JP2007308611A - 自動車外装部品製造用熱可塑性樹脂組成物 - Google Patents

自動車外装部品製造用熱可塑性樹脂組成物 Download PDF

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喜代次 高木
Morio Tsunoda
守男 角田
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政巳 鈴木
Takayuki Nagai
隆之 永井
Keisuke Onishi
圭介 大西
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Abstract

【課題】自動車外装部品製造用熱可塑性樹脂材料として必要な流動性、耐衝撃性、寸法安定性、耐熱剛性、導電性、塗装密着性、外観が何れも高度に均衡した特性を示す樹脂組成物を提供する。
【解決手段】それぞれ下記の比率で含有してなる熱可塑性樹脂組成物。成分(A)ISO−307に準拠して測定される粘度数が80〜120ml/gの範囲内であるポリアミド6樹脂35〜77重量%;成分(B)ビニル芳香族化合物重合体ブロックと共役ジエン系化合物重合体ブロックとのブロック共重合体の水素添加物、並びに、不飽和酸及び/又はその誘導体でグラフト変性された、ビニル芳香族化合物重合体ブロックと共役ジエン系化合物重合体ブロックとのブロック共重合体の水素添加物1〜20重量%;成分(C)炭素繊維21〜40重量%;成分(D)エチレンビニルアルコール樹脂1〜5重量%
【選択図】なし

Description

本発明は、自動車外装部品製造用熱可塑性樹脂組成物に関する。さらに詳しくは、流動性、耐衝撃性、寸法安定性、耐熱剛性、導電性、塗装密着性、外観等の、静電塗装を施す自動車外装部品を製造するのに必要な、各特性を高度に均衡させた樹脂組成物、及び、この樹脂組成物からなる成形体に静電塗装を施してなる自動車外装部品に関するものである。
ポリアミド樹脂はその優れた成形性、機械的特性、耐熱性等を利用して、例えば、電気・電子、自動車部品等の分野で広く使用されている。特に自動車分野では、軽量化による燃費向上等を目的として、外装部品を金属材料から樹脂材料に代替する検討が行なわれている。外装部品で特にバックドア、バンパーフェイシア、フェンダー、ドアパネル等の外装パネル材には静電塗装を施せる様に導電性を付与する必要があり、更に、塗装時の高い焼付け温度でも変形しない耐熱剛性や、塗装膜との密着強度に優れていること、塗装焼付け前後や、使用時の環境変化における寸法変化が小さいこと、耐衝撃性、外観、流動性に優れていること等各種の特性を同時に満足させる必要がある。
これらの特性を均衡させた樹脂組成物として、これまで多くの提案がなされている。その多くは、ポリアミド樹脂とポリフェニレンエーテル樹脂(以下PPE樹脂と略記する)のアロイであり、具体的には特許文献1〜5に例示することができる。しかしながら、これらのPPE樹脂を配合したアロイでは、そもそも流動性の悪いPPE樹脂を配合しているため、得られる組成物の流動性は低いものとなり、その使用可能な範囲は限られたものとなっていた。
特許第2557637号公報 特許第2756548号公報 特開平10−310695号公報 特許第3330398号公報 特開2005−179546号公報
一方で、PPE樹脂を配合しない材料としては、例えば特許文献6では、ポリアミド樹脂/耐衝撃性改良剤/特定のタルクからなる樹脂組成物からなる車両用外装部品が提案されいる。
しかし、この文献では、静電塗装を施すために必要な導電性に関することも、塗装密着性を改良するための具体的手法も何ら、示されておらず、実施例に示された樹脂組成物も静電塗装を施す樹脂組成物としては使用できるものではなかった。
また、本発明者が検討した結果、強化材としてのタルクを適用しても得られる樹脂組成物の寸法安定性、特に線膨張率は大きくなり、本発明者らが目指した寸法安定性と耐衝撃性の高度均衡化は図れないことが分かった。
特開2002−220531号公報
また、特許文献7に関しては、ポリアミド樹脂/耐衝撃性改良剤/特定の繊維強化材からなる車両外装用部品が提案されている。この文献では、特定の繊維強化材として、導電性を有する炭素繊維が使用されていることから、導電性に関しての記載はないものの、静電塗装を施すことができると思われる。しかし、一方で車両外装部品用の材料に重要な特性の塗装密着性に関しては何ら改良されておらず、また、それを改良するための具体的手法も示されていない。即ち、プライマーを塗布する必要のある樹脂組成物となっていた。
特開2002−226703号公報
一方で本発明の類似の組成物として、特許文献8を挙げることができる。この文献は本発明者らが、過去に提案した樹脂組成物に関するもので、具体的には(A)ポリアミド樹脂、(B)ビニル芳香族化合物重合体ブロックaと共役ジエン系化合物重合体ブロックbとのブロック共重合体の水素添加物及び/又はエチレン−α−オレフィン系重合体、(C)ビニル芳香族化合物重合体ブロックaと共役ジエン系化合物重合体ブロックbとのブロック共重合体の水素添加物の不飽和酸変性品、(D)特定の無機フィラーからなる樹脂組成物に関するものである。しかしながら、この文献にて示した樹脂組成物では塗装密着性が不十分であり、またそれを改良するための具体的な手法も示されていなかった。更に、本発明で導電性を発現させるためにカーボンブラックを配合し、その物性バランスを高度に高めるための具体的手法は記載されているものの、今回の発明の要旨でもある、炭素繊維を用いた材料系に関して、具体的に流動性、耐衝撃性、寸法安定性、導電性、塗装密着性のバランスを高度に均衡させるための手法について、一切の記載も示唆も無かった。更には、当該文献では配合されている変性水素化ブロック共重合体中の変性率は低いため、耐衝撃性改良効果が小さく、それをカバーするためにポリアミド樹脂の分子量が高いものを使用する必要が有り、それによって流動性が低下してしまうとの課題があることが分かった。
特開2004−331766号公報
即ち、従来の熱可塑性樹脂組成物では、静電塗装を施す自動車外装部品用の材料の必要特性である、流動性、耐衝撃性、寸法安定性、耐熱剛性、導電性、塗装密着性、外観の物性の何れかに課題を抱えており、その適用範囲は極限られたものになっているのが現状であった。
本発明は、かかる状況にあって、自動車外装部品を製造するための材料として必要な(1)流動性(2)耐衝撃性(3)寸法安定性(4)耐熱剛性(5)導電性(6)塗装密着性(7)外観、の全てに関して、高度に均衡した物性を有する樹脂組成物を見出したものであり、この樹脂組成物により得られる成形体はプライマー処理せずに、静電塗装により優れた品質の自動車外装部品を製造することができる。すなわち、本発明の目的は、優れた品質を有する静電塗装可能な自動車外装部品製造用樹脂組成物及び、この組成物を用いた自動車外装部品を提供することにある。
上記課題を解決するために、本発明では、下記の成分(A)〜(D)を、組成物を構成する全成分の合計100重量%に対して、それぞれ下記の比率で含有してなる自動車外装部品製造用熱可塑性樹脂組成物を提供するものである。
成分(A):ISO−307に準拠して測定される粘度数が80〜120ml/gの範囲であるポリアミド6樹脂:35〜77重量
成分(B):ビニル芳香族化合物重合体ブロックと共役ジエン系化合物重合体ブロックとのブロック共重合体の水素添加物、並びに、不飽和酸及び/又はその誘導体でグラフト変性された、ビニル芳香族化合物重合体ブロックと共役ジエン系化合物重合体ブロックとのブロック共重合体の水素添加物:1〜20重量%
成分(C):炭素繊維:21〜40重量%
成分(D):エチレンビニルアルコール樹脂:1〜5重量%
本発明は、次のような特別に有利な効果を奏し、その産業上の利用価値は極めて大である。
1.本発明の自動車外装部品製造用樹脂組成物は、流動性、耐衝撃性、寸法安定性、耐熱剛性、導電性、塗装密着性、外観が何れにおいても優れ、高度に均衡されている。
2.本発明の製造用樹脂組成物から得られる成形品は、鋼板と同様に静電塗装技術を適用し自動車外装部品を製造することができる。
以下本発明を詳細に説明する。
成分(A)ポリアミド6樹脂
本発明において、成分(A)として用いるポリアミド6樹脂は、ISO−307に定められた手法、つまり96%濃硫酸溶媒及び該溶媒中0.5重量%濃度のポリアミド溶液について、23℃で測定された粘度から計算された粘度数(以下、単に「ISO粘度数」と略称することもある。)が、80〜120ml/g以下のものであり、好ましくは80〜110ml/gの範囲内のものである
成分(A)のポリアミド6樹脂のISO粘度数が120ml/gを超えると流動性が低下するので、また80ml/gに満たないと耐衝撃性が低下するので好ましくない。
なお、成分(A)のポリアミド樹脂6としてISO粘度数が異なる複数種のポリアミド6樹脂の配合物を使用する場合は、それぞれ単独には、ISO粘度数が前記所定の範囲外であっても、範囲内であっても差し支えないが、それらの配合物であるポリアミド6樹脂(成分(A))のISO粘度数は前記所定の範囲内であることが必要である。
また、成分(A)のポリアミド6樹脂における末端基は、末端カルボキシル基濃度(単位:μeq/g)と末端アミノ基濃度(単位:μeq/g)の比率(以下、単に「末端基比率」と略称することもある。)が、末端カルボキシ基濃度/末端アミノ基濃度の値で、0.5〜6の範囲内にあること、特に、2〜6の範囲内にあることが好ましい。末端基比率の値が、この範囲より大きいと、耐衝撃性が低下し、小さいと流動性が低下する等、物性バランスを高度に均衡させることができない。
なお、成分(A)のポリアミド6樹脂として、末端基比率の異なる複数種のポリアミド6樹脂の配合物を使用する場合は、それぞれ単独には末端基比率の値がこの範囲外であっても差し支えないが、それらの配合物であるポリアミド6樹脂(成分(A))の末端基比率の値は、前記所定の範囲内であることが好ましい。
なお、末端基濃度の調整は、公知の手法により実施されるが、例えば重合時に酢酸、ステアリン酸等と反応させてアミノ基末端を、またステアリルアミン等と反応させてカルボキシル基末端を封鎖する手法等がある。また、前記末端基濃度(単位:μeq/g)の測定は、公知の手法により実施される。例えば、末端基の種類により、アミノ基はポリアミドをフェノールに溶解し、0.05N塩酸で滴定して測定される。また、カルボキシル基はポリアミドをベンジルアルコールに溶解し、0.1N苛性ソーダで滴定して測定される。
成分(B):ビニル芳香族化合物重合体ブロックと共役ジエン系化合物重合体ブロックとのブロック共重合体の水素添加物、並びに、不飽和酸及び/又はその誘導体でグラフト変性された、ビニル芳香族化合物重合体ブロックと共役ジエン系化合物重合体ブロックとのブロック共重合体の水素添加物
本発明の成分(B)におけるビニル芳香族化合物重合体ブロックと共役ジエン系化合物重合体ブロックとのブロック共重合体の水素添加物とは、主に共役ジエン系化合物重合体ブロック中の脂肪族不飽和結合数が水素化により減少したブロック共重合体である。
ビニル芳香族化合物重合体ブロックと共役ジエン系化合物重合体ブロックの配列は、線状構造、分岐構造(ラジアルブロック)等いずれの構造であってもよい。また、これらの構造のうちで、一部にビニル芳香族化合物と共役ジエン系化合物とのランダム共重合部分に由来するランダム鎖を含んでいてもよい。これら構造のうちでは、線状構造のものが好ましく、A−B−A型のトリブロック構造のものが特に耐衝撃性、耐熱剛性のバランスの点で好ましく、一部、A−B型のジブロック構造のものを含んでいてもよい。
ビニル芳香族化合物ブロックと共役ジエン系化合物重合体ブロックとのブロック共重合体の水素添加物における、ビニル芳香族化合物は、好ましくはスチレン、α−メチルスチレン、パラメチルスチレン、ビニルトルエン、ビニルキシレン等であり、中でも特に好ましいのはスチレンである。共役ジエン系化合物は、好ましくは、1,3−ブタジエン、2−メチル−1,3−ブタジエンである。
成分(B)として、利用可能なブロック共重合体の水素添加物としては、例えば、スチレン・エチレン・ブテン・スチレンブロック共重合体(SEBS)、スチレン・エチレン・プロピレン・スチレンブロック共重合体(SEPS)が挙げられる。中でも、スチレン・エチレン・ブテン・スチレンブロック共重合体が熱安定性に優れる点で好ましい。
ビニル芳香族化合物に由来する繰り返し単位の占める割合は、成分(B)100重量%に対し、10〜70重量%の範囲内であり、特に好ましくは15〜25重量%の範囲内である。ビニル芳香族化合物に由来する繰り返し単位の占める割合が、10重量%未満では、耐熱剛性、塗装密着性が低下し、70重量%を超えると耐衝撃性が低下する。
また、ブロック共重合体の水素添加物における脂肪族鎖部分のうち、共役ジエン系化合物に由来し、水素添加されずに残存している不飽和結合の割合は、20%以下が好ましく、10%以下がより好ましい。また、ビニル芳香族化合物に由来する芳香族性不飽和結合は、その約25%以下が水素添加されていてもよい。
本発明の熱可塑性樹脂組成物で用いられる、成分(B)のブロック共重合体の水素添加物は、ASTM−D1238規格に基づき、230℃の温度、2.16kgの荷重において測定したMFRが、0.1〜200g/10分の範囲内のものが好ましい。MFRがこれより小さいと流動性が不十分であり、これより大きいと耐衝撃性が不十分となる。特に好ましくは、1〜30g/10分の範囲内のものである。
また、成分(B)における、不飽和酸及び/又はその誘導体でグラフト変性された、ビニル芳香族化合物ブロックと共役ジエン系化合物重合体ブロックとのブロック共重合体の水素添加物の併用は、ポリアミド樹脂と成分(B)を構成するブロック共重合体の水素添加物との相溶性を改善し、本発明における高度に均衡した諸物性の実現には、欠くことのできない重要条件である。
ここで、不飽和酸及び/又はその誘導体でグラフト変性された、ビニル芳香族化合物ブロックと共役ジエン系化合物重合体ブロックとのブロック共重合体の水素添加物は、利用可能なものを使用してもよいが、ビニル芳香族化合物ブロックと共役ジエン系化合物重合体ブロックとのブロック共重合体の水素添加物から製造してもよい。その際、グラフト変性に使用する不飽和酸及び/又はその誘導体のうち、不飽和酸としては、具体的には、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、フマル酸、テトラヒドロフタル酸、イタコン酸、シトラコン酸、クロトン酸、ナジック酸等のα,β−不飽和カルボン酸が挙げられる。また、その誘導体としては、上記各種不飽和酸の酸無水物、酸ハライド、アミド、イミド、エステル等があり、具体的には、塩化マレニル、マレイミド、無水マレイン酸、無水イタコン酸、無水シトラコン酸、マレイン酸モノメチル、マレイン酸ジメチル等が挙げられる。これらの中では、耐衝撃性の改良効果の点から無水マレイン酸をグラフトすることが好ましい。
また、グラフト変性の方法に関しては、従来から知られている手法にて実施することができる。例えば、変性すべき、ビニル芳香族化合物ブロックと共役ジエン系化合物重合体ブロックとのブロック共重合体の水素添加物に、不飽和酸及び/又はその誘導体と、更にラジカル発生剤とを配合して、溶融状態でグラフト変性させる手法を挙げることができる。ここで、ラジカル発生剤としては、有機過酸化物、アゾ化合物等を挙げることができる。これらのラジカル発生剤の配合により効率的にグラフト変性することができる様になる。
有機過酸化物の具体例としては、(イ)ハイドロパーオキサイド類、例えば、t−ブチル−ハイドロパーオキサイド、キュメン−ハイドロパーオキサイド、2,5−ジメチルヘキサン−2,5−ジハイドロパーオキサイド、1,1,3,3−テトラメチルブチル−ハイドロパーオキサイド、p−メンタン−ハイドロパーオキサイド、ジイソプロピルベンゼンハイドロパーオキサイド等;(ロ)ジ−アルキルパーオキサイド類、例えば、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキシン−3、ジ−t−ブチル−パーオキサイド、t−ブチル−キュミル−パーオキサイド、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン、ジ−キュミルパーオキサイド等;(ハ)パーオキシケタール類、例えば、2,2−ビス−t−ブチルパーオキシ−ブタン、2,2−ビス−t−ブチル−パーオキシ−オクタン、1,1−ビス−t−ブチルパーオキシ−シクロヘキサン、1,1−ビス−t−ブチルパーオキシ−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン等;(ニ)パーオキシエステル類、例えば、ジ−t−ブチルパーオキシイソフタレート、t−ブチルパーオキシベンゾエート、t−ブチルパーオキシアセテート、2,5−ジ−メチル−2,5−ジ−ベンゾイルパーオキシ−ヘキサン、t−ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート、t−ブチルパーオキシイソブチレート等;(ホ)ジアシルパーオキサイド類、例えば、ベンゾイルパーオキサイド、m−トルオイルパーオキサイド、アセチルパーオキサイド等が挙げられる。
また、アゾ化合物の具体例としては、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)、1,1’−アゾビス(シクロヘキサン−1−カルボニトリル)、1−〔(1−シアノ−1−メチルエチル)アゾ〕ホルムアミド、2−フェニルアゾ−4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル、2,2’−アゾビス(2,4,4−トリメチルペンタン)、2,2’−アゾビス(2−メチルプロパン)等が挙げられる。
これらのラジカル発生剤のうちでも特に好ましいのは、1,3−ビス−(t−ブチルパーオキシ−イソプロピル)ベンゼン等の10時間での半減期温度が120℃以上のラジカル発生剤である。
成分(B)を製造するために、当該ブロック共重合体の水素添加物を、溶融状態でグラフト変性させる具体的方法としては、熱可塑性樹脂について一般に実用化されている溶融・混練機を使用する手法を挙げることができる。
溶融・混練機としては、例えば、一軸又は多軸押出機、加熱ロール、バンバリーミキサー等が挙げられる。押出機を使用する方法によるときは、例えば、ブロック共重合体の水素添加物、無水マレイン酸、ラジカル発生剤の各成分をあらかじめブレンダー等で混合し、得られた混合物を押出機の上流部側から一括投入(フィード)し、溶融状態で反応させる方法が好適である。
成分(B)における不飽和酸及び/又はその誘導体のグラフト率は、成分(B)100重量%に対して、結合した不飽和酸及び/又はその誘導体0.1〜5重量%の範囲内、好ましくは2.6〜5.0重量%の範囲内である。この範囲より少ないと耐衝撃性が不足し、多いと流動性、剛性、外観を低下させ、全体の物性バランスを高度に均衡させることが困難となる。
なお、ここで本発明における成分(B)は次の2種の成分(B−1)、(B−2)の混合物であることが好ましい。即ち、
成分(B−1):ビニル芳香族化合物重合体ブロックと共役ジエン系化合物重合体ブロックbのブロック共重合体の水素添加物と、
成分(B−2):無水マレイン酸でグラフト変性された、ビニル芳香族化合物重合体ブロックと共役ジエン系化合物重合体ブロックとのブロック共重合体の水素添加物であり、かつ、当該ブロック共重合体の水素添加物100重量%に対して、2.6〜5.0重量%の範囲内の無水マレイン酸でグラフトされたブロック共重合体と
の混合物である。
換言すれば、成分(B−1)はグラフト変性されていないブロック共重合体の水素添加物であり、成分(B−2)は、所定範囲内の無水マレイン酸でグラフト変性された水添ブロック共重合体の水素添加物である。この併用配合は、流動性、耐衝撃性、寸法安定性、外観のバランスを向上するのに好ましい。
成分(B−1)及び(B−2)の含有比率は、重量比で成分(B−1)/(B−2):1/9〜9/1の範囲内であることが好ましく、特に、4/6〜8/2の範囲内であることが物性バランスを高度に均衡させるのに効果的である。
ここで、成分(B−2)における無水マレイン酸のグラフト率は、以下の方法にて測定することができる。
1.試料前処理
未反応の無水マレイン酸を除去するため、再沈精製を行う。
(1−1)試料約6gをトルエン60mlに溶解後、アセトン300mlを添加し、ポリマーを再沈させた後、遠心分離機(6500rpm、5分間)で沈殿を分離する。
(1−2)分離した沈殿にアセトン300mlを加え、4時間スターラーで攪拌後、静置する。
(1−3)上澄みをデカンテーションし、遠心分離機(6500rpm、10分間)で沈殿を回収する。
(1−4)回収した沈殿を真空乾燥器で60℃で5時間乾燥し、精製されたポリマーを得る。
2.中和滴定
(2−1)精製後の試料約2.5gを正確に秤量、活栓付三角フラスコに入れる。
(2−2)30分間窒素バブリングしたトルエンを90ml加え溶解する。
(2−3)溶解後、エタノール10mlを加え、更に指示薬量のフェノールフタレイン溶液を加えて、エタノール性水酸化カリウム溶液(水酸化カリウム濃度0.1mol/L)にて滴定する。
ここで、指示薬のフェノールフタレイン溶液は、フェノールフタレインの85vol%エタノール溶液(フェノールフタレイン濃度10g/L)である。
(2−4)ブランク値を得るために、(2−2)の「30分間窒素バブリングしたトルエンを90ml」についても、(2−3)の測定を行う。
3.計算方法
次式により、無水マレイン酸のグラフト率(mmol/g)を計算する。
J=K×F×(M−N)/W
J:無水マレイン酸のグラフト率(mmol/g)
K:滴定溶液濃度(mol/L)
F:ファクター
M:滴定量(ml)
N:ブランク滴定量(ml)
W:試料重量(g)
次式により、無水マレイン酸のグラフト率(重量%)に換算する。
P=(J×Q/1000)×100
P:無水マレイン酸のグラフト率(重量%)
Q:98(無水マレイン酸分子量:g/mol)
1000:mmolからmolへの換算係数
100:g/gから重量%への換算係数
成分(C)炭素繊維
本発明において成分(C)として用いる、炭素繊維とは、石油、石炭等から取れるピッチや、アクリル樹脂等の有機物を繊維化して、その後、特殊な熱処理工程を経て製造される「微細な黒鉛結晶構造をもつ繊維状の炭素物質」である。
炭素繊維は、その出発原料により、ピッチ系、PAN系(ポリアクリロニトリル系)、レーヨン系、セルロース系等の複数種の炭素繊維があるが、本発明における成分(C)の炭素繊維としては、PAN系の炭素繊維が、耐衝撃性、導電性の点から好ましい。
本発明における、成分(C)の炭素繊維の平均繊維径は20μm以下が好ましく、流動性、耐衝撃性、寸法安定性、外観のバランスから、5〜8μmの範囲が最も好ましい。平均繊維径が20μmを超えると寸法安定性、耐衝撃性のバランスが低下するため、好ましくない。
また、組成物中での、平均繊維長が100〜500μmの範囲にあることが、耐衝撃性、寸法安定性、導電性、外観のバランスの点から好ましい。
成分(C)の炭素繊維はサイジング剤(集束剤)によって集束されていることが、取り扱い性、分散性の点で好ましい。
サイジング剤は通常用いられる任意のものが使用でき、その中から繊維の集束性の良いものを選択するとよい。具体的には、サイジング剤としてエポキシ化合物、ポリウレタン化合物、飽和又は不飽和ポリエステル、ポリフェニレンサルファイト、ポリフェニレンエーテル、ポリカーボネート、ポリオキシメチレン、ポリスチレン、ポリオレフィン、アクリル樹脂、酢酸ビニル樹脂、エチレン酢ビコポリマー、ポリアミド樹脂等のホモポリマー又はコポリマー等が挙げられる。この中で、エポキシ化合物又は水溶性ポリアミド化合物、水溶性ウレタン化合物が、本発明における成分(A)に対しての分散性が良好であるため、好ましい。
サイジング剤の量は、炭素繊維100重量部に対して、0.5〜15重量部の範囲であることが好ましく、1〜10重量部の範囲内であることがさらに好ましい。
成分(D)エチレン・ビニルアルコール樹脂
本発明において成分(D)として用いる、エチレンビニルアルコール樹脂とは、エチレンとビニルアルコールの共重合体のことである。通常、エチレンとビニルエステルの共重合体をケン化して製造される。本発明で使用されるエチレンビニルアルコール樹脂のケン化度は70mol%以上であり、これよりケン化度が小さいと熱安定性が悪いため、好ましくない。エチレンビニルアルコール樹脂のエチレン共重合比率は40〜50mol%のものが好ましく、この範囲が最も塗装密着性に優れる。また、JIS−K6730[温度190℃、荷重2.16kg]に準じて測定したMIが0.5g/10分以上のものが流動性の点で好ましく使用できる。
この成分の形状は、特に制限はないが、均一分散性の点で、ペレット状であるのがよい。
成分(D)の配合手法としては、成分(D)以外の成分を全て溶融混練した樹脂組成物のペレットに、成分(D)のペレットをドライブレンドにて配合する手法が最も好ましい。成分(D)をドライブレンドではなく溶融混練してしまうと、塗装密着性の改良効果の低減、また耐熱剛性の低下等により、物性バランスを高度に均衡させることが困難となる。
その他の成分
本発明に係る自動車外装部品製造用熱可塑性樹脂組成物には、上記の各成分のほかに、本発明の効果を損なわない種類と量の、他の各種樹脂添加剤を配合する(含有させる)ことができる。
そのような各種樹脂添加剤としては、例えば、銅系、リン系等の熱安定剤、ヒンダードフェノール系等の酸化防止剤、耐候性改良剤、造核剤、発泡剤、難燃剤、耐衝撃改良剤、滑剤、可塑剤、流動性改良剤、染料、顔料、有機充填剤、補強剤、分散剤、無機充填剤(タルクやワラストナイト等)、カーボンブラック(導電性カーボンブラック等)等が挙げられる。
各成分の含有率
本発明の自動車外装部品製造用熱可塑性樹脂組成物における、各成分(A)〜(D)の含有率は、組成物を構成する全成分の合計100重量%に対して、それぞれ、下記の範囲内にあることが必要である。
成分(A):35〜77重量%、好ましくは47〜71重量%
成分(B):1〜20重量%、好ましくは3〜15重量%
成分(C):21〜40重量%、好ましくは25〜35重量%
成分(D):1〜5重量%、好ましくは1〜3重量%
これら各成分の含有率が、一つでも上記の範囲内にない場合には、流動性、耐衝撃性、寸法安定性、耐熱剛性、導電性、塗装密着性、外観等の物性バランスを高度に均衡させることはできない。
具体的に、成分(A)の含有率は、この範囲内にないと、全体の物性に対しての影響が大きい。特に少ない場合には流動性、寸法安定性、耐熱剛性、外観が低下し、これより多いと、耐衝撃性、寸法安定性、導電性等が低下する。
成分(B)の含有率は、この範囲より少ないと耐衝撃性が低下し、この範囲より多いと流動性、耐熱剛性、寸法安定性、外観等が低下する。
成分(C)の含有率は、この範囲より少ないと寸法安定性、導電性、耐熱剛性が低下し、この範囲より多いと流動性、耐衝撃性、外観等が低下する。
成分(D)の含有率は、この範囲より少ないと塗装密着性が低下し、この範囲より多いと流動性、耐熱剛性等が低下する。
各成分の含有量は、更に、下記式(1)及び式(2)を満足させることが、物性バランスを高度に均衡させるのに好ましい。
式(1): 成分(A)/成分(B)=90/10〜75/25
(式中、成分(A)及び成分(B)は、成分(A)+成分(B)の合計100重量%に対する、各成分の重量%である。)
式(2): 成分(A)/成分(C)=77/23〜57/43
(式中、成分(A)及び成分(C)は、成分(A)+成分(C)の合計100重量%に対する、各成分の重量%である。)
本発明における自動車外装部品製造用熱可塑性樹脂組成物の製造は、バンバリーミキサーや、押出機を使用しての溶融混練、或いはドライブレンド等、熱可塑性樹脂組成物の製造方法として、従来から公知の各種方法にて行うことができる。
中でも、本発明の樹脂組成物の製造は、2軸押出機による溶融混練と、ペレットのドライブレンドの2段階に分けて製造する方法が好ましい。
具体的には、まず、成分(A)及び成分(B)を、二軸押出機の上流部からメインフィードとして投入し、溶融混練して、成分(A)相中に成分(B)を分散させる。そして、押出機の中流部から成分(C)を、サイドフィードして投入し、溶融混練して、成分(A)、成分(B)及び成分(C)の溶融混練樹脂組成物のペレット(ABC)を製造する。成分(A)(B)(C)を一括で上流部から投入すると、寸法安定性、耐衝撃性のバランスが悪化するので好ましくない。なお、ここで成分(B)と成分(C)は、押出機への投入部位を入れ替えて、成分(C)をメインフィードとして成分(A)とともに投入し、成分(B)をサイドフィードして投入し、製造する方法であっても差し支えない。
次いで、溶融混練により得られたペレット(ABC)と、成分(D)のペレットをドライブレンドして、自動車外装部品製造用熱可塑性樹脂組成物を製造する。すなわち、成分(D)エチレンビニルアルコール樹脂は、成分(D)以外の成分を全て溶融混練した樹脂組成物のペレットとドライブレンドして配合すればよいことは前述の通りである。
本発明の樹脂組成物から自動車外装部品を製造する方法に関して、この製造方法は特に限定されるものではなく、樹脂組成物について一般に採用されている成形法、すなわち射出成形法、中空成形法、押出成形法、シート成形法、熱成形法、回転成形法、積層成形法、プレス成形法等を採用することができる。
自動車外装部品製造用熱可塑性樹脂組成物として優れた製品を得るために、本発明が目指した材料特性は次の通りである。
なお、各特性評価の詳細に関しては、後述の実施例の評価手法の欄に記載した。
(1)流動性
目標値:2mm厚の金型におけるバーフロー流動長が500mm以上であること。
(2)耐衝撃性
目標値:高速面衝撃強度が20J以上であること。
(3)寸法安定性
(3−1)加熱収縮率
目標値:150℃×40分における加熱二次収縮率が、0.3%以下であること。
(3−2)線膨張率
目標値:線膨張率が4×10−5−1以下であること。
(4)耐熱剛性
目標値:熱変形温度が180℃以上であること。
(5)導電性
目標値:体積抵抗率が1×10Ωcm以下であること。
(6)塗装密着性
目標:碁盤目剥離試験による、塗膜残存率が100%であること。
(7)外観
目標:成形品表面にシルバーや著しいフィラー浮き、フローマーク等無きこと
次に、本発明を実施例によって詳しく説明するが、本発明は以下に記載する例に限定されるものではない。
なお、以下に記載の実施例・比較例において、使用した各原料の特性等の詳細は次の通りである。また、得られた樹脂組成物の評価については、後記「組成物特性の評価方法」に詳述する。
[実施例に使用した原料]
成分(A)ポリアミド6樹脂
成分(A−1): 商品名=ノバミッド1008J、三菱エンジニアリングプラスチックス社製、ISO粘度数=106ml/g、末端アミノ基濃度/末端カルボキシル基濃度比率=3.1
成分(B)
成分(B−1):ビニル芳香族化合物重合体ブロックと共役ジエン系化合物重合体ブロックとのブロック共重合体の水素添加物
成分(B−1−1): 物質=スチレン・エチレン・ブテン・スチレン共重合体(以下、SEBSと略記する)、商品名=タフテックH1052、旭化成社製、スチレン含量=20重量%、MFR=8g/10分(ASTM−D1238、230℃×2.16kgにて測定)。
成分(B−2):無水マレイン酸でグラフト変性された、ビニル芳香族化合物重合体ブロックと共役ジエン系化合物重合体ブロックとのブロック共重合体の水素添加物
成分(B−2−1): 物質=無水マレイン酸変性SEBS、製品名=タフテックM1943、旭化成社製、無水マレイン酸のグラフト率=2.7重量%(前述の分析手法に基づき測定した)、スチレン含有率=20重量%。、MFR=8g/10分(ASTM−D1238、230℃×2.16kgにて測定)
成分(C)炭素繊維
成分(C−1): 物質=PAN系の炭素繊維、商品名=HTA−C6−N、東邦テナックス社製、サイジング剤=ポリアミド、サイジング量=3.5%、平均繊維径=7μm。
成分(C−2): 物質=PAN系の炭素繊維、商品名=HTA−C6−US、東邦テナックス社製、サイジング剤=ウレタン、サイジング量=2.5%、平均繊維径=7μm。
成分(C−3): 物質=PAN系の炭素繊維、商品名=HTA−C6−S、東邦テナックス社製、サイジング剤=エポキシ、サイジング量=5.3%、平均繊維径=7μm。
成分(D)エチレンビニルアルコール樹脂
成分(D−1): 商品名=エバールG156A、クラレ社製、エチレン共重合比率=47モル%、比重=1.12、MI=6g/10分〔JIS−K6730、190℃×2.16kgにて測定〕、ケン化度=100モル%、ペレット形状=円筒状、直径約3mm、長さ約4mm。
その他成分(E)
成分(E−1): 商品名=ノバミッド1013JX、三菱エンジニアリングプラスチックス社製、ISO粘度数=138ml/g、末端カルボキシル基濃度/末端アミノ基濃度比率=1
成分(E−2): 物質=無水マレイン酸をグラフト変成したエチレン・ブテン−1共重合体、商品名=MODIC−AP730T、三菱化学社製、脆化温度=−70℃未満、表面硬度=83[JIS−K6301、type−Aにて測定]、密度=0.89g/ml、MFR=2g/10分[ASTM−D1238、190℃×2.16kgにて測定]
[組成物特性の評価方法]
各特性の評価は、次の手順に従って実施した。
1.各試験片の準備
(1)ASTM−D638、D648に準拠した試験片の作成
成形機:日鋼J75ED、樹脂温度280℃、金型温度80℃、射出保圧時間15sec、冷却時間15sec、1サイクル40secにて成形した。
この試験片を用いて、耐熱剛性、導電性を評価した。
(2)100×100×3mm厚のシート状の試験片の作成
成形機:住友SH100、樹脂温度280℃、金型温度80℃、射出保圧時間15sec、冷却時間15sec、1サイクル40secにて成形した。
この試験片を用いて、耐衝撃性、二次加熱収縮率、塗装密着性、外観を評価した。
2.測定と評価
(1)流動性
2mm厚×10mm幅のバーフロー流動長を測定し、流動性を評価した。この数値が高いものほど流動性に優れていることを示す。詳細条件は次の通り。
・成形機:東芝IS150
・金型:三菱エンジニアリングプラスチックス社所有のバーフロー型(2mm厚×10mm幅)
・成形温度:シリンダー温度280℃設定、金型温度80℃設定
・射出/冷却時間:10sec/15sec
・1サイクル:40sec
・射出圧力:98MPa
・評価に使用したバーフロー流動長は、15ショット連続成形を行い、15ショット目の成形品について測定した値である。
(2)耐衝撃性
100mm×100mm×3mm厚のシート状試験片の表面に対して垂直方向から、1m/secの速度で、先端が球状のシャフトを衝突させて、該シート状試験片を厚み方向に打ち抜くのに要した衝撃エネルギー値(高速面衝撃強度)を測定し、耐衝撃性を評価した。この数値が高いものほど耐衝撃性に優れていることを示す。詳細条件は次の通り。
・測定器:島津試験機社製サーボパルサー
・測定雰囲気温度:23℃
・シャフトの先端形状:12.7mmRの球状
・シャフト打ち抜き速度:1m/sec
・試験片の調湿状態:絶乾
・試験時の受け台(固定クランプ)の直径:76.2mm
評価に使用した高速面衝撃強度は、5回の測定結果の平均値である。
(3)寸法安定性
(3−1)二次加熱収縮率
100mm×100mm×3mm厚のシート状試験片を、150℃で40分加熱した際に生ずる寸法収縮について、二次加熱収縮率を測定し、寸法安定性を評価した。この数値が小さいほど、寸法安定性に優れていることを示す。詳細条件は次の通り。
1)加熱前の寸法測定:
・試験片の外周4辺100mm×100mm(樹脂の流動方向と直角方向、各2辺づつ)の長さを測定する。この長さをそれぞれ、{L1}〜{L4}とする。
2)加熱処理:
・150℃に加熱した熱風オーブンに、この試験片を入れて、40分エージング(加熱処理)する。
・40分後にオーブンから取り出し、アルミ袋に入れてシールをして、吸水を防ぎつつ、23℃で24時間冷やす。
3)加熱後の寸法測定:
・加熱前の寸法測定対象とした外周4辺と対応する各辺の、加熱処理後の長さを測定する。この長さをそれぞれ、{LG1}〜{LG4}とする。
4)収縮率の算出:
・{L1}を{LG1}と対比させ、次式に従い二次加熱収縮率を求める。
二次加熱収縮率(%)={{L1}−{LG1}/{L1}}×100
・{L2}、{L3}、{L4}についても、それぞれ、{LG2}、{LG3}、{LG4}と対比させ、同様に、各辺の二次加熱収縮率を求める。
評価に使用した二次加熱収縮率は、4辺について算出された4つの二次加熱収縮率の値の平均値である。
(3−2)線膨張率
樹脂の流動方向(MD方向)の線膨張率を測定し、寸法安定性を評価した。この数値が小さいほど寸法安定性に優れていることを示す。詳細条件は次の通り。
・試験片:ASTM曲げ試験片を8mm×8mm×6mm厚に切り出した後に、120℃で12時間熱風でアニールする。その後、アルミ袋に入れてシールをし、吸水を防ぎつつ、室温まで冷却させたものを試験片とした。
・測定器:SEIKO−INSTRUMENTS社製、EXSTAR6000
・温度コントロール:0℃で30分安定させた後に、100℃まで、2℃/分の速度で昇温した。
評価に使用した線膨張率は、上記昇温時の、23℃〜83℃の間のMD方向(樹脂の流動性方向)の線膨張率である。
(4)耐熱剛性
ASTM−D648に準拠して、応力条件0.45MPa、絶乾時の試験片について、熱変形温度を測定し、耐熱剛性を評価した。この数値が高いほど耐熱剛性に優れる。
(5)導電性
体積抵抗率を測定し、導電性を評価した。この数値が小さいものほど導電性に優れていることを示す。詳細条件は次の通り。
・試験片:ASTM−D638に準拠した引張試験片の両端を剪定ハサミで切断し、標線範囲内から、12.7mm×50mm×3mm厚の短冊を切り出し、短冊の両端面(12.7mm×3mm)に銀ペーストを塗布して、23℃で30分風乾したものを試験片とする。
・測定:テスターで、試験片両端面の間の抵抗を測定し、体積抵抗率を算出した。
・テスター:カスタム社製、MG−1600。
(6)塗装密着性
碁盤目剥離試験を実施し、塗膜の残存状況を観察して、塗装密着性を評価した。評価結果が“○”であれば塗装密着性が良いことを示す。詳細条件は次の通り。
・塗装試験片:100×100×3mm厚のシート状試験片の片側表面(塗布面)に、アクリルウレタン系塗料(オリジン電気社製、OP−Z−NY)を塗布して、80℃にて60分焼き付け、塗布面上に40〜60μm厚の塗膜を形成した塗装試験片を得る。
・碁盤目の刻設:塗膜表面から塗布面に達する深さの、スリットを縦横11本ずつ等間隔に刻設し、1辺が1mm幅で碁盤目状の100マスに分割するスリット刻設部を形成する。
・剥離試験:スリット刻設部を完全に覆うように塗膜の上から、18mm幅の粘着テープ(セロハンテープ)を貼り付けた後、このテープを一気に引き剥がす。その際、テープで引き剥がされずに、表面に塗膜が完全に残っているかどうかを目視判定した。
塗装密着性の評価結果は、スリット刻設部の100マスの塗膜が、全く欠けていない場合は○、少しでも欠けた場合は×と表示した。
(7)外観
100×100×3mm厚のシート状試験片の表面を観察して、塗装前の外観を評価した。評価結果が“○”であれば外観が良いことを示す。
この試験片の表面観察の際には、特にシルバーや著しいフィラー浮き、フローマーク等の不良の存否に留意し、外観を目視判定した。
塗装前の外観の評価結果は、シルバーや著しいフィラー浮き、フローマーク等の不良があるものは×、その様な不良がないものは○と表示した。
[実施例1〜5及び比較例1〜7]
[組成物及び試験片の調製法]
実施例1〜5及び比較例1〜7おいては、次の通り樹脂組成物を調製した。
何れも、溶融混練とドライブレンドを行うことで、後記表−1(実施例1〜5)又は表−2(比較例1〜7)に示した各成分の含有率になる様に製造した。
(1)溶融混練
具体的には、まずは、成分(A)と成分(B)とを、秤量後、混合して、二軸押出機(日本製鋼所社製、TEX−30XCT、スクリュー直径=30mmΦ)の最上流部からメインフィードとして投入する。次いで、成分(C)を、押出機の中流部からサイドフィードとして投入し、成分(A)、成分(B)及び成分(C)からなる溶融混練樹脂組成物ペレットを得た。
ここで、溶融混練は、シリンダー温度240℃、スクリュー回転数200rpm、吐出量20kg/hの条件にて行なった。
なお、比較例において、何れかの成分を含まない樹脂組成物に関しては、その成分のみを抜いて製造し、また、成分(E)を配合する場合には成分(A)と同じタイミングで配合した。詳しくは、成分(E−1)を配合する比較例6の場合は、成分(A)の代わりに同じタイミングで、成分(E−2)を配合する比較例7の場合は、成分(A)と同じタイミングで配合した。
(2)ドライブレンド
上記溶融混練の工程によって得られた樹脂組成物ペレットを、成分(D)のペレットとタンブラーミキサーにてドライブレンドして、組成物を調製した。
(3)試験片の調製
上記ドライブレンドの工程によって得られた組成物は、120℃の熱風乾燥機で8時間乾燥した後に、前記「組成物特性の評価方法」の手順に従う、各種試験片の成形を行なった。
実施例、比較例で調製した組成物の評価結果を、表−1及び表−2に示した。
表−1に示すように、本発明に基づく実施例1〜5のポリアミド樹脂組成物は、高度に均衡した物性バランスを示し、自動車外装部品製造用熱可塑性樹脂組成物として必要な各物性項目における本発明者らが目指した目標値を全て満足している。
一方、比較例1〜7は、何れかの評価項目が目標値を満足しておらず、自動車外装部品製造用熱可塑性樹脂組成物としては不十分であることが分かる。
すなわち、表−2に示すように、比較例1は塗装密着性が不十分であり、比較例2は耐衝撃性が不十分であり、比較例3では耐衝撃性、寸法安定性が不十分であり、比較例4は流動性、外観が不十分であり、比較例5は流動性、寸法安定性、外観が不十分であり、比較例6は流動性、外観が不十分であり、比較例7は流動性、耐衝撃性、塗装密着性、外観が不十分である。
本発明に係る自動車外装部品製造用樹脂組成物は、自動車外装部品製造用の樹脂材料として必要な各種特性を高度に均衡しており、得られた自動車外装部品は、鋼板同様にプライマー処理せずに、静電塗装をすることが可能であり、優れた特性を有する自動車外装部品を製造することができる。
自動車外装部品としては、バックドア、バンパーフェイシア、フロントフェンダー、リアフェンダー、フューエルリッド、ドアパネル、テールゲートパネル、フロントパネル、ボンネット、ルーフパネル、ライセンスガーニッシュ、トランクリッド、ロッカーモール、リアガーニッシュ、ドアガーニッシュ等が挙げられる。

Claims (8)

  1. 下記の成分(A)〜(D)を、組成物を構成する全成分の合計100重量%に対して、それぞれ下記の比率で含有してなる自動車外装部品製造用熱可塑性樹脂組成物。
    成分(A):ISO−307に準拠して測定される粘度数が80〜120ml/gの範囲内であるポリアミド6樹脂:35〜77重量%
    成分(B):ビニル芳香族化合物重合体ブロックと共役ジエン系化合物重合体ブロックとのブロック共重合体の水素添加物、並びに、不飽和酸及び/又はその誘導体でグラフト変性された、ビニル芳香族化合物重合体ブロックと共役ジエン系化合物重合体ブロックとのブロック共重合体の水素添加物:1〜20重量%
    成分(C):炭素繊維:21〜40重量%
    成分(D):エチレンビニルアルコール樹脂:1〜5重量%
  2. 成分(A)のポリアミド6樹脂において、末端カルボキシル基濃度(単位:μeq/g)と末端アミノ基濃度(単位:μeq/g)の比率が、6≧末端カルボキシル基濃度/末端アミノ基濃度≧2の範囲内であることを特徴とする請求項1に記載の自動車外装部品製造用熱可塑性樹脂組成物。
  3. 成分(B)が、下記の成分(B−1)及び成分(B−2)を、成分(B−1)の重量/成分(B−2)の重量=1/9〜9/1の範囲内の比率で含有してなる請求項1又は2に記載の自動車外装部品製造用熱可塑性樹脂組成物。
    成分(B−1):ビニル芳香族化合物重合体ブロックと共役ジエン系化合物重合体ブロックとのブロック共重合体の水素添加物
    成分(B−2):無水マレイン酸でグラフト変性された、ビニル芳香族化合物重合体ブロックと共役ジエン系化合物重合体ブロックとのブロック共重合体の水素添加物であり、かつ、当該ブロック共重合体の水素添加物100重量%に対して、2.6〜5.0重量%の範囲内の無水マレイン酸でグラフト変性されたもの
  4. 成分(C)がPAN系の炭素繊維で、かつ平均繊維径が、5〜8μmの範囲内であることを特徴とする請求項1〜3の何れか1項に記載の自動車外装部品製造用熱可塑性樹脂組成物。
  5. 成分(B)のビニル芳香族化合物含有率が、成分(B)100重量%に対して、15〜25重量%の範囲内であることを特徴とする請求項1〜4の何れか1項に記載の自動車外装部品製造用熱可塑性樹脂組成物。
  6. 成分(D)のエチレン共重合比率が、40〜50mol%の範囲内であることを特徴とする請求項1〜5の何れか1項に記載の自動車外装部品製造用熱可塑性樹脂組成物。
  7. 上記樹脂組成物の成分(D)のペレットを、成分(A)、成分(B)及び成分(C)の溶融混練により得られたペレットと、ドライブレンドにて配合したことを特徴とする請求項1〜6の何れか1項に記載の自動車外装部品製造用樹脂組成物。
  8. 請求項1〜7の何れか1項に記載の自動車外装部品製造用熱可塑性樹脂組成物を射出成形し、得られた射出成形体に静電塗装を施してなる自動車外装部品。
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