JP2007321352A - 水洗大便器 - Google Patents

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Abstract

【課題】 従来のサイホン便器では、サイホン切れが起こる直前まで洗浄に十分なサイホン作用を維持しつつ、洗浄後のサイホン切れ音を確実に抑制することができなかった。
【解決手段】 給水手段からボウル6に洗浄水を導くように形成された導水路9と、ボウル6の排出口13に接続され、ボウル6内の汚物を排出するトラップ15と、トラップ15とボウル6とを区画するための隔壁29と、トラップ15の上流部に形成された導気孔30と、一端が導気孔30に連通し、一部が大気に開放されている導気通路24とを有し、導気孔30は、隔壁29下端より上部で、該隔壁29下端近傍に設けられているので、サイホン切れが起こる直前まで洗浄に十分なサイホン作用を維持しつつ、洗浄後のサイホン切れ音を抑制することができる。
【選択図】 図2

Description

本発明は、水洗大便器に関する。詳しくは、便器本体のボウルを洗浄し、ボウル内の溜水をサイホン作用により排出する水洗大便器に関する。
一般に、サイホン作用を利用して汚物を排出する水洗大便器(サイホン便器)では、便器本体のボウルの洗浄時に、洗浄水がボウル内に加わると、ボウル内の溜水が溢れてトラップに流れ込む。
このトラップに流れ込んだ水がトラップ内に満水になると、トラップ内が負圧になり、いわゆる「サイホン作用」が発生する。このサイホン作用により、ボウル内の溜水は一気にトラップ内に引き込まれ、ボウル内にあった汚物は、溜水と共にトラップ内に引き込まれ、ボウル内が空となり、その後、ボウルは再び封水される。
このボウル内が空となる際、ボウルからトラップ内に空気が入り込んでサイホン作用が消滅する状態、いわゆる「サイホン切れ」の状態が起こる。このサイホン切れの状態では、「ジャー」という洗浄音が所定時間継続した後に、ボウルからトラップの入口の上縁を介し、トラップ内に空気が強く引き込まれる「ボコ、ボコ」という不快音、いわゆる「サイホン切れ音」が発生する。
従来、このサイホン切れ音を抑制するために、例えば、特許文献1に記載されているような技術が提案されている。すなわち、便器本体の排泄空間とトラップとの間に隔壁を設け、隔壁の下端とトラップの溜水面の略中間位置で、かつトラップの側面位置に導気孔を形成し、この導気孔に空気が供給されるように、トラップ上端より上方で開口した導気管を導気孔に接続したサイホン便器が知られている(特許文献1)。
このようなサイホン便器では、トラップ内が満水となってサイホン作用が発生して負圧
状態になると、導気管内の溜水がトラップ内に引き込まれ、導気管内の空気が導気孔からトラップ内に導入されるようになっている。このように導気管内の空気がトラップ内に導入されることにより、サイホン作用によるボウル内の溜水をトラップ内へ吸引する力を弱めて、終始ボウル内の水位がトラップの入口の上縁よりも低下しないようにすることで、「サイホン切れ音」の発生を防止している。
特開平8-13593号公報
しかしながら、上述したような従来のサイホン便器においては、導気孔の位置が、隔壁の下端とトラップの溜水面の略中央位置(もしくは略中間位置以上)に設けられていたので、洗浄時に、トラップ内でサイホン作用が発生してから比較的早い時期に導気管内の溜水がトラップ内に引き込まれ、そして比較的早い時期に導気管内の空気が導気孔からトラップ内に導入されていた。これによりに、本来トラップ内でサイホン作用を発生させ続けて、ボウル内の溜水をトラップ内へ吸引させることが必要であるにもかかわらず、比較的早い時期にその吸引力が弱まり、比較的早い時期にボウル内の洗浄力が低下してしまうという問題があった。
また、従来のサイホン便器では、隔壁の下端とトラップの溜水面との間で、特にトラップの側面側に導気孔が設けられていた。これにより、導気孔が設けられたトラップの側面側ではトラップ内に引き込まれた水の流れが比較的速いため、その流れが速い水が影響して導気管内からトラップに流出される空気(空気量)が不安定になり、トラップに導気管内の空気を安定して供給(所望の空気量を安定して供給)することが困難であった。
さらに、隔壁の下端とトラップの溜水面との間で、特にトラップの側面側に導気孔が設けられていたので、汚物や紙などの排出経路に導気孔が位置することとなり、その汚物や紙が導気孔に衝突し、汚物や紙が導気孔に詰まってしまい、トラップに導気管内の空気を供給することができなくなるという問題もあった。
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、「サイホン切れ」が起こる直前まで洗浄に十分なサイホン作用を維持しつつ、洗浄後の「サイホン切れ音」を確実に抑制することができる水洗大便器を提供することを目的としている。
上記課題を解決して上記目的を達成するために、本発明のうち第1の態様に係るものは、給水手段からボウルに洗浄水を導くように形成された導水路と、ボウルの排出口に接続され、ボウル内の汚物を排出するトラップと、トラップとボウルとを区画するための隔壁と、トラップの上流部に形成された導気孔と、一端が導気孔に連通し、一部が大気に開放されている導気通路と、を有し、導気孔は、隔壁下端より上部で、隔壁下端近傍に設けたことを特徴とするものである。
このように構成された水洗大便器では、洗浄水が給水手段から導水路によってボウル内の溜水に導かれると、ボウル内の溜水はボウルの排出口からトラップ内に流れてトラップ内で満水となり、サイホン作用を引き起こす。このサイホン作用の初期には、導気通路内の溜水が導気孔を通ってトラップ内に排水され、大気が導気通路を通ってトラップ内に導入され始める。そして、ボウル内の水位が降下し、ボウルからトラップの入口の上縁を介し、トラップ内に空気が引き込まれる直前にサイホン作用が消滅する。
上記構成によれば、トラップ上流部で、かつ隔壁の下端より上部で、その隔壁下端近傍(以下「下端上部近傍」という。)に導気孔が設けられているので、ボウル内の水位が降下し、ボウルからトラップの入口の上縁を介し、トラップ内に空気が引き込まれる直前までサイホン作用を維持することができ、ボウルからトラップの入口の上縁を介し、トラップ内に空気が引き込まれる直前まで洗浄に十分なサイホン作用を維持することができる。
すなわち、トラップ上流部の隔壁下端上部近傍に導気孔が設けられているので、隔壁の下端とトラップの溜水面の略中央位置以上に導気孔が設けられた場合と比べ、サイホン作用によって、導気通路内のすべての溜水(もしくは、ほとんどの溜水)が導気孔からトラップ内に引き込まれるタイミングが遅く、導気通路内の空気が導気孔からトラップ内に引き込まれるタイミングが遅いので、その遅延時間分ボウル内の洗浄力を高めることができる。
さらに、ボウルからトラップ内に空気が強く引き込まれる際に生ずる「サイホン切れ音」を抑制するには、その「サイホン切れ音」が生ずる原因となる空気の流入部に導気孔を設けるのが有効であり、その「サイホン切れ音」が生ずる原因となる空気の流入部である「トラップ上流部の隔壁下端」上部近傍に導気孔を設けることにより、その導気孔からトラップ内に導気通路内の空気が引き込まれ、ボウルからトラップの入口の上縁を介し、トラップ内に空気が引き込まれる直前まで洗浄に十分なサイホン作用を維持することができる。
また、トラップ上流部の隔壁下端上部近傍に導気孔が設けられているので、サイホン作用により、ボウル内の汚物や紙がトラップ内へ引き込まれても、その汚物や紙が導気孔に衝突することがなく、導気孔に汚物や紙が詰まることもない。すなわち、ボウル内の汚物や紙がトラップ内へ引き込まれた場合には、その汚物や紙の重さにより、また汚物や紙がボウルからトラップ内へ引き込まれる際に汚物や紙に働く遠心力により、その導気孔が設けられているトラップ上流部の隔壁下端上部近傍を避けて汚物や紙が通過するので、その汚物や紙が導気孔に衝突することがなく、導気孔に汚物や紙が詰まることもない。
また、トラップ上流部の隔壁下端上部近傍付近では、トラップ内に引き込まれる水の流れが比較的遅いので、トラップ内を流れる水が影響して導気孔からトラップ内に流出される空気(空気量)が不安定になることなく、トラップ内に導気通路の空気(空気量)を安定して供給することができる。
本発明のうち第2の態様に係るものは、給水手段からボウルに洗浄水を導くように形成された導水路と、ボウルの排出口に接続され、ボウル内の汚物を排出するトラップと、トラップとボウルとを区画するための隔壁と、トラップの上流部に形成された導気孔と、一端が導気孔に連通し、一部が大気に開放されている導気通路と、を有し、導気孔の上端部は、隔壁下端より上部で、隔壁下端近傍に設けたことを特徴とするものである。
この構成によっても、上記第1の態様と同様の効果を有する。
本発明のうち第3の態様に係るものは、第1の態様または第2の態様に係る水洗大便器であって、導気孔は、トラップの下流側に傾斜して設けられたことを特徴とする。
この構成によれば、トラップの下流側に傾斜して導気孔が設けられているので、サイホン作用により、ボウル内の汚物や紙がトラップ内へ引き込まれても、その汚物や紙が導気孔にさらに衝突しにくくなり、さらに汚物や紙が導気孔に詰まることを防止することができる。
本発明のうち第4の態様に係るものは、第1から第3のいずれかの態様に係る水洗大便器であって、導気孔は、隔壁に一体的に形成されたことを特徴とする。
本発明のうち第5の態様に係るものは、第1から第4のいずれかの態様に係る水洗大便器であって、導気通路は、陶器により構成されたことを特徴とする。
本発明の水洗大便器によれば、サイホン切れが起こる直前まで洗浄に十分なサイホン作用を維持しつつ、洗浄後のサイホン切れ音を抑制することができる。
以下、本発明の水洗大便器の一実施形態について図面を参照にしながら説明する。
図1は、本発明の一実施形態における水洗大便器の上面図であり、図2は、図1に示す水洗大便器のI−I断面図であり、図3(a)は、図1、図2に示す水洗大便器のA−A断面図、図3(b)は、B−B断面図である。
図1〜図3に示すように、水洗大便器1は、陶器からなる便器本体2と、この便器本体2の後部に設けられ、上方に延び、かつ便器本体2を洗浄する洗浄水を収容する洗浄水タンク4とを備えている。
便器本体2は、その中央部から前部にかけて形成されたボウル6と、このボウル6の底部に位置するボウル排出口13の後方(下流側)に接続されたトラップ15とを備えている。
また、トラップ15は、その上流端であるトラップ吸込口(トラップ入口)26と、このトラップ吸込口26の下流側に位置するトラップ上側頂部15a及び下側頂部15bとを備え、トラップ吸込口26から上側頂部15a及び下側頂部15bに向かって斜め上方に延びた後、上側頂部15a及び下側頂部15bよりも下流側では下方に延びている。
また、便器本体2の内部において、洗浄水タンク4の下端に形成された給水口8とボウル6との間及びボウル6の周囲には導水路9が形成されている。この導水路9は、その上流部が給水口8を含むように形成されており、トラップ15の上側頂部15a付近からボウル6の背面に向かってトラップ15の上面に沿って延びている。
さらに、ボウル6の上縁にはリム孔12が形成され、ボウル6の正面側下部には、トラップ吸込口26に向かって開口するゼット孔14がボウル排出口13に隣接して形成されている。
導水路9は、その途中でリム導水路10とゼット導水路11とに分岐している。洗浄水導水路10は、ボウル6のリム孔12に連通するように形成されており、ゼット導水路11は、ボウル6を迂回するようにボウル6の外周に沿って、ゼット孔14を含むように形成されている。このゼット孔14は、ゼット導水路11を流れた水をトラップ15へ向けて噴き出すようになっている。
さらに、洗浄水タンク4の給水口8には排水弁16が設けられている。ボウル6を洗浄する際に洗浄操作レバー18を回すと、この排水弁16が引き上げられて所定時間給水口8が開放され、洗浄水タンク4内に収容されている洗浄水が導水路10、11内に流れるようになっている。
また、水洗大便器1は、導気通路24をさらに備えている。この導気通路24は、洗浄水タンク4の内部前面に沿って洗浄水タンク4と一体に形成され、上端が大気開放されている吸気室25と、吸気室25と連通し、便器本体2の内部における導水路9及びトラップ15の側面の一部分に沿って一体に形成された導気室27とによって構成されている。
この導気室27は、トラップ15の吸込口26の上端近傍から上側頂部15aにかけてトラップ15の側面に沿って斜め上方に延びるように形成されている。さらに、導気室27は、トラップ15の上側頂部15aより上方では、導水路9の側面に沿って斜め上方に延びている。導気室27の下端には、導気孔30が設けられている。
この導気孔30は、トラップ15の上流部に形成され、トラップ15とボウル6とを区画する隔壁29の下端より上部で、隔壁29の下端近傍(下端上部近傍)に設けられている。この導気孔30により、トラップ15と導気室27とが連通されている。
本実施形態では、導気孔30および導気室27を陶器で構成し、その導気孔30および導気室27を陶器からなる隔壁29と一体的に形成している。しかしながら、これに限らず、必ずしも導気孔30および導気室27を隔壁29と一体的に形成する必要はなく、また導気孔30および導気室27を陶器で構成する必要もない。
また、洗浄待機時の水洗大便器1においては、ボウル6内にほぼトラップ15の下側頂部15bと同じ高さまで溜水が溜まった状態となるが、この状態では、導気室27内にもトラップ15及び導気孔30を通じてボウル6内の水位と同水位の溜水が溜まるようになっている。ただし、導気室27内の溜水がボウル6内の溜水よりも少量であること、ボウル6内にはリム孔12から新たな洗浄水が加わるが導気室27には新たな水が加わらないことなどから、サイホン作用が発生すれば、導気室27内の水位降下の速度がボウル6内の水位降下の速度よりも速くなる。
なお、本実施形態の導気孔30は、縦が約10mmで、横が約60mmの略矩形形状をしている。
吸気室25は、吸気室25の下端部(洗浄水タンク4の底部の連通部)で導気室27の上端部と連通している。そして、この吸気室25は、洗浄水タンク4の底部から洗浄水タンク4の内部前面に沿って上方に延びるように形成されている。吸気室25の上端部には、吸気孔20が設けられており、この吸気孔20を介して導気通路24が大気開放されている。
吸気孔20は、図2に示すように、洗浄水タンク4内の水面より上部に形成され、吸気孔20から導気通路24内に洗浄水タンク4内の水が浸入しないようになっている。この吸気孔20の詳細は、図4を用いて後述する。
つぎに、上述した洗浄水タンク4の内部前面に設けられた吸気孔20について説明する。
図4(a)は、本発明の一実施形態における洗浄水タンクに設けられた吸気孔の部分拡大図であり、図4(b)は、同洗浄水タンクに設けられた吸気孔の図4(a)C-C線断面図である。
図4(a)に示すように、吸気孔20は、陶器からなる洗浄水タンク4の内部前面に設けられている。この吸気孔20は、洗浄水タンク4と一体成形された吸気室25の端面の一部に略円形の穴をあけ加工を行うことにより形成される。本実施形態では、吸気孔20を吸気室25の出口断面の略中央部(出口断面略中央部)に一つ設けている。
なお、本実施形態では、吸気孔20の断面形状を、孔の位置や直径を便宜変更して容易に加工しやすい円形形状としているが、吸気孔20の断面形状については、円形形状である必要はなく、三角形状や四角形状や八角形状などでもよい。また、吸気孔20を吸気室25の出口略中央部に一つ設けるようにしたが、これに限らず、吸気孔20を吸気室25の出口略中央部以外の箇所に設けてもよく、また吸気孔20を2以上設けるようにしてもよい。本実施形態の吸気孔20は、直径が約15mmの円形形状をしている。
また、吸気孔20は、図4(b)に示すように所定の厚みをもっている。本実施形態の吸気孔20の厚みは、約10mmである。
なお、本実施形態では、吸気孔20および吸気室25を陶器で構成し、その吸気孔20および吸気室25を陶器である洗浄水タンク4と一体的に形成しているが。これに限らず、必ずしも吸気孔20および吸気室25を洗浄水タンク4と一体的に形成する必要はなく、また吸気孔20および吸気室25を陶器で構成する必要もない。
つぎに、上述した吸気孔20に嵌着される音低減部材について説明する。本実施形態では、吸気孔20に嵌着(装着)される音低減部材として、吸音性、消音性を有するゴム管28(弾性体)を用いている。図5は、図4に示す吸気孔に嵌着されるゴム管の斜視図である。
図5に示すように、ゴム管28は、中空状で円筒形状(管状)をしている。これは、本実施形態では吸気孔20を円形形状にしていることから、その吸気孔20にゴム管28が嵌着される関係上、吸気孔20の内形形状とゴム管28の外形形状を略同一形状にする必要があるからである。そして、ゴム管28の外周中央部には、ゴム管28の外径よりも少し大きい外径の突起部が設けられている。これにより、ゴム管28が吸気孔20に押し込まれると、この突起部が吸気孔20の外周部に当たるので、その位置でゴム管28が吸気孔20に装着されることとなる。このゴム管28は、耐塩素性、耐水性、耐寒性などに優れているエチレンプロピレンジエンゴム(EPDM)を材質としている。
なお、ゴム管28の外形は、吸気孔20の断面形状(内形形状)と略同一形状にする必要があるため、たとえば吸気孔20の断面形状が三角形状であれば、それに伴ってゴム管28の外形も三角形状になり、また吸気孔20の断面形状が八角形状であれば、それに伴ってゴム管28の外形も八角形状になる。また、吸気孔20が2以上設けられた場合には、ゴム管28もその個々の吸気孔20に取り付けられる。ここで、ゴム管28の外径は、吸気孔20の直径より2mm程度大きくしている。これにより、吸気孔20にゴム管28がはめ込まれると、ゴム管28の弾性力により、接着剤なしにゴム管28を吸気孔20に固定できる。本実施形態のゴム管28は、内径を約8mmとし、外径を約17mmとしている。
次に、上述した本発明の一実施形態における水洗大便器1の動作(作用)について説明する。
図6は、本発明の一実施形態における水洗大便器の洗浄工程開始から洗浄工程終了までの一連の工程を説明する側面断面図である。詳しくは、図6(a)は、洗浄待機時の動作説明図であり、図6(b)は、洗浄開始によってサイホン作用が発生したサイホン作用発生初期の動作説明図であり、図6(c)は、サイホン作用継続時の動作説明図であり、図6(d)はサイホン作用終了時の動作説明図である。
ここで、図6(a)〜図6(d)において、ボウル6及び導気室27の水面をそれぞれ実線L1及び二点鎖線L2で示し、水及び空気の流れをそれぞれ実線矢印及び破線矢印で示している。
まず、図6(a)に示すように、洗浄待機時の水洗大便器1の状態では、ボウル6内、トラップ15内、及び導気室27内のいずれも、ほぼトラップ15の下側頂部15bとほぼ同じ高さまで溜水が溜まっている。また、洗浄前の洗浄水タンク4内には洗浄水が溜められているが、その水位は吸気孔20よりも下方に位置している。
つぎに、図6(b)に示すように、水洗大便器1の洗浄操作レバー18を回すと、洗浄工程が開始され、排水弁16が引き上げられ、給水口8が所定時間開放され、洗浄水タンク4内に収容されている洗浄水が導水路9内に流れる。導水路9内の洗浄水は、洗浄水導水路10を流れてリム孔12からボウル6の内面に沿って下方に流れる水と、ゼット導水路11を流れてボウル6を迂回してゼット孔14へ流れる水とに分かれる。洗浄水導水路10からリム孔12を経てボウル6内へ流れた洗浄水は、ボウル6の内面を洗浄し、ボウル6内の溜水と共にボウル排出口13からトラップ15内へ流れ込む。一方、ゼット導水路11からボウル6を迂回してゼット孔14に流れた水は、このゼット孔14よりトラップ15に向けて噴き出される。
さらに、洗浄水がボウル排出口13及びゼット孔14よりトラップ15内に流れ込み、トラップ15内の水位が満水になると、トラップ15内が負圧状態になり、ボウル6からトラップ15内へ溜水を吸引するサイホン作用が開始する。このサイホン作用により、ボウル6内の汚物は溜水と共にトラップ15内へ引き込まれる。
本実施の形態では、導気孔30をトラップ15内に引き込まれる水の流れが比較的遅い位置であるトラップ上流部の隔壁29下端上部近傍に設けているので、このサイホン作用により、ボウル6内の汚物や紙がトラップ15内へ引き込まれても、その汚物や紙が導気孔30に衝突することがなく、導気孔30に汚物や紙が詰まることもない。
そして、導気室27は、導気孔30によりトラップ15と連通しているため、上述のサイホン作用により、導気室27内の溜水は導気孔30を経てトラップ15内に引き込まれ、導気室27内の水位が降下する。ここで、上述したように、導気室27内の溜水がボウル6内の溜水よりも少量であること、ボウル6内にはリム孔12から新たな洗浄水が加わるが導気室27には新たな水が加わらないことなどから、サイホン作用が発生すると、導気室27内の水位がボウル6内の水位よりもはやく降下する。
つぎに、図6(c)に示すように、サイホン作用が継続することにより、導気室27内の溜水のほとんどが導気孔30からトラップ15内に引き出され、導気室27内の水位が導気孔30の上縁よりも降下すると、導気室27内の空気が、導気孔30を経てトラップ15内へ引き込まれる。また、導気室27内のほとんどの溜水が導気孔30からトラップ15内に引き出される時期とほぼ同時期に、ボウル6内の溜水(洗浄水も含む)がボウル6内の空気を巻き込んでトラップ15内に引き込まれる。
そして、導気孔30からトラップ15内に空気が引き込まれることにより、その分トラップ15内の負圧が小さくなり、サイホン作用によるボウル6からトラップ15内へ溜水を吸引する力が弱まる。このとき、ボウル6内の水位は、トラップ吸込口26の上縁よりも上方に位置しており、ボウル6からトラップ15の入口の上縁を介し、トラップ15内に空気が引き込まれる少し前の状態となっている。
本実施の形態では、トラップ15内に引き込まれる水の流れが比較的遅い位置、すなわち、トラップ15上流部の隔壁29下端上部近傍に導気孔30を設けているので、トラップ15内を流れる水が影響して導気孔30からトラップ15内に流出される空気(空気量)が不安定になることなく、トラップ15内に導気通路24の空気(空気量)を安定して供給することができる。
また、導気室27内の溜水がほとんどトラップ15内に引き出されて空気のみとなった状態で、ボウル6内の空気を巻き込んだ溜水(洗浄水も含む)がトラップ15に引き込まれると、その溜水に含まれる空気が圧縮された状態で導気室27内に入り込み、そして、導気室27内に入り込んだ圧縮空気が開放される際に「ジャー」という不快な音を生ずる。また、導気室27内がほとんど空気のみとなっている状態で、導気孔30の表面を空気を巻き込んだ溜水などが擦れるようにして流れることによっても、導気孔30付近の空気の圧力が変動し「ジャー」という不快な音が生ずる。また、トラップ15内の負圧状態が解消して、導気通路24に水が逆流するときにも不快な音が生ずる。そして、これらの音は、導気通路24で共鳴し、その導気通路24での共鳴音が洗浄水タンク4内に伝播する。
本実施形態では、導気通路24出口に設けられた吸気孔20に吸音性、消音性を有するゴム管28が嵌着されているため、導気通路24内の共鳴音がこのゴム管28の側壁に衝突することにより、また導気通路24内の共鳴音がゴム管28内部に入り込むことにより消音し、使用者にとって特に耳障りにならない程度まで共鳴音を小さくすることができる。
このように、導気通路24を新たに設けることによって、導気通路24が新たな音の発生源となり、導気通路24内で不快な共鳴音が発生することとなるが、この場合でも、吸気孔20にゴム管28を設けることにより、導気通路24内の共鳴音を低減することができ、使用者にとって特に耳障りにならない程度まで音を小さくすることができる。
さらに、図6(d)に示すように、サイホン作用によるボウル6からトラップ15内へ溜水を吸引する力は弱まりつつも持続しているため、ボウル6内の水位がさらに低下する。そして、ボウル6内の水位がトラップ吸込口26の上縁よりも下り、空気が入り込むことでサイホン作用が終了する。
このように、サイホン作用により導気通路24内の空気がトラップ15内に引き込まれる場合でも、本実施形態では、トラップ15上流部の隔壁29下端上部近傍に導気孔30を設けているので、導気通路24内の空気がトラップ15内に導入されるタイミングを引き伸ばすことができ、そのタイミングまで洗浄に十分なサイホン作用を維持することができるとともに、導気通路24内の空気が導気孔30からトラップ15内に導入され、サイホン作用による負圧を低減できるので、ボウル6の空気がトラップ吸込口26の上縁部からトラップ15内へ強く引き吸い込まれることがなく、「ボコ、ボコ」という不快な音、すなわち「サイホン切れ音」も抑制することができる。なお、実施例では、ボウル6内の水位がトラップ吸込口26の上縁よりも下がり、空気が入り込むことでサイホン作用が終了するようにしたが、導気孔30からトラップ15内への空気の導入により、トラップ吸込口26の上縁よりも水位が上の状態でサイホン作用を終了することも可能である。
すなわち、この導気孔30がトラップ15内の高い位置にあると、サイホン作用が発生してから比較的早い時期に導気室27内の溜水がトラップ15内に引き込まれ、比較的早い時期に導気孔30からトラップ15内へ導入されることになり、サイホン作用によるボウル6内の溜水がトラップ15内に吸引する力も比較的早期に弱まってしまい、比較的早い時期に洗浄力が低下してしまうが、本実施形態では、ボウル6内からトラップ15内に空気が引き込まれる箇所に導気孔30が設けられているので、ボウル6内からトラップ15内に空気が引き込まれる直前までサイホン作用を維持することができ、洗浄に十分なサイホン作用を維持することができる。
なお、本実施形態では、導気孔30を、トラップ15の上流部で、隔壁29下端上部近傍に設けていると説明したが、図2および図6に示すように、導気孔30の上端部も、トラップ15の上流部で、隔壁29下端上部近傍に位置している。
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される
次に本発明の変形例について説明する。
(1) 本実施形態では、導気孔30をトラップ15の方向に向けて開口しているが、これに限らず、この導気孔30の開口部を、トラップ15の下流側に傾斜して設けてもよい。これにより、サイホン作用により、ボウル6内の汚物や紙がトラップ15内へ引き込まれたときでも、その汚物や紙が導気孔30にさらに衝突しにくくなり、さらに汚物や紙が導気孔30に詰まることを防止することができる。
本発明の一実施形態における水洗大便器の上面図である。 図1に示す水洗大便器のI-I断面図である。 (a) 図1、図2に示す水洗大便器のA−A断面図である。 (b) 図1、図2に示す水洗大便器のB−B断面図である。 (a) 本発明の一実施形態における洗浄水タンクに設けられた吸気孔の部分拡大図である。(b) 同洗浄水タンクに設けられた吸気孔の図4(a)C−C線断面図である。 図4に示す吸気孔に嵌着されるゴム管の斜視図である。 (a) 本発明の一実施形態における水洗大便器の洗浄待機時の動作説明図である。 (b) 同水洗大便器のサイホン作用発生初期の動作説明図である。 (c) 同水洗大便器のサイホン作用継続時の動作説明図である。 (d) 同水洗大便器のサイホン作用終了時の動作説明図である。
符号の説明
1 水洗大便器
2 便器本体
4 洗浄水タンク
6 ボウル
8 給水口
9 導水路
12 リム孔
13 ボウル排出口
14 ゼット孔
15 トラップ
16 排水弁
18 洗浄操作レバー
19 導気管
20 吸気孔
24 導気通路
25 吸気室
26 トラップ吸込口
27 導気室
28 ゴム管
29 隔壁
30 導気孔

Claims (5)

  1. 便器本体のボウルを洗浄し、該ボウル内の溜水をサイホン作用により排出する水洗大
    便器であって、
    給水手段から前記ボウルに洗浄水を導くように形成された導水路と、
    前記ボウルの排出口に接続され、該ボウル内の汚物を排出するトラップと、
    該トラップと前記ボウルとを区画するための隔壁と、
    前記トラップの上流部に形成された導気孔と、
    一端が前記導気孔に連通し、一部が大気に開放されている導気通路と、を有し、
    前記導気孔は、前記隔壁下端より上部で、該隔壁下端近傍に設けたことを特徴とする水洗大便器。
  2. 便器本体のボウルを洗浄し、該ボウル内の溜水をサイホン作用により排出する水洗大
    便器であって、
    給水手段から前記ボウルに洗浄水を導くように形成された導水路と、
    前記ボウルの排出口に接続され、該ボウル内の汚物を排出するトラップと、
    該トラップと前記ボウルとを区画するための隔壁と、
    前記トラップの上流部に形成された導気孔と、
    一端が前記導気孔に連通し、一部が大気に開放されている導気通路と、を有し、
    前記導気孔の上端部は、前記隔壁下端より上部で、該隔壁下端近傍に設けたことを特徴とする水洗大便器。
  3. 前記導気孔は、前記トラップの下流側に傾斜して設けられたことを特徴とする請求項1または請求項2記載の水洗大便器。
  4. 前記導気孔は、前記隔壁に一体的に形成されたことを特徴とする請求項1から請求項3のいずれかに記載の水洗大便器。
  5. 前記導気通路は、陶器により構成されたことを特徴とする請求項1から請求項4のいずれかに記載の水洗大便器。

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