JP2007323023A - 円筒状電子写真感光体の製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】効率的に未乾燥塗膜を乾燥させることができる円筒状電子写真感光体の製造方法を提供する。
【解決手段】本発明によれば,円筒状の導電性基体上に未乾燥塗膜を形成し,この未乾燥塗膜を乾燥させることによって感光層を形成する工程を備える円筒状電子写真感光体の製造方法であって,第一赤外線ヒータは,導電性基体及び未乾燥塗膜が並進移動するにつれて,第一赤外線ヒータと未乾燥塗膜との間の距離が長くなるように傾斜して配置され,乾燥終了までの導電性基体及び未乾燥塗膜の並進移動距離L(cm)と,乾燥開始時の第一赤外線ヒータと未乾燥塗膜との間の最短距離D(cm)と,第一赤外線ヒータの温度T(℃)と,乾燥終了までの導電性基体及び未乾燥塗膜の回転数N(回)は,条件1〜4で示す関係を満たすように設定される円筒状電子写真感光体の製造方法が提供される。
条件1:10≦D≦50
条件2:0.6<(D/L)<5.0
条件3:0.015≦(1+T/273)4/D2≦0.06
条件4:30≦N≦330
【選択図】図1
【解決手段】本発明によれば,円筒状の導電性基体上に未乾燥塗膜を形成し,この未乾燥塗膜を乾燥させることによって感光層を形成する工程を備える円筒状電子写真感光体の製造方法であって,第一赤外線ヒータは,導電性基体及び未乾燥塗膜が並進移動するにつれて,第一赤外線ヒータと未乾燥塗膜との間の距離が長くなるように傾斜して配置され,乾燥終了までの導電性基体及び未乾燥塗膜の並進移動距離L(cm)と,乾燥開始時の第一赤外線ヒータと未乾燥塗膜との間の最短距離D(cm)と,第一赤外線ヒータの温度T(℃)と,乾燥終了までの導電性基体及び未乾燥塗膜の回転数N(回)は,条件1〜4で示す関係を満たすように設定される円筒状電子写真感光体の製造方法が提供される。
条件1:10≦D≦50
条件2:0.6<(D/L)<5.0
条件3:0.015≦(1+T/273)4/D2≦0.06
条件4:30≦N≦330
【選択図】図1
Description
本発明は,円筒状電子写真感光体の製造方法に関する。
複写機,プリンタ又はファクシミリ装置等として用いられる電子写真方式の画像形成装置(以後,電子写真装置及び単に装置とも称する)では,以下のような電子写真プロセスを経て画像を形成する。
まず,装置に備わる電子写真感光体(以後,単に感光体とも称する)の表面を,帯電器によって所定の電位に一様に帯電させる。次いで,露光手段によって画像情報に応じた光で露光し,感光体の表面に静電潜像を形成する。形成された静電潜像を現像手段から供給されるトナーを含む現像剤で現像し,可視像であるトナー画像を形成する。形成されたトナー画像を,転写手段によって感光体の表面から記録紙のような転写材上に転写し,定着手段によって定着させる。更に,トナー画像が転写された後の感光体の表面に対して,クリーニング手段によってクリーニングを施し,転写材上に転写されずに感光体表面に残留するトナー及び転写時に感光体表面に付着したまま残留する記録紙の紙粉等の異物を除去する。その後,感光体の表面電荷を除電器等によって除電し,感光体表面の静電潜像を消失させる。
このような電子写真プロセスに用いられる感光体は,導電性基体上に,光導電性材料を含有する感光層が積層されてなる。従来から,感光体としては,無機系光導電性材料を用いた感光体(以後,無機系感光体と称する)が用いられている。無機系感光体の代表的なものとしては,アモルファスセレン(a−Se)又はアモルファスセレンひ素(a−AsSe)等からなる層を感光層に用いたセレン系感光体,酸化亜鉛(ZnO)又は硫化カドミウム(CDS)を色素のような増感剤とともに樹脂中に分散したものを感光層に用いた酸化亜鉛系又は硫化カドミウム系感光体,及びアモルファスシリコン(a−Si)からな
る層を感光層に用いたアモルファスシリコン系感光体(以後,a−Si感光体と称する)等がある。
る層を感光層に用いたアモルファスシリコン系感光体(以後,a−Si感光体と称する)等がある。
しかしながら,無機系感光体には,以下のような欠点がある。
セレン系感光体及び硫化カドミウム系感光体は,耐熱性及び保存安定性に問題がある。また,セレン及びカドミウムは,人体及び環境に対する毒性を有する。そのため,これらを用いた感光体は,使用後には回収され,適切に廃棄される必要がある。
酸化亜鉛系感光体は,感度が低く,かつ耐久性が低いという欠点があり,現在ではほとんど使用されていない。無公害性の無機系感光体として注目されるa−Si感光体は,高
感度及び高耐久性等の長所を有する。その反面,プラズマ化学気相成長(Plasma Chemical Vapor Deposition;略称:PCVD)法を用いて製造されるので,感光層を均一に成膜することが難しく,画像欠陥が発生しやすいという短所を有する。加えて,a−Si感光体は,生産性が低く,製造原価が高いという短所も有する。
感度及び高耐久性等の長所を有する。その反面,プラズマ化学気相成長(Plasma Chemical Vapor Deposition;略称:PCVD)法を用いて製造されるので,感光層を均一に成膜することが難しく,画像欠陥が発生しやすいという短所を有する。加えて,a−Si感光体は,生産性が低く,製造原価が高いという短所も有する。
近年,感光体に用いられる光導電性材料の開発が進み,従来から用いられている無機系の光導電性材料に代えて,有機系の光導電性材料,すなわち有機光導電体(Organic Photoconductor;略称:OPC)が多用されるようになっている。有機系光導電性材料を用いた感光体(以後,有機系感光体と称する)は,感度,耐久性及び環境に対する安定性等に若干の問題を有する。しかし,毒性,製造原価及び材料設計の自由度等の点において,無機系感光体に比べ,多くの利点を有する。また,有機系感光体は,感光層を浸漬塗布法に代表される容易かつ安価な方法で形成することが可能であるという利点も有する。このような利点を有することから,有機系感光体は次第に感光体の主流を占めてきている。近年,感度及び耐久性の著しい向上が求められていることに対応し,現在では,特別な場合を除き,感光体としては,有機系感光体が用いられるようになってきている。
特に,電荷発生機能と電荷輸送機能とを別々の物質にそれぞれ分担させた機能分離型感光体の開発によって,有機系感光体の性能は著しく改善されている。機能分離型感光体は,有機系感光体の有する前述の利点に加え,電荷発生機能を担う電荷発生物質及び電荷輸送機能を担う電荷輸送物質それぞれの材料選択範囲が広く,任意の特性を有する感光体を比較的容易に作製できるという利点も有している。
機能分離型感光体には積層型と単層型とがある。積層型の機能分離型感光体では,電荷発生物質を含有する電荷発生層と,電荷輸送物質を含有する電荷輸送層とが積層されて成る積層型の感光層が設けられる。一般に,電荷発生層及び電荷輸送層は,電荷発生物質及び電荷輸送物質がそれぞれ結着剤であるバインダ樹脂中に分散された形で形成される。また単層型の機能分散型感光体では,電荷発生物質と電荷輸送物質とがバインダ樹脂中に共に分散されてなる単層型の感光層が設けられる。
機能分離型感光体に使用される電荷発生物質としては,フタロシアニン顔料,スクアリリウム色素,アゾ顔料,ペリレン顔料,多環キノン顔料,シアニン色素,スクアリン酸染料及びピリリウム塩系色素等の多種の物質が検討され,耐光性が強く,電荷発生能力の高い種々の材料が提案されている。
一方,電荷輸送物質としては,たとえばピラゾリン化合物,ヒドラゾン化合物,トリフェニルアミン化合物,及びスチルベン化合物等の種々の化合物が知られている。最近では,縮合多環式炭化水素を中心母核に持つ,ピレン誘導体,ナフタレン誘導体及びターフェニル誘導体等も開発されている。
電子写真感光体は,有機機能性材料,バインダ樹脂などの感光層の成分を溶媒に溶解または分散させた塗布液をスプレー法,リングコート法,ロールコーティング法,ブレード法,浸漬法などによって導電性基体上に均一な厚さで塗布(以後,導電性基体上に塗布された塗布液を塗膜と呼ぶ)する塗布工程と,塗膜を乾燥させることによって塗膜に含まれる溶媒を除去する乾燥工程とを経て製造される。乾燥工程は,溶媒の沸点以上の温度の熱風を吹き付けるオーブン内に,塗膜が形成された導電性基体を一定数仕込んで乾燥させるバッチ式,複数のヒータが設置される熱処理炉内に,塗膜が形成された導電性基体を通過させる連続式などによって行われている。
しかし熱風乾燥では,乾燥装置内で熱風が直接あるいは間接的に当てられた塗膜表面は,膜内部に溶剤が残っていて未乾燥状態であるにも関わらず,先に乾燥が開始される。更に,熱風が当たる箇所と当たらない箇所で温度の不均一が生じるため,乾燥状態にムラが生じる。乾燥が進むと,塗膜の表面は乾燥が進み硬化するのに対し,膜内部では,温度が上昇し乾燥が始まることで溶剤が気化したガスが生じる。このガスは,塗膜表面に硬化した膜により抜け難いため,塗膜全体を乾燥させるまでの時間を極めて長くさせる。また,長時間の乾燥には,一般の生産ラインでは,大きな連続式乾燥炉やバッチ式オーブンが必要となるだけでなく,その運用・管理にも大きなコストがかかる。更に,塗膜内部から溶剤が気化する際に,塗膜表面に,気泡,ピンホール,塗膜のはじき等の欠陥が生じることもある。感光体の表面層にこのような欠陥があると,クラック,剥離などが生じやすくなり,電気的および機械的外力に対する耐久性が低下するので,良好な繰返し安定性および環境安定性を得ることができない。
また硬化膜は,塗膜内部の溶媒のガスを塗膜表面から抜け難くするので,塗膜内部について乾燥させる時間を極めて長くする。たとえば硬化膜を有する塗膜の熱風,ヒータなどによる乾燥には,1時間から数時間かかる。このように乾燥に長い時間を要すると,感光体を大量に生産するために生産ラインにおいて大型の連続乾燥炉,バッチ式オーブンなどが必要となるだけでなく,その運用および管理にも大きなコストがかかる。このような問題を解決するために乾燥時間を短くすると,塗膜中に溶剤が残留するため,感光層の感度不良や繰り返し露光安定性の低下,また,クラックや剥離等が生じやすくなる。
このような問題を解決する従来技術として,特許文献1,2には,赤外線ヒータにより塗膜の構成材料そのものに遠赤外線を吸収加熱させ乾燥させる方法が記載されている。この乾燥方法は,塗膜材料そのものを加熱するため,ムラが少なく,また塗膜表面が硬化しにくいため上記のような欠陥が防止でき,また塗膜への供給エネルギーが高いため短時間で乾燥できる。
しかしながらこれらの乾燥方法では,熱風,ヒータなどによる加熱方法と比べて熱効率が非常に高く,塗膜の温度が急激に上昇してしまうことがあり,塗膜の温度の管理が難しい。塗膜の温度が急激に上昇してしまうと,塗膜の温度が感光体の耐熱温度以上に上昇して感光体の電気特性が低下したり,溶媒の沸点を超えて塗膜が加熱されて気泡が多量に発生したりするという問題がある。
また,急激な温度上昇による感光体の特性の損失を防ぎかつ乾燥効率も損なわないようにするための調整を,赤外線ヒータのスイッチのON/OFFや温度設定の変更によって行う場合,特に温度を下げる方向での調整する際に,赤外線ヒータの温度が所定の温度になるまでに時間がかかるという問題があった。特許文献3には,未乾燥塗膜を有する被塗物を移動可能なコンベアを有し,赤外線ヒータが該コンベアに平行または平行でない位置に移動可能な赤外線乾燥機の記載がある。しかしこの記載内容では感光体の乾燥効率と特性維持の両立という点では不充分である。
特公平5−50742号公報
特開平11−311871号公報
特開平10−216623号公報
このように,従来の乾燥方法では,感光体の特性を損なうことなく,効率的に未乾燥塗膜を乾燥させることは困難であった。
本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであり、感光体の特性を損なうことなく,効率的に未乾燥塗膜を乾燥させることができる円筒状電子写真感光体の製造方法を提供するものである。
本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであり、感光体の特性を損なうことなく,効率的に未乾燥塗膜を乾燥させることができる円筒状電子写真感光体の製造方法を提供するものである。
かくして,本発明によれば,円筒状の導電性基体上に未乾燥塗膜を形成し,この未乾燥塗膜を乾燥させることによって感光層を形成する工程を備える円筒状電子写真感光体の製造方法であって,未乾燥塗膜は,厚さ20〜40μmであり,未乾燥塗膜に含まれる溶剤は,25℃における,{(酢酸n−ブチルが蒸発する時間)/(未乾燥塗膜に含まれる溶剤が蒸発する時間)}により定義される相対蒸発速度が1.7未満であり,未乾燥塗膜の乾燥は,導電性基体の中心線を軸として導電性基体及び未乾燥塗膜を回転させ,かつ導電性基体及び未乾燥塗膜を並進移動させながら,第一赤外線ヒータを用いて未乾燥塗膜に赤外線を照射することによって行い,第一赤外線ヒータは,導電性基体及び未乾燥塗膜が並進移動するにつれて,第一赤外線ヒータと未乾燥塗膜との間の距離が長くなるように傾斜して配置され,乾燥終了までの導電性基体及び未乾燥塗膜の並進移動距離L(cm)と,乾燥開始時の第一赤外線ヒータと未乾燥塗膜との間の最短距離D(cm)と,第一赤外線ヒータの温度T(℃)と,乾燥終了までの導電性基体及び未乾燥塗膜の回転数N(回)は,条件1〜4で示す関係を満たすように設定される円筒状電子写真感光体の製造方法が提供される。
条件1:10≦D≦50
条件2:0.6<(D/L)<5.0
条件3:0.015≦(1+T/273)4/D2≦0.06
条件4:30≦N≦330
条件1:10≦D≦50
条件2:0.6<(D/L)<5.0
条件3:0.015≦(1+T/273)4/D2≦0.06
条件4:30≦N≦330
本発明によれば,第一赤外線ヒータが,導電性基体及び未乾燥塗膜が並進移動するにつれて,第一赤外線ヒータと未乾燥塗膜との間の距離が長くなるように傾斜して配置されるので,乾燥初期のわずかな時間で未乾燥塗膜中に含まれる溶媒の大部分を蒸発させ,その後,感光体の特性を損なうことのないように未乾燥塗膜に照射される赤外線からの熱量を抑えつつ残存溶媒をさらに減らすという,赤外線による感光体の乾燥に最も適したる熱量の時間変化を容易にできる。
また,本発明によれば,乾燥終了までの導電性基体及び未乾燥塗膜の並進移動距離L(cm)と,乾燥開始時の第一赤外線ヒータと未乾燥塗膜との間の最短距離D(cm)と,第一赤外線ヒータの温度T(℃)と,乾燥終了までの導電性基体及び未乾燥塗膜の回転数N(回)が,上記条件1〜条件4で示す関係を満たすように設定されるので,感光体の特性を損なうことなく,効率的に未乾燥塗膜を乾燥させることができる。
また,本発明によれば,乾燥終了までの導電性基体及び未乾燥塗膜の並進移動距離L(cm)と,乾燥開始時の第一赤外線ヒータと未乾燥塗膜との間の最短距離D(cm)と,第一赤外線ヒータの温度T(℃)と,乾燥終了までの導電性基体及び未乾燥塗膜の回転数N(回)が,上記条件1〜条件4で示す関係を満たすように設定されるので,感光体の特性を損なうことなく,効率的に未乾燥塗膜を乾燥させることができる。
好ましくは、導電性基体の中心線を含み,かつ導電性基体及び未乾燥塗膜の並進移動方向に平行な平面に対する第一赤外線ヒータの傾斜角度φ(度)と,前記並進移動距離L(cm)と,前記距離D(cm)とが,条件5に示す関係を満たすように設定される。
条件5:0.75<D/(L×tanφ)<20
条件5が満たされる場合,感光体の特性を損なう度合いがさらに小さく,さらに効率的な未乾燥塗膜の乾燥が可能になる。
条件5:0.75<D/(L×tanφ)<20
条件5が満たされる場合,感光体の特性を損なう度合いがさらに小さく,さらに効率的な未乾燥塗膜の乾燥が可能になる。
好ましくは、未乾燥塗膜は,第一赤外線ヒータからの赤外線による乾燥の後,第一赤外線ヒータよりも離れた位置に配置された第二赤外線ヒータからの赤外線によって乾燥される。
第一赤外線ヒータよりも離れた位置に配置された第二赤外線ヒータは,第一赤外線ヒータよりも緩やかに赤外線を未乾燥塗膜に照射することができる。従って,第二赤外線ヒータを備えることにより,感光体の特性を損なう度合いがさらに小さく,さらに効率的な未乾燥塗膜の乾燥が可能になる。
第一赤外線ヒータよりも離れた位置に配置された第二赤外線ヒータは,第一赤外線ヒータよりも緩やかに赤外線を未乾燥塗膜に照射することができる。従って,第二赤外線ヒータを備えることにより,感光体の特性を損なう度合いがさらに小さく,さらに効率的な未乾燥塗膜の乾燥が可能になる。
好ましくは、導電性基体は,その中心線が水平になるように配置される。この場合,電子写真感光体の感光層の膜厚を均一にできる。
本発明の一実施形態の円筒状電子写真感光体の製造方法は,円筒状の導電性基体上に未乾燥塗膜を形成し,この未乾燥塗膜を乾燥させることによって感光層を形成する工程を備える円筒状電子写真感光体の製造方法であって,未乾燥塗膜は,厚さ20〜40μmであり,未乾燥塗膜に含まれる溶剤は,25℃における,{(酢酸n−ブチルが蒸発する時間)/(未乾燥塗膜に含まれる溶剤が蒸発する時間)}により定義される相対蒸発速度が1.7未満であり,未乾燥塗膜の乾燥は,導電性基体の中心線を軸として導電性基体及び未乾燥塗膜を回転させ,かつ導電性基体及び未乾燥塗膜を並進移動させながら,第一赤外線ヒータを用いて未乾燥塗膜に赤外線を照射することによって行い,第一赤外線ヒータは,導電性基体及び未乾燥塗膜が並進移動するにつれて,第一赤外線ヒータと未乾燥塗膜との間の距離が長くなるように傾斜して配置され,乾燥終了までの導電性基体及び未乾燥塗膜の並進移動距離L(cm)と,乾燥開始時の第一赤外線ヒータと未乾燥塗膜との間の最短距離D(cm)と,第一赤外線ヒータの温度T(℃)と,乾燥終了までの導電性基体及び未乾燥塗膜の回転数N(回)は,条件1〜4で示す関係を満たすように設定される。
条件1:10≦D≦50
条件2:0.6<(D/L)<5.0
条件3:0.015≦(1+T/273)4/D2≦0.06
条件4:30≦N≦330
条件1:10≦D≦50
条件2:0.6<(D/L)<5.0
条件3:0.015≦(1+T/273)4/D2≦0.06
条件4:30≦N≦330
以下,本実施形態の円筒状電子写真感光体の製造方法に含まれる各構成要素について詳細に説明する。
1.感光体
本発明の方法によって製造される感光体の構成は,特に限定されるものではなく,種々の変形が許容される。このような感光体としては,たとえば,導電性基体の上に電荷発生層と電荷輸送層とを含む感光層を備えた構成を有していてもよく,導電性基体の上に下引層を備え,その上に電荷発生層と電荷輸送層とを備えた構成を有していてもよい。また電荷発生層と電荷輸送層との上に保護層が形成されるものであってもよい。
本発明の方法によって製造される感光体の構成は,特に限定されるものではなく,種々の変形が許容される。このような感光体としては,たとえば,導電性基体の上に電荷発生層と電荷輸送層とを含む感光層を備えた構成を有していてもよく,導電性基体の上に下引層を備え,その上に電荷発生層と電荷輸送層とを備えた構成を有していてもよい。また電荷発生層と電荷輸送層との上に保護層が形成されるものであってもよい。
以下,感光体の導電性基体と,感光層の各層を形成するための感光層の成分及び塗布液とについて説明する。
1−1.導電性基体
導電性基体は,導電性を有している。導電性基体としては,たとえばアルミニウム,アルミニウム合金,銅,亜鉛,ステンレス鋼,チタン等の金属材料を用いることができる。導電性基体としては,これらの金属材料に限定されることなく,ポリエチレンテレフタレート,ポリエステル,ポリオキシメチレン及びポリスチレン等の高分子材料,硬質紙,ガラス等の表面に,金属箔をラミネートしたもの,金属材料を蒸着したもの,又は導電性高分子,酸化スズ,酸化インジウム,炭素粒子,金属粒子等の導電性化合物の層を蒸着もしくは塗布したもの等を用いることもできる。また,導電性基体の表面には,必要に応じて,感光体として使用した際に形成される画像の画質に影響のない範囲内で,陽極酸化皮膜処理,薬品,熱水等による表面処理,着色処理,又は表面を粗面化する等の乱反射処理を行ってもよい。レーザを露光光源として用いる電子写真プロセスでは,入射するレーザ光の波長が揃っているので,入射するレーザ光と感光体内で反射された光とが干渉を起こし,この干渉による干渉縞が画像上に現れて画像欠陥が発生することがある。導電性基体の表面に上記のような乱反射処理を行うことによって,この波長の揃ったレーザ光の干渉による画像欠陥を防止することができる。
導電性基体は,導電性を有している。導電性基体としては,たとえばアルミニウム,アルミニウム合金,銅,亜鉛,ステンレス鋼,チタン等の金属材料を用いることができる。導電性基体としては,これらの金属材料に限定されることなく,ポリエチレンテレフタレート,ポリエステル,ポリオキシメチレン及びポリスチレン等の高分子材料,硬質紙,ガラス等の表面に,金属箔をラミネートしたもの,金属材料を蒸着したもの,又は導電性高分子,酸化スズ,酸化インジウム,炭素粒子,金属粒子等の導電性化合物の層を蒸着もしくは塗布したもの等を用いることもできる。また,導電性基体の表面には,必要に応じて,感光体として使用した際に形成される画像の画質に影響のない範囲内で,陽極酸化皮膜処理,薬品,熱水等による表面処理,着色処理,又は表面を粗面化する等の乱反射処理を行ってもよい。レーザを露光光源として用いる電子写真プロセスでは,入射するレーザ光の波長が揃っているので,入射するレーザ光と感光体内で反射された光とが干渉を起こし,この干渉による干渉縞が画像上に現れて画像欠陥が発生することがある。導電性基体の表面に上記のような乱反射処理を行うことによって,この波長の揃ったレーザ光の干渉による画像欠陥を防止することができる。
1−2.電荷発生層
電荷発生層は,光を吸収することによって電荷を発生する電荷発生物質を主成分として含有する。電荷発生物質としては,モノアゾ顔料,ビスアゾ顔料,トリスアゾ顔料等のアゾ系顔料,インジゴ,チオインジゴ等のインジゴ系顔料,ペリレンイミド,ペリレン酸無水物等のペリレン系顔料,アントラキノン,ピレンキノン等の多環キノン系顔料,金属フタロシアニン,無金属フタロシアニン等のフタロシアニン系顔料,メチルバイオレット,クリスタルバイオレット,ナイトブルー,ビクトリアブルー等のトリフェニルメタン系色素,エリスロシン,ローダミンB,ローダミン3R,アクリジンオレンジ,フラペオシン等のアクリジン系色素,メチレンブルー,メチレングリーン等のチアジン系色素,カプリブルー,メルドラブルー等のオキサジン系色素,スクアリリウム色素,ピリリウム塩類,チオピリリウム塩類,チオインジゴ系色素,ビスベンゾイミダゾール系色素,キナクリドン系色素,キノリン系色素,レーキ系色素,アゾレーキ系色素,ジオキサジン系色素,アズレニウム系色素,トリアリールメタン系色素,キサンテン系色素,シアニン系色素等の種々の有機顔料,染料,アモルファスシリコン,アモルファスセレン,テルル,セレン−テルル合金,硫化カドミウム,硫化アンチモン,酸化亜鉛,硫化亜鉛等の無機材料等が挙げられる。これらの電荷発生物質は,1種を単独で用いてもよいし,2種以上を併用することもできる。
電荷発生層は,光を吸収することによって電荷を発生する電荷発生物質を主成分として含有する。電荷発生物質としては,モノアゾ顔料,ビスアゾ顔料,トリスアゾ顔料等のアゾ系顔料,インジゴ,チオインジゴ等のインジゴ系顔料,ペリレンイミド,ペリレン酸無水物等のペリレン系顔料,アントラキノン,ピレンキノン等の多環キノン系顔料,金属フタロシアニン,無金属フタロシアニン等のフタロシアニン系顔料,メチルバイオレット,クリスタルバイオレット,ナイトブルー,ビクトリアブルー等のトリフェニルメタン系色素,エリスロシン,ローダミンB,ローダミン3R,アクリジンオレンジ,フラペオシン等のアクリジン系色素,メチレンブルー,メチレングリーン等のチアジン系色素,カプリブルー,メルドラブルー等のオキサジン系色素,スクアリリウム色素,ピリリウム塩類,チオピリリウム塩類,チオインジゴ系色素,ビスベンゾイミダゾール系色素,キナクリドン系色素,キノリン系色素,レーキ系色素,アゾレーキ系色素,ジオキサジン系色素,アズレニウム系色素,トリアリールメタン系色素,キサンテン系色素,シアニン系色素等の種々の有機顔料,染料,アモルファスシリコン,アモルファスセレン,テルル,セレン−テルル合金,硫化カドミウム,硫化アンチモン,酸化亜鉛,硫化亜鉛等の無機材料等が挙げられる。これらの電荷発生物質は,1種を単独で用いてもよいし,2種以上を併用することもできる。
電荷発生層は,溶剤中に電荷発生物質を溶解又は分散して得られる電荷発生層形成用塗布液,中でも結着剤であるバインダ樹脂を溶剤中に溶解又は混合して得られるバインダ樹脂溶液中に,電荷発生物質を公知の方法によって分散して得られる塗布液を,導電性基体上又は下引層上に塗布することによって形成できる。
電荷発生層形成用の塗布液に用いられるバインダ樹脂としては,一般に用いられる公知の樹脂をいずれも使用することができる。たとえば,ポリエステル樹脂,ポリスチレン樹脂,ポリウレタン樹脂,フェノール樹脂,アルキッド樹脂,メラミン樹脂,エポキシ樹脂,シリコーン樹脂,アクリル樹脂,メタクリル樹脂,ポリカーボネート樹脂,ポリアリレート樹脂,フェノキシ樹脂,ポリビニルブチラール樹脂,ポリビニルホルマール樹脂等の樹脂,及びこれらの樹脂を構成する繰返し単位のうちの2つ以上を含む共重合体樹脂等からなる群から選ばれる樹脂を用いることができる。共重合体樹脂としては,たとえば塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体樹脂,塩化ビニル−酢酸ビニル−無水マレイン酸共重合体樹脂,アクリロニトリル−スチレン共重合体樹脂等の絶縁性樹脂等を挙げることができる。これらは,1種を単独で使用してもよいし,2種以上を併用してもよい。
電荷発生層形成用の塗布液に用いられる溶剤としては,たとえば,1,3−ジクロロプロパン,トリクロロエタン等のハロゲン化炭化水素,イソホロン,メチルエチルケトン,アセトフェノン,シクロヘキサノン,イソホロン等のケトン類,酢酸エチル,安息香酸メチル,酢酸N−ブチル等のエステル類,テトラヒドロフラン,1,4−ジオキサン,ジベンジルエーテル,1,2−ジメトキシエタン等のエーテル類,ベンゼン,トルエン,キシレン,メシチレン,テトラリン,ジフェニルメタン,ジメトキシベンゼン,ジクロルベンゼン等の芳香族炭化水素類,ジフェニルスルフィド等の含硫黄溶剤,ヘキサフロオロイソプロパノール等のフッ素系溶剤,エチレングリコールモノブチルエーテル,ジエチレングリコールモノブチルエーテル等のグライム系溶剤,N,N−ジメチルホルムアミド,N,N−ジメチルアセトアミド等の非プロトン性極性溶剤等が挙げられる。これらの溶剤は,1種を単独で使用することができ,2種以上混合した混合溶剤として用いることもできる。
電荷発生物質とバインダ樹脂との配合比率は,電荷発生層全体の重量を100%とするとき,電荷発生物質が10重量%以上99重量%以下の範囲にあることが好ましい。電荷発生物質が10重量%未満であると,感光体の感度が低下する恐れがある。電荷発生物質が99重量%を超えると,電荷発生層の強度が低下するだけでなく,電荷発生物質の分散性が低下して粗大粒子が増大し,露光によって消去されるべき部分以外の表面電荷が減少するので,画像欠陥,特に白地にトナーが付着し微小な黒点が形成される黒ポチと呼ばれる画像のかぶりが多く発生することがある。
バインダ樹脂溶液中に電荷発生物質を分散させる前処理として,電荷発生物質を粉砕機によって予め粉砕処理してもよい。粉砕処理に用いられる粉砕機としては,ボールミル,サンドミル,アトライタ,振動ミル,超音波分散機等を挙げることができる。このときの分散条件としては,用いる容器及び分散機を構成する部材の摩耗等による不純物の混入が起こらないように適当な条件を選択することが望ましい。
更に,電荷発生層には,必要に応じてホール輸送材料,電子輸送材料,酸化防止剤,分散安定剤,増感剤等の各種添加剤を添加してもよい。このことによって,電位特性が向上するとともに,塗布液としての安定性を向上させることができる。また感光体を繰返し使用した際の疲労劣化を軽減し,耐久性を向上させることができる。
電荷発生層形成用塗布液の塗布方法としては,スプレー法,リングコート法,ロール塗布法,ブレード法,浸漬法等を挙げることができる。
電荷発生層の膜厚は,0.05μm以上5μm以下であることが好ましく,より好ましくは0.1μm以上1μm以下である。電荷発生層の膜厚が0.05μm未満であると,光吸収の効率が低下し,感光体の感度が低下する恐れがある。電荷発生層の膜厚が5μmを超えると,電荷発生層内部での電荷移動が感光体表面の電荷を消去する過程の律速段階となり,感度が低下する恐れがある。
1−3.電荷輸送層
電荷輸送層は,電荷発生物質で発生した電荷を受入れ輸送する能力を有する電荷輸送物質からなる。また,必要に応じて,バインダ樹脂を含んでいてもよい。
電荷輸送層は,電荷発生物質で発生した電荷を受入れ輸送する能力を有する電荷輸送物質からなる。また,必要に応じて,バインダ樹脂を含んでいてもよい。
電荷輸送物質としては,ホール輸送物質及び電子輸送物質が挙げられる。
ホール輸送物質としては,カルバゾール誘導体,ピレン誘導体,オキサゾール誘導体,オキサジアゾール誘導体,チアゾール誘導体,チアジアゾール誘導体,トリアゾール誘導体,イミダゾール誘導体,イミダゾロン誘導体,イミダゾリジン誘導体,ビスイミダゾリジン誘導体,スチリル化合物,ヒドラゾン化合物,多環芳香族化合物,インドール誘導体,ピラゾリン誘導体,オキサゾロン誘導体,ベンズイミダゾール誘導体,キナゾリン誘導体,ベンゾフラン誘導体,アクリジン誘導体,フェナジン誘導体,アミノスチルベン誘導体,トリアリールアミン誘導体,トリアリールメタン誘導体,フェニレンジアミン誘導体,スチルベン誘導体,ベンジジン誘導体等が挙げられる。また,これらの化合物から生じる基を主鎖又は側鎖に有するポリマー,たとえば,ポリ−N−ビニルカルバゾール,ポリ−1−ビニルピレン,エチルカルバゾール−ホルムアルデヒド樹脂,トリフェニルメタンポリマー,ポリ−9−ビニルアントラセン,ポリシラン等が挙げられる。
電子輸送物質としては,たとえば,ベンゾキノン誘導体,テトラシアノエチレン誘導体,テトラシアノキノジメタン誘導体,フルオレノン誘導体,キサントン誘導体,フェナントラキノン誘導体,無水フタル酸誘導体,ジフェノキノン誘導体等の有機化合物,アモルファスシリコン,アモルファスセレン,テルル,セレン−テルル合金,硫化カドミウム,硫化アンチモン,酸化亜鉛,硫化亜鉛等の無機材料が挙げられる。
電荷(ホール又は電子)輸送物質は,上記に挙げたものに限定されることなく,その使用に際しては単独又は2種以上を混合して用いることができる。
電荷輸送層は,溶剤中に電荷輸送物質を溶解又は分散して得られる電荷輸送層形成用塗布液,中でも結着剤であるバインダ樹脂を溶剤中に溶解又は混合して得られるバインダ樹脂溶液中に,電荷輸送物質を公知の方法によって溶解又は分散して得られる塗布液を,電荷発生層上に塗布することによって形成できる。
電荷輸送層のバインダ樹脂には,電荷輸送物質との相溶性に優れるものが選ばれる。バインダ樹脂としては,たとえばポリメチルメタクリレート樹脂,ポリスチレン樹脂,ポリ塩化ビニル樹脂等のビニル重合体樹脂及びそれらの共重合体樹脂,ポリカーボネート樹脂,ポリエステル樹脂,ポリエステルカーボネート樹脂,ポリスルホン樹脂,フェノキシ樹脂,エポキシ樹脂,シリコーン樹脂,ポリアリレート樹脂,ポリアミド樹脂,メタクリル樹脂,アクリル樹脂,ポリエーテル樹脂,ポリウレタン樹脂,ポリアクリルアミド樹脂,フェノール樹脂等の樹脂等が挙げられる。また,これらの樹脂を部分的に架橋した熱硬化性樹脂を使用してもよい。これらの樹脂を単独で使用してもよく,また2種以上混合して使用してもよい。前述した樹脂の中でも,ポリスチレン樹脂,ポリカーボネート樹脂,ポリアリレート樹脂又はポリフェニレンオキサイドは,体積抵抗値が1013Ω以上であって電気絶縁性に優れ,また成膜性,電気特性等にも優れるので特に好ましい。
電荷輸送物質の重量(A)に対するバインダ樹脂の重量(B)の比率(B/A)は12/10以上30/10以下(=1.2以上3.0以下)であることが好ましい。前記比率(B/A)が,30/10(=3.0)を超えてバインダ樹脂の含有比率が高くなると,電荷輸送層形成用塗布液の粘度が増大し,塗布速度低下を招き生産性が著しく悪くなる恐れがある。更にこの粘度の増大を抑えるために電荷輸送層形成用塗布液中の溶剤の量を多くすると,形成された電荷輸送層に白濁が生じるブラッシング現象が発生する。また,前記比率(B/A)が,12/10(=1.2)未満となり,バインダ樹脂の比率が低くなると,バインダ樹脂の比率が高いときに比べて耐刷性が低くなり,電荷輸送層の摩耗量が増加するので,耐久寿命が短くなることがある。
更に,電荷輸送層の移動度を,環境温度:5℃,電界強度:2.5×105V/cmにおいて,1.0×10-6cm2/Vs以上とすることによって,現状の画像形成に求められる感光体の応答性は充分に確保できる。
電荷輸送層には,成膜性,可撓性及び表面平滑性を向上させるために,必要に応じて,可塑剤又は表面改質剤等の添加剤を添加してもよい。可塑剤としては,たとえばビフェニル,塩化ビフェニル,ベンゾフェノン,o−ターフェニル,二塩基酸エステル,脂肪酸エステル,リン酸エステル,フタル酸エステル,各種フルオロ炭化水素,塩素化パラフィン,エポキシ型可塑剤等を挙げることができる。表面改質剤としては,シリコーンオイル,フッ素樹脂等が挙げられる。
また,電荷輸送層には,機械的強度の増強及び電気的特性の向上を図るために,無機化合物又は有機化合物の微粒子を添加してもよい。更に必要に応じて酸化防止剤及び光安定剤の等の各種添加剤を添加してもよい。このことによって,帯電時に発生するオゾン及びNOX等の活性物質の付着による表面層の劣化が軽減され,感光体を繰返し使用した際の耐久性を向上することができる。また,電荷輸送層形成用塗布液としての安定性が高まり,液寿命が延びるとともに,該塗布液で製造した感光体も,不純物が軽減されるので,耐久性を向上できる。
酸化防止剤及び光安定剤としては,ヒンダードフェノール誘導体又はヒンダードアミン誘導体が好適に用いられる。ヒンダードフェノール誘導体は,電荷輸送物質の重量に対して0.001以上0.10以下の範囲の重量比で使用されることが好ましい。ヒンダードアミン誘導体は,電荷輸送物質の重量に対して0.001以上0.10以下の範囲の重量比で使用されることが好ましい。またヒンダードフェノール誘導体とヒンダードアミン誘導体とを混合して使用してもよい。この場合,ヒンダードフェノール誘導体及びヒンダードアミン誘導体の合計使用量が,電荷輸送物質の重量に対して0.001以上0.10以下の範囲の重量比であることが好ましい。
ヒンダードフェノール誘導体の使用量もしくはヒンダードアミン誘導体の使用量又はヒンダードフェノール誘導体及びヒンダードアミン誘導体の合計使用量が,電荷輸送物質の重量に対して重量比で0.001未満であると,電荷輸送層形成用塗布液の安定性の向上及び感光体の耐久性の向上に充分な効果を発現することができないことがある。また重量比で0.10を超えると,感光体の電気特性に悪影響を及ぼすことがある。
電荷輸送層は,適当な溶剤中に前記電荷輸送物質及び前記バインダ樹脂,ならびに必要に応じて前述の添加剤を溶解又は分散させて電荷輸送層形成用塗布液を調製し,この塗布液を塗布・乾燥することにより形成できる。
電荷輸送層形成用の塗布液に用いられる溶剤としては,たとえば,1,3−ジクロロプロパン,トリクロロエタン等のハロゲン化炭化水素,イソホロン,メチルエチルケトン,アセトフェノン,シクロヘキサノン,イソホロン等のケトン類,酢酸エチル,安息香酸メチル,酢酸N−ブチル等のエステル類,テトラヒドロフラン,1,4−ジオキサン,ジベンジルエーテル,1,2−ジメトキシエタン等のエーテル類,ベンゼン,トルエン,キシレン,メシチレン,テトラリン,ジフェニルメタン,ジメトキシベンゼン,ジクロルベンゼン等の芳香族炭化水素類,ジフェニルスルフィド等の含硫黄溶剤,ヘキサフロオロイソプロパノール等のフッ素系溶剤,エチレングリコールモノブチルエーテル,ジエチレングリコールモノブチルエーテル等のグライム系溶剤,N,N−ジメチルホルムアミド,N,N−ジメチルアセトアミド等の非プロトン性極性溶剤等が挙げられる。これらの溶剤は,1種を単独で使用することができ,2種以上混合した混合溶剤として用いることもできる。ただし,使用する溶媒は下に位置する層を溶解しないものの中から選択するよう配慮するのが好ましい。
電荷輸送層形成用の塗布液に用いられる溶剤としては,たとえば,1,3−ジクロロプロパン,トリクロロエタン等のハロゲン化炭化水素,イソホロン,メチルエチルケトン,アセトフェノン,シクロヘキサノン,イソホロン等のケトン類,酢酸エチル,安息香酸メチル,酢酸N−ブチル等のエステル類,テトラヒドロフラン,1,4−ジオキサン,ジベンジルエーテル,1,2−ジメトキシエタン等のエーテル類,ベンゼン,トルエン,キシレン,メシチレン,テトラリン,ジフェニルメタン,ジメトキシベンゼン,ジクロルベンゼン等の芳香族炭化水素類,ジフェニルスルフィド等の含硫黄溶剤,ヘキサフロオロイソプロパノール等のフッ素系溶剤,エチレングリコールモノブチルエーテル,ジエチレングリコールモノブチルエーテル等のグライム系溶剤,N,N−ジメチルホルムアミド,N,N−ジメチルアセトアミド等の非プロトン性極性溶剤等が挙げられる。これらの溶剤は,1種を単独で使用することができ,2種以上混合した混合溶剤として用いることもできる。ただし,使用する溶媒は下に位置する層を溶解しないものの中から選択するよう配慮するのが好ましい。
また,塗布液に含まれる溶剤は,25℃における,{(酢酸n−ブチルが蒸発する時間)/(未乾燥塗膜に含まれる溶剤が蒸発する時間)}により定義される相対蒸発速度が1.7未満であるものが好ましい。
塗布液の溶媒に含まれる溶剤が相対蒸発速度が1.7以上の蒸発速度が大きい溶剤の場合,塗布工程後,赤外線乾燥にかけるまでに塗膜表面が乾燥硬化し,赤外線加熱乾燥工程を行っても塗膜内部に溶媒が残留してしまう。そこで,このように相対蒸発速度が1.7未満の蒸発速度が小さい溶剤を用いることによって,塗膜表面を硬化させることなく,塗膜内部の溶媒を効率的に拡散気化させることが可能となる。表1に代表的な溶剤の相対蒸発速度を示す。
塗布液の溶媒に含まれる溶剤が相対蒸発速度が1.7以上の蒸発速度が大きい溶剤の場合,塗布工程後,赤外線乾燥にかけるまでに塗膜表面が乾燥硬化し,赤外線加熱乾燥工程を行っても塗膜内部に溶媒が残留してしまう。そこで,このように相対蒸発速度が1.7未満の蒸発速度が小さい溶剤を用いることによって,塗膜表面を硬化させることなく,塗膜内部の溶媒を効率的に拡散気化させることが可能となる。表1に代表的な溶剤の相対蒸発速度を示す。
更に,必要に応じてアルコール類,アセトニトリル又はメチルエチルケトン等単独では電荷輸送物質等を溶解しにくい溶剤を更に加えて使用することもできる。
電荷輸送層形成用塗布液の塗布方法としては,スプレー法,リングコート法,ロール塗布法,ブレード法,浸漬法等を挙げることができる。
電荷輸送層の膜厚は,5μm以上50μm以下であることが好ましく,より好ましくは10μm以上40μm以下である。電荷輸送層の膜厚が5μm未満であると,電子写真感光体表面の帯電保持能が低下する恐れがある。電荷輸送層の膜厚が50μmを超えると,電子写真感光体の解像度が低下する恐れがある。
導電性基体上に形成された電荷発生層の上に電荷輸送層を積層してもよく,反対に導電性基体上に形成された電荷輸送層の上に電荷発生層を積層してもよい。また,以上は積層型感光体の場合の説明だが,単層型感光体の場合,電荷発生物質と電荷輸送物質とを含有する感光層は,前述の電荷輸送層を形成する場合と同様の方法で形成される。たとえば,電荷発生物質と,電荷輸送物質であるホール輸送物質または電子輸送物質と,バインダ樹脂とを,前述の適当な溶剤からなる溶媒に溶解または分散させて感光層形成用塗布液を調製し,この感光層形成用塗布液を,前述した種々の塗布法によって塗布することによって形成される。単層型感光体の感光層の膜厚は,5μm以上100μm以下であることが好ましく,より好ましくは10μm以上50μm以下である。感光層の膜厚が5μm未満であると,電子写真感光体表面の帯電保持能が低下する。感光層の膜厚が100μmを超えると,生産性が低下する。
1−4.下引層
また,感光体には,前述のように導電性基体と電荷発生層との間に,下引層が設けられてもよい。下引層が設けられることによって,導電性基体から感光層への電荷の注入を防止できるので,感光体の帯電保持能の低下を防ぐことができる。また,下引層が形成された感光体を画像形成に用いると,露光によって消去されるべき部分以外の表面電荷の減少が抑制されるので,画像にかぶり等の欠陥が発生することを防止できる。更に,導電性基体表面の欠陥を下引層が被覆することによって,導電性基体表面を平滑にすることができるので,電荷発生層及び電荷輸送層の成膜性を高めることができる。また,電荷発生層及び電荷輸送層の導電性基体からの剥離を抑え,導電性基体に対する接着性を向上させることができる。
また,感光体には,前述のように導電性基体と電荷発生層との間に,下引層が設けられてもよい。下引層が設けられることによって,導電性基体から感光層への電荷の注入を防止できるので,感光体の帯電保持能の低下を防ぐことができる。また,下引層が形成された感光体を画像形成に用いると,露光によって消去されるべき部分以外の表面電荷の減少が抑制されるので,画像にかぶり等の欠陥が発生することを防止できる。更に,導電性基体表面の欠陥を下引層が被覆することによって,導電性基体表面を平滑にすることができるので,電荷発生層及び電荷輸送層の成膜性を高めることができる。また,電荷発生層及び電荷輸送層の導電性基体からの剥離を抑え,導電性基体に対する接着性を向上させることができる。
下引層としては,各種樹脂材料からなる樹脂層,アルマイト層等が挙げられる。樹脂層を形成する樹脂材料としては,ポリエチレン樹脂,ポリプロピレン樹脂,ポリスチレン樹脂,アクリル樹脂,塩化ビニル樹脂,酢酸ビニル樹脂,ポリウレタン樹脂,エポキシ樹脂,ポリエステル樹脂,メラミン樹脂,ポリカーボネート樹脂,ポリエステルカーボネート樹脂,ポリスルホン樹脂,フェノキシ樹脂,ポリアリレート樹脂,シリコーン樹脂,ポリビニルブチラール樹脂,ポリアミド樹脂等の樹脂,これらの樹脂を構成する繰返し単位のうちの2つ以上を含む共重合体樹脂,カゼイン,ゼラチン,ポリビニルアルコール,エチルセルロース等を挙げることができる。
また,下引層は,金属酸化物粒子を含有してもよい。この粒子を含有させることによって,下引層の体積抵抗値を調節し,導電性基体から感光層に対する電荷の注入を更に抑制できる。加えて,温度,湿度等の変化があっても感光体の電気特性を維持できる。金属酸化物粒子としては,たとえば,酸化チタン,酸化アルミニウム,水酸化アルミニウム,酸化スズ等の粒子を挙げることができる。下引層に金属酸化物等の粒子を含有させる場合,たとえば,前述の樹脂が溶解した樹脂溶液中に,これらの粒子を分散させて下引層形成用塗布液を調製し,この塗布液を導電性基体上に塗布することによって下引層を形成することができる。
樹脂溶液の溶剤としては,電荷発生層及び電荷輸送層の欄に記載した溶剤の他に,水,メタノール,エタノール,ブタノール等のアルコール類,エチレングリコールモノブチルエーテル,ジエチレングリコールモノブチルエーテル等のグライム系溶剤等を用いることができる。また,これらの溶剤を2種以上混合した混合溶剤を用いることもできる。
金属酸化物粒子を樹脂溶液中に分散させる方法としては,ボールミル,サンドミル,アトライタ,振動ミル,超音波分散機等を用いる一般的な方法が挙げられる。
下引層形成用塗布液中における樹脂と金属酸化物との合計含有量(重量)をCとし,下引層形成用塗布液中における溶剤の含有量(重量)をDとするとき,含有量Dに対する合計含有量Cの比率(C/D)は,1/99以上40/60以下(=0.01以上0.67以下)であることが好ましく,より好ましくは2/98以上30/70以下(=0.02以上0.43以下)である。
また下引層形成用塗布液中における金属酸化物含有量(重量)Fに対する樹脂含有量(重量)Eの比率(E/F)は,1/99以上90/10以下(=0.01以上9.0以下)であることが好ましく,より好ましくは5/95以上70/30以下(=0.05以上2.33以下)である。
下引層形成用塗布液の塗布方法としては,スプレー法,リングコート法,ロール塗布法,ブレード法,浸漬法等を挙げることができる。下引層形成用の塗膜は,乾燥工程を経た後,電荷発生層を形成してもよい。また,下引層形成用の塗膜の乾燥を電荷発生層形成用の塗膜の乾燥と兼ねてもよい。
下引層の膜厚は,0.01μm以上20μm以下であることが好ましく,より好ましくは0.1μm以上10μm以下である。下引層の膜厚が0.01μm未満であると,実質的に下引層として機能しなくなり,導電性基体の欠陥を被覆して均一な表面を得難いことがある。また,導電性基体から感光層に対する電荷の注入を防止することができなくなるので,感光層の帯電性の低下が生じることがある。下引層の膜厚が20μmを超えると,下引層を均一に形成することが難しく,また感光体の感度も低下することがあるので好ましくない。
1−5.保護層
また,電荷発生層および電荷輸送層の外周に保護層が設けられてもよい。保護層を設けることによって,電子写真感光体の耐磨耗寿命を向上させることができるとともに,電子写真感光体表面を帯電させる際のコロナ放電によって発生するオゾン,NOxなどの感光層に対する化学的悪影響を防止することができる。
また,電荷発生層および電荷輸送層の外周に保護層が設けられてもよい。保護層を設けることによって,電子写真感光体の耐磨耗寿命を向上させることができるとともに,電子写真感光体表面を帯電させる際のコロナ放電によって発生するオゾン,NOxなどの感光層に対する化学的悪影響を防止することができる。
保護層としては,たとえば硬化型樹脂,無機フィラー含有樹脂,無機酸化物などからなる層が用いられる。保護層に使用される樹脂としてはアクリロニトリル−ブタジエン−スチレン樹脂,アクリロニトリル−塩素化ポリエチレン−スチレン樹脂,オレフィン−ビニルモノマー共重合体,塩素化ポリエーテル,アリル樹脂,フェノール樹脂,ポリアセタール,ポリアミド,ポリアミドイミド,ポリアクリレート,ポリアリルスルホン,ポリブチレン,ポリブチレンテレフタレート,ポリカーボネート,ポリエーテルスルホン,ポリエチレン,ポリエチレンテレフタレート,ポリイミド,アクリル樹脂,ポリメチルベンテン,ポリプロピレン,ポリフェニレンオキシド,ポリスルホン,ポリスチレン,アクリロニトリル−スチレン樹脂,ブタジエン−スチレン共重合体,ポリウレタン,ポリ塩化ビニル,ポリ塩化ビニリデン,エポキシ樹脂などの樹脂が挙げられる。
保護層に添加されるフィラーとしては,たとえば,酸化チタン,酸化スズ,酸化亜鉛,酸化ジルコニウム,酸化インジウム,窒化ケイ素,酸化カルシウム,硫酸バリウム,インジウム−スズ酸化物(ITO),シリカ,コロイダルシリカ,アルミナ,カーボンブラック,フッ素系樹脂微粉末,ポリシロキサン系樹脂微粉末,高分子電荷輸送材料微粉末などが挙げられる。これらは単独で使用してもよいし,2種以上を併用してもよい。これらのフィラーは,分散性向上,表面性改質などの理由から無機物,有機物で表面処理されてもよい。このような表面処理のうち撥水性処理したフィラーとしては,シランカップリング剤で処理したもの,フッ素系シランカップリング剤処理したもの,高級脂肪酸で処理したもの,高分子材料などと共重合処理させたものなどが挙げられる。また無機物で処理されたものとしては,たとえば,フィラー表面をアルミナ,ジルコニア,酸化スズ,シリカなどで処理したものなどが挙げられる。
また保護層中には,ホールまたは電子を効率よく輸送することを目的に,前述した電荷輸送物質であるホール輸送物質または電子輸送物質を添加してもよい。また,帯電性の向上などを目的に,フェノール化合物,ハイドロキノン化合物,ヒンダードフェノール化合物,ヒンダードアミン化合物,ヒンダードアミンとヒンダードフェノールとが同一分子中に存在する化合物などを添加することもできる。さらに,可塑剤および/またはレベリング剤を添加してもよい。可塑剤としては,たとえば,ジブチルフタレート,ジオクチルフタレートなどの,一般に樹脂の可塑剤として使用されているものを用いることができる。可塑剤の使用量としては,前記樹脂に対して0.1重量%以上30重量%以下が適当である。レベリング剤としては,たとえば,ジメチルシリコーンオイル,メチルフェニルシリコーンオイルなどのシリコーンオイル類,側鎖にパーフルオロアルキル基を有するポリマー,オリゴマーなどが使用できる。レベリング剤の使用量としては,前記樹脂に対して,0.001重量%以上1重量%以下が適当である。
また,保護層を少なくとも硬化型樹脂を含む層で構成するためには,材料の分野で公知である種々の架橋反応,たとえば,ラジカル重合,イオン重合,熱重合,光重合,放射線重合などを用いることができる。また,表面エネルギーの低い硬化した保護層を実現させるために,公知の方法でシリコーン構造,パーフルオロアルキル構造,長鎖アルキル構造などを有する材料を架橋反応させてもよい。
前述のように保護層に電荷輸送機能を併せて持たせるために,電荷輸送機能を有する物質または高分子型電荷輸送物質を架橋反応させてもよい。このような保護層として,たとえば,架橋性オルガノポリシロキサン樹脂と,それに結合可能でかつ電荷輸送性を有する構造単位を含む化合物とを混ぜて硬化させたポリシロキサン樹脂からなる層が用いられることによって,優れた耐久性と電気特性とを有する保護層を実現することができる。
保護層は,適当な溶剤からなる溶媒中に前記樹脂ならびに必要に応じて前述のフィラーなどの添加剤を溶解または分散させて保護層形成用塗布液を調製し,この塗布液をスプレー法,リングコート法,ロールコーティング法,ブレード法,浸漬法などで電荷輸送層などの上に塗布することによって形成される。そして,形成された塗膜は乾燥工程に供される。
保護層形成用塗布液の溶媒に用いられる溶剤としては,たとえば,メタノール,エタノール,ブタノールなどのアルコール溶剤,エチレングリコールモノブチルエーテル,ジエチレングリコールモノブチルエーテルなどのグライム系溶剤,テトラヒドロフラン,1,4−ジオキサン,ジエチルエーテルなどのエーテル類,ヘキサン,ヘプタンなどの脂肪族有機溶剤,ベンゼン,ピリジンなどの芳香族有機溶剤,水などを用いることができ,これらの中でも水,アルコール類およびグライム系溶剤が好ましい。これらは1種を単独で,または2種以上を併用して用いることができる。なお保護層形成物質と保護層の下に設けられる下層の形成物質とが同じ溶剤に可溶である場合,導電性基体から遠い方の層として形成される保護層は,ロールコーティング法によって下層の上に塗布されることが好ましい。
保護層の膜厚は,0.5μm以上5μm以下であることが好ましく,より好ましくは1μm以上3μm以下である。保護層の膜厚が0.5μmより薄いと,ブレードまたは帯電ローラーの接触などによる外力を受けたとき,保護層が下層との界面から剥離しやすくなる。これは,保護層の膜厚が薄い場合,外力をうけた時に保護層自体では抗し切れずに下層との界面に常時力が負荷され,それが長期にわたると負荷されている力によって界面にずれが生じやすくなるためであると考えられる。また保護層の膜厚が薄いと,摩耗により保護層すべてが電子写真感光体の寿命前に消失する可能性がある。保護層の膜厚が5μmよりも厚いと,キャリアが保護層内を移動する過程において拡散するので,文字太りなどが生じやすくなり,感光体の感度低下および繰返しによる残留電位上昇が起こる恐れがある。
2.未乾燥塗膜の乾燥方法
以上のように導電性基体上に塗布されて形成される各層は,必要に応じて乾燥工程に供される。本来は,導電性基体上に形成されるすべての層が乾燥工程に供されることが好ましいけれども,乾燥工程に要するコストなどの面から,選択される1つ以上の層が乾燥工程に供されればよい。乾燥工程に供されない層には,特別な処理が行われることなく,たとえば室温で1時間放置されて,次の層が塗布される。
以上のように導電性基体上に塗布されて形成される各層は,必要に応じて乾燥工程に供される。本来は,導電性基体上に形成されるすべての層が乾燥工程に供されることが好ましいけれども,乾燥工程に要するコストなどの面から,選択される1つ以上の層が乾燥工程に供されればよい。乾燥工程に供されない層には,特別な処理が行われることなく,たとえば室温で1時間放置されて,次の層が塗布される。
なお,選択される1つ以上の層について乾燥が行われる場合,選択される層は少なくとも最表面の層を含むことが好ましい。最表面層の表面状態にむらがあり平滑でない場合,電気的および機械的外力に対する耐久性が低下してしまい,繰返し安定性および環境安定性が低下してしまうからである。ここで最表面層が保護層である場合,保護層は他の層と比較して薄いので,保護層の表面状態は保護層の下層の表面状態によっても影響を受けやすい。したがって保護層の下層についても乾燥工程に供されることが好ましい。
感光体の感光層を形成する塗膜の乾燥工程とは,種々の塗布方法によって塗布した塗膜中の溶媒を,実質的にそのほとんどすべてを蒸発させ,またその工程内で塗膜中の気泡の発生を抑えつつ,塗膜が平滑な表面を有するように処理する工程である。現在,その多くは熱風乾燥炉を用いて行われているけれども,熱風乾燥の場合,熱は塗膜表面から伝導していくので,まず塗膜表面が乾燥し始め,塗膜表面が乾燥硬化し,硬化膜を形成してしまう。このように表面に緻密な硬化膜が形成されると,塗膜内部で気化した溶媒が非常に抜け難くなり,乾燥に1時間から数時間と,非常に長い時間が必要となってしまう。赤外線乾燥を用いると,塗膜を内部から乾燥させることができるので,短時間での乾燥が可能になるとともに塗膜表面に硬化膜が形成されるのを防止することができる。
更に,具体的な乾燥装置を用いて,本発明をより詳細に説明する。
図1は,本発明の乾燥方法に好適に使用できる乾燥装置11の模式図である。図1中,1は赤外線ヒータ,2は赤外線ヒータ移動装置,3はコンベア,4は円筒状導電性基体,5は未乾燥の塗膜,6は導電性基体支持装置,7は導電性基体の進行方向である。
赤外線ヒータ1から照射される赤外線としては,4〜1000μmの波長を使用できるが,有機化合物を加熱するため,その吸収が大きい4〜25μmの領域に最大エネルギー波長を持つヒータが最適である。このようなヒータとしては,セラミックヒータ,シーズヒータ,ハロゲンランプヒータ,石英間ヒータがある。その内,寿命やヒータ形状を容易に変えられるセラミックヒータが最適である。また,赤外線ヒータ1の幅は塗膜5全体を均一に加熱するために円筒状導電性基体4より若干長いことが好ましい。また,その照射強度は,塗膜5とヒータ1との距離及びヒータ出力の制御で可能である。照射強度の設定は,塗膜5の構成材料,特に溶剤種により,適切なものが選ばれる。
赤外線ヒータ1の移動は赤外線ヒータ移動装置2によってなされる。赤外線ヒータ移動装置2は例えば,赤外線ヒータ1を設置した支持体を移動させるためのエアシリンダ,油圧シリンダ,チェーンなどを作動させて,例えば,赤外線ヒータ1を取り付けた壁などの支持体を,移動させることによって行うことができる。赤外線ヒータ1を支持体に取付けなくても十分な強度を有する場合には,支持体を使用せずに,赤外線ヒータ1自体を直接移動させることもできる。さらに赤外線ヒータ1の移動は,乾燥前に円筒状導電性基体4の肉厚や塗膜3の構成などを調査し,そのデータに基づいて行うことができ,これらの操作をコンピュータを用いて自動的に行うようにすることもできる。
コンベア3については,導電性基体支持装置6を乗せるような形状でも良いし,円筒状導電性基体4を両端で保持するような形状でも良い。また,乗せるような形状の場合はベルト状でも良いしローラーを並べた形でも良い。ただし,いずれにしても赤外線による加熱効率を保持する観点からは,できるだけ円筒状導電性基体から熱が逃げるのを抑えるため,円筒状導電性基体4の両端で保持するような形状あるいは乗せる形状の場合はベルト状でなおかつ網状なのが望ましい。
未乾燥塗膜5を有する円筒状導電性基体4に赤外線を照射すると,赤外線の照射された箇所で赤外線が吸収され,その箇所の温度が赤外線照射量に応じて上昇する。この時,上記円筒状導電性基体4と赤外線ヒータ1の照射面との距離が長くなると塗膜5への赤外線照射量が少なくなり温度の上昇程度が小さくなる。逆に上記距離が短くなると塗膜5への赤外線照射量が多くなり温度の上昇程度が大きくなる。
赤外線ヒータ1の照射面と円筒状導電性基体4との距離を調整する際には,例えば赤外線ヒータ1が円筒状導電性基体4の移動方向に平行な位置になるように移動可能であると同時に,設置された赤外線ヒータ1の一端を中心にして赤外線ヒータ1が回転して円筒状導電性基体4の移動方向に平行でない位置に移動可能でもある。しかし,赤外線ヒータ1が円筒状導電性基体4の移動方向に平行な位置に調整された場合,円筒状導電性基体4には赤外線ヒータ1からの赤外線が照射されている間,常に一定の熱量が供給されることとなるため,塗膜の温度が上昇し溶媒もかなり除去されている乾燥工程の中盤から後半にかけては,初期と同等の熱量供給の意味が薄れるどころか,電荷輸送物質そのものに損傷を与えることとなってむしろ電子写真感光体の特性に悪影響を及ぼす。よって赤外線ヒータ1は円筒状導電性基体4の移動方向に平行でない位置,それも乾燥初期には円筒状導電性基体4への供給熱量が大きく,乾燥終期にはこの供給熱量が小さくなるよう,円筒状導電性基体4の移動とともに赤外線ヒータ1と円筒状導電性基体4との距離が長くなるよう傾斜をつける必要がある。
また,乾燥開始時の円筒状電子写真感光体と乾燥開始位置の赤外線ヒータとの最短距離Dを小さくした場合はその分大きくなった円筒状導電性基体4への供給熱量を赤外線ヒータ1による乾燥開始位置から乾燥終了位置までの円筒状導電性基体4の移動距離Lを小さくしたり,赤外線ヒータ1の設定温度Tを小さくしたりすることで相殺するよう調整することもできる。逆に距離Dが大きい場合も距離Lを大きくしたり,赤外線ヒータ1の設定温度Tを大きくしたりすることで乾燥に必要な供給熱量を与えるよう調整することもできる。以上のことを鋭意検討した結果,未乾燥塗膜の膜厚が20〜40μmであり,未乾燥塗膜に含まれる溶剤の25℃における相対蒸発速度が1.7未満の場合には,条件1〜条件3を満たすように距離D,距離L,及び赤外線ヒータ1の設定温度Tを調整すれば良いことが判明した。
なお,距離の単位はcm,温度の単位は℃とする。
条件1:10≦D≦50
条件2:0.6<(D/L)<5.0
条件3:0.015≦(1+T/273)4/D2≦0.06
なお,距離の単位はcm,温度の単位は℃とする。
条件1:10≦D≦50
条件2:0.6<(D/L)<5.0
条件3:0.015≦(1+T/273)4/D2≦0.06
なお,「条件1:10≦D≦50」を規定した理由は,距離Dがあまり低いとわずかな距離のずれによって供給熱量が大きく変わり,逆にあまり大きいと効果的に乾燥させるためには赤外線ヒータの温度設定を非常に大きくしなければならなくなり,安全性,消費電力等の面で好ましくないことである。
また,塗膜5は,円筒状導電性基体4の中心軸を中心に導電性基体支持装置6に備えられた回転機構によって回転させながら乾燥させることが好ましい。すなわち,円筒状導電性基体4はその円筒状の形状により,円周方向に赤外線ヒータ1との距離のばらつきが発生する。そこで円筒状導電性基体4を回転させることにより導電性基体全体の加熱ムラを防ぐことができる。さらに本発明においては赤外線ヒータ1自体が円筒状導電性基体4の移動と共に遠ざかるよう設置されているため,あまり遅く回転すると,円周方向に供給熱量がばらついてしまい,加熱ムラが発生する。よって乾燥の間回転は速くする必要があるが,あまりあまり速いと遠心力による塗膜5の飛散が起こってしまう。よって鋭意検討した結果,導電性基体支持装置6で設定した回転速度およびコンベア3の速度の設定により,赤外線ヒータ1による乾燥終了位置までに円筒状導電性基体4の回転数Nが,条件4を満たすように,円筒状導電性基体4を回転させることが好ましい。
条件4:30≦N≦330
なお,導電性基体支持装置6は,コンベア3が円筒状導電性基体4を両端で保持する形状の場合は,コンベア3と一体であっても良い。
条件4:30≦N≦330
なお,導電性基体支持装置6は,コンベア3が円筒状導電性基体4を両端で保持する形状の場合は,コンベア3と一体であっても良い。
また,条件1〜条件4を満たすよう設定しても,赤外線ヒータ1と円筒状導電性基体4との間に設けた傾斜の角度φがあまり大きいと乾燥後半における供給熱量が不充分となり,逆に角度φがあまり小さいと乾燥後半における供給熱量が充分に小さくならず電子写真感光体の特性に損失が与えられることとなる。以上のことを鋭意検討した結果,さらに条件5を満たすよう角度φを調整すれば良いことが判明した。
条件5:0.75<D/(L×tanφ)<20
ただし,一つの赤外線ヒータ1で角度φを規定する場合,赤外線ヒータ1の端から端までを塗膜5の乾燥に用いるならば,距離Lは角度φによって一意的に定まってしまう。そこで,必要に応じて,側面から円筒状導電性基体4をコンベア上に乗せる,あるいは赤外線を覆いによって遮蔽する等の手段を取ることにより,距離Lを越える所での乾燥を省略することができる。
条件5:0.75<D/(L×tanφ)<20
ただし,一つの赤外線ヒータ1で角度φを規定する場合,赤外線ヒータ1の端から端までを塗膜5の乾燥に用いるならば,距離Lは角度φによって一意的に定まってしまう。そこで,必要に応じて,側面から円筒状導電性基体4をコンベア上に乗せる,あるいは赤外線を覆いによって遮蔽する等の手段を取ることにより,距離Lを越える所での乾燥を省略することができる。
また,塗膜5の温度が乾燥の進行と共に上昇するに従って,塗膜5の粘度が低下し流動性が増すため,重力方向に塗膜5が垂れる場合がある。この場合,円筒状導電性基体4を水平に設置して乾燥する場合は円周方向の膜厚が不均一となってしまい,鉛直方向に設置して乾燥する場合は軸方向に膜厚が不均一となってしまう傾向になる。そのため,水平方向に設置する場合は円筒状導電性基体4を円筒の中心軸を中心に回転させることにより塗膜5への重力の影響を均一化でき,円周方向の膜厚を均一に維持されるが,鉛直方向では回転では不均一化を防げない。よって,円筒状導電性基体4は水平方向に設置されることがより好ましい。その場合,乾燥装置における赤外線ヒータ1の設置位置は,コンベアの上下方向になる。また,乾燥装置にはブロワー,エアーシャワー等の送風ノズルが備えられてそれによって供給される熱風による乾燥を同時に行っても良い。その場合の気流の温度は50℃以上130℃以下が好ましい。
図2は,本発明の乾燥方法に好適に使用できる乾燥装置12の模式図である。図2中,1aは第一赤外線ヒータ,1bは第二赤外線ヒータ,2は赤外線ヒータ移動装置,3はコンベア,4は円筒状導電性基体,5は未乾燥の塗膜,6は導電性基体支持装置,7は導電性基体の進行方向である。
第一赤外線ヒータ1aについては図1で述べたのと同様である。第二赤外線ヒータ1bはその設置の仕方や移動手段等については第一赤外線ヒータ1aと同様であるが,図1の赤外線ヒータ1または図2の第一赤外線ヒータ1aに傾斜を設けた時と同じ理由から第一赤外線ヒータ1aによる供給熱量より小さくなるよう設置するのが好ましい。そこで鋭意検討した結果,第二赤外線ヒータ1bと円筒状導電性基体4との距離が,第一赤外線ヒータ1Aによる乾燥終了位置における第一赤外線ヒータ1aと円筒状導電性基体4との距離よりも長くなるよう調整されるのが好ましい。より具体的には,第二赤外線ヒータ1bの乾燥開始位置における赤外線ヒータ及びその位置に円筒状電子写真感光体が来た場合の該感光体との最短距離D2及び乾燥終了位置における赤外線ヒータ及びその位置に円筒状電子写真感光体が来た場合の該感光体との最短距離D3が第一赤外線ヒータ1aの乾燥終了位置における赤外線ヒータ及びその位置に円筒状電子写真感光体が来た場合の該感光体との最短距離よりも長くなるのが良い。
なお,図2においては第二赤外線ヒータ1bは単一なものとして記載したが,さらに複数の区画に分かれ,それぞれが独立に位置を調整できるようなものであっても良い。
以下,本発明の実施例について説明する。なお,本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
(実施例1)
直径40mm,全長340mmのアルミニウム製の円筒状導電性基体を準備し,以下のようにして各層を塗布形成した。
直径40mm,全長340mmのアルミニウム製の円筒状導電性基体を準備し,以下のようにして各層を塗布形成した。
A:下引層
酸化チタン(石原産業社製:TTO55A)21重量部と共重合ナイロン樹脂(東レ社製:アミランCM8000)39重量部とを,メタノール329重量部と1,3−ジオキソラン611重量部との混合溶剤に加え,ペイントシェーカを用いて8時間分散させた下引層形成用塗布液を調製した。この下引層形成用塗布液を塗布槽に満たし,導電性基体を塗布槽に浸漬した後引上げる浸漬塗布法によって,膜厚1.0μmの下引層を形成し,室温で1時間放置後,次の電荷発生層の塗布を行った。
酸化チタン(石原産業社製:TTO55A)21重量部と共重合ナイロン樹脂(東レ社製:アミランCM8000)39重量部とを,メタノール329重量部と1,3−ジオキソラン611重量部との混合溶剤に加え,ペイントシェーカを用いて8時間分散させた下引層形成用塗布液を調製した。この下引層形成用塗布液を塗布槽に満たし,導電性基体を塗布槽に浸漬した後引上げる浸漬塗布法によって,膜厚1.0μmの下引層を形成し,室温で1時間放置後,次の電荷発生層の塗布を行った。
B:電荷発生層
オキソチタニウムフタロシアニンとしてCu−Kα特性X線(波長:1.54Å)によるX線回折スペクトルにおいて少なくともブラッグ角(2θ±0.2°)27.2°に明確な回折ピークを示す結晶構造を有するオキソチタニウムフタロシアニンを2重量部と,ポリビニルブチラール樹脂(積水化学工業社製:エスレックBM−S)1重量部と,メチルエチルケトン97重量部とを混合し,ペイントシェーカにて分散処理して電荷発生層形成用塗布液を調製した。この電荷発生層形成用塗布液を,下引層と同様の浸漬塗布法にて,下引層上に塗布することによって,膜厚0.4μmの電荷発生層を下引層上に形成した。室温で1時間放置後,次の電荷輸送層の塗布を行った。
オキソチタニウムフタロシアニンとしてCu−Kα特性X線(波長:1.54Å)によるX線回折スペクトルにおいて少なくともブラッグ角(2θ±0.2°)27.2°に明確な回折ピークを示す結晶構造を有するオキソチタニウムフタロシアニンを2重量部と,ポリビニルブチラール樹脂(積水化学工業社製:エスレックBM−S)1重量部と,メチルエチルケトン97重量部とを混合し,ペイントシェーカにて分散処理して電荷発生層形成用塗布液を調製した。この電荷発生層形成用塗布液を,下引層と同様の浸漬塗布法にて,下引層上に塗布することによって,膜厚0.4μmの電荷発生層を下引層上に形成した。室温で1時間放置後,次の電荷輸送層の塗布を行った。
C:電荷輸送層
構造式(1)で示される電荷輸送物質10重量部と,バインダ樹脂であるポリカーボネート樹脂(三菱エンジニアリングプラスチックス社製:ユーピロンZ400)18重量部と,2,6−ジ−T−ブチル−4−メチルフェノール(BHT)0.1重量部とを,シクロヘキサノン112重量部に溶解させ,電荷輸送層形成用塗布液を調製した。なお,後述の評価2のために,塗布液には,下記構造式(2)で示されるトリフェニルアミンダイマー(Triphenylamine Dimer;略称:TPD:内標準物質)0.1重量部も加えた。
構造式(1)で示される電荷輸送物質10重量部と,バインダ樹脂であるポリカーボネート樹脂(三菱エンジニアリングプラスチックス社製:ユーピロンZ400)18重量部と,2,6−ジ−T−ブチル−4−メチルフェノール(BHT)0.1重量部とを,シクロヘキサノン112重量部に溶解させ,電荷輸送層形成用塗布液を調製した。なお,後述の評価2のために,塗布液には,下記構造式(2)で示されるトリフェニルアミンダイマー(Triphenylamine Dimer;略称:TPD:内標準物質)0.1重量部も加えた。
下引層及び電荷発生層を形成したアルミ製円筒状導電性基体上に上記塗布液をロール塗布法で塗布した後,図2に示すような乾燥装置を用い,ヒータ温度を350℃,L=30cm,D=30cm,φ=20°,D2=50cm,D3=50cmに調整し,さらにはコンベアの速さを18cm/分,円筒状導電性基体の回転数を60rpmに調整して30μmの膜厚の電荷輸送層を形成した。
(実施例2)
ヒータ温度を400℃,L=16cm,D=50cm,φ=20°に調整したこと以外は実施例1と同様にした。
(実施例3)
ヒータ温度を400℃,L=20cm,D=50cm,φ=7°に調整したこと以外は実施例1と同様にした。
(実施例4)
L=20cm,D=40cm,φ=7°に調整したこと以外は実施例1と同様にした。
(実施例5)
ヒータ温度を300℃,L=30cm,D=20cm,φ=40°に調整したこと以外は実施例1と同様にした。
(実施例6)
ヒータ温度を250℃,L=20cm,D=15cm,φ=45°に調整したこと以外は実施例1と同様にした。
(実施例7)
コンベアの速さを18cm/分,円筒状導電性基体の回転数を20rpmに調整したこと以外は実施例1と同様にした。
(実施例8)
コンベアの速さを25cm/分,円筒状導電性基体の回転数を20rpmに調整したこと以外は実施例1と同様にした。
(実施例9)
コンベアの速さを19cm/分,円筒状導電性基体の回転数を200rpmに調整したこと以外は実施例1と同様にした。
(実施例10)
D2=40cm,D3=40cmに調整したこと以外は実施例1と同様にした。
(実施例11)
第二赤外線ヒータをOFFにしたこと以外は実施例1と同様にした。
ヒータ温度を400℃,L=16cm,D=50cm,φ=20°に調整したこと以外は実施例1と同様にした。
(実施例3)
ヒータ温度を400℃,L=20cm,D=50cm,φ=7°に調整したこと以外は実施例1と同様にした。
(実施例4)
L=20cm,D=40cm,φ=7°に調整したこと以外は実施例1と同様にした。
(実施例5)
ヒータ温度を300℃,L=30cm,D=20cm,φ=40°に調整したこと以外は実施例1と同様にした。
(実施例6)
ヒータ温度を250℃,L=20cm,D=15cm,φ=45°に調整したこと以外は実施例1と同様にした。
(実施例7)
コンベアの速さを18cm/分,円筒状導電性基体の回転数を20rpmに調整したこと以外は実施例1と同様にした。
(実施例8)
コンベアの速さを25cm/分,円筒状導電性基体の回転数を20rpmに調整したこと以外は実施例1と同様にした。
(実施例9)
コンベアの速さを19cm/分,円筒状導電性基体の回転数を200rpmに調整したこと以外は実施例1と同様にした。
(実施例10)
D2=40cm,D3=40cmに調整したこと以外は実施例1と同様にした。
(実施例11)
第二赤外線ヒータをOFFにしたこと以外は実施例1と同様にした。
(比較例1)
ヒータ温度を400℃,L=10cm,D=50cm,φ=20°に調整したこと以外は実施例1と同様にした。
(比較例2)
ヒータ温度を300℃,L=16cm,D=10cm,φ=30°に調整したこと以外は実施例1と同様にした。
(比較例3)
L=20cm,D=15cm,φ=0°に調整したこと以外は実施例1と同様にした。
(比較例4)
L=16cm,D=50cm,φ=20°に調整したこと以外は実施例1と同様にした。
(比較例5)
L=30cm,D=20cm,φ=40°に調整したこと以外は実施例1と同様にした。
(比較例6)
コンベアの速さを45cm/分,円筒状導電性基体の回転数を500rpmに調整したこと以外は実施例1と同様にした。
(比較例7)
溶媒としてトルエンを用いたこと以外は実施例1と同様にした。
ヒータ温度を400℃,L=10cm,D=50cm,φ=20°に調整したこと以外は実施例1と同様にした。
(比較例2)
ヒータ温度を300℃,L=16cm,D=10cm,φ=30°に調整したこと以外は実施例1と同様にした。
(比較例3)
L=20cm,D=15cm,φ=0°に調整したこと以外は実施例1と同様にした。
(比較例4)
L=16cm,D=50cm,φ=20°に調整したこと以外は実施例1と同様にした。
(比較例5)
L=30cm,D=20cm,φ=40°に調整したこと以外は実施例1と同様にした。
(比較例6)
コンベアの速さを45cm/分,円筒状導電性基体の回転数を500rpmに調整したこと以外は実施例1と同様にした。
(比較例7)
溶媒としてトルエンを用いたこと以外は実施例1と同様にした。
(評価1)
以上の実施例1〜11及び比較例1〜7の各感光体について,温度/湿度が5℃/20%の条件で,ジェンテック社製試験装置CYNTHIA56SNを用いて,スコロトロン方式により−6.5kVでコロナ放電し,モノクロメータにて分光して得られた波長780nmの光(1.0μJ/cm2)で露光した後,80msec後の感光体の表面電位を測定した。
以上の実施例1〜11及び比較例1〜7の各感光体について,温度/湿度が5℃/20%の条件で,ジェンテック社製試験装置CYNTHIA56SNを用いて,スコロトロン方式により−6.5kVでコロナ放電し,モノクロメータにて分光して得られた波長780nmの光(1.0μJ/cm2)で露光した後,80msec後の感光体の表面電位を測定した。
(評価2)
以上の実施例1〜11及び比較例1〜7の塗膜の一部を切り出し,アセトンで抽出し,その抽出液を高速液体クロマトグラフィー装置(横河アナリティカルシステムズ社製AGILENT1100シリーズ)で,TPDを内標準物質として,残存溶剤量を定量した。なお,残存溶剤量は塗膜中の固形分重量に対する残存溶剤の重量比で示す。
以上の実施例1〜11及び比較例1〜7の塗膜の一部を切り出し,アセトンで抽出し,その抽出液を高速液体クロマトグラフィー装置(横河アナリティカルシステムズ社製AGILENT1100シリーズ)で,TPDを内標準物質として,残存溶剤量を定量した。なお,残存溶剤量は塗膜中の固形分重量に対する残存溶剤の重量比で示す。
上記の評価結果に基づき,下記の評価基準で総合評価を行った。
○:塗膜の状態良好,残留電位−130V未満,残留溶媒量1%未満
△:塗膜の状態良好,残留電位−130V以上−150V未満,残留溶媒量1%未満
×:塗膜の状態悪い,残留電位−150V以上,残留溶媒量1%以上のいずれか
以上の結果を表2に示す。表1には,乾燥時に円筒状導電性基体がL移動する間に何周回転したかも示した。
○:塗膜の状態良好,残留電位−130V未満,残留溶媒量1%未満
△:塗膜の状態良好,残留電位−130V以上−150V未満,残留溶媒量1%未満
×:塗膜の状態悪い,残留電位−150V以上,残留溶媒量1%以上のいずれか
以上の結果を表2に示す。表1には,乾燥時に円筒状導電性基体がL移動する間に何周回転したかも示した。
実施例1〜11や比較例1〜3より,D/Lが大きい(比較例1)と乾燥が不十分なため残留溶剤量が大きく,逆にD/Lが小さい(比較例2)と遠赤外線による電荷輸送物質の劣化が大きくなって残留電位が大きく,また,赤外線ヒータが感光体の進行方向と平行(比較例3)だと,やはり遠赤外線による電荷輸送物質の劣化が大きくなって残留電位が大きくなる。
さらに実施例1〜11や比較例4,5より,(1+T/273)4/D2が小さい(比較例4)と乾燥が不十分なため残留溶剤量が大きく,逆に(1+T/273)4/D2が大きい(比較例5)と遠赤外線による電荷輸送物質の劣化が大きくなって残留電位が大きくなる。
また,実施例7〜9及び比較例6の比較より,赤外線ヒータを通過する間の円筒状導電性基体の回転の回数が小さい(実施例8)と乾燥にムラが発生して乾燥の不充分な箇所ができてしまい,そのため残留溶媒量が充分に小さくならない。逆に回転数が大きい(比較例6)と,塗膜の飛散が起こり,塗膜の状態が悪くなるだけでなく,乾燥機内が汚れてしまった。
表3を総合的に検討すると,
条件1:10≦D≦50
条件2:0.6<(D/L)<5.0
条件3:0.015≦(1+T/273)4/D2≦0.06
条件4:30≦N≦330
の全てを満たす場合は,総合評価が○又は△になり,これらの条件の何れか1つでも満たさない場合には,総合評価が×になることが分かる。
条件1:10≦D≦50
条件2:0.6<(D/L)<5.0
条件3:0.015≦(1+T/273)4/D2≦0.06
条件4:30≦N≦330
の全てを満たす場合は,総合評価が○又は△になり,これらの条件の何れか1つでも満たさない場合には,総合評価が×になることが分かる。
さらに実施例1〜6の比較より,D/(L×tanφ)が大きい(実施例3、実施例4)と遠赤外線による電荷輸送物質の劣化が大きくなるため残留電位が大きくなり,またD/(L×tanφ)が小さい(実施例5、実施例6)と乾燥が不十分なため残留溶剤量が大きくなるため、残留電位が大きくなる傾向を示す。
具体的には,
条件5:0.75<D/(L×tanφ)<20
の関係が満たされるときに総合評価が良好になることが分かる。
具体的には,
条件5:0.75<D/(L×tanφ)<20
の関係が満たされるときに総合評価が良好になることが分かる。
また,実施例1〜11や比較例7より,蒸発速度の早い溶剤(比較例7)の場合は,塗膜内部の乾燥が終了する前に,塗膜の表面が乾燥硬化し,内部の溶剤が気化しにくくなったため,溶剤自体は蒸発しやすい割に残存溶剤が多く検出された。また,短時間で温度を上昇させたため,発泡も確認された。
また,実施例1,10,11の比較より,第二赤外線ヒータを低く設置した場合(実施例10)は遠赤外線による電荷輸送物質の劣化が大きくなって残留電位が大きくなる。また,第二赤外線ヒータによる乾燥が行われない(実施例11)と乾燥が不十分なため残留溶剤量が大きくなる。
ここまでの実施例及び比較例は,特定の膜厚(約30μm)の未乾燥塗膜を対象としているが,ここで示した結果は,未乾燥塗膜の膜厚が20〜40μm(又は25〜35μm)程度の場合でも,同様に当てはまると考えられる。
(参考例1)
赤外線ヒータが側面に設置され,円筒状導電性基体が鉛直に保持されたことを除いては図2と同様の構成の乾燥装置を用いたこと以外は実施例1と同様にした。
赤外線ヒータが側面に設置され,円筒状導電性基体が鉛直に保持されたことを除いては図2と同様の構成の乾燥装置を用いたこと以外は実施例1と同様にした。
(評価3)
以上の実施例1及び参考例1の各感光体について,渦電流式膜厚計(商品名:フィッシャースコープMMS―3AM,株式会社フィッシャー・インストルメンツ製)で,感光体の軸線方向を1CMごとに距離を合計33点測定した。その結果を図3に示す。なお,軸方向の位置は,鉛直に置いた場合は上端を0cmとして表した。
以上の実施例1及び参考例1の各感光体について,渦電流式膜厚計(商品名:フィッシャースコープMMS―3AM,株式会社フィッシャー・インストルメンツ製)で,感光体の軸線方向を1CMごとに距離を合計33点測定した。その結果を図3に示す。なお,軸方向の位置は,鉛直に置いた場合は上端を0cmとして表した。
実施例1と参考例1を比較すると,参考例1は実施例1より軸線方向に単調に膜厚が変化して膜厚分布が不均一であることが分かる。
1 赤外線ヒータ
1a 第一赤外線ヒータ
1b 第二赤外線ヒータ
2 赤外線ヒータ移動装置
3 コンベア
4 円筒状導電性基体
5 未乾燥塗膜
6 導電性基体支持装置
7 導電性基体の進行方向
11,12 乾燥装置
1a 第一赤外線ヒータ
1b 第二赤外線ヒータ
2 赤外線ヒータ移動装置
3 コンベア
4 円筒状導電性基体
5 未乾燥塗膜
6 導電性基体支持装置
7 導電性基体の進行方向
11,12 乾燥装置
Claims (4)
- 円筒状の導電性基体上に未乾燥塗膜を形成し,この未乾燥塗膜を乾燥させることによって感光層を形成する工程を備える円筒状電子写真感光体の製造方法であって,
未乾燥塗膜は,厚さ20〜40μmであり,
未乾燥塗膜に含まれる溶剤は,25℃における,{(酢酸n−ブチルが蒸発する時間)/(未乾燥塗膜に含まれる溶剤が蒸発する時間)}により定義される相対蒸発速度が1.7未満であり,
未乾燥塗膜の乾燥は,導電性基体の中心線を軸として導電性基体及び未乾燥塗膜を回転させ,かつ導電性基体及び未乾燥塗膜を並進移動させながら,第一赤外線ヒータを用いて未乾燥塗膜に赤外線を照射することによって行い,
第一赤外線ヒータは,導電性基体及び未乾燥塗膜が並進移動するにつれて,第一赤外線ヒータと未乾燥塗膜との間の距離が長くなるように傾斜して配置され,
乾燥終了までの導電性基体及び未乾燥塗膜の並進移動距離L(cm)と,乾燥開始時の第一赤外線ヒータと未乾燥塗膜との間の最短距離D(cm)と,第一赤外線ヒータの温度T(℃)と,乾燥終了までの導電性基体及び未乾燥塗膜の回転数N(回)は,条件1〜4で示す関係を満たすように設定される円筒状電子写真感光体の製造方法。
条件1:10≦D≦50
条件2:0.6<(D/L)<5.0
条件3:0.015≦(1+T/273)4/D2≦0.06
条件4:30≦N≦330 - 導電性基体の中心線を含み,かつ導電性基体及び未乾燥塗膜の並進移動方向に平行な平面に対する第一赤外線ヒータの傾斜角度φ(度)と,前記並進移動距離L(cm)と,前記距離D(cm)とが,条件5に示す関係を満たすように設定される請求項1に記載の方法。
条件5:0.75<D/(L×tanφ)<20 - 未乾燥塗膜は,第一赤外線ヒータからの赤外線による乾燥の後,第一赤外線ヒータよりも離れた位置に配置された第二赤外線ヒータからの赤外線によって乾燥される請求項1に記載の方法。
- 導電性基体は,その中心線が水平になるように配置される請求項1に記載の方法。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2006156447A JP2007323023A (ja) | 2006-06-05 | 2006-06-05 | 円筒状電子写真感光体の製造方法 |
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JP2006156447A JP2007323023A (ja) | 2006-06-05 | 2006-06-05 | 円筒状電子写真感光体の製造方法 |
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-
2006
- 2006-06-05 JP JP2006156447A patent/JP2007323023A/ja active Pending
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