JP2007290164A - 積層ポリエステルフィルム及び鏡面反射フィルム - Google Patents

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Abstract

【課題】高度で均一な光線反射率が得られ、かつフィルムの静電気障害が抑制された金属薄膜層を反射面とする鏡面反射フィルム、特に、LCD用の面光源反射フィルムの基材として好適な積層ポリエステルフィルム及びそれを用いた鏡面反射フィルムを提供する。
【解決手段】表面層(A)/白色遮光層(B)の層構成を含む積層ポリエステルフィルムであって、白色遮光層(B)はその内部に空洞又は無機粒子を含有するポリエステル組成物からなり、表面層(A)のSRzが0.23μm以下、あるいは粒子を含有しないか、または粒子の含有量が50ppm以下である、ポリエステルからなる平滑層であり、積層ポリエステルフィルムは光線透過率が20%以下であり、いずれかの層に帯電防止剤を含み、少なくとも片面の表面固有抵抗値が1×106〜1×1013Ω/□であることを特徴とする積層ポリエステルフィルム。
【選択図】図5

Description

本発明は、積層ポリエステルフィルム及びそれを用いた鏡面反射フィルムに関する。より詳しくは、金属薄膜層よりなる光反射層を形成させた鏡面反射フィルムの基材、特に、液晶ディスプレイ(以下、LCDと略す)の面光源反射板の部材として好適に用いることができる、帯電防止性に優れる積層ポリエステルフィルム及びそれを用いた鏡面反射フィルムに関する。
近年、液晶画面を使用した用途の拡大はめざましく、従来のノートパソコンの他に、据え置き型のパソコン、液晶テレビ、携帯電話のディスプレイ、各種ゲーム機などで広く採用されてきている。このような用途拡大に応じて画面の高輝度化、高精細化が望まれており、照明光源でも高出力化や光源ランプ数の増加などの改良が図られてきている。また、該光源に使用される反射板に関しても、その反射特性に対する要求も高度化してきている。特に、市場において高輝度化の要求がますます強くなってきている。
高輝度化の要求を満足させるためには、反射板として銀やアルミニウム等の金属薄膜層の鏡面反射を利用したものを用いることが好ましい。しかしながら、該方法は鏡面反射光が強く輝度を高めることは可能であるが、光の入射角に対し他の角度への反射光が殆ど見られない。そのため、LCD用反射板として使用すると、一定方向から見た時だけ明るく、他の角度から見た場合に暗くて見えにくいという現象が生じる。この現象は一般に指向性が強い又は視野角が狭いと呼ばれている。そのため、従来は、指向性の強い鏡面反射光を低下させ、指向性の弱い拡散反射光を増大させる方法が用いられてきた。
例えば、以下の方法が開示されている。
(1)二酸化チタン等の白色の無機粒子を含む樹脂フィルム基材の反射使用面の反対側に金属薄膜よりなる光反射層を積層し、該無機粒子による光線の散乱作用により拡散反射光を増加させる方法(例えば、特許文献1〜7を参照)
(2)銀系金属薄膜よりなる光反射層の表面に、白色顔料を含むフィルムあるいは白色顔料を含む樹脂層を積層したフィルムを重ね合わせて、該白色顔料による光線の散乱作用により拡散反射光を増加させる方法(例えば、特許文献8〜9を参照)
(3)表面がマット加工された透明フィルムのマット加工された反対面の平坦表面に銀薄膜層よりなる光反射層を形成し、マット加工表面による光線の散乱作用により拡散反射光を増加させる方法(例えば、特許文献10を参照)
(4)紫外線吸収剤、必要に応じて白色顔料を併用して、特定の曇価を有する艶消しフィルムに、銀薄膜層よりなる光反射層を形成し、フィルム中の紫外線吸収剤や白色顔料による光線の散乱作用により拡散反射光を増加させる方法(例えば、特許文献11を参照)
(5)基材フィルムの表面に粒子を含む樹脂層を積層し、基材フィルム表面に凹凸層を形成し、該凹凸層表面に銀あるいはアルミニウム系金属薄膜よりなる光反射層を設けて、光反射層の凹凸により拡散反射光を増加させる方法(例えば、特許文献12〜14を参照)
(6)基材フィルム表面にアンカー層を積層し、その上に金属蒸着層よりなる光反射層を形成させ、特定条件で熱処理することにより拡散反射光を増加させる方法(例えば、特許文献15を参照)
(7)内部に微細な多数の空孔を含有する熱可塑性高分子樹脂配向フィルムからなる透過光散乱性制御フィルムに、金属膜を積層し、フィルム側から光を入射することにより、入射方向によって散乱性を制御する方法(例えば、特許文献16の特許請求の範囲、段落0005、0060を参照)
特開平5−301319号公報 特開平10−730号公報 特開平10−731号公報 特開平10−732号公報 特開平10−67067号公報 特開平5−301318号公報 特開平10−193494号公報 特開平6−15775号公報 特開平6−47870号公報 特開平8−76112号公報 特開平7−108643号公報 特開2001−296410号公報 特開2001−350004号公報 特開2002−79605号公報 特開2000−187207号公報 特開平10−332911号公報
上記方法は、指向性が強いというという問題を解決するためには有効な方法であるが、鏡面反射光である正反射率が低下するために輝度が低下する。そのため、高輝度化の要求を十分満たすことができないという問題がある。
近年、LCD用光源に組み込まれるレンズフィルムや光拡散フィルムの性能向上が進み、鏡面反射の強い反射板を用いても、上記の視野角が狭くなるという問題が改善され、高輝度化の要求と連動し、鏡面反射光、すなわち正反射光の強い金属薄膜よりなる光反射を利用した高輝度用の反射板の需要が高まってきている。しかしながら、前記のような汎用のフィルム表面に金属薄膜層を形成したのでは、反射光強度やその均一性等において市場の要求を十分に満たすことができておらず、この要求特性が改善された基材フィルムの開発が強く要望されている。
一方、一般に、鏡面反射フィルムの金属薄膜層は、金属原子を蒸着やスッパッタリング等のドライコーティング法により形成されるが、該方法で工業生産をした場合は、金属薄膜層にピンホール等の光学欠点の発生を避けることが困難となる。また、同一製品内での金属薄膜層の厚み変動にともない、得られた製品の取り位置により光線反射率に差が生ずることがある。また、一枚の反射フィルム内においても該光線反射率に差が生ずることがある。そのため、該特性の変動を抑制する方法が強く要望されていた。
また、近年、光線反射率のさらなる向上が求められており、該要求を満足させるとともに、前記の問題を改善するために、金属薄膜層の厚みを厚くする方法等が用いられている。しかしながら、金属薄膜層の厚みを厚くすることは、製造コストが増大することになる。一方、光線反射率を高める他の方法として、光線反射率の高い銀系の金属薄膜層を用いる方法があるが、銀系の金属薄膜層は高価である。
そのため、金属薄膜層の厚みを薄くしても、高い光線反射率を維持することができる技術の確立が市場で強く要望されている。
本発明の目的は、高度で均一な光線反射率が得られ、かつフィルムの静電気障害が抑制された金属薄膜層を反射面とする鏡面反射フィルム、特に、LCD用の面光源反射フィルムの基材として好適な積層ポリエステルフィルム及びそれを用いた鏡面反射フィルムを提供することにある。
前記の課題を解決することができる、本発明の積層ポリエステルフィルム及びそれを用いた鏡面反射フィルムは、以下の構成からなる。
すなわち、本発明における第1の発明は、表面層(A)/白色遮光層(B)の層構成を含む積層ポリエステルフィルムであって、前記の白色遮光層(B)はその内部に空洞又は無機粒子の少なくとも一方を含有してなるポリエステル組成物を含み、表面層(A)はその表面が三次元十点平均粗さ(SRz)が0.23μm以下であるポリエステルからなる平滑層であり、積層ポリエステルフィルムは光線透過率が20%以下であり、かついずれかの層に帯電防止剤を含み、少なくとも片面の表面固有抵抗値(25℃、65%RH)が1×106〜1×1013Ω/□であることを特徴とする積層ポリエステルフィルムである。
また、第2の発明は、表面層(A)/白色遮光層(B)の層構成を含む積層ポリエステルフィルムであって、前記の白色遮光層(B)はその内部に空洞又は無機粒子の少なくとも一方を含有してなるポリエステル組成物を含み、表面層(A)は粒子を含有しないか、または粒子の含有量が50ppm以下であるポリエステルからなる平滑層であり、積層ポリエステルフィルムは光線透過率が20%以下であり、かついずれかの層に帯電防止剤を含み、少なくとも片面の表面固有抵抗値(25℃、65%RH)が1×106〜1×1013Ω/□であることを特徴とする積層ポリエステルフィルムである。
第3の発明は、前記の白色遮光層(B)の内部に、ポリエステルと該ポリエステルに非相溶性の熱可塑性樹脂を含むポリエステル組成物を少なくとも一方向に延伸することにより発現させた空洞を含有することを特徴とする第1または第2の発明に記載の積層ポリエステルフィルムである。
第4の発明は、前記積層ポリエステルフィルムの見かけ密度が0.60〜1.35g/cm3であることを特徴とする第1または第2の発明に記載の積層ポリエステルフィルムである。
第5の発明は、前記の白色遮光層(B)の表面の三次元十点平均粗さ(SRz)が0.23μmを越え3.0μm以下であることを特徴とする第1または第2の発明に記載の積層ポリエステルフィルムである。
第6の発明は、前記の積層ポリエステルフィルムの総厚みが75〜300μmであり、表面層(A)の厚み5〜30μmであることを特徴とする第1または第2の発明に記載の積層ポリエステルフィルムである。
第7の発明は、前記の積層ポリエステルフィルムが、表面層(A)/白色遮光層(B)/表面層(C)の少なくとも3層の層構成からなり、前記の表面層(C)は樹脂と粒子を含む易滑層であり、かつ表面層(C)のSRzが、前記の表面層(A)のSRzよりも大きく2.0μm以下であることを特徴とする第1または2の発明に記載の積層ポリエステルフィルム。
第8の発明は、前記の積層ポリエステルフィルムが、表面層(A)/白色遮光層(B)/ポリエステル層(A′)/表面層(C)の層構成からなり、前記の表面層(C)は樹脂と粒子を含む塗布層(C′)であり、ポリエステル層(A′)は粒子を含有しないか、または粒子の含有量が100ppm以下であるポリエステルからなることを特徴とする第7の発明に記載の積層ポリエステルフィルムである。
第9の発明は、塗布層(C′)が、平均粒径20nm以上150nm未満の粒子a及び平均粒径150nm以上600nm以下の粒子bを含有することを特徴とする第8の発明に記載の積層ポリエステルフィルムである。
第10の発明は、前記の積層ポリエステルフィルムの総厚みが100〜300μmであり、表面層(A)の厚みが5〜30μmであり、表面層(C)の厚み、またはポリエステル層(A′)と塗布層(C′)との厚みの合計が5〜30μmであることを特徴とする第7または8の発明に記載の積層ポリエステルフィルムである。
第11の発明は、前記の積層ポリエステルフィルムを、無荷重の状態で、110℃で30分間加熱処理した後のカール値が1mm以下であることを特徴とする第1、2、7、8のいずれかの発明に記載の積層ポリエステルフィルムである。
第12の発明は、前記の積層ポリエステルフィルムを170℃で20分間加熱処理した時に、積層ポリエステルフィルムの表面層(A)とは反対面に析出する粒子の占有面積比が0.008μm2/μm2以下であることを特徴とする第1、2、7、8のいずれかの発明に記載の積層ポリエステルフィルムである。
第13の発明は、積層ポリエステルフィルムの表面層(A)と白色遮光層(B)、表面層(A)と表面層(C)、または表面層(A)と塗布層(C′)とを重ね合わせた際の静摩擦係数が0.60以下であることを特徴とする第1、2、7、8のいずれかの発明に記載の積層ポリエステルフィルムである。
第14の発明は、第1、2、7、8のいずれかの発明に記載の積層ポリエステルフィルムを、該フィルムの表面層(A)に金属薄膜層を積層した鏡面反射フィルムの基材として用い、光が照射される金属薄膜層を反射面として使用することを特徴とする鏡面反射フィルム用積層ポリエステルフィルムである。
第15の発明は、光が照射される金属薄膜層を反射面とする鏡面反射フィルムであって、第1、2、7、8のいずれかの発明に記載の積層ポリエステルフィルムの表面層(A)に金属薄膜層を積層してなることを特徴とする鏡面反射フィルムである。
本発明の積層ポリエステルフィルムは、平滑性に優れる表面層(A)に金属薄膜層よりなる光反射層を形成することにより、光線反射率を高くすることができるため、高輝度の鏡面反射フィルムを得ることができる。
また、本発明の積層ポリエステルフィルムは、白色遮光層(B)の光の反射機能が利用できるので、表面層(A)に金属薄膜層を設けた際に、金属薄膜層の厚み変動があっても鏡面反射光の不均一性を抑制できる。また、金属薄膜層の厚み薄くしても高い反射光が得られるので、経済的にも有利である。さらに、金属薄膜層にピンホールがあっても、ピンホールを透過した光が白色遮光層(B)により反射されるため、該ピンホール部分での反射光の低下を防ぐこともできる。
また、本発明の積層ポリエステルフィルムは、帯電防止性に優れているので、該積層ポリエステルフィルムの製造時や加工時における静電気障害による欠点の発生が抑制されるという利点を有する。
また、本発明においては、上記白色遮光層(B)の内部に空洞を含有させた構成とすることにより、空洞による遮光性付与のほかに、積層ポリエステルフィルムを軽量化することもできる。
また、本発明の積層ポリエステルフィルムは、平滑な表面層(A)の反対面の白色遮光層(B)の表面の平均表面粗さを、平滑な表面層(A)よりも大きくしているので、フィルム製造時や加工時のハンドリング性(滑り性、巻き性、耐擦り傷性)に優れている。そのため、フィルムの製造工程や金属薄膜層を形成する加工工程において、フィルムの取り扱い性が良好で、かつ、これらの工程において、表面層(A)の表面の耐擦り傷性が向上し、かつ平坦性を維持できるので、表面層(A)に金属薄膜層を形成した場合の光線反射率の低下を少なくすることができる。
また、本発明の積層ポリエステルフィルムの好ましい実施形態においては、加熱によるカールの発生が抑制されており、取り扱い性にも優れている。
また、本発明の積層ポリエステルフィルムの他の好ましい実施形態においては、積層ポリエステルフィルムを加熱処理した時のポリエステルに含まれる環状三量体等の低重合オリゴマーやモノマーからなる低分子量物の析出を抑制しているため、該積層フィルムに金属薄膜層を積層する加工やその前後に実施されるアンダーコートやオーバーコートの加工時、またこれらの加工の前後における保管時における表面層(A)の表面や、フィルム巻取り時の金属薄膜層の表面への他面からの析出粒子の転写による汚染が軽減されるため、該表面汚染により引き起こされる金属薄膜層の欠点の発生や光線反射率の低下が低減される。
(積層ポリエステルフィルム)
本発明の積層ポリエステルフィルムは、表面層(A)/白色遮光層(B)の層構成を含む積層ポリエステルフィルムであって、前記の白色遮光層(B)はその内部に空洞又は無機粒子の少なくとも一方を含有してなるポリエステル組成物を含み、表面層(A)はその表面が三次元十点平均粗さ(SRz)が0.23μm以下であるポリエステルからなる平滑層であり、積層ポリエステルフィルムは、光線透過率が20%以下であり、いずれかの層に帯電防止剤を含み、かつ少なくとも片面の25℃で65%RHにおける表面固有抵抗値が1×106〜1×1013Ω/□であることを特徴とする。
また、本発明の積層ポリエステルフィルムの表面層(A)は、組成物の観点から表現すると、粒子を含有しないか、または粒子の含有量が50ppm以下であるポリエステルからなる平滑層でもある。
本発明の積層ポリエステルフィルムの代表的な層構成を図1に示す。また、他の好適な実施形態として、表面層A(平滑層)/白色遮光層B/表面層C(易滑性と帯電防止性を有する層)からなる積層ポリエステルフィルムの層構成を図2に示す。さらに、表面層A(平滑層)/白色遮光層B/ポリエステル層A′/塗布層C′(易滑性と帯電防止性を有する層)からなる積層ポリエステルフィルムの層構成を図3に示す。
本発明の積層ポリエステルフィルムは、表面層A(平滑層)/白色遮光層Bの2層から構成される場合は、積層ポリエステルフィルムの厚みが75〜300μmであることが好ましい。また、表面層A(平滑層)/白色遮光層B/表面層(B)、あるいは表面層A(平滑層)/白色遮光層B/ポリエステル層A′/塗布層C′(易滑層)のように、少なくとも3層以上の層構成からなる場合には、積層ポリエステルフィルムの厚みが100〜300μmであることが好ましい。
積層ポリエステルフィルムの厚みの下限は、150μmがより好ましく、170μmが特に好ましい。一方、厚みの上限は、250μmがより好ましい。積層フィルムの厚みが75μm未満(2層構成)または100μm未満(少なくとも3層構成)では、フィルムの腰が弱くなり、例えば、光反射板としてLCDのような最終製品に組み込む場合、ハンドリング性が低下しやすくなる。一方、積層フィルムの厚みが300μmを超える場合は、生産性の点から経済的に不利になる。なお、現在、一般的にLCDに用いられている反射板に用いる基材の厚みは188μmである。
本発明の積層ポリエステルフィルムの表面層(A)及び白色遮光層(B)を構成するポリエステルは、テレフタル酸、イソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸などから選択される少なくとも1種の芳香族ジカルボン酸又はそのエステルとエチレングリコール、ジエチレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、ネオペンチルグリコールなどから選択される少なくとも1種のグリコールとを重縮合させて製造されるポリエステルである。これらのポリエステルは芳香族ジカルボン酸とグリコールとを直接反応させる直重法のほか、芳香族ジカルボン酸のアルキルエステルとグリコールとをエステル交換反応させた後、重縮合させるエステル交換法か、あるいは芳香族ジカルボン酸のジグリコールエステルを重縮合させるなどの方法によって製造することができる。また、表面層(C)がポリエステルを含む場合、あるいはポリエステル層(A′)を構成するポリエステルについても同様である。
前記のポリエステルの代表例として、ポリエチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレートあるいはポリエチレン−2,6−ナフタレートが挙げられる。前記のポリエステルはホモポリマーであってもよく、第三成分を共重合したものであってもよい。これらのポリエステルの中でも、エチレンテレフタレート単位、トリメチレンテレフタレート単位、あるいはエチレン−2,6−ナフタレート単位が70モル%以上、好ましくは80モル%以上、さらに好ましくは90モル%以上であるポリエステルが好ましい。上記の各層を構成するポリエステルは、同種であっても、異種であっても構わないが、カールの抑制及び経済性の点より同種が好ましい。
また、本発明の積層ポリエステルフィルムは、機械的強度や熱寸法安定性の点から、二軸配向ポリエステルフィルムであることが好ましい。
(白色遮光層B)
従来、金属薄膜層/基材フィルムの層構成からなり、光が照射される金属薄膜層を反射面とする鏡面反射フィルムにおいては、光が金属薄膜層で反射されるため、基材フィルムとしては透明フィルムが一般に用いられてきた。しかしながら、金属薄膜層の厚み変動により、金属薄膜層の厚みの薄い部分で光が透過し、鏡面反射フィルムの反射率が低下することを本発明者らは新たに見出した。これが本発明を完成させるきっかけとなった、重要な技術背景である。
本発明において、白色遮光層(B)は表面層(A)に金属薄膜層を設けた際に、金属薄膜層に厚みの変動があったとしても、いずれの場所でも反射率の変動が少なく、かつ高い反射率を維持するために設けられるものである。また、本発明の鏡面反射フィルムは、基材フィルムに遮光性を付与することにより、金属薄膜層の厚みを薄くしても、金属薄膜層を透過し漏洩した光線を反射光として戻すことができる。すなわち、本願発明の鏡面反射フィルムにおいて、白色遮光層(B)は、金属薄膜層の厚みの変動があっても、または金属薄膜層の厚みが薄くても、反射率の変動または低下を抑制する機能を有する層である。
白色遮光層(B)は、ポリエステルに空洞又は無機粒子の少なくとも一方を含有してなる樹脂組成物から構成される層であり、積層ポリエステルフィルムでの光線透過率を20%以下とするために不可欠な層である。
本発明の積層ポリエステルフィルムは、遮光性の指標の1つである光線透過率が20%以下であることが重要であり、好ましくは15%以下、特に好ましくは10%以下である。一方、遮光性の付与による反射率の変動または低下を抑制する効果が飽和する点と力学的特性や経済性の点とのバランスから、積層ポリエステルフィルムの光線透過率の下限は0.5%が好ましく、実用上は3%で十分である。
積層ポリエステルフィルムの光線透過率が20%を超える、すなわち遮光性に劣る場合は、白色遮光層(B)における金属薄膜層を透過した光の反射効果が低下しやすくなるため、金属薄膜層の厚みが変動した場合、または金属薄膜層の厚みを薄くした場合に、白色遮光層(B)により反射率を補完する機能が低下する。その場合、金属薄膜層の厚みを厚くしないと、高い反射光が得られなくなり、経済的にも不利になる。
また、光線透過率が20%を超える場合は、本発明の積層ポリエステルフィルムに金属薄膜層を形成させた光反射フィルムとして用いる場合、金属薄膜層の成膜時に避けることが困難な金属薄膜層に生じるピンホールから透過した光を、白色遮光層(B)で遮断して再びピンホールから戻すことが困難になる。
積層ポリエステルフィルムの光線透過率を20%以下とするためには、白色遮光層(B)の空洞含有率や無機粒子の含有量を、下記で記載した範囲とすることが好ましい。また、光線透過率は厚み依存性がある。すなわち、白色遮光層(B)が同一の樹脂組成物であっても、白色遮光層(B)の厚みが薄くなると光線透過率が高くなり、遮光性が低下する、一方、白色遮光層(B)の厚みが厚くなると、光線透過率は低下し遮光性が向上する。
本発明の積層ポリエステルフィルムは、いずれかの層に帯電防止剤を含み、少なくとも片面の表面固有抵抗値(25℃、65%RH)が1×106〜1×1013Ω/□である。フィルムの表面固有抵抗値が低いことで、ロール状の長尺のフィルムを巻き出す際や、積層フィルムに金属薄膜層を設ける際などに、静電気による異物の付着が防止できるため、金属薄膜層のピンホール形成等の光学欠点の発生を抑制すことができる。
積層ポリエステルフィルムの表面固有抵抗値(25℃、65%RH)を1×1013Ω/□以下とするためには、積層ポリエステルフィルムのいずれかの層に帯電防止剤を含有させる。いずれかの層に帯電防止剤を含有させる方法としては、塗布法または練り込み法が挙げられる。本願発明では、コストパフォーマンスの点から塗布法が好ましい。
帯電防止剤を含有する帯電防止層は、積層フィルムの平滑層(A)の表面に形成してもよいし、その反対面あるいは、両面に形成してもよい。なかでも、前記の塗布層(C′)に帯電防止剤を含有させ、塗布層(C′)に帯電防止性を付与する方法が最も好ましい実施態様である。
積層ポリエステルフィルムの少なくとも片面の表面固有抵抗値(25℃、65%RH)が1×106〜1×1013Ω/□となる帯電防止性を有するものであれば、帯電防止剤は特に限定されない。しかしながら、帯電防止剤として、広く用いられる低分子量のアニオン系帯電防止剤を用いると、積層ポリエステルフィルムをロール状に巻いた状態で、帯電防止剤が積層フィルムの反対面に転移し、例えば、該転写面に金属薄膜層を形成した場合に、該金属薄膜層の密着性が低下する等の悪影響が引き起こされる可能性がある。このような帯電防止剤の転移を防止するには、高分子量アニオン性化合物が好ましく、また、カチオン系帯電防止剤の場合も、高分子量カチオン性化合物を用いることが望ましい。
このような特性を満たす帯電防止剤としては、スルホン酸塩基または燐酸塩基を分子内に少なくとも1種有する高分子系帯電防止剤が好ましい。この高分子型帯電防止剤の特徴は、親水性の高いスルホン酸成分や燐酸成分を多数有する構造にある。これらの高分子系帯電防止剤は単独で用いてもよいし、二種以上を併用してもかまわない。
分子内にスルホン酸塩基成分を含有する樹脂としては、ポリスチレンスルホン酸のナトリウム塩、カリウム塩、リチウム塩、アンモニウム塩、ホスホニウム塩などのホモポリマー、アクリル酸エステルまたはメタクリル酸エステルなどのアクリル系単量体とスチレンスルホン酸単量体との共重合物、アクリルアミドメチルプロパンスルホン酸と不飽和単量体の共重合体などが挙げられる。本発明において、スルホン酸塩は金属塩とアミン塩の混合物でも可能である。
分子内に燐酸塩基を含有する樹脂としては、燐酸基を含有する不飽和単量体である各種のホスマー(ユニケミカル製)を重合または共重合した樹脂を挙げることができる。
前記帯電防止剤の重量平均分子量は、1千〜100万の範囲であることが好ましく、より好ましくは5千〜100万である。重量平均分子量が1千未満では前記した帯電防止剤の転移の増加に繋がる。一方、100万を超えると該転移の抑制に関しては好ましいが、変性樹脂との均一混合が困難になり、塗膜均一性が低下しやすくなる。
また、4級アンモニウム塩基を有する化合物が挙げられる。これは、分子中の主鎖や側鎖に、4級アンモニウム塩基を含む構成要素を持つ化合物を指す。そのような構成要素としては例えば、ピロリジウム環、アルキルアミンの4級化物、さらにこれらをアクリル酸やメタクリル酸と共重合したもの、N−アルキルアミノアクリルアミドの4級化物、ビニルベンジルトリメチルアンモニウム塩、2−ヒドロキシ3−メタクリルオキシプロピルトリメチルアンモニウム塩等を挙げることができる。さらに、これらを組み合わせて、あるいは他の樹脂と共重合させても構わない。また、これらの4級アンモニウム塩の対イオンとなるアニオンとしては例えば、ハロゲン、アルキルサルフェート、アルキルスルホネート、硝酸等のイオンが挙げられる。該4級アンモニウム塩基を有する化合物は高分子化合物であることが望ましい。
一方、上記帯電防止剤層の表面固有抵抗値を1×106Ω/□未満にしても、実用上、効果に差異が見られない。
上記のように帯電防止剤の転移が少ないという特徴を有するが、さらには、製膜や加工工程でロールに巻き上げる際にブロキングが無いことが好ましい。
ブロキングを防ぐ目的で、帯電防止層に帯電防止剤の他に、ポリオレフィン系樹脂および/またはフッ素系樹脂を配合しても良い。
さらに帯電防止層中には、必要に応じて上記以外の水溶性または水分散性のバインダー樹脂の1種もしくは2種以上を併用し塗布性の向上を図ってもよい。かかるバインダー樹脂としては、例えば、ポリエステル、ポリウレタン、アクリル樹脂、ビニル樹脂、エポキシ樹脂、アミド樹脂、ポリビニルアルコール等が挙げられる。これらは、それぞれの骨格構造が共重合等により実質的に複合構造を有していてもよい。複合構造を持つバインダー樹脂としては、例えば、アクリル樹脂グラフトポリエステル、アクリル樹脂グラフトポリウレタン、ビニル樹脂グラフトポリエステル、ビニル樹脂グラフトポリウレタン等が挙げられる。さらに、帯電防止層に架橋反応性化合物を含んでいてもよい。架橋反応性化合物は、帯電防止層を構成する成分化合物の官能基と架橋反応することで、転移性の抑制や耐久性の向上等が可能となる。
帯電防止層に用いるバインダー樹脂や架橋剤としては、後述する塗布層(C′)の構成成分として例示したものを使用することができる。
積層ポリエステルフィルムの層厚みは、75〜300μm、好ましくは100〜300μmの範囲で、市場で使用する際の用途、規格により一般的に決められる。一方、表面層(A)の厚みは、白色遮光層(B)の内部に存在する空洞や粒子が、表面層(A)の平滑性に悪影響を与えない範囲で、例えば5〜30μmが設定される。また、表面層(A)の厚みを厚くしすぎても、表面平滑性の効果は飽和する。もし、表面層(A)の厚みを、30μmを超えるような厚みにする必要がある場合には、白色遮光層(B)の厚みを薄くしても遮光性を維持できるように、白色遮光層(B)を設計することが重要となる。
具体的には、白色遮光層(B)の空洞含有率や無機粒子の含有量を下記の範囲内で高めにすることが好ましい。これでも不十分な場合には、例えば、空洞発現剤となるポリエステルに非相溶性の樹脂中にも粒子を含有させる方法、白色遮光層(B)を積層構造として、無機粒子を多量に含有する厚みの薄い層を積層する方法、カーボンブラックや青色顔料などの白色以外の着色顔料を併用する方法、などの厚みが薄くても高い隠蔽性を維持できる特別な方法を用いてもよい。
また、白色は可視光の吸収がないため、最も光を反射させることができる。すなわち、白色光は、金属薄膜層を透過した漏洩光線を最も効率よく光線を反射させることができる。そのため、本発明の積層ポリエステルフィルムは、表面層(A)側より、JIS Z−8722に準拠して測定した白色度を75以上とすることが好ましく、より好ましくは80以上とする。白色度が75未満では、上記の金属薄膜層を透過した光を白色遮光層(B)で反射させる補完効果が低下しやすくなる。
積層ポリエステルフィルムの白色度を75以上とするためには、下記で述べた遮光性を高める手段のほかに、蛍光増白剤を併用することも有効である。遮光性を高める手段としては、(1)白色遮光層(B)の空洞含有率を10〜50体積%とする方法、(2)白色遮光層(B)に白色の無機粒子を、白色遮光層(B)の樹脂組成物に対し、1〜25質量%含有させる方法、(3)両者の併用などが挙げられる。
遮光性を高めるためには、白色遮光層(B)の内部に微細空洞を多数含有させる方法、または白色の無機粒子を含有させる方法が有効である。微細空洞を多数含有させる方法は、遮光性を付与するとともに、積層ポリエステルフィルムを軽量化できるという利点がある。また、微細空洞と白色の無機粒子とを併用することにより、さらに遮光性を高めることができる。白色遮光層(B)としては、遮光性と軽量性の点から、微細空洞含有ポリエステル層、または白色の無機粒子と微細空洞を含有するポリエステル層のいずれかの実施形態がより好ましい。
白色の無機粒子としては、酸化チタン、炭酸カルシウム、硫酸バリウム及びこれらの複合体よりなる白色顔料が好ましい。これらの白色粒子は、白色遮光層(B)の樹脂組成物に対し、1〜25質量%含有させることが好ましい。遮光性をさらに高めるために、無機粒子の含有量を増やしすぎると、フィルム製造時に破断が多発し、工業レベルで安定した生産が行えなくなる場合がある。
白色遮光層(B)の内部に空洞を含有させる方法としては、(1)発泡剤を含有させ、押出時や製膜時の熱によって発泡、あるいは化学的分解により発泡させる方法、(2)押出時又は押出後に炭酸ガスなどの気体又は気化可能な物質を添加し、発泡させる方法、(3)ポリエステルと該ポリエステルに非相溶性の熱可塑性樹脂を添加し、溶融押出後、1軸又は2軸に延伸する方法、(4)有機もしくは無機の微粒子を添加して溶融押出後、1軸又は2軸に延伸する方法などを挙げることができる。
前記の空洞を含有させる方法の中で、前記(3)の方法、すなわちポリエステルと該ポリエステルに非相溶性の熱可塑性樹脂を添加し、溶融押出後、1軸又は2軸に延伸する方法が好ましい。前記のポリエステルに非相溶の熱可塑性樹脂としては、何ら制限されるものではないが、ポリプロピレンやポリメチルペンテンに代表されるポリオレフィン系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリアクリル系樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリスルホン系樹脂、セルロース系樹脂、ポリフェニレンエーテル系樹脂などが例示される。
これらの、ポリエステルに非相溶の熱可塑性樹脂は単独で用いてもよく、また複数の熱可塑性樹脂を組合せて用いてもよい。これらポリエステルに非相溶性の熱可塑性樹脂の含有量は、空洞含有ポリエステル層(白色遮光層B)を形成する樹脂に対し3〜20質量%が好ましく、さらに好ましくは5〜15質量%である。そして、ポリエステルに非相溶性の熱可塑性樹脂の含有量が空洞含有ポリエステル層を形成する樹脂に対し3質量%未満では、フィルム内部に形成される空洞の含有量が少なくなるため、遮光性(隠蔽性)が低下する。そのため、表面層(A)に金属薄膜層を設けた際に、金属薄膜層の厚み変動による反射率のバラツキを低減する効果が不十分となりやすい。さらに、軽量性の特徴も不十分となる。一方、非相溶性の熱可塑性樹脂の含有量が、空洞含有ポリエステル層(白色遮光層B)を形成する樹脂に対し20質量%を超える場合には、フィルム製造工程での破断の頻度が増加する傾向がある。本発明の積層ポリエステルフィルムの白色遮光層(B)における空洞含有率は10〜50体積%が好ましく、より好ましくは20〜40体積%である。
前述のごとく、本発明で用いる白色遮光層(B)では、上記のポリエステルに非相溶の熱可塑性樹脂を配合し空洞を形成する方法と、白色粒子を配合する方法を併用する方法が最も好ましい。
本発明の積層ポリエステルフィルムは、見かけ密度が0.60〜1.35g/cm3であることが好ましい。見かけ密度の下限は、取り扱い性の点から、0.65g/cm3がより好ましく、特に好ましくは0.70g/cm3である。一方、見かけ密度の上限は、軽量化の点から、1.30g/cm3がより好ましく、特に好ましくは1.20g/cm3である。見かけ密度が0.60g/cm3未満の場合、空洞含有率が高すぎるため、積層ポリエステルフィルムの強度が低下し、腰も弱くなり取り扱い性が悪化するなど、ポリエステルフィルムとしての特徴が損なわれる傾向がある。一方、見かけ密度が1.35g/cm3を超える場合、フィルム内部の空洞の含有率が低すぎて、軽量化の効果が不十分となる。
また、本発明においては、前記の白色遮光層(B)中の空洞の含有率、ポリエステルに非相溶性の熱可塑性樹脂の種類や含有量、及び無機粒子の種類や含有量は、上記の積層ポリエステルフィルムの光線透過率や見かけ密度等の市場要求により、前記に開示した範囲内で適宜設定すればよい。
本発明の積層ポリエステルフィルムにおいて、上記の白色遮光層(B)に空洞を含有させる場合は、ポリエステルに非相溶な熱可塑性樹脂に起因する空洞を含有しない白色ポリエステルフィルムや、通常の透明ポリエステルフィルムに比べ、巻き癖カールの発生が大きい。フィルムの厚みが厚い場合、特にカールが発生しやすいため、カールを抑制する方法を併用してフィルムを製造することが好ましい。
なぜなら、フィルムの厚みが厚い二軸延伸フィルムの製造においては、延伸前の未延伸フィルムが非常に厚くなる。そのため、冷却ロールによるフィルムの冷却効率が冷却面とその反対面で異なり、結晶化度などの構造がフィルムの裏表で異なるものになってしまう。さらに、内部に微細な空洞を含有する空洞含有ポリエステル系フィルムであるため、その空洞のサイズ、形状、体積分率がフィルムの厚み方向にわたって容易に変化するため、フィルム表裏の物性や構造を同一とするようなフィルムの製造が極めて困難になる。
本発明においては、積層ポリエステルフィルムを無荷重の状態で、110℃で30分加熱処理した後のカール値を1mm以下とすることが好ましい。カール値は0.9mm以下がより好ましく、0.8mm以下がさらに好ましい。カール値が1mmを超える場合は、例えば、光反射板等として最終製品に組み込む場合の無緊張下での作業時のハンドリング性が悪化するので好ましくない。
カールを抑制する手法としては、(1)空洞の体積分率を小さくし、且つ各々の空洞サイズを小さく抑制しすることで、内部歪に耐えてカールの発生を抑制する方法、(2)フィルム厚み方向に空洞に分布を持たせる方法、(3)押し出し時の冷却差によるフィルム厚み方向の結晶化度の差に始まる各工程で付与されるフィルム表裏の構造差に起因するカールを制御するために、積極的にフィルム表裏の構造差を発生させ、必然的な構造差と補完しあってカール値をゼロに近づける方法、などが好適である。
具体的には、縦延伸や横延伸などの延伸工程及び熱固定工程で、フィルム表裏の温度又は熱量を異なる値とすることによって、フィルム表裏の配向度を独立して制御し、フィルム表裏の構造や物性がバランスする条件を採用することにより、ゼロカールの製膜が実現する。
また、カールが全幅にわたって低い状態で安定的に生産されるための基本的要件として、厚み斑の少ない延伸処方により、フィルム厚み方向に変化の少ない空洞を形成させることも重要である。
より具体的には、製膜直後の縦方向のカールについては、縦延伸時のフィルム裏表の構造差を制御し、横方向のカールは横延伸及び熱固定時にフィルム裏表の構造差を制御することで、逆方向の内部歪を作りこみ、必然的に発生するフィルム表裏の構造差による内部歪とバランスさせて、カールを抑制する方法が好ましい。
また、カールを抑制する他の方法として、該積層ポリエステルフィルムを少なくとも3層以上の構成にし、表面層(A)の厚みおよび組成を、表面層(C)あるいはポリエステル層(A′)の厚みおよび組成を同等にする方法も有効である。
(表面層A)
本発明において、表面層(A)は、本発明の積層ポリエステルフィルムを鏡面反射フィルムの基材として使用する場合に、反射面となる金属薄膜層を形成させる層である。この表面層(A)は平滑性に優れており、金属薄膜層を形成させた際の反射率を高める機能を有する層である。
また、本発明の積層ポリエステルフィルムにおいて、表面層(A)の厚みは、5〜30μmが好ましい。表面層(A)の厚みの上限は、25μmがさらに好ましく、特に好ましくは20μmである。一方、表面層(A)の厚みの下限は、7μmがさらに好ましく、特に好ましくは10μmである。表面層(A)の厚みが5μm未満の場合は、白色遮光層(B)に含有されている微細空洞や粒子が、表面層(A)の表面平滑性に悪影響を与える場合があるので好ましくない。一方、表面層(A)の厚みが30μmを超える場合には、遮光性を維持しながら白色遮光層(B)の厚みを薄くせざるをえず、白色遮光層(B)の設計を前記のように薄物高隠蔽の特別な処方に変更せざるを得ない場合があり、操作が煩雑となる。
前記表面層(A)においては、三次元十点平均粗さ(SRz)を0.23μm以下とすることが重要である。SRzは0.21μm以下が好ましく、0.19μm以下がさらに好ましく、特に好ましくは0.16μm以下である。
金属薄膜層は表面の平滑度が高い程、光の反射率が向上する。したがって、該表面層(A)はできる限り表面平滑性に優れていることが好ましい。三次元十点平均粗さ(SRz)が0.23μmを超える場合には、金属薄膜層を形成した時の金属薄膜層表面の光線反射率、特に正反射率が低下する。例えば、このような正反射率の劣る鏡面反射フィルムをLCD用の面光源反射板として使用した場合、ディスプレイの輝度が低下する。表面平滑性の指標は、一般的に三次元中心面平均表面粗さ(SRa)が用いられることが多い。しかしながら、同じSRaを有する表面であっても、高い突起が少数存在する場合や低い突起が多数存在する場合など表面形態が全く異なる場合がある。本発明においては、表面突起の中でも高い突起の方が、光線反射率に及ぼす影響が大きいことを見出した。本発明では、前記理由から、表面平滑性の指標として三次元十点平均粗さ(SRz)を用いた。
表面層(A)のSRzの下限は、光線反射率の点から、可能な限りゼロに近いことが好ましい。しかしながら、極限レベルの表面平滑化は極めて高度な技術を要すること、またそれを検出するための測定器の測定精度に加え、実用上の光線反射率や工業レベルでの安定生産性を考慮すると、SRzの下限は0.05μmで十分である。
本発明においては、上記特性を付与する方法は限定されないが、表面層(A)は、粒子を実質的に含まないことが好ましい実施態様である。「粒子が実質的に含有されていない」とは、例えば無機粒子の場合、原子吸光分析法や発光分析法など予め他の分析法での分析結果から作成した検量線を用いて、蛍光X線分析法で粒子に起因する元素を定量した際に50ppm以下、好ましくは10ppm以下、特に好ましくは検出限界以下となる含有量を意味する。これは、積極的に粒子をフィルム中に含有させなくても、原料ポリマーやフィルム製造時に微量の付着物、汚れ、外来異物が混入する場合があるためである。
さらに、本発明において、表面層(A)の表面に存在する、高さが1μm以上で最大径が20μm以上の突起数が5個/m2以下であることが好ましい。4個/m2以下であることがより好ましく、3個/m2以下であることがさらに好ましい。表面層(A)の表面に存在する高さが1μm以上で最大径が20μm以上の突起は、表面層(A)に金属薄膜層を形成させた際に、金属薄膜層に発生するピンホールの原因の1つとなる。したがって、前記突起数が5個/m2を超えた場合、表面層(A)に金属薄膜層を形成させる際に、金属薄膜層にピンホールが発生する頻度が増加し、このピンホールが存在する箇所で反射光が低下し、全体の反射光が不均一になる場合がある。
前記突起数を5個/m2以下とするためには、表面層(A)を形成するポリエステル中に粒子を積極的に含有させないことが好ましい。さらに、金属薄膜層のピンホールの原因となる異物を可能な限り低減させることが好ましい。表面層(A)の内部に混入する異物は、原料ポリエステル中の触媒(重縮合反応触媒、エステル交換反応触媒)、添加剤(アルカリ金属塩・アルカリ土類金属塩のような静電密着改良剤や、リン酸又はリン酸塩のような熱安定剤など)の凝集物、及びこれらの金属還元物に起因するもの、外部から混入した汚染物、高融点有機物等に分類される。また、フィルム製造時に表面層(A)に付着する埃も金属薄膜層のピンホールの一因として挙げられる。
本発明において用いられるポリエステルは、ジカルボン酸とグリコールをエステル化反応させ、次いで重縮合反応を行う重縮合法、あるいはジカルボン酸塩とグリコールをエステル交換反応させ、次いで重縮合反応を行うエステル交換法など、従来公知の方法によって製造される。
このポリエステルには、重縮合触媒、さらに場合によってはエステル交換反応触媒、及びリン酸又はリン酸塩などの熱安定剤が必須成分として用いられる。また、これら以外に、アルカリ金属塩やアルカリ土類金属塩を適量含有させ、これらの金属塩とリン原子のモル比を制御することで、シート状溶融ポリエステルを回転冷却ロール上に静電印加法により密着固化させ、厚みの均一な未延伸シートを安定して得ることができる。
ポリエステルの代表的な重縮合触媒としては、三酸化アンチモン、アンチモングリコラートなどのSb系触媒、Ge系触媒、Ti系触媒、Al系触媒などがある。これらのうち、透明性、熱安定性及び価格の観点から、フィルム用ポリエステルの重縮合触媒としては、一般に、三酸化アンチモン(Sb23)が使用されている。
特に、重縮合触媒としてSb23を使用した場合、重合時及び/又は未延伸ポリエステルフィルムの製造時に、Sb23が金属Sbに還元され、フィルム表面に凝集物として析出しやすくなる。これが上記(A)の異物に該当するため、重縮合時間を著しく遅くしない範囲で、できるだけSb23の含有量を低減させることが好ましい。上記のような異形部の数を上記範囲内とするためには、ポリエステル中のSb23の含有量を、金属Sb換算で50〜250ppm、好ましくは60〜200ppm、さらに好ましくは70〜150ppmとすることが推奨される。
また、重縮合完了後、ポリエステルを孔径が7μm以下(初期濾過効率95%)のステンレススチール焼結体等の濾材よりなるフィルターで濾過処理し、あるいはペレット化のために押出機から溶融ポリエステルのストランドを冷却水中に押出す際に、予め冷却水を濾過処理(フィルター孔径:1μm以下)し、且つ、この工程を密閉した部屋で行い、ヘパフィルターで環境中に存在する1μm以上の異物を低減させておくことが好ましい。
さらに、後述するポリエステルの未延伸シート製造の際にも、該ポリエステルが溶融している段階で、該樹脂中に含まれる異物を除去するために精密濾過を行う。精密濾過に用いられる濾材は特に限定はされないが、ステンレススチール焼結体の濾材が、ポリエステルの重合触媒が還元されて生成する金属Sbなどや、重合からペレット化までの段階で混入するSi、Ti、Ge、Cuを主成分とする凝集物及び高融点有機物の除去性能に優れることから好適である。濾材の濾過可能な粒子サイズは15μm以下(初期濾過効率95%)であることが好ましい。15μmを超えるものでは、除去の必要がある20μm以上のサイズの粒子の除去が不十分となる場合がある。上記のような濾過性能を有する濾材を使用して溶融樹脂の精密濾過を行うことにより生産性が低下する場合があるが、光学欠陥の少ないフィルム積層体を得るには極めて好適である。
フィルム製造時に表面層(A)に付着する埃については、ヘパフィルターを用いで環境中に存在する1μm以上の異物を低減させたクリーンな環境下でフィルムを製造することにより、埃の付着低減することができる。
(表面層C)
本発明において、表面層(C)は積層ポリエステルフィルムにハンドリング性(滑り性、巻き性、耐擦り傷性など)を付与する機能を有する層である。また、本発明の積層ポリエステルフィルムが、表面層(A)/白色遮光層(B)の2層構造からなる場合には、白色遮光層(B)が、表面層(C)を兼ねる。この場合、白色遮光層(B)の表面を表面Cと記載する場合がある。
本発明の積層ポリエステルフィルムが、表面層(A)/白色遮光層(B)/表面層(C)を含む3層以上の層から構成される場合、表面層(C)の厚みは、ハンドリング性付与という機能からは特に限定はなく、例えば、5〜30μmとする。しかしながら、表面層(A)と同様、表面層(C)の厚みを厚くした場合も、遮光性を維持しながら白色遮光層(B)の厚みを薄くせざるをえず、白色遮光層(B)の設計を前記のように薄物高隠蔽の処方に変更せざるを得ない場合があり、操作が煩雑となる。
本発明において、表面Cまたは表面層(C)の三次元十点平均粗さ(SRz)は、表面層(A)のSRzよりも大きく、かつ2.0μm以下とすることが好ましい。表面層(C)のSRzの下限は、0.25μmがより好ましく、特に好ましくは0.27μmである。表面Cまたは表面層(C)のSRzが、表面層(A)のSRzよりも大きくても、表面Cまたは表面層(C)のSRzが0.23μm以下の場合には、積層ポリエステルフィルムを巻き取る際に、表面層(A)と、表面Cまたは表面層(C)との間の滑り性が悪化し、例えば、積層ポリエステルフィルムの製造工程や金属薄膜層を形成する等の積層ポリエステルフィルムの加工工程において、該積層ポリエステルフィルムのロールへの巻き取り性が悪化しやすくなる。また、フィルム製造工程やフィルム加工工程で、平滑な表面層(A)表面に傷が発生し、表面層(A)に金属薄膜層を形成した場合の金属薄膜層表面の光反射特性が低下しやすくなる。
一方、表面Cまたは表面層(C)のSRzの上限は、1.8μmがより好ましく、特に好ましくは1.6μmである。表面Cまたは表面層(C)のSRzが2.0μmを越える場合には、ハンドリング性の改善効果が飽和するとともに、下記の(1)または(2)のような現象が生じやすくなり、表面層(A)の上に金属薄膜層を形成した場合、金属薄膜層表面の反射特性に悪影響がでる場合がある。
(1)表面Cまたは表面層(C)の高い突起が削れて脱落し、その脱落物が積層ポリエステルフィルムをロール状に巻き取る際に、表面Cまたは表面層(C)に接触する表面層(A)に転写する。
(2)積層ポリエステルフィルムをロール状に巻取る際に、表面Cまたは表面層(C)の粗大突起が表面層(A)に押し跡をつけ、表面層(A)の表面が荒れる(以下、刻印性と略す)。
本発明の積層ポリエステルフィルムが、表面層(A)/白色遮光層(B)の2層から構成される場合、白色遮光層(B)の表面CのSRzを制御する方法として、下記の方法が好適である。例えば、白色遮光層(B)中に、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、酸化チタン、シリカ、ゼオライトなどの無機粒子を添加する方法、アクリルやスチレン、メラミンなどの架橋有機粒子を含有させる方法、これらの粒子を複数組み合わせる方法が挙げられる。この方法は、表面CのSRzを制御が容易で、かつ経済的な方法として好ましく用いられる。
また、本発明において、白色遮光層(B)として空洞含有フィルムを用いる場合、空洞発現剤として添加する熱可塑性樹脂がポリエステル樹脂中に粒子状に分散して表面凹凸の形成にも寄与することを利用して、空洞発現剤の添加量や溶融粘度などを適宜調節することによってもSRzを制御することが可能である。
また、特に大きなSRzを必要とする場合には、製造されたポリエステルフィルムの片面にマット加工などの物理的表面処理を施すことによっても、表面凹凸を制御することが可能である。なお、白色遮光層(B)の表面Cにマット加工を行う際には、フィルムの平面性が失われたり、微小異物が付着したりしないような十分な配慮が必要である。
また、表面層(C)のSRzを制御する方法としては、表面層(C)を形成するポリエステルに表面突起を形成する粒子を含有させる方法が好ましい。表面層(C)が単層の場合、表面層(C)を構成するポリエステルに粒子を0.05〜5質量%含有させることが好ましい。
本発明においては、積層ポリエステルフィルムの表面層(A)と、表面Cまたは表面層(C)との静摩擦係数が0.60以下であることが好ましく、より好ましくは0.55以下で、特に好ましくは0.50以下である。なお、前記の積層ポリエステルフィルムが、表面層(A)/白色遮光層(B)/ポリエステル層(A′)/塗布層(C′)の層構成からなる場合には、前記静摩擦係数は表面層(A)と塗布層(C′)との静摩擦係数を意味する。
前記の静摩擦係数が0.60を超える場合は、白色遮光層(B)の表面Cまたは表面層(C)の三次元十点平均粗さ(SRz)が0.23μm以下の場合と同様の問題が発生しやすくなる。一方、前記の静摩擦係数が小さすぎると、ハンドリング性の改良効果が小さくなり、逆にロール状に巻き取る際の巻きずれが発生しやすくなる。したがって、前記の静摩擦係数の下限は、0.30が好ましく、より好ましくは0.35、特に好ましくは0.40である。
前記の静摩擦係数を0.60以下とするためには、白色遮光層(B)の表面Cまたは表面層(C)のSRzを、0.23μmを超え2.0μm以下に制御する方法が有効である。
また、前記の静摩擦係数を0.60以下とするためには、粒子により表面粗さを制御する方法以外に、例えば、表面層(A)あるいは表面層(C)のいずれかの層に、高級脂肪酸のエステル誘導体、アミド誘導体あるいは金属塩等よりなる潤滑剤を含有させる方法が挙げられる。また、前記の積層ポリエステルフィルムが、表面層(A)/白色遮光層(B)の2層から構成される場合には、白色遮光層(B)に前記の潤滑剤を含有させてもよい。また、表面層(C)が塗布層(C′)からなる場合には、塗布層(C′)に極性の低い界面活性剤を含有させて、滑り性を改良する方法を併用することも可能である。
粒子としては、炭酸カルシウム、カオリン、タルク、炭酸マグネシウム、炭酸バリウム、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、リン酸リチウム、リン酸カルシウム、リン酸マグネシウム、酸化アルミニウム、酸化ケイ素、酸化チタン、酸化ジルコニウム、フッ化リチウム、ソジュウムカルシウムアルミシリケート等の無機粒子、蓚酸カルシウムやカルシウム、バリウム、亜鉛、マンガン、マグネシウム等のテレフタル酸塩等の有機塩粒子及びジビニルベンゼン、スチレン、アクリル酸、メタクリル酸、アクリル酸又はメタクリル酸のビニル系モノマーの単独又は共重合体よりなる架橋高分子粒子、ポリテトラフルオロエチレン、ベンゾグアナミン樹脂、熱硬化エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル、熱硬化性尿素樹脂、熱硬化性フェノール樹脂などの耐熱性有機粒子等の不活性粒子が挙げられる。
上記粒子をポリエステル中に含有させる方法は、(a)ポリエステル構成成分であるジオール中で粒子をスラリー状に分散処理し、該粒子スラリーをポリエステルの重合反応系へ添加する方法、(b)ポリエステルフィルムの溶融押出し工程においてベント式二軸押出し機で、溶融ポリエステルに分散処理した粒子スラリーを添加する方法、(c)ポリエステルと粒子を溶融状態で混練する方法(d)ポリエステルと粒子のマスターレジンを溶融状態で混練する方法などが例示される。
重合反応系に添加する方法の場合、粒子のジオールスラリーを、エステル化反応又はエステル交換反応前から重縮合反応開始前の溶融粘度の低い反応系に添加することが好ましい。また、粒子のジオールスラリーを調製する際には、高圧分散機、ビーズミル、超音波分散などの物理的な分散処理を行うとことが好ましい。さらに、分散処理したスラリーを安定化させるために、使用する粒子の種類に応じて適切な化学的な分散安定化処理を併用することが好ましい。
分散安定化処理としては、例えば、無機酸化物粒子や粒子表面にカルボキシル基を有する架橋高分子粒子などの場合には、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウムなどのアルカリ化合物をスラリーに添加し、電気的反発により粒子間の再凝集を抑制することができる。また、炭酸カルシウム粒子、ヒドロキシアパタイト粒子などの場合にはトリポリ燐酸ナトリウムやトリポリ燐酸カリウムをスラリー中に添加することが好ましい。
また、粒子のジオールスラリーをポリエステルの重合反応系へ添加する際、スラリーをジオールの沸点近くまで加熱処理することも、重合反応系へ添加した際のヒートショック(スラリーと重合反応系との温度差)を小さくすることができるため、粒子の分散性の点で好ましい。
また、表面層(A)の反対側の最表層のSRzを制御する他の層構成として、表面層(A)/白色遮光層(B)/ポリエステル層(A′)/塗布層(C′)の層構成からなる積層構成とすることもできる。ポリエステル層(A′)は、表面層(A)と同様に、実質上粒子を含有しないポリエステルを用いるか、粒子含有量を100ppm未満としたポリエステルを用いる。さらに、ポリエステル層(A′)の上に、粒子を含む樹脂組成物よりなる塗布層(C′)を積層し、塗布層(C′)を最外層として、表面層(A)の反対面を粗面化する方法である。また、ポリエステル層(A′)の原料として、表面層(A)と同じ原料を用いることで、積層ポリエステルフィルムを製造する際の共押出工程をA/M/A(A′)と簡略化できる利点があり、より好ましい実施態様である。
積層ポリエステルフィルムが、表面層(A)/白色遮光層(B)/ポリエステル層(A′)/塗布層(C′)からなる積層構成の場合、A/B/A′の積層部分を二軸延伸フィルムから構成し、塗布層(C′)は塗布層により積層し、最終乾燥後の塗布量を0.01〜0.5g/m2とする方法が好適である。また、塗布層(C′)を形成させずに、ポリエステル層(A′)の上に、ポリエステルと粒子を含む、厚みが0.1〜3μmのポリエステル層を共押出し法で積層する方法を用いることもできる。
上記塗布層(C′)は、積層ポリエステルフィルムの製造工程において、未延伸フィルム又は一軸延伸フィルムに、樹脂と粒子を含む塗布層(C′)用塗布液を塗布、乾燥し、次いで少なくとも一方向に延伸、熱処理することにより、塗布層(C′)を形成させる、いわゆるインラインコート法で形成する方法が、フィルム特性(滑り性、ブロッキング性、透明性など)及び経済性の点より好ましい。代表的な、表面層A/白色遮光層B/ポリエステル層(A′)/塗布層(C′)からなる積層ポリエステルフィルムの製造例を下記に示す。なお、下記製造例では、ポリエステル層A′の原料として表面層(A)と同じ原料を使用した。
2台の押出し機を用いて、白色遮光層(B)の両面に層(A)が積層された2種3層の層構成よりなる積層ポリエステルフィルムを共押しダイスを用いて回転冷却金属ロールにシート状に溶融押出しし、静電印加法により冷却固化せしめて未延伸ポリエステルシートを得る。得られた未延伸ポリエステルシートを、例えば、80〜120℃に加熱したロールで長手方向に2.5〜5.0倍延伸して、一軸延伸フィルムを得る。さらに、フィルムの端部をクリップで把持して、例えば、70〜140℃に加熱された熱風ゾーンに導き、乾燥後幅方向に2.5〜5.0倍に延伸する。引き続き160〜240℃の熱処理ゾーンに導き、1〜60秒間の熱処理を行い、結晶配向を完了させ積層ポリエステルフィルムを得る。このフィルム製造工程中の任意の段階、特に好ましくは、一軸延伸フィルムの段階で、積層ポリエステルフィルムのどちらか片面に、上記の塗布層(C′)を形成する塗布液をし、塗布層(C′)を積層する。
本発明においては、塗布層(C′)は、平均粒径20nm以上150nm未満の粒子a及び平均粒径150nm以上600nm以下の粒子bを含む樹脂組成物より構成させることが好ましい。
かかる粒子の例としては、(1)炭酸カルシウム、リン酸カルシウム、シリカ、シリカーアルミナ複合酸化物粒子、カオリン、タルク、二酸化チタン、アルミナ、硫酸バリウム、フッ化カルシウム、フッ化リチウム、ゼオライト、硫化モリブデン等の無機粒子、(2)架橋ポリスチレン、架橋ポリメチルメタクリレート、架橋アクリル、などの架橋高分子粒子、(3)シリコン樹脂粒子、ポリイミド粒子、フッ素系樹脂粒子、などの耐熱性高分子粒子、(4)シュウ酸カルシウム等の有機粒子を挙げることができる。なかでも、シリカ粒子はポリエステルとの親和性が良好であるため最も好適である。
本発明では、平均粒子径の異なる2種類の粒子(粒子a及び粒子b)を含有させることが好ましい。粒子aの平均粒径は20nm以上150nm未満が好ましく、さらに好ましくは30〜100nmである。粒子aの平均粒径が20nm未満であると、滑り性付与が不十分となる。一方、粒子aの平均粒径が150nm以上になると、耐擦り傷性が悪化する傾向がある。
本発明では、滑り性、耐擦り傷性及び刻印性とのバランスを向上させるために、粒子a以外に、粒子aよりも平均粒径が大きい粒子bを併用することが好ましい。粒子bの平均粒径は150〜600nmが好ましく、さらに好ましくは200〜500nmである。粒子bの平均粒径が150nm未満であると、滑り性や耐擦り傷性悪化する傾向がある。一方、粒子bの平均粒径が600nmを超えると、耐摩耗性が悪化するとともに、刻印性が悪化する傾向がある。
さらに、粒子bと粒子aとの平均粒径の差を、好ましくは100nm以上、特に好ましくは150nm以上とすることで、滑り性、耐擦り傷性及び刻印性のバランスの点からさらに有効である。
本発明において、上記塗布層(C′)の三次元十点平均粗さ(SRz)は、前記の単層構成の場合における表面層(C)と同様の範囲とすることが好ましい。
塗布層(C′)の三次元十点平均粗さ(SRz)を、前記の単層構成の場合における表面層(C)と同様の範囲とするためには、被覆層中の平均粒径20nm以上150 nm未満の粒子aと平均粒径150nm以上600nm以下の粒子bとの質量比(a/b)を3〜30とし、かつ粒子Bの含有量を被覆層の樹脂組成物に対し0.1〜3質量%とすることが好ましい。特に、被覆層の樹脂組成物に対し、粒子bの含有量が3質量%を超えると、耐擦り傷性の低下が著しくなる傾向がある。ここで、被覆層の樹脂組成物とは、樹脂、粒子a、及び粒子bの固形分質量の総和を意味する。
本発明において、被覆層形成のために使用する塗布液は、溶媒、樹脂、粒子を主たる構成成分とする。溶媒としては、水系溶媒又は有機溶媒のいずれも使用できるが、作業環境、環境保護、生産性などの点から水系溶媒が好適である。
本発明で塗布層(C′)に用いる水溶性または水分散性樹脂は、下記(i)〜(iii)のいずれかからなる樹脂が好ましい。
(i)2重結合を有する酸無水物を含有する少なくとも一方のモノマーからなるラジカル重合体を5質量%以上含有する、芳香族ポリエステルのグラフト共重合体
(ii)酸価が200eq/t以上のアクリル系樹脂またはその共重合体(但し、(iii)は除く)
(iii)2重結合を有する酸無水物を含有する少なくとも一種のモノマーからなるラジカル重合体を5質量%以上含有する、酸価が200eq/t以上のアクリル系樹脂の共重合体
芳香族ポリエステル系樹脂とは、ポリエステルの酸成分中、芳香族ジカルボン酸成分が30モル%以上含有する樹脂をいう。芳香族ジカルボン酸成分が30モル%未満であると、ポリエステルの加水分解性が顕著となり耐水性が悪化しやすくなる。
前記のアクリル系樹脂における酸価とは、樹脂溶液等を100Paの減圧下、80℃で2時間乾燥させた後の固形分を、濃度既知のエタノール性水酸化カリウム溶液で滴定して求めた値である。
前記のアクリル系樹脂の酸価が200eq/t未満では、水系溶媒への分散性が低下する場合があるので好ましくない。
酸価を200eq/t以上とするためには、分子中に極性基を含有させる必要がある。しかしながら、スルホン酸ナトリウムのように、加熱しても変化せず安定な極性基は、かえって被覆層の耐水性を悪化させるため好ましくない。
被覆層の耐水性を悪化させない極性基としては、加熱後に分解して極性が低下するカルボン酸のアミン塩が例示される。使用することができるアミンは、塗膜の乾燥条件で気化することが好ましく、例えばアンモニウム、ジエチルアミン、トリエチルアミン等が挙げられる。
さらに好ましくは、芳香族ポリエステル系樹脂又は酸価が200eq/t以上のアクリル系樹脂から選ばれる1種以上の樹脂又は2種以上の共重合体が、2重結合を有する酸無水物を含有する少なくとも1種のモノマーからなるラジカル重合体を5質量%以上含有することである。5質量%未満では耐水性の効果が不十分となりやすい。
前記の酸無水物を樹脂中に導入することにより、樹脂分子間で架橋反応を行なうことが可能となる。すなわち、樹脂中の酸無水物はコート液中では加水分解等によりカルボン酸に変化し、乾燥及び製膜中の熱履歴により、分子間で酸無水物又は他の分子の活性水素基と反応してエステル基等を生成し、塗布層の樹脂の架橋を行い、耐水性及び加熱白化防止性等を発現することができる。
2重結合を有する酸無水物を含有するモノマーとしては、無水マレイン酸、無水イタコン酸、2,5−ノルボネンジカルボン酸、テトラヒドロ無水フタル酸等が挙げられる。また、ラジカル重合体は、他の重合性不飽和単量体との共重合体であってもよい。
他の重合性不飽和単量体としては、(1)フマル酸、フマル酸モノエチル、フマル酸ジエチル、フマル酸ジブチルなどのフマル酸のモノエステル又はジエステル、(2)マレイン酸、マレイン酸モノエチル、マレイン酸ジエチル、マレイン酸ジブチルなどのマレイン酸のモノエステル又はジエステル、(3)イタコン酸、イタコン酸のモノエステル又はジエステル、(4)フェニルマレイミド等のマレイミド等、(5)スチレン、α−メチルスチレン、t−ブチルスチレン、クロロメチルスチレンなどのスチレン誘導体、(6)ビニルトルエン、ジビニルベンゼンなど、(7)アルキルアクリレート、アルキルメタクリレート(アルキル基としてはメチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、t−ブチル基、2−エチルヘキシル基、シクロヘキシル基、フェニル基、ベンジル基、フェニルエチル基等)などのアクリル重合性単量体、(8)2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、2−ヒドロキシプロピルアクリレート、2−ヒドロキシプロピルメタクリレートのヒドロキシ含有アクリル単量体、(9)アクリルアミド、メタクリルアミド、N−メチルメタクリルアミド、N−メチルアクリルアミド、N−メチロールアクリルアミド、N−メチロールメタクリルアミド、N,N−ジメチロールアクリルアミド、N−メトキシメチルアクリルアミド、N−メトキシメチルメタクリルアミド、N−フェニルアクリルアミドのアミド基含有アクリル単量体、(10)N,N−ジエチルアミノエチルアクリレート、N,N−ジエチルアミノエチルメタクリレートのアミノ基含有アクリル単量体、(11)グリシジルアクリレート、グリシジルメタクリレートのエポキシ基含有アクリル単量体、(12)アクリル酸、メタクリル酸、及びそれらの塩(ナトリウム塩、カリウム塩、アンモニウム塩)、などのカルボキシル基又はその塩を含有するアクリル単量体、などが挙げられる。
また、被覆層の耐水性をさらに向上させるために、塗布液調整時に酸化合物を添加することが特に好ましい。この酸化合物の添加により、樹脂中のカルボン酸基の酸無水化及びエステル化反応を促進させて樹脂の架橋を向上させることができる。
酸化合物の添加量は、樹脂に対して1〜10質量%の範囲が好ましい。また、酸化合物として種々の化合物を使用することが可能であるが、製膜時の熱で気化しやすく、被覆層中に残留量が少なくかつ残留時の悪影響が小さい、低沸点のカルボン酸が好ましい。低沸点のカルボン酸としては、蟻酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸、ヘプタン酸等を挙げることができる。
本発明において、前記の酸無水物を用いた架橋反応を行なう際に、窒素原子又はフェノール類を含まない架橋剤を使用することが、優れた耐水性と回収再使用時の変色を抑制する点から好ましい。
窒素原子またはフェノール類を含まない架橋剤としては、例えば、オルソフタル酸ジグリシジルエステル、イソフタル酸ジグリシジルエステル、テレフタル酸ジグリシジルエステル、p−オキシ安息香酸ジグリシジルエステル、テトラハイドロフタル酸ジグリシジルエステル、ヘキサハイドロフタル酸ジグリシジルエステル、コハク酸ジグリシジルエステル、アジピン酸ジグリシジルエステル、セバシン酸ジグリシジルエステル、エチレングリコールジグリシジルエーテル、プロピレングリコールジグリシジルエーテル、1,4−ブタンジオールジグリシジルエーテル、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテルおよびポリアルキレングリコールジグリシジルエーテル類、トリメリット酸トリグリシジルエステル、1,4−ジグリシジルオキシベンゼン、グリセロールトリグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、ペンタエリスリトールトリグリシジルエーテル、グリセロールアルキレンオキサイド付加物のトリグリシジルエーテル、などの多官能性エポキシ化合物が挙げられる。
窒素原子またはフェノール類を含む架橋剤は、熱等により酸化・分解し、窒素原子及び芳香環を中心とした共役構造を有する化合物を生成する。その結果、着色が著しくなる。しかしながら、本発明において、これらの架橋剤の使用を完全に否定するものではなく、優れた耐水性と回収再使用時の変色を抑制することができる範囲内であれば、架橋剤(硬化用樹脂)の種類に応じて適量使用することが可能である。
窒素原子を含む架橋剤としては、例えば、(1)尿素、メラミン、ベンゾグアナミンなどとホルムアルデヒドとの付加物、(2)これらの付加物と炭素原子数が1〜6のアルコールからなるアルキルエーテル化合物などのアミノ樹脂、(3)窒素原子を含む多官能性エポキシ化合物、(4)多官能性イソシアネート化合物、(5)ブロックイソシアネート化合物、(6)多官能性アジリジン化合物、(7)オキサゾリン化合物、などが挙げられる。
前記(2)記載のアミノ樹脂としては、例えば、メトキシ化メチロール尿素、メトキシ化メチロールN,N−エチレン尿素、メトキシ化メチロールジシアンジアミド、メトキシ化メチロールメラミン、メトキシ化メチロールベンゾグアナミン、ブトキシ化メチロールメラミン、ブトキシ化メチロールベンゾグアナミンなどが挙げられる。この中でも、メトキシ化メチロールメラミン、ブトキシ化メチロールメラミン、およびメチロール化ベンゾグアナミンなどが好適である。
前記(3)記載の窒素原子を含む多官能性エポキシ化合物としては、例えば、トリグリシジルイソシアヌレート、ジグリシジルプロピレン尿素、などが挙げられる。
前記(4)記載の多官能性イソシアネート化合物としては、例えば、低分子または高分子の芳香族、脂肪族のジイソシアネート、3価以上のポリイソシアネート、などが挙げられる。
ポリイソシアネートとしては、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、トルエンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、水素化ジフェニルメタンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、水素化キシリレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、及びこれらのイソシアネート化合物の3量体などが例示される。
さらに、これらのイソシアネート化合物の過剰量と、エチレングリコール、プロピレングリコール、トリメチロールプロパン、グリセリン、ソルビトール、エチレンジアミン、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミンなどの低分子活性水素化合物、又はポリエステルポリオール類、ポリエーテルポリオール類、ポリアミド類などの高分子活性水素化合物とを反応させて得られる末端イソシアネート基含有化合物、などが挙げられる。
前記(5)記載のブロックイソシアネートは、上記イソシアネート化合物とブロック化剤とを公知の方法より付加反応させて合成することができる。
イソシアネート化合物のブロック化剤としては、例えば、(a)フェノール、クレゾール、キシレノール、レゾルシノール、ニトロフェノール、クロロフェノールなどのフェノール類、(b)チオフェノール、メチルチオフェノールなどのチオフェノール類、(c)アセトキシム、メチルエチケトオキシム、シクロヘキサノンオキシムなどのオキシム類、(d)メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノールなどのアルコール類、(e)エチレンクロロヒドリン、1,3−ジクロロ−2−プロパノールなどのハロゲン置換アルコール類、(f)t−ブタノール、t−ペンタノールなどの第3級アルコール類、(g)ε−カプロラクタム、δ−バレロラクタム、ν−ブチロラクタム、β−プロピルラクタムなどのラクタム類、(h)芳香族アミン類、(i)イミド類、(j)アセチルアセトン、アセト酢酸エステル、マロン酸エチルエステルなどの活性メチレン化合物、(k)メルカプタン類、(l)イミン類、(m)、尿素類、(n)ジアリール化合物類、(o)重亜硫酸ソーダ、などを挙げることができる。
フェノール類を含む架橋剤としては、例えば、アルキル化フェノール類、クレゾール類などのホルムアルデヒドとの縮合物のフェノールホルムアルデヒド樹脂やビスフェノールAを含む多官能性エポキシ化合物、が挙げられる。
フェノールホルムアルデヒド樹脂としては、例えば、アルキル化(メチル、エチル、プロピル、イソプロピル又はブチル)フェノール、p−ter−アミルフェノール、4,4’−sec−ブチリデンフェノール、p−ter−ブチルフェノール、o−クレゾール、m−クレゾール、p−クレゾール、p−シクロヘキシルフェノール、4,4’−イソプロピリデンフェノール、p−ノニルフェノール、p−オクチルフェノール、3−ペンタデシルフェノール、フェノール、フェニルo−クレゾール、p−フェニルフェノール、キシレノールなどのフェノール類とホルムアルデヒドとの縮合物が挙げられる。
窒素原子又はフェノール類を含まない架橋剤として、多官能性エポキシ化合物が挙げられる。しかしながら、多官能性エポキシ化合物は窒素原子を含むアミン系の架橋触媒を用いることが多いため、前記触媒起因の着色が起こるという問題がある。また、触媒量を低減させたり、あるいはアミン等を含まない触媒を用いることにより、着色を押さえることが可能ではあるが、架橋が不十分であったり、回収時にゲル状の混合物が増加するため好ましくない。
前記記載の多官能性エポキシ化合物としては、例えば、ビスフェノールAのジグリシジルエーテル及びそのオリゴマー、水素化ビスフェノールAのジグリシジルエーテル及びそのオリゴマー、オルソフタル酸ジグリシジルエステル、イソフタル酸ジグリシジルエステル、テレフタル酸ジグリシジルエステル、p−オキシ安息香酸ジグリシジルエステル、テトラハイドロフタル酸ジグリシジルエステル、ヘキサハイドロフタル酸ジグリシジルエステル、コハク酸ジグリシジルエステル、アジピン酸ジグリシジルエステル、セバシン酸ジグリシジルエステル、エチレングリコールジグリシジルエーテル、プロピレングリコールジグリシジルエーテル、1,4−ブタンジオールジグリシジルエーテル、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル及びポリアルキレングリコールジグリシジルエーテル類、トリメリット酸トリグリシジルエステル、トリグリシジルイソシアヌレート、1,4−ジグリシジルオキシベンゼン、ジグリシジルプロピレン尿素、グリセロールトリグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、ペンタエリスリトールトリグリシジルエーテル、グリセロールアルキレンオキサイド付加物のトリグリシジルエーテル、などが挙げられる。
多官能エポキシ化合物の触媒として、トリエチルベンジルアンモニウムクロライド、テトラメチルアンモニウムクロライド等の4級アンモニウム塩、ベンジルジメチルアミン、トリブチルアミン、トリス(ジメチルアミノ)メチルフェノール等の3級アミン、2−メチル−4−エチルイミダゾール、2ーメチルイミダゾール等のイミダゾール化合物、ピリジン、メチルピリジン等の含窒素複素環化合物、また、アミン等を含まない触媒としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等の強塩基、硼弗化亜鉛、四塩化錫などの金属化合物などが挙げられる。
また、水系塗布液を用いて被覆層を形成させる場合には、基材フィルム表面に塗布する際に、基材フィルムへの濡れ性を向上させ、塗布液を均一にコートするために、アニオン系界面活性剤やノニオン系界面活性剤を適量、塗布液に添加することが好ましい。
また、塗布液中には、性能向上のために、複数の他の樹脂等を塗布液に添加してもよい。さらに、塗布液中には、ハンドリング性、帯電防止性、抗菌性など、他の機能性をフィルムに付与するために、無機及び/又は有機粒子、帯電防止剤、紫外線吸収剤、有機潤滑剤、抗菌剤、光酸化触媒などの添加剤を含有させることができる。
塗布液に用いる溶媒として水系溶媒を用いた場合、水以外にエタノール、イソプロピルアルコール、ベンジルアルコールなどのアルコール類を、全塗布液に対し50質量%未満の範囲で混合しても良い。さらに、10質量%未満であれば、アルコール類以外の有機溶剤を溶解可能な範囲で混合してもよい。但し、塗布液中のアルコール類とその他の有機溶剤との合計量は、50質量%未満とすることが好ましい。
有機溶剤の添加量が50質量%未満であれば、塗布乾燥時に乾燥性が向上するとともに、水のみの場合と比べ被覆層の外観が向上するという効果がある。50質量%以上では、溶剤の蒸発速度が速くなるため塗工中に塗布液の濃度変化が起こり、塗布液の粘度が上昇して塗工性が低下する。その結果、被覆層の外観不良が起こりやすくなる。さらに、環境面、作業者の健康面、火災の危険性などからも好ましくない。
さらに、塗布液中の異物を除去することは、塗布層(C′)の耐擦り傷性や刻印性の向上のために有効である。
塗布液を精密濾過するための濾材は、濾過粒子サイズ(初期濾過効率:95%)が25μm以下であることが好ましい。濾過粒子サイズが25μmを超えると、粗大凝集物の除去が不十分となりやすい。そのため、濾過で除去できなかった粗大凝集物は、塗布乾燥後の一軸延伸又は二軸延伸工程での延伸応力により広がって、100μm以上の凝集物として欠点の原因になる。
塗布液を精密濾過するための濾材のタイプは、上記性能を有していれば特に限定はなく、例えば、フィラメント型、フェルト型、メッシュ型が挙げられる。塗布液を精密濾過するための濾材の材質は、上記性能を有しかつ塗布液に悪影響を及ばさない限り特に限定はなく、例えば、ステンレス、ポリエチレン、ポリプロピレン、ナイロン等が挙げられる。
この塗布液を塗布するには、公知の任意の方法で行うことができる。例えば、リバースロール・コート法、グラビア・コート法、キス・コート法、ロールブラッシュ法、スプレーコート法、エアナイフコート法、ワイヤーバーバーコート法、パイプドクター法、含浸・コート法及びカーテン・コート法などが挙げられ、これらの方法を単独であるいは組み合わせて行うことができる。
上記の塗布層(C′)は、二軸延伸ポリエステルフィルム基材に上記塗布液を塗布しても良いし(オフラインコート法)、未延伸あるいは一軸延伸後のポリエステルフィルム基材に上記塗布液を塗布した後、乾燥し、さらに一軸延伸あるいは二軸延伸を行なった後、熱固定を行っても良いが(インラインコート法)、性能及び経済性の点より後者のインラインコート法が好ましい。該塗布液が塗布されたフィルムは、延伸及び熱固定のためにテンターに導かれ、そこで加熱されて、熱架橋反応により安定な被膜を形成することができる。
未延伸あるいは一軸延伸後のポリエステルフィルム基材に上記塗布液を塗布した後、乾燥、延伸する、いわゆるインラインコート法の場合、塗布後の乾燥工程では水等の溶剤分のみを取り除き、かつ被覆層の架橋反応が進行しない温度及び時間を選定することが好ましい。
乾燥温度は70〜140℃で行うことが好ましく、乾燥時間は塗布液の固形分濃度及び塗布量に応じて調整するが、温度(℃)と時間(秒)の積として3,000以下とすることが好ましい。積が3,000を越えると、被覆層が延伸前に架橋反応を起こし、被覆層に割れ等が生じやすくなる。
また、被覆層は延伸後、フィルム幅長が変化しない様にフィルムを固定した状態で、赤外線ヒーターにより被覆層を250〜260℃で0.5〜1秒間の短時間で加熱処理することが架橋反応を促進する上で好ましい。
この際、塗布液中に酸化合物を樹脂に対して1〜10質量%添加していると、架橋反応がさらに促進され被覆層がより強固となる。そのため、フィルムを加熱した際にフィルム表面に析出してくるオリゴマーを被覆層によりブロックし、被覆層表面へのオリゴマー析出を抑制することができる。
延伸後のフィルムは通常2〜10%程度の弛緩処理を行うが、本発明においては被覆層の歪みが少ない状態、すなわちフィルム幅長が変化しないように固定した状態で、赤外線ヒーターで被覆層を加熱することが好ましい。このような方法を採用することにより、被覆層内の架橋が促進されより強固となる。加熱温度又は時間が前記条件より大きいと、フィルムの結晶化又は溶解が起こりやすくなる。また、一方条件が加熱温度又は時間が前記条件より小さいと、被覆層の架橋が不十分となりやすい。
最終的に得られる被覆フィルム表面の被覆層の乾燥後塗布量(フィルム単位面積当りの固形分質量)は、0.01〜0.50g/m2が好ましく、より好ましくは0.02〜0.40g/m2であり、特に好ましくは0.05〜0.30g/m2である。乾燥後の塗布量が0.01g/m2未満の場合、接着性が不十分となる。塗布量が0.50g/m2を超えると、ブロッキングしやすくなる傾向がみられ、被覆層中の異物の数も増加しやすくなる。
なお、未延伸フィルム作成後から塗布工程における空気中のクリーン度(0.5μm以上の粒子数/ft3 )を、クラス100,000となるようヘパフィルターによりコントロールすることは、フィルム表面に付着する異物を低減させるのに有効である。
(ポリエステルのオリゴマーの低減処理)
本発明の積層ポリエステルフィルムは、該積層ポリエステルフィルムを170℃で20分間加熱処理した時に、平滑な表面層(A)の反対側の表面(以下、表面Cと記載する場合がある)に析出する粒子の占有面積比が0.008μm2/μm2以下に制御することが好ましい。前記の加熱処理後に表面層(B)の表面に析出する粒子の占有面積比は0.004μm2/μm2以下であることがより好ましく、さらに好ましくは0.002μm2/μm2以下、特に好ましくは0.001μm2/μm2以下である。前記の加熱処理後に、表面Cに析出する粒子の占有面積比が0.008μm2/μm2を超える場合には、フィルム表面に析出した粒子状の環状三量体により、金属薄膜層に欠点が発生する場合がある。また、該析出物がフィルム巻取り時に金属薄膜層の表面に転写されると、金属薄膜層の表面における光線反射率が低下する場合がある。
積層ポリエステルフィルムに金属薄膜層を積層した鏡面反射フィルムは、金属薄膜層を形成する前に、積層ポリエステルフィルムと金属薄膜層との密着性向上のためのアンカー処理が広く実施されている。したがって、金属薄膜層の形成面、すなわち、本発明の積層ポリエステルフィルムにおける平滑な表面層(A)の表面に存在する析出物はこのアンダーコート層の形成により抑制されることより、むしろ金属薄膜層を形成する表面層(A)の反対側の表面Cにおける析出物の抑制が重要である。
フィルム表面に析出する粒子は、主として環状三量体等の低重合オリゴマーやモノマーからなる低分子量物であり、従来は、ポリエステルフィルム表面を、該析出粒子を溶解する溶媒で洗浄あるいは溶出させ、該溶媒に溶解された環状三量体等を定量することにより定量されてきた。したがって、前述したごとく、該方法はフィルム表面のみでなく、フィルム内部に存在するオリゴマーをも抽出してしまうために実用特性との対応がよくなかった。
そこで、本発明者等は、表面析出物は粒子として存在することに着目し、顕微鏡により表面に析出したこれらの析出粒子の占める面積を定量できることを見出した。すなわち、前述した金属薄膜層の形成工程で積層ポリエステルフィルムが受ける熱を想定した条件で加熱処理された積層ポリエステルフィルムの表面を、干渉顕微鏡を利用した表面解析法で評価できることを見出した。これにより、前述した金属薄膜層形成の加工工程で発生するポリエステルフィルム中に含有される環状3量体等のオリゴマーが表面移行することにより引き起こされる表面汚染を、モデル的に評価することができる。
また、本発明においては、平滑な表面層(A)の表面についても、170℃で20分間加熱処理した時に析出する粒子の占有面積比が0.008μm2/μm2以下に制御することがより好ましい。その結果、析出粒子による金属薄膜層の欠点発生が抑制される。
本発明において、前記の析出粒子(主として環状三量体等の低重合オリゴマーやモノマーからなる低分子量物)を特定の範囲に低減する方法は限定されない。例えば、積層ポリエステルフィルムを構成するポリエステルに含まれる環状三量体量を低減する方法が挙げられる。
ポリエステル中の環状三量体量を低減する場合、ポリエステル中の環状三量体量は、総量で8000ppm以下が好ましい。6000ppm以下がより好ましく、4000ppm以下がさらに好ましい。8000ppmを超えると表面析出粒子の抑制効果が少なくなる。
本発明において、積層ポリエステルフィルムの原料として用いられるポリエステルは、ジカルボン酸とグリコールをエステル化反応させ、次いで重縮合反応を行う重縮合法、あるいはジカルボン酸塩とグリコールをエステル交換反応させ、次いで重縮合反応を行うエステル交換法など、従来公知の方法によって製造される。
このポリエステルには、重縮合触媒、さらに場合によってはエステル交換反応触媒、及びリン酸又はリン酸塩などの熱安定剤が必須成分として用いられる。また、これら以外に、アルカリ金属塩やアルカリ土類金属塩を適量含有させ、これらの金属塩とリン原子のモル比を制御することで、シート状溶融ポリエステルを回転冷却ロール上に静電印加法により密着固化させ、厚みの均一な未延伸シートを安定して得ることができる。
ポリエステルの代表的な重縮合触媒としては、三酸化アンチモン、アンチモングリコラートなどのSb系触媒、Ge系触媒、Ti系触媒などがある。これらのうち、透明性、熱安定性及び価格の観点から、フィルム用ポリエステルの重縮合触媒としては、一般に、三酸化アンチモン(Sb23)が使用されている。
特に、重縮合触媒としてSb23を使用した場合、重合時及び/又は未延伸ポリエステルフィルムの製造時に、Sb23が金属Sbに還元され、フィルム表面に凝集物として析出しやすくなる。これが上記(A)の異物に該当するため、重縮合時間を著しく遅くしない範囲で、できるだけSb23の含有量を低減させることが好ましい。上記のような異形部の数を上記範囲内とするためには、ポリエステル中のSb23の含有量を、金属Sb換算で50〜250ppm、好ましくは60〜200ppm、さらに好ましくは70〜150ppmとすることが推奨される。
また、重縮合完了後、ポリエステルを孔径が7μm以下(初期濾過効率95%)のステンレススチール焼結体等の濾材よりなるフィルターで濾過処理し、あるいはペレット化のために押出機から溶融ポリエステルのストランドを冷却水中に押出す際に、予め冷却水を濾過処理(フィルター孔径:1μm以下)し、且つ、この工程を密閉した部屋で行い、ヘパフィルターで環境中に存在する1μm以上の異物を低減させておくことが好ましい。
さらに、ポリエステルの未延伸シート製造の際にも、該ポリエステルが溶融している段階で、ポリエステル中に含まれる異物を除去するために精密濾過を行う。精密濾過に用いられる濾材は特に限定はされないが、ステンレススチール焼結体の濾材が、ポリエステルの重合触媒が還元されて生成する金属Sbなどや、重合からペレット化までの段階で混入するSi、Ti、Ge、Cuを主成分とする凝集物及び高融点有機物の除去性能に優れることから好適である。濾材の濾過可能な粒子サイズは15μm以下(初期濾過効率95%)であることが好ましい。濾材の濾過可能な粒子サイズが15μmを超えるものでは、除去すべき20μm以上のサイズの粒子の除去が不十分となる場合がある。上記のような濾過性能を有する濾材を使用して溶融樹脂の精密濾過を行うことにより生産性が低下する場合があるが、光学欠陥の少ない積層ポリエステルフィルムを得るには極めて好適である。
前記の環状三量体の含有量を低減させたポリエステル(以下、低オリゴマー処理ポリエステルと称する)の製造方法は限定されないが、固有粘度が0.40〜0.60dl/gの溶融重合ポリエステルプレポリマーを固相重合する方法や所定の固有粘度のポリエステルを不活性気体雰囲気下または減圧下に固有粘度が実質的に変化しない条件で加熱処理する方法等が挙げられる。さらに、環状三量体を溶解する溶媒で抽出する方法等もある。
フィルム表面に析出する粒子を抑制するために、表面層を形成するポリエステルの全量を低オリゴマー処理ポリエステルとしてもよいし、低オリゴマー処理ポリエステルと汎用のポリエステルとの混合物を用いてもよい。
また、環状三量体は、ポリエステルフィルムの製造時の溶融押出し工程で生成するので、ポリエステルを290℃の温度で30分間溶融した時の環状三量体の増加量を5000ppm以下に低下させる手法を採用してもよい。環状三量体の増加量は、好ましくは3000ppm以下、より好ましくは2000ppm以下、特に好ましくは1000ppmである。
また、290℃の温度で30分間溶融したとき、環状三量体の増加量が5000ppm以下に低下させる手法を下記に示す。成形時の溶融状態での環状三量体の再生を出来るだけ抑制するためには、ポリエステル中に残存する活性な重合触媒量を出来るだけ減少さすことが重要である。このような活性な重合触媒量を減らす代表的な手段としては、下記の方法が挙げられる。
一つの方法としては、ポリエステルを水と接触処理することによって重合触媒の不活性化を行う方法が挙げられる。
ポリエステルの重縮合触媒を失活処理する方法としては、溶融重縮合後や固相重合後にポリエステルチップを水や水蒸気または水蒸気含有気体と接触処理する方法が挙げられる。
水処理方法としては、水中に浸ける方法やシャワ−でチップ上に水をかける方法等が挙げられる。処理時間としては5分〜2日間、好ましくは10分〜1日間、さらに好ましくは30分〜10時間で、水の温度としては20〜180℃、好ましくは40〜150℃、さらに好ましくは50〜120℃である。
以下に、水処理を工業的に行う方法を例示するが、これに限定するものではない。また処理方法は連続方式、バッチ方式のいずれであっても差し支えないが、工業的に行うためには連続方式の方が好ましい。
ポリエステルのチップをバッチ方式で水処理する場合は、サイロタイプの処理槽が挙げられる。すなわちバッチ方式でポリエステルのチップをサイロへ受け入れ水処理を行う。ポリエステルのチップを連続方式で水処理する場合は、塔型の処理槽に継続的又は間欠的にポリエステルのチップを上部より受け入れ、水処理させることができる。
またポリエステルのチップと水蒸気または水蒸気含有ガスとを接触させて処理する場合は、50〜150℃、好ましくは50〜110℃の温度の水蒸気または水蒸気含有ガスあるいは水蒸気含有空気を好ましくは粒状ポリエチレンテレフタレ−ト1kg当り、水蒸気として0.5g以上の量で供給させるか、または存在させて粒状ポリエチレンテレフタレ−トと水蒸気とを接触させる。
この、ポリエステルのチップと水蒸気との接触は、通常10分間〜2日間、好ましくは20分間〜10時間行われる。
以下に、粒状ポリエチレンテレフタレ−トと水蒸気または水蒸気含有ガスとの接触処理を工業的に行なう方法を例示するが、これに限定されるものではない。また処理方法は連続方式、バッチ方式のいずれであっても差し支えない。
ポリエステルのチップをバッチ方式で水蒸気と接触処理をする場合は、サイロタイプの処理装置が挙げられる。すなわちポリエステルのチップをサイロへ受け入れ、バッチ方式で、水蒸気または水蒸気含有ガスを供給し接触処理を行なう。
ポリエステルのチップを連続的に水蒸気と接触処理する場合は塔型の処理装置に連続で粒状ポリエチレンテレフタレ−トを上部より受け入れ、並流あるいは向流で水蒸気を連続供給し水蒸気と接触処理させることができる。
上記の如く、水又は水蒸気で処理した場合は粒状ポリエチレンテレフタレ−トを必要に応じて振動篩機、シモンカ−タ−などの水切り装置で水切りし、コンベヤ−によって次の乾燥工程へ移送する。
水又は水蒸気と接触処理したポリエステルのチップの乾燥は通常用いられるポリエステルの乾燥処理を用いることができる。連続的に乾燥する方法としては、上部よりポリエステルのチップを供給し、下部より乾燥ガスを通気するホッパ−型の通気乾燥機が通常使用される。
バッチ方式で乾燥する乾燥機としては大気圧下で乾燥ガスを通気しながら乾燥してもよい。
乾燥ガスとしては大気空気でも差し支えないが、ポリエステルの加水分解や熱酸化分解による分子量低下を防止する点からは乾燥窒素、除湿空気が好ましい。
また、上記方法による効果の小さいアルミニウムやチタン系の重縮合触媒の場合は、リン化合物を溶融重縮合後または固相重合後のポリエステルの溶融物に添加、重合触媒を不活性化する方法が挙げられる。
溶融重合ポリエステルの場合には、溶融重合反応終了後のポリエステルと、リン化合物を配合したポリエステルとを溶融状態で混合できるラインミキサ−等の機器中で混合してアルミニウム触媒を不活性化する方法が挙げられる。
また固相重合ポリエステルにリン化合物を配合する方法としては、固相重合ポリエステルにリン化合物をドライブレンドする方法やリン化合物を溶融混練して配合したポリエステルマスタ−バッチチップと固相重合ポリエステルチップを混合する方法によって所定量のリン化合物をポリエステルに配合後、押出機や成形機中で溶融し、触媒を不活性化する方法等が挙げられる。
触媒を完全に失活させるのに要するリン化合物の量は、ポリエステル中に残存する触媒金属含有量に対して、残存量で少なくとも5倍モルである。
使用されるリン化合物としては、リン酸、亜リン酸、ホスホン酸およびそれらの誘導体等が挙げられる。具体例としてはリン酸、リン酸トリメチルエステル、リン酸トリエチルエステル、リン酸トリブチルエステル、リン酸トリフェニ−ルエステル、リン酸モノメチルエステル、リン酸ジメチルエステル、リン酸モノブチルエステル、リン酸ジブチルエステル、亜リン酸、亜リン酸トリメチルエステル、亜リン酸トリエチルエステル、亜リン酸トリブチルエステル、メチルホスホン酸、メチルホスホン酸ジメチルエステル、エチルホスホン酸ジメチルエステル、フェニ−ルホスホン酸ジメチルエステル、フェニ−ルホスホン酸ジエチルエステル、フェニ−ルホスホン酸ジフェニ−ルエステル等であり、これらは単独で使用してもよく、また2種以上を併用してもよい。
また、ポリエステルフィルムの製造工程における環状三量体の生成を抑制する方法として、ポリエステルを溶融させて押出し、シートを製造する際の溶融温度をより低温にし、かつその滞留時間をより短時間にすることが好ましい実施形態として挙げられる。溶融温度は、溶融した樹脂が通過する流路の温度を制御することで調節することが可能であり、当該ポリエステルの融点から+30℃までの範囲に制御することが好ましく、+15℃までの範囲に制御することがより好ましい。またポリエステルは結晶化速度が遅いために融点−10℃までの範囲では製造工程中で実質的に固化することなく流動するので、環状三量体の生成を低減させるためには、樹脂温度を上記温度範囲に制御することも好ましい実施形態である。
滞留時間は、溶融樹脂が通過する流路の容積に対して、通過する樹脂の流量を大きくすることで低減させることが可能であり、滞留時間を60分以下にすることが好ましく、30分以下にすることがより好ましい。
(鏡面反射フィルム)
本発明の積層ポリエステルフィルムは、表面層(A)が平滑な表面になるように設計されており、該表面層(A)表面に金属薄膜層を設けることにより、光反射率、特に正反射率の高い鏡面反射層を形成できるので、光反射用部材として好適に用いることができる。したがって、本発明の積層ポリエステルフィルムは、表面平滑性に優れる表面層(A)に金属薄膜層を設けることが好ましい実施態様である。すなわち、本発明の積層ポリエステルフィルムを反射フィルムの基材として用い、前記積層ポリエステルフィルムの表面層(A)に金属薄膜層を形成し、金属薄膜層を反射面とする鏡面反射フィルムとすることで、本発明の作用効果を最大限発揮することができる。代表的な層構成を図1〜4に示す。
さらに、本発明の好適な実施形態である積層ポリエステルフィルムには、金属薄膜層の反対面となる表面層(C)に易滑性の付与と、フィルム巻取り時の表面層(C)からの表面層(A)への汚れや押し跡などの転写を低減するよう、好適な表面設計がなされている。これらの機能は金属薄膜層を設けた鏡面反射フィルムについても反映されるので、光反射用部材として好適である。
本発明の鏡面反射フィルムは、金属薄膜層表面の光線反射率が70%以上であることが好ましく、さらに好ましくは75%以上である。また、本発明においては、積層ポリエステルフィルムの層構成に及ぼす反射特性の影響を評価するために、各実施例(但し、実施例4、比較例11、実施例7、比較例19を除く)において、積層ポリエステルフィルムの表面層(A)に、アルミニウムからなる金属薄膜層を40nmの厚みで蒸着させた鏡面反射フィルムを作製した。本発明の積層ポリエステルフィルムに、厚みが40nmの金属薄膜層を形成させてなる鏡面反射フィルムは、金属薄膜層の表面における光線反射率が66%以上であることが好ましい。さらに好ましくは68%以上であり、特に好ましくは70%以上である。したがって、本発明の鏡面反射板を、例えばLCD用の面光源反射板として使用することにより、輝度の高いLCDを得ることができる。
前記の金属薄膜層を構成する金属は、前記に記載したアルミニウムに限定されず、光吸収の少ない金属であればよく、例えば、銀、金、白金、ステンレスやそれらの合金も試用できる。前記金属として、銀や銀合金を用いることにより、アルミニウムを用いた場合よりも光線反射率のより優れた鏡面反射フィルムが得られる。市場要求により、金属の材料を適宜選択すればよい。また、金属薄膜には反射率を損なわない程度の非金属元素が微量含有していてもよい。金属薄膜は、単層構成であっても、積層構成であってもよい。前記金属薄膜層の形成は、真空蒸着法が一般的であるが、スパッタリング法やCVD法によっても可能である。前記金属薄膜の厚さは、10〜200nmの範囲が好ましい。
以下、実施例によって本発明を詳細に説明する。なお、各実施例で得られたフィルム特性は以下の方法により測定、評価した。
(1)固有粘度
チップサンプル0.1gを精秤し、25mlのフェノール/テトラクロロエタン=6/4(質量比)の混合溶媒に溶解し、オストワルド粘度計を用いて30℃で測定した。なお、測定は3回行い、その平均値を求めた。
(2)粒子の平均粒子径
粒子を走査型電子顕微鏡(日立製作所製、S−510型)で観察し、粒子の大きさに応じて適宜倍率を変え、最も小さい粒子1個の大きさが2〜5mmとなるような倍率で、写真撮影したものを拡大コピーした。次いで、ランダムに選んだ少なくとも200個以上の粒子について、各粒子の外周をトレースした。画像解析装置にてこれらのトレース像から粒子の円相当径を測定し、それらの平均値を平均粒子径とした。
(3)平均表面粗さ
触針式三次元表面粗さ計(株式会社小坂研究所社製、SE−3AK)を用いて、針の半径2μm、荷重30mg、針のスピード0.1mm/秒の条件下で、フィルムの表面をフィルムの長手方向にカットオフ値0.25mmで、測定長1mmにわたって測定し、2μmピッチで500点に分割し、各点の高さを三次元粗さ解析装置(株式会社小坂研究所社製、TDA−21)に取り込ませた。これと同様の操作をフィルムの幅方向について2μm間隔で連続的に150回、即ちフィルムの幅方向0.3mmにわたって行い、解析装置にデータを取り込ませた。次に、前記解析装置を用いて、三次元平均表面粗さSRa及び三次元十点平均粗さSRzを求めた。SRa及びSRzの単位は、いずれもμmである。
なお、測定は3回行い、それらの平均値を採用した。
(4)表面層(A)の粗大突起数
(4−1)欠点の検出
下記の光学欠陥検出装置を用いて、100mm×100mmの積層ポリエステルフィルム片10枚について、表面層(A)面を観察して、光学的に20μm以上の大きさと認識される欠点を検出した。
[光学欠点の検出方法]
投光器として20W×2灯の蛍光灯をXYテーブル下方400mmに配置し、XYテーブル上に設けたスリット幅10mmのマスク上に測定対象の試験片を配置する。投光器と受光器を結ぶ線と、試験片の表面の鉛直方向とのなす角度を12°となるよう光を入射すると、入射位置の試験片に傷が存在する場合に、その部分が光り輝く。その部分の光量をXYテーブル上方500mmに配置したCCDイメージセンサカメラで電気信号に変換し、その電気信号を増幅し、微分してスレッシュホールド(しきい値)レベルとコンパレータで比較して、光学欠点の検出信号を出力する。また、CCDイメージセンサカメラを用いて、粗大突起の画像を入力し、入力された画像のビデオ信号を所定の手順により解析して、光学欠点の大きさを計測し、大きさ20μm以上の欠点の位置を表示する。光学欠点の検出は、試験片の表面層(A)について行う。
(4−2)粗大突起の大きさと高さの測定
前記の光学欠点検出装置を用い、検出した欠点部分から表面層(A)の粗大突起による光学欠点を選び出した。さらに適当な大きさに切り取って、Al蒸着を行った。次いで、非接触式三次元粗さ計(マイクロマップ社製550)を用いて、フィルム面に対して垂直方向から観察した時の、表面層(A)の表面に存在する高さが1μm以上で最大径が20μm以上の粗大突起の個数を測定し、単位を「個/m2」に換算した。
(5)フィルムの厚み
ミリトロン厚み計を用い、1枚当たり5点を計3枚の15点を測定し、その平均値を求めた。
(5)積層フィルムの層厚み
ミクロトームを用いてフィルムを切削し、フィルム表面に垂直な断面を得た。この断面に白金・パラジウム合金をスパッタリングによって被覆したものを観察サンプルとした。走査型電子顕微鏡(日立製作所製、S−510型)を用いてフィルム断面を観察し、フィルム全厚みが一視野となる適当な倍率で写真撮影した。この像より、スケールを用いて各層の厚みを測定した。独立に作成した3点の断面サンプルについて測定を行い、この平均値をもって積層フィルムの層厚みとした。
(6)積層フィルムの光線透過率
JIS−B0601−1982に準じ、ポイック積分球式H.T.Rメータ(日本精密光学製)を用い測定した。この値が小さいほど遮光性が高いことを意味する。
(7)表面固有抵抗値
フィルムを23℃、65%RHの雰囲気下で24時間放置後、その雰囲気下で表面抵抗値測定装置(三菱油化株式会社製、ハイレスタ−IP)を用い、印加電圧500Vにて帯電防止剤層表面の表面固有抵抗値(Ω/□)を測定した。
(8)積層ポリエステルフィルムの見かけ密度
フィルムを5.0cm四方の正方形に4枚切り出して試料とした。この試料を4枚重ねにして、マイクロメーターを用いて有効数字4桁で、総厚みを場所を変えて10点測定し、重ね厚みの平均値を求めた。この平均値を4で除して有効数字3桁に丸め、一枚あたりの平均厚み(t:μm)とした。同試料4枚の質量(w:g)を有効数字4桁で自動上皿天秤を用いて測定し、次式より見かけ密度を求めた。なお、見かけ密度は有効数字3桁に丸めた。
見かけ密度(g/cm3)=w/(5.0×5.0×t×10-4×4)
=w×100/t
(9)積層ポリエステルフィルムのカール値
積層ポリエステルフィルムを長手方向に100mm、幅方向に50mmに枚葉状に切り出し、無荷重の状態で、110℃で30分間加熱処理した後、フィルムの凸部を下にして水平なガラス板上に静置し、ガラス板と立ち上がったフィルム4隅の下端との垂直距離を最小目盛り0.5mm単位で定規を用いて測定し、この4箇所の測定値の平均値をカール値とした。サンプルは3点準備し、繰り返し測定を行い、この平均値をカール値とした。
(10)表面層(A)の傷
(i)傷の検出
250mm×250mmのフィルム片16枚について評価した。該評価は製膜開始から24時間後のものについて評価した。
投光器として20W×2灯の蛍光灯をXYテーブル下方400mmに配置し、XYテーブル上に設けたスリット幅10mmのマスク上に測定対象の試験片の表面層(A)が上面となるよう置く。投光器と受光器を結ぶ線と、試験片表面の鉛直方向とのなす角度を12°となるよう光を入射すると、入射位置の試験片に傷が存在する場合に、その部分が光り輝く。その部分の光量をXYテーブル上方500mmに配置したCCDイメージセンサカメラで電気信号に変換し、その電気信号を増幅し、微分してスレッシュホールド(しきい値)レベルとコンパレータで比較して、光学欠点の検出信号を出力する。また、CCDイメージセンサカメラを用いて、傷の画像を入力し、入力された画像のビデオ信号を所定の手順により解析して、光学欠点の大きさを計測し、50μm以上の欠点の位置を表示する。光学欠点の検出は、試験片の表面層(A)について行う。
(ii)傷の大きさの測定
上記(i)において検出される光学欠点部分から、傷による欠点を選出する。上記方法で傷と判定された部分が含まれるように、上記の試験片を適当な大きさに裁断し、形状観察用試験片を採取した。次いで、マイクロマップ社製3次元形状測定装置TYPE550を用いて、採取した試験片の表面層(A)を垂直方向から観察し、傷の大きさを測定する。なお、試験片、すなわちフィルムの表面に対して垂直方向から観察した時に、50μm以内に近接する傷の凹凸は同一の傷として考え、それらの傷の最外部を覆う最小面積の長方形の長さおよび幅を、傷の長さおよび幅とする。そして、これらの傷の深さ(傷の最も高いところと最も低いところの高さの差)及び長さを計測する。この結果より、深さ1μm以上で、かつ長さ3mm以上の傷の個数(個/m2)を求め、以下の基準で判定した。
◎:30個/m2以下
○:31〜50個/m2
△:51〜100個/m2
×:101個/m2以上
(11)静摩擦係数
JIS K 7125に準拠して測定した。但し、ロードセルとサンプルの接続にはバネを用いない直結とし、すべり片の質量は1.5kg、試験速度は200mm/分として測定した。一試料につき、3回測定して、その平均値を静摩擦係数とした。
(12)光線反射率
分光光度計(日立製作所製、Spectrophotometer U-3500)に積分球を取り付け、アルミナ白板(日立計測器サービス社製、210−0740)の反射率が100%となるようにベースラインを補正した。装置付属の鏡面測定用治具(傾斜角10度)を介して、蒸着フィルムの金属薄膜面が積分球側になるようサンプルを固定した。波長400〜700nmの範囲で、1nm刻みで反射率を測定した。545〜555nmの測定値(計11点)を平均して光線反射率とした。
なお、積層ポリエステルフィルムに金属薄膜層を設けない場合は、積層ポリエステルフィルムの表面層(A)の面が積分球側になるようにサンプルを固定し、前記の手順にしたがって、前記表面層(A)に光を照射して、積層ポリエステルフィルムの光線反射率を求めた。
(13)金属薄膜層の形成工程における積層ポリエステルフィルムの表面汚染のモデル評価
(a)加熱処理
測定すべきフィルムの任意の5箇所より小片を切り取り、端部を蛇の目クリップで把持して170℃の熱風中で20分間加熱した。この際、フィルムが他のフィルムや器具と触れないように保持して、キズなどが生じないように取り扱った。加熱後は室温中へ取り出して、十分に自然冷却した後、次の観察を行った。
(b)フィルム表面の析出粒子の占有面積比
まず、測定すべきフィルム小片から、除電ブロワーによって塵などを注意深く取り除いた。この表面を非接触型三次元形状測定装置(Micromap社製;Micromap557)で測定した。光学系にはミロー型二光束干渉対物レンズ(50倍)とズームレンズ(Body Tube,0.5倍)を使用し、5600オングストロームの光源を用いて、2/3インチCCDカメラで受光した。測定はWAVEモードで行い、245μm四方の視野を480ピクセル四方のデジタル画像として処理した。
画像の解析には解析ソフトウェア(Micromap123、バージョン4.0)を用いて、4次関数モードで傾斜除去(Detrending)し、表面形状データを得た。当該形状データから解析ソフトウェア(SX−Viewer、バージョン3.4.2)を用いて粒子解析を行った。ソフトウェアの補正機能により、平面補正と補間を行った後、最長径が0.01から2000μm、高さが0.1μmから1000μmの突起を解析した。突起の解析のパラメータとして、二値化閾値0.01と再二値化閾値50、ブロックサイズ4を与え、突起を二値化して抽出した。得られた解析結果から突起の占有面積を求め、上記加熱処理の前後で増加した突起の占有面積と視野の面積(6.0×104μm2)の比率を占有面積比とした。なお、測定は5つのフィルム小片において、明確なキズや異物などを避けた任意の3箇所でそれぞれ行い、合計15視野での平均値を求めた。
(3層または4層の積層ポリエステルフィルムの実施例)
実施例1
[表面層(A)及びポリエステル層(A′)の原料となるポリエステルの製造]
エステル化反応缶を昇温し、200℃に到達した時点で、テレフタル酸が86.4質量部及びエチレングリコールが64.4質量部からなるスラリーを仕込んだ。次いで、該スラリーを撹拌しながら、触媒として三酸化アンチモンを0.017質量部及びトリエチルアミンを0.16質量部添加した。さらに、加熱昇温を行い、ゲージ圧0.34MPa、240℃の条件で加圧エステル化反応を行った。
その後、エステル化反応缶内を常圧に戻し、酢酸マグネシウム4水和物0.071質量部、次いでリン酸トリメチル0.014質量部を添加した。さらに、15分かけて260℃に昇温し、リン酸トリメチル0.012質量部、次いで酢酸ナトリウム0.0036質量部を添加した。得られたエステル化反応生成物を重縮合反応缶に移送した。次いで、減圧下で260℃から280℃へ徐々に昇温し、285℃で重縮合反応を行った。重縮合反応終了後、孔径5μm(初期濾過効率95%)のステンレススチール焼結体製フィルターで濾過処理を行った。
次に、空気中に存在する径が1μm以上の異物を、ヘパフィルターで減少させた密閉室内で、上記重縮合反応生成物であるポリエチレンテレフタレート(PET)をペレット化した。ペレット化は、予め濾過処理(孔径:1μm以下)を行った冷却水を流しながら、冷却水槽中に溶融PETを押出機のノズルから押出し、形成されたストランド状PET樹脂をカットする方法で行った。得られたPETのペレットは、固有粘度が0.62dl/g、Sb含有量が144ppm、Mg含有量が58ppm、P含有量が40ppm、カラーL値が56.2、カラーb値が1.6であり、不活性粒子及び内部析出粒子は実質的に含有していなかった。なお、本実施例1においては、表面層(A)及びポリエステル層(A′)用に用いるポリエステルは同じものを用いた。
[空洞形成剤含有マスターペレット(I)の調製]
白色遮光層(B)の原料の1つとして、メルトフローレート1.5のポリスチレン(日本ポリスチ社製、G797N)20質量%、メルトフローレート3.0の気相法重合ポリプロピレン(出光石油化学製、F300SP)20質量%、及びメルトフローレート180のポリメチルペンテン(三井化学製:TPX DX−820)60質量%をペレット混合した。次いで、このペレット混合物を2軸押出機に供給して十分に溶融混練りし、ストランド状に押し出した。このストランドを冷却、切断して空洞形成剤含有マスターペレット(I)を調整した。
[酸化チタン含有マスターペレット(II)の調製]
白色遮光層(B)の原料の1つとして、極限粘度0.62dl/gのポリエチレンテレフタレート49.5質量%に、平均粒径0.3μm(電顕法)のアナターゼ型二酸化チタン(富士チタン社製、TA−300)50質量%、及び蛍光増白剤(イーストマンケミカル製、OB−1)0.5質量%を混合し、該混合物をベント式2軸押出機に供給して予備混練りした。次いで、溶融ポリマーを連続的にベント式単軸混練り機に供給した後、十分に混練りして、酸化チタン含有マスターペレット(II)を調整した。
[塗布層(C′)形成用塗布液の調製]
(共重合ポリエステルの調製)
撹拌機、温度計、及び部分還流式冷却器を具備したステンレススチール製オートクレーブに、ジメチルテレフタレート345質量部、1,4−ブタンジオール211質量部、エチレングリコール270質量部、及びテトラ−n−ブチルチタネート0.5質量部を仕込み、160℃から220℃まで、4時間かけてエステル交換反応を行った。次いで、フマル酸14質量部及びセバシン酸160質量部を加え、200℃から220℃まで1時間かけて昇温し、エステル化反応を行った。次いで255℃まで昇温し、反応系を徐々に減圧した後、29.3Paの減圧下で1時間30分反応させ、共重合ポリエステルを得た。得られた共重合ポリエステルは、淡黄色透明であり重量平均分子量は20.000であった。また、NMR分析による芳香族成分の割合は70モル%であった。
(グラフト変性樹脂の調製)
撹拌機、温度計、還流装置と定量滴下装置を備えた反応器に共重合ポリエステル75質量部、メチルエチルケトン56質量部及びイソプロピルアルコール19質量部を入れ、65℃で加熱、撹拌し、樹脂を溶解した。樹脂が完全に溶解した後、無水マレイン酸15質量部をポリエステル溶液に添加した。
次いで、スチレン10質量部、及びアゾビスジメチルバレロニトリル1.5質量部を12質量部のメチルエチルケトンに溶解した溶液を0.1ml/分でポリエステル溶液中に滴下し、さらに2時間撹拌を続けた。反応溶液から分析用のサンプリングを行った後、メタノール5質量部を添加した。次いで、水300質量部とトリエチルアミン15質量部を反応溶液に加え、1時間撹拌した。その後、反応器内温を100℃に上げ、メチルエチルケトン、イソプロピルアルコール、過剰のトリエチルアミンを蒸留により留去し、水分散性グラフト樹脂を得た。この水分散性グラフト樹脂)は淡黄色透明であった。この樹脂の酸価は1400eq/tであった。
(塗布液の調整)
上記方法で調製した水分散性グラフト樹脂の25質量%水分散液を40質量部、ポリスチレンスルホン酸アンモニウム塩(日本NSC株式会社製、分子量70,000)を4.3質量部、水を24質量部及びイソプロピルアルコールを36質量部、それぞれ混合し、さらにアニオン系界面活性剤の10質量%水溶液を0.6質量部、プロピオン酸を1質量部、粒子aとして、イオン交換水中でホモジナイザ−により分散処理したコロイダルシリカ粒子(日産化学工業社製、スノーテックスOL、平均粒径40nm)の20質量%水分散液を1.8質量部、粒子bとして、イオン交換水中でホモジナイザ−により分散処理した乾式法シリカ粒子(日本アエロジル社製、アエロジルOX50、平均凝集粒径200nm、平均一次粒径40nm)の4質量%水分散液を1.1質量部添加し、塗布液とした。粒子aと粒子bの質量比は8、粒子bの含有量は被覆層の樹脂組成物に対して0.42質量%である。
[積層ポリエステルフィルムの製造]
前記空洞形成剤含有マスターペレット(I)7質量%、酸化チタン含有マスターペレット(II)7質量%、及び極限粘度0.62dl/gのPET樹脂86質量%よりなる混合物を白色遮光層(B)の原料とした。また、前記表面層(A)及びポリエステル層(A′)の原料に用いるポリエステルを、白色遮光層(B)の両面に積層されるように2台の押出し機に供給し、表面層(A)/白色遮光層(B)/ポリエステル層(A′)の厚み比率が8/84/8となるようにフィードブロックで接合した。次いで、3層ダイスより20℃に調節された冷却ドラム上に押し出し、厚み1.6mmの2種3層の層構成からなる未延伸フィルムを製造した。
なお、ポリエステル、及びポリエステルとマスターペレットとの混合物は予め真空乾燥した後に、押出し機に供給した。また、表面層(A)及びポリエステル層(A′)に関しては、溶融PETの異物除去用濾材として濾過可能な粒子サイズが10μm(初期濾過効率95%)のステンレススチール製焼結濾材を用いて精密濾過を行った。さらに、冷却ドラムの反対面には20℃に温調した冷風を吹き付け冷却した。
得られた未延伸フィルムを、加熱ロールを用いて65℃に均一加熱し、周速が異なる2対のニップロール(低速ロール:1m/分、高速ロール:3.4m/分)間で3.4倍に延伸した。このとき、フィルムの補助加熱装置として、ニップロール中間部に金反射膜を備えた赤外線加熱ヒータ(定格:40W/cm)をフィルムの両面に対向して設置(フィルム表面から1cmの距離)し、片面を18W/cm、反対面を12W/cmにて加熱した。該フィルム製造時に用いる全ロールに関し、ロールの表面粗度をRaで0.1μm以下に管理し、縦延伸工程の予熱入口と冷却ロールにロールクリーナーを設置した。縦延伸工程のロール径は150mmであり、サクションロール、静電密着、パートニップの密着装置を採用してフィルムをロールへ密着させた。
上記方法で調製した塗布層(C′)形成用塗布液を、濾過可能な粒子サイズ10μm(初期濾過効率95%)のフェルト型ポリプロピレン製濾材で精密濾過し、リバースロール法によって、上記の一軸延伸PETフィルムの片面(冷却ロールと接触した面とは反対側の表面)に塗布、乾燥した。この際のコート量は、0.1g/m2であった。塗布後引き続いて、フィルムの端部をクリップで把持して130℃に加熱された熱風ゾーンに導いて乾燥した後、幅方向に4.0倍に延伸した。次いで、フィルム幅の長さを固定した状態で赤外線ヒーターによって250℃で0.6秒間加熱し、片面に塗布層を有する、厚さ188μmの二軸配向積層ポリエステルフィルムを得た。得られた積層ポリエステルフィルムの特性値を表1及び表2に示す。なお、得られた積層ポリエステルフィルムの白色度は84であった。
[鏡面反射フィルムの製造]
上記方法で得られた積層ポリエステルフィルムの平滑な表面層(A)に、以下の方法で、アルミニウムからなる金属薄膜層(厚み:40nm)を設けた鏡面反射フィルムを得た。
すなわち、ベルジャー型真空蒸着装置のタングステンフィラメントにアルミ金属片(10mg)を固定し、これより10cm離して、前記の積層ポリエステルフィルムを設置した。ベルジャーを密閉した後、真空ポンプを用いて0.01Paまで減圧し、フィラメントに電流を加えてアルミニウムを蒸発させた。およそ15秒程度の加熱でアルミニウム金属片をほぼ全て蒸発させた後、系が冷却されるのを待って常圧まで戻し、蒸着フィルム(鏡面反射フィルム)を取り出した。得られた鏡面反射フィルムの特性値を表2に示す。
本実施例1で得られた積層ポリエステルフィルムは、表面層(A)の平滑性に優れ、かつ白色遮光層(B)の遮光性に優れているので、得られた鏡面反射フィルムは、金属薄膜層の表面における光線反射率が高い。また、金属薄膜層を透過した光が白色遮光層(B)で遮光されているので、金属薄膜層にピンホールがあっても観察されない。また、ポリエステル層(A′)に塗布層(C′)が積層されているため、最外層となる塗布層(C′)の表面が適度に粗面化されている。そのため、表面層(A)が平滑であるにもかかわらず、滑り性に優れている。さらに、加熱によるカールの発生が抑制されているため、フィルムの取り扱い性が良好である。また、白色遮光層(B)に空洞が含有されているため、積層ポリエステルフィルムは見かけ密度が小さく、軽量である。また、帯電防止性に優れていた。さらに、金属薄膜層形成加工工程における表面汚染のモデル評価法である、加熱処理された積層ポリエステルフィルム表面の析出粒子評価において、両面共に、粒子の表面析出は認められず高品質であった。
比較例1
実施例1において、表面層(A)及びポリエステル層(A′)の原料として、白色遮光層(B)と同じ原料を用いたこと以外は実施例1と同様にして、積層ポリエステルフィルム及び鏡面反射フィルムを得た。得られた積層ポリエステルフィルム及び鏡面反射フィルムの特性値を表1及び表2に示す。
本比較例1で得られた積層ポリエステルフィルムは、金属薄膜層を形成する面である表面層(A)の平滑性が劣っている。そのため、得られた鏡面反射フィルムは、金属薄膜層の表面における光線反射率が低く、光反射用部材として低品質であった。
比較例2
実施例1において、層(B)の原料として、表面層(A)やポリエステル層(A′)と同じポリエステルを用いたこと以外は実施例1と同様にして、積層ポリエステルフィルム及び鏡面反射フィルムを得た。得られた積層ポリエステルフィルム及び鏡面反射フィルムの特性値を表1及び2に示す。
本比較例2で得られた積層ポリエステルフィルムは、表面層(A)の平滑性に優れている。しかしながら、前記の積層ポリエステルフィルムは、層(B)に遮光性がないため、光線透過率が高い。そのため、得られた鏡面反射フィルムは、金属薄膜層の表面における光線反射率が低く、金属薄膜層にもピンホールが多く観察された。したがって、光反射用部材用として低品質であった。
本比較例2で得られた鏡面反射フィルムは、表面層(A)が表面平滑性に優れているにもかかわらず、実施例1で得られた鏡面反射フィルムに比べ、金属薄膜層の表面における光線反射率が劣っている。この理由は、金属薄膜層を透過した光を白色遮光層(B)で遮断し、反射する効果が不十分であったためと推察される。
比較例3
実施例1において、白色遮光層(B)に用いる原料として、酸化チタン含有マスターペレット(II)を使用せず、空洞形成剤含有マスターペレット(I)の混合比を14質量%に変更すること以外は実施例1と同様にして、積層ポリエステルフィルム及び鏡面反射フィルムを得た。得られた積層ポリエステルフィルム及び鏡面反射フィルムの特性値を表1及び2に示す。
本比較例3で得られた積層ポリエステルフィルムは、白色遮光層(B)の遮光性が低いため、光線透過率が高い。そのため、得られた鏡面反射フィルムは、金属薄膜層の表面における光線反射率が劣るだけでなく、金属薄膜層にもピンホールが多く観察された。したがって、光反射用部材として低品質であった。
比較例4
比較例2において、塗布層(C′)を形成させなかったこと以外は比較例2と同様にして、積層ポリエステルフィルム及び鏡面反射フィルムを得た。得られた積層ポリエステルフィルム及び鏡面反射フィルムの特性値を表1及び2に示す。
本比較例4で得られた積層ポリエステルフィルムは、金属薄膜層を形成する表面層(A)とは反対側のポリエステル層(A′)が表面層(A)と同様に平滑である。そのため、比較例2に記載の品質低下に加え、滑り性が著しく劣り、さらにフィルムの巻き取り性等のハンドリング性にも劣っていた。そのため、得られた積層ポリエステルフィルムは、金属薄膜層を形成する面である表面層(A)における傷が多かった。
また、層(B)の遮光性が低いため、光線透過率が高い。そのため、得られた鏡面反射フィルムは、金属薄膜層の表面における光線反射率が劣るだけでなく、金属薄膜層にもピンホールが多く観察された。したがって、光反射用部材として低品質であった。
比較例5
比較例2において、表面層(A)及びポリエステル層(A′)に用いるポリエステルの製造時に、重合触媒の三酸化アンチモンの添加量を2倍量とし、かつ重縮合反応終了後に用いるポリエステルの濾過用フィルターの孔径を20μm(初期濾過効率95%)に変更すること以外は比較例2と同様にして、積層ポリエステルフィルム及び鏡面反射フィルムを得た。得られた積層ポリエステルフィルム及び鏡面反射フィルムの特性値を表1及び2に示す。
本比較例5で得られた積層ポリエステルフィルムは、比較例2に記載したフィルムの品質低下だけでなく、表面層(A)の表面における粗大突起数も多かった。したがって、光反射用部材として低品質であった。
実施例2
実施例1において、積層ポリエステルフィルムの製造時の押出し機を3台とし、ポリエステル層(A′)の原料として使用するポリエステルの代わりに、表面層(C)の原料として、平均粒径2μmの球状シリカ粒子500ppmを含むポリエチレンテレフタレート樹脂を用い、かつ塗布層(C′)形成用塗布液へのコロイダルシリカ粒子と乾式法シリカ粒子の配合を取り止める以外は、実施例1と同様にして実施例2の積層ポリエステルフィルム及び鏡面反射フィルムを得た。得られた積層ポリエステルフィルム及び鏡面反射フィルムの特性値を表1及び2に示す。
本実施例2で得られた積層ポリエステルフィルム及び鏡面反射フィルムは、実施例1で得られたものと同様に高品質であり、光反射用部材として実用性が高いものであった。
比較例6
実施例2において、表面層(A)の原料として、表面層(C)と同じポリエステルを用いること以外は実施例2と同様にして、積層ポリエステルフィルム及び鏡面反射フィルムを得た。得られた積層ポリエステルフィルム及び鏡面反射フィルムの特性値を表1及び2に示す。
本比較例6で得られた積層ポリエステルフィルムは、表面層(A)の表面平滑性が劣っていた。そのため、得られた鏡面反射フィルムは、金属薄膜層の表面における光線反射率に劣っていた。したがって、光反射用部材として低品質であった。
比較例7
実施例2において、3層全てを表面層(C)と同じポリエステルを用いるように変更すること以外は実施例2と同様にして、積層ポリエステルフィルム及び鏡面反射フィルムを得た。得られた積層ポリエステルフィルム及び鏡面反射フィルムの特性値を表1及び2に示す。
本比較例7で得られた積層ポリエステルフィルムは、白色遮光層(B)の遮光性が低く、光線透過度が高く、かつ、表面層(A)の表面平滑性に劣っていた。そのため、得られた鏡面反射フィルムは、金属薄膜層の表面における光線反射率が劣り、金属薄膜層のピンホールも多かった。したがって、光反射用部材として低品質であった。
比較例8
比較例6において、積層フィルムの層厚み比率を、表面層(A)/白色遮光層(B)/表面層(C)=8/90/2に調整し、かつダイスより押出した未延伸フィルムを冷却ドラムにより冷却する際に、冷却ドラムの反対面に20℃に温調した冷風を吹き付けることを取り止めたこと以外は比較例6と同様にして、積層ポリエステルフィルム及び鏡面反射フィルムを得た。得られた積層ポリエステルフィルム及び鏡面反射フィルムの特性値を表1及び2に示す。
本比較例8で得られた積層ポリエステルフィルムは、比較例6で得られた積層ポリエステルフィルムの品質低下に加えて、カールが大きく、例えば、光反射板等として最終製品に組み込む場合の無緊張下での作業時のハンドリング性が悪化した。したがって、光反射用部材として低品質であった。
比較例9
実施例2において、積層ポリエステルフィルムの全体厚みを100μmに変更し、さらに各層の厚み比率を、表面層(A)/白色遮光層(B)/表面層(C)=1/98/1に変更すること以外は実施例2と同様にして、積層ポリエステルフィルム及び鏡面反射フィルムを得た。得られた積層ポリエステルフィルム及び鏡面反射フィルムの特性値を表1及び2に示す。
本比較例9で得られた積層ポリエステルフィルムは、表面層(A)の表面平滑性に劣っていた。そのため、得られた鏡面反射フィルムは、金属薄膜層の表面における光線反射率が劣っていた。したがって、光反射用部材として低品質であった。
比較例10
実施例1において、層(A)の表面にも塗布層(C′)を形成させ、金属薄膜層を形成させる側から、塗布層C′/層A/白色遮光層B/層C(層A)/塗布層C′の順に積層させたこと以外は実施例1と同様にして、積層ポリエステルフィルム及び鏡面反射フィルムを得た。得られた積層ポリエステルフィルム及び鏡面反射フィルムの特性値を表1及び2に示す。
本比較例10で得られた積層ポリエステルフィルムは、金属薄膜層を形成させる側の表面の平滑性に劣っていた。そのため、得られた鏡面反射フィルムは、金属薄膜層の表面における光線反射率がっていた。したがって、光反射用部材として低品質であった。
実施例3
実施例1において、白色遮光層(B)の原料として、空洞形成剤含有マスターペレット(I)を使用せず、酸化チタン含有マスターペレット(II)の混合比率を14質量%に変更したこと以外は実施例1と同様にして、積層ポリエステルフィルム及び鏡面反射フィルムを得た。得られた積層ポリエステルフィルム及び鏡面反射フィルムの特性値を表1及び2に示す。
本実施例3で得られた積層ポリエステルフィルム及び鏡面反射フィルムの光反射特性に関連する特性は実施例1で得られたものと同様に高品質であった。ただし、本実施例3で得られた積層ポリエステルフィルムは、白色遮光層(B)の内部の空洞が少なかった。そのため、得られた積層ポリエステルフィルムは見かけ密度が高く、軽量化の点では実施例1で得られた積層ポリエステルフィルムよりも劣っていた。
実施例4
実施例1で得られた積層ポリエステルフィルムを用いて、表面層(A)にアルミニウムからなる金属薄膜層を真空蒸着法により形成させる際に、その厚みを0nm(蒸着無し)、41nm、104nmと変えた下記の3種類の実験を行った。得られた結果を図5に示す。
(実施例4−1)
実施例4−1は、実施例1の積層ポリエステルフィルムを用い、金属薄膜層を設けなかった実験例である。前記の積層ポリエステルフィルムの表面層(A)に光を照射した際の光線反射率は69%であった。
(実施例4−2)
実施例4−2は、実施例1の積層ポリエステルフィルムの表面層(A)に、真空蒸着法により、厚みが41nmのアルミニウムから構成された金属薄膜層を形成させた鏡面反射フィルムの実験例である。得られた鏡面反射フィルムの金属薄膜層に光を照射した際の光線反射率は72%であった。
(実施例4−3)
実施例4−3は、実施例1の積層ポリエステルフィルムの表面層(A)に、真空蒸着法により、厚みが104nmのアルミニウムから構成された金属薄膜層を形成させた鏡面反射フィルムの実験例である。得られた鏡面反射フィルムの金属薄膜層に光を照射した際の光線反射率は85%であった。
比較例11
比較例2で得られた積層ポリエステルフィルムを用いて、表面層(A)にアルミニウムからなる金属薄膜層を真空蒸着法により形成させる際に、その厚みを0nm(蒸着無し)、29nm、70nm、98nmと変えた下記の4種類の実験を行った。得られた結果を図5に示す。
(比較例11−1)
比較例11−1は、比較例2の積層ポリエステルフィルムを用い、金属薄膜層を設けなかった実験例である。前記の積層ポリエステルフィルムの表面層(A)に光を照射した際の光線反射率は8%であった。
(比較例11−2)
比較例11−2は、比較例2の積層ポリエステルフィルムの表面層(A)に、真空蒸着法により、厚みが29nmのアルミニウムから構成された金属薄膜層を形成させた鏡面反射フィルムの実験例である。得られた鏡面反射フィルムの金属薄膜層に光を照射した際の光線反射率は37%であった。
(比較例11−3)
比較例11−3は、比較例2の積層ポリエステルフィルムの表面層(A)に、真空蒸着法により、厚みが70nmのアルミニウムから構成された金属薄膜層を形成させた鏡面反射フィルムの実験例である。得られた鏡面反射フィルムの金属薄膜層に光を照射した際の光線反射率は80%であった。
(比較例11−4)
比較例11−4は、比較例2の積層ポリエステルフィルムの表面層(A)に、真空蒸着法により、厚みが98nmのアルミニウムから構成された金属薄膜層を形成させた鏡面反射フィルムの実験例である。得られた鏡面反射フィルムの金属薄膜層に光を照射した際の光線反射率は83%であった。
図5より、実施例1で得られた鏡面反射フィルムは、比較例2で得られた鏡面反射フィルムよりも金属薄膜層の表面における光線反射率が高く、かつ金属薄膜層の厚みの変動による光線反射率の影響が小さい。このことは、金属薄膜層を透過した光の漏れを白色遮光層(B)で遮断し、反射する効果が高いことを明確に示している。
金属薄膜層の厚みはその成膜方法により異なるが、一般的に20%程度の厚みの変動がある。特に、加工装置内部で蒸着金属源から離れた端部では、金属薄膜層の厚みが薄くなりやすい。しかしながら、白色遮光層(B)を設けることにより、この金属薄膜層の厚み変動による光線反射率の変動を抑制することができる。また、上記金属薄膜層の厚み変動による製品収率の低下を抑制することができる。さらに、金属薄膜層の厚みを薄くしても、高い光線反射率が確保できるため、経済的にも優れている。したがって、積層ポリエステルフィルムの平滑層(表面層A)の上に金属薄膜層を設けた鏡面反射フィルムにおいて、白色遮光層(B)を設けることにより、反射率の変動の低減及び経済性の両面において顕著な効果が得られる。
Figure 2007290164
Figure 2007290164
(2層タイプの積層ポリエステルフィルムの実施例)
実施例5
[表面層(A)及び白色遮光層(B)用ポリエステルの製造]
エステル化反応缶を昇温し、200℃に到達した時点で、テレフタル酸が86.4質量部及びエチレングリコールが64.4質量部からなるスラリーを仕込んだ。次いで、撹拌しながら、触媒として三酸化アンチモンを0.017質量部及びトリエチルアミンを0.16質量部添加した。さらに、加熱昇温を行い、ゲージ圧0.34MPa、240℃の条件で加圧エステル化反応を行った。
その後、エステル化反応缶内を常圧に戻し、酢酸マグネシウム4水和物0.071質量部、次いでリン酸トリメチル0.014質量部を添加した。さらに、15分かけて260℃に昇温し、リン酸トリメチル0.012質量部、次いで酢酸ナトリウム0.0036質量部を添加した。得られたエステル化反応生成物を重縮合反応缶に移送し、減圧下で260℃から280℃へ徐々に昇温し、285℃で重縮合反応を行った。重縮合反応終了後、孔径5μm(初期濾過効率95%)のステンレススチール焼結体製フィルターで濾過処理を行った。
次に、空気中に存在する径が1μm以上の異物を、ヘパフィルターで減少させた密閉室内で、上記重縮合反応生成物であるポリエチレンテレフタレート(PET)をペレット化した。ペレット化は、予め濾過処理(孔径:1μm以下)を行った冷却水を流しながら、冷却水槽中に溶融PETを押出機のノズルから押出し、形成されたストランド状PET樹脂をカットする方法で行った。得られたPETのペレットは、固有粘度が0.62dl/g、Sb含有量が144ppm、Mg含有量が58ppm、P含有量が40ppm、カラーL値が56.2、カラーb値が1.6であり、不活性粒子及び内部析出粒子は実質的に含有していなかった。
[低オリゴマー処理ポリエステルの製造]
上記方法で得られたポリエステルを、減圧下160℃にて乾燥した。次いで、400ppmのエチレングリコールを含有する窒素ガスを粗製ポリエステル1kg当たり、毎時40リットルで流通した。さらに、この反応系を1.2kg/cm2の微加圧に調整し、215℃で20時間加熱処理をしてオリゴマー量を低減する処理を行った。得られたポリエステルの固有粘度は0.612dl/gであり、環状三量体の含有量は3400ppmであった。なお、オリゴマー量を低減する処理を行う前のポリエステル中の環状三量体の含有量は9600ppmであった。
[空洞形成剤含有マスターペレット(I)の調製]
白色遮光層(B)の原料の1つとして、メルトフローレート1.5のポリスチレン(日本ポリスチ製、G797N)20質量%、メルトフローレート3.0の気相法重合ポリプロピレン(出光石油化学製、F300SP)20質量%、及びメルトフローレート180のポリメチルペンテン(三井化学製、TPX DX−820)60質量%をペレット混合した。次いで、このペレット混合物を2軸押出機に供給して十分に溶融混練りし、ストランド状に押し出した。このストランドを冷却、切断して空洞形成剤含有マスターペレット(I)を調整した。
[酸化チタン含有マスターペレット(II)の調製]
白色遮光層(B)の原料の1つとして、極限粘度0.62dl/gのポリエチレンテレフタレート49.5質量%に、平均粒径0.3μm(電顕法)のアナターゼ型二酸化チタン(富士チタン製、TA300)50質量%、及び蛍光増白剤(イーストマンケミカル製、OB−1)0.5質量%を混合し、該混合物をベント式2軸押出機に供給して予備混練りした。次いで、溶融ポリマーを連続的にベント式単軸混練り機に供給した後、十分に混練りして、酸化チタン含有マスターペレット(II)を調整した。
[積層ポリエステルフィルムの製造]
前記の空洞形成剤含有マスターペレット(I)7質量%、酸化チタン含有マスターペレット(II)7質量%、及びオリゴマーの低減処理を行ったPET樹脂86質量%よりなる混合物を、白色遮光層(B)の原料とした。また、前記の表面層(A)の原料に用いるオリゴマーの低減処理を行ったポリエステルを、白色遮光層(B)の表面に積層するように2台の押出し機に供給し、表面層(A)/白色遮光層(B)の厚み比率が8.7/91.3となるようにフィードブロックで接合した。次いで、2層ダイスより20℃に調節された冷却ドラム上に押し出し、厚み1.6mmの2層構成の未延伸フィルムを製造した。
なお、ポリエステル、及びポリエステルとマスターペレットとの混合物は予め真空乾燥した後に、押出し機に供給した。また、表面層(A)に関しては、溶融PETの異物除去用濾材として濾過可能な粒子サイズが10μm(初期濾過効率95%)のステンレススチール製焼結濾材を用いて精密濾過を行った。さらに、冷却ドラムの反対面には20℃に温調した冷風を吹き付け冷却した。
得られた未延伸フィルムを、加熱ロールを用いて65℃に均一加熱し、周速が異なる2対のニップロール(低速ロール:1m/分、高速ロール:3.4m/分)間で3.4倍に延伸した。このとき、フィルムの補助加熱装置として、ニップロール中間部に金反射膜を備えた赤外線加熱ヒータ(定格:40W/cm)をフィルムの両面に対向して設置(フィルム表面から1cmの距離)し、片面を18W/cm、反対面を12W/cmにて加熱した。該フィルム製造時に用いる全ロールに関し、ロールの表面粗度をRaで0.1μm以下に管理し、縦延伸工程の予熱入口と冷却ロールにロールクリーナーを設置した。縦延伸工程のロール径は150mmであり、サクションロール、静電密着、パートニップの密着装置を採用してフィルムをロールへ密着させた。
次いで、幅方向に4.0倍に延伸した。引き続いてフィルム幅の長さを固定した状態で赤外線ヒーターによって250℃で0.6秒間加熱し、厚さ188μmの二軸配向積層ポリエステルフィルムを得た。得られた積層ポリエステルフィルムの特性値を表3に示す。なお、得られた積層ポリエステルフィルムの白色度は84であった。
[鏡面反射フィルムの製造]
上記方法で得られた積層ポリエステルフィルムの平滑な表面層(A)に、以下の方法で、アルミニウムからなる金属薄膜層(厚み:40nm)を設けた鏡面反射フィルムを得た。
すなわち、ベルジャー型真空蒸着装置のタングステンフィラメントにアルミ金属片(10mg)を固定し、これより10cm離して、前記の積層ポリエステルフィルムを設置した。ベルジャーを密閉した後、真空ポンプを用いて0.01Paまで減圧し、フィラメントに電流を加えてアルミニウムを蒸発させた。およそ15秒程度の加熱でアルミニウム金属片をほぼ全て蒸発させた後、系が冷却されるのを待って常圧まで戻し、蒸着フィルム(鏡面反射フィルム)を取り出した。得られた鏡面反射フィルムの特性値を表4に示す。
本実施例5で得られた積層ポリエステルフィルムは、表面層(A)の平滑性に優れ、かつ白色遮光層(B)の遮光性に優れているので、得られた鏡面反射フィルムは、金属薄膜層の表面における光線反射率が高い。また、金属薄膜層を透過した光が白色遮光層(B)で遮光されているので、金属薄膜層にピンホールがあっても観察されない。また、積層ポリエステルフィルムの平滑な表面層(A)の反対面である白色遮光層(B)の表面が適度に粗面化されている。そのため、表面層(A)が平滑であるにもかかわらず、滑り性に優れている。また、白色遮光層(B)に空洞が含有されているため、積層ポリエステルフィルムは見かけ密度が小さく、軽量である。
さらに、本実施例5で得られた積層ポリエステルフィルムは、金属薄膜層の形成工程における表面汚染のモデル評価法である、加熱処理された積層ポリエステルフィルム表面の析出粒子評価において、表面層(A)および白色遮光層のいずれの表面とも、粒子の析出が認められず、高品質であった。
比較例12
実施例5において、表面層(A)の原料として、白色遮光層(B)と同じ原料を用いること以外は実施例5と同様にして、積層ポリエステルフィルム及び鏡面反射フィルムを得た。得られた積層ポリエステルフィルム及び鏡面反射フィルムの特性値を表3及び4に示す。
本比較例12で得られた積層ポリエステルフィルムは、金属薄膜層を形成する面である表面層(A)の平滑性が劣っている。そのため、得られた鏡面反射フィルムは、金属薄膜層の表面における光線反射率が低く、光反射用部材として低品質であった。
比較例13
実施例5において、層(B)の原料として表面層(A)と同じポリエステルを用い、かつポリエステルのオリゴマーの低減処理を行わなかったこと以外は実施例5と同様にして、積層ポリエステルフィルム及び鏡面反射フィルムを得た。得られた積層ポリエステルフィルム及び鏡面反射フィルムの特性値を表3及び4に示す。
本比較例13で得られた積層ポリエステルフィルムは、表面層(A)の平滑性に優れていた。しかしながら、白色遮光層(B)に遮光性がないため、光線透過率が高い。そのため、得られた鏡面反射フィルムは、金属薄膜層の表面における光線反射率が低く、金属薄膜層にもピンホールが多数観察された。したがって、光反射用部材用として低品質であった。
本比較例13で得られた鏡面反射フィルムは、表面層(A)が表面平滑性に優れているにもかかわらず、実施例5で得られた鏡面反射フィルムに比べ、金属薄膜層の表面における光線反射率が劣っている。この理由は、金属薄膜層を透過した光を白色遮光層(B)で遮断し、反射する効果が不十分であったためと推察される。
比較例14
実施例5において、白色遮光層(B)の原料として、酸化チタン含有マスターペレット(II)を使用せず、空洞形成剤含有マスターペレット(I)の混合比を14質量%に変更すること以外は実施例5と同様にして、積層ポリエステルフィルム及び鏡面反射フィルムを得た。得られた積層ポリエステルフィルム及び鏡面反射フィルムの特性値を表3及び4に示す。
本比較例14で得られた積層ポリエステルフィルムは、白色遮光層(B)の遮光性が低いため、光線透過率が高い。そのため、得られた鏡面反射フィルムは、金属薄膜層の表面における光線反射率が劣るだけでなく、金属薄膜層にもピンホールが多く観察された。したがって、光反射用部材として低品質であった。
比較例15
比較例14において、積層ポリエステルフィルムの層構成を、表面層(A)/白色遮光層(B)/表面層(A)の3層構造となるように、共押出し方法を変更すること以外は比較例14と同様にして、積層ポリエステルフィルム及び鏡面反射フィルムを得た。得られた積層ポリエステルフィルム及び鏡面反射フィルムの特性値を表3及び4に示す。
本比較例15で得られた積層ポリエステルフィルムは、比較例14の積層ポリエステルにおける品質の低下だけでなく、表面層(A)の反対面も表面層(A)と同様に平滑であるため、滑り性が著しく悪く、フィルムの巻き取り性等のハンドリング性が劣っていた。そのために、金属薄膜層を形成する面である表面層(A)における傷が多かった。したがって、光反射用部材として低品質であった。
比較例16
比較例14において、表面層(A)の原料として用いるポリエステルの製造時に、重合触媒の三酸化アンチモンの添加量を2倍量とし、かつ重縮合反応終了後に用いるポリエステルの濾過用フィルターの孔径を20μm(初期濾過効率95%)に変更すること以外は比較例14と同様にして、積層ポリエステルフィルム及び鏡面反射フィルムを得た。得られた積層ポリエステルフィルム及び鏡面反射フィルムの特性値を表3及び4に示す。
本比較例16で得られた積層ポリエステルフィルムは、比較例14の積層ポリエステルにおける品質の低下だけでなく、表面層(A)の表面における粗大突起数も多かった。したがって、光反射用部材として低品質であった。
比較例17
比較例14において、表面層(A)及び白色遮光層(B)の原料として、オリゴマーの低減処理を行っていないポリエステルを用いること以外は実施例5と同様にして、積層ポリエステルフィルム及び鏡面反射フィルムを得た。得られた積層ポリエステルフィルム及び鏡面反射フィルムの特性値を表3及び4に示す。
本比較例17で得られた積層ポリエステルフィルムは、比較例14の積層ポリエステルにおける品質の低下だけでなく、金属薄膜層の形成工程における表面汚染のモデル評価法である、加熱処理された積層ポリエステルフィルム表面の析出粒子評価において、表面層(A)および白色遮光層(B)のいずれの表面にも、数多くの粒子が析出し、低品質であった。
比較例18
実施例5において、積層ポリエステルフィルムの厚みを100μmに変更し、さらに各層の厚み比率を、表面層(A)/白色遮光層(B)=1/99に変更すること以外は、実施例5と同様にして積層ポリエステルフィルム及び鏡面反射フィルムを得た。得られた積層ポリエステルフィルム及び鏡面反射フィルムの特性値を表3及び4に示す。
本比較例18で得られた積層ポリエステルフィルムは、表面層(A)の表面平滑性に劣っていた。そのため、得られた鏡面反射フィルムは、金属薄膜層の表面における光線反射率が劣っており、光反射用部材として低品質であった。
実施例6
白色遮光層(B)の原料として、アナターゼ型二酸化チタン20質量(富士チタン工業製、TA300)及び蛍光増白剤(イーストマン製、OB−1、)0.05質量%を含有する、極限粘度が0.62dl/gのPETを用いる以外は実施例5と同様にして、積層ポリエステルフィルム及び鏡面反射フィルムを得た。得られた積層ポリエステルフィルム及び鏡面反射フィルムの特性値を表3及び4に示す。
本実施例6で得られた積層ポリエステルフィルムは、実施例5で得られた積層ポリエステルフィルムと同様に高品質であった。ただし、本実施例6で得られた積層ポリエステルフィルムは、白色遮光層(B)の内部に空洞が含有されていないため、見かけ密度が高く、軽量化の点では実施例5で得られた積層ポリエステルフィルムよりも劣っていた。
実施例7
実施例5で得られた積層ポリエステルフィルムを用いて、表面層(A)にアルミニウムからなる金属薄膜層を真空蒸着法により形成させる際に、その厚みを0nm(蒸着無し)、38nm、55nm、94nmと変えた下記の4種類の実験を行った。得られた結果を図6に示す。
(実施例7−1)
実施例7−1は、実施例5の積層ポリエステルフィルムを用い、金属薄膜層を設けなかった実験例である。前記の積層ポリエステルフィルムの表面層(A)に光を照射した際の光線反射率は69%であった。
(実施例7−2)
実施例7−2は、実施例5の積層ポリエステルフィルムの表面層(A)に、真空蒸着法により、厚みが38nmのアルミニウムから構成された金属薄膜層を形成させた鏡面反射フィルムの実験例である。得られた鏡面反射フィルムの金属薄膜層に光を照射した際の光線反射率は74%であった。
(実施例7−3)
実施例7−3は、実施例5の積層ポリエステルフィルムの表面層(A)に、真空蒸着法により、厚みが55nmのアルミニウムから構成された金属薄膜層を形成させた鏡面反射フィルムの実験例である。得られた鏡面反射フィルムの金属薄膜層に光を照射した際の光線反射率は78%であった。
(実施例7−4)
実施例7−4は、実施例5の積層ポリエステルフィルムの表面層(A)に、真空蒸着法により、厚みが94nmのアルミニウムから構成された金属薄膜層を形成させた鏡面反射フィルムの実験例である。得られた鏡面反射フィルムの金属薄膜層に光を照射した際の光線反射率は82%であった。
比較例19
比較例13で得られた積層ポリエステルフィルムを用いて、表面層(A)にアルミニウムからなる金属薄膜層を真空蒸着法により形成させる際に、その厚みを0nm(蒸着無し)、33nm、62nm、87nmと変えた下記の4種類の実験を行った。得られた結果を図6に示す。
(比較例19−1)
比較例19−1は、比較例13の積層ポリエステルフィルムを用い、金属薄膜層を設けなかった実験例である。前記の積層ポリエステルフィルムの表面層(A)に光を照射した際の光線反射率は10%であった。
(比較例19−2)
比較例19−2は、比較例13の積層ポリエステルフィルムの表面層(A)に、真空蒸着法により、厚みが33nmのアルミニウムから構成された金属薄膜層を形成させた鏡面反射フィルムである。得られた鏡面反射フィルムの金属薄膜層に光を照射した際の光線反射率は46%であった。
(比較例19−3)
比較例19−3は、比較例13の積層ポリエステルフィルムの表面層(A)に、真空蒸着法により、厚みが62nmのアルミニウムから構成された金属薄膜層を形成させた鏡面反射フィルムである。得られた鏡面反射フィルムの金属薄膜層に光を照射した際の光線反射率は69%であった。
(比較例19−4)
比較例19−4は、比較例13の積層ポリエステルフィルムの表面層(A)に、真空蒸着法により、厚みが87nmのアルミニウムから構成された金属薄膜層を形成させた鏡面反射フィルムである。前記の鏡面反射フィルムの金属薄膜層に光を照射した際の光線反射率は80%であった。
図6より、実施例5で得られた鏡面反射フィルムは、比較例13で得られた鏡面反射フィルムよりも金属薄膜層の表面における光線反射率が高く、かつ金属薄膜層の厚みの変動による光線反射率の影響が小さい。このことは、金属薄膜層を透過した光の漏れを白色遮光層(B)で遮断し、反射する補完効果が高いことを明確に示している。
金属薄膜層の厚みはその成膜方法により異なるが、一般的に20%程度の厚みの変動がある。特に、加工装置内部で蒸着金属源から離れた端部では、金属薄膜層の厚みが薄くなりやすい。しかしながら、白色遮光層(B)を設けることにより、この金属薄膜層の厚み変動による光線反射率の変動を抑制することができる。また、上記金属薄膜層の厚み変動による製品収率の低下を抑制することができる。さらに、金属薄膜層の厚みを薄くしても、高い光線反射率が確保できるため、経済的にも優れている。したがって、積層ポリエステルフィルムの平滑層(表面層A)の上に金属薄膜層を設けた鏡面反射フィルムにおいて、白色遮光層(B)を設けることにより、反射率の変動の低減及び経済性の両面において顕著な効果が得られる。
Figure 2007290164
Figure 2007290164
本発明の積層ポリエステルフィルムは、反射面となる金属薄膜層を鏡面反射層として、本発明の積層フィルムの平滑面(表面層A)に形成し、白色遮光層(B)に金属薄膜層を透過した光を遮断し、反射する機能を付与している。その結果、高度で均一な光線反射率を有する鏡面反射フィルムを得ることができる。そのため、輝度の高い鏡面反射フィルム、特に、LCD用の面光源反射板の用途に利用することができる。また、本発明の積層ポリエステルフィルムは、帯電防止性に優れているので、積層ポリエステルフィルムの製造時や加工時における静電気障害による欠点の発生が抑制されるという利点を有するので、産業界への寄与は大きい。
2層からなる積層ポリエステルフィルムの層構成を示す説明図である。 3層からなる積層ポリエステルフィルムの層構成を示す説明図である。 4層からなる積層ポリエステルフィルムの層構成を示す説明図である。 本発明の鏡面反射フィルムの層構成を示す説明図である。 実施例4及び比較例11で得られた鏡面反射フィルムにおいて、金属薄膜層の表面における光線反射率に対する金属薄膜層の厚みの影響を調べた説明図である。 実施例7及び比較例19で得られた鏡面反射フィルムにおいて、金属薄膜層の表面における光線反射率に対する金属薄膜層の厚みの影響を調べた説明図である。
符号の説明
1:積層ポリエステルフィルム
2:表面層(A)
3:白色遮光層(B)
4:表面C
5:表面層(C)
6:ポリエステル層(A′)
7:塗布層(C′)
8:金属薄膜層
9:鏡面反射フィルム
10:光の照射方向
20:実施例4で得られた鏡面反射フィルム
21:比較例11で得られた鏡面反射フィルム
30:実施例7で得られた鏡面反射フィルム
31:比較例19で得られた鏡面反射フィルム

Claims (12)

  1. 表面層(A)/白色遮光層(B)の層構成を含む積層ポリエステルフィルムであって、前記の白色遮光層(B)はその内部に空洞又は無機粒子の少なくとも一方を含有してなるポリエステル組成物を含み、表面層(A)はその表面が三次元十点平均粗さ(SRz)が0.23μm以下であるポリエステルからなる平滑層であり、積層ポリエステルフィルムは光線透過率が20%以下であり、かついずれかの層に帯電防止剤を含み、少なくとも片面の表面固有抵抗値(25℃、65%RH)が1×106〜1×1013Ω/□であることを特徴とする積層ポリエステルフィルム。
  2. 表面層(A)/白色遮光層(B)の層構成を含む積層ポリエステルフィルムであって、前記の白色遮光層(B)はその内部に空洞又は無機粒子の少なくとも一方を含有してなるポリエステル組成物を含み、表面層(A)は粒子を含有しないか、または粒子の含有量が50ppm以下であるポリエステルからなる平滑層であり、積層ポリエステルフィルムは光線透過率が20%以下であり、かついずれかの層に帯電防止剤を含み、少なくとも片面の表面固有抵抗値(25℃、65%RH)が1×106〜1×1013Ω/□であることを特徴とする積層ポリエステルフィルム。
  3. 前記の白色遮光層(B)の内部に、ポリエステルと該ポリエステルに非相溶性の熱可塑性樹脂を含むポリエステル組成物を少なくとも一方向に延伸することにより発現させた空洞を含有することを特徴とする請求項1または2に記載の積層ポリエステルフィルム。
  4. 前記積層ポリエステルフィルムの見かけ密度が0.60〜1.35g/cm3であることを特徴とする請求項1または2に記載の積層ポリエステルフィルム。
  5. 前記の白色遮光層(B)の表面の三次元十点平均粗さ(SRz)が0.23μmを越え3.0μm以下であることを特徴とする請求項1または2に記載の積層ポリエステルフィルム。
  6. 前記の積層ポリエステルフィルムの総厚みが75〜300μmであり、表面層(A)の厚み5〜30μmであることを特徴とする請求項1または2記載の積層ポリエステルフィルム。
  7. 前記の積層ポリエステルフィルムが、表面層(A)/白色遮光層(B)/表面層(C)の少なくとも3層の層構成からなり、前記の表面層(C)は樹脂と粒子を含む易滑層であり、かつ表面層(C)のSRzが、前記の表面層(A)のSRzよりも大きく2.0μm以下であることを特徴とする請求項1または2に記載の積層ポリエステルフィルム。
  8. 前記の積層ポリエステルフィルムが、表面層(A)/白色遮光層(B)/ポリエステル層(A′)/表面層(C)の層構成からなり、前記の表面層(C)は樹脂と粒子を含む塗布層(C′)であり、ポリエステル層(A′)は粒子を含有しないか、または粒子の含有量が100ppm以下であるポリエステルからなることを特徴とする請求項7記載の積層ポリエステルフィルム。
  9. 塗布層(C′)が、平均粒径20nm以上150nm未満の粒子a及び平均粒径150nm以上600nm以下の粒子bを含有することを特徴とする請求項8に記載の積層ポリエステルフィルム。
  10. 前記の積層ポリエステルフィルムの総厚みが100〜300μmであり、表面層(A)の厚みが5〜30μmであり、表面層(C)の厚み、またはポリエステル層(A′)と塗布層(C′)との厚みの合計が5〜30μmであることを特徴とする請求項7または8に記載の積層ポリエステルフィルム。
  11. 前記の積層ポリエステルフィルムを、無荷重の状態で、110℃で30分間加熱処理した後のカール値が1mm以下であることを特徴とする請求項1、2、7、8のいずれかに記載の積層ポリエステルフィルム。
  12. 前記の積層ポリエステルフィルムを170℃で20分間加熱処理した時に、積層ポリエステルフィルムの表面層(A)とは反対面に析出する粒子の占有面積比が0.008μm2/μm2以下であることを特徴とする請求項1、2、7、8のいずれかに記載の積層ポリエステルフィルム。
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