JP2007288011A - ポリイミド配線板の製造方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】ポリイミドフィルムに改質層を形成する改質工程;改質層に金属イオンを吸着させる吸着工程;および吸着した金属イオンをプラズマ処理または電子ビーム照射処理により還元させる還元工程;を含んでなるポリイミド配線板の製造方法。前記改質工程前記吸着工程;吸着した金属イオンを還元させる還元工程;改質層上に形成された金属膜にフォトレジスト材料を適用した後、フォトリソグラフィを実施して、金属膜を選択的に露出させるフォト工程;金属膜を給電膜として用いて電解めっきを行い、前記金属膜の露出部に導体層を析出させる電解めっき工程;フォトレジストを除去して金属膜を露出させるレジスト除去工程;および導体層をマスクとして用い、レジスト除去工程で露出した金属膜をエッチング除去するエッチング工程;を含むポリイミド配線板の製造方法。
【選択図】図9
Description
第1発明は、金属膜とポリイミドとの密着性が良好であり、かつ安全で安定的な生産が可能なポリイミド配線板の製造方法を提供することを目的とする。
ポリイミドフィルムをアルカリ溶液で処理して改質層を形成する改質工程;
前記ポリイミドフィルムを金属イオン含有溶液で処理して、該溶液に含有される金属イオンを改質層に吸着させる吸着工程;および
前記ポリイミドフィルムを還元処理することにより、前記吸着した金属イオンを還元させて、改質層上に金属膜を形成する還元工程;
を含んでなり、
前記還元処理がプラズマ処理または電子ビーム照射処理であることを特徴とするポリイミド配線板の製造方法に関する。
ポリイミドフィルムをアルカリ溶液で処理して改質層を形成する改質工程;
前記ポリイミドフィルムを金属イオン含有溶液で処理して、該溶液に含有される金属イオンを改質層に吸着させる吸着工程;
前記ポリイミドフィルムを還元処理することにより、前記吸着した金属イオンを還元させて、改質層上に金属膜を形成する還元工程;
前記改質層上に形成された金属膜にフォトレジスト材料を適用した後、フォトリソグラフィを実施して、前記金属膜を選択的に露出させるフォト工程;
前記金属膜を給電膜として用いて電解めっきを行い、前記金属膜の露出部に導体層を析出させる電解めっき工程;
前記フォトレジストを除去して金属膜を露出させるレジスト除去工程;および
前記導体層をマスクとして用い、前記レジスト除去工程で露出した金属膜をエッチング除去するエッチング工程;
を含むことを特徴とするポリイミド配線板の製造方法に関する。
さらに本製造方法によれば、直接めっき法で析出される金属膜は、比較的粗い表面を有しているので、析出後に引き続き行うフォト工程において、レジスト材料との密着性に優れている。よって、密着性の観点で、レジスト材料の制約を受けることがない。そのため高精細なパターン形成可能な材料を用いることができ、配線の微細ピッチ化を実現することができる。
また特に、直接めっき法で金属膜を析出させた場合、ポリイミドフィルムの表面付近には工程の最初に形成した改質層が残ることが多い。改質層が残っていると配線板としての信頼性低下の懸念要因となる。しかし、本製造方法におけるフォト工程等で加熱を行うと、その際同時に、改質層の再ポリイミド化を進めることができる。よって、改質層の再ポリイミド化による信頼性向上を達成することができる。
図1は、第1発明および第2発明に係るポリイミド配線板の製造方法の製造フロー図の一例である。
図2〜図8は、第1発明および第2発明に係るポリイミド配線板の製造工程を説明するためのポリイミドフィルムの概略断面図の一例である。
まず第1発明の第1実施形態について説明する。
第1発明の第1実施形態に係るポリイミド配線板の製造方法は以下に示す工程を含むものである;
ポリイミドフィルムをアルカリ溶液で処理して改質層を形成する改質工程;
前記ポリイミドフィルムを金属イオン含有溶液で処理して、該溶液に含有される金属イオンを改質層に吸着させる吸着工程;および
前記ポリイミドフィルムを還元処理することにより、前記吸着した金属イオンを還元させて、改質層上に金属膜を形成する還元工程。
本工程では、ポリイミドフィルムをアルカリ溶液で処理して改質層を形成する。詳しくは図2に示すようなポリイミドフィルム1をアルカリ溶液に浸漬することで、図3に示すように両面に改質層104を形成されたポリイミドフィルムを得、その後、水洗する。この工程により、フィルム表面におけるポリイミド分子のイミド環が加水分解によって開環し、カルボキシル基が生成すると同時に、カルボキシル基の水素イオンがアルカリ溶液中の金属イオンと置換され、改質層が形成される。例えば、化学式(1)で表されるポリイミドは、KOH水溶液で処理される場合、加水分解による開環によって生成したカルボキシル基の水素イオンがカリウムイオンと置換されて化学式(2)で表される構造を有するようになる。
本工程では、図3に示すような改質層104を形成されたポリイミドフィルムを金属イオン含有溶液で処理して、該溶液に含有される金属イオンを改質層に吸着させる。詳しくは、改質層104を有するポリイミドフィルムを、金属イオン含有溶液に浸漬して、改質層中の金属イオンAを、当該金属イオン含有溶液中の金属イオンと置換させ、水洗する。
本工程では、改質層中に金属イオンBを有するポリイミドフィルムを還元処理することにより、金属イオンBを還元させて、図4に示すように、改質層104上に金属膜4を形成する。詳しくは、ポリイミドフィルムの水洗と乾燥を行った後、還元処理によって金属イオンBを析出させ、改質層104の上に金属膜4を形成する。
プラズマ処理はプラズマ中にポリイミドフィルム1をさらすことで実施する。詳しくはプラズマを生成する電極間にポリイミドフィルムを載置したり、または当該電極間をポリイミドフィルムに所定の速度で搬送・通過させたりすることによって、ポリイミドフィルムの全面を処理するようにする。プラズマを発生させる雰囲気は当該プラズマ処理によって金属イオンBの還元が可能な限り特に制限されず、プラズマ中において特に水素ラジカル、もしくは水素イオン及び電子を発生させる得る雰囲気が好ましい。そのような好ましい雰囲気として例えば、水素ガス、H2Oガス、空気等が挙げられる。これらのガスを原料としたプラズマには、少なくとも電子、水素イオン、水素ラジカルなどの還元性反応種が存在するため、例えば、以下の反応式に従って金属イオンB(下記式中、M+)の還元が有効に行われるものと考えられる。なお、これ以降の化学式においては、ポリイミド分子に関しては、反応に関与する化学式(2)において点線枠で図示した部分のみを抜き出して示す。
COO−M+ + H+ + e― → COOH + M
前記改質層上に形成された金属膜にフォトレジスト材料を適用した後、フォトリソグラフィを実施して、前記金属膜を選択的に露出させるフォト工程;
前記金属膜を給電膜として用いて電解めっきを行い、前記金属膜の露出部に導体層を析出させる電解めっき工程;
前記フォトレジストを除去して金属膜を露出させるレジスト除去工程;および
前記導体層をマスクとして用い、前記レジスト除去工程で露出した金属膜をエッチング除去するエッチング工程。
本工程では、図4に示すような改質層104上に形成された金属膜4に、フォトレジスト材料を適用した後、フォトリソグラフィを実施して、前記金属膜を選択的に露出させる。その結果として、図5に示すようなレジストパターン5が形成され、金属膜4が露出する部分が配線領域となる。
本工程では、前記金属膜4を給電膜として用いて電解めっきを行い、図6に示すように、前記金属膜の露出部に導体層(めっき膜)6を析出させる。金属膜4を給電膜として用い、しかも金属膜4上の非配線領域にはフォトレジストが存在するため、配線領域としての露出部のみに導体層6が選択的に析出する。電解めっき工程はポリイミドフィルム両面の金属膜露出部に対して同時に実施できる。
本工程では、図6に示すようにフォトレジスト(レジストパターン)5および導体層6を有するポリイミドフィルムから、フォトレジスト5を除去して、図7に示すように金属膜4を露出させる。例えば、剥離液に浸漬し、フォトレジスト5を剥離または溶解すればよい。具体的には、例えば上記の旭化成製フィルムレジストを用いた場合には、2〜3%程度の水酸化ナトリウムか水酸化カリウムの水溶液、もしくは、有機アミン系の剥離液を用いてレジストの除去を行うことができる。また例えば、いわゆるノボラック系樹脂を主成分とする液状レジストの場合には、プロピレングリコールメチルエーテルアセテートやアルキルベンゼンスルホン酸などの有機溶剤を含む剥離液を用いることができる。
剥離液への浸漬を行うことにより、レジスト除去工程はポリイミドフィルム両面のフォトレジストに対して同時に実施できる。
本工程では、導体層6をマスクとして用い、図8に示すように、前記レジスト除去工程で露出した金属膜4をエッチング除去する。詳しくは、図7に示すようなレジストを除去したポリイミドフィルムをエッチング液に浸し、金属膜4の露出部を除去し、改質層104の配線領域にのみ金属膜4および導体層6を残存させる。この結果、ポリイミドフィルムの両面に任意の微細ピッチ配線パターンを形成することができる。
また例えば、金属膜4がCuからなり、導体層6もCuからなる場合には、FeCl3、CuCl2、(NH4)2S2O8などの水溶液、アンモニア水などが使用できる。
また例えば、金属膜4がAgからなる場合には、エッチング液はHNO3、H2SO4とH2O2の混合液、Fe(NO3)3水溶液などが使用できる。
また例えば、金属膜4がFeからなる場合には、エッチング液はHNO3などが使用できる。
また例えば、金属膜4がPdからなる場合には、エッチング液はNH3I水溶液などが使用できる。
効果(1);
従来のサブトラクティブ法では、ポリイミドフィルム全面に配線に必要な厚さ(典型的には5〜20μm程度)の金属膜を形成した後、その上に配線パターンが必要な箇所だけにレジストパターンを形成し、レジストパターンの開口部をエッチング除去する。通常、除去すべき金属膜の厚さと同量程度に、レジストパターン直下の金属膜の水平方向にもエッチングが進むため、配線パターンの微細化には向かない。しかし本方法では、ポリイミドフィルム全面に形成した薄い金属膜上に、配線パターンが必要な箇所を除いてレジストパターンを形成し、レジストパターンの開口部だけに電解めっき膜を、配線に必要な厚さ(典型的には5〜20μm程度)形成する。その後、電解めっき膜よりも非常に薄い(典型的には0.1〜0.5μm程度の)金属膜をエッチング除去するので、配線パターンの微細化に有利であり、サブトラクティブ法で問題となるサイドエッチング現象は起こりえない。
本方法では上記パターニング法を実施するため、改質工程においてアディティブ法によりポリイミドフィルム表面における配線領域を、フォトレジスト材料やインクジェット装置を用いて選択的にアルカリ溶液で処理する必要はない。そのため、改質工程で選択的にアルカリ溶液を付与するときに必要となるフォトレジスト材料等の選択の困難性を排することができる。
本方法では電解めっきの給電膜としての金属膜がポリイミドフィルム全面に存在することから、電解めっき装置の電極位置も配線板の品種間で共通化することができるので、生産効率が向上し、電解めっき装置の汎用性も高めることができる。
本方法によれば、直接めっき法で形成された金属膜に対して上記パターニング法を実施し、そのような金属膜は比較的粗い表面を有しているので、フォト工程において形成されるレジストパターンと金属膜との密着性に優れている。そのため、密着性の観点で、レジスト材料の制約を受けることがない。よって高精細なパターン形成可能なレジスト材料を用いることができ、レジストパターンが非常に微細であっても他の工程で剥離することがないので、配線の微細ピッチ化を実現できる。詳しくは、直接めっき法で得られる金属膜の粒子径は100nm〜500nm程度であり、例えばスパッタ法などで得られる粒子径の10nmオーダーに比較すると粗い。また、金属粒子は、直接めっき法ではポリイミドフィルム膜面及び膜内部から還元析出され、上方向に成長していくため、縦長形状となる。ポリイミドフィルム膜外部から元素が供給されていくスパッタ法などに比較すると大きな違いである。この結果、本方法ではレジスト材料と金属膜との密着性が優れる。例えば、旭化成製レジストは、一般的な基板の配線パターン形成レジストであるが、10μm幅程度の配線を形成することが一般的に限界である。しかしながら、直接めっき法で得られる金属膜はレジスト材料との密着性に優れるため、レジスト材料の選択性が広い。そのため、レジスト材料供給前に行う金属膜の粗化処理などを実施することなく、剥離し難い高精細なレジストパターンを形成できるので、1μmオーダーの配線形成が可能である。そのような高精細なパターン形成可能なレジスト材料として、例えば、フォテックRY−3310(日立化成社製)、OFPR(東京応化製)、AZ(AZエレクトロニックマテリアルズ社製)等が使用可能である。
直接めっき法で金属膜を析出させた場合、ポリイミドフィルムの表面付近には工程の最初に形成した改質層が残ることが多い。改質層が残っていると配線板としての信頼性低下の懸念要因となる。しかし、本方法においてフォト工程等において加熱を行うと、改質層の再ポリイミド化を進めることができる。その結果、改質層の再ポリイミド化による信頼性向上を達成することができる。
カバーレイは、上記までの工程で形成された配線パターンを機械的に保護するとともに、外部との絶縁を図る目的のものである。配線パターンと外部との接続にはんだ付けを行う場合には、はんだが濡れてはいけない領域を規定するために形成するため、ソルダーレジストとも呼ばれる。
例えば、日立化成製レイテックFR−5638を用いることができる。このフィルムをポリイミドフィルム全面に貼り付け、フォトリソグラフィにより不要箇所を除去する。この際、カバーレイを除去した箇所が、端子部となる。この操作を両面に対して実施する。
引き続き、配線パターンの外部端子となる場所について、端子の表面処理を行う。例えば、はんだ付け用の端子を形成する場合、Ni膜とAu膜の形成を引き続いて行う。市販の無電解Niめっき浴に浸漬して5μm程度の厚さのNi膜を形成した後、市販の無電解Auめっき浴に浸漬して0.5μm程度の厚さを有するAu膜を形成する。
引き続き、基板分割工程を行う。これは、工程を実施するワークサイズに対して製品となる基板サイズが異なる場合に必要となる。例えば、工程を実施するワークの周辺部にはハンドリングのために余分な領域が設けられている。この部分の除去を行う。
具体的には、ここまでの工程を実施したポリイミドフィルムを金型に設置して、打ち抜き加工を行う。こうすることによって、両面ポリイミド配線板を形成できる。
第2発明に係るポリイミド配線板の製造方法は直接めっき法を採用するものであり、詳しくは以下に示す工程を含むものである;
ポリイミドフィルムをアルカリ溶液で処理して改質層を形成する改質工程;
前記ポリイミドフィルムを金属イオン含有溶液で処理して、該溶液に含有される金属イオンを改質層に吸着させる吸着工程;
前記ポリイミドフィルムを還元処理することにより、前記吸着した金属イオンを還元させて、改質層上に金属膜を形成する還元工程;
前記改質層上に形成された金属膜にフォトレジスト材料を適用した後、フォトリソグラフィを実施して、前記金属膜を選択的に露出させるフォト工程;
前記金属膜を給電膜として用いて電解めっきを行い、前記金属膜の露出部に導体層を析出させる電解めっき工程;
前記フォトレジストを除去して金属膜を露出させるレジスト除去工程;および
前記導体層をマスクとして用い、前記レジスト除去工程で露出した金属膜をエッチング除去するエッチング工程。
(2)の方法では、水素ガス気流中にポリイミドフィルムを加熱しながら放置する。
(3)の方法では、例えば、紫外線領域の波長の電磁波を照射する。具体的には、第1発明で説明したものと同様の金属イオンを吸着させたポリイミドに、さらにTiO2などの光触媒特性を有する材料を供給した後に電磁波を照射する。もしくは、Ag、Pdなどの貴金属イオンを吸着させたポリイミドに対しては、光触媒特性を有する材料を別途塗布しなくても、直接電磁波を照射することで、金属膜を析出させることができる。例えばPdを析出させる場合、前記第1発明と同様の改質工程を実施後、Pd塩水溶液に浸漬してPdイオンを吸着させる。その後、254nmを中心波長にもつ低圧水銀ランプを用いて5分間程度の電磁波照射により、Pd膜の析出を実施できる。
被めっき物として、100μm厚のポリイミドフィルム1(カネカ製;アピカル(R)NPI)を用いた。
(改質工程)
まず、ポリイミドフィルム1を50℃のKOH水溶液に5分間浸漬し、2分間の水洗を行うという改質工程を実施した。この際、KOH水溶液は、5M(5mol/l)の濃度に設定した。得られたポリイミドフィルム1は表面の湿潤を保った状態で次工程に送った。この工程により、ポリイミドフィルム1の両面についてポリイミド分子中のイミド環の加水分解が行われ、ポリイミド表面の改質層(図3中、104)には、カルボキシル基の水素イオンがカリウムイオンに置換されてなる、カリウム塩形態のカルボキシル基が形成された。
次に30℃のNiSO4水溶液にポリイミドフィルム1を5分間浸漬し、5分間の水洗を行うという吸着工程を実施した。この際、NiSO4水溶液は0.1Mの濃度に設定した。この工程により、改質層104(図3中、104)のカリウム塩形態のカルボキシル基におけるカリウムイオンがニッケルイオンに置換される反応が進行し、ニッケル塩形態のカルボキシル基が形成された。
以上の工程により、ポリイミドフィルムの両面に表面から5μm程度の深さまで、ポリイミド分子にニッケル塩形態のカルボキシル基を導入した構造が実現した。
次に、水洗したポリイミドフィルム1を乾燥させ、プラズマ処理装置に設置した。プラズマ処理装置は平行平板型の一般的なものを使用した。プラズマ処理装置を図9に示す。これは、対向した平行平板電極61間を真空ポンプ63で減圧しながら、ガスボンベ62により供給されるプロセスガスで満たし、その電極61間に高周波電力をかけることで発生するプラズマを利用して処理するものである。このような装置60を用いて、還元工程を実施した。プラズマ処理装置には、アルゴン(97%)/水素(3%)の混合ガスが接続されている。
そのような金属イオン還元工程をポリイミドフィルム両面に対して実施した。
実施例1と同様の方法により、改質工程および金属イオン吸着工程を実施し、以下の金属イオン還元工程を行った。
水洗したポリイミドフィルム1を乾燥させ、大気圧プラズマ装置に設置した。大気圧プラズマ装置を図10に示す。これは、対向した電極71間をガスボンベ72から供給されるプロセスガスで満たし、その電極71間に高電圧をかけることで発生する大気圧プラズマを利用して被処理物の表面を処理するものである。このような装置70を用いて、還元工程を実施した。このとき、印加する高電圧の周波数は30kHz、放電電圧は8kVとした。プロセスガスの組成は、アルゴン(97%)/水素(3%)とし、装置70内部を充満させるガスの供給量および排出量を30l/分とした。この場合には、ポリイミドフィルムをチャンバ内部で固定しておく必要はなく、装置70内部を順次搬送していく方式で構わない。ポリイミドフィルムの搬送速度を0.1cm/分とすることで、厚み0.3μmのニッケル膜(図4中、4)の析出が観察された。このとき、電極71の搬送方向長さは5cmであった。
そのような金属イオン還元工程をポリイミドフィルム両面に対して実施した。
実施例1と同様の方法により、改質工程および金属イオン吸着工程を実施し、以下の金属イオン還元工程を行った。
水洗したポリイミドフィルム1を乾燥させ、電子ビーム照射装置に設置した。電子ビーム照射装置の概略図を図11に示す。図11において、81はタングステンフィラメントであり加熱することで熱電子を発生する。発生した熱電子は、フィラメント81より電位が低く設定されているウェーネルト82で一旦収束し、フィラメント81より高い電位に設定されたアノード86によって加速される。このようにして電子線80は、オリフィス83を経て、ステージ上に設置されたポリイミドフィルム1に到達する。なお、電子線は経路周辺部に設置されているコンデンサレンズ(図示せず)により収束されるとともに、照射位置の微調整も行うことができる。また、装置内部は、電子銃室84と試料室85に分断されており、それぞれ別々の真空度にも設定できるよう、油回転ポンプ、油拡散ポンプ(ともに図示せず)と接続されている。
そのような金属イオン還元工程をポリイミドフィルム両面に対して実施した。
金属イオン吸着工程においてNiSO4水溶液の代わりに5mol/L濃度のCuSO4水溶液を用いたこと以外、実施例1と同様の方法により、形質工程、金属イオン吸着工程および金属イオン還元工程を実施した。厚み0.3μmのCu膜の析出が観察された。
実施例1と同様の方法により、改質工程および金属イオン吸着工程を実施し、以下の金属イオン還元工程を行った。
引き続き、ポリイミドフィルムを30℃のNaBH4水溶液(0.005M)に30分間浸漬し、さらに5分間の水洗を行った。この時点で、改質層に存在するカルボン酸ニッケル塩のニッケルイオンが還元されてニッケルが析出し、改質層の表面にニッケル膜が形成された。このときニッケル膜の厚さは0.2μm程度であった。
金属イオン吸着工程でCuSO4水溶液を使用し、Cuイオンの吸着を行ったこと以外、実施例1と同様の方法により、改質工程および金属イオン吸着工程を実施した。その後、以下の金属イオン還元工程を行った。
まず、TiO2コロイド粒子の吸着処理を行う。3重量%のTiO2コロイド溶液中に10分間の浸漬を行い、ポリイミド表面にTiO2コロイド粒子の吸着を行った。
その後、254nmを中心波長にもつ低圧水銀ランプを用いて5分間の紫外線照射を行って、Cu膜の析出を行った。これにより、0.1μm厚程度のCu膜を得ることができた。
そのような金属イオン還元工程をポリイミドフィルム両面に対して実施した。
実施例1〜4および参考例1〜2においてニッケル膜またはCu膜等の金属膜(図4中、4)が析出したポリイミドフィルム1を用いて以下の工程により配線パターンの形成を両面で行い、後述の項目について評価した。
ポリイミドフィルム1の両面に、厚さ25μmのドライフィルムレジストをホットロール式ラミネータAL−70(旭化成製)により貼り付け、露光、現像を行って、めっきレジストパターン(図5中、5)を形成した。
貼り付け工程においては、上記のラミネータを用い、115℃に加熱した上で、0.4MPaの圧力を印加し、2m/分の速度でドライフィルムレジストSUNFORT(R) ASG−253(旭化成製)の貼付を行った。
露光工程においては、4.5kW水銀ショートアークランプHMW−801(オーク製作所製)を用いて、80mJ/cm2の露光を実施した。
現像工程においては、1%のNa2CO3水溶液を用い、28℃にて30秒程度のスプレー照射を実施した後、水洗を行った。
以上の工程により、25μm幅のレジストパターンを形成した。レジストパターンの幅とはレジストパターンにおける配線領域としての露出部の幅である。
以上の工程で、片面のフォト工程が終わるため、その後他面に対しても同様の工程を実施して、両面のレジストパターン形成を終えた。
次に、ポリイミドフィルム1を銅の電解めっき液(日本エレクトロプレイティング・エンジニヤース株式会社製;ミクロファブCu200商標(R))に浸漬し、金属膜4を給電層として銅の電解めっきを行い、導体層6(図6中、6)を約20μmの厚さで析出させた。このとき、めっき温度28℃、電流密度2A/dm2とし、50分間の電解めっきを行った。
次に、ポリイミドフィルム1の表面に2重量%、50℃のNaOH水溶液をスプレー塗布して、めっきレジスト5を剥離し(図7参照)、その後で、5分間の水洗を行った。この工程は2回繰り返し、ポリイミドフィルム1の両面のめっきレジスト5を剥離した。
次に、ポリイミドフィルム1を銅のエッチング液(35g/L、60℃の塩化鉄(III)[第二](FeCl3)水溶液)に1分間浸漬し、導体層6が形成されていない領域の金属膜4を除去した(図7および図8参照)。この後、5分間の水洗を行った。
この後、ポリイミドフィルム1の導体層6が形成された面にカバーレイを形成し、導体層6のランド部にあたる部分にAuフラッシュめっきなどの表面処理を行った。
(基板分割工程)
さらに、配線基板ごとの形状に打ち抜く工程を行って、ポリイミド配線板を作製した。
・密着性
ポリイミドフィルムについて、JIS C 6471の方法に則り、Cu箔の90°方向引き剥がし試験を実施した。
実施例1〜4で得られたポリイミドフィルムを用いたものはいずれも、25℃において1.0kN/m以上、240℃において0.7kN/m以上の数値を示し、良好な結果を得た。
参考例1〜2で得られたポリイミドフィルムを用いたものはいずれも、25℃において0.5kN/m以下、240℃において0.1kN/m以下の数値を示し、配線板としての使用に耐えるものではなかった。
ポリイミドフィルムを電子顕微鏡により観察した。
実施例1〜4および参考例1〜2で得られたポリイミドフィルムを用いたものはいずれも、フォト工程で形成しためっきレジストパターンと同様の配線パターンが形成されていた。
実施例1〜4および参考例1〜2においてニッケル膜またはCu膜等の金属膜(図4中、4)が析出したポリイミドフィルム1を用いて以下の工程により配線パターンの形成を両面で行い、微細パターン配線について評価した。
実施例1〜4および参考例1〜2においてニッケル膜またはCu膜等の金属膜(図4中、4)が析出したポリイミドフィルム1を用いて以下の工程により配線パターンの形成を両面で行い、微細パターン配線について評価した。
ポリイミドフィルムをスピンコータに載置し、液状ポジレジストを滴下した。次いで800rpmで30秒、続いて3000rpmで3分間回転させた。その後、100℃設定のホットプレートで1分間保持(プリベーク工程)し、その結果、3〜4μm厚程度のレジスト膜を得た。液状ポジレジストはノボラック樹脂を主成分とし、他に感光剤と、乳酸エチル、酢酸ノルマルブチルなどの溶剤で粘度を調整したポジレジスト(東京応化製;OFPR)を用いた。
次に露光機に設置して、1000mJ/cm2程度の露光量で露光を行った後、3%のTMAH(テトラメチルアンモニウムハイドロオキサイド)に20秒間浸漬して現像を行い、水洗した。TMAH浸漬と水洗とをさらに2回繰返した。
その後、140℃設定のホットプレートに3分放置するポストベーク工程により、レジストパターン部の樹脂硬化を行った。この結果、1μm幅のレジストパターンを形成した。
以上の工程で、片面のフォト工程が終わるため、その後他面に対しても同様の工程を実施して、両面のレジストパターン形成を終えた。
その後、評価Aにおいてと同様の方法により、電解めっき工程、レジスト除去工程、およびエッチング工程を実施した。
Claims (7)
- ポリイミドフィルムをアルカリ溶液で処理して改質層を形成する改質工程;
前記ポリイミドフィルムを金属イオン含有溶液で処理して、該溶液に含有される金属イオンを改質層に吸着させる吸着工程;および
前記ポリイミドフィルムを還元処理することにより、前記吸着した金属イオンを還元させて、改質層上に金属膜を形成する還元工程;
を含んでなり、
前記還元処理がプラズマ処理または電子ビーム照射処理であることを特徴とするポリイミド配線板の製造方法。 - 前記還元処理が水素ガスを用いたプラズマ処理であることを特徴とする請求項1に記載のポリイミド配線板の製造方法。
- 前記還元処理が希ガスにより希薄化した水素ガスを用いたプラズマ処理であることを特徴とする請求項1または2に記載のポリイミド配線板の製造方法。
- 前記還元処理が減圧プラズマ処理または大気圧プラズマ処理であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のポリイミド配線板の製造方法。
- 前記還元処理が水分を含有した雰囲気下で実施されることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のポリイミド配線板の製造方法。
- 前記改質層上に形成された金属膜にフォトレジスト材料を適用した後、フォトリソグラフィを実施して、前記金属膜を選択的に露出させるフォト工程;
前記金属膜を給電膜として用いて電解めっきを行い、前記金属膜の露出部に導体層を析出させる電解めっき工程;
前記フォトレジストを除去して金属膜を露出させるレジスト除去工程;および
前記導体層をマスクとして用い、前記レジスト除去工程で露出した金属膜をエッチング除去するエッチング工程;
をさらに含むことを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載のポリイミド配線板の製造方法。 - ポリイミドフィルムをアルカリ溶液で処理して改質層を形成する改質工程;
前記ポリイミドフィルムを金属イオン含有溶液で処理して、該溶液に含有される金属イオンを改質層に吸着させる吸着工程;
前記ポリイミドフィルムを還元処理することにより、前記吸着した金属イオンを還元させて、改質層上に金属膜を形成する還元工程;
前記改質層上に形成された金属膜にフォトレジスト材料を適用した後、フォトリソグラフィを実施して、前記金属膜を選択的に露出させるフォト工程;
前記金属膜を給電膜として用いて電解めっきを行い、前記金属膜の露出部に導体層を析出させる電解めっき工程;
前記フォトレジストを除去して金属膜を露出させるレジスト除去工程;および
前記導体層をマスクとして用い、前記レジスト除去工程で露出した金属膜をエッチング除去するエッチング工程;
を含むことを特徴とするポリイミド配線板の製造方法。
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