JP2007314875A - 鋼管の熱処理用酸化防止剤組成物 - Google Patents

鋼管の熱処理用酸化防止剤組成物 Download PDF

Info

Publication number
JP2007314875A
JP2007314875A JP2007114861A JP2007114861A JP2007314875A JP 2007314875 A JP2007314875 A JP 2007314875A JP 2007114861 A JP2007114861 A JP 2007114861A JP 2007114861 A JP2007114861 A JP 2007114861A JP 2007314875 A JP2007314875 A JP 2007314875A
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
steel pipe
antioxidant composition
heat treatment
glass frit
antioxidant
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Pending
Application number
JP2007114861A
Other languages
English (en)
Inventor
Kazumune Shimoda
一宗 下田
Tomio Yamakawa
富夫 山川
Koichi Okada
浩一 岡田
Yasuyoshi Hidaka
康善 日高
Sumio Iida
純生 飯田
Tadashi Dohara
忠志 堂原
Keiji Matsumoto
圭司 松本
Kosuke Murakami
浩亮 村上
Kenji Takeuchi
賢治 竹内
Shuichi Akiyama
修一 秋山
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Nippon Steel Corp
Takara Standard Co Ltd
Original Assignee
Sumitomo Metal Industries Ltd
Takara Standard Co Ltd
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Sumitomo Metal Industries Ltd, Takara Standard Co Ltd filed Critical Sumitomo Metal Industries Ltd
Priority to JP2007114861A priority Critical patent/JP2007314875A/ja
Publication of JP2007314875A publication Critical patent/JP2007314875A/ja
Pending legal-status Critical Current

Links

Abstract

【課題】鋼管の熱処理において鋼管の酸化を防止してスケールの発生を抑制して、得られた鋼管に凹み疵(ローラーマーク)が生じるのを防止できる、鋼管の熱処理用酸化防止剤組成物を提供する。
【解決手段】鋼管の熱処理用酸化防止剤組成物を、軟化点の異なるガラスフリットを複数含む構成とする。複数のガラスフリットのうち、少なくとも一のガラスフリットは1200℃における粘度が1000〜1000000dPa・sであるとともに、他の一のガラスフリットは700℃における粘度が1000〜1000000dPa・sであることを特徴とする。
【選択図】なし

Description

本発明は、鋼管の熱処理工程において好適に用いられる酸化防止剤組成物、該酸化防止剤組成物を用いた鋼管の熱処理方法、および、継目無管の製造方法に関する。
高品質な継目無鋼管の製造プロセスにおいて、マンネスマン法やユージン法による素管の製造工程の後、素管の寸法精度を向上させる等の目的で、冷間抽伸、冷間圧延等の冷間加工が施される。そして、該冷間加工により生じた加工ひずみや残留応力を除去すると共に、再結晶させるために熱処理が施される。また、最終的な製品とする前段階で、さらに製品熱処理が施される。
熱処理は、再結晶化をおこさせるべく、1200℃程度の高温で行われる。このような高温においては、鋼管の表面にスケールが発生し、このスケールが鋼管の搬送用ローラー表面に付着し、その付着量が増えビルドアップして、ローラー上に凸部が形成されてしまい、後続の鋼管の表面に凹み疵(ローラーマーク)が発生するという問題があった。
このため、鋼管表面の酸化を防止してスケールの発生を防ぐ必要があった。ステンレス鋼の酸化防止剤として、特許文献1に、ステンレス鋼の高温酸化防止用セラミックスコーティング液が開示されている。
特開平6−101067号公報
鋼管の熱処理において表面酸化を防止するために使用されてきた従来の酸化防止剤は、上記の特許文献1のものを含め、無機成分、有機バインダー、有機溶媒からなる酸化防止剤であった。この酸化防止剤は、常温で鋼管に塗布乾燥することによって、綺麗な酸化防止膜を形成することができるものであった。
しかし、有機溶媒を含有しているため、乾燥前に炉内に投入すると、有機溶媒が突沸して、酸化防止被膜が剥離してしまうという問題があった。そのため、塗布した酸化防止剤は十分に乾燥させる必要があった。しかし、乾燥工程には半日程度かかってしまうため、この工程を製造ラインに組み込むことができず、製造工程上不利なものであった。
また、たとえ、酸化防止剤を十分に乾燥させてから、鋼管を炉内に入れたとしても、有機バインダーが燃焼することにより発煙したり、有機バインダーが焼失してしまい、無機成分が剥がれ落ちてしまうという問題があった。
そこで、本発明は、鋼管の熱処理において鋼管の酸化を防止してスケールの発生を抑制し、得られた鋼管に凹み疵(ローラーマーク)が生じるのを防止できる、鋼管の熱処理用酸化防止剤組成物、および、該酸化防止剤組成物を用いた鋼管の熱処理方法および継目無管の製造方法を提供することを課題とする。
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意研究して、以下の発明を完成させた。
第1の本発明は、軟化点の異なるガラスフリットを複数含むことを特徴とする、鋼管の熱処理用酸化防止剤組成物である。ここで、本発明における「ガラスフリット」とは、原料を溶解し、水中または空気中で急冷して作ったガラスで、一般的にカレット、または粉末状のものをいう。また、本発明における「熱処理」とは、冷間抽伸、冷間圧延等の冷間加工後に施される熱処理および製品化前に施される製品熱処理のいずれも含むものであり、鋼管を、好ましくは400℃〜1300℃の範囲で加熱する処理をいう。
第1の本発明によれば、酸化防止剤組成物は軟化点の異なるガラスフリットを複数含んでいるので、酸化防止剤組成物が異なる温度域に応じて適正な粘度を維持する。したがって、熱処理の各段階、すなわち加熱炉内での加熱、均熱工程、加熱炉内から取り出した後の移動工程において、鋼管の表面に十分な皮膜が形成される。これにより、鋼管表面と外気との接触が可能な限り抑制され、スケールの発生を防止できる。そして、製造される鋼管に凹み疵(ローラーマーク)が発生するのを防止することができる。
もし、酸化防止剤組成物が軟化点の低いガラスフリットのみ含む場合、該酸化防止剤組成物は、高温域において適正な粘度を確保できないため、酸化防止剤組成物が鋼管表面から脱落してしまう。そして、加熱炉内温度が最高温度近傍(1200℃〜1300℃)に保持されている時に、鋼管表層と外気との接触を抑制できず、スケールの発生を防止できない。
一方、酸化防止剤組成物が軟化点の高いガラスフリットのみ含む場合、酸化防止剤組成物は、加熱炉内の比較的低温域(400℃〜800℃)において鋼管表層と外気との接触を抑制できず、スケールの発生を防止できない。
第1の本発明において、複数のガラスフリットのうち、少なくとも一のガラスフリットは1200℃における粘度が10〜10dPa・sであるとともに、他の一のガラスフリットは700℃における粘度が10〜10dPa・sであることが好ましい。
少なくとも一のガラスフリットは1200℃における粘度が10〜10dPa・sであることで、酸化防止剤組成物が高温域においても、適正な粘度を維持でき、素材表面から脱落しない。このため、加熱炉内温度が最高温度近傍に保持されている時に、酸化防止剤組成物は鋼管表層と外気との接触を可能な限り抑制でき、スケールの発生を防止できる。
さらに、他の一のガラスフリットは700℃における粘度が10〜10dPa・sであるので、加熱炉内の温度域で、酸化防止剤は鋼管表面に十分に濡れ拡がり鋼管表面を覆うため、鋼管表層と外気との接触を可能な限り抑制でき、スケールの発生を防止できる。
第1の本発明の酸化防止剤組成物は、常温において固形物である成分と液体である成分とを含み、さらに液体中に固形物成分を分散懸濁させる分散懸濁剤を含むことが好ましい。
ここに「常温において固形物である成分」とは、上記ガラスフリットをいう。また、「常温において液体である成分」とは、この常温において固形物である成分を含む本発明の酸化防止剤組成物を、鋼管表面に塗布、あるいはスプレーするために用いられる、例えば、水、溶剤等の液体成分をいう。
さらに、本発明における「分散懸濁剤」とは、酸化防止剤組成物中に含まれるガラスフリット等の粉体成分を、水等の媒体中に分散、あるいは懸濁させる機能を有する物質をいい、粘土類を用いることができる。粘土類としては、例えば、ベントナイト、カオリン等が挙げられる。粘土類は、異なる種類のものを混合して使用してもよい。
これにより、液体中に固体成分が分散懸濁されているので、一様な性状の酸化防止剤組成物を鋼管表面に塗布、あるいはスプレーすることができる。さらにこれら分散懸濁剤は、常温における塗布作業において、酸化防止剤組成物を鋼管表面へ展着させ脱落を防止する作用を有するという利点がある。このため、本発明の酸化防止剤組成物は、鋼管に塗布した後、十分に乾燥させないで炉内に投入したとしても、分散懸濁剤は焼失しないで、ガラスフリットを保持するので、保護層が剥離することがない。
第1の本発明の酸化防止剤組成物において、低融点金属化合物の含有量は、酸化防止剤組成物全体の質量を100質量%として、好ましくは1質量%以下、より好ましくは0.5質量%以下である。ここで、「低融点金属化合物」とは、高温で鉄よりも還元されやすくはんだ脆性を引き起こす可能性のある金属の化合物をいい、例えば、亜鉛、錫、銅、これらの酸化物、硫化物等が挙げられる。低融点金属化合物が含有されていると、最終製品の表面に微量に残存した低融点金属化合物が、将来においてはんだ脆性の問題をおこす可能性があるからである。よって、本発明においては、低融点金属化合物の含有量を不可避不純物程度に抑えることが好ましい。
第2の本発明は、第1の本発明の鋼管の熱処理用酸化防止剤組成物を加熱前の鋼管表面に塗布する工程を含む、鋼管の熱処理方法である。ここで、「鋼管」とは、冷間抽伸または冷間圧延等の冷間加工後の鋼管、あるいは、最終製品前の製品熱処理前の鋼管をいい、加工により生じたひずみや残留応力を除去したり、再結晶化させることが必要な状態の鋼管をいう。第2の本発明によれば、熱処理中に鋼管表層と外気との接触を可能な限り抑制でき、スケールの発生を防止できる熱処理方法を提供することができる。
また、第2の本発明の熱処理方法においては、鋼管表面に酸化防止剤組成物を塗布してから、好ましくは1時間以内、より好ましくは30分以内、さらに好ましくは5分以内に鋼管を炉内に投入することができる。このように、従来必要としていた酸化防止剤組成物の乾燥工程が不要であるので、本発明の加熱処理方法は、ライン上で行うことができ、製造工程上好ましい方法である。
第3の本発明は、第2の本発明の加熱処理方法を使用した、継目無管の製造方法である。第3の本発明によれば、加熱炉で加熱中に、鋼管表面と外気との接触を可能な限り抑制してスケールの発生を防止することにより、継目無管に凹み疵(ローラーマーク)が生じるのを防止できる。
第1の本発明によれば、酸化防止剤組成物は軟化点の異なるガラスフリットを複数含んでいるので、酸化防止剤組成物が異なる温度域に応じて適正な粘度を維持する。したがって、熱処理の各段階、すなわち加熱炉内での加熱、均熱工程、加熱炉内から取り出した後の移動工程において、鋼管の表面に十分な皮膜が形成される。これにより、鋼管表面と外気の接触が可能な限り抑制され、スケールの発生を防止できる。そして、製造される鋼管に凹み疵(ローラーマーク)が発生するのを防止することができる。
本発明の第一の態様は、軟化点の異なるガラスフリットを複数含むことを特徴とする、鋼管の熱処理用酸化防止剤組成物である。ここで、ガラスフリットとは、個々のガラス成分を予め混合後溶融し、水中や空気中で急冷して作ったガラスをいう。無機成分をガラスフリットとすると、個々の成分で酸化防止剤組成物の一成分として供される場合に比べて、予め溶融混合されてその共晶反応などにより融点が個々の成分の融点から低下し、酸化防止剤として安定して存在できる。さらには、個々の成分に水分や結晶水が含まれる場合は、個々の成分のままであると、加熱された際に沸騰等により酸化防止被膜が剥離等しやすいが、フリットとすることにより、沸騰などによる剥離の心配がないものとなる。以下、この鋼管の熱処理用酸化防止剤組成物を構成する各成分についてそれぞれ説明する。
(ガラスフリット)
<第一のガラスフリット>
本発明の酸化防止剤組成物に含まれる第一のガラスフリットは、高い軟化点を有するガラスフリットである。この第一のガラスフリットにより、加熱均熱炉内の温度が最高温度(例えば、1200℃〜1300℃)近傍である時、酸化防止剤組成物は適正な粘度を有することができ、鋼管表面に満遍なく濡れ拡がる。かくして、高温状態において、酸化防止剤組成物が鋼管表面を覆うことにより鋼管表面と外気との接触を可能な限り抑制でき、スケールの発生を防止できる。
本発明の酸化防止剤組成物中に、上記第一のガラスフリットが含まれない場合、上記高温域において、酸化防止剤組成物は鋼管表面に付着するために必要な粘度を有しない。そのため、酸化防止剤組成物が鋼管表面から流れ落ちて脱落してしまい、鋼管表面と外気とは自由に接触してしまう。
第一のガラスフリットの軟化点は特に限定されないが、その粘度は、1200℃において10〜10dPa・sの範囲にあることが好ましい。この「1200℃」は、鋼の熱処理における、最高加熱温度に相当する。粘度の下限値を10dPa・sとすることにより、高温域での鋼管表面からの酸化防止剤組成物のタレ落ちを防ぐことができる。一方、粘度の上限値を10dPa・sとすることにより、高温域での鋼管表面からの酸化防止剤組成物の脱落を防ぐことができる。
第一のガラスフリットの、平均粒径は特に限定されるものではないが、酸化防止剤組成物を静的に保管中に安定的に分散懸濁させる、及び、鋼管表面へ一様に塗布するという観点から、25μm以下であることが好ましい。
本発明において、第一のガラスフリットを構成する材料は特に限定されないが、一例として、SiOを60〜70質量%、Alを5〜20質量%、CaOを0〜20質量%、他にMgO、ZnO、KO等を含むことあるガラスフリットを挙げることができる。なお、以下において示すように低融点金属フリーとする場合は、ZnOを含まないガラスフリットを使用することが好ましい。
<第二のガラスフリット>
本発明の酸化防止剤組成物に含まれる第二のガラスフリットは、第一のガラスフリットより低い軟化点を有するガラスフリットである。この第二のガラスフリットにより、加熱均熱炉内の温度が比較的低温(例えば、400〜800℃)近傍である場合、酸化防止剤組成物は適正な粘度を有することにより、鋼管表面に満遍なく濡れ拡がる。かくして、加熱均熱炉内において、鋼管表面を覆うことにより鋼管表面と外気との接触を可能な限り抑制して、スケールの発生を防止する。
本発明の酸化防止剤組成物中に、上記第二のガラスフリットが含まれない場合、加熱均熱炉内において、酸化防止剤組成物が鋼管表面を覆うことができないので、上記の鋼管表面と外気との接触を可能な限り抑制する効果を得ることができない。
第二のガラスフリットの軟化点は特に限定されないが、その粘度は、700℃において10〜10dPa・sの範囲にあることが好ましい。この「700℃」は、鋼管を加熱する加熱炉内の低〜中温域を想定している。粘度の下限値を10dPa・sとすることにより、加熱均熱炉内での鋼管表面からの酸化防止剤組成物のタレ落ちを防ぐことができる。一方、粘度の上限値を10dPa・sとすることにより、加熱均熱炉内での鋼管表面からの酸化防止剤組成物の脱落を防ぐことができる。
第二のガラスフリットの、平均粒径は特に限定されるものではないが、酸化防止剤組成物を静的に保管中に安定的に分散懸濁させる、及び、鋼管表面へ一様に塗布するという観点から、25μm以下であることが好ましい。
本発明において、第二のガラスフリットを構成する材料は特に限定されないが、一例として、SiOを40〜60質量%、Alを0〜10質量%、Bを20〜40質量%、ZnOを0〜10質量%、NaOを5〜15質量%、他にCaO、KO等を含むガラスフリットを挙げることができる。なお、以下において示すように低融点金属フリーとする場合は、ZnOを含まないガラスフリットを使用することが好ましい。
(分散懸濁剤)
本発明における分散懸濁剤は、酸化防止剤組成物中に含まれるガラスフリット等の粉体成分を、水等の媒体中に分散、あるいは懸濁させる機能を有する物質をいう。例えば、ベントナイト、カオリン等の粘土類が挙げられる。粘土類を使用することで、従来の有機バインダー等を使用していた場合と異なり、加熱均熱炉内でのガス発生を抑制することができる。また、炉内で焼失することがないので、フリットの脱落を防止することができる。
粘土類としては、(A)SiOが55質量%程度、Alが30質量%程度、Iglossが11質量%程度、他の微量成分としてFe、CaO、MgO、NaO、KO等を含むもの、あるいは、(B)SiOが60質量%程度、Alが15質量%程度、Iglossが17質量%程度、他の微量成分としてFe、CaO、MgO、NaO、KO等を含むものを例示することができる。
本発明の酸化防止剤組成物においては、分散懸濁剤により、液体中に固体成分が分散懸濁されているので、酸化防止剤組成物を素材表面に一様な性状で塗布、あるいはスプレーすることができる。さらに、これら分散懸濁剤は、常温における塗布作業において、酸化防止剤組成物を鋼管表面へ展着させ、脱落を防止する作用を有するものである。本発明においては、このような分散懸濁剤を含有しているため、従来の酸化防止剤組成物において必要とされていた長時間の乾燥工程が不要となる。
(その他の成分)
本発明の酸化防止剤組成物には、以上に示した各成分に加えて、その用途等に応じて適宜他の成分を添加することができる。他の成分の具体例としては、塗布性状の改良を目的として、各種無機電解質、例えば、亜硝酸ソーダや、有機バインダー等の粘性調整剤、およびpH調整を目的とした無機化合物等を挙げることができる。
(低融点金属フリーへの対応)
製品である鋼管表面に、亜鉛、錫、銅等の低融点金属が付着していると、はんだ脆性の問題が生じる場合がある。特に、鋼管が使用されるのが発電設備等である場合、高い安全性が求められることから、はんだ脆性の可能性は完全に除去することが要求される。このような観点から、本発明の酸化防止剤組成物においては、低融点金属化合物の含有量が、酸化防止剤組成物全体を基準(100質量%)として、好ましくは1質量%以下、より好ましくは0.5質量%以下、さらに好ましくは0.1質量%以下に設定される。
(鋼管の熱処理方法)
本発明の第二の態様は、上記の酸化防止剤組成物を加熱前の鋼管表面に塗布する工程を含む、鋼管の熱処理方法である。第一工程においては、鋼管表面に本発明の第一態様にかかる酸化防止剤組成物を均一に塗布する。塗布方法は、特に限定されず、例えば、はけ塗り、スプレー、どぶ付け等の方法を採用できる。
続く第二工程においては、上記酸化防止剤組成物を表面に均一に塗布した鋼管を加熱炉・均熱炉内に投入し、所定の温度、所定の時間保持する。必要に応じ昇温時間のコントロールも行う。素材がステンレス鋼、高合金鋼の場合、炉内最高温度は1200℃〜1300℃に調節される。次いで、第三工程において、上記加熱炉・均熱炉内の鋼管を取り出す。
第二の態様にかかる本発明の鋼管の熱処理方法の特徴は、第一工程において、第一の態様にかかる酸化防止剤組成物を鋼管表面に均一に塗布することにある。そして、酸化防止剤組成物中の軟化点の異なるガラスフリットにより、第二工程〜第三工程の間の温度変化によらず、酸化防止剤組成物が適正な粘度を維持でき、常に鋼管表面を被覆することにより、鋼管表面と外気との接触を可能な限り抑制することができる。
また、本発明の鋼管の熱処理方法においては、鋼管表面に酸化防止剤組成物を塗布してから、好ましくは1時間以内、より好ましくは30分以内、さらに好ましくは5分以内に鋼管を炉内に投入することができる。このように、従来必要としていた酸化防止剤組成物の乾燥工程が不要であるので、本発明の鋼管の熱処理方法は、ライン上で行うことができ、製造工程上好ましい方法である。
従来の有機バインダーおよび有機溶媒を含む酸化防止剤組成物は、粘度が比較的小さく、粘度調製が容易にできるという特徴があった。継目無管の製造設備における熱処理設備は、この従来の酸化防止剤組成物に最適化されたスプレー設備等を備えているものであった。これに対し、本願の酸化防止剤組成物は、分散懸濁剤としてベントナイト、カオリン等の粘土類を用いているため、粘度が比較的高く、粘度調製が難しいという特徴がある。そのため、これを採用するには、熱処理設備の大幅な変更が必要であり、継目無管の製造設備における熱処理設備において、このような粘度の高い酸化防止剤組成物を採用しようというインセンティブは働きにくかった。
このような状況下において、本発明者らは、従来の熱処理設備を使用できるか否かに関係なく、純粋に鋼管にスケールが発生するのを防止して、製造される鋼管に凹み疵(ローラーマーク)が発生するのを防止することを目的として鋭意検討を行った結果、非常に優れた性能を有する鋼管の酸化防止剤を見出したのである。
(鋼材)
本発明の鋼管の熱処理用酸化防止剤組成物が使用される鋼材としては、特に限定されず、炭素鋼や、オーステナイト系、フェライト系、マルテンサイト系のステンレス鋼を挙げることができる。また、本発明の酸化防止剤組成物の効果をより効果的に発揮させる観点から、ステンレス鋼を使用することが好ましく、その中でも、好ましくは10%Cr以上、より好ましくは15%Cr以上の高合金鋼が使用される。
(継目無管の製造方法)
本発明の第三の態様は、上記熱処理方法を使用した、継目無管の製造方法である。まず、連続鋳造設備により製造される断面形状円形の鋳片を所定長に切断したビレットに対して、マンネスマン法やユージン法により熱間塑性加工が施され、素管(ホローシェル)が形成される。その後、鋼管の寸法精度を高めるため、冷間抽伸、冷間圧延といった冷間加工が施される。これにより形成された鋼管に表面に上記第一工程の、酸化防止剤組成物を鋼管表面に均一に塗布することが行われる。次いで、加熱炉内で所定温度および所定時間のもと加熱が行われる(第二工程)。続いて炉内から鋼管が取り出される(第三工程)。このようにして、冷間加工により生じた加工ひずみや残留応力が除去されると共に、再結晶化が施される。
また、上記熱処理の後、最終製品とする直前において製品熱処理が行われる。この製品熱処理は、主に製品の強度を顧客が要求するスペック内に納めるために行われるものである。この場合においても、上記した酸化防止剤組成物を用いた熱処理方法が採用され、これによりスケールの発生が抑制される。
加熱炉を備えた実機の継目無管製造設備を使用して、評価試験を実施した。表1に、加熱処理対象の鋼管および加熱条件を示した。
Figure 2007314875
<酸化防止剤組成物の調製>
(実施例1)
高軟化点ガラスフリットを24.5質量%、低軟化点ガラスフリットを1.8質量%、分散懸濁剤として粘土類1を2.0質量%、粘土類2を1.7質量%、水を70.0質量%含有してなる酸化防止剤組成物を調製した。低軟化点ガラスフリット、高軟化点ガラスフリットの組成および粘度、粘土類1および2の組成を表2に示す。
調製した酸化防止剤を加熱炉内に投入前の鋼管表面に均一に塗布し、大気中に4分間放置し乾燥させてから、炉内に投入し、表1の条件で熱処理を施した。
Figure 2007314875
(比較例1)
高軟化点ガラスフリットを用いずに酸化防止剤組成物を調製し、乾燥時間を30分とした以外は、実施例1と同様にして熱処理を行った。
(比較例2)
低軟化点ガラスフリットを用いずに酸化防止剤組成物を調製し、乾燥時間を30分とした以外は、実施例1と同様にして熱処理を行った。
(比較例3)
酸化防止剤を塗布しないで鋼管を熱処理した。
(比較例4)
分散懸濁剤として、粘土類の代わりにアクリル酸エステルを用い、乾燥時間を30分とした以外は、実施例1と同様にして熱処理を行った。
(比較例5)
分散懸濁剤として、粘土類の代わりにアクリル酸エステルを用い、乾燥時間を90分とした以外は、実施例1と同様にして熱処理を行った。
<評価方法>
炉外に取り出し、搬送ローラーにより搬送されてきた鋼管の表面に凹み疵(ローラーマーク)があるかどうかを以下の基準により評価した。なお、評価は、表1に示した二種類の鋼管各500本、合計1000本に対して行った。
凹み疵がなくあるいは小さく実機に使用可能なレベルと判断されたものを「合格品」とし、使用不可能と判断されたものを「不合格品」として、以下の基準で評価した。
○:不合格品の割合が5%未満であった。
△:不合格品の割合が5%以上50%未満であった。
×:不合格品の割合が50%以上であった。
Figure 2007314875
本実施例から以下の点が明らかになった。
低軟化点ガラスフリットのみを配合した酸化防止剤組成物を使用した場合(比較例1)、加熱炉内の温度が最高温度域(1200〜1300℃)となる場合、酸化防止剤組成物中のガラスフリットは溶融する。そして、このときの酸化防止剤組成物の粘度は極めて低いため、酸化防止剤組成物は鋼管表面から流れ落ち、鋼管表面にスケールが発生したと考えられる。
一方、高軟化点ガラスフリットのみを配合した酸化防止剤組成物を使用した場合(比較例2)、分散懸濁剤の働きで酸化防止剤組成物中の固形分は鋼管表面に付着してはいるものの、炉内における低〜中温域において、酸化防止剤組成物は十分な粘度を有せず、鋼管表面に皮膜を形成できない。したがって、この間に鋼管表面と外気とは自由に接触して、スケールが発生したものと考えられる。
分散懸濁剤として、アクリル酸エステルを用いた場合(比較例4、比較例5)は、炉内において酸化防止剤の被膜が剥離して、スケールが発生したと考えられる。また、乾燥時間を十分にとった場合(比較例5)においても、炉内ではアクリル酸エステルが燃焼してしまうことにより、やはり被膜が剥離してしまったと考えられる。
これらに対し、本発明の酸化防止剤組成物を使用した場合(実施例1)には、粘土類の作用により、炉内でのガラスフリットの付着性(乾燥強度)が良好であり、加熱炉内での低〜中温域で、低軟化点ガラスフリットにより酸化防止剤組成物が適切な粘度を有し、酸化防止剤組成物は鋼管表面を被覆し、鋼管表面と外気との接触を可能な限り抑制した。また、加熱炉内の高温域においては、高軟化点ガラスフリットにより酸化防止剤組成物が適切な粘度を維持し、酸化防止剤組成物は鋼管表面を被覆して、鋼管表面と外気との接触を可能な限り抑制した。これにより、スケールの発生が防止された。
(実施例2)
表4に示した亜鉛フリーの材料を用いて、実施例1と同一の組成で酸化防止剤組成物を調製し、同様の条件で熱処理を行った。この場合においても、スケールの発生が防止され、実施例1と同様の結果が得られた。本願の酸化防止剤組成物は、亜鉛フリーにも対応できることが示された。
Figure 2007314875
以上、現時点において、もっとも、実践的であり、かつ、好ましいと思われる実施形態に関連して本発明を説明したが、本発明は、本願明細書中に開示された実施形態に限定されるものではなく、請求の範囲および明細書全体から読み取れる発明の要旨或いは思想に反しない範囲で適宜変更可能であり、そのような変更を伴う鋼管の熱処理用酸化防止剤組成物、及びそれを使用した鋼管の熱処理方法および継目無管の製造方法もまた本発明の技術的範囲に包含されるものとして理解されなければならない。

Claims (8)

  1. 軟化点の異なるガラスフリットを複数含むことを特徴とする、鋼管の熱処理用酸化防止剤組成物。
  2. 前記複数のガラスフリットのうち、少なくとも一のガラスフリットは1200℃における粘度が10〜10dPa・sであるとともに、他の一のガラスフリットは700℃における粘度が10〜10dPa・sであることを特徴とする、請求項1に記載の鋼管の熱処理用酸化防止剤組成物。
  3. 前記鋼管の熱処理用酸化防止剤組成物が、常温において固形物である成分と液体である成分とを含むものであって、さらに前記液体中に前記固形物成分を分散懸濁させる分散懸濁剤を含むことを特徴とする請求項1または2に記載の鋼管の熱処理用酸化防止剤組成物。
  4. 前記分散懸濁剤が粘土類である、請求項3に記載の鋼管の熱処理用酸化防止剤組成物。
  5. 低融点金属化合物の含有量が、酸化防止剤組成物全体の質量を100質量%として、1質量%以下である、請求項1〜4のいずれかに記載の鋼管の熱処理用酸化防止剤組成物。
  6. 請求項1〜5のいずれかに記載の鋼管の熱処理用酸化防止剤組成物を加熱前の鋼管表面に塗布する工程を含む、鋼管の熱処理方法。
  7. 前記鋼管表面に前記鋼管の熱処理用酸化防止剤組成物を塗布してから、1時間以内に鋼管を炉内に投入する、請求項6に記載の鋼管の熱処理方法。
  8. 請求項6または7に記載の鋼管の熱処理方法を使用した、継目無管の製造方法。
JP2007114861A 2006-04-24 2007-04-24 鋼管の熱処理用酸化防止剤組成物 Pending JP2007314875A (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2007114861A JP2007314875A (ja) 2006-04-24 2007-04-24 鋼管の熱処理用酸化防止剤組成物

Applications Claiming Priority (2)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2006119270 2006-04-24
JP2007114861A JP2007314875A (ja) 2006-04-24 2007-04-24 鋼管の熱処理用酸化防止剤組成物

Publications (1)

Publication Number Publication Date
JP2007314875A true JP2007314875A (ja) 2007-12-06

Family

ID=38849000

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2007114861A Pending JP2007314875A (ja) 2006-04-24 2007-04-24 鋼管の熱処理用酸化防止剤組成物

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP2007314875A (ja)

Cited By (4)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2011121095A (ja) * 2009-12-11 2011-06-23 Sumitomo Metal Ind Ltd 潤滑用ガラス成形材、および熱間押出製管用ビレットの製造方法
WO2012008501A1 (ja) * 2010-07-16 2012-01-19 住友金属工業株式会社 酸化防止剤、酸化防止剤の製造方法及び金属材の製造方法
WO2012056771A1 (ja) * 2010-10-26 2012-05-03 住友金属工業株式会社 酸化防止剤及び金属材の製造方法
WO2021153657A1 (ja) 2020-01-31 2021-08-05 日本製鉄株式会社 合金材加熱用酸化防止剤、及び、それを用いた合金材の加熱方法

Citations (3)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JPH02209420A (ja) * 1989-02-08 1990-08-20 Nippon Fueroo Kk 鋼材に対する高温用酸化防止剤
JPH0853709A (ja) * 1994-08-09 1996-02-27 Hakuto Co Ltd 鋼材表面における脱炭防止剤
JP2003113387A (ja) * 2001-10-03 2003-04-18 Sanyo Special Steel Co Ltd 熱間押出用内面ガラス潤滑材

Patent Citations (3)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JPH02209420A (ja) * 1989-02-08 1990-08-20 Nippon Fueroo Kk 鋼材に対する高温用酸化防止剤
JPH0853709A (ja) * 1994-08-09 1996-02-27 Hakuto Co Ltd 鋼材表面における脱炭防止剤
JP2003113387A (ja) * 2001-10-03 2003-04-18 Sanyo Special Steel Co Ltd 熱間押出用内面ガラス潤滑材

Cited By (10)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2011121095A (ja) * 2009-12-11 2011-06-23 Sumitomo Metal Ind Ltd 潤滑用ガラス成形材、および熱間押出製管用ビレットの製造方法
WO2012008501A1 (ja) * 2010-07-16 2012-01-19 住友金属工業株式会社 酸化防止剤、酸化防止剤の製造方法及び金属材の製造方法
JP2012021121A (ja) * 2010-07-16 2012-02-02 Sumitomo Metal Ind Ltd 酸化防止剤、酸化防止剤の製造方法及び金属材の製造方法
US8846152B2 (en) 2010-07-16 2014-09-30 Nippon Steel & Sumitomo Metal Corporation Antioxidant agent and process for producing metallic material
WO2012056771A1 (ja) * 2010-10-26 2012-05-03 住友金属工業株式会社 酸化防止剤及び金属材の製造方法
JP2012092207A (ja) * 2010-10-26 2012-05-17 Sumitomo Metal Ind Ltd 酸化防止剤及び金属材の製造方法
CN103282548A (zh) * 2010-10-26 2013-09-04 新日铁住金株式会社 抗氧化剂和金属材料的制造方法
US8815347B2 (en) 2010-10-26 2014-08-26 Nippon Steel & Sumitomo Metal Corporation Antioxidant agent and process for producing metallic material
WO2021153657A1 (ja) 2020-01-31 2021-08-05 日本製鉄株式会社 合金材加熱用酸化防止剤、及び、それを用いた合金材の加熱方法
JP7333837B2 (ja) 2020-01-31 2023-08-25 日本製鉄株式会社 合金材加熱用酸化防止剤、及び、それを用いた合金材の加熱方法

Similar Documents

Publication Publication Date Title
CN103282548B (zh) 抗氧化剂和金属材料的制造方法
CN101448923B (zh) 热塑性加工用润滑剂组成物及使用其的热塑性加工方法
CA2805069C (en) Antioxidant agent, process for producing antioxidant agent, and process for producing metallic material
JP2007314875A (ja) 鋼管の熱処理用酸化防止剤組成物
JP5269341B2 (ja) 熱間押出加工用潤滑剤組成物
JPS5951499A (ja) 電気製鋼炉用電極の酸化防止被覆
JP2012132071A (ja) 高温装置の揮発損失防止方法
EP2229468B1 (en) Process for the production of enamelled steel sheet or part
JP2001234189A (ja) 穿孔圧延プラグ用潤滑剤および継目無鋼管の穿孔圧延方法
CN101585988B (zh) 一种耐高温涂料及其制备方法
US8455408B2 (en) Anti-seizure agent for hot steel working
CN108047777A (zh) 一种钢铁高温防氧化复合涂料及其制备方法
CN115521642B (zh) 一种金属材料保护用蛇纹石复合防氧化涂料及其制备方法和应用
JP3606352B2 (ja) キャスタブル耐火物
RU10621U1 (ru) Огнеупорное изделие на основе оксида кальция
CN1160164C (zh) 不锈钢坯的热轧方法及在该方法中使用的药剂
JP2010227997A (ja) 金属材料の熱間押出製管用ガラス潤滑剤およびそれを用いた熱間押出製管方法
CN114402085A (zh) 金属基材涂布用混合物
JPS62133054A (ja) チタン熱処理用酸化防止剤
SU61669A1 (ru) Способ изготовлени обмазок дл защиты металлов от окислени при нагреве
CN117070086A (zh) 可涂覆于红热金属的防护保温涂料及应用
JPS61150739A (ja) 耐久鋳型用塗型材
JP2013103256A (ja) 鋳造用金型の塗型方法
JPH08157944A (ja) スラブの脱炭防止剤
JPS63111183A (ja) 金属表面の酸化防止方法

Legal Events

Date Code Title Description
A621 Written request for application examination

Effective date: 20100308

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621

RD01 Notification of change of attorney

Effective date: 20101101

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A7421

A131 Notification of reasons for refusal

Effective date: 20120904

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

A521 Written amendment

Effective date: 20121011

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

A711 Notification of change in applicant

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A712

Effective date: 20121011

A02 Decision of refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A02

Effective date: 20130219