JP2007326083A - 固体微粒子及びその製造方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】対象化合物を第1溶媒に溶解した溶液を、前記溶媒に混和しない第2溶媒に所定温度で微細分散させエマルジョンとし、該エマルジョンを降温させて、前記化合物を固体微粒子として析出させる固体微粒子の製造方法。
【選択図】なし
Description
たとえば、有機微粒子の調製方法として再沈法がある。同方法は対象化合物を良溶媒に溶解した溶液を、その貧溶媒(通常は蒸留水)にシリンジなどを用いて注入して、対象化合物の微粒子を生成させる方法である(特許文献1、2参照)。しかし、この方法は良溶媒として、貧溶媒に無限希釈可能な極性溶媒しか使えない。そのため、対象化合物も一部の極性溶媒に溶けるものに限定される。
また、特許文献3には、真空容器内で加熱容器に収容された有機化合物を加熱し、蒸発させ、真空容器内の不活性ガス圧力を調節し、前記有機化合物微粒子を凝結させる方法が開示されている。しかし、この方法では、真空容器を必要とし工業的規模の製造には適さない。また使用できる有機化合物が一定蒸気圧を有するものに限定されてしまう。
(2)前記エマルジョンを高速攪拌条件下および/または超音波照射条件下で調製することを特徴とする(1)に記載の固体微粒子の製造方法。
(3)前記固体微粒子を析出させるに当たり、さらに外部刺激を与えて固体微粒子をエマルジョンから分散媒中に移行させることを特徴とする(1)または(2)に記載の固体微粒子の製造方法。
(4)前記対象化合物が有機化合物であることを特徴とする(1)〜(3)のいずれか1項に記載の固体微粒子の製造方法。
(5)(1)〜(4)のいずれか1項に記載の製造方法によって得られた固体微粒子。
さらにまた、本発明の製造方法によれば固体微粒子を所望の分散媒中に高濃度で得ることができ、大量生産にも対応しうるという優れた効果を奏する。
本発明の製造方法は、一定温度に保温された条件で、対象化合物を第1溶媒に溶解した溶液と、第1溶液に混和しない第2溶媒とを混合してエマルジョンとし、該エマルジョンを降温することにより、前記化合物を固体微粒子として析出させるものである。以下、本発明について詳細に説明する。
本発明の製造方法において第1溶媒は、対象化合物を溶解し、第2溶媒と混合して第2溶媒を分散媒としてエマルジョンを形成し、微小液滴となるものであれば特に限定されない。
対象化合物が有機化合物の場合、第1溶媒として、有機化合物に対して溶解性の高い溶媒を用いることが好ましく、例えば、芳香族炭化水素溶媒、有機ハロゲン溶媒、それらの混合溶媒を用いることが好ましく、具体的には、トルエン、キシレン、モノハロベンゼン、ジハロベンゼン、トリハロベンゼン、四塩化炭素等が好ましい。95℃における対象化合物に対する溶解度でいえば、第1溶媒として5〜20質量%のものを選定することが好ましく、10〜20質量%のものを選定することがより好ましい。
第1溶媒は、単独で用いても、複数のものを組み合わせて用いてもよい。また、必要に応じて添加剤を添加してもよい。
本発明の製造方法に用いられる第2溶媒は、第1溶媒と混和せず、第1溶媒と混合してエマルジョンを形成するものであれば特に限定されない。
対象化合物が有機化合物の場合、第2溶媒としては、例えば水が好ましい。
対象化合物が無機化合物の場合、第2溶媒としては、例えば、有機化合物溶媒(例えばトルエン、キシレン、モノクロロベンゼン、ジクロロベンゼン、トリクロロベンゼン)などが挙げられる。
第2溶媒は、単独で用いても、複数のものを混合して用いてもよい。また、必要に応じて添加剤を添加してもよい。
第2溶媒は対象化合物を溶解しないことが好ましく、20℃における対象化合物に対する溶解度でいえば、1×10−9〜1×10−8質量%の溶媒を選定することが好ましい。
このとき、高速撹拌条件としては、例えば、回転数2,000〜30,000rpmで機械撹拌することが好ましく、回転数3,000〜30,000rpmで撹拌することがより好ましい。撹拌時間は、例えば、10〜60分とすることが好ましく、30〜60分とすることがより好ましい。
エマルジョンの平均液滴径は、特に限定されないが、例えば100nm〜5μmであることが好ましく、100nm〜1μmであることがより好ましい(本発明においては、特に断らない限り、液滴径とは動的光散乱法を用いて測定した値をいい、平均液滴径とは数平均径をいう。)。
エマルジョンを調製する温度は、用いられる対象化合物、第1溶媒、第2溶媒などの種類等により適宜定めればよいが、対象化合物として有機化合物を用いるとき、例えば、90〜100℃の範囲にしてエマルジョンを調製することが好ましく、93〜97℃の範囲とすることがより好ましい。対象化合物として無機化合物を用いるときは、例えば、90〜100℃の範囲にしてエマルジョンを調製することが好ましく、93〜97℃の範囲とすることがより好ましい。
このとき一定温度条件下に維持するために、あらかじめ第1溶媒、第2溶媒、対象化合物溶液などを所望の温度にしておき、溶解もしくは混合してエマルジョンとしてもよい。
降温速度は、対象化合物の微粒子が析出すれば特に限定されないが、例えば、0.2〜0.5℃/分で降温させることが好ましく、0.2℃/分で降温させることがより好ましい。降温させる方法は特に限定されず、降温させる温度幅や反応器のスケール等により適宜定めればよく、例えば、室温より高い温度から、放置して室温(例えば、25℃)に降温してもよい。このようにすれば、特別な冷却装置を用いることを要しない点で好ましい。降温させるときの温度の高低差(降温前の温度−降温後の温度)は50℃以上であるこが好ましく、70℃以上であることがより好ましい。
外部刺激として超音波を照射するとき、その周波数は特に限定されないが、例えば、20〜45kHの超音波を用いることが好ましく、25〜45kHの超音波を用いることがより好ましい。超音波照射の時間は特に限定されないが、30〜120分間とすることが好ましく、60〜120分間とすることがより好ましい。
[テトラセンの固体微粒子製造]
ジャケット付滴下ロート、機械撹拌器(東京理化機器社製、NE−1000型)、温度計を備えた500mLフラスコに、超純水(18.2MΩ・cm)を300 mL入れ、93℃に加熱した。
次にジャケット付滴下ロートにテトラセン2.0gとトルエン60mlを入れて加熱し、93℃のテトラセン飽和トルエン溶液を30mL調製した。調製した93℃のテトラセン飽和トルエン溶液を93℃に加温した上記超純水に滴下して機械撹拌(3,000rpm)と超音波(45kHz)を用いて、同温度に約±3℃で維持して約10分間かけて微小液滴を含有するエマルジョンを調製した。
室温付近(約25℃)まで冷却した後、トルエン微小液滴中のテトラセン固体粒子に超音波(45kHz)を30分間照射して水中に分散させた。最後に、分液ロートで上層部のトルエンを除去することにより、テトラセン固体微粒子の水分散液300mLを得た。得られたテトラセン固体微粒子を動的光散乱光度計(大塚電子社製、FPAR−1000型)により測定した結果、平均粒子径は78nm(標準偏差17nm)であり、微粒子濃度は0.20mg/mLであった。この結果より、本発明の製造方法によれば、ナノメートルサイズの固体微粒子が高濃度に分散液中に得られることが分かる。なお、得られた固体微粒子の走査型電子顕微鏡写真(10,000倍、50,000倍)を図1に示す。
遮光下、室温でテトラセン水分散液を6ヶ月間放置した結果、沈殿は認められなかった。なお、テトラセン水分散液を紫外可視吸収スペクトル(日本分光社製、V−550型)により測定した結果、トルエンの溶存は認められなかった(図2参照)。この結果より、本発明の製造方法によれば、簡便に溶媒を分離し所望の分散媒に分散させて、分散安定性の高い固体微粒子が得られることが分かる。
得られた固体微粒子のX線測定を行った結果を図3に示す。これにより、得られた固体微粒子はテトラセンの結晶構造を有することが分かる。
[アントラセンの固体微粒子製造]
ジャケット付滴下ロート、機械撹拌器(東京理化機器社製、NE−1000型)、温度計を備えた500mLフラスコに、超純水(18.2MΩ・cm)を300mL入れ、77℃に加熱した。
次にジャケット付滴下ロートにアントラセン1.3gと四塩化炭素30mlを入れて加熱し、77℃のアントラセン飽和四塩化炭素溶液を15mL調製した。調製した77℃のアントラセン飽和四塩化炭素溶液を77℃に加温した上記超純水に滴下して機械撹拌(3,000rpm)と超音波(45kHz)を用いて、同温度に約±3℃で維持して約10分間かけて微小液滴を含有するエマルジョンを調製した。
室温付近(約25℃)まで冷却した後、四塩化炭素微小液滴中のアントラセン固体粒子に超音波(45kHz)を30分間照射して水中に分散させた。最後に、分液ロートで上層部の四塩化炭素を除去することにより、アントラセン固体微粒子の水分散液300mLを得た。得られたアントラセン固体微粒子を動的光散乱光度計(大塚電子社製、FPAR−1000型)により測定した結果、平均粒子径は75nm(標準偏差9nm)nmであり、微粒子濃度は0.11mg/mLであった。この結果より、本発明の製造方法によれば、ナノメートルサイズの固体微粒子が高濃度に分散液中に得られることが分かる。なお、得られた固体微粒子の走査型電子顕微鏡写真(10,000倍、50,000倍)を図4に示す。
[フラーレン(C60)の固体微粒子製造]
ジャケット付滴下ロート、機械撹拌器(東京理化機器社製、NE−1000型)、温度計を備えた500mLフラスコに、超純水(18.2MΩ・cm)を300mL入れ、95℃に加熱した。
次にジャケット付滴下ロートにフラーレン1.0gとトルエン30mlを入れて加熱し、95℃のフラーレン飽和トルエン溶液を15mL調製した。調製した95℃のフラーレン飽和トルエン溶液を、95℃に加温した上記超純水に滴下して機械撹拌(3,000rpm)と超音波(45kHz)を用いて、同温度で約10分間かけて微小液滴を含有するエマルジョンを調製した。
室温付近(約25℃)まで冷却した後、トルエン微小液滴中のフラーレン固体粒子に超音波(45kHz)を30分間照射して水中に分散させた。最後に、分液ロートにより上層部のトルエンを除去し、フラーレン固体微粒子の水分散液を300mL得た。得られたテトラセン微結晶を動的光散乱光度計(大塚電子社製、FPAR−1000型)により測定した結果、平均粒子径は63nm(標準偏差13nm)であり、微粒子濃度は0.14mg/mLであった。この結果より、本発明の製造方法によれば、ナノメートルサイズの固体微粒子が高濃度に分散液中に得られることが分かる。なお、得られた固体微粒子の走査型電子顕微鏡写真(10,000倍、50,000倍)を図5に示す。
遮光下、室温でフラーレン水分散液を6ヶ月間放置した結果、沈殿は認められなかった。この結果より、本発明の製造方法により得られる固体微粒子の分散液は分散安定性に優れることが分かる。
なお、フラーレン水分散液を紫外可視吸収スペクトル(日本分光社製、V−550型)により測定した結果、トルエンの溶存は認められなかった。この結果より、本発明の製造方法によれば、簡便に溶媒を分離し、所望の分散媒に分散させて固体微粒子が得られることが分かる。
[塩化ナトリウムの固体微粒子製造]
ジャケット付滴下ロート、機械撹拌器(東京理化機器社製、NE−1000型)、温度計、接地を備えた500mLフラスコに、トルエンを300mL入れ、95℃に加熱した。次にジャケット付滴下ロートに塩化ナトリウム25gと超純水(18.2MΩ・cm)60mlを入れて加熱し、95℃の塩化ナトリウム飽和水溶液を30mL調製した。調製した塩化ナトリウム飽和水溶液を95℃に加温した上記トルエンに滴下して機械撹拌(3,000rpm)と超音波(45kHz)を用いて、同温度に約±3℃で維持して約10分間かけて微小液滴を含有するエマルジョンを調製した。
続いて水微小液滴中の塩化ナトリウム固体粒子に超音波(45kHz)を30分間照射してトルエン中に分散させた。最後に、分液ロートにより下層部の水を除去し、塩化ナトリウム固体微粒子のトルエン分散液300mLを得た。得られた塩化ナトリウム固体微粒子のトルエン分散液をミルポアフィルタ(Millipore filter)(孔径50nm)上に減圧濾過して走査型電子顕微鏡(日立製作所社製、S−900型)を用いて測定した結果、平均粒子径は580nm(標準偏差33nm)であり、微粒子濃度は0.15mg/mLであった。この結果より、本発明の製造方法によれば、無機化合物固体微粒子を高濃度に、所望の溶媒中に分散液させて得られることが分かる。なお、得られた固体微粒子の走査型電子顕微鏡写真(10,000倍)を図6に示す。
Claims (5)
- 対象化合物を第1溶媒に溶解した溶液を、前記溶媒に混和しない第2溶媒に所定温度で微細分散させエマルジョンとし、該エマルジョンを降温させて、前記化合物を固体微粒子として析出させることを特徴とする固体微粒子の製造方法。
- 前記エマルジョンを高速攪拌条件下および/または超音波照射条件下で調製することを特徴とする請求項1に記載の固体微粒子の製造方法。
- 前記固体微粒子を析出させるに当たり、さらに外部刺激を与えて固体微粒子をエマルジョンから分散媒中に移行させることを特徴とする請求項1または2に記載の固体微粒子の製造方法。
- 前記対象化合物が有機化合物であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の固体微粒子の製造方法。
- 請求項1〜4のいずれか1項に記載の製造方法によって得られた固体微粒子。
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JP2009120423A (ja) * | 2007-11-13 | 2009-06-04 | Ako Kasei Co Ltd | 微粒子水溶性無機塩の製造方法とその製品 |
JP2016175786A (ja) * | 2015-03-18 | 2016-10-06 | 出光興産株式会社 | リチウムハロゲン化物粒子の製造方法 |
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JP2000506066A (ja) * | 1996-03-10 | 2000-05-23 | ロイター・ヒエーミツシエ・アパラーテバウ | 分離方法 |
JP2002538948A (ja) * | 1999-03-17 | 2002-11-19 | ロイター・ヒェーミシェ・アパラーテバウ・コマンディート・ゲゼルシャフト | 再循環を伴うエマルジョン結晶化 |
JP2003528907A (ja) * | 2000-04-05 | 2003-09-30 | ヴェクトゥラ リミテッド | 医薬製剤およびそれらの製造 |
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