JP2007309128A - 層状掃気２サイクルエンジン - Google Patents

Abstract

【課題】従来の層状掃気２サイクルエンジンと比べ、掃気の層状化効果をより好適なものとすることができ、燃焼の安定化、吹き抜け防止等の点で非常に優れた効果を期待することができる層状掃気２サイクルエンジンを提供する。
【解決手段】掃気通路４が、クランク室９に沿って延在する部分（クランク室側部分４ａ）と、シリンダ１０に沿って延在する部分（シリンダ側部分４ｂ）とを有し、かつ、シリンダ１０の直径と行程の和よりも長くなるように構成され、掃気通路４内に先導空気を導入するための外気導入路１１が、掃気通路４の中間部位に接続され、ピストン８が上死点付近にあるときに掃気ポート７をクランク室９側に開口させる切欠８ａがピストン８に形成されていることを特徴とする。
【選択図】図２

Description

本発明は、２サイクルエンジンに関し、特に、掃気行程の際、予め掃気通路内に導入された空気（先導空気）が掃気ポートからシリンダ内へ流入し、続いてクランク室から掃気通路を経て混合気が掃気ポートからシリンダ内へ供給されるように構成された層状掃気２サイクルエンジンに関する。

従来より、２サイクルエンジンの掃気行程において、掃気通路内に予め導入された先導空気と、それに続く混合気が、掃気ポートからシリンダ内へ向けて層状に流入することにより、未燃焼ガスが排気ポートから流出してしまうこと（吹き抜け）を防止できるようにしたエンジン（層状掃気２サイクルエンジン）が知られている。

層状掃気２サイクルエンジンにおいて、先導空気を掃気通路内に導入するための方式としては、様々な方式のものがある。最も基本的なものとしては、掃気通路に、リード弁を備えた外気導入路が接続され、圧縮工程の際、低下したクランク室内の圧力によって、外気導入路から掃気通路内に外気（先導空気）が流入するように構成されたものなどがある。
特開平１０−１２１９７３号公報

ところで、従来の２サイクルエンジンには、特開平１１−３１５７２２号公報等に記載されているように、掃気通路のクランク室側開口部（掃気通路の始端部）をクランク室の底部に配置し、掃気通路がシリンダの直径と行程の和よりも長くなるように構成したものがある。このように構成した場合、サイクル毎の燃焼を安定化させることができる。また、燃料の吹き抜けを低減させることができ、出力、熱効率、排気、振動などにおいて優れた効果を期待することができる。

ここで、掃気通路を長く構成した２サイクルエンジンに、上記特開平１０−１２１９７３号公報に記載されているような、先導空気を掃気通路内に導入する技術を適用した場合、掃気の層状化効果をより好適なものとすることができ、燃焼の安定化、吹き抜け防止等の点で非常に優れた効果を期待することができると考えられる。

しかしながら、特開平１０−１２１９７３号公報に記載されているエンジンにおいては、先導空気が、掃気通路のクランク室側開口部（掃気通路の始端）から最も遠い位置にある掃気ポート（掃気通路の終端）近傍の部位から導入されるため、掃気通路が長く構成された場合、掃気通路の全域（終端から始端まで）を先導空気で満たすには相応の時間がかかることになり、各サイクルにおける僅かな時間の中では、先導空気が掃気通路のクランク室側開口部まで到達せず、先導空気を充分に導入できない可能性がある。

尚、掃気ポート近傍の部位から先導空気を導入するのではなく、掃気通路の中間部位に外気導入路を接続し、その接続部分から先導空気が掃気通路内に流入するように構成した場合には、掃気ポートから流入させる場合と比べ、より容易に先導空気を掃気通路のクランク室側開口部まで到達させることができると考えられるが、この場合、掃気通路内空間のうち、外気導入路の接続部分から掃気ポートまでの領域に残留している混合気を追い出すことができず、当該領域を純粋な先導空気によって満たすことが難しいという問題がある。

本発明は、このような従来技術における問題を解決すべくなされたものであって、従来の層状掃気２サイクルエンジンと比べ、掃気の層状化効果をより好適なものとすることができ、燃焼の安定化、吹き抜け防止等の点で非常に優れた効果を期待することができる層状掃気２サイクルエンジンを提供することを目的とする。

本発明の層状掃気２サイクルエンジンは、掃気通路が、クランク室に沿って延在する部分（クランク室側部分）と、シリンダに沿って延在する部分（シリンダ側部分）とを有し、かつ、シリンダの直径と行程の和よりも長くなるように構成され、掃気通路内に先導空気を導入するための外気導入路が、掃気通路の中間部位に接続され、ピストンが上死点付近にあるときに掃気ポートをクランク室側に開口させる切欠又は穴がピストンに形成されていることを特徴としている。尚、外気導入路は、掃気通路のシリンダ側部分のうち、最もクランク室側開口部に近い位置に接続されることが好ましい。

また、掃気通路のクランク室側開口部が、クランクウェイトの外周面が通過する軌道に最も近い位置において開口し、クランクウェイトが、掃気通路のクランク室側部分内へ先導空気が流入する際の抵抗となるように構成することが好ましい。

本発明の層状掃気２サイクルエンジンは、一般的なものよりも掃気通路が長く形成されているにも拘わらず、掃気通路の全域を先導空気で満たすことができ、その結果、充分な量の先導空気をシリンダ内へ供給することができ、掃気の層状化効果をより好適なものとすることができるほか、燃焼の安定化、吹き抜け防止等の点で非常に優れた効果を期待することができる。

以下、添付図面に沿って、本発明を実施するための最良の形態について説明する。図１は、本発明の第１の実施形態に係る層状掃気２サイクルエンジン１の断面図である。この図において２は給気通路、３は排気通路、４は掃気通路であり、５は吸気ポート、６は排気ポート、７は掃気ポートである。また、８はピストン、９はクランク室、１０はシリンダ、１７は気化器、１８はインシュレータ、１９はスロットル弁、２０は空気弁である。

一般的な２サイクルエンジンにおいては、掃気通路の始端（クランク室側開口部）はクランク室の上方に開設されいるが、本実施形態においては、掃気通路４の始端（クランク室側開口部１３）は、クランク室９の底部９ａに開設されている。本実施形態の掃気通路４は、大別して、クランク室側開口部１３からクランク室９の上方の位置までの、クランク室９に沿って延在する部分（クランク室側部分４ａ）と、クランク室９の上方の位置から掃気ポート７までの、シリンダ１０に沿って延在する部分（シリンダ側部分４ｂ）と、クランク室側部分４ａとシリンダ側部分４ｂとを連絡する部分（連絡部分４ｃ）とによって構成され、一般的な２サイクルエンジンの掃気通路（クランク室の上方の位置から掃気ポートまでの、シリンダに沿って延在する部分のみ）よりも長く（シリンダの直径と行程の和よりも長く）なっている。

また、本実施形態においては、外気導入路１１が、掃気通路４の中間部位（掃気ポート７よりもクランク室側開口部１３に近い位置）に接続されている。この外気導入路１１には、リード弁１２が装着されており、図示しないエアクリーナによって清浄化された外気が、リード弁１２を押し開いて外気導入路１１を流下し、掃気通路４内へ流入するようになっている。

ここで、本実施形態の層状掃気２サイクルエンジン１の作用について説明する。図１に示すように、ピストン８が下死点から上死点に向かって上昇していく際、クランク室９内は負圧となり、その圧力差により、図示しない気化器から混合気（新気）が給気通路２を通ってクランク室９内へ流入する。

このとき、掃気通路４はクランク室側開口部１３を介してクランク室９と連通しているため、掃気通路４内空間は、クランク室９と同様に負圧となり、その圧力差により、図示しないエアクリーナによって清浄化された外気（先導空気）が、リード弁１２を押し開いて外気導入路１１を流下し、掃気通路４内へ流入する。

外気導入路１１は、上述したとおり、掃気通路４の中間部位（掃気ポート７よりもクランク室側開口部１３に近い位置）に接続されているため、掃気ポート７近傍の部位から先導空気を導入する場合よりも、先導空気を掃気通路４のクランク室側開口部１３まで容易に到達させることができる。

尚、図１に示す状態においては、掃気ポート７はピストン８により閉塞されているため、掃気通路４内に先導空気を流入させても、外気導入路１１の接続部分１１ａから掃気ポート７までの領域（シリンダ側部分４ｂ）に残留している混合気を追い出すことができず、当該領域を純粋な先導空気によって満たすことができないが、本実施形態においては、図２に示すように、ピストン８が上死点付近にあるときに掃気ポート７をクランク室９側に開口させる切欠８ａがピストン８の下縁に形成されているため、この切欠８ａによって掃気ポート７が開口し始めた瞬間から全開するまでの間、掃気通路４のシリンダ側部分４ｂに残留している混合気が、先導空気によって押し出されてクランク室９側に流出するとともに、シリンダ側部分４ｂ内が先導空気によって満たされることになる。

このように、本実施形態に係る層状掃気２サイクルエンジン１は、一般的なものよりも掃気通路４が長く形成されているにも拘わらず、掃気通路４の全域（クランク室側開口部１３から掃気ポート７まで）を先導空気で満たすことができる。従って、ピストン８が下死点に向かって下降する排気・掃気行程において、充分な量の先導空気をシリンダ１０内へ供給することができ、掃気の層状化効果をより好適なものとすることができるほか、燃焼の安定化、吹き抜け防止等の点で非常に優れた効果を期待することができる。

また、本実施形態においては、図３（図２に示したＸ−Ｘ線によるクランクケース１４の断面図）に示すように、クランク室９の底部９ａに形成されている掃気通路４のクランク室側開口部１３が、クランクシャフト１６周りに回転するクランクウェイト１５の外周面１５ａが通過する軌道に最も近い位置において開口しており、クランクウェイト１５が、図２に示す状態を中心として前後約９０°の範囲にあるときに（ピストン８が、ストロークの中間点よりも上方に位置しているときに）、外周面１５ａがクランク室側開口部１３近傍の空間を横切るように構成されている。このため、クランクウェイト１５が、掃気通路４のクランク室側部分４ａ内へ先導空気が流入する際の抵抗となり、ピストン８の切欠８ａによって掃気ポート７が開口し始めた瞬間から全開するまでの間における、掃気通路４のシリンダ側部分４ｂへの先導空気の導入を円滑に行うことができる。

この点について詳細に説明すると、ピストン８が下死点から上死点に向かって上昇していくことによってクランク室９内が負圧になると、掃気通路４内へ先導空気が流入することになるが、掃気通路４のうち、まず、クランク室側部分４ａ及び連絡部分４ｃへ先導空気が流入し始め、最後に（ピストン８が上死点に近づいて、ピストン８の切欠８ａによって掃気ポート７がクランク室９側に開口し始めた瞬間から全開するまでの間だけ）シリンダ側部分４ｂへ先導空気が流入するようになっているため、掃気ポート７がクランク室９側に開口し始めた後においては、シリンダ側部分４ｂへの先導空気の流入量が、クランク室側部分４ａ及び連絡部分４ｃへの流入量よりも多くなるように構成することが有効である。

本実施形態においては、少なくとも「ピストン８の切欠８ａによって掃気ポート７がクランク室９側に開口し始めた瞬間から全開するまでの間」、クランクウェイト１５の外周面が１５ａクランク室側開口部１３近傍の空間を横切るように構成されているため、掃気通路４のクランク室側部分４ａ内へ先導空気が流入する際にクランクウェイト１５が抵抗となり、その結果、シリンダ側部分４ｂへの先導空気の流入量が増加し、シリンダ側部分４ｂへの先導空気の導入を円滑に行うことができる。

本発明の第１の実施形態に係る層状掃気２サイクルエンジン１の断面図。 本発明の第１の実施形態に係る層状掃気２サイクルエンジン１（ピストン８が上死点にある状態）の断面図。 図２に示したＸ−Ｘ線によるクランクケース１４の断面図。

符号の説明

１：エンジン、
２：給気通路、
３：排気通路、
４：掃気通路、
４ａ：クランク室側部分、
４ｂ：シリンダ側部分、
４ｃ：連絡部分、
５：吸気ポート、
６：排気ポート、
７：掃気ポート、
８：ピストン、
９：クランク室、
９ａ：底部、
１０：シリンダ、
１１：外気導入路、
１１ａ：接続部分、
１２：リード弁、
１３：クランク室側開口部、
１４：クランクケース、
１５：クランクウェイト、
１５ａ：外周面、
１６：クランクシャフト、
１７：気化器、
１８：インシュレータ、
１９：スロットル弁、
２０：空気弁

Claims (3)

1. 掃気通路が、クランク室に沿って延在する部分と、シリンダに沿って延在する部分とを有し、かつ、シリンダの直径と行程の和よりも長くなるように構成され、
   前記掃気通路内に先導空気を導入するための外気導入路が、前記掃気通路の中間部位に接続され、
   ピストンが上死点付近にあるときに掃気ポートをクランク室側に開口させる切欠又は穴がピストンに形成されていることを特徴とする層状掃気２サイクルエンジン。
2. 前記外気導入路が、掃気通路の、シリンダに沿って延在する部分の、最もクランク室側開口部に近い位置に接続されていることを特徴とする、請求項１に記載の層状掃気２サイクルエンジン。
3. 前記掃気通路のクランク室側開口部が、クランクウェイトの外周面が通過する軌道に最も近い位置において開口しており、前記クランクウェイトが、前記掃気通路のクランク室側部分内へ先導空気が流入する際の抵抗となるように構成されていることを特徴とする、請求項１に記載の層状掃気２サイクルエンジン。

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