JP2007309400A - トロイダル型無段変速機、位置決め用治具および位置決め方法 - Google Patents

トロイダル型無段変速機、位置決め用治具および位置決め方法 Download PDF

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英司 井上
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敏成 佐野
Masami Sugaya
正美 菅谷
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Abstract

【課題】良好な加工性および組立性を確保しつつ、ケーシングに対してディスクよびパワーローラを精度良く組み立てて、ディスクとパワーローラとの相対的な位置を正確に決めることができる安価なトロイダル型無段変速機、位置決め用治具および位置決め方法を提供する。
【解決手段】このトロイダル型無段変速機では、ヨーク23A,23Bから張り出したピン320A,320Bを使用して一対のヨーク23A,23Bの位置規制を同時に且つ容易に行なうことが可能になるため、また、ヨーク23A,23Bの揺動運動の中心位置であるピン320A,320Bを用いて位置決めを行なうことができるため、組立性および位置決め性能が向上するとともに、ケーシング50に対してディスク2,3よびパワーローラ11を精度良く組み立てて、ディスク2,3とパワーローラ11との相対的な位置を正確に決めることが可能になる。
【選択図】図1

Description

本発明は、自動車や各種産業機械の変速機などに利用可能なトロイダル型無段変速機、および、このトロイダル型無段変速機の組立においてパワーローラとディスクとの相対的な位置決めを行なうための位置決め用治具、並びに、そのような位置決め用治具を用いて位置決めを行なう方法に関する。
例えば自動車用変速機として用いるダブルキャビティ式トロイダル型無段変速機は、図3および図4に示すように構成されている。図3に示すように、ケーシング50の内側には入力軸1が回転自在に支持されており、この入力軸1の外周には、2つの入力側ディスク2,2と2つの出力側ディスク3,3とが取り付けられている。また、入力軸1の中間部の外周には出力歯車4が回転自在に支持されている。この出力歯車4の中心部に設けられた円筒状のフランジ部4a,4aには、出力側ディスク3,3がスプライン結合によって連結されている。
入力軸1は、図中左側に位置する入力側ディスク2とカム板(ローディングカム)7との間に設けられたローディングカム式の押圧装置12を介して、駆動軸22により回転駆動されるようになっている。また、出力歯車4は、2つの部材の結合によって構成された仕切壁(中間壁)13を介してケーシング50内に支持されており、これにより、入力軸1の軸線Oを中心に回転できる一方で、軸線O方向の変位が阻止されている。
出力側ディスク3,3は、入力軸1との間に介在されたニードル軸受5,5によって、入力軸1の軸線Oを中心に回転自在に支持されている。また、図中左側の入力側ディスク2は、入力軸1にボールスプライン6を介して支持され、図中右側の入力側ディスク2は、入力軸1にスプライン結合されており、これら入力側ディスク2は入力軸1と共に回転するようになっている。また、入力側ディスク2,2の内側面(凹面;トラクション面とも言う)2a,2aと出力ディスク3,3の内側面(凹面;トラクション面とも言う)3a,3aとの間には、パワーローラ11(図4参照)が回転自在に挟持されている。
図3中右側に位置する入力側ディスク2の内周面2cには、段差部2bが設けられ、この段差部2bに、入力軸1の外周面1aに設けられた段差部1bが突き当てられるとともに、入力側ディスク2の背面(図3の右面)は、入力軸1の外周面に形成されたネジ部に螺合されたローディングナット9に突き当てられている。これによって、入力側ディスク2の入力軸1に対する軸線O方向の変位が実質的に阻止されている。また、カム板7と入力軸1の鍔部1dとの間には、皿ばね8が設けられており、この皿ばね8は、各ディスク2,2,3,3の凹面2a,2a,3a,3aとパワーローラ11,11の周面11a,11aとの当接部に押圧力を付与する。
図3のA−A線に沿う断面図である図4に示すように、ケーシング50の内側であって、出力側ディスク3,3の側方位置には、両ディスク3,3を両側から挟む状態で一対のヨーク23A,23Bが支持されている。これら一対のヨーク23A,23Bは、鋼等の金属のプレス加工あるいは鍛造加工により矩形状に形成されている。そして、後述するトラニオン15の両端部に設けられた枢軸14を揺動自在に支持するため、ヨーク23A,23Bの四隅には、円形の支持孔18が設けられるとともに、ヨーク23A,23Bの幅方向の中央部には、円形の係止孔19が設けられている。
一対のヨーク23A,23Bは、ケーシング50の内面の互いに対向する部分に形成された支持ポスト64,68により、僅かに変位できるように支持されている。これらの支持ポスト64,68はそれぞれ、入力側ディスク2の内側面2aと出力側ディスク3の内側面3aとの間にある第1キャビティ221および第2キャビティ222にそれぞれ対向する状態で設けられている。
したがって、ヨーク23A,23Bは、各支持ポスト64,68に支持された状態で、その一端部が第1キャビティ221の外周部分に対向するとともに、その他端部が第2キャビティ222の外周部分に対向している。
第1および第2のキャビティ221,222は同一構造であるため、以下、第1キャビティ221のみについて説明する。
図4に示すように、ケーシング50の内側において、第1キャビティ221には、入力軸1に対し捻れの位置にある一対の枢軸14,14を中心として揺動する一対のトラニオン15,15が設けられている。なお、図4においては、入力軸1の図示は省略している。各トラニオン15,15は、その本体部である支持板部16の長手方向(図4の上下方向)の両端部に、この支持板部16の内側面側に折れ曲がる状態で形成された一対の折れ曲がり壁部20,20を有している。そして、この折れ曲がり壁部20,20によって、各トラニオン15,15には、パワーローラ11を収容するための凹状のポケット部Pが形成される。また、各折れ曲がり壁部20,20の外側面には、各枢軸14,14が互いに同心的に設けられている。
支持板部16の中央部には円孔21が形成され、この円孔21には変位軸23の基端部(第1の軸部)23aが支持されている。そして、各枢軸14,14を中心として各トラニオン15,15を揺動させることにより、これら各トラニオン15,15の中央部に支持された変位軸23の傾斜角度を調節できるようになっている。また、各トラニオン15,15の内側面から突出する変位軸23の先端部(第2の軸部)23bの周囲には、各パワーローラ11が回転自在に支持されており、各パワーローラ11,11は、各入力側ディスク2,2および各出力側ディスク3,3の間に挟持されている。なお、各変位軸23,23の基端部23aと先端部23bとは、互いに偏心している。
また、前述したように、各トラニオン15,15の枢軸14,14はそれぞれ、一対のヨーク23A,23Bに対して揺動自在および軸方向(図4の上下方向)に変位自在に支持されており、各ヨーク23A,23Bにより、トラニオン15,15はその水平方向の移動を規制されている。前述したように、各ヨーク23A,23Bの四隅には円形の支持孔18が4つ設けられており、これら支持孔18にはそれぞれ、トラニオン15の両端部に設けた枢軸14がラジアルニードル軸受(傾転軸受)30を介して揺動自在(傾転自在)に支持されている。また、前述したように、ヨーク23A,23Bの幅方向(図4の左右方向)の中央部には、円形の係止孔19が設けられており、この係止孔19の内周面は球状凹面として、支持ポスト64,68を内嵌している。すなわち、上側のヨーク23Aは、ケーシング50に固定部材52を介して支持されている球面ポスト64によって揺動自在に支持されており、下側のヨーク23Bは、球面ポスト68およびこれを支持する駆動シリンダ31の上側シリンダボディ61によって揺動自在に支持されている。
なお、各トラニオン15,15に設けられた各変位軸23,23は、入力軸1に対し、互いに180度反対側の位置に設けられている。また、これらの各変位軸23,23の先端部23bが基端部23aに対して偏心している方向は、両ディスク2,2,3,3の回転方向に対して同方向(図4で上下逆方向)となっている。また、偏心方向は、入力軸1の配設方向に対して略直交する方向となっている。したがって、各パワーローラ11,11は、入力軸1の長手方向に若干変位できるように支持される。その結果、押圧装置12が発生するスラスト荷重に基づく各構成部材の弾性変形等に起因して、各パワーローラ11,11が入力軸1の軸方向に変位する傾向となった場合でも、各構成部材に無理な力が加わらず、この変位が吸収される。
また、パワーローラ11の外側面とトラニオン15の支持板部16の内側面との間には、パワーローラ11の外側面の側から順に、スラスト転がり軸受であるスラスト玉軸受24と、スラストニードル軸受25とが設けられている。このうち、スラスト玉軸受24は、各パワーローラ11に加わるスラスト方向の荷重を支承しつつ、これら各パワーローラ11の回転を許容するものである。このようなスラスト玉軸受24はそれぞれ、複数個ずつの玉26,26と、これら各玉26,26を転動自在に保持する円環状の保持器27と、円環状の外輪28とから構成されている。また、各スラスト玉軸受24の内輪軌道は各パワーローラ11の外側面(大端面)に、外輪軌道は各外輪28の内側面にそれぞれ形成されている。
また、スラストニードル軸受25は、トラニオン15の支持板部16の内側面と外輪28の外側面との間に挟持されている。このようなスラストニードル軸受25は、パワーローラ11から各外輪28に加わるスラスト荷重を支承しつつ、これらパワーローラ11および外輪28が各変位軸23の基端部23aを中心として揺動することを許容する。
さらに、各トラニオン15,15の一端部(図4の下端部)にはそれぞれ駆動ロッド(枢軸14から延びる軸部)29,29が設けられており、各駆動ロッド29,29の中間部外周面に駆動ピストン(油圧ピストン)33,33が固設されている。そして、これら各駆動ピストン33,33はそれぞれ、上側シリンダボディ61と下側シリンダボディ62とによって構成された駆動シリンダ31内に油密に嵌装されている。これら各駆動ピストン33,33と駆動シリンダ31とで、各トラニオン15,15を、これらトラニオン15,15の枢軸14,14の軸方向に変位させる駆動装置32を構成している。
このように構成されたトロイダル型無段変速機の場合、駆動軸22の回転は、押圧装置12を介して、各入力側ディスク2,2および入力軸1に伝えられる。そして、これら入力側ディスク2,2の回転が、一対のパワーローラ11,11を介して各出力側ディスク3,3に伝えられ、更にこれら各出力側ディスク3,3の回転が、出力歯車4より取り出される。
入力軸1と出力歯車4との間の回転速度比を変える場合には、一対の駆動ピストン33,33を互いに逆方向に変位させる。これら各駆動ピストン33,33の変位に伴って、一対のトラニオン15,15が互いに逆方向に変位する。例えば、図4の左側のパワーローラ11が同図の下側に、同図の右側のパワーローラ11が同図の上側にそれぞれ変位する。その結果、これら各パワーローラ11,11の周面11a,11aと各入力側ディスク2,2および各出力側ディスク3,3の内側面2a,2a,3a,3aとの当接部に作用する接線方向の力の向きが変化する。そして、この力の向きの変化に伴って、各トラニオン15,15が、ヨーク23A,23Bに枢支された枢軸14,14を中心として、互いに逆方向に揺動する。
その結果、各パワーローラ11,11の周面11a,11aと各内側面2a,3aとの当接位置が変化し、入力軸1と出力歯車4との間の回転速度比が変化する。また、これら入力軸1と出力歯車4との間で伝達するトルクが変動し、各構成部材の弾性変形量が変化すると、各パワーローラ11,11およびこれら各パワーローラ11,11に付属の外輪28,28が、各変位軸23,23の基端部23a、23aを中心として僅かに回動する。これら各外輪28,28の外側面と各トラニオン15,15を構成する支持板部16の内側面との間には、それぞれスラストニードル軸受25,25が存在するため、前記回動は円滑に行われる。したがって、前述のように各変位軸23,23の傾斜角度を変化させるための力が小さくて済む。
ところで、上記構成のトロイダル型無段変速機では、前述したように、入力側ディスク2と出力側ディスク3との間に挟まれたパワーローラ11により動力を伝達し、また、入力側ディスク2および出力側ディスク3に対するパワーローラ11の接触角度が動力伝達に大きな影響を及ぼすとともに、入力側ディスク2および出力側ディスク3が中間壁13を介してケーシング50に支持され、パワーローラ11もヨーク23A,23Bおよびトラニオン15等を介してケーシング50に支持されていることから、設計通りの所望の動力伝達性能を得るためには、ケーシング50に対してディスク2,3およびパワーローラ11を精度良く位置決めして組み立てることにより、ディスク2,3とパワーローラ11との相対的な位置を正確に決めることが重要となる。
この位置決めに関して更に詳しく説明すると、トラニオン15を支持するためのヨーク23A,23Bが前後のキャビティ221,222間で一体となっている構造、すなわち、2つのキャビティ221,222の4つのトラニオン15のそれぞれの一方側の枢軸14が共通の1つのヨーク23A(23B)によって支持されている前述した構造(例えば特許文献1も参照)では、先に述べたように、ケーシング50に対してヨーク23A,23Bの位置決めを行なうために、ヨーク23A,23Bとケーシング50との間に部材を設けるため、連結部材(ポスト64,68)を必要とする。すなわち、上側のヨーク23Aは、ケーシング50に固定部材52を介して支持されている球面ポスト64によって揺動自在に支持され、下側のヨーク23Bは、球面ポスト68およびこれを支持する駆動シリンダ31の上側シリンダボディ61によって揺動自在に支持される。したがって、このようなトロイダル型無段変速機においては、ポスト64,68がパワーローラ11の位置を決定することになる。一方、前述した構造から分かるように、ディスク2,3の位置を決定するものは中間壁13である。この中間壁13をケーシング50に設けられた取り付け面に結合することにより、ディスク2,3の位置を決定することができる。
つまり、前述した構造では、パワーローラ11とディスク2,3とを異なる部材(ポスト64,68および中間壁13)を介して個別にケーシング50に対して位置決めしなければならないが、このような態様でケーシング50に対してディスク2,3およびパワーローラ11を精度良く個別に組み立てて、ディスク2,3とパワーローラ11との相対的な位置を正確に決めることは難しく、その実現には、部品単品を高い精度で加工することが不可欠になる。具体的には、例えば全てのポスト64,68を精度良く加工して配置し、また、これらが取り付けられるケーシング50やシリンダボディ61の取り付け部位も精度良く加工する必要がある。その結果、加工工程や組立工程が煩雑になり(加工性および組立性が悪く)、また、ケーシング50の構造も複雑となり(中間壁13のための取り付け面をケーシング50に設ける必要があるため)、製造コストが高くなっていた。
そのため、上下のヨーク23A,23Bをケーシング50に対して組み付けた後に、改めて位置調整を行なうことも提案されている(例えば、特許文献2参照)。
特開平9−291997号公報 特開2002−195368号公報
しかしながら、特許文献2で提案されているように、上下のヨーク23A,23Bをケーシング50に対して組み付けた後に位置調整を行なう場合には、最終的な位置を確認することが難しく、最悪の場合、組み直しを余儀なくされる場合もあり得る。また、ディスクに対する位置規制は不可能であるため、ケースの加工性は従来と同じである。
本発明は、前記事情に鑑みて為されたもので、良好な加工性および組立性を確保しつつ、ケーシングに対してディスクよびパワーローラを精度良く組み立てて、ディスクとパワーローラとの相対的な位置を正確に決めることができる安価なトロイダル型無段変速機、位置決め用治具および位置決め方法を提供することを目的とする。
前記目的を達成するために、請求項1に記載のトロイダル型無段変速機は、ケーシングと、このケーシングの内側で互いの内側面同士を対向させた状態で互いに同心的に且つ回転自在に支持された入力側ディスクおよび出力側ディスクと、これらの両ディスク間に挟持される複数のパワーローラと、前記入力側ディスクおよび前記出力側ディスクの中心軸に対して捻れの位置にあり且つ互いに同心的に設けられた一対の枢軸を中心に揺動するとともに、前記各パワーローラを回転自在に支持する複数のトラニオンと、前記各トラニオンの前記各枢軸をそれぞれ揺動自在に且つ軸方向に変位自在に支持するとともに、前記ケーシングに支持されたポストに対してピンにより揺動可能に結合される一対のヨークと、を備えるトロイダル型無段変速機であって、前記ピンは、前記ヨークの側方に張り出す張出部と、この張出部に設けられ且つ前記一対のヨーク間に介在して取り付けられる位置決め用の治具が嵌合される嵌合部とを有していることを特徴とする。
また、請求項2に記載されたトロイダル型無段変速機は、請求項1に記載された発明において、前記治具は、前記ディスクの中心に設けられた軸孔内に嵌め込まれる嵌挿部を有していることを特徴とする。
また、請求項3に記載された位置決め用治具は、ケーシングと、このケーシングの内側で互いの内側面同士を対向させた状態で互いに同心的に且つ回転自在に支持された入力側ディスクおよび出力側ディスクと、これらの両ディスク間に挟持される複数のパワーローラと、前記入力側ディスクおよび前記出力側ディスクの中心軸に対して捻れの位置にあり且つ互いに同心的に設けられた一対の枢軸を中心に揺動するとともに、前記各パワーローラを回転自在に支持する複数のトラニオンと、前記各トラニオンの前記各枢軸をそれぞれ揺動自在に且つ軸方向に変位自在に支持するとともに、前記ケーシングに支持されたポストに対してピンにより揺動可能に結合される一対のヨークと、を備えるトロイダル型無段変速機の組立において使用される位置決め用治具であって、前記一対のヨークの前記ピン同士を位置決め可能に結合する本体部と、前記ディスクの中心に設けられた軸孔内に嵌め込まれる嵌挿部とを有していることを特徴とする。
また、請求項4に記載された位置決め方法は、ケーシングと、このケーシングの内側で互いの内側面同士を対向させた状態で互いに同心的に且つ回転自在に支持された入力側ディスクおよび出力側ディスクと、これらの両ディスク間に挟持される複数のパワーローラと、前記入力側ディスクおよび前記出力側ディスクの中心軸に対して捻れの位置にあり且つ互いに同心的に設けられた一対の枢軸を中心に揺動するとともに、前記各パワーローラを回転自在に支持する複数のトラニオンと、前記各トラニオンの前記各枢軸をそれぞれ揺動自在に且つ軸方向に変位自在に支持するとともに、前記ケーシングに支持されたポストに対してピンにより揺動可能に結合される一対のヨークと、を備えるトロイダル型無段変速機の組立において前記パワーローラと前記ディスクとの相対的な位置決めを行なう方法であって、前記一対のヨークの前記ピン同士を共通の治具で結合する工程と、前記治具を用いて前記ピンの位置を調整することにより、前記ケーシングに対する前記ヨークの位置を規制して、前記パワーローラと前記ディスクとの相対的な位置関係を規定する工程と、前記位置関係を固定した後、前記ピンから前記治具を取り外す工程と、を備えることを特徴とする。
また、請求項5に記載の位置決め方法は、請求項4に記載の発明において、前記治具の一部を前記ディスクの中心に設けられた軸孔内に嵌挿することにより、前記ディスクの軸心を基準に前記一対のヨークの位置を規制する工程を更に備えることを特徴とする。
請求項1、請求項3および請求項4に記載の発明によれば、ヨークから張り出したピンを使用して一対のヨークの位置規制(位置決め)を同時に且つ容易に行なうことが可能になるので、また、ヨークの揺動運動の中心位置であるピンを用いて位置決めを行なうことができるので、組立性および位置決め性能が向上するとともに、ケーシングに対してディスクよびパワーローラを精度良く組み立てて、ディスクとパワーローラとの相対的な位置を正確に決めることが可能になる。また、ケーシング等の加工に高い精度を求める必要もなくなるので、加工性も向上する。
請求項2および請求項5に記載の発明によれば、治具の一部をディスクの中心に設けられた軸孔内に嵌挿することにより、ディスクの軸心を基準に一対のヨークの位置を規制することができるので、ディスクとパワーローラとの相対的な位置を正確に且つ簡単に決めることができる。
以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態について説明する。なお、本発明の特徴は、特にヨークおよびトラニオンを介したパワーローラの位置決め構造にあり、その他の構成および作用は前述した従来の構成および作用と同様であるため、以下においては、本発明の特徴部分についてのみ言及し、それ以外の部分については、図3および図4と同一の符号を付して簡潔に説明するに留める。
図1は本発明の第1の実施形態を示している。図示のように、本実施形態において、トラニオン15を支持するための一対のヨーク23A,23Bは、前後のキャビティ221,222間で一体となっている。すなわち、2つのキャビティ221,222の4つのトラニオン15のそれぞれの一方側の枢軸14は、共通の1つのヨーク23A(23B)によって支持されている。具体的には、上側のヨーク23Aは、ケーシング50に固定部材52を介して支持されている球面ポスト64によって揺動自在に支持されている。この場合、固定部材52は、ボルト等の固定具300を介してケーシング50に固定され、また、上側のヨーク23Aは、ポスト64に対してピン320Aにより揺動可能に結合されている。一方、下側のヨーク23Bは、駆動シリンダ31の上側シリンダボディ61によって支持された球面ポスト68に対して揺動自在に支持されている。この場合も、下側のヨーク23Bは、ポスト68に対してピン320Bにより揺動可能に結合されている。
各ヨーク23A,23Bと対応するポスト64,68とを結合する各ピン320A,320Bは、ヨーク23A,23Bの側方に張り出す張出部350を有している。また、この張出部350には、組立時に一対のヨーク23A,23B間に介在して取り付けられる位置決め用の治具305A,305Bが嵌合される嵌合部360が設けられている。本実施形態において、この嵌合部360は、治具305A,305Bの取付部位が嵌合可能な所定形状の貫通穴であり、治具305A,305Bによって一対のヨーク23A,23Bのピン320A,320B同士を位置決め可能に結合できるように形成されている。
なお、本実施形態において、ディスク2,3の位置を決定する中間壁13は、ボルト等の固定具309を介してケーシング50に設けられた取り付け面50aに結合されている。
以上のような構成において、トロイダル型無段変速機の組立時にヨーク23A,23Bを位置決めする場合には、まず、一対のヨーク23A,23Bのピン320A,320B同士を共通の治具305A,305Bで結合する(図1に示される状態)。この場合、治具305A,305Bの両端の取付部位は、各ピン320A,320Bの嵌合部360に嵌合される。続いて、この結合状態で、治具305A,305Bを用いてピン320A,320Bの位置を調整することにより、ケーシング50に対するヨーク23A,23Bの位置を規制して、パワーローラ11とディスク2,3との相対的な位置関係を規定する。そして、このような位置関係を固定した後(この際、固定部材52をケーシング50に固定する)、ピン320A,320Bから治具305A,305Bを取り外す。
以上説明したように、本実施形態では、ヨーク23A,23Bから張り出したピン320A,320Bを使用して一対のヨーク23A,23Bの位置規制(位置決め)を同時に且つ容易に行なうことが可能になる。また、ヨーク23A,23Bの揺動運動の中心位置であるピン320A,320Bを用いて位置決めを行なうことができる。したがって、組立性および位置決め性能が向上するとともに、ケーシング50に対してディスク2,3よびパワーローラ11を精度良く組み立てて、ディスク2,3とパワーローラ11との相対的な位置を正確に決めることが可能になる。また、ケーシング50等の加工に高い精度を求める必要もなくなるため、加工性も向上する。
図2は本発明の第2の実施形態を示している。図示のように、本実施形態において、治具305A,305Bは、一対のヨーク23A,23Bのピン320A,320B同士を位置決め可能に結合する本体部305aと、ディスク(この実施形態では、出力側ディスク3)の中心に設けられた軸孔3b内に嵌め込まれる嵌挿部305bとを有している。そして、本実施形態においては、前述した組立時に、治具305A,305Bの嵌挿部305bをディスク3の軸孔3b内に嵌挿することにより、ディスク3の軸心を基準に一対のヨーク23A,23Bの位置を規制する。
このように、本実施形態においては、治具305A,305Bの一部をディスク3の中心に設けられた軸孔3b内に嵌挿することにより、ディスク3の軸心を基準に一対のヨーク23A,23Bの位置を規制することができるので、ディスク2,3とパワーローラ11との相対的な位置を正確に且つ簡単に決めることができる。
本発明は、様々な形態のダブルキャビティ型のトロイダル型無段変速機に適用することができる。
本発明の第1の実施形態に係るトロイダル型無段変速機の要部断面図である。 本発明の第2の実施形態に係るトロイダル型無段変速機の要部断面図である。 従来から知られているトロイダル型無段変速機の具体的構造の一例を示す断面図である。 図3のA−A線に沿う断面図である。
符号の説明
2 入力側ディスク
3 出力側ディスク
3b 軸孔
11 パワーローラ
14 枢軸
15 トラニオン
23A,23B ヨーク
50 ケーシング
64,68 ポスト
305A,305B 治具
305b 嵌挿部
320A,320B ピン
350 張出部
360 嵌合部

Claims (5)

  1. ケーシングと、このケーシングの内側で互いの内側面同士を対向させた状態で互いに同心的に且つ回転自在に支持された入力側ディスクおよび出力側ディスクと、これらの両ディスク間に挟持される複数のパワーローラと、前記入力側ディスクおよび前記出力側ディスクの中心軸に対して捻れの位置にあり且つ互いに同心的に設けられた一対の枢軸を中心に揺動するとともに、前記各パワーローラを回転自在に支持する複数のトラニオンと、前記各トラニオンの前記各枢軸をそれぞれ揺動自在に且つ軸方向に変位自在に支持するとともに、前記ケーシングに支持されたポストに対してピンにより揺動可能に結合される一対のヨークと、を備えるトロイダル型無段変速機において、
    前記ピンは、前記ヨークの側方に張り出す張出部と、この張出部に設けられ且つ前記一対のヨーク間に介在して取り付けられる位置決め用の治具が嵌合される嵌合部とを有していることを特徴とするトロイダル型無段変速機。
  2. 前記治具は、前記ディスクの中心に設けられた軸孔内に嵌め込まれる嵌挿部を有していることを特徴とする請求項1に記載のトロイダル型無段変速機。
  3. ケーシングと、このケーシングの内側で互いの内側面同士を対向させた状態で互いに同心的に且つ回転自在に支持された入力側ディスクおよび出力側ディスクと、これらの両ディスク間に挟持される複数のパワーローラと、前記入力側ディスクおよび前記出力側ディスクの中心軸に対して捻れの位置にあり且つ互いに同心的に設けられた一対の枢軸を中心に揺動するとともに、前記各パワーローラを回転自在に支持する複数のトラニオンと、前記各トラニオンの前記各枢軸をそれぞれ揺動自在に且つ軸方向に変位自在に支持するとともに、前記ケーシングに支持されたポストに対してピンにより揺動可能に結合される一対のヨークと、を備えるトロイダル型無段変速機の組立において使用される位置決め用治具であって、
    前記一対のヨークの前記ピン同士を位置決め可能に結合する本体部と、前記ディスクの中心に設けられた軸孔内に嵌め込まれる嵌挿部とを有していることを特徴とする位置決め用治具。
  4. ケーシングと、このケーシングの内側で互いの内側面同士を対向させた状態で互いに同心的に且つ回転自在に支持された入力側ディスクおよび出力側ディスクと、これらの両ディスク間に挟持される複数のパワーローラと、前記入力側ディスクおよび前記出力側ディスクの中心軸に対して捻れの位置にあり且つ互いに同心的に設けられた一対の枢軸を中心に揺動するとともに、前記各パワーローラを回転自在に支持する複数のトラニオンと、前記各トラニオンの前記各枢軸をそれぞれ揺動自在に且つ軸方向に変位自在に支持するとともに、前記ケーシングに支持されたポストに対してピンにより揺動可能に結合される一対のヨークと、を備えるトロイダル型無段変速機の組立において前記パワーローラと前記ディスクとの相対的な位置決めを行なう方法であって、
    前記一対のヨークの前記ピン同士を共通の治具で結合する工程と、
    前記治具を用いて前記ピンの位置を調整することにより、前記ケーシングに対する前記ヨークの位置を規制して、前記パワーローラと前記ディスクとの相対的な位置関係を規定する工程と、
    前記位置関係を固定した後、前記ピンから前記治具を取り外す工程と、
    を備えることを特徴とする位置決め方法。
  5. 前記治具の一部を前記ディスクの中心に設けられた軸孔内に嵌挿することにより、前記ディスクの軸心を基準に前記一対のヨークの位置を規制する工程を更に備えることを特徴とする請求項4に記載の位置決め方法。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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