JP2007323053A - 顎歯模型用歯髄付き歯牙及びその製造方法とその応用 - Google Patents

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Abstract

【課題】歯科医師を目指す学生が、口腔内作業を体験し、治療の練習をする顎歯模型用に用いる歯牙である。具体的には支台歯形成、窩洞形成等の形体付与を体験する為に用いる歯牙及びその製造方法を提供する。
【解決手段】治療練習用又は顎歯模型用のデンチン部分およびエナメル部分、歯髄部分を有する歯牙であって、デンチン部分およびエナメル部分が無機粉末焼成体であり、歯髄部分が歯牙の中央部分にワックス、水溶性材料、樹脂またはシリコンゴム、の内何れか1つ以上から構成していることを特徴とする。
【選択図】なし

Description

本発明は、歯科医師を目指す学生が、口腔内作業を体験し、治療の練習をする顎歯模型用に用いる歯牙である。具体的には露髄、抜髄、根管充填などの歯髄に関する治療体験をするための歯牙であり、支台歯形成、窩洞形成等の形体付与を体験する為に用いる歯牙の製造方法に関する。
口腔内治療練習用の顎歯模型用の歯牙は、エポキシ樹脂、メラミン樹脂で製造されることが多く、一般に普及している。
しかし、エポキシ樹脂、メラミン樹脂では切削感が異なることから支台歯形成や窩洞形成の練習をしても実際の口腔内での作業をした場合では異なる切削感、作業性から当惑する事が多かった。具体的には、エポキシ樹脂、メラミン樹脂は軟らかく切削を多くしてしまう傾向にあり、天然歯は硬いために思った様に切削できない傾向にあった。硬い天然歯でも、デンチン部分は硬いが、エナメル部分は更に硬い構造となっている。その結果、強く削ってしまい、上手く形体を作れないことも発生する可能性がある。
もう少し、硬い材料を求められた結果、コンポジットタイプのものが市販されている。コンポジットタイプの歯牙であっても、デンチン部分とエナメル部分が同一の切削感であるから、天然歯と切削感が異なり、支台歯形成や窩洞形成の練習をしても実際の口腔内での作業をした場合では異なる切削感、作業性から当惑する事が多かった。分かりやすい表現では滑る感覚があり、天然歯とは大きく違う切削感である。
特に、歯神経や髄の治療などでは従来の歯牙では十分な学習ができない。象牙質から髄まで切削し、抜髄する治療の練習などは十分にできなかった。更に、リーマを用いて、抜髄の練習なども十分に行えなかった。
実開平1‐90068には、エナメル質層に金雲母結晶[NaMg3(Si3AlO10)F2]およびリチア・アルミナ・シリカ系結晶(Li2O・Al2O3・2SiO2,Li2O・Al2O3・4SiO2)が同時に析出したビッカース硬さ350〜450に制御されたガラス・セラミックスから構成され、歯根層には、ポリオール(主剤)に白色・赤色および黄色の着色剤を加え、さらにイソシアネートプレポリマー(硬化剤)を混入してシリコンゴムゴム母型に真空下で注入して、常温で硬化させ事前に準備をし、エナメル質層と歯根層との間に介在し、両者を合着している象牙質認識層はオペーク色を呈した接着性レジンで形成されていることが示している。
しかしながら、エナメル質層が金雲母結晶やリチア・アルミナ・シリカ系結晶にて構成されたものでは天然歯に比べ、切削感が硬すぎるため使用に耐える物ではなく、更に象牙質認識層は接着性レジンで形成されている為、接着剤の切削感が柔らかすぎる為、使用に耐える物ではなかった。歯髄を構成しているが、象牙質層が接着剤の為、象牙質から歯髄にかけて切削する露髄体験が天然歯と全く異なるものであった。更に、抜髄などを実施する場合においても、歯髄をリーマで取り除き、象牙質壁面とリーマが擦れ合う感覚が全く異なる為に、根管充填などの練習ができなかった。
特開平5−224591には、天然歯と極めて類似した切削性を有し、歯科教育切削実習用として好適な歯牙模型を提供することが示されている。主要構成成分として、無機物粉体と架橋型樹脂とを、重量比で20%対80%乃至70%対30%の割合で含有している。
本発明の歯牙模型を構成する無機物粉体としては、例えば、アルミナ、ジルコニア、チタニア、シリカ、等々が紹介され、上記化合物に限定されるものではなく、各種の無機物粉体を用いることができる。
しかし、天然歯と切削感が異なることから支台歯形成や窩洞形成の練習をしても実際の口腔内での作業をした場合では異なる切削感、作業性から当惑する事が多かった。また、無機物粉末体の開示のみである。特に天然歯独特の粘り気を有する歯牙を求める要望があり、また、エナメル部分とデンチン部分の切削性の違いを示せる歯牙模型ではなかった。
特開平5−216395には、天然歯と極めて類似した切削性を有し、歯科教育切削実習用として好適な歯牙模型及びその製造方法を提供することが紹介されている。歯牙模型の主要構成成分として、気孔率が40〜80%のヒドロキシアパタイト粉末と、(メタ)アクリル酸エステル系樹脂とを、重量比で20%対80%乃至50%対50%の割合で含有しているものである。
従来の歯牙模型は、切削性において満足できる状況にない。従って、天然歯と切削性において類似する歯牙模型の開発が望まれていることが示されているものの、十分な切削感を示すものではなかった。特に天然歯独特の粘り気を有する歯牙を求める要望があり、また、エナメル部分とデンチン部分の切削性の違いを示せる歯牙模型ではなかった。
特開平5−224591には、歯科医学生の歯周疾患治療実習に最適に用いることができる歯牙模型を提供する。構成として歯牙模型は、歯冠部の少なくとも表面がヌープ硬度70以上を有し、歯根部の少なくとも表面がヌープ硬度10〜40を有するものである。
本文中に「歯牙模型の作製法及び経済的な観点から如何なる硬度の素材、例えば金属、セラミクス、樹脂で形成されていてもよく、更には空洞であってもよい。」との記載があるが、切削感の観点から解決されていない。特に天然歯独特の粘り気を有する歯牙を求める要望があり、また、エナメル部分とデンチン部分の切削性の違いを示せる歯牙模型ではなかった。
特開平5−241498、特開平5−241499、特開平5−241500には、無機充填材の記載やハイドロキシアパタイト充填材の記載があるがいずれも樹脂を母材とするものであり、切削感の解決には至っていない。特に天然歯独特の粘り気を有する歯牙を求める要望があり、また、エナメル部分とデンチン部分の切削性の違いを示せる歯牙模型ではなかった。
特開2004−94049には、レーザー光線を利用した正確な形状計測を可能とする歯科実習用模型歯を提供する発明が記載している。
明細書中には、「本発明の模型歯の歯冠部表面を構成する材料としては、一般的に公知のものを用いることが可能であり、例えば、セラミックス等の磁器あるいはアクリル、ポリスチレン、ポリカーボネート、アクリロニトリルスチレンブタジエン共重合体(ABS)、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリエステル等の熱可塑性樹脂材料や、メラミン、ユリア、不飽和ポリエステル、フェノール、エポキシ等の熱硬化性樹脂材料、さらには、これらの主原料にガラス繊維、カーボン繊維、パルプ、合成樹脂繊維等の有機、無機の各種強化繊維、タルク、シリカ、マイカ、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、アルミナ等の各種充填材、顔料や染料等の着色剤、あるいは耐候剤や帯電防止剤等の各種添加剤を添加したものを用いることが出来る。」との記載があるが、好ましい材質の記載がなく、切削感を解決するものでは無かった。
今までの開発では天然歯独特の歯髄を再現する方法は開発されておらず、露髄体験等を歯科学生は体験することができなかった。歯髄の治療として、根管治療練習用のものもあるが、ボックス状のアクリルに小さな穴があいており、それを用いて根管治療の練習(根管清掃、根管拡張など)を行なっている。しかし、顎への装着ができないことや、デンチンの硬さの違い等があり、十分な練習ができていない現状にある。
天然歯牙独特の粘り気を有する歯牙のエナメル部分とデンチン部分は開発されておらず、切削性の違いを示せる歯牙模型ではなかった。更にこの切削感を実現する為の具体的な組成としての開示がなく、それらの製造方法についても記載されていない。
顎歯模型はこれらの課題を抱えているにも関わらず、研究報告されているものは見当たらない。
特開平5−241498 特開平5−241499、 特開平5−241500 特開2004−94049 実開平1‐90068
従来の顎歯模型用歯牙は、天然歯形体をしているものの切削感が異なる。天然歯の切削感を体験するために、抜去歯を切削するなどの工夫は見られた。抜去歯は人体や動物からの材料であり衛生上の問題があり、衛生管理も十分に行なわないと感染の可能性があり、自由に練習を妨げられ感染予防を十分に行なわなければならなかった。また、天然生体であるため腐敗の問題があり、保存にも十分な注意が必要であった。
天然歯牙を用いずに歯牙の切削感を体験する方法が求められれていた。特に天然歯独特の粘り気を有する歯牙を求める要望があり、また、歯牙のエナメル部分からデンチン部分の切削感が変るところが求められており、当然にして、エナメル部分はエナメル質の切削感、デンチン部分はデンチン質の切削感が求められていたが、それを解決する方法は見つかっていなかった。
研究の結果、天然歯牙の切削感を出す為には無機系の焼成体を用いることが必要であり、それだけでは十分な切削感が得られない為に新たな工夫が必要であった。天然歯独特の粘り気を有する歯牙を求める要望があった。
天然歯独特の粘り気の切削感を表現する為には、数々の方法が試されてきたが、樹脂やコンポジット等々では十分な切削感を得ることができなかった。歯牙を切削した折に飛散する切削粉を軽減する方法を求められていた。
歯牙の治療で髄に関わる治療をすることは重要であるが、露髄、抜髄、根管充填などの治療行為の練習を容易に実施できる歯牙も無く、窩洞形成から髄の治療まで、天然歯牙同然に治療の練習をすることが求められている。
本発明は治療練習用の顎歯模型用のデンチン部分およびエナメル部分、歯髄部分を有する歯牙であって、デンチン部分およびエナメル部分が無機粉末焼成体であり、歯髄部分が歯牙の中央部分に樹脂またはシリコンゴム、の内何れか1つ以上から構成していることを特徴とする顎歯模型用歯牙である。
本発明は治療練習用の顎歯模型用のデンチン部分およびエナメル部分、歯髄部分を有する歯牙であって、デンチン部分およびエナメル部分が無機粉末焼成体であり、歯髄部分が歯牙の中央部分にワックス、水溶性材料の内何れか1つ以上から構成していることを特徴とする顎歯模型用歯牙である。
本発明は治療練習用の顎歯模型用の歯牙であって、燃焼性材料を用いて歯髄形状に成形した燃焼性材料歯髄を成形する焼成性歯髄作製工程と、歯牙金型中の所定の位置に燃焼性材料歯髄を設置する金型設置工程、無機粉末とバインダーを歯牙金型中に射出し無焼成歯牙を得る射出工程、無焼成歯牙を焼成して焼成歯牙を得る焼成工程、焼成された歯髄部分に、樹脂、シリコンゴム、ワックス、水溶性材料にて満たす歯髄作製工程を経ることよって得られる顎歯模型用歯牙である。
本発明は、射出工程においてデンチン部分およびエナメル部分を射出することを特徴とする顎歯模型用歯牙である。
本発明は治療練習用の顎歯模型用の歯牙製造方法であって、燃焼性材料を用いて歯髄形状に成形した燃焼性材料歯髄を成形する焼成性歯髄作製工程と、歯牙金型中の所定の位置に燃焼性材料歯髄を設置する金型設置工程、無機粉末とバインダーを歯牙金型中に射出し無焼成歯牙を得る射出工程、無焼成歯牙を焼成して焼成歯牙を得る焼成工程、焼成された歯髄部分に、樹脂、シリコンゴム、ワックス、水溶性材料にて満たす歯髄作製工程を経ることに特徴のある顎歯模型用歯牙の製造方法である。
本発明は射出工程において、デンチン部分およびエナメル部分を射出することを特徴とする顎歯模型用歯牙の製造方法である。
本発明は、CIM技術を用いて射出成形し、脱脂、焼成の工程を経てデンチン部分およびエナメル部分を成形し、接着剤を用いてデンチン部分およびエナメル部分を接着させることを特徴とする顎歯模型用歯牙である。
本発明の方法によれば、デンチン部分、エナメル部分両方とも天然歯と同じ様な切削感を得られ、エナメル部分からデンチン部分へ移行する切削感が天然歯に近いことから、模型であっても天然歯牙を削る練習が容易に行なえる。
抜去歯は生体からの材料であり衛生上の問題があるため、感染予防等の処置を取らなくても安全に用いることができ、抜去歯の様な体感ができる歯牙が求められていた。また、衛生管理も特に必要なく、腐敗の恐れもない材料が求められていた。
本発明の歯牙を用いて支台歯形成、窩洞形成をすることによって、一早く天然歯牙と同様な切削感を体験でき、形成体験が容易に行える。また、これらの形成技術を早く取得することができる。また、最も問題となる治療中の露髄(髄の部分まで削ってしまうこと)を体験でき、明かな失敗でありこと、その後の処置方法などを同時に学ぶことができる。
天然歯牙の齲蝕が進むにつれて、治療方法もエナメル層、デンチン層、髄へと進んでいく。抜髄等の根管治療の実習も重要な治療である。これらの体験を容易に行える顎歯用模型が望まれている。特に根管清掃時に、デンチン層まで完全に髄が取り除かれているか、手の感覚で覚えるものであり、初級者には難しい。しかし、本歯牙を用いて練習することにより、容易に根管治療の体験をすることができる。
本顎歯模型用歯牙は人体の中で最も硬い天然歯牙の代用物質で、通常の材料では切削時に軟らかく感じてしまうのに対し、天然歯牙と同様な切削感を得ることができる。口腔内での400000回転/分という高速回転するダイヤモンド研削材(エアータービン使用)を用いた切削と同じような切削体験ができる。
本発明は顎歯模型用歯牙のデンチン部分が天然歯牙のデンチン部分とよく似た切削感を得ることができる。粉末焼成体のみでは十分な切削感を表現することができなかったが今回の発明で表現することができた。
更に、歯牙模型の歯冠の形状も重要であり、支台歯形成や窩洞形成の目標となり隆起部分や窩、咬頭などが正確に表現されていることが重要であり、CIMでの成形が適している。
本発明の歯牙は歯質と同じように白色、アイボリー色、乳白色、半透明色とすることができるため、よりリアルな切削体験をすることができる。好ましくは白色、アイボリー色、乳白色である。
顎歯模型用歯牙とは、大学などで顎歯模型を用いて口腔内の治療行為をシミュレーションや治療の練習をするために用いられる歯牙であって、本発明は歯牙を切削し、形成する為に用いられる場合に関する。特に天然歯牙と切削性が近似した歯牙であって、窩洞形成、支台歯形成の練習に用いられる歯牙に関する。
本発明は歯牙部分を一体で成形し、歯髄のみを樹脂、シリコンゴムで作製することができる。歯牙部分がエナメル層、デンチン層と別れていることが好ましい。
また、本発明は歯牙部分を一体で成形し、歯髄のみをワックス、水溶性材料で作製することができる。歯牙部分がエナメル層、デンチン層と別れていることが好ましい。
本発明の歯牙の組成はセラミックスから作製されることが好ましい。本発明の歯牙の組成は無機粉末焼成体であり、アルミナ系、ジルコニア系、シリカ系、窒化アルミ、窒化ケイ素などのセラミックスまたはガラスから作製される。また、アルミナ系、ジルコニア系で作製されることは好ましい。アルミナ系、ジルコニア系とはアルミナまたはジルコニアが焼成体組成の60%〜100%、好ましくは80%〜100%、更に好ましくは95%〜100%であることである。特にアルミナの組成が50%〜100%、好ましくは70%〜100%、更に好ましくは90%〜100%であることである。歯牙の組成がアルミナ粉末から成形されることが好ましい。
エナメル部分とデンチン部分の硬さの調整には、粒度を荒くする、空隙を多くする、材質を変えるなどの方法、焼成温度を変える、係留時間を変える等々の方法があるが、最も適した方法は、同一組成で粒度を変えることである。
デンチン部分の平均粒子径に対して、エナメル部分の平均粒子径を10倍以上にすることが好ましい。エナメル部分の平均粒子径が0.1〜0.5μmである場合は、デンチン部分の平均粒子径は1.0〜10.0μmに設定することが好ましい。
焼成温度に関しては組成によって異なるが、シリカ等のガラス成分が多い場合は焼成温度が800〜1200℃、アルミナの場合は1200〜1600℃の焼成温度、好ましくは1400〜1550℃の焼成温度となる。
エナメル部分とデンチン部分の成形はセラミックの成形方法でCIM技術を用いることは好ましい。
CIM技術を用いて、エナメル部分とデンチン部分とを射出成形し、脱脂、焼成の工程を経て、焼成されたエナメル部分とデンチン部分を熱硬化性樹脂や化学重合性樹脂の接着材を用いて接着することも好ましい。
本発明の顎歯模型用歯牙のセラミックス焼成体中の歯髄部分の樹脂は、弾性樹脂、発泡樹脂、熱硬化性樹脂や熱可塑性樹脂、架橋剤を含んだ樹脂の内少なくとも一つ以上が含まれる。好ましくは弾性樹脂、発泡樹脂である。
本発明に用いられる歯髄部分の樹脂は熱硬化性樹脂や熱可塑性樹脂を用いることができる。熱硬化性樹脂または架橋剤を含んだ樹脂が好ましい。更に、エポキシ樹脂が好ましい。熱可塑性樹脂とは、熱を加えることにより成形できる程度の熱可塑性を得ることの出来る樹脂のことを指し、熱硬化性樹脂とは熱を加えることにより架橋が進み硬化する樹脂を指します。具体的にはアクリル系、スチレン系、オレフィン系、塩ビ系、ウレタン系、ポリアミド系、ポリブタジエン系、ポリアセタール系、飽和ポリエステル系、ポリカーボネート、ポリフェニレンエーテル、ゴム、ビニル系、ポリ酢酸ビニルなど適宜使用できる。特に、ウレタンやゴムなどの弾性樹脂、発泡樹脂が好ましい。
熱可塑性樹脂よりも熱硬化性樹脂の方が好ましい。熱硬化性樹脂とは、加工後は溶媒に溶けず再加熱しても軟化しない。尿素樹脂・メラミン樹脂・フェノール樹脂、エポキシ樹脂などが代表的に使用でき、メラミン樹脂及びエポキシ樹脂が好ましい。最も好ましいのはエポキシ樹脂である。
化学重合性樹脂であることが好ましい。焼成体の粒子の空間部分に樹脂が含浸し容易に硬化できるためである。
化学重合性樹脂とは、本来熱硬化性樹脂や熱可塑性樹脂に含まれる樹脂であっても、化学触媒を用いて、重合する樹脂のことである。特に架橋材を含み熱可塑性がないものが好ましい。
本発明の顎歯模型用歯牙のセラミックス焼成体中の歯髄部分のシリコンゴムは、何ら制限無く仕様できる。多にも利用できるゴム材料として、クロロスルホン化ポリエチレンゴム:ハイパロンゴム、フッ素ゴム、イソブテンイソプレンゴム:ブチルゴム、天然ゴム、アクリロニトリルブタジエンゴム:ハイカー、ウレタンゴム、エチレンプロピレンゴム、スチレンブタジエンゴム、クロロプレンゴム:ネオプレン等が例示される。ゴム高度(デュロメータ(JIS K 6253))10〜70、好ましくは20〜50である。
本発明の顎歯模型用歯牙のセラミックス焼成体中の歯髄部分のワックスは、動物由来のワックス(蜜蝋、鯨蝋、セラック蝋、その他
)、植物由来のワックス(カルナバ蝋、木蝋、米糠蝋(ライスワックス)、キャンデリラワックス)、 石油由来のワックス(パラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス)、鉱物由来のワックス(モンタンワックス、オゾケライト)、合成ワックス(フィッシャートロプシュワックス、ポリエチレンワックス、油脂系合成ワック(エステル、ケトン類、アミド)、水素化ワックス)などを用いることができる。好ましくは、石油由来のワックスであり、特にパラフィンワックスが好ましい。
本発明の顎歯模型用歯牙のセラミックス焼成体中の歯髄部分の水溶性材料は、多糖類、タンパク系の内少なくとも一つ以上を含むものである。水溶性材料は注水や水を予め含浸させることにより効果を発揮する事ができる。好ましくはたんぱく質である。
水溶性材料として親水性ポリマーも好ましい。例えば、天然由来の半合成のカルボキシメチルセルロース(CMC),メチルセルロース(MC)等のセルロース誘導体から,ポリビニルアルコール(PVA),ポリアクリル酸系ポリマー,ポリアクリルアミド(PAM),ポリエチレンオキシド(PEO)等の合成系の水溶性高分子を利用することができる。。
多糖類としてはデキストリン、グリコーゲン、セルロース、ペクチン、コンニャクマンナンとグルコマンナン、アルギン酸が好ましい。好ましくはセルロース、ペクチン、コンニャクマンナンとグルコマンナンである。ある程度の粘性が必要であるからである。
タンパク系としては約二〇種類の L -α-アミノ酸からなるポリペプチドを主体とする高分子化合物であればよい。組成の上から、アミノ酸だけからなる単純タンパク質と、核酸・リン酸・脂質・糖・金属などを含む複合タンパク質を用いることが好ましい。更に好ましいのはデンプン、ゼラチン、寒天系、コラーゲンとエラスチンである。また更に好ましくはゼラチン、寒天系である。水にどんどん溶けるのでなく、歯髄形状を保つ必要があるからである。
燃焼性材料とは、歯髄形状に形作れ、歯牙を形成するときの射出圧や温度にて変形せずに、歯牙の焼成時に燃焼して歯髄空間を作り出せるものであれば良い。具体的には樹脂であり、特に好ましくは熱硬化性樹脂である。具体的には尿素樹脂・メラミン樹脂・フェノール樹脂、エポキシ樹脂などや、アクリル系、スチレン系樹脂を架橋して用いても良い。
燃焼性材料を用いて、歯髄形状に成形した燃焼性材料歯髄を成形する焼成性歯髄作製工程とは、歯牙の歯髄形状を形成する為に歯牙の焼成時に、燃焼する材料にて事前に歯髄形状を形成する工程である。
無機材料で作製される歯牙は焼成工程を経る為、焼成時に燃焼材料で空間を儲け、後に髄に適した材料で埋めることで歯牙を完成させる。その為の歯髄形状作製工程である。
歯牙金型中の所定の位置に燃焼性材料歯髄を設置する金型設置工程とは、燃焼性材料歯髄を金型に設置する工程である。事前に成形しておいた燃焼性材料歯髄を金型中に設置しても良いし、連続的にその場で成形した燃焼性材料歯髄を歯牙形状の金型に入れなおしてもどちらでも良い。
無機粉末とバインダーを歯牙金型中に射出し無焼成歯牙を得る射出工程とは、燃焼性材料歯髄を設置した歯牙金型に加熱混合した歯牙組成の無機粉末とバインダーを射出する工程である。本工程では燃焼性材料歯髄が細い為に、注意して射出しなければならない。また、歯牙形状がデンチン層とエナメル層とに別れるときはデンチン層のみを形成することもある。
無焼成歯牙を焼成して焼成歯牙を得る焼成工程とは、射出工程で得られた無焼成歯牙を焼成する工程である。焼成工程では焼成温度がガラス分が多い場合は800〜1200℃、アルミナの場合は1200〜1600℃の焼成温度、好ましくは1400〜1550℃の焼成温度となる。この時に、燃焼性材料歯髄は燃焼して、空間部分を形成する。
焼成された歯髄に、樹脂、シリコンゴム、ワックス、水溶性材料にて満たす歯髄作製工程とは、この焼成された歯髄の空間部分に樹脂、シリコンゴム、ワックス、水溶性材料にて擬似歯髄を設ける工程である。作製方法は、注射器のようなもので充填する方法や、擬似歯髄材料中に包埋し、真空容器に入れ、真空にすることで焼成体の歯髄部分に満たす方法もある。
デンチン部分およびエナメル部分を別々に射出することにより、これらを接着する必要があるが、接着剤に用いる樹脂は熱硬化性樹脂や熱可塑性樹脂、化学重合性樹脂の中で、熱硬化性樹脂、化学重合性樹脂が好ましい。
(燃焼性材料歯髄の作製)
目的の歯の歯髄形状にしたワックスをシリコンゴムにて型を取り、シリコンゴムの中にエポキシ樹脂を流し込み燃焼性材料歯髄を得た。
(歯牙の焼成体作製)
歯牙形体の目的形状を射出成形できる金型を作製した。この金型に燃焼性材料歯髄を設置できるように用に止め部を設けた。歯牙の原料としてのCIM用アルミナペレット(Alが26%、SiOが44%、平均粒径0.3μm、ステアリン酸30%)1kgを用いて、燃焼性材料歯髄を設置した歯牙形体の金型に、射出成形し射出体を得た。
作製された歯牙部分の形をした射出体を、脱脂、焼成(1300℃、係留時間10分)として焼成体1を得た。
(エナメル部分とデンチン部分の焼成体作製)
歯牙形体のエナメル部分とデンチン部分の目的形状を射出成形できる金型を作製した。この金型に燃焼性材料歯髄を設置できるように用に止め部を設けた。エナメル部分もデンチン部分も成型後、脱脂、焼成により収縮が発生する為、その部分を事前に大きく計算して金型を作製した。材料ごとに金型を調整して実施した。
エナメル部分の原料としてのCIM用アルミナ
ペレット(Alが68%、SiOが2%、平均粒径0.3μm、ステアリン酸30%)1kgを用いて、歯牙形体の金型に、射出成形し射出体を得た。
作製されたエナメル部分の形をした射出体を、脱脂、焼成(1550℃、係留時間10分)として焼成体2−1を得た。
デンチン部分の原料としてのCIM用アルミナ
ペレット(Alが68%、SiOが2%、平均粒径5.0μm、ステアリン酸30%)1kgを用いて、燃焼性材料歯髄を設置した歯牙形体の金型に、射出成形し射出体を得た。
作製されたデンチン部分の形をした射出体を、脱脂、焼成(1400℃、係留時間15分)として焼成体2−2を得た。焼成体2−1、2−2は接合し、樹脂性接着剤で接着し、焼成体2とした。
(歯髄材料の注入)
得られた焼成体1、2の歯髄の空間中に以下の各材料を注射器で注入した。
作製された歯牙の切削感を確認した。焼成体はそれぞれ30個作製し試験を行なった。
(試験を行なった樹脂)
ポリビニルアルコール:ポリビニルアルコールを充填し乾燥した。72時間放置後、ダイヤモンドバーで切削感を確認した。
ウレタンゴム硬度30:化学重合触媒を添加したウレタンゴムを用いた。72時間放置後、ダイヤモンドバーで切削感を確認した。
シリコンゴム(RTVシリコンゴム樹脂 M8017:旭化成):触媒を添加したシリコンゴム樹脂を用いた。72時間放置後、ダイヤモンドバーで切削感を確認した。
比較例:比較例としてエナメルデンチン部分をエポキシで作製したもの(比較例1〜3)と、メラミン樹脂で作製したもの(比較例4〜6)を作製し、歯髄部分に実施例と同じ樹脂を注入した。
(試験方法)
実施例1〜6及び比較例1〜6のサンプルを10人の歯科医に以下の試験項目の評価を依頼した。各サンプルは3本ずつ、切削してもらった。以下の表には最も多かった評価結果を示している。
露髄感覚とは、歯髄治療の為に咬合面からエナメル層、デンチン層と削っていき、髄の部分に達した時の切削感覚を評価して貰った。
根管清掃とは、根管にリーマという細い切削工具を入れ、根管内の髄をかき出し清掃する、清掃性の評価結果を示している。
根管拡大とは、清掃された根管内を根管充填材を充填し易いように、根管内を拡張する、拡張性の評価結果を示している。
Figure 2007323053
◎:天然歯同様に良好な結果であった。
○:デンチンと髄の切削感が異なり十分に表現できていなかったが、練習には十分に耐えれるものであった。
△:デンチンと髄との界面の切削感覚が異なり、天然歯と異なるものであった。
×:歯牙の切削感が全く異なり、露髄時の粘りが感じられず、根管清掃、根管拡大時も感覚が異なった。
実施例1、4は、良好な露髄体験ができ、根管清掃は若干の硬さを感じるものの、根管治療の体験を十分に感じることができた。髄のネバさが感じられ、実施例2、3、5、6よりも評価できる部分もある。
実施例2、3、5、6は実施例1、4に比べても、良好な露髄体験ができ、根管清掃や根管拡大などの根管治療の体験を十分に感じることができた。髄とデンチンとの界面の感覚が似ていた。根管清掃時の髄の取り出す感覚も近似していた。
比較例1、3はエポキシやメラミン樹脂のデンチンとポリビニルアルコール、ウレタンゴム、シリコンゴム等の界面状態が異なり、天然歯と近似の切削感を再現することができなかった。露髄感覚は、露髄する時の感覚が大きく異なっていた。根管清掃ではエポキシやメラミン樹脂と摺れる為、天然歯牙とは異なるものであった。根管拡大は、デンチンを削り拡大する感覚が、大きく異なった。

Claims (5)

  1. 治療練習用の顎歯模型用のデンチン部分およびエナメル部分、歯髄部分を有する歯牙であって、デンチン部分およびエナメル部分が無機粉末焼成体であり、
    歯髄部分が歯牙の中央部分にワックス、水溶性材料、樹脂またはシリコンゴム、の内何れか1つ以上から構成していることを特徴とする顎歯模型用歯牙。
  2. 治療練習用の顎歯模型用の歯牙であって、
    燃焼性材料を用いて歯髄形状に成形した燃焼性材料歯髄を成形する焼成性歯髄作製工程と、
    歯牙金型中の所定の位置に燃焼性材料歯髄を設置する金型設置工程、
    無機粉末とバインダーを歯牙金型中に射出し無焼成歯牙を得る射出工程、
    無焼成歯牙を焼成して焼成歯牙を得る焼成工程、
    焼成された歯髄に、樹脂、シリコンゴム、ワックス、水溶性材料にて満たす歯髄作製工程を経ることを特徴とする顎歯模型用歯牙。
  3. 請求項2記載の射出工程において、デンチン部分およびエナメル部分を射出成型することを特徴とする顎歯模型用歯牙。
  4. 治療練習用の顎歯模型用の歯牙製造方法であって、
    燃焼性材料を用いて歯髄形状に成形した燃焼性材料歯髄を成形する焼成性歯髄作製工程と、
    歯牙金型中の所定の位置に燃焼性材料歯髄を設置する金型設置工程、
    無機粉末とバインダーを歯牙金型中に射出し無焼成歯牙を得る射出工程、
    無焼成歯牙を焼成して焼成歯牙を得る焼成工程、
    焼成された歯髄に、樹脂、シリコンゴム、ワックス、水溶性材料にて満たす歯髄作製工程を経ることに特徴のある顎歯模型用歯牙の製造方法。
  5. 請求項4記載の射出工程において、デンチン部分およびエナメル部分を射出成型することを特徴とする顎歯模型用歯牙の製造方法。
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