JP2007287217A - 二段電極を有する磁気抵抗効果型ヘッドおよびこれを用いた記録再生分離型磁気ヘッド - Google Patents
二段電極を有する磁気抵抗効果型ヘッドおよびこれを用いた記録再生分離型磁気ヘッド Download PDFInfo
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Abstract
【課題】上部磁気シールドの突出部分は磁気抵抗効果素子の直近にあるため磁気抵抗効果素子の磁化状態に大きな影響を与え、出力変動などの不安定性の原因となる。
【解決手段】電極を二段構造にし、第1電極層5に厚さ約20nmのRhを用い、第2電極層6に膜厚約100nmのAuを用いることによって、トラック幅と同じ寸法のMR高さとしたときの磁気抵抗効果素子の電気抵抗は約51Ωを実現することができる。上部磁気シールド8の下面は磁気抵抗効果素子3、磁区制御層4、第1電極層5および第2電極層6によって生じた段差の凹凸にならって設けられるので、第1電極層5と第2電極層6の膜厚と第2電極層6の間隔を変えることによって下部磁気シールド1と上部磁気シールド8の距離を調節し、上部磁気シールド8の下面を適正な形状にすることができる。
【選択図】図1
【解決手段】電極を二段構造にし、第1電極層5に厚さ約20nmのRhを用い、第2電極層6に膜厚約100nmのAuを用いることによって、トラック幅と同じ寸法のMR高さとしたときの磁気抵抗効果素子の電気抵抗は約51Ωを実現することができる。上部磁気シールド8の下面は磁気抵抗効果素子3、磁区制御層4、第1電極層5および第2電極層6によって生じた段差の凹凸にならって設けられるので、第1電極層5と第2電極層6の膜厚と第2電極層6の間隔を変えることによって下部磁気シールド1と上部磁気シールド8の距離を調節し、上部磁気シールド8の下面を適正な形状にすることができる。
【選択図】図1
Description
本発明は、磁気記録装置に用いる磁気ヘッドに関し、特に再生ヘッドとして用いる磁気抵抗効果型ヘッドの構造に関するものである。
磁気記録装置では面記録密度を向上させるための技術開発が進められている。面記録密度の向上のためには、トラック密度および線記録密度の増大が必要であり、磁気ヘッドとしては記録および再生ヘッドのトラック幅の狭幅化や再生ギャップの狭小化が必須となる。従来の再生ヘッドでは、GMR効果を用いた磁気抵抗効果素子と、その両側に磁気抵抗効果素子の磁気特性を制御するための永久磁石膜と、磁気抵抗効果素子へ電流を供給する電極層が形成されている。これらの層の上部に絶縁層を介して軟磁気特性を有する磁気シールド層、磁気抵抗再生素子の下部には絶縁層を介して軟磁気特性を有する磁気シールド層が形成されている。
磁気ヘッドとして良好な再生特性を得るには、電極層の電気抵抗は低い方が熱雑音が低減できるので好ましいが、ヘッド作製工程において浮上面加工における加工性や通電時の電流によるエレクトロマイグレーションも考慮した構造・材料の選択が必要である。このために、たとえば特許文献1には、電極構造を二段階にして、磁気抵抗効果素子に接触して浮上面に露出する第1の電極部分と、浮上面に露出せずに第1の電極に接続された第2電極を設ける技術が開示されている。また、特許文献2には、低抵抗金属と高融点金属の多層膜を電極に用いて低抵抗と耐エレクトロマイグレーション性を高めた電極構造が開示されている。
また、再生トラック端部では、電極や磁区制御層が形成されるためにGMR素子の膜厚よりも膜厚が大きくなるので、上下の磁気シールド層の間隔がトラック中央部よりも広がる。特に狭トラック化を進めてくると、再生トラック端部の間隔が短くなってくるので、上下磁気シールド間隔の広がりによる影響が増大し、再生トラック端部での分解能の低下や、読みにじみによる隣接トラックとのクロストークなどが発生する。これを回避する方法として、特許文献3には電極や磁区制御層の厚さをできるだけ薄くすることが、特許文献4には、電極部位置における磁気シールド層の間隔を、感磁部位置における磁気シールド膜の間隔と同じかもしくは狭くする技術が、特許文献5には電極層及び磁区制御層が積層された位置におけるシールド層の間隔を磁気抵抗効果膜位置における間隔よりも狭くする技術が開示されている。
電極層を薄くして再生トラック端部での読みにじみを低減する方法では、電極層の薄膜化により抵抗が増加する。二段電極構造とすることにより、読みにじみを低減する方法であっても、磁気抵抗効果素子の両端部の電極層の膜厚が薄すぎると抵抗が増加する。さらに、再生トラック幅が狭まるにつれ、電極抵抗を増加させずに読みにじみの低減を図るだけでは不十分であることが判明した。すなわち、下部磁気シールドと上部磁気シールドの間隔の広がりは両側の電極層端部の部分から発生し始めるので、再生トラック幅が狭くなり端部間隔が狭まってくると、上部磁気シールドの形状は、電極層の段差により、磁気抵抗効果素子と対向する部分で磁気抵抗効果素子の方向に突出する形状となる。実使用状態における媒体からの信号磁界や検査における磁界印加によって、この上部磁気シールドの突出部分が磁化されて、不均一な磁区構造を持つようになる。この上部磁気シールドの突出部分は磁気抵抗効果素子の直近にあるため磁気抵抗効果素子の磁化状態に大きな影響を与え、出力変動などの不安定性の原因となる。
本発明の目的は、再生トラック端部での読みにじみが少なく、出力変動の少ない磁気抵抗効果型ヘッドを提供することである。
本発明の他の目的は、記録動作の繰り返しによる再生出力の不安定性を軽減できる記録再生分離型磁気ヘッドを提供することである。
本発明の他の目的は、記録動作の繰り返しによる再生出力の不安定性を軽減できる記録再生分離型磁気ヘッドを提供することである。
上記課題は、電極を二段構造とし、磁気抵抗効果素子に接して設ける第1電極層の厚さを薄くして、さらに磁気抵抗効果素子から離れた部分の第2電極層の膜厚を厚くすること、および第2電極層の材料として比抵抗の低い材料を適用することによって解決することができる。
本発明の代表的な磁気抵抗効果型ヘッドは、基板の上部に設けられた下部磁気シールドと、下部ギャップ層を介して設けられた磁気抵抗効果素子と、磁気抵抗効果素子の両側に設けられた磁区制御層と、磁区制御層の上部に設けられた第1電極層と、第1電極層の上部に第1電極層よりも大きな膜厚を有し、磁気抵抗効果素子から離れて設けられた第2電極層と、これらの上部に設けられた上部ギャップ層と、上部磁気シールドと、を有し、浮上面において、上部磁気シールドの磁気抵抗効果素子と対向する面と、第1電極層と対向する面の成す平均的な角度が20°以下であり、磁気抵抗効果素子の端部から第2電極層までの距離が磁気抵抗効果素子の幅よりも大きい。
本発明の代表的な記録再生分離型磁気ヘッドは、前記磁気抵抗効果型ヘッドに隣接して、下部磁極と、浮上面において下部磁極との間に記録ギャップを構成し、バックギャップにおいて下部磁極に磁気的に接続された上部磁極と、下部磁極と上部磁極の間に形成されたコイルと、を有する記録ヘッドが設けられる。
本発明の代表的な磁気抵抗効果型ヘッドは、基板の上部に設けられた下部磁気シールドと、下部ギャップ層を介して設けられた磁気抵抗効果素子と、磁気抵抗効果素子の両側に設けられた磁区制御層と、磁区制御層の上部に設けられた第1電極層と、第1電極層の上部に第1電極層よりも大きな膜厚を有し、磁気抵抗効果素子から離れて設けられた第2電極層と、これらの上部に設けられた上部ギャップ層と、上部磁気シールドと、を有し、浮上面において、上部磁気シールドの磁気抵抗効果素子と対向する面と、第1電極層と対向する面の成す平均的な角度が20°以下であり、磁気抵抗効果素子の端部から第2電極層までの距離が磁気抵抗効果素子の幅よりも大きい。
本発明の代表的な記録再生分離型磁気ヘッドは、前記磁気抵抗効果型ヘッドに隣接して、下部磁極と、浮上面において下部磁極との間に記録ギャップを構成し、バックギャップにおいて下部磁極に磁気的に接続された上部磁極と、下部磁極と上部磁極の間に形成されたコイルと、を有する記録ヘッドが設けられる。
本発明によれば、磁気抵抗効果型ヘッドの再生トラック端部での読みにじみを少なくし、出力変動を少なくすることができる。また、記録再生分離型磁気ヘッドの記録動作の繰り返しによる再生出力の不安定性を軽減することができる。
以下に実施例を用いて本発明を詳細に説明する。
図1は本発明の第1の実施例による磁気抵抗効果ヘッド100を浮上面から見た図である。図2は第1の実施例による磁気抵抗効果ヘッド100と記録ヘッド200を複合化した第2の実施例による記録再生分離型磁気ヘッド300の浮上面側の構成を示す斜視図である。図1及び図2を参照して第1の実施例による磁気抵抗効果ヘッド100の構成を説明する。図示されていないアルミナ・チタンカーバイドの焼結体を基板とし、この上に図示されていない絶縁層を介して下部磁気シールド1が設けられる。下部磁気シールド1の上部には絶縁層(下部ギャップ層)2が設けられ、その上に所定の幅(再生トラック幅)の磁気抵抗効果素子3が設けられる。磁気抵抗効果素子3の両側には磁気抵抗効果素子3の磁気特性を制御するための磁区制御層4が設けられ、磁区制御層4の上部に磁気抵抗効果素子3に電流を供給するための第1電極層5が磁気抵抗効果素子3の両端部に接して設けられる。さらに磁気抵抗効果素子3から離れて両側に第2電極層6が設けられる。磁気抵抗効果素子3、第1電極層5及び第2電極層6の上部に絶縁層(上部ギャップ層)7が設けられ、その上に上部磁気シールド8が設けられる。
図1は本発明の第1の実施例による磁気抵抗効果ヘッド100を浮上面から見た図である。図2は第1の実施例による磁気抵抗効果ヘッド100と記録ヘッド200を複合化した第2の実施例による記録再生分離型磁気ヘッド300の浮上面側の構成を示す斜視図である。図1及び図2を参照して第1の実施例による磁気抵抗効果ヘッド100の構成を説明する。図示されていないアルミナ・チタンカーバイドの焼結体を基板とし、この上に図示されていない絶縁層を介して下部磁気シールド1が設けられる。下部磁気シールド1の上部には絶縁層(下部ギャップ層)2が設けられ、その上に所定の幅(再生トラック幅)の磁気抵抗効果素子3が設けられる。磁気抵抗効果素子3の両側には磁気抵抗効果素子3の磁気特性を制御するための磁区制御層4が設けられ、磁区制御層4の上部に磁気抵抗効果素子3に電流を供給するための第1電極層5が磁気抵抗効果素子3の両端部に接して設けられる。さらに磁気抵抗効果素子3から離れて両側に第2電極層6が設けられる。磁気抵抗効果素子3、第1電極層5及び第2電極層6の上部に絶縁層(上部ギャップ層)7が設けられ、その上に上部磁気シールド8が設けられる。
上部磁気シールド8の下面は磁気抵抗効果素子3、磁区制御層4、第1電極層5および第2電極層6によって生じた段差の凹凸にならって設けられるので、第1電極層5と第2電極層6の膜厚と第2電極層6の間隔を変えることによって下部磁気シールド1と上部磁気シールド8の距離を調節し、上部磁気シールド8の下面を適正な形状にすることができる。磁気抵抗効果素子3の近傍の上下の磁気シールド間距離を狭くして段差勾配を小さくすることによって、読みにじみを小さくするとともに、シールド段差部分の磁化分布が均一化して、不安定な磁化分布の発生が抑止されて出力の安定性が確保できる。また第2電極層6の膜厚を厚くすることによって、再生ヘッド(磁気抵抗効果ヘッド)全体の抵抗を下げることができるため、熱雑音の抑止が可能となり、再生ヘッドの電磁変換性能の向上を図ることができる。
さらに図1及び図2を参照して上記磁気抵抗効果ヘッド100の作製方法について説明する。図示されていないアルミナ・チタンカーバイドの焼結体を基板とし、この上に図示されていない絶縁層を介してパーマロイからなる膜厚約1μmの下部磁気シールド1をスパッタリングあるいはめっきにより形成する。次にこの上に膜厚約10nmのアルミナ絶縁層2をスパッタリングにて形成し、続いて磁気抵抗効果素子3をスパッタリングにより積層する。磁気抵抗効果素子3はスピンバルブ構造を有する多層膜で、アルミナ絶縁層2側から下地層、反強磁性層、Ruで分割された2枚のCoFe層からなる固定層、Cuからなる非磁性導電層、NiFeとCoFeの2層膜からなる自由層とを有する。固定層の磁化方向は反強磁性層との交換結合により所定の方法に固定されている。
磁気抵抗効果素子3の自由層の端部の間隔が再生トラック幅に相当し、その幅は約100nmである。このトラック幅加工では、通常のホトリソグラフィでホトレジストパターンを形成した後、イオンミリングによりトラック幅部分を除く磁気抵抗効果膜を除去する。本実施例では、磁区制御層4と自由層の膜厚方向の高さを合わせるため、磁気抵抗効果膜のうち下地層と反強磁性層を残すようにした。続いてレジストパターンをそのままにして、磁区制御層4としてCoCrPtをスパッタリングにより積層し、さらに第1電極層5としてRhを磁気抵抗効果素子3の両端にめっきにて形成する。磁区制御層4の膜厚は約10nmで、第1電極層5の膜厚は約20nmである。その後トラック部分のレジストを溶解して所望の部分だけに磁区制御層4と第1電極層5を形成する。次に第2電極層6を形成するために、磁気抵抗効果素子3を中心にして幅約400nmのレジストパターンを形成し、そこにTa/Au/Taを成膜して続いてリフトオフすることにより第2電極層6を形成する。なお、Auの膜厚は約100nmとし、上下のTa層は膜厚約5nmでAuの接着層として働く。その後膜厚約10nmのアルミナ絶縁層7をスパッタリングにて形成し、アルミナ絶縁層7の上に膜厚約1.0μmのパーマロイをめっきにて形成することにより上部磁気シールド層8を形成する。
磁気抵抗効果素子3の総膜厚は約30nmで、上下のアルミナ絶縁層2,7はそれぞれ膜厚約10nmである。したがって、磁気抵抗効果素子3における上下の磁気シールド間隔は約50nmとなり、再生ヘッドのギャップ間隔Gsは約50nmとなる。
本実施例のように、第1電極層5に厚さ約20nmのRhを用い、第2電極層6に膜厚約100nmのAuを用いることによって、トラック幅と同じ寸法のMR高さとしたときの磁気抵抗効果素子3の電気抵抗は約51Ωを実現することができた。さらに再生出力の再現性は、±10%以上変化するものを不良としたときその不良率を2.5%にすることができた。
なお、上記実施例では第1電極層5にRhを使用したが、TaやAuなど通常電極材料として用いられる他の材料を選択することもできる。さらに第2電極層6としてはAuの例を開示したが、ほかの低抵抗電極材料としてAg,Cu,Alなどを用いることが可能である。
次に、上記第1の実施例の構造によって再生出力の再現性が向上し、不良率が低減して歩留まりが改善した現象について検証する。図3に上部磁気シールド8の素子部分近傍を拡大した磁化分布を模式的に示す。トラック幅Twr部分に対応する磁化をM1、第1電極層5の斜面に対応する部分の磁化をM2および第2電極層6の斜面に対応する部分の磁化をM3とする。上部磁気シールド8の下面に近い部分の磁化は、静磁エネルギーを下げるため表面に磁荷が生じないように下面の形状に倣うように磁化の向きが変化する。このときM1とM2は傾きが異なるために両者の境界Aで磁化の向きが変化する。また同様に境界Bでも磁化の向きが変化する。境界部分での磁壁エネルギーを検討するためM1とM2の磁化を抜き出して、拡大して図4に示す。
図4において、M1およびM2が容易軸に対してなす角度をそれぞれθ1およびθ2とすると、一般に磁化M1がM2に方向を変えるときは磁化のエネルギーは磁壁に蓄えられ、ブロッホ磁壁の場合の角度依存性は、Ewb=σb×(Sin([θ1+θ2]/2))2で表され、ネール磁壁の場合の角度依存性は、Ewn=σn×(1−Cos([θ1+θ2]/2)2で表される。ここで、σbは180°ブロッホ磁壁エネルギー、σnは180°ネール磁壁エネルギーである。これらの角度依存性を求めた結果を図5の実線(ブロッホ磁壁)と破線(ネール磁壁)に示す。M1およびM2の両磁化のなす角度θ1+θ2の増加に伴って、両磁壁エネルギーとも増大していくのがわかる。実際の磁壁エネルギーはブロッホ磁壁成分とネール磁壁成分が合成されたものからなり、その割合は全エネルギーが最小となるように決まる。このように両磁化のなす角度が大きくなって磁壁のエネルギーが高くなるとその磁壁は不安定になり、もっと複雑な磁区構造をとってエネルギーを低くする状態に移る確率が増加する。不安定な磁壁は外部ストレスなどによって、いろいろな磁化状態に変化し易く、例えば媒体からの信号磁界によっても磁気シールドの磁化や磁壁構造が変化する可能性がある。このような再生素子近傍の磁気シールド磁化の変化は、バイアス点の変化に現れ、再生出力の再現性の低下などを生じる。
この現象を調べるめために、トラック幅部分に対応する磁気シールド磁化M1と第1電極層5に対応する磁気シールド斜面部の磁化M2のなす角度が10、20、30、110°となるように、第1電極層5の膜厚を15、25、40、110nmと変えて、第1電極層5に対応する磁気シールド斜面部の角度が上記の10、20、30、110°となるようにヘッドを作製した。第1電極層5には、先に述べた実施例と同様にRh電極を用いた。ところで実際の素子接合部分近傍には電極膜厚の微小な変化による局所的な斜面角度の変化はあるので、上記斜面部の角度は、おおよそトラック幅相当の長さにおける平均的な斜面角度の値として求めたものである。またこの実験では各部分の磁化の角度は、磁気シールド下面の平均的な斜面角度と平行であることを前提として磁化のなす角度を求めた。測定は電気特性の出力の安定性および波形上下非対称性を計測し、仕様に対する歩留まりを評価した。結果を同図中の白丸で示す。角度が20°までは、歩留まりが95%以上で、再現性・安定性は良好であるが、30°および60°では75%および50%まで歩留まりが低下して、安定性が低下していることがわかる。
したがって、安定した電気特性を得るには、トラック幅部分の磁化M1の方向と第1電極部分の磁化M2の方向の角度が20°以下すなわち、第1電極層斜面部の角度が20°以下であることが好ましいことがわかる。一方、第2電極層6の積層に関しては、図3に示すように、領域Bの磁化変化領域がトラック幅中央部に影響を与えるが、A領域に比べて再生素子中心との距離が離れている。B領域の磁化の不均一性から発生した漏洩磁界の強度は、距離の平方に逆比例する。トラック端部からの第2電極層6が形成する斜面開始位置までの距離をLとし、Lがトラック幅の1.0倍の場合、すなわちトラック幅と同等の場合、トラック中心までの距離はトラック幅の1.5倍となる。第1電極層開始位置とトラック中心との距離はトラック幅の0.5倍であるから、距離の比としては3倍の開きがある。このため影響を与える漏洩磁界の大きさは9分の1に減衰し、さらにLがトラック幅の1.5倍あれば16分の1に減衰する。第1電極層端部に磁化不均一部分ができた場合、出力の不安定性は最大で出力の約30%の範囲で発生するが、上記のように漏洩磁界を10分の1程度まで減衰させれば、出力変化は3%まで低減することができる。したがって、第2電極層6の斜面開始位置とトラック端部の距離Lとして、トラック幅Twrの1.0倍から1.5倍よりも大きくすれば十分であることがわかる。
以上説明したように、第1の実施例によれば、磁気抵抗効果素子に接する電極を第1電極層とし、この電極層の膜厚を調整することによって、この電極部分における上下磁気シールド間隔の広がりを抑えることができる。これによって、再生トラック端部での読みにじみが低減できる。また第1電極層の膜厚の段差が小さいので、上部磁気シールドに発生する段差も小さくなり、この部分の磁化の乱れが低減して磁気抵抗効果素子に及ぼす影響を低減できる。さらに磁気抵抗効果素子から離れた位置で上記第1電極層に接して形成された第2電極層の膜厚を第1電極層よりも厚くすることによって電極の電気抵抗を下げることができる。さらに、第2電極層の材料として、第1電極層の比抵抗よりも小さい材料を選ぶことによって一層電極抵抗を下げることができる。
このように電極を二段構造にすることによって、磁気抵抗効果素子に接する第1の電極層は磁気抵抗効果素子に対する拡散現象や、高電流密度の電流で生じるエレクトロマイグレーション現象などに配慮した材料選択ができる。さらに、磁気抵抗効果素子から離れた場所に形成される第2電極層は第1電極層と比べて流れる電流密度も低く材料的な制約は少ないので、低抵抗材料の選択の自由度は広がる。
次に図2を参照して、上記第1の実施例による磁気抵抗効果ヘッド100と記録ヘッド200を組み合わせた記録再生分離型磁気ヘッド300を第2の実施例として製造工程順に従って説明する。磁気抵抗効果ヘッド100の上部に分離用非磁性層10をスパッタリングにて形成し、その上に記録ヘッド200を構成する下部磁極11、突起部12、磁気ギャップ13、上部磁極先端層14、コイル15、上部磁極主層16をめっきにて形成する。下部磁極11の突起部12,磁気ギャップ13,上部磁極先端層14は、イオンミリングにより記録トラック幅に相当する幅にトリミングする。下部磁極11と上部磁極主層16はバックギャップにおいて磁気的に接続される。分離用非磁性層10は膜厚約0.5μmのアルミナで、下部磁極11にはNi46%Feを用い、突起部12の記録ギャップ近傍にはCoNiFe合金からなる高Bs材料を用いた。コイル15は2層構造で膜厚約2.0μmのCuを用い、上部磁極先端層14にはCoNiFe合金からなる高Bs材料を用い、上部磁極主層16にはNi46%Feを用いた。本実施例によれば、記録ヘッド200の記録動作の繰り返しによって発生する再生ヘッド100の出力不安定性はほとんどなく、また再生ヘッド100の抵抗低減による雑音の低減によりヘッドS/Nが従来ヘッドよりも約0.5dB向上した。
次に、図6に上記実施例による磁気抵抗効果ヘッド100あるいは記録再生分離型磁気ヘッド300を搭載した磁気ディスク装置の概略構成を示す。磁気ディスク15はCoCrPtBからなる記録媒体を有し、スピンドルモータ17に固定されて回転駆動される。磁気抵抗効果ヘッド100あるいは記録再生分離型磁気ヘッド300はサスペンション16の先端に取り付けられ、ボイスコイルモータ18により磁気ディスク15の半径方向に移動され、磁気ディスク15の任意の記録トラックに位置付けされ磁気情報の再生あるいは記録を行う。本磁気ディスク装置は、ヘッド抵抗の小さい再生ヘッドを搭載しているので、再生出力の雑音が低く抑えられ、良好な再生特性を得ることができる。
1…下部部磁気シールド、2…絶縁層、3…磁気抵抗効果素子、4…磁区制御層、5…第1電極層、6…第2電極層、7…絶縁層、8…上部磁気シールド、10…分離非磁性膜、11…下部磁極、12…突起部、13…磁気ギャップ、14…上部磁極先端層、15…コイル、16…上部磁極主層、100…磁気抵抗効果型ヘッド、200…記録ヘッド、300…記録再生分離型磁気ヘッド。
Claims (10)
- 基板と、
該基板の上部に設けられた下部磁気シールドと、
該下部磁気シールドの上部に下部ギャップ層を介して設けられた磁気抵抗効果素子と、
該磁気抵抗効果素子の両側に設けられた磁区制御層と、
該磁区制御層の上部に前記磁気抵抗効果素子に接触して設けられた第1電極層と、
該第1電極層の上部に当該第1電極層よりも大きな膜厚を有し、前記磁気抵抗効果素子から離れて設けられた第2電極層と、
前記磁気抵抗効果素子、第1電極層及び第2電極層の上部に設けられた上部ギャップ層と、
該上部ギャップ層の上部に設けられた上部磁気シールドと、を有し、
浮上面において、前記上部磁気シールドの前記磁気抵抗効果素子と対向する面と、前記第1電極層と対向する面の成す平均的な角度が20°以下であり、前記磁気抵抗効果素子の端部から前記第2電極層までの距離が当該磁気抵抗効果素子の幅よりも大きいことを特徴とする磁気抵抗効果型ヘッド。 - 前記第1電極層はエレクトロマイグレーション耐性に優れた材料で構成され、前記第2電極層は前記第1電極層よりも低抵抗材料で構成されていることを特徴とする請求項1記載の磁気抵抗効果型ヘッド。
- 前記第1電極層は主としてRh,Ta及びAuの中の1種を含む金属材料で構成され、前記第2電極層は主としてAu、Ag、Cu及びAlの中のいずれか1種を含む金属材料で構成されていることを特徴とする請求項1記載の磁気抵抗効果型ヘッド。
- 基板と、
該基板の上部に設けられた下部磁気シールドと、
該下部磁気シールドの上部に下部ギャップ層を介して設けられた再生トラック幅を決める磁気抵抗効果素子と、
該磁気抵抗効果素子の両側に設けられた磁区制御層と、
該磁区制御層の上部に前記磁気抵抗効果素子に接触して設けられた第1電極層と、
該第1電極層の上部に当該第1電極層よりも大きな膜厚を有し、前記磁気抵抗効果素子から離れて設けられた第2電極層と、
前記磁気抵抗効果素子、第1電極層及び第2電極層の上部に設けられた上部ギャップ層と、
該上部ギャップ層の上部に設けられた上部磁気シールドと、を有し、
浮上面において、前記上部磁気シールドの前記磁気抵抗効果素子と対向する面と、前記第1電極層と対向する面の成す平均的な角度が20°以下であり、前記磁気抵抗効果素子の再生トラック幅を決める端部から前記第2電極層までの距離が当該磁気抵抗効果素子の再生トラック幅よりも大きいことを特徴とする磁気抵抗効果型ヘッド。 - 前記磁気抵抗効果素子は、下地層、反強磁性層、強磁性体の固定層、Cuからなる非磁性導電層、強磁性体の自由層とを有し、前記自由層の端部の間隔で再生トラック幅が決定されることを特徴とする請求項4記載の磁気抵抗効果型ヘッド。
- 前記磁気抵抗効果素子は、下地層、反強磁性層、Ruで分割された2枚のCoFe層からなる固定層、Cuからなる非磁性導電層、NiFeとCoFeの2層膜からなる自由層とを有し、前記自由層の端部の間隔で再生トラック幅が決定されることを特徴とする請求項4記載の磁気抵抗効果型ヘッド。
- 前記第1電極層はエレクトロマイグレーション耐性に優れた材料で構成され、前記第2電極層は前記第1電極層よりも低抵抗材料で構成されていることを特徴とする請求項4記載の磁気抵抗効果型ヘッド。
- 前記第1電極層は主としてRh、Ta及びAuの中の1種を含む金属材料で構成され、前記第2電極層は主としてAu、Ag、Cu及びAlの中のいずれか1種を含む金属材料で構成されていることを特徴とする請求項4記載の磁気抵抗効果型ヘッド。
- 基板と、
該基板の上部に設けられた下部磁気シールドと、
該下部磁気シールドの上部に下部ギャップ層を介して設けられた磁気抵抗効果素子と、
該磁気抵抗効果素子の両側に設けられた磁区制御層と、
該磁区制御層の上部に前記磁気抵抗効果素子に接触して設けられた第1電極層と、
該第1電極層の上部に当該第1電極層よりも大きな膜厚を有し、前記磁気抵抗効果素子から離れて設けられた第2電極層と、
前記磁気抵抗効果素子、第1電極層及び第2電極層の上部に設けられた上部ギャップ層と、
該上部ギャップ層の上部に設けられた部磁気シールドと、を具備し、
浮上面において、前記上部磁気シールドの前記磁気抵抗効果素子と対向する面と、前記第1電極層と対向する面の成す平均的な角度が20°以下であり、前記磁気抵抗効果素子の端部から前記第2電極層までの距離が当該磁気抵抗効果素子の幅よりも大きい磁気抵抗効果型ヘッドと、
前記上部磁気シールドの上部に非磁性層を介して設けられた下部磁極と、
浮上面において前記下部磁極との間に記録ギャップを構成し、バックギャップにおいて当該下部磁極に磁気的に接続された上部磁極と、
前記下部磁極と上部磁極の間に設けられたコイルと、を具備する記録ヘッドと、
を有することを特徴とする記録再生分離型磁気ヘッド。 - 前記磁気抵抗効果型ヘッドの第1電極層はエレクトロマイグレーション耐性に優れた材料で構成され、前記第2電極層は前記第1電極層よりも低抵抗材料で構成されていることを特徴とする請求項9記載の記録再生分離型磁気ヘッド。
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JP2006111676A JP2007287217A (ja) | 2006-04-14 | 2006-04-14 | 二段電極を有する磁気抵抗効果型ヘッドおよびこれを用いた記録再生分離型磁気ヘッド |
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