JP2007323053A - 顎歯模型用歯髄付き歯牙及びその製造方法とその応用 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】治療練習用又は顎歯模型用のデンチン部分およびエナメル部分、歯髄部分を有する歯牙であって、デンチン部分およびエナメル部分が無機粉末焼成体であり、歯髄部分が歯牙の中央部分にワックス、水溶性材料、樹脂またはシリコンゴム、の内何れか1つ以上から構成していることを特徴とする。
【選択図】なし
Description
しかし、エポキシ樹脂、メラミン樹脂では切削感が異なることから支台歯形成や窩洞形成の練習をしても実際の口腔内での作業をした場合では異なる切削感、作業性から当惑する事が多かった。具体的には、エポキシ樹脂、メラミン樹脂は軟らかく切削を多くしてしまう傾向にあり、天然歯は硬いために思った様に切削できない傾向にあった。硬い天然歯でも、デンチン部分は硬いが、エナメル部分は更に硬い構造となっている。その結果、強く削ってしまい、上手く形体を作れないことも発生する可能性がある。
特に、歯神経や髄の治療などでは従来の歯牙では十分な学習ができない。象牙質から髄まで切削し、抜髄する治療の練習などは十分にできなかった。更に、リーマを用いて、抜髄の練習なども十分に行えなかった。
しかし、天然歯と切削感が異なることから支台歯形成や窩洞形成の練習をしても実際の口腔内での作業をした場合では異なる切削感、作業性から当惑する事が多かった。また、無機物粉末体の開示のみである。特に天然歯独特の粘り気を有する歯牙を求める要望があり、また、エナメル部分とデンチン部分の切削性の違いを示せる歯牙模型ではなかった。
特開平5−216395には、天然歯と極めて類似した切削性を有し、歯科教育切削実習用として好適な歯牙模型及びその製造方法を提供することが紹介されている。歯牙模型の主要構成成分として、気孔率が40〜80%のヒドロキシアパタイト粉末と、(メタ)アクリル酸エステル系樹脂とを、重量比で20%対80%乃至50%対50%の割合で含有しているものである。
従来の歯牙模型は、切削性において満足できる状況にない。従って、天然歯と切削性において類似する歯牙模型の開発が望まれていることが示されているものの、十分な切削感を示すものではなかった。特に天然歯独特の粘り気を有する歯牙を求める要望があり、また、エナメル部分とデンチン部分の切削性の違いを示せる歯牙模型ではなかった。
本文中に「歯牙模型の作製法及び経済的な観点から如何なる硬度の素材、例えば金属、セラミクス、樹脂で形成されていてもよく、更には空洞であってもよい。」との記載があるが、切削感の観点から解決されていない。特に天然歯独特の粘り気を有する歯牙を求める要望があり、また、エナメル部分とデンチン部分の切削性の違いを示せる歯牙模型ではなかった。
特開平5−241498、特開平5−241499、特開平5−241500には、無機充填材の記載やハイドロキシアパタイト充填材の記載があるがいずれも樹脂を母材とするものであり、切削感の解決には至っていない。特に天然歯独特の粘り気を有する歯牙を求める要望があり、また、エナメル部分とデンチン部分の切削性の違いを示せる歯牙模型ではなかった。
明細書中には、「本発明の模型歯の歯冠部表面を構成する材料としては、一般的に公知のものを用いることが可能であり、例えば、セラミックス等の磁器あるいはアクリル、ポリスチレン、ポリカーボネート、アクリロニトリルスチレンブタジエン共重合体(ABS)、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリエステル等の熱可塑性樹脂材料や、メラミン、ユリア、不飽和ポリエステル、フェノール、エポキシ等の熱硬化性樹脂材料、さらには、これらの主原料にガラス繊維、カーボン繊維、パルプ、合成樹脂繊維等の有機、無機の各種強化繊維、タルク、シリカ、マイカ、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、アルミナ等の各種充填材、顔料や染料等の着色剤、あるいは耐候剤や帯電防止剤等の各種添加剤を添加したものを用いることが出来る。」との記載があるが、好ましい材質の記載がなく、切削感を解決するものでは無かった。
天然歯牙独特の粘り気を有する歯牙のエナメル部分とデンチン部分は開発されておらず、切削性の違いを示せる歯牙模型ではなかった。更にこの切削感を実現する為の具体的な組成としての開示がなく、それらの製造方法についても記載されていない。
顎歯模型はこれらの課題を抱えているにも関わらず、研究報告されているものは見当たらない。
研究の結果、天然歯牙の切削感を出す為には無機系の焼成体を用いることが必要であり、それだけでは十分な切削感が得られない為に新たな工夫が必要であった。天然歯独特の粘り気を有する歯牙を求める要望があった。
歯牙の治療で髄に関わる治療をすることは重要であるが、露髄、抜髄、根管充填などの治療行為の練習を容易に実施できる歯牙も無く、窩洞形成から髄の治療まで、天然歯牙同然に治療の練習をすることが求められている。
本発明は、CIM技術を用いて射出成形し、脱脂、焼成の工程を経てデンチン部分およびエナメル部分を成形し、接着剤を用いてデンチン部分およびエナメル部分を接着させることを特徴とする顎歯模型用歯牙である。
抜去歯は生体からの材料であり衛生上の問題があるため、感染予防等の処置を取らなくても安全に用いることができ、抜去歯の様な体感ができる歯牙が求められていた。また、衛生管理も特に必要なく、腐敗の恐れもない材料が求められていた。
天然歯牙の齲蝕が進むにつれて、治療方法もエナメル層、デンチン層、髄へと進んでいく。抜髄等の根管治療の実習も重要な治療である。これらの体験を容易に行える顎歯用模型が望まれている。特に根管清掃時に、デンチン層まで完全に髄が取り除かれているか、手の感覚で覚えるものであり、初級者には難しい。しかし、本歯牙を用いて練習することにより、容易に根管治療の体験をすることができる。
本顎歯模型用歯牙は人体の中で最も硬い天然歯牙の代用物質で、通常の材料では切削時に軟らかく感じてしまうのに対し、天然歯牙と同様な切削感を得ることができる。口腔内での400000回転/分という高速回転するダイヤモンド研削材(エアータービン使用)を用いた切削と同じような切削体験ができる。
更に、歯牙模型の歯冠の形状も重要であり、支台歯形成や窩洞形成の目標となり隆起部分や窩、咬頭などが正確に表現されていることが重要であり、CIMでの成形が適している。
本発明の歯牙は歯質と同じように白色、アイボリー色、乳白色、半透明色とすることができるため、よりリアルな切削体験をすることができる。好ましくは白色、アイボリー色、乳白色である。
また、本発明は歯牙部分を一体で成形し、歯髄のみをワックス、水溶性材料で作製することができる。歯牙部分がエナメル層、デンチン層と別れていることが好ましい。
本発明の歯牙の組成はセラミックスから作製されることが好ましい。本発明の歯牙の組成は無機粉末焼成体であり、アルミナ系、ジルコニア系、シリカ系、窒化アルミ、窒化ケイ素などのセラミックスまたはガラスから作製される。また、アルミナ系、ジルコニア系で作製されることは好ましい。アルミナ系、ジルコニア系とはアルミナまたはジルコニアが焼成体組成の60%〜100%、好ましくは80%〜100%、更に好ましくは95%〜100%であることである。特にアルミナの組成が50%〜100%、好ましくは70%〜100%、更に好ましくは90%〜100%であることである。歯牙の組成がアルミナ粉末から成形されることが好ましい。
エナメル部分とデンチン部分の硬さの調整には、粒度を荒くする、空隙を多くする、材質を変えるなどの方法、焼成温度を変える、係留時間を変える等々の方法があるが、最も適した方法は、同一組成で粒度を変えることである。
デンチン部分の平均粒子径に対して、エナメル部分の平均粒子径を10倍以上にすることが好ましい。エナメル部分の平均粒子径が0.1〜0.5μmである場合は、デンチン部分の平均粒子径は1.0〜10.0μmに設定することが好ましい。
焼成温度に関しては組成によって異なるが、シリカ等のガラス成分が多い場合は焼成温度が800〜1200℃、アルミナの場合は1200〜1600℃の焼成温度、好ましくは1400〜1550℃の焼成温度となる。
CIM技術を用いて、エナメル部分とデンチン部分とを射出成形し、脱脂、焼成の工程を経て、焼成されたエナメル部分とデンチン部分を熱硬化性樹脂や化学重合性樹脂の接着材を用いて接着することも好ましい。
化学重合性樹脂であることが好ましい。焼成体の粒子の空間部分に樹脂が含浸し容易に硬化できるためである。
)、植物由来のワックス(カルナバ蝋、木蝋、米糠蝋(ライスワックス)、キャンデリラワックス)、 石油由来のワックス(パラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス)、鉱物由来のワックス(モンタンワックス、オゾケライト)、合成ワックス(フィッシャートロプシュワックス、ポリエチレンワックス、油脂系合成ワック(エステル、ケトン類、アミド)、水素化ワックス)などを用いることができる。好ましくは、石油由来のワックスであり、特にパラフィンワックスが好ましい。
本発明の顎歯模型用歯牙のセラミックス焼成体中の歯髄部分の水溶性材料は、多糖類、タンパク系の内少なくとも一つ以上を含むものである。水溶性材料は注水や水を予め含浸させることにより効果を発揮する事ができる。好ましくはたんぱく質である。
水溶性材料として親水性ポリマーも好ましい。例えば、天然由来の半合成のカルボキシメチルセルロース(CMC),メチルセルロース(MC)等のセルロース誘導体から,ポリビニルアルコール(PVA),ポリアクリル酸系ポリマー,ポリアクリルアミド(PAM),ポリエチレンオキシド(PEO)等の合成系の水溶性高分子を利用することができる。。
タンパク系としては約二〇種類の L -α-アミノ酸からなるポリペプチドを主体とする高分子化合物であればよい。組成の上から、アミノ酸だけからなる単純タンパク質と、核酸・リン酸・脂質・糖・金属などを含む複合タンパク質を用いることが好ましい。更に好ましいのはデンプン、ゼラチン、寒天系、コラーゲンとエラスチンである。また更に好ましくはゼラチン、寒天系である。水にどんどん溶けるのでなく、歯髄形状を保つ必要があるからである。
無機材料で作製される歯牙は焼成工程を経る為、焼成時に燃焼材料で空間を儲け、後に髄に適した材料で埋めることで歯牙を完成させる。その為の歯髄形状作製工程である。
歯牙金型中の所定の位置に燃焼性材料歯髄を設置する金型設置工程とは、燃焼性材料歯髄を金型に設置する工程である。事前に成形しておいた燃焼性材料歯髄を金型中に設置しても良いし、連続的にその場で成形した燃焼性材料歯髄を歯牙形状の金型に入れなおしてもどちらでも良い。
無焼成歯牙を焼成して焼成歯牙を得る焼成工程とは、射出工程で得られた無焼成歯牙を焼成する工程である。焼成工程では焼成温度がガラス分が多い場合は800〜1200℃、アルミナの場合は1200〜1600℃の焼成温度、好ましくは1400〜1550℃の焼成温度となる。この時に、燃焼性材料歯髄は燃焼して、空間部分を形成する。
デンチン部分およびエナメル部分を別々に射出することにより、これらを接着する必要があるが、接着剤に用いる樹脂は熱硬化性樹脂や熱可塑性樹脂、化学重合性樹脂の中で、熱硬化性樹脂、化学重合性樹脂が好ましい。
目的の歯の歯髄形状にしたワックスをシリコンゴムにて型を取り、シリコンゴムの中にエポキシ樹脂を流し込み燃焼性材料歯髄を得た。
(歯牙の焼成体作製)
歯牙形体の目的形状を射出成形できる金型を作製した。この金型に燃焼性材料歯髄を設置できるように用に止め部を設けた。歯牙の原料としてのCIM用アルミナペレット(Al2O3が26%、SiO2が44%、平均粒径0.3μm、ステアリン酸30%)1kgを用いて、燃焼性材料歯髄を設置した歯牙形体の金型に、射出成形し射出体を得た。
作製された歯牙部分の形をした射出体を、脱脂、焼成(1300℃、係留時間10分)として焼成体1を得た。
(エナメル部分とデンチン部分の焼成体作製)
歯牙形体のエナメル部分とデンチン部分の目的形状を射出成形できる金型を作製した。この金型に燃焼性材料歯髄を設置できるように用に止め部を設けた。エナメル部分もデンチン部分も成型後、脱脂、焼成により収縮が発生する為、その部分を事前に大きく計算して金型を作製した。材料ごとに金型を調整して実施した。
エナメル部分の原料としてのCIM用アルミナ
ペレット(Al2O3が68%、SiO2が2%、平均粒径0.3μm、ステアリン酸30%)1kgを用いて、歯牙形体の金型に、射出成形し射出体を得た。
作製されたエナメル部分の形をした射出体を、脱脂、焼成(1550℃、係留時間10分)として焼成体2−1を得た。
デンチン部分の原料としてのCIM用アルミナ
ペレット(Al2O3が68%、SiO2が2%、平均粒径5.0μm、ステアリン酸30%)1kgを用いて、燃焼性材料歯髄を設置した歯牙形体の金型に、射出成形し射出体を得た。
作製されたデンチン部分の形をした射出体を、脱脂、焼成(1400℃、係留時間15分)として焼成体2−2を得た。焼成体2−1、2−2は接合し、樹脂性接着剤で接着し、焼成体2とした。
得られた焼成体1、2の歯髄の空間中に以下の各材料を注射器で注入した。
作製された歯牙の切削感を確認した。焼成体はそれぞれ30個作製し試験を行なった。
(試験を行なった樹脂)
ポリビニルアルコール:ポリビニルアルコールを充填し乾燥した。72時間放置後、ダイヤモンドバーで切削感を確認した。
ウレタンゴム硬度30:化学重合触媒を添加したウレタンゴムを用いた。72時間放置後、ダイヤモンドバーで切削感を確認した。
シリコンゴム(RTVシリコンゴム樹脂 M8017:旭化成):触媒を添加したシリコンゴム樹脂を用いた。72時間放置後、ダイヤモンドバーで切削感を確認した。
比較例:比較例としてエナメルデンチン部分をエポキシで作製したもの(比較例1〜3)と、メラミン樹脂で作製したもの(比較例4〜6)を作製し、歯髄部分に実施例と同じ樹脂を注入した。
実施例1〜6及び比較例1〜6のサンプルを10人の歯科医に以下の試験項目の評価を依頼した。各サンプルは3本ずつ、切削してもらった。以下の表には最も多かった評価結果を示している。
露髄感覚とは、歯髄治療の為に咬合面からエナメル層、デンチン層と削っていき、髄の部分に達した時の切削感覚を評価して貰った。
根管清掃とは、根管にリーマという細い切削工具を入れ、根管内の髄をかき出し清掃する、清掃性の評価結果を示している。
根管拡大とは、清掃された根管内を根管充填材を充填し易いように、根管内を拡張する、拡張性の評価結果を示している。
○:デンチンと髄の切削感が異なり十分に表現できていなかったが、練習には十分に耐えれるものであった。
△:デンチンと髄との界面の切削感覚が異なり、天然歯と異なるものであった。
×:歯牙の切削感が全く異なり、露髄時の粘りが感じられず、根管清掃、根管拡大時も感覚が異なった。
実施例2、3、5、6は実施例1、4に比べても、良好な露髄体験ができ、根管清掃や根管拡大などの根管治療の体験を十分に感じることができた。髄とデンチンとの界面の感覚が似ていた。根管清掃時の髄の取り出す感覚も近似していた。
比較例1、3はエポキシやメラミン樹脂のデンチンとポリビニルアルコール、ウレタンゴム、シリコンゴム等の界面状態が異なり、天然歯と近似の切削感を再現することができなかった。露髄感覚は、露髄する時の感覚が大きく異なっていた。根管清掃ではエポキシやメラミン樹脂と摺れる為、天然歯牙とは異なるものであった。根管拡大は、デンチンを削り拡大する感覚が、大きく異なった。
Claims (5)
- 治療練習用の顎歯模型用のデンチン部分およびエナメル部分、歯髄部分を有する歯牙であって、デンチン部分およびエナメル部分が無機粉末焼成体であり、
歯髄部分が歯牙の中央部分にワックス、水溶性材料、樹脂またはシリコンゴム、の内何れか1つ以上から構成していることを特徴とする顎歯模型用歯牙。 - 治療練習用の顎歯模型用の歯牙であって、
燃焼性材料を用いて歯髄形状に成形した燃焼性材料歯髄を成形する焼成性歯髄作製工程と、
歯牙金型中の所定の位置に燃焼性材料歯髄を設置する金型設置工程、
無機粉末とバインダーを歯牙金型中に射出し無焼成歯牙を得る射出工程、
無焼成歯牙を焼成して焼成歯牙を得る焼成工程、
焼成された歯髄に、樹脂、シリコンゴム、ワックス、水溶性材料にて満たす歯髄作製工程を経ることを特徴とする顎歯模型用歯牙。 - 請求項2記載の射出工程において、デンチン部分およびエナメル部分を射出成型することを特徴とする顎歯模型用歯牙。
- 治療練習用の顎歯模型用の歯牙製造方法であって、
燃焼性材料を用いて歯髄形状に成形した燃焼性材料歯髄を成形する焼成性歯髄作製工程と、
歯牙金型中の所定の位置に燃焼性材料歯髄を設置する金型設置工程、
無機粉末とバインダーを歯牙金型中に射出し無焼成歯牙を得る射出工程、
無焼成歯牙を焼成して焼成歯牙を得る焼成工程、
焼成された歯髄に、樹脂、シリコンゴム、ワックス、水溶性材料にて満たす歯髄作製工程を経ることに特徴のある顎歯模型用歯牙の製造方法。 - 請求項4記載の射出工程において、デンチン部分およびエナメル部分を射出成型することを特徴とする顎歯模型用歯牙の製造方法。
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