JP5936759B1 - 銀ナノワイヤの製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】ポリオール法によって銀ナノワイヤを製造する際に、より作業性よく製造することができる銀ナノワイヤの製造方法を提供する。【解決手段】銀ナノワイヤの製造方法は、ポリオールと銀化合物とポリビニルピロリドンとを100℃以下の温度で混合して前駆体溶液を調製する第一の工程と、ハロゲン化合物を含むポリオールを110℃から沸点未満の範囲に加熱した反応溶液中に、その前駆体溶液を滴下することによって銀ナノワイヤを成長させる第二の工程とを備えた。【選択図】なし

Description

本発明は、ポリオール法による銀ナノワイヤの製造方法に関する。
透明導電膜は、可視光透過性と電気導電性を兼ね備えた薄膜であり、液晶ディスプレイ、エレクトロルミネッセンスディスプレイ、タッチパネル、太陽電池などの透明電極として広く使用されている。その中でも酸化インジウムスズ(ITO)のスパッタ膜は、高い透明性と導電性を持つことから、スマートフォンなどの4インチ前後の小型用途向けや、タブレット端末などの7〜10インチ前後の中型用途向けの静電容量タッチパネルのフィルムセンサとして広く使用されている。
近年、ノートPCやオールインワンPCなどの14〜23インチまでの大型製品や電子黒板などの大型タッチパネルにおいて使用される透明導電膜の特性として、低抵抗性が求められているが、ITOフィルムを低抵抗化するには導電層であるITOを厚くする必要がある。そのようにITOフィルムを厚くすると、フィルムの透明性が低下し、パターン成形後の骨見えリスクも高くなるなど、ディスプレイの視認性に影響を与えることになる。
そのようなITOフィルムの代替品として、液相法で製造可能であり、低抵抗性と透明性を兼ね備え、かつ柔軟性を有する金属ナノワイヤを含有する透明導電膜が検討されている。その中でも銀ナノワイヤを用いた透明導電膜は、高い導電性及び安定性を有するので特に注目されている。
そのような銀ナノワイヤの製造方法として、銀化合物と表面修飾剤であるポリビニルピロリドンと溶媒兼還元剤として作用するポリオールとを含む溶液を加熱することによって銀ナノワイヤを製造する方法(ポリオール法)が提案されている(例えば、特許文献1,2参照)。
特表2013−503260号公報 米国特許第7585349号明細書
そのようなポリオール法による銀ナノワイヤの製造においては、通常、ポリオールに銀化合物の溶液と、表面修飾剤の溶液とをそれぞれ別に滴下していた。なお、ポリオール中における銀と表面修飾剤との濃度の比率は一定であることが好ましいため、そのような滴下においては、両方の滴下スピードを適切にコントロールすることが求められる。例えば、一方のみが速く滴下されると、ポリオール中における銀と表面修飾剤との濃度の比率が変化することになり、好ましくないからである。一方、表面修飾剤は通常、粘度が高いため、銀化合物の溶液と比較して滴下をコントロールすることが困難である。そのため、ポリオール中における銀と表面修飾剤との濃度の比率を変化させることなく、銀や表面修飾剤を容易に滴下することができる手法の開発が求められていた。
本発明は、そのような事情に応じてなされたものであり、ポリオール法において、より作業性のよい銀ナノワイヤの製造方法を提供することを目的とする。
本発明者は、上述の課題に対して鋭意研究の末、銀化合物とポリビニルピロリドンとを含む前駆体溶液を調製し、その調製した前駆体溶液をポリオールに滴下して銀ナノワイヤを製造することによって、作業性よく銀ナノワイヤを製造できることを見いだし、発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は下記の通りである。
[1] ポリオールと銀化合物とポリビニルピロリドンとを100℃以下で混合することによって前駆体溶液を調製する第一の工程と、
ハロゲン化合物(ただし、ハロゲン化貴金属を除く)を含むポリオールを110℃から沸点未満の範囲に加熱した反応溶液中に、前記前駆体溶液を滴下する第二の工程と、を備えた銀ナノワイヤの製造方法。
[2] 前記反応溶液中には、表面修飾剤も含まれる、[1]記載の銀ナノワイヤの製造方法。
[3] 前記ハロゲン化合物は、塩素化合物を含む、[1]または[2]記載の銀ナノワイヤの製造方法。
[4] 前記ハロゲン化合物は、臭素化合物をも含む、[3]記載の銀ナノワイヤの製造方法。
[5] 前記臭素化合物は、NaBr、KBr、及びテトラアルキルアンモニウムブロミドから選ばれる少なくとも一つを有する、[4]記載の銀ナノワイヤの製造方法。
[6] 前記塩素化合物は、NaCl、KCl、及びテトラアルキルアンモニウムクロリドから選ばれる少なくとも一つを有する、[3]から[5]のいずれか記載の銀ナノワイヤの製造方法。
[7] 前記塩素化合物は、一般式R1234NCl(式中、R1〜R4は、それぞれ独立して、炭素数1〜8のアルキル基である。)で示されるテトラアルキルアンモニウムクロリドであり、
前記臭素化合物は、一般式R5678NBr(式中、R5〜R8は、それぞれ独立して、炭素数1〜8のアルキル基である。)で示されるテトラアルキルアンモニウムブロミドであり、
前記ハロゲン化合物における当該テトラアルキルアンモニウムクロリド及び当該テトラアルキルアンモニウムブロミドの割合(mol%)をそれぞれ[R1234NCl]、[R5678NBr]とした場合に、
[R1234NCl]+[R5678NBr]=100、
80≦[R1234NCl]≦97、
である、[4]記載の銀ナノワイヤの製造方法。
[8] 前記ポリオールは、エチレングリコール、プロピレングリコール、トリメチレングリコール、及びグリセリンから選ばれる少なくとも一つである、[1]から[7]のいずれか記載の銀ナノワイヤの製造方法。
[9] 前記前駆体調製時の温度は80℃以下である、[1]から[8]のいずれか記載の銀ナノワイヤの製造方法。
[10] 前記第一の工程で得られる前駆体溶液は、可視吸収スペクトルにおける吸収極大が400nmから420nmの範囲内に存在するものである、[1]から[9]のいずれか記載の銀ナノワイヤの製造方法。
[11] 前記第一の工程において、ポリオールと銀化合物とポリビニルピロリドンとは4時間以上混合される、[1]から[10]のいずれか記載の銀ナノワイヤの製造方法。
[12] 前記第二の工程で得られる銀ナノワイヤは、平均径が20nm以上、50nm以下であり、アスペクト比が200以上、5000以下のものである、[1]から[11]のいずれか記載の銀ナノワイヤの製造方法。
[13] 前記第二の工程における前記反応溶液の温度の標準偏差は、前駆体溶液の滴下開始から反応終了後まで1℃以下に制御される、[1]から[12]のいずれか記載の銀ナノワイヤの製造方法。
[14] 前記第二の工程における前記反応溶液の加熱は、マイクロ波の照射によって行われる、[1]から[13]のいずれか記載の銀ナノワイヤの製造方法。
本発明による銀ナノワイヤの製造方法によれば、より作業性よく銀ナノワイヤを製造することができる。
実施例1で生成された銀ナノワイヤのSEM画像を示す図 実施例2で生成された銀ナノワイヤのSEM画像を示す図 実施例3における前駆体溶液の吸収スペクトルの経時変化を示すグラフ PVPを含まない前駆体溶液の吸収スペクトルの経時変化を示すグラフ 実施例3における銀ナノワイヤ合成溶液の吸収スペクトルを示すグラフ 実施例9における銀ナノワイヤ合成溶液の吸収スペクトルを示すグラフ 実施例12における前駆体2の銀ナノワイヤ合成溶液の吸収スペクトルの経時変化を示すグラフ 実施例12における前駆体3の銀ナノワイヤ合成溶液の吸収スペクトルの経時変化を示すグラフ 実施例13における銀ナノワイヤ合成溶液の吸収スペクトルを示すグラフ
ポリオールと銀化合物とポリビニルピロリドンとを100℃以下で混合することによって前駆体溶液を調製する第一の工程と、ハロゲン化合物を含むポリオールを110℃から沸点未満の範囲に加熱した反応溶液中に、その前駆体溶液を滴下する第二の工程と、を備えた銀ナノワイヤの製造方法について説明する。
前駆体の調製で用いられるポリオールは、2以上のアルコール性ヒドロキシル基を有するアルコールである。ポリオールは特に限定されないが、例えば、2価アルコールであってもよく、3価以上のアルコールであってもよい。2価アルコールとしては、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール(1,2−プロパンジオール)、トリメチレングリコール(1,3−プロパンジオール)、テトラエチレングリコール、ポリエチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、または2,3−ブタンジオールなどを挙げることができる。3価アルコールとしては、例えば、グリセリンなどを挙げることができる。前駆体の調製で用いられるポリオールとしては、反応性の観点から、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール(PG)、トリメチレングリコール、またはグリセリンが好適である。なお、粘度を考慮すれば、グリセリン以外のもの、例えば、エチレングリコール、PG、またはトリメチレングリコールがより好適である。ポリオールは、単独で用いられてもよく、または複数が混合されて用いられてもよい。
銀化合物は、ポリオールに可溶であることが好適である。銀化合物は特に限定されないが、例えば、硝酸銀、酢酸銀、安息香酸銀、臭素酸銀、炭酸銀、クエン酸銀、乳酸銀、亜硝酸銀、過塩素酸銀、リン酸銀、硫酸銀、トリフルオロ酢酸銀、チオシアネート化銀、シアン化銀、シアネート化銀、四フッ素ボレート化銀、またはアセチルアセトネート化銀であってもよい。銀化合物としては、例えば、硝酸銀、過塩素酸銀、酢酸銀が好適であり、硝酸銀、酢酸銀がより好適である。
ポリビニルピロリドン(PVP:Polyvinylpyrrolidone)の重量平均分子量は特に限定されないが、例えば、1万から90万の範囲内であることが好適であり、3万から50万の範囲内であることがより好適である。なお、前駆体溶液の調製に必要な時間が長時間にならないようにするためには、前駆体溶液に含まれる銀に対するPVPのモル比を3以上とすることが好適であり、4以上とすることがより好適である。なお、そのモル比において、PVPのモル数は、繰り返しの1単位(分子量:111.14)を1モルとして計算している。以下の説明における、銀に対するPVPのモル比においても同様である。また、前駆体溶液においてPVPと銀との前駆体が適切に形成され、より均一なサイズの銀ナノワイヤが合成されるようにするため、前駆体溶液におけるPVP濃度(wt%)は、3wt%以上であることが好適である。
また、ポリオールに銀化合物やPVPが可溶となるように、ポリオールや銀化合物が選択されることが好適である。
第一の工程において前駆体溶液を調製する際に、ポリオールと銀化合物とPVPとを混合する順序は問わないが、例えば、ポリオールにPVPを混合し、そこに銀化合物またはポリオールに溶解させた銀化合物を加えて混合するようにしてもよい。ポリオールに銀化合物やPVPを溶解させるため、十分な撹拌を行うことが好適である。第一の工程は、銀種を生成するための工程ではないため、その撹拌時の温度、すなわち前駆体調製時の温度は、銀ナノ粒子が生成され難い温度であることが好適である。例えば、特表2014−507562号公報には、エチレングリコールとPVPと硝酸銀との混合物を115℃に加熱することによって銀種溶液を生成することが記載されているため、第一の工程における温度は、それよりも低いことが好適である。したがって、前駆体調製時の温度は、例えば、100℃以下であってもよい。なお、銀イオンの還元や銀ナノ粒子の生成において、ポリオールは、溶媒兼還元剤として作用し、またPVPの還元能は非常に低いが還元補助剤として作用することが知られている。したがって、前駆体調製時の温度が高くなるほど、順次還元が進行し、銀粒子が生成される可能性が高くなる。そのため、前駆体調製時の温度は、80℃以下であることが好適である。なお、前駆体調製時の温度は、70℃以下であってもよく、60℃以下であってもよく、50℃以下であってもよく、40℃以下であってもよく、30℃以下であってもよく、常温であってもよい。また、前駆体調製時の温度は、10℃以上であることが好適である。なお、前駆体溶液の調製時に加熱を行う場合には、マイクロ波の照射によって加熱してもよく、または、オイルバスなどのその他の方法によって加熱してもよい。
また、第一の工程において、ポリオールと銀化合物とPVPとは、4時間以上混合されることが好適であり、6時間以上混合されることがより好適である。それらは、例えば、7時間以上、または8時間以上混合されてもよい。なお、前駆体調製時の温度が高いほど、また、その高い温度が長時間維持されるほど、銀ナノ粒子が生成されやすくなる。そのため、第一の工程において、ナノ粒子が生成される可能性の低い時間範囲内で調製を行ってもよい。なお、例えば、前駆体調製時の温度が40℃以下である場合には、その温度を長時間維持してもナノ粒子が生成される確率は低いため、8時間以上混合するようにしてもよい。その混合は、例えば、回転撹拌や、揺動撹拌などによって行われてもよい。第一の工程は、通常、常圧において行われるが、必要に応じて加圧下または減圧下において行われてもよい。取り扱いの観点からは、常圧が望ましい。また、第一の工程は、通常、大気雰囲気中で行われるが、不活性雰囲気中で行ってもよい。
第一の工程で得られる前駆体溶液は、深緑色の溶液である。その前駆体溶液は、可視吸収スペクトルにおける吸収極大が400nmから420nmの範囲内に存在している。通常、銀ナノワイヤの溶液については、可視吸収スペクトルにおける吸収極大が370nm付近となり、その溶液の色は、ワイヤが太くなるにしたがい、灰緑色から肌色、灰色へと変化する。また、球状粒子である銀ナノ粒子の溶液は、ナノ粒子特有のプラズモン吸収帯を有し、その溶液の色は、粒子径の増加にしたがい、黄色から橙色に変化し、その吸収極大は、粒子径の増加と共に400nmから500nmにシフトする。一方、硝酸銀などの無機塩に由来する銀イオン(PVPとの錯形成をしていない銀イオン)には、そのような可視吸収スペクトルにおける吸収極大が存在しない。そのため、第一の工程で得られる前駆体溶液は、銀ナノワイヤや銀種としての銀ナノ粒子が主として生成しているものではなく、また、銀イオンとPVPとが単に別々に存在しているものでもないことがわかる。例えば、PVPのポリオール溶液は無色透明であるが、そこに硝酸銀などの銀化合物を加えると黄色になる。その後、混合溶液は橙色、緑色になり、時間の経過に応じて深緑色を呈するようになることから、その深緑色の前駆体溶液では、銀イオンとPVPとが配位結合している可能性があると推察できる。なお、この深緑色の前駆体溶液において、100℃を超える温度に加熱すると銀イオンの還元に伴い、銀粒子特有のプラズモン色(黄色または橙色)を呈し、冷却しても溶液の色が深緑色に戻ることはなく、不可逆である。したがって、深緑色の前駆体溶液に含まれている銀の多くは銀イオンとして存在しており、銀粒子として存在しているのではないことがわかる。また、第一の工程においては、混合溶液の色の変化によって目的とする前駆体溶液の生成を確認することができる。したがって、その色の変化が起こるまで、混合溶液の撹拌を継続するようにしてもよい。
また、第一の工程において、生成された前駆体溶液をポリオールで希釈してもよい。前駆体溶液の粘度をコントロールし、第二の工程において、滴下しやすくするためである。その希釈に用いるポリオールは、前駆体溶液に含まれるポリオールと同じであってもよく、または、そうでなくてもよい。この希釈を行った場合には、希釈後の前駆体溶液が最終的に第一の工程において調製された前駆体溶液となる。
第二の工程において用いるポリオールは、前駆体溶液に含まれるポリオールと同じであってもよく、または、そうでなくてもよい。このポリオールの例示は、上述の通りである。このポリオールは、溶媒兼還元剤である。このポリオールとしては、反応性の観点から、例えば、エチレングリコール、PG、トリメチレングリコール、またはグリセリンが好適である。なお、粘度を考慮すれば、グリセリン以外のもの、例えば、エチレングリコール、PG、またはトリメチレングリコールがより好適である。ポリオールは、単独で用いられてもよく、または複数が混合されて用いられてもよい。
第二の工程におけるポリオールに含まれるハロゲン化合物は、ポリオール中においてハロゲン化物イオン、例えば、塩化物イオンや臭化物イオン等を提供する。そのポリオールに含まれるハロゲン化合物は、ハロゲン化貴金属ではないものとする。ハロゲン化貴金属は、例えば、ハロゲン化パラジウム、ハロゲン化白金、ハロゲン化金、ハロゲン化銀、ハロゲン化オスミウム、ハロゲン化ロジウム、ハロゲン化ルテニウムまたはハロゲン化イリジウムであってもよい。その貴金属は、ギブス自由エネルギーに基づくイオン化傾向が低いものである。また、ハロゲン化貴金属は、例えば、フルオロ化貴金属、塩化貴金属、臭化貴金属、またはヨウ化貴金属であってもよい。ハロゲン化合物としてハロゲン化貴金属を用いると、まず、貴金属(パラジウムや白金など)の種結晶が生成され、その種結晶が触媒となって銀の還元が進行するため、銀ナノワイヤに種結晶の貴金属が含まれてしまうことになる。そのような貴金属が不純物として銀ナノワイヤに含まれることを防止するため、ハロゲン化合物は、ハロゲン化貴金属でないことが重要になる。また、ハロゲン化貴金属から貴金属の種結晶が生成されると、貴金属に結合していた塩素等のハロゲンは、例えば、銀に結合して塩化銀などのハロゲン化銀になる。その塩化銀や臭化銀、ヨウ化銀は難溶性であるため沈殿を生じ、系中におけるハロゲンの分布が不均一となる。そのように、ハロゲン化合物としてハロゲン化貴金属を用いると、系中に存在するハロゲンが不均一になりやすくなり、均一な銀ナノワイヤの成長が阻害され易くなるため、その観点からもハロゲン化貴金属を用いないことが重要である。ポリオールに含まれるハロゲン化合物は、特に限定されないが、塩素化合物を含んでいてもよい。その塩素化合物は、例えば、無機塩化物、及び有機塩化物から選ばれる少なくとも一つであってもよい。無機塩化物は、例えば、アルカリ金属塩化物、アルカリ土類金属塩化物、土類金属塩化物、亜鉛属金属塩化物、炭素属金属塩化物、及び遷移金属塩化物から選ばれる少なくとも一つであってもよい。アルカリ金属塩化物は、例えば、NaCl、KCl、またはLiClであってもよい。アルカリ土類金属塩化物は、例えば、塩化マグネシウム、または塩化カルシウムであってもよい。土類金属塩化物は、例えば、塩化アルミニウムであってもよい。亜鉛属金属塩化物は、例えば、塩化亜鉛であってもよい。炭素属金属塩化物は、例えば、塩化スズであってもよい。遷移金属塩化物は、例えば、塩化マンガン、塩化鉄、塩化コバルト、または塩化ニッケルであってもよい。有機塩化物は、例えば、テトラアルキルアンモニウムクロリドであってもよい。テトラアルキルアンモニウムクロリドは、一般式R1234NClで示されるものである。その式中、R1〜R4は、それぞれ独立して、炭素数1〜8の直鎖または分岐のアルキル基であってもよい。すなわち、テトラアルキルアンモニウムクロリドは、例えば、テトラメチルアンモニウムクロリド、テトラエチルアンモニウムクロリド、テトラプロピルアンモニウムクロリド、テトライソプロピルアンモニウムクロリド、テトラブチルアンモニウムクロリド、テトラペンチルアンモニウムクロリド、テトラヘキシルアンモニウムクロリド、テトラヘプチルアンモニウムクロリド、テトラオクチルアンモニウムクロリド、ヘキサデシルトリメチルアンモニウムクロリド、またはメチルトリオクチルアンモニウムクロリドであってもよい。その塩素化合物は、単独で用いられてもよく、または複数が混合されて用いられてもよい。また、ハロゲン化合物が塩素化合物を含んでいる場合に、そのハロゲン化合物は、臭素化合物をも含んでいてもよい。その臭素化合物は、例えば、無機臭化物であってもよく、有機臭化物であってもよい。無機臭化物は、例えば、アルカリ金属臭化物、アルカリ土類金属臭化物、土類金属臭化物、亜鉛属金属臭化物、炭素属金属臭化物、及び遷移金属臭化物から選ばれる少なくとも一つであってもよい。アルカリ金属臭化物は、例えば、NaBr、KBr、またはLiBrであってもよい。アルカリ土類金属臭化物は、例えば、臭化マグネシウム、または臭化カルシウムであってもよい。土類金属臭化物は、例えば、臭化アルミニウムであってもよい。亜鉛属金属臭化物は、例えば、臭化亜鉛であってもよい。炭素属金属臭化物は、例えば、臭化スズであってもよい。遷移金属臭化物は、例えば、臭化マンガン、臭化鉄、臭化コバルト、または臭化ニッケルであってもよい。有機臭化物は、例えば、テトラアルキルアンモニウムブロミドであってもよい。テトラアルキルアンモニウムブロミドは、一般式R5678NBrで示されるものである。その式中、R5〜R8は、それぞれ独立して、炭素数1〜8の直鎖または分岐のアルキル基であってもよい。すなわち、テトラアルキルアンモニウムブロミドは、例えば、テトラメチルアンモニウムブロミド、テトラエチルアンモニウムブロミド、テトラプロピルアンモニウムブロミド、テトライソプロピルアンモニウムブロミド、テトラブチルアンモニウムブロミド、テトラペンチルアンモニウムブロミド、テトラヘキシルアンモニウムブロミド、テトラヘプチルアンモニウムブロミド、テトラオクチルアンモニウムブロミド、ヘキサデシルトリメチルアンモニウムブロミド、またはメチルトリオクチルアンモニウムブロミドであってもよい。その臭素化合物は、単独で用いられてもよく、または複数が混合されて用いられてもよい。なお、ハロゲン化合物がテトラアルキルアンモニウムクロリド及びテトラアルキルアンモニウムブロミドを含んでおり、ハロゲン化合物におけるテトラアルキルアンモニウムクロリド及びテトラアルキルアンモニウムブロミドの割合(mol%)をそれぞれ[R1234NCl]、[R5678NBr]とした場合に、
[R1234NCl]+[R5678NBr]=100、
80≦[R1234NCl]≦97、
となることが好適である。ハロゲン化合物に含まれる塩素化合物を80モル%以上とすることによって、高収率(後述する第1評価値が0.3以下)で銀ナノワイヤを合成できるからである。また、ハロゲン化合物に含まれる塩素化合物を100%とするのではなく、少量の臭素化合物を含むようにすることによって、生成される銀ナノワイヤが太くならないようにすることができる。ハロゲン化合物に塩素化合物と臭素化合物とが含まれる場合に、その塩素化合物と臭素化合物との両方は、第二の工程において前駆体溶液の滴下を行う前に、ポリオールの反応溶液中に存在していることが好適である。なお、滴下対象の前駆体溶液に含まれる銀に対する、反応溶液に含まれるハロゲン化合物のモル比は、0.005以上であり、0.06以下であることが好適である。そのモル比は、0.05以下であることがより好適であり、0.04以下であることがさらに好適である。そのようにすることで、生成されるワイヤの太さのばらつきがより少ない均一な銀ナノワイヤを合成することができるからである。なお、滴下対象の前駆体溶液に含まれる銀とは、前駆体溶液の滴下後の反応溶液に含まれる銀であると考えてもよい。また、ポリオールにハロゲン化合物が可溶となるように、ポリオールやハロゲン化合物が選択されることが好適である。
また、第二の工程において、ポリオールには、ハロゲン化合物以外に表面修飾剤も含まれていてもよい。表面修飾剤は、キャッピング剤と呼ばれることもあり、成長する銀ナノワイヤの側面に優先的に付着することによって、銀ナノワイヤの1次元方向への成長を促進するものである。表面修飾剤は特に限定されないが、例えば、PVP、またはポリビニルアセトアミドなどであってもよい。それらは単独で用いられてもよく、または混合されて用いられてもよい。その表面修飾剤の量は特に限定されないが、第二の工程で滴下される前駆体溶液に含まれる銀に対する表面修飾剤のモル比は、0から20であってもよい。なお、そのモル比は、0から10であることが好適である。使用する表面修飾剤の量が多いほど、銀ナノワイヤの生成後に表面修飾剤を除去したり低減したりする処理がより多く必要になるため、より少ない量の表面修飾剤を用いることが好適だからである。なお、前駆体溶液の滴下終了後の反応溶液に含まれる銀に対する表面修飾剤(その表面修飾剤は、前駆体溶液に含まれていたPVPを含む)のモル比は、0.5以上が好適であり、1以上がより好適である。表面修飾剤が少ないと、球状粒子が生成される可能性が高くなるからである。また、合成される銀ナノワイヤを太くしない観点からは、前駆体溶液の滴下終了後の反応溶液に含まれる銀に対する表面修飾剤(その表面修飾剤は、前駆体溶液に含まれていたPVPを含む)のモル比は、2以上が好適であり、2.5以上がより好適であり、3以上がさらに好適である。また、そのモル比は、20以下であることが好適であり、15以下であることがより好適であり、10以下であることがさらに好適である。表面修飾剤が多すぎる場合にも、粒子状の銀が生成されるからである。そのモル比は、表面修飾剤の繰り返しの1単位を1モルとしたモル比であるとする。
第二の工程において、前駆体溶液を、ハロゲン化合物を含むポリオールの反応溶液中に滴下する。その際に、110℃から、その反応溶液の沸点未満の範囲に反応溶液を加熱する。また、反応溶液は、110℃から200℃の範囲に加熱されてもよく、120℃から180℃の範囲に加熱されてもよい。その加熱は、マイクロ波の照射によって行われてもよく、または、オイルバスなどのその他の加熱手段によって行われてもよい。その加熱において、反応溶液の温度をできるだけ一定に保持することが好適である。例えば、第二の工程における反応溶液の温度の標準偏差が、前駆体溶液の滴下開始から反応終了後まで1℃以下となるように加熱を制御することが好適である。反応溶液に前駆体溶液を滴下した時に、反応溶液の温度が少し低下する。したがって、その際に温度低下を引き起こさないようにするためには、マイクロ波加熱を行うことが好適である。マイクロ波加熱は、内部加熱であって、急速加熱が可能だからである。マイクロ波の周波数は特に限定されないが、例えば、2.45GHzであってもよく、5.8GHzであってもよく、24GHzであってもよく、915MHzであってもよく、その他の300MHzから300GHzの範囲内の周波数であってもよい。また、単一の周波数のマイクロ波が照射されてもよく、複数の周波数のマイクロ波が照射されてもよい。複数の周波数のマイクロ波は、例えば、同じ位置で照射されてもよく、または異なる位置で照射されてもよい。また、マイクロ波の照射は、連続で行ってもよく、または照射と休止を繰り返す間欠で行ってもよい。マイクロ波を照射すると、照射対象の温度が上昇するが、その温度が一定になるようにマイクロ波照射の強度を調整してもよい。マイクロ波の照射対象である反応溶液の温度は、例えば、熱電対方式の温度計や、光ファイバー方式の温度計などの既知の温度計を用いて測定されてもよい。その測定された温度は、マイクロ波の出力(強度)の制御に用いられてもよい。マイクロ波の照射は、シングルモードで行われてもよく、またはマルチモードで行われてもよい。
第二の工程において、前駆体溶液の滴下終了後の反応溶液に含まれる銀の濃度が、1wt%以下となる量の前駆体溶液が滴下されることが好適である。反応溶液中の銀の濃度が高くなると、得られる銀ナノワイヤが太くなるからである。反応溶液に含まれる銀の濃度とは、銀イオン、銀元素、銀化合物のすべてを含む銀の濃度である。反応溶液に前駆体溶液を滴下するスピードは、銀ナノワイヤが適切に合成できる範囲内において任意であるが、より長い平均長の銀ナノワイヤを得る観点からは、より遅いことが好適である。例えば、反応溶液における銀濃度の平均増加スピードが0.6wt%/h以下となるように滴下することが好適であり、0.1wt%/h以下となるように滴下することがより好適であり、0.04wt%/h以下となるように滴下することがさらに好適である。なお、その平均増加スピードは、滴下終了後の銀濃度(wt%)を、滴下時間(h)で割ったものである。したがって、前駆体溶液の滴下スピードが一定である場合には、滴下開始時には、その平均増加スピードより大きな値で銀濃度が増加し、滴下終了間際には、その平均増加スピードより小さな値で銀濃度が増加することになる。
また、その前駆体溶液の滴下が終了した後に、滴下時の温度を維持してもよく、またはそうでなくてもよい。前駆体溶液の滴下の終了後に滴下の温度を維持する時間を保持時間と呼ぶとすると、その保持時間は、0から12時間の範囲であってもよい。また、その保持時間は、30分から2時間の範囲内であることが好適である。前駆体溶液の滴下直後に、滴下された液滴に含まれる銀を用いた銀ナノワイヤの成長が行われると考えられるため、通常、保持時間を設けなくても問題ないと考えられるが、その保持時間を設けることによって、より完全に銀ナノワイヤの成長が完了すると考えられる。したがって、保持時間は長時間でなくても問題ない。なお、滴下された液滴に含まれる銀とは、銀化合物であってもよく、銀イオンであってもよい。その銀化合物は、前駆体調製時に用いられた銀化合物であってもよく、または、そうでなくてもよい。
第二の工程は、通常、常圧において行われるが、必要に応じて加圧下または減圧下において行われてもよい。取り扱いの観点からは、常圧が望ましい。また、圧力が常圧でない場合には、反応溶媒の沸点は、その圧力における沸点となる。
第二の工程は、不活性雰囲気中で行われることが好適である。その不活性雰囲気とするために用いられる不活性気体は、窒素、ヘリウム、ネオン、及びアルゴンから選ばれる少なくとも一つを含有していてもよい。なお、不活性雰囲気中で第二の工程の反応を行うとは、反応容器に存在する空気を不活性気体で置き換えることであると考えてもよい。そのように、不活性雰囲気中で銀ナノワイヤの成長を行うことによって、より細い銀ナノワイヤを生成することができるようになる。そのことについては、上記特許文献1を参照されたい。
第二の工程において、反応溶液に前駆体溶液を滴下することによって、反応溶液中で銀イオンが還元され、銀ナノワイヤを得ることができる。第二の工程によって生成される銀ナノワイヤは、平均径が20〜50nmであり、アスペクト比が200〜10000の範囲内のものとなる。そのアスペクト比は、200〜5000の範囲内であってもよい。アスペクト比は、ナノワイヤの直径に対する長さの比である。すなわち、アスペクト比=ナノワイヤの長さ/ナノワイヤの直径となる。
第二の工程によって製造された銀ナノワイヤは、公知の方法によって精製することができる。例えば、水、アルコール等の分散溶媒によって希釈した後に、遠心分離、クロスフローろ過、その他のろ過等によって、銀ナノワイヤの分散液に含まれる樹脂(例えば、PVPや、その他の表面修飾剤等)を減少させてもよい。また、そのような希釈とろ過等の処理とを繰り返してもよい。また、そのようにして精製された銀ナノワイヤは、例えば、透明導電膜の製造に用いられてもよく、その他の用途に用いられてもよい。透明導電膜の製造に銀ナノワイヤを用いる際に、銀ナノワイヤの液状分散液を調製し、その液状分散液を基板上に堆積させ、乾燥や硬化させるようにしてもよい。そのように、製造された銀ナノワイヤは、そのような液状分散液の調製に用いられてもよい。その液状分散液は、例えば、インク組成物や導電性インクと呼ばれることもある。その液状分散液を基板上に堆積させる方法や、堆積させた液状分散液を乾燥させたり硬化させたりする方法については、公知の方法を用いることができる。
以上のように、本発明による銀ナノワイヤの製造方法によれば、単一の前駆体溶液を滴下することによって銀ナノワイヤを合成できるため、従来のポリオール法よりも、より作業性よく銀ナノワイヤを合成することができるようになる。特に、工業的に銀ナノワイヤを製造する際には、第二の工程において、多量の反応溶液に前駆体溶液を滴下することになる。そのような状況では、反応溶液の複数箇所において前駆体溶液を滴下することになるが、その場合であっても、反応溶液に供給される銀とPVPとの比率は変わらないことになる。一方、従来のように、銀と表面修飾剤とを別々に滴下していた場合には、複数箇所において両者の滴下を行うと、滴下のコントロールがさらに複雑になる可能性があるが、本発明では、そのような問題が起きないことになる。また、深緑色の前駆体溶液を滴下することによって、銀イオンとPVPとの比率が一定である前駆体溶液を滴下できることになる。その結果、銀化合物とPVPとポリオールとを混合した直後に滴下する場合と比較して、より再現性の高い、安定した銀ナノワイヤの製造を実現することができると考えられる。
[実施例、比較例]
以下、本発明を実施例に基づいて詳しく説明するが、これらの実施例は例示的なものであり、本発明はこれらの実施例により限定されるものではない。
銀イオン前駆体溶液の評価として、以下の手順にしたがい、各調製条件の差異を確認した。
[可視吸収スペクトル]
前駆体溶液の0.1gを採取し、メタノール溶媒にて50倍(w/w)に希釈した溶液を以下の測定装置、装置条件で分析した。
測定装置:U−3300形分光光度計(日立ハイテクノロジーズ社製)
装置条件
開始:660.00nm
終了:300.00nm
スキャンスピード:60nm/min
サンプリング間隔:2.00nm
スリット:2nm
セル長:10.0mm
銀ナノワイヤのサイズ計測は、以下の手順に従い平均値を算出した。
[ワイヤ径計測]
合成溶液10gをメタノールにて200gになるように希釈した分散溶液をテフロン(登録商標)製遠沈容器に充填し、遠心分離機(TOMY社製、CAX−371)にて、回転数2,300rpm(1,000G相当)、60分の回転条件にて遠心分離した後、上澄みを除去した。その後、得られたスラリーを同量のメタノールで再分散させ、遠心分離する操作をさらに3回繰り返すことによって洗浄操作を行い、過剰に存在していたPG溶媒、樹脂(PVP)を除去した。得られた銀ナノワイヤ分散液をSiO基板に液滴し、100℃にて乾燥した。その後、Ptコーティングした後、以下の条件にて分析を行い、100本のワイヤのサイズを計測することで平均径を算出した。
測定装置:電界放射型走査電子顕微鏡(日立ハイテクノロジーズ社製,FE−SEM,SU8020)
測定条件:加速電圧5kV、WD30mm、倍率100,000倍
[ワイヤ長計測]
精製したメタノール希釈溶液をスライドガラス上に塗布・乾燥した後、光学顕微鏡(キーエンス社製,型番VHX−600)にてワイヤ長を計測した。ワイヤ長の平均値は200本のワイヤサイズを計測することで平均値を算出した。
測定条件:倍率500倍
[生成銀ナノワイヤに含まれる異物評価]
反応直後の銀ナノワイヤに含まれる球状異物の量を、以下の2つの手法にて評価した。
(評価1:可視吸収スペクトル)
反応溶液の0.1gを採取し、メタノール溶媒にて100倍(w/w)に希釈した溶液を以下の測定装置、装置条件により分析した。
測定装置:U−3300形分光光度計(日立ハイテクノロジーズ社製)
装置条件:前駆体溶液の評価条件と同一条件
生成された銀ナノワイヤは波長370nm付近に吸収極大(λmax)を有することから、その吸光度をAbs(λmax)とした。また、球状粒子である銀ナノ粒子のプラズモン吸収帯は、粒子径の増加に応じて400nmから500nmへシフトすることから、粒状粒子由来の強度を波長450nmの吸光度Abs(450nm)とし、以下の式を用いて異物粒子量を評価した。
第1評価値=Abs(450nm)/Abs(λmax
ここで、第1評価値の値が0.3以上の場合、球状粒子が多いため、精製時の分離が困難になり好ましくはない。第1評価値の値は、0.15以下がより好ましい。
(評価2:光学顕微鏡による直接観察)
ワイヤ長計測と同様の手法を用いて、スライドガラス上に存在するワイヤ及び粒状粒子の個数を計測し、球状異物の割合である第2評価値を次の式で算出した。
第2評価値(球状異物割合)=(球状粒子個数)/[(球状粒子個数)+(ワイヤ本数)]×100
第2評価値(ワイヤ割合)=(ワイヤ本数)/[(球状粒子個数)+(ワイヤ本数)]×100
[実施例1]
(前駆体溶液の調製)
室温下、2.25gの硝酸銀(和光純薬社製)、7.2gのPVP(重量平均分子量50,000)粉末を、210gのPG溶媒中に激しく撹拌しながら少量ずつ加え、8時間撹拌することで溶解させ、深緑色の前駆体溶液を調製した。
(銀ナノワイヤの合成)
ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)製シール栓付き撹拌機(東京理理化機器社製,マゼラZ2310)、窒素導入管、熱電対挿入口,前駆体溶液滴下口を備えた容積1,000mLのガラス製丸底フラスコを備え、撹拌翼としてPTFE製三日月型羽根を備えた反応装置を用いて銀ナノワイヤを合成した。なお、上記反応装置をマルチモード型マイクロ波照射装置(四国計測工業社製,μ−Reactor Ex;最大出力1,000W,発信周波数2.45GHz)内に組み込み、マイクロ波照射により溶液全体を加熱した。温度制御は、溶液内の温度を熱電対にて計測し、その計測温度が設定された温度となるようにマイクロ波の出力をプログラム制御することによって行った。
上記1,000mLガラス容器内に200gのPG溶媒と0.11gのテトラブチルアンモニウム塩を投入し、室温にて撹拌することで全て溶解させ、反応溶液を調製した。そのテトラブチルアンモニウム塩としては、テトラブチルアンモニウムクロリドとテトラブチルアンモニウムブロミドとのモル比が86:14の混合物を使用した。容器内を窒素ガスにて置換した後、100ml/minの窒素ガス流量にて絶えず不活性雰囲気下に保持した。まず、ガラス容器内の反応溶液をマイクロ波照射により室温から160℃まで昇温速度10℃/minにて昇温し、溶液の温度を保持した。また、40℃の前駆体溶液を、定量ポンプ(KNF社製,SIMDOS02)を用いて、7.315g/minの滴下速度にて30分かけて滴下した後、温度をさらに30分保持することで銀ナノワイヤを合成し、得られた灰緑色溶液を室温まで冷却することで銀ナノワイヤ反応溶液を得た。得られた銀ナノワイヤのSEM(Scanning Electron Microscope:走査型電子顕微鏡)画像を図1に示す。また、合成条件と、得られた銀ナノワイヤのサイズとを次表に示す。
[実施例2]
加熱媒体としてオイルバスを用いた以外は実施例1と同様の手法で銀ナノワイヤを合成した。オイルは東レ・ダウコーニング社製シリコーンオイル(SRX310)を用いた。反応溶液の液面とオイルの液面が同じになるように1,000mlガラス容器をオイルバスに浸漬した状態で温度を制御し、滴下前の溶液の温度を160℃に保つために、オイルバスの温度が163℃となるように制御した。得られた銀ナノワイヤのSEM画像を図2に示す。また、合成条件と、得られた銀ナノワイヤのサイズとを次表に示す。
上記表において、平均温度や生成ワイヤサイズの括弧内は、温度や平均径などの値に対する標準偏差を示している。以下の各表においても同様であるとする。実施例1,2の反応系において、160℃の反応溶液に液温40℃の前駆体溶液を滴下すると温度降下は避けられないが、実施例1のようにマイクロ波照射による加熱の場合には、マイクロ波出力制御によって瞬時に目的温度に保持することができる。そのことは、前駆体溶液の滴下中における反応溶液の温度の標準偏差が、実施例2では1.3℃であるのに対し、実施例1では0.5℃であることから確認される。実施例1と実施例2とを比較すると、得られるワイヤサイズに大きな差異はないが、反応温度を精密に制御した実施例1では、ワイヤ生成確率がより高く、生産性により優れたものとなっていることがわかる。また、マイクロ波加熱を行った方が銀ナノワイヤの平均径や平均長のばらつきが少ないこともわかる。
[実施例3]
室温下、7.2gのPVP(重量平均分子量360,000)白色粉末を、90gのPG溶媒中に激しく撹拌しながら少量ずつ加え、2時間撹拌することで溶解させた。その後、2.25gの硝酸銀を10gのPG溶媒に加えて室温下、撹拌することにより得られた無色透明溶液を、上記PVPを含む溶液に投入し、室温下、さらに8時間撹拌することによって深緑色の溶液(以下「前駆体1」とする)を得た。PVP溶解液に硝酸銀溶液を添加しても、大きな粘度低下は起きなかった。すなわち、PVPの分子鎖は硝酸銀の添加によって切断されず、両者は相溶性があるといえる。また、上記前駆体1にPG溶媒100gを添加することで2倍希釈した前駆体溶液を得た。
図3Aは、硝酸銀溶液を添加した時を開始時間とし、前駆体1が得られるまでの調製溶液の可視吸収スペクトルの経時変化を示すグラフである。8時間までは吸収極大となる400〜410nm付近の吸光度が時間に応じて増加するが、8時間以降は一定の強度に落ち着くのがわかる。したがって、前駆体溶液が深緑色となるまで撹拌することによって、銀イオンとPVPの配位結合と、遊離している銀イオンとのムラがなく、PVPと銀イオンとの比率が一定の前駆体溶液を調製できたことになると考えられる。そのため、そのような前駆体溶液を滴下することによって、比率が一定であるPVPと銀イオンとを、反応溶液に供給することができると考えられる。図3Bは、PVPを使用しなかった以外は、前駆体1と同様の条件にて調製したAg溶液の可視吸収スペクトルの経時変化を示すグラフである。その場合には、24時間経過しても、反応溶液の色は透明であった。また、図3Bには、400〜410nm付近に吸収帯が存在しない。この結果より、PVPの存在によって、AgイオンとPVPとの前駆体が形成されたことがわかる。
容積1,000mLのガラス容器内に600gのPG溶媒、0.11gの実施例1と同じテトラブチルアンモニウム塩を投入し、室温にて撹拌することで全て溶解させた(反応溶液1)。反応容器内を窒素ガスにて置換した後、実施例1と同様に、窒素ガス流にて不活性雰囲気下に保持しながらマイクロ波の照射により、反応溶液1を150℃まで昇温し、溶液の温度を保持した。上記前駆体溶液のすべてを、0.388g/minの滴下速度にて9時間かけて反応溶液1に滴下した後、温度をさらに1時間保持することで銀ナノワイヤを合成し、得られた灰緑色溶液を室温まで冷却することで銀ナノワイヤ反応溶液を得た。なお、本実施例の滴下速度の場合、銀(銀イオン、銀元素を含む)としては、0.024mmol/minで滴下されたことになる。また、滴下後の反応溶液における銀濃度は、0.20wt%となる。したがって、反応溶液の銀濃度は、平均で0.022wt%/hのスピードで増加したことになる。得られた銀ナノワイヤのサイズは平均径34.9nm(標準偏差3.6nm)、平均長20.2μm(標準偏差10.0μm)であった。
得られた合成溶液をメタノールで10倍希釈した溶液の可視吸収スペクトルを図4に示す。得られた銀ナノワイヤに含まれる異物の第1評価値は0.13であった。また、光学顕微鏡を用いた第2評価値(ワイヤ割合)は85%であり、第2評価値(球状異物割合)は15%であった。このように、非常に高い収率で銀ナノワイヤが得られていることがわかる。
[実施例4]
滴下時間を4.5時間とした以外は、実施例3と同様にして銀ナノワイヤを合成した。なお、滴下時間を実施例3の半分としたため、滴下速度は実施例3の2倍である。すなわち、本実施例の滴下速度の場合、銀(銀イオン、銀元素を含む)としては、0.048mmol/minで滴下されたことになる。この場合には、反応溶液の銀濃度は、平均で0.044wt%/hのスピードで増加したことになる。得られた銀ナノワイヤのサイズは、平均径34.0nm(標準偏差3.7nm)、平均長13.6μm(標準偏差7.8μm)であった。得られた銀ナノワイヤに含まれる異物の第1評価値は0.14であり、非常に高い収率で銀ナノワイヤが得られていることがわかる。
[実施例5]
滴下時間を6.5時間とした以外は、実施例3と同様にして銀ナノワイヤを合成した。なお、滴下時間を実施例3の0.72倍としたため、滴下速度は実施例3の1.4倍である。すなわち、本実施例の滴下速度の場合、銀(銀イオン、銀元素を含む)としては、0.034mmol/minで滴下されたことになる。この場合には、反応溶液の銀濃度は、平均で0.031wt%/hのスピードで増加したことになる。得られた銀ナノワイヤのサイズは平均径33.3nm(標準偏差3.7nm)、平均長16.4μm(標準偏差8.5μm)であった。得られた銀ナノワイヤに含まれる異物の第1評価値は0.12であり、非常に高い収率で銀ナノワイヤが得られていることがわかる。
実施例3〜5の結果から、滴下時間、すなわち投入する銀イオンの速度を制御することで、銀ナノワイヤの長さ方向の制御が可能となることがわかる。具体的には、よりゆっくりと銀イオンを滴下することによって、より長い銀ナノワイヤを合成できることがわかる。
[試験例1]
8時間の撹拌時間に代えて24時間撹拌した以外は、実施例3と同様にして前駆体1を調製した。その前駆体1の溶液1gを、50gまで蒸留水で希釈した溶液を用いて、酸化還元電位を計測することによって、溶液中の銀イオン濃度を測定した。使用した装置は、ザルトリウス社製のDocu−pHメータである。その測定の結果、銀イオン濃度は1.036wt%であった。すべてが銀イオンである場合の理論値は1.30wt%であるため、79.7atom%の銀イオンは、還元されることなく前駆体1の溶液中に存在していることがわかる。このことから、前駆体溶液中の銀は、その大半が銀イオンとして存在しており、まだ還元されていないことが確認された。
その溶液に含まれる還元された銀粒子のサイズを、TEM(Transmission Electron Microscope:透過型電子顕微鏡)によって測定した。そのTEMによる観察により、5nm以上のナノ粒子と、2nm以下の超微粒子とが観察された。2nmより大きな粒径を有するナノ粒子においては、それらの100個の粒子からサイズを計測した粒子径は、平均13.0nm(標準偏差:4.9nm)であった。
[実施例6]
実施例1のテトラブチルアンモニウム塩の代わりに、テトラエチルアンモニウムクロリドとテトラエチルアンモニウムブロミドとのモル比が87:13である66.8mgのアンモニウム塩を用いた以外は、実施例3と同様にして銀ナノワイヤを合成した。得られた銀ナノワイヤのサイズは平均径35.3nm(標準偏差3.8nm)、平均長13.2μm(標準偏差6.7μm)であった。生成銀ナノワイヤに含まれる異物の第1評価値は0.13であり、非常に高い収率で銀ナノワイヤが得られていることがわかる。
[実施例7]
4.5gの硝酸銀、14.4gのPVP(重量平均分子量360,000)、210gのPG溶媒を用いた以外は、実施例3と同様にして前駆体溶液を調製した。また、反応容器には事前に200gのPG溶媒と、ハロゲン化合物である0.11gのアンモニウム塩とを仕込んだ。そのアンモニウム塩は、実施例1と同じものを用いた。窒素雰囲気下、160℃に昇温した後に、反応溶液の温度を保持しながら前駆体溶液を75分かけて滴下し、温度をさらに30分保持して目的とする銀ナノワイヤを得た。次表に、生成された銀ナノワイヤのサイズを記載する。なお、滴下後の反応溶液における銀濃度は、0.66wt%となる。したがって、反応溶液の銀濃度は、平均で0.53wt%/hのスピードで増加したことになる。
[実施例8]
使用するハロゲン化合物であるアンモニウム塩を、テトラブチルアンモニウムクロリドのみにした以外は、実施例7と同様にして銀ナノワイヤを合成した。次表に、生成された銀ナノワイヤのサイズを記載する。
[比較例1]
使用するハロゲン化合物であるアンモニウム塩を、テトラブチルアンモニウムブロミドのみにした以外は、実施例7と同様にして銀ナノワイヤを合成した。本比較例では、次表に示すように、ワイヤが生成されなかった。
上記表の結果から、使用するハロゲン化合物に少なくとも塩素化合物が含まれていることが好適であることがわかる。また、より細い銀ナノワイヤを製造するためには、使用するハロゲン化合物に臭素化合物が含まれていることが好適であることもわかる。
[実施例9]
アンモニウム塩に含まれる臭素の量による銀ナノワイヤへのサイズ効果を以下の合成条件により比較した。
2.25gの硝酸銀、3.6gのPVP(重量平均分子量360,000)、3.6gのPVP(重量平均分子量50,000)、100gのPG溶媒を用いた以外は、実施例3と同様にして前駆体溶液を調製した。また、反応容器には事前に600gのPG溶媒、ハロゲン化合物である0.11gのアンモニウム塩を仕込んだ。そのアンモニウム塩は、テトラブチルアンモニウムクロリドとテトラブチルアンモニウムブロミドとの混合物であり、両者のモル比は、次表に示されるとおりである。窒素雰囲気下、150℃に昇温した後に、反応溶液の温度を保持しながら前駆体溶液を6時間かけて滴下し、温度をさらに2時間保持して目的とする銀ナノワイヤを得た。
上記合成条件において、アンモニウム塩の臭素含有量を変化させたときに得られた銀ナノワイヤのサイズと球状異物量の結果を次表に示す。また、得られた合成溶液の吸収スペクトルを図5に示す。次表及び図5から、ハロゲン化合物に臭素化合物が25モル%以上存在すると、球状粒子の生成割合が増えるため、高純度の銀ナノワイヤを合成するためには好ましくないことがわかる。したがって、高い収率で銀ナノワイヤを合成するためには、アンモニウム塩に含まれる臭素化合物を20モル%以下にすることが好適であると考えられる。
[実施例10]
アンモニウム塩に含まれる臭素の量による銀ナノワイヤへのサイズ効果を、テトラプロピルアンモニウム塩を用いて以下の合成条件により比較した。
2.25gの硝酸銀、3.6gのPVP(重量平均分子量360,000)、3.6gのPVP(重量平均分子量50,000)、100gのPG溶媒を用いた以外は、実施例3と同様にして前駆体溶液を調製し、さらに100gのPG溶媒を用いて希釈したものを使用した。また、反応容器には事前に500gのPG溶媒、ハロゲン化合物である0.348mmolのアンモニウム塩を仕込んだ。そのアンモニウム塩は、テトラプロピルアンモニウムクロリドとテトラプロピルアンモニウムブロミドとの混合物であり、両者のモル比は、次表に示されるとおりである。窒素雰囲気下、150℃に昇温した後に、反応溶液の温度を保持しながら前駆体溶液を9時間かけて滴下し、温度をさらに30分時間保持して目的とする銀ナノワイヤを得た。
上記合成条件において、アンモニウム塩の臭素含有量を変化させたときに得られた銀ナノワイヤのサイズと球状異物量の結果を次表に示す。次表から、ハロゲン化合物に臭素化合物が25モル%以上存在すると、球状粒子の生成割合が増えるため、高純度の銀ナノワイヤを合成するためには好ましくないことがわかる。したがって、高い収率で銀ナノワイヤを合成するためには、アンモニウム塩に含まれる臭素化合物を20モル%以下にすることが好適であると考えられる。
[実施例11]
実施例3と同様にして前駆体溶液を調製した。また、テトラブチルアンモニウム塩の使用量を0.22gにした以外は、実施例3と同様にして銀ナノワイヤの合成を行った。そのようにして合成された銀ナノワイヤのサイズ、及び第1評価値は、次の通りであった。
ワイヤ平均径:36.3nm(標準偏差:10.0nm)
ワイヤ平均長:30.4μm(標準偏差:17.8μm)
第1評価値:0.18
実施例3と実施例11とを比較することにより、ハロゲン化合物が多くなると、ワイヤのばらつきが大きくなることが分かる。なお、実施例3,11のそれぞれにおける滴下終了後の反応溶液に含まれる銀に対するハロゲン化合物のモル比[X(ハロゲン)]/[Ag]は、次のようになる。
実施例3:[X]/[Ag]=0.030
実施例11:[X]/[Ag]=0.060
したがって、実施例11よりも銀ナノワイヤのワイヤ径や長さのばらつきを大きくしないためには、[X]/[Ag]を0.060以下とすることが好適である。また、より均一な銀ナノワイヤを生成するためには、[X]/[Ag]を0.050以下とすることがより好適であり、0.040以下とすることがさらに好適であると考えられる。
[実施例12]
PVP(重量平均分子量360,000)の使用量を0.5倍(3.6g),1.5倍(10.8g)にした以外は、実施例3と同様にして前駆体溶液を調製した。PVPを0.5倍量にて調製した溶液を前駆体2,PVPを1.5倍量にて調製した溶液を前駆体3とそれぞれ表記する。図6A,図6Bはそれぞれ、前駆体2,3の調製時における可視吸収スペクトルの経時変化を示すグラフである。銀イオンに対するPVPの量が少ないと、前駆体1の8時間の撹拌後と同一のものを得るためには、前駆体調製にさらに時間を要することになり、好ましくないことがわかる。
なお、実施例3と、実施例12の前駆体2とのそれぞれにおける前駆体溶液に含まれる銀に対するPVPのモル比[PVP]/[Ag]は、次のようになる。
実施例3:[PVP]/[Ag]=4.89
前駆体2:[PVP]/[Ag]=2.45
したがって、前駆体溶液の調製を適切な時間内で行うことができるようにするためには、前駆体溶液に含まれる銀に対するPVPのモル比を3以上とすることが好適であり、4以上とすることがより好適であると考えられる。
前駆体2をさらに24時間撹拌し、完全に反応させた深緑色の前駆体溶液を用いて、実施例4と同じ反応条件(滴下時間4.5時間)にて銀ナノワイヤを合成した、次表に実施した条件及び生成ワイヤサイズを記載する。この場合には、球状異物の第1評価値は、実施例4と同様に小さい値が得られたが、太いワイヤが合成されたことがわかる。これは使用する銀イオンに対するPVP量が半分になることで、生成する銀ナノワイヤの周りを表面修飾する量も半分になるため、太さ方向の成長を抑制できないことに起因するのではないかと考えられる。
[実施例13]
PVP(重量平均分子量360,000)に代えてPVP(重量平均分子量約50,000)を使用した以外は、実施例3と同様にして前駆体溶液を調製した。図7に調製時の可視吸収スペクトルの経時変化のグラフを示す。銀に対するPVPの重量比が同一である場合には、重量平均分子量によらず、前駆体溶液を調製可能であることがわかる。
[実施例14]
実施例3と同様にして調製した前駆体1を、200gのPG溶媒を添加することによって3倍に希釈して前駆体溶液を調製した。この希釈後の前駆体溶液を用いて実施例3と同一反応条件にて銀ナノワイヤを合成したところ、平均径54.1nm(標準偏差25.0nm)、平均長28.6μm(標準偏差18.2μm)の銀ナノワイヤが得られ、ワイヤ径のサイズがバラバラで均一なサイズのワイヤ制御ができなかった。これは前駆体1を3倍に希釈したことで、PVPとAgとで形成していた前駆体の一部が解離し、銀ナノワイヤの形状制御が不均一になったためではないかと考えられる。
なお、実施例3と実施例14とのそれぞれの滴下対象の前駆体溶液におけるPVPの濃度(wt%)は、次のようになる。
実施例3:3.44wt%
実施例14:2.33wt%
したがって、前駆体溶液においてPVPと銀との前駆体が適切に形成され、その結果として均一なサイズの銀ナノワイヤが合成されるようにするためには、前駆体溶液におけるPVP濃度が3wt%以上であることが好適であると考えられる。
[実施例15]
実施例3の前駆体1と同様の配合条件により室温下、24時間撹拌することで調製した溶液を、実施例3と同様に2倍希釈し、さらに窒素雰囲気下にて25℃で2時間撹拌することによって前駆体溶液を調製した。得られた前駆体溶液を用い、4時間の滴下時間にした以外は、実施例3と同様にして銀ナノワイヤを合成した。得られたワイヤサイズ及び球状異物の第1評価値を次表に示す。
[実施例16]
前駆体調製時に、窒素雰囲気下にて70℃で2時間撹拌した以外は、実施例15と同様にして銀ナノワイヤを合成した。得られたワイヤサイズ及び球状異物の第1評価値を次表に示す。
[比較例2]
前駆体調製時に、窒素雰囲気下にて130℃で2時間撹拌した以外は、実施例15と同様にして銀ナノワイヤを合成した。本比較例では、次表に示すように、ワイヤが生成されなかった。
前駆体調製時の温度が25℃または70℃であれば、球状異物の少ない銀ナノワイヤを生成することが可能である。一方、前駆体調製時に130℃に加熱すると、直ちに白黄色懸濁液となり銀粒子が生成された。この液体を用いて反応を継続しても、銀ナノワイヤは生成されなかった。したがって、前駆体溶液の調製は、前述のように、銀ナノ粒子の生成を抑制する観点から、100℃以下で行われる必要があり、80℃以下で行われることが好適である。なお、前駆体溶液の調製は、前述のように、加熱を行わない常温で行われてもよいと考えられる。
[実施例17]
2.25gの硝酸銀、3.6gのPVP(重量平均分子量360,000)、3.6gのPVP(重量平均分子量50,000)、100gのPG溶媒を用いた以外は、実施例3と同様にして前駆体溶液を調製した。また、反応容器には事前に600gのPG溶媒、0.11gのテトラブチルアンモニウム塩を仕込んだ。そのテトラブチルアンモニウム塩は、実施例1と同じものを用いた。窒素雰囲気下、140℃に昇温した後に、反応溶液の温度を保持しながら前駆体溶液を4時間かけて滴下し、温度をさらに2時間保持して目的とする銀ナノワイヤを得た。その結果を次表に示す。
[実施例18]
第二の工程における反応溶液の温度を150℃にした以外は、実施例17と同様にして銀ナノワイヤを生成した。その結果を次表に示す。
[実施例19]
第二の工程における反応溶液の温度を160℃にした以外は、実施例17と同様にして銀ナノワイヤを生成した。その結果を次表に示す。
[実施例20]
第二の工程における反応溶液の温度を170℃にした以外は、実施例17と同様にして銀ナノワイヤを生成した。その結果を次表に示す。
上記表の結果から、第二の工程における反応温度に応じて、好みのサイズの銀ナノワイヤを生成できることがわかる。
なお、本発明は、以上の実施例に限定されることなく、種々の変更が可能であり、それらも本発明の範囲内に包含されるものであることは言うまでもない。
本発明による銀ナノワイヤの製造方法によって得られた銀ナノワイヤは、例えば、透明導電膜等において用いることができる。

Claims (8)

  1. ポリオールと銀化合物とポリビニルピロリドンとを100℃以下で混合することによって前駆体溶液を調製する第一の工程と、
    ハロゲン化合物を含むポリオールを110℃から沸点未満の範囲に加熱した反応溶液中に、前記前駆体溶液を滴下する第二の工程と、を備え
    前記ハロゲン化合物は、塩素化合物及び臭素化合物を含み、
    前記塩素化合物は、一般式R 1 2 3 4 NCl(式中、R 1 〜R 4 は、それぞれ独立して、炭素数1〜8のアルキル基である。)で示されるテトラアルキルアンモニウムクロリドであり、
    前記臭素化合物は、一般式R 5 6 7 8 NBr(式中、R 5 〜R 8 は、それぞれ独立して、炭素数1〜8のアルキル基である。)で示されるテトラアルキルアンモニウムブロミドであり、
    前記ハロゲン化合物における当該テトラアルキルアンモニウムクロリド及び当該テトラアルキルアンモニウムブロミドの割合(mol%)をそれぞれ[R 1 2 3 4 NCl]、[R 5 6 7 8 NBr]とした場合に、
    [R 1 2 3 4 NCl]+[R 5 6 7 8 NBr]=100、
    80≦[R 1 2 3 4 NCl]≦97、
    である、銀ナノワイヤの製造方法。
  2. 前記反応溶液中には、表面修飾剤も含まれる、請求項1記載の銀ナノワイヤの製造方法。
  3. 前記ポリオールは、エチレングリコール、プロピレングリコール、トリメチレングリコール、及びグリセリンから選ばれる少なくとも一つである、請求項1または請求項記載の銀ナノワイヤの製造方法。
  4. 前記前駆体調製時の温度は80℃以下である、請求項1から請求項のいずれか記載の銀ナノワイヤの製造方法。
  5. 前記第一の工程で得られる前駆体溶液は、可視吸収スペクトルにおける吸収極大が400nmから420nmの範囲内に存在するものである、請求項1から請求項のいずれか記載の銀ナノワイヤの製造方法。
  6. 前記第一の工程において、ポリオールと銀化合物とポリビニルピロリドンとは4時間以上混合される、請求項1から請求項のいずれか記載の銀ナノワイヤの製造方法。
  7. 前記第二の工程で得られる銀ナノワイヤは、平均径が20nm以上、50nm以下であり、アスペクト比が200以上、5000以下のものである、請求項1から請求項のいずれか記載の銀ナノワイヤの製造方法。
  8. 前記第二の工程における前記反応溶液の加熱は、マイクロ波の照射によって行われる、請求項1から請求項のいずれか記載の銀ナノワイヤの製造方法。
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