JP2007333625A - 水素センサ、発電装置及び電子機器 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】水素化金属膜2の電気抵抗率を測定することにより水素濃度を検出する水素センサ100は、組成中の水素含有量に応じて抵抗率が変化する材料により成膜された水素化金属膜2と、水素化金属膜2上に成膜されて水素を透過する水素選択透過膜4と、水素化金属膜2と水素選択透過膜4との間に、水素化金属膜2と水素選択透過膜4との間での原子の相互拡散を防止する拡散防止膜3を備える。
【選択図】図1
Description
前記拡散防止膜は、Taを含むことを特徴とする。
前記水素選択透過膜は、Pdを含むことを特徴とする。
前記水素化金属膜は、Yを含むことを特徴とする。
前記拡散防止膜は、Ta単体よりも耐酸化性が高い材料によって形成されることを特徴とする。
前記拡散防止膜は、Ta1−xSix、Ta1−xGex、Ta1−xAlx(ただし、0<x≦0.2)のいずれか一種であることを特徴とする。
前記拡散防止膜は、アモルファス構造であることを特徴とする。
前記拡散防止膜は、体心立方格子構造の微結晶であることを特徴とする。
図1は、第一実施形態の水素センサ100の断面図である。
水素センサ100は、基板1と、基板1の上面に組成中の水素含有量に応じて電気特性値の一つとしての抵抗率が変化する材料により成膜された水素化金属膜2と、水素化金属膜2上の全体に成膜された拡散防止膜3と、拡散防止膜3上に成膜されて水素を選択的に透過する水素選択透過膜4と、水素選択透過膜4上の両端部に形成された電極5とを備えるとともに、下面にヒーター6を備える。本第一実施形態の水素センサ100は、電極5,5間に電圧を加えたときに流れる電流値を測定することによりこの抵抗率の変化を水素濃度に対応させて検出するものである。
ヒーター6はAuを含む導電性材料によって葛折り状の膜パターンとして形成され、この膜パターンに電圧を印加して膜パターンの抵抗率を測定することにより温度センサとして機能するとともに、抵抗による発熱を利用した加熱手段としても機能する。上述の水素化金属膜2の抵抗率を測定する際、水素化金属膜2の温度によってその水素含有量や抵抗率が変化する。このため、水素センサ100が温度センサを備える場合は、測定された抵抗率を測定時の温度に応じて補正することにより、より正確な水素濃度を検出することが可能となり、加えて、ヒーター6を備える場合には、基板1を介して水素化金属膜2をヒーター6によって所定の温度とした状態で水素化金属膜2の抵抗率を測定することにより、さらにより正確な水素濃度を検出することが可能となる。尚、前記所定の温度における水素化金属膜2の抵抗率は、予め測定され、既知であるものとする。上述の通り、水素センサ100は少なくとも温度センサを備えることが望ましく、更にはヒーター6を備えることが望ましいが、Auを含む材料によって形成された膜パターンをヒーターとして機能させる場合には、これをヒーターとして機能させるとともに、温度センサとしても機能させることができる。
水素化金属膜2は水素を吸蔵することによって、電気抵抗率等の物理特性値が変化する材料からなり、例えば、Y、ランタノイド系列の希土類元素を使用することができる。水素化金属膜2の膜厚は、300〜500nm程度が好ましい。
水素選択透過膜4は、水素雰囲気中の水素と共存する窒素、酸素、アンモニア、炭化水素等の非水素成分による水素化金属の劣化を防止するための保護膜として設けられる。水素選択透過膜4は、非水素成分を透過せず、水素を選択的に透過させる材料からなり、例えば、Pdを使用することができる。膜厚は10nm程度が好ましいが、数nmとしても良い。
拡散防止膜3としては、例えばTa単体、又は、Taを主組成としSi、Ge又はAlのうち何れか一種を含有させた各ターゲット材料(Ta1−xSix、Ta1−xGex、Ta1−xAlx(ただし、0<x<1))を用いることができる。なお、ターゲット材料については、実施例において後述する。
ここで、図3は、Ta−Si系の拡散防止膜3において、Siの割合を変化させた場合の抵抗率の変化を測定したグラフである。この図に示すように、Ta−Si系膜の抵抗率は、Siの割合が20%を超えるとほとんど変化しなくなることから、xの範囲は0<x≦0.2であることが好ましく、さらに、後述するように、拡散防止膜3の抵抗率が高い方が、水素センサとしての検出感度が高くなるため、0.01<x<0.2がより好ましい。また、拡散防止膜3の膜厚は、10nm程度が好ましい。
図4は、上述のTa−Si膜3A上に成膜したPd膜4Aを数nm(例えば10nm未満)と薄く成膜した変形例の水素センサ100Aの断面図である。図4に示すように、Pd膜4Aを極端に薄くすると、Pd膜4Aは島状に成膜されて、Pd膜4Aの下面の拡散防止膜であるTa−Si膜3Aが部分的にPd膜に覆われずに露出する。しかしながら、上述したようにTa−Si膜3Aはその耐酸化性により酸化されにくいから、図4に示すように拡散防止膜3が水素選択透過膜4に覆われずに露出する部分があってもよく、この場合も、水素の透過率を高いまま維持することができ、ひいては、水素センサ100の超寿命化することができる。従って、本変形例においては、Pd膜を薄く成膜することができるので、水素選択透過膜としてのPd膜の成膜時間を短縮できる。
以下に示す組成のターゲットを用いてそれぞれ拡散防止膜を形成した。
1.(0)Ta単体
2.Ta−Si系
(i)TaにSiを3mol混合したもの(Si:3mol%)
(ii)TaにSiを1mol混合したもの(Si:1mol%)
3.Ta−Ge系
(iii)TaにGeを3mol混合したもの(Ge:3mol%)
(iv)TaにGeを1mol混合したもの(Ge:1mol%)
4.Ta−Al系
(v)TaにAlを3mol混合したもの(Al:3mol%)
(vi)TaにAlを1mol混合したもの(Al:1mol%)
到達真空度を5×10−4Pa、スパッタリング圧力0.7Paとし、15nm/minの成膜速度で200nmの拡散防止膜を作成した。
X線回折により拡散防止膜表面の結晶構造を解析した。
[耐酸化性の調査]
拡散防止膜を形成したガラス基板を大気雰囲気下で400℃で30分加熱した後、ラザフォード後方散乱分析(RBS分析)により拡散防止膜の組成・密度を分析し、酸素の侵入程度により耐酸化性を調査した。
表2に上記結晶構造の確認及び耐酸化性の調査による結果を示す。この表は、ターゲットの組成(括弧内は実際に作成されたものを実測した組成)の差によって、構造、特性等がどのように変わるかを示している。
Ta単体をターゲットに用いて作成した拡散防止膜のX線回折スペクトルを図5に、400℃に加熱後のRBS分析の結果を図6に示す。拡散防止膜表面は多結晶であり、結晶系は正方晶(tetragonal)であった。また、RBS分析により酸化の程度を調査したところ、酸素は拡散防止膜の表面から約20〜30nmの範囲まで侵入していた(図6参照)。よって、正方晶であることは、膜が準安定状態にあることを示し、後述の立方晶(cubic)に比べて酸化し易いと考えられる。
(i)(Si:3mol%)のターゲットを用いて作成した拡散防止膜の結晶構造は、アモルファス構造であった。図7に(Si:3mol%)のターゲットを用いて作成した拡散防止膜のX線回折スペクトルを示す。また、RBS分析により拡散防止膜の組成を分析するとSiが2.4mol%となっていることが確認された。
(ii)(Si:1mol%)のターゲットを用いて作成した拡散防止膜の結晶構造は、微結晶構造であった。図8に(Si:1mol%)のターゲットを用いて作成した拡散防止膜のX線回折スペクトルを示す。図5と比較してピークが鋭くなっているだけでなく、ピークに対して(110)と(211)のミラー指数が指数付けされた。この指数は体心立方格子(body-centered cubic lattice)の結晶格子面が形成されていることを示しており、結晶系は立方晶(cubic)となっていることがわかる。同様に、RBS分析により拡散防止膜の組成を分析するとSiが0.8mol%となっていることが確認された。
これらのTa−Si系の拡散防止膜について、RBS分析により加熱後の酸化の程度を調査したところ、酸素の侵入はいずれも拡散防止膜表面から約200nmまでの範囲では見られなかった。したがって、Ta単体の拡散防止膜と比較して耐酸化性が改善されたことが認められる。なお、図9に(Si:3mol%)のRBS分析の結果を示す。
(iii)(Ge:3mol%)のターゲットを用いて作成した拡散防止膜の結晶構造は、アモルファス構造であった。図10に(Ge:3mol%)のターゲットを用いて作成した拡散防止膜のX線回折スペクトルを示す。また、RBS分析により拡散防止膜の組成を分析するとGeが1.5mol%となっていることが確認された。
(iv)(Ge:1mol%)のターゲットを用いて作成した拡散防止膜の結晶構造は、微結晶構造であった。図11に(Ge:1mol%)のターゲットを用いて作成した拡散防止膜のX線回折スペクトルを示す。ピークに対して(110)と(211)のミラー指数が指数付けされ、結晶系が立法晶(cubic)となっていることがおわかる。また、RBS分析により拡散防止膜の組成を分析するとGeが0.5mol%となっていることが確認された。
これらのTa−Ge系の拡散防止膜について、RBS分析により加熱後の酸化の程度を調査したところ、酸素の侵入はGe:3mol%の場合は拡散防止膜の表面から約80nmまでの範囲では見られず、Ge:1mol%の場合は表面から約140nmまでの範囲では見られなかった。したがって、Ta単体の拡散防止膜と比較して耐酸化性が改善されたことが認められる。なお、図12に(Ge:3mol%)、図13に(Ge:1mol%)のRBS分析の結果を示す。
(v)(Al:3mol%)のターゲットを用いて作成した拡散防止膜の結晶構造は、アモルファス構造であった。図14に(Al:3mol%)のターゲットを用いて作成した拡散防止膜のX線回折スペクトルを示す。また、RBS分析により拡散防止膜の組成を分析するとAlが1.3mol%となっていることが確認された。
(vi)(Al:1mol%)のターゲットを用いて作成した拡散防止膜の結晶構造は、微結晶構造であった。図15に(Al:1mol%)のターゲットを用いて作成した拡散防止膜のX線回折スペクトルを示す。ピークに対して(110)と(211)のミラー指数が指数付けされ、結晶系が立方晶(cubic)となっていることがわかる。また、RBS分析により拡散防止膜の組成を分析するとAlが0.4mol%となっていることが確認された。
これらのTa−Al系の拡散防止膜について、RBS分析により加熱後の酸化の程度を調査したところ、酸素の侵入はいずれも拡散防止膜の表面から約140nmまでの範囲では見られなかった。したがって、Ta単体の拡散防止膜と比較して耐酸化性が改善されたことが認められる。なお、図16に(Al:3mol%)、図17に(Al:1mol%)のRBS分析の結果を示す。
なお、Ta−Si系と同様に、GeやAlを含むターゲット材料(Ta−Ge系、Ta−Al系)も、Ta単体より抵抗率が高いので、水素化金属膜2の抵抗率変化に対する検出感度が向上する。
特に、拡散防止膜3として、Ta単体よりも、Taを主組成としてSi、Ge、Alを含有させたターゲット材料(Ta−Si系、Ta−Ge系、Ta−Al系)を使用することにより、拡散防止膜3の表面がより酸化されにくくなることによって、拡散防止膜3の酸化による劣化が抑制されるとともに、さらに拡散防止膜3の水素透過率が低下しにくくなるので、水素センサとしてより長寿命となる点で好ましい。また、拡散防止膜3の耐酸化性が向上することから、この拡散防止膜3上に形成する水素選択透過膜4の膜厚を薄くすることができる。これによって、成膜時間を短縮することができる。さらに、Ta単体に比して、拡散防止膜3の抵抗率が高くなるので、検出感度を向上することができる。
また、気化器203、改質器204、一酸化炭素除去器205、オフガス燃焼器208及び一方の水素センサ100Aは、断熱容器211の内部に配置され、一方の水素センサ100Aは、例えば、断熱容器211の内壁面に配設される。更に、この断熱容器211、燃料ポンプ202、空気ポンプ206、制御部207、燃料電池装置209、バルブ210,210,…、他方の水素センサ100Bは、発電装置の筐体212の内部に配置され、他方の水素センサ100Bは、筐体212の内壁面に配設される。
また、燃料電池装置209において生成された電気エネルギーは、図示しない配線を介することにより、上記電子機器の電源として利用される。
2CH3OH+H2O→5H2+CO+CO2 …(2)
2CO+O2→2CO2 …(3)
尚、水素センサ100は、本第二実施形態の発電装置200のように必ずしも複数備える必要はなく、断熱容器211又は筐体212の内部の何れかに配設するようにしてもよい。また、水素センサ100を、発電装置200において、水素ガスが流通する配管の内部に配設してもよい。この場合も、水素センサ100は、信号配線によって制御部207に接続され、水素センサ100において検出される電気特性値の一つとしての抵抗率に応じた出力信号を、出力する。更に、上記発電装置200を備える電子機器においては、上述の第二実施形態の発電装置において得られる効果を有することは言うまでもない。
2 水素化金属膜
3 拡散防止膜
4 水素選択透過膜
5 電極
100 水素センサ
200 発電装置
Claims (10)
- 組成中の水素含有量に応じて電気特性値が変化する材料により成膜された水素化金属膜と、前記水素化金属膜上に成膜されて水素を透過する水素選択透過膜と、を備えるとともに、前記水素化金属膜と前記水素選択透過膜との間に、前記水素化金属膜と前記水素選択透過膜との原子の相互拡散を防止する拡散防止膜を備え、前記水素化金属膜の電気特性値を測定することにより水素濃度を検出することを特徴とする水素センサ。
- 前記拡散防止膜は、Taを含むことを特徴とする請求項1に記載の水素センサ。
- 前記水素選択透過膜は、Pdを含むことを特徴とする請求項1に記載の水素センサ。
- 前記水素化金属膜は、Yを含むことを特徴とする請求項1に記載の水素センサ。
- 前記拡散防止膜は、Ta単体よりも耐酸化性が高い材料によって形成されることを特徴とする請求項1に記載の水素センサ。
- 前記拡散防止膜は、Ta1−xSix、Ta1−xGex、Ta1−xAlx(ただし、0<x≦0.2)のいずれか一種であることを特徴とする請求項1に記載の水素センサ。
- 前記拡散防止膜は、アモルファス構造であることを特徴とする請求項1に記載の水素センサ。
- 前記拡散防止膜は、体心立方格子構造の微結晶であることを特徴とする請求項1に記載の水素センサ。
- 請求項1に記載の水素センサと、電気化学反応により電気エネルギーを生成する燃料電池装置と、前記水素センサにおいて検出される電気特性値に応じた出力信号を出力する制御部と、を備えることを特徴とする発電装置。
- 請求項9に記載の発電装置を備え、前記発電装置において生成された電気エネルギーを電源として利用することを特徴とする電子機器。
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