以下、本発明のミシンの縫目形成装置を本縫縁かがり縫ミシンに適用したその好ましい実施の形態例について、図面を参照して説明する。
この本縫縁かがり縫ミシンは図1に示すように、被縫製体の面に平行な縫目と垂直の縫目とから成る本縫部を形成する本縫形成機構100と、被縫製体の面に縁かがり部を形成するルーパ駆動機構50とを備えている。
この本縫形成機構100は、公知(周知)の構造である(特開昭49−117148号公報、特開昭52−154448号公報、特開昭53−108547号公報、特開昭54−60052号公報、特開昭54−110049号公報、特開昭55−35676号公報、特開昭55−113490号公報、特開昭55−146190号公報、特開昭56−3091号公報等)ので、その詳細な説明は省略する。しかしながら、簡単に説明すれば図2に示すように、針棒11(図3)に固定され針板8に対し垂直方向に軌跡L10を描いて上下運動する針10と、針10の上下運動と同サイクルで軌跡L20を描く水平回転運動をする釜20とを備え、この針10に刺し通された上糸1と釜20に収納された下糸2とによって針板8に載置された被縫製体の一送り毎に被縫製体を貫通して垂直方向に往復運動する針10に刺し通した上糸1を針10の下死点から上昇する際に、針板8の下方にあって下糸2を収納し且つ水平回転運動する釜20の剣先21で掬って上糸1と下糸2とを交叉させて被縫製体の面に平行な縫目と垂直な縫目とから成る本縫部6を形成するものである。
なお、図1、図3に示すように、針10が先端部に固定される針棒11は、上端部を機枠FRに枢支された針枠によって上下方向に摺動自在に支持する運動変換機構である針棒クランクを有する針棒駆動部MT1によって上下運動する。また、釜(剣先)20は全回転のみならず、半回転であってもよく、要するにその軌跡L20と針10の軌跡L10とが交叉し、剣先21によって上糸1が掬われる動きをすればよいものである(図2参照)。
また、本縫縁かがり縫ミシンにおいて、縫製者が縫目選択ノブNBを回転し模様縫目選択ダイヤルDLをそれぞれの回転位置に合わせて各種縫モードに切換えることにより直線縫、ジグザグ縫等を行うことができる。この縫モードに応じた本縫形成機構100も公知(周知)の構造である(特開昭48−50853号公報、特開昭49−32754号公報、特開昭50−73754号公報、特開昭54−4646号公報、特開昭54−6643号公報、特開昭54−120057号公報、特開昭55−16676号公報、実開昭55−216号公報、実開昭55−4787号公報、実開昭55−8406号公報等)が、例えば、針10を上下運動させる際、一針毎に布送り方向に対して垂直な方向に針10を移動させ布送りと協働してジグザク縫いや模様縫いを発生させるための針落制御部110(図3参照)を備えている。針落制御部110は、模様縫目発生装置120、縫目選択装置130及び針振装置140を有し、模様縫目発生装置120と縫目選択装置130とはユニット化されており、模様縫目発生装置120は縫目選択装置130の上部に組み込まれ、後述する本縫・縁かがり切換制御部510の切換制御に連動して針10の針落制御する。これにより、本縫・縁かがり切換制御部510が本縫に切換制御されると、針落制御部110が本縫・縁かがり切換制御部510による本縫への切換制御に連動して、針10の位置が本縫針落ち位置に自動的に移動するように針落制御し、また、本縫・縁かがり切換制御部510が縁かがり縫に切換制御されると、針落制御部110が本縫・縁かがり切換制御部510による縁かがり縫への切換制御に連動して、針10の位置が縁かがり縫針落ち位置に自動的に移動するように針落制御することができる。
縫目選択装置130は、縫目選択ノブNB(図1参照)の操作によって回転して模様縫目を設定する縫目選択軸131と、各種縫目が表示され歯車機構によって縫目選択軸111と連動する模様縫目選択ダイヤルDLとを有し、縫製者が縫目選択ノブNBを操作して縫目を選択的に切換えると、模様縫目発生装置120の各種カムから必要なカムを選択し針振り量、針振り位置及び針送り量が決定される。なお、後述する送り歯FBの送り量は送り調節つまみ131aによって調節される(図3参照)。
このような針落制御部110も、公知(周知)の構造であるので、その詳細な説明は省略するが、模様縫目発生装置120及び縫目選択装置130によって本縫形成機構100を駆動制御している。
このように構成された本縫形成機構100による本縫形成動作について、図1、図3を参照して説明する。
針10は、本縫縁かがり縫ミシンの機枠FRに軸支された回転軸、即ち上軸S1から針棒駆動部MT1を介して上下動する。また、上軸S1は上糸1の引き上げ繰り出しを行う上糸天秤16を後述する運動変換機構71(図12参照)によって上下に駆動する。この上軸S1は、モータMからタイミングベルトTBを介してハンドプーリHPにより回転駆動される。また、針10が固定される針棒11を上下方向に摺動自在に支持する針枠(図示せず)は、模様縫目発生装置120により駆動制御される針振装置140によって一針毎に左右位置を変移させる。なお、針板8は、その針落ち穴PSが針10の左右位置の変移に対応できるように横長の形状に穿設されている(図20参照)。
釜20は、本縫縁かがり縫ミシンの機枠FRに軸支された回転軸、即ち下軸S2から運動変換機構である釜駆動ねじ歯車MT2を介して回転される。釜駆動ねじ歯車MT2は下軸S2からの回転運動を送り方向へ90度方向転換してから釜20へ伝達するもので、従動側歯車202は釜20に固定され、原動側歯車201は下軸S2に嵌め込み固定されている。下軸S2はタイミングベルトTBにより上軸S1と同期し且つ2倍(1:2)に増速して回転駆動される。この釜20は、一針の上下運動に対し2回転して針10が最下点から上昇する時、上糸10のループを釜20の剣先21が掬うようにタイミングが調整されている。
さらに、布送りのための布送り装置の送り歯FBの送り量も模様縫目発生装置120により駆動制御される。この送り歯FBの布送り運動は、下軸S2から三角カムを有する送り歯駆動部121で駆動され、この送り歯駆動部121は送り歯FBを上昇させて被縫製体を上方に押し上げ、この状態のまま送り歯FBを前進させて被縫製体を前方に移動させ、さらに、送り歯FBを下降させて被縫製体を針板8上に残し、送り歯FBを元の位置に後退させることにより布送りの一工程となる。これにより、縫目選択装置130で選択された縫目に応じた被縫製体の布送り制御を行うことができる。
また、本縫縁かがり縫ミシンは図1、図2に示すように、針板8の上下を実質的に円弧状の軌跡L30を描く往復運動をし、針板8の上方で針10の軌跡L10と交叉する上ルーパ30、針板8の下方で実質的に円弧状の軌跡L40を描き、針10の軌跡L10及び上ルーパ30の軌跡L30とそれぞれ交叉する下ルーパ40にそれぞれ剌し通された上ルーパ糸3、下ルーパ糸4によって縁かがり部7を形成するルーパ駆動機構50を備えている。
このルーパ駆動機構50は、上ルーパ30、下ルーパ40が針板8の下方にそれぞれ設けられ、各剣先31、41を縫方向で見て針10の手前側の側面を通過するように同方向に向いて配置され、かつ上ルーパ30、下ルーパ40をその軌跡L30、L40が互いに実質的に平行な面で運動するように上ルーパ30、下ルーパ40を駆動するものであって、針10の軌跡L10と針板8の上方で交叉し針板8を貫通する円弧状の軌跡L30を描いて往復運動する上ルーパ30に刺し通した上ルーパ糸3を上ルーパ30が上死点から下降する時に上死点から下降する針10で掬い、針板8の下方で針10の軌跡L10及び上ルーパ30の軌跡L30とそれぞれ交叉する軌跡L40を描いて往復運動する下ルーパ40に刺し通された下ルーパ糸4を下ルーパ40がその軌跡L40の一端から他端へ移動する時に針板8の下方で、下降する針10で掬い、下ルーパ40が他端へ移動する時に下ルーパ糸4を下死点から上昇する上ルーパ30が掬うことにより、上ルーパ糸3と下ルーパ糸4が被縫製体5の縁部5cで交叉すると共に上ルーパ糸3が被縫製体5の上面5aを通って本縫部6と交叉し、下ルーパ糸4が被縫製体5の下面5bを通って本縫部6と交叉して成る縁かがり縫部7を形成するようにルーパ駆動部60(図4)を備えている。
ルーパ駆動部60は針板8の下方に設けられ、図4に示すように、下軸S2からの回転運動が後述するルーパクラッチ500(図8、図9、図10)を介して伝達されるもので、ルーパクラッチ500が入ったとき駆動されるルーパ駆動軸61の一端に取付けられ回転運動を行うクランク61aと、クランク61aに連結されたL形ルーパ駆動リンク62と、中間部でルーパ基台67に軸支され一端がL形ルーパ駆動リンク62の長リンク端62aに連結されて上ルーパ30を担持しクランク62の回転運動に伴って揺動運動する上ルーパ取付腕63と、L形ルーパ駆動リンク62の短リンク端62bに連結されクランク61aの回転運動に伴って不等速楕円運動する下ルーパ駆動リンク64と、中間部でルーパ基台67に軸支され一端が下ルーパ駆動リンク64に連結されて下ルーパ40を担持する下ルーパ取付腕65とから構成され、これらクランク61a等が機枠FRにルーパ基台取付板620によって取付けられたルーパ基台67に組み込まれている。
具体的には、ルーパ駆動軸61はルーパ基台67に回動自在に取付けられ、クランク61aがL形ルーパ駆動リンク62の長リンク及び短リンクの結合部62cに回動自在に連結されている。このL形ルーパ駆動リンク62の長リンク端62aに一端が連結された上ルーパ取付腕63は、中間部がルーパ基台67に回動自在に連結され、他端には上ルーパ取付板68によって上ルーパ30が固定されている。この上ルーパ30には上ルーパ糸3を挿通させるための上ルーパ糸パイプ301が取付けられている。また、このL形ルーパ駆動リンク62の短リンク端62bに一端が連結された下ルーパ駆動リンク64は、他端が下ルーパ駆動腕66の一端に軸着され、この下ルーパ駆動腕66の他端は、一端がルーパ基台67に下ルーパ取付腕軸69にて軸着された下ルーパ取付腕65に固定されている。下ルーパ取付腕65の他端には下ルーパ40が固定されている。この下ルーパ40には下ルーパ糸4を挿通させるための下ルーパ糸パイプ401が取付けられている。
このようなルーパ駆動部60による縁かがり縫動作について、図3、図4、図5、図6を参照して説明する。
下軸S2が回転すると、ルーパクラッチ500を介してルーパ駆動軸61が回転運動し、このルーパ駆動軸61のクランク61aに連結されたL型ルーパ駆動リンク62はこの回転運動を他の運動に変換する。即ち、L型ルーパ駆動リンク62の短リンク端62bは、ルーパ駆動軸61に取付けられたクランク61a、上ルーパ取付腕63、及びL形ルーパ駆動リンク62の長リンクによって形成される四節回転連鎖に拘束され不等速楕円運動を発生することから(図7参照)、下ルーパ駆動リンク64を介して連結されている下ルーパ駆動腕66はルーパ駆動軸61の回転運動を下ルーパ取付腕65が担持する下ルーパ40の不等速揺動運動に変換するので、下ルーパ40が針板8の下方でミシンを正面から見て針10の右側から左側までの間で円弧状に揺動する(図2(a))。また、L型ルーパ駆動リンク62の長リンク端62aは上下運動に変換され、上ルーパ取付腕63のルーパ基台67に対する軸支点を中心にして当該上ルーパ取付腕63が揺動運動するので、上ルーパ取付腕63が担持する上ルーパ30はミシンを正面から見て針10の右側且つ下ルーパ40の剣先41の下方から、ミシンを正面から見て針10の左側且つ針板8の上方までの間で円弧状に揺動する(図2(a))。
このようなルーパ駆動部60に下軸S2からの動力を伝達・遮断するルーパクラッチ500は、縁かがり部7の形成時には下軸S2からルーパ駆動軸61へ動力を伝達して本縫部6及び縁かがり部7を形成させ、本縫部6の形成時には上ルーパ30を下死点において待避させ下軸S2からルーパ駆動軸61へ動力を遮断して本縫部6を形成させるもので(図2(b))、運動変換機構であるルーパ駆動ねじ歯車MT3を備えている(図8、図9)。このルーパ駆動ねじ歯車MT3は図8、図9、図10に示すように、下軸S2からの回転運動を送り方向へ90度方向転換してからルーパ駆動部60へ伝達するもので、従動側歯車509はルーパ基台67に回動自在に固定されたルーパ駆動軸61の他端に固定され、原動側歯車505は下軸S2に摺動自在に嵌め込まれている。
また、ルーパクラッチ500は、ルーパ基台67にねじで固定され原動側歯車505の一端に形成された凹部505bに嵌合させるルーパ駆動ねじ歯車ストッパ503と、下軸S2の一端に固定され端面に原動側歯車505の他端に形成されたクラッチ爪505cを嵌合させるクラッチ係合凹部506aが形成されているクラッチ受け506と、釜駆動ねじ歯車MT2の原動側歯車201及びルーパ駆動ねじ歯車MT3の原動側歯車505間に位置するように下軸S2に遊嵌され原動側歯車505のクラッチ爪505cがクラッチ受け506のクラッチ係合凹部506aに係合可能な方向に弾撥するクラッチばね508と、後述する本縫・縁かがり切換制御部510に組込まれルーパ駆動ねじ歯車MT3の原動側歯車505に形成された移動溝505aに嵌合するルーパ停止タイミング腕先端部501aが一端に形成されるルーパ停止制御板501とを有している。
このルーパ停止制御板501が組込まれた本縫・縁かがり切換制御部510は、ルーパ停止制御板501に重ねられ相互に摺動可能に固定されるクラッチ切換板511を備えている。具体的には、機枠FRに固定される釜取付台512の下面に突設された凸部512a、512bに下軸S2の軸方向へ所定長さだけ摺動可能にルーパ停止制御板501が固定され、この停止制御板501にクラッチ切換板511が下軸S2の軸方向へ所定の長さだけ摺動可能に固定されている。また、クラッチ切換板511に設けられた第1のばね掛け511aと、ルーパ停止制御板501に設けられたばね掛け501bとの間にはルーパ停止制御用引張ばね514が張架されている。さらに、クラッチ切換板511に設けられた第2のばね掛け511bと、図8中において釜取付台512の左端に設けられたばね掛け512cとの間にはクラッチ切換用引張ばね513が張架されている。これにより、クラッチ切換板511及びルーパ停止制御板501は図8中において左方向に常時、弾撥されていることになる。
このような本縫・縁かがり切換制御部510を、縫目選択装置130の縫目選択に連動して本縫と縁かがり縫に切換制御するために、本縫・縁かがり切換制御部510のクラッチ切換板511は縫目選択装置130に連結されている。
縫目選択装置130には縫目選択軸131に固定された縁かがりカム132に一端が係合しカム形状に基づき縫目切換腕軸134を中心にして回動する縫目切換腕133を有し、この縫目切換腕133の他端には縫目切換ロッド135の一端が連結されている。この縫目切換ロッド135の他端には調節用長穴135aが穿設され、クラッチ切換板511の一端に形成された連結部511cの連結穴には連結駒514が遊嵌され、この連結駒514に縫目切換ロッド135が調節用長穴135aで位置調節可能にねじ515及び座金516で固定されている。
このように構成されたルーパクラッチ500及び本縫・縁かがり切換制御部510において、縁かがり縫いを行う場合、縫目選択装置130の縁かがりカム132により縫目切換腕133が図8中において(ミシンを正面から見て)時計回り方向に回転することから、縫目切換腕133の他端に連結された縫目切換ロッド135が左方向に移動するので、クラッチ切換板511と共にルーパ停止制御板501もクラッチ切換用引張ばね513及びルーパ停止制御用引張ばね514の弾撥力により左方向へ移動する。このルーパ停止制御板501が左方向へ移動すると、ルーパ駆動ねじ歯車MT3の原動側歯車505の移動溝505aに嵌合したルーパ停止制御板501のルーパ停止タイミング腕先端部501aが原動側歯車505を左方向へ移動して、下軸S2に固定されたクラッチ受け506のクラッチ係合凹部506aに原動側歯車505のクラッチ爪505cが係合する(図9(a)、図10(a)参照)。これにより、下軸S2の回転運動が原動側歯車505を介して従動側歯車509(図4参照)に伝達されるので、ルーパ駆動部60の上ルーパ30、下ルーパ40が駆動する。
また、本縫いを行う場合、縫目選択装置130の縁かがりカム132により縫目切換腕133が図8中において(ミシンを正面から見て)反時計回り方向に回転することから、縫目切換腕133の他端に連結された縫目切換ロッド135が右方向に移動するので、クラッチ切換板511と共にルーパ停止制御板501もクラッチ切換用引張ばね513及びルーパ停止制御用引張ばね514の弾撥力に抗して右方向へ移動する。このルーパ停止制御板501が右方向へ移動すると、ルーパ駆動ねじ歯車MT3の原動側歯車505の移動溝505aに嵌合したルーパ停止制御板501のルーパ停止タイミング腕先端部501aが原動側歯車505を右方向へ移動して、この原動側歯車505の凹部505bが圧縮ばね508の弾撥力に抗してルーパ駆動ねじ歯車ストッパ503に嵌合可能となると共に、下軸S2に固定されたクラッチ受け506のクラッチ係合凹部506aが原動側歯車505のクラッチ爪505cから解離する(図9(b)、図10(b))。これにより、下軸S2の回転運動が原動側歯車505に伝達されなくなるので従動側歯車509は回転せず、ルーパ駆動部60の上ルーパ30、下ルーパ40は停止する。
このようなルーパ駆動機構50を備えた本縫縁かがり縫ミシンは、さらに、本縫縁かがり縫ミシンの回転軸、即ち、上軸S1に連動する運動変換機構71(図11、図12)を介して上下動する上メス72と、上メス72と協働する下メス73とにより布5(図2)の布縁5cを切断するメス駆動機構70を備えている。
このメス駆動機構70には、機枠FRに枢支され上メス72を摺動自在に案内するメス駆動部710が設けられている。
運動変換機構71は、メス駆動部710のメス作動時に上メス72に動力を伝達し、メス駆動部710をメス非作動時に待避位置に枢動して上メス72への動力を遮断するメスクラッチ75を介して上メス72に連結されている。
運動変換機構71は、図1、図11、図12、図13に示すように回転軸としての上軸S1及び機枠FRを結ぶ4リンク76、77(78)、79、80から成る第1の4節回転連鎖LK1と、第1の4節回転連鎖LK1の1つのリンク79及び機枠FRの節N4を使用しメスクラッチ75の駆動部751を他の1つのリンク82とする4リンク79、81、82、83から成る第2の4節回転連鎖LK2とから構成されている。なお、第1の4節回転連鎖LK1においては、リンク77にリンク78が固着され、このリンク78がリンク80に連結されている。また、リンク76は固定リンクである。
図12に示す実施例において、運動変換機構71は、回転軸としての上軸S1から天秤16を上下に駆動する機構から運動を取り出して運動変換し上メス72を上下動させるものである。ただし、運動変換機構71は、回転軸としての上軸S1から針10を上下に駆動する機構から運動を取り出して運動変換し上メス72を上下動させてもよいものである。天秤16は上軸S1から4リンク76、77(78)、79、80により上下に駆動される。
メスクラッチ75は、図11に示すように駆動部751として他の1つのリンク82に形成されたピン84と、従動部701として上メス72に形成されピン84が嵌合する長溝702とから成る。ピン84は駆動部751としての他の1つのリンク82の折曲がった下端部の取付穴(図示せず)にナット753で上下位置調整可能に螺着されている。
メス駆動部710は図14に示すように、駆動部751のピン84に嵌合させる長溝702が設けられ且つ上メス72が固着される上メス駆動駒711と、この上メス駆動駒711に並設されるメス摺動体712と、このメス摺動体712に並設され下メス73が固着される下メス取付駒713と、これら3部品が上から上メス駆動駒711、メス摺動体712及び下メス取付駒713の順で摺動自在に嵌挿されるメス摺動軸714とから構成され、上メス72と下メス73とが布を切断可能に配設されている。
メス摺動体712には、下メス取付駒713に形成された凸部713aがメス摺動軸714の軸方向に摺動可能に嵌合する案内溝712aが形成され、更にメス駆動部710自体を機枠FRに対して移動可能に固定するためのメスユニット台715が固定されている。このメスユニット台715は、異なる節間長を有する4節回転リンク730によりメス作動時に針板8上の作動位置とメス非作動時にミシンのアームの下部の退避位置との間で変則楕円軌跡を描いて変移するように機枠FRに枢着されている。
4節回転リンク730は、メスユニット台715の上端に一端が軸着される上スイングアーム731と、メスユニット台715の下端に一端が軸着される下スイングアーム732とを有し、上スイングアーム731の他端は糸案内板733の上部とメスユニット取付板734の上部との間に軸着され、下スイングアーム732の他端は糸案内板733の下部とメスユニット取付板734の下部との間に軸着されている。また、上スイングアーム731の他端側に設けられたばね掛け731aと、メスユニット取付板734の下部側に設けられたばね掛け735との間にはメス退避用引張ばね736が張架されている。なお、メスユニット取付板734は機枠FRに固定されている。4節回転リンク730はこのように構成されているので、メスユニット台715を変則楕円軌跡を描いて変移させることができる。
また、メスユニット台715は、メス摺動体712及び下メス取付駒713の所定の隣接する2面を覆うようにL字形に折曲されている。なお、メス摺動体712はメス摺動軸714にねじ等の螺合部材にて固定されている。さらに、メスユニット台715には、メス駆動部710を4節回転リンク730によりメス作動時に針板8上の作動位置とメス非作動時にミシンのアームの下部の待避位置との間で変則楕円軌跡を描いて変移させるためのツマミ715fが形成されている。
下メス取付駒713は溝部713bを有し、メス摺動体712に固定されるメスユニット台715の折曲された部位に穿設されているスリット715cに遊嵌される位置決めレバー718と係合されている。具体的には、位置決めレバー718は支点となる回転軸としての半押し凸部718aが形成され、メスユニット台715に穿孔された枢着穴715dに枢支されている。また、位置決めレバー718の一端には、荷重点となる凸部718bが形成され、下メス取付駒713の溝部713bに係合されている。したがって、位置決めレバー718はメスユニット台715と下メス取付駒713との間に把持されることになるので、当該位置決めレバー718の力点となる他端に形成されている操作部718cを上方へ操作して回転させると、下メス取付駒713はメス摺動軸714を摺動しながら下降し、操作部718cを下方へ操作して回転させると、下メス取付駒713はメス摺動軸714を摺動しながら上昇することになる。なお、位置決めレバー718の凸部718bの裏面にはストッパ用凹部718dが形成され、当該位置決めレバー718を下メス73が所定位置まで下降するように上方へ操作した時に、メスユニット台715に突設されたストッパ用凸部715eが嵌り込むようになっている。
このような下メス取付駒713の下端部713cに固定される下メス73は、メス作動時にメス駆動部710を針10の針落ち位置PSに対して針板8が有する位置決め凹部8aに位置決めする位置決め係止部87を有する(図21参照)。
一方、上メス駆動駒711は溝部711aを有し、この溝部711aに上メスばね板719が嵌合され、ねじ等の螺合部材720によって固定されている。この上メスばね板719は上メス駆動駒711から延出するような長さに形成され、メス摺動体712の案内溝712aに対して摺動可能に遊嵌されている。この上メスばね板719の上メス駆動駒711から延出する部位719aには上メス72がねじ等の螺合部材721によって固定されている。なお、上メスばね板719の延出部位719aは、当該上メスばね板719の弾撥力を積極的に加えて上メス72を下メス73に押圧することができるように屈曲している。
このように構成されたメス駆動機構70によれば、ミシンの既成の構造空間にコンパクトにメス切断機構部分であるメス駆動部710を組込むことができ、而も布縁を切断して本縫に縁かがり縫を行なう作業と布縁を切断することなく本縫を行なう作業とを簡易に切換えて実行できる。
また、本縫縁かがり縫ミシンは、本縫・縁かがり切換制御部500の本縫への切換制御に連動して上ルーパ糸3、下ルーパ糸4を上ルーパ30、下ルーパ40にそれぞれ糸通しするルーパ糸通し装置300をミシンのテーブル内に備えている。
このルーパ糸通し装置300は図15、図16に示すように、エアポンプ304から供給される空気を上ルーパ30、下ルーパ40へ送るための中空の糸案内である上ルーパ糸導管305、下ルーパ糸導管306と、上ルーパ糸導管305、下ルーパ糸導管306にそれぞれ連結された糸導入部材307と、エアポンプ304からの空気を上ルーパ糸導管305、下ルーパ糸導管306のいずれかに供給されるように切換える連結切換部材308とから成る。
上ルーパ30、下ルーパ40は、剣先となるルーパ剣先糸出口30b、40bからルーパ糸入口30a、40aまでが中空構造となっている。この上ルーパ30、下ルーパ40はルーパ剣先糸出口30b、40bからルーパ糸入口30a、40aまでを管状の部材であるルーパ糸パイプ301、401で構成され、ルーパ糸入口30a、30aは加圧空気を送る上ルーパ糸導管305、下ルーパ糸導管306と連結されるための受け部を構成する。ルーパ糸入口30a、30aの受け部は、ルーパ糸の導入に適した拡開状即ち、ラッパ状に形成される。なお、上ルーパ30及び下ルーパ40は、それ自体を中空の部材で構成することも可能である。
また、上ルーパ30、下ルーパ40のルーパ糸入口30a、40a及び上ルーパ糸導管305、下ルーパ糸導管306の糸案内出口305b、306bは上ルーパ30、下ルーパ40が描く運動面に交叉する方向で配設されている。これは、上ルーパ30、下ルーパ40のルーパ糸入り口30a、40a及び上ルーパ糸導管305、下ルーパ糸導管306の糸案内出口305b、306bを合致させるための加工、組立、調整を容易にするためである。
エアポンプ304は、シリンダ304aとシリンダ304a内を摺動するピストン304bとピストン304bを摺動させるためのレバー304cとを備え、レバー304cはミシン本体に固定されたスプリング304dによりピストン304bを押し下げる方向に付勢されている。シリンダ304aの上端にはエアを送るエア供給管304eが接続されている。
このような構成のエアポンプ304においてレバー304cを押し下げることによりピストン304bはスプリング304dの付勢力に抗して押上げられ加圧空気をエア供給管304eに送る。エア供給管304eは、連結切換部材308に連結される。
連結切換部材308は、図17、図18、図19に示すように、糸導入部材307に空気を供給する2つのエア供給口381、382、これらエア供給口381、382とエア供給管304eとをニップル387を介して連通する導管383が形成された部材で、エア供給口381、382の形成された面が糸導入部材307に当接するように糸導入部材307に組合せられる。エア供給口381、382には気密を保つためのOリングのようなシーリング部材が嵌合されている。
また、連結切換部材308は、エア供給口381、382の形成された面に突部384が形成され、突部384はこの面と対向する糸導入部材307の面に形成された波形切り欠け371aに係合する。さらに連結切換部材308は、後述する糸導入部材307のスライド溝371bに係合するスライド部385とツマミ部386とが一体に形成されており、ツマミ部386を操作することにより連結切換部材308をスライド溝371bに沿って糸導入部材307に対してスライドさせることができる。この際、糸導入部材307の波形切り欠け371aと突部384との係合により連結切換部材308は、糸導入部材307に対し第1及び第2の位置のいずれかに位置決めされる。
糸導入部材307は、連結切換部材308と連結される基台371と、基台371に嵌合される糸入口管378、378’と、糸入口管378、378’に嵌合される糸入口部材372、372’と、糸入口管378、378’と共に糸入口部材372、372’を嵌合した基台371がねじ止めされる取付板373とから成る。取付板373はミシン本体にねじ止めにより固定されている。
基台371には、上述したように連結切換部材308のスライド部385が係合するスライド溝371bと突部384が係合する波形切り欠け371aが形成されている。また基台371には、ツマミ部386と対向する側にスプリング374及びボール375が埋設されており、スプリング374がボール375を介してツマミ部386を押圧し、連結切換部材308のエア供給口381、382側が基台371に密着するように付勢する。さらに基台371には、糸入口部材372、372’が嵌合する略円柱状の凹部376、376’が2ヵ所設けられている。
凹部376(376’も同一である)は、糸入口管378(378’)が挿入される第1の穴376a(376’a)及び連結切換部材308のエア供給口381(382)に連結される第2の穴376b(376’b)を有する(図17、図18参照)。連結切換部材308がツマミ部386により第1の位置にスライドされたときに、エア供給口381は一方の凹部376の第2の穴376bと一致するように位置決めされ、このときエア供給口382は他方の凹部376’の第2の穴376’bとは完全にずれた位置にある。また、連結切換部材308がツマミ部386により第2の位置にスライドされたときに、エア供給口382は他方の凹部376’の第2の穴376’bと一致するように位置決めされ、このときエア供給口381は凹部376の第2の穴376bとは完全にずれた位置にある。第1の穴376aの上端は円錐状に切削され、糸入口管378の上部が係合されるようになっている。
糸入口管378(378’)は、第1の穴376a(376’a)の上部に切削された円錐状の部位に係合させるために上部に漏斗状の受部を有し、この糸入口管378(378’)の漏斗状の受部に糸入口部材372(372’)を係合させる。また、糸入口管378(378’)は、下端が連結ゴム379(379’)によって上ルーパ糸導管305(下ルーパ糸導管306)に連結される。
糸入口部材372(372’)は、凹部376(376’)の径とほぼ等しい径のツバ部372aを有する略円筒状の形状を有し、その上端中央に糸を差し入れるための糸差入口372bが形成され、糸差入口372bに連続して糸導入管372cが円筒の中央を貫通して形成されている。
糸入口部材372、372’を糸入口管378、378’を介して嵌合した基台371は、各糸差入口372b、372’bが取付板373に並列に形成された穴373aにOリングのようなシーリング部材を介して嵌合させるようにして取付板373にねじ止めされる。なお、糸差入口372b、372’bは糸を差し入れやすいようにラッパ状の形状を有している。
更に糸入口部材372の空気の流路について説明する。なお、糸入口部材372’は糸入口部材372と同一構成なので説明を省略する。
糸入口部材372の下端は、凹部376に切削された第1の穴376aに嵌合される糸入口管378の受部に係合する円錐状になっており、この円錐の外面に少なくとも2以上の溝が形成され気体導入部377をなしている。即ち、各気体導入部377はその端部が糸入口部材372中央の糸導入管372cにそれぞれ開口している。従って、エア供給口381と第2の穴376bが連通したとき、エア供給口381から供給される空気は、第2の穴376b、凹部376の空間を通って複数の気体導入部377に分岐されて糸導入管372cに導入される。
ここで各気体導入部377より加圧された空気が押出されるとき、気体導入部377は糸導入管372cに対し鋭角を持って開口しているので、その出口付近に矢印方向の流速の早い空気の流れが発生する。そのためベルヌーイの定理により糸導入管372cの糸入口側に矢印方向へ向う力が発生し、糸差入口372bから差込まれた糸は糸入口管378を介して上ルーパ糸導管305内に引き込まれる。気体導入部377からの流速の早い空気の流れによってルーパの糸出口まで送られる。この際、加圧空気は複数の気体導入部377により分岐して糸導入管372cに導入されるので、糸差入口372bから糸導入管372cに差し入れられた糸を極めて効率よく上ルーパ糸導管305側へ送ることができる。
なお、糸導入管372cから上ルーパ糸導管305に加圧空気が供給されるときに、上ルーパ糸導管305から上ルーパ30の糸出口30bに至るまでの長い距離間に存在する空気が抵抗となって加圧空気を押し戻すことがないように、気体導入部377から供給される空気の量はこのような抵抗がなく糸出口30bからスムーズに排出される量であって、しかも糸を送るに充分な流速を有することが望ましい。このため、気体導入部377の管径の合計d1は、糸導入管372cの管径をd2とするとき、d1<d2であることが好ましく、例えば糸導入管372cの管径が0.8mm〜1mm程度のとき、d1はその80%程度とすることが好ましい。気体導入部377の管径の合計をこのように設定することにより、比較的少ない空気の量で糸を引出すに充分な流速を得ることができ、しかも途中の空気による抵抗を押えて上ルーパ糸3をスムーズに糸出口30bに搬送することができる。
このような上ルーパ糸導管305、下ルーパ糸導管306は図15、図16に示すように、糸案内出口305b、306bが上ルーパ30、下ルーパ40が描く運動面に交叉する方向に配設されるように、ルーパ駆動部60のルーパ基台67に固定される上ルーパ糸導管案内311、下ルーパ糸導管案内312によって支持されている。したがって、上ルーパ30、下ルーパ40のルーパ糸入口30a、40aも上ルーパ30、下ルーパ40が描く運動面に交叉する方向に配設されているので、この上ルーパ30、下ルーパ40のルーパ糸入口30a、40aと、上ルーパ糸導管305、下ルーパ糸導管306の糸案内出口305b、306bとを合致させることができる。なお、上ルーパ30、下ルーパ40のルーパ糸入口30a、40aはラッパ状(テーパ状の壁面)に形成されているので、上ルーパ糸導管305、下ルーパ糸導管306がルーパ糸入口30a、40aに対して押接されるとき上ルーパ糸導管305、下ルーパ糸導管306の中心とルーパ(ルーパ糸パイプ301、401)の中心とのずれを解消し、各中心を一致させることができる。
次に、上ルーパ糸導管305、下ルーパ糸導管306を上ルーパ30、下ルーパ40のルーパ糸入口30a、40aに連結するための連結手段について説明する。連結手段は図4、図8、図9、図15、図16に示すように、糸導管解離レバー321、糸導管解離レバーリンク322、解離レバー台323、解離レバー用ねじりばね324、糸導管解離爪板325及び糸導管用引張ばね326、327により構成される。糸導管解離レバー321は一端が上ルーパ糸導管305、下ルーパ糸導管306の糸案内出口305b、306b方向側に対して圧接可能に配設され、他端がルーパ駆動部60のルーパ基台67に固定される取付板323に軸着され、中間部が糸導管解離レバーリンク322の一端に回動可能に軸着されている。また、糸導管解離レバー321が上ルーパ糸導管305、下ルーパ糸導管306から常時、離れるように弾撥するために、糸導管解離レバー321と糸導管解離レバーリンク322との間には解離レバー用ねじりばね324が設けられる。さらに、糸導管解離レバーリンク322の他端は、本縫・縁かがり切換制御部510の釜取付台512に形成された凸部512cに回動自在に固定された糸導管解離爪板325の一端に連結されている。
この糸導管解離爪板325の他端には糸導管解離爪325aが形成され、本縫・縁かがり切換制御部510のクラッチ切換板511及びルーパ停止制御板501に切り欠かれている糸導管接離カム511d及び糸導管接離タイミングカム501cに係合させることができる。
また、糸導管用引張ばね326(327)は一端が機枠FRに固定され他端が上ルーパ糸導管305(下ルーパ糸導管306)に引掛けられている。したがって、上ルーパ糸導管305(下ルーパ糸導管306)は、糸導管用引張ばね326(327)の弾撥力によって糸案内出口305b、306bを、常時、上ルーパ30、下ルーパ40のルーパ糸入口30a、40aに圧接させることができる。
このように構成されたルーパ糸通し装置300によれば、縫目選択装置130の縫目選択を縁かがり縫い以外にすると、本縫・縁かがり切換制御部510が自動的に縁かがり縫い以外に切換制御するので、ルーパ糸通し装置300はその切換制御に連動して上ルーパ糸3、下ルーパ糸4を上ルーパ30、下ルーパ40にそれぞれ糸通しすることができる。
さらに、糸通し自動装置300の上ルーパ30、下ルーパ40と上ルーパ糸導管305、下ルーパ糸導管306との連結部、即ち上ルーパ30、下ルーパ40のルーパ糸入口30a、40aと上ルーパ糸導管305、下ルーパ糸導管306の糸案内出口305b、306bとの間に、ルーパ糸供給手段であるルーパ糸天秤400(図3、図4、図15参照)が設けられる。このルーパ糸天秤400は、本縫・縁かがり切換制御部510の縁かがり縫への切換制御に応じ上ルーパ30、下ルーパ40の運動軌跡に連動して上ルーパ糸3、下ルーパ糸4が針10にループ掛けされている状態時に縁かがり縫に必要な上ルーパ糸3、下ルーパ糸4を上ルーパ糸調子器35、下ルーパ糸調子器45(図1参照)を介して繰り込んで蓄糸しておき、針10が上ルーパ糸3、下ルーパ糸4から抜けて上糸1が上糸天秤16により糸締めされた後に、繰り込んで蓄糸された上ルーパ糸3、下ルーパ糸4を上ルーパ30、下ルーパ40に供給するものである。
このようなルーパ糸天秤400は図5、図6に示すように、上ルーパ30が降下してルーパ糸入口30aが上ルーパ糸導管305の糸案内出口305bを通過すると上ルーパ糸3が針10に絡まって上ルーパ糸3の糸締めが開始され、上ルーパ30が更に降下し上ルーパ糸3の糸締めが完了した後に上ルーパ30が下死点に達し針10が被縫製体から抜ける前に上ルーパ糸調子器35(図1参照)を介して上ルーパ糸3を繰り込んで蓄糸し、上ルーパ30が上昇を開始すると蓄糸した上ルーパ糸3を放出し、上ルーパ30が上昇し上ルーパ上死点を通過して降下を始めるとき、針10が上死点から降下しながら上ルーパ糸3を掬う時点で上ルーパ糸3に張力を与えるように糸引きを行う上ルーパ糸天秤401(図5(a)、(b)参照)と、下ルーパ40が後退してルーパ糸入口40aが下ルーパ糸導管306の糸案内出口306bを通過すると下ルーパ糸4は針10に絡まって下ルーパ糸4の糸締めが開始され、下ルーパ40は更に後退し下ルーパ糸4の糸締めが完了した後に下ルーパ40が最後退点に達するまで下ルーパ糸調子器45(図1参照)を介して下ルーパ糸4を繰り込んで蓄糸し、下ルーパ40が前進するとき蓄糸した糸を放出する下ルーパ糸天秤402(図6(a)、(b)参照)とを備えている。これにより、縁かがり縫において、針10が被縫製体に刺し通されている時に、予め上ルーパ糸調子器35、下ルーパ糸調子器45によって蓄糸された上ルーパ糸3、下ルーパ糸4を糸締めすることができる。
上ルーパ糸天秤401は図4に示すように、一端が機枠FRに固定されたルーパ基台67に軸着され変速駆動カム溝403を有するルーパ天秤駆動腕404と、変速駆動カム溝403内で摺動してルーパ天秤駆動腕404をルーパ駆動部60により変速駆動するために下ルーパ駆動腕66に設けられたカム駆動子405とから構成されている。一方、下ルーパ糸天秤402は、ルーパ天秤駆動腕404の一端に設けられている。
また、本縫縁かがり縫ミシンは図20に示すように、針板8に設けられ本縫・縁かがり切換制御部510の切換制御に連動して針板8の開口8bを塞ぐ開閉自在のハッチ601と、本縫・縁かがり切換制御部510の縁かがり縫への切換制御に連動して上ルーパ30が針板8の上下に昇降する際に開成し(図20(a))、本縫・縁かがり切換制御部510の本縫への切換制御に連動して上ルーパ30を定位置に待避させた際に閉成させる(図20(b))ようにハッチ601を開閉駆動するハッチ開閉部602とを備えている。
このように構成されたハッチ601によれば、縫目選択装置130の縫目選択を縁かがり縫にすると、本縫・縁かがり切換制御部510が自動的に縁かがり縫に切換制御するので、針板8に設けられたハッチ601がこの本縫・縁かがり切換制御部510の縁かがり縫への切換制御に連動して上ルーパ30を針板8の上下に昇降する際に開成することができ、また、ハッチ開閉部602によれば、本縫・縁かがり切換制御部510が本縫に切換制御されると、上ルーパ30が針板8の下方の定位置に待避した際にハッチ開閉部602が自動的にハッチ601を閉じることができるので、上ルーパ30を針板8の上下に昇降するために当該針板8に形成された開口8bを閉じる蓋を開閉しなければならない操作を省略でき、また、蓋を取った後の当該蓋を収納管理する手間を省くことができるので当該蓋を紛失する事故を防止できる。
このハッチ開閉部602は、本縫・縁かがり切換制御部510の縁かがり縫への切換制御に連動して上ルーパ30が針板8の上下に昇降する際に開成し、本縫・縁かがり切換制御部510の本縫への切換制御に連動して上ルーパ30が定位置に待避したとき、ルーパクラッチ500が完全に解離し上ルーパ30への動力が遮断されてハッチ601を閉成させるためのハッチ開閉ばね604が本縫・縁かがり切換制御部510に連動するように備えられている。具体的には、このハッチ開閉ばね604は、本縫・縁かがり切換制御部510のルーパ停止制御板501の他端に固定されたハッチ開閉ばね取付板605に固定されている。このハッチ開閉ばね604の先端部にはハッチ開閉駆動爪604aが形成されており、ハッチ601の内側に設けられたハッチ開閉爪606に係止されている。これにより、ハッチ開閉部602が備えたハッチ開閉ばね604の弾撥力によりハッチ601を自動的に開閉できる。
また、ハッチ601には、ハッチ601が開成したときに形成される開口8b内で昇降する上ルーパ30に刺し通された上ルーパ糸3の縁かがり縫時に切取られる布屑を縫方向で見て右側外方に誘導して開口8b内に落下するのを防止し、ハッチ601が閉成したときハッチ601と共に針板8と同一面を構成する布屑案内板603が蝶着されている。この布屑案内板603はハッチ601が開成したときにハッチ601を支えることができるように常時、弾撥するために、布屑案内板603とハッチ601との蝶着部にはハッチヒンジ用ねじりばね608が設けられる。また、ハッチ601には、ハッチ601が所定開度で開成したときにその位置で係止されるようにハッチストッパ607が設けられている。このハッチストッパ607は針板8の開口8bの端面に引っ掛かるようになっている。
このように構成されたミシンの縫目形成装置を適用したいわゆる家庭用の本縫縁かがり縫ミシンによる本縫縁かがり縫動作について、以下説明する。
ここで、本縫縁かがり縫の縫目は図2に示すように、上糸1及び下糸2から成る本縫部6と2本のルーパ糸である上ルーパ糸3、下ルーパ糸4から成る縁かがり部7とを有し、本縫部6と縁かがり部7とが互いに交叉することにより形成される。すなわち上糸1と下糸2はそれぞれ被縫製体、例えば二枚重ねの布5の上面5aと下面5bとに布面に平行な縫目1a、2aを形成すると共に、互いに布5の垂直方向で例えば厚さ方向の中央付近で交叉して布5を貫通する縫目を形成することによって本縫部6を形成する。
一方、上ルーパ糸3及び下ルーパ糸4は、布5の縁部5cのほつれを防止する縁かがり部7を形成するもので、布5の縁部5cにおいて互いに交叉すると共に、上ルーパ糸3は布5の上面5aを通って本縫部6の上端と交叉し、下ルーパ糸4は布5の下面5bを通って本縫部6の下端と交叉する。
このように本縫縁かがり縫の縫目は1本の針糸である上糸1と、釜糸である下糸2と、2本のルーパ糸3、4で構成され、上糸1と下糸2で形成される本縫部6に対し、ルーパ糸3、4で形成される縁かがり部7が布の両面で交叉して本縫と縁かがりの双方が連結し合って縫目を構成している。
このような本縫と縁かがり縫の双方が連結し合って構成される縫目を形成する本縫縁かがり縫ミシンにおいて、縫製者が縁かがり縫目を選択する場合、上糸1、下糸2、上ルーパ糸3、下ルーパ糸4への糸通し作業、縁かがり縫目への縫目切換作業、メス作動状態へのメス切換作業を行う。
上糸1、下糸2の糸通し作業は、上糸糸巻に巻回されている上糸1を上糸調子器15及び上糸天秤16に引っ掛けて針10へ通し、下糸2を針板8の下方に位置する釜(剣先)20から引き出しておく。
次に、上ルーパ糸3、下ルーパ糸4の糸通し作業は、縫製者が縫目切換ノブNBで縁かがり縫目以外の項目を選択して行う。縫製者が縁かがり縫目以外の項目を選択して縫目切換ノブNBを回転操作すると、縫目選択装置130の縫目選択軸131に固着された縁かがりカム132の凹部132a以外の部分に縫目切換腕133の一端が押し上げられ、縫目切換腕133は図8において反時計方向に回転するので、縫目切換腕133の他端に連結されている縫目切換ロッド135が右方向に引かれて、この縫目切換ロッド135に連結されている本縫・縁かがり切換制御部510のクラッチ切換板511はクラッチ切換用引張ばね513の弾撥力に抗して右方向に移動する。この際、ルーパ停止制御板501もルーパ停止制御用引張ばね514の弾撥力に抗して右方向に移動しようとするが、ルーパ駆動ねじ歯車MT3の原動側歯車505の凹部505bと、ルーパ基台67に固定されたルーパ駆動ねじ歯車ストッパ503とが同位置にない場合にはこれらは嵌合できないので、ルーパ停止制御板501はルーパ停止制御用引張ばね514の弾撥力によっても移動しない(図8、図9、図10)。これは、釜取付台512の下面に突設された凸部512a、512bに下軸S2の軸方向へ所定長さだけ摺動可能にルーパ停止制御板501を固定させるためにルーパ停止制御板501に穿孔された長穴501d、501eが、クラッチ切換板511の移動を許容するからである。
したがって、原動側歯車505の凹部505bとルーパ駆動ねじ歯車ストッパ503とが嵌合する上ルーパ30が最下点のタイミング位置まで上軸S1に固定されたハンドプーリHPを回転させれば、ルーパ停止制御板501がルーパ停止制御用引張ばね514の弾撥力により右方向へ移動するので、原動側歯車505の移動溝505aに嵌合したクラッチ切換リンク501のL形先端部501aが原動側歯車505を右方向へ移動させることができる。これにより、下軸S2に固定されたクラッチ受け506のクラッチ係合凹部506aから原動側歯車505のクラッチ爪505cが解離して下軸S2の回転運動が遮断され、原動側歯車505は回転できなくなるので、ルーパ駆動部60の上ルーパ30、下ルーパ40を針板8の下方の所定位置に待避させることができる。
このような状態においては、ルーパ停止制御板501の糸導管接離タイミングカム501c、クラッチ切換板511の糸導管接離カム511dは一致して右方向に位置することから、連結手段の糸導管解離爪板325の糸導管解離爪325aがこれらカム501c、511dに落ち込むので、この糸導管解離爪板325に連結されている糸導管解離レバーリンク322が糸導管解離レバー321を解離レバー用ねじりばね324の弾撥力に抗して上ルーパ糸導管305、下ルーパ糸導管306から離反させる。これにより、上ルーパ糸導管305、下ルーパ糸導管306は糸導管用引張ばね326、327の弾撥力により糸案内出口305b、306bを上ルーパ30、下ルーパ40のルーパ糸入口30a、40aに圧接させる。この際、ルーパ糸入口30a、40aの受け部は、ラッパ状の形状をしているため、上ルーパ糸導管305、下ルーパ糸導管306の先端は自然に管の中心が上ルーパ糸パイプ301、下ルーパ糸パイプ401の中心と一致するようになる。
次いで連結切換部材308のツマミ部386を左(又は右)にスライドさせて一方のエア供給口、例えば左側のエア供給口381が糸導入部材307の上ルーパ糸導管305側の穴376bに一致するようにする。この状態で、上ルーパ用の糸差入口372bに上ルーパ糸用糸巻(図示せず)に巻回された上ルーパ糸3を上ルーパ糸調子器35を介して適当な長さ(約1cm程度)差し入れるとともに、エアポンプ304のレバー304cを押し下げて上ルーパ糸導管305に加圧空気を送る。この加圧空気の流れは、ベルヌーイの定理により糸導入管372c付近に糸を引き込む陰圧を生じさせ、糸差入口372bから差し込まれた上ルーパ糸3を上ルーパ糸導管305内に引き込むと同時に加圧空気の流れは、上ルーパ糸導管305のルーパ側、上ルーパ糸パイプ301と続く糸搬送路に沿って上ルーパ糸3を送り、上ルーパ30の剣先31から一気に送りだす。なお、1回のエアポンプ304のレバー押下作動では糸を送ることができない場合には、2、3度繰り返すことにより確実に糸通しを行うことができる。
次に連結切換部材308のツマミ部386を右にスライドさせて、そのエア供給口382を糸導入部材307の下ルーパ糸導管306側の穴376’bに一致するようにする。ここで下ルーパ用の糸差入口372’bに下ルーパ糸用糸巻(図示せず)に巻回された下ルーパ糸4を下ルーパ糸調子器45を介して差し入れると共に、エアポンプ304のレバー304cを押し下げ、加圧空気により下ルーパ糸4を下ルーパ40の剣先まで一気に送ることができる。
なお、エアポンプのみならず気体を適当な流量で送ることができるのもであれば、どのようなものでもよい。
縫目切換作業は、縫製者が縁かがり縫目を選択するために縫目切換ノブNBを回転操作すると、縫目選択装置130の縫目選択軸131に固着された縁かがりカム132の凹部132aに縫目切換腕133の一端が落ち込むことから、縫目切換腕133は図8において時計方向に回転するので、縫目切換腕133の他端に連結されている縫目切換ロッド135が左方向に押されて、この縫目切換ロッド135に連結されている本縫・縁かがり切換制御部510のクラッチ切換板511はクラッチ切換用引張ばね513の弾撥力により左方向に移動する。このクラッチ切換板511が左方向へ移動すると、ルーパ停止制御板501もルーパ停止制御用引張ばね514の弾撥力により左方向へ移動するので、ルーパ駆動ねじ歯車MT3の原動側歯車505の移動溝505aに嵌合したルーパ停止制御板501のルーパ停止タイミング腕先端部501aが原動側歯車505を左方向へ移動して、この原動側歯車505の凹部505bがルーパ駆動ねじ歯車ストッパ503から解離すると共に、下軸S2に固定されたクラッチ受け506のクラッチ係合凹部506aに原動側歯車505のクラッチ爪505cが係合する(図9(a))。なお、クラッチ受け506のクラッチ係合凹部506aが原動側歯車505のクラッチ爪505cが係合できない位置にある場合には、ハンドプーリHPを回転させて下軸S2に固定されているクラッチ受け506のクラッチ係合凹部506aと原動側歯車505のクラッチ爪505cとを係合させる。これにより、下軸S2の回転運動が原動側歯車505を介して従動側歯車509に伝達されるので、ルーパ駆動部60の上ルーパ30、下ルーパ40が駆動することになる。
また、クラッチ切換板511の糸導管接離カム511dが左方向へ移動していることから、連結手段の糸導管解離爪板325の糸導管解離爪325aがクラッチ切換板511の糸導管接離カム511dを乗り越え反時計方向へと回転するので、この糸導管解離爪板325に連結されている糸導管解離レバーリンク322が糸導管解離レバー321を解離レバー用ねじりばね324の弾撥力により上ルーパ糸導管305、下ルーパ糸導管306を押圧する。これにより、上ルーパ糸導管305、下ルーパ糸導管306は糸導管用引張ばね326、327の弾撥力に抗して糸案内出口305b、306bを上ルーパ30、下ルーパ40のルーパ糸入口30a、40aから離反する。
さらに、左方向へ移動したルーパ停止制御板501の他端に固定されたハッチ開閉ばね取付板605も左方向へ移動することから、ハッチ開閉ばね取付板605に固定されたハッチ開閉ばね604は図20(a)に示すように、ハッチ開閉駆動爪604aがハッチ601のハッチ開閉爪606から離反するので、ハッチ601と布屑案内板603とはハッチヒンジ用ねじりばね606の弾撥力によりハッチストッパ607が針板8の開口8bの端面に引っ掛かるまで開成する。
メス切換作業は、布縁を切断して本縫に縁かがり縫を行う際、メス駆動部710が図21に示すようにメス非作動状態(ミシンのアームの下部の待避位置)になっている場合には、メス駆動部710のメスユニット台715に形成されたツマミ715fによってメス駆動部710をメス作動状態(針板8上の作動位置)にする。即ち、ツマミ715fを下方に下げると、図22、図23、図24に示すように、4節回転リンク730の上スイングアーム731と下スイングアーム732とが変則楕円軌跡を描きながら下方へと変移して針板8上の作動位置へとスムーズに移動する。この際、上スイングアーム731の他端側に設けられたばね掛け731aと、メスユニット取付板734の下部側に設けられたばね掛け735との間に張架されたメス退避用引張ばね736の弾撥力により、上スイングアーム731のばね掛け731aがメスユニット取付板734の第1のばね掛け係止部734aに係止されるので、メス駆動部710の逆戻りを防ぐことができる。ここで、図25(a)に示すように、メス駆動部710の位置決めレバー718が所定位置まで下降して、下メス73が下メス取付駒713によって待避位置に待避するメス非作動状態になっている場合には、図25(b)に示すように、位置決めレバー718を上方へ操作する。これにより、位置決めレバー718の凸部718bが嵌合している溝部713bを有する下メス取付駒713に固定された下メス73が下降して、当該下メス73の位置決め係止部87が、針板8の位置決め凹部8aに嵌まり込んでメス駆動部710を針10の針落ち位置PSに対して位置決めしているメス作動状態(図24)となる。この際、位置決めレバー718に形成されたストッパ用凹部718dに、メスユニット台715に突設されたストッパ用凸部715eが所定の力で離脱可能な状態で嵌り込むので、位置決めレバー718の逆戻りを防ぐことができる。
このようにルーパ駆動部60の上ルーパ30、下ルーパ40や上メス72、下メス73が駆動可能になった状態において、本縫部6は針10に刺し通された上糸1が針棒駆動部MT1による針10の上下運動に追従して布5を貫通した後、針10が下死点から上昇し始めた時にR点で釜20の剣先21が上糸1を掬うことにより上糸1と下糸2が交叉し、更に上方に戻る針10及び天秤16によって上糸1が引き上げられる時、下糸2を引き上げることによって形成され、一回の布送り毎に上記動作が繰り返されることにより連続した本縫部6が形成される(図2)。
また、縁かがり部7は上死点にいた上ルーパ30が上ルーパ取付腕63の上下往復運動の際、下降してくる途中P点で針10によって上ルーパ糸3が掬われることにより、まず本縫部6の上端と上ルーパ糸3が布上面で交叉する(図2、図5(a)、(b))。次に、下ルーパ取付腕65の左右往復運動の際、最突出点から最後退点に移動する下ルーパ40の下ルーパ糸4がQ点において上死点から下降してくる針10によって掬われることにより、本縫部6の下端と下ルーパ糸4が布下面で交叉する(図2、図6(a)、(b))。更に、下ルーパ取付腕65の左右往復運動の際、最後退点に後退する下ルーパ40の下ルーパ糸4が、S点において上ルーパ取付腕63により下死点から上昇してくる上ルーパ30によって掬われることにより、布5の縁部5cにおいて、上ルーパ糸3と下ルーパ糸4が交叉し、縁かがり部7が形成される(図2)。縁かがり部7も又、一回の布送りを一周期として繰り返されることにより、図27(a)に示すような、各本縫の一目毎に縁かがり部7が交叉した縫目が得られる。
このような上ルーパ30、下ルーパ40は図7、図26に示すように、ルーパ駆動部60のクランク61aが回転運動を行うと、このクランク61aに連結されたL形ルーパ駆動リンク62が駆動されるので、このL形ルーパ駆動リンク62の長リンク端62aに連結された上ルーパ取付腕63はルーパ駆動軸61の等速回転運動を上ルーパ30の揺動運動に変換し、一方、L形ルーパ駆動リンク62の短リンク端62bはルーパ駆動軸61に取付けられたクランク61a、上ルーパ取付腕63、及びL形ルーパ駆動リンク62の長リンクによって形成される四節回転連鎖に拘束され不等速楕円運動を発生することから、下ルーパ駆動リンク64及び下ルーパ駆動腕66を介して連結されている下ルーパ取付腕65がルーパ駆動軸61の回転運動を下ルーパ40の不等速揺動運動に変換する。
ここで、上ルーパ取付腕63は位置A1(上ルーパ30が下死点)から位置C1(上ルーパ30が上死点)の間で上下往復運動し、下ルーパ取付腕65は位置B3(下ルーパ40が最後退点)から位置D3(下ルーパ40が前進点)の間で左右往復運動するが、上ルーパ取付腕63がL形ルーパ駆動リンク62の結合部62cの等速回転運動に支配され、下ルーパ取付腕65がL形ルーパ駆動リンク62の短リンク端62bの不等速楕円運動に支配されているので、上ルーパ30に対して下ルーパ4が遅れて揺動運動を行う(図7、図26)。これにより、上ルーパ30の先端部と下ルーパ40の先端部とが交叉する際、衝突しないように揺動運動させることができるので、上ルーパ30、下ルーパ40の構造設計が容易になる。
このような上ルーパ30、下ルーパ40に供給される上ルーパ糸3、下ルーパ糸4はルーパ糸天秤400の上ルーパ糸天秤401、下ルーパ糸天秤402によって糸を緩めたり糸締めしたりする。具体的には、ルーパ糸天秤400の上ルーパ糸天秤401、下ルーパ糸天秤402は下ルーパ駆動腕66に設けられたカム駆動子405と変速駆動カム溝403のカム作用により制御される。即ち、このカム作用により、上ルーパ糸天秤401は、上ルーパ30が降下してルーパ糸入口30aが上ルーパ糸導管305の糸案内出口305bを通過すると上ルーパ糸3が針10に絡まって上ルーパ糸3の糸締めが開始され、上ルーパ30が更に降下し上ルーパ糸3の糸締めが完了した後に上ルーパ30が下死点に達し針10が被縫製体から抜ける前に上ルーパ糸調子器35(図1参照)を介して上ルーパ糸3を繰り込んで蓄糸し、上ルーパ30が上昇を開始すると蓄糸した上ルーパ糸3を放出し、上ルーパ30が上昇し上ルーパ上死点を通過して降下を始めるとき、針10が上死点から降下しながら上ルーパ糸3を掬う時点で上ルーパ糸3に張力を与えるように糸引きを行うことができる(図5(a)、(b)参照)。また、このカム作用により、下ルーパ糸天秤402は、下ルーパ40が後退してルーパ糸入口40aが下ルーパ糸導管306の糸案内出口306bを通過すると下ルーパ糸4は針10に絡まって下ルーパ糸4の糸締めが開始され、下ルーパ40は更に後退し下ルーパ糸4の糸締めが完了した後に下ルーパ40が最後退点に達するまで下ルーパ糸調子器45(図1参照)を介して下ルーパ糸4を繰り込んで蓄糸し、下ルーパ40が前進するとき蓄糸した糸を放出することができる(図6(a)、(b)参照)。これにより、縁かがり縫いにおいて、針10が被縫製体に刺し通されている時に、予め上ルーパ糸調子器35、下ルーパ糸調子器45によって蓄糸された上ルーパ糸3、下ルーパ糸4を糸締めすることができる。
また、ミシンの回転軸、図示の例で上軸S1の回転運動はこれに連動する運動変換機構71を介して上下動運動に変換される(図1、図3、図11、図12、図13)。即ち、上軸S1が回転すると第1の4節回転連鎖LK1のリンク77、78をクランクとしリンク80を連結棒とし、リンク79をロッカアームとして揺動させる。リンク79の揺動により第2の4節回転連鎖LK2のリンク81が揺動され、リンク82、したがってクラッチ75の駆動部751が上下動する。なお、リンク82の運動軌跡は4節回転連鎖機構LK1、LK2により楕円軌跡を描き、駆動部751の近郊PL点では垂直方向に近似直線の軌跡を描いて機枠FRに固着された案内板755の案内長穴を貫通してリンク82のPL点に留められたガイドピン754によってメス駆動部710からの反動を支えている。これにより、駆動部751は横方向の運動が規制され上下動運動のみが上軸S1の1回転についてストロークt(図12)で得られる。
運動変換機構71で運動変換された上下動運動はクラッチ75の駆動部751のピン84と、従動部701としてのメス駆動部710の上メス駆動駒711のピン84が嵌合する長溝702を介して上メス72に伝達される。下メス73の位置決め係止部87が、針板8の位置決め凹部8aに嵌まり込んでメス駆動部710を針10の針落ち位置PSに対して位置決めしているメス作動状態(図24)では、上メス72は機枠FRに枢支されたメス駆動部710の上メス駆動駒711により、上メスばね板719を介してメス摺動体712の案内溝712aによって摺動自在に案内される。このメス作動状態では、メス駆動部710は垂直状態に維持され、長溝702の長手方向が水平方向を向いているためクラッチ75の駆動部751のピン84と従動部701の長溝702は動力伝達されメス駆動部710のメス作動時に上メス72に動力を伝達し、この上下動運動で上メス72と、上メスと協働する下メス73とにより布5の布縁5cを切断する。
このようにして布5の布縁5cを切断してジグザグ縫等を行うことにより縁かがり縫作業を同じに実行可能となる。
次に、縫製者が本縫い縫目を選択する場合、上糸1、下糸2への糸通し作業、本縫い縫目への縫目切換作業、また、布5の布縁5cを切断することなく本縫のみを行いたい場合には、メス非作動状態へのメス切換作業を行う。
上糸1、下糸2の糸通し作業は、上糸糸巻に巻回されている上糸1を上糸調子器15及び上糸天秤16に引っ掛けて針10へ通し、下糸2を針板8の下方に位置する釜(剣先)20から引き出しておく。
縫目切換作業は、縫製者が本縫い縫目を選択するために縫目切換ノブNBを回転操作すると、縫目選択装置130の縫目選択軸131に固着された縁かがりカム132の凹部132a以外の部分に縫目切換腕133の一端が押し上げられ、縫目切換腕133は図8において反時計方向に回転するので、縫目切換腕133の他端に連結されている縫目切換ロッド135が右方向に引かれて、この縫目切換ロッド135に連結されている本縫・縁かがり切換制御部510のクラッチ切換板511はクラッチ切換用引張ばね513の弾撥力に抗して右方向に移動する。この際、ルーパ停止制御板501もルーパ停止制御用引張ばね514の弾撥力に抗して右方向に移動しようとするが、ルーパ駆動ねじ歯車MT3の原動側歯車505の凹部505bと、ルーパ基台67に固定されたルーパ駆動ねじ歯車ストッパ503とが同位置にない場合にはこれらは嵌合できないので、ルーパ停止制御板501はルーパ停止制御用引張ばね514の弾撥力によって移動しない(図8、図9、図10)。これは、釜取付台512の下面に突設された凸部512a、512bに下軸S2の軸方向へ所定長さだけ摺動可能にルーパ停止制御板501を固定させるためにルーパ停止制御板501に穿孔された長穴501d、501eが、クラッチ切換板511の移動を吸収するからである。
したがって、原動側歯車505の凹部505bとルーパ駆動ねじ歯車ストッパ503とが嵌合する上ルーパ30が最下点のタイミング位置まで上軸S1に固定されたハンドプーリHPを回転させれば、ルーパ停止制御板501がルーパ停止制御用引張ばね514の弾撥力により右方向へ移動するので、原動側歯車505の移動溝505aに嵌合したクラッチ切換リンク501のL形先端部501aが原動側歯車505を右方向へ移動させることができる。これにより、下軸S2に固定されたクラッチ受け506のクラッチ係合凹部506aから原動側歯車505のクラッチ爪505cが解離して下軸S2の回転運動が遮断され、原動側歯車505は回転できなくなるので、ルーパ駆動部60の上ルーパ30、下ルーパ40を針板8の下方の所定位置に待避させることができる。
また、右方向へ移動したルーパ停止制御板501の他端に固定されたハッチ開閉ばね取付板605も右方向へ移動するので、ハッチ開閉ばね取付板605に固定されたハッチ開閉ばね604は図20(b)に示すように、ハッチ開閉駆動爪604aによりハッチ601のハッチ開閉爪606を引っ張り当該ハッチ601を閉成する。この際、ハッチ601に蝶着された布屑案内板603もハッチヒンジ用ねじりばね608の弾撥力に抗してハッチ601と共に針板8と同一面を構成する。これにより、布屑が針板8の開口8b内に落下して上ルーパ30、下ルーパ40などに悪影響を与えることを防ぐことができる。
メス切換作業は、布5の布縁5cを切断することなく本縫のみを行いたい場合に、メス駆動部710が図24に示すようにメス作動状態(針板8上の作動位置)になっている場合には、位置決めレバー718を下方へ操作する。これにより、下メス取付駒713に固定された下メス73が上昇して、当該下メス73の位置決め係止部87が、針板8の位置決め凹部8aに嵌まり込んでいる状態から解除される(図25参照)。そして、メス駆動部710のメスユニット台715に形成されたツマミ715fによってメス駆動部710をメス非作動状態(ミシンのアームの下部の待避位置)にする。即ち、ツマミ715fを上方に下げると、図24、図23、図22に示すように、4節回転リンク730の上スイングアーム731と下スイングアーム732とが変則楕円軌跡を描きながら上方へと変移してミシンのアームの下部の待避位置へとスムーズに移動する。この際、上スイングアーム731の他端側に設けられたばね掛け731aと、メスユニット取付板734の下部側に設けられたばね掛け735との間に張架されたメス退避用引張ばね736の弾撥力により、上スイングアーム731のばね掛け731aがメスユニット取付板734の第2のばね掛け係止部734bに係止されるので、メス駆動部710の逆戻りを防ぐことができる。これにより、従動部701の長溝702の長手方向が垂直方向を向くためクラッチ75の駆動部751のピン84は従動部701の長溝702内で遊動するだけとなり上メス72への動力を遮断することができる。
このようにしてメス駆動部710を、垂直状態のメス作動位置から水平状態のメス待避位置に変則楕円軌跡を描いて変移させるメスユニット台715のツマミ715fによる簡便な操作により、布5の布縁5cを切断することなく本縫のみを行う作業にスムーズに切換えることができる。
これにより、本縫いが実行可能となる。
なお、本発明のミシンの縫目形成装置を家庭用の本縫縁かがり縫ミシンに適用したその好ましい実施の形態例によれば水平回転運動をする水平釜を使用したが、これに限らず、針に刺し通した上糸を針の下死点から上昇する際に、上糸と下糸とを交叉させて被縫製体の面に平行な縫目と垂直方向の縫目とから成る本縫部を形成することができれば、どのような釜を使用してもよい。
また、メス駆動機構のメス駆動部は上述したものに限らず、下メスを摺動自在に装着し、メス作動時に下メスの位置決め係止部を針板の位置決め凹部に嵌着する位置決めレバーを備えることができれば、どのような構造のものでもよい。
さらに、上記実施例では、上ルーパ糸3及び下ルーパ糸4はそれぞれ隣接するすべての本縫部6と交叉しているが、例えば図27(b)に示すように、本縫部6の一つおきに縁かがり部7が交叉していてもよい。この場合、針10の2周期の運動のうち1周期だけ上ルーパ30及び下ルーパ40が1周期分運動するように、下軸S2とルーパ駆動部60との回転数の比を設定すればよい。
また上記実施例において上糸1と下糸2の縫目1a、2aはそれぞれ直線状であるが、図27(c)に示すように一つの縫目ごとにジクザク状であっても、あるいは複数の縫目ごとに折線状であってもよい。
また、本発明のミシンの縫目形成装置は上記実施例のような家庭用の本縫縁かがり縫ミシンに限らず、工業用の本縫縁かがり縫ミシンにも適用させることができる。
工業用の本縫縁かがり縫ミシンは、針板に対し垂直方向に軌跡を描いて上下運動する針に刺し通された上糸と釜に収納された下糸とによって針板に載置された被縫製体の一送り毎に被縫製体を貫通して垂直方向に往復運動する針に刺し通した上糸を針の下死点から上昇する際に、針板の下方にあって下糸を収納し且つ回転運動する釜の剣先で掬って上糸と下糸とを交叉させて被縫製体の面に平行な縫目と垂直方向の縫目とから成る本縫部を形成し、針板の上下で軌跡を描く往復運動をし、針板の上方で針の軌跡と交叉する上ルーパ、針板の下方で軌跡を描き、針の軌跡及び上ルーパの軌跡とそれぞれ交叉する下ルーパにそれぞれ剌し通された上ルーパ糸、下ルーパ糸によって縁かがり縫部を形成するミシンの縫目形成装置を備えている。
このミシンの縫目形成装置に、図4、図5、図6に示すような上ルーパ糸天秤401、下ルーパ糸天秤402を備えたルーパ糸供給手段であるルーパ糸天秤400を設ける。これにより、針が被縫製体に刺し通されている時に、予めルーパ糸天秤400によって蓄糸された上ルーパ糸3、下ルーパ糸4を糸締めすることができる。また、図4、図5、図6に示すように、上ルーパ糸天秤401をルーパ天秤駆動腕404、カム駆動子405から構成し、下ルーパ糸天秤402をルーパ天秤駆動腕404の一端に設けることにより、上ルーパ糸天秤401、下ルーパ糸天秤402をルーパ駆動部60により変速駆動するカム駆動子405だけで駆動制御することができる。
また、このミシンの縫目形成装置に、図4、図5、図6に示すようなクランク61a、L形ルーパ駆動リンク62、上ルーパ取付腕63、下ルーパ駆動リンク64及び下ルーパ取付腕65から構成されるルーパ駆動部60を備える。これにより、ルーパ駆動部60のクランク61aが回転運動を行うと、このクランク61aに連結されたL形ルーパ駆動リンク62が駆動されるので、このL形ルーパ駆動リンク62の長リンク端62aに連結された上ルーパ取付腕63はルーパ駆動軸61の回転運動を上ルーパ30の揺動運動に変換し、一方、L形ルーパ駆動リンク62の短リンク端62bはルーパ駆動軸61に取付けられたクランク61a、上ルーパ取付腕63、及びL形ルーパ駆動リンク62の長リンクによって形成される四節回転連鎖に拘束され不等速楕円運動を発生することから、下ルーパ駆動リンク64を介して連結されている下ルーパ取付腕65がルーパ駆動軸61の回転運動を下ルーパ40の不等速揺動運動に変換する。したがって、このルーパ駆動部60が駆動して上ルーパ30の先端部と下ルーパ40の先端部とが交叉する際、衝突しないようにすることができる。
また、このミシンの縫目形成装置に、図15、図16に示すような糸通し用のエアポンプ304を有するルーパ糸通し装置300を備える。この際、工業用の本縫縁かがり縫ミシンにおいては、常時、縁かがり縫いを行なう機構なので、図4中、ルーパ駆動部60の上ルーパ取付腕軸600及び下ルーパ取付腕軸69を中空構造にして、それを上ルーパ30、下ルーパ40のルーパ糸入り口にすることにより、ルーパ糸通し装置300は上ルーパ30、下ルーパ40用の各中空の糸案内305、306の糸案内出口305b、306bに上ルーパ30、下ルーパ40のルーパ糸入り口をそれぞれ、常時合致させることができる。この合致した状態で糸通しエアポンプ304によって各中空の糸案内305、306の導入口から糸案内出口305b、306b、上ルーパ30、下ルーパ40のルーパ糸入り口、ルーパ剣先糸出口30b、40bに向けて上ルーパ糸3、下ルーパ糸4を送り出すことができると共に、上ルーパ30、下ルーパ40のルーパ糸入り口及び糸案内305、306の糸案内出口305b、306bを合致させるための加工、組立、調整が容易になる。
なお、図1、図3、図11、図14に示すメス駆動機構70は、針板に対し垂直方向に軌跡を描いて上下運動する針に刺し通された上糸と釜に収納された下糸とによって針板に載置された被縫製体の一送り毎に被縫製体を貫通して垂直方向に往復運動する針に刺し通した上糸を針の下死点から上昇する際に、針板の下方にあって下糸を収納し且つ回転運動する釜の剣先で掬って上糸と下糸とを交叉させて被縫製体の面に平行な縫目と垂直方向の縫目とから成る直線縫、ジグザグ縫等の本縫を行うミシンの縫目形成装置を備えた家庭用の本縫ミシンにも適用させることができる。これにより、ミシンの既成の構造空間にコンパクトにメス切断機構部分を組込むことができ、而も布縁を切断して本縫に縁かがり縫を行なう作業と布縁を切断することなく本縫を行なう作業とを簡易に切換えて実効できる。