NH−1−アダマンチルであり、R1が−CH=CH2であることを特徴とする請求項11記載の方法。
  16. 前記触媒が、下記の化合物よりなる群から選択されることを特徴とする請求項11記載の方法。
    Figure 2007531704
  17. 前記触媒が、QD-(-)-MNまたはQD-ADであることを特徴とする請求項16記載の方法。
  18. Rが−CH2CO2R4であり;R4が(−)−メンチル、1−アダマンチル、イソボルニル、(−)−イソピノカンフィルまたは(+)−フェンチルであり; R1が−CH=CH2であり;さらに、前記求核剤がアルコールであることを特徴とする請求項11記載の方法。
  19. Rが−CH2CO2R4であり;R4が(−)−メンチルまたは1−アダマンチルであり; R1が−CH=CH2であり;さらに、前記求核剤がアルコールであることを特徴とする請求項11記載の方法。
  20. Rが−CH2CO2R4であり;R4が(−)−メンチルまたは1−アダマンチルであり; R1が−CH=CH2であり;さらに、前記求核剤がメタノールまたはCF3CH2OHであることを特徴とする請求項11記載の方法。
  21. プロキラル環状無水物またはメソ環状無水物からキラル非ラセミ化合物を調製する方法であって、
    触媒の存在下、プロキラル環状無水物またはメソ環状無水物を求核剤と反応させる工程を含み、ここで、前記プロキラル環状無水物またはメソ環状無水物は、内部対称面もしくは対称点のいずれか、または両方を有しており;前記触媒は下記の化学式IIで表されることを特徴とする方法:
    Figure 2007531704
    ここで、Rは、−(C(R3)2)nCO2R4、−(C(R3)2)nC(O)N(R5)2または−(C(R3)2)nC(O)R5を表し;
    R1は、アルキルまたはアルケニルを表し;
    R2は、アルキル、シクロアルキルまたはアルケニルを表し;
    R3は、それぞれ別異に、Hまたはアルキルを表し;
    R4は、シクロアルキル、アルケニル、アルキニル、アリールまたはアラルキルを表し;
    R5は、それぞれ別異に、アルケニル、アリール、シクロアルキルまたはアラルキルを表し;さらに、
    nは1〜10である。
  22. 前記触媒が、下記の化合物よりなる群から選択されることを特徴とする請求項21記載の方法。
    Figure 2007531704
  23. 前記触媒が、Q-ADまたはQ-(-)-MNであることを特徴とする請求項22記載の方法
  24. Rが−CH2CO2R4であり;R4が(−)−メンチル、1−アダマンチル、イソボルニル、(−)−イソピノカンフィルまたは(+)−フェンチルであり; R1が−CH=CH2であり;さらに、前記求核剤がアルコールであることを特徴とする請求項21記載の方法。
  25. Rが−CH2CO2R4であり;R4が(−)−メンチルまたは1−アダマンチルであり; R1が−CH=CH2であり;さらに、前記求核剤がアルコールであることを特徴とする請求項21記載の方法。
  26. Rが−CH2CO2R4であり;R4が(−)−メンチルまたは1−アダマンチルであり; R1が−CH=CH2であり;さらに、前記求核剤がメタノールまたはCF3CH2OHであることを特徴とする請求項21記載の方法。
  27. ラセミ環状無水物の動力学的分割の方法であって、
    下記の化学式Iで表される触媒の存在下において、ラセミ環状無水物をアルコールと反応させる工程を含み、該動力学的分割が完結または中断したときに、任意の未反応環状無水物のエナンチオマー過乗率がゼロ以上であり、かつ、生成物のエナンチオマー過乗率がゼロ以上であることを特徴とする方法:
    Figure 2007531704
    ここで、Rは、−(C(R3)2)nCO2R4、−(C(R3)2)nC(O)N(R5)2または−(C(R3)2)nC(O)R5を表し;
    R1は、アルキルまたはアルケニルを表し;
    R2は、アルキル、シクロアルキルまたはアルケニルを表し;
    R3は、それぞれ別異に、Hまたはアルキルを表し;
    R4は、シクロアルキル、アルケニル、アルキニル、アリールまたはアラルキルを表し;
    R5は、それぞれ別異に、アルケニル、アリール、シクロアルキルまたはアラルキルを表し;さらに、
    nは1〜10である。
  28. Rが−CH2CO2R4であり、R4がシクロヘキシルであり;さらに、R1が−CH=CH2であることを特徴とする請求項27記載の方法。
  29. Rが−CH2CO2R4であり;R4が(−)−メンチル、1−アダマンチル、イソボルニル、(−)−イソピノカンフィルまたは(+)−フェンチルであり; R1が−CH=CH2であることを特徴とする請求項27記載の方法。
  30. Rが−CH2C(O)N(R5)2であり、R1が−CH=CH2であることを特徴とする請求項27記載の方法。
  31. Rが−CH2C(O)NH−1−アダマンチルであり、R1が−CH=CH2であることを特徴とする請求項27記載の方法。
  32. 前記触媒が、下記の化合物よりなる群から選択されることを特徴とする請求項27記載の方法。
    Figure 2007531704
  33. 前記触媒が、QD-(-)-MNまたはQD-ADであることを特徴とする請求項32記載の方法。
  34. ラセミ環状無水物の動力学的分割の方法であって、
    下記の化学式IIで表される触媒の存在下において、ラセミ環状水物をアルコールと反応させる工程を含み、該動力学的分割が完結または中断したときに、任意の未反応環状無水物のエナンチオマー過乗率がゼロ以上であり、かつ、生成物のエナンチオマー過乗率がゼロ以上であることを特徴とする方法:
    Figure 2007531704
    ここで、Rは、−(C(R3)2)nCO2R4、−(C(R3)2)nC(O)N(R5)2または−(C(R3)2)nC(O)R5を表し;
    R1は、アルキルまたはアルケニルを表し;
    R2は、アルキル、シクロアルキルまたはアルケニルを表し;
    R3は、それぞれ別異に、Hまたはアルキルを表し;
    R4は、シクロアルキル、アルケニル、アルキニル、アリールまたはアラルキルを表し;
    R5は、それぞれ別異に、アルケニル、アリール、シクロアルキルまたはアラルキルを表し;さらに、
    nは1〜10である。
  35. 前記触媒が、下記の化合物よりなる群から選択されることを特徴とする請求項34記載の方法。
    Figure 2007531704
  36. 前記触媒が、Q-ADまたはQ-(-)-MNであることを特徴とする請求項35記載の方法
  37. 下記式で表わされる化合物
    Figure 2007531704
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