JP2007313928A - 車両用操舵装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】転舵輪の最大舵角を超えたステアリング操作を抑制することのできる車両用操舵装置を提供すること。
【解決手段】マイコン41は、転舵輪の最大舵角、即ちステアリングエンドを超えた過剰なステアリング操作(過剰操舵)の発生を検知する過剰操舵検知部55を備える。そして、マイコン41は、この過剰操舵検知部55により過剰操舵の発生を検知した場合には、伝達比可変装置8のモータ13を制御するためのフィードバック演算に用いるF/BゲインKを通常制御時の値よりも高い値に変更する。
【選択図】図4

Description

本発明は、伝達比可変装置を備えた車両用操舵装置に関するものである。
従来、ステアリング操作に基づく転舵輪の第1の舵角にモータ駆動に基づく転舵輪の第2の舵角(ACT角)を上乗せすることにより、ステアリングの舵角(操舵角)と転舵輪の舵角(転舵角)との間の伝達比(ギヤ比)を可変させる伝達比可変装置を備えた車両用操舵装置がある(例えば特許文献1参照)。そして、このような操舵装置を採用することで、低車速時においてはステアリング操作に対する転舵角の変更量を大として運転者の負担を軽減し、高車速時にはその変更量を小として高い操舵安定性を確保するといった、優れたステアリング特性を実現することができる。
特開2005−170129号公報 特開2006−020392号公報
しかしながら、伝達比可変装置の作動により発生したACT角は、そのモータトルクにより保持される。即ち、その保持トルク以上の外力が印加された場合には、そのACT角を保持できなくなる。このため、転舵角がその最大舵角であるステアリングエンド(ラックエンド)に達した場合であっても、その保持トルクに抗してステアリング操作を行うことにより、転舵角は既に最大舵角となっているにもかかわらず、運転者は、本来の限界以上にステアリングを切り足すことができてしまう。つまり、ステアリングシャフト一体回転式の伝達比可変装置に例えて言うならば(例えば、特許文献2参照)、そのステアリングシャフトが伝達比可変装置部分においてバネのように捩れたような状態となる。その結果、特にこうしたステアリングシャフト一体回転型の伝達比可変装置では、駆動電力を供給すべく設けられたスパイラルケーブル装置の許容回転範囲を超えてステアリング側の入力軸が回転し、これにより、そのフレキシブルフラットケーブルが切れるおそれがある等、この点において、なお改善の余地を残すものとなっていた。
本発明は、上記問題点を解決するためになされたものであって、その目的は、転舵輪の最大舵角を超えたステアリング操作を抑制することのできる車両用操舵装置を提供することにある。
上記問題点を解決するために、請求項1に記載の発明は、ステアリング操作に基づく転舵輪の第1の舵角にモータ駆動に基づく前記転舵輪の第2の舵角を上乗せすることにより前記ステアリングの舵角と前記転舵輪の舵角との間の伝達比を可変させる伝達比可変装置と、前記伝達比可変装置の作動を制御する制御手段とを備え、前記制御手段は、指令値と実際値との偏差に基づくフィードバック制御により伝達比可変装置の駆動モータを制御する車両用操舵装置であって、前記転舵輪の最大舵角を超えるステアリング操作の入力を検知する検知手段を備え、前記制御手段は、前記入力が検知された場合には、前記フィードバック制御のフィードバックゲインを高くすること、を要旨とする。
上記構成によれば、フィードバックゲインを高めることで、僅かな偏差でも大きな電流指令が演算されることになり、これにより、駆動モータの発生するモータトルク、即ち伝達比可変装置の保持トルクも大となる。その結果、上述の「捩れ状態」が起こりにくくなり、最大舵角を超えた過剰なステアリング操作を抑制することができるようになる。
請求項2に記載の発明は、前記制御手段は、前記ステアリング操作の入力が前記転舵輪の最大舵角を大きく超えるものであるほど、前記フィードバックゲインを高くすること、を要旨とする。
上記構成によれば、より適切に過剰操舵を抑制することができる。
請求項3に記載の発明は、前記制御手段は、前記転舵輪の舵角が前記最大舵角近傍の所定の舵角を超えた場合には、前記舵角が前記最大舵角に近づくほど、前記フィードバックゲインを高くすること、を要旨とする。
上記構成によれば、過剰操舵をより効果的に抑制でき、ひいては未然に防止することが可能になる。
請求項4に記載の発明は、前記制御手段は、前記転舵輪の舵角が前記最大舵角近傍の所定の舵角を超えた場合には、前記ステアリングの操舵速度が速いほど、前記フィードバックゲインを高くすること、を要旨とする。
上記構成によれば、過剰操舵をより一層効果的に抑制でき、ひいては未然に防止することが可能になる。
請求項5に記載の発明は、前記制御手段は、前記操舵速度に基づきフィードバックゲインを高めた場合には、前記操舵速度が低下した後においても該低下以前の操舵速度に応じたフィードバックゲインを維持すること、を要旨とする。
上記構成によれば、フィードバックゲインの急変に伴う「ふらつき」の発生を防止することができる。
請求項6に記載の発明は、前記伝達比可変装置は、前記第2の舵角を機械的に固定するロック装置を備え、前記制御手段は、前記入力が検知され、且つ前記第2の舵角の角速度の絶対値が所定の閾値に満たない場合に前記ロック装置を作動させること、を要旨とする。
上記構成によれば、つまり伝達比可変装置の高速作動時を避けてロック装置を作動させることにより、同ロック装置の負荷を軽減することができる。そして、上記フィードバックゲインの可変制御と組み合わせることにより、併せて高フィードバックゲインの使用に伴う発振を防止することができる。
本発明によれば、転舵輪の最大舵角を超えたステアリング操作を抑制することが可能な車両用操舵装置を提供することができる。
以下、本発明を伝達比可変装置を備えた車両用操舵装置に具体化した一実施形態を図面に従って説明する。
図1は、本実施形態の車両用操舵装置1の概略構成図である。同図に示すように、ステアリング2が固定されたステアリングシャフト3は、ラックアンドピニオン機構4を介してラック5に連結されており、ステアリング操作に伴うステアリングシャフト3の回転は、ラックアンドピニオン機構4によりラック5の往復直線運動に変換される。そして、このラック5の往復直線運動により転舵輪6の舵角、即ち転舵角が可変することにより、車両進行方向が変更されるようになっている。尚、本実施形態の車両用操舵装置1は、所謂ラックアシスト型の電動パワーステアリング装置(EPS)であり、ボール螺子機構(図示略)を介して駆動源であるモータ7の発生するアシストトルクをラック5に伝達することにより、操舵系にアシスト力を付与するようになっている。
また、本実施形態の車両用操舵装置1は、ステアリング2の舵角(操舵角)と転舵輪6の舵角(転舵角)との間の伝達比(ギヤ比)を可変させる伝達比可変装置8と、該伝達比可変装置8の作動を制御する制御手段としてのIFSECU9とを備えている。
詳述すると、ステアリングシャフト3は、ステアリング2が連結された第1シャフト10とラックアンドピニオン機構4に連結される第2シャフト11とからなり、伝達比可変装置8は、第1シャフト10及び第2シャフト11を連結する差動機構12と、該差動機構12を駆動するモータ13とを備えている。そして、伝達比可変装置8は、ステアリング操作に伴う第1シャフト10の回転に、モータ駆動による回転を上乗せして第2シャフト11に伝達することにより、ラックアンドピニオン機構4に入力されるステアリングシャフト3の回転を増速(又は減速)し、これによりステアリング2に対する転舵輪6の伝達比を可変させる。
つまり、図2(a)(b)に示すように、伝達比可変装置8は、ステアリング操作に基づく転舵輪6の舵角(ステア転舵角θts)にモータ駆動に基づく転舵輪の舵角(ACT角θta)を上乗せすることにより、操舵角θsと転舵角θtとの間の伝達比を可変させる。
尚、この場合における「上乗せ」とは、加算する場合のみならず減算する場合をも含むものと定義し、以下同様とする。また、「操舵角θsと転舵角θtとの間の伝達比」をオーバーオールギヤ比(操舵角θs/転舵角θt)で表した場合、ステア転舵角θtsと同方向のACT角θtaを上乗せすることによりオーバーオールギヤ比は小さくなる(転舵角θt大、図2(a)参照)。そして、逆方向のACT角θtaを上乗せすることによりオーバーオールギヤ比は大きくなる(転舵角θt小、図2(b)参照)。
また、本実施形態のモータ13は、ブラシレスモータであり、IFSECU9から三相(U,V,W)の駆動電力が供給されることにより回転する。そして、IFSECU9は、この駆動電力の供給を通じてモータ13の回転を制御することにより、伝達比可変装置8の作動、即ちACT角θtaを制御する(伝達比可変制御)。
さらに詳述すると、図3に示すように、本実施形態の伝達比可変装置8は、略有底筒状に形成されたハウジング14を有しており、モータ13は、その回転軸であるモータ軸13aとハウジング14とが同軸になるように同ハウジング14内に固定されている。そして、ハウジング14は、その上壁部14aに設けられた連結部15が第1シャフト10とスプライン嵌合されている。
本実施形態では、差動機構12には、同軸に並置された一対のサーキュラスプライン21,22、及びこれら両スプラインの内側において該各スプラインと噛合されるフレクスプライン23、並びにその噛合部を回転させる波動発生器26からなる周知の波動歯車機構が採用されている。
一方のサーキュラスプライン21は、ハウジング14と同軸となるように同ハウジング14に固定されており、他方のサーキュラスプライン22は、連結部材25を介して第2シャフト11と同軸に連結されている。各サーキュラスプライン21,22には、互いに異なる歯数が設定されており、フレクスプライン23は、楕円状に撓められた状態でこれら各ギヤの内側に配置されることにより、その外歯が該各ギヤの内歯とそれぞれ部分的に噛合されている。そして、ハウジング14とともにサーキュラスプライン21が回転し、そのサーキュラスプライン21の回転がフレクスプライン23を介してサーキュラスプライン22に伝達されることにより、ステアリング操作に伴う第1シャフト10の回転が第2シャフト11に伝達されるようになっている。
フレクスプライン23の内側には、上記サーキュラスプライン21,22とともに差動機構12を構成する波動発生器26が配置されている。波動発生器26は、モータ軸13aに連結されており、モータ軸13aの回転に伴いフレクスプライン23の内側を回転することで、上記撓められたフレクスプライン23の楕円形状、即ちサーキュラスプライン21,22との噛合部を回転させる。そして、サーキュラスプライン21とサーキュラスプライン22との間の歯数差に基づいて、サーキュラスプライン22が回転することにより、モータ軸13aの回転が減速されて第2シャフト11に伝達されるようになっている。
また、本実施形態の伝達比可変装置8では、ハウジング14の上壁部14aにスパイラルケーブル装置27が設けられている。そして、このスパイラルケーブル装置27により、所定の回転範囲(許容回転範囲)においてモータ13とIFSECU9、並びに後述するロック装置33の駆動源であるソレノイド33aとIFSECU9とが電気的に接続されるようになっている。尚、このようなスパイラルケーブル装置27についての詳細は、例えば上記特許文献2に記載の構成を参照されたい。
更に、伝達比可変装置8は、ハウジング14側に設けられたロックアーム31を、モータ軸13aの一端に固定され該モータ軸13aとともに一体回転するロックホルダ32に係合させることにより、第1シャフト10と第2シャフト11との相対回転を規制する、即ちACT角θtaを機械的に固定するロック装置33を備えている。そして、IFSECU9は、例えば、イグニッションオフ時や電動パワーステアリング装置の異常が検出された場合等に、このロック装置33を作動させる(ロック制御オン)。尚、こうしたロック装置についての詳細は、例えば特開2003−320943号公報に記載の構成を参照されたい。
次に、本実施形態の車両用操舵装置の電気的構成及び制御態様について説明する。
図1に示すように、IFSECU9には、操舵角センサ36により検出された操舵角θs(操舵速度ωs)、及び車速センサ37により検出された車速Vが入力されるようになっている。そして、IFSECU9は、これら操舵角θs(操舵速度ωs)及び車速Vに基づいてモータ13の回転を制御することにより伝達比可変装置8の作動、即ち伝達比可変制御を実行する。
詳述すると、図4に示すように、IFSECU9は、モータ制御信号を出力するマイコン41と、モータ制御信号に基づいてモータ13に駆動電力を供給する駆動回路42とを備えている。
マイコン41は、ギヤ比可変制御演算部43及び微分ステア制御演算部44を備えており、ギヤ比可変制御演算部43には、操舵角θs及び車速Vが入力され、微分ステア制御演算部44には、車速V及び操舵速度ωsが入力される。そして、ギヤ比可変制御演算部43は、車速Vに応じてギヤ比(伝達比)を可変させるための制御目標成分であるギヤ比可変指令角θgr*を演算し、微分ステア制御演算部44は、操舵速度ωsに応じて車両の応答性を向上させるための制御目標成分である微分ステア指令角θls*を演算する。
ギヤ比可変制御演算部43及び微分ステア制御演算部44により演算されたギヤ比可変指令角θgr*及び微分ステア指令角θls*は、加算器45へと入力される。そして、この加算器45において、これらギヤ比可変指令角θgr*及び微分ステア指令角θls*が重畳されることによりACT指令角θta*が演算される。
また、IFSECU9には、モータ13に設けられた回転角センサ46が接続されており、加算器45において演算されたACT指令角θta*は、回転角センサ46の出力するモータ回転角θmに基づき演算されるACT角θtaとともに、位置制御演算部48に入力される。そして、位置制御演算部48は、指令値であるACT指令角θta*に実際値であるACT角θtaを追従させるべく、その偏差ΔθtaにF/Bゲイン(フィードバックゲイン)Kを乗ずることによりフィードバック演算を実行し、これにより得られる電流指令εをモータ制御信号出力部49に出力する。
そして、モータ制御信号出力部49は、電流指令εに基づき生成されたモータ制御信号を駆動回路42に出力し、そのモータ制御信号に基づく駆動電力が駆動回路42からモータ13に供給されることにより、同モータ13、即ち伝達比可変装置8の作動が制御されるようになっている。
また、IFSECU9は、上記モータ駆動用の駆動回路42に加え、ロック装置33のソレノイド33aに駆動電力を供給するロック制御用の駆動回路52を備えるとともに、マイコン41には、駆動回路52の作動を制御するためのロック制御信号を生成するロック制御部53が設けられている。本実施形態では、ロック制御部53には、図示しない車内ネットワークを介して、IGオン/オフ信号S_ig、及び電動パワーステアリング装置や伝達比可変装置8の異常を示す異常信号S_trが入力されるようになっている。そして、ロック制御部53は、IGオン/オフ信号S_igが「IGオフ」を示すものである場合、又は異常信号S_trが入力された場合に、駆動回路52に出力する制御信号を、ロック状態とすべき値を有するものに変更する。尚、本実施形態では、駆動回路52は、スイッチング素子(パワーMOSFET)により構成され、ロック制御信号は、同スイッチング素子のDuty(オンDuty)として出力される。そして、ロック制御部53は、ロック作動時には、そのロック制御信号を「オフ(Duty=0)」とし、これによりソレノイド33aをオフ、即ちロック装置33がロック状態となるように制御する。
(過剰操舵抑制制御)
次に、本実施形態の車両用操舵装置における過剰操舵抑制制御の態様について説明する。
上述のように、伝達比可変装置8を備えた車両用操舵装置1においては、転舵輪6の最大舵角、即ちステアリングエンドを超えた過剰なステアリング操作(過剰操舵)が問題となる。この点を踏まえ、本実施形態では、マイコン41には、こうした過剰操舵の発生を検知する過剰操舵検知部55が設けられている。そして、マイコン41は、この過剰操舵検知部55により過剰操舵の発生を検知した場合には、伝達比可変装置8のモータ13を制御するためのフィードバック演算に用いるF/BゲインKを通常制御時の通常値(K0)よりも高い増加値(K1、K1>K0)に変更する。
詳述すると、本実施形態では、過剰操舵検知部55には、転舵角θt、及びACT角速度ωtaが入力される。尚、本実施形態では、転舵角θtは、操舵角θsに基づき演算されるステア転舵角θtsに回転角センサ46の出力するモータ回転角θmに基づき演算されるACT角θtaを加えた演算値が用いられる(図2(a)(b)参照)。また、過剰操舵検知部55には、モータ制御信号出力部49からモータ制御電圧が入力される。そして、過剰操舵検知部55は、これら入力された各状態量に基づいて、過剰操舵の発生を検知する。
具体的には、過剰操舵検知部55は、入力されたモータ制御電圧に基づいてモータ13の制御方向、即ちACT角θtaの制御方向を検出し、これがACT角速度ωtaの方向と逆向きであるか否かを判定する。つまり、ACT角θtaをステアリング方向に変更不能であるにもかかわらずステアリングが切り足されることにより、ACT角θtaが反操舵方向に変更されている状態、即ち上述の「捩れ状態」が発生しているか否かを判定する。また、過剰操舵検知部55は、これと併せて、検出される転舵角θtが転舵輪6の機械的な最大舵角に対応する舵角θt_endの近傍にあるか否かを判定する。尚、この判定は、転舵角θtの絶対値(|θt|)を最大舵角に対応する舵角θt_end(の絶対値、|θt_end|)から減算した値が所定の閾値γよりも小さいか否かにより行われる。そして、過剰操舵検知部55は、上記二つの条件をともに満たす場合に過剰操舵が発生しているものと判定する。
また、本実施形態では、位置制御演算部48は、F/Bゲイン可変演算部56を備えており、過剰操舵検知部55の出力する過剰操舵検知信号S_edは、このF/Bゲイン可変演算部56に入力される。そして、F/Bゲイン可変演算部56は、その過剰操舵検知信号S_edの入力があった場合、上記フィードバック演算において偏差Δθtaに乗ずるF/BゲインKを通常値K0から増加値K1へと変更する。
即ち、F/BゲインKを高めることで、僅かな偏差Δθtaでも大きな電流指令εが演算されることになり、これにより、モータ13の発生するモータトルク、即ち伝達比可変装置8の保持トルクも大となる。その結果、上述の「捩れ状態」が起こりにくくなる、つまり最大舵角を超えた過剰なステアリング操作の発生を抑制することができるのである。
更に、本実施形態では、過剰操舵検知部55の出力する過剰操舵検知信号S_edは、ACT角速度ωtaとともに、ロック制御部53に入力される。そして、ロック制御部53は、過剰操舵検知信号S_edの入力があり、且つACT角速度ωtaの絶対値が所定の閾値ω0に満たない場合に、上述のロック制御を「オン」とする。
即ち、伝達比可変装置8の高速作動時を避けてロック装置33を作動させることにより、同ロック装置33の負荷を軽減することができる。そして、上記F/Bゲイン可変制御と組み合わせることにより、高F/Bゲインの使用に伴う発振を防止することが可能となっている。
次に、本実施形態における過剰操舵抑制制御の処理手順について説明する。
図5のフローチャートに示すように、マイコン41は、上記各状態量(転舵角θt及びACT角速度ωta)を検出(並びにモータ制御電圧を取得)すると(ステップ101)、まずモータ制御方向(ACT角θta制御方向)とACT角速度ωtaの符号が逆(不一致)であるかを判定し(ステップ102)、転舵角θtが転舵輪6の機械的な最大舵角に対応する舵角θt_endの近傍にあるか否かを判定する(ステップ103)。そして、モータ制御方向とACT角速度ωtaの符号が逆であり(ステップ102:YES)、且つ転舵角θtが転舵輪6の機械的な最大舵角に対応する舵角θt_endの近傍にある(|θt_end|−|θt|<γ、ステップ103:YES)には、過剰操舵が発生したと判定し、フィードバック演算に用いるF/BゲインKを増加値K1とする(K=K1、ステップ104)。
次に、マイコン41は、ACT角速度ωtaの絶対値が所定の閾値ω0よりも低いか否かを判定する(ステップ105)。そして、ACT角速度ωtaの絶対値が所定の閾値よりも低い場合(|ωta|<ω0、ステップ105:YES)には、上記ロック装置33を作動させてACT角θtaを機械的に固定する(ロック制御ON、ステップ106)。
尚、上記ステップ102又はステップ103の何れかの条件を満たさない場合(ステップ102:NO、又は|θt_end|−|θt|≧γ、ステップ103:NO)には、マイコン41は、フィードバック演算に用いるF/BゲインKを通常値K0として(K=K0、ステップ107)、上記ステップ104〜ステップ106の処理を実行しない。そして、上記ステップ105において、ACT角速度ωtaの絶対値が所定の閾値ω0以上であると判定した場合(|ωta|≧ω0、ステップ105:YES)には、ステップ106の処理を実行しない。
以上、本実施形態によれば、以下のような作用・効果を得ることができる。
(1)過剰操舵を検知した場合に、F/BゲインKを高めることで、僅かな偏差Δθtaでも大きな電流指令εが演算されることになり、これにより、モータ13の発生するモータトルク、即ち伝達比可変装置8の保持トルクも大となる。その結果、上述の「捩れ状態」が起こりにくくなり、最大舵角を超えた過剰なステアリング操作を抑制することができるようになる。
(2)過剰操舵を検知した場合において、ACT角速度ωtaの絶対値が所定の閾値ω0に満たない場合にロック制御を「オン」とする、つまり伝達比可変装置8の高速作動時を避けてロック装置33を作動させることにより、同ロック装置33の負荷を軽減することができる。そして、上記F/Bゲイン可変制御と組み合わせることにより、高F/Bゲインの使用に伴う発振を防止することができる。
なお、本実施形態は以下のように変更してもよい。
・本実施形態では、過剰操舵検知部55は、モータ制御方向(ACT角θta制御方向)とACT角速度ωtaの符号が逆(不一致)であるか(図5参照、ステップ102)、及び転舵角θtが転舵輪6の機械的な最大舵角に対応する舵角θt_endの近傍にある(同ず、ステップ103)の判定を行うことにより、過剰操舵検知を行うこととした。しかし、これに限らず、過剰操舵検知は、例えば、転舵角θt側ではなく操舵角θs側(|θs|>|θs_end|)で行ってもよく、或いは操舵速度ωsとACT角速度ωtaの符号が逆である場合にモータ制御信号のDutyが所定の閾値を超えるか否か等、その他の方法により行ってもよい。尚、この場合において、舵角θs_endは、ステアリングエンドに対応する操舵角である。また、ステップ102の判定については、操舵速度ωsの方向とACT角速度ωtaの符号が逆(不一致)であるかにより行ってもよい。
・本実施形態では、過剰操舵を検知した場合に、フィードバック演算に用いるF/BゲインKを通常値K0から増加値K1へと変更することとした。しかし、これに限らず、図6に示すように、過剰操舵の程度を示す過剰操舵指数αを求め、この過剰操舵指数αが大きいほど、即ちその過剰操舵が転舵輪6の最大舵角を大きく超えるものであるほどF/BゲインKを大とする構成としてもよい。これにより、より適切に過剰操舵を抑制することができる。尚、この場合における過剰操舵指数αは、例えば、過剰操舵発生時におけるモータ制御信号のDuty、又は|θs|−|θs_end|等の式により求めることが可能である。
・また、図7に示すように、転舵角θt(の絶対値)が転舵輪6の機械的な最大舵角に対応する舵角θt_end近傍の所定の舵角θt0(の絶対値)を超えた場合に、同転舵角θtが最大舵角に対応する舵角θt_endに近づくほどF/BゲインKを大とする構成としてもよい。このような構成とすれば、過剰操舵をより効果的に抑制でき、ひいては未然に防止することが可能になる。
・更に、図8に示すように、転舵角θt(の絶対値)が最大舵角に対応する舵角θt_end近傍の所定の舵角θt0(図7参照)を超えた場合において、操舵速度ωs(の絶対値|ωs|)が速いほどF/BゲインKを大とする構成としてもよい。このような構成とすれば、過剰操舵をより一層効果的に抑制でき、ひいては未然に防止することが可能になる。
・加えて、操舵速度ωsに基づきF/BゲインKを高めた場合には、操舵速度ωsが低下した後においてもその低下以前の操舵速度ωsに応じたF/BゲインKを維持する構成にするとよい。これにより、F/BゲインKの急変に伴う「ふらつき」を防止することができる。
・本実施形態では、モータ制御電圧に基づいてモータ13の制御方向(ACT角θtaの制御方向)を検出することとしたが、その他、モータ制御Duty等に基づき検出してもよい。
・また、本実施形態では、過剰操舵を検知した場合、F/BゲインKを高めることした。しかし、これに限らず、モータ制御Dutyを嵩上げする等によりモータ出力を大とする構成であってもよい。
・図1に示されるように、本実施形態の伝達比可変装置8は、所謂インターミディエイトシャフト型のものであるが、これに限らず、コラム型やステアリングギヤ一体型等、その他型式の伝達比可変装置を備えたものに具体化してもよい。
車両用操舵装置の概略構成図。 (a)(b)伝達比可変制御の作用説明図。 伝達比可変装置の概略構成図。 車両用操舵装置の制御ブロック図。 過剰操舵抑制制御の処理手順を示すフローチャート。 別例のF/Bゲイン可変制御の態様を説明するマップ。 別例のF/Bゲイン可変制御の態様を説明するマップ。 別例のF/Bゲイン可変制御の態様を説明するマップ。
符号の説明
1…車両用操舵装置、2…ステアリング、6…転舵輪、8…伝達比可変装置、9…IFSECU、13…モータ、27…スパイラルケーブル装置、33…ロック装置、41…マイコン、48…位置制御演算部、55…過剰操舵検知部、56…F/Bゲイン可変演算部、θs…操舵角、ωs…操舵速度、ω0…閾値、θt…転舵角、θt_end,θt0…舵角、θts…ステア転舵角、θta…ACT角、θta*…ACT指令角、Δθta…偏差、ωta…ACT角速度、K…F/Bゲイン、K0…通常値、K1…増加値、α…過剰操舵指数、S_ed…過剰操舵検知信号。

Claims (6)

  1. ステアリング操作に基づく転舵輪の第1の舵角にモータ駆動に基づく前記転舵輪の第2の舵角を上乗せすることにより前記ステアリングの舵角と前記転舵輪の舵角との間の伝達比を可変させる伝達比可変装置と、前記伝達比可変装置の作動を制御する制御手段とを備え、前記制御手段は、指令値と実際値との偏差に基づくフィードバック制御により伝達比可変装置の駆動モータを制御する車両用操舵装置であって、
    前記転舵輪の最大舵角を超えるステアリング操作の入力を検知する検知手段を備え、
    前記制御手段は、前記入力が検知された場合には、前記フィードバック制御のフィードバックゲインを高くすること、を特徴とする車両用操舵装置。
  2. 請求項1に記載の車両用操舵装置において、
    前記制御手段は、前記ステアリング操作の入力が前記転舵輪の最大舵角を大きく超えるものであるほど、前記フィードバックゲインを高くすること、
    を特徴とする車両用操舵装置。
  3. 請求項1又は請求項2に記載の車両用操舵装置において、
    前記制御手段は、前記転舵輪の舵角が前記最大舵角近傍の所定の舵角を超えた場合には、前記舵角が前記最大舵角に近づくほど、前記フィードバックゲインを高くすること、
    を特徴とする車両用操舵装置。
  4. 請求項1〜請求項3の何れか一項に記載の車両用操舵装置において、
    前記制御手段は、前記転舵輪の舵角が前記最大舵角近傍の所定の舵角を超えた場合には、前記ステアリングの操舵速度が速いほど、前記フィードバックゲインを高くすること、
    を特徴とする車両用操舵装置。
  5. 請求項4に記載の車両用操舵装置において、
    前記制御手段は、前記操舵速度に基づきフィードバックゲインを高めた場合には、前記操舵速度が低下した後においても該低下以前の操舵速度に応じたフィードバックゲインを維持すること、を特徴とする車両用操舵装置。
  6. 請求項1〜請求項5の何れか一項に記載の車両用操舵装置において、
    前記伝達比可変装置は、前記第2の舵角を機械的に固定するロック装置を備え、
    前記制御手段は、前記入力が検知され、且つ前記第2の舵角の角速度の絶対値が所定の閾値に満たない場合に前記ロック装置を作動させること、を特徴とする車両用操舵装置。
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