JP2007302920A - ZnS−SiO2系光情報記録媒体用誘電保護膜及び該誘電保護膜形成用スパッタリングターゲット - Google Patents
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Abstract
【課題】透過率に優れ、反射率の低下が少ないZnS−SiO2系光情報記録媒体用誘電保護膜及び該誘電保護膜形成用スパッタリングターゲット得ることを目的とする。
【解決手段】ZnS:30〜95mol%、SiO2:5〜70mol%、Mn:0.001≦Mn/(Zn+Mn+Si)≦0.2を含有し、Mn<Si(原子比)であることを特徴とするZnS−SiO2系光情報記録媒体用誘電保護膜又はスパッタリングターゲット及びさらにS/(Zn+Mn)<1である上記ZnS−SiO2系光情報記録媒体用誘電保護膜又はスパッタリングターゲット。
【選択図】 図2
Description
また、DVD用としてDVD−RWが開発され商品化されているが、このディスクの層構造は基本的にCD−RWと同じものである。この書き換え回数は1000〜10000回程度である。
反射層と保護層は、記録層のアモルファス部と結晶部との反射率の差を増大させる光学的機能が要求されるほか、記録薄膜の耐湿性や熱による変形の防止機能、さらには記録の際の熱的条件制御という機能が要求される(非特許文献1参照)。
上記誘電体保護層は、通常スパッタリング法によって形成されている。このスパッタリング法は正の電極と負の電極とからなる基板とターゲットを対向させ、不活性ガス雰囲気下でこれらの基板とターゲットの間に高電圧を印加して電場を発生させるものであり、この時電離した電子と不活性ガスが衝突してプラズマが形成され、このプラズマ中の陽イオンがターゲット(負の電極)表面に衝突してターゲット構成原子を叩きだし、この飛び出した原子が対向する基板表面に付着して膜が形成されるという原理を用いたものである。
上記ZnS−SiO2ターゲットに使用されるSiO2は、通常4N以上の高純度で平均粒径が0.1〜20μmのものが使用されており、700〜1200°Cで焼結して製造されている。
最終的に製造されるZnS−SiO2系ターゲットにも、それほど多くの量が残存するのではないが、無視できない量である。この残存した余剰Sは、スパッタリング後のZnS−SiO2系光情報記録媒体用誘電保護膜にも含有されることになる。
上記の通り、反射膜として、銀若しくは銀合金又はアルミニウム合金反射膜が用いられることが多いが、ZnS−SiO2系光情報記録媒体用誘電保護膜にSが含有されると、例えば、銀反射膜を使用した場合は、Sは銀と反応して硫化銀(黒色)を形成し、反射率及び透過率を大きく減少させるという極めて深刻な問題を生ずる。また、アルミニウム合金反射膜を使用した場合もその影響は小さいが、異物としての存在は好ましいものではない。従来のZnS−SiO2系光情報記録媒体用誘電保護膜にはこのような問題を包含しており、その有効な解決方法が必ずしも見出されていないのが現状である。
技術雑誌「光学」26巻1号、頁9〜15
この知見に基づき、1)ZnS:30〜95mol%、SiO2:5〜70mol%、Mn:0.001≦Mn/(Zn+Mn+Si)≦0.28を含有し、Mn<Si(原子比)であることを特徴とするZnS−SiO2系光情報記録媒体用誘電保護膜及びスパッタリングターゲットを提供する。
本願発明のZnS−SiO2系光情報記録媒体用誘電保護膜及びスパッタリングターゲットは、主成分とするZnS及びSiO2の一部をMnに置換することにより含有させ、ZnS及びSiO2の含有量の一部を形成する。この添加したMnは、ZnS−SiO2系に含有する遊離Sと反応しMnSを形成する。さらに、Mn<Si(原子比)とする。これによって、非晶質安定性を向上させる役割を担う。以上によって、ZnS−SiO2系光情報記録媒体用誘電保護膜に含まれる遊離Sによる硫化銀等の発生を抑制し、隣接層との密着性を向上させることができ、保護膜としての特性を損なわず、透過率を維持し、反射率の低下を防止することが可能となる。
また、SiO2:5mol%未満では膜質が悪くなり、非晶質性が劣化するので、5mol%以上とする必要がある。SiO2:70mol%を超えると、同様に膜質が悪くなり、非晶質性が劣化するので、70mol%以下とする必要がある。また、Si以上にMnを含有すると、透過率が低下し、非晶質安定性が悪くなるので、Mn<Si(原子比)とする必要がある。
本発明のZnS−SiO2系光情報記録媒体用誘電保護膜及びスパッタリングターゲットは、さらにこれらに含有するZnとMnの量を、S/(Zn+Mn)<1とすることが有効である。これによって遊離Sの存在をZnS又はMnSによって固定することが可能となる効果を有する。
一方、Mn比が0.001未満では、隣接層のS拡散防止効果がなく、またMn比が0.28を超えると透過率が低下し、膜質が低下する。したがって、Mnを0.001≦Mn/(Zn+Mn+Si)≦0.28の範囲で添加する必要がある。
添加後、ZnS粉末中のMnの存在はMn単体、MnO(これらの不定比化合物を含む)の形態以外にMnSの形態で存在することも当然ながらあることを知るべきである。
これによって、ZnS−SiO2を主成分とするスパッタリングターゲットを製造することができる。この焼結によって、ZnSに存在する遊離Sは、MnによりMnSとして固定され、遊離Sが著しく減少したZnS−SiO2系焼結体を得ることができる。
上記においては、Mnの添加をZnS粉末に事前に添加することを示したが、Mnの添加をZnS粉末とSiO2の原料粉末の混合段階で添加することもできる。この場合も上記と同様に、Mn単体、MnO(これらの不定比化合物を含む)の形態で添加することが可能である。Sの固定は、上記と同様である。
これによって、銀等の反射膜とZnS−SiO2系光情報記録媒体用誘電保護膜が接することがあっても、遊離Sが原因となる透過率の低下あるいは反射率の低下を効果的に抑制できるという著しい効果を有する。
平均粒径5μmの純度4N(99.99%)であるZnS粉に、純度4N(99.99%)の平均粒径5μmの酸化ケイ素(SiO2)粉、平均粒径10μmの純度3N(99.9%)であるMn粉及び又は平均粒径3μmの純度4NであるMnO粉を、表1の実施例1〜6に示す組成となるように添加し、均一に混合した。そして、この混合粉をグラファイトダイスに充填し、真空雰囲気中、面圧150〜400kgf/cm2、温度1000°Cの条件でホットプレスを行った。
このようにして製造した各種スパッタリングターゲットを用いて、予め所定量のAg膜を形成したガラス基板上にスパッタ膜を形成した。そして、スパッタ膜の反射率の変化を測定した。これとは別に、ガラス基板上に500Åのスパッタ膜を形成し、透過率を測定した。これらの結果の一覧を表1に示す。
膜厚は1500Åとした。反射率変化の測定条件として、80°C、湿度80%、300時間保管したもので、反射率変化=(300時間保管後の反射率)−(環境試験前の反射率)で計算した。また、反射率測定には、光波長:405nmを用いた。
表1には、スパッタリングターゲットの相対密度、スパッタ膜のS/(Zn+Mn)の組成及びMn/(Zn+Mn+Si)の組成も示す。
実施例1については、ターゲット組成はZnS:91mol%,Mn:1mol%,SiO2:8mol%であり、焼結バルク体の相対密度は97%となった。スパッタ膜のS/(Zn+Mn)の組成は0.99、Mn/(Zn+Mn+Si)は0.01となり、本願発明の条件を満たしていた。また、ターゲットの成分組成とスパッタ膜の成分組成に実質的に差異はなかった。
膜の透過率(405nm波長光)は72%となり、反射率の変化は、1.0%となりわずかな低下が見られたが、問題となるレベルではなく、良好なZnS−SiO2系光情報記録媒体用誘電保護膜が得られた。
この実施例2については、環境試験前と環境試験後の、膜の外観の顕微鏡写真を、それぞれ図1及び図2に示す。図1は試験前なのできれいな外観を示している。図2はわずかな黒色斑点があるが極めて少量であることが分る。
膜の透過率(405nm波長光)は80%と良好であり、反射率の変化は2%となりわずかな低下が見られたが、問題となるレベルではなく、良好なZnS−SiO2系光情報記録媒体用誘電保護膜が得られた。
膜の透過率(405nm波長光)は90%と良好であり、反射率の変化は、0.5%となりわずかな低下が見られたが、問題となるレベルではなく、良好なZnS−SiO2系光情報記録媒体用誘電保護膜が得られた。
膜の透過率(405nm波長光)は79%となり、反射率の変化は、0.7%となりわずかな低下が見られたが、問題となるレベルではなく、良好なZnS−SiO2系光情報記録媒体用誘電保護膜が得られた。
膜の透過率(405nm波長光)は90%となり、反射率の変化は、0.3%となりわずかな低下が見られたが、問題となるレベルではなく、良好なZnS−SiO2系光情報記録媒体用誘電保護膜が得られた。
次に、比較例1〜6について説明する。実施例と同様に、平均粒径5μmの純度4N(99.99%)であるZnS粉に、純度4N(99.99%)の平均粒径5μmの酸化ケイ素(SiO2)粉、及びMnO粉無添加の場合、本願発明の条件を外れるMn粉又はMnO粉(いずれの粉末も、平均粒径及び純度は実施例と同一)を添加した場合について、それぞれ均一に混合した。
そして、この混合粉を実施例と同様に、グラファイトダイスに充填し、真空雰囲気中、面圧150〜400kgf/cm2、温度1000°Cの条件でホットプレスを行った。表1に比較例1〜6の成分組成を示す。
このようにして製造した比較例の各種スパッタリングターゲットを用いて、予め所定量のAg膜を形成したガラス基板上にスパッタ膜を形成した。そして、スパッタ膜の透過率及び反射率の変化を測定した。これらの結果の一覧を表1に示す。
測定用試料の作製及び測定条件は、実施例と同様である。
膜の透過率(405nm波長光)は90%であったが、反射率の変化は41%となり大きく低下した。ZnS−SiO2系光情報記録媒体用誘電保護膜としては十分な機能を有していなかった。この比較例1については、環境試験前と環境試験後の、膜の外観の顕微鏡写真を、図3に示す。
この図3に示すように、黒色模様がかなりの範囲で存在している。この黒色の模様は、ZnSに含有される遊離Sにより、AgSが形成されと考えられる。この黒色の模様は反射率の低下の大きな原因と考えられる。
特に、Mn量がSi量(原子比)以上になると、透過率が低下し、非晶質性が悪くなる傾向にある。比較例3の条件も、ZnS−SiO2系光情報記録媒体用誘電保護膜としては十分な機能を有していなかった。
膜の透過率(405nm波長光)は72%であったが、Sの量が規定量よりも少し多く、またMn量が規定量よりも少ないために、反射率の変化が11%と悪くなった。
これは、隣接層へのS拡散防止効果がないことが原因と考えられる。このため、ZnS−SiO2系光情報記録媒体用誘電保護膜としては十分な機能を有していなかった。
膜の透過率(405nm波長光)は75%であったが、Sの量が規定量よりも少し多く、またMn量が全くないために、反射率の変化が14%と悪くなった。
これは、隣接層へのS拡散防止効果がないことが原因と考えられる。このため、ZnS−SiO2系光情報記録媒体用誘電保護膜としては十分な機能を有していなかった。
これによって、薄膜を製造するためのターゲットを製造する工程、特にターゲット原料となるZnS粉末の製造工程において含まれる遊離SをMnで固定することにより、Ag等の反射膜の変質を抑制することが可能となる。
Claims (4)
- ZnS:30〜95mol%、SiO2:5〜70mol%、Mn:0.001≦Mn/(Zn+Mn+Si)≦0.28を含有し、Mn<Si(原子比)であることを特徴とするZnS−SiO2系光情報記録媒体用誘電保護膜。
- S/(Zn+Mn)<1である請求項1記載のZnS−SiO2系光情報記録媒体用誘電保護膜。
- ZnS:30〜95mol%、SiO2:5〜70mol%、Mn:0.001≦Mn/(Zn+Mn+Si)≦0.28を含有し、Mn<Si(原子比)であることを特徴とするZnS−SiO2系光情報記録媒体用誘電保護膜形成用スパッタリングターゲット。
- S/(Zn+Mn)<1である請求項3記載のZnS−SiO2系光情報記録媒体用誘電保護膜形成用スパッタリングターゲット。
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