JP2007331214A - 液体吐出ヘッドのクリーニング装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】インク吐出面のクリーニング時に、インクを撒き散らすことなく、またブレードが進行方向に反ってしまうおそれのない液体吐出ヘッドのクリーニング装置を提供する。
【解決手段】ノズル26が配列された液体吐出面27を有する液体吐出ヘッド3と、液体吐出面27を払拭するクリーニングブレード34と、クリーニングブレード34を液体吐出ヘッド3に対して往復移動させるとともに、クリーニングブレード34を液体吐出ヘッド3に対して一方に移動する際には液体吐出面27と摺接する位置から退避させ、クリーニングブレード34を液体吐出ヘッド3に対して他方に移動する際には液体吐出面27と摺接させる位置に復帰させる切換手段35を備える移動機構6とを有し、クリーニングブレード34は、液体吐出面27を摺動する際に、液体吐出面27に対して先端部43aの摺動方向背面が鈍角に傾斜して支持されている。
【選択図】図18
【解決手段】ノズル26が配列された液体吐出面27を有する液体吐出ヘッド3と、液体吐出面27を払拭するクリーニングブレード34と、クリーニングブレード34を液体吐出ヘッド3に対して往復移動させるとともに、クリーニングブレード34を液体吐出ヘッド3に対して一方に移動する際には液体吐出面27と摺接する位置から退避させ、クリーニングブレード34を液体吐出ヘッド3に対して他方に移動する際には液体吐出面27と摺接させる位置に復帰させる切換手段35を備える移動機構6とを有し、クリーニングブレード34は、液体吐出面27を摺動する際に、液体吐出面27に対して先端部43aの摺動方向背面が鈍角に傾斜して支持されている。
【選択図】図18
Description
本発明は、液体吐出ヘッドに形成された液体吐出ノズルから対象物に液体を吐出させる液体吐出装置に関し、特に液体吐出ヘッドのクリーニングを行うクリーニングブレードに関する。
インクジェット方式の画像形成装置、例えばインクジェットプリンタは、ランニングコストが低く、プリント画像のカラー化、装置の小型化が容易である等の点から広く普及されている。このインクジェットプリンタは、プリントヘッドのインク吐出面に設けられた微小なインク吐出ノズルから微量なインクを吐出させて画像記録を行うようになっている。この種のインクジェットプリンタでは、長時間続けて印刷動作を行わず、プリントヘッドのインク吐出ノズルからインクを吐出させていない場合には、前回の印刷動作によりインク吐出面のインク吐出ノズル付近に付着したインクが蒸発乾燥して増粘、固化してしまうことがあり、正常なインク吐出が困難となる場合がある。
このため、従来では、やや硬めのゴム製等のブレードをプリントヘッドのインク吐出面に押し当て、該インク吐出面上をスライドさせることにより、上記インク吐出面に付着して増粘、固化したインクを拭い去ることでプリントヘッドのクリーニングを行っていた。これに関連して、特開昭57−34969号公報(特許文献1)には、複数のブレードを回転軸に取り付けて回転させ、ワイピング効果をさらに高める技術が開示されている。
ここで、ブレードをインク吐出面に対して垂直に支持するとともに、ブレード先端がインク吐出面と摺接可能な高さに支持する構成においては、ブレードは、インク吐出面を摺接するさいに、ブレードの進行方向と反対側に撓まされながら払拭していく。そしてブレードは、インク吐出面の通過と同時に自身の弾性によって垂直に起立し、その勢いで掻き取ったインクや異物を周辺に撒き散らすことがあり、周辺機器のトラブルや、跳ねたインクの受け部材を要するなど構成部品の増加、装置の大型化等を招くおそれがある。
またブレードをインク吐出面に対して垂直に支持する構成では、ブレードをインク吐出面に摺接させている際に、移動機構の振動やインク吐出面の凹凸形状等によって、ブレード先端が進行方向に反ってしまい、スムーズなクリーニングを阻害し、またブレード機構の破損などを招くおそれがある。
そこで、本発明は、ブレードによるインク吐出面のクリーニング時に、インクを撒き散らすことなく、またブレードが進行方向に反ってしまうおそれのない液体吐出ヘッドのクリーニング装置を提供することを目的とする。
上述した課題を解決するために、本発明にかかる液体吐出ヘッドのクリーニング装置は、液体を吐出する液体吐出ノズルが配列された液体吐出面を有する液体吐出ヘッドと、上記液体吐出面に摺接され、該液体吐出面を払拭するクリーニングブレードと、上記クリーニングブレードを上記液体吐出ヘッドに対して往復移動させるとともに、上記クリーニングブレードを上記液体吐出ヘッドに対して一方に移動する際には上記液体吐出面と摺接する位置から退避させ、上記クリーニングブレードを上記液体吐出ヘッドに対して他方に移動する際には上記液体吐出面と摺接させる位置に復帰させる切換手段を備える移動機構とを有し、上記クリーニングブレードは、上記液体吐出面を摺動する際に、上記液体吐出面に対して先端部の摺動方向背面が鈍角に傾斜して支持されている。
本発明にかかる液体吐出ヘッドのクリーニング装置によれば、クリーニングブレードは、先端部の摺動方向背面と液体吐出面とが鈍角をなすように支持されているため、先端部のエッジを液体吐出面に当接させながら摺動させることができる。これによりクリーニングブレードは、先端部のエッジを液体吐出面に摺動させることで、確実に液体吐出面に残存する残滓を除去することができる。またクリーニングブレードは、先端部が予め液体吐出面と鈍角をなすように傾斜して支持されているため、液体吐出面との摺接が終了した際にも、自身の弾性によって摺動方向に起立した勢いで掻き取った残滓を周囲に撒き散らすことなく、また液体吐出面の摺動中に振動や液体吐出面の凹凸等によっても、先端部が摺動方向の前方に撓みスムーズなクリーニングを阻害するおそれもない。
以下、本発明が適用された液体吐出ヘッドのクリーニング装置について図面を参照しながら詳細に説明する。本発明にかかるクリーニングブレードは、対象物となる記録紙に対してインクを吐出して画像や文字を印刷するインク吐出装置、いわゆるインクジェットプリンタ装置(以下、プリンタ装置と記す。)に用いることができるものである。なお、いかに説明するインクジェットプリンタ装置1は、記録紙の印刷幅に合わせてインク吐出ノズルを設けた、いわゆるラインヘッド型のプリンタ装置である。
このプリンタ装置1は、図1及び図2に示すように、プリンタ本体2を有し、このプリンタ本体2に、インクカートリッジが装着されインクを吐出するヘッドカートリッジ4、及びこのヘッドカートリッジ4を保護するヘッドキャップ5とを備えるインクジェットヘッド3と、ヘッドキャップ5をヘッドカートリッジ4の開閉方向に移動するキャップ移動機構6と、プリンタ装置1の制御を行う制御機構7(図29参照)と、記録紙を収納する記録紙トレイ8とを備える。
そしてプリンタ装置1は、インクジェットヘッド3がプリンタ本体2に対して着脱可能であり、更に、ヘッドカートリッジ4に対してインク供給源となるインクカートリッジ11y,11m,11c,11kが着脱可能とされている。なお、このプリンタ装置1では、イエローのインクカートリッジ11y、マゼンタのインクカートリッジ11m、シアンのインクカートリッジ11c、ブラックのインクカートリッジ11kが使用可能となっており、また、プリンタ本体2に対して着脱可能なインクジェットヘッド3とヘッドカートリッジ4に対して着脱可能なインクカートリッジ11y,11m,11c,11kを消耗品とし、交換可能となっている。
このようなプリンタ装置1は、記録紙を積層して収納する記録紙トレイ8をプリンタ本体2の前面底面側に設けられたトレイ装着口80に装着することにより、記録紙トレイ8に収納されている記録紙Pをプリンタ本体2内に給紙できる。記録紙トレイ8は、プリンタ本体2の前面のトレイ装着口80に装着されると、プリンタ本体2内の給排紙機構9により記録紙Pが給紙ローラ81に圧接され、この給紙ローラ81が回転駆動されることによって、図4中矢印A方向に示すようにトレイ装着口80よりプリンタ本体2の背面側に給紙する。
そして、プリンタ装置1は、プリンタ本体2の背面側に送られた記録紙Pを、反転ローラ83により搬送方向を反転し、プリンタ本体2の背面側から前面側に送る。プリンタ本体2の背面側から前面側に送られる記録紙Pは、プリンタ本体2の前面に設けられたトレイ装着口80より排紙されるまでに、ヘッドカートリッジ4によってパーソナルコンピュータ等の情報処理装置より入力された文字データや画像データに応じた文字や画像が印刷される。
記録紙Pに印刷を行うヘッドカートリッジ4は、図3中矢印Bに示すように、プリンタ本体2の上面側からカートリッジ装着部22に装着され、復路を走行する記録紙Pに対してインクiを吐出し印刷を行う。具体的に、ヘッドカートリッジ4は、液体であるインクiを、例えば電気熱変換式又は電気機械変換式などで微細に粒子化して吐出し、記録紙P等といった記録媒体上にインク液滴を吹き付けることで印刷を行う。
ヘッドカートリッジ4にインクを供給するインクカートリッジ11は、図5及び図6に示すように、ヘッドカートリッジ4に着脱自在に形成されたカートリッジタンク12を有し、このカートリッジタンク12は、長手方向を使用する記録紙Pの幅方向の寸法と略同じ寸法となす略矩形状に形成され、内部に貯留するインク容量を最大限に増やす構成となっている。
具体的に、インクカートリッジ11を構成するカートリッジタンク12には、インクiを収容するインク収容部13と、インク収容部13からヘッドカートリッジ4のカートリッジ本体21にインクiを供給するインク供給部14と、外部よりインク収容部13内に空気を取り込む外部連通孔15と、外部連通孔15より取り込まれた空気をインク収容部13内に導入する空気導入路16と、外部連通孔15と空気導入路16との間でインクiを一時的に貯留するインク貯留部17と、インク収容部13内のインクiの残量を検出するための残量検出部18と、ヘッドカートリッジ4のカートリッジ本体21に設けられたカートリッジ装着部22に係合される係合凸部19とが設けられている。
インク供給部14は、インク収容部13の下側略中央部に設けられており、ヘッドカートリッジ4に対する接続部となる。このインク供給部14は、インク収容部13と連通した略凸形状のノズルであり、このノズルの先端が後述するヘッドカートリッジ4の接続部25に嵌合されることにより、インクカートリッジ11のカートリッジタンク12とヘッドカートリッジ4のカートリッジ本体21を接続し、ヘッドカートリッジ4へインクiを供給可能とする。
外部連通孔15は、図6に示すように、インクカートリッジ11外部からインク収容部13に空気を取り込む通気口であり、ヘッドカートリッジ4のカートリッジ装着部22に装着されたときも、外部に臨み外気を取り込むことができるように、カートリッジ装着部22への装着時に外部に臨む位置であるカートリッジタンク12の上面、ここでは上面略中央に設けられている。そして外部連通孔15は、インクカートリッジ11がカートリッジ本体21に装着されてインク収容部13からカートリッジ本体21側にインクiが流下した際に、インク収容部13内のインクiが減少した分に相当する分の空気を外部よりインクカートリッジ11内に取り込む。
空気導入路16は、インク収容部13と外部連通孔15とを連通し、外部連通孔15より取り込まれた空気をインク収容部13内に導入する。これにより、このインクカートリッジ11がカートリッジ本体21に装着された際に、カートリッジ本体21にインクiが供給されてインク収容部13内のインクiが減少し、カートリッジタンク12内部が減圧状態となっても、インク収容部13には、空気導入路16によりインク収容部13に空気が導入されることから、内部の圧力が平衡状態に保たれてインクiをカートリッジ本体21に適切に供給することができる。
インク貯留部17は、外部連通孔15と空気導入路16との間に設けられ、インク収容部13に連通する空気導入路16よりインクiが漏れ出た際に、いきなり外部に流出することがないようにインクiを一時的に貯留する。具体的に、このインクカートリッジ11では、常温、常圧時においてインク貯留部17にインクiがない状態となる。しかしながら、インクカートリッジ11においては、外部圧力の低下又は外部温度の上昇が起こると、インク収容部13内の空気が膨張し、膨張した空気がインクiをインク収容部13より空気導入路16を介してインク貯留部17に押し出してしまう。このとき、インク貯留部17は、インク収容部13より押し出されたインクiを一時的に貯留することから外部連通孔15よりインクiが漏れ出ることを防止できる。このインク貯留部17は、長い方の対角線をインク収容部13の長手方向とした略菱形に形成され、インク収容部13の最も下側に位置する頂部に、すなわち短い方の対角線上の下側に空気導入路16を設けるようにし、インク収容部13より進入したインクを再度インク収容部13に戻すことができるようにしている。また、インク貯留部17は、短い方の対角線上の最も上側の頂部に外部連通孔15を設けるようにし、インク収容部13より進入したインクが外部連通孔15より外部に漏れにくくしている。
残量検出部18は、図6に示すように、カートリッジタンク12の長手方向の一方側面に設けられている。残量検出部18は、インク収容部13内に臨まされる一対の検出ピンと、インクカートリッジ11がヘッドカートリッジ4のカートリッジ装着部22に装着されたとき、ヘッドカートリッジ4のインク残量検出部24と電気的に接続される接点とを備える接点部材を有し、この接点部材は、カートリッジタンク12の側面の高さ方向に複数並設されている。インクiは、導電性を有するものを用いれば、インク収容部13内に臨まされている一対の検出ピンを浸漬しているときには検出ピンの電気抵抗値を小さくさせ、浸漬していないときには検出ピンの電気抵抗値を高くさせることができる。すなわち、インク収容部13内にインクiが満杯のとき、全ての検出ピンは、インクに浸漬されており、全て電気抵抗値が低い状態となる。そして、インクが使用されるに連れて、検出ピンの電気抵抗値は上の段から順に高くなる。これにより、残量検出部18は、インク収容部13内のインク残量を検出することができる。
なお、インクカートリッジ11においては、通常、印刷時にブラックのインクの消費量が最も多いので、インクカートリッジ11kが他のインクカートリッジ11y、11m、11cに比べてインク収容部13の容量が大きいものとされている。具体的には、インクカートリッジ11kのみが他のインクカートリッジ11y,11m,11cに比べて厚く形成されている。
次いで、かかるインクカートリッジ11が装着されるヘッドカートリッジ4の構成について説明する。このヘッドカートリッジ4は、図5及び図6に示すように、カートリッジ本体21を有し、このカートリッジ本体21には、インクカートリッジ11が装着されるカートリッジ装着部22と、係合凸部19が係合される係合凹部23と、インクカートリッジ11内におけるインク残量を検出するインク残量検出部24と、インク供給部14と接続されてインクiが供給される接続部25と、インクを吐出するインク吐出ノズル26とを有し、インク吐出ノズル26が臨む底面がインク吐出面27とされている。
インクカートリッジ11が装着されるカートリッジ装着部22は、インクカートリッジ11が装着されるように上面をインクカートリッジ11の挿脱口として略凹形状に形成され、ここでは各色のインクカートリッジ11y,11m,11c,11kが挿脱されるカートリッジ装着部22y,22m,22c,22kが記録紙の走行方向に並んで収納される。
係合凹部23は、各カートリッジ装着部22y,22m,22c,22kに設けられ、インクカートリッジ11y,11m,11c,11k毎に異なる配置パターンで設けられた係合凸部19に対応して係合するようにされている。
インク残量検出部24は、インクカートリッジ11内のインクiの残量を段階的に検出するものであり、各色のインクカートリッジ11y,11m,11c,11kのカートリッジ装着部22y,22m,22c,22kに設けられている。そしてインク残量検出部24は、インクカートリッジ11がヘッドカートリッジ4に装着されたとき、インクカートリッジ11内の側面の高さ方向に並設された残量検出部18に接触し電気的に接続される。
カートリッジ装着部22の長手方向略中央には、インクカートリッジ11がカートリッジ装着部22に装着されたとき、インク供給部14が接続される接続部25が設けられている。この接続部25は、カートリッジ装着部22に装着されたインクカートリッジ11のインク供給部14からカートリッジ本体21の底面に設けられたインクを吐出するインク吐出ノズル26にインクを供給するインク供給路となる。そして、接続部25は、詳細を省略する弁機構を備え、カートリッジタンク12からインク吐出ノズル26へのインクの供給を調整している。
接続部25からインクiが供給されるインク吐出ノズル26は、カートリッジ本体21の底面であるインク吐出面27の長手方向に沿って配設されている。すなわち、図6及び図7に示すように、インク吐出ノズル26は、カートリッジ本体21の底面であるインク吐出面27に、記録紙Pの幅方向となる図6及び図7中矢印W方向に略ライン状に各色毎に並設されている。そして、インク吐出ノズル26には、カートリッジ本体21にプリンタ本体2の背面側から前面側に向かって、装着されている各色のインクカートリッジ11の並びに従って各色のノズルライン26y、26m、26c、26kが設けられている。これらノズルライン26y、26m、26c、26kは、記録紙Pの幅よりと略同一の長さに形成されており、記録紙Pに印刷を行う際に、記録紙Pの幅方向に移動することなく、イエロー、マゼンタ、シアン、ブラックのノズルライン毎にインクiを吐出する。
カートリッジ本体21の底面部には、図8に示すように、電気熱変化式の発熱抵抗体28aが設けられた回路基板28と、インク吐出ノズル26が形成されたノズルシート29と、回路基板28とノズルシート29との間に設けられたフィルム30とによって、接続部25から供給されたインクiを各インク吐出ノズル26に供給するインク流路31が形成されている。このインク流路31は、インク吐出ノズル26が並設されている方向、即ち図6中矢印W方向に長く形成されている。これにより、インク吐出ノズル26では、各インクカートリッジ11y,11m,11c,11kからカートリッジ本体21の接続部25を介してインクiがインク流路31に流れ込み、インク流路31からインクiが供給されるようになる。
また、インク吐出ノズル26には、回路基板28と、ノズルシート29と、フィルム30とによって囲まれ、発熱抵抗体28aがインクを加圧するインク液室32が形成されている。このインク液室32は、インク流路31と接続されており、インク流路31からインクiが供給される。
以上のような構成からなるインク吐出ノズル26では、制御信号に基づいて選択された発熱抵抗体28aに対して、例えば駆動周波数9kHzでパルス電流を供給する。これにより、インク吐出ノズル26は、発熱抵抗体28aを急速に加熱する。インク吐出ノズル26は、発熱抵抗体28aを加熱すると、図8(A)に示すように、発熱抵抗体28aと接するインクiに気泡bが発生する。そして、インク吐出ノズル26は、図8(B)に示すように、気泡bが膨張しながらインクiを加圧し、押圧されたインクiを液滴の状態で吐出する。また、インク吐出ノズル26は、液滴の状態でインクiを吐出した後、インク流路31を通してインクiをインク液室32に供給することによって、再び吐出前の状態へと戻る。インク吐出ノズル26は、制御信号に基づいて、上述した動作を繰り返す。
ヘッドカートリッジ4のインク吐出面27には、インク吐出面27及びインク吐出ノズル26を乾燥等から保護するヘッドキャップ5が着脱自在に取り付けられている。以下、ヘッドキャップ5について図9〜図16を用いて説明する。なお、図9は、ヘッドキャップ5の平面図であり、図10は図9に示すヘッドキャップから後述するクリーニングローラ33、クリーニングブレード34、切換部材35及び天板50を除いて示す平面図であり、図11は図9中x−x断面図であり、図12は図9中y−y断面図である。また、図13はヘッドキャップ5がヘッドカートリッジ4のインク吐出面27を閉塞する初期状態を示し、図14はヘッドキャップ5がヘッドカートリッジ4を開放する開放方向に移動されている状態を示し、図15はヘッドキャップ5がヘッドカートリッジ4を開放した状態を示し、図16はヘッドキャップ5がヘッドカートリッジ4を閉塞する閉塞方向に移動されている状態を示している。
このヘッドキャップ5は、ヘッドカートリッジ4に対して着脱自在に形成されるとともに、後述するキャップ移動機構6によってヘッドカートリッジ4に対して相対的に移動可能とされている。そしてヘッドキャップ5は、印刷時にはヘッドカートリッジ4のインク吐出面27を開放する開放方向となる矢印O方向に移動され、インク吐出面27を記録紙Pの搬送領域上に臨ませ、印刷終了時等にはインク吐出面27を閉塞するとともにヘッドカートリッジ4に装着する閉塞方向となる矢印C方向に移動され、インク吐出面27を保護するようになっている。
このヘッドキャップ5は、四周に立ち上がり片を有する矩形状の箱からなり、その全体が硬質樹脂等で形成されている。またヘッドキャップ5は、ヘッドカートリッジ4を開放する移動方向の後端部に、インク吐出ノズル26及びインク吐出面27のクリーニングを行うクリーニングローラ33と、クリーニングブレード34と、これらクリーニングローラ33とクリーニングブレード34をインク吐出面27より交互に退避するよう切り換える切換部材35が設けられている。またヘッドキャップ5は、略中央部からヘッドカートリッジ4を開放する移動方向の先端側に、クリーニングローラ33に付着したインクを掻き取るスクレーパ48と、このスクレーパ48が掻き取ったインクを吸引する吸引部材49が配設され、これらが天板50によって覆われている。
クリーニングローラ33は、上記ヘッドカートリッジ4のインク吐出面27をクリーニングするクリーニング部材となるもので、弾性を有する材料で円柱状に形成されている。このクリーニングローラ33は、ヘッドキャップ5内の一側部にて該ヘッドキャップ5の長手方向に亘って取り付けられることによりヘッドカートリッジ4のインク吐出面27の長手方向と平行となる。これにより、クリーニングローラ33は、上記ヘッドカートリッジ4のインク吐出面27の長手方向に沿って形成されたインク吐出ノズル26の配列方向と平行とされる。また、クリーニングローラ33は、長手方向の長さを、インク吐出ノズル26の配列長さと略同等以上に形成されている。これにより、クリーニングローラ33は、ヘッドキャップ5がインク吐出ノズル26の配列方向と直交する方向に移動されることにより、インク吐出ノズル26のノズルライン毎にクリーニングを行っていく。
このクリーニングローラ33は、ヘッドキャップ5の一側部にて回転自在に支持されるとともに着脱自在に取り付けられている。すなわちクリーニングローラ33の両端部には、図17に示すように芯金36が突出して設けられ、この芯金36が図11に示すように略U字状の形状でヘッドキャップ5の底面より立設されている軸受け37によって回転自在に保持されている。この軸受け37の上部のピン受入れ部は弾性的に開閉可能とされており、芯金36を上方からピン受入れ部に押し付けることにより該ピン受入れ部が開いて芯金36を受け入れ、その後閉じて保持する。逆に、上記の芯金36を上方に持ち上げることにより、該ピン受入れ部が開いて芯金36を取り外すことができるようになっている。
また、図11に示すように、芯金36にはクリーニングローラ33をヘッドカートリッジ4のインク吐出面27側に付勢するコイルバネ38が係合されるローラフランジ39が設けられている。ローラフランジ39は、一面側において芯金36と当接するとともに、他面側において係合凸部40が形成され、この係合凸部40にコイルバネ38が係合されている。コイルバネ38は、ヘッドキャップ5に立設された支軸42に挿通され、ローラフランジ39を上方に付勢している。これにより、クリーニングローラ33は、ローラフランジ39を介してコイルバネ38の付勢力を受けてヘッドカートリッジ4のインク吐出面27側に付勢される。なお、上記コイルバネ38に代えて、芯金36を上方に押圧付勢する略U字状の板バネ等を用いてもよい。この場合、略U字状の板バネは、一端をヘッドキャップ5の底面に係止され、他端を芯金36に係止されることにより、芯金36を上方に付勢することとなる。
また、クリーニングローラ33は、略円柱状に形成されるとともに、その長手方向の中央部分が緩やかに太くなったいわゆるクラウン形状に形成されている。これは、クリーニングローラ33が長手方向の中央部分で下方に撓むことがあるので、その撓みによりインク吐出面27と非接触になることを防止するためである。
また、クリーニングローラ33のインク吐出面27に接触する部分は、弾性を有するとともに液体を吸収する多孔質の材質、例えばエチレンプロピレンゴム、クロロプレンゴムあるいはウレタンゴム等の適宜の合成樹脂弾性材からなる。またクリーニングローラ33の芯材は、例えば金属や硬質樹脂等で形成されている。そして、クリーニングローラ33は、インク吐出面27に接触する部分の外層に界面活性剤溶液が含浸されている。
なお、クリーニングローラ33は、その断面周囲の長さが、クリーニングローラ33をインク吐出面27に接触させた状態で従動回転しながら該インク吐出面27を移動する移動距離と等しい長さに形成してもよい。この場合、インク吐出面27上を従動回転するクリーニングローラ33の外周面において、所定の位置のインク吐出ノズル26をクリーニングした接触部位が、再度他の位置のインク吐出ノズル26をクリーニングすることがないため、インク吐出ノズル26及びインク吐出面27のクリーニングを安定して行うことができる。
このような、クラウン形状に設けられ且つ弾性力を備えたクリーニングローラ33は、図13に示すヘッドキャップ5がヘッドカートリッジ4を閉塞する初期状態から、図14に示すようにヘッドキャップ5がインク吐出面27を開放する図14中矢印O方向に移動されると、コイルバネ38の付勢力を受けてヘッドカートリッジ4のインク吐出面27の長手方向の全長に亘って当接する。そして、クリーニングローラ33は、インク吐出面27に当接された状態でさらにインク吐出面27の開放方向に移動されることにより、インク吐出面27を従動回転あるいは摺動し、インク吐出面27及びインク吐出ノズル26に残存するインクiを吸い取っていく。このとき、クリーニングローラ33は、インク吐出面27に接触する外層に界面活性剤溶液が含浸されているため、インクに対する濡れ性が非常に良くなっている。このクリーニングローラ33がインク吐出ノズル26に接触すると、瞬時にクリーニングローラ33とインク吐出面27との間にインクの層が形成され、そのインクによって、増粘したインクが再溶解される。再溶解後、それらのインクは、濡れ性が高いクリーニングローラ33に吸引され、容易にクリーニングすることができる。そしてヘッドキャップ5が図13に示すヘッドカートリッジ4の閉塞位置から図15に示すヘッドカートリッジ4の開放位置まで移動されることにより、クリーニングローラ33は、ヘッドカートリッジ4のインク吐出面27を全面に亘ってクリーニングすることができる。
また、クリーニングローラ33は、ヘッドキャップ5がインク吐出面27を閉塞する図16中矢印C方向に移動されると、後述する切換部材35によりコイルバネ38の付勢力に対抗して芯金36が下方に押圧され、インク吐出面27上より退避される。すなわち、印刷後にもクリーニングローラ33をインク吐出面27に従動回転されあるいは摺動すると、インク液室32に貯留されている未使用インクを必要以上に吸引し不経済となるほか、クリーニングローラ33の吸引性能が低下し、クリーニングローラ33の寿命が短くなってしまう。しかし、本発明が適用されたプリンタ装置1は、ヘッドカートリッジ4の閉塞時にはクリーニングローラ33をインク吐出面27より退避させてクリーニングを行わないようにすることで、かかる事態を防止することができる。
次いで、このようなクリーニングローラ33の近傍にて図9中左側に設けられたクリーニングブレード34について説明する。このクリーニングブレード34は、ヘッドカートリッジ4のインク吐出面27を移動しながら増粘付着したインクのかすやゴミを払拭するためのワイプ部材となるもので、図11及び図12に示すように、インク吐出面27に押し当てられて変形するゴムなどの弾性部材により薄板状に形成されたワイプ部43と、ワイプ部43を支持する支持板44とを有し、さらにこの支持板44がホルダ45を介してヘッドキャップ5の底面側にヘッドキャップ5の移動方向に対して回動自在に取り付けられている。クリーニングブレード34は、クリーニングローラ33と同様に、ヘッドキャップ5の長手方向に取り付けられ、ヘッドカートリッジ4のインク吐出面27の長手方向と平行とされている。そしてクリーニングブレード34は、ヘッドキャップ5が移動されると、ワイプ部43の先端部43aがインク吐出面27に押し当てられて弾性変形しながら摺動することにより、該インク吐出面27に付着して増粘固化したインクやゴミ等を払拭していく。
インク吐出面27に摺動されるワイプ部43は、ゴム等の合成樹脂を略矩形状に成型した後、外縁部を切断することにより形成される。これによりワイプ部43は、先端部43aの長手方向に亘る側縁部分のエッジがほぼ直角に形成される。そしてワイプ部43は、このエッジをインク吐出面27に摺接させることによって、インク吐出面27上に付着した増粘インクやゴミ等を確実に払拭する。このワイプ部43を支持する支持板44は、金属板等の硬質の材料からなり、所定の金型内に配置されワイプ部43の原料となる合成樹脂が流された後、当該金型から抜き取られることにより、ワイプ部43と一体にされる。
この支持板44を回動可能に支持するホルダ45は、ヘッドキャップ5の底面に該ヘッドキャップ5の移動方向に回動自在に取り付けられることにより、クリーニングブレード34を回動可能に保持するものである。このホルダ45は、断面略L字状に形成され、一辺に支持板44が取り付けられ、他辺には一端がヘッドキャップ5に係止されたねじりコイルバネ46の他端が係止されている。これによりホルダ45は、常時ワイプ部43がインク吐出面27上に臨まされる図11中矢印R方向に回動付勢されている。
そして、クリーニングブレード34は、ヘッドキャップ5が後述するキャップ移動機構6によって図13に示すヘッドカートリッジ4を閉塞している初期状態からヘッドカートリッジ4を開放する図14中矢印O方向に移動されると、後述する切換部材35によってホルダ45が図11中反矢印R方向に回動されワイプ部43がインク吐出面27より退避される。また、クリーニングブレード34は、ヘッドキャップ5がヘッドカートリッジ4を開放した図15に示す開放位置からヘッドカートリッジ4を閉塞する図16中矢印C方向に移動されると、切換部材35による付勢力が解かれ、ねじりコイルバネ46の付勢力によって図11中矢印R方向に回動され、ワイプ部43がインク吐出面27上に臨まされる。そして、ヘッドキャップ5の移動によってワイプ部43がインク吐出面27を摺動し、インク吐出面27に付着したインクやゴミ等を払拭していく。
ここで、クリーニングブレード34は、図18(a)に示すように、ワイプ部43の先端部43aの摺動方向背面側とインク吐出面27とのなす角θ1が鈍角をなすようにホルダ45がストッパプレート47によって支持されている。また図18(b)に示すように、クリーニングブレード34は、ワイプ部43の先端部43のエッジのなす角θ2がほぼ直角に形成されている。これによりクリーニングブレード34は、ほぼ直角に形成されたワイプ部43aのエッジをインク吐出面27に摺動させることができ、またワイプ部43がインク吐出面27と摺動することにより、ヘッドキャップ5の底面側へ過剰に倒れ込み、インク吐出面27にワイプ部43の主面のみが当接されエッジを当接させることができなくなる事態を防止することができる。
すなわちクリーニングブレード34は、ワイプ部43のエッジ部をインク吐出面27に摺接させることで、インクや異物を取り残すことなく払拭することができる。一方、クリーニングブレード34は、ワイプ部43の主面がインク吐出面27に摺接させた場合には、効率よくインクや異物を取り除くことができない。したがってクリーニングブレード34は、ホルダ45がストッパプレート47に支持されることで、ワイプ部43の先端部43aとインク吐出面27とが鈍角とされ、エッジが常にインク吐出面27に摺接しクリーニングを行うことができる。またクリーニングブレード34は、ワイプ部43とインク吐出面27とが鈍角とされることで、ヘッドキャップ5の移動中における振動やインク吐出面27上の凹凸等によっても、先端部43aが摺接方向の前方に反ってしまう事態を防止することができる。
また、クリーニングブレード34は、ワイプ部43の先端部43aのエッジ角度をほぼ直角とすることにより、確実にインク吐出面27上のインクや異物を掻き取ることができ、クリーニング性能を向上することができる。
このワイプ部43とインク吐出面27とがなす角θ1は、90°より大きく、135°より小さい角度が好ましい。クリーニングブレード34は、かかる角度で支持されることにより、先端部43aのエッジがヘッドキャップ5の底面側へ過剰に倒れ込みワイプ部43の主面がインク吐出面27に摺接される事態を防止するとともに、ヘッドキャップ5の移動中における振動やインク吐出面27上の凹凸等によっても、先端部43aが摺接方向の前方に反ってしまう事態を防止し、ほぼ直角に形成されたエッジを常にインク吐出面27に摺接させることができる。
かかるホルダ45支持するストッパプレート47は、板バネ等の弾性部材からなり、略矩形板状に形成されることにより、ヘッドキャップ5の後端部に長手方向に亘って配設されている。このストッパプレート47は、ホルダ45の支持板44が取り付けられた面と反対側の面に当接し、支持する支持部47aが設けられ、この支持部47aの先端がホルダ45の回動領域まで延設されている。そしてストッパプレート47は、ワイプ部43とインク吐出面27とが摺接することによりホルダ45が図12中矢印R方向に傾倒すると、支持部47aがホルダ45と当接され、クリーニングブレード34のさらなる矢印R方向への傾倒を防止する。これにより、ストッパプレート47は、クリーニングブレード34の過剰な倒れ込みを防止することができ、ワイプ部43の先端部43aのエッジが一定の圧力でヘッドカートリッジ4に摺接されるため、ワイプ部43によるインク吐出面27のクリーニング効率が低下することを防止することができる。
以上のような構成を有するクリーニングブレード34は、ワイプ部43の形状よりやや大なる型枠内に金属板等の硬質の材料からなる矩形板状の支持板44を配設した後、ワイプ部43の材料となる高分子材料を流し込み一体に成形する。このとき図19に示すように、支持板44は、ワイプ部43との接着面に予め接着剤が塗布されることにより接着剤層44aが形成されている。そして型枠内に流入された高分子材料が固化されることによってワイプ部43を構成する弾性部57と支持板44とが一体成形されたブレード板58を得る。
ワイプ部43を構成する高分子材料としては、天然ゴム、炭化水素ゴム、クロロブレン系合成ゴム、ニトリルゴム、フッ素ゴム、シリコンゴム等のゴム材を用いることができる。また、支持板44は、ステンレス、アルミニウム、銅、ニッケル、鉄等の金属あるいはこれらの合金を用いることができる。また支持板44には、ホルダ45に取り付けられるための挿通孔が形成されており、ホルダ45に取り付けられることによりワイプ部43はインク吐出面27と所定の角度で当接可能となる。
このブレード板58は、ヘッドカートリッジ4のインク吐出面27に形成されているノズルライン26y〜26kの長手方向よりもやや長尺に形成された支持板44の全長に亘ってワイプ部43を構成する弾性部57が一体に形成されている。弾性部57は、高分子材料が固化することにより略矩形板状に形成され、短手方向の下端部が長手方向の全長に亘って支持板44の接着剤層44aと接合されている。
次いでブレード板58は、弾性部57がワイプ部43の設計寸法に応じた所定形状に切断されることによりワイプ部43が形成される。このとき、ブレード板58は、ワイプ部43の寸法精度をだすとともにワイプ部43先端のエッジを鋭利にするため、支持板44の基端部からワイプ部43の先端部までの距離を取った後、ワイプ部43先端を切断機によって垂直に切断する。これによりエッジがほぼ直角に形成された先端部43aを得る。その後、支持板44がヘッドキャップ5に回動自在に支持されるホルダ45に取り付けられることによりクリーニングブレード34が形成される。
かかるクリーニングブレード34は、金属板等の硬質の材料からなる支持板45とワイプ部43とが一体に成形されているため、長手方向の全長に亘って剛性を有する。また、支持板44とワイプ部43を構成する弾性部57とを一体成形後に、ワイプ部43の形状に応じて切断するため、ワイプ部43の先端部の平坦性を高精度に確保することができる。また型抜き後に弾性部57を切断することによってワイプ部43を形成するため、ワイプ部43の長手方向に亘って、先端部43aのエッジ角度θ2をほぼ直角に形成することができる。さらに、ワイプ部43と支持板44とが一体成形した後に支持板45をホルダ45へ取り付けることから、取付精度を容易に出すことができる。さらにまた、クリーニングブレード34は、長手方向の両角部43bを直角に切断することで、インク吐出面27の全幅に亘って均一なクリーニング効果を発揮することができる。
したがって、クリーニングブレード34によれば、先端部43aのエッジをほぼ直角に形成すると共に、ワイプ部43の全長に亘って平坦性及び剛性を高精度に有しているため、インク吐出面27に付着した増粘インクや紙粉等のゴミをインク吐出面27の全幅に亘って確実に払拭することができる。またワイプ部43の長手方向の両角部43bが直角に切断されているため、インク吐出面27の幅方向の両端側におけるクリーニング性能が低下することもない。なお、クリーニングブレード34は、支持板44とワイプ部43とを一体成型しているため両者の十分な接合強度を有し、また長期に亘って耐久性を維持し、もって寸法精度を長期にわたって維持することができる。
また、クリーニングブレード34は、設計に応じてワイプ部43の先端部43aに切れ込みを入れることにより、スリット59を複数形成してもよい。スリット59は、支持板44に基端部が支持されたワイプ部43の先端部43aに切れ込みを入れることのみにより形成されることから、相隣接するワイプ部43の各ワイプ片43c同士のスリット幅が、略10μm程度とされる。
これは、クリーニングブレード34が、支持板44と弾性部57を一体成形した後、弾性部57を所定形状に切断してワイプ部43を形成するものであり、このワイプ部43の基端部が支持板44に支持されており、また金属板からなる支持板44とワイプ部43との線膨張率が異なることから、合成樹脂からなるワイプ部43の内部に応力が生じ、切り込みが入れられることによって、各ワイプ片43cの両切断面においてこの応力が互いに収縮させる方向に働くためにスリット59が形成されるためである。すなわち、図20に示すように、ブレード板58のワイプ部43は、ゴム材が本来備える収縮性により、図20中矢印S1及びS2に示すように、長手方向に互いに内側に向かって収縮しようとする内部応力が働いており、かかる応力をワイプ部43の基端部を支持する支持板44によって規制している。このように長手方向の収縮力を規制した状態で、ワイプ部43の先端部に長手方向と直交する方向へ切り込みを入れると、図21に示すように、ワイプ部43は、各切断面において内部に向かって収縮しようとする応力が働くため、これにより長手方向に亘って均一にスリット59が形成される。
なお、本実施例においては、合成樹脂としてEPDMを用い、支持板44としてステンレス材を用いた。また、本実施例におけるクリーニングブレード34の各部の寸法は図20に示すとおりである。なお、支持板44には、長手方向に沿って複数箇所に、ホルダ45にビス止めされるための挿通孔が穿設されている。また、支持板44は、ワイプ部材43の基端部を長手方向に亘って支持すると共に、両側面部を支持し、3面で囲むように支持することにより、ワイプ部材43の剛性及び平坦性を確保している。そして、クリーニングブレード34は、所定間隔で一定深さの切れ込みが入れられると、図22に示すように、複数のスリット59が形成され、そのスリット幅は略10μmであった。
このように複数のスリット59が形成されたクリーニングブレード34によれば、ワイプ部43に形成されたスリット59によって隔てられた各ワイプ片43cに内部に収縮しようとする応力が働くことから、ワイプ片43cの切断面同士が密着することや、相隣接するワイプ片43cが重なってしまうこともなく、確実にインク吐出面27のクリーニングを行うことができる。また、ワイプ部43に形成されたスリット59の幅は、略10μm程度であるため、インク吐出面27に形成されたインク吐出ノズル26の径(略14μm〜16μm)よりも小さいため、少なくともワイプ片43cの一部がインク吐出ノズル26に摺接される。したがって、クリーニングブレード34は、インク吐出ノズル26に付着したインクや異物等の残滓を確実にふき取ることができる。
また、複数のスリット59が形成されたクリーニングブレード34は、図23に示すように、インク吐出面27に突出形成されたワイヤボンディング60上を摺接すると共に、このワイヤボンディング60のインク吐出面27との境界部60aにスリット59及び隣接する他のワイプ片43cが位置されることにより、かかる境界部60aにおけるインクや異物等の残滓を確実にふき取ることができる。ここで、本発明が適用されたクリーニングブレード34は、各ワイプ片43c間に設けられたスリット59が上述したように略10μm程度と幅狭に形成されているため、一のワイプ片43cが突状のワイヤボンディング60上を摺接すると、隣接するワイプ片43cがワイヤボンディング60のインク吐出面27との境界部60aの残滓を掻き取ることができる。また、クリーニングブレード34は、インク吐出面27の全面に亘って残滓をふき取ることができる。一方、スリット59が幅広になると、図24に示すように、ワイヤボンディング60上に摺接されるワイプ片43cに隣接するワイプ片43cがインク吐出面27との境界部60aの残滓に届かず、インク吐出面27を確実にふき取ることは困難となってしまう他、インク吐出面27の全面に亘ってスリットにおけるゴミやインク残滓の除去をふき取ることができない。
また、クリーニングブレード34は、図25に示すように、インク吐出面27上に等間隔で断続的に突設されたワイヤボンディング60の形成箇所に対応してスリット59を形成するようにしてもよい。すなわち、ワイヤボンディング60が各ノズルライン26y,26m,26c,26k毎に等間隔でかつ、インク吐出面27の長手方向と直交する方向において重ならない位置に形成されていることから(図7参照)、いずれのワイヤボンディング60の境界部60aにもスリット59が位置するように、ワイヤボンディング60の形成位置に対応してスリット59が入る間隔でもって切れ込みを入れることにより、一のワイプ片43cでワイヤボンディング60上を摺接させ、これに隣接するワイプ片43cで境界部60aを摺接させることができる。なお、ワイヤボンディング60の形成間隔とスリット59の形成間隔とを全く同じにしてもよく、また一又は複数のスリット59を介在させながら、ワイヤボンディング60の位置に対応してスリット59が位置する間隔で形成してもよい。これにより、クリーニングブレード34は、インク吐出面27の全面においてワイヤボンディング60及び境界部60aにおけるインクや異物等の残滓をふき取ることができる。
なお、本発明が適用されたクリーニングブレードでは、支持板44と弾性部57とを一体成形させてブレード板58を得たが、支持板44と弾性部57とを別個に形成し、接合することによりブレード板58を形成し、所定寸法に切断するようにしてもよい。
次いで、クリーニングローラ33及びクリーニングブレード34を切り換える切換部材35について説明する。切換部材35は、図11に示すように、クリーニングローラ33とクリーニングブレード34との間に設けられ、インク吐出面27を転動あるいは摺動可能に付勢されているクリーニングローラ33及びクリーニングブレード34を、ヘッドキャップ5の開閉移動に応じてインク吐出面27より交互に退避するよう切り換えるためのものである。この切換部材35は、クリーニングローラ33の芯金36及びクリーニングブレード34のホルダ45を押圧するスイッチ51と、スイッチ51を直立付勢するスイッチバネ52とを有する。
スイッチ51は、略へ字状に屈折されるとともに下端部に支持孔53が穿設され、この支持孔53にヘッドキャップ5の底面より立設された支持片に突設された回動ピンが挿通されることにより、ヘッドキャップ5の移動方向となる図11中矢印S方向及び反矢印S方向に回動可能に支持されている。またスイッチ51は、支持孔53の下方に係止孔54が穿設されスイッチバネ52が係止されている。
スイッチバネ52は、スイッチ51の係止孔54に係止する係止部55と、ヘッドキャップ5の底面より立設された支持片に突設された係止ピンに係止する環状部56とが形成されている。そしてスイッチバネ52は、スイッチ51を下方に付勢することにより、係止孔54を回動中心としてスイッチ51を常時、スイッチ51が芯金36ともホルダ45とも当接しない直立方向に回動させる。
このような切換部材35は、ヘッドキャップ5がインク吐出面27を開放する図14中矢印O方向に移動されると、スイッチ51がインク吐出面27に押圧されることによりスイッチバネ52の付勢力に対抗して図11中反矢印S方向に回動される。これによりスイッチ51は、クリーニングブレード34側の一側面51aがホルダ45を押圧して、クリーニングブレード34をねじりコイルバネ46の付勢力に対抗して図11中反矢印R方向に回動させ、ワイプ部43をインク吐出面27上から退避させる。一方、クリーニングローラ33は、スイッチ51に芯金36が押圧されることがないため、コイルバネ38の付勢力によってインク吐出面27上に当接可能に臨まされている。従って、ヘッドキャップ5がインク吐出面27を開放する図14中矢印O方向に移動されると、クリーニングローラ33のみがインク吐出面27のクリーニングを行い、クリーニングブレード34によるクリーニングが行われないよう切り換えられる。これにより、クリーニングローラ33によるクリーニング後、クリーニングブレードによる過剰な摺動が抑制されるため、インク吐出ノズル26及びインク吐出面27を保護するとともに、クリーニングブレード34の劣化を防止することができる。
また切換部材35は、ヘッドキャップ5がインク吐出面27を閉塞する図16中矢印C方向に移動されると、スイッチ51がインク吐出面27に押圧されることによりスイッチバネ52の付勢力に対抗して図11中矢印S方向に回動される。これによりスイッチ51のローラ側の他側面51bが芯金36を押圧し、コイルバネ38の付勢力に対抗してクリーニングローラ33をインク吐出面27上から退避させる。一方、クリーニングブレード34は、スイッチ51にホルダ45が押圧されることがないため、ねじりコイルバネ46の付勢力によってインク吐出面27上に当接可能に臨まされている。従って、ヘッドキャップ5がインク吐出面27を閉塞する図16中矢印C方向に移動されると、クリーニングブレード34のみがインク吐出面27のクリーニングを行い、クリーニングローラ33によるクリーニングが行われないよう切り換えられる。
ここで、スイッチ51は、上述したように略へ字状に屈折されることによりクリーニングローラ33側の他側面51bが凹状に形成されている。したがってスイッチ51は、クリーニングローラ33側である図11中矢印S方向に回動されると、凹状の他側面51bがクリーニングローラ33の芯金36と確実に係合して押圧することができ、クリーニングローラ33をインク吐出面27と摺接する位置から退避させることができる。
また、スイッチ51は、クリーニングブレード34側の一側面51aが円弧状に膨出されて形成されている。したがってスイッチ51は、クリーニングブレード34側である図11中反矢印S方向に回動されると、円弧状に膨出された一側面51aがホルダ45を徐々に押圧してスムーズにホルダ45を回動させ、ワイプ部43をインク吐出面27と摺接する位置から退避させることができる。
また、スイッチ51は、インク吐出面27と摺接する頂部が円弧状に形成されている。したがってスイッチ51は、インク吐出面27に摺接する際にもインク吐出面27を傷つけることなく、またスムーズに回動される。
次いで、クリーニングローラ33上のゴミ等の異物を除去するスクレーパ48、吸引部材49及び天板50について説明する。スクレーパ48は、クリーニングローラ33表面の異物を除去しやすいように細かい凹凸があり、且つ、クリーニングローラ33表面のインクを若干吸引できるような、例えばスポンジ等から形成され、略矩形状に形成されることによりヘッドキャップ5の長手方向に亘って配設されている。このスクレーパ48は、ヘッドキャップ5の略中央よりに配設されるとともに、クリーニングローラ33と長手方向に亘って摺接可能な位置に配設されている。そしてスクレーパ48は、インク吐出ノズル26及びインク吐出面27に付着したインクを吸引したクリーニングローラ33が摺動回転されることにより、該クリーニングローラ33に付着したインクかすやゴミ等の異物を掻き取る。またスクレーパ48は、吸引部材49と接触されており、クリーニングローラ33より吸引したインクが該吸引部材49によって吸引、保持される。
この吸引部材49は、インクを吸引、保持可能な例えば不織布等から形成され、シート状に形成されることによりヘッドキャップ5の長手方向に亘って配設されている。また吸引部材49は、ヘッドキャップ5がヘッドカートリッジ4を開放する移動方向先端側にかけて配設されている。この吸引部材49は、スクレーパ48よりも大きい毛管力を有し、該スクレーパ48によって掻き取られたインクを吸引、保持する。これによってクリーニングローラ33及びスクレーパ48は、吸引したインクが飽和することなく、インク吐出ノズル26及びインク吐出面27のクリーニング性能を維持することができる。なお、この吸引部材49は、ヘッドキャップ5の略中央から先端部に亘って広く配設されており、相当量のインクを吸引、保持することができる。
なお、吸引部材49は天板50によって上部を覆われているため、ヘッドキャップ5がヘッドカートリッジ4を閉塞した際にも、吸引部材49とヘッドカートリッジ4のインク吐出面27とが直接対峙することはなく、インク吐出面27が吸引部材49によって吸引、保持されたインクによって汚損されることはない。
この他、ヘッドキャップ5には、クリーニングローラ33とクリーニングブレード34との間に、廃インク受けが底面に配設されている。廃インク受けは、インクを吸着可能なスポンジ等の吸湿材のシートからなり、インク吐出ノズル26からのインク吐出性能の安定化を図るために、クリーニングローラ33によるクリーニング終了後、印刷前に行われる予備吐出によって吐出された廃インク液を吸着する。
次いで、上記ヘッドキャップ5をヘッドカートリッジ4の開閉方向に移動させるキャップ移動機構6について説明する。キャップ移動機構6は、図3及び図26に示すように、プリンタ本体2内に配設されたシャーシの側面部61に組み付けられた支持枠部材62と、この支持枠部材62に対してプリンタ本体2の前後方向にスライド自在に組み合わせられたヘッドキャップホルダ63と、シャーシ側面部61と支持枠部材62との間においてプリンタ本体2の前後方向に移動操作されるラックプレート64と、ウォームギヤ66を介してラックプレート64を移動させる駆動モータ65とを備える。
支持枠部材62は、合成樹脂によって一体に成形された全体略枠状の部材であり、プリンタ本体2内に配設されたシャーシに固定されている。支持枠部材62は、後述するヘッドキャップ5を保持するヘッドキャップホルダ63を、プリンタ本体2の前後方向に亘って移動可能に支持するものであり、プリンタ本体2の印刷位置から前面部に亘る長さを有する。
この支持枠部材62は、図27に示すように相対する前後方向の両側面部62a,62bに、互いに対をなし左右対称の貫通溝からなる第1のガイド溝68と、第2のガイド溝69がそれぞれ形成されている。第1のガイド溝68は、プリンタ本体2の印刷位置に応じて形成され、プンタ本体2の背面側の側面部62c近傍から前面側へと水平に延長された水平溝部68aと、この水平溝部68aの前端部において連通するとともに前面側へ向かって上方へ傾斜する傾斜溝部68bとからなる。なお、水平溝部68aは、後端部68cが背面側へ向かって上方に傾斜されている。また第2のガイド溝69は、両側面部62a,62bの略中央部で第1のガイド溝68の傾斜溝部68bが立ち上がる基端部近傍を起点として前面側へと水平に延長された水平溝部69aと、この水平溝部69aの前端部において連通するとともに前面側へ向かって上方へ傾斜する傾斜溝部69bと、傾斜溝部69bの先端から湾曲しながら下方へ向かって傾斜された湾曲部69dとからなる。なお、水平溝部69aも、後端部69cが背面側へ向かって上方へ傾斜されている。
支持枠部材62は、第1のガイド溝68と第2のガイド溝69とがそれぞれの水平溝部68a,69aの後端部68c,69cの間隔をほぼ等しい長さとし、また上述したヘッドキャップ5の幅方向と直交する奥行き方向の長さとほぼ等しい長さをもって形成されている。また支持枠部材62は、第1のガイド溝68と第2のガイド溝69とが傾斜溝部69bの前端と湾曲部69dの前端との間隔をヘッドキャップ5の奥行き方向の長さとほぼ等しい長さをもって形成されている。
かかる支持枠部材62によってプリンタ本体2の前後方向に亘る移動が支持されるヘッドキャップホルダ63は、合成樹脂材によって成型された相対する側面部63a,63b間を複数の金属梁材により対向間隔を保持して連結されることにより全体略枠状に形成されている。ヘッドキャップホルダ63は、上記ヘッドキャップ5が装着されることにより、このヘッドキャップ5を支持枠部材62の第1のガイド溝68及び第2のガイド溝69に沿ってプリンタ本体2の前後方向に亘って移動させるものである。
このヘッドキャップホルダ63には、側面部63a,63bの内面に、ヘッドキャップ5より凸設されたガイド凸部5a,5b(図17参照)が係合する水平方向のガイド溝(図示せず)がそれぞれ形成されている。各ガイド溝は、それぞれヘッドキャップホルダ63の側面部63a,63bの前方に開口しており、この開口よりガイド凸部5a,5bが挿通されることによりヘッドキャップ5が組み合わされている。
またヘッドキャップホルダ63は、図26に示すように、側面部63a,63bに前後方向に離間してそれぞれ第1のガイドコロ71と第2のガイドコロ72とが突出して設けられている。ヘッドキャップホルダ63は、第1のガイドコロ71が支持枠部材62の第1のガイド溝68内に嵌合されるとともに、第2のガイドコロ72が支持枠部材62の第2のガイド溝69内に嵌合される。これによりヘッドキャップホルダ63は、支持枠部材62にガイドされることによりプリンタ本体2の前後方向に亘ってスライド可能とされる。
具体的に、ヘッドキャップホルダ63は、第1のガイドコロ71が第1のガイド溝68の後端部68cに位置しかつ第2のガイドコロ72が第2のガイド溝69の後端部69cに位置されると、ヘッドキャップ5を、ヘッドカートリッジ4のインク吐出面27を閉塞した閉塞位置に保持する。またヘッドキャップホルダ63は、第1、第2のガイドコロ71,72が第1、第2のガイド溝68,69内を前面側に移動され、それぞれ傾斜溝部68b,69bの上方に位置されると、ヘッドキャップ5を、ヘッドカートリッジ4のインク吐出面27を開放した退避位置に保持する。
なお、ヘッドキャップホルダ63は、この退避位置からさらに前面側へと移動されるようにして、かかる前面側において上記クリーニングブレード34のクリーニングを行うようにしてもよい。すなわち、ヘッドキャップホルダ63は、上記退避位置へ移動されると第1のガイドコロ71が第1のガイド溝68の傾斜溝部68bの前端に位置した状態で第2のガイドコロ72が第2のガイド溝69の湾曲部69dを移動する。これによりヘッドキャップホルダ63は、ヘッドキャップ5を第1のガイドコロ71を支点として前方が下方へ傾斜しながらプリンタ本体2前面側のクリーニング位置に移動させる。このクリーニング位置には、ヘッドキャップ5の上方に、クリーニングブレード34に付着したインクを吸引する吸引シートが配設され、ヘッドキャップ5の移動によってクリーニングブレード34が吸引シートに摺接する。これによりクリーニングブレード34のクリーニングを行い、クリーニング性能を維持することができる。
支持枠部材62を固定するシャーシの側面部61には、図28に示すように、支持枠部材62の第1のガイド溝68と第2のガイド溝69の上方位置に水平方向に延設された第3のガイド溝73が形成されている。この第3のガイド溝73は、後述するラックプレート64の側面に前後方向に離間して設けた一対のカムピン64a,64bが係合される。そして第3のガイド溝73は、これらカムピン64a,64bが転動することによって、ラックプレート64の側面部61に沿った前後方向の移動をガイドする。
シャーシ側面部61に移動をガイドされるラックプレート64は、略矩形板状に形成され、下縁部にラック64cがほぼ全長に亘って設けられている。ラック64cは、シャーシ側面部61に取り付けられた駆動モータ65によって回転駆動されるウォームギヤ66と噛合されている。これにより、ラックプレート64は、駆動モータ65の起動により、第3のガイド溝73に係合されたカムピン64a,64bを介してシャーシ側面部61に沿って移動する。
またラックプレート64には、前面側に高さ方向のカム溝74が形成されている。カム溝74は上記ヘッドキャップホルダ63に設けられた第2のガイドコロ72が第2のガイド溝57を貫通して係合されている。これにより第2のガイドコロ72は、上下方向の移動がガイドされ、ヘッドキャップホルダ63が支持枠部材62の第1、第2のガイド溝68,69に沿った移動が可能とされる。
以上のように構成されたキャップ移動機構6は、初期状態においてヘッドキャップ5がヘッドカートリッジ4を閉塞している閉塞位置から、印刷動作を行うためにヘッドカートリッジ4を開放する開放位置に移動させる際には、後述する制御機構7からの制御信号に基づいて駆動モータ65が駆動される。駆動モータ65の出力軸65a、ウォーム65bを介してウォームギヤ66が回転されると、ウォームギヤ66と係合されているラックプレート64は、カムピン64a,64bがシャーシ側面部61に形成された第3のガイド溝73にガイドされながら水平方向にプリンタ本体2の前面側に移動される。
このときラックプレート64はカム溝74に係合されている第2のガイドコロ72を引っ張るようにして移動するため、該第2のガイドコロ72が設けられたヘッドキャップホルダ63は、ラックプレート64の移動に応じてプリンタ本体2の前面側に移動される。またヘッドキャップホルダ63は、第1のガイドコロ71が支持枠部材62の第1のガイド溝68に沿って移動し、また第2のガイドコロ72が支持枠部材62の第2のガイド溝69に沿って移動していく。
ヘッドキャップホルダ63は、第2のガイドコロ72がラックプレート64に高さ方向に沿って形成された第3のガイド溝73に沿って移動されることから、高さ方向に移動可能とされ、第1、第2のガイドコロ71,72が支持枠部材62に形成された第1、第2のガイド溝68,69の水平溝部68a,69aから傾斜溝部68b,69bにかけて移動可能とされている。これによりヘッドキャップホルダ63は、プリンタ本体2の印刷位置から前面側に水平移動された後、プリンタ本体2の前面部において上方に移動し、プリンタ本体2の形状に応じてやや前傾に保持される。従って、ヘッドキャップホルダ63に保持されているヘッドキャップ5は、ヘッドカートリッジ4の閉塞位置から開放位置へ移動されるとともに、開放位置においては記録紙Pの搬送領域から退避される。
なお上述したように、ヘッドキャップ5は、ヘッドカートリッジ4の退避位置においてクリーニングブレード34のクリーニングを行う吸引シートを設けた場合には、ヘッドカートリッジ4の開放動作に伴ってクリーニングブレード34のワイプ部43を吸引シートに摺接させることにより付着したインクを吸引させることができる。これによりクリーニングブレード34のクリーニングを行い、クリーニング性能を維持することができる。
ヘッドキャップ5がヘッドカートリッジ4を開放する位置までヘッドキャップホルダ63が移動されると、駆動モータ65の駆動が停止され、印刷動作に移る。印刷動作が終了すると、制御機構7による制御信号に基づいて駆動モータ65が起動され、上述したヘッドカートリッジ4の開放動作とは逆の動作を行うことによってヘッドキャップホルダ63をプリンタ本体2の印刷位置まで移動させ、ヘッドキャップ5をヘッドカートリッジ4の閉塞位置に移動復帰させる。
ここで、記録紙トレイ8より記録紙Pをプリンタ本体2内に搬送し、印刷後に記録紙トレイ8上に排出する給排紙機構9について図4を参照しながら説明する。給排紙機構9に記録紙を供給する記録紙トレイ8は、プリンタ本体2の前面底面側に設けられたトレイ装着口80に装着することにより、トレイ8内に収納されている記録紙Pをプリンタ本体2内に給紙することができる。また、記録紙トレイ8は、プリンタ装置1によって印刷された記録紙Pが排出される排紙受け部8aが上面に形成されている。
給排紙機構9は、記録紙トレイ8に収納された記録紙をプリンタ本体2内に給紙する給紙ローラ81と、記録紙Pを1枚づつ分離する分離ローラ82と、記録紙Pの搬送方向をヘッドカートリッジ4側に反転させる反転ローラ83と、記録紙Pをヘッドカートリッジ4からプリンタ本体2の前面側に搬送する搬送ベルト84と、印刷された記録紙Pを排紙受け部8aに排紙する排紙ローラ85とを備える。
給紙ローラ81は、トレイ装着口80に取り付けられた記録紙トレイ8に積層して収納された印刷前の記録紙Pを記録紙トレイ8から取り出し、プリンタ本体2の背面側に搬送する。分離ローラ82は、給紙ローラ81の近傍であって記録紙Pの搬送方向下流側に一対設けられ、積層収納されている記録紙Pを1枚のみ反転ローラ83に送る。反転ローラ83は、プリンタ本体2の背面側に搬送された記録紙Pの搬送方向を反転し、ヘッドカートリッジ4の下側に記録紙Pを搬送する。搬送ベルト84は、ヘッドカートリッジ4の下方に位置し、記録紙Pをヘッドカートリッジ4の下側に保持するとともに印刷された記録紙Pをヘッドカートリッジ4の下側からプリンタ本体2の前面側に送り出す。排紙ローラ85は、記録紙Pを記録紙トレイ8の上面に形成された排紙受け部8aに排出する。
なお詳細は省略するが、プリンタ装置1は、インクカートリッジ11のインク収容部13とヘッドカートリッジ4との間でインクiを循環させる循環用ポンプ機構が設けられている。この循環用ポンプ機構は、インク流路31やインク液室32内に気泡が混入した状態でインクiを吐出することによる印画品質の低下を防止するためにヘッドカートリッジ4内に混入した気泡を除去するためのものである。かかる循環用ポンプ機構は、例えばインクカートリッジ11のインク収容部13とヘッドカートリッジ4に形成されたインク流路31とを循環用ポンプを介して、柔軟性を有する樹脂チューブ等からなるインク還流管により連結されてなる。インク還流管は、ヘッドカートリッジ4に設けられた各色毎のインク流路31の両端部、すなわちヘッドカートリッジ4の長手方向に亘って形成された共通のインク流路31の両端部に接続され、またカートリッジ装着部22に装着されたカートリッジタンク12の長手方向の両端部に接続されている。インク還流管の途中に設けられた循環用ポンプは、ヘッドカートリッジ4のインク流路31とインクカートリッジ11のインク収容部13との間でインクiを循環させるため吸入、排出の圧力発生部となるもので、例えばダイヤフラムポンプが用いられる。
かかる循環用ポンプ機構は、プリンタ装置1の起動時や印画開始前等に駆動され、循環用ポンプによってヘッドカートリッジ4のインク流路31からインクiを吸引し、インクカートリッジ11のインク収容部13へ排出する。このとき、ヘッドカートリッジ4内において、インク流路31の中央から両端部に向かって流れるインク循環となるため、インク流路31内において存在する気泡が両端部に追いやられて、インクカートリッジ11のインク収容部13内に流入され、外部連通孔15から空気中に放出される。これにより循環用ポンプ機構はインクi内に含まれる気泡を除去することができる。
以上のように構成されるプリンタ装置1は、外部に設けられた情報処理装置90から入力された印刷データに基づき、制御機構7により制御される。図29は、当該制御機構7の構成及び動作を説明するためのブロック図である。制御機構7は、プリンタ装置1の印刷を制御する制御回路91を備え、制御回路91は、上述したプリンタ本体2の給排紙機構9、キャップ移動機構6の駆動制御するプリンタ駆動部92と、インクジェットヘッド3に供給される電流等を制御する吐出制御部93と、情報処理装置90と信号の入出力を行う入出力端子94と、制御プログラム等が記録されたROM(Read Only Memory)95と、読み出された制御プログラム等を一旦格納し、必要に応じて読み出されるRAM(Random Access Memory)96と、各部の制御を行う制御部97とを有している。
プリンタ駆動部92は、制御部97からの制御信号に基づき、キャップ移動機構6の駆動モータ65を駆動させてヘッドキャップ5を移動し、インク吐出面27を開閉するようにヘッドキャップ移動機構6を制御する。また、プリンタ駆動部92は、制御部97からの制御信号に基づき、給排紙機構9を構成する駆動モータを駆動させてプリンタ本体2のトレイ装着口80に装着された記録紙トレイ8から記録紙Pを給紙し、所定の搬送速度で装置内を搬送し、印刷後にトレイ装着口80から記録紙Pを排出するように、給排紙機構9を制御する。
吐出制御部93は、制御部97からの制御信号に基づいて、選択的に発熱抵抗体28aにパルス電流を流し、所定の周波数で発熱抵抗体28aを駆動制御する。
入出力端子94は、上述した印刷条件、印刷状態、インク残量等の信号を外部の情報処理装置90に入出力する。ここで、上述した情報処理装置90は、例えば、パーソナルコンピュータやPDA(Personal Digital Assistant)等の電子機器である。
ROM95は、制御部97が行う各処理のプログラムが格納されているメモリである。この格納されているプログラムは、制御部97によりRAM96にロードされる。RAM96は、制御部97によりROM95から読み出されたプログラムやプリンタ装置1の各種状態を記憶する。
制御部97は、例えばCPU(Central Processing Unit)であり、RAM96にロードされたプログラムに基づいて、各部を駆動し、印刷データに応じた印刷を行う。また制御部97は、インク残量検出部24からの情報を受けて警告の表示を行い、また印刷枚数や印刷開始後の経過時間等を管理し、ヘッドキャップ5のクリーニング時期や交換時期を知らせる各種表示を行う。
次に、本発明が適用されたプリンタ装置1の具体的な操作シーケンスについて図30及び図33を参照しながら説明する。プリンタ装置1は、図33(a)に示すようにヘッドキャップ5がヘッドカートリッジ4を閉塞する初期状態において待機中に、プリンタ本体2に設けられた操作ボタンの操作により制御部97に印刷開始の命令がされると、制御部97からの制御信号により給排紙機構9、キャップ移動機構6を次のように駆動して、印刷が可能な状態にする。
先ずプリンタ装置1は、印刷前のインク吐出面27のクリーニングやインク残量検出等のメンテナンスを行う。具体的に制御部97は、ステップ1においてクリーニングの信号が送信すると、ステップ2においてインクカートリッジ11y、11m、11c、11kが正しく装着されているかを判別する。制御部97は、インクカートリッジ11のいずれかでも正しく装着されていない場合には、プリンタ本体2の所定箇所に警告を表示させる(ステップ3)。
ステップ4において制御部97は、インク残量検出部24からの信号を受けて、インクカートリッジ11のインク収容部13に収容されているインクiの残量を判別する。そして制御部97は、インク残量が基準値より少ない場合には、プリンタ本体2の所定箇所に警告を表示させる(ステップ5)。
ステップ6において制御部97は、循環用ポンプ機構を作動させ、ヘッドカートリッジ4のインク流路31を流れるインクiを循環用ポンプで吸引し、インクカートリッジ11のインク収容部13に排出することによってインクiに含まれる気泡を除去する。制御部97は、循環用ポンプが所定回数だけ駆動されたかを判別し、循環用ポンプの駆動回数が所定回数に達すると循環用ポンプ機構を停止する(ステップ7、ステップ8)。
次いで制御部97は、ステップ9においてプリンタ駆動部92に信号を送りキャップ移動機構6を駆動させることにより、図33(b)〜(f)に示すように、ヘッドキャップ5をヘッドカートリッジ4に対して記録紙トレイ8が設けられているプリンタ本体2の前面側に移動させる。これにより、プリンタ装置1では、インクジェットヘッド3のインク吐出面27に設けられたインク吐出ノズル26が外部に露出し、インクiを吐出できるようになる。
ここで、ヘッドキャップ5内には、上述したクリーニングローラ33及びクリーニングブレード34が設けられ、このうちクリーニングローラ33がインク吐出面27と摺動自在に支持されるとともに切換部材35によってクリーニングブレード34がインク吐出面27上から退避されていることから、ヘッドキャップ5がヘッドカートリッジ4のインク吐出面27を開放する図11及び図14中矢印O方向に移動されると、クリーニングローラ33がコイルバネ38の付勢力を受けてインク吐出面27の長手方向の全長に亘って適度な圧力で押圧しながら従動回転して、インク吐出ノズル26及びインク吐出面27に付着したゴミや増粘固化したインクのクリーニングを行う(ステップ10)。
このとき、クリーニングローラ33には、インク吐出面27に接触する外層に界面活性剤溶液が含浸されているため、インクに対する濡れ性が非常に良い。クリーニングローラ33がインク吐出ノズル26に接触すると、瞬時にクリーニングローラ33とインク吐出面27との間にインクの層が形成され、そのインクによって、増粘したインクが再溶解され、粘度を低下させる。それら粘度低下したインクは、濡れ性が高いクリーニングローラ33に吸引され、クリーニングローラ33によるクリーニング効果を向上させることができる。
従って、ヘッドキャップ5の開放動作と同時にクリーニングローラ33によってインク吐出ノズル26及びインク吐出面27に付着した増粘インクやゴミを確実に除去されることから、インク吐出ノズル26からインク滴が真っ直ぐに吐出されるようになり、ヘッドカートリッジ4の液体吐出性能を安定させることができる。
また、クリーニングブレード34は、切換部材35のスイッチ51がインク吐出面27に押圧されて図11中反矢印S方向に回動されることにより、スイッチ51の他側面51bにホルダ45が押圧されて図11中反矢印R方向に回動され、ワイプ部43がインク吐出面27上より退避されている。したがってクリーニングローラ33によるクリーニングの後、クリーニングブレード34による過剰な摺動が抑制されるため、インク吐出ノズル26及びインク吐出面27を保護するとともに、クリーニングブレード34の劣化を防止することができる。
なお、クリーニングローラ33によって吸引されたインクはスクレーパ48によって吸引された後、吸引部材49に吸引される。したがって、クリーニングローラ33は、吸引したインクが飽和することなく、クリーニング性能を維持することができる。
また制御部97は、吐出制御部93に制御信号を送り、クリーニングローラ33によってクリーニングが行われたインク吐出ノズル26から順次、インクiを予備吐出させる(ステップ11)。予備吐出は、クリーニングローラ33によって増粘インクが吸引されたインク吐出ノズル26内の吐出性能を整えるために行うもので、クリーニングローラ33とクリーニングブレード34との間に設けられた吸湿材のシートからなる廃インク受けに向けてクリーニングローラ33によるクリーニングが行われたノズルライン26y、26m、26c、26kの順にインクiの液滴を吐出することにより行う。
予備吐出の後、ステップ12において制御部97は再度各インクカートリッジ11内に収容されたインクiの残量を検出する。そしてインク残量が基準値よりも少ない場合にはプリンタ本体2の所定箇所に警告を表示させるよう制御する(ステップ13)。
予備吐出後においても各インクカートリッジ11内に基準値以上の量のインクが残存している場合には、印刷動作を開始する(ステップ14)。具体的に制御部97は、プリンタ駆動部92に制御信号を送って給排紙機構9を駆動させる。給排紙機構9は、記録紙トレイ8から給紙ローラ81によって記録紙Pを引き出し、互いに反対方向に回転する一対の分離ローラ82a,82bによって1枚の記録紙Pのみを反転ローラ83に送り、反転ローラ83で搬送方向をインク吐出面27側に反転させ、インク吐出面27と対向する位置に設けた搬送ベルト84上に記録紙Pを搬送する。プリンタ装置1は、搬送ベルト84に搬送した記録紙Pをプラテン板86で印刷位置に支持し、記録紙Pをインク吐出面27と平行に対向させる。プリンタ装置1では、給排紙機構9により、所定の搬送速度、例えば49.5mm/sec以上で記録紙Pを搬送する。
なお、このときまでにヘッドキャップ5は、図33(g)及び図33(h)に示すように、記録紙Pの搬送領域から退避され、下方に待機していた搬送ベルト84及びプラテン板86が上昇する。
次に、プリンタ装置1は、制御部97からの制御信号により、吐出制御部93が駆動して、ヘッドカートリッジ4の発熱抵抗体28aに選択的に所定の周波数、例えば9kHz以上でパルス電流を流し、発熱抵抗体28aを加熱する。プリンタ装置1は、発熱抵抗体28aを加熱することによって、図8に示すように、インク吐出面27と対向する位置に搬送された記録紙Pに対してインク吐出ノズル26より各色のインクiを微小な液滴の状態にして吐出し、インクドットからなる画像や文字等を多色印刷する。
次に、プリンタ装置1は、印刷された記録紙Pを記録紙トレイ8方向に回転する給排紙機構9の搬送ベルト84と、搬送ベルト84と対向し、記録紙トレイ8側に設けられた排紙ローラ85とによって記録紙Pを記録紙トレイ8の排紙受け部8aに送り出す。
ステップ15において印刷動作が終了すると、ヘッドキャップ閉トリガー信号が入力され、図33(i)に示すように搬送ベルト84及びプラテン板86がヘッドキャップ5の移動領域より下方に退避するとともに、図16及び図33(j)に示すように、ヘッドキャップ5が、ヘッドカートリッジ4を閉塞する矢印C方向に示す軌跡を通って移動する(ステップ16)。このとき、ヘッドキャップ5に設けられた切換部材35は、スイッチ51がインク吐出面27に押圧されて、図11中矢印S方向に回動される。したがって、クリーニングブレード34は、ねじりコイルバネ46の付勢力を受けたホルダ45が図11中矢印R方向に回動され、ワイプ部43がインク吐出面27と摺接可能とされる。
このときクリーニングブレード34は、ワイプ部43の先端部43aの摺動方向背面とインク吐出面27とが鈍角をなすようにホルダ45がストッパプレート47によって支持されているため、先端部43aのエッジをインク吐出面27に当接させながら摺動させることができる。これによりヘッドキャップ5が、ヘッドカートリッジ4の閉塞方向へ移動されると、クリーニングブレード34によってインク吐出面27に付着したインクやゴミ等のクリーニングを行うことができる(ステップ17)。また、クリーニングブレード34は、先端部43aのエッジをほぼ直角に形成し、ワイプ部43の主面ではなく当該エッジをインク吐出面27に摺接させることで、確実に残存インクや異物を除去することができる。さらにクリーニングブレード34は、ワイプ部43が予めインク吐出面27と鈍角をなすように傾斜して支持されているため、インク吐出面27との摺接が終了した際にも、ワイプ部43が自身の弾性によって摺動方向に起立した勢いで掻き取ったインクを周囲に撒き散らすことを抑制することができる。
また切換部材35は、スイッチ51の一側面51aがクリーニングローラ33の芯金36を下方に押圧してクリーニングローラ33をインク吐出面27より退避させる。すなわち、このヘッドキャップ5が元の位置に戻るときには、クリーニングローラ33はインク吐出面27をクリーニングしない。これは、上述したように、印刷後にもクリーニングローラ33をインク吐出面27に従動回転されあるいは摺動すると、インク液室32に貯留されている未使用インクを必要以上に吸引し不経済となるほか、クリーニングローラ33の吸引性能が低下し、消耗品であるクリーニングローラ33の寿命が短くなってしまうからである。その後、図13及び図33(a)に示すように、ヘッドキャップ5が元の位置に戻って、再びヘッドカートリッジ4に装着されてインク吐出面27を乾燥等から保護する(ステップ18)。
次いで、本発明が適用されたプリンタ装置1の操作シーケンスの他の例について図31及び図33を参照しながら説明する。図31に示すクリーニングシーケンスは、プリンタ装置1の操作モードによってヘッドキャップ5のクリーニング動作の回数を異ならせるものである。プリンタ装置1の操作モードとは、例えばプリンタ装置1の起動時、インクカートリッジ11又はヘッドカートリッジ4若しくはヘッドキャップ5の交換直後、白黒印刷を所定枚数続けるコピーモード時、プリンタ装置1の操作者が望んだ任意の時等、ヘッドカートリッジ4のクリーニングが必要とされる様々な状態を指す。そして、プリンタ装置1は、各モードに応じてヘッドキャップ5によるヘッドカートリッジ4の開閉動作を所定回数繰り返し、ヘッドキャップ4のクリーニングを行う。
具体的に、プリンタ本体2は、図31に示すように、操作モード、ヘッドカートリッジ4のクリーニングを行うタイミング及び回数が制御部97によって管理されており、上述したようなヘッドカートリッジ4のクリーニングを行うタイミングになると、制御部97よりクリーニングの信号が送信される(ステップ21)。その後のクリーニング動作前におけるメンテナンス工程、すなわち各色のインクカートリッジ11が装着されているか否か、インクカートリッジ11内のインク残量は足りているか否か及び循環用ポンプ機構によるインクiに混在する気泡の除去といった工程(ステップ22〜ステップ28)が、上記ステップ1〜ステップ8と同様に行われる。
かかるメンテナンス工程に次いで、クリーニング工程に移る。クリーニング工程において制御部97は、プリンタ駆動部92に信号を送りキャップ移動機構6を駆動させることにより、図33(b)〜(h)に示すように、ヘッドキャップ5がヘッドカートリッジ4に対して記録紙トレイ8が設けられているプリンタ本体2の前面側に移動させる(ステップ29)。
このとき、ヘッドキャップ5に設けられたクリーニングローラ33がコイルバネ38の付勢力を受けてインク吐出面27を適度な圧力で押圧しながら従動回転して、インク吐出ノズル26及びインク吐出面27に付着したゴミや増粘固化したインクのクリーニングを行う(ステップ30)。クリーニングローラ33には、インク吐出面27に接触する外層に界面活性剤溶液が含浸されているため、インクに対する濡れ性が非常に良い。クリーニングローラ33がインク吐出ノズル26に接触すると、瞬時にクリーニングローラ33とインク吐出面27との間にインクの層が形成され、そのインクによって、増粘したインクが再溶解され、粘度を低下させる。それら粘度低下したインクは、濡れ性が高いクリーニングローラ33に吸引され、クリーニング効果を向上される。
また、ヘッドキャップ5に設けられたクリーニングブレード34は、切換部材のスイッチ51がインク吐出面27に押圧されて図11中反矢印S方向に回動されることにより、スイッチ51の他側面51bにホルダが45が押圧されて、図11中反矢印R方向に回動され、ワイプ部43がインク吐出面27上より退避されている。したがってクリーニングローラ33によるクリーニングの後、クリーニングブレード34による過剰な摺動が抑制されるため、インク吐出ノズル26及びインク吐出面27を保護するとともにクリーニングブレード34の劣化を防止することができる。
また制御部97は、吐出制御部93に制御信号を送り、クリーニングローラ33によってクリーニングが行われたインク吐出ノズル26からインクiを予備吐出させる(ステップ31)。予備吐出は、クリーニングローラ33によって増粘インクが吸引されたインク吐出ノズル26内の吐出性能を整えるために行うもので、クリーニングローラ33によるクリーニングが行われたノズルライン26y、26m、26c、26kの順にクリーニングローラ33とクリーニングブレード34との間に設けられた吸湿材のシートからなる廃インク受けに向けて順次インクiの液滴を吐出することにより行う。
予備吐出の後、ステップ32において制御部97は再度各インクカートリッジ11内に収容されたインクiの残量を検出する。そしてインク残量が基準値よりも少ない場合にはプリンタ本体2の所定箇所に警告を表示させるよう制御する(ステップ33)。
ステップ34においてインク残量の検出後、ヘッドキャップ閉トリガー信号が入力され、ヘッドキャップ5は、図33(j)に示すように、矢印C方向に示す軌跡を通って移動する(ステップ34)。このとき、ヘッドキャップ5に設けられた切換部材35は、スイッチ51がインク吐出面27に押圧されて、図11中矢印S方向に回動される。したがって、クリーニングブレード34は、ねじりコイルバネ46の付勢力を受けたホルダ45が図11中矢印R方向に回動され、ワイプ部43がインク吐出面27と摺接可能とされる。これによりヘッドキャップ5が、ヘッドカートリッジ4の閉塞方向へ移動されると、クリーニングブレード34によってインク吐出面27に付着したインクやゴミ等のクリーニングが行われる(ステップ35)。
また切換部材35は、スイッチ51の一側面51aがクリーニングローラ33の芯金36を下方に押圧してクリーニングローラ33をインク吐出面27より退避させる。すなわち、上述した理由により、ヘッドキャップ5が元の位置に戻るときには、クリーニングローラ33はインク吐出面27をクリーニングしない。その後、図13及び図33(a)に示すように、ヘッドキャップ5が元の位置に戻って、再びヘッドカートリッジ4に装着されてインク吐出面27を乾燥等から保護する(ステップ36)。
制御部97は、かかるクリーニング動作の回数を管理し、操作モードに応じた所定回数だけヘッドキャップ5の往復動作、すなわちクリーニングローラ33及びクリーニングブレード34によるヘッドカートリッジ4のクリーニングが行われたかを判別する(ステップ37)。このヘッドカートリッジ4のクリーニングの回数は、操作モードに応じて異なり、例えばプリンタ装置1の起動時には3回(ヘッドキャップ5を3往復)、インクカートリッジ11又はヘッドカートリッジ4若しくはヘッドキャップ5の交換直後には10回(同10往復)、プリンタ装置1の操作者がクリーニングを望んだ任意の時には10回(同10往復)、のごとく、予めROM95にプログラムされている。このヘッドキャップ5を往復させることによるヘッドカートリッジ4のクリーニング回数と操作モードとの関係は適宜設定されるものである。
そして制御部97は、操作モードに応じたヘッドキャップ5の往復回数に達するまでヘッドキャップ5の往復動作を続けるように制御する。これにより、プリンタ装置1は、ヘッドカートリッジ4に対し、適宜必要なクリーニングが施されるため、常にインク吐出ノズル26及びインク吐出面27を清浄に保つことができ、安定したインク吐出性能を維持することができる。
次いで、本発明が適用されたプリンタ装置1の操作シーケンスのさらに他の例について図32及び図33を参照しながら説明する。図32に示すクリーニングシーケンスは、プリンタ装置1が印刷を開始した後、所定枚数を印刷した段階でヘッドカートリッジ4のクリーニングを行うものである。すなわち、インク吐出ノズル26によっては、ヘッドキャップ5が開放後、しばらくしてからインク液滴を吐出する場合があるが、インク吐出までにノズル内のインクが増粘し、またインク吐出面27に紙粉等のゴミが付着することなどにより、正常なインク吐出が困難となる場合がある。したがって、プリンタ装置1では、制御部97によって印刷枚数を管理し、印刷動作を開始した後、所定枚数を印刷した段階で印刷動作を一旦停止し、定期的にヘッドカートリッジ4のクリーニングを行うこととした。
具体的に、プリンタ本体2は、図32に示すように、操作者によって印刷開始操作がされると、制御部により印刷信号が送信される(ステップ41)。その後のクリーニング動作前におけるメンテナンス工程、すなわち各色のインクカートリッジ11が装着されているか否か、インクカートリッジ11内のインク残量は足りているか及び循環用ポンプ機構によるインクiに混在する気泡の除去といった工程(ステップ42〜ステップ48)が、上記ステップ1〜ステップ8と同様に行われる。
かかるメンテナンス工程に次いで、印刷工程に移る。印刷工程において制御部97は、プリンタ駆動部92に信号を送りキャップ移動機構6を駆動させることにより、図33(b)〜(h)に示すように、ヘッドキャップ5がヘッドカートリッジ4に対して記録紙トレイ8が設けられているプリンタ本体2の前面側に移動される(ステップ49)。
このとき、ヘッドキャップ5に設けたクリーニングローラ33がコイルバネ38の付勢力を受けてインク吐出面27を適度な圧力で押圧しながら従動回転して、インク吐出ノズル26及びインク吐出面27に付着したゴミや増粘固化したインクのクリーニングを行う(ステップ50)。クリーニングローラ33には、インク吐出面27に接触する外層に界面活性剤溶液が含浸されているため、インクに対する濡れ性が非常に良い。クリーニングローラ33がインク吐出ノズル26に接触すると、瞬時にクリーニングローラ33とインク吐出面27との間にインクの層が形成され、そのインクによって、増粘したインクが再溶解され、粘度を低下させる。それら粘度低下したインクは、濡れ性が高いクリーニングローラ33に吸引され、クリーニング効果が向上される。
また、ヘッドキャップ5に設けられたクリーニングブレード34は、切換部材のスイッチ51がインク吐出面27に押圧されて図11中反矢印S方向に回動されることにより、スイッチ51の他側面51bにホルダ45が押圧されて、図11中反矢印R方向に回動され、ワイプ部43がインク吐出面27上より退避されている。したがってクリーニングローラ33によるクリーニングの後、クリーニングブレード34による過剰な摺動が抑制されるため、インク吐出ノズル26及びインク吐出面27を保護するとともにクリーニングブレード34の劣化を防止することができる。
また制御部97は、吐出制御部93に制御信号を送り、クリーニングローラ33によってクリーニングが行われたインク吐出ノズル26からインクiを予備吐出させる(ステップ51)。予備吐出は、クリーニングローラ33によって増粘インクが吸引されたインク吐出ノズル26内の吐出性能を整えるために行うもので、クリーニングローラ33によるクリーニングが行われたノズルライン26y、26m、26c、26kの順にクリーニングローラ33とクリーニングブレード34との間に設けられた吸湿材のシートからなる廃インク受けに向けて順次インクiの液滴を吐出することにより行う。
予備吐出の後、ステップ52において制御部97は再度各インクカートリッジ11内に収容されたインクiの残量を検出する。そしてインク残量が基準値よりも少ない場合にはプリンタ本体2の所定箇所に警告を表示させるよう制御する(ステップ53)。
予備吐出後においても各インクカートリッジ11内に基準値以上の量のインクが残存している場合には、印刷動作を開始する(ステップ54)。具体的に制御部97は、プリンタ駆動部92に制御信号を送って給排紙機構9を駆動させて記録紙Pを引き出しインク吐出面27と平行に対向させる。次にプリンタ装置1は、制御部97からの制御信号により、吐出制御部93が駆動して、ヘッドカートリッジ4の発熱抵抗体28aに選択的にパルス電流を流し、発熱抵抗体28aを加熱する。プリンタ装置1は、発熱抵抗体28aを加熱することによって、図8に示すように、記録紙Pに対してインク吐出ノズル26より各色のインクiを微小な液滴の状態にして吐出し、インクドットからなる画像や文字等を多色印刷し、記録紙トレイ8の排紙受け部8aに送り出していく。
そしてプリンタ装置1は、制御部97が、連続印刷を行っていくうちに印刷枚数が直前のクリーニング動作、ここでは印刷開始時におけるヘッドキャップ5の開放動作から、予め定められた一定の枚数、例えば3枚に達したかを判別する(ステップ55)。
一定枚数に達した場合には、制御部97は一旦印刷動作を停止させる(ステップ56)。そして制御部97はヘッドキャップ閉トリガー信号を送信し、ヘッドキャップ5を、図16及び図33(j)に示すように、矢印C方向に示す軌跡を通って移動させる(ステップ57)。このとき、ヘッドキャップ5に設けられたクリーニングブレード34は、ねじりコイルバネ46の付勢力を受けたホルダ45が図11中矢印R方向に回動されることにより、インク吐出面27に対して摺動方向背面側が鈍角となるように支持されたワイプ部43の先端部43aがインク吐出面27と摺接しインク吐出面27に付着したインクやゴミ等のクリーニングを行う(ステップ58)。
またヘッドキャップ5によるヘッドカートリッジ4の閉塞動作においては、上述した理由により、切換部材35がクリーニングローラ33の芯金36を下方に押圧してクリーニングローラ33をインク吐出面27より退避させることにより、クリーニングローラ33はインク吐出面27をクリーニングしない。その後、図13及び図33(a)に示すように、ヘッドキャップ5がヘッドカートリッジ4を閉塞する元の位置に戻り、閉塞動作が終了する(ステップ59)。
次いで、制御部97によりヘッドカートリッジ開トリガー信号がプリンタ駆動部92に送信され、図33(b)〜(h)に示すように、キャップ移動機構6によってヘッドキャップ5がヘッドカートリッジ4を開放するプリンタ本体2の前面側に移動され、上述したクリーニングローラ33によるクリーニング、予備吐出、インク残量検出を経て印刷動作が再開される(ステップ49〜ステップ54)。これにより、一定枚数を印刷したヘッドカートリッジ4は、インク吐出ノズル26及びインク吐出面27のクリーニングがされるため、安定したインク吐出を維持でき、印刷品質の低下を防止することができる。
印刷再開後、制御部97は、連続印刷の枚数が直前のクリーニング動作、ここでは印刷再開直前におけるクリーニング動作から、一定枚数に達したかを判別し(ステップ55)、一定枚数に達するごとに印刷を一旦停止し、上述したヘッドキャップ5の開閉によるクリーニングを行う。これにより、ヘッドカートリッジ4は、定期的にクリーニングが施されることからインク吐出ノズル26及びインク吐出面27を常に清浄に保つことができ、安定した印刷品質を保持することができる。
連続印刷中、印刷枚数がクリーニングを要する一定枚数に達しない場合、印刷動作が終了したかを判別する(ステップ60)。そして予定の印刷が終了していない場合には、各インクカートリッジ11内に収容されたインクiの残量を検出し(ステップ53)、基準値以上の量のインクが残存している場合には、印刷動作を続行する(ステップ54)。
一方、ステップ60において予定の印刷が終了した場合には、制御部97によってキャップ閉トリガーがプリンタ駆動部92に送信され、ヘッドキャップ5が図16及び図33(j)に示すように、矢印C方向に示す軌跡を通って移動する(ステップ61)。
このとき、ヘッドキャップ5に設けられたクリーニングブレード34は、ねじりコイルバネ46の付勢力を受けたホルダ45が図11中矢印R方向に回動されることにより、ワイプ部43がインク吐出面27と摺接しインク吐出面27に付着したインクやゴミ等のクリーニングを行う(ステップ62)。
またヘッドキャップ5によるヘッドカートリッジ4の閉塞動作においては、上述した理由により、切換部材35がクリーニングローラ33の芯金36を下方に押圧してクリーニングローラ33をインク吐出面27より退避させることにより、クリーニングローラ33はインク吐出面27をクリーニングしない。その後、図13及び図33(a)に示すように、ヘッドキャップ5がヘッドカートリッジ4を閉塞する元の位置に戻り、閉塞動作が終了する(ステップ63)。
なお、本操作シーケンスにおいては、ヘッドカートリッジ4のクリーニングを行う印刷枚数は、カラー印刷の場合や白黒印刷といった印刷モードに応じて適宜変更することができる。また、クリーニング時におけるヘッドキャップ5の往復回数も、印刷モードに応じて1回若しくは複数回に適宜設定することができる。
また本操作シーケンスにおいては、ヘッドカートリッジ4のクリーニング後の印刷枚数に応じて定期的にクリーニングを行う以外に、ヘッドカートリッジ4のクリーニング後の経過時間に応じて定期的にヘッドキャップ5の往復動作を行い、ヘッドカートリッジ4のクリーニングを行うようにしてもよい。この場合、制御部97は、印刷開始後の経過時間を管理し、予め定められた一定時間が経過した場合、印刷中の記録紙の印刷が終了した後、一旦印刷を停止し、ヘッドカートリッジ4のクリーニングを行うように制御する。これによりヘッドキャップ5が開放され、印刷が開始された後、一定時間が経過することによりインク吐出ノズル26内のインクが増粘し、あるいはインク吐出面27に紙粉等のゴミが付着した場合にも、定期的にクリーニングを行うことで、常にヘッドカートリッジ4を清浄に保つことができる。
なお、印刷開始後の経過時間に応じてヘッドカートリッジ4のクリーニングを行うシーケンスにおいても、ヘッドカートリッジ4のクリーニングを行う経過時間は、カラー印刷の場合や白黒印刷の場合といった印刷モードに応じて適宜変更することができ、また、クリーニング時におけるヘッドキャップ5の往復回数も印刷モードに応じて適宜設定することができる。
次いで、本発明が適用されたクリーニングブレードを2枚備えた実施例について説明する。なお、以下の実施例において、上記プリンタ装置1と同一の部材については同一の符号を付してその詳細を省略する。図34に示すように、ヘッドキャップ5は、2枚のクリーニングブレード100,101を備えている。各クリーニングブレード100,101は、上述したクリーニングブレード34と同様に、インク吐出面27に付着したインク残滓や異物を取り除くものであり、それぞれワイプ部102,103と各ワイプ部102,103を支持する支持板104,105とを備えこれらがホルダ106を介してヘッドキャップ5の底面側にヘッドキャップ5の移動方向に対して回動自在に取り付けられている。
クリーニングブレード100,101は、クリーニングブレード34と同様に、ヘッドカートリッジ4のインク吐出面27の長手方向と平行となるように、ヘッドキャップ5に取り付けられている。そしてクリーニングブレード100,101は、ヘッドキャップ5が移動されると、各ワイプ部102,103の先端部102a,103aがインク吐出面27に押し当てられて弾性変形しながら摺動することにより、該インク吐出面27に付着して増粘固化したインクやゴミ等を払拭していく。
インク吐出面27に摺動されるワイプ部102,103は、ゴム等の合成樹脂を略矩形状に成型した後、外縁部を切断することにより形成される。これによりワイプ部102,103は、先端部102a,103aの長手方向に亘る側縁部分のエッジがほぼ直角に形成される。そしてワイプ部102,103は、このエッジをインク吐出面27に摺接させることによって、インク吐出面27上に付着した増粘インクやゴミ等を確実に払拭する。このワイプ部102,103を支持する支持板104,105は、金属板等の硬質の材料からなり、所定の金型内に配置されワイプ部102,103の原料となる合成樹脂が流された後、当該金型から抜き取られることにより、ワイプ部102,103と一体にされる。
この支持板44を回動可能に支持するホルダ106は、ヘッドキャップ5の底面に該ヘッドキャップ5の移動方向に回動自在に取り付けられることにより、各クリーニングブレード100,101を一体に回動可能に保持するものである。このホルダ106は、一辺に各支持板104,105が取り付けられ、他辺には一端がヘッドキャップ5に係止されたねじりコイルバネ46の他端が係止されている。これによりホルダ106は、常時ワイプ部102,103がインク吐出面27上に臨まされる図35中矢印R方向に回動付勢されている。
そして、各クリーニングブレード100,101は、ヘッドキャップ5が上記キャップ移動機構6によって図13に示すヘッドカートリッジ4を閉塞している初期状態からヘッドカートリッジ4を開放する図14中矢印O方向に移動されると、上記切換部材35によってホルダ106が図35中反矢印R方向に回動されワイプ部102,103がインク吐出面27より退避される。また、クリーニングブレード100,101は、ヘッドキャップ5がヘッドカートリッジ4を開放した図15に示す開放位置からヘッドカートリッジ4を閉塞する図16中矢印C方向に移動されると、切換部材35による付勢力が解かれ、ねじりコイルバネ46の付勢力によって図36中矢印R方向に回動され、各ワイプ部102,103がインク吐出面27上に臨まされる。そして図37(a)及び(b)に示すように、ヘッドキャップ5の移動によってワイプ部102,103がインク吐出面27を摺動し、インク吐出面27に付着したインクやゴミ等を払拭していく。
ここで図34に示すように、クリーニングブレード100,101は、いずれもワイプ部102,103の先端部102a,103aの摺動方向背面側とインク吐出面27とのなす角θ1が鈍角をなすようにホルダ106がストッパプレート47によって支持されている。このワイプ部102とワイプ部103とは、クリーニングブレード100,101がホルダ106に支持されることにより、インク吐出面27とのなすθ1はともに同じ角度とされる。またクリーニングブレード34と同様にクリーニングブレード100,101は、ワイプ部102,103の先端部102a,103aのエッジのなす角θ2がほぼ直角に形成されている(図18(b))。これによりクリーニングブレード100,101は、ほぼ直角に形成されたワイプ部102,103のエッジをインク吐出面27に摺動させることができ、またワイプ部102,103がインク吐出面27と摺動することにより、ヘッドキャップ5の底面側へ過剰に倒れ込み、インク吐出面27にワイプ部102,103の主面のみが当接されエッジを当接させることができなくなる事態を防止することができる。
この各ワイプ部102,103とインク吐出面27とがなす角θ1は、上記クリーニングブレード34と同様の理由により、90°より大きく、135°より小さい角度が好ましい。またクリーニングブレード100,101は、いずれもワイプ部102,103の先端部102a,103aがインク吐出面27に対してほぼ同じ高さとなるような長さに形成されている。これによりクリーニングブレード100,101は、各ワイプ部102,103が同じ圧力でインク吐出面27を摺動する。
また各クリーニングブレード100,101は、上記クリーニングブレード34と同様の材料、製法にて製造される。そして支持板104,105に穿設された挿通孔を連続させると共に、同じくホルダ106に穿設された挿通孔に合わせ、ネジ止めすることにより、クリーニングブレード100,101を一体にしてホルダ106に取り付けることができる。このとき、各クリーニングブレード100,101は、ワイプ部102,103の先端部102a,103aの高さが揃えられている。
また、かかる2枚のクリーニングブレード100,101は、同様のクリーニング性能を有するように形成するほか、それぞれ異なるクリーニング特性を備えるように形成してもよい。例えば、インク吐出面27の摺動方向後方に位置するクリーニングブレード101は、ワイプ部103の主面を平坦に形成し、摺動方向前方に位置するクリーニングブレード100は、ワイプ部102の先端部102aに切れ込みを入れることにより、スリット108を複数形成してもよい(図22)。
スリット108は、上記スリット59と同様に、支持板104に基端部が支持されたワイプ部102の先端部102aに切れ込みを入れることのみにより形成されることから、相隣接するワイプ部102の各ワイプ片102b同士のスリット幅が、略10μm程度とされる。
このように複数のスリット108が形成されたクリーニングブレード100によれば、ワイプ部102に形成されたスリット108によって隔てられた各ワイプ片102bに内部に収縮しようとする応力が働くことから、ワイプ片102bの切断面同士が密着することや、相隣接するワイプ片102bが重なってしまうこともなく、確実にインク吐出面27のクリーニングを行うことができる。また、ワイプ部102に形成されたスリット108の幅は、略10μm程度であるため、インク吐出面27に形成されたインク吐出ノズル26の径(略14μm〜16μm)よりも小さいため、少なくともワイプ片102bの一部がインク吐出ノズル26に摺接される。したがって、クリーニングブレード100は、インク吐出ノズル26に付着したインクや異物等の残滓を確実にふき取ることができる。
また、複数のスリット108が形成されたクリーニングブレード100は、図23に示すように、インク吐出面27に突出形成されたワイヤボンディング60上を摺接すると共に、このワイヤボンディング60のインク吐出面27との境界部60aにスリット108及び隣接する他のワイプ片102bが位置されることにより、かかる境界部60aにおけるインクや異物等の残滓を確実にふき取ることができる。ここで、本発明が適用されたクリーニングブレード100は、各ワイプ片102b間に設けられたスリット108が上述したように略10μm程度と幅狭に形成されているため、一のワイプ片102bが突状のワイヤボンディング60上を摺接すると、隣接するワイプ片102bがワイヤボンディング60のインク吐出面27との境界部60aの残滓を掻き取ることができる。また、クリーニングブレード100は、インク吐出面27の全面に亘って残滓をふき取ることができる。一方、スリット108が幅広になると、図24に示すように、ワイヤボンディング60上に摺接されるワイプ片102bに隣接するワイプ片102bがインク吐出面27との境界部60aの残滓に届かず、インク吐出面27を確実にふき取ることは困難となってしまう他、インク吐出面27の全面に亘ってスリットにおけるゴミやインク残滓の除去をふき取ることができない。
また、クリーニングブレード100は、図25に示すように、インク吐出面27上に等間隔で断続的に突設されたワイヤボンディング60の形成箇所に対応してスリット108を形成するようにしてもよい。すなわち、ワイヤボンディング60が各ノズルライン26y,26m,26c,26k毎に等間隔でかつ、インク吐出面27の長手方向と直交する方向において重ならない位置に形成されていることから(図7参照)、いずれのワイヤボンディング60の境界部60aにもスリット59が位置するように、ワイヤボンディング60の形成位置に対応してスリット108が入る間隔でもって切れ込みを入れることにより、一のワイプ片102bでワイヤボンディング60上を摺接させ、これに隣接するワイプ片102bで境界部60aを摺接させることができる。なお、ワイヤボンディング60の形成間隔とスリット108の形成間隔とを全く同じにしてもよく、また一又は複数のスリット108を介在させながら、ワイヤボンディング60の位置に対応してスリット108が位置する間隔で形成してもよい。これにより、クリーニングブレード100は、インク吐出面27の全面においてワイヤボンディング60及び境界部60aにおけるインクや異物等の残滓をふき取ることができる。
また、かかるスリット108が設けられたクリーニングブレード100を、インク吐出面27の摺動方向前方に設け、スリットが設けられていないクリーニングブレード101をクリーニングブレード100の後方に設けることで、クリーニングブレード101にクリーニングブレード100のスリット108の軌跡上を摺動させることができ、先行するクリーニングブレード100が掻き取り残した残滓を除去することができる。
なお、クリーニングブレード100とクリーニングブレード101とは、摺動方向前方のクリーニングブレード100のワイプ部102がインク吐出面27を摺動することにより後方に撓んだ場合にも、摺動方向後方のクリーニングブレード101と接触しない程度の距離を隔ててホルダ106に支持されている。
この他、クリーニングブレード100,101は、スリット108の有無によって異なるクリーニング性能を設けるほかに、例えばワイプ部102とワイプ部103とで、インク吐出面27とのなす角θ1を違えることにより、あるいはワイプ部102,103を構成する樹脂材料や成形方法によって硬度を違えることにより、クリーニング性能の異なる2枚のクリーニングブレードを備えるようにしてもよい。
以上、本発明が適用されたプリンタ装置1についてラインヘッド型のプリンタ装置を例に挙げて説明したが、本発明はラインヘッド型のプリンタ装置に限定されることはなく、例えばインク吐出ヘッドが記録紙Pの走行方向と略直交する方向に移動するシリアルヘッド型の液体吐出装置にも適用可能である。
また、本発明が適用されたプリンタ装置1は、クリーニングローラ33は必ずしも設ける必要はなく、クリーニングブレードのみ、あるいはクリーニングブレードとクリーニングローラ33その他のクリーニング部材とを備えた液体吐出装置に適用することもできる。
また、本発明を適用したインクカートリッジ11がプリンタ装置1に装着される場合について説明したが、本発明は、以上の例に限定されるものではなく、液体を吐出する他の液体吐出装置に広く装着することが可能である。例えばファクシミリやコピー機、液体中のDNAチップ用吐出装置(特開2002−253200号公報)、プリンタ配線基板の配線パターンを形成するための導電性粒子を含む液体を吐出する液体吐出装置等に液体を供給するための液体カートリッジにも適用可能である。
1 インクジェットプリンタ装置、2 プリンタ本体、3 インクジェットヘッド、4 ヘッドカートリッジ、5 ヘッドキャップ、6 キャップ移動機構、7 制御機構、8 記録紙トレイ、9 給排紙機構、11 インクカートリッジ、12 カートリッジタンク、21 カートリッジ本体、22 カートリッジ装着部、26 インク吐出ノズル、27 インク吐出面、32 インク液室、33 クリーニングローラ、34 クリーニングブレード、35 切換部材、36 ピン、37 保持部材、38 コイルバネ、39 ローラフランジ、43 ワイプ部、43a 先端部、44 支持板、45 ホルダ、46 ねじりコイルバネ、47 ストッパープレート、48 スクレーパ、49 吸引部材、50 天板、51 スイッチ、52 スイッチバネ、57 弾性部、58 ブレード板、59 スリット、61 側面部、62 支持枠部材、63 ヘッドキャップホルダ、64 ラックプレート、65 駆動モータ、100,101 クリーニングブレード、102,103 ワイプ部、1104,105 支持板、106 ホルダ、108 スリット
Claims (6)
- 液体を吐出する液体吐出ノズルが配列された液体吐出面を有する液体吐出ヘッドと、
上記液体吐出面に摺接され、該液体吐出面を払拭するクリーニングブレードと、
上記クリーニングブレードを上記液体吐出ヘッドに対して往復移動させるとともに、上記クリーニングブレードを上記液体吐出ヘッドに対して一方に移動する際には上記液体吐出面と摺接する位置から退避させ、上記クリーニングブレードを上記液体吐出ヘッドに対して他方に移動する際には上記液体吐出面と摺接させる位置に復帰させる切換手段を備える移動機構とを有し、
上記クリーニングブレードは、上記液体吐出面を摺動する際に、上記液体吐出面に対して先端部の摺動方向背面が鈍角に傾斜して支持されている液体吐出ヘッドのクリーニング装置。 - 上記クリーニングブレードは、上記液体吐出面を摺動する際に、上記液体吐出面に対して上記先端部の摺動方向背面が90°より大きく135°より小さい角度に傾斜して支持されていることを特徴とする請求項1記載の液体吐出ヘッドのクリーニング装置。
- 上記クリーニングブレードの先端部は、上記液体吐出面と摺接されるエッジ断面が略直角に形成されていることを特徴とする請求項1記載の液体吐出ヘッドのクリーニング装置。
- 上記クリーニングブレードを複数備え、
上記複数のクリーニングブレードは、一のクリーニングブレードには摺接方向と略直交する方法にスリットが設けられ、他のクリーニングブレードには上記スリットが設けられていないことを特徴とする請求項1記載の液体吐出ヘッドのクリーニング装置。 - 上記一のクリーニングブレードと他のクリーニングブレードは、それぞれの先端が上記液体吐出面に摺接可能な高さに支持されていることを特徴とする請求項4記載の液体吐出ヘッドのクリーニング装置。
- 上記一のクリーニングブレードと他のクリーニングブレードとは、上記液体吐出面と摺接されたとき、いずれか一方の先端部がいずれか他方のクリーニングブレードに接触しない程度の距離を隔てて支持されていることを特徴とする請求項4記載の液体吐出ヘッドのクリーニング装置。
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Legal Events
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A131 | Notification of reasons for refusal |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131 Effective date: 20110531 |
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A02 | Decision of refusal |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A02 Effective date: 20111004 |