JP2007331977A - 圧電体粒子及びその製造方法、並びに、成膜方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】パイロクロア相が低減され、且つ、粒径分布が狭いリラクサ成分を含有する鉛系の圧電体粒子の製造方法を提供する。
【解決手段】所定の組成比となるように原料を秤量する工程(a)と、工程(a)において秤量された原料を混合することにより、被熱処理物を用意する工程(b)と、該被熱処理物を鉛過剰の雰囲気において熱処理する工程(c)とを含む。
【選択図】図1

Description

本発明は、圧電アクチュエータや超音波トランスデューサ等に適用される圧電素子の材料である粒子状の圧電材料(圧電体粒子)及びその製造方法に関し、特に、リラクサ成分を含有する鉛系の圧電体粒子及びその製造方法に関する。また、本発明は、そのような圧電体粒子を材料として使用する成膜方法に関する。
従来より、電界を印加することにより伸縮したり、圧力を印加することにより電気分極を生じる圧電材料が広く利用されている。圧電材料の代表的な適用例としては、インクジェットヘッドにおけるアクチュエータや、超音波用探触子において超音波を送受信するトランスデューサ等が知られている。
圧電材料としては、PZT(チタン酸ジルコン酸鉛、PbTiO−PbZrO)に代表される圧電セラミックや、PVDF(ポリフッ化ビニリデン)に代表される高分子圧電材料等が挙げられる。その内でも、圧電定数や電気機械結合係数を含む特性の高さや、価格や、取り扱いの容易性等の観点から、現在ではPZTが最も普及している。
また、近年においては、リラクサ成分を含有する材料が注目されている。ここで、リラクサ(又は、リラクサ強誘電体とも呼ばれる)とは、広義には、誘電率の最大値を示す温度が周波数の上昇につれて高温側に移動し、同時に、誘電率の最大値が低下する性質(Dielectric relaxationと呼ばれる)を示す強誘電体材料のことを言う。また、狭義のリラクサとは、上記の性質を示す鉛を含む複合ペロブスカイト型化合物のことを指す。
ここで、複合ペロブスカイト型化合物とは、酸素によって形成されている複数の8面体が、頂点を共有して配列されている構造(頂点共有構造)を有する化合物のことであり、一般式はA(B',B'')Oによって表される。配列されている8個の8面体の中心付近(Aサイト)には、2価を取る元素が配置されている。また、各8面体の中心(B'及びB''サイト)には、価数の平均が4価となる2種類の元素が配置されている。例えば、B'及びB''サイトに、+2価を取る元素B'と、+5価を取る元素B''が1:2の割合で配置される場合(A(B'1/3,B''2/3)O)や、+3価を取る元素及び+5価を取る元素、又は、+2価を取る元素及び+6価を取る元素が1:1の割合で配置される場合(A(B'1/2,B''1/2)O)がある。
リラクサは、高い圧電効果を発現し、また、誘電率が非常に大きいことから、上記のような圧電素子の材料や、積層コンデンサの材料として有望視されている。
また、このようなリラクサの多くは、強誘電体であるPbTiOと混晶を形成することが知られている。
関連する技術として、非特許文献1には、リラクサPb(B',B'')Oの具体的組成や、各リラクサのキュリー温度や誘電率最大値等が記載されている(第6頁)。非特許文献1に開示されているように、例えば、チタン酸ジルコン酸鉛xPbTiO−yPbZrO(但し、x+y=1)に、リラクサ成分Pb(B',B'')Oを混合することによって得られた圧電材料においては、高い圧電特性が得られている。
ところで、アクチュエータやトランスデューサ等として使用される圧電素子を作製する方法としては、圧粉体を焼結して得られたバルク材から素子を切り出す方法や、グリーンシート法を用いて厚膜を形成する方法等が挙げられる。また、最近では、エアロゾルデポジション(AD)法と呼ばれる成膜方法も注目されている。AD法とは、原料の粉体をガス中に分散させたエアロゾルを生成し、それをノズルから基板に向けて噴射して原料の粉体を下層に衝突させることにより、原料を基板上に堆積させる成膜方法である。なお、AD法は、噴射堆積法又はガスデポジション法とも呼ばれる。
これらのいずれの方法においても、材料として粒子状の圧電材料(圧電体粒子)が用いられる。そのため、圧電素子において高い圧電性能を得るためには、高い圧電性能を発現し得る組成を有し、且つ、なるべく粒径が揃っている圧電体粒子を用いることが望ましい。特に、リラクサ成分を含有する圧電材料においては、組成が均一なペロブスカイト単相構造を有していることが望まれる。
ここで、ペロブスカイト型結晶構造を有する圧電材料は、通常、次のようにして作製される。例えば、PNN−PZT(zPb(Ni1/3,Nb2/3)O−yPbZrO−xPbTiO(但し、x+y+z=1))を作製する場合には、原料として、PbO、NiO、Nb、ZrO、及び、TiOの粉体をそれぞれ所定量だけ秤量し、それらの原料を、ボールミル等を用いて粉砕しながら混合し、例えば、850℃以上の温度で熱処理する。
しかしながら、このような方法によって作製された圧電材料には、所望のペロブスカイト相だけでなく、異相としてパイロクロア相(パイロクロア酸化物の相)も観察される。そして、パイロクロア相を含む圧電材料においては、圧電性能が低下することが知られている。
一般に、パイロクロア酸化物とは、一般式がAによって表される酸化物のことである。しかしながら、鉛系圧電体に不純物として出現するパイロクロア相は、Aの他に、A13や、A15や、A等の組成を有する場合があり、諸説複雑である。しかしながら、これらの何れの組成においても、X線回折による測定を行うと、メインピークが2.95Å≦d≦3.15Åに現れる。そこで、本願においては、X線回折測定によりメインピークが2.95Å≦d≦3.15Åに現れる酸化物のことをパイロクロア酸化物と称することとする。
パイロクロア相が低減された圧電材料を得るために、様々な工夫が検討されている。例えば、熱処理温度を1000℃以上にすることにより、圧電材料におけるパイロクロア相を低減できることが経験的に知られている。
また、特許文献1には、複合ペロブスカイト型化合物のPb(Ni1/3、Nb2/3)と単純ペロブスカイト型化合物のPbTiO及びPbZrOとを主成分とする圧電セラミックスにおいて、Pb(Ni1/3、Nb2/3)O、PbTiO及びPbZrOを頂点とする三角座標中、Pb(Ni1/3、Nb2/3)OをXモル%、PbTiOをYモル%、PbZrOをZモル%(但し、X+Y+Z=100)とした場合、組成(X=19、Y=44、Z=37)、組成(X=13、Y=44、Z=43)及び組成(X=13、Y=50、Z=37)を頂点とする三角形内の組成を主成分とする圧電セラミックスが開示されている(第1頁)。特許文献1には、PbOを過剰に添加することにより、ペロブスカイト相の収率が増加することが開示されている(第7頁、段落0019)。
さらに、非特許文献2には、コロンバイト相を介してペロブスカイト型化合物を合成する方法(コロンバイト法)を用いてPNN−PT−PZ(PbNi1/3Nb2/3−PbTiO−PbZrO)を作製することが開示されている。即ち、まず、NiO及びNbを熱処理することにより、コロンバイト相であるNiNbを作製し、そこに、PbO、ZrO、及び、TiOを混合してさらに熱処理する。そのようにして得られた粉体とバインダーとを混合し、成形及び焼成することにより、圧電体試料が得られる。非特許文献2においては、このように2回以上の熱処理を行うことにより、ペロブスカイト型結晶構造を得ている。
或いは、2回以上の熱処理を行う方法としては、上記のコロンバイト相にPbO以外の残りの原料を混合して熱処理し、その後で、PbOを混合して熱処理する方法や、全ての原料を最初から混合して熱処理することにより一旦パイロクロア相を生じさせ、それを再度加熱して均一化する方法も挙げられる。
一方、粒子状の圧電材料を作製する技術として、組成に含まれる成分のアルコキシドや錯体や塩等を用いる液相法や、液相法と固相法を組み合わせる方法が開示されている。具他的には、特許文献2には、水熱反応法により鉛含有複合酸化物を製造する方法において、鉛含有原料化合物を鉛含有複合酸化物の原料溶液の鉱化剤として作用させ、アルカリ金属水酸化物を添加することなく鉛含有複合酸化物を製造することが開示されている(第1頁)。
また、特許文献3には、組成が均一で特性のバラツキの少ない圧電体磁器材料粉末を、より低い温度で安全に製造するための方法が開示されている。この方法においては、チタン酸ジルコン酸鉛系圧電体磁器を組成する鉛以外の構成元素のアルコキシドを加水分解し、得られた単分散状複合酸化物の微粉末に鉛酸化物の粉末を添加混合して650℃以下の温度で熱処理する(第1頁)。
特開2005−112688号公報(第1頁) 特開平11−335122号公報(第1頁) 特開平5−306122号公報(第1頁) 「誘電体材料の特性と測定・評価及び応用技術」、技術情報協会、2001年、p.5−9 近藤(M. Kondo)、他、「PbNi1/3Nb2/3O3−PbTiO3−PbZrO3セラミックスの圧電特性(Piezoelectric Properties of PbNi1/3Nb2/3O3-PbTiO3-PbZrO3 Ceramics)、日本応用物理学会論文誌(Japan Journal of Applied Physics)、第36巻、第1部、第9B号、p.6043−6045、1997年9月
しかしながら、本願発明者が圧電体粒子を作製する実験を行ううちに、圧電体粒子を熱処理する際に、パイロクロア相を低減しようとして熱処理温度を上昇させると、圧電体粒子が粗大化してしまうことが明らかになった。しかしながら、このような圧電体粒子を焼結するためには、粒子を再度粉砕しなければならなくなるので、大きな手間が必要となる。また、粒径分布がブロードになるので、焼結性が低下してしまうという問題も生じている。
また、特許文献1に開示されているように、PbOを過剰に添加した場合にも、同様に粒が粗大化してしまうことが明らかになった。
さらに、非特許文献2に開示されているように、粒子に対して複数回熱処理を施す場合には、熱処理回数の増加に伴い粒度分布が多峰になったりブロードになってしまうので、所望の粒子径を得ることができないという問題が生じている。また、熱処理回数の増加に伴って工程も増えるので、製造コストが上昇してしまう。
加えて、特許文献2及び3に開示されているように、液相法を用いて圧電体粒子を作製することも考えられるが、リラクサ成分を含有する圧電材料は多くの元素を含むため、反応が均一に進まないおそれがある。そのため、組成が均一な粒子を作製することは困難である。
そこで、上記問題点に鑑み、本発明は、パイロクロア相が低減され、且つ、粒径分布が狭いリラクサ成分を含有する鉛系の圧電体粒子、及び、その製造方法、並びに、そのような圧電体粒子を材料として用いる成膜方法を提供することを目的とする。
上記課題を解決するため、本発明の1つの観点に係る圧電体粒子は、リラクサ成分を含有する鉛系の圧電体粒子において、粒子の変動係数が60%以下であり、X線回折によって得られるペロブスカイト相を表すメインピークの強度とパイロクロア相を表すメインピークの強度との和に対して、パイロクロア相を表すメインピークの強度が5%以下である。
また、本発明の1つの観点に係る圧電体粒子の製造方法は、リラクサ成分を含有する鉛系の圧電体粒子の製造方法において、所定の組成比となるように原料を秤量する工程(a)と、工程(a)において秤量された原料を混合することにより、被熱処理物を用意する工程(b)と、該被熱処理物を鉛過剰の雰囲気において熱処理する工程(c)とを具備する。
さらに、本発明の1つの観点に係る成膜方法は、リラクサ成分を含有する鉛系の圧電体粒子において、粒子の変動係数が60%以下であり、且つ、X線回折によって得られるペロブスカイト相を表すメインピークの強度とパイロクロア相を表すメインピークの強度との和に対して、パイロクロア相を表すメインピークの強度が5%以下である上記圧電体粒子をガス中に分散させることにより、エアロゾルを生成する工程(a)と、工程(a)において生成されたエアロゾルをノズルから基板に向けて噴射することにより、基板上に圧電体粒子を堆積させる工程(b)とを具備する。
本発明によれば、最終生成物と同じ組成を有する原料を鉛過剰の雰囲気において熱処理するので、被熱処理物が鉛不足及び鉛過剰の状態になるのを防いで、パイロクロア相と鉛との反応を適切に促進させることができる。それにより、粒子の粗大化を抑制しながら、パイロクロア相を低減させることができるので、結晶構造におけるパイロクロア相が5%以下で、且つ、粒度分布におけるCOVが60%以下の圧電体粒子を得ることが可能になる。また、そのような圧電体粒子を、エアロゾルを利用した成膜方法の材料に適用することにより、膜厚や膜質が均一で緻密度が高く、且つ、高い圧電性能を発現し得る圧電体膜を得ることが可能になる。
以下、本発明を実施するための最良の形態について、図面を参照しながら詳しく説明する。なお、同一の構成要素には同一の参照番号を付して、説明を省略する。
図1は、本発明の一実施形態に係る圧電体粒子の製造方法を示すフローチャートである。本実施形態に係る圧電体粒子の製造方法は、リラクサ成分を含有する鉛系の圧電体(圧電セラミックス)粒子の製造方法であり、この製造方法を用いることにより、粒子の変動係数が60%以下で、且つ、結晶構造におけるパイロクロア相の割合が5%以下である圧電体粒子が製造される。
ここで、リラクサ成分を含有する鉛系圧電セラミックスとは、鉛系圧電セラミックスとリラクサ成分との固溶体のことである。リサクサ成分は、組成式Pb(M 1/2,MII 1/2)O、若しくは、Pb(M 1/3,MII 2/3)Oによって表される複合ペロブスカイト型化合物(M及びMIIは、+4価以外の価数を取る金属カチオン)であり、鉛以外の価数は合計4価となる。例えば、Pb(Zn1/3,Nb2/3)Oの場合は、Znが+2価であり、Nbが+5価を取るので、2×(1/3)+5×(2/3)=4で、4価となっている。しかし、例えば、PbTiOや、PbZrOや、Pb(Zr1/2,Ti1/2)Oなどは、Zrが4価の金属カチオンとなるため、リラクサ成分には含まれない。
具体的なリサクサ成分としては、PCdN(Pb(Cd1/3Nb2/3)O)、PMN(Pb(Mg1/3Nb2/3)O)、PNN(Pb(Ni1/3Nb2/3)O)、PMnN(Pb(Mn1/3Nb2/3)O)、PCoN(Pb(Co1/3Nb2/3)O)、PMgT(Pb(Mg1/3Ta2/3)O)、PNT(Pb(Ni1/3Ta2/3)O)、PMnT(Pb(Mn1/3Ta2/3)O)、PCoT(Pb(Co1/3Ta2/3)O)、PYbN(Pb(Yb1/2Nb1/2)O)、PHoN(Pb(Ho1/2Nb1/2)O)、PLuN(Pb(Lu1/2Nb1/2)O)、PIN(Pb(In1/2Nb1/2)O)、PSN(Pb(Sc1/2Nb1/2)O)、PFN(Pb(Fe1/2Nb1/2)O)、PST(Pb(Sc1/2Ta1/2)O)、PFT(Pb(Fe1/2Ta1/2)O)、PCW(Pb(CD1/2Ta1/2)O)、PMnW(Pb(Mn1/21/2)O)、PZW(Pb(Zn1/21/2)O)、PMgW(Pb(Mg1/21/2)O)、PCoW(Pb(Co1/21/2)O)、PFW(Pb(Fw2/31/3)O)等が挙げられる。
例えば、リラクサ以外の成分がチタン酸ジルコン酸鉛(PZT:xPbTiO−yPbZrO(但し、x+y=1))である場合に、リラクサ成分を含有する鉛系圧電セラミックスは、次の組成式によって表される。
xPbTiO−yPbZrO−zPb(M,MII)O
ここで、x≧0、y≧0、z>0、且つ、x+y+z=1である。
具体的には、組成式PbNi0.167Nb0.333Zr0.15Ti0.35によって表される圧電材料PNN−PZTは、0.5Pb(Ni1/3,Nb2/3)O−0.15PbZrO−0.35PbTiOとも表され、リラクサ成分はPb(Ni1/3,Nb2/3)Oである。
また、リラクサ成分を含有する圧電材料には、1つ、又は、複数のリラクサ成分が含まれていても良い。例えば、組成式0.3Pb(Ni1/3,Nb2/3)O−0.2Pb(Zn1/3,Nb2/3)O−0.15PbZrO−0.35PbTiOによって表される圧電材料PNN−PZTは、Pb(Ni1/3,Nb2/3)O、及び、Pb(Zn1/3,Nb2/3)Oの2つのリサクサ成分を含んでいる。この場合には、2つのリラクサ成分の係数の合計がz=0.5となるから、x+y+z=1は満たされる。
なお、x及びyの内のいずれかは、ゼロあっても良い。例えば、組成式0.91Pb(Zn1/3,Nb2/3)O−0.09PbTiOによって表される圧電材料においては、x=0.09、y=0、z=0.91であるから、x+y+z=1は満たされる。反対にzはゼロを取らない。例えば、Pb(Zr0.52,Ti0.48)Oは、x=0.48,y=0.52,z=0であり、リラクサ系圧電材料ではない。
次に、本実施形態に係る圧電体粒子の製造方法を説明する。
まず、図1の工程S1において、粒子状の原料(例えば、上記PNN−PZTを作製する場合には、PbO、NiO、Nb、ZrO、及び、TiO)を秤量する。その際には、それらの原料の組成比を、必ずしも最終生成物であるPNN−PZTの組成と同一にする必要はなく、特定の原料(例えば、PbOやNiO)を過剰にしたり、過少にすることも可能である。しかし、PbOを過剰にすると粒子が粗大化するという問題が生じるので、なるべく最終生成物であるPNN−PZTの組成と同一にすることが好ましい。
次に、工程S2において、秤量された原料を粉砕しながら混合する。粉砕方式は、湿式でも乾式でも構わないが、均一に粉砕するためには、湿式粉砕を行うことが好ましい。ここで、原料が十分に粉砕されないと、反応が十分に進まなくなり、原料中の単成分が残存したり、パイロクロア相等の異相が生成されて、所望のペロブスカイト相が得られなくなるおそれがある。そのため、例えばボールミルを用いる場合には、10時間以上粉砕することが好ましく、更には、20時間以上粉砕することが好ましい。また、例えば、ボールミルやビーズミル等を用いることにより湿式粉砕を行う場合には、工程S3において、混合された原料をよく乾燥させる。
次に、工程S4において、混合された原料(被熱処理物)を鉛過剰の雰囲気において熱処理する。本実施形態においては、三重構造を有するルツボを用いて、被熱処理物と外気との間に鉛含有物質を配置することにより、被熱処理物の周囲に鉛過剰の雰囲気を形成している。
図2は、本実施形態において用いられる三重構造を有するルツボ(以下において、三重ルツボともいう)を示す断面図である。
図2に示すように、三重構造を有するルツボは、蓋12付きの小ルツボ11と、中ルツボ13と、蓋15付きの大ルツボ14とを含んでいる。小ルツボ11には、被熱処理物10が配置される。また、大ルツボ14には、鉛含有物質16と小ルツボ11とが配置される。中ルツボ13は、鉛含有物質16中に配置された小ルツボ11を覆うように、大ルツボ14内に配置されている。
このような三重ルツボの小ルツボ11に、工程S2において混合され、必要に応じて工程S3において乾燥された原料を配置し、蓋12を被せる。また、鉛含有物質16として、例えば、酸化鉛(PbO)を大ルツボ14に配置する。さらに、鉛含有物質16に浮かせるように小ルツボ11を配置し、それを中ルツボ12によって覆うことにより、被熱処理物10が配置された小ルツボ11を、中ルツボ13及び鉛含有物質16によって外気から遮断する。最後に、大ルツボ14に蓋15を被せる。
このように被熱処理物10が配置された三重ルツボを炉内に配置し、所定の時間、所定の温度で熱処理する。なお、鉛含有物質16によって大ルツボ14内(即ち、小ルツボ11の周囲)に鉛過剰の雰囲気が形成されるので、炉内の雰囲気は特に限定されない。従って、空気、酸素(O)、窒素(N)、アルゴン(Ar)、ヘリウム(He)、若しくは、水素(H)、又は、これらの混合ガス等、様々な気体を用いることができる。
それにより、パイロクロア相が低減された、リラクサ成分を含有する圧電体粒子が得られる。
ここで、このような三重ルツボを用いることにより、適切な熱処理が行われる理由を説明する。
リラクサ成分によって形成される圧電体の生成メカニズムは諸説あり、必ずしも定まっているわけではない。また、中間生成物であるパイロクロア成分についても、様々な組成が含まれる。しかしながら、リラクサ成分の一種であるPMN(Pb(Mg1/3Nb2/3)O)は、次の3段階の反応により合成されると考えられている。
3PbO+2Nb → PbNb13 …(1)
PbNb13+PbO → 2PbNb …(2)
PbNb+1/3MgO
→ Pb(Mg1/3Nb2/3)O+1/3PbNb13 …(3)
上記の反応式(1)〜(3)に示すPbNb13や2PbNbが、中間生成物であるパイロクロア相である。
ところが、PbOの融点は他の原料に比較すると低いので(約880℃)、熱処理中に揮発してしまい、被熱処理物は鉛不足に陥り易い。そして、PbOが不足すると、反応式(2)及び(3)に示す後段の反応が十分に進まず、結果として、最終生成物にパイロクロア相が残存してしまう。反対に、予め原料にPbOを過剰に添加しておくと、被熱処理物において焼結が進行してしまい、粒子が粗大化してしまう。
しかしながら、本実施形態において、原料は予め適切に秤量されているので、小ルツボ11内においてPbOが過剰になることはない。また、小ルツボ11の外部には鉛含有物質が配置されているので、原料中のPbOが揮発しても、小ルツボ11や蓋12を介して適量の鉛が供給される。さらに、中ルツボ13を設けることにより、小ルツボ11内への過剰な酸素の供給が抑制されるので、焼結が進行するのを防ぐことができる。このように、被熱処理物10が鉛不足及び鉛過剰の状態になるのを防ぐことにより、パイロクロア相とPbOとの反応を適切に促進させることが可能になる。
鉛含有物質16としては、金属鉛(Pb)や、鉛酸化物(PbO、Pb)や、硫化鉛(PbS)や、セレン化鉛(PbSe)や、ハロゲン化鉛(PbF、PbCl、PbBr、PbI)や、シュウ酸鉛(PbC)や、炭酸鉛(PbCO)や、硝酸鉛(Pb(NO)や、硫酸鉛(PbSO)や、カルボン酸鉛(Pb(CHCOO))等が用いられる。また、タンタル酸鉛(PbTa)等のように、他の金属との複合塩を用いても良い。さらに、チタン酸鉛(PbTiO)や、ジルコン酸鉛(PbZrO)や、それらの固溶体(Pb(Zr,Ti)O)を用いても良く、3成分系の圧電材料や、被熱処理物と同一組成を有する物質を用いても良い。なお、鉛含有物質と非鉛含有物質の混合物もこれに含まれる。
これらの内でも、コンタミネーションの混入を防止するという観点からは、金属鉛(Pb)や、鉛酸化物(PbO、Pb)や、チタン酸鉛(PbTiO)や、ジルコン酸鉛(PbZrO)や、それらの固溶体(Pb(Zr,Ti)O)のように、被熱処理物と同一組成を有する物質、又は、被熱処理物の構成元素に含まれる物質群を用いることが好ましい。また、鉛含有物質16の量については特に限定されないが、量が少ない場合には効果が少なくなり、反対に、量が多すぎる場合にはコストアップに繋がってしまう。そのため、鉛含有物質16の好ましい重量は、被熱処理物の重量に対して、1/100倍〜1000倍程度であり、より好ましくは1/50倍〜500倍程度であり、更に好ましくは、1/10倍〜100倍程度である。
次に、図1の工程S4において使用される容器の例を、図3〜図5を参照しながら説明する。
図3は、原料が配置される容器として、石英管21を用いる例を示している。この場合には、石英管21に被熱処理物10を配置し、その両側に、仕切りとして石英ウール22を配置する。さらに、石英ウール22の外側に、PbO等の鉛含有物質23を配置し、さらに、蓋として石英ウール24を配置する。
このように被熱処理物10が配置された石英管21を熱処理することにより、石英ウール22の外側が鉛過剰の雰囲気になり、石英ウール22を介して被熱処理物10に適量の鉛が供給される。
図4は、原料が配置される容器として、蓋32付きのルツボ31を用いる例を示している。この場合には、まず、ルツボ31に被熱処理物10を配置し、その上に、仕切りとして石英ウール33を配置する。さらに、その上に、PbO等の鉛含有物質34を配置する。
このように被熱処理物10が配置されたルツボ31を熱処理することにより、石英ウール33の上部が鉛過剰の雰囲気になり、石英ウール33を介して被熱処理物10に適量の鉛が供給される。
図5は、原料が配置される容器として、蓋42付きのルツボ41を用いる別の例を示している。この場合には、まず、ルツボ41にPbO等の鉛含有物質43を配置する。そして、仕切りとして石英ウール44を配置し、その上に、被熱処理物10を配置し、仕切りとして石英ウール45を配置する。さらに、その上に、PbO等の鉛含有物質46を配置する。
このように被熱処理物10が配置されたルツボを熱処理することにより、石英ウール44の下部及び石英ウール45の上部が鉛過剰の雰囲気になり、石英ウール44及び45を介して被熱処理物10に適量の鉛が供給される。
図3〜図5に示すいずれの容器を用いる場合にも、被熱処理物10が鉛不足及び鉛過剰の状態に陥るのを防ぎ、また、外部からの過剰な酸素の供給を遮断することができるので、焼結の進行を抑制しつつ、パイロクロア相とPbOとの反応を促進させることが可能になる。
(実施例)
本実施形態に係るリラクサ成分を含有する圧電体粒子の製造方法を用いて作製された試料と、比較のために作製された試料とについて特性を測定した。
I.試料の作製
(1)実施例1
原料として、フルウチ化学株式会社製の粉体PbO、NiO、Nb、ZrO、TiO(全て純度99.99%)を、組成比が0.5Pb(Ni1/3,Nb2/3)O−0.15PbZrO−0.35PbTiOを満たすように秤量した。これらの原料を混合し、直径が1mmのジルコニアビーズを用いてエタノール中において20時間粉砕混合した。次に、ロータリーエバポレータを用いて、混合された原料からエタノールを蒸発させることにより、原料を乾燥させた。それによって得られた粉体を、図2に示す三重ルツボ11に充填した。一方、図2に示す大ルツボ14に、鉛含有物質16として酸化鉛(PbO)を配置し、そこに、原料が配置された小ルツボ11を配置し、中ルツボ13を被せて蓋15を閉じた。このような三重ルツボを炉内に配置し、850℃で6時間熱処理を行った。
(2)実施例2
実施例1と同様に原料を秤量し、それらを混合し、さらに、乾燥させた。それによって得られた粉体を図3に示す石英管21内に配置し、石英ウール22と、鉛含有物質23として酸化鉛(PbO)と、石英ウール24とを、この順に配置した。このような石英管を炉内に配置し、850℃で6時間熱処理を行った。
(3)比較例1
実施例1と同様に原料を秤量し、それらを混合し、さらに、乾燥させた。それによって得られた粉体を一般的なルツボに配置し、大気雰囲気中において850℃で6時間熱処理した。
(4)比較例2
実施例1と同様に原料を秤量した。ただし、その内の酸化鉛(PbO)については、作製目標とする生成物の組成中のPb量に対して5mol%過剰になるように増加させた。それらの原料を、実施例1と同様に混合し、さらに、乾燥させた。それによって得られた粉体を一般的なルツボに配置し、大気雰囲気中において850℃で6時間熱処理した。
(5)比較例3
実施例1と同様に、原料を秤量し、それらを混合し、さらに、乾燥させた。それによって得られた粉体を一般的なルツボに配置し、大気雰囲気中において1000℃で6時間熱処理した。
(6)比較例4
原料として、フルウチ化学株式会社製の粉体NiO、Nb、ZrO、TiO(全て純度99.99%)を、Pbを除く組成比が0.5Pb(Ni1/3,Nb2/3)O−0.15PbZrO−0.35PbTiOを満たすように秤量した。これらの原料を混合し、実施例1と同様に混合し、さらに、乾燥させた。それによって得られた粉体を一般的なルツボに配置し、大気雰囲気中において850℃で6時間熱処理した。次に、それによって得られた被熱処理物とPbOとを、組成比が0.5Pb(Ni1/3,Nb2/3)O−0.15PbZrO−0.35PbTiOを満たすように秤量し、それらを混合し、さらに、乾燥させた。それによって得られた粉体を、一般的なルツボに配置し、 雰囲気中において850℃で6時間熱処理した。
II.試料の評価方法
(1)粒度分布
作製された試料を0.1重量%のヘキサメタリン酸ナトリウム水溶液中に分散させ、日機装株式会社製のマイクロトラック粒度分布測定装置MT3000を用いることにより、各試料の粒度分布、並びに、次の体積平均粒子径MV及び標準偏差SDを測定した。
体積平均粒子径:MV=(V×d+V×d+…+V×d+…+V×d
/(V+V+…+V+…+V
=Σ(V×d)/Σ(V) …(i)
標準偏差:SD=(d(84%)−d(16%))/2 …(ii)
式(i)において、Vは各粒子の体積を示しており、dは各粒子の径を示している。また、式(ii)において、d(84%)は、粒径分布の累積曲線が84%となる点の粒径であり、d(16%)は、粒径分布の累積曲線が16%となる点の粒径である。
(2)変動係数(cov)
変動係数とは、実質的なデータのばらつきを評価する尺度である。具体的には、上式(i)及び(ii)に基づいて、次式(iii)により変動係数covが算出される。
変動係数:cov=SD/MV …(iii)
(3)パイロクロア相の割合
一般的な粉末XRD回折装置を用いることにより、ペロブスカイト相を表すメインピークの強度I及びパイロクロア相を表すメインピークの強度Iを測定し、それらの値に基づいて、次式(iv)によりパイロクロア相の割合を算出した。
強度I:ペロブスカイト相のメインピークを表すd=2.8Å〜2.9Åの間に存在するピーク強度からバックグラウンド強度を差し引いた値
強度I:パイロクロア相のメインピークを表すd=3.0Å〜3.1Åの間に存在するピーク強度からバックグラウンド強度を差し引いた値
パイロクロア相の割合(%)={I/(I+I)}×100 …(iv)
III.結果
実施例1及び2並びに比較例1〜4の試料について上記測定を行うことにより、図6に示す結果が得られた。
IV.評価
実施例1及び2においては、パイロクロア相の割合が5%以下、さらには、3〜4%と低くなっていた。また、平均粒子径は2μm付近であり、変動係数が60%と比較的バラツキが小さい。このような平均粒子径及び変動係数を有する粒子は、グリーンシート法やAD法等における成膜材料として十分に使用することができる。
一方、比較例1に関し、平均粒子径及び変動係数については、実施例1及び2と同程度の値が得られている。しかしながら、パイロクロア相の割合は実施例の4倍近い値に上昇してしまった。これは、通常の熱処理を行ったために、被熱処理物が鉛不足の状態に陥り、パイロクロア相とPbOとの反応が進まなかったためと考えられる。なお、このような粒子を成膜材料として用いると、見かけ上は状態の良い圧電体膜を形成できるが、実際に高い圧電性能を発現させることは困難である。
また、比較例2に関し、パイロクロア相の割合については、良好な値(2%)が得られているが、平均粒子径及び変動係数covについては、実施例1及び2の2倍近い値に上昇してしまった。これは、原料に直接PbOを過剰に添加したことにより、パイロクロア相とPbOとの反応は進んだが、それと同時に、焼結も進行してしまったためと考えられる。なお、このような粒子を成膜材料として用いると、膜厚や膜質が均一な膜を形成することが困難になる。特に、AD法においては、粒子径のバラツキが大きい場合には緻密な膜を形成し難くなるので、各粒子が高い圧電特性を有しているとしても、圧電体膜全体として高い圧電性能を発現させることは困難である。
比較例3及び4に関し、パイロクロア相は確認されなかったが、一方で、平均粒子径は実施例の5倍以上、変動係数covは実施例の2〜3倍以上に上昇してしまった。このような粒子は、各粒子が高い圧電性能を有しているとしても、そのままでは、AD法等の成膜材料として使用することはできない。
以上説明したように、本実施形態によれば、最終生成物と同様の組成を有する原料を用意し、そのような原料を、外気との間に過剰の鉛(Pb)を配置した状態で熱処理するので、パイロクロア相が低減され、且つ、粒径分布が比較的狭い、リラクサ成分を含有する圧電体粒子を得ることが可能になる。従って、そのような圧電体粒子をそのまま成膜材料として用いることにより、膜厚や膜質が均一で、且つ、高い圧電性能を発現し得る良質な圧電体膜を作製することが可能になる。
次に、本実施形態に係る圧電体粒子を成膜材料として用いる成膜方法について、図7を参照しながら説明する。図7は、エアロゾルデポジション(AD)法による成膜装置を示す模式図である。
図7に示すように、この成膜装置は、エアロゾル生成室1と、エアロゾル生成室1に配置されている巻き上げガスノズル2、圧調整ガスノズル3、及び、エアロゾル搬送管4と、成膜チャンバ5と、排気ポンプ6と、噴射ノズル7と、基板ホルダ8とを含んでいる。
エアロゾル生成室1は、原料粉が配置される容器である。エアロゾル生成室1には、エアロゾル生成室1に振動等を与えることにより、その内部に配置された原料粉を攪拌するための容器駆動部1aが設けられている。
エアロゾル生成室1に配置されている巻き上げガスノズル2には、キャリアガスを供給するためのガスボンベが接続されている。巻き上げガスノズル2は、ガスボンベから供給されたガスをエアロゾル生成室1内に噴射することにより、サイクロン流を生成する。それにより、エアロゾル生成室1内に配置された原料粉が巻き上げられて分散し、エアロゾルが生成される。
一方、圧調整ガスノズル3には、エアロゾル生成室1内のガス圧を調整するための圧調整ガスを供給するガスボンベが接続されている。圧調整ガスの流量を調節してエアロゾル生成室1内の圧力を制御することにより、エアロゾル生成室1内に発生する気流(巻き上げガス)の速度が制御される。
キャリアガス及び圧調整ガスとしては、窒素(N)、酸素(O)、ヘリウム(He)、アルゴン(Ar)、又は、乾燥空気等が用いられる。
エアロゾル生成室1に配置されているエアロゾル搬送管4は、エアロゾル生成室1内において巻き上げられた原料粉を含むエアロゾルを、成膜チャンバ5に配置されているノズル7に搬送する。
成膜チャンバ5の内部は、排気ポンプ6によって排気されており、それによって所定の真空度に保たれている。
噴射ノズル7は、所定の形状及び大きさの開口を有しており、エアロゾル生成室1からエアロゾル搬送管4を介して供給されたエアロゾルを、開口から基板9に向けて高速で噴射する。
基板ホルダ8には、基板ホルダ8を3次元的に移動させるための基板ホルダ駆動部8aが設けられている。これにより、噴射ノズル7と基板9との3次元的な相対位置及び相対速度が制御される。この相対速度を制御することにより、1往復あたりに形成される膜の厚さが制御される。
このような成膜装置において、原料の粉体をエアロゾル生成室1に配置すると共に、基板9を基板ホルダ8にセットして所定の成膜温度に保つ。そして、成膜装置を駆動して噴射ノズル7からエアロゾルを噴射させながら、基板9を所定の速度で移動させる。それにより、原料の粉体が基板9や基板9上に先に堆積した構造物に衝突し、この衝突の際に粉体が変形又は破砕することによって生じた活性な新生面において粒子同士が結合する。そのようにして基板上に膜が形成される。
このようなAD法による成膜装置においては、一般に、径が0.1μm〜10μm程度の粒子が用いられる。従って、本発明の一実施形態に係る圧電体粒子は、AD法の成膜材料として、適切な粒子径を有している。また、AD法においては、粒子径の変動係数が小さいほど緻密で均質な膜を形成できるが、その点についても、本実施形態に係る圧電体粒子は変動係数が60%以下であるので、適切な成膜材料である。
なお、図7においては、容器に配置された原料の粉体をガスによって巻き上げることによりエアロゾルを生成しているが、エアロゾル生成部の機構はこのような構成に限定されない。即ち、原料粉がガス中に分散している状態を生成することができれば、様々な構成を用いることができる。例えば、原料粉を収納している容器(収納容器)にガスを導入するのではなく、収納容器から所定量の原料粉を取り出し、取り出された原料粉についてこれをエアロゾル化する構成としても良い。具体的には、原料粉の収納容器と、回転駆動することにより収納容器から所定の供給速度で連続的に原料粉の供給を受けてこれを搬送する原料粉供給部と、原料粉供給部によって搬送された原料粉をガスによって分散させることによりエアロゾルを生成するエアロゾル生成部とを含む構成が挙げられる。このような構成においては、原料粉供給部に、原料粉が投入される所定の幅の溝を形成することにより、安定した量の原料粉を供給することができると共に、原料粉供給部を回転駆動する速度を調整することにより、原料粉の供給量を制御することができる。そして、原料粉の搬送先においてガスを導入することにより原料粉を分散させたり、粉末供給盤の溝に直接キャリアガスを吹き付けることにより、濃度の安定したエアロゾルを生成することができる。
また、原料粉の収納容器において原料粉を攪拌し、この収納容器に圧縮ガスを導入することにより圧縮ガスと混合された所定量の原料粉を収納容器から取り出し、これを細径の穴から外部に排出することにより、圧縮ガスの膨張を利用して原料粉を分散させる構成も挙げられる。さらに、キャリアガスの流路に原料粉を連続的に供給することにより原料粉をキャリアガスに分散させる構成を用いても良い。
本発明は、圧電アクチュエータや超音波トランスデューサ等に適用される圧電素子を作製する材料となる圧電体粒子及びその製造方法において利用することが可能である。
本発明の一実施形態に係る圧電体粒子の製造方法を示すフローチャートである。 混合された原料を熱処理する際に用いられる三重ルツボの構造を示す断面図である。 被熱処理物が充填された石英管を示す断面図である。 被熱処理物が充填されたルツボを示す断面図である。 被熱処理物が充填された別のルツボを示す断面図である。 実施例1及び2並びに比較例1〜4の試料に関する測定結果を示す表である。 AD法による成膜装置を示す模式図である。
符号の説明
1 エアロゾル生成室
2 巻き上げガスノズル
3 圧調整ガスノズル
4 エアロゾル搬送管
5 成膜チャンバ
6 排気ポンプ
7 噴射ノズル
8 基板ホルダ
9 基板
10 被熱処理物
11 小ルツボ
12、15、32、42 蓋
13 中ルツボ
14 大ルツボ
16、23、34、43、46 鉛含有物質
21 石英管
22、24、33、44、45 石英ウール
31、41 ルツボ

Claims (7)

  1. リラクサ成分を含有する鉛系の圧電体粒子において、
    粒子の変動係数が60%以下であり、
    X線回折によって得られるペロブスカイト相を表すメインピークの強度とパイロクロア相を表すメインピークの強度との和に対して、パイロクロア相を表すメインピークの強度が5%以下である、
    圧電体粒子。
  2. リラクサ成分を含有する鉛系の圧電体粒子の製造方法において、
    所定の組成比となるように原料を秤量する工程(a)と、
    工程(a)において秤量された原料を混合することにより、被熱処理物を用意する工程(b)と、
    前記被熱処理物を、鉛過剰の雰囲気において熱処理する工程(c)と、
    を具備する圧電体粒子の製造方法。
  3. 工程(c)が、前記被熱処理物と外気との間に鉛を含有する物質を配置した状態で、前記被熱処理物を熱処理することを含む、請求項2記載の圧電体粒子の製造方法。
  4. 工程(c)が、前記被熱処理物が配置される第1のルツボと、該第1のルツボを覆うように配置される第2のルツボと、該第1及び第2のルツボ並びに前記鉛を含有する物質が配置される第3のルツボとを含む3重構造のルツボを用いることにより、鉛過剰の雰囲気を形成することを含む、請求項2又は3記載の圧電体粒子の製造方法。
  5. 工程(c)が、容器に前記被熱処理物を配置し、仕切りを介して前記被熱処理物を覆うように、又は、仕切りを介して前記被熱処理物を挟むように鉛を含有する物質を配置することにより、鉛過剰の雰囲気を形成することを含む、請求項2又は3記載の圧電体粒子の製造方法。
  6. 前記鉛を含有する物質が、前記被熱処理物の一部又は全部と同じ組成を有する、請求項3〜5のいずれか1項記載の圧電体粒子の製造方法。
  7. リラクサ成分を含有する鉛系の圧電体粒子において、粒子の変動係数が60%以下であり、且つ、X線回折によって得られるペロブスカイト相を表すメインピークの強度とパイロクロア相を表すメインピークの強度との和に対して、パイロクロア相を表すメインピークの強度が5%以下である前記圧電体粒子をガス中に分散させることにより、エアロゾルを生成する工程(a)と、
    工程(a)において生成されたエアロゾルをノズルから基板に向けて噴射することにより、基板上に圧電体粒子を堆積させる工程(b)と、
    を具備する成膜方法。
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