JP2007325592A - L−チロシン過剰産生細菌株の製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】L−チロシンの効率のよい産生手段の提供。
【解決手段】腸内細菌株を、一段階法を使用して、L−チロシンを過剰産生するように工作した。細菌ゲノムのpheA−tyrA染色体領域を工作した染色体セグメントで置換し、pheAコーディング領域の不活性化およびtyrAコーディング領域の強発現をもたらし、高レベルのL−チロシン産生をもたらした。
【選択図】なし

Description

本発明は分子生物学および微生物学の分野に関する。より具体的には、本発明はL−チロシンを過剰産生する株を製造するための一段階での細菌宿主の工作方法に関する。
微生物からの化学物質の製造は生物工学の重要な応用となった。チロシンは、栄養補助食品および抗パーキンソン病薬L−ドーパの製造のための試薬であること等、その栄養および製薬学的用途により、微生物中での産生のための魅力的な化学物質である。加えて、チロシンは有益な工業的用途をもつ他の化合物の製造のための試薬としての可能性を有する。チロシンから潜在的に作製されうる化合物は、(S)−4−(2−クロロ−3−(4−n−ドデシルオキシ)−フェニルプロピオナト)−4’,4(2−メチル)ブチルオキシ−ビフェニルカルボキシレート(CDPMBB;KumarとPisipati(非特許文献1)、p−ヒドロキシケイヒ酸(pHCA;特許文献1、特許文献2)、p−ヒドロキシスチレン(pHS;p−ビニルフェノールとしてもまた知られる;特許文献3)、およびp−アセトキシスチレン(ASMとしてもまた知られる)のようなそれらのアセチル化誘導体を包含する。CDPMBBは強誘電性液晶(FLC)での使用のための強誘電体素材である。pHCAは液晶高分子(LCP)の製造のための有用な単量体である。LCPは電子コネクタならびに電気通信および航空宇宙科学の応用で使用されうる。滅菌放射に対するLCPの耐性は、これらの素材が医療機器ならびに化学物質および食物包装の応用で使用されることもまた可能にした。ヒドロキシスチレンは樹脂、エラストマー、接着剤、コーティング、自動車の仕上げ塗料、インクおよびフォトレジストの製造のため、ならびに電子材料での単量体としての応用を有する。それらはまた、エラストマーおよび樹脂処方中の添加物としても使用しうる。
チロシンは微生物中で天然に作製されるが、しかし一般に、細胞の成長に十分である低レベルで存在する。チロシンの生合成経路は、大腸菌(E.coli)でtyrAによりコードされるコリスミ酸ムターゼ/プレフェン酸脱水素酵素(コリスミ酸基質に作用する)でフェニルアラニン生合成経路から分岐する。フェニルアラニン経路では、コリスミ酸はコリスミ酸ムターゼ/プレフェン酸脱水酵素(大腸菌(E.coli)ではpheA遺伝子によりコードされる)の基質である。
増大されたレベルのチロシン産生を伴う微生物が、伝統的な遺伝子の方法ならびに遺伝子工学により得られている。pheA若しくは他の生物体中でコリスミ酸ムターゼ/プレフェン酸脱水酵素をコードする遺伝子のいずれかの発現が低下若しくは排除され、それによりコリスミ酸ムターゼ/プレフェン酸脱水酵素によるコリスミ酸基質の競合を低下若しくは排除して、増大されたチロシン産生をもたらした[非特許文献2]。
別に、tyrA発現若しくは他の生物体中でのコリスミ酸ムターゼ/プレフェン酸脱水素酵素をコードする遺伝子のいずれかが増大され、それにより増大されたコリスミ酸ムターゼ/プレフェン酸脱水素酵素活性を伴い、コリスミ酸をチロシン産生に向ける細胞の能力を増大させた。特許文献4は、3−デオキシ−2−ケト−D−アラビノ−ヘプツロソン酸−7リン酸(DAHP)合成酵素(芳香族アミノ酸生合成経路の最初の酵素)、コリスミ酸ムターゼおよびプレフェン酸脱水素酵素をコードする遺伝子を保有するプラスミドで形質転換することによる、コリネバクテリウム属(Corynebacterium)若しくはブレビバクテリウム属(Brevibacterium)宿主でのチロシン製造方法を開示する。特許文献5は、トリプトファンを産生するコリネバクテリウム属(Corynebacterium)若しくはブレビバクテリウム属(Brevibacteri
um)宿主でのチロシンの製造方法を開示する。トリプトファンを産生するコリネバクテリウム属(Corynebacterium)若しくはブレビバクテリウム属(Brevibacterium)宿主が、DAHP合成酵素およびコリスミ酸ムターゼをコードする遺伝子を保有するプラスミドで形質転換される。
共通に所有される特許文献6は、変異体pheA遺伝子を最初に導入することによる、チロシンを排出する大腸菌(E.coli)株の工作を開示する。その後、第二の別個の段階で、trcプロモーターに駆動されるtyrA遺伝子を導入した。双方の導入を有するまれな形質導入体がチロシン排出株と同定された。
加えて、共通に所有される特許文献2は、フェニルアラニンをチロシンに転化するために組換え生物体中でフェニルアラニン加水分解酵素を発現させることによりチロシン産生を増大させることを開示する。
チロシンの製造のために微生物を工作するための努力にもかかわらず、最高の報告された濃度は、コリネバクテリウム グルタミカム(Corynebacterium glutamicum)についてわずか26g/lである(非特許文献3)。従って、チロシンの商業生産を容易にするためのより高レベルでL−チロシンを産生する微生物に対する必要性が存続する。発明者は、26g/lを越えるレベルでL−チロシンを産生するように組換え腸内細菌を工作することにより、述べられた問題を解決した。
米国特許第6368837号 第US20050148054A1号 第US2004001860号 欧州特許第0332234号 欧州特許第0263515号 第US20040248267号 Z.Naturforsch.57a:803−806(2002) Maitiら(1995)Microbial production of L−tyrosine:a review.Hindustan Antibiot.Bull.37:51−65 Ikeda,M.とR.Katsumata.1992.Appl.Environ.Microbiol.58:781−785
[発明の要約]
本発明は、チロシン過剰産生株およびそれの作製方法に関する。本発明の株は、pheA遺伝子を非機能的にするためのそれの破壊、および遺伝子挿入のための単一挿入方法を使用するtyrAの上方制御すなわち過剰発現を含んでなる。該株は、芳香族アミノ酸経路の他の調節、およびチロシンの産生のための該株の利用性を高める他の表現型形質をさらに含みうる。
従って、本発明は、
a)i)内因性pheA−tyrA染色体領域;および
ii)コリスミ産を産生する芳香族アミノ酸生合成経路
を含んでなる腸内細菌株を提供すること;
b)段階(a)の株の染色体に、
1)tyrAをコードする1個のオープンリーディングフレームに作動可能に連結されたプロモーターを含んでなる核酸フラグメント;および
2)非機能的pheA核酸配列
を含んでなる工作された染色体セグメントを挿入することであって、
該工作された染色体セグメントが、宿主染色体の内因性pheA−tyrA領域を置換して、L−チロシンを過剰産生する株を創製する、
を含んでなる、L−チロシンを過剰産生する細胞株の作製方法を提供する。
好ましい一態様において、本発明は、本発明の方法により作製されたチロシン過剰産生株を提供する。あるいは、本発明は、以下の特徴:
a)aroF、aroG、aroH、aroB、aroD、aroE、aroL、aroK、aroA、aroC、tyrA、pheAおよびtyrBよりなる群から選択される遺伝子を含んでなる、芳香族アミノ酸生合成経路の存在
b)非機能的pheA遺伝子
c)lac、ara、tet、trp、λ P、λ P、T7、tac、trc、malE、T3、T4、T5、rrnB、lpp、phoA、proU、cst−1、cadA、nar、cspA、gyrA、バチルス属(Bacillus)スピーシーズのnprM、およびストレプトミセス属(Streptomyces)スピーシーズのグルコース異性化酵素よりなる群から選択されるプロモーターの制御下のtyrA遺伝子の過剰発現;
d)3−フルオロチロシンに対する耐性;
e)パラ−フルオロフェニルアラニンに対する耐性;
f)β−2−チエニルアラニンに対する耐性;
g)チロシンに対する耐性;ならびに
h)高フェニルアラニンおよび高温に対する耐性
を含んでなる、チロシンを過剰産生する腸内細菌株を提供する。
別の態様において、本発明は、
a)本発明の方法により作製されたチロシンを過剰産生する腸内細菌株を提供すること;および
b)L−チロシンが産生される条件下で前記チロシン過剰産生株を増殖させること
を含んでなる、L−チロシンの製造方法を提供する。
[図面の簡単な説明および配列の説明]
本発明は、本出願の一部を形成する以下の詳細な記述、図面および付随する配列表からより完全に理解され得る。
図1は、芳香族アミノ酸生合成経路の具体的説明である。
図2は、A)プライマー相同性領域(AおよびB)を伴う、大腸菌(E.coli)染色体のpheA−tyrA領域中およびその周囲のコーディング領域、ならびに欠失の標的とされる領域(Δ)の図解を示す。B)PCR鋳型tetAおよびtetR遺伝子領域、ならびにTetRA環形成のためのDNAフラグメントを生じさせるための2種のPCR反応で使用されるプライマーの図解を示す。
図3は、図2Bに示されるプライマーからのPCR産物のTetRA環の形成の図解を示す。
図4は、TetRA環と大腸菌(E.coli)染色体の間の組換え反応、および生じる染色体組込み産物の図解を示す。
図5は、pheLA領域に組込まれたTetRA環を保有する株についてのテトラサイクリン感受性対選択の2種の可能な結果の図解を示す。
図6は、lacIZYA領域中に組込まれたsacBプラスミドを保有する株についてのショ糖耐性選択の2種の可能な結果を示す。
以下の配列は、37 C.F.R.1.821−1.825(“ヌクレオチド配列およ
び/若しくはアミノ酸配列開示を含有する特許出願の要件−配列の規則(Requirements for Patent Applications Containing
Nucleotide Sequences and/or Amino Acid Sequence Disclosures−the Sequence Rules)”)に従い、また、世界知的所有権機関(WIPO)基準ST.25(1998)、ならびにEPOおよびPCTの配列表の要件(規則5.2および49.5(a−bis)、ならびに実施細則の第208節および付録C)に一致する。ヌクレオチドおよびアミノ酸配列データに使用される記号および形式は、37 C.F.R.§1.822に示される規則に従う。
配列番号1は、大腸菌(E.coli)K12のpheA−tyrA領域のヌクレオチド配列である。
配列番号2は、大腸菌(E.coli)O157:H7のpheA−tyrA領域のヌクレオチド配列である。
配列番号3は、大腸菌(E.coli)CFT073のpheA−tyrA領域のヌクレオチド配列である。
配列番号4は、大腸菌(E.coli)K12のPheAをコードするヌクレオチド配列である。
配列番号5は、大腸菌(E.coli)O157:H7のPheAをコードするヌクレオチド配列である。
配列番号6は、大腸菌(E.coli)CFT073のPheAをコードするヌクレオチド配列である。
配列番号7は、大腸菌(E.coli)K12のTyrAをコードするヌクレオチド配列である。
配列番号8は、大腸菌(E.coli)O157:H7のTyrAをコードするヌクレオチド配列である。
配列番号9は、大腸菌(E.coli)O157:H7のTyrAをコードするヌクレオチド配列である。
配列番号10は、ペスト菌(Yershinia pestis biovar Medievalis)株91001のPheAタンパク質のアミノ酸配列である。
配列番号11は、大腸菌(E.coli)K12のPheAタンパク質のアミノ酸配列である。
配列番号12は、エルウィニア カロトヴォラ サブスピーシーズ アトロセプティカ(Erwinia carotovora subsp.atroseptica)SCRI1043のPheAタンパク質のアミノ酸配列である。
配列番号13は、ネズミチフス菌(Salmonella typhimurium)LT2のTyrAをコードするヌクレオチド配列である。
配列番号14は、フォトラブドゥス ルミネセンス サブスピーシーズ ラウモンディイ(Photorhabdus luminescens subsp.laumondii)TTO1のTyrAをコードするヌクレオチド配列である。
配列番号15は、シェワネラ オネイデンシス(Shewanella oneidensis)MR−1のTyrAをコードするヌクレオチド配列である。
配列番号16は、ザントモナス カンペストリス パリバー カンペストリス(Xanthomonas campestris pv.campestris)株ATCC 33913のTyrAをコードするヌクレオチド配列である。
配列番号17はプライマーABTRのヌクレオチド配列である。
配列番号18はプライマーBATAのヌクレオチド配列である。
配列番号19はプライマーTRのヌクレオチド配列である。
配列番号20はプライマーTAのヌクレオチド配列である。
配列番号21はプライマーT−kan(tyrA)のヌクレオチド配列である。
配列番号22はプライマーB−kan(trc)のヌクレオチド配列である。
配列番号23はプライマーT−trc(kan)のヌクレオチド配列である。
配列番号24はプライマーB−trc(tyrA)のヌクレオチド配列である。
配列番号25はプライマーT−ty(test)のヌクレオチド配列である。
配列番号26はプライマーB−ty(test)のヌクレオチド配列である。
配列番号27はプライマーLac_1のヌクレオチド配列である。
配列番号28はプライマーLac_2のヌクレオチド配列である。
配列番号29はプライマーLac_3のヌクレオチド配列である。
配列番号30はプライマーLac_4のヌクレオチド配列である。
配列番号31は大腸菌(E.coli)K12のtyrR遺伝子のヌクレオチド配列である。
[発明の詳細な記述]
本発明は、pheA−tyrA染色体領域、および少なくともコリスミ酸産物までの芳香族アミノ酸生合成経路を有する腸内細菌宿主でのチロシン過剰産生株の工作方法を記述する。一段階の方法で、pheA−tyrA染色体領域のpheAコーディング領域を不活性化し、そして強力なプロモーターおよびtyrAコーディング領域を包含するキメラ遺伝子を染色体に挿入する。pheA発現の非存在下でのtyrAの強力な発現は、該宿主株を過剰産生ともまた呼ばれる高レベルのチロシンを産生するものに転換し、その結果チロシンが該細胞から排出される。
本開示では多数の用語および略語を使用する。以下の定義を提供する。
「ポリメラーゼ連鎖反応」はPCRと略記する。
「アンピシリン」はampと略記する。
「カナマイシン」はkanと略記する。
本明細書で使用されるところの「発明」若しくは「本発明」という用語は、提示されるところの若しくは後に補正かつ追補されるところの請求の範囲、または本明細書に記述されるところの本発明の全部の態様に一般に当てはまることを意味している。
「遺伝子」は、コーディング配列に先行する(5’非コーディング配列)および後に続く(3’非コーディング配列)制御配列を包含する、特定の1タンパク質を発現する核酸フラグメントを指す。「天然の遺伝子」若しくは「野性型遺伝子」はそれ自身の制御配列とともに天然に見出されるところの遺伝子を指す。「キメラ遺伝子」は、天然に一緒に見出されない制御およびコーディング配列を含んでなる、天然の遺伝子でないいかなる遺伝子も指す。従って、キメラ遺伝子は異なる供給源由来である制御配列およびコーディング配列、若しくは同一供給源由来のしかし天然に見出されるものと異なる様式で配列された制御配列およびコーディング配列を含みうる。「内因性遺伝子」は、生物体のゲノム中のその天然の位置にある天然の遺伝子を指す。「外来」遺伝子は、宿主生物体で通常見出されないがしかし遺伝子移入により該宿主生物体に導入される遺伝子を指す。外来遺伝子は、非天然の生物体に挿入された天然の遺伝子若しくはキメラ遺伝子を含み得る。「オープンリーディングフレーム」という用語は、ポリヌクレオチドをコードするがしかしいかなる調節エレメントも欠くことができる遺伝子若しくは遺伝子構築物のその部分を指す。「遺伝子構築物」という用語は、限定されるものでないが、単一核酸配列内に集成されかつ適切な宿主に形質転換される場合に特定の遺伝若しくは表現型形質を遂げることが可能な遺伝子、調節エレメント、オープンリーディングフレームなどを挙げることができる、遺伝因子のいかなる組合せも指すことができる。
遺伝子、遺伝子構築物などに関して使用される場合の「欠失」若しくは「破壊」という用語は、それが正常に機能する際の核酸配列の部分的若しくは完全な不活性化を指すことができる。配列中の欠失は、該配列の完全な若しくは部分的な不活性化をもたらしうる該配列の全部若しくは一部の除去を意味している。配列中の破壊若しくは挿入は、再度、該配列の正常に機能する能力を減少若しくは排除することができる該配列内の一要素の付加を指すことができる。欠失若しくは破壊は、該遺伝子若しくはコーディング配列を本発明の意味内で「非機能的」にすることができる。
「コーディング配列」若しくは「コーディング領域」は特定の一アミノ酸配列をコードするDNA配列を指す。
「適する制御配列」は、コーディング配列の上流(5’非コーディング配列)、内若しくは下流(3’非コーディング配列)に配置されかつ関連するコーディング配列の転写、RNAのプロセシング若しくは安定性、または翻訳に影響するヌクレオチド配列を指す。制御配列は、プロモーター、翻訳リーダー配列、イントロンおよびポリアデニル化認識配列を包含しうる。
「プロモーター」はコーディング配列若しくは機能的RNAの発現を制御することが可能なDNA配列を指す。一般に、コーディング配列はプロモーター配列の3’に配置される。プロモーターは天然の遺伝子にそっくりそのまま由来しうるか、若しくは天然で見出される異なるプロモーター由来の異なる要素から構成されうるか、若しくは合成DNAセグメントを含むことさえできる。多様なプロモーターが多様な組織若しくは細胞型において、または発達の異なる段階で、または多様な環境条件に応答して遺伝子の発現を指図しうることが当業者により理解される。遺伝子をほとんどの時点で大部分の細胞型において発現させるプロモーターは一般に「構成的プロモーター」と称される。大部分の場合に制御配列の正確な境界は完全に定義されているわけではないため、多様な長さのDNAフラグメントが同一のプロモーター活性を有しうることがさらに認識される。
「作動可能に連結される」という用語は、一方の機能が他方により影響されるような、単一核酸フラグメント上の核酸配列の連合を指す。例えば、プロモーターは、それがコーディング配列の発現に影響を及ぼすことが可能である場合(すなわち、コーディング配列が該プロモーターの転写制御下にあること)、そのコーディング配列と作動可能に連結されている。コーディング配列はセンス若しくはアンチセンスの向きで制御配列に作動可能に連結し得る。
本明細書で使用されるところの「発現」という用語は、本発明の核酸フラグメント由来のセンス(mRNA)若しくはアンチセンスRNAの転写および安定な蓄積を指す。発現はmRNAのポリペプチドへの翻訳もまた指すことができる。
「過剰発現」という用語は、正常のすなわち形質転換されていない生物体での産生のレベルを越えるトランスジェニック生物体での遺伝子産物の産生を指す。
「RNA転写物」は、DNA配列のRNAポリメラーゼに触媒される転写から生じる産物を指す。RNA転写物がDNA配列の完全な相補コピーである場合、それは一次転写物と称されるか、若しくは、それは一次転写物の転写後プロセシング由来のRNA配列であることができ、そして成熟RNAと称される。「メッセンジャーRNA(mRNA)」は、イントロンを含まずかつ細胞によりタンパク質に翻訳され得るRNAを指す。「cDNA」はmRNAに相補的でありかつそれ由来である二本鎖DNAを指す。「センス」RNAは、mRNAを包含しかつ従って細胞によりタンパク質に翻訳され得るRNA転写物を指す。「アンチセンスRNA」は、標的の一次転写物若しくはmRNAの全部若しくは一
部に相補的でありかつ標的遺伝子の発現を阻害するRNA転写物を指す(米国特許第5,107,065号明細書)。アンチセンスRNAの相補性は、特定の遺伝子転写物のいかなる部分、すなわち5’非コーディング配列、3’非コーディング配列、イントロン若しくはコーディング配列とであってもよい。「機能的RNA」は、アンチセンスRNA、リボザイムRNA、若しくは翻訳されないがそれでもなお細胞の過程に対する影響を有する他のRNAを指す。
「形質転換」は、遺伝的に安定な遺伝的形質をもたらす、宿主生物体のゲノムへの核酸フラグメントの移入を指す。形質転換された核酸フラグメントを含有する宿主生物体は「トランスジェニック」若しくは「組換え」若しくは「形質転換」生物体と称される。
「プラスミド」および「ベクター」という用語は、細胞の中心的な代謝の一部でなく、かつ、通常は環状二本鎖DNA分子の形態にある遺伝子をしばしば保有する染色体外要素を指す。こうした要素は、プロモーターフラグメントおよび選択された遺伝子産物のDNA配列を適切な3’非翻訳配列と一緒に細胞中に導入することが可能である独特な構築物に多数のヌクレオチド配列が結合され若しくは組換えられた、いずれかの供給源由来の一本鎖若しくは二本鎖DNA若しくはRNAの直鎖状若しくは環状の自律複製配列、ゲノムに組込む配列、ファージ若しくはヌクレオチド配列でありうる。「形質転換カセット」は、外来遺伝子を含有しかつ該外来遺伝子に加えて特定の宿主細胞の形質転換を容易にする要素を有する特殊なベクターを指す。「発現カセット」は、外来遺伝子を含有しかつ該外来遺伝子に加えて外来宿主中でのその遺伝子の高められた発現を見込む要素を有する特殊なベクターを指す。
「pheA」はコリスミ酸ムターゼ/プレフェン酸脱水酵素をコードする腸内細菌で見出される遺伝子を指し、また、PheAは対応するコードされるタンパク質を指す。
「tyrA」はコリスミ酸ムターゼ/プレフェン酸脱水素酵素をコードする腸内細菌で見出される遺伝子を指し、また、TyrAは対応するコードされるタンパク質を指す。
「tyrR」は、aroF、tyrA、aroG、aroLおよびtyrB遺伝子の遺伝子産物を包含する芳香族アミノ酸生合成経路の多様な要素の発現を調節する、腸内細菌で見出される遺伝子を指す。
「PEP」はホスホエノールピルビン酸の略語である。
「DAHP」は3−デオキシ−D−アラビノ−ヘプツロソン酸7−リン酸の略語である。
「DHQ」はデヒドロキナ酸の略語である。
「DHS」はデヒドロシキミ酸の略語である。
「SHK」はシキミ酸の略語である。
「S−3P」はシキミ酸−3−リン酸の略語である。
「ESPS」はエノールエーテル−5−エノールピルビルシキミ酸−3−リン酸の略語である。
「CHA」はコリスミ酸の略語である。
「PPA」はプレフェン酸の略語である。
「HPP」は4−OH−フェニルピルビン酸の略語である。
「Tyr」はチロシンの略語である。
「Phe」はフェニルアラニンの略語である。
「aroG397」という用語は、フェニルアラニンによるフィードバック阻害に耐性であるDAHP合成酵素の産生をもたらすaroG遺伝子中の特殊な一突然変異である。aroG397突然変異は当該技術分野で一般的かつ公知であり、そして米国特許第4,681,852号明細書(引用することにより本明細書に組み込まれる)に報告されている。
本明細書で使用されるところの「tyrR366突然変異」という用語は、tyrR遺伝子を不活性化、下方制御若しくは非機能的にするという効果を有する。チロシンの本製造方法の情況内で、tyrRの下方制御は、TyrRが発現を抑制する芳香族生合成経路の多数の酵素の上方制御をもたらす。tyrR366突然変異は当該技術分野で公知でありかつ[CamakarisとPittard(1973)J.Bacteriol.115:1135−1144]に十分に報告されている。
「芳香族アミノ酸生合成経路」という用語は、フェニルアラニンおよびチロシン産生を司る、多くの微生物で見出される偏在する酵素経路を指す。本明細書で使用されるところの芳香族アミノ酸生合成経路を図1に具体的に説明し、そして、遺伝子aroF、aroG、aroH、aroB、aroD、aroE、aroL、aroK、aroA、aroC、tyrA、pheAおよびtyrBによりコードされる酵素を部分的に含んでなる。
「フェニルアラニン過剰産生株」という用語は、その株の野性型で見られるものより有意により高いフェニルアラニンの内因性レベルを生じる微生物株を指す。大腸菌(E.coli)フェニルアラニン過剰産生体の特定の一例は大腸菌(E.coli)株NST74(米国特許第4,681,852号明細書)である。他者は、コリネバクテリウム グルタミカム(Corynebacterium glutamicum)[Ikeda,M.とKatsumata,R.Metabolic engineering to produce tyrosine or phenylalanin in a tryptophan−producing Corynebacterium glutamicum strain、Appl.Environ.Micobiol.(1992)、58(3)、pp.781−785]を包含しうる。高レベルで産生される場合、フェニルアラニンは典型的に培地に排出され、そして従って、フェニルアラニン過剰産生株は一般に「フェニルアラニン排出株」でもまたある。
「チロシン過剰産生株」という用語は、その株の野性型で見られるものより有意により高いチロシンの内因性レベルを生じる微生物株を指す。高レベルで産生される場合、チロインは典型的に培地に排出され、そして従って、チロシン過剰産生株は一般に「チロシン排出株」でもまたある。
「チロシン」はL−チロシンを指し、「フェニルアラニン」はL−フェニルアラニンを指し、そして「トリプトファン」はL−トリプトファンを指す。これらは指名される化合物のL−異性体である。
「マーカー」という用語は、スクリーニング若しくは選択により容易に検出可能である表現型形質を賦与する遺伝子を意味している。選択可能なマーカーは、マーカー遺伝子を有する細胞が増殖に基づき識別され得るものである。例えば、抗生物質耐性マーカーは、細胞を特定の抗生物質を含有する培地で増殖させる場合にその抗生物質に耐性である細胞の検出を可能にするため、有用な選択可能なマーカーとしてはたらく。スクリーニングで使用されるマーカーは、例えばその賦与された形質を可視化し得るものである。カロテノイド産生に関与する遺伝子、若しくは無色の化合物を着色化合物に転化するタンパク質(すなわちβ−ガラクトシダーゼ、β−グルクロニダーゼ)をコードするものがこの型のマーカーの例である。スクリーニングマーカー遺伝子はまたレポーター遺伝子とも称しうる。
「マーカーを利用すること」という用語は、該マーカーにより提供される表現型形質に基づき細胞を同定することを意味している。該マーカーは、選択およびスクリーニングを包含する方法により細胞を同定するための形質を提供しうる。
「陰性選択マーカー」という用語は、特定の条件下で有害である特性を賦与するDNA配列を意味している。該特質はプラスミド若しくは全細胞に対し有害でありうる。例えば、ショ糖の存在下でのsacB遺伝子の発現は該発現細胞に対し致死的である。別の例は、プラスミドが複製し得ないような非許容温度で非機能的である温度感受性複製起点である。
ここで使用される標準的な組換えDNAおよび分子クローニング技術は当該技術分野で公知であり、そしてSambrook,J.、Fritsch,E.F.とManiatis,T.、Molecular Cloning:A Laboratory Manual、第2版、Cold Spring Harbor Laboratory:ニューヨーク州コールドスプリングハーバー(1989)(下で「Maniatis」);およびSilhavy,T.J.、Bennann,M.L.とEnquist,L.W.、Experiments with Gene Fusions、Cold Spring Harbor Laboratory:ニューヨーク州コールドスプリングハーバー(1984);およびGreene Publishing Assoc.and Wiley−Interscience、ニュージャージー州ホーボーケンにより出版されたAusubel,F.M.ら、Current Protocols in Molecular Biology(1987)により記述されている。
本発明は、醗酵によるL−チロシンの産生での使用のためのチロシンを過剰産生する腸内細菌株の作製方法を提供する。該チロシン過剰産生体は、芳香族アミノ酸生合成経路を介してコリスミ酸を産生する能力を最小限に有することができ、かつ、pheA遺伝子中の破壊を有してそれを非機能的にすることができ、また、tyrAを過剰発現していることができる。他の態様において、チロシン過剰産生株は、限定されるものでないが、フェニルアラニンによるフィードバック阻害に耐性のDAHP合成酵素をコードする遺伝子、tyrR遺伝子の下方制御;3−フルオロチロシンに対する耐性;パラ−フルオロフェニルアラニンに対する耐性;β−2−チエニルアラニンに対する耐性;チロシンに対する耐性、ならびに高フェニルアラニンおよび高温に対する耐性を挙げることができる多様な他の遺伝および表現型形質を有することができる。
本発明のチロシン過剰産生株は、好ましくは、フェニルアラニン過剰産生株で開始しかつpheA遺伝子の欠失若しくは破壊およびtyrA遺伝子の過剰発現を遂げるための単一遺伝子構築物でその株を形質転換して構築する。pheAの破壊は、フェニルアラニンの産生への炭素を遮断するという効果を有し(図1)、そして、tyrAの過剰発現は、この付加的な炭素をチロシン産生専用の経路の一部に移動する(図1)。上に示された多
様な化学物質に対する耐性の付加的な特質についての選択は、一般に、該株の確固たる性質に寄与して、チロシン産生をさらに高める。
宿主株の選択
本発明は、チロシンを過剰産生する腸内細菌株、およびその株の新規構築方法を提供する。構築のための出発株の不可欠の要件は、それが芳香族アミノ酸経路によりコリスミ酸を産生し(図1)、かつ、pheAコーディング領域およびtyrAコーディング領域を相互に近接して含んでなることである。場合によっては、選択した株がフェニルアラニンの過剰産生体である場合が有用であることができる。pheAおよびtyrAコーディング領域を相互に近接して有するいかなる腸内細菌株も、株転換のための本一段階方法の潜在的宿主である。
本発明でとりわけ適する腸内細菌は、限定されるものでないがエシェリキア属(Escherichia)、クレブシエラ属(Klebsiella)、サルモネラ属(Salmonella)、赤痢菌属(Shigella)、エルジニア属(Yersinia)およびエルウィニア属(Erwinia)を挙げることができる。腸内細菌は腸内細菌科(Enterobacteriacea)のメンバーであり、そしてエシェリキア属(Escherichia)、サルモネラ属(Salmonella)および赤痢菌属(Shigella)のようなメンバーを包含する。それらは周毛性鞭毛(タツメラ属(Tatumella)を除く)により運動性若しくは非運動性の0.3〜1.0×1.0〜6.0mmのグラム陰性の直線状桿菌である。それらは酸素の存在および非存在下で増殖し、また、ペプトン、肉抽出物および(通常は)マッコイ培地で良好に増殖する。数種は単独炭素源としてD−グルコースで増殖する一方、他方はビタミンおよび/若しくはミネラル(1種若しくは複数)を必要とする。それらは呼吸および醗酵代謝を伴い有機栄養性であるが、しかし好塩性でない。酸、およびしばしば目に見えるガスを、D−グルコース、他の炭水化物およびポリヒドロキシアルコールの発酵中に産生する。それらは酸化酵素陰性であり、かつ、志賀赤痢菌(Shigella dysenteriae)0グループ1およびゼノラブドゥス ネマトフィルス(Xenorhabdus nematophilus)を除きカタラーゼ陽性である。硝酸は亜硝酸に還元される(エルウィニア属(Erwinia)およびエルジニア属(Yersinia)の数種の株を除く)。DNAのG+C含量は38〜60モル%(T、Bd)である。大部分の属内の種からのDNAは、相互におよび該科の基準種大腸菌(Escherichia coli)と最低20%関連している。顕著な例外はエルジニア属(Yersinia)、プロテウス属(Proteus)、プロビデンシア属(Providencia)、ハフニア属(Hafnia)およびエドワードシエラ属(Edwardsiella)の種であり、それらのDNAは他の属からの種のものと10〜20%関連している。ジャガイモ黒脚病菌(Erwinia chrysanthemi)を除き、試験した全種が腸内細菌共通抗原を含有する(Bergy’s Manual of Systematic Bacteriology、D.H.Bergyら、ボルティモア:Williams and Wilkins、1984)。
腸内細菌では、pheAおよびtyrA遺伝子は腸内細菌染色体のpheA−tyrA領域の成分であり、そして典型的には相互に隣接する。大腸菌(E.coli)染色体のpheA−tyrA領域は、pheAプロモーター、コリスミ酸ムターゼ/プレフェン酸脱水酵素のリーダーペプチドをコードする48bpの配列であるpheL、pheAコーディング領域、rho非依存性転写終結配列、および反対の向きにtyrAコーディング領域を包含する。大腸菌(E.coli)K12株からのpheA−tyrA領域の配列を配列番号1として示し、これはヌクレオチド1と80の間のpheAプロモーター、ヌクレオチド81と128の間のpheLコーディング領域、ヌクレオチド129と226の間の非コーディング遺伝子間配列、ヌクレオチド227と1387の間のpheAコー
ディング領域、ヌクレオチド1394と1422の間のrho非依存性転写終結配列およびヌクレオチド1430と2551の間のtyrAコーディング領域を包含する。
腸内細菌のpheA−tyrA領域は高度に保存されており、そしてこの領域の改変方法は一般に該分類の多くのメンバーに適用可能である。例えばエシェリキア属(Escherichia)内で、大腸菌(E.coli)株O157:H7(配列番号2)および大腸菌(E.coli)株CFT073(配列番号3)のpheA−tyrA領域の配列は、K12のpheA−tyrA領域の配列にそれぞれ98%同一である。典型的には、pheAおよびtyrAのコーディング領域もまた個別に保存されており、大腸菌(E.coli)の株間で97%くらい近い配列同一性を示す。これらの類似性は、それぞれ配列番号4、5および6として示されるK12、O157:H7およびCFT073株のpheAコーディング領域の配列、ならびにそれぞれ配列番号7、8および9として示されるK12、O157:H7およびCFT073株のtyrAコーディング領域の配列中で容易に見られる。pheAおよびtyrA領域の保存は、該2コーディング領域の近接もまた共通の特徴である、腸内微生物(enterics)該分類の他メンバーに広がる。例えば、対応するペスト菌(Yersinia pestis biovar Medievalis)株91001のタンパク質(配列番号10)は、大腸菌(E.coli)K12のpheA産物(配列番号11)のアミノ酸配列に対し69%の同一性を有し、また、対応するエルウィニア カロトヴォラ サブスピーシーズ アトロセプティカ(Erwinia carotovora subsp.atroseptica)SCRI1043のタンパク質(配列番号12)は、大腸菌(E.coli)K12のpheA産物に対する70%の同一性を有する。
染色体中で相互に近接して配置されるpheAおよびtyrAに対応する遺伝子を有するいかなる腸内細菌株も、本方法の標的宿主となりうる。エシェリキア属(Escherichia)の株がとりわけ適しており、ATCCにより#700926、#27325、#31882、#31884および#13281と呼称される株が最も好ましい。
示されるとおり、一態様において、フェニルアラニンの確固たる産生を示す株を同定することが有用であることができる。これが完全かつ高められた芳香族アミノ酸経路を示唆するためである。大腸菌(E.coli)フェニルアラニン過剰産生体の特定の例は、双方とも米国特許第4,681,852号明細書(引用することにより本明細書に組み込まれる)に記述されている大腸菌(E.coli)K12株NST37(ATCC #31882)およびNST74(ATCC #31884)である。本株転換法を使用してチロシン過剰産生体に転換しうる、低レベルのフェニルアラニン排出を伴うK12以外の大腸菌(E.coli)株の一例は、ATCC#13281(米国特許第2,973,304号明細書(引用することにより本明細書に組み込まれる))である。
チロシン過剰産生体の構築:芳香族アミノ酸生合成経路の改変
適する宿主若しくは株が一旦同定されれば、芳香族アミノ酸経路の重要な要素の改変方法を使用してチロシン過剰産生株を生成しうる。
芳香族アミノ酸経路の関連する要素を図1に具体的に説明する。簡潔には、該経路は最終的にグルコースから炭素を受領し、そして、遺伝子のaroFGHの組によりコードされるDAHP合成酵素により触媒される、DAHPを形成するためのE4PおよびPEPの縮合で合成が進行する。該経路は、図1に示されるところの遺伝子aroB、aroD、aroE、aroL、aroK、aroAおよびaroCにコードされる酵素により触媒される多様な中間体を通って、コリスミ酸が産生される点まで進行する。コリスミ酸はアントラニル酸合成酵素(トリプトファン合成に至る)および、最初にプレフェン酸(それ自身は、フェニルアラニン合成に至るプレフェン酸脱水酵素(pheAによりコードさ
れる)、若しくは最初に4−OH−フェニルピルビン酸の産生および次にtyrBにコードされるアミノトランスフェラーゼによる触媒作用を介してチロシンに至るプレフェン酸脱水素酵素(tyrAによりコードされる)により作用されうる)の合成に至るコリスミ酸ムターゼ双方の基質である。
該経路の要素を考えれば、チロシン産生の最大化における課題は、競合する産物(フェニルアラニン、トリプトファン)への炭素の浪費を制御すること、およびチロシン産物への炭素の流れを至適化することであろうことが明らかであろう。従って、tyrAの遺伝子産物の上方制御およびpheAの遺伝子産物の排除が示される。加えて、野性型DAHP合成酵素は該経路の最終生成物(フェニルアラニン、トリプトファン、チロシン)により阻害されることが既知であるため、また、これは炭素の流れを制御する経路中の最初の酵素であるため、最終生成物によるその調節を低下させるためにこの変異体酵素を含有する株を得ることが有用であることができる。
非機能的pheA−tyrAの過剰発現
腸内細菌の染色体のpheA−tyrA領域中のpheAおよびtyrAコーディング領域の近接は、本一段階工作方法を使用してこれらのコーディング領域の双方の発現を変えることを可能にする。本一段階工作方法は、同時にpheAコーディング領域を不活性化することおよび強力なプロモーターをtyrAコーディング領域に付加することを包含する。同時のpheAおよびtyrA遺伝子の工作は、単一の工作された染色体セグメントを、内因性pheA−tyrA領域を置換するように宿主株の染色体中に動かすことにより達成される。双方の遺伝子を変えるこの過程は、単一の工作された染色体セグメントを使用して非常に高頻度で達成される。
工作された染色体セグメントは、機能的pheAタンパク質が産生されないことを確実にするpheA配列のいかなる変化も有しうる。従って、該工作された染色体セグメントは非機能的pheA構築物を最初の要素として包含する。非機能的pheA構築物は変えられたpheAコーディング領域を有しうる。コーディング領域を変えてそれを非機能的にすることは当業者に公知である。例えば、変化は欠失および挿入を包含する突然変異でありうる。突然変異は、機能的タンパク質が作製されないような、終止コドンを導入するか若しくはタンパク質の読み枠を変える点突然変異を包含する。効果的な挿入は読み枠を中断する。欠失は、PheAタンパク質をコードする領域の部分的欠失、および完全なPheAコーディング領域の欠失を包含する。欠失は、pheLコーディング領域ならびにpheLおよびpheA発現のためのプロモーターを包含しうる。欠失は、欠失の標的とされる配列に隣接するDNA配列を結合してそれにより隣接配列を脱落させることにより作製される。pheAプロモーターの上流の配列をpheAコーディング領域の下流の配列に結合する欠失がとりわけ有用である。例えば、大腸菌(E.coli)で、pheA遺伝子全体の欠失は、yfiAの3’端およびpheAプロモーターの上流の遺伝子間領域を、pheAコーディング領域の下流の遺伝子間領域およびtyrAの3’端に結合することにより作製する(図2Aを参照されたい)。この欠失は、pheAコーディング領域全体と一緒に、pheLコーディング領域ならびにpheLおよびpheA発現を駆動するプロモーターを包含する。生じる構築物は、pheA配列が包含されない場合でさえ、非機能的pheA構築物であると言われることができる。
非機能的pheA構築物を含有する染色体セグメントは、第二の要素として、強力なプロモーターから発現されるtyrAコーディング領域もまた包含する。tyrAコーディング領域は標的宿主に由来してもよいか、若しくはそれは異種株の外来tyrA遺伝子に由来してもよい。Songら(2005)BMC Biol 3:13)に記述されるもののような、機能的コリスミ酸ムターゼ/プレフェン酸脱水素酵素タンパク質をコードするいかなる配列も使用しうる。いくつかの例は、大腸菌(E.coli)K12(配列番
号7)、大腸菌(E.coli)O157:H7(配列番号8)、大腸菌(E.coli)CFT073(配列番号9)、ネズミチフス菌(Salmonella typhimurium)LT2(配列番号13)、フォトラブドゥス ルミネセンス サブスピーシーズ ラウモンディイ(Photorhabdus luminescens subsp.laumondii)TTO1(配列番号14)、シェワネラ オネイデンシス(Shewanella oneidensis)MR−1(配列番号15)およびザントモナス カンペストリス パリバー カンペストリス(Xanthomonas campestris pv.campestris)株ATCC 33913(配列番号16)のtyrAコーディング配列である。
一態様において、発現を高めるためにtyrA遺伝子の上流で強力なプロモーターを使用することが有用であることができる。強力なプロモーターは、標的宿主からであろうと若しくは異種株からであろうと、天然のtyrA発現プロモーターの代わりに用いられ、そしてtyrAの発現を制御するためそのコーディング領域に作動可能に連結される。構成的および調節されるプロモーターを包含する、腸内細菌標的細胞中で高レベルの発現を与えるいかなるプロモーターも使用しうる。こうしたプロモーターは多数でありかつ当業者になじみがあり、そして、例えばlac、ara、tet、trp、λ P、λ P、T7、tac、trc、malE、T3、T4、T5、ストレプトミセス属(Streptomyces)スピーシーズのグルコース異性化酵素、バチルス属(Bacillus)スピーシーズのnprM、rrnB、lpp、phoA、proU、cst−1、cadA、nar、cspAおよびgyrAを包含しうる。trcプロモーターがとりわけ適する。
trcプロモーターはlacリプレッサーにより調節されるプロモーターの一例である。これらのプロモーターは遺伝子発現の駆動において確実であるとは言え、遺伝子欠失若しくは標的突然変異誘発によりlacリプレッサーを阻害することが必要でありうる。lac欠失の作製方法は当該技術分野で公知であり、そして多くの腸内細菌のlac標的配列は一般に入手可能である。
非機能的pheA構築物、およびtyrAを発現する強力なプロモーターを含有する染色体セグメントは、高レベルのチロシン産生を得るのに有用な他の遺伝因子もまた包含しうる。これらの任意の因子は高発現が望ましい遺伝子を包含しうる。例えば、aroF、aroG、aroH、aroB、aroD、aroE、aroK、aroL、aroA、aroCおよび/若しくはtyrB遺伝子を染色体セグメントに挿入しうる。強力なプロモーターを使用して、包含される各コーディング領域を発現しうるか、若しくは複数のコーディング領域が高発現プロモーターの制御下のオペロンを形成しうる。上で本明細書に記述されるtyrAを発現するのに使用しうるもののようなプロモーターを使用しうる。
加えて、介在遺伝子を包含するpheA−tyrA領域を有する腸内細菌標的宿主株を使用する場合、変えられたpheA、およびtyrAを発現する強力なプロモーターを含有する染色体セグメントは、該介在遺伝子配列もまた包含しうる。
工作された染色体セグメントの、非機能的pheA構築物、およびtyrAを発現する強力なプロモーター、ならびに上述された任意の他の要素を、プラスミド若しくは細菌染色体中で組合せうる。当業者に公知のPCRおよび/若しくはクローニング方法を使用して該要素を個々に構築しうる。クローニング法はまた、プラスミド中で要素を組合せるのにも使用しうる。あるいは、要素はプラスミドから細菌染色体に導入しうるか、若しくは要素は細菌染色体中で直接構築しうる。該要素をその後組合せうる。例えば、実施例1に記述されるとおり、pheA遺伝子の欠失を細菌染色体中で直接構築しうる。別個の細菌株で、trcプロモーターを細菌染色体中のtyrAプロモーターの代わりに直接用いう
る。細菌染色体中のこれらの個別に構築された要素をその後、バクテリオファージに媒介される普遍形質導入を使用して組合せうる。この方法は非効率的であり、そして、それ、ならびに既知のPCRおよびクローニング方法のいずれかを使用して、工作された染色体セグメントの要素を組み合わせることは、多くの段階を必要とする。一旦分離されれば、工作された染色体セグメント(プラスミド上であれ若しくは細菌染色体中であれ)を一段階で標的宿主に挿入して、チロシン過剰産生株を生じさせうる。
工作された染色体セグメントを、内因性のpheA−tyrA領域の部位で腸内細菌の標的宿主染色体に挿入し、そして内因性のpheA−tyrA領域を置換する。工作された染色体セグメントの挿入は、ファージ導入、接合、あるいはプラスミド導入またはプラスミド以外の二本若しくは一本鎖DNA導入、次いで相同的組換えによるような、当業者に既知のいずれの方法によってもよい。バクテリオファージ形質導入においては、当該技術分野で公知でありかつMiller,J.H.、Experiments in Molecular Genetics、Cold Spring Harbor Laboratory Press、ニューヨーク州コールドスプリングハーバー(1972)により記述される標準的遺伝子形質導入方法を使用する。細菌染色体中で構築した工作された染色体セグメントをファージにパッケージングし、その後ファージ感染により標的宿主細胞に導入し、次いで相同的組換えで工作された染色体セグメントを標的宿主細胞の染色体に挿入する。
DNAフラグメントは、相同的組換えが生じることができる配列を提供するように、細菌染色体中でこの染色体セグメントに天然に隣接する配列を包含する方法により、工作された染色体セグメントをもつ細菌染色体から調製しうる。隣接相同配列は、Lloyd,R.G.とK.B.Low(1996;Homologous recombination、p.2236−2255.F.C.Neidhardt(編)、Escherichia coli and Salmonella:Cellular and Molecular Biology.ASM Press、ワシントンDC中)に記述されるとおり、相同的組換えを支援するのに十分である。典型的には、相同的組換えに使用される相同配列は長さ1kb超であるが、しかし50若しくは100bpくらい短くてもよい。工作された染色体セグメントおよび隣接相同配列を含有するDNAフラグメントは、制限消化によるように、若しくは超音波処理のような無作為端を生成する方法を使用して、確定された端を伴い製造しうる。いずれの場合も、工作された染色体セグメントを保有するDNAフラグメントは、例えば、電気穿孔法、凍結融解法を包含するいずれかのDNA取り込み法により、若しくは化学的にコンピテントな細胞を使用して、標的宿主細胞に導入しうる。該DNAフラグメントは、工作された染色体セグメントでの標的宿主の内因性染色体pheA−tyrA領域の置換をもたらす相同的組換えを受ける。
プラスミドを使用して、工作された染色体セグメントを挿入のため標的宿主細胞に保有しうる。典型的には、非複製プラスミドを使用して組込みを促進する。工作された染色体セグメントは、相同的組換えが起こることができる配列を提供するように、細菌標的宿主ゲノム中でこの染色体セグメントに天然に隣接するDNA配列によりプラスミド中で隣接されている。該隣接相同配列は上述されたとおりであり、そして、プラスミドDNAの導入は上述されたとおりである。
これらの方法のいずれかを使用して、相同的組換えは、バクテリオファージλ Red系[DatsenkoとWanner(2000)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 97:6640−6645]および[Ellisら(2001)Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.98:6742−6746]、若しくはRacファージRecE/RecT系[Zhangら(2000)Nature Biotechnology 18:1314−1317]のようなバクテリオファージ相同的組換
え系の使用により高めうる。加えて、遺伝子挿入および変異体選択について、共通に所有される第USSN 10/734936号明細書;および米国特許第6,673,567号明細書に開示されるもののような方法が本出願で有用であることができる。
方法のいずれにおいても、相同的組換えは、工作された染色体セグメントでの標的宿主の内因性の染色体pheA−tyrA領域の置換をもたらす。
工作された染色体セグメントの成功裏の挿入を伴うレシピエント株はマーカーを使用して同定しうる。スクリーニング若しくは選択いずれのマーカーも使用することができ、選択マーカーがとりわけ有用である。例えば、抗生物質耐性マーカーが、工作された染色体セグメント中に存在することができ、その結果、それが新たな宿主に移入される場合に、工作された染色体セグメントを受領する細胞が対応する抗生物質上での増殖により容易に同定され得る。あるいは、容易に検出可能である産物の産生を賦与するものであるスクリーニングマーカーを使用しうる。マーカーがレシピエント株中に留まらないことが望ましい場合には、それをその後、部位特異的組換えを使用することによるように除去しうる。この場合、部位特異的組換え部位は、組換え酵素の発現が該マーカーの欠失を引き起こすことができるようなマーカーDNA配列の5’および3’に位置する。
経路の要素の調節;DAHP合成酵素。tyrR
上に示されたとおり、pheA機能の排除およびtyrAの上方制御に加え、芳香族アミノ酸経路の他の要素を、チロシンへの炭素の流れを高めるように調節することが付加的に有用でありうる。例えば、最終生成物のフィードバック阻害に抵抗性であるDAHP合成酵素を含有する株についての選択が有用であることができる。こうした株は既知であり、そしてBongaertsら(2001)Metabolic Engineering 3:289−300に記述されている。例えば、大腸菌(E.coli)はaroG、aroFおよびaroHによりコードされるこの酵素の3種のアイソザイムを有する。野性型大腸菌(E.coli)では、aroGにコードされる酵素はフェニルアラニンにより阻害され、aroFにコードされる酵素はチロシンにより阻害され、そしてaroHにコードされる酵素はトリプトファンにより阻害される。従って、これらのアイソザイムのいずれも、フィードバック耐性を賦与するよう変えることができる。米国特許第4,681,852号明細書(引用することにより本明細書に組み込まれる)に開示されるaroG397突然変異はフィードバック耐性DAHP酵素の創製においてとりわけ有用である。TyrRもまた、米国特許第4,681,852号明細書に開示されるタンパク質中の突然変異によるか若しくはtyrR遺伝子の発現を封鎖することによるかのいずれかで非機能的にすることができる。TyrRは、芳香族アミノ酸生合成経路のaroF、tyrA、aroG、aroLおよびtyrBを包含する数種の遺伝子の発現を抑制する調節タンパク質である[Pittardら(2005)Mol.Microbiol.55:16−26]。tyrR366突然変異[CamakarisとPittard(1973)J.Bacteriol.115:1135−1144]はTyrRを不活性化するのにとりわけ有用である。主題の腸の(enteric)宿主のtyrR配列を知る当業者は、遺伝子突然変異および破壊の技術分野で公知の手段(Sambrook 上記)を使用して破壊変異体を創製することが容易に可能であろう。大腸菌(E.coli)K12のtyrR遺伝子の配列を配列番号31として本明細書に示す。付加的なtyrR配列が公的に入手可能であり;例えば
・大腸菌(Escherichia coli)O157:H7 DNA、完全なゲノム:
gi|47118301|dbj|BA000007.2|[47118301]
・大腸菌(Escherichia coli)CFT073、完全なゲノム
gi|26111730|gb|AE014075.1|[26111730]
・大腸菌(Escherichia coli)UT189、完全なゲノム
gi|91209055|ref|NC_007946.1|[91209055]
・大腸菌(Escherichia coli)W3110 DNA、完全なゲノム
gi|89106884|ref|AC_000091.1|[89106884]
・ネズミチフス菌(Salmonella typhimurium)LT2、完全なゲノム
gi|16763390|ref|NC_003197.1|[16763390]
を参照されたい。
従って、TyrRの発現の影響を排除すること、ならびにDAHP合成酵素をフィードバック耐性にすることは、芳香族アミノ酸生合成経路を通りコリスミ酸への中間体のより多い流れを創製し、それはチロシン過剰産生株への本転換方法で使用される宿主でとりわけ有用である。
表現型形質
芳香族アミノ酸生合成経路における中間体の流れを増大させることは、経路の産物および経路の産物のアナログに対する宿主株の耐性を選択することにより達成しうる。3−フルオロチロシン、パラ−フルオロフェニルアラニン、β−2−チエニルアラニン、チロシンおよびフェニルアラニンのような化合物を、それぞれ耐性細胞のスクリーニングで使用しうる。上で挙げられた化合物に適用されるところの、本明細書で使用されるところの「耐性」という用語は、米国特許第4,681,852号明細書(引用することにより本明細書に組み込まれる)に記述されるところの、細胞の突然変異誘発、およびこれらの化合物に対する耐性についてのスクリーニングのプロトコルと一致した様式で使用する。芳香族アミノ酸生合成経路の産物および経路の産物のアナログに耐性の細胞は、DAHPフィードバック耐性、TyrR調製若しくは他の経路の流れを制御する因子に影響を及ぼす突然変異を有しうる。耐性の特性を引き起こす特定の突然変異は、該突然変異を含有する細胞が本方法での宿主株として有用であるために完全に特徴づけられる必要はない。
チロシンの産生
本方法によりチロシン過剰産生体に転換された腸内細菌株はチロシンを作製し、チロシンは培地中に排出される。これらの株は、商業的量のチロシンを製造する醗酵槽で増殖させうる。本方法により製造される株は最低約26g/Lであるチロシンレベルを生じ、ここで最低約50g/Lの産生レベルが期待され、かつ、最低約75g/Lのレベルを企図している。最低約45g/Lであるチロシンレベルを生じる、本方法により製造される株がとりわけ有用である。10リットル醗酵槽中で約48g/Lのチロシンを産生する大腸菌(E.coli)株(DPD4119、実施例6を参照されたい)を、本方法を使用して作製した。工作された染色体セグメントΔpheLA Ptrc−tyrA::Kanに加え、本株は3−フルオロチロシン、パラ−フルオロフェニルアラニン、β−2−チエニルアラニン、チロシン、高フェニルアラニンおよび高温に耐性である。最低約50g/Lであるチロシンレベルを生じる、本方法により製造される株が最も好ましい。10リットル醗酵槽中で約54g/Lのチロシンを産生する大腸菌(E.coli)株(DPD4145、実施例8)を、本方法を使用して作製した。工作された染色体セグメントΔpheLA Ptrc−tyrAに加え、本株は、3−フルオロチロシン、パラ−フルオロフェニルアラニン、β−2−チエニルアラニン、チロシン、高フェニルアラニンおよび高温に耐性であり、かつ染色体突然変異ΔlacIZYAもまた有する。
本開示の生産醗酵すなわち「スケールアップ醗酵」は10L以上、および通常は200L若しくはそれ以上の好気的バッチ醗酵を記述する。チロシンの商業的生産が望ましい場合、多様な培養の方法論を適用しうる。例えば、組換え微生物宿主からの大スケール生産は、バッチおよび連続双方の培養の方法論により生じうる。古典的なバッチ培養法は、培地の組成を培養の開始時に設定しそして培養工程中に人工的改変にかけない閉鎖系である
。従って、培養工程の開始時に、培地に所望の生物体(1種若しくは複数)を接種し、そして該系に何も添加せずに増殖若しくは代謝活動を起こさせる。典型的には、しかしながら、「バッチ」培養は炭素源の添加に関してバッチであり、そしてpHおよび酸素濃度のような因子の制御で試みがしばしばなされる。バッチ系では、該系の代謝物およびバイオマス組成は培養を終了する時点まで絶えず変化する。バッチ培養物内で、静的対数期から高増殖対数期および最終的には増殖速度が低下若しくは停止する静止期まで、細胞が加減する。処理されない場合、静止期の細胞はついには死ぬことができる。対数期の細胞はしばしば、いくつかの系の最終生成物若しくは中間体の大部分の産生を司る。静止期若しくは指数増殖期後の産生は他の系で得ることができる。
標準的バッチ系に対する一変形物は流加系である。流加培養工程もまた本発明で適し、そして培養が進行する際に基質を徐々に添加することを除き典型的なバッチ系を含んでなる。流加系は異化作用産物抑制が細胞の代謝を阻害する傾向がある場合、および培地中に制限された量の基質を有することが望ましい場合に有用である。流加系での実際の基質濃度の測定は困難であり、そして従ってpH、溶解酸素(DO)、およびCOのような排ガスの分圧のような測定可能な因子の変化に基づき推定する。バッチおよび流加培養法は一般的でありかつ当該技術分野で公知であり、そして、例はThomas D.Brock、Biotechnology:A Textbook of Industrial
Microbiology、第2版(1989)Sinauer Associates,Inc.、マサチューセッツ州サンダーランド中、若しくはDeshpande,Mukund V.、Appl.Biochem.Biotechnol.、36、227、(1992)(引用することにより本明細書に組み込まれる)に見出しうる。
醗酵培地は適する炭素基質を含有する。適する基質は、限定されるものでないが、グルコースおよび果糖のような単糖、乳糖若しくはショ糖のようなオリゴ糖、デンプン若しくはセルロースのような多糖、またはそれらの混合物、ならびにチーズホエイ透析物、コーンスティープリカー、サトウキビ糖蜜およびオオムギ麦芽のような再生可能な原材料からの未精製混合物を挙げることができる。炭素基質は例えばアルコール、有機酸、タンパク質若しくは加水分解タンパク質またはアミノ酸もまた含みうる。それ故に、本醗酵で利用される炭素源は、多様な炭素含有基質を包含しうることを企図している。
チロシンの商業生産は連続培養でもまた達成しうる。連続培養は、合成培地をバイオリアクターに連続的に添加し、そして等量の馴化培地を加工のため同時に除去する開放系である。連続培養は、一般に、細胞が主として対数期増殖にある一定の高液相密度に細胞を維持する。あるいは、連続培養は、炭素および栄養素を連続的に添加しそして有益な産物、副生成物若しくは廃棄物を細胞塊から連続的に除去する、固定した細胞で実施しうる。細胞固定は、天然および/若しくは合成素材から構成される広範な固体支持体を使用して実施しうる。
連続若しくは半連続培養は、細胞増殖若しくは最終生成物濃度に影響を及ぼす1因子若しくはいずれかの数の因子の調節を見込む。例えば、一方法は、炭素源若しくは窒素濃度のような制限栄養素を固定した率に維持しかつ全部の他のパラメータを加減することを可能にすることができる。他の系では、培地濁度により測定される細胞濃度を一定に保ちつつ、増殖に影響を及ぼす多数の因子を連続的に変えることができる。連続的系は、定常状態の増殖条件を維持するよう努め、そして従って抜き出されている培地による細胞の喪失は培養物中の細胞増殖に対し均衡を保たなければならない。連続培養工程のための栄養素および増殖因子の調節方法、ならびに生成物形成の速度を最大化するための技術は工業微生物学の分野で公知であり、そして多様な方法がBrock、上記により詳述されている。
後に続くところの醗酵形態がチロシン産生にとりわけ適する。本方法によりチロシン過剰産生株に転換される所望の株を、オービタルシェーカー中約300rpmで振とうしながら約35℃で半天然培地中で振とうフラスコ中で増殖させ、そしてその後類似の培地を含有する10L種醗酵槽に移す。種培養物は、OD550が10と25の間になるまで一定の空気散布下に種醗酵槽中で増殖させ、その場合に、醗酵パラメータがチロシン産生に至適化されている生産醗酵槽にそれを移す。種タンクから生産タンクに移される典型的な接種物容量は2.0〜10v/v%の範囲にわたる。典型的な醗酵培地は、リン酸カリウム(1.0〜3.0g/l)、リン酸ナトリウム(0〜2.0g/l)、硫酸アンモニウム(0〜1.0g/l)、硫酸マグネシウム(0.3〜5.0g/l)のようなミネラル培地成分、酵母抽出物若しくはダイズに基づく生成物(0〜10g/l)のような複合窒素源を含有する。痕跡量のL−フェニルアラニンおよび微量元素もまた、該株の至適の増殖のため一連の種(seed train)の全段階で培地に添加する。グルコース(若しくはショ糖)のような炭素源は、チロシンの率および力価を最大化するために初期のバッチ炭素源(10〜30g/l)の枯渇に際して醗酵容器に連続的に添加する。炭素源供給速度は、該培養物がグルコースを過剰に蓄積(酢酸のような毒性の副生成物の形成に至り得る)していないことを確実にするために動的に調節する。グルコースのような利用される基質から産生されるチロシンの収量を最大化するため、リン酸(最初にバッチで添加するか若しくは醗酵の経過中に供給するかのいずれかである)の量によりバイオマスの増殖を制限する。醗酵は水酸化アンモニウムおよび硫酸若しくはリン酸いずれかを使用してpH6.8〜7.2に制御する。醗酵槽の温度は32〜35℃に制御し、また、DOは、変数として攪拌(rpm)および空気流(SLPM)を使用するカスケード制御により約10〜25%酸素飽和を維持する。起泡を最小限にするため、消泡剤(いずれかの分類のシリコーンに基づく、有機に基づく、など)を必要に応じて容器に添加する。使用されるとりわけ適する消泡剤はBiospumex153Kである。チロシンの最大産生のため、培養物をOD5508〜10で低濃度のイソプロピル−β−D−チオガラクトピラノシド(IPTG)(0〜1.0mM)で誘導しうる。カナマイシンのような、それに対する抗生物質耐性マーカーが株に存在する抗生物質を、汚染を最小限にするために場合によっては使用しうる。
[実施例]
本発明は以下の実施例でさらに定義される。これらの実施例は、本発明の好ましい態様を示す一方で、具体的説明としてのみ示されることが理解されるべきである。上の論考およびこれらの実施例から、当業者は本発明の本質的特徴を確かめることができ、また、その技術思想および範囲から離れることなく、多様な用途および条件にそれを適応させるために本発明の多様な変更および改変を行い得る。
一般的方法
実施例で使用される標準的組換えDNAおよび分子クローニング技術は当該技術分野で公知であり、かつ、「Maniatis」上記、Enquist 上記;およびAusubel 上記により記述されている。
実施例で使用される標準的な遺伝子形質導入方法は当該技術分野で公知であり、かつ、Miller,J.H.、Experiments in Molecular Genetics、Cold Spring Harbor Laboratory Press、ニューヨーク州コールドスプリングハーバー(1972)により記述されている。
略語の意味は後に続くとおりである。すなわち、「kb」はキロ塩基対(1若しくは複数)を意味し、「bp」は塩基対を意味し、「nt」はヌクレオチド(1若しくは複数)を意味し、「hr」は時間(1若しくは複数)を意味し、「min」は分(1若しくは複数)を意味し、「sec」は秒(1若しくは複数)を意味し、「d」は日(1若しくは複
数)を意味し、「L」はリットル(1若しくは複数)を意味し、「ml」はミリリットル(1若しくは複数)を意味し、「μL」はマイクロリットル(1若しくは複数)を意味し、「μg」はマイクログラム(1若しくは複数)を意味し、「ng」はナノグラム(1若しくは複数)を意味し、「mM」はミリモルを意味し、「μM」はマイクロモルを意味し、「nm」はナノメートル(1若しくは複数)を意味し、「μmol」はマイクロモル(1若しくは複数)を意味し、「pmol」はピコモル(1若しくは複数)を意味し、「ppm」は百万分率を意味し、「vvm」は1分あたり液体容量あたり平均空気容量を意味し、「CFU」はコロニー形成単位(1若しくは複数)を意味し、「NTG」はN−メチル−N’−ニトロ−N−ニトロソグアニジンを意味し、「IPTG」はイソプロピルβ−D−チオガラクトピラノシドを意味し、「フェニルアラニン」若しくは「phe」はL−フェニルアラニンを意味し、そして「チロシン」若しくは「tyr」はL−チロシンを意味している。「TFA」はトリフルオロ酢酸であり、「ACN」はアセトニトリルであり、「KanR」はカナマイシン耐性であり、「Phe」はフェニルアラニン栄養要求性であり、「Cm」はクロラムフェニコールであり、「Kan」はカナマイシンであり、「Tet」はテトラサイクリンであり、「CIP」は仔ウシ腸アルカリホスファターゼである。
培地および培養条件:
細菌培養物の維持および増殖に適する材料および方法は、Experiments in Molecular Genetics(Jeffrey H.Miller)、Cold Spring Harbor Laboratory Press、ニューヨーク州コールドスプリングハーバー(1972);Manual of Methods for General Bacteriology(Phillip Gerhardt,R.G.E.Murray、Ralph N.Costilow、Eugene W.Nester、Willis A.Wood、Noel R.KriegとG.Briggs Phillips編)、pp.210−213、米国微生物学会(American Society for Microbiology)、ワシントンDC(1981);若しくはThomas D.Brock、Biotechnology:A Textbook of Industrial Microbiology、第2版(1989)Sinauer Associates,Inc.、マサチューセッツ州サンダーランド中に見出された。細菌細胞の増殖および維持に使用した全部の試薬および材料は、別の方法で明記されない限り、Aldrich Chemicals(ウィスコンシン州ミルウォーキー)、BD Diagnostic Systems(メリーランド州スパークス)、Invitrogen Corp.(カリフォルニア州カールズバッド)若しくはSigma Chemical Company(ミズーリ州セントルイス)から得た。
LB培地は、以下を培地1リットルあたりグラムで含有する:バクト トリプトン(10)、バクト 酵母エキス(5.0)およびNaCl(10)。
Vogel−Bonner培地は以下を1リットルあたりグラムで含有する:MgSO・7HO(0.2);クエン酸・1HO(2.0)、KHPO(10);およびNaNHHPO・4HO(3.5)。
SOB培地は以下を1リットルあたりグラムで含有する:バクト トリプトン(20)、バクト 酵母エキス(5.0)、およびNaCl(0.5)、250mM KCl(10ml)、pHをNaOHで7.0に調節。
上の培地はオートクレーブ処理したか若しくは濾過滅菌したかのいずれかであった。ビタミンB1(チアミン)を0.0001%でVogel−Bonner培地に添加した。
MgClをSOB培地に添加した(1リットルあたり2M溶液5.0ml)。炭素源ならびに他の栄養素および補給物は実施例で挙げられるとおり添加した。全部の添加物はそれらを培地に添加する前に前滅菌した。
10×MOPSに基づく最少培地はTeknova(カリフォルニア州ハーフムーンベイ)から購入した。MOPS最少培地は、1リットルあたり後に続くとおり作製した:10×MOPS(100ml)、0.132M KHPO(10ml)、20%グルコース(10ml)。他の補給物は実施例で挙げられるとおり添加した。全部の添加物はそれらを培地に添加する前に前滅菌した。
SOC培地はInvitrogen(カリフォルニア州カールズバッド)から得た。
MaloyとNunn(1981、J.Bacteriol.145:1110−1112)により改変されたところのBochner選択プレートは後に続くとおり作製した:
溶液A
バクト トリプトン 5.0g
バクト 酵母エキス 5.0g
クロルテトラサイクリン 50mg(水性12.5mg/mlの4.0ml、暗所4℃
保存)
寒天 15g
O 500ml
溶液B
NaCl 10g
NaHPO・HO 10g
O 500ml
溶液AおよびBは個別に15psiで20分間オートクレーブ処理し、その後混合しかつ注入温度まで冷却した。5.0mlの20mM ZnClおよび6.0mlの2mg/mlフサル酸を、プレートに注ぐ前に添加した。
分子生物学技術:
制限酵素消化、ライゲーション、形質転換、およびアガロースゲル電気泳動の方法は、Maniatisに記述されるとおり実施した。ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)技術はWhite,B.、PCR Protocols:Current Methods and Applications、第15巻(1993)Humana Press Inc.、ニュージャージー州トトワに見出された。
HPLC法
高速液体クロマトグラフィーはAgilent 1100(Agilent Technologies、カリフォルニア州パロアルト)で実施した。ZORBAX SB−C18カラム(Agilent Technologies)を使用した。使用した方法は、11分の停止時間および5分の後時間を伴う1.00ml/minのカラム流速を必要とした。移動相は95%溶媒A(水+0.1%TFA)および5%溶媒B(ACN+0.1%TFA)から構成された。ポンプは最低20barおよび最大400barと定義される圧限界内で運転した。スペクトルは100nmから380nmまで走査し、チロシンのシグナルは225nmおよび3.598分の保持時間で記録した。フェニルアラニンは4.388分の保持時間を伴い、215nmで検出した。
チロシン過剰産生株の構築に有用な大腸菌(E.coli)K12のゲノム領域
本実施例は大腸菌(E.coli)K12染色体中の1領域の、チロシン排出に有益な2特徴との集成を記述する。コリスミ酸ムターゼ/プレフェン酸脱水素をコードするpheAコーディング領域、リーダーペプチドをコードするpheLコーディング領域、ならびにpheLおよびpheAのプロモーターを完全に欠失した。コリスミ酸ムターゼ/プレフェン酸脱水素酵素をコードするtyrA遺伝子の天然のプロモーターを強力なプロモーターで置換した。
tetRA環法(circle method)(図2ないし5に描かれる)を使用して、pheL、pheAおよびそれらの発現を駆動するプロモーターの完全な欠失を行った。所望の欠失に隣接する上流(yfiAの3’端およびプロモーターの上流の遺伝子間領域;Aと呼ばれる)ならびに下流(tyrAの3’端および遺伝子間領域;Bと呼ばれる)の染色体領域のそれぞれに相同な隣接する60ヌクレオチド領域を有する2種の140merのPCRプライマーを設計した(図2Aを参照されたい)。これらの140merプライマーの一方(プライマーABTR;配列番号17)はまた、トランスポゾンTn10からの調節遺伝子をコードするtetR遺伝子に相同な20ヌクレオチド領域を3’端に有した(図2Bを参照されたい)。他方の140merプライマー(プライマーBATA;配列番号18)はまた、テトラサイクリン耐性を賦与するテトラサイクリン流出対向輸送体をコードするtetA遺伝子に相同な20ヌクレオチド領域を3’端に有した(図2Bを参照されたい)。加えてそれぞれABTRおよびBATAプライマーの3’端と同一のtetR(プライマーTR;配列番号19)若しくはtetA(プライマーTA;配列番号20)に相同な領域をもつ20merプライマーを使用した(図2Bを参照されたい)。これらのプライマーはSigma Genosys(テキサス州ウッドランズ)から得た。
これらのプライマーを使用するPCR反応のための鋳型DNAは、tetRおよびtetA遺伝子を保有するいかなる株からも得ることができる。大腸菌(E.coli)DPD2112(zib615::Tn10)若しくはネズミチフス菌(S.typhimurium)TT2385(zii614::Tn10)のような、染色体中のどこかに転位因子Tn10が配置された株を使用することが便宜的である。PCR反応あたり0.5μLの鋳型DNAを、DPD4112若しくはTT2385の単一コロニーを32.5μLの水および7.5μLのDMSOに再懸濁すること、ならびに95℃で10分間加熱することにより調製した。2回のPCR反応(50μL)を実施した。第一のPCR反応には、TT2385からの鋳型DNAとともにプライマーTRおよびBATAを使用した(10pmol/μLの各プライマー3μL)。第二のPCR反応には、DPD4112からの鋳型DNAとともにプライマーTAおよびABTRを使用した(10pmol/μLの各プライマー3μL)。水18.5μLおよびExTaq Premix(TaKaRa Bio Inc.滋賀県大津市)25μLを添加した。PCR反応条件は、94℃/5分+35×(94℃/1分;60℃/2分;72℃/3分)+72℃/15分であった。期待された大きさ(2151bp)の産物が生成され、そしてQiaquick PCR精製キット(Qiagen、カリフォルニア州バレンシア)で精製した。
PCR産物は、後に続くとおり変性しかつ再アニーリングしてtetRA環を形成した。ほぼ等モル量の各PCR産物を合わせ、そしてNaClを150mMの最終濃度まで添加した。これらを100℃に加熱し、その後1時間にわたり以下の条件、100℃/5分、95℃/3分、各サイクル5℃の温度低下で各3分の18の付加的サイクル、4℃/保持を使用して、サーモサイクラーで4℃にゆっくり冷却した。反応を30,000MWカットオフをもつMicroconスピンフィルター(Millipore Corp.、マサチューセッツ州ベッドフォード)を使用して脱塩した。滅菌水を500μLの総容量まで添加した。カラムを微小遠心機で速度12で10分間回転した。水を添加し(500
μL)そしてカラムを再度回転した。最後の回転前に200μLの水を添加した。必要な場合は25μLの水を添加してサンプルを回収した。tetRA環は、完全なtetRおよびtetA遺伝子ならびに所望の欠失に隣接する領域を保有する開放環状分子である(図3を参照されたい)。
脱塩したtetRA環(10μL)を大腸菌(E.coli)K12 MG1655(ATCC#700926)の電気穿孔で使用した。電気穿孔コンピテント細胞は、単一コロニーを接種したマグネシウムを含まないSOB中室温、静止一夜35mL培養物から調製した。培養物を、培養物が赤色フィルターを伴うKlett−Summerson比色計で50の示度に達するまで30℃で振とうしながらインキュベートした。細胞を遠心分離(15分、設定9、4℃、Sorvall RT6000B)によりペレットにし、その後3.0ml氷冷水に再懸濁し、そして微小遠心管に移し、これを微小遠心機で4℃で30秒間回転した。もう4回の氷冷水洗浄後に細胞を150μLの氷冷水に再懸濁し、そして50若しくは60μLを各電気穿孔に使用した。電気穿孔条件は、0.1mmキュベット、25μF、1.85kV、200オームであった。その後、750μLのSOCを添加し、培養物を微小遠心管に移し、そして30℃で4時間若しくは30℃で一夜インキュベートした。電気穿孔した細胞は、15〜20μg/mLのテトラサイクリンを含むLBプレート上にプレーティングし、そして37℃で1〜3日間インキュベートした。コロニーがテトラサイクリン耐性となるためには、tetRおよびtetA遺伝子が大腸菌(E.coli)染色体に組込まれなければならない。これは、図4に示されるとおり、染色体に対するA領域の相同性を使用する相同的組換えにより起こりうる。同様に、組込みは相同なB領域を使用してもまた可能である。
組込まれたtetAおよびtetB遺伝子を保有するテトラサイクリン耐性コロニー(図4を参照されたい)を、15〜20μg/mLテトラサイクリンを含むLBプレート上で精製した。テトラサイクリンを含むLBプレートから選択した単一コロニーから、テトラサイクリンを欠くLBプレートに画線することにより、第二の非選択的精製を行った。フサル酸に耐性であるテトラサイクリン感受性派生物の対選択を、MaloyとNunn(1981、J.Bacteriol.145:1110−1112)により改変されたところのBochner選択プレート上で行った。LBプレートからの単一コロニーをこれらのテトラサイクリン感受性選択プレートに画線し、それらを42℃で2日間インキュベートした。これらのプレートからのテトラサイクリン感受性コロニーをLBプレート上で精製し、そしてその後、フェニルアラニンを含む若しくは含まない最少プレート上での増殖について試験した。
この方法を使用して、テトラサイクリン感受性の単離物(元はテトラサイクリン耐性株からの)の12〜18%が、フェニルアラニンを含まない最少プレート上で増殖しなかった。これらのフェニルアラニン栄養要求性は、tetRおよびtetA遺伝子ならびにpheAおよびpheLコーディング領域、ならびにそれらのプロモーターを除去した組換えにより形成された(図5に具体的に説明されるところのB×B組換え)。この方法の性質により、これらのフェニルアラニン栄養要求株はpheAおよびpheLコーディング領域ならびにそれらのプロモーターの正確な欠失を保有した(ΔpheLA)。保持された1種のこうしたフェニルアラニン栄養要求株をDPD4072と命名した。
2PCRフラグメント組込み法(PCT国際特許出願第WO 2004056973 A2号明細書)を使用して、強力なtrcプロモーターがtyrA遺伝子の発現を駆動しうるように大腸菌(E.coli)K12の染色体中にそれを配置した。この方法は、trcプロモーター(Ptrc)にすぐ隣接して配置される隣接flp部位をもつカナマイシン耐性カセットもまたもたらす。
部位特異的組換え酵素標的配列(FRT)により隣接されるカナマイシンで選択可能なマーカーを含有する第一の直鎖状DNAフラグメント(1581bp)を、鋳型としてプラスミドpKD4(DatsenkoとWanner、PNAS、97:6640−6645(2000))のカナマイシン耐性遺伝子を使用するPCRにより合成した。使用したプライマー対は、大腸菌(E.coli)染色体中のtyrA遺伝子の上流にあるaroF終止コドンの上流領域の配列に一致するよう選ばれた相同性アーム(下線、46bp)、およびカナマイシン耐性遺伝子のプライミング配列(20bp)を含有するT−kan(tyrA)(配列番号21:5’−AATTCATCAGGATCTGAACGGGCAGCTGACGGCTCGCGTGGCTTAACGTCTTGAGCGATTGTGTAG−3’)、ならびに、trcプロモーターDNAフラグメントの5’端領域の配列に一致するよう選ばれた相同性アーム(下線、42bp)、およびカナマイシン耐性遺伝子のプライミング配列(22bp)を含有するB−kan(trc)(配列番号22:5’−AAAACATTATCCAGAACGGGAGTGCGCCTTGAGCGACACGAATATGAATATCCTCCTTAGTTCC−3’)であった。−10および−35コンセンサス配列、lacオペレーター(lacO)、ならびにリボソーム結合部位(rbs)から構成されるtrcプロモーターを含有する第二の直鎖状DNAフラグメント(163bp)は、プライマー対すなわちkanのオープンリーディングフレームの下流領域の配列に一致するよう選ばれた相同性アーム(下線、18bp)、およびtrcプロモーターのプライミング配列(22bp)を含有するT−trc(kan)(配列番号23:5’−CTAAGGAGGATATTCATATTCGTGTCGCTCAAGGCGCACT−3’)、ならびに、tyrA開始コドンの下流領域の配列に一致するよう選ばれた相同性アーム(下線、46bp)、およびtrcプロモーターのプライミング配列(20bp)を含有するB−trc(tyrA)(配列番号24:5’−CGACTTCATCAATTTGATCGCGTAATGCGGTCAATTCAGCAACCATGGTCTGTTTCCTGTGTGAAA−3’)を用い、プラスミドpTrc99A(Invitrogen、カリフォルニア州カールズバッド)からPCRにより合成した。下線を付けた配列は各それぞれの相同性アームを具体的に説明する一方、残部は、該PCR反応の鋳型DNA上の相補ヌクレオチド配列へのハイブリダイゼーションのためのプライミング配列である。後に続くところの標準的PCR条件を使用して、直鎖状DNAフラグメントをMasterAmpTMExtra−Long DNAポリメラーゼ(Epicentre、ウィスコンシン州マディソン)で増幅した:
PCR反応: PCR反応混合物:
段階1 94℃3分 1μLプラスミドDNA
段階2 93℃30秒 25μL 2×PCR緩衝液#1
段階3 55℃1分 1μL 5’−プライマー(20μM)
段階4 72℃3分 1μL 3’−プライマー(20μM)
段階5 段階2へ行く、25サイクル 0.5μL MasterAmpTM DNA
ポリメラーゼ
段階6 72℃5分 21.5μL 滅菌dH
PCR反応を完了した後、PCR産物を、Mini−elute QIAquick Gel Extraction KitTM(QIAGEN Inc.カリフォルニア州バレンシア)を使用して精製した。DNAを最高速度で2回回転することにより10μLの蒸留水で溶離した。PCR DNAサンプルの濃度は約0.5〜1.0μg/μLであった。
λ−Red組換え酵素発現プラスミドを保有する大腸菌(E.coli)MC1061株をPCRフラグメントの組換えのための宿主株として使用した。該株は、λ−Red組換え酵素発現プラスミドpKD46(amp)(DatsenkoとWanner、上記)での大腸菌(E.coli)株MC1061の形質転換により構築した。pDK46
中のλ−Red組換え酵素は、アラビノースで誘導可能なプロモーターの制御下で発現される3種の遺伝子すなわちexo、betおよびgamから構成される。形質転換体を30℃で100μg/mLアンピシリンLBプレートで選択した。pKD46を保有する大腸菌(E.coli)MC1061株のエレクトロコンピテント(electro−competent)細胞は後に続くとおり調製した。pKD46を保有する大腸菌(E.coli)MC1061細胞を、100μg/mLアンピシリンおよび1mM L−アラビノースを含むSOB培地中30℃で0.5のOD600まで増殖させ、次いで氷上で20分間冷却した。細菌細胞を、Sorvall(R)RT7 PLUS(Kendro Laboratory Products、コネチカット州ニュートン)を使用して4,500rpmで4℃で10分間遠心分離した。上清をデカントした後、ペレットを氷冷水に再懸濁しかつ再度遠心分離した。これを2回反復し、そして細胞ペレットを1/100容量の氷冷10%グリセロールに再懸濁した。
カナマイシンマーカーPCR産物(約1.0μg)およびtrcプロモーターPCR産物(約1.0μg)双方を50μLのコンピテント細胞と混合し、そして氷上で予め冷却した電気穿孔キュベット(0.1cm)にピペットで入れた。電気穿孔は、200オームに設定したパルス制御装置を伴う1.8kV、25μFに設定したBio−Rad Gene Pulserを使用することにより実施した。SOC培地(1.0mL)を電気穿孔後に添加した。細胞を37℃で1時間インキュベートした。細胞のおよそ半分を25μg/mLカナマイシンを含有するLBプレートに広げた。プレートを37℃で一夜インキュベートした後に、6個のカナマイシン耐性形質転換体を選択した。tyrA遺伝子の前のカナマイシンで選択可能なマーカーおよびtrcプロモーター双方の染色体組込みをPCR分析により確認にした。形質転換体のコロニーを、23μLのSuperMix(Invitrogen)、1.0μLの5’−プライマーT−ty(テスト)(配列番号25:5’−CAACCGCGCAGTGAAATGAAATACGG−3’)および1.0μLの3’−プライマーB−ty(テスト)(配列番号26:5’−GCGCTCCGGAACATAAATAGGCAGTC−3’)を含有する25μLのPCR反応混合物に再懸濁した。試験プライマーは組込み領域の近傍に位置する領域を増幅するように選んだ。T−ty(テスト)およびB−ty(テスト)プライマー対を用いるPCR分析は、1.0%アガロースゲル上で1,928bpの期待された大きさの産物を示した。Ptrc−tyrA::KanRをもつ結果として生じる組換え体を大腸菌(E.coli)WS158と呼んだ。
P1clr100Cmファージ(J.Miller.Experiments in Molecular Genetics.1972.Cold Spring Harbor Press)を使用する普遍形質導入を使用して、Ptrc−tyrA::KanをΔpheLAと組み合わせた。Ptrc−tyrA::Kanを保有する大腸菌(E.coli)株WS158で増殖させたファージをドナーとして使用し、ΔpheLAをもつ大腸菌(E.coli)株DPD4072がレシピエントであり、そして選択は12.5μg/mLカナマイシンを含むLBプレートでのカナマイシン耐性についてであった。12.5μg/mLで選択された形質導入体は、その後、25μg/mLカナマイシンを含有するプレート上で増殖することが可能であった。Kan形質導入体のコロニーを、フェニルアラニンを含むおよび含まない最少培地での増殖について試験することにより、フェニルアラニン栄養要求性についてスクリーニングした。得られた313個のKanコロニーのうち、4個が増殖にフェニルアラニンを要求した。これら4株でのPtrc−tyrA::Kanの存在をPCR増幅により確認した。従って、pheAおよびtyrAの観察された共形質導入頻度は、隣接遺伝子について期待されたとおり>98%であった。それらのそれぞれがP1clr100Cm溶原菌であったKan、Phe株を保持し、そしてDPD4081、DPD4082、DPD4083およびDPD4084と命名した。これらの新たに構築したΔpheLA Ptrc−tyrA::Kan
二重変異体株をドナーとして使用するその後のP1媒介性の普遍形質導入は、ΔpheLAおよびPtrc−tyrA::Kan双方を送達する>98%の頻度を有すると期待することができる。従って、大部分のKan形質導入体について、pheAはΔpheAに、およびtyrAはPtrc−tyrA::Kanに転換されることができる。
上述された大腸菌(E.coli)K12株DPD4081およびDPD4082は、元はチロシンを排出しない株MG1655由来であり、そしてΔpheLAおよびPtrc−tyrA::Kanを保有する。これらの株を、チロシン栄養要求株AT2471(CGSC #4510)を使用する交差供給試験(cross feeding test)を実施することにより、制限するフェニルアラニンの条件下でのチロシン排出について試験した。従って、DPD4081若しくはDPD4082を、炭素源としてのグルコースおよびビタミンB1を補充したVogel−Bonner最少培地プレートに画線した。非常に近くしかし接せずにAT2471を画線した。30℃で1日間および室温で2日のインキュベーション後に、最も近いDPD4081若しくはDPD4082の画線の部分でのみAT2471の良好な増殖が存在した。これらのプレート上に単独で画線した株AT2471は増殖しなかった。従って、DPD4081若しくはDPD4082により産生されるチロシンがAT2471の増殖を可能にし、そして、これ故に、これらの結果はチロシンがDPD4081およびDPD4082により排出されたことを示した。
チロシンを排出しない大腸菌(E.coli)K12株のチロシン排出株への一段階転換
本実施例は、ΔpheLAおよびPtrc−tyrA::Kan染色体領域を導入する一段階方法を使用する、チロシンを排出しない大腸菌(E.coli)株のチロシン排出株への転換を記述する。
チロシンを排出しない大腸菌(E.coli)K12株W3110(ATCC#27325)を、実施例1で記述されたΔpheLA Ptrc−tyrA::Kanの染色体領域を保有する大腸菌(E.coli)K12株である大腸菌(E.coli)DPD4081のP1clr100Cmライセートを使用する普遍形質導入でレシピエントとして使用した。12若しくは25μg/mlカナマイシンを含有するLBプレートでカナマイシン耐性について選択を行った。フェニルアラニン栄養要求性形質導入体Kanを保持しかつDPD4198と命名した。この株を、2g/Lグルコースおよび10μg/mLフェニルアラニンを含むMPOS緩衝最少培地を使用して、37℃、300rpmで二重の振とうフラスコ中で培養物を増殖させることにより、チロシン産生について試験した。グルコースが枯渇した22時間に、培養物上清中のチロシンおよびフェニルアラニンをHPLCにより測定した。二重の培養物上清のそれぞれは78ppmのチロシンおよび7ppmのフェニルアラニンを有した。従って、かなりの量のチロシンが、W3110から一形質導入段階で派生させた大腸菌(E.coli)株DPD4198により産生されかつ培地中に排出された。
大腸菌(E.coli)K12フェニルアラニン排出株のチロシン排出株への一段階転換
本実施例は、大腸菌(E.coli)K12由来のフェニルアラニン排出株をチロシン排出株に一段階で転換するための、実施例1のΔpheLAおよびPtrc−tyrA::Kan染色体領域の使用を記述する。
2種の以前に記述された(米国特許第4,681,852号明細書)フェニルアラニンを排出する大腸菌(E.coli)K12株すなわちNST37(ATCC#31882)およびNST74(ATCC#31884)をATCCから得た。これらの株を一段階でチロシン排出株に転換した。株NST37およびNST74を、実施例1に記述された
ΔpheLA Ptrc−tyrA::Kan染色体領域を保有する大腸菌(E.coli)K12株である大腸菌(E.coli)DPD4081若しくはDPD4083のP1clr100Cmライセートを使用する普遍形質導入でレシピエントとして使用した。12若しくは25μg/mlカナマイシンを含有するLBプレートでカナマイシン耐性について選択を行った。形質導入体をフェニルアラニン栄養要求性についてスクリーニングした。8種のKan形質導入体の8種はNST37のPheAでもまたあり、Kan、Phe形質導入体を保持しそしてDPD4193と命名した。同様に、NST74のKan、Phe形質導入体を保持しそしてDPD4195と命名した。2g/Lグルコースを含みかつ表1および2に示されるところの他の培地の修正を伴うMPOS緩衝培地での37℃若しくは32℃、300rpmでの数回の振とうフラスコ試験を、親株ならびに転換した株で実施した。培地への補充物は、増殖の改善について試験するための一実験で添加したビタミンB1を除き、株の遺伝子型に従って増殖に必要とされるとおりであった。培養物上清中のチロシンおよびフェニルアラニンを表に示された時点でHPLCにより測定し、そして検出された濃度を表1および2に示す([Phe]ppmおよび[Tyr]ppm)。チロシンは表1の培養物の上清で検出されず、また、低レベルのフェニルアラニンが表2の培養物の上清で検出された。
Figure 2007325592
Figure 2007325592
かように、チロシンは、一形質導入段階で取得されたΔpheLA Ptrc−tyrA::Kan染色体領域を保有する株により明らかに排出された。
K12以外の低レベルのフェニルアラニンを排出する大腸菌(E.coli)株のチロシン排出株への転換
本実施例は、大腸菌(E.coli)K12由来でない、低レベルのフェニルアラニンを排出する大腸菌(E.coli)株を一段階でチロシン排出株に転換するための、実施例1のΔpheLAおよびPtrc−tyrA::Kan染色体領域の使用を記述する。
低レベルのフェニルアラニンを排出するK12以外の大腸菌(E.coli)株(米国
特許第2,973,394号明細書)をATCCから得(ATCC#13281)、そしてDPD1430と改名した。増殖にチロシンを必要とする株DPD4130を、実施例1で記述されたΔpheLA Ptrc−tyrA::Kan染色体領域を保有する大腸菌(E.coli)K12株、大腸菌(E.coli)DPD4083のP1clr100Cmライセートを使用する普遍形質導入でレシピエントとして使用した。選択は25μg/mlカナマイシンを含むLBプレートでであった。大型および非常に小型のコロニーが観察された。大型コロニーのうち2個を精製し、そしてフェニルアラニン栄養要求株であることが示され、増殖にチロシンを必要としなかった。フェニルアラニンを含まないプレート上で画線した場合にこれらの株は増殖しなかった一方、チロシンを含まないプレートで画線した場合、それらは親株と異なり増殖した。DPD4114およびDPD4115と命名したこれら2種の形質導入体は、マッコンキー寒天指標(indicator)プレートを使用してショ糖を醗酵することもまた示され、これは最初の株DPD4130の特徴であるがしかし大腸菌(E.coli)K12株の特徴でない。
株DPD4114およびDPD4115を、チロシン栄養要求株AT2471(CGSC #4510)を使用する交差供給試験を実施することにより、制限するフェニルアラニンの条件下でチロシン排出について試験した。従って、DPD4114およびDPD4115をそれぞれ、炭素源としてグルコースおよびビタミンB1を補充したVogel−Bonner最少培地プレートに画線した。非常に接近して、しかし接せずにAT2471を画線した。32℃で1日間のインキュベーション後に、DPD4114若しくはDPD4115に最も近い画線の一部にのみAT2471の良好な増殖が存在した。チロシンを排出しない大腸菌(E.coli)K12株MG1655は同一条件下でAT2471のいかなる増殖も可能にしなかった。これ故に、これらの結果は、チロシンがDPD4114およびDPD4115により排出されたことを示した。かように、本実施例において、フェニルアラニンを排出しかつチロシンを要求する株が、フェニルアラニンを要求しかつチロシンを排出する株に一段階で転換された。
高レベルのフェニルアラニンを排出する大腸菌(E.coli)株のチロシン排出株への転換
本実施例は、高レベルのフェニルアラニンを排出する大腸菌(E.coli)株をチロシン排出株に一形質導入段階で転換するための実施例1のΔpheLAおよびPtrc−tyrA::Kan染色体領域の使用を記述する。
高レベルのフェニルアラニンを排出する株をいくつかの段階で得た。大腸菌(E.coli)株DPD4139をNTGを使用する突然変異誘発にかけ、次いで3−フルオロチロシンを使用してアナログ耐性について選択した。結果として生じる3−フルオロチロシン耐性株をNTGで突然変異誘発し、そしてアナログ、パラ−フルオロフェニルアラニンに対する耐性について選択した。結果として生じる3−フルオロチロシンおよびパラ−フルオロフェニルアラニン耐性株をNTGで突然変異誘発し、そしてアナログβ−2−チエニルアラニンに対する耐性について選択した。結果として生じる3−フルオロチロシン、パラ−フルオロフェニルアラニンおよびβ−2−チエニルアラニン耐性株をNTGで突然変異誘発し、そしてチロシン栄養要求株(Tyr)を単離した。3−フルオロチロシン、パラ−フルオロフェニルアラニン、β−2−チエニルアラニン耐性かつTyrのチロシン耐性変異体株を選択した。結果として生じるチロシン、3−フルオロチロシン、パラ−フルオロフェニルアラニン、β−2−チエニルアラニンおよびTyr株をファージP1、タイプIファージおよびタイプIIファージに対する耐性について選択し、そしてその後キシロース陰性変異体を単離した。結果として生じる株を、欠失されたアテニュエーター(Nelmsら Appl Environ Microbiol.1992 58(8):2592−8および米国特許第5,120,837号明細書に記述される)を伴
うフィードバック耐性pheA遺伝子をコードするプラスミドpJN307で形質転換した。最後にTyr原栄養株を単離し、そしてその後高フェニルアラニンおよび高温に耐性の株を得、そしてDPD4003と命名した。大腸菌(E.coli)株DPD4003は醗酵でグルコースから>40g/lのフェニルアラニンを産生する。
フェニルアラニン排出株DPD4003はファージP1に耐性であった。従って、新たな遺伝物質を導入するのにP1媒介性の普遍形質導入を使用し得るようにファージP1感受性復帰変異株を単離した。大腸菌(E.coli)DPD4003をP1clr100Cmに感染させ、そしてまれなCmコロニーを単離した。これらの自発的な推定のP1耐性復帰変異株をその後、温度感受性の溶原性ファージを治癒させる(cure)ように42℃で増殖について選択した。DPD4110と命名された、これらの温度抵抗性かつCm感受性単離物の1種が、P1に感受性であることが確認された。この確認は、P1clr100Cmによる感染後のCmコロニーの頻度を試験することにより行った。DPD4003の元の親株であるDPD4130の感染について得られたと類似の数のCmコロニーが、DPD4110の感染について得られた。
大腸菌(E.coli)株DPD4110はカナマイシン耐性遺伝子を保有するプラスミドpJN307を含有する。従って、この小型のプラスミドを欠くDPD4110の派生物を単離した。これは、DPD4110を、致死量以下の濃度(50若しくは75μg/ml)のノボビオシンでLB培地中37℃で22時間処理することにより達成された。これらの培養物からの単一コロニーをカナマイシン感受性について試験し、そして2個のこうした派生物を保持した。Kan株DPD4112およびDPD4113でのプラスミドDNAの喪失が、全DNAのアガロースゲル電気泳動により確認された。
株DPD4112を、実施例1に記述されたΔpheLA Ptrc−tyrA::Kan染色体領域を保有する大腸菌(E.coli)K12株、大腸菌(E.coli)DPD4083のP1clr100Cmライセートを使用する普遍形質導入でレシピエントとして使用した。高濃度のドナーP1ファージ、100μlのファージライセート、および非常に低濃度のカナマイシン(3.0μg/ml)を使用した。25μg/mlのカナマイシンの存在下で増殖することが不可能であった自発的低レベルカナマイシン耐性コロニーがこの手順で発生した。高レベル(25μg/ml)のカナマイシンでその後増殖した1コロニーを得た。この形質導入体は、レシピエントDPD4112へのΔpheLA Ptrc−tyrA::Kan染色体領域の形質導入から生じる株について期待されるとおり、フェニルアラニン栄養要求株でありかつショ糖を醗酵することが示された。この新たな株DPD4118もまた、クロラムフェニコールに対するその耐性およびその温度感受性により示されるとおりP1clr100溶原菌であった。従って42℃での増殖についての選択を行った。2種の結果として生じる株DPD4119およびDPD4120はそれぞれ、クロラムフェニコール感受性でありかつチロシン栄養要求性大腸菌(E.coli)株AT2471の交差供給についてのプレートアッセイでチロシンを排出することが示された。
大腸菌(E.coli)株DPD4119およびDPD4120を振とうフラスコ中でチロシン産生について試験した。これらの実験は、2.0g/Lグルコースおよび10μg/mlフェニルアラニンを含むMOPS緩衝培地を使用して32℃および300rpmで行った。24時間後にグルコースが枯渇し、そして培地中のチロシンおよびフェニルアラニンをHPLCにより測定した。表3は該結果を要約する。
Figure 2007325592
かように、大腸菌(E.coli)DPD4119およびDPD4120はかなりの量のチロシンを排出した。蓄積したプレフェン酸がフェニルピルビン酸に非酵素的に転化され得、それがその後フェニルアラニンにアミノ基転移されることが公知である[Young,I.G.、F.GibsonとC.G.MacDonald(1969)Biochim Biophys Acta 192:62−72]および[Zamir,L.O.、R.TiberioとR.A.Jensen(1983)Tetrahedron Lett 28:2815−2818]ため、pheAの完全な欠失にもかかわらずフェニルアラニンもまた排出されたことは、驚くべきことではない。
チロシンの製造のための株DPD4119の醗酵
本実施例は、醗酵における大腸菌(E.coli)株DPD4119による高レベルのチロシン産生を記述する。株DPD4119をさらなる培養のため10L種醗酵槽(Biostat C)に移す前に、それを2.0L振とうフラスコ中で500mlの培地中35℃、300rpmでおよそ8.0時間増殖させた。振とうフラスコ培地は(1リットルあたりグラムで):KHPO(1.0);NaHPO(3.0);(NHSO(3.0);MgSO・7HO(0.3);酵母抽出物(2.0);MOPS(15.7);L−Phe(0.1);グルコース(15)およびカナマイシン(50mg/l)を含有した。バッチ種醗酵槽培地は(1リットルあたりグラムで):KHPO(2.1);NaHPO(0.9);(NHSO(0.5);チアミン(1.0mg/l);L−Phe(0.2)および消泡剤(Biospumex153K)1.0ml/lを含有した。滅菌後、グルコースを20g/lの最終濃度まで、酵母抽出物を1.0g/lで、カナマイシンを50mg/lで、16mlの微量元素、およびMgSO・7HOを2mMで添加した。温度およびpHは、醗酵の全持続期間中それぞれ35℃および6.8で維持した。細胞密度がOD55023に達した場合に、種醗酵槽からの培養物のアリコート(0.5l)を、種醗酵槽と類似の培地組成を含有した別の10L生産醗酵槽(Biostat C)に移した。生産醗酵槽の醗酵パラメータは後に続くとおりであった:10%の溶解酸素、空気流0.5〜1vvmの間、温度35℃、およびpH6.8。グルコース(60%)を、醗酵槽中の残余のグルコースレベルが0.5g/lより下で維持されたような流加段階中に供給した。消泡剤Biospumex153Kを必要に基づき添加した。チロシンの産生を最大化するため、培養物をOD5509.0で1.0mM IPTGで誘導し、そして16mlの1.0M MgSO・7HOをこの時点で容器に添加した。サンプルを醗酵槽から定期的に抜き出し、そしてチロシン、L−フェニルアラニンおよびバイオマスについて分析した。結果を表4に示す。
Figure 2007325592
チロシンの産生についての上に報告された醗酵プロトコルは一例として示す。当業者は、チロシンの率および力価をさらに至適化するように従来技術に基づき本プロトコルの改変を容易に生成し得る。一例としての1つのこうした改変は、培地の成分および組成に対する変更、または流加様式の稼働中のグルコース供給プロファイルおよび/若しくは戦略に対する変更を包含し得る。
かように、高レベルフェニルアラニン産生株由来でありかつ実施例1に記述されたΔpheLA Ptrc−tyrA::Kan染色体領域を保有する大腸菌(E.coli)株DPD4119は、醗酵で45g/l以上のチロシンを産生した。
IPTGの要件を未然に防ぐためのlacリプレッサーをコードするlacIの欠失
本実施例は、ΔpheLA Ptrc−tyrA染色体領域に加えて、trcプロモーターからのtyrAの発現がIPTGの非存在下で抑制されないようなLacリプレッサーをコードするlacIの欠失もまた保有する、改良されたチロシン排出株を記述する。
大腸菌(E.coli)株DPD4119は、それが大腸菌(E.coli)K12制限系と異なる能動的DNA制限系を有するためにさらなる遺伝子操作に最適でない。従って、DPD4119の先行株である株DPD4112(実施例5)を、λKAN2(Eco RI部位にクローン化した温度感受性リプレッサーおよびKan遺伝子をコードするcl857をもつλ挿入ベクターλ NM459である)を使用する低下DNA制限活性の選択にかけた。DPD4112の多数のKanおよび温度感受性変異体をλKAN2での溶原化および選択後に得た。低下された制限の確認は、λ507(異なる免疫性(imm21)をもつ透明なcl testファージ)に対する交差画線により行った。制限欠損単離物は、ファージの増殖およびその後細胞溶解を可能にしかつ交差画線の領域の細菌増殖を低下させたものであった。42℃での増殖によるプロファージの除去後に、2種のKan株を保持し、そしてDPD6006およびDPD6007として保存した。これらの株のλ507testファージとの比較滴定で、株DPD6007は下の表5で見られるとおり、制限活性の最大の低下を有した。
Figure 2007325592
大腸菌(E.coli)株DPD6007(DPD4119の先行体由来の制限欠損株)を使用して、制限欠損を除きDPD4119に同等である株を構築した。従って、DPD6007は、大腸菌(E.coli)DPD4083(ΔpheLA Ptrc−tyrA::Kan染色体領域を保有するK12株)のP1clr100Cmライセートを使用するP1形質導入でレシピエント株であった。選択プレート中のカナマイシンの多様な濃度および多様な濃度のファージを使用して、カナマイシン耐性について選択を行った。25μg/mlカナマイシンで増殖することが可能な合計15超の形質導入体を、30℃での2日のインキュベーション後に得た。P1clr100Cmの溶原菌が同時に形成されていたかどうか知るために、これらのうち15種を試験した。7種のKan株は温度抵抗性かつクロラムフェニルコールに感受性であり、それらがP1clr100Cmを保有していなかったことを示した。非溶原性株の全7種は、カナマイシン耐性とのpheLA欠失の共形質導入を示すフェニルアラニン栄養要求株であった。これらの株の3種すなわちDPD4127、DPD4128およびDPD4129を保存し、そしてチロシン産生について振とうフラスコで試験した。この振とうフラスコ比較のため、炭素源として2g/Lグルコースを使用しかつ15μg/mlフェニルアラニンの初期濃度を補充したMOPS培地中で該株を増殖させた。32℃での24時間(この時点でグルコースは枯渇された)のインキュベーション後にチロシンおよびフェニルアラニンの濃度をHPLCにより測定した。非常に類似のチロシン産生が試験した全部の株について観察され(下の表6を参照されたい)、制限欠損が期待されたとおりチロシン産生経路を妨害しなかったことを示した。
Figure 2007325592
上の株中のカナマイシン耐性カセットはfrt部位により隣接され、そして従ってFlp組換え酵素(Datsenko、上記)を使用して除去し得る。染色体中にFRT瘢痕(scar)を残すこの手順を、プラスミドpCP20(Datsenko、上記)を使用して株DPD4128で行い、株DPD7001を生成した。チロシン産生に対する不利な影響はこの変化により期待されない。これを、32℃でのインキュベーションを伴い、2g/Lグルコースおよび10μg/mlフェニルアラニンを含むMOPS培地を使用して振とうフラスコで試験した。DPD4119およびDPD7001の生物学的複製物を試験し、また、22時間サンプルの技術的複製物を採取し、従って各株について4測定値をもたらした。これらの測定値の平均および標準偏差を下の表7に示す。
Figure 2007325592
期待されたとおり、株DPD4119およびDPD7001は非常に類似のチロシン産生を有する。
チロシン産生株DPD4119およびDPD7001でコリスミ酸ムターゼおよびプレフェン酸脱水素酵素活性をコードするtyrAの発現は染色体のtrcプロモーターから駆動される。従って、LacIリプレッサーはtyrA発現を低下させかつ結果としてチロシン産生を制限することができ、そして従ってIPTGをDPD4119での醗酵に慣例に添加した。tyrAの誘導可能な発現はこれらの株で必要でなかったことが期待された。事実、連続的な高tyrA発現は有益であることができ、その結果、tyrAレベルが制限する場合に発生する障害の後で中間体が蓄積しない。従って、IPTGに対する必要性を排除するため、およびより高レベルのtyrA発現を与えるため、株DPD7001の染色体lacI遺伝子を欠失した。
温度感受性sacBプラスミドpTsCSE7.3(米国特許第6,673,567号明細書)を使用して、LacリプレッサーをコードするlacI遺伝子およびlacZYAオペロンの欠失を構築した。lacIZYA領域に隣接する1.0kbの領域の増幅のため、大腸菌(E.coli)K12ゲノム配列を使用してPCRプライマーを設計した(Lac_1プライマー、配列番号27;Lac_2プライマー、配列番号28;Lac_3プライマー、配列番号29;Lac_4プライマー、配列番号30)。
lacIZYA領域に遠位のプライマーのそれぞれはpTsCSE7.3へのクローニングのためのEagI部位を含有した。加えて、lacオペロンに近位のプライマーのそれぞれは、第二のPCR反応で使用される相補的な33bpの領域を含有した。プライマーLac_1およびLac_2を使用して、大腸菌(E.coli)K12株MG1655からの鋳型DNAを用いて1kbのPCR産物を生成させた。同様に、プライマーLac_3およびLac_4を使用して、大腸菌(E.coli)K12株MG1655からの鋳型DNAを用いて1kbのPCR産物を生成させた。これら2種のPCR反応の産物を、Lac_1およびLac_4プライマーを用いる交差PCR反応で鋳型として使用して、lacIZYA欠失を伴う2kbの領域を生成させた。ゲル精製およびEagI消化後に、交差PCR産物を、EagI消化しかつCIP処理したpTsCSE7.3に成功裏にクローン化した。
電気穿孔法を使用して、4種の独立なlacIZYA欠失プラスミドでDPD7001を形質転換した。25μg/mlクロラムフェニコールを含有するLBプレート上42℃で、DPD4119若しくはDPD7001の温度抵抗性のCm派生物についての選択を実施した。DPD7001中の1種の組込まれたプラスミドを単離した。
組込まれた欠失プラスミドを保有するDPD7001のこの派生物を、42℃で5%ショ糖を保有するLBプレートを使用するショ糖対選択にかけた。この選択は、DPD7001がショ糖を炭素源として利用し得るという事実にもかかわらず良好にはたらいた。期
待されたとおり、LacおよびLac双方の株がショ糖耐性選択から得られた(図6を参照されたい)。Lac株に至るプラスミドの切り出しは元の染色体構造を復帰させる。Lac株をもたらす交差事象はlacIZYAの欠失を生じ、そして、元は欠失プラスミドを構築するのに使用した33塩基対セグメント、5’−GTTATAAATTTGGAGTGTGAAGGTTATTGCGTG−3’を後に残す(図6を参照されたい)。
DPD7001中に組込まれたプラスミドを保有する株からのLacおよびLac双方の派生物が、LBプレート上に単一コロニーについて画線した場合に、親のような小型の、および中程度の大きさのコロニーを生じたことが観察された。従って、LBプレートでの5回の単一コロニー精製を実施し、そして「小型コロニー」もしくは「中型コロニー」の形態を保持した。2kbのlacオペロンに隣接する領域の外側のプライマーを使用するPCR試験は、「小型コロニー」および「中型コロニー」双方の株でのlacオペロンの欠失を確認した。
数種の単離物を、2g/lグルコースおよび最初の10μg/mlフェニルアラニンを含むMOPS緩衝培地を使用し、振とうフラスコ中でチロシンおよびフェニルアラニン産生について二重で試験した(下の表8を参照されたい)。
Figure 2007325592
2種の「小型コロニー」Lac株DPD4145およびDPD4146は、親株DPD7001より約25%より多いチロシンおよび25%より少ないフェニルアラニンを有した。従って、LacIリプレッサーの遺伝子の欠失は、trcプロモーターからのtyrAのより高レベル発現を明らかに可能にする。これ故に、TyrAタンパク質により触媒されるコリスミ酸→プレフェン酸→フェニルピルビン酸の段階での障害が部分的に軽減され、そしてより多量のチロシンが排出される。
チロシンの産生のための株DPD4145の醗酵
その構築が実施例7に記述される株DPD4145を、10L醗酵でグルコースからのチロシンの産生について評価した。使用した醗酵プロトコルおよび培地は、以下の顕著な差違を除き、実施例6に記述されたものに類似であった。DPD4119と異なり、DPD4145を使用する醗酵はIPTGで誘導せず、そして抗生物質をプロトコル全体で使用しなかった。チロシン力価の有意の増大が表9に示されるとおり達成された。さらに、IPTG若しくは抗生物質への依存の欠如が、この株を経済的スケールアップに従いやす
くする。
Figure 2007325592
芳香族アミノ酸生合成経路の具体的説明である。 A)プライマー相同性領域(AおよびB)を伴う、大腸菌(E.coli)染色体のpheA−tyrA領域中およびその周囲のコーディング領域、ならびに欠失の標的とされる領域(Δ)の図解を示す。B)PCR鋳型tetAおよびtetR遺伝子領域、ならびにTetRA環形成のためのDNAフラグメントを生じさせるための2種のPCR反応で使用されるプライマーの図解を示す。 図2Bに示されるプライマーからのPCR産物のTetRA環の形成の図解を示す。 TetRA環と大腸菌(E.coli)染色体の間の組換え反応、および生じる染色体組込み産物の図解を示す。 pheLA領域に組込まれたTetRA環を保有する株についてのテトラサイクリン感受性対選択の2種の可能な結果の図解を示す。 lacIZYA領域中に組込まれたsacBプラスミドを保有する株についてのショ糖耐性選択の2種の可能な結果を示す。

Claims (23)

  1. a)i)内因性pheA−tyrA染色体領域;および
    ii)コリスミ酸を産生する芳香族アミノ酸生合成経路
    を含んでなる腸内細菌株を提供すること;
    b)段階(a)の株の染色体に、
    1)tyrAをコードする1個のオープンリーディングフレームに作動可能に連結されたプロモーターを含んでなる核酸フラグメント;および
    2)非機能的pheA核酸配列
    を含んでなる工作された染色体セグメントを挿入することを含んでなり、かつ、
    該工作された染色体セグメントが、宿主染色体の内因性pheA−tyrA領域を置換して、L−チロシン過剰産生株を創製するものである、
    チロシンを過剰産生する細菌株の作製方法。
  2. 腸内細菌株が大腸菌(E.coli)株である、請求項1に記載の方法。
  3. 大腸菌(E.coli)株が、ATCC #700926、ATCC#27325、ATCC#31882、ATCC#31884およびATCC#13281よりなる群から選択される、請求項2に記載の方法。
  4. 芳香族アミノ酸生合成経路が、aroF、aroG、aroH、aroB、aroD、aroE、aroL、aroK、aroA、aroC、tyrA、pheAおよびtyrBよりなる群から選択される遺伝子を含んでなる、請求項1に記載の方法。
  5. 工作された染色体セグメントが場合によっては選択マーカーを含んでなる、請求項1に記載の方法。
  6. 非機能的pheA核酸配列が、pheAコーディング領域の少なくとも一部分の欠失を含んでなる核酸フラグメントである、請求項1に記載の方法。
  7. tyrAをコードするオープンリーディングフレームが、配列番号7、8、9、13、14、15および16よりなる群から選択される核酸配列を有する、請求項1に記載の方法。
  8. 請求項1に記載の方法であって、前記腸内細菌株が、
    a)フィードバック耐性DAHP合成酵素;および
    b)非機能的tyrR
    よりなる群から選択される遺伝形質を含んでいてもよい、上記方法。
  9. フィードバック耐性DAHP合成酵素がaroG397突然変異を有する、請求項8に記載の方法。
  10. 非機能的tyrRがtyrR366突然変異を有する、請求項8に記載の方法。
  11. 腸内細菌株が、以下の表現型形質:
    a)3−フルオロチロシンに対する耐性;および
    b)パラ−フルオロフェニルアラニンに対する耐性;および
    c)β−2−チエニルアラニンに対する耐性;および
    d)チロシンに対する耐性;および
    e)高フェニルアラニンおよび高温に対する耐性
    のすべてを含んでなる、請求項1に記載の方法。
  12. 請求項1に記載の方法であって、前記プロモーターが、lac、ara、tet、trp、λ P、λ P、T7、tac、trc、malE、T3、T4、T5、rrnB、lpp、phoA、proU、cst−1、cadA、nar、cspA、gyrA、バチルス属(Bacillus)スピーシーズのnprM、およびストレプトミセス属(Streptomyves)スピーシーズのグルコース異性化酵素よりなる群から選択される、上記方法。
  13. 請求項1、4、8若しくは11のいずれか1つに記載の方法により作製される、チロシンを過剰産生する腸内細菌株。
  14. 以下の特徴:
    a)aroF、aroG、aroH、aroB、aroD、aroE、aroL、aroK、aroA、aroC、tyrA、pheAおよびtyrBよりなる群から選択される遺伝子を含んでなる、芳香族アミノ酸生合成経路の存在
    b)非機能的pheA遺伝子
    c)lac、ara、tet、trp、λ P、λ P、T7、tac、trc、malE、T3、T4、T5、rrnB、lpp、phoA、proU、cst−1、cadA、nar、cspA、gyrA、バチルス属(Bacillus)スピーシーズのnprM、およびストレプトミセス属(Streptomyces)スピーシーズのグルコース異性化酵素よりなる群から選択されるプロモーターの制御下のその内因性のゲノム位置のtyrA遺伝子の過剰発現;
    d)3−フルオロチロシンに対する耐性;
    e)パラ−フルオロフェニルアラニンに対する耐性;
    f)β−2−チエニルアラニンに対する耐性;
    g)チロシンに対する耐性;ならびに
    h)高フェニルアラニンおよび高温に対する耐性
    を含んでなる、チロシンを過剰産生する腸内細菌株。
  15. a)フィードバック耐性DAHP合成酵素;および
    b)非機能的tyrR
    よりなる群から選択される遺伝形質をコードする遺伝子を含んでなる、請求項14に記載のチロシン過剰産生株。
  16. フィードバック耐性DAHP合成酵素と関連する遺伝形質をコードする遺伝子がaroG397突然変異を有する、請求項15に記載のチロシン過剰産生株。
  17. 非機能的tyrRと関連する遺伝形質をコードする遺伝子がtyrR366突然変異を有する、請求項15に記載のチロシン過剰産生株。
  18. a)請求項13に記載のチロシンを過剰産生する腸内細菌株を提供すること;および
    b)L−チロシンが産生される条件下で前記チロシン過剰産生株を増殖させること
    を含んでなる、L−チロシンの製造方法。
  19. a)請求項14に記載のチロシンを過剰産生する腸内細菌株を提供すること;および
    b)L−チロシンが産生される条件下で前記チロシン過剰産生株を増殖させること
    を含んでなる、L−チロシンの製造方法。
  20. tyrA遺伝子がlacに調節されるプロモーターの制御下にあり、かつ、腸内細菌株
    がlacIZYA欠失を含んでなる、請求項18に記載の方法。
  21. L−チロシンが最低約26g/Lの濃度で産生される、請求項18、19若しくは20に記載の方法。
  22. L−チロシンが最低約54g/Lの濃度で産生される、請求項18、19若しくは20に記載の方法。
  23. L−チロシンが最低約75g/Lの濃度で産生される、請求項18、19若しくは20に記載の方法。
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