JP5679694B2 - 圧電材料 - Google Patents

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本発明は、圧電材料に関し、特に鉛を含有しない圧電材料に関する。
圧電材料は、アクチュエータ、超音波振動子、マイクロ電源、高圧電発生装置等の用途で、幅広く利用されている。これらに使用されている圧電体の多くは、いわゆるPZTと呼称されている材料で、鉛(Pb)、ジルコニウム(Zr)、チタン(Ti)を含む酸化物である。そのため、環境上の問題から、非鉛圧電材料の開発が進められている。
非鉛圧電材料としては、例えば一般式BaM’Oで表されるBa系ペロブスカイト酸化物がある。但しM’は、1種類の元素または2種類以上の元素がある組成比で混晶されたものを表すが、一般式BaM’Oの電荷が中性になることを満足する必要がある。BaM’Oで表される圧電材料としては、例えば室温付近で正方晶の構造をとるBaTiOがある。
一方、より大きな圧電定数の値を得るための方法として、例えば正方晶BaTiOのTiの一部をイオン半径の異なる元素M’’で置換する方法がある。この一般式はBaTi1−xM’’と表される。
一般に、互いに異なる結晶構造の2種類の圧電材料を固溶させると、その結晶相境界(MPB)領域付近において圧電定数の絶対値が正の無限大に発散することが知られている。この知見を鑑みると、もしBaTi1−xM’’の圧電定数の値が正方晶BaTiOの圧電定数の値よりも大きな値をとるならば、BaTi1−xM’’は、正方晶BaTiOと例えば菱面体晶などの非正方晶BaM’’Oとが固溶し、MPB領域に近づいた圧電材料であると説明することも出来る。
MPB領域を形成するためには、まず異なる結晶構造の2種類の圧電材料を選択し、次にこれら2種類の圧電材料を固溶させることが重要である。実際、前記PZTも、MPB領域付近で大きな圧電特性を得ているPb系ペロブスカイト酸化物圧電材料である。PZTの一般式はPbZr1−xTiであり、正方晶PbTiOと、菱面体晶の構造をとるPbZrOという2種類の圧電材料を固溶させたものである(特許文献1)。
以上の知見を鑑みると、BaM’Oで大きな値の圧電定数を得るためには、例えば正方晶BaTiOと菱面体晶などの非正方晶BaM’’Oとを固溶させ、MPB領域に近づいた圧電材料を形成することが必要である。
特開2008−094707号公報
しかしながら、BaTiOよりも大きな圧電定数の値を有する圧電材料BaTi1−xM’’はこれまで報告されておらず、前記特許文献1においても記載されていない。
一方、BaTiOの正方晶から立方晶への構造相転移を起こし圧電特性が消失する温
度(以下、キュリー温度と呼びTと記す。)は、約140℃である。圧電アクチュエータ等の圧電材料を用いたデバイスにおいては、例えば−20℃程度から80℃程度までの温度領域で安定な圧電特性を維持する必要がある。従って、約140℃というBaTiOのキュリー温度は、十分な温度とは言い難い。
さらに、Ba系圧電ペロブスカイト酸化物において、正方晶構造をとるのはBaTiO等ごく一部の材料に限られている。
以上を鑑みると、BaTiOよりもTの高い正方晶圧電材料を提供することが必要である。
本発明は、BaTiOと同程度のキュリー温度を有し、BaTiOよりも大きな圧電定数の値を有する圧電材料を提供することである。
また、本発明は、BaTiOと同程度以上の圧電定数の値を有し、BaTiOよりもキュリー温度が高い圧電材料を提供することである。
上記課題を解決する圧電材料は、下記一般式(1)
Figure 0005679694
(式中、Aはストロンチウム(Sr)及びカルシウム(Ca)のうち少なくとも1種類の元素、Niは原子価が4価であるニッケル(Ni)を示す。xは0<x≦0.05、yは0≦y≦1である。)
で表されるペロブスカイト型酸化物からなり、かつ下記数式(1)で表される寛容因子(tolerance factor)tが1.01<t≦1.15であることを特徴とする。
Figure 0005679694
(式中、A’はBa1−yを表し、M’はTi1−xNiを表す。rA’、rM’及びrはそれぞれA’、M’及びOのイオン半径を表す。各構成元素のイオン半径はシャノン(Shannon)のイオン半径により定義され、Ba1−y及びTi1−xNiイオンのイオン半径は、それぞれ組成比y及びxで平均化された値で定義する。)
上記課題を解決する圧電材料は、下記一般式(1)
Figure 0005679694
(式中、Aはストロンチウム(Sr)及びカルシウム(Ca)のうち少なくとも1種類の元素、Niは原子価が4価であるニッケル(Ni)を示す。xは0.5≦x<1、yは0≦y≦1である。)
で表されるペロブスカイト型酸化物からなり、かつ下記数式(1)で表される寛容因子(tolerance factor)tが1.01<t≦1.15であることを特徴とする。
Figure 0005679694
(式中、A’はBa1−yを表し、M’はTi1−xNiを表す。rA’、rM’及びrはそれぞれA’、M’及びOのイオン半径を表す。各構成元素のイオン半径はシャノン(Shannon)のイオン半径により定義され、Ba1−y及びTi1−xNiイオンのイオン半径は、それぞれ組成比y及びxで平均化された値で定義する。)
本発明によれば、BaTiOと同程度のキュリー温度を有し、BaTiOよりも大きな圧電定数の値を有する圧電材料を提供することが出来る。
また、本発明は、BaTiOと同程度以上の圧電定数の値を有し、BaTiOよりもキュリー温度が高い圧電材料を提供することが出来る。
正方晶Ba1−ySrTi1−xNi及びBa1−yCaTi1−xNiのd33及びd31圧電定数の値とxとの関係を示した図である。 正方晶BaTi1−xNiのc/aの値とxとの関係を示した図である。 正方晶BaTi1−xNi、Ba1−ySrTi0.25Ni0.75及びBa1−yCaTi0.25Ni0.75の、c/aの値をtの関数として示した図である。
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
本発明に係る圧電材料は、下記一般式(1)
Figure 0005679694
(式中、Aはストロンチウム(Sr)及びカルシウム(Ca)のうち少なくとも1種類の元素、Niは原子価が4価であるニッケル(Ni)を示す。xは0<x≦0.05または0.5<x<1、yは0≦y≦1である。)
で表されるペロブスカイト型酸化物からなり、かつ下記数式(1)で表される寛容因子(tolerance factor)tが1.01<t≦1.15であることを特徴とする。
Figure 0005679694
数式1中において、A’はBa1−yを表し、M’はTi1−xNiを表す。rA’、rM’及びrはそれぞれA’、M’及びOのイオン半径を表す。Ba1−y及びTi1−xNiイオンのイオン半径は、それぞれ組成比y及びxで平均化された値で定義する。各構成元素のイオン半径は、改めて計算する必要はなく、ほとんどの元素について既に数種類の値が求められているが、シャノン(Shannon)のイオン半径と呼ばれる値が広く一般に用いられている。本発明では、Shannonのイオン半径によりtの値を定義する。
tはA’M’Oの結晶構造と密接な関連があるパラメータとして知られている。以下、A’M’Oの結晶構造とtの値との関係について、一般的な説明を行う。t=1の場合は、A’M’Oは最密充填となり、立方晶構造を取りやすくなる。
t<1の場合は、A’イオンに対してM’イオンが大きくなり、結晶格子が歪まなければM’イオンは結晶格子内に入らなくなる。従って、斜方晶や菱面体晶等の立方晶よりも格子が歪んだ構造を取りやすくなる。
t>1の場合は、A’イオンに対してM’イオンが小さくなり、M’イオンは結晶格子内で比較的自由に動くことが可能となる。従って、正方晶等の構造を取りやすくなる。例えば、BaTiOはt=1.062とt>1であり、室温では正方晶構造が最安定となる。
さらにt>>1の場合は、A’イオンに対してM’イオンは極端に小さくなり、M’は結晶格子を支えられなくなる。この場合、六方晶の構造を取る場合がある。例えば、BaNiOはt=1.132とt>>1であり、六方晶構造が最安定となる。
したがって、tが1.01<t≦1.15の範囲では、正方晶、六方晶、または正方晶と六方晶が混合した結晶相の、いずれかの構造をとるペロブスカイト型酸化物となる。
本発明の圧電材料は、0<x≦0.05、好ましくは0<x≦0.025で正方晶構造を有することが好ましい。
また、本発明の圧電材料は、0.5≦x<1、好ましくは0.5<x≦0.75で正方晶構造領域を有し、該正方晶構造の格子定数a及びc(但し、c>aである。)の比c/aの値が、1.022を越える値であることが好ましい。
本発明の上記一般式(1)で表されるペロブスカイト型酸化物は、M’イオンとして、Tiイオンの一部をイオン半径がより小さいNiイオンで置換することにより、BaTiOよりも大きな圧電定数の値の正方晶構造をとる領域を有する。
また、本発明の上記一般式(1)で表されるペロブスカイト型酸化物は、M’イオンとして、Tiイオンの一部をイオン半径がより小さいNiイオンで置換することにより、BaTiOのc/a(=1.022)よりも大きなc/a値の正方晶構造をとる領域を有する。但し、a及びcは、正方晶構造のa軸及びc軸方向の格子定数を、それぞれ意味する。また、c/aが大きな圧電A’M’Oほど、そのTが大きくなることは、一般的によく知られている。
上記のように、本発明の圧電材料は、正方晶構造の領域を有するものである。該正方晶領域は、xの値が0<x≦0.05または0.5≦x<1に存在する。
以下、本発明の実施例について、図表を参照して詳細に説明する。
(実施例1)
実施例1として、一般式(1)において、正方晶Ba1−yTi1−xNi(0<x≦0.05)からなる圧電材料に関する実施形態を、図1及び図2に基づいて説明する。
本実施例における圧電体材料の組成式は、Ba1−yTi1−xNi(0<x≦0.05、且つ0≦y≦1)のように表される。ここでAは、Sr及びCaのうち少なくとも1種類の元素により形成される。
本実施例は、第一原理計算と呼ばれる電子状態計算のシミュレーション結果に基づくものである。まず、電子状態計算シミュレーションの概要について、以下に説明を行う。
第一原理計算とはフィッティングパラメータ等を一切使用しない電子状態計算手法の総称であり、単位格子や分子等を構成する各原子の原子番号と座標を入力するだけで、電子状態計算が可能な手法である。
第一原理計算手法の一つとして、擬ポテンシャル法と呼ばれる計算手法がある。この手法は、単位格子等を構成する各原子のポテンシャルを予め用意し電子状態計算を行う方法であり、構造最適化の計算も可能であるという利点を有している。
また、任意の組成比の原子を含む系の電子状態計算は、仮想結晶近似(Virtual
Crystal Approximation:VCA)と呼ばれる手法により、比較的簡単に且つ高精度に求めることが出来る。このVCAは、複数の原子をある組成比で混合した仮想原子のポテンシャルを予め用意し電子状態計算を行う方法である。従って、VCAを用いた擬ポテンシャル法により電子状態計算を行えば、任意の組成比の原子を含む系の最安定構造での電子状態を計算することが可能となる。
このVCAを用いた擬ポテンシャル法の第一原理計算パッケージプログラムとして、コーネル(Cornell)大学のコンズ(X.Gonze)教授が中心となって開発した、「ABINIT」と呼ばれるパッケージプログラムがある。本実施形態で示す電子状態
計算結果は、全て「ABINIT」を用いて行った結果である。
次に、「ABINIT」によるBa1−yTi1−xNiの全エネルギーの計算方法、最安定構造の決定方法、及び圧電定数の計算方法について、以下に概要を説明する。
正方晶のBa1−yTi1−xNiの安定構造を求めるには、然るべき正方晶構造を初期構造として用意し、構造最適化を含む電子状態計算を行えばよい。但し、Ba1−y及びTi1−xNiには前記VCAを適用する。係る電子状態計算から求めた安定構造の格子定数a及びcから、c/aの値を評価をすることが出来る。
さらに上記構造最適化で求めた安定構造を初期構造とし、格子の微小歪みを強制的に加え、その際の全エネルギーの微小変化から、圧電e定数及び弾性コンプライアンス等を計算することが出来る。これらの値を用いて、圧電d定数も導出することが出来る。
図1は、上記一般式(1)に対応する正方晶BaTi1−xNi、Ba0.75Sr0.25Ti1−xNi及びBa0.8Ca0.2Ti1−xNiの圧電定数であるd33及びd31を値を、xの関数として示したものである。これらの圧電定数は、前記第一原理計算プログラム「ABINIT」により求めた計算結果である。いずれの圧電材料においても、圧電定数の絶対値は、0<x≦0.05付近で増大し、0.5≦x<1付近で減少する。即ち、0.05<x<0.5のある組成比xに向かい、圧電定数の絶対値が正の無限大に発散する。圧電定数の絶対値が発散するのは、MPBが存在する際の大きな特徴であり、図1の圧電定数の計算結果から、0.05<x<0.5のある組成比x付近にMPB領域が存在することが推測される。
図2は、正方晶BaTi1−xNi、Ba0.75Sr0.25Ti1−xNi及びBa0.8Ca0.2Ti1−xNiにおけるc/aの値とxとの関係を示したものである。いずれの圧電材料においても、概ね0.05<x<0.5において、c/aの値は1.0になる。MPB領域が存在する場合、正方晶構造のc/aの値が概ね1となる領域がMPB領域となることは、一般によく知られている。即ち、図2の結果からも、前記圧電材料のいずれにおいても、0.05<x<0.5のある組成比x付近にMPB領域が存在することが推測される。
以上の知見を鑑みると、上記正方晶圧電材料のいずれにおいても、0<x≦0.05付近で圧電定数の絶対値が増大するのは、それぞれ正方晶BaTiO、Ba0.75Sr0.25TiO及びBa0.8Ca0.2TiOよりも組成比がMPB領域に近づいた圧電材料であるためである、と説明出来る。
図1より、BaTi1−xNiの概ね0<x≦0.05または0.5≦x<0.6において、Ba0.75Sr0.25Ti1−xNiの概ね0<x<0.05または0.5<x<0.65において、Ba0.8Ca0.2Ti1−xNiの概ね0<x≦0.05または0.5<x<0.65においては、d33及びd31の絶対値が、BaTiOのd33及びd31の絶対値よりも大きくなっている。
特に、BaTi1−xNiの0<x≦0.05、Ba0.75Sr0.25Ti1−xNiの0<x<0.05、及びBa0.8Ca0.2Ti1−xNiの0<x≦0.05においては、いずれも室温付近での最安定構造が正方晶構造となるため、正方晶BaTiOよりもd33及びd31の絶対値よりも大きな正方晶圧電材料を得ることが可能となる。
本実施例の圧電材料のセラミックスの製法は特に限定されず、従来の焼結法を適宜用いるとよい。例えば、複数の材料の粉末をよく混合した後に、必要に応じてバインダー等を添加した後、プレス成形し、焼結炉で焼結させる粉末冶金の方法等が挙げられる。この際、配向制御により方位を一定方向に制御することが望ましい。
また、本実施例の圧電材料の薄膜の製法も特に限定されず、スパッタリング法、ゾルゲル法、レーザーアブレーション法、CVD法などの公知の方法を用いることにより、容易に成膜が可能である。
次に、本実施例の具体例として、セラミックス及び薄膜による合成例を示す。
(合成例1)
Ba0.75Sr0.25Ti0.975Ni0.025セラミックスの合成(A=Sr、M=Ni、x=0.025、y=0.25の例)
炭酸バリウム(BaCO)、炭酸ストロンチウム(SrCO)、酸化チタン(TiO)及び水酸化ニッケル(Ni(OH))を30:10:39:1のモル比で混合した後、微量のKClOを酸化剤として添加する。酸性水溶液に加熱し、懸濁、溶解させた後、アルカリ処理により析出物をろ過、採取、乾燥し、Ba0.75Sr0.25Ti0.975Ni0.025を合成する。その後、ボールミルで粉砕、大気中1100℃で加熱処理を行い、さらに、加圧形成機で成形し、焼結処理を10時間、1250℃で焼結する。焼結体を研磨処理し、電極付けした後5kV/cmの電界強度で分極処理を行い、本実施例の圧電材料を得る。
(合成例2)
Ba0.80Ca0.20Ti0.975Ni0.025薄膜の合成(A=Ca、M=Ni、x=0.025、y=0.20の例)
スパッタ装置による成膜の場合を示す。Oガス及びArガスが流入しているチャンバー内に、Ba、Ca、Ti及びNiの金属ホルダーを用意し、それらのホルダー上にイオン源となるArビームを照射する。所望とする元素組成が得られるように成膜条件を設定し、Arビームにより叩き出された各金属をチャンバー内に備えた基板上に飛翔させることにより、目的とする圧電体膜を形成することが出来る。
上記合成例1及び合成例2で表記した酸素数は3と表記したが、焼成条件、成膜条件等により3.0未満になってもよい。しかしながら、酸素欠陥が多くなると、材料の抗電界が大きくなり、低電界での圧電性が発現しなくなる。そのため、本実施例の酸素数は、2.9以上が望ましい。
次に実施例2として、一般式(1)において、正方晶Ba1−yTi1−xNi(0.5≦x<1)からなる圧電材料に関する実施形態を、表1、表2、図1、図2及び図3を参考にして説明する。
本実施例における圧電体材料の組成式は、Ba1−yTi1−xNi(0.5≦x<1、且つ0≦y≦1)のように表される。ここでAは、Sr及びCaのうち少なくとも1種類の元素により形成される。
表1はBa1−ySrTi1−xNi、及び表2はBa1−yCaTi1−xNiのそれぞれの構造最適化計算を行った結果であり、x及びyの組合せに対するc/aの計算結果を示したものである。表1及び表2は、図2に示したc/aの値の一部についても示している。
また、各c/aの計算結果とともに、上記数式(1)より求めた寛容因子tの値も、表1及び表2の各括弧内に示す。
寛容因子tの値は、上記数式(1)によって求めることができる。ここで、例えばBa1−ySrTi1−xNiの場合、Ba1−ySr及びTi1−xNiイオンのイオン半径rA’及びrM’は、下記数式(2)及び数式(3)のように、それぞれ組成比y及びxで平均化された値で定義する。
Figure 0005679694
Figure 0005679694
ここでrBa、rSr、rTi及びrNiは、それぞれBa、Sr、Ti及びNiのイオン半径である。Shannonのイオン半径の値は、Baは0.161nm、Srは0.144nm、Tiは0.0605nm、Niは0.048nm、Oは0.140nmである。従って、例えばy=0及びx=0.5の場合、rA’=0.161nm、rM’=0.054nmとなり、数式(1)に代入すると、寛容因子tは1.096となる。
表1及び表2より、BaTi1−xNiでは概ね0.5≦x<1において、Ba1−yTi1−xNi(A=Sr,Ca)では概ね0<y≦1且つ0.5<x<1において、それぞれc/aの値が、BaTiOのc/aの値(=1.022)よりも大きくなっている。
Figure 0005679694
Figure 0005679694
図3は、上記表1及び表2の計算結果におけるBaTi1−xNi(x=0,0.25,0.5,0.75,1)、Ba1−ySrTi0.25Ni0.75(y=0,0.25,0.5,0.75,1)及びBa1−yCaTi0.25Ni0.75(y=0.25,0.5,0.75,1)のc/aの値をtの関数として示したものである。比較として、BaTiO、BaMnO及びBaNiOのc/aの計算結果についても示している。BaTi1−xNiにおいては、概ね0.3≦x<1において、Ba1−ySrTi0.25Ni0.75及びBa1−yCaTi0.25Ni0.75においてはyの全領域において、それぞれBaTiOのc/aの値(=1.022)よりも大きくなっている。
また図3には、Tの推定値も示している。この推定値は、チタン酸鉛(PbTiO)、PZT及びBaTiOにおけるc/aとTとの相関から得られた値であり、一般的によく使用される値である(楠本慶二著、「強誘電体・圧電体理解に関する図集」(http://www.geocities.jp/kusumotokeiji/piezofig.pdf)2007年、参照)。
一方、図1に示したように、BaTi1−xNiの概ね0.5≦x<0.6、Ba0.75Sr0.25Ti1−xNiの概ね0.5<x<0.65、Ba0.8Ca0.2Ti1−xNiの概ね0.5<x<0.65においては、d33及びd31の絶対値が、BaTiOのd33及びd31の絶対値よりも大きくなっている。さらに、図2から明らかなように、上記いずれの領域においても、c/aの値は、BaTiOのc/aの値よりも大きくなっている。従って、本領域においては、BaTiO以上の圧電定数の値を有し、且つBaTiOよりもキュリー温度が高い圧電材料を得ることが出来る。
本実施例は、実施例1の場合と多少異なる実施形態となる。何故なら、図1及び図2からも推測されるように、一般式(1)で表されるBa1−yTi1−xNi(A=Sr,Ca)は、0.5≦x<1での最安定構造が正方晶構造をとらない可能性が存在するからである。
例えば、BaTiOは、室温においてc/a=1.022の正方晶構造をとる。また、BaNiOは、六方晶構造をとる。図1及び図2の結果を鑑みると、0.05<x<0.5のある組成比x付近に、正方晶構造から六方晶構造へ構造相転移を起こすMPB領
域が存在することが推測される。
従って、本実施例の組成領域である0.5≦x<1において、Ba1−yTi1−xNi(A=Sr,Ca)が正方晶構造領域を有するセラミックスを合成するためには、従来のセラミックスの焼結法ではなく、例えば高圧合成法などが必要である。
また、薄膜の製法においても、例えば加圧により成型体を合成した後に、該成型体をターゲットとして成膜を行う、などの方法が必要である。
次に、本実施例の具体例として、高圧合成及び薄膜による合成例を示す。
(合成法3)
Ba0.75Sr0.25Ti0.25Ni0.75セラミックスの合成(A=Sr、M=Ni、x=0.75、y=0.25の例)
炭酸バリウム(BaCO)、炭酸ストロンチウム(SrCO)、酸化チタン(TiO)及び水酸化ニッケル(Ni(OH))を3:1:1:3のモル比で混合する。この混合粉をペレット化して常圧、900℃で仮焼することで脱炭酸を行う。ペレットの粉砕物を微量のKClOを酸化剤として敷き詰めた白金カプセルに封入して、1200℃、6GPaの条件で焼結する。焼結体を研磨処理し、電極付けした後5kV/cmの電界強度で分極処理を行い、本実施例の圧電材料を得る。
(合成法4)
Ba0.80Ca0.20Ti0.25Ni0.75薄膜の合成(A=Ca、M=Ni、x=0.75、y=0.20の例)
RFマグネトロンスパッタ装置による成膜の場合を示す。炭酸バリウム(BaCO)、炭酸カルシウム(CaCO)、酸化チタン(TiO)及び水酸化ニッケル(Ni(OH))を16:4:5:15のモル比で混合した粉末を10MPaで一軸加圧した成型体をターゲットとして用意する。STO(100)単結晶基板上に(100)配向SROが成膜された基板を600℃に加熱し、OとAr雰囲気中で前記成型体をターゲットとして基板上に成膜することにより、目的とする圧電体膜を形成することが出来る。
上記合成例3及び合成例4で表記した酸素数はすべて3と表記したが、焼成条件、成膜条件等により3.0未満になってもよい。しかしながら、酸素欠陥が多くなると、材料の抗電界が大きくなり、低電界での圧電性が発現しなくなる。そのため、本実施形態の酸素数は、2.9以上が望ましい。
本発明の圧電材料は、BaTiOと同程度の圧電定数の値を有し、BaTiOよりもキュリー温度が高いので、圧電素子を利用した超音波モーター、振動センサー、インクジェットヘッド、変圧器等のデバイス、また強誘電性を利用した強誘電体メモリ等のデバイスに利用することができる。

Claims (5)

  1. 下記一般式(1)
    Figure 0005679694

    (式中、Aはストロンチウム(Sr)及びカルシウム(Ca)のうち少なくとも1種類の元素、Niは原子価が4価であるニッケル(Ni)を示す。xは0<x≦0.05、yは0≦y≦1である。)
    で表されるペロブスカイト型酸化物からなり、かつ下記数式(1)で表される寛容因子(tolerance factor)tが1.01<t≦1.15であることを特徴とする圧電材料。
    Figure 0005679694

    (式中、A’はBa1−yを表し、M’はTi1−xNiを表す。rA’、rM’及びrはそれぞれA’、M’及びOのイオン半径を表す。各構成元素のイオン半径はシャノン(Shannon)のイオン半径により定義され、Ba1−y及びTi1−xNiイオンのイオン半径は、それぞれ組成比y及びxで平均化された値で定義する。)
  2. 前記圧電材料において、0<x≦0.05で正方晶構造を有することを特徴とする請求項1に記載の圧電材料。
  3. 前記圧電材料において、0.05<x<0.5に結晶相境界(MPB)を有することを特徴とする請求項1に記載の圧電材料。
  4. 下記一般式(1)
    Figure 0005679694

    (式中、Aはストロンチウム(Sr)及びカルシウム(Ca)のうち少なくとも1種類の元素、Niは原子価が4価であるニッケル(Ni)を示す。xは0.5≦x<1、yは0≦y≦1である。)
    で表されるペロブスカイト型酸化物からなり、かつ下記数式(1)で表される寛容因子(tolerance factor)tが1.01<t≦1.15であることを特徴とする圧電材料。
    Figure 0005679694

    (式中、A’はBa1−yを表し、M’はTi1−xNiを表す。rA’、rM’及びrはそれぞれA’、M’及びOのイオン半径を表す。各構成元素のイオン半径はシャノン(Shannon)のイオン半径により定義され、Ba1−y及びTi1−xNiイオンのイオン半径は、それぞれ組成比y及びxで平均化された値で定義する。)
  5. 前記圧電材料において、0.5≦x<1で正方晶構造領域を有し、該正方晶構造の格子定数a及びc(但し、c>aである。)の比c/aの値が、1.022<c/a<1.15を満たす値であることを特徴とする請求項4に記載の圧電材料。
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