JP2007308811A - 防水導電性布帛及びその製造方法 - Google Patents

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裕貴 木下
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Abstract

【課題】十分な導電性と高度な防水性とを同時に発揮させることができる防水導電性布帛を効率よく且つ確実に製造することが可能な防水導電性布帛の製造方法を提供すること。
【解決手段】ポリフッ化ビニリデン樹脂粒子の表面にめっき層を有する金属被覆ポリフッ化ビニリデン樹脂粒子を布帛に担持せしめる工程と、前記金属被覆ポリフッ化ビニリデン樹脂粒子を前記布帛に加熱加圧融着させる工程と、を含むことを特徴とする防水導電性布帛の製造方法。
【選択図】なし

Description

本発明は、防水導電性布帛並びにその製造方法に関し、より詳しくは、衣料用、資材用等の導電性布帛や電磁波シールド素材として有用な防水導電性布帛並びにその製造方法に関する。
一般に、合成繊維等の布帛の原料として用いられる重合体は、疎水性で静電気により帯電し易いものである。そのため、このような重合体からなる布帛においては、従来から静電気を抑える目的で帯電防止剤や導電性付与剤等による制電加工を施して導電性を付与してきた。このような帯電防止剤としては、カチオン性、アニオン性及び非イオン性の界面活性剤や、カチオン化された重合体等が挙げられる。また、前記導電性付与剤としては導電性フィラー等が挙げられる。更に、制電加工の方法としては、導電性フィラー等の導電性付与剤をバインダー中に分散させた導電性塗料を塗布する方法、界面活性剤を基材中に練混むか、あるいは界面活性剤により表面処理する方法、金、パラジウム等の金属や酸化インジウム等の金属酸化物を蒸着する方法等が挙げられる。
しかしながら、このような制電加工を施す方法では、冬場等の乾燥時期や、クリーニング後の乾燥工程を出た直後等の低湿度環境下において、布帛の導電性能が十分なものとはならないという問題があった。また、制電加工を施す際に帯電防止剤として界面活性剤や水溶性高分子を用いた場合においては、洗濯等により布帛から帯電防止剤が容易に溶出若しくは脱落して導電性能が十分に維持できないという問題があった。更に、制電加工を施す際に布帛に導電性フィラーをバインダーにて塗布する場合においては、十分な導電性を付与するために多量の導電性フィラーを塗布することが必要であるため、得られる布帛は重く、その風合いも硬いものとなってしまうという問題があった。また、前述のような布帛は一般に疎水性のものからなるものではあるが、更なる防水性を付与するために撥水加工等を施した場合に、その導電性が低下してしまうという問題もあった。
このような問題に対して、特開平6−316872号公報(特許文献1)においては、合成繊維布帛表面にポリエーテルエステル樹脂層を形成し、その外側にカチオン系あるいはアニオン系制電防止剤を含むフッ化ビニリデン系撥水剤皮膜を形成する方法が開示されている。また、特開2004−197283号公報(特許文献2)においては、銀を付着させた導電性繊維等により編成した生地に、撥水加工を施す方法が開示されている。更に、特開2003−183980号公報(特許文献3)においては、繊維の表面に金属被覆を行い、その上にフッ化ビニリデン系化合物を被覆する方法が開示されている。しかしながら、特許文献1〜3に記載されているような方法を採用した場合においても、十分な防水性と導電性とを併せ持つ布帛を得ることは困難であった。
特開平6−316872号公報 特開2004−197283号公報 特開2003−183980号公報
本発明は、上記従来技術の有する課題に鑑みてなされたものであり、十分な導電性と高度な防水性とを同時に発揮させることができる防水導電性布帛を効率よく且つ確実に製造することが可能な防水導電性布帛の製造方法、並びにその製造方法で得られた防水導電性布帛を提供することを目的とする。
本発明者らは、上記目的を達成すべく鋭意研究を重ねた結果、ポリフッ化ビニリデン樹脂粒子の表面にめっき層を有する金属被覆ポリフッ化ビニリデン樹脂粒子を用いることにより、十分な導電性と高度な防水性とを同時に発揮させることができる防水導電性布帛を効率よく且つ確実に製造することが可能となることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明の防水導電性布帛の製造方法は、ポリフッ化ビニリデン樹脂粒子の表面にめっき層を有する金属被覆ポリフッ化ビニリデン樹脂粒子を布帛に担持せしめる工程と、前記金属被覆ポリフッ化ビニリデン樹脂粒子を前記布帛に加熱加圧融着させる工程と、を含むことを特徴とする製造方法である。
また、本発明の防水導電性布帛は、布帛に担持された、ポリフッ化ビニリデン樹脂粒子表面にめっき層を有する金属被覆ポリフッ化ビニリデン樹脂粒子を、前記布帛に加熱加圧融着せしめてなるものであることを特徴とするものである。
本発明によれば、十分な導電性と高度な防水性とを同時に発揮させることができる防水導電性布帛を効率よく且つ確実に製造することが可能な防水導電性布帛の製造方法、並びにその製造方法で得られた防水導電性布帛を提供することが可能となる。
以下、本発明をその好適な実施形態に即して詳細に説明する。
先ず、本発明の防水導電性布帛の製造方法について説明する。すなわち、本発明の防水導電性布帛の製造方法は、(i)ポリフッ化ビニリデン樹脂粒子の表面にめっき層を有する金属被覆ポリフッ化ビニリデン樹脂粒子を布帛に担持せしめる工程と、(ii)前記金属被覆ポリフッ化ビニリデン樹脂粒子を前記布帛に加熱加圧融着させる工程と、を含むことを特徴とする方法である。
このようなポリフッ化ビニリデン樹脂粒子の樹脂素材としては、フッ化ビニリデン構造単位を含有するものであればよく、特に制限されず、例えば、ポリフッ化ビニリデン、フッ化ビニリデンと六フッ化プロピレンとの共重合体、フッ化ビニリデンと三フッ化塩化エチレンとの共重合体、フッ化ビニリデンと四フッ化エチレンと六フッ化プロピレンとの共重合体、フッ化ビニリデンと三フッ化塩化エチレンとの共重合体とフッ化ビニリデンとのグラフト共重合体、フッ化ビニリデンと四フッ化エチレンとパーフルオロアルキルビニルエーテルとの共重合体等が挙げられる。
また、このようなポリフッ化ビニリデン樹脂粒子の樹脂素材としては、フッ化ビニリデン構造単位を、固形分全量に対して40〜100質量%有しているものが好ましく、60〜100質量%有しているものがより好ましい。前記フッ化ビニリデン構造単位の含有量が前記下限未満では、防水性が十分に発揮され難くなる傾向にある。
さらに、このようなポリフッ化ビニリデン樹脂粒子の樹脂素材としては、その数平均分子量が10000〜1000000程度であることが好ましい。前記数平均分子量が前記下限未満では、防水性が十分に発揮され難くなる傾向にあり、他方、前記上限を超えると加熱加圧融着性が低下し、防水性が低下する傾向にある。
また、このようなポリフッ化ビニリデン樹脂粒子の平均粒子径としては、1〜1000μm程度であることが好ましい。前記平均粒子径が前記下限未満では、金属被覆ポリフッ化ビニリデン樹脂粒子の製造の際における飛散、ろ過性の低下などからハンドリング性が低下して金属被覆ポリフッ化ビニリデン樹脂粒子の製造効率が低下する傾向にあり、他方、前記上限を越えると、得られる金属被覆ポリフッ化ビニリデン樹脂粒子を布帛に担持せしめる際に加工適性が低下する傾向にある。
また、このようなポリフッ化ビニリデン樹脂粒子としては、流動開始温度が用いる布帛の融点より低い温度であることが要求されること及び得られる金属被覆ポリフッ化ビニリデン樹脂粒子を加熱加圧溶融させる際の作業性の向上という観点から、流動開始温度が80〜200℃のポリフッ化ビニリデン樹脂粒子を用いることが好ましい。なお、このようなポリフッ化ビニリデン樹脂粒子の製造方法としては特に制限されず、公知の方法を適宜採用することができる。また、このようなポリフッ化ビニリデン樹脂粒子としては、市販のものを用いてもよい。
また、本発明にかかる金属被覆ポリフッ化ビニリデン樹脂粒子は、前記ポリフッ化ビニリデン樹脂粒子の表面にめっきを施して金属を被覆させてなるものである。このようなめっきの方法は特に制限されないが、従来公知の無電解めっき方法を用いることが好ましい。また、前記めっきに用いられる金属としては、特に制限はされないが、亜鉛、銀、銅、錫、アルミニウム、ニッケル、クロム、コバルト等の金属が挙げられ、このような金属は単独で若しくは複合させて用いることができる。更に、このようなめっきによってポリフッ化ビニリデン樹脂粒子の表面に被覆される金属のめっき層の厚みとしては、0.1〜5.0μmであることが好ましく、0.2〜2.0μmであることが特に好ましい。前記金属のめっき層の厚みが前記下限未満では、得られる防水導電性布帛に十分な導電性が付与され難くなる傾向にあり、他方、前記上限を超えると、金属被覆ポリフッ化ビニリデン樹脂粒子が繊維に融着しなくなる傾向にある。
また、本発明においては、金属被覆ポリフッ化ビニリデン樹脂粒子のめっき層に、フッ素樹脂の微粒子を複合させることが好ましい。ポリフッ化ビニリデン樹脂粒子にフッ素樹脂の微粒子が複合されためっきを施すことにより、導電性と防水性のみならず表面の撥水性がより向上する傾向にある。このようにしてめっき層に複合化させるフッ素樹脂としては、例えば、前記ポリフッ化ビニリデン樹脂粒子の樹脂素材として用いられる樹脂、四フッ化エチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合樹脂、四フッ化エチレン−六フッ化プロピレン共重合樹脂、四フッ化エチレン−エチレン共重合樹脂、三フッ化塩化エチレン−エチレン共重合樹脂、四フッ化エチレン樹脂、三フッ化塩化エチレン樹脂等を挙げることができる。
また、このようにして複合化させるフッ素樹脂の微粒子の平均粒子径としては、1〜1000nm程度であることが好ましい。フッ素樹脂の微粒子の平均粒子径が前記下限未満では、ハンドリング性が低下して、フッ素樹脂の微粒子が複合されためっき層の製造効率が低下する傾向にあり、他方、前記上限を越えると、フッ素樹脂の微粒子を複合化することが困難となる傾向にある。更に、フッ素樹脂を複合化させる際におけるめっき層中のフッ素樹脂粒子の含有量は5〜35質量%程度であることが好ましい。なお、フッ素樹脂の微粒子が複合されためっきを施す方法も特に制限されず、公知の方法を適宜採用することができる。
上述のようにしてポリフッ化ビニリデン樹脂粒子の表面にめっきを施すことで、ポリフッ化ビニリデン樹脂粒子の表面にめっき層を有する金属被覆ポリフッ化ビニリデン樹脂粒子を得ることができる。このような金属被覆ポリフッ化ビニリデン樹脂粒子の平均粒子径としては、一般的に1〜1000μm程度であればよいが、布帛に担持せしめる際の作業性(加工適性)の向上という観点から、前記平均粒子径が5〜100μmであることがより好ましい。また、このような金属被覆ポリフッ化ビニリデン樹脂粒子が有するめっき層の厚みとしては、用いられるポリフッ化ビニリデン樹脂粒子の平均粒子径や金属種などによって異なるものであるが、金属被覆ポリフッ化ビニリデン樹脂粒子径の5〜50%程度の厚みであることが好ましい。
また、本発明において、前記金属被覆ポリフッ化ビニリデン樹脂粒子は、これを単独で用いてもよく、布帛への接着性をより向上させるという観点からは、防水性と導電性を損なわない範囲においてバインダー樹脂と併用して用いてもよい。このようなバインダー樹脂としては、例えば、ポリエステル樹脂、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、酢酸ビニル樹脂、メラミン樹脂、シリコン樹脂、前述のポリフッ化ビニリデン樹脂等が挙げられる。
本発明にかかる布帛としては、特に制限されるものではないが、ポリエステル、ナイロン、ポリアミド、アクリル、ビニロン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリビニルアルコール、芳香族ポリイミド、ポリウレタン等の合成繊維、アセテート、トリアセテート等の半合成繊維、レーヨン、ベンベルグ等の再生繊維、綿、麻、羊毛、シルク等の天然繊維等の材質の布帛を使用することができ、前記材質を単独若しくは混紡糸にして使用することができる。また、このような布帛の形態としては、織布、不織布などを挙げることができる。さらに、常法により糊抜、精練、セットをおこなった晒上げの布帛を用いてもよく、また、色、フィックス処理をおこなった色物の布帛を用いてもよい。
以上、本発明の防水導電性布帛の製造方法に用いる金属被覆ポリフッ化ビニリデン樹脂粒子及び布帛について説明したが、以下、前述の(i)ポリフッ化ビニリデン樹脂粒子の表面にめっき層を有する金属被覆ポリフッ化ビニリデン樹脂粒子を布帛に担持せしめる工程、及び(ii)前記金属被覆ポリフッ化ビニリデン樹脂粒子を前記布帛に加熱加圧融着させる工程を説明する。
先ず、(i)ポリフッ化ビニリデン樹脂粒子の表面にめっき層を有する金属被覆ポリフッ化ビニリデン樹脂粒子を布帛に担持せしめる工程を説明する。
このような工程(i)において、金属被覆ポリフッ化ビニリデン樹脂粒子を布帛に担持せしめる方法としては、特に制限されるものではないが、金属被覆ポリフッ化ビニリデン樹脂粒子を分散媒に分散させた分散液(加工液)を布帛に塗布する方法、金属被覆ポリフッ化ビニリデン樹脂粒子を直接布帛に担持せしめる方法が挙げられる。このような金属被覆ポリフッ化ビニリデン樹脂粒子を布帛に塗布する方法の中でも、作業性(加工適性)の観点から、分散媒に金属被覆ポリフッ化ビニリデン樹脂粒子を分散させた分散液(加工液)を布帛に塗布する方法が好ましい。
ここで、前記分散液(加工液)を調製する際に用いられる分散媒としては、水、有機溶剤(アルコール類、グリコール類、ターペン類等)が挙げられる。また、前記分散液中の金属被覆ポリフッ化ビニリデン樹脂粒子の含有量としては、特に制限されないが、分散液中20〜50質量%程度であるのが好ましい。金属被覆ポリフッ化ビニリデン樹脂粒子の含有量が前記下限未満では、布帛に塗布する分散液の量が多量となって作業性が低下する傾向にあり、他方、前記上限を超えると、粘性が高くなり、取扱いが困難となる傾向にある。
また、このような分散液には、他の成分を含有させることが可能であり、具体的には、加工適性を向上させるために、界面活性剤、粘度調整剤等の各種添加成分を使用することが可能である。
さらに、このような分散液を布帛に塗布する方法としては、特に制限されず、パッド法、コーティング法、プリント法等の公知の方法を挙げることができ、このような方法に用いる設備としては、従来の繊維加工設備を使用することができる。
また、前記工程(i)において、布帛に担持される金属被覆ポリフッ化ビニリデン樹脂粒子の量としては、ポリフッ化ビニリデン樹脂粒子の素材や金属の種類等によって異なるが、10〜500g/m程度であることが好ましい。布帛に担持される金属被覆ポリフッ化ビニリデン樹脂粒子の量が前記下限未満では、布帛に担持される金属被覆ポリフッ化ビニリデン樹脂粒子の量が十分でなく、得られる防水導電性布帛に十分な導電性が得られない傾向にあり、他方、前記上限を超えると、得られる防水導電性布帛が重くなると共に風合いが硬くなる傾向にある。
次に、(ii)前記金属被覆ポリフッ化ビニリデン樹脂粒子を前記布帛に加熱加圧融着させる工程について説明する。
このような工程(ii)において、金属被覆ポリフッ化ビニリデン樹脂粒子を加熱加圧融着させる際、加熱と加圧を同時に施すことが必要である。このような加熱と加圧を同時に施すことで、得られる防水導電性布帛に、より均一な金属の連続層を形成させることが可能となる。加熱加圧条件の加熱温度としては、用いられたポリフッ化ビニリデン樹脂粒子の流動開始温度以上で且つ布帛に用いられている材質の融点以下の温度であることが好ましい。また、加圧する圧としては、用いられる布帛の材質、金属被覆ポリフッ化ビニリデン樹脂粒子の付着量などによって異なるものではあるが、1MPa以上のプレス圧であることが好ましい。さらに、このような加熱加圧融着を行う際に用いる設備としては、特に限定されず、従来の繊維加工設備に備えられた加熱と加圧を同時に出来る設備を使用することができる。
また、本発明においては、このような加熱加圧融着を行うことで、金属被覆ポリフッ化ビニリデン樹脂粒子がつぶれて布帛の表面に金属の連続層が形成されるため、金属被覆ポリフッ化ビニリデン樹脂粒子の担持量が比較的少ない場合であっても十分な導電性を有する防水導電性布帛を製造することが可能となる。更に、本発明においては、上述のような加圧を施すことでポリフッ化ビニリデン樹脂粒子の樹脂素材がミクロな部分で被覆した金属の連続層から表面に出ることによって、十分な防水性を有する防水導電性布帛を製造することが可能となる。そのため、このようにして製造された防水導電性布帛は、軽量で、十分な防水性と導電性とを併せ持つ防水導電性布帛となる。
次に、本発明の防水導電性布帛について説明する。
本発明の防水導電性布帛は、布帛に担持された、ポリフッ化ビニリデン樹脂粒子の表面にめっき層を有する金属被覆ポリフッ化ビニリデン樹脂粒子を、前記布帛に加熱加圧融着せしめてなることを特徴とするものである。
このように、本発明の防水導電性布帛は、前述の本発明の防水導電性布帛の製造方法によって製造されたものである。このような防水導電性布帛の金属層の厚みとしては特に制限されるものではない。
また、本発明の防水導電性布帛は防水性を有しつつ高い導電性を有することから、例えば耐水帯電防止衣料用途、資材用途、電磁波シールド素材やカーシート用途等に使用することが期待できる。
以下、実施例及び比較例に基づいて本発明をより具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
なお、各実施例及び各比較例で得られた布帛の導電性及び防水性は、以下の方法により評価した。
<導電性>
(a)表面抵抗値
各実施例及び各比較例で得られた防水導電性布帛から形成された試料(縦100mm、横100mm、厚み0.13mm)を用い、これを温度20℃、湿度40%の室内に24時間放置した後、表面抵抗計(東亜電波工業株式会社製の商品名「SUPER MEGOHMMETER SM−5E」)を用いて表面抵抗値を測定した。
(b)摩擦帯電圧
各実施例及び各比較例で得られた防水導電性布帛から形成された試料(縦50mm、横80mm、厚み0.13mm)を用い、これを温度20℃、湿度40%の室内に24時間放置した後、JIS L 1094(1997年5月2日)に従い、摩擦帯電圧測定器(株式会社大栄科学精機製作所製の商品名「ロータリースタティックテスターMRS−500D」)を用い、摩擦布を綿として、摩擦帯電圧を測定した。
<防水性>
各実施例及び各比較例で得られた防水導電性布帛から形成された試料(縦150mm、横150mm、厚み0.13mm)を用い、JIS L 1092(1998年6月1日)のA法に従い、高水圧型耐水度試験機(株式会社大栄科学精器製作所製の商品名「WP−1000K」)を用いて、防水性を測定した。
(実施例1)
先ず、塩化第一錫20.0gと35質量%の塩酸10mlとを水980gに溶解して処理浴(A)を調製した。次いで、塩化パラジウム0.1gと35質量%の塩酸5mLとを水994.9gに溶解して処理浴(B)を調製した。
次に、ポリフッ化ビニリデン樹脂粒子(呉羽化学工業株式会社製の商品名「KFポリマー(登録商標)C#1500」、融点177℃、平均粒子経100μm)50gを処理浴(A)に20℃の温度条件で10分間浸漬させた後、ろ過により分別し、水洗を行って水洗物を得た。次いで、得られた水洗物を処理浴(B)に20℃の温度条件で10分間浸漬させた後、ろ過により分別し、水洗を行って水洗物を得た。その後、得られた水洗物を再度処理浴(A)に20℃の温度条件で10分間浸漬させた後、ろ過により分別し、水洗を行って水洗物を得、次いで、この水洗物を処理浴(B)に20℃の温度条件で10分間浸漬させた後、ろ過により分別し、水洗を行って、ポリフッ化ビニリデン樹脂粒子に触媒の付与を行い、触媒付与ポリフッ化ビニリデン樹脂粒子を得た。
次いで、硫酸ニッケル6水和物40gと、クエン酸ソーダ2水和物30gと、界面活性剤(日光ケミカルズ株式会社製の商品名「BL−2」)1gとを水929gに添加してめっき浴を調製した。そして、上述のようにして得られた触媒付与ポリフッ化ビニリデン樹脂粒子20gを、60℃の温度条件下において前記めっき浴に添加し、25質量%のアンモニア水溶液にてpHを9に調整しながら、次亜リン酸ソーダ1水和物40gを分割添加した後、ろ過により分別し、水洗、乾燥を行って、無電解めっき法によるニッケルめっきを施し、ニッケルめっき層を有する金属被覆ポリフッ化ビニリデン樹脂粒子を得た。得られた金属被覆ポリフッ化ビニリデン樹脂粒子におけるニッケルの被覆量は、ポリフッ化ビニリデン樹脂粒子100質量部に対して30質量部であり、平均粒子経は102μmであり、めっき層の厚みは1.1μmであった。
次に、得られた金属被覆ポリフッ化ビニリデン樹脂粒子40質量%及び界面活性剤(花王株式会社製の商品名「エマルゲン(登録商標)A−90」)2質量%を含有する水分散液を調製し、これに増粘剤(日華化学株式会社製の商品名「ネオステッカー(登録商標)NT」)を添加して粘度10Pa・sの分散液(加工液)を調製した。
そして、前記分散液を、目付け60g/mのポリエステルタフタ織物布にコーティング法を用いて塗布量が100g/mになるようにして塗布し、100℃の温度条件で1時間乾燥した後、熱プレス装置(東洋精機株式会社製の商品名「ラボプレス機MP−2F」)を用いて、185℃の温度条件でプレス圧10MPaにて30分間加熱加圧を施し、本発明の防水導電性布帛を得た。
得られた防水導電性布帛の導電性及び防水性を測定したところ、表面抵抗値は測定限界以下で測定できず、摩擦帯電圧は8Vであり、防水性は540mmであった。
(実施例2)
先ず、塩化第一錫20.0gと35質量%の塩酸10mlとを水980gに溶解して処理浴(A)を調製した。次いで、塩化パラジウム0.5gと35質量%の塩酸5mLとを水994.5gに溶解して処理浴(B)を調製した。
次に、ポリフッ化ビニリデン樹脂粒子(アルケマ社製の商品名「KYNAR(登録商標)301F」、融点155〜160℃、平均粒子径5μm)50gを処理浴(A)に20℃の温度条件で10分間浸漬させた後、ろ過により分別し、水洗を行って水洗物を得た。次に、得られた水洗物を処理浴(B)に20℃の温度条件で10分間浸漬させた後、ろ過により分別し、水洗を行って水洗物を得た。その後、得られた水洗物を再度処理浴(A)に20℃の温度条件で10分間浸漬させた後、ろ過により分別し水洗を行って水洗物を得、次いで、この水洗物を処理浴(B)に20℃の温度条件で10分間浸漬させた後、ろ過により分別し、水洗を行って、ポリフッ化ビニリデン樹脂粒子に触媒の付与を行い、触媒付与ポリフッ化ビニリデン樹脂粒子を得た。
次いで、硫酸ニッケル6水和物60gと、クエン酸ソーダ2水和物45gと、界面活性剤(日光ケミカルズ株式会社製の商品名「BL−2」)1gとを、水789gに添加してめっき浴を調製した。そして、上述のようにして得られた触媒付与ポリフッ化ビニリデン樹脂粒子3gを、60℃の温度条件下において前記めっき浴に添加し、25質量%のアンモニア水溶液にてpHを9に調整しながら、次亜リン酸ソーダ1水和物60gを分割添加し、ろ過により分別し水洗、乾燥を行って、無電解めっき法によるニッケルめっきを施し、ニッケルめっき層を有する金属被覆ポリフッ化ビニリデン樹脂粒子を得た。得られた金属被覆ポリフッ化ビニリデン樹脂粒子におけるニッケルの被覆量は、ポリフッ化ビニリデン樹脂粒子100質量部に対して30質量部であり、平均粒子経は6μmであり、めっき層の厚みは0.5μmであった。
次に、得られた金属被覆ポリフッ化ビニリデン樹脂粒子40質量%及び界面活性剤(花王株式会社製の商品名「エマルゲンA−90」)2質量%を含有する水分散液を調製し、これに増粘剤(日華化学株式会社製の商品名「ネオステッカーNT」)を添加して粘度10Pa・sの分散液(加工液)を調製した。
そして、前記分散液を、目付け60g/mのポリエステルタフタ織物布にコーティング法を用いて塗布量が100g/mになるようにして塗布し、100℃で1時間乾燥した後、熱プレス装置(東洋精機株式会社製の商品名「ラボプレス機MP−2F」)を用いて、185℃の温度条件でプレス圧10MPaにて30分間加熱加圧を施し、防水導電性布帛を得た。
得られた防水導電性布帛の導電性及び防水性を測定したところ、表面抵抗値は測定限界以下で測定できず、摩擦帯電圧は9Vであり、防水性は450mmであった。
(実施例3)
先ず、実施例1で得られたニッケルめっき層を有する金属被覆ポリフッ化ビニリデン樹脂粒子を用いて分散液(加工液)を調製した。すなわち、先ず、実施例1で得られた金属被覆ポリフッ化ビニリデン樹脂粒子35質量%、ポリフッ化ビニリデン樹脂粒子(呉羽化学工業株式会社製の商品名「KFポリマー(登録商標)C#1500」、融点177℃、平均粒系100μm)5質量%及び界面活性剤(花王株式会社製の商品名「エマルゲンA−90」)2質量%を含有する水分散液を調製し、これに増粘剤(日華化学株式会社製の商品名「ネオステッカーNT)を添加して粘度10Pa・sの分散液(加工液)を調製した。
そして、前記分散液を、目付け60g/mのポリエステルタフタ織物布にコーティング法を用いて塗布量が100g/mになるようにして塗布し、100℃で1時間乾燥した後、熱プレス装置(東洋精機株式会社製の商品名「ラボプレス機MP−2F」)を用いて、185℃の温度条件でプレス圧10MPaにて30分間加熱加圧を施し、防水導電性布帛を得た。
得られた防水導電性布帛の導電性及び防水性を測定したところ、表面抵抗値は測定限界以下で測定できず、摩擦帯電圧は8Vであり、防水性は490mmであった。
(実施例4)
先ず、実施例1で得られた触媒付与ポリフッ化ビニリデン樹脂粒子を用いて金属被覆ポリフッ化ビニリデン樹脂粒子を調製した。すなわち、先ず、エチレンジアミン四酢酸四ナトリウム100gと、37質量%ホルマリン120gとを、水780gに添加してめっき浴を調製した。次に、実施例1で得られた触媒付与ポリフッ化ビニリデン樹脂粒子100gを、60℃の温度条件下において前記めっき浴に添加し、水酸化ナトリウムにてpHを11に調整し、更に硝酸銀47gと、25%のアンモニア水溶液1gとを水452gに溶解した溶解液を分割添加した後、ろ過により分別し、水洗、乾燥を行って、無電解めっき法による銀めっきを施し、銀めっき層を有する金属被覆ポリフッ化ビニリデン樹脂粒子を得た。得られた金属被覆ポリフッ化ビニリデン樹脂粒子における銀の被覆量は、ポリフッ化ビニリデン樹脂粒子100質量部に対して30質量部であり、平均粒子経は102μmであり、めっき層の厚みは1.1μmであった。
次に、このようにして得られた金属被覆ポリフッ化ビニリデン樹脂粒子40質量%及び界面活性剤(花王株式会社製の商品名「エマルゲンA−90)2質量%を含有する水分散液を調製し、これに増粘剤(日華化学株式会社製の商品名「ネオステッカーNT」)を添加して粘度10Pa・sの分散液(加工液)を調製した。
そして、前記分散液を、目付け60g/mのポリエステルタフタ織物布にコーティング法を用いて塗布量が100g/mになるようにして塗布し、100℃で1時間乾燥した後、熱プレス装置(東洋精機株式会社製の商品名「ラボプレス機MP−2F」)を用いて、185℃の温度条件でプレス圧10MPaにて30分間加熱加圧を施し、防水導電性布帛を得た。
得られた防水導電性布帛の導電性及び防水性を測定したところ、表面抵抗値は測定限界以下で測定できず、摩擦帯電圧は8Vであり、防水性は500mmであった。
(比較例1)
先ず、塩化第一錫20.0gと35質量%の塩酸10mlとを水980gに溶解して処理浴(A)を調製した。次いで、塩化パラジウム0.3gと35質量%の塩酸5mLとを水994.7gに溶解して処理浴(B)を調製した。
次に、ポリウレタン樹脂粒子(日本ポリウレタン株式会社製の商品名「パールセン(登録商標)U−202B」、融点117℃、平均粒系55μm)50gを処理浴(A)に20℃の温度条件で10分間浸漬させた後、ろ過により分別し、水洗を行って水洗物を得た。次に、得られた水洗物を処理浴(B)に20℃の温度条件で10分間浸漬させた後、ろ過により分別し、水洗を行って水洗物を得た。その後、得られた水洗物を再度処理浴(A)に20℃の温度条件で10分間浸漬させた後、ろ過により分別し、水洗を行って水洗物を得、次いで、この水洗物を処理浴(B)に20℃の温度条件で10分間浸漬させた後、ろ過により分別し、水洗を行って、ポリウレタン樹脂粒子に触媒の付与を行い、触媒付与ポリウレタン樹脂粒子を得た。
次いで、硫酸ニッケル6水和物40gと、クエン酸ソーダ2水和物30gと、界面活性剤(日光ケミカルズ株式会社製の商品名「BL−2」)1gとを、水929gに添加してめっき浴を調製した。そして、上述のようにして得られた触媒付与ポリウレタン樹脂粒子10gを、60℃の温度条件下において前記めっき浴に添加し、25質量%のアンモニア水溶液にてpHを9に調製しながら、次亜リン酸ソーダ1水和物40gを分割添加し、ろ過により分別し、水洗、乾燥を行って、無電解めっき法によるニッケルめっきを施し、ニッケルめっき層を有する金属被覆ポリウレタン樹脂粒子を得た。得られた金属被覆ポリウレタン樹脂粒子におけるニッケルの被覆量は、ポリウレタン樹脂粒子100質量部に対して30質量部であり、平均粒子経は57μmであり、めっき層の厚みは1.2μmであった。
次に、このようにして得られた金属被覆ポリウレタン樹脂粒子40質量%及び界面活性剤(花王株式会社製の商品名「エマルゲンA−90」)2質量%を含有する水分散液を調製し、これに増粘剤(日華化学株式会社製の商品名「ネオステッカーNT」)を添加して粘度10Pa・sの分散液(加工液)を調製した。
そして、前記分散液を、目付け60g/mのポリエステルタフタ織物布にコーティング法を用いて塗布量が100g/mになるようにして塗布し、100℃で1時間乾燥した後、熱プレス装置(東洋精機株式会社製の商品名「ラボプレス機MP−2F」)を用いて、130℃の温度条件でプレス圧10MPaにて30分間加熱加圧を施し、比較のための防水導電性布帛を得た。
得られた防水導電性布帛の導電性及び防水性を測定したところ、表面抵抗値は測定限界以下で測定できず、摩擦帯電圧は9Vであり、防水性は70mmであった。
(比較例2)
先ず、パーフルオロアルキル基含有樹脂系撥水性重合体(日華化学株式会社製の商品名「NKガード(登録商標)NDN−7E」)6.0gと、メラミン樹脂(住友化学工業株式会社製の商品名「スミテックスレジン(登録商標)M−3」)0.5gと、架橋触媒(住友化学工業株式会社製の商品名「スミテックスアクセラレーター(登録商標)ACX」)0.3gと、界面活性剤系帯電防止剤(日華化学株式会社製の商品名「ナイスポール(登録商標)FE−18」)0.5gとを、水92.7gに添加して処理浴を調製した。
次いで、得られた処理浴を用いて、目付け60g/mのポリエステルタフタ織物布に対して、1dip−1nip、ピックアップ率80質量%でパッド処理を施し、120℃の温度条件で1分間乾燥し、さらに180℃の温度条件で1分間熱処理して比較のための防水導電性布帛を得た。
得られた防水導電性布帛の導電性及び防水性を測定したところ、表面抵抗値は7.1×1011であり、摩擦帯電圧は1520Vであり、防水性は54mmであった。
このような結果から、本発明の防水導電性布帛(実施例1〜4)においては、十分な導電性と優れた防水性とを有する防水導電性布帛が得られることが確認された。
以上説明したように、本発明によれば、十分な導電性と高度な防水性とを同時に発揮させることができる防水導電性布帛を効率よく且つ確実に製造することが可能な防水導電性布帛の製造方法、並びにその製造方法で得られた防水導電性布帛を提供することが可能となる。
そして、本発明の防水導電性布帛の製造方法によれば、従来から保有している設備を用いて、コーティング法などの従来公知の方法で簡単に防水導電性布帛の製造でき、しかも優れた導電性を有しつつ防水性を有する防水導電性布帛を製造できる。したがって、本発明の防水導電性布帛の製造方法は、工業的な防水導電性布帛の製造方法として特に有用である。また、本発明の製造方法によって得られた防水導電性布帛は、防水性を必要とする帯電防止衣料用途、資材用途、電磁波シールド素材やカーシート用途等に用いられる防水導電性布帛として特に有用である。

Claims (2)

  1. ポリフッ化ビニリデン樹脂粒子の表面にめっき層を有する金属被覆ポリフッ化ビニリデン樹脂粒子を布帛に担持せしめる工程と、前記金属被覆ポリフッ化ビニリデン樹脂粒子を前記布帛に加熱加圧融着させる工程と、を含むことを特徴とする防水導電性布帛の製造方法。
  2. 布帛に担持された、ポリフッ化ビニリデン樹脂粒子表面にめっき層を有する金属被覆ポリフッ化ビニリデン樹脂粒子を、前記布帛に加熱加圧融着せしめてなるものであることを特徴とする防水導電性布帛。
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