JP2007289057A - 金時草の加工方法、金時草有効成分エキス及びそれを含有する製品 - Google Patents

金時草の加工方法、金時草有効成分エキス及びそれを含有する製品 Download PDF

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【課題】 スイゼンジナ(Gynura bicolor DC )(別名 金時草)の有効成分を含有する加工方法と当該金時草の利用方法、及び当該金時草より水抽出して得られる金時草有効成分エキスの利用技術を提供すること。
【解決手段】 金時草を加熱する工程の後、減圧乾燥工程を行うことを特徴とする金時草の加工方法を提供する。この方法により得られた金時草は、水で抽出すると金時草有効成分エキスを得ることができる。
【選択図】なし

Description

本発明は、スイゼンジナ(以下、金時草とする)の有効成分を含有する加工方法、及び当該金時草の利用方法及び、当該金時草より水抽出して得られる金時草有効成分エキス(以下、金時草とする)、並びに金時草エキスを含有する食品又は食品素材又は化粧品、医薬品に関する。
近年、消費者の健康に関する関心の高まりから、生活習慣病など種々の疾病に対する予防効果(生体調節機能)を期待するようになっている。
これまでに、金時草に、血圧降下作用のあるγ-アミノ酪酸(GABA)が多く含まれること、抗酸化能(DPPHラジカル消去能)、が高いこと、がん細胞(HL60ヒト白血病細胞)アポトーシス誘導効果が認められたこと、抗変異原性が認められたことが明らかとなっている(非特許文献1、2、3、4参照)。
地域特産物の生理機能・活用便覧、184〜186、2004年、サイエンスフォーラム 石川県農業総合研究センター研究報告、Vol.24、25〜33、2002年 日本食品科学工学会誌、第49巻、8号、519〜526、2002年 石川県工業試験場研究報告、No.54、57〜64、2005年
本発明は、石川県の伝統野菜である金時草に注目し、生鮮野菜として食するだけでなく、その有効成分(金時草エキス)を食品類、菓子類、化粧品、医薬品等として利用することを目的としており、そのために、金時草から簡易に金時草エキスを抽出するための金時草の加工方法、並びに当該金時草の利用法及び当該金時草を用いた金時草エキスの製造法を提供する。
これまで、金時草エキスは生原料を加熱抽出して得られる抽出液をそのまま冷凍して保存し、必要な時に解凍する方法が用いられている。しかし、この方法では抽出液の保存場所の確保や金時草の収穫量が少ない期間に利用しにくいなどの問題がある。
また、金時草をそのまま凍結乾燥して得た金時草では、水抽出しても金時草エキスの抽出効率が低く、効率良く金時草エキスを抽出する方法が求められている。
また、金時草を蒸気加熱した後、熱風通風乾燥して得た金時草では、利用時の復元性が悪く、特に水もどしでは、金時草独特のぬめり(多糖類)が得られにくい。
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討を重ね、その過程で金時草の葉を蒸気加熱等加熱処理した後、減圧乾燥することによって得られる金時草が、金時草に含まれる有効成分(金時草エキス)を効率よく摂取・抽出できる原料として有用であることを見出し、かかる知見に基づいて本発明を完成した。
すなわち、請求項1に記載の本発明は、金時草を加熱(蒸気加熱、マイクロ波加熱など)する工程の後、減圧乾燥工程を行うことを特徴とする金時草の加工方法である。
請求項2に記載の本発明は、請求項1記載の減圧乾燥工程を、凍結乾燥法により行う金時草の加工方法であり、請求項3に記載の本発明は、請求項1記載の減圧乾燥工程を、真空減圧乾燥法により行う金時草の加工方法である。
請求項4に記載の本発明は、請求項1〜3のいずれかに記載の方法で得られた金時草を、水又は調味液に浸し、さらに必要に応じて加熱加工して得られた金時草である。
請求項5に記載の本発明は、請求項1〜3のいずれかに記載の方法で得られた金時草を水で抽出し、必要に応じて抽出液を濃縮又は粉末化することを特徴とする金時草有効成分エキスの製造方法である。
請求項6に記載の本発明は、請求項5に記載の方法で得られた金時草有効成分エキスである。
請求項7に記載の本発明は、請求項6に記載の金時草エキスを含有する食品、食品素材、化粧品又は医薬品である。
本発明に係る請求項1に記載の金時草の加工方法は、簡便に、効率良く金時草エキスを抽出できる実用性の高い方法である。また、この金時草は、金時草エキスを簡易に、かつ何時でも利用できる形で保存することができる。
また、本発明に係る請求項2、3に記載の金時草の加工方法を行うことで、金時草の有効成分を保持したまま、色や香りを活かした金時草エキスを得ることができる。さらに、この金時草から機能性を有する有効成分が得られ、これをヒトや動物の健康面を向上する目的で利用することも期待できる。
また、本発明に係る請求項1〜3の当該金時草は水又は調味液に浸し、さらに必要に応じて加熱加工することで、そのまま利用することができる。減圧乾燥することで、公知の熱を加える乾燥法に比べ復元性が良好で金時草の香り・味・テクスチャー・有効成分を活かせる。
また、本発明に係る請求項5に記載の方法によれば、当該金時草を水で抽出することにより、金時草エキスが得られる。なお、当該エキスは、そのままお茶や機能性を含む健康飲料として利用できる他、エキスのまま、あるいは当該エキスを濃縮又は、凍結乾燥法や噴霧乾燥法等で粉末化したものを、食品(例えば惣菜、菓子、麺類など)、飲料品(清涼飲料水、酒類など)、化粧品、医薬品などの素材として使用できる。
さらに本発明は、金時草エキス抽出用原料として、収穫量が多く、安価な時期や、出荷調整で捨てられる下葉をも利用し、乾燥・保存しておくことができるので、実用的価値が高い。また、乾燥、抽出操作に、有機溶媒や薬品などを一切用いていないため、上記の如く、抽出液はお茶など飲料としての利用も期待できる。
以下、本発明を詳細に説明する。
まず、金時草(キンジソウ)はキク科の多年草であり、正式名称は水前寺菜(Gynura bicolor DC)という。元来、熊本県で水前寺菜として栽培されてきたが、江戸時代に石川県に伝来し、石川県では金時草として栽培されるようになった。国内で伝統的に栽培されているのは、熊本県、沖縄県、石川県であり、それぞれ呼び名も「水前寺菜」、「ハルタマ(ハンダマ)」、「金時草」と3県でさまざまである。
金時草の有効成分としては、多糖類、ミネラル類、ビタミン類、アミノ酸類、ポリフェノール類が挙げられる。
請求項1に係る本発明では、金時草(水前寺菜、ハルタマ)の葉を予め水洗、脱水処理を行った後、加熱(蒸気加熱、マイクロ波加熱等)、減圧乾燥して金時草を得る。この加熱工程および減圧乾燥工程は、いずれかが欠けても本発明の目的を達成することができない。
加熱は、金時草に完全に熱が通ること、金時草有効成分を流出させないことから蒸気加熱、マイクロ波加熱等の方法により行うことが重要である。これは目的とする金時草エキスの抽出効率を向上させるためにも必要な条件である。
蒸気加熱では、通常、80〜150℃の温度で3〜10分間、好ましくは、95〜120℃の温度で4〜6分間行う。また、蒸し器や電子レンジや高圧釜などを利用することができる。加熱の時間が短いと、後の抽出工程で得られる金時草エキスの抽出効率が悪くなったり、また、加熱の時間が長すぎると、金時草独特のぬめりが流出してしまい、後の乾燥作業が困難となる、テクスチャーが悪くなるなどの問題が生じる。
請求項2、3に係る本発明では、前記の加熱処理の後、得られる金時草を凍結乾燥法または、減圧真空乾燥法により乾燥する。
その際の減圧条件は、凍結乾燥法では真空度を0.03〜2.0トール(Torr)、好ましくは0.03〜0.8トール(Torr)とする。また、減圧真空乾燥法では、真空度を4.6〜500トール(Torr)、好ましくは10〜100トール(Torr)とする。
得られた金時草は、湿気が入らないように、適当な密閉容器・密閉袋などに収納して保管する。この場合、なるべく空気を除いた状態で、冷蔵庫などの冷暗所に保管すると、長期間安定的に保存することができる。
上記請求項1〜3に記載の加工方法により得られる金時草は、そのままで食品又は食品素材として利用することができる。たとえば、請求項4に記載されているように、15〜30℃の水又は調味液にそのまま浸すことで、金時草独特の香り、味、テクスチャーが復元でき、そのまま食することができる。また、水又は調味液を加え加熱加工することもできる。
請求項5に係る本発明は、請求項1〜3のいずれかに記載の加工方法により得られる金時草を用いて金時草有効成分エキス(以下、金時草エキスと略することもある。)を製造する方法である。
金時草エキスの抽出は、約37〜100℃の温度の水により行う。抽出時間は金時草の量などを考慮して決定するが、通常は10分〜2時間が適当である。
抽出操作が終了した後、抽出液をガーゼやろ紙等でろ過することによって、抽出残さを取り除く。なお、抽出残さは、佃煮の原料など、食品素材として利用できる。
このようにして得られる金時草エキスは、請求項6、7に記載するように有効成分自体として、あるいは各種の食品(例えば惣菜、菓子等)、飲料品(清涼飲料水、酒類等)、又は食品素材に利用できる。さらに、化粧品、医薬品などに添加したり、染料としての利用もできる。また、当該金時草はそのまま袋詰めにしてティーバッグとし「金時草茶」としても利用することもできる。
以下に実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
実施例1〔金時草の加工方法〕
(工程1)金時草生葉20kgを、市販の野菜洗浄剤で洗浄し、次いで水洗した。水洗いした後、ネット状の袋に入れ、洗濯機の脱水装置等で脱水した。
(工程2)家庭用蒸し器で蒸気が充分出ていることを確認し、金時草100〜200gずつを約100℃の蒸気で加熱した。なお、この時の金時草量は使用する蒸し器の大きさに合わせて決め、蒸気加熱時間についても金時草に完全に熱が通る最低時間(4〜6分間)とすべきである。
(工程3)蒸した金時草を乾燥機備え付けの網に広げ、凍結乾燥した(以下、凍結乾燥金時草と称する)。
凍結乾燥の条件は、予備凍結温度をマイナス30℃、凍結乾燥室内の真空度を0.3トール(Torr)とし、凍結乾燥室内の温度をプラス40℃とした。
この工程で得られた金時草は2kg(金時草生葉の約10%重量)であった。
凍結乾燥金時草を使い、市販だし汁(だし汁温度約18℃)に浸しておひたしを作り、金時草の復元性(もどり)及び官能評価を行った。
対照として、金時草を蒸し器で蒸気加熱した後、熱風通風乾燥(90℃)により乾燥した金時草(熱風通風乾燥金時草)を用いた。
復元性については、凍結乾燥金時草を使ったおひたしでは、だし汁の温度が18℃と低かったにもかかわらず、だし汁に投入した直後からもどりが始まり、復元性が高かったが、熱風通風乾燥金時草を使ったおひたしは、30分後でも復元性が低かった。
また、官能評価では、凍結乾燥金時草を使ったおひたしは、生の金時草を茹でて作ったような香り、味、食感が残っているのに対して、熱風通風乾燥金時草を使ったおひたしは、硬く口の中にささるような感じがあり評価が低くなった。
凍結乾燥金時草約40gを手で細かく砕いた後、調味液(砂糖、醤油、みりん、鷹の爪)に入れ、中火で約5〜10分煮立て、金時草佃煮を作った。
凍結乾燥金時草を熱水(約100℃)で15〜30分間抽出し、得られた金時草エキスをガーゼでろ過し、固形物等を除いた。このときの金時草量は、金時草エキスの使用目的を考慮して適宜決定すればよい。得られた金時草エキスをエバポレーターで約1/5量まで減圧濃縮し、濃縮金時草エキスを得た。
〔凍結乾燥金時草からの噴霧乾燥法による金時草エキス粉末製造〕
凍結乾燥金時草約450g(金時草生葉4.5kg相当)を約10リットルの熱水(約100℃)で15〜30分間抽出した。得られた金時草エキスからガーゼ、綿布にてろ過し、固形物を取り除いた。
このようにして得られた金時草エキスを定法の噴霧乾燥法により粉末化した。なお、噴霧乾燥機はディスク式噴霧方式で、送液速度は1100ml / hr、乾燥温度は入り口温度158〜160℃、出口温度90〜94℃で行った。その結果、得られた金時草エキス粉末は117g(収率約26%)であった。
本発明によれば、石川県の伝統野菜である金時草から簡易にかつ効率良く金時草エキスを抽出するために、金時草の加工方法並びに当該金時草の利用技術並びに当該金時草エキスの製造法が提供される。金時草エキスは、食品・食品素材や化粧品、医薬品などに着色料として利用される他、染料としても利用できる。
したがって、食品分野をはじめとして広範な利用が期待される。

Claims (7)

  1. 金時草を加熱する工程の後、減圧乾燥工程を行うことを特徴とする金時草の加工方法。
  2. 減圧乾燥工程を、凍結乾燥法により行う請求項1記載の金時草の加工方法。
  3. 減圧乾燥工程を、真空減圧乾燥法により行う請求項1記載の金時草の加工方法。
  4. 請求項1〜3のいずれかに記載の方法で得られた金時草を、水又は調味液に浸し、さらに必要に応じて加熱加工して得られた金時草。
  5. 請求項1〜3のいずれかに記載の方法で得られた金時草を水で抽出し、必要に応じて抽出液を濃縮又は粉末化することを特徴とする金時草有効成分エキスの製造方法。
  6. 請求項5に記載の方法で得られた金時草有効成分エキス。
  7. 請求項6に記載の金時草有効成分エキスを含有する食品、食品素材、化粧品又は医薬品。

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