従来、光ファイバ照明システムは、例えば工場内で細かい作業をする作業者の手元を照らす手元照明や、ショーケースやショーウインドウ内の装飾照明に用いられる一方、内視鏡、スキャナ、写真引き伸ばし機、光重合器等において必要とされる光の照射に用いられるなど広く利用されている。
図7は、従来のハロゲン電球を光源として用いる光ファイバ照明システムの一例を概略的に示し、Aはハロゲン電球と光ファイバとの位置関係を示し、Bは光ファイバから出射される出射光の配光分布を示す。図7において、100はハロゲン電球を示し、200は光ファイバを示している。ハロゲン電球100は、石英ガラスからなるバルブ101と、ガラスからなる反射器102とを備えている。バルブ101は封止部103を備え、該バルブ101内にはハロゲンガスが封入されている。また、バルブ101内には、いわゆる縦型のフィラメント104(例えばC−8型)が配設されている。反射器102は、内側表面に反射用被膜が形成された楕円形状の反射部105と首状部106とを備えている。反射器102の首状部106内にはバルブ101の封止部103が挿入され、セメント等の接着剤で固定される。この際、フィラメント104のコイルの軸線と反射部102の光軸とが略々一致するように、バルブ101と反射器102とが同心的に位置決めされている(図の一点鎖線を参照されたい)。
光ファイバ200は、石英系光ファイバ、多成分系光ファイバ、プラスチック光ファイバ等が用いられ得る。なお、図において光ファイバは1本しか示されていないが、通例は数本乃至数万本束ねてバンドル化したものが用いられる。また、光ファイバ200は、その端面で受光できる角度を示す開口数NA(Numerical Aperture)を持つ。用いられる光ファイバ200の開口数NAと用いられるハロゲン電球100の反射器102の反射部105の曲率とに応じて、ハロゲン電球100と光ファイバ200とが適当な距離X離れて位置決めされる。この際、(バンドル化された)光ファイバ200の軸線と、反射器102の反射部105の前記光軸とが略々一致するように、ハロゲン電球100及び光ファイバ200は同心的に位置決めされる(図の一点鎖線を参照されたい)。
図7の光ファイバ照明システムにおいて、光ファイバ200より出射される出射光の配光分布は、図7Bに示されるようになる。この配光分布も、ハロゲン電球100及び光ファイバ200と同心的に表されている。
図7Bの配光分布から明らかなように、従来の光ファイバ照明システムにおいては、光ファイバ200から出射される光のうち中央付近の光度が、その周囲の光度と比較して落ち込んでいる。これは、反射器102に首状部106が設けられていることに起因する。即ち、この反射器102の部分には反射用被膜を形成することができず、故に、光を反射させないダークスポットを形成する。この結果、反射器102からの反射光の殆どがある入射角を持って光ファイバ200に入射する。ある角度を持って光ファイバに入射した場合、該光は全反射を繰り返しながら該光ファイバ内を伝送される。ここで、入射角=反射角であるから、光ファイバの他端から出てくる光は、結果としてドーナッツ状になる。更に、光ファイバ200に面するフィラメント104の先端部分が生成する光量はそれほど多くない。故に、フィラメント104から光ファイバ200に直接平行に入射する光量はそれほど多くない。従って、従来の光ファイバシステムにおいては、図7Bに示されるような中央付近の光度が落ち込んだ配光分布となる。このような配光分布は、特別な用途以外光ファイバ照明に適するものではない。この点を鑑みて、ハロゲン電球100の光軸を光ファイバ200の軸線に対し角度を付けてハロゲン電球と光ファイバとを位置決めすることにより、該ハロゲン電球から該光ファイバに平行光を入射させようとする試みもなされている。しかしながら、この場合には、光ファイバに入射しない光が多くなり、効率が悪い。このように、従来のハロゲン電球は、光ファイバ照明システムの光源として適さないという問題点があった。
また、図示のハロゲン電球100を用いる場合、ガラス製反射器102をモールド成形するための金型が非常に高価であるため、該反射器102の楕円形状の反射部105の曲率を変えたものを多数用意することが困難であり、仮に用意するためには、そのためのコストが莫大なものになると言う問題点もある。実際の所、数種類の反射器しか用意できず、用途に合わせてバルブの大きさ、形状等を適応させたり、用途に合わせてあるバルブを反射器内で位置をずらしたりしながら適応させているのが現状である。しかしながら、斯かる適応では所望の配光特性を得るのが困難であり、場合によっては無理である。
また、図示のハロゲン電球100を用いる場合、バルブと別体の反射器102が必要であり、光ファイバ照明システムを小型化することが困難であるという問題点もある。
なお、光源に白熱電球を用いた光ファイバ照明システムが、独国実用新案第DE-7904647 U号から知られている。この光ファイバ照明システムにおいては、白熱電球のバルブ上に反射層が設けられている。この光ファイバ照明システムにおいても、光ファイバから出射される光の配光分布が、中央付近の光度がその周囲の光度と比較して落ち込む特性を示す。
本発明の目的は、光ファイバ照明システムの光源として適していて、安価に製造することが可能であり、且つ小型である白熱型の電球、とりわけ、ハロゲン電球を提供することにある。
この目的を達成するため、本発明による電球は、第1及び第2の焦点を持つ断面略楕円形状を有し、外側に凸状の第1の湾曲面を有するバルブと、ワイヤを巻回してなり、通電により光を発生するコイル部を有し、前記コイル部が前記バルブの内部空間内に位置するように配設されたフィラメントと、を具備し、前記第1の湾曲面の外側全面又は内側全面に反射用被膜が形成されており、前記第1の湾曲面は、前記第1の焦点が前記コイル部に位置し、前記第2の焦点が、前記コイル部で発生し、前記第1の湾曲面で反射した出射光が供給される光伝送媒体に位置するように構成されたことを特徴とする。
上記構成の電球によれば、該電球のバルブ自体に断面略楕円形状の第1の湾曲面を成形し、該第1の湾曲面の外側又は内側全面に反射用被膜を形成するので、当該電球を安価に製造することができ、且つ該電球は非常に小さくすることができる。そして、上記構成の電球を光源として用いた光伝送媒体照明システムにおいて、光ファイバ等の光伝送媒体の出射光に、中央付近にピークを持つ配光特性を持たせることができる。このような配光特性の光は、光ファイバ照明用途に非常に適したものである。
また、上記電球においては、前記第1の湾曲面に対向する第2の面が略球形状を含むことが好ましく、更に、前記バルブが、前記第1の湾曲面の周端部と前記第2の面の周端部とを連接する周面を有することが好ましい。
上記構成の電球によれば、該電球のバルブの厚さを、該バルブの内部空間の部分において略一定にするために有利である。ガラスの厚さを等しくすることはバルブの破裂を防止する点で有利である。
また、上記電球においては、前記第2の面が平坦部を含むことが好ましく、更に、前記平坦部が円形状を有し、前記第1の焦点において前記コイル部で発生し、前記第1の湾曲面で反射した出射光をほぼ全て通過させる大きさを少なくとも有することが好ましい。
上記構成の電球によれば、光伝送媒体照明システムに設けられる平坦な基準面に前記平坦部を当接させることにより、当該電球と光伝送媒体とを容易に位置決めすることができる点で有利である。また、前記平坦部を介す出射光は該部分でより小さな屈折となるためこの点で有利である。更に、前記平坦部を介してフィラメントの位置を目視により正確に確認することができる点で有利である。
また、上記電球においては、前記第2の面が、前記光伝送媒体に向けて突出する突出部を有することが好ましい。
上記構成の電球によれば、光伝送媒体照明システムに設けられる基準面の穴部に前記突出部を挿入することにより、当該電球と光伝送媒体とを極めて容易に位置決めすることができる点で有利である。
また、上記電球においては、前記第2の面が、特定の波長の光を反射、透過又は吸収する被膜を有することが好ましい。
上記構成の電球によれば、赤外カット等の特性を備えるフィルタを別途設ける必要がなく、コストの面及び光伝送媒体照明システムの小型化の面で有利である。
また、本発明による電球は、第1及び第2の焦点を持つ断面略楕円形状を有し、外側に凸状の第1の湾曲面と、該第1の湾曲面に対向する、第1及び第2の焦点を持つ断面略楕円形状を有し、外側に凸状の第2の湾曲面とを有するバルブと、ワイヤを巻回してなり、通電により光を発生するコイル部を有し、前記コイル部が前記バルブの内部空間内に位置するように配設されたフィラメントと、を具備し、前記第1及び第2の湾曲面にそれぞれ反射用被膜が形成されており、前記反射用被膜は、前記コイル部で発生し、前記第1又は第2の湾曲面で反射した出射光を通過させる開口を有し、前記第1の湾曲面は、前記第1の焦点が前記コイル部に位置し、前記第2の焦点が、前記コイル部で発生し、前記第1の湾曲面で反射した出射光が前記開口を介して供給される光伝送媒体に位置するように構成され、前記第2の湾曲面は、前記第1の焦点が前記コイル部に位置し、前記第2の焦点が、前記コイル部で発生し、前記第2の湾曲面で反射した出射光が前記開口を介して供給される光伝送媒体に位置するように構成されたことを特徴とする。また、前記第1及び第2の湾曲面が同じ曲率を有すると好ましい。また、前記開口の少なくとも一つが円形状であり、前記第1又は第2の湾曲面の前記第1の焦点において前記コイル部で発生し、該第1又は第2の湾曲面で反射した出射光をほぼ全て通過させる大きさを少なくとも有することが好ましい。
上記構成の電球によれば、該電球のバルブ自体に断面略楕円形状の第1及び第2の湾曲面を成形し、該第1及び第2の湾曲面に反射用被膜を形成するので、当該電球を安価に製造することができ、且つ該電球は非常に小さくすることができる。そして、上記構成の電球を光源として用いた光伝送媒体照明システムにおいて、当該1つの電球で2本の光ファイバ等の光伝送媒体に光を入射させることができ、しかも、これら光伝送媒体の出射光に、中央付近にピークを持つ配光特性を持たせることができる。このような配光特性の光は、光ファイバ照明用途に非常に適したものである。
また、上記電球においては、前記開口の少なくとも一つが平坦部を含むことが好ましい。
上記構成の電球によれば、光伝送媒体照明システムに設けられる平坦な基準面に前記平坦部を当接させることにより、当該電球と光伝送媒体とを容易に位置決めすることができる点で有利である。また、前記平坦部を介す出射光は該部分でより小さな屈折となるためこの点で有利である。更に、前記平坦部を介してフィラメントの位置を目視により正確に確認することができる点で有利である。
また、上記電球においては、前記開口の少なくとも一つが前記光伝送媒体に向けて突出する突出部を有することが好ましい。
上記構成の電球によれば、光伝送媒体照明システムに設けられる基準面の穴部に前記突出部を挿入することにより、当該電球と光伝送媒体とを極めて容易に位置決めすることができる点で有利である。
また、上記電球においては、前記突出部の端面がレンズ作用を持つことが好ましい。
上記構成の電球によれば、所望の方向に光を集光、発散又は平行化させることができる点で有利である。
また、上記電球においては、前記突出部の側面に反射用被膜が形成されることが好ましい。
上記構成の電球によれば、前記突出部の側面から光が逃げない点で有利である。
また、上記電球においては、前記コイル部が、前記光伝送媒体側から見て正方形状又は円形状であることが好ましい。
上記構成の電球によれば、フィラメントのコイル部で発生し、第1又は第2の湾曲面で反射した出射光が、該フィラメントにより遮られるのを防止する点で有利である。
また、上記電球においては、前記バルブが、前記第1の湾曲面の周端部と前記第2の湾曲面の周端部とを連接する周面を有することが好ましい。
上記構成の電球によれば、該電球のバルブの厚さを、該バルブの内部空間の部分において略一定にするために有利である。ガラスの厚さを等しくすることはバルブの破裂を防止する点で有利である。
また、上記電球においては、前記反射用被膜の材料がTa2O5/SiO2であることが好ましい。Ta2O5/SiO2は耐熱性及びはがれにくさの面で優れている。
また、上記電球においては、前記第1及び/又は第2の湾曲面が、複数の異なる曲率をもつ部分から構成されることが好ましい。
上記構成の電球によれば、光ファイバ等の光伝送媒体に位置するそれぞれ別個の第2の焦点に光を集光させることができる点で有利である。
また、上記電球においては、前記バルブの前記内部空間にハロゲンが封入されていることが好ましい。
また、本発明は、第1及び第2の焦点を持つ断面略楕円形状を有し、外側に凸状の第1の湾曲面と、該第1の湾曲面に対向する第2の面とを有するバルブと、ワイヤを巻回してなり、通電により光を発生するコイル部を有し、前記コイル部が前記バルブの内部空間内に位置するように配設されたフィラメントと、を有する電球と、前記第2の面近傍に配置され、前記コイル部で発生し、前記第1の湾曲面で反射した出射光が供給される光伝送媒体と、を具備する光伝送媒体照明システム、とりわけ、光ファイバ照明システムであって、前記第1の湾曲面の外側全面又は内側全面に反射用被膜が形成されており、前記第1の湾曲面は、前記第1の焦点が前記コイル部に位置し、前記第2の焦点が前記光伝送媒体に位置するように構成されたことを特徴とする。
また、本発明は、第1及び第2の焦点を持つ断面略楕円形状を有し、外側に凸状の第1の湾曲面と、該第1の湾曲面に対向する、第1及び第2の焦点を持つ断面略楕円形状を有し、外側に凸状の第2の湾曲面とを有するバルブと、ワイヤを巻回してなり、通電により光を発生するコイル部を有し、前記コイル部が前記バルブの内部空間内に位置するように配設されたフィラメントと、を有する電球と、前記第1及び第2の湾曲面近傍にそれぞれ配置され、前記コイル部で発生し、前記第1又は第2の湾曲面で反射した出射光が供給される2つの光伝送媒体と、を具備する光伝送媒体照明システム、とりわけ、光ファイバ照明システムであって、前記第1及び第2の湾曲面にそれぞれ反射用被膜が形成されており、前記反射用被膜は、前記コイル部で発生し、前記第1又は第2の湾曲面で反射した出射光を通過させる開口を有し、前記第1の湾曲面は、前記第1の焦点が前記コイル部に位置し、前記第2の焦点が、前記第1の湾曲面で反射した出射光が前記開口を介して供給される一方の光伝送媒体に位置するように構成され、前記第2の湾曲面は、前記第1の焦点が前記コイル部に位置し、前記第2の焦点が、前記第2の湾曲面で反射した出射光が前記開口を介して供給される他方の光伝送媒体に位置するように構成されたことを特徴とする。
以下、本発明の実施の形態について、添付図面を参照して詳細に説明する。
図1は、本発明による電球の第1実施例を示す概念図であり、Aは正面図、Bは左側面図、Cは右側面図を示している。この実施例における電球1は、ハロゲン電球である。このハロゲン電球1は、例えば石英ガラス等からなるバルブ2を有する。このバルブの下部はピンチシール部3とされ、頂部は排気シール部4とされ、内部空間5にハロゲンガスが封入されている。また、バルブ3の内部空間5には、例えばタングステン線からなるフィラメント6が設けられている。フィラメント6は、ワイヤを巻回してなり、通電により光を発生するコイル部16を有する。ピンチシール部3には一対の内部リード線(本実施においては、フィラメント6の一対の直線状端部が兼ねている)7a、7bと一対の外部リード線8a、8bとが各々植設され、内部リード線7a、7b及び外部リード線8a、8bはモリブデン箔9a及び9bを介して各々電気的に接続されている。本実施例においては、フィラメント6のコイル部16、内部リード線7a、7b、外部リード線8a、8b及びモリブデン箔9a、9b(即ち、後述するフィラメント構造体)は、フィラメント6を通るバルブ2の軸線(図1における一点鎖線)に略平行に延在している。また、本実施例においては、ピンチシール部3がバルブ2の前記軸線に同心的に設けられている。しかしながら、これらは必須な構成ではなく、もし望むなら、例えば、ピンチシール部3をバルブ2の前記軸線に対して偏心させて設け、これにフィラメント構造体を適応させることも可能である。
本実施例において、バルブ2は、第1の焦点F1及び第2の焦点F2を持つ断面略楕円形状を有し、外側に凸状の第1の湾曲面10を有する。第1の湾曲面10の外側全面に反射用被膜(図1における斜線)が形成されている。本実施例において、第1の湾曲面10の光軸は、バルブ2の前記軸線と略直交し、該第1の湾曲面の周端部で形成される平面が、該バルブ2の軸線に略平行である。第1の湾曲面10の第1の焦点F1は、フィラメント6のコイル部16に位置する。第1の湾曲面10の第2の焦点F2は、フィラメント6のコイル部16で発生し、該第1の湾曲面10で反射した出射光が供給される光ファイバ20に位置する(図3参照)。
また、本実施例において、バルブ2は、第1の湾曲面10に対向して、略球形状の第2の面11を有する。また、バルブ2は、第1の湾曲面10の周端部と第2の面11の周端部とを連接する周面12を有する。なお、周面12と封止部3とが遷移部13を介して連接されている。球形状の第2の面11及び周面12を設けることは、当該電球1のバルブ2の厚さを、内部空間5の部分において略一定にするために有利である。その理由を本実施例の電球の製造工程を参照して説明する。
本実施例の電球の製造は、基本的には従来のハロゲン電球と同様である。また、バルブの成形方法においても従来の製造方法と同様である。バルブ2の断面略楕円形状の第1の湾曲面10、略球形状の第2の面11及び周面12は、所定の管径を持つガラス管の所定部分を先ず加熱し、その後、該加熱部分を金型で囲い、該管内に空気を送り込んで、該加熱部分を膨張させることにより成形される。その際、ガラス管の軸から等距離の部分に同様の風圧がかかるため、かかる部分において、成形された後のガラスの厚さは一様になる。本実施例においては、上述の膨張の際、ガラス管の軸上の点から第2の面11及び周面12並びに第1の湾曲面10の一部までの距離が概ね等しくなり、これらの部分において、成形後のガラスの厚さが等しくなる。ガラスの厚さを等しくすることはバルブの破裂を防止する点で有利である。
また、上述したバルブ2の成形の際、封止部3に対応する部分及び遷移部分も成形される。このように成形された後のガラス管が図2Aに示されている。
一方、コイル部16を備えるフィラメント6、内部リード線7a、7b、外部リード線8a、8b及びモリブデン箔9a、9bが互いに電気的に溶接されて、図2Bに示されるフィラメント構造体が形成される。このフィラメント構造体が、図2Aに示される成形されたガラス管内に下方から挿入され、所定位置に固定された後、前記封止部3に対応する部分が加熱されピンチシールされる。その後、ガラス管の頂部よりハロゲンガスが導入される。最後に、上記ガラス管の頂部が加熱後封じられる(図2C参照)。
この後、第1の湾曲面10の外側全面に反射用被膜がCVD等の蒸着により形成され、当該電球は完成する(図2D参照)。なお、図2Bに示されるフィラメント構造体を図2Aに示される成形されたガラス管に挿入する前に、第1の湾曲面10の外側全面に反射用被膜を形成しても良い。また、該外側表面に代えて、第1の湾曲面10の内側全面に反射用被膜を形成しても良い。
なお、上述した遷移部分13(特に図1A参照)は、第1の湾曲面10における反射面積をできるだけ大きくするために、できるだけ狭くすることが望ましい。
また、上述した製造方法では、1本のガラス管から第1の湾曲面10、第2の面11及び周面12と、封止部3に対応する部分及び遷移部分とを成形したが、これらを別個のガラス管により成形し、その後一体化させても良い。
上記記述においては、第1の湾曲面10、第2の面11及び周面12を別々の部分として説明しているが、本発明においては、周面が第1及び/又は第2の湾曲面に包含されており、第1の湾曲面と第2の面とを内部空間を形成するように当接した時に周面が形成されるように構成しても良い。
本実施例の電球によれば、従来のハロゲン電球と異なり、反射用被膜がバルブの外側表面に直接形成されるため、該反射用被膜の材料には耐熱性が要求される。また、当該電球の作業に当たり人の手等で触られる頻度が多いことが予測され、はがれにくさも要求される。これらを鑑みて、本実施例においては、耐熱性及び強度の面において優れているTa2O5/SiO2が反射用被膜の材料として採用されている。しかしながら、所望に応じて、アルミニウム、金、ZnS/MgF2、ZnS/SiO2、TiO2/SiO2等の材料を用いることも可能である。
また、本実施例においては、コイル部16を備えるフィラメント6が、いわゆる横型のCF−6型であり、光ファイバ20側から見て正方形状を有し、且つバルブ2の内部空間5内において、第1の湾曲面10の光軸が該正方形状の中心を通るように配設されている。また、第1の湾曲面10の第1の焦点F1がフィラメント6のコイル部16の中央に位置している。これは、フィラメント6のコイル部16で発生し、第1の湾曲面10で反射した出射光が、該フィラメント6により遮られるのを防止する点で有利である。しかしながら、この観点において、フィラメント6が、CF−6型であり、光ファイバ20側から見て円形状を有し、且つバルブ2の内部空間5内において、第1の湾曲面10の光軸が該円形状の中心を通るように配設されことがより好ましい。しかしながら、もし望むなら、光ファイバ20側から見て長方形状も可能であり、またC−6型、CF−8型又はC−8型等のフィラメントを用いることも可能である。
図3は、図1の電球を光源として用いる光ファイバ照明システムを概略的に示し、Aは電球と光ファイバとの位置関係を示し、Bは光ファイバから出射される出射光の配光分布を示す。この光ファイバ照明システムにおいては、電球1と光ファイバ20とが、第1の湾曲面10の光軸と光ファイバ20の軸線とが略一致するように(図3における一点鎖線参照)所定距離Y離れて同心的に位置決めされている。ここで、第1の湾曲面10の曲率は光ファイバ20の開口数NAに適応されていて、該第1の湾曲面10の第2の焦点F2が光ファイバ20に位置している。なお、光ファイバ20自体は従来と変わりはなく、複数の光ファイバを束ねてバンドル化したものでも良い。斯くして、図3に示されるように、第1の焦点F1においてフィラメント6のコイル部16で生成され、第1の湾曲面10で反射した出射光が、光ファイバ20に位置する第2の焦点F2に集光される。本例によれば、第1の湾曲面10の外側全面に反射用被膜が形成されているためダークスポットはない。また、第1の湾曲面10の光軸上に封止部3等が存在しないため、出射光が妨げられない。また、光ファイバ20から見た側において、正方形状をなすコイル部16から該光ファイバ20に平行光が直接入射する。このコイル部分は極めて多量の光量を生成する。結果として、図3Bに示されるように、ドーナッツ状ではなく、中央付近にピークを持つ配光分布が得られる。この配光分布も、ハロゲン電球1及び光ファイバ20と同心的に表されている。このような配光分布は、前述した光ファイバ照明用途に非常に適している。
なお、同一の光ファイバ照明システムにおいて、別体の反射器を備える従来のハロゲン電球と本発明の電球とを同一の電圧(5V)でそれぞれ点灯した時に光ファイバから出射される光量を比較する実験を行った。その結果、本発明の電球によれば、約32%の光量の増加が得られることが確認された。
また、従来の別体の反射器を成形するコストと比較して、バルブ2を成形するコストは極めて安価である。
また、本発明による電球は、別体の反射器を備えないため非常に小さい。更に、本発明の電球におけるバルブの楕円形状部は小型で極めて短焦点のものとすることができる。これは、従来の電球と比較して、本発明の電球を光ファイバにより近づけることを可能にする。故に、別体の反射器を備える従来の電球を光源として用いる従来の光ファイバ照明システムにおいて、該従来の電球に必要とされていたスペースは、本発明による電球にとって十分なものである。従って、電球の取り付け構造を変更するだけで、本発明による電球を当該従来の光ファイバ照明システムに適応させることが可能である。一方、新たな光ファイバ照明システムを製造する際には、従来の光ファイバ照明システムと比較して小型にすることが可能である。
なお、従来の光ファイバ照明システムにおいて、電球と光ファイバとの間に別体の赤外カットフィルタ等を介在させたものが知られている。図1の電球の第2の面11に赤外カットフィルタの特性を持つ被膜を形成することにより、斯様な別体のフィルタを省くことが可能である。これは、コストの面、及びシステムの小型化の面で有利である。また、もし望むなら、第2の面11にその他の特性を持つ被膜、例えば、赤外反射フィルタ、紫外カットフィルタ、ダイクロイックフィルタ等の特性を持つ被膜を形成しても良い。
図4は、本発明による電球の第2実施例の概念図であり、Aは正面図、Bは左側面図、Cは右側面図を示す。本実施例の電球40は、バルブ41において、略球形状の第2の面11に代えて、平坦部43を有する略円錐台形状の第2の面42を有する点で図1の第1実施例の電球1と異なる。平坦部43は円形状であり、第1の湾曲面10の第1の焦点F1においてフィラメント6のコイル部16で発生し、該第1の湾曲面10で反射した出射光をほぼ全て通過させる大きさを有する。本実施例の電球40は、光ファイバ照明システムに設けられる平坦な基準面に平坦部43を当接させることにより、当該電球と光ファイバとを容易に位置決めすることができる点で有利である。また、平坦部43を介す出射光は該部分でより小さな屈折となるためこの点で有利である。更に、平坦部43を介してフィラメント6の位置を目視により正確に確認することができる点で有利である。
図5は、本発明による第3実施例の概念図であり、Aは正面図、Bは左側面図を示す。なお、図5の電球において右側面図は左側面図と同様である。本実施例の電球50は、図1の第1実施例の電球と比較して、2方向に光を出射させる点で大きく異なる。電球50のバルブ51は、第1の焦点F1及び第2の焦点(図示せず)を持つ断面略楕円形状を有し、外側に凸状の第1の湾曲面52を有する。第1の湾曲面52の外側表面に反射用被膜(図5における斜線)が形成されている。第1の湾曲面52の第1の焦点F1は、フィラメント6のコイル部16の中央に位置する。第1の湾曲面52の第2の焦点は、フィラメント6のコイル部16で発生し、該第1の湾曲面52で反射した出射光が供給される光ファイバ(図示せず)に位置する。また、バルブ51は、第1の焦点F1及び第2の焦点(図示せず)を持つ断面略楕円形状を有し、外側に凸状の第2の湾曲面53を有する。なお、第1の湾曲面52と第2の湾曲面53とは同じ曲率を有する。第2の湾曲面53の外側表面に反射用被膜(図5における斜線)が形成されている。第2の湾曲面53の第1の焦点F1も、フィラメント6のコイル部16の中央に位置する。第2の湾曲面53の第2の焦点は、フィラメント6のコイル部16で発生し、該第2の湾曲面53で反射した出射光が供給される他の光ファイバ(図示せず)に位置する。これら反射用被膜の材料は、図1の実施例で述べたものと同様である。
本実施例によれば、第1の湾曲面52の外側表面に形成された反射用被膜が、第1の開口54を有する。第1の開口54は円形であり、第2の湾曲面53の第1の焦点F1においてフィラメント6のコイル部16で生成され、該第2の湾曲面53で反射した出射光をほぼ全て通過させる大きさを持つ。また、第2の湾曲面53の外側表面に形成された反射用被膜が、第2の開口55を有する。第2の開口55も円形であり、第1の湾曲面52の第1の焦点F1においてフィラメント6のコイル部16で生成され、該第1の湾曲面52で反射した出射光をほぼ全て通過させる大きさを持つ。なお、第1の開口54の部分において、第1の湾曲面52は第1の平坦部を持ち、第2の開口55の部分において、第2の湾曲面53は第2の平坦部を持つ。これらの平坦部は、図4の実施例で述べたものと同様の作用効果を持つ。
また、バルブ52は、第1の湾曲面52の周端部と第2の湾曲面53の周端部とを連接する周面56を有する。周面56を設けることは、前述したように、当該電球50のバルブ51の厚さを、内部空間57の部分において略一定にするために有利である。また、周面56を設けることにより、バルブ51の設計に当たり、用いられる光ファイバの開口数NAに依存して、第1の湾曲面52及び第2の湾曲面53の曲率だけでなく、該周面56の幅方向の大きさも関連付けて適応させることにより、該バルブ51における反射面はできる限り大きくし、第1の開口54及び第2の開口55はできる限り小さくすることができる点で有利である。なお、周面56の外側表面には反射用被膜が形成されていない。これは、周面56が囲むコイル部16の部分が、該コイル部16においてそれほど光量を生成しないからである。しかしながら、もし望むなら、周面56にも反射用被膜や赤外カットフィルタ等その他の特性の被膜を形成することも可能である。
本実施例の電球50を光源として用いる光ファイバ照明システムにおいては、2本の光ファイバが該電球50を挟んで対向して配設され、図3において説明したのと同様に電球50とこれら光ファイバとが位置付けられる。本実施例の電球50においては、反射用被膜が開口54、55を有するが、これら開口に面している正方形状のコイル部16から多量の平行光が直接光ファイバに入射するので、該光ファイバから出射される光の配光特性は、ドーナッツ状ではなく、中央付近にピークを持つ。従って、この配光分布も、前述した光ファイバ照明用途に非常に適している。また、図1や図4の片側被膜の実施例と比較して、集光効率がアップする。なお、上記の2本の光ファイバは、それぞれ別個の照明に用いられても良く、途中で一つに束ねられ同一の照明に用いられても良い。
図6は、本発明による第4実施例の概念図であり、Aは正面図、Bは左側面図を示す。なお、図6の電球において右側面図は左側面図と同様である。本実施例の電球60は、バルブ61において、図5の第3実施例における第1の開口が第1の突出部62を有し、第2の開口が第2の突出部63を有する点で図5の第3実施例の電球50と異なる。本実施例において、これら突出部62、63の端面は平坦である。しかしながら、もし望むなら、突出部62、63の端面に所望の曲率を施し、レンズ作用を持たせても良い。また、突出部62、63の側面に反射用被膜を形成し、該突出部の側面から光が逃げないようにしても良い。なお、本実施例の電球60は、光ファイバ照明システムに設けられた基準面の穴部にこれら突出部62、63を挿入することにより、当該電球と光ファイバとを極めて容易に位置決めすることができる点で有利である。
図1乃至図6を参照して説明した実施例においては、断面略楕円形状の湾曲面が1つの曲率しか持たない部分から構成されている。しかしながら、もし望むなら、前記湾曲面を複数の曲率を持つ部分から構成し、それぞれ別個の第2の焦点を光ファイバに位置させても良い。