JP2007327801A - 味解析装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】試料の全体的な味質のみならず、その味質がどのような成分の寄与、相乗作用、減殺作用などによって形成されているのかを簡便に解析可能とする。
【解決手段】送液ポンプ12により送給する移動相中に分析対象の試料を注入し、これをバルブ13、混合器21、バルブ22、23を通して味検出部30に送り、味検出部30に設けた味覚センサにより検出信号を得る。味検出部30を通過した試料はバルブ14によりカラム19に導入され、カラム19で時間方向に成分分離されて溶出する。UV検出器20で各成分が検出された後に、溶出液は再び混合器21、バルブ22、23を通して味検出部30に送られ、各試料成分毎の味質を反映した検出信号が得られる。また、添加物による味質の変化を調べたい場合には、送液ポンプ17により添加物を混合器21に送って試料に混合させればよい。
【選択図】図1

Description

本発明は、人間の味覚の代替又は補完として、飲食物等の味を解析する味解析装置に関する。
従来、飲料品、食品、経口投薬剤等の味の識別や評価は、人間の味覚を用いた官能試験により行われるのが一般的であった。例えば味希釈評価法(Taste Dilution Analysis)と呼ばれる試験法では、分析対象である試料を少しずつ希釈しながら複数の官能試験者(パネル)が味を評価し、希釈率を大きくしたときに最終的に残った味質を判定する。しかしながら、パネルの個人差やその日の体調・気分などによって味覚は微妙に変動するため、たとえ複数のパネルで試験を行ったとしても客観性や再現性のある評価が難しい場合があった。また、パネルには特に日頃の体調管理などに気を配ることなどが要求されるため、パネルの確保や育成が難しいといった問題もある。
一方で、飲食品の製品開発や製造ラインでの品質管理などには味の評価が不可欠である。そのため、人間の味覚に頼らずに、これに代替し得る味の評価が行えるような装置が従来より強く要望されている。これに対し、特許文献1、非特許文献1などに開示されているような味認識装置が従来より知られている。この味認識装置は、脂質膜(高分子膜)と化学物質である分析対象物質との相互作用によって脂質膜電極と基準となる参照電極との電位差が変化することを利用し、この電位差に基づいて分析対象である試料の味の評価を行うようにしたものである。
より詳しく述べると、非特許文献1に記載の装置では、複数の脂質膜を用いて電位差の計測を行う8個の味覚センサを備え、それぞれの検出出力を主成分分析や重回帰分析することにより味質の判別を行う。現在実用化されているのは、塩味、酸味、旨味、苦味、渋味の5つの味質である。8個の味覚センサはその性質の相違により4個ずつ2つのグループに分けられており、次の手順で以て分析を進める。
(1)容器に収容された信号出力のベースとなる基準液に各センサグループに属する味覚センサを接触させ、各味覚センサの信号出力が安定するまで待つ。
(2)容器に収容された分析対象の液体試料に各センサグループに属する味覚センサを接触させ、信号出力の変化をモニタする。
(3)モニタした信号に対し主成分分析(又は重回帰分析)プログラムを適用して味質を判定する。
(4)再度、容器に収容された基準液に各センサグループに属する味覚センサを接触させ、それら味覚センサの信号出力が安定するまで待ち、その信号レベルが測定前の(つまり上記(1)の)レベルに戻ることを確認する。
(5)(4)において信号レベルが測定前のレベルに戻らなければ洗浄液にて各味覚センサを洗浄する。
上述した従来の味認識装置は、分析対象の試料全体の総合的な味質の評価を行うことを目的としており、各種の試験結果が公表されている。しかしながら、こうした従来の味認識装置では試料に含まれる各種物質の個々の味質を捉えることができないため、どのような物質が試料全体の味質に寄与しているのかを調べたり、或いは、個々の物質の味質の組み合わせと全体の味質との関係を調べたりすることはできなかった。
また、従来より、複数の味質が混じったときに、一方の味質が官能的に変化したり逆に官能的には変化しないものの計測値として変化するといった現象が知られている。例えば、マラリアの治療薬として知られているキニーネは非常に強い苦みを呈するが、ショ糖などの甘味成分を添加することにより官能的には苦味が軽減されないものの計測値として苦味が低減されることが非特許文献2に報告されている。このような添加物の混入の有無での味質の変化を調べたい場合に、従来の味認識装置では、添加物を混入した試料と混入していない試料とを用意してそれぞれ別々に分析を行う必要があり、分析の手間が掛かるという問題があった。
特開平3−163351号公報 「製品紹介 味認識装置SA402B」、[online]、株式会社インテリジェントセンサーテクノロジー、[平成18年3月22日検索]、インターネット<URL: http://www.insent.co.jp/products.htm> 都甲潔、「感性バイオセンサーとIT社会」、電学論E、p.124−127、2004年
本発明は上記課題を解決するために成されたものであり、その主たる目的とするところは、試料に含まれる各種成分の個々の味質を詳細に且つ客観的に測定することで、試料全体の味質と試料に含まれる各種成分の味質との関係など詳細な知見を得ることができる味解析装置を提供することにある。
上記課題を解決するために成された本発明は、液体状の試料が有する味を解析するための味解析装置であって、
a)解析対象の液体試料に含まれる各種成分を時間方向に分離する成分分離手段と、
b)該成分分離手段で分離された前記液体試料中の各種成分を時間経過に伴って順次検出するための、互いに異なる応答特性を有する複数の味覚センサを含む第1の検出手段と、
c)前記複数の味覚センサにより得られる検出信号を処理することにより、各試料成分に対応した味に関する情報を求める信号処理手段と、
を備えることを特徴としている。
ここで成分分離手段としては、例えば液体クロマトグラフ(LC)の分離カラムを用いることができる。
本発明に係る味解析装置は、分析対象である液体試料を例えばLCの分離カラムにより時間方向に分離し、分離された個々の試料成分を含む溶出液を第1の検出手段に導入する。第1の検出手段において、導入された溶出液は複数の味覚センサに接触し、それら味覚センサは溶出液中の試料成分に応じた検出信号を出力する。時間経過に伴って導入される試料成分が変わると味覚センサの検出信号も変化するから、信号処理手段は、このように時間経過に伴って変動するそれぞれの検出信号に基づいて各試料成分に対応した味についての情報、例えば味質を算出する。これにより、試料全体の味質ではなく、試料に含まれる各種成分毎の味質を詳細に得ることができる。
例えば、成分分離手段で成分分離された液体試料を例えばフローセル型である上記第1の検出手段に通した後に紫外可視分光光度計や質量分析計などの検出器に導入したり、或いは成分分離手段で成分分離された液体試料をフローセル型の紫外可視分光光度計等の検出器に通した後に上記第1の検出手段に導入したりする構成とし、その検出器により得られる検出信号に基づいて各試料成分を定性したり定量したりすれば、液体試料中に含まれる各種試料成分の種類や含有量と味質とを対応付けて表示したり出力したりすることができる。これにより、試料中に含まれる各種成分とその成分の味に関する情報(例えば味質)とを個別に且つ明確に得ることができる。
好ましくは本発明に係る味解析装置では、前記成分分離手段により成分分離される前の前記液体試料の味を検出するために、互いに異なる応答特性を有する複数の味覚センサを含む第2の検出手段をさらに備える構成とするとよい。
このとき、第1の検出手段と第2の検出手段とは別体であってもよいが、味覚センサの個体差による検出のばらつきやコストの点から考えると、第1の検出手段と第2の検出手段とを共通の検出手段とし、液体試料又は成分分離手段の溶出液を選択的にその検出手段に供給する流路切替手段をさらに備える構成とすることが好ましい。
上記構成によれば、試料全体の味質とその試料に含まれる各種成分毎の味質との両方を1回の分析により得ることができるから、試料全体の味質に対する各種成分の味質の寄与の程度や試料全体の味質と各種成分の味質との関係などについての情報を、効率的に且つ簡便に取得することができる。
また、本発明に係る味解析装置の一態様として、前記成分分離手段により成分分離される前及び/又は成分分離された後の試料に添加物を選択的に混入させる添加物混入手段をさらに備え、添加物が混入された状態の試料を成分分離する前に前記検出手段により検出する、及び/又は、前記成分分離手段により分離された各成分毎に添加物が混入された状態の試料を前記検出手段により検出する構成としてもよい。
この構成によれば、例えば試料の味質に対し相乗作用や減殺作用を及ぼすような添加物を混入した場合とそうした物質を混入していない場合との試料の味質の変化などを、簡便に且つ自動的に解析することが可能となる。
また、本発明に係る味解析装置の別の態様として、前記液体試料を希釈する希釈手段をさらに備え、適宜に希釈された液体試料を成分分離する前に及び/又は成分分離した後に検出する構成とすることもできる。
この構成によれば、例えば希釈手段により液体試料を段階的に希釈しながら、その各段階で試料全体や各試料成分毎の味質を調べることにより、官能試験における味希釈評価法と同様の味の評価を自動的に行うことができる。
[第1実施例]
以下、本発明に係る味解析装置の一実施例(第1実施例)について、図面を参照しつつ説明する。図1は本実施例による味解析装置の流路構成を中心とした要部の構成図である。
この味解析装置では、それぞれ容器10a、10b、10cに収容された移動相(基準液)、酸性洗浄液、塩基性洗浄液は第1切替バルブ11により選択され、第1送液ポンプ12によりオートサンプラ13を介して6ポート2ポジションバルブ14のポートaに送られる。一方、容器15a、15b、15cにはそれぞれ異なる添加物A、B、Cが収容されており、第2送液ポンプ17が作動すると、第2切替バルブ16により選択された添加物が混合器21の入口に送られる。
この6ポート2ポジションバルブ14及び後述の6ポート2ポジションバルブ23は隣接する2つのポート同士が、図1中に実線で示す状態と点線で示す状態の2つのいずれかに切り替えられる。6ポート2ポジションバルブ14のポートf、c間には、サイズ排除クロマトグラフィ用カラム19とUV検出器(紫外可視分光光度計)20とが設けられ、ポートdは排出口に接続されている。またポートbは混合器21の他の入口に接続され、混合器21の出口は7ポート6ポジションバルブ22の中心ポートaに接続されている。この7ポート6ポジションバルブ22は1つの中心ポートaに対し、その周囲の6つのポート(図1では使用している3つのポートb、c、dのみ記載している)のいずれかが選択的に接続される構成である。
7ポート6ポジションバルブ22のポートc及びポートbはそれぞれ6ポート2ポジションバルブ23のポートb及びポートcに接続され、さらに7ポート6ポジションバルブ22のポートdは6ポート2ポジションバルブ23のポートe、fに接続されている。また、6ポート2ポジションバルブ23のポートa及びポートdは味検出部30の中の味覚センサA、B、Cの入口及び味覚センサDの入口に接続され、味覚センサA〜Dの出口は6ポート2ポジションバルブ14のポートeに接続されている。なお、味覚センサA〜Dはそれぞれ後述する1個のセンサブロックに相当するものであり、味覚センサA、B、Cはマイナス挙動を示すセンサであり、味覚センサDはプラス挙動を示すセンサである。
さらに、UV検出器20の検出信号と味検出部30の検出信号とは信号処理部40に入力されている。信号処理部40はCPUを中心に、或いは専用のDSPなどを含んで構成され、検出信号を処理して後述するような情報を算出するためのプログラムを保有している。なお、図示していないが、バルブ14、22、23、ポンプ12、17などを制御するために制御部が設けられる。
図2〜図5はいずれもこの実施例におけるフロー型の味検出部30の構造を示す図である。図2はフローセンサ31の概略上面図、図3は概略斜視図、図4は図2中のA−A’矢視線断面図、図5は流路構成図である。このフローセンサ31は、2本の筒状の電解液保持槽の開口底面に塩化ビニル樹脂にテトラヒドロフラン(THF)を用いて脂質/高分子膜33を接着させてなるセンサブロック32と、プラグ35により保持されセンサブロック32内に収容される銀(Ag)製の電極34と、脂質/高分子膜33へ試料液を導く流路が内部に形成された流路ブロック36と、比較電極37とから成る。
測定前に電極34の下部が浸るように電解液である飽和塩化銀(AgCl)溶液をセンサブロック32内に入れる。流路ブロック36内の流路に試料液を流したときにその試料液が脂質/高分子膜33と接触すると電位応答変化が生じるから、これを電解液を介して電極34により検出し、その検出信号を上述したように信号処理部40へと送る。各センサブロック32には2種類の脂質/高分子膜33が接着されており、それぞれ異なった味質に応答する。この際、1つのセンサブロック32に接着された2つの脂質/高分子膜33は、膜から溶出してくる成分により互いに影響を受けないものを選択する必要がある。フローセンサ31にはこのようなセンサブロック32が4つ搭載されており、各センサブロック32には2つの脂質/高分子膜33があるから、合計8種類の味質の分析が可能である。本実施例では、図2に示すように、酸味、旨味、渋味、塩味、3種の苦味、及びいずれにも特定されない汎用、の味質の分析に利用されている。
流入口から流入してきた試料液(移動相)は4系統に分岐され、各センサブロック32の脂質/高分子膜33に接触した後に合流して共通の比較電極37を通って流出する。各センサブロック32に対応した試料液の流路は入口側及び出口側で合流しているから、移動相の送給を停止した場合、或る1つのセンサブロック32内の膜から溶出した成分を含む試料液が自然拡散により異なるセンサブロックに流入して、そのセンサブロック内の膜を汚染するおそれがある。そこで、試料を導入するための移動相は連続的又は少なくとも途絶えることがないように送給するか、或いは、各センサブロック32の流路の流入口側及び流出口側にそれぞれ逆止弁などを設けることにより、移動相の送給を停止してもセンサ膜間の汚染を防止できるようにする。
上記構成を有する本実施例の味解析装置の動作を説明する。分析を行う際には、まず、6ポート2ポジションバルブ14を図1中の点線で示す状態、6ポート2ポジションバルブ23を図1中の点線で示す状態、7ポート6ポジションバルブ22はポートaとポートdとを接続する状態に設定する。そして、第1切替バルブ11により選択された移動相を第1送液ポンプ12により吸引してオートサンプラ13に送る。このときの移動相としては、例えば10mMKClや10mMKCl+0.3mL酒石酸水溶液を使用し、その流量を1mL/分程度に設定することができる。
オートサンプラ13により所定のタイミングで移動相中に液体試料が注入されると、移動相に乗って液体試料はバルブ14から混合器21に送られるが、第2送液ポンプ17が作動していなければ液体試料はそのまま混合器21を通過し、7ポート6ポジションバルブ22のポートa、d及び6ポート2ポジションバルブ23のポートe、f、ポートa、dを経て味検出部30に送られる。そして、味検出部30を通過する際に各味覚センサA〜Dによりそれぞれ検出信号が得られ、検出信号は信号処理部40に送られる。
味検出部30の各味覚センサA〜Dを通った液体試料は合流して6ポート2ポジションバルブ14のポートeに戻り、ポートfから出てカラム19に送り込まれ、カラム19を通過する間に液体試料中の各種成分は分子量に応じて分離され時間的にずれて出口から溶出する。この溶出液はUV検出器20に導入され、溶出液中の各種成分は時間経過に伴って順次検出される。即ち、溶出液中に含まれる試料成分の種類に応じた波長の光の吸収度を示す信号が順次得られ、これが信号処理部40に送られる。
液体試料がカラム19に導入された直後のタイミングで、6ポート2ポジションバルブ14は図1中の点線の接続状態から実線の接続状態に切り換えられる。そのため、UV検出器20を通過した溶出液は6ポート2ポジションバルブ14のポートc、bを通って再び混合器21に送られる。上述したように第2送液ポンプ17が作動していなければ溶出液はそのまま混合器21を通過し、さらに再び味検出部30に導入される。このときには、オートサンプラ13により注入された液体試料はカラム19により成分分離されているので、時間経過に伴って複数の試料成分が順に味検出部30に導入され、味覚センサA〜Dではその試料成分毎の検出信号が得られる。味検出部30を通過した溶出液は6ポート2ポジションバルブ14のポートeに戻り、ポートdから排出される。
上述したような液体試料及び該液体試料が成分分離された溶出液の流れにより、成分分離前の液体試料に対する味検出部30での検出信号、時間的に分離された各種試料を含む溶出液に対する味検出部30での検出信号、及び同じく時間的に分離された各種試料を含む溶出液に対するUV検出器20での検出信号、が信号処理部40に送られる。信号処理部40は各検出信号に対して所定の演算処理を行うことにより、分析対象である試料についての情報を求める。
具体的には、成分分離前の液体試料に対する味検出部30での検出信号に対し、主成分分析、重回帰分析、又はそのほかの適宜の多変量解析処理を適用することにより、その試料の全体としての味質に関する情報を求める。また、時間的に分離された各種試料を含む溶出液に対するUV検出器20での検出信号に基づいて波長毎のクロマトグラムを作成し、このクロマトグラムに出現しているピークを検出して定性分析を行うことで各試料成分を同定するとともにそれぞれの含有量を推定する。さらに、こうして同定された各種成分が味検出部30に導入されるタイミングでの該味検出部30の検出信号を抽出し、これに主成分分析、重回帰分析、又はそのほかの適宜の多変量解析処理を適用することにより、試料に含まれる各種成分毎の味質に関する情報を求める。したがって、これら結果により、分析対象の試料に含まれる各種成分の種類や量とその味質と、そうした試料成分が混合された試料全体の味質との関係などを分析することができる。
本実施例の味解析装置では、上記のような標準的な分析のほかに、さらに別の方法による分析も可能である。例えば、次のようにして添加物による試料の味質の変化を調べることができる。
基本的には上述したような流路を形成して液体試料の分析を行うが、例えば液体試料が注入された後の所定のタイミングで以て第2送液ポンプ17を作動させることで、第2切替バルブ16により選択された添加物を混合器21に送る。これにより、6ポート2ポジションバルブ14のポートa、bを通過してきた成分分離前の液体試料に混合器21で添加物が混合され、それが前述のように味検出部30に送られる。したがって、このときには、添加剤の影響を受けた味質を求めることができる。上述したように第2送液ポンプ17が停止した状態では添加物の混入は行われないから、第2送液ポンプ17の制御だけで、味検出部30に導入する液体試料に添加物が混入した場合と混入していない場合とを容易に選択することができ、添加剤による味質の変化を簡便に測定することができる。具体的には、移動相として100mMKCl+0.3mL酒石酸水溶液を1mL/分で流し、分析対象試料としてキニーネを、添加剤としてショ糖を加えることにより、ショ糖の影響でキニーネの苦味が低減されることを確認することができる。
また、カラム19を通過することにより成分分離された試料が混合器21を通過するタイミングで以て第2送液ポンプ17を作動させることで、分離された各成分毎にそれぞれ第2切替バルブ16により選択された添加物を混合させることができる。このように各成分と添加物との組み合わせについてそれぞれ味検出部30で味質の変化を測定することにより、味質の変化に寄与する成分やその寄与の程度などを調べることができる。
また、オートサンプラ13と6ポート2ポジションバルブ14のポートaとの間に自動希釈装置を挿入して、オートサンプラ13で移動相中に注入した液体試料の濃度を段階的に下げてゆきながら、その各段階で上述したような分析を実行することにより、味希釈評価法に相当する評価を簡便に行うことができる。具体的には、例えば島津製作所製の高速液体クロマトグラフオートサンプラSIL−10AFなど、自動希釈機能を有するオートサンプラを使用すればよい。
ところで、通常、味検出部30に試料成分が導入された後には移動相が流れ続けるため、各味覚センサの脂質/高分子膜に付着した試料成分は移動相によって洗い流され、その検出信号のレベルは変化前に戻る。しかしながら、試料成分の濃度が高い場合に、脂質/高分子膜への試料成分の残留が多く、検出信号レベルが元に戻りにくいことがある。そうした場合に、上記構成では、洗浄液にて各味覚センサの脂質/高分子膜の洗浄を行うことができる。洗浄を行う際には、脂質/高分子膜の性質に応じて酸性洗浄液又は塩基性洗浄液を使い分ける。即ち、マイナス挙動を示す脂質/高分子膜には、30%エタノール+100mMHCl等の酸性の洗浄液を、プラス挙動を示す脂質/高分子膜には30%エタノール+100mMKCl+10mMKOH等の塩基性の洗浄液を用いるとよい。
上記流路構成では、バルブを組み合わせることにより、性質が相容れない洗浄液が混入しないような工夫を行っている。即ち、マイナス挙動を示す味覚センサA、B、Cを洗浄するときには、第1切替バルブ11により酸性洗浄液を選択し、7方6ポジションバルブ22を図1中の接続状態、6ポート2ポジションバルブ23を図1中の実線の接続状態に設定する。そして、第1送液ポンプ12により送られる酸性洗浄液を味検出部30に導入して各味覚センサの膜の表面の洗浄を行う。十分な洗浄を行った後に、移動相を選択するように第1切替バルブ11を切り替えて流路内の洗浄液を移動相で以て置換する。
一方、プラス挙動を示す味覚センサDを洗浄するときには、第1切替バルブ11により塩基性洗浄液を選択し、7方6ポジションバルブ22のポートaとポートbとを接続するとともに、6ポート2ポジションバルブ23を図1中の実線の接続状態に設定する。そして、第1送液ポンプ12により送られる塩基性洗浄液を味検出部30に導入して各味覚センサの膜の表面の洗浄を行う。十分な洗浄を行った後に、移動相を選択するように第1切替バルブ11を切り替えて流路内の洗浄液を移動相で以て置換する。なお、7方6ポジションバルブ22のポートaとポートdとを接続するとともに、6ポート2ポジションバルブ23を図1中の点線の接続状態に設定することにより、味覚センサA〜Dの全てに移動相を流し、全ての洗浄液を移動相で置換することもできる。
なお、上記実施例では、試料全体の味質の判定と各試料成分毎の味質の判定とで味検出部30を兼用していたが、もちろん、別々の味検出部を設けてもよい。但し、一般的に、味覚センサはその検出特性の個体差が比較的大きいため、同一試料に関する試料全体の味質の判定と各試料成分毎の味質の判定との関連付けを行うためには、同一の味覚センサによる検出信号を用いた結果を利用したほうが正確性が高い。
[第2実施例]
図6は本発明に係る味解析装置の他の実施例(第2実施例)による流路構成を中心とした要部の構成図である。図1と同一又は相当する構成要素には同一符号を付している。この実施例の装置では、上記第1実施例とは異なり、味検出部30を通過した液体試料はそのまま排出されてしまう構成となっているため、試料全体の味質の判定と各試料成分毎の味質の判定とを1回の分析で同時に実行することはできない。その代わりに、7方6ポジションバルブ18の切り換えにより、成分分離されていない液体試料とカラム19で成分分離された試料成分を含む溶出液とを選択的に味検出部30に送ることができるから、2回の分析を行うことで第1実施例と同様の解析が可能である。
なお、上記第1、第2実施例はいずれも本発明の一実施例であり本発明の趣旨の範囲で適宜変更、修正、追加を行っても本願特許請求の範囲に包含されることは明らかである。
例えば、上記実施例では液体クロマトグラフのカラムで分離された試料成分をそのまま味覚検出部に導入していたが、例えばカラムで分離された各種試料成分をフラクションコレクタによりそれぞれ異なる容器に分画し、その後に分画した試料成分を含む溶出液を順次味覚検出部に導入することで各試料成分に対する味覚センサの検出信号を得るようにしてもよい。
また、上記実施例では各試料成分を同定するための検出器としてUV検出器を用いたが、それ以外の検出器を用いてもよい。例えば、同定精度を上げるために質量分析計を用いることができるが、質量分析計では試料を消費してしまうので、カラムからの溶出液をスプリッタにより少量だけ分岐させて質量分析計に導入し、その残りの溶出液を味検出部に導入するような構成とするとよい。
本発明の第1実施例による味解析装置の流路構成を中心とした要部の構成図。 味検出部のフローセンサの概略上面図。 味検出部のフローセンサの概略斜視図。 図2中のA−A’矢視線断面図。 味検出部のフローセンサの流路構成図。 本発明の第2実施例による味解析装置の流路構成を中心とした要部の構成図。
符号の説明
10a、10b、10c、15a、15b、15c…容器
11…第1切替バルブ
12…第1送液ポンプ
13…オートサンプラ
14、23…6ポート2ポジションバルブ
16…第2切替バルブ
17…第2送液ポンプ
18、22…7方6ポジションバルブ
19…カラム
20…UV検出器
21…混合器
30…味検出部
31…フローセンサ
32…センサブロック
33…脂質/高分子膜
34…電極
35…プラグ
36…流路ブロック
37…比較電極
40…信号処理部

Claims (6)

  1. 液体状の試料が有する味を解析するための味解析装置であって、
    a)解析対象の液体試料に含まれる各種成分を時間方向に分離する成分分離手段と、
    b)該成分分離手段で分離された前記液体試料中の各種成分を時間経過に伴って順次検出するための、互いに異なる応答特性を有する複数の味覚センサを含む第1の検出手段と、
    c)前記複数の味覚センサにより得られる検出信号を処理することにより、各試料成分に対応した味に関する情報を求める信号処理手段と、
    を備えることを特徴とする味解析装置。
  2. 前記成分分離手段は液体クロマトグラフの分離カラムであることを特徴とする請求項1に記載の味解析装置。
  3. 前記成分分離手段により成分分離される前の前記液体試料の味を検出するために、互いに異なる応答特性を有する複数の味覚センサを含む第2の検出手段をさらに備えることを特徴とする請求項1又は2に記載の味解析装置。
  4. 前記第1の検出手段と前記第2の検出手段とは共通の検出手段であり、前記液体試料又は前記成分分離手段の溶出液を選択的に前記検出手段に供給する流路切替手段をさらに備えることを特徴とする請求項3に記載の味解析装置。
  5. 前記成分分離手段により成分分離される前及び/又は成分分離された後の試料に添加物を選択的に混入させる添加物混入手段をさらに備え、添加物が混入された状態の試料を成分分離する前に前記検出手段により検出する、及び/又は、前記成分分離手段により分離された各成分毎に添加物が混入された状態の試料を前記検出手段により検出することを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の味解析装置。
  6. 前記液体試料を希釈する希釈手段をさらに備え、適宜に希釈された液体試料を成分分離する前に及び/又は成分分離した後に検出することを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の味解析装置。

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