JP2007290270A - 液滴吐出ヘッド、液滴吐出装置、液滴吐出ヘッドの製造方法及び液滴吐出装置の製造方法 - Google Patents

液滴吐出ヘッド、液滴吐出装置、液滴吐出ヘッドの製造方法及び液滴吐出装置の製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】ガラス基板に形成する電極部(端子部)の電極幅を調整し、封止部において電極部の両脇の剥き出しとなっている部分をなくして封止不良を防止することが可能な液滴吐出ヘッド、液滴吐出装置、液滴吐出ヘッドの製造方法及び液滴吐出装置の製造方法を提供する。
【解決手段】液滴吐出ヘッドは、キャビティ基板と、電極部(個別電極、リード部び端子部)が形成されたガラス基板と、ノズル基板とを備え、ガラス基板には、個別電極8及びリード部10を個別に形成するための複数の凹部9と、端子部11を形成するための凹面26とを形成し、端子部11を、各凹部9間のガラス隔壁上に乗り上げるように凹面26から凹部9にかけて形成した。
【選択図】図3

Description

本発明は、インクやその他の液体を吐出する液滴吐出ヘッド、液滴吐出装置、液滴吐出ヘッドの製造方法及び液滴吐出装置の製造方法に関し、特にキャビティ基板とガラス基板との間に形成されるギャップを高精度に密閉した液滴吐出ヘッド、液滴吐出装置、液滴吐出ヘッドの製造方法及び液滴吐出装置の製造方法に関する。
近年、シリコン等を加工して微小な素子等を形成する微細加工技術(MEMS:Micro Electro Mechanical Systems)が急激に進歩している。この微細加工技術により形成される微細加工素子には、たとえば、液滴吐出方式のプリンタのような記録(印刷)装置で用いられている液滴吐出ヘッド(インクジェットヘッド)やマイクロポンプ、光可変フィルタ、モータのような静電アクチュエータ、圧力センサ等がある。
この静電アクチュエータを搭載した静電駆動式のインクジェットヘッドでは、インク吐出性能の信頼性を高くすると共に、高解像度画像の高速印刷、インクジェットヘッドの小型化(省スペース化)、製造に要するコストの低減、静電アクチュエータの高密度化及びインクの吐出特性の安定化が要求されている。このような要求を実現するために、シリコンキャビティ基板を電極ガラス基板に陽極接合した後に、シリコンキャビティ基板を薄板加工してインクジェットヘッドを製造することが提案されてきた。
この陽極接合は、たとえば、底壁が振動板である吐出室等のキャビティを形成するためのシリコンキャビティ基板と、この振動板を駆動させるための電極(個別電極)がパターン形成された電極ガラス基板とを摂氏360℃に加熱した後、電極ガラス基板を負極側と接続し、シリコンキャビティ基板を正極側と接続して、800Vの電圧を印加することで行われる。この陽極接合によって、シリコンキャビティ基板と電極ガラス基板とが原子レベルで接合されることになる。
また、インクジェットヘッドを小型化するために、樹脂を使って静電アクチュエータ部の封止を行なうのではなく、無機材料を使って静電アクチュエータ部の封止を行ない、封止部の溝の面積を小さくする方法が提案されている。そのようなものとして、たとえば、「ノズル孔が形成されたノズル板、底壁が振動板によって形成された吐出室を有する吐出室基板、保護膜で覆われた電極が形成された電極基板からなり、静電気力により振動板を変形させインク液滴を吐出し、振動板と電極間の振動室と外部を連通する連通孔は、CVD法等により酸化膜を堆積させて封止する」ようにしたインクジェットヘッドが提案されている(たとえば、特許文献1参照)。
特開2002−1972号公報(第4頁及び第1図)
特許文献1に記載のインクジェットヘッドは、吐出室基板をドライエッチングで開口し電極取り出し部を形成するようになっているが、このとき保護膜及び酸化膜も同時にエッチングされてしまっていた。つまり、封止膜を形成するための下地が荒れてしまい、封止膜の付き回りが低下してしまうという問題があった。また、封止材を全面に成膜するようになっているので、振動板上にも封止膜が形成されてしまうことになっていた。つまり、振動板が撓んでしまい、インク吐出性能を低下してしまうという問題もあった。さらに、FPC実装部の保護膜をエッチングにより除去するときに、封止膜も同時にエッチングされてしまっていた。
なお、適切なマスクを使用するようにして無機材料を封止部に堆積させてもよい。この場合、ドライエッチング法を用いて封止部のシリコン薄膜を除去し、封止部に対応する貫通穴を開口させるのが一般的である。しかしながら、シリコン薄膜除去と同時に電極の脇に剥き出しとなっている電極ガラス基板もエッチングされることに留意する必要がある。すなわち、封止膜を形成するための下地が荒れ、封止膜の付き回りが低下してしまい封止不良を引き起こすということに留意しなければならない。
本発明は、上記のような問題を解決するためになされたもので、ガラス基板に形成する電極部(端子部)の電極幅を調整し、封止部において電極部の両脇の剥き出しとなっている部分をなくして封止不良を防止することが可能な液滴吐出ヘッド、液滴吐出装置、液滴吐出ヘッドの製造方法及び液滴吐出装置の製造方法を提供することを目的とするものである。
本発明に係る液滴吐出ヘッドは、底壁が振動板を形成し液滴を溜めて吐出させる複数の吐出室が形成されたキャビティ基板と、振動板にギャップを隔てて対向し該振動板を駆動する複数の個別電極、個別電極の駆動信号を供給するための発振回路に接続させる複数の端子部及び個別電極と端子部とを接続する複数のリード部が形成されたガラス基板と、吐出室から移送される液滴を吐出するノズル孔が形成されたノズル基板とを備えた液滴吐出ヘッドであって、ガラス基板には、個別電極及びリード部を形成するための複数の凹部と、端子部を形成するための凹面とを形成し、端子部を、各凹部間のガラス隔壁上に乗り上げるように凹面から凹部にかけて形成したことを特徴とする。
したがって、キャビティ基板に形成する電極取り出し口(貫通穴部)のドライエッチング時において、電極部(特に、リード部)の両脇のガラスが剥き出しになることがないので、ガラス基板に形成した凹部の内部のエッチングを防止することが可能になる。これによって、その部分に成膜する封止膜の封止不良を低減することができる。また、所望の位置に封止膜を成膜できるので、液滴吐出ヘッドを小型化することが可能となる。
本発明に係る液滴吐出ヘッドは、端子部は、少なくともガラス隔壁の凹面側の両端端部に乗り上げていることを特徴とする。こうすることによって、端子部が形成される凹部内を端子部で覆うことが可能になり、ガラス基板に形成した凹部の内部のエッチングを防止できる。また、端子部をガラス隔壁の少なくとも端部に乗り上げるようにするので、各端子部を独立させることができる。
本発明に係る液滴吐出ヘッドは、キャビティ基板には、端子部が乗り上げたガラス隔壁に対応した位置にザグリを形成したことを特徴とする。こうすることによって、ガラス基板とキャビティ基板との陽極接合時に、端子部がキャビティ基板を押し上げてしまうことによる接合不良を防止することができる。また、各端子部とキャビティ基板とが接触しないので、各端子部とキャビティ基板とが電気的に導通することがない。
本発明に係る液滴吐出ヘッドは、端子部が乗り上げたガラス隔壁に対応した位置に、前記ギャップを密閉するための封止膜を形成したことを特徴とする。つまり、端子部で覆われた凹部の内部は、エッチングされることがないので、ガラス基板の表面荒れがなく、精度の高い封止膜を形成することが可能になっている。したがって、所望の位置に高精度で封止膜を形成できるので、液滴吐出ヘッドの小型化を実現することができる。
本発明に係る液滴吐出ヘッドは、封止膜をプラズマCVDで所望の箇所に堆積させることによって形成したことを特徴とする。したがって、封止膜を高い精度で成膜することができる。つまり、所望の位置に所望の厚さで高精度に封止膜を形成できるので、ギャップが密閉されないような封止不良をなくすことができるとともに、液滴吐出ヘッドの小型化を実現することができる。
本発明に係る液滴吐出ヘッドは、個別電極、リード部及び端子部をITOで形成したことを特徴とする。したがって、たとえば陽極接合後において、放電したかどうかの確認を容易に行う可能となっている。また、スパッタ法を使用して凹部及び凹面に個別電極、リード部及び端子部を一体化して形成することもでき、複雑な製造工程を要する手間を省略できる。
本発明に係る液滴吐出ヘッドは、ITOをスパッタによって成膜したことを特徴とする。したがって、凹部及び凹面に個別電極、リード部及び端子部を一体化して形成することもでき、複雑な製造工程を要する手間を省略できる。本発明に係る液滴吐出装置は、上述の液滴吐出ヘッドを搭載したことを特徴とする。したがって、上述の静電アクチュエータの効果及び液滴吐出ヘッドの効果をすべて有している。
本発明に係る液滴吐出ヘッドの製造方法は、底壁が振動板を形成し液滴を溜めて吐出させる複数の吐出室を含む液体流路が形成されたシリコン基板と、振動板にギャップを隔てて対向し該振動板を駆動する複数の個別電極、個別電極の駆動信号を供給するための発振回路に接続させる複数の端子部及び個別電極と端子部とを接続する複数のリード部が形成されたガラス基板とを接合した後、シリコン基板に液体流路を形成する液滴吐出ヘッドの製造方法であって、個別電極及びリード部を形成するための複数の凹部と、端子部を形成するための凹面とをガラス基板に形成し、凹部に個別電極及びリード部を形成し、各凹部間のガラス隔壁上に乗り上げるように凹面から凹部にかけて端子部を形成することを特徴とする。
したがって、シリコン基板(キャビティ基板)に形成する電極取り出し口(貫通穴部)のドライエッチング時において、電極部(特に、リード部)の両脇のガラスが剥き出しになることがないので、ガラス基板に形成した凹部の内部のエッチングを防止することが可能になる。これによって、その部分に成膜する封止膜の封止不良を低減することができる。また、所望の位置に封止膜を成膜できるので、液滴吐出ヘッドを小型化することが可能となる。
本発明に係る液滴吐出ヘッドの製造方法は、シリコン基板に、凹面に対応した電極取り出し口を形成し、該シリコン基板の電極取り出し口における端子部が乗り上げたガラス隔壁に対応した位置がザグリとなるようにシリコン基板をエッチングすることを特徴とする。このようにザグリを形成することで、ガラス基板とシリコン基板との陽極接合時に、端子部がシリコン基板を押し上げてしまうことによる接合不良を防止することができる。また、各端子部とシリコン基板とが接触しないので、各端子部とシリコン基板とが電気的に導通することがない。
本発明に係る液滴吐出装置の製造方法は、上述の液滴吐出ヘッドの製造方法を含むことを特徴としている。したがって、上述の液滴吐出ヘッドの製造方法の効果をすべて有している。
以下、図面に基づいて本発明の実施の形態について説明する。
図1は、本発明の実施の形態に係る液滴吐出ヘッド100を分解した状態を示す分解斜視図である。なお、この液滴吐出ヘッド100は、静電気力により駆動される静電駆動方式の静電アクチュエータの代表として、ノズル基板の表面側に設けられたノズル孔から液滴を吐出するフェイスイジェクトタイプの液滴吐出ヘッドを表している。図1に基づいて、液滴吐出ヘッド100の構成について説明する。
図1に示すように、この液滴吐出ヘッド100は、主にシリコン製のキャビティ基板1、ガラス基板2、及びシリコン製のノズル基板3が順に積層されるように接合された3層構造として構成されている。つまり、キャビティ基板1をガラス基板2とノズル基板3とが上下から挟む構造となっている。ここでは、液滴吐出ヘッド100が3層構造である場合を例に説明するが、これに限定するものではない。たとえば、液滴吐出ヘッド100がガラス基板、キャビティ基板、リザーバ基板及びノズル基板からなる4層構造であってもよい。
[キャビティ基板1]
キャビティ基板1は、たとえば厚さ約50μm(マイクロメートル)の(110)面方位のシリコン単結晶基板(以下、単にシリコン基板と称する)で構成されている。このシリコン基板にドライエッチングまたは異方性ウエットエッチングのいずれかあるいは双方を行い、キャビティ基板1の各部材である、液滴が保持されて吐出圧が加えられる複数の吐出室(圧力室)5、各ノズル共通に吐出する液滴を貯めておくためのリザーバ7等の流路が形成される。なお、吐出室5の底面を構成する底壁は可撓性を有し、変形可能な振動板4として作用する。また、吐出室5は、図1の紙面手前側から紙面奥側にかけて平行に並んで形成されているものとする。
また、キャビティ基板1の下面(ガラス基板2と対向する面)には、プラズマCVD(Chemical Vapor Deposition)によってTEOS(TetraEthyl Orthosilicate Tetraethoxysilane:テトラエトキシシラン、珪酸エチル)からなる厚さ0.1μmの絶縁膜(シリコン酸化膜)14を成膜する(図2(a)参照)。なお、ここでは、絶縁膜14がTEOSからなる場合を例に示しているが、これに限定するものではない。
この絶縁膜14は、液滴吐出ヘッド100を駆動させたときにおける絶縁破壊や短絡を防止するためのものである。また、キャビティ基板1の上面(ノズル基板3と対向する面)にも、図示省略の液体保護膜となるSiO2 膜(TEOS膜を含む)を、プラズマCVD法又はスパッタ法により成膜するとよい。液体保護膜を成膜することによって、インク等の液体で流路が腐食されるのを防止できるからである。この液体保護膜の応力とキャビティ基板1の下面に成膜した絶縁膜14の応力とを相殺させ、振動板4の反りを小さくできるという効果もある。
キャビティ基板1には、さらにキャビティ基板1の外部電極端子としての共通電極19が形成されているほか、ガラス基板2の外部機器との接続部に対応した部分が電極取り出し口25として開口され形成されている。この共通電極19は、発振回路22(図2参照)から振動板4に個別電極8と反対の極性の電荷を供給する際の端子となるものである。また、キャビティ基板1に形成される吐出室5及びリザーバ7は、(110)面方位のシリコン基板に異方性ウエットエッチングを行って形成するため、鋸歯形状をしている。さらに、キャビティ基板1のリザーバ7には、ガラス基板2に設けられたインク供給口13と連通するようにインク供給口13が設けられている。
[ガラス基板2]
ガラス基板2は、厚さ約1mmであり、キャビティ基板1の振動板4側に接合されるようになっている。このガラス基板2となるガラスには、たとえばホウ珪酸系の耐熱硬質ガラスを用いるとよい。ガラス基板2には、キャビティ基板1に形成される各吐出室5に対応させて、深さ約0.2μmの凹部9がエッチングにより複数形成されている。この凹部9のパターン形状は、その内部に個別電極(電極)8及びリード部10を設けるので、それらの形状よりも少し大きめに作製するとよい。なお、個別電極8、リード部10及び端子部11を合わせて電極部45と称する。また、リード部10及び端子部11の形状については、図3で詳細に説明する。
ガラス基板2中央域より外側のガラス基板2端部(つまり、端子部11)には、深さ約0.2μmの凹面26をエッチングにより形成する。この凹面26は、FPC(Flexible Printing Circuit)27を実装するためのFPC実装部としての役目を果たす。ここでは、凹部9及び凹面26の深さが約0.2μmである場合を例に示しているが、電極部45やFPC27の厚さに応じて、変更可能になっている。つまり、電極部45やFPC27を所望の厚さにすることを可能にしているので、それに併せて凹部9及び凹面26の深さを調整するとよい。
この実施の形態では、凹部9及び凹面26内部に設ける電極部45の材料として、酸化錫を不純物としてドープした透明のITO(Indium Tin Oxide:インジウム錫酸化物)を用い、たとえば0.1μmの厚さにスパッタ法を用いて成膜するものとする。このとき、等電位接点24となるITOパターンも同時に成膜しておくようにする。このようにITOで電極部45を作製すると、透明なので放電したかどうかの確認が行いやすく、また等電位接点24も同時に成膜できるという利点がある。なお、この実施の形態では、電極部45をITOで作製した場合を例に示したが、これに限定するものではなく、クロム等の金属等で作製してもよい。
キャビティ基板1とガラス基板2とを接合すると、振動板4と個別電極8との間に振動板4の動作空間となるギャップ(空隙)16が形成される。このギャップ16は、凹部9の深さ、及び個別電極8の厚さにより決まることになる。このギャップ16は、液滴吐出ヘッド100の吐出特性に大きく影響するため、厳格な精度管理が要求される。なお、この実施の形態では、凹部9の深さが0.2μmであり、個別電極8の厚さが0.1μmであるので、ギャップ16は0.1μmである。
このギャップ16は、各振動板4に対向する位置に細長い一定の深さを有するように形成されている。なお、ギャップ16は、ガラス基板2に凹部9を形成する他に、キャビティ基板1となるシリコン基板に凹部を形成したり、スペーサを挟むことによって設けたりすることも可能である。また、個別電極8は、一定の間隔の隙間をもって振動板4に対向しており、ギャップ16の底面に沿ってガラス基板2の末端(リード部10及び端子部11)まで伸びている。そして、この端子部11で発振回路22と接続されるようになっている(図2参照)。さらに、ガラス基板2には、リザーバ7と連通するインク供給口13が設けられている。
[ノズル基板3]
ノズル基板3は、たとえば厚さ約180μmのシリコン基板を主要な材料として構成されている。そして、ガラス基板2とは反対の面でキャビティ基板1と接合している。ノズル基板3の上面には、吐出室5と連通するノズル孔12が複数形成されている。下面にはオリフィス6を設け、吐出室5とリザーバ7とを連通させる。各ノズル孔12は、吐出室5から移送された液滴を外部に吐出するようになっている。なお、ノズル孔12を複数段(たとえば、2段)で形成すると、液滴を吐出する際の直進性の向上が期待できる(図2参照)。
ここでは、ノズル孔12を有するノズル基板3を上面とし、ガラス基板2を下面として説明するが、実際に用いられる場合には、ノズル基板3の方がガラス基板2よりも下面となることが多い。なお、実施の形態では、ノズル基板3にオリフィス6が形成されている場合を例に示しているが、キャビティ基板1にオリフィス6を形成するようにしてもよい。また、ノズル基板3には、振動板4によりリザーバ7側の液体に加わる圧力を緩衝するためのダイアフラム18が形成されている。
図2は、液滴吐出ヘッド100の断面構成を示す縦断面図である。図2(a)は、吐出室5を長手方向に割断した部分を示す断面図であり、図2(b)は、等電位接点部分を拡大した状態を示す断面図である。吐出室5は、ノズル孔12から吐出させるインク等の吐出液体を溜めておくものであり、吐出室5の底壁を構成する振動板4の変形を利用し、吐出室5内の圧力を高めて、ノズル孔12から液滴20を吐出させる作用を果たす。この実施の形態では、振動板4は、高濃度のボロンをシリコン基板に拡散したボロンドープ層で構成され、その表面にTEOSからなる絶縁膜14を被覆している。
所望の厚さの振動板4を形成するためには、同じだけの厚さのボロンドープ層をキャビティ基板1となるシリコン基板に形成すればよい。これは、アルカリ性水溶液でシリコンの異方性ウエットエッチングを行った場合、ボロンをドーパントとしたときには高濃度(5×1019atoms/cm3 以上)の領域で極端にエッチングレートが小さくなるという性質を利用したものである。つまり、吐出室5、リザーバ7を異方性ウエットエッチングで形成する場合に、ボロンドープ層が露出するとエッチングレートが極端に小さくなることを利用した、いわゆるエッチングストップ技術を用いて、振動板4の厚さ、吐出室5の容積を高精度で形成することができる。
エッチングストップとは、エッチング面から発生する気泡が停止した状態と定義し、実際のウエットエッチングにおいては、気泡の発生の停止をもってエッチングがストップしたものと判断することである。また、リザーバ7は、図示省略のインクタンクからインク供給口13を介して供給されるインク等の液滴20を貯めておくものである。ノズル基板3の下面にはオリフィス6が形成されており、吐出室5とリザーバ7とが連通するようになっている。
図2(a)には、液滴吐出ヘッド100の振動板4を動作させる機器(発振回路22)も示されている。ここでは、キャビティ基板1の共通電極19とガラス基板2の端子部11とが、接続ケーブルを介して発振回路22に接続されている場合を例に示している。この接続ケーブルには、FPC27を利用することができる。FPC27の端子は、ガラス基板2の凹面26に装着され、キャビティ基板1の共通電極19とガラス基板2の端子部11とを電気的に接続するようになっている。
発振回路22は、FPC27を介して端子部11と接続され、個別電極8に電荷の供給及び停止を制御する役目を果たすものである。この発振回路22は、たとえば24kHzで発振し、個別電極8に0Vと30Vのパルス電位を印加して電荷供給を行うようになっている。なお、この発振回路22は、ドライバIC等の集積回路で構成するのが好ましい。また、この発振回路22が、液滴吐出ヘッド100の内部に備えられていてもよく、外部に備えられていてもよい。
つまり、この発振回路22が発振駆動し、個別電極8に電荷を供給して正に帯電させると、振動板4は負に帯電し、静電気力により個別電極8に引き寄せられて撓む。これにより吐出室5の容積は広がる。そして、個別電極8への電荷供給を止めると振動板4は元に戻るが、そのときの吐出室5の容積も元に戻るから、その圧力により差分のインク等の液滴20が吐出し、たとえば記録対象となる記録紙21に着弾することによって記録(印字)が行われる。
このような方法は、引き打ちと呼ばれるものであるが、バネ等を用いて液滴20を吐出する押し打ちと呼ばれる方法もある。また、キャビティ基板1と発振回路22とについてもFPC27で接続されるが、ドライエッチングにより基板の一部に開けた酸化膜の窓(図示せず)にワイヤを差し込んで接続するとよい。さらに、端子部11とFPC27とは電極取り出し口25で接続されるようになっている。
個別電極8と振動板4との間に形成されるギャップ16は、脱水処理及び疎水処理を施した後、無機材料の封止膜40を端部に堆積させることによって密閉されている。これにより、静電アクチュエータを駆動させた際の個別電極8と振動板4との貼り付きや、異物、水分(水蒸気)等の浸入を防止している。また、キャビティ基板1の封止膜40を成膜する部分には、ザグリ50が形成されている。この図2(a)で示すA部分(封止膜40及びザグリ50)については、図3及び図4で詳細に説明する。
図2(b)は、等電位接点部分を拡大した状態を示す断面図である。この実施の形態では、図1に示したように、等電位接点24を各ヘッドチップに独立して設け、それを利用して陽極接合時に、キャビティ基板1となるシリコン基板と個別電極8との間を等電位に保つようにしている。等電位接点24となる部分については、ガラス基板2に凹部9を形成する際、エッチングせず残しておき、個別電極8の成膜時、併せて等電位接点24となるITOパターンを形成する(図3参照)。
これにより、等電位接点24は、ガラス基板2の表面よりもそのITOパターンの分(0.1μm程度程)突出することになる。一方、キャビティ基板1となるシリコン基板においては、等電位接点24に対応する部分の絶縁膜14を取り除き、シリコン基板(ボロンがドープされている場合にはボロンドープ層)を露出する窓部28を形成する。この窓部28を介してシリコン基板と等電位接点24とを接触させることで、陽極接合時において、個別電極8とシリコン基板との等電位を確保することができる。なお、等電位接点24と個別電極8との導通は、後のウエハ裁断処理(ダイシング)により遮断される。
次に、液滴吐出ヘッド100の動作について簡単に説明する。液滴吐出ヘッド100のキャビティ基板1と各個別電極8とには、上述したように発振回路22が接続されている。そして、この発振回路22によりキャビティ基板1と個別電極8との間にパルス電圧が印加される。そうすると、キャビティ基板1と個別電極8との間に電位差が生じ、静電気力が発生する。そのために、振動板4が個別電極8側に撓み、リザーバ7の内部に溜まっていたインク等の液滴20が吐出室5に流れ込む。その後、キャビティ基板1と個別電極8との間に印加されていたパルス電圧がなくなると、振動板4が元の状態位置に復元して吐出室5の内部の圧力が高くなり、ノズル孔12から液滴20が吐出される。
図3は、キャビティ基板1に接合前のガラス基板2を上方から見た平面図である。図3に基づいて、キャビティ基板1に接合前のガラス基板2の切り離し前の状態について説明する。通常、液滴吐出ヘッド100はウエハ単位で作られ、最終的に各液滴吐出ヘッド100(ヘッドチップ)に切り離されるようになっている。図3は、その切断前の状態を示している。貫通穴境界線51は、ガラス基板2に接合されるキャビティ基板1の電極取り出し口25の境界を表している。つまり、電極取り出し口25が貫通穴として形成される境界を表している。また、破線52は、アクチュエータ側の絶縁膜14が付着している範囲であることを表している。
この切断前の段階では、各個別電極8と等電位接点24とはITOパターンにより接続された状態となっている。この等電位接点24は、図2(b)で説明したように各ヘッドチップに独立して設けられており、陽極接合時にキャビティ基板1と電極部45との間を等電位にするものである。すなわち、キャビティ基板1において、この部分の絶縁膜14(0.1μm)を取り除いて窓部28を形成し、キャビティ基板1の主たる材料であるシリコンと接触させることで電極部45との等電位を確保するのである。
大気開放穴29は、この液滴吐出ヘッド100の外部と凹部9とを連通させ、陽極接合によって形成されるギャップ16が密閉された状態になるのを防ぐためのものである。たとえば、大気開放穴29は、陽極接合時等、各基板への加熱等による酸素等の気体発生によってギャップ16内が加圧されるのを防止するようになっている。この大気開放穴29は、サンドブラスト法や切削加工等により形成するとよい。また、大気開放穴29と個々のアクチュエータ(凹部9)とは、ダイシング前の封止により切り離されることになる。なお、大気開放穴29は、最終的にはダイシングにより液滴吐出ヘッド100と切り離されるので、完成した液滴吐出ヘッド100には残らない。
ダイシングライン53は、ウエハに一体形成された複数の液滴吐出ヘッド100を切り離す際のラインである。したがって、図3においてダイシングライン53を含んでそれよりも外側(右側及び上側)にある部分は、完成した液滴吐出ヘッド100には残らないようになっている。なお、図3の液滴吐出ヘッド100では、個別電極8を5つしか表していないが、これに限定するものではない。実際には、1つの液滴吐出ヘッド100には多くのノズル孔12が存在し、その数に応じた個別電極8が形成されている。
図3に示すように、電極部45(網掛けで表している)は、凹部9及び凹面26の内部に形成されている。そして、電極部45を構成する端子部11が、凹面26から貫通穴境界線51までの各電極部45間のガラス基板2(以下、ガラス隔壁と称する)の端部に乗り上げるように形成されている。つまり、端子部11が、各凹部9間のガラス隔壁の少なくとも端部(ガラス隔壁の凹面26側の両端端部)に乗り上げるように凹面26から凹部9(貫通穴境界線51近傍まで)にかけて形成されている。また、この端子部11が乗り上げたガラス隔壁に対応した位置のキャビティ基板1にザグリ50を形成するようになっている。
このように、端子部11を形成するので、貫通穴境界線51近傍の凹部9が端子部11で覆われることになり、その部分のガラス基板2が露出しないことになる。端子部11は、キャビティ基板2の電極取り出し口25を形成する際のドライエッチングに耐性のある材料、たとえばITOで構成するとよい。そうすれば、電極取り出し口25を貫通させる際に、ガラス基板2の表面がエッチングされることがない(図4(a)参照)。すなわち、ガラス基板2の表面がエッチングされないために、封止膜40を高精度で成膜することができるのである。
図4は、図2で示したA部分の断面構成を示す断面図である。図4(a)は、図3で示した切断前のガラス基板2のA−A’断面を示す縦断面図である。また、図4(b)は、従来からある切断前のガラス基板2のA−A’断面を示す縦断面図である。図4に基づいて、この実施の形態の特徴部分について説明する。なお、図4(a)及び図4(b)の上側の図は、ドライエッチング前の状態を示し、下側の図は、ドライエッチング後の状態をそれぞれ示しているものとする。
上述したように、電極部45(個別電極8、リード部10及び端子部11)は、ガラス基板2に形成される凹部9及び凹面26の内部にITOを成膜することにより作製される。通常、電極部45は、凹部9及び凹面26の形状よりも少し小さめに作製されており、凹部9及び凹面26内部に収まるようになっている。つまり、リード部10は、凹面26に向かって直線的に作製されており、凹面26で端子部11となってFPC27が実装されるようになっている。
そうすると、図4(b)の上側に示すように、ガラス隔壁と、凹部9内における端子部11の両脇とが剥き出しの状態になってしまう。キャビティ基板1の貫通穴部(電極取り出し口25に対応する部分)をドライエッチングする際に、電極部45はITOで構成されているためにエッチングガスに対しての耐性が高く、ドライエッチングされることはない。しかしながら、図4(b)下側に示すように、ガラス基板2の剥き出しになっている部分は、ドライエッチングされてしまう。
つまり、封止膜40を堆積させようとする部分の表面が荒れてしまうのである。したがって、CVD法を用いて封止膜40を成膜し堆積させてアクチュエータ内(ギャップ16)を封止しようとする場合には、エッチングされてしまったガラスの表面に均一に封止膜40を堆積させることが難しく、封止不良となる可能性が大きくなる。この問題を回避するために樹脂で封止することも考えられるが、それでは液滴吐出ヘッド100の小型化の要求を満たせなくなってしまう。
そこで、この実施の形態では、図3及び図4(a)上側に示すように、ガラス隔壁の少なくとも端部に乗り上げるようにITOを成膜し、電極部45を作製するようにしている。つまり、電極部45を構成するリード部10の幅を貫通穴境界線51のアクチュエータ側手前から拡大させて端子部11にし、この端子部11をガラス隔壁に乗り上げるようにして、ガラス隔壁の両端を被覆するようにしている。このようにすれば、図4(a)下側に示すように、ドライエッチング時にエッチングされる場所はガラス隔壁上のみとすることができる。したがって、封止膜40をエッチングされた量よりも多く堆積すれば、アクチュエータ内(ギャップ16)を確実に封止することができる。
一方、導電部材であるITOをガラス隔壁に乗り上げるように成膜するので、その部分のITOがキャビティ基板1となるシリコン基板とガラス基板2との陽極接合の際にシリコン基板を押し上げてしまうことになる。そうすると、シリコン基板とガラス基板2との接合不良が発生してしまうことになる。また、作製される電極部45とシリコン基板とが接続され電気的に導通してしまうことになり、各振動板4を駆動させる個別電極8としての機能を果たさなくなってしまう。
したがって、この実施の形態では、そのようなことを回避するために、ITOがガラス隔壁上に乗り上げている部分に対応するシリコン基板(キャビティ基板1)の接合面にザグリ50を設けている(図2(a)で示したA部分)。このザグリ50は、ITOがガラス隔壁に乗り上げている部分に対応するように形成すればよい。
図5は、ガラス基板2の製造工程を示す縦断面図である。まず、図5に基づいて、約1mmのガラス基板2aに対し、電極部45の形状パターンに合わせて0.2μmの深さの凹部9を形成するガラス基板2の製造工程について説明する。なお、実際には、シリコンウエハから複数個分の液滴吐出ヘッドの部材を同時形成するのが一般的であるが、図5ではその一部分だけを簡略化して示している。
すなわち、ガラス基板2となる硼珪酸ガラス製の厚さ1mmのガラス基板2aの上面(キャビティ基板1との接合面)にエッチングマスクとなるCr膜(クロム膜)31をスパッタ装置により0.1μm程度成膜する(a)。次に、成膜したCr膜31の表面にレジスト32を塗布し、凹部9(端子部)を形成するためのレジストパターニングをフォトリソグラフィー(ステッパーやマスクアライナー等)によって行なう(b)。そして、Cr膜31を硝酸セリウムアンモニウム水溶液でエッチングしてパターニングする(c)。
次に、レジスト32が塗布された状態でガラス基板2aをフッ化アンモニウム水溶液に浸し、ガラス基板2aをエッチングして深さ0.2μmの凹部9を形成する(d)。なお、このとき、等電位接点24に対応する部分をエッチングで除去されないように残しておくようにする。この等電位接点24の形状については、電極部45とシリコン基板とを接触させて等電位にすることができればよく、特に限定するものではない。その後、レジスト32を剥離し、Cr膜31も剥離する(e)。
凹部9の形成後、凹部9が形成されたガラス基板2aのパターニング面全面に導電部材を成膜する(f)。この導電部材としてはITO45aが好ましく、それをスパッタ法によって0.1μmの厚さに成膜するものとする。なお、上述したように、このITO45aが電極部45(個別電極8、リード部10及び端子部11)を構成することになる。また、ここでは、導電部材としてITO45aを使用した場合を例に説明するが、これに限定するものではない。たとえば、ITO45aに代えて他の導電部材を使用しても良い。
ITO45aの成膜後、ITO45a上にレジスト33を塗布し、電極部45及び等電位接点24に対応する部分にITO45aが残るように、レジストパターニングを施す(g)。この実施の形態では、図3及び図4(a)で説明したようにレジストパターニングを施すようになっている。すなわち、ガラス隔壁上にITO45aが残るようにレジストをパターニングする。そして、ITO45aを塩酸と硝酸との混合液(エッチャント)を用いてウエットエッチングする(h)。なお、ITO45aをエッチングできるエッチャントであればよく、特に種類を限定するものではない。
ウエットエッチング後、レジスト33を剥離する(i)。最後に、インク供給口13及びここでは図示していない大気開放穴29をサンドブラスト法または切削加工により形成する(j)。このようにして、ガラス基板2aを基材としたガラス基板2を作製している。なお、ガラス基板2の作製では、ウエットエッチングでエッチングする場合を例に示しているが、ウエットエッチングに限定するものではなく、ドライエッチングでエッチングをしてもよい。
また、等電位接点24部分に形成されたITO45aが厳密に所定の厚さに形成されていなくても、通常、スパッタ法による成膜で起こる程度の厚みの誤差範囲であれば、陽極接合により強電界が発生するため、接触していなくても電極部45とシリコン基板1aとの間では電気的な接続が確保され、等電位にすることができるので特に問題は生じない。
次に、図5で製造したガラス基板2を用いた液滴吐出ヘッド100の製造工程について説明する。図6〜図8は、ガラス基板2を利用した液滴吐出ヘッド100の製造工程を示す縦断面図である。図6〜図8に基づいて、0.8μmの振動板4を有する液滴吐出ヘッド100の製造工程について説明する。なお、実際には、シリコンウエハから複数個分の液滴吐出ヘッド100の部材を同時形成するが、図6〜図8では、その一部分だけを示している。
ガラス基板2に接合されてキャビティ基板1となる(110)面方位のシリコン基板1aを準備する。そのシリコン基板1aは、含有酸素濃度が低く、(110)を面方位とするシリコン基板とし、ガラス基板2との接合面側となる面を鏡面研磨し、220μmの厚みとする。このシリコン基板1aを、酸素及び水蒸気雰囲気中において、1075℃の温度条件で4時間酸化することで、シリコン基板1aの両面に約1.2μmのSiO2 膜43を成膜する(図6(a))。
シリコン基板1aの両面に図示省略のレジストを塗布し、貫通穴部となる部分のSiO2 膜43を除去すべくシリコン基板1aの鏡面側(ガラス基板2との接合面側)にレジストパターニングを施し、フッ酸水溶液でエッチングして、SiO2 膜43をパターニングする。その後、シリコン基板1aからレジストを剥離する(図6(b))。続いて、SiO2 膜43をパターニングした部分をウエットエッチングまたはドライエッチングによりザグリ50となる部分を1μm以上エッチングする(図6(c))。なお、この実施の形態では、2μm程度エッチングするようにしている。
次に、パターニングした面と反対面に図示省略のレジストを塗布した後、シリコン基板1aをフッ酸水溶液に浸し、鏡面側のSiO2 膜43をエッチングにて除去する。そして、レジストを剥離する(図6(d))。それから、シリコン基板1aの振動板4となるボロンドープ層4aを形成する面を、B23を主成分とする固体の拡散源に対向させて石英ボートにセットする。さらに、縦型炉に石英ボートをセットして、炉内を窒素雰囲気にし、温度を1050℃に上昇させて7時間保持することで、ボロンをシリコン基板1aの片側面に拡散させてボロンドープ層4aを形成する(図6(e))。
ボロンドープ層4aの形成工程においては、炉へのシリコン基板1a(石英ボート)の投入温度を800℃とし、シリコン基板1aの取出し温度も800℃とする。これにより、シリコン基板1a内の酸素による酸素欠陥の成長速度が速い領域(600℃から800℃)をすばやく通過させることができるため、酸素欠陥の発生を抑えることができる。なお、この時、シリコン基板1aの拡散面と反対面にはSiO2 膜43が残っているため、ボロンが反対面に回り込んでも、SiO2 膜43がマスクとなって反対面にボロンが拡散されることが無い。
ボロンドープ層4aの表面には、図示省略のボロン化合物が形成されることになるが、酸素及び水蒸気雰囲気中、600℃の条件で1時間30分酸化することで、フッ酸水溶液によるエッチングが可能なB23+SiO2 に化学変化させることができる。その後、シリコン基板1aをフッ酸水溶液に10分間浸すと、ボロン拡散部のB23+SiO2 膜及び反対面側のSiO2 膜43がエッチング除去されることになる(図6(f))。
続いて、ボロンドープ層4aを形成した面に、プラズマCVD法により、絶縁膜(TEOS膜)14を、成膜時の処理温度は360℃、高周波出力は250W、圧力は66.7Pa(0.5Torr)、ガス流量はTEOS流量100cm3 /min(100sccm)、酸素流量1000cm3 /min(1000sccm)の条件で0.1μm成膜する。
さらに、成膜した絶縁膜14の表面に図示省略のレジストを塗布し、等電位接点24に対応する接点となる窓部28の薄膜をシリコン基板1aに作り込むためのレジストパターニングを施す。そして、フッ酸水溶液でウエットエッチングを行って絶縁膜14をパターニングし、等電位接点24に対応した窓部28を形成する。その後、レジストを剥離する(図6(g))。
それから、シリコン基板1aとパターン形成済みのガラス基板2とを360℃に加熱した後、ガラス基板2に負極、シリコン基板1aに正極を接続して、800Vの電圧を印加して、シリコン基板1aとガラス基板2とを陽極接合し、接合基板60を作製する(図7(h))。シリコン基板1aとガラス基板2とを陽極接合することによって、シリコン基板1aとガラス基板2aとが原子レベルで接合される。なお、ウエハの各ヘッドチップに等電位接点24が独立して設けられているので、万が一、あるヘッドチップの等電位接点24に接点不良があり、ヘッドチップが壊れたとしても、他のヘッドチップに影響を与えず、製造不良を最小限に留めることができる。
この陽極接合時に、シリコン基板1aとガラス基板2の界面において、ガラスが電気化学的に分解され酸素が気体となって発生する場合がある。また、加熱によって表面に吸着していたガス(気体)が発生する場合もある。しかしながら、これらの気体は大気開放穴29(図3参照)から逃げるため、ギャップ16内が正圧になってしまうことは回避できる。また、この陽極接合時、各個別電極8とシリコン基板1aとは、前述した窓部28を介して等電位接点24で接触し、各個別電極8とシリコン基板1aとは等電位となる。したがって、陽極接合中にギャップ16内で放電が起こることもない。
陽極接合後、シリコン基板1aの厚みが約60μmになるまで接合基板60のシリコン基板1a表面を研削加工する(図7(i))。その後、加工変質層を除去するために、32w%の濃度の水酸化カリウム溶液でシリコン基板1aを約10μmエッチングする。これによりシリコン基板1aの厚みを約50μmにする。なお、この研削工程及び加工変質層除去工程においては、大気開放穴29から液体がギャップ16内に入り込まないように、片面保護治具やテープ等を用いて大気開放穴29を塞ぎ、ギャップ16を保護するとよい。
次に、ウエットエッチングを行った面(接合基板60のシリコン基板1a表面)に対し、TEOSによるエッチングマスク61をプラズマCVD法により成膜する(図7(j))。成膜条件としては、たとえば、成膜時の処理温度は360℃、高周波出力は700W、圧力は33.3Pa(0.25Torr)、ガス流量はTEOS流量100cm3 /min(100sccm)、酸素流量1000cm3 /min(1000sccm)の条件でエッチングマスク61を1.0μm成膜するとよい。
続いて、大気開放穴29にエポキシ系接着剤を流し込み、大気開放穴29を封止する。これによりギャップ16は密閉状態となるため、以後の工程で大気開放穴29から液体等が入り込むことが無くなる。なお、大気開放穴29の封止は、エッチングマスク61を成膜した後に行うのが好ましい。エッチングマスク61の成膜前に大気開放穴29の封止を行うと、閉じこめられたギャップ16内の気圧が、エッチングマスク61成膜時に膨張し、薄くなったシリコン基板1aを押し上げて、シリコン基板1aが割れる可能性があるからである。
このエッチングマスク61に図示省略のレジストを塗布し、吐出室5となる部分のレジストパターニングを施す。そして、接合基板60をフッ酸水溶液中に浸して、吐出室5となる部分のエッチングマスク61が無くなるまで、その部分をエッチングする(図7(k))。つまり、シリコン基板1aの吐出室5となる部分が露出するのである。その後、レジストを剥離する。
続いて、リザーバ7となる部分及び電極取り出し口25となる貫通穴部のエッチングマスク61をエッチングするため、レジストパターニングを施す。そして、フッ酸水溶液でそれらの部分のエッチングマスク61を0.7μmだけエッチングしてパターニングする(図7(l))。これにより、リザーバ7となる部分及び電極取り出し口25となる貫通穴部に残っているエッチングマスク61の厚みは0.3μmとなる。
このようにするのは、リザーバ7となる部分と電極取り出し口25となる貫通穴部の底面に厚みを持たせ、それらの剛性を高めるためである。その後、レジストを剥離する。なお、特開2004−306444号公報にあるように、エッチングした場合に電極取り出し口25となる貫通穴部の中央部にシリコンの島が残るように、エッチングマスク61に対してレジストパターニングを施してもよい。
次に、シリコン基板1aとガラス基板2との接合基板60を、35wt%の濃度の水酸化カリウム水溶液に浸し、吐出室5の底面厚みが約5μmになるまでウエットエッチングを行う(図8(m))。このとき、リザーバ7となる部分及び電極取り出し口25となる貫通穴部は、エッチングマスク61がされており、それらの部分のエッチングがまだ始まらないようにしている。
それから、リザーバ7となる部分及び電極取り出し口25となる貫通穴部のエッチングマスク61を除去するために接合基板60をフッ酸水溶液に浸す(図8(n))。つまり、リザーバ7となる部分及び電極取り出し口25となる貫通穴部のエッチングマスク61をウエットエッチングすることによって除去するのである。したがって、シリコン基板1aにおけるリザーバ7となる部分及び電極取り出し口25となる貫通穴部が露出することになる。
さらに、接合基板60を3wt%の濃度の水酸化カリウム水溶液に20分程度浸し、ボロンドープ層4aでのエッチングレート低下によってエッチングストップさせる(図8(o))。このように、2種類の濃度の異なる水酸化カリウム水溶液を用いたエッチングを行うことによって、形成される振動板4の面荒れを抑制し、振動板4の厚みの精度を0.80±0.05μm以下にすることができる。その結果、液滴吐出ヘッド100の吐出性能を安定化することができる。
このエッチングにより、リザーバ7及び貫通穴部の深さは約30μmとなる。従って、リザーバ7の厚みは約20μmとなり、貫通穴部の厚みは約18μmとなる。この厚みのため、吐出室5より広い面積を有するこれらの部分でその強度が向上し、製造過程での割れが低減される。また、電極取り出し口25となる貫通穴部の、ガラス基板2とシリコン基板1aとのギャップ16が、他の部分のギャップ16より拡大されているため、シリコン基板1aが製造過程で割れることも低減される。その結果、歩留まりを向上させることができる。
ウエットエッチングを終了すると、接合基板60をフッ酸水溶液に浸し、シリコン基板1aの表面に形成したエッチングマスク61を剥離する(図8(p))。そして、貫通穴部に残っているシリコン薄膜を除去するために、図示省略のシリコンマスクを接合基板60のシリコン基板1aの表面に取り付け、RFパワー200W、圧力40Pa(0.3Torr)、CF4 流量30cm3 /min(30sccm)の条件で、RIE(Reactive Ion Etching)等のドライエッチング(異方性ドライエッチング)を1時間行い、貫通穴部のみにプラズマを当てて開口する(図8(q))。
このドライエッチングに用いるRIEは、たとえば、RFパワーが200W、圧力が40Pa(0.3Torr)、CF4 流量が30cm3 /min(30sccm)の条件で、シリコンマスクを用いて貫通穴部のみにプラズマを60分間程度当てて開口するとよい。これにより、シリコン基板1aは、図1に示したキャビティ基板1の状態になる。また、個別電極8とシリコン基板1aとの間に形成されるギャップ16も大気開放されるようになる。
次に、アクチュエータ(ギャップ16)内を封止するために、封止膜40を堆積させる(図8(r))。封止膜40の堆積は、堆積させたい部分だけを開口した図示省略のシリコンマスクを接合基板60のシリコン基板1aの表面に取り付けて行なう。つまり、シリコンマスクを取り付けて、プラズマCVDを用いることによって3.0μmの封止膜40を成膜する。
この封止膜40の成膜時の処理温度は、360℃、高周波出力は700W、圧力は33.3Pa(0.25Torr)、ガス流量はTEOS流量100cm3 /min(100sccm)、酸素流量1000cm3 /min(1000sccm)の条件で行なうとよい。こうすることによって、ギャップ16は再び密閉状態になる。また、大気開放穴29へ連通する溝とアクチュエータ部分(各ギャップ16)は封止膜40によって分離、遮断されることとなる。
その後、ノズル孔12があらかじめ形成されたノズル基板3を、たとえばエポキシ系接着剤により、接合基板60のキャビティ基板1側に接着する(図8(s))。そして、最後に、ダイシングライン53に沿ってダイシングを行い、個々の液滴吐出ヘッド100に裁断し、液滴吐出ヘッド100が完成する(図8(t))。
また、このとき、陽極接合時には短絡していた各個別電極8はそれぞれ分断され、ノズル孔12毎に独立する。また、大気開放穴29及びそこに連通していたガラス溝も切断されて除去される。このような工程によれば、ガラス基板2とシリコン基板1aを接合し、接合基板60を作製した後に、そのシリコン基板1aに対して吐出室5等の各流路を形成するため、取り扱いが容易となり、シリコン基板1aの割れも低減することができる。また、ウエハの大口径化が可能となる。大口径化が可能となれば、一枚のシリコン基板から多くの液滴吐出ヘッド100を取出すことができるため、生産性を向上できる。
また、アクチュエータ(ギャップ16)を封止膜40で封止するために、エポキシ系樹脂等で封止する場合に比べて、液滴吐出ヘッド100を更に小型化ができるようになる。したがって、一枚のシリコン基板から更に多くの液滴吐出ヘッド100を取出すことができるため、生産性を大きく向上することが可能になる。なお、ここで示した液滴吐出ヘッド100の製造工程は一例であり、そこで使用した温度、圧力、時間、厚み等の各条件は、上記に説明したものに限られるものではない。
図9は、上述の液滴吐出ヘッド100を搭載した液滴吐出装置150の一例を示した斜視図である。図9に示す液滴吐出装置150は、一般的なインクジェットプリンタを表しているものである。なお、この液滴吐出装置150は、周知の製造方法によって製造することができる。また、上述の液滴吐出ヘッド100は、図3及び図4(a)に示したように、電極部となるITOをガラス基板2のガラス隔壁に乗り上げるように成膜し、その部分に対応するシリコン基板1aにザグリ50を形成することに特徴を有するものである。
なお、実施の形態で得られた液滴吐出ヘッド100は、図9に示す液滴吐出装置150の他に、液滴を種々変更することで、液晶ディスプレイのカラーフィルタの製造、有機EL表示装置の発光部分の形成、生体液体の吐出等にも適用することができる。また、実施の形態で得られた液滴吐出ヘッド100は、圧電駆動方式の液滴吐出装置や、バブルジェット(登録商標)方式の液滴吐出装置にも使用できる。
たとえば、液滴吐出ヘッド100をディスペンサとし、生体分子のマイクロアレイとなる基板に吐出する用途に用いる場合では、DNA(Deoxyribo Nucleic Acids:デオキシリボ核酸)、他の核酸(例えば、Ribo Nucleic Acid:リボ核酸、Peptide Nucleic Acids:ペプチド核酸等)タンパク質等のプローブを含む液体を吐出させるようにしてもよい。
なお、本発明の実施の形態に係る液滴吐出ヘッド、液滴吐出装置、液滴吐出ヘッドの製造方法及び液滴吐出装置の製造方法は、上述の実施の形態で説明した内容に限定されるものではなく、本発明の思想の範囲内において変更することができる。また、実施の形態に係る液滴吐出ヘッド100がガラス基板2、キャビティ基板1及びノズル基板3からなる3層構造である場合を例に説明したが、これに限定するものではない。たとえば、液滴吐出ヘッド100がガラス基板、キャビティ基板、リザーバ基板及びノズル基板からなる4層構造として構成してもよい。
実施の形態に係る液滴吐出ヘッドを分解した状態を示す分解斜視図である。 液滴吐出ヘッドの断面構成を示す縦断面図である。 キャビティ基板に接合前のガラス基板を上方から見た平面図である。 実施の形態の特徴部分を示す説明図である。 ガラス基板の製造工程を示す縦断面図である。 ガラス基板を利用した液滴吐出ヘッドの製造工程を示す縦断面図である。 ガラス基板を利用した液滴吐出ヘッドの製造工程を示す縦断面図である。 ガラス基板を利用した液滴吐出ヘッドの製造工程を示す縦断面図である。 液滴吐出ヘッドを搭載した液滴吐出装置の一例を示した斜視図である。
符号の説明
1 キャビティ基板、1a シリコン基板、2 ガラス基板、2a ガラス基板、3 ノズル基板、4 振動板、4a ボロンドープ層、5 吐出室(圧力室)、6 オリフィス、8 個別電極、9 凹部、10 リード部、11 端子部、12 ノズル孔、13 インク供給口、14 絶縁膜(TEOS膜)、16 ギャップ、18 ダイアフラム、19 共通電極、20 液滴、21 記録紙、22 発振回路、24 等電位接点、25 電極取り出し口、26 凹面、27 FPC、28 窓部、29 大気開放穴、31 Cr膜(クロム膜)、32 レジスト、33 レジスト、40 封止膜、43 SiO2 膜、45 電極部、45a ITO、50 ザグリ、51 貫通穴境界線、52 波線、53 ダイシングライン、60 接合基板、61 エッチングマスク、100 液滴吐出ヘッド、150 液滴吐出装置。

Claims (11)

  1. 底壁が振動板を形成し液滴を溜めて吐出させる複数の吐出室が形成されたキャビティ基板と、
    前記振動板にギャップを隔てて対向し該振動板を駆動する複数の個別電極、前記個別電極へ駆動信号を供給するための発振回路に接続させる複数の端子部及び前記個別電極と前記端子部とを接続する複数のリード部が形成されたガラス基板と、
    前記吐出室から移送される液滴を吐出するノズル孔が形成されたノズル基板とを備えた液滴吐出ヘッドであって、
    前記ガラス基板には、
    前記個別電極及び前記リード部を形成するための複数の凹部と、
    前記端子部を形成するための凹面とを形成し、
    前記端子部を、
    各凹部間のガラス隔壁上に乗り上げるように前記凹面から前記凹部にかけて形成した
    ことを特徴とする液滴吐出ヘッド。
  2. 前記端子部は、少なくとも前記ガラス隔壁の前記凹面側の両端端部に乗り上げている
    ことを特徴とする請求項1に記載の液滴吐出ヘッド。
  3. 前記キャビティ基板には、
    前記端子部が乗り上げた前記ガラス隔壁に対応した位置にザグリを形成した
    ことを特徴とする請求項1または2に記載の液滴吐出ヘッド。
  4. 前記端子部が乗り上げた前記ガラス隔壁に対応した位置に、前記ギャップを密閉するための封止膜を形成した
    ことを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の液滴吐出ヘッド。
  5. 前記封止膜をプラズマCVDで所望の箇所に堆積させることによって形成した
    ことを特徴とする請求項4に記載の液滴吐出ヘッド。
  6. 前記個別電極、前記リード部及び前記端子部をITOで形成した
    ことを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の液滴吐出ヘッド。
  7. 前記ITOをスパッタによって成膜した
    ことを特徴とする請求項6に記載の液滴吐出ヘッド。
  8. 前記請求項1〜7のいずれかに記載の液滴吐出ヘッドを搭載した
    ことを特徴とする液滴吐出装置。
  9. 底壁が振動板を形成し液滴を溜めて吐出させる複数の吐出室を含む液体流路が形成されたシリコン基板と、前記振動板にギャップを隔てて対向し該振動板を駆動する複数の個別電極、前記個別電極へ駆動信号を供給するための発振回路に接続させる複数の端子部及び前記個別電極と前記端子部とを接続する複数のリード部が形成されたガラス基板とを接合した後、前記シリコン基板に前記液体流路を形成する液滴吐出ヘッドの製造方法であって、
    前記個別電極及び前記リード部を形成するための複数の凹部と、前記端子部を形成するための凹面とを前記ガラス基板に形成し、
    前記凹部に前記個別電極及び前記リード部を形成し、
    各凹部間のガラス隔壁上に乗り上げるように前記凹面から前記凹部にかけて前記端子部を形成する
    ことを特徴とする液滴吐出ヘッドの製造方法。
  10. 前記シリコン基板に、前記凹面に対応した電極取り出し口を形成し、
    該シリコン基板の前記電極取り出し口における前記端子部が乗り上げた前記ガラス隔壁に対応した位置がザグリとなるように前記シリコン基板をエッチングする
    ことを特徴とする請求項9に記載の液滴吐出ヘッドの製造方法。
  11. 前記請求項8または9に記載の液滴吐出ヘッドの製造方法を含む
    ことを特徴とする液滴吐出装置の製造方法。
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