JP2007317474A - 燃料電池システム - Google Patents

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Abstract

【課題】低効率運転時に、酸化オフガスを希釈できると共に燃料電池に酸化ガスを適切に供給できる燃料電池システムを課題とする。
【解決手段】燃料電池システムは、圧縮機により圧送される酸化ガスが燃料電池をバイパスして流れるように、供給路と排出路とを接続するバイパス路と、バイパス路を開閉するバイパス弁と、排出路に設けられた調圧弁と、を備える。バイパス弁は、低効率運転を行うときに開弁される。バイパス弁における流路の有効断面積は、低効率運転を行うときの圧縮機による酸化ガスの吐出流量及び吐出圧と、低効率運転を行うときの調圧弁の最小開度とに基づいて決定されている。
【選択図】図4

Description

本発明は、燃料電池に対して酸化ガスをバイパス可能な燃料電池システムに関するものである。
燃料電池自動車などに搭載される燃料電池は、アノードに供給された燃料ガス中の水素とカソードに供給された酸化ガス中の酸素との化学反応によって、電力を発生すると共に水を生成する。生成された水は、燃料オフガス及び酸化オフガスの流れによって、燃料電池内部から両ガスの排出路へと排出される。一般に、燃料電池から排出される燃料オフガスは、水素希釈器を通り、水素濃度が低減された状態で大気中へ排出される。一方、燃料電池から排出される酸化オフガスは、そのまま大気中へと排出される。
ところが、発電効率が低い状態で燃料電池を運転(いわゆる低効率運転)している場合には、アノードから水素が排出されるだけでなくカソードからも水素(主にポンピング水素)が排出されることがあり、酸化オフガス中に水素が含まれる可能性がある。このような場合には、酸化オフガスをそのまま大気中へと排出することは環境上好ましくない。
酸化オフガス中の水素濃度を低減できるようにした特許文献1に記載の燃料電池システムは、酸化ガスの供給路と酸化オフガスの排気路とを連通するバイパス路と、バイパス路を開閉するバイパス弁と、を備える。燃料電池システムは、酸化オフガス中の水素濃度が高まったときにバイパス弁を開弁し、酸化オフガスに酸化ガスを導入することで、酸化オフガス中の水素濃度を低減するようにしている。また、この燃料電池システムでは、排気路に設けた調圧弁により、燃料電池に対する酸化ガス供給圧を調整している。
特開2004−172027号公報
しかし、特許文献1に記載の燃料電池システムでは、バイパス弁の構成について何ら言及されていない。このため、バイパス弁の開弁によって、酸化オフガス中の水素濃度を低減できるものの、燃料電池への酸化ガスの供給量及び供給圧に過不足が生じ、低効率運転時に要求される酸化ガスを燃料電池に供給できないおそれがあった。
本発明は、低効率運転時に、酸化オフガスを希釈できると共に燃料電池に酸化ガスを適切に供給できる燃料電池システムを提供することをその目的としている。
上記目的を達成するべく、本発明の燃料電池システムは、燃料電池に供給される酸化ガスが流れる供給路と、供給路に設けられ、酸化ガスを燃料電池に圧送する圧縮機と、燃料電池から排出される酸化オフガスが流れる排出路と、酸化ガスが燃料電池をバイパスして流れるように、供給路と排出路とを接続するバイパス路と、バイパス路を開閉するバイパス弁と、排出路に設けられた調圧弁と、を備えた燃料電池システムにおいて、バイパス弁は、燃料電池システムが通常運転に比して電力損失の大きな低効率運転を行うときに開弁され、バイパス弁における流路の有効断面積は、低効率運転を行うときの圧縮機による酸化ガスの吐出流量及び吐出圧と、低効率運転を行うときの調圧弁の最小開度とに基づいて決定されているものである。
かかる構成によれば、低効率運転時にバイパス弁が開弁するので、バイパス路の下流へと分流された酸化ガスで酸化オフガスを希釈できる。また、バイパス弁における流路の有効断面積を決定するための要素として、低効率運転の際の圧縮機による酸化ガスの吐出流量、吐出圧、及び調圧弁の最小開度を用いることで、燃料電池が要求する流量及び圧力の酸化ガスを燃料電池に供給できると共に、酸化オフガスを希釈するのに必要な流量の酸化ガスを酸化オフガスに供給できる。
好ましくは、調圧弁は、低効率運転を行うとき、全開よりも小さい所定の開度で開弁される。
かかる構成によれば、調圧弁を全開で使用する場合に比べて、バイパス弁の有効断面積を小さくできる。これにより、バイパス弁を小型化できる。
好ましくは、バイパス弁はバタフライ弁である。
かかる構成によれば、バイパス弁を開閉する際の応答性を高めることができる。また、バイパス弁が全開されたときに、バイパス弁での酸化ガスの抵抗を小さくできる
本発明の燃料電池システムの一態様によれば、調圧弁及びバイパス弁を制御する制御装置を備え、制御装置は、低効率運転の際、調圧弁及びバイパス弁を協調制御することが好ましい。
こうすることで、燃料電池の発電に必要な酸化ガス量を応答性良く燃料電池に供給することが可能となる。
好ましくは、低効率運転は所定の低温時に行われるとよい。
また好ましくは、低効率運転は燃料電池システムの起動時に行われるとよい。
低効率運転を行えば燃料電池の自己発熱が促進されるので、例えば燃料電池の暖機が望ましい低温の起動時に低効率運転を行うことで、燃料電池を好適に暖機にできる。
以上説明したように、本発明の燃料電池システムによれば、低効率運転時に、燃料電池に酸化ガスを適切に供給しながら酸化オフガスを希釈できる。
以下、添付図面を参照して、本発明の好適な実施形態に係る燃料電池システムについて説明する。
図1は、燃料電池システム1の構成図である。
本実施形態の燃料電池システム1は、燃料電池自動車(FCHV)、電気自動車、ハイブリッド自動車などの車両に搭載することができるが、もちろん車両のみならず各種移動体(例えば、船舶や飛行機、ロボットなど)や定置型電源にも適用可能である。
燃料電池システム1は、燃料電池2と、酸化ガスとしての空気(酸素)を燃料電池2に供給する酸化ガス配管系3と、燃料ガスとしての水素ガスを燃料電池2に供給する燃料ガス配管系4と、燃料電池2に冷媒を供給して燃料電池2を冷却する冷媒配管系5と、システム1の電力を充放電する電力系6と、システム全体を統括制御する制御装置7と、を備えている。
燃料電池2は、例えば固体高分子電解質型で構成され、多数の単セルを積層したスタック構造を備えている。単セルは、イオン交換膜からなる電解質の一方の面に空気極(カソード)を有し、他方の面に燃料極(アノード)を有し、さらに空気極及び燃料極を両側から挟みこむように一対のセパレータを有している。一方のセパレータの酸化ガス流路2aに酸化ガスが供給され、他方のセパレータの燃料ガス流路2bに燃料ガスが供給される。供給された燃料ガス及び酸化ガスの電気化学反応により、燃料電池2は電力を発生する。燃料電池2での電気化学反応は発熱反応であり、固体高分子電解質型の燃料電池2の温度は、およそ60〜80℃となる。
酸化ガス配管系3は、燃料電池2に供給される酸化ガスが流れる供給路11と、燃料電池2から排出された酸化オフガスが流れる排出路12と、酸化ガスが燃料電池2をバイパスして流れるバイパス路17と、を有している。供給路11の下流端は酸化ガス流路2aの上流端に連通し、排出路12の上流端は酸化ガス流路2aの下流端に連通している。酸化オフガスには、燃料電池2の空気極側で生成されるポンピング水素などが含まれる(詳細は後述)。また、酸化オフガスは、燃料電池2の電池反応により生成された水分を含むため高湿潤状態となっている。
供給路11には、エアクリーナ13を介して酸化ガス(外気)を取り込むコンプレッサ14(圧縮機)と、コンプレッサ14によって燃料電池2に圧送される酸化ガスを加湿する加湿器15と、が設けられている。加湿器15は、供給路11を流れる低湿潤状態の酸化ガスと、排出路12を流れる高湿潤状態の酸化オフガスとの間で水分交換を行い、燃料電池2に供給される酸化ガスを適度に加湿する。
燃料電池2に供給される酸化ガスの背圧は、カソード出口付近の排出路12に配設された調圧弁16によって調圧される。調圧弁16は、例えばステップモータで駆動する弁であり、制御装置7に電気的に接続されている。調圧弁16の弁開度は、制御装置7によって、全開、半開及び全閉を含む任意の範囲で調整可能に構成されている。調圧弁16の近傍には、排出路12内の圧力を検出する圧力センサP1が設けられている。酸化オフガスは、調圧弁16及び加湿器15を経て最終的に排ガスとしてシステム外の大気中に排気される。
バイパス路17は、供給路11と排出路12とを接続している。バイパス路17と供給路11との供給側接続部Bは、コンプレッサ14と加湿器15との間に位置している。また、バイパス路17と排出路12との排出側接続部Cは、加湿器15の下流側に位置している。
バイパス路17には、任意の開度に設定可能なバイパス弁18が設けられている。バイパス弁18は、各種の動力により駆動可能に構成することができ、例えば、モータ、ソレノイド又はパイロット式(圧力差)などにより駆動する開閉弁を用いることができる。バイパス弁18内の流路の有効断面積は、後述する要素に基づいて決定されている。バイパス弁18は、制御装置7に接続されており、バイパス路17を開閉する。なお、以下の説明では、バイパス弁18の開弁により、バイパス路17を通ってバイパス弁18の下流へとバイパスされる酸化ガスを「バイパスエア」と称呼する。
燃料ガス配管系4は、水素供給源21と、水素供給源21から燃料電池2に供給される水素ガスが流れる供給路22と、燃料電池2から排出された水素オフガス(燃料オフガス)を供給路22の合流点Aに戻すための循環路23と、循環路23内の水素オフガスを供給路22に圧送するポンプ24と、循環路23に分岐接続されたパージ路25と、を有している。元弁26を開くことで水素供給源21から供給路22に流出した水素ガスは、調圧弁27その他の減圧弁、及び遮断弁28を経て、燃料電池2に供給される。パージ路25には、水素オフガスを水素希釈器(図示省略)に排出するためのパージ弁33が設けられている。
冷媒配管系5は、燃料電池2内の冷却流路2cに連通する冷媒流路41と、冷媒流路41に設けられた冷却ポンプ42と、燃料電池2から排出される冷媒を冷却するラジエータ43と、ラジエータ43をバイパスするバイパス流路44と、ラジエータ43及びバイパス流路44への冷却水の通流を設定する切替え弁45と、を有している。冷媒流路41は、燃料電池2の冷媒入口の近傍に設けられた温度センサ46と、燃料電池2の冷媒出口の近傍に設けられた温度センサ47と、を有している。温度センサ47が検出する冷媒温度は、燃料電池2の内部温度(以下、燃料電池2の温度という。)を反映する。冷却ポンプ42は、モータ駆動により、冷媒流路41内の冷媒を燃料電池2に循環供給する。
電力系6は、高圧DC/DCコンバータ61、バッテリ62、トラクションインバータ63、トラクションモータ64、及び各種の補機インバータ65,66,67を備えている。高圧DC/DCコンバータ61は、直流の電圧変換器であり、バッテリ62から入力された直流電圧を調整してトラクションインバータ63側に出力する機能と、燃料電池2又はトラクションモータ64から入力された直流電圧を調整してバッテリ62に出力する機能と、を有する。高圧DC/DCコンバータ61のこれらの機能により、バッテリ62の充放電が実現される。また、高圧DC/DCコンバータ61により、燃料電池2の出力電圧が制御される。
トラクションインバータ63は、直流電流を三相交流に変換し、トラクションモータ64に供給する。トラクションモータ64(動力発生装置)は、例えば三相交流モータである。トラクションモータ64は、燃料電池システム1が搭載される例えば車両100の主動力源を構成し、車両100の車輪101L,101Rに連結されている。補機インバータ65、66、67は、それぞれ、コンプレッサ14、ポンプ24、冷却ポンプ42のモータの駆動を制御する。
制御装置7は、内部にCPU,ROM,RAMを備えたマイクロコンピュータとして構成される。CPUは、制御プラグラムに従って所望の演算を実行して、後述する低効率運転の制御など、種々の処理や制御を行う。ROMは、CPUで処理する制御プログラムや制御データを記憶する。RAMは、主として制御処理のための各種作業領域として使用される。
制御装置7は、ガス系統(3,4)や冷媒系統5に用いられる圧力センサ(P1)及び温度センサ(46,47)、燃料電池システム1が置かれる環境の外気温を検出する外気温センサ51、並びに、車両100のアクセル開度を検出するアクセル開度センサなどの各種センサからの検出信号を入力し、各構成要素(コンプレッサ14、調圧弁16及びバイパス弁18など)に制御信号を出力する。また、制御装置7は、低温始動時など燃料電池2を暖機する必要がある場合には、ROMに格納されている各種マップを利用して発電効率の低い運転を行う。
図2は、燃料電池2の出力電流(以下、「FC電流」という。)と出力電圧(以下、「FC電圧」という。)との関係を示す図である。図2は、燃料電池システム1が比較的発電効率の高い運転(以下、「通常運転」という。)を行った場合を実線で示し、燃料電池システム1が比較的発電効率の低い運転(以下、「低効率運転」という。)を行った場合を点線で示している。
燃料電池システム1を通常運転する場合には、電力損失を抑えて高い発電効率が得られるように、エアストイキ比を1.0以上(理論値)に設定した状態で燃料電池2を運転する(図2の実線部分参照)。ここで、エアストイキ比とは酸素余剰率をいい、水素と過不足なく反応するのに必要な酸素に対して供給される酸素がどれだけ余剰であるかを示す。
これに対し、燃料電池2を暖機する場合には、電力損失を大きくして燃料電池2の温度を上昇させるべく、エアストイキ比を1.0未満(理論値)に設定した状態で燃料電池2を運転する(図2の点線部分参照)。エアストイキ比を低く設定して低効率運転を行うと、水素と酸素との反応によって取り出せるエネルギーのうち、電力損失分(すなわち熱損失分)が積極的に増大されるため、燃料電池2を迅速に暖機することができる一方、燃料電池2の空気極にはポンピング水素が発生する。
図3は、ポンピング水素の発生メカニズムを説明するための図であり、(A)は通常運転時の電池反応を示し、(B)は低効率運転時の電池反応を示している。
燃料電池2の各単セル80は、電解質膜81と、この電解質膜81を挟持するアノード及びカソードを備えている。水素(H2)を含む燃料ガスはアノードに供給され、酸素(O2)を含む酸化ガスはカソードに供給される。アノードへ燃料ガスが供給されると、下記式(1)の反応が進行して、水素が水素イオンと電子に乖離する。アノードで生成された水素イオンは電解質膜81を透過してカソードへ移動する一方、電子はアノードから外部回路を通ってカソードへ移動する。
アノード: H2 →2H+ + 2e- ・・・(1)
ここで、図3(A)に示す通常運転の場合、すなわちカソードへの酸化ガスの供給が十分な場合には(エアストイキ比≧1.0)、下記式(2)が進行して酸素、水素イオン及び電子から水が生成される。
カソード: 2H+ + 2e- + (1/2)O2 → H2O ・・・(2)
一方、図3(B)に示す低効率運転の場合、すなわちカソードへの酸化ガスの供給が不足している場合には(エアストイキ比<1.0)、不足する酸化ガス量に応じて下記式(3)が進行し、水素イオンと電子が再結合して水素が生成される。生成された水素は、酸化オフガスとともにカソードから排出されることになる。なお、乖離した水素イオンと電子が再結合することによってカソードで生成される水素、すなわちカソードにおいて生成されるアノードガスをポンピング水素と呼ぶ。
カソード: 2H+ + 2e- → H2 ・・・(3)
このように、カソードへの酸化ガスの供給が不足した状態では、酸化オフガスにポンピング水素が含まれる。そこで、低効率運転を行う際には、制御装置7はバイパス弁18を開弁制御し、コンプレッサ13により供給される酸化ガスの一部をバイパス路17に分流するようにしている。この分流されたバイパスエアによって酸化オフガス中の水素濃度を希釈して、水素濃度が安全な範囲にまで低減された酸化オフガスを排出路12から外部に排気するようにしている。
ここで、低効率運転は、燃料電池2を暖機することを目的として、主として燃料電池システム1の起動時に行われるものであり、特に低温起動時にのみ行われるものである。例えば、燃料電池システム1の起動時に外気温センサ51により検出された外気温が、所定の低温(例えば0℃以下)であったときに、燃料電池システム1の低効率運転が行われ、その後、燃料電池2の暖機が完了したところで、燃料電池システム1は低効率運転から通常運転に移行する。バイパス弁18は、低効率運転を行う燃料電池システム1の起動時に開弁し、低効率運転後の通常運転では、閉弁する。なお、低効率運転では、コンプレッサ14及び調圧弁16が制御することで行われる。
さて、図4を参照して、バイパス弁18内の流路の有効断面積の決定方法について説明する。この有効断面積は、燃料電池2への適切な酸化ガスの供給と酸化オフガス中の水素の希釈とを両立できるものであり、バイパス弁18が開弁する低効率運転時のコンプレッサ14による酸化ガスの吐出流量及び吐出圧と、低効率運転時の調圧弁16の最小開度とに基づいて決定される。以下、低効率運転時の要求値を考慮して具体的に説明する。
低効率運転の際、燃料電池2への酸化ガスの目標流量は、燃料電池2が低効率発電を行うのに必要な流量となるように、低効率発電の目標値から任意に設定される。
また、低効率運転の際、バイパス弁18の下流へと流すバイパスエアの目標流量は、酸化オフガス中の水素濃度を安全な範囲まで低減できるように、低効率発電の目標値における酸化オフガス中の水素濃度から任意に設定される。このパイパスエアの目標流量は、ROMに格納したマップから低効率発電時の目標値と対応するデータを読み出すことで設定される。ただし、酸化オフガス中の水素濃度を適宜検出し、ROMに格納したマップから検出水素濃度と対応するデータを読み出すことで、パイパスエアの目標流量を設定してもよい。なお、酸化オフガス中の水素濃度は、圧力センサP1の検出結果に基づいて検出することもできるし、排気路12に設けた図示省略の水素ガスセンサにより検出することもできる。
したがって、低効率運転の際には、コンプレッサ14から吐出されて供給側接続部Bに至る酸化ガスの目標流量(つまり、コンプレッサ14が目標とする酸化ガスの吐出流量。)は、燃料電池2への酸化ガスの目標流量と、バイパスエアの目標流量とを合計した値となる。そして、各目標流量を達成するための調圧弁16及びバイパス弁18の開度は、図4のように決まる。
図4は、燃料電池2の酸化ガス供給圧力である一次圧(横軸)と、調圧弁16又はバイパス弁18内の流路の有効断面積(縦軸)と、の関係を表すグラフである。
横軸の一次圧は、コンプレッサ14による酸化ガスの吐出圧に相当する。また、ここでは、調圧弁16は、二次側圧力(下流側圧力)が圧力P1となるように設定される。圧力P1は、例えば100kPa前後である。
曲線L1は、調圧弁16が上記目標流量を達成するために所定の開度になったときの、調圧弁16内の流路の有効断面積を示している。また、曲線L2は、調圧弁16及びバイパス弁18が上記目標流量を達成するためにそれぞれ所定の開度になったときの、調圧弁16内の流路の有効断面積とバイパス弁18内の流路の有効断面積とを合計した合計有効断面積を示している。したがって、ある一次圧における合計有効断面積から調圧弁16内の流路の有効断面積を減算した値が、バイパス弁18が上記目標流量を達成するために所定の開度になったときの、バイパス弁18内の流路の有効断面積の値となる。
図4を分析するに、先ず、例えば一次圧P2の設定では、曲線L1及びL2に示すように、調圧弁16内の流路の有効断面積及び合計有効断面積を大きくする必要があることが分かる。このときの調圧弁16の開度は全開またはそれに近い大きな開度であり、この開度を使用しながら分流比を保つためには、バイパス弁18内の流路の有効断面積を大きくする必要がある。このことは結局、一次圧P2の設定では、バイパス弁18の流路の実断面積を大きくしてバイパス弁18自体を大きくする必要があることを意味する。なお、分流比とは、供給側接続部Bから燃料電池2に流れる酸化ガス流量に対するバイパスエア流量の割合をいう。
以上の考察によれば、バイパス弁18を小型化するためには、低効率運転の際に、圧力P2よりも、好ましくは合計有効断面積が急増する圧力P3よりも、更に好ましくは圧力P4(P4>P3を満たす。)よりも、大きな一次圧となるような仕様にするとよい。そのためには、低効率運転の際に、一次圧が圧力P4よりも大きくなるように、全開又はこれに近い開度よりも小さい開度に調圧弁16を絞り仕様にすればよい。なお、圧力P3又はP4は、例えば150kPa前後である。
一方で、調圧弁16の絞りを大きくすると、調圧弁16によって可変される燃料電池2の酸化ガス供給圧力(一次圧)が大きくなりすぎてしまう。このため、コンプレッサ14がその酸化ガス供給圧力に対応する吐出圧を確保できなくなる。例えば、コンプレッサ14による酸化ガスの限界吐出圧を圧力P6とした場合には、圧力P6を超える一次圧の範囲では、調圧弁16を絞り仕様にすることはできない。なお、圧力P6は例えば250kPa前後である。
以上の考察によれば、低効率運転の際には、圧力P6よりも小さい一次圧となるような仕様にする必要がある。特に、コンプレッサ14の限界吐出圧に関して安全率を考慮すると、低効率運転の際には、圧力P5(P5<P6を満たす。)よりも小さい一次圧となるような仕様にすることが好ましい。そのためには、低効率運転の際に、調圧弁16に絞りの限界を設ける、つまり調圧弁16の最小開度を設ければよく、具体的には、調圧弁16内の流路の有効断面積が、圧力P6での有効断面積S2以上となるようにすればよい。なお、有効断面積S1は、調圧弁16を設定できる最小の開度のときの値であり、低効率運転時に許容できる調圧弁16の有効断面積S2よりも小さい。また、有効断面積S2としては、例えば25mm〜42mmである。
以上によれば、低効率運転の際には、調圧弁16は、一次圧がP3からP5までの範囲を成立範囲とするように所定の開度で絞り気味に開弁され、狙い値としては一次圧がP4からP5までの範囲となるように所定の開度で開弁される。したがって、バイパス弁18内の流路の有効断面積は、一次圧の成立範囲(P3からP5まで)に対応してSB1からSB3までを満たすようなものであればよく、一次圧の狙い値(P4からP5まで)に対応してSB2からSB3までを満たすようなものであればよい。例えば、バイパス弁18の全開時における、バイパス弁18内の流路の有効断面積をSB2に決定し、それに対応したバイパス弁18を構成すればよい。有効断面積SB2としては、例えば120mm〜175mmである。
以上説明したように、本実施形態の燃料電池システム1によれば、バイパス弁18内の流路の有効断面積を上記のように決定している。つまり、コンプレッサ14が目標とする低効率運転時の酸化ガスの吐出流量と、コンプレッサ14による酸化ガスの吐出圧(一次圧)と、低効率運転時の調圧弁16の最小開度とに基づいて、バイパス弁18内の流路の有効断面積が決定されている。これにより、バイパス弁18の小型化を実現しつつ、低効率発電時に、燃料電池2が要求する流量及び圧力の酸化ガスを燃料電池2に供給できると共に、酸化オフガスを希釈するのに必要な流量のバイパスエアを酸化オフガスに供給できる。
ここで、低効率運転時には、バイパス弁18における流路の有効断面積を上記の狙い値で一定にしてもよいが、もちろんこれを可変するようにしてもよい。すなわち、バイパス弁18における流路の有効断面積が、上記の有効断面積の範囲(例えばSB2からSB3までの範囲)で可変するように、バイパス弁18の開度を制御装置7により制御してもよい。そして、所定の分流比を確保するように、バイパス弁18の開度の制御に対応して、調圧弁16の開度を制御装置7で制御してもよい。
特に、低効率運転の際には、バイパス弁18と調圧弁16とを協調制御するようにすれば、燃料電池2の発電に必要な酸化ガス量を応答性良く燃料電池2に供給することが可能となる。そして、この協調制御に好適となるようにするには、バイパス弁18を応答性の高いバラフライ弁で構成することが好ましい。バタフライ弁を用いることで、バイパス弁18を全開で使用するときに、バイパス弁18を通過するバイパスエアの抵抗を小さくすることもできる。
また、低効率運転時に、バイパス弁18における流路の有効断面積を上記の狙い値で一定にしつつ、燃料電池2の状態(例えば燃料電池の電流値)に応じて、制御装置7で調圧弁16の開度を制御し、燃料電池に必要な酸化ガス流量を微調整するようにしてもよい。あるいは、低効率運転時に、バイパス弁18における流路の有効断面積を上記の狙い値で一定にしつつ、供給路11に設けた酸化ガス供給圧を検出する圧力センサや、上記の圧力センサP1の検出結果に応じて、制御装置7で調圧弁16の開度を制御するようにしてもよい。
上記例では、システム起動時に低効率運転を行う場合を例示したが、例えばシステム要求電力が所定値以下になった場合やシステム停止指示があった場合に低効率運転を行っても良い。
燃料電池システムの構成図である。 FC電流とFC電圧との関係を示すグラフである。 ポンピング水素の発生メカニズムを説明するための図であり、(A)は通常運転時の電池反応を示し、(B)は低効率運転時の電池反応を示す。 燃料電池の酸化ガス供給圧力である一次圧と、調圧弁又はバイパス弁内の流路の有効断面積と、の関係を表すグラフである。
符号の説明
1:燃料電池システム、2:燃料電池、7:制御装置、11:供給路、12:排出路、14:コンプレッサ(圧縮機)、15:加湿器、16:調圧弁、17:バイパス路、18:バイパス弁、19:絞り弁、B:供給側接続部、C:排出側接続部

Claims (6)

  1. 燃料電池に供給される酸化ガスが流れる供給路と、
    前記供給路に設けられ、前記酸化ガスを前記燃料電池に圧送する圧縮機と、
    前記燃料電池から排出される酸化オフガスが流れる排出路と、
    前記酸化ガスが前記燃料電池をバイパスして流れるように、前記供給路と前記排出路とを接続するバイパス路と、
    前記バイパス路を開閉するバイパス弁と、
    前記排出路に設けられた調圧弁と、を備えた燃料電池システムにおいて、
    前記バイパス弁は、当該燃料電池システムが通常運転に比して電力損失の大きな低効率運転を行うときに開弁され、
    前記バイパス弁における流路の有効断面積は、前記低効率運転を行うときの前記圧縮機による酸化ガスの吐出流量及び吐出圧と、前記低効率運転を行うときの前記調圧弁の最小開度とに基づいて決定されている、燃料電池システム。
  2. 前記調圧弁は、前記低効率運転を行うとき、全開よりも小さい所定の開度で開弁される、請求項1に記載の燃料電池システム。
  3. 前記バイパス弁は、バタフライ弁である、請求項1又は2に記載の燃料電池システム。
  4. 前記調圧弁及び前記バイパス弁を制御する制御装置を備え、
    前記制御装置は、前記低効率運転の際、前記調圧弁及び前記バイパス弁を協調制御する、請求項1ないし3のいずれか一項に記載の燃料電池システム。
  5. 前記低効率運転は、所定の低温時に行われる、請求項1ないし4のいずれか一項に記載の燃料電池システム。
  6. 前記低効率運転は、当該燃料電池システムの起動時に行われる、請求項1ないし5のいずれか一項に記載の燃料電池システム。

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