JP2007286595A - 能動騒音低減装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】少ない処理にて室内騒音を低減する能動騒音低減装置を提供する。
【解決手段】マイクロホンM1〜Mkの出力をA/D変換したうえフーリエ変換した信号を演算制御装置7に入力し演算制御装置7にて、スピーカSP1で駆動して予め定めた制御荷重を発生させたときの音圧ベクトル、音響共振固有モードマトリックス、音響モード係数ベクトル及び前記制御荷重に基づく音響ポテンシャルエネルギーを予め求め、時系列的に入力されてくる信号に基づいて音響モードマトリックスを用いて音響モード係数ベクトルの変化分を求め、音響モード係数ベクトルの変化分に基づいて音響ポテンシャルエネルギーの変化分を求め、音響ポテンシャルエネルギーと予め求めておいた音響ポテンシャルエネルギーとの比に基づいてスピーカ駆動信号を補正する。
【選択図】図1
【解決手段】マイクロホンM1〜Mkの出力をA/D変換したうえフーリエ変換した信号を演算制御装置7に入力し演算制御装置7にて、スピーカSP1で駆動して予め定めた制御荷重を発生させたときの音圧ベクトル、音響共振固有モードマトリックス、音響モード係数ベクトル及び前記制御荷重に基づく音響ポテンシャルエネルギーを予め求め、時系列的に入力されてくる信号に基づいて音響モードマトリックスを用いて音響モード係数ベクトルの変化分を求め、音響モード係数ベクトルの変化分に基づいて音響ポテンシャルエネルギーの変化分を求め、音響ポテンシャルエネルギーと予め求めておいた音響ポテンシャルエネルギーとの比に基づいてスピーカ駆動信号を補正する。
【選択図】図1
Description
本発明は能動騒音低減装置に関し、例えば、室内騒音に対して相殺振動を発生することによって室内騒音を低減する能動騒音低減装置に関する。
構造体が媒質中で振動して音波を発生する際に、その反力として構造体は媒質からの音圧を負荷として受ける、音響場と構造場とが強連成する構造音響連成系とみなせる閉空間場が知られている。車室は係る構造音響連成系とみなせる。本発明は係る閉空間場を対象として、このような閉空間場における騒音を低減するものである。
従来、車室の騒音を低減する能動騒音低減装置として、エンジンなどの騒音源からの信号を参照信号として適応フィルタを含む制御装置に供給し、制御装置からの出力によって2次音源として車室に設けたスピーカを駆動して車室内騒音と逆位相の振動を発生させると共に、音響センサとしてマイクロホンを車室に設けることにより車室内騒音を検知して、マイクロホンからの出力を適応フィルタに供給して車室内の騒音を最小化するように適応フィルタのフィルタ係数を順次更新制御して、室内車室内空間の騒音を低減させることが知られている(特許文献1)。
一方、解析解に基づく能動騒音制御及び能動振動制御による閉空間場における音響ポテンシャルエネルギーを最小化することにより、閉空間場の音場を制御して閉空間場における対象周波数域の構造音響連成共鳴ピークの大半を低減する手法が知られている(非特許文献1)。
日本機械学会論文集(C編)70巻690号(2004−2)論文No.03−0599
しかし、特許文献1に開示されているような能動騒音低減装置は、スピーカとマイクロホンとの間の伝達関数に基づいて騒音を低減させる能動振動制御、所謂ANCと称されている技術であって、マイクロホンが設けられている位置近傍の騒音が低減されるものであり、例えば、マイクロホンを乗員の耳元に設けた場合マイクロホン近傍の騒音が低減される。このために、乗員が移動したりして耳の位置が変化すると期待する騒音低減効果が得られないという問題点があった。
また、特許文献1に開示されているANCでは、制御対象部分の数と同数の音響制御加振源であるスピーカとマイクロホンとが必要であるため、制御対象部分の数に比例した制御装置が必要であると同時に多数のスピーカ間の干渉除去のための制御アルゴリズムは複雑となって、結局制御装置の費用は増大するという問題点があった。また、このANCでよく用いる騒音低減制御のFiltered−x法では、二次経路モデルが必要であるが、二次経路と二次経路モデルの間には少なからず誤差(モデル化誤差)があり、これがシステムを不安定にすることがあるという問題点もある。またさらに、ANCでよく用いる騒音低減制御自体、システムが複雑で、その設計は困難なことが多いという問題もある。
一方、上記非特許文献1に開示されている論文での制御対象構造物は解析解が存在し、且つ音響ポテンシャルエネルギー最小化条件もその解析解を用いて表現できる構造物に限定されていた。従って、解析解が存在しない車両のような複雑な構造物に対しては、膨大な計算が必要となり、この騒音制御方法の実質的な適用が困難であるというという問題点があった。また、たとえ複雑な構造物に対してFEMなどの数値解析で近似解を得たとしても、その音響ポテンシャルエネルギー最小化条件を得るには膨大な計算時間が必要になり、車両のように常に変動する騒音の制御への適用は困難であるという問題点があった。さらに、従来の技術では、外乱は与えられたものとして取り扱っているが、実際の車両のような場合、外乱は予測できず、従って、従来の技術では車室内騒音の音響ポテンシャルエネルギー最小化は不可能であるという問題点もあった。
本発明は、少ない処理によって得た信号により加振手段を駆動して室内騒音の低減をする能動騒音低減装置を提供することを目的とする。
本発明に係る請求項1記載の能動騒音低減装置は、室内の音圧検出のための音圧検出手段と、室内音を加振励起する加振手段と、前記音圧検出手段からの出力信号を入力するフーリエ変換器と、該フーリエ変換器からの出力を入力する演算制御装置と、該演算制御装置からの出力を入力として出力に基づき加振手段を駆動するフーリエ逆変換器とを備え、
演算制御装置は、加振手段を駆動して予め定めた制御荷重を発生させたときにおける音圧検出手段からの出力信号のフーリエ変換出力を音圧ベクトルとして予め求め、且つ制御周波数範囲内における前記室内の音響共鳴固有モードマトリックスと、該音響共鳴固有モードマトリックスと前記音圧ベクトルに基づく音響モード係数ベクトルと、前記予め定めた制御荷重に基づく音響ポテンシャルエネルギーとを予め求めておいて、
入力されてくるフーリエ変換出力に基づく音圧ベクトルと時系列的にその直前に入力されたフーリエ変換出力に基づく音圧ベクトルとの差と前記予め求めておいた音響共鳴固有モードマトリックスとを用いて音響モード係数ベクトルの変化分を求め、該音響モード係数ベクトルの変化分に基づく音響ポテンシャルエネルギーの変化分を求め、音響ポテンシャルエネルギーの変化分と前記予め求めておいた音響ポテンシャルエネルギーとの比に基づいて制御荷重を発生する出力の補正を行い、該補正された出力をフーリエ逆変換器へ送出する
ことを特徴とする。
演算制御装置は、加振手段を駆動して予め定めた制御荷重を発生させたときにおける音圧検出手段からの出力信号のフーリエ変換出力を音圧ベクトルとして予め求め、且つ制御周波数範囲内における前記室内の音響共鳴固有モードマトリックスと、該音響共鳴固有モードマトリックスと前記音圧ベクトルに基づく音響モード係数ベクトルと、前記予め定めた制御荷重に基づく音響ポテンシャルエネルギーとを予め求めておいて、
入力されてくるフーリエ変換出力に基づく音圧ベクトルと時系列的にその直前に入力されたフーリエ変換出力に基づく音圧ベクトルとの差と前記予め求めておいた音響共鳴固有モードマトリックスとを用いて音響モード係数ベクトルの変化分を求め、該音響モード係数ベクトルの変化分に基づく音響ポテンシャルエネルギーの変化分を求め、音響ポテンシャルエネルギーの変化分と前記予め求めておいた音響ポテンシャルエネルギーとの比に基づいて制御荷重を発生する出力の補正を行い、該補正された出力をフーリエ逆変換器へ送出する
ことを特徴とする。
本発明に係る請求項2記載の能動騒音低減装置は、制御対象周波数域内において、室内音を近似する音響共鳴固有モードの数nより大きい数であるk個の室内音圧検出のための音圧検出手段と、室内に設けられ且つ駆動により発生する音響制御荷重に基づいて室内を加振する音響加振手段と、前記各音圧検出手段からのk個の出力信号を入力するA/D変換器と、該A/D変換器からの出力を入力するフーリエ変換器と、該フーリエ変換器からの出力を入力する演算制御装置と、該演算制御装置からの出力を入力するフーリエ逆変換器と、フーリエ逆変換器からの出力を入力とし且つ出力に基づき音響加振手段を駆動するD/A変換器とを備え、
演算制御装置は、音響加振手段を駆動して予め定めた音響制御荷重を発生させたときにおける各音圧検出手段からの出力信号のフーリエ変換出力を音圧ベクトルとして予め求め、且つフーリエ変換された各音圧検出手段からのk個の出力信号に基づくk個の音響固有モードベクトル成分からなる音響共鳴固有モードマトリックスと、前記音響共鳴固有モードマトリックスと前記音圧ベクトルに基づく音響モード係数ベクトルと、前記予め定めた音響制御荷重に基づく音響ポテンシャルエネルギーとを予め求めておいて、
入力されてくるフーリエ変換出力に基づく音圧ベクトルと時系列的にその直前に入力されたフーリエ変換出力に基づく音圧ベクトルとの差と前記予め求めておいた音響共鳴固有モードマトリックスとを用いて音響モード係数ベクトルの変化分を求め、該音響モード係数ベクトルの変化分に基づく音響ポテンシャルエネルギーの変化分を求め、音響ポテンシャルエネルギーの変化分と前記予め求めておいた音響ポテンシャルエネルギーとの比に基づいて音響制御荷重を発生する出力の補正を行い、補正された出力をフーリエ逆変換器へ送出することを特徴とする。
演算制御装置は、音響加振手段を駆動して予め定めた音響制御荷重を発生させたときにおける各音圧検出手段からの出力信号のフーリエ変換出力を音圧ベクトルとして予め求め、且つフーリエ変換された各音圧検出手段からのk個の出力信号に基づくk個の音響固有モードベクトル成分からなる音響共鳴固有モードマトリックスと、前記音響共鳴固有モードマトリックスと前記音圧ベクトルに基づく音響モード係数ベクトルと、前記予め定めた音響制御荷重に基づく音響ポテンシャルエネルギーとを予め求めておいて、
入力されてくるフーリエ変換出力に基づく音圧ベクトルと時系列的にその直前に入力されたフーリエ変換出力に基づく音圧ベクトルとの差と前記予め求めておいた音響共鳴固有モードマトリックスとを用いて音響モード係数ベクトルの変化分を求め、該音響モード係数ベクトルの変化分に基づく音響ポテンシャルエネルギーの変化分を求め、音響ポテンシャルエネルギーの変化分と前記予め求めておいた音響ポテンシャルエネルギーとの比に基づいて音響制御荷重を発生する出力の補正を行い、補正された出力をフーリエ逆変換器へ送出することを特徴とする。
本発明に係る請求項3記載の能動騒音低減装置は、制御対象周波数域内において、室内音を近似する音響共鳴固有モードの数nより大きい数であるk個の室内音圧検出のための音圧検出手段と、室内に設けられ且つ駆動により発生する音響制御荷重に基づいて室内を加振する音響加振手段と、室構造体に設けられ且つ駆動により発生する構造制御荷重に基づいて室内を加振する構造加振手段と、前記各音圧検出手段からのk個の出力信号を入力するA/D変換器と、該A/D変換器からの出力を入力するフーリエ変換器と、該フーリエ変換器からの出力を入力する演算制御装置と、該演算制御装置からの出力を入力するフーリエ逆変換器と、フーリエ逆変換器からの出力を入力とし且つ出力に基づき音響加振手段と構造加振手段とを駆動するD/A変換器とを備え、
演算制御装置は、予め定めた音響制御荷重を発生させたときにおける各音圧検出手段からの出力信号のフーリエ変換出力を第1音圧ベクトルとして予め求め、予め定めた構造制御荷重を発生させたときにおける各音圧検出手段からの出力信号のフーリエ変換出力を第2音圧ベクトルとして予め求め、
フーリエ変換された各音圧検出手段からのk個の出力信号に基づいてn個の音響固有モードベクトル成分からなる音響共鳴固有モードマトリックスと、前記音響共鳴固有モードマトリックスと第1音圧ベクトルとに基づく第1音響モード係数ベクトルと、前記音響共鳴固有モードマトリックスと第2音圧ベクトルとに基づく第2音響モード係数ベクトルと、前記予め定めた音響制御荷重に基づく第1音響ポテンシャルエネルギーと、前記予め定めた構造制御荷重に基づく第2音響ポテンシャルエネルギーと、前記予め定めた構造制御荷重による影響を受けた音響制御荷重に基づく第3音響ポテンシャルエネルギーと、前記予め定めた音響制御荷重による影響を受けた構造制御荷重に基づく第4音響ポテンシャルエネルギーとを予め求めておいて、
入力されてくるフーリエ変換出力に基づく音圧ベクトルと時系列的にその直前に入力されたフーリエ変換出力に基づく音圧ベクトルとの差と前記予め求めておいた音響共鳴固有モードマトリックスとを用いて音響モード係数ベクトルの変化分を求め、
前記第1、第2、第3及び第4音響ポテンシャルエネルギーと前記第1音響モード係数ベクトルと前記音響モード係数ベクトルの変化分とに基づく音響ポテンシャルエネルギーの変化分に基づく音響制御荷重の補正を行って補正された音響制御荷重を発生する出力を求め、該出力をフーリエ逆変換器へ送出して音響加振手段を駆動し、
前記第1、第2、第3及び第4音響ポテンシャルエネルギーと前記第2音響モード係数ベクトルと前記音響モード係数ベクトルの変化分とに基づく音響ポテンシャルエネルギーの変化分に基づく構造制御荷重の補正を行って補正された構造制御荷重を発生する出力を求め、該出力をフーリエ逆変換器へ送出して構造加振手段を駆動する
ことを特徴とする。
演算制御装置は、予め定めた音響制御荷重を発生させたときにおける各音圧検出手段からの出力信号のフーリエ変換出力を第1音圧ベクトルとして予め求め、予め定めた構造制御荷重を発生させたときにおける各音圧検出手段からの出力信号のフーリエ変換出力を第2音圧ベクトルとして予め求め、
フーリエ変換された各音圧検出手段からのk個の出力信号に基づいてn個の音響固有モードベクトル成分からなる音響共鳴固有モードマトリックスと、前記音響共鳴固有モードマトリックスと第1音圧ベクトルとに基づく第1音響モード係数ベクトルと、前記音響共鳴固有モードマトリックスと第2音圧ベクトルとに基づく第2音響モード係数ベクトルと、前記予め定めた音響制御荷重に基づく第1音響ポテンシャルエネルギーと、前記予め定めた構造制御荷重に基づく第2音響ポテンシャルエネルギーと、前記予め定めた構造制御荷重による影響を受けた音響制御荷重に基づく第3音響ポテンシャルエネルギーと、前記予め定めた音響制御荷重による影響を受けた構造制御荷重に基づく第4音響ポテンシャルエネルギーとを予め求めておいて、
入力されてくるフーリエ変換出力に基づく音圧ベクトルと時系列的にその直前に入力されたフーリエ変換出力に基づく音圧ベクトルとの差と前記予め求めておいた音響共鳴固有モードマトリックスとを用いて音響モード係数ベクトルの変化分を求め、
前記第1、第2、第3及び第4音響ポテンシャルエネルギーと前記第1音響モード係数ベクトルと前記音響モード係数ベクトルの変化分とに基づく音響ポテンシャルエネルギーの変化分に基づく音響制御荷重の補正を行って補正された音響制御荷重を発生する出力を求め、該出力をフーリエ逆変換器へ送出して音響加振手段を駆動し、
前記第1、第2、第3及び第4音響ポテンシャルエネルギーと前記第2音響モード係数ベクトルと前記音響モード係数ベクトルの変化分とに基づく音響ポテンシャルエネルギーの変化分に基づく構造制御荷重の補正を行って補正された構造制御荷重を発生する出力を求め、該出力をフーリエ逆変換器へ送出して構造加振手段を駆動する
ことを特徴とする。
本発明に係る請求項4記載の能動騒音低減装置は、室内の音圧検出のための音圧検出手段と、室内音を加振励起する加振手段と、前記音圧検出手段からの出力信号を入力とし且つ出力に基づき加振手段を駆動する演算制御装置とを備え、
演算制御装置は、
音圧検出手段からの出力信号をフーリエ変換するフーリエ変換手段と、
加振手段を駆動して予め定めた制御荷重を発生させたときにおける音圧検出手段からの出力信号のフーリエ変換出力を音圧ベクトルとして予め求め、且つ制御周波数範囲内における音響固有モードベクトル成分からなる前記室内の音響共鳴固有モードマトリックス、該音響共鳴固有モードマトリックスと前記音圧ベクトルに基づく音響モード係数ベクトル及び前記予め定めた制御荷重に基づく音響ポテンシャルエネルギーから得られ且つ外乱による音圧ベクトルに乗算されて制御荷重を得る係数マトリックスを予め求めておく演算手段と、
該演算手段により求めた前記係数マトリックスをフーリエ逆変換するフーリエ逆変換手段と、
前記フーリエ逆変換手段により時間領域に変換された前記係数マトリックスと前記演算制御装置に入力されてくる時間領域における音圧ベクトルとを畳み込み演算して該畳み込み演算出力を制御荷重とし、前記演算制御装置に入力されてくる時間領域における音圧ベクトルと時系列的に次に前記演算制御装置に入力されてくる時間領域における音圧ベクトルとの間の変化分を求め、該変化分と前記フーリエ逆変換手段により時間領域に変換された前記係数マトリックスとを畳み込み演算して該畳み込み演算出力を補正量とし且つ該補正量によって前記制御荷重を補正した補正制御荷重を求める畳み込み演算手段とを有し、
前記補正制御荷重に基づいて前記加振手段を駆動する
ことを特徴とする。
演算制御装置は、
音圧検出手段からの出力信号をフーリエ変換するフーリエ変換手段と、
加振手段を駆動して予め定めた制御荷重を発生させたときにおける音圧検出手段からの出力信号のフーリエ変換出力を音圧ベクトルとして予め求め、且つ制御周波数範囲内における音響固有モードベクトル成分からなる前記室内の音響共鳴固有モードマトリックス、該音響共鳴固有モードマトリックスと前記音圧ベクトルに基づく音響モード係数ベクトル及び前記予め定めた制御荷重に基づく音響ポテンシャルエネルギーから得られ且つ外乱による音圧ベクトルに乗算されて制御荷重を得る係数マトリックスを予め求めておく演算手段と、
該演算手段により求めた前記係数マトリックスをフーリエ逆変換するフーリエ逆変換手段と、
前記フーリエ逆変換手段により時間領域に変換された前記係数マトリックスと前記演算制御装置に入力されてくる時間領域における音圧ベクトルとを畳み込み演算して該畳み込み演算出力を制御荷重とし、前記演算制御装置に入力されてくる時間領域における音圧ベクトルと時系列的に次に前記演算制御装置に入力されてくる時間領域における音圧ベクトルとの間の変化分を求め、該変化分と前記フーリエ逆変換手段により時間領域に変換された前記係数マトリックスとを畳み込み演算して該畳み込み演算出力を補正量とし且つ該補正量によって前記制御荷重を補正した補正制御荷重を求める畳み込み演算手段とを有し、
前記補正制御荷重に基づいて前記加振手段を駆動する
ことを特徴とする。
本発明に係る請求項5記載の能動騒音低減装置は、室内の音圧検出のための音圧検出手段と、室内に設けられ且つ駆動により発生する音響制御荷重に基づいて室内を加振する音響加振手段と、室構造体に設けられ且つ駆動により発生する構造制御荷重に基づいて室内を加振する構造加振手段と、前記各音圧検出手段からの出力を入力とし且つ出力に基づき音響加振手段と構造加振手段を駆動する演算制御装置とを備え、
演算制御装置は、
音圧検出手段からの出力信号をフーリエ変換するフーリエ変換手段と、
音響加振手段を駆動して予め定めた音響制御荷重を発生させたときにおける各音圧検出手段からの出力信号のフーリエ変換出力を第1音圧ベクトルとして予め求め、構造加振手段を駆動して予め定めた構造制御荷重を発生させたときにおける各音圧検出手段からの出力信号のフーリエ変換出力を第2音圧ベクトルとして予め求め、且つ制御周波数範囲内におけるフーリエ変換された各音圧検出手段からの出力に基づく音響固有モードベクトル成分からなる前記室内の音響共鳴固有モードマトリックス、前記音響共鳴固有モードマトリックスと第1音圧ベクトルとに基づく第1音響モード係数ベクトル、前記予め定めた音響制御荷重に基づく第1音響ポテンシャルエネルギー、前記予め定めた構造制御荷重に基づく第2音響ポテンシャルエネルギー、前記予め定めた構造制御荷重による影響を受けた音響制御荷重に基づく第3音響ポテンシャルエネルギー及び前記予め定めた音響制御荷重による影響を受けた構造制御荷重に基づく第4音響ポテンシャルエネルギーから得られ且つ外乱による第1音圧ベクトルに乗算されて音響制御荷重を得る第1係数マトリックスを予め求め、前記音響共鳴固有モードマトリックス、前記音響共鳴固有モードマトリックスと第2音圧ベクトルとに基づく第2音響モード係数ベクトル及び前記第1乃至第4音響ポテンシャルエネルギーとから得られ且つ外乱による第2音圧ベクトルに乗算されて構造制御荷重を得る第2係数マトリックスを予め求めておく演算手段と、
該演算手段により求めた前記第1係数マトリックス及び前記第2係数マトリックスをフーリエ逆変換するフーリエ逆変換手段と、
前記フーリエ逆変換手段により時間領域に変換された前記第1係数マトリックスと前記演算制御装置に入力されてくる時間領域における音圧ベクトルとを畳み込み演算して該畳み込み演算出力を音響制御荷重とし、前記フーリエ逆変換手段により時間領域に変換された前記第2係数マトリックスと前記演算制御装置に入力されてくる時間領域における音圧ベクトルとを畳み込み演算して該畳み込み演算出力を構造制御荷重とし、前記演算制御装置に入力されてくる時間領域における音圧ベクトルと時系列的に次に前記演算制御装置に入力されてくる時間領域における音圧ベクトルとの間の変化分を求め、該変化分と前記フーリエ逆変換手段により時間領域に変換された前記第1係数マトリックスとを畳み込み演算して該畳み込み演算出力を補正量とし且つ該補正量によって前記音響制御荷重を補正した補正音響制御荷重を求め、前記変化分と前記フーリエ逆変換手段により時間領域に変換された前記第2係数マトリックスとを畳み込み演算して該畳み込み演算出力を補正量とし且つ該補正量によって前記構造制御荷重を補正した補正構造制御荷重を求める畳み込み演算手段とを有し、
前記補正音響制御荷重に基づいて前記音響加振手段を駆動し且つ前記補正構造制御荷重に基づいて前記構造加振手段を駆動する
ことを特徴とする。
演算制御装置は、
音圧検出手段からの出力信号をフーリエ変換するフーリエ変換手段と、
音響加振手段を駆動して予め定めた音響制御荷重を発生させたときにおける各音圧検出手段からの出力信号のフーリエ変換出力を第1音圧ベクトルとして予め求め、構造加振手段を駆動して予め定めた構造制御荷重を発生させたときにおける各音圧検出手段からの出力信号のフーリエ変換出力を第2音圧ベクトルとして予め求め、且つ制御周波数範囲内におけるフーリエ変換された各音圧検出手段からの出力に基づく音響固有モードベクトル成分からなる前記室内の音響共鳴固有モードマトリックス、前記音響共鳴固有モードマトリックスと第1音圧ベクトルとに基づく第1音響モード係数ベクトル、前記予め定めた音響制御荷重に基づく第1音響ポテンシャルエネルギー、前記予め定めた構造制御荷重に基づく第2音響ポテンシャルエネルギー、前記予め定めた構造制御荷重による影響を受けた音響制御荷重に基づく第3音響ポテンシャルエネルギー及び前記予め定めた音響制御荷重による影響を受けた構造制御荷重に基づく第4音響ポテンシャルエネルギーから得られ且つ外乱による第1音圧ベクトルに乗算されて音響制御荷重を得る第1係数マトリックスを予め求め、前記音響共鳴固有モードマトリックス、前記音響共鳴固有モードマトリックスと第2音圧ベクトルとに基づく第2音響モード係数ベクトル及び前記第1乃至第4音響ポテンシャルエネルギーとから得られ且つ外乱による第2音圧ベクトルに乗算されて構造制御荷重を得る第2係数マトリックスを予め求めておく演算手段と、
該演算手段により求めた前記第1係数マトリックス及び前記第2係数マトリックスをフーリエ逆変換するフーリエ逆変換手段と、
前記フーリエ逆変換手段により時間領域に変換された前記第1係数マトリックスと前記演算制御装置に入力されてくる時間領域における音圧ベクトルとを畳み込み演算して該畳み込み演算出力を音響制御荷重とし、前記フーリエ逆変換手段により時間領域に変換された前記第2係数マトリックスと前記演算制御装置に入力されてくる時間領域における音圧ベクトルとを畳み込み演算して該畳み込み演算出力を構造制御荷重とし、前記演算制御装置に入力されてくる時間領域における音圧ベクトルと時系列的に次に前記演算制御装置に入力されてくる時間領域における音圧ベクトルとの間の変化分を求め、該変化分と前記フーリエ逆変換手段により時間領域に変換された前記第1係数マトリックスとを畳み込み演算して該畳み込み演算出力を補正量とし且つ該補正量によって前記音響制御荷重を補正した補正音響制御荷重を求め、前記変化分と前記フーリエ逆変換手段により時間領域に変換された前記第2係数マトリックスとを畳み込み演算して該畳み込み演算出力を補正量とし且つ該補正量によって前記構造制御荷重を補正した補正構造制御荷重を求める畳み込み演算手段とを有し、
前記補正音響制御荷重に基づいて前記音響加振手段を駆動し且つ前記補正構造制御荷重に基づいて前記構造加振手段を駆動する
ことを特徴とする。
本発明の請求項1及び2記載の能動騒音低減装置によれば、入力されてくるフーリエ変換出力に基づく音圧ベクトルと時系列的にその直前における音圧ベクトルとの差と音響共鳴固有モードマトリックスとを用いて音響モード係数ベクトルの変化分が求められ、求められた音響モード係数ベクトルの変化分に基づき音響ポテンシャルエネルギーの変化分が求められて、この音響ポテンシャルエネルギーの変化分と予め求めておいた音響ポテンシャルエネルギーとの比に基づいて補正された出力により加振手段、音響加振手段が駆動されるため、室内の音圧レベルは低減させられる。
本発明の請求項3記載の能動騒音低減装置によれば、入力されてくるフーリエ変換出力に基づく音圧ベクトルと時系列的にその直前に入力されたフーリエ変換出力に基づく音圧ベクトルとの差と予め求めておいた音響共鳴固有モードマトリックスとを用いて音響モード係数ベクトルの変化分が求められ、第1、第2、第3及び第4音響ポテンシャルエネルギーと第1音響モード係数ベクトルと音響モード係数ベクトルの変化分とに基づく音響ポテンシャルエネルギーの変化分に基づく音響制御荷重の補正が行われて補正された音響制御荷重になるように音響加振手段が駆動され、第1、第2、第3及び第4音響ポテンシャルエネルギーと第2音響モード係数ベクトルと音響モード係数ベクトルの変化分とに基づく音響ポテンシャルエネルギーの変化分に基づく構造制御荷重の補正を行われて補正された構造制御荷重になるように構造加振手段が駆動されるために、室内の音圧レベルは低減させられる。
本発明の請求項1から3記載に係る能動騒音低減装置によれば、制御対象周波数域の音場全体の音響ポテンシャルエネルギー、すなわち音場全体の音圧レベルが低減されるために、構造連成系全体の共鳴ピークの殆どが低減されて、制御対象周波数域の音場全体の騒音が低減される。音場全体の音圧レベルが低減されるために乗員が移動して乗員の耳元位置が変化しても、乗員に騒音が感ぜられない。また、FEM解析等を用いず実測値の処理で騒音低減が行われて、室の構造が複雑であっても加振手段を駆動するための信号を得る為の演算処理は少なくて済み、さらに時々刻々変化する室内の騒音低減が図れる。また、音響検出手段や加振手段の位置に大きな制約もない。さらに、加振手段は、例えば、1個でも音場全体の音響ポテンシャルエネルギーの低減が図れる。窓が開いて左右方向の音響共鳴固有モードが変化しても、前後、上下の音響共鳴固有モードは変化しないため、音響共鳴固有モードに関する音響ポテンシャルエネルギーの制御が可能である等の効果が得られる。
本発明の請求項4記載の能動騒音低減装置によれば、加振手段を駆動して予め定めた制御荷重を発生させたときにおける音圧検出手段からの出力信号のフーリエ変換出力が音圧ベクトルとして予め求められ、且つ室内の音響共鳴固有モードマトリックス、該音響共鳴固有モードマトリックスと前記音圧ベクトルに基づく音響モード係数ベクトル及び前記予め定めた制御荷重に基づく音響ポテンシャルエネルギーから得られ且つ外乱による音圧ベクトルに乗算されて制御荷重を得る係数マトリックスが、フーリエ変換出力から、予め求められる。この係数マトリックスは予め求めた量から演算にて得ることができて、係数マトリックスを求める演算は1回で済む。
次いで、本発明の請求項4記載の能動騒音低減装置によれば、フーリエ逆変換により時間領域に変換された前記係数マトリックスと演算制御装置に入力されてくる時間領域における音圧ベクトルとが畳み込み演算されて該畳み込み演算出力が制御荷重とされ、前記演算制御装置に入力されてくる時間領域における音圧ベクトルと時系列的に次に前記演算制御装置に入力されてくる時間領域における音圧ベクトルとの間の変化分とフーリエ逆変換により時間領域に変換された前記係数マトリックスとが畳み込み演算されて該畳み込み演算出力が補正量とされ、該補正量によって前記制御荷重が補正されて補正制御荷重とされ、補正制御荷重に基づいて前記加振手段が駆動されて音響ポテンシャルエネルギーが最小に制御され、騒音が低減される。
本発明の請求項5記載の能動騒音低減装置によれば、音響加振手段を駆動して予め定めた音響制御荷重を発生させたときにおける各音圧検出手段からの出力信号のフーリエ変換出力が第1音圧ベクトルとして予め求められ、構造加振手段を駆動して予め定めた構造制御荷重を発生させたときにおける各音圧検出手段からの出力信号のフーリエ変換出力が第2音圧ベクトルとして予め求められ、且つ室内の音響共鳴固有モードマトリックス、前記音響共鳴固有モードマトリックスと第1音圧ベクトルとに基づく第1音響モード係数ベクトル、前記予め定めた音響制御荷重に基づく第1音響ポテンシャルエネルギー、前記予め定めた構造制御荷重に基づく第2音響ポテンシャルエネルギー、前記予め定めた構造制御荷重による影響を受けた音響制御荷重に基づく第3音響ポテンシャルエネルギー及び前記予め定めた音響制御荷重による影響を受けた構造制御荷重に基づく第4音響ポテンシャルエネルギーから得られ且つ外乱による第1音圧ベクトルに乗算されて音響制御荷重を得る第1係数マトリックスが予め求められ、前記音響共鳴固有モードマトリックス、前記音響共鳴固有モードマトリックスと第2音圧ベクトルとに基づく第2音響モード係数ベクトル及び前記第1乃至第4音響ポテンシャルエネルギーとから得られ且つ外乱による第2音圧ベクトルに乗算されて構造制御荷重を得る第2係数マトリックスが、フーリエ変換出力から、予め求められる。この第1及び第2係数マトリックスは予め求めた量から演算にて得ることができて、第1及び第2係数マトリックスを求める演算は1回で済む。
次いで、本発明の請求項5記載の能動騒音低減装置によれば、フーリエ逆変換により時間領域に変換された前記第1係数マトリックスと演算制御装置に入力されてくる時間領域における音圧ベクトルとが畳み込み演算されて該畳み込み演算出力が音響制御荷重とされ、フーリエ逆変換により時間領域に変換された前記第2係数マトリックスと前記演算制御装置に入力されてくる時間領域における音圧ベクトルとが畳み込み演算されて該畳み込み演算出力が構造制御荷重とされ、前記演算制御装置に入力されてくる時間領域における音圧ベクトルと時系列的に次に前記演算制御装置に入力されてくる時間領域における音圧ベクトルとの間の変化分が求められ、該変化分とフーリエ逆変換により時間領域に変換された前記第1係数マトリックスとが畳み込み演算されて該畳み込み演算出力が補正量とされ、該補正量によって前記音響制御荷重が補正されて補正音響制御荷重とされ、前記変化分とフーリエ逆変換により時間領域に変換された前記第2係数マトリックスとが畳み込み演算されて該畳み込み演算出力が補正量とされ、該補正量によって前記構造制御荷重が補正されて補正構造制御荷重とされ、前記補正音響制御荷重に基づいて前記音響加振手段が駆動され、前記補正構造制御荷重に基づいて前記構造加振手段が駆動されて、音響ポテンシャルエネルギーが最小に制御され、騒音が低減される。
本発明の請求項4及び請求項5に係る能動騒音低減装置によれば、係数マトリックスを求める演算は1回ですみ、さらに畳み込み演算を用いることによって、騒音低減をすることができる。この場合、制御荷重を全てフーリエ変換とフーリエ変換した量の演算とフーリエ逆変換した量から求める場合に比較して、畳み込み演算が必要になるが時々刻々変化する音響外乱荷重、構造外乱荷重による音圧測定点の音圧ベクトルに対して、その都度、フーリエ変換やフーリエ逆変換を行う演算が不要となるため、その分騒音低減のための制御系の応答速度が向上する場合もあるという効果が得られる。
以下、本発明に係る能動騒音低減装置を実施の形態によって説明する。
図1は本発明の実施の第1の形態に係る能動騒音低減装置の構成を示す模式ブロック図である。
本発明の実施の第1の形態では室内は車室内の場合を例示している。本発明の実施の第1の形態では、車室内の音圧を検出する為の音圧検出点に音圧検出手段としてk個のマイクロホンM1、M2、…、Mkを備え、室内に設けられ且つ駆動により発生する音響制御荷重に基づいて室内を加振する音響加振手段としてのスピーカSP1とを備えている。ここで、kは制御対象周波数域内における音響共鳴固有モードの数nより大きい数である。k値のマイクロホンM1、M2、…、Mkから出力されるk個の音圧検出信号を増幅器4にて増幅し、増幅出力をA/D変換器5にてデジタル信号に変換し、A/D変換出力信号をフーリエ変換器6にてフーリエ変換して周波数領域の信号に変換し、フーリエ変換出力信号をデジタルシグナルプロセッサからなる演算制御装置7に入力し、演算制御装置7からの出力信号をフーリエ逆変換器8に供給して逆フーリエ変換することで時間領域の信号に変換し、逆フーリエ変換出力をD/A変換器9にてアナログ信号に変換し、D/A変換出力信号を増幅器10にて増幅のうえ増幅出力信号をスピーカSP1に供給しスピーカSP1を駆動して、車室内の音響ポテンシャルエネルギーEPを最小値に制御する。
ここで、増幅器4の入力側で、例えば、演算制御装置7の制御の下に、マイクロホンからの出力信号のスキャンニングを行って、増幅器4の出力をA/D変換し、フーリエ変換のうえ、演算制御装置7で処理を行う。
演算制御装置7における演算制御内容について説明する。スピーカSP1を駆動して予め定めた音響制御荷重を発生させたときにおけるk個のマイクロホンM1、M2、…、Mkからの出力信号をフーリエ変換して音圧ベクトルとして予め求めておくと共に、フーリエ変換されたk個のマイクロホンM1、M2、…、Mkから出力されるk個の音圧検出信号に基づく、k個のマイクロホン位置におけるn個の音響固有モードベクトル成分からなる音響共鳴固有モードマトリックスと、該音響共鳴固有モードマトリックスと音圧ベクトルとに基づく音響モード係数ベクトルと、前記予め定めた音響制御荷重に基づく音響ポテンシャルエネルギーとを予め求めておいて、時系列的に順次演算制御装置7に入力されてくる1時点のフーリエ変換出力に基づく音圧ベクトルとその直前に入力されているフーリエ変換出力に基づく音圧ベクトルとの差と前記音響共鳴固有モードマトリックスとを用いて音響モード係数ベクトルの変化分を求め、該音響モード係数ベクトルの変化分に基づく音響ポテンシャルエネルギーの変化分を求め、該音響ポテンシャルエネルギーの変化分と前記予め求めておいた音響ポテンシャルエネルギーとの比に基づいて音響制御荷重の補正を行い、補正された音響制御荷重を発生する出力をフーリエ逆変換器へ送出することを繰り返して、車室内の音響ポテンシャルエネルギーを最小値に制御する。ここで、モード係数ベクトルは、物理度標系をモーダル座標系で現わしたときの固有モードベクトルに係る係数を各モード毎に並べてベクトルにしたものであり、モード係数は場合によってはモード寄与率とも称されている。
演算制御装置7の作用説明のために、以下、部分モード解析から車室内の音響ポテンシャルの最小化条件、即ち車室の音圧レベルの最小化条件を求め、音響ポテンシャル最小化時の音響制御荷重を求める。次いで、予め定めた音響荷重を導入して実機による測定データの取得、音響ポテンシャルを最小化するべく音響加振手段であるスピーカの駆動について説明する。次いで、音響加振手段であるスピーカSP1と共に、構造加振手段である加振器SP2を駆動する場合について、順次説明する。
構造音響連成系における平衡方程式から、複雑な荷重条件、形状構造物でも解析できるFEM手法によって表現した物理座標系の構造音響連成解析FEMモデルは公知のように(1)式で表される。
添え字sは構造系を示す記号とし、aは音響系を示す記号として用いる。
Ks;構造系の剛性マトリックス、
Ms;構造系の質量マトリックス、
Ka;音響系の剛性マトリックス、
Ma;音響系の質量マトリックス、
Ds;構造系の動剛性マトリックス減衰のない場合には(Ks−ω2・Ms)、
Da;音響系の動剛性マトリックス減衰のない場合には(Ka−ω2・Ma)、
X;構造系と音響系の連成マトリックス、
U;構造系の変位ベクトル、
P;音響系の音圧ベクトル、
Fs;構造系の荷重ベクトル、
Fa;音響系の荷重ベクトル、
ρ;音響系の媒質の密度、
ω;構造音響連成系の制御対象角周波数、
であり、
Tは、ベクトル、マトリックスの転置を示す記号とし、Hはベクトル、マトリックスの複素共役転置を示す記号とし、-1は逆マトリックスを示す記号とする。
Ks;構造系の剛性マトリックス、
Ms;構造系の質量マトリックス、
Ka;音響系の剛性マトリックス、
Ma;音響系の質量マトリックス、
Ds;構造系の動剛性マトリックス減衰のない場合には(Ks−ω2・Ms)、
Da;音響系の動剛性マトリックス減衰のない場合には(Ka−ω2・Ma)、
X;構造系と音響系の連成マトリックス、
U;構造系の変位ベクトル、
P;音響系の音圧ベクトル、
Fs;構造系の荷重ベクトル、
Fa;音響系の荷重ベクトル、
ρ;音響系の媒質の密度、
ω;構造音響連成系の制御対象角周波数、
であり、
Tは、ベクトル、マトリックスの転置を示す記号とし、Hはベクトル、マトリックスの複素共役転置を示す記号とし、-1は逆マトリックスを示す記号とする。
構造系の変位ベクトルU、音響系の音圧ベクトルP、構造系の荷重ベクトルFs、音響系の荷重ベクトルFaは複素成分を持つベクトルである。
構造音響連成系を音響系と構造系との2つの部分に分け、各部分のモード解析を行って音響固有モードと構造固有モードを求めて部分モード合成法によって構造系の変位ベクトルU及び音響系の音圧ベクトルPを表現すると(2)式となる。
Φは構造系共振固有モードマトリックス、
Ψは音響系共鳴固有モードマトリックス、
uは構造モード係数ベクトル、
pは音響モード係数ベクトル、
を示し、・は、ベクトルの内積、ベクトルとマトリックスとの掛け算、マトリックスとマトリックスとの掛け算等の演算を示す記号として用いている。
Ψは音響系共鳴固有モードマトリックス、
uは構造モード係数ベクトル、
pは音響モード係数ベクトル、
を示し、・は、ベクトルの内積、ベクトルとマトリックスとの掛け算、マトリックスとマトリックスとの掛け算等の演算を示す記号として用いている。
構造系共振固有モードベクトルの最大近似次数をm、
音響系共鳴固有モードベクトルの最大近似次数をn、
構造系のm次の共振固有モードベクトルをφm、
音響系のn次の共鳴固有モードベクトルをψn、
として、
構造系共振固有モードマトリックスΦと、音響系共鳴固有モードマトリックスΨと、構造モード係数ベクトルuの転置と、音響モード係数ベクトルpの転置とをそれぞれ示せば、(3)式の如くに表せる。U、P等の如く大文字は物理座標系による表示であることを示し、u、p等の如く小文字はモーダル座標系による表示であることを示している。
音響系共鳴固有モードベクトルの最大近似次数をn、
構造系のm次の共振固有モードベクトルをφm、
音響系のn次の共鳴固有モードベクトルをψn、
として、
構造系共振固有モードマトリックスΦと、音響系共鳴固有モードマトリックスΨと、構造モード係数ベクトルuの転置と、音響モード係数ベクトルpの転置とをそれぞれ示せば、(3)式の如くに表せる。U、P等の如く大文字は物理座標系による表示であることを示し、u、p等の如く小文字はモーダル座標系による表示であることを示している。
構造音響連成系全体の音響ポテンシャルエネルギーEPを求めるために(1)式をモーダル座標系に変換すれば、(4)式に示すモーダル座標系の構造音響連成解析FEMモデルで示される。
ds;構造系のモード動剛性マトリックス、
x;構造系と音響系のモード連成マトリックス
da;音響系のモード動剛性マトリックス、
fs;構造系のモード荷重ベクトル、
fa;音響系のモード荷重ベクトル、
を示し、それぞれ(5)式にて示されている。ここで、dsは構造系の動剛性に、daは音響系の動剛性に相当し、構造モード係数ベクトルu、音響モード係数ベクトルpは構造系の変位ベクトルU、音響系の音圧ベクトルPをモーダル座標系に変換したものである。音響モード係数ベクトルp、構造モード係数ベクトルu、構造系のモード荷重ベクトルfs、音響系のモード荷重ベクトルfaは複素成分を持つベクトルである。
x;構造系と音響系のモード連成マトリックス
da;音響系のモード動剛性マトリックス、
fs;構造系のモード荷重ベクトル、
fa;音響系のモード荷重ベクトル、
を示し、それぞれ(5)式にて示されている。ここで、dsは構造系の動剛性に、daは音響系の動剛性に相当し、構造モード係数ベクトルu、音響モード係数ベクトルpは構造系の変位ベクトルU、音響系の音圧ベクトルPをモーダル座標系に変換したものである。音響モード係数ベクトルp、構造モード係数ベクトルu、構造系のモード荷重ベクトルfs、音響系のモード荷重ベクトルfaは複素成分を持つベクトルである。
次に音響ポテンシャルエネルギーを求めるために、構造音響連成系の情報全て((4)式の情報全て)を含む音響モード係数ベクトルpを求める。
音響系の係数マトリックスをGa、
構造系の係数マトリックスをGs、
構造音響連成系の等価音響モード動剛性マトリックスをda′、
とし、音響モード係数ベクトルpは、(6)式に示す如くになる。
音響系の係数マトリックスをGa、
構造系の係数マトリックスをGs、
構造音響連成系の等価音響モード動剛性マトリックスをda′、
とし、音響モード係数ベクトルpは、(6)式に示す如くになる。
(6)式の、それぞれ第1項は音響加振手段、例えば、音響外乱荷重やスピーカによって発生する部分であり、第2項は構造加振手段、例えば、構造外乱荷重や加振機によって発生する部分であって、構造音響連成系は線形系であり音響外乱荷重やスピーカによって発生する音響系の部分と構造系外乱荷重や加振機によって発生する構造系の部分との加算で示される。ここで、音響系の係数マトリックスGa、構造系の係数マトリックスGs、構造音響連成系の等価音響モード動剛性マトリックスda′は(7)式に示す如くである。
ここで、加振手段が音響加振手段であるスピーカのみであるとして、車室に加わる荷重が、外乱により加わる外乱荷重と、スピーカの駆動により加わる制御荷重(音響制御荷重とも記す)との場合に、外乱荷重による音響モード係数ベクトル、音響制御荷重による音響モード係数ベクトル、外乱荷重と音響制御荷重による音響モード係数ベクトルを求める。外乱はどういうタイミングでどんな方向から加わるか不明である。
外乱荷重による音響モード係数ベクトルをpd、
音響加振だけの音響制御荷重が加わったときの音響モード係数ベクトルをpc、
音響制御荷重と外乱荷重との両方が加わったときの音響モード係数ベクトルをpcd、
音響系の外乱荷重による荷重ベクトルをFad、
構造系の外乱荷重による荷重ベクトルをFsd、
音響制御荷重による荷重ベクトル(以下、音響制御荷重ベクトルとも記す)をFacとすると、
(8)式に示す如く、(6)式を参照して音響モード係数ベクトルpdが求められ、音響加振だけの音響制御荷重による音響モード係数ベクトルpc、音響制御荷重と外乱荷重との両方が加わったときの音響モード係数ベクトルpcdが求められる。
音響加振だけの音響制御荷重が加わったときの音響モード係数ベクトルをpc、
音響制御荷重と外乱荷重との両方が加わったときの音響モード係数ベクトルをpcd、
音響系の外乱荷重による荷重ベクトルをFad、
構造系の外乱荷重による荷重ベクトルをFsd、
音響制御荷重による荷重ベクトル(以下、音響制御荷重ベクトルとも記す)をFacとすると、
(8)式に示す如く、(6)式を参照して音響モード係数ベクトルpdが求められ、音響加振だけの音響制御荷重による音響モード係数ベクトルpc、音響制御荷重と外乱荷重との両方が加わったときの音響モード係数ベクトルpcdが求められる。
音響制御荷重と外乱荷重との両方が加わったときの音響モード係数ベクトルpcdが外乱荷重による音響モード係数ベクトルpdと音響制御荷重が加わったときの音響モード係数ベクトルpcの加算で示されるのは系が線形であるためである。
閉空間内の音響ポテンシャルエネルギーEPは、音響固有モードベクトルψの直交性から、音響モード係数ベクトルpとその複素共役の転置ベクトルpHとの内積を4ρC2にて割ることにより(9)式にて求められる。参考までに言えば、これは前記非特許文献1における式7に記載と同様である。Cは構造音響系内の媒質の音速である。
4ρC2は定数であるため、(9)式は(10)式のように変形でき、外乱荷重と音響制御荷重とが同時に加わったときの音響モード係数ベクトルpcdから、(8)式を参照して、新たに定義した音響ポテンシャルエネルギーEP´は(10)式により求められる。
(10)式において、音響ポテンシャルエネルギーEP′及びEPcd′としてあるのは、4ρC2を音響ポテンシャルエネルギーEPに乗算したためである。ここで、音響モード係数ベクトルpcdとその複素共役との内積(=音響ポテンシャルエネルギーEPcd′)は実数であり、常に正の値である。また、(Ga・ΨT・Fac)H・(Ga・ΨT・Fac)はスピーカによる音響ポテンシャルエネルギーである。
音響ポテンシャルエネルギーEPを最小化することは音響ポテンシャルエネルギーEP′を最小化することに等しく、最小化する為の条件、即ち車室内の音圧レベルを最小化する条件は、構造系については制御されていない場合であるため、(10)式を音響制御荷重による制御荷重ベクトルFacによって微分して0と置くことによって(11)式の如く得られる。
(11)式を物理的に解釈すると次の如くである。EPcd′=(pcd)H・(pcd)≧0であるから1番小さい場合は0であり、min(EPcd′)→0に等しい。(8)式を参照してe、(pd+pc)、y、X1、a1は(12.1)式に示す如くになり、音響ポテンシャルエネルギーEPcd′は(12.2)式の如くになる。従って、min(EPcd′)→0はmin|e|2→0に等しい。これは、(12.2)式から音響ポテンシャルエネルギーEPcd′は差e(=y−(X1・a1))の2乗和(音響共鳴固有モードの総数にわたっての和)を最小とすることと同等となる。音響ポテンシャルエネルギーEPcd′の最小化は、外乱荷重による音響モード係数ベクトルpdの音響制御荷重による音響モード係数ベクトルpc、すなわちFacによる最小二乗近似と同等であって、(pd+pc)=0、つまり、pd=−pcの時が最小であり、これは音響モード係数ベクトルpdの音響モード係数ベクトルpcによるANCと同等である。
(11)式をFacで解けば、Haa及びHadを(13)式の如く置いて、音響制御荷重ベクトルFacは(14)式の如くになる。これからも明らかなように、音響ポテンシャルエネルギーEP最小時の音響制御荷重ベクトルFacは、外乱による音響モード係数ベクトルpdと音響系の係数マトリックスGaの演算から求めることができることになる。
しかしながら、理論解析モデルや、FEM解析モデルからは精度の良い実車の音響系の係数マトリックスGaを導出することができない。また、音響系の係数マトリックスGaを求めるためには膨大なマトリックス演算時間が必要であって、変動音の制御に用いることはできない。さらに、車両のように複雑で常に変動する外乱荷重を受ける場合の音響モード係数ベクトルpdを予測することは不可能である。これらのために、別の方法で音響系荷重ベクトルFacを求める。
Fac0を予め定めた音響制御荷重ベクトル、Fsc0を予め定めた構造制御荷重ベクトル、pac0を音響制御荷重ベクトルFac0による音響モード係数ベクトル、psc0を構造制御荷重ベクトルFsc0による音響モード係数ベクトル、Exxを音響ポテンシャルエネルギーとして、先ず、予め定めた音響制御荷重ベクトルFac0によるHaa-1、(Haa-1・Had)を求める。Haaに左からFac0Hを掛け、右からFac0を掛け、pac0=Ga・ΨT・Fac0を勘案して、(15.1)式に示す如くになる。ここで音響ポテンシャルエネルギーExxも含めて0は予め定めたことを示す記号として用いている。
ここで、Eac0ac0は、音響モード係数ベクトルpac0自身の内積で音響ポテンシャルエネルギーに比例する値であり、スカラー量である。さらに、Haaに左から(Fac0・Fac0H)を掛け、右から(Fac0・Fac0H)を掛けると、(15.2)式に示す如くHaa-1が得られる。これを用いて(Haa-1・Had)は(16)式に示すように得られる。ここで、音響ポテンシャルエネルギーEac0dは(17)式の如くにおいた。
従って、音響制御荷重ベクトルFac0は(18)式のように得られる。以上(18)式からも明らかなように、音響ポテンシャルエネルギーEP´を最小にする音響制御荷重ベクトルFacは、予め定めた音響制御荷重ベクトルFac0と、pac0及びpdから求められる音響ポテンシャルエネルギーの比とから求めることができる。すなわち、音響ポテンシャルエネルギーEP´を最小にする音響制御荷重ベクトルFacは、予め定めた音響制御荷重ベクトルFac0自体による音響ポテンシャルエネルギーEac0ac0と、外乱と予め定めた音響制御荷重ベクトルFac0による音響ポテンシャルエネルギーEac0dとの比に、予め定めた音響制御荷重ベクトルFac0を乗じたものから得ることができる。
予め定めた音響制御荷重ベクトルFac0に対する音響モード係数ベクトルpac0及び外乱荷重による音響モード係数ベクトルpdは(19)式に示す如くになる。
以上の説明では、加振手段が音響加振手段であるスピーカのみであるとして説明したが、これに加えて加振手段に構造加振手段として機械的な加振器を有する場合について次に説明する。
構造系と音響系とを共に制御する場合、(8)式に対応して外乱荷重、構造制御荷重及び音響制御荷重による音響モード係数ベクトルpd、pc、pcdを求める。
外乱荷重による音響モード係数ベクトルをpd、
音響制御荷重と構造制御荷重が加わったときの音響モード係数ベクトルをpc(音響加振のみによる加振の場合も音響モード係数ベクトルpcとしたが、音響加振と構造加振とを行う場合も混乱のない限り、音響制御荷重と構造制御荷重が加わったときの音響モード係数ベクトルをpcとする)、
音響制御荷重と構造制御荷重と外乱荷重とが加わったときの音響モード係数ベクトルをpcd、
音響系の外乱による荷重ベクトルをFad、
構造系の外乱による荷重ベクトルをFsd、
音響系の制御荷重による荷重ベクトルをFac、
構造系の制御荷重による荷重ベクトルをFsc、
とすると、
(20)式に示す如く、外乱荷重による音響モード係数ベクトルpd、音響制御荷重と構造制御荷重とによる音響モード係数ベクトルpc、音響系の制御荷重と構造系の制御荷重と外乱荷重とが加わったときの音響モード係数ベクトルpcdが求められる。
音響制御荷重と構造制御荷重が加わったときの音響モード係数ベクトルをpc(音響加振のみによる加振の場合も音響モード係数ベクトルpcとしたが、音響加振と構造加振とを行う場合も混乱のない限り、音響制御荷重と構造制御荷重が加わったときの音響モード係数ベクトルをpcとする)、
音響制御荷重と構造制御荷重と外乱荷重とが加わったときの音響モード係数ベクトルをpcd、
音響系の外乱による荷重ベクトルをFad、
構造系の外乱による荷重ベクトルをFsd、
音響系の制御荷重による荷重ベクトルをFac、
構造系の制御荷重による荷重ベクトルをFsc、
とすると、
(20)式に示す如く、外乱荷重による音響モード係数ベクトルpd、音響制御荷重と構造制御荷重とによる音響モード係数ベクトルpc、音響系の制御荷重と構造系の制御荷重と外乱荷重とが加わったときの音響モード係数ベクトルpcdが求められる。
また、音響モード係数ベクトルp、外乱荷重と音響制御荷重及び構造制御荷重とによる音響モード係数ベクトルpc、pd、pcdから音響ポテンシャルエネルギーEP´は、(9)式及び(10)式に対応して(21)式及び(22)式によって得られる。
音響ポテンシャルエネルギーを最小化する為の条件、即ち車室内の音圧レベルを最小化する条件は、構造系についても制御されている場合であるため、(22)式を音響制御荷重ベクトルFacと構造制御荷重ベクトルFscによって偏微分してそれぞれ0と置くことによって(23.1)式及び(23.2)式の如く得られる。
(23)式を物理的に解釈すると次の如くである。EPcd′=(pcd)H・(pcd)≧0であるから1番小さい場合は0であり、min(EPcd′)→0に等しい。(20)式を参照してe、(pd+pc)、a1、a2、y、X1、X2は(24.1)式に示す如くになり、EPcd′は(24.2)式の如くになる。従って、min(EPcd′)→0はmin|e|2→0に等しい。(24.2)式から音響ポテンシャルエネルギーEPcd′は差e(=y−(X1・a1+X2・a2))の2乗和(音響共鳴固有モードの総数にわたっての和)を最小とすることと同等となる。音響ポテンシャルエネルギーEPcd′の最小化は、外乱荷重による音響モード係数ベクトルpdの音響制御荷重及び構造制御荷重による音響モード係数ベクトルpc、すなわち、Fac、Fscによる最小二乗近似と同等であって、(pd+pc)=0、つまり、pd=−pcの時が最小であり、これは音響モード係数ベクトルpdの音響モード係数ベクトルpcによるANCと同等である。
ここで、Haa、Hsa、Had、Has、Hss、Hsdを(25.1)式のように定義し、これを用いてAaa、Ass、Aad、Asdを(25.2)式のように定義して、(23.1)式を音響制御荷重ベクトルFacで解き、(23.2)式を構造制御荷重ベクトルFscで解けば、音響制御荷重ベクトルFac及び構造制御荷重ベクトルFscは(26)式の如くになる。(25.2)式においてIは単位マトリックスを示す。
(26)式からも明らかなように、音響ポテンシャルエネルギーEP´最小時の音響制御荷重ベクトルFac、構造制御荷重ベクトルFscは外乱による音響モード係数ベクトルpdと音響系の係数マトリックスGa、及び構造系の係数マトリックスGsの演算から求めることができる。
しかし、理論解析モデルや、FEM解析モデルからは精度の良い実車の音響系の係数マトリックスGaを導出することができない。構造系の係数マトリックスGsも同様である。また、音響系の係数マトリックスGa及び構造系の係数マトリックスGsを求めるためには膨大なマトリックス演算時間が必要であって、変動音の制御に用いることはできない。さらに、車両のように複雑で常に変動する外乱荷重を受ける場合の音響モード係数ベクトルpdを予測することは不可能である。これらのために、別の方法で音響系制御加重ベクトルFac及び構造系制御加重Fscを求める。
先ず、予め定めた音響制御荷重ベクトルFac0及び構造制御荷重ベクトルFsc0によるHaa―1、Hss-1、(Haa-1・Had)、(Hss-1・Hsd)、(Haa-1・Has・Hss-1・Hsa)、(Hss-1・Hsa・Haa-1・Has)、(Haa-1・Has・Hss-1・Hsd)、(Hss-1・Hsa・Haa-1・Had)を、(15)式及び(16)式に対応して、それぞれ(27.1)式、(27.2)式、(27.3)式、(27.4)式により求める。
(23)式を参照して予め求めた音響制御荷重ベクトルFac0による音響モード係数ベクトルpac0、予め定めた構造制御荷重ベクトルFsc0による音響モード係数ベクトルpsc0を(28)式にて定義する。ここでも前記の如く、0は予め求めたことを示す記号として用いている。(28)式には外乱による音響モード係数ベクトルpdも記載してある。さらに、ここでも音響系、構造系音響モード係数ベクトルに基づく音響ポテンシャルエネルギーに比例する値をExxで示し、Eac0ac0、Esc0sc0、Eac0sc0、Esc0ac0、Eac0d、Esc0dを(29)式のように定義する。Eac0ac0、Esc0sc0は実数となるが、Eac0sc0、Esc0ac0、Eac0d、Esc0dは一般に複素数となる。
(25.2)式及び(27.1)式〜(27.4)式に基づいてAaa-1、Ass-1、Aad、Asdは(式30)によって求められ、音響制御荷重ベクトルFac及び構造制御荷重ベクトルFscは(31)式によって求められる。(31)式からも明らかなように音響制御荷重ベクトルFac及び構造制御荷重ベクトルFscは予め定めた音響制御荷重ベクトルFac0及び構造制御荷重ベクトルFsc0に基づいて求められる。
以上(31)式から、音響ポテンシャルエネルギーEP´を最小にする音響制御荷重ベクトルFacと構造制御荷重ベクトルFscは、予め定めた音響制御荷重ベクトルFac0と構造制御荷重ベクトルFsc0と、音響モード係数ベクトルpac0、psc0及びpdとから求められる音響ポテンシャルエネルギーの比から求めることができる。ここで(31)式において、Facは音響制御荷重ベクトル、Fscは構造制御荷重ベクトル、Fac0は予め定めた音響制御荷重ベクトル、Fsc0は予め定めた構造制御荷重ベクトルであるから、ERIaは予め定めた音響制御荷重ベクトルFac0に掛かる分母係数、DERaは予め定めた音響制御荷重ベクトルに掛かる分子係数、ERIsは予め定めた構造制御荷重ベクトルFsc0に掛かる分母係数、DERsは予め定めた構造制御荷重ベクトルに掛かる分子係数ともいえる。
次に、実測による音響モード係数ベクトルpe及び実測による音響ポテンシャルエネルギーExxの求め方について説明する。
e;実測から求めた値であることを示す記号とし、
P;閉空間のk個の音圧側定点における音圧を成分とする音圧ベクトル、
Ψe;閉空間の予め求めた音響共鳴固有モードマトリックス、
ψe;閉空間の予め求めた音響固有モードベクトル、
p;音響モード係数ベクトル、
とすると、構造音響連成系において、部分モード合成法を採用することにより閉空間の音圧ベクトルPは音響共鳴固有モーマトリックスΨeと音響モード係数ベクトルpを用いて
P=Ψe・p
にて表すことができる。
P;閉空間のk個の音圧側定点における音圧を成分とする音圧ベクトル、
Ψe;閉空間の予め求めた音響共鳴固有モードマトリックス、
ψe;閉空間の予め求めた音響固有モードベクトル、
p;音響モード係数ベクトル、
とすると、構造音響連成系において、部分モード合成法を採用することにより閉空間の音圧ベクトルPは音響共鳴固有モーマトリックスΨeと音響モード係数ベクトルpを用いて
P=Ψe・p
にて表すことができる。
k;音圧測定点の数で、k≧n、
n;制御対象周波数域内における物理座標系の音をモーダル座標系で近似するときの音響固有モードの数、
Pe;k個の音圧測定点の音圧を成分とするk行の音圧ベクトル、
Ψe;k個の音圧測定点におけるn個の音響固有モードベクトルの成分からなるk行、n列の音響共鳴固有モードマトリックス、
pe;k個の音圧測定点から求めたn行の音響モード係数ベクトル、
とすると、実測の場合、Pe=Ψe・peとなる。
n;制御対象周波数域内における物理座標系の音をモーダル座標系で近似するときの音響固有モードの数、
Pe;k個の音圧測定点の音圧を成分とするk行の音圧ベクトル、
Ψe;k個の音圧測定点におけるn個の音響固有モードベクトルの成分からなるk行、n列の音響共鳴固有モードマトリックス、
pe;k個の音圧測定点から求めたn行の音響モード係数ベクトル、
とすると、実測の場合、Pe=Ψe・peとなる。
ここで、Pe、pe、Ψeは、(32)式の如くになる。
例えば、音圧測定点1における音響固有モードベクトルψe1の1次からn次までの成分は(33.1)式の如くである。n個の未知の音響モード係数からなる音響モード係数ベクトルpeに対して、n個以上のk個の音圧測定点の音圧を成分とする音圧ベクトルPeを設定すると、音響共鳴固有モードマトリックスΨeはk行、n列のマトリックスとなるから、最小二乗法により音響モード係数ベクトルpeは(33.2)式から求めることができる。n=kの場合は、音響共鳴固有モードマトリックスΨeは(n、n)の正方マトリックスとなるから、音響モード係数ベクトルpeは(33.3)式として求めることができる。
このように、構造音響連成系の音圧ベクトルPeは、車室に設けたk個の音圧検出手段、例えば、マイクロホンによって実測が可能であり、車室の音響固有モードベクトルψも実測、又は計算により精度良く求めることができる。さらに、音響共鳴固有モードマトリックスΨeは全ての音圧測定点における車室の音響固有モードベクトルψeの成分から簡単に求めることができる。また、全ての音圧測定点を変更しない限り、一定の値のみから構成されるマトリックスとなる。
つまり、制御対象周波数域における物理座標系の音をモーダル座標系で近似表現するときの音響固有モードの数n個に対し、それ以上のk個の音圧測定点の音圧を成分とする音圧ベクトルPeとk個の音圧測定点におけるn個の音響固有モードベクトルψeを成分とする音響共鳴固有モードマトリックスΨeとから、n個の音響共鳴固有モード係数を成分とする音響モード係数ベクトルpeを求めることができる。
従って、上記の方法で音響モード係数ベクトルpeを求める場合には、実測音圧とk個の各音圧測定点におけるn個の音響固有モードベクトルの成分が必要なだけで解析モデルは一切不要である。つまり、一般に音響固有モードベクトルψeと実測音圧値peは精度良く求めることができるため、簡潔で精度よく音響モード係数ベクトルpeを求めることができる。
すなわち、予め定めた音響制御荷重Fac0による全音圧測定点の音圧を成分とする音圧ベクトルをPac0e、予め定めた構造制御荷重Fsc0による全音圧測定点の音圧を成分とする音圧ベクトルをPsc0e、外乱荷重による全音圧測定点の音圧を成分とする音圧ベクトルをPdeとすると、
Pac0e=Ψe・pac0、
Psc0e=Ψe・psc0、
Pde=Ψe・pde、
である。
Pac0e=Ψe・pac0、
Psc0e=Ψe・psc0、
Pde=Ψe・pde、
である。
(33・2)式からも明らかなように、k≧nの場合には、
pac0=[ΨeT・Ψe]-1・ΨeT・Pac0e、
psc0=[ΨeT・Ψe]-1・ΨeT・Psc0e、
pd=[ΨeT・Ψe]-1・ΨeT・Pde、
となる。
pac0=[ΨeT・Ψe]-1・ΨeT・Pac0e、
psc0=[ΨeT・Ψe]-1・ΨeT・Psc0e、
pd=[ΨeT・Ψe]-1・ΨeT・Pde、
となる。
[ΨeT・Ψe]-1・ΨeT、Pac0e、Pas0eは各々、全ての音圧測定点が決まれば、予め求めることができる定数を成分とするマトリックス、予め定めた音響制御荷重による音圧測定点の音圧を定数成分とする音圧ベクトル、予め定めた構造制御荷重による音圧測定点の音圧を定数成分とする音圧ベクトルであり、pac0もpsc0も予め求めることができる定数を成分とする音響モード係数ベクトルである。
一方、pdは外乱荷重によって時々刻々変化するk個の音圧を成分とする音圧ベクトルPdeに、予め求めたマトリックス[ΨeT・Ψe]-1・ΨeTを掛けて、即座に求めることができる。
ちなみに、閉空間が実際の車室のときにおいて、制御対象周波数(0−200Hz)域内における音響固有モードの数は表1に示す如く10個で、比較的少なく、制御対象周波数(0−100Hz)域内における音響固有モードの数は3個で、非常に少ない。従って音圧測定点は少なくて済み、音圧測定用のマイクロホンの数も比較的少ない数で済ませることが可能である。又、制御対象周波数域(0−200 Hz)における物理座標系の音を同じ制御対象周波数域(0−200 Hz)に存在する音響共鳴モードの数より少ないn個の音響共鳴モードを用いてモーダル座標系において、最小二乗近似することにより、音圧測定点の数kを少なくすることができる。表1において、次数欄は音響共鳴固有モードの次数を示し、共鳴周波数欄はモードの次数に対する音響共鳴固有周波数を示し、前後、左右及び上下欄は車両とトランクの前後、左右、上下方向における腹の数を示しており、制御対象周波数0−200Hzに対して音響共鳴モードの数は10個であることを示している。
この結果、音圧測定点の数kは少なくて済むために、n個の音響固有モードマトリックスを用いてモーダル座標系において、最小二乗近似するときの係数マトリックス(ΨeT・Ψe)-1・ΨeTの大きさも小さく、外乱荷重による音響モード係数ベクトルPdを求める演算も即座に実施可能である。結局、予め定めた音響制御荷重、構造制御荷重又は外乱荷重による全音圧測定点の音圧を成分とする音圧ベクトルPac0e、Psc0e、Pdeと、全音圧測定点の音響固有モードベクトルの成分からなる音響共鳴固有モードマトリックスΨeだけからなる荷重、又は外乱に対する音響モード係数ベクトルpac0、psc0、pdを従来の解析解の結果やFEM解析結果を用いることなく求めることができる。
従って、音響モード係数ベクトルpac0、psc0、pdを求めることにより、これらによる実測の各音響ポテンシャルエネルギーは、Eac0ac0=pac0H・pac0、Esc0sc0=psc0H・psc0、Eac0d=pac0H・pd、Eac0sc0=pac0H・psc0、Esc0ac0=psc0H・pac0、Esc0d=psc0H・pd、として求めることができる。
ここで図1に示した本発明の実施の第1の形態に係る能動騒音低減装置に戻って、スピーカSP1による音響加振制御の場合についてみれば、車室内の音圧を検出するためにk箇所の音圧検出点に音圧検出手段としてのマイクロホンM1、M2、…、Mkと、車室1に設けられた加振手段としてのスピーカSP1とを設け、各マイクロホンM1、M2、…、Mkから出力されるk個の音圧検出信号を増幅し、デジタル信号に変換し、フーリエ変換して周波数領域の信号に変換し、フーリエ変換出力を演算制御装置7に入力し、演算制御装置7からの出力を逆フーリエ変換して時間領域のアナログ信号に変換し、増幅のうえスピーカSP1に供給して車室内の音響ポテンシャルエネルギーEPを制御すること前記の通りである。
次に、演算制御装置7における演算内容について説明する。スピーカSP1を駆動して予め定めた音響制御荷重Fac0を発生させたときにおける各マイクロホンM1、M2、…、Mkからの出力信号Pka0をフーリエ変換して音圧ベクトルPka0(ω)として予め求めておくと共に、フーリエ変換された各マイクロホンM1、M2、…、Mkからのk(k≧n)個の音圧検出信号に基づいて、n個の音響固有モードベクトル成分からなる音響共鳴固有モードマトリックスΨeを予め求めて、音響モード係数ベクトル
pac0(ω)=[ΨeT・Ψe]-1・ΨeT・Pka0(ω)と、
音響ポテンシャルエネルギー
Eac0ac0(ω)=pac0(ω)H・pac0(ω)
を予め求めておく。ここで、Eac0ac0(ω)は前記予め定めた音響制御荷重に基づく音響ポテンシャルエネルギーに相当している。
pac0(ω)=[ΨeT・Ψe]-1・ΨeT・Pka0(ω)と、
音響ポテンシャルエネルギー
Eac0ac0(ω)=pac0(ω)H・pac0(ω)
を予め求めておく。ここで、Eac0ac0(ω)は前記予め定めた音響制御荷重に基づく音響ポテンシャルエネルギーに相当している。
次に時系列的に順次演算制御装置7に入力されてくる信号に基づいて、νは時刻(t)に入力されてきた信号に基づく値であり、(ν−1)は時刻(t)から予め定めた時間的期間前に入力されてきた信号に基づく値としたとき、音圧ベクトルPka(ν−1)(ω)、Pka(ν)(ω)を用いて音響モード係数ベクトルpac(ω)の変化分
Δp(ν)(ω)=[ΨeT・Ψe]-1・ΨeT・{Pka(ν)(ω)−Pka(ν−1)(ω)}
を求め、pac(ω)の変化分Δp(ν)(ω)に基づく音響ポテンシャルエネルギーの変化分
Eac0Δ(ν)(ω)=pac0(ω)H・Δp(ν)(ω)
を求める。(ω)はフーリエ変換された信号であることを示し、(ν−1)、(ν)は入力されてくる時間的順序を示し、(ν−1)に次いで(ν)に入力されることを示している。
Δp(ν)(ω)=[ΨeT・Ψe]-1・ΨeT・{Pka(ν)(ω)−Pka(ν−1)(ω)}
を求め、pac(ω)の変化分Δp(ν)(ω)に基づく音響ポテンシャルエネルギーの変化分
Eac0Δ(ν)(ω)=pac0(ω)H・Δp(ν)(ω)
を求める。(ω)はフーリエ変換された信号であることを示し、(ν−1)、(ν)は入力されてくる時間的順序を示し、(ν−1)に次いで(ν)に入力されることを示している。
次いで、音響ポテンシャルエネルギーの変化分Eac0Δ(ν)(ω)に基づく音響制御荷重の補正を行って補正された制御荷重
Fac(ν)(ω)=Fac(ν−1)(ω)−{Eac0Δ(ν)(ω)/Eac0ac0(ω)}・Fac0(ω)
を求め、補正された制御荷重Fac(ν)(ω)をフーリエ逆変換して時間軸に戻し、D/A変換のうえ増幅してFac(t)を得てFac(t)にてスピーカSP1を駆動する。
Fac(ν)(ω)=Fac(ν−1)(ω)−{Eac0Δ(ν)(ω)/Eac0ac0(ω)}・Fac0(ω)
を求め、補正された制御荷重Fac(ν)(ω)をフーリエ逆変換して時間軸に戻し、D/A変換のうえ増幅してFac(t)を得てFac(t)にてスピーカSP1を駆動する。
ここで、
−{Eac0Δ(ν)(ω)/Eac0ac0(ω)}・Fac0(ω)
は音圧の変化分
{Pka(ν)(ω)−Pka(ν−1)(ω)}
に対して、音響ポテンシャルエネルギーを最小にするための修正音響制御荷重ベクトルに対応する修正音響制御荷重であって、Fac(t)は車室内の音響ポテンシャルエネルギーEPが最小になるように常に補正されて、車室内の音響は最小に維持されることになり、これが繰り返される。
−{Eac0Δ(ν)(ω)/Eac0ac0(ω)}・Fac0(ω)
は音圧の変化分
{Pka(ν)(ω)−Pka(ν−1)(ω)}
に対して、音響ポテンシャルエネルギーを最小にするための修正音響制御荷重ベクトルに対応する修正音響制御荷重であって、Fac(t)は車室内の音響ポテンシャルエネルギーEPが最小になるように常に補正されて、車室内の音響は最小に維持されることになり、これが繰り返される。
次に、スピーカSP1を図3の車室天井中央部に設けた音響1点加振制御の場合について、その効果を説明する。
図4(a)及び(b)は音響制御荷重の振幅及び位相を制御周波数領域について示し、図5(a)は能動騒音低減制御時の音響ポテンシャルエネルギーを実線及び非制御時を破線で制御周波数領域について示し、図5(b)は音響ポテンシャルエネルギーの制御時と非制御時との差を示している。図5(a)及び(b)から音響加振制御の場合、制御の容易さ、コストの点を考慮すると十分な騒音低減効果が得られている。
以上説明した本発明の実施の第1の形態に係る能動騒音低減装置においてスピーカSP1が1個の場合について例示して説明したが、音響制御荷重ベクトルの成分の数については規定しておらず、音響制御荷重ベクトルの成分の数が複数あっても差し支えなく、スピーカSPの数は複数あってもよい。これは、後記する本発明の実施の第3の形態に係る能動騒音低減装置の場合においても同様である。
次に、本発明の実施の第2の形態に係る能動騒音低減装置について説明する。
図2は本発明の実施の第2の形態に係る能動騒音低減装置の構成を示す模式ブロック図である。
本発明の実施の第2の形態に係る能動騒音低減装置では、スピーカSP1に加えて構造加振手段として機械的加振器SP2を加えた音響構造同時加振制御の場合である。車室内の音圧を検出するためにk個の音圧検出点に音圧検出手段としてのマイクロホンM1、M2、…、Mkを備え、車室に設けられた加振手段としてのスピーカSP1と車室壁面に設けられた加振手段としての加振器SP2とを備え、各マイクロホンM1、M2、…、Mkから出力されるk個の音圧検出信号を増幅器4にて増幅し、増幅出力をA/D変換器5にてデジタル信号に変換し、A/D変換出力をフーリエ変換器6にてフーリエ変換して周波数領域の信号に変換し、フーリエ変換出力を演算制御装置7Aに入力し、演算制御装置7Aからの出力をフーリエ逆変換器8に供給して逆フーリエ変換して時間領域の信号に変換し、逆フーリエ変換出力をD/A変換器9にてアナログ信号に変換し、D/A変換出力を増幅器10にて増幅のうえ増幅出力をスピーカSP1と加振器SP2に供給して車室内の音響ポテンシャルエネルギーEPを制御する。
ここで、増幅器4の入力側で、例えば、演算制御装置7Aの制御の下に、マイクロホンからの出力信号のスキャンニングを行って、増幅器4の出力をA/D変換し、フーリエ変換のうえ、演算制御装置7Aで処理を行う。さらに、演算制御装置7AからスピーカSP1へ出力するときと加振器SP2へ出力するときとに同期して演算制御装置7Aの制御の下に増幅器10の出力をスピーカSP1へ加振器SP2へと振り分ける。
次に、演算制御装置7Aにおける演算内容について説明する。スピーカSP1を駆動して予め定めた音響制御荷重Fac0を発生させたときにおける各マイクロホンM1、M2、…、Mkからの出力信号Pka0をフーリエ変換して音圧ベクトルPka0(ω)とし、加振器SP2を駆動して予め定めた音響制御荷重Fsc0を発生させたときにおける各マイクロホンM1、M2、…、Mkからの出力信号Pks0をフーリエ変換して音圧ベクトルPks0(ω)として予め求めておくと共に、フーリエ変換された各マイクロホンM1、M2、…、Mkからのk(k≧n)個の音圧検出信号に基づいて、n個の音響固有モードベクトル成分からなる音響共鳴固有モードマトリックスΨeを予め求めて、音響モード係数ベクトル
pac0(ω)=[ΨeT・Ψe]-1・ΨeT・Pka0(ω)と、
psc0(ω)=[ΨeT・Ψe]-1・ΨeT・Pks0(ω)と、
音響モード係数ベクトルpac0(ω)自体の内積、psc0(ω)自体の内積、pac0(ω)とpsc0(ω)との組み合わせに基づく内積から、音響ポテンシャルエネルギー
Eac0ac0(ω)=pac0(ω)H・pac0(ω)、
Eac0sc0(ω)=pac0(ω)H・psc0(ω)、
Esc0sc0(ω)=psc0(ω)H・psc0(ω)、
Esc0ac0(ω)=psc0(ω)H・pac0(ω)、
ERIa(ω)=1/[1−{Eac0sc0(ω)・Esc0ac0(ω)}/{Eac0ac0(ω)・Esc0sc0(ω)}]、
ERIs(ω)=1/[1−{Esc0ac0(ω)・Eac0sc0(ω)}/{Esc0sc0(ω)・Eac0ac0(ω)}]、
を予め求めておく。
pac0(ω)=[ΨeT・Ψe]-1・ΨeT・Pka0(ω)と、
psc0(ω)=[ΨeT・Ψe]-1・ΨeT・Pks0(ω)と、
音響モード係数ベクトルpac0(ω)自体の内積、psc0(ω)自体の内積、pac0(ω)とpsc0(ω)との組み合わせに基づく内積から、音響ポテンシャルエネルギー
Eac0ac0(ω)=pac0(ω)H・pac0(ω)、
Eac0sc0(ω)=pac0(ω)H・psc0(ω)、
Esc0sc0(ω)=psc0(ω)H・psc0(ω)、
Esc0ac0(ω)=psc0(ω)H・pac0(ω)、
ERIa(ω)=1/[1−{Eac0sc0(ω)・Esc0ac0(ω)}/{Eac0ac0(ω)・Esc0sc0(ω)}]、
ERIs(ω)=1/[1−{Esc0ac0(ω)・Eac0sc0(ω)}/{Esc0sc0(ω)・Eac0ac0(ω)}]、
を予め求めておく。
Eac0ac0(ω)は予め定めた音響制御荷重に基づく音響ポテンシャルエネルギー、Esc0sc0(ω)は予め定めた構造制御荷重に基づく音響ポテンシャルエネルギー、Eac0sc0(ω)は予め定めた構造制御荷重による影響を受けた音響制御荷重に基づく音響ポテンシャルエネルギー、Esc0ac0(ω)は予め定めた音響制御荷重による影響を受けた構造制御荷重に基づく音響ポテンシャルエネルギーに相当している。
次に時系列的に順次演算制御装置7Aに入力されてくる信号に基づく音圧ベクトルPk(ν−1)(ω)、Pk(ν)(ω)を用いて音響モード係数ベクトルpk(ω)の変化分
Δp(ν)(ω)=Ψe-1・{Pk(ν)(ω)−Pk(ν−1)(ω)}を求め、音響モード係数ベクトルpk(ω)の変化分Δp(t)(ω)に基づく音響ポテンシャルエネルギーの変化分
Eac0Δ(ν)(ω)=pac0(ω)H・Δp(ν)(ω)と、
Esc0Δ(ν)(ω)=psc0(ω)H・Δp(ν)(ω)と、
を求める。(ω)はフーリエ変換された信号であることを示し、(ν−1)、(ν)は入力されてくる時間的順序を示し、(ν−1)に次いで(ν)に入力されることを示している。ここで、スピーカSP1による加振に基づく音圧ベクトルPka(ν−1)(ω)、Pka(ν)(ω)に代わって、音圧ベクトルPk(ν−1)(ω)、Pk(ν)(ω)を用いるのは、スピーカSP1の加振と加振器SP2の加振とによる音圧ベクトルであるためである。
Δp(ν)(ω)=Ψe-1・{Pk(ν)(ω)−Pk(ν−1)(ω)}を求め、音響モード係数ベクトルpk(ω)の変化分Δp(t)(ω)に基づく音響ポテンシャルエネルギーの変化分
Eac0Δ(ν)(ω)=pac0(ω)H・Δp(ν)(ω)と、
Esc0Δ(ν)(ω)=psc0(ω)H・Δp(ν)(ω)と、
を求める。(ω)はフーリエ変換された信号であることを示し、(ν−1)、(ν)は入力されてくる時間的順序を示し、(ν−1)に次いで(ν)に入力されることを示している。ここで、スピーカSP1による加振に基づく音圧ベクトルPka(ν−1)(ω)、Pka(ν)(ω)に代わって、音圧ベクトルPk(ν−1)(ω)、Pk(ν)(ω)を用いるのは、スピーカSP1の加振と加振器SP2の加振とによる音圧ベクトルであるためである。
さらに、
DERa(ω)=[{Eac0sc0(ω)・Esc0Δ(ν)(ω)}/{Eac0ac0(ω)・Esc0sc0}−{Eac0Δ(ν)(ω)/Eac0ac0(ω)}]、
DERs(ω)=[{Esc0ac0(ω)・Eac0Δ(ν)(ω)}/{Esc0sc0(ω)・Eac0ac0}−{Esc0Δ(ν)(ω)/Esc0sc0(ω)}]、
を求めて、DERa(ω)とDERs(ω)とを用いて、音響制御荷重及び構造制御荷重に対するそれぞれの補正音響制御荷重、
ΔFac(ν)(ω)=ERIa(ω)・DERa(ω)・Fac0(ω)、
ΔFsc(ν)(ω)=ERIs(ω)・DERs(ω)・Fsc0(ω)、
を求める。これを用いて補正された音響制御荷重Fac(ν)(ω)と補正された構造制御荷重Fsc(ν)(ω)を、
Fac(ν)(ω)=Fac(ν−1)(ω)+ΔFac(ν)(ω)
Fsc(ν)(ω)=Fsc(ν−1)(ω)+ΔFsc(ν)(ω)
によって求めて、補正された音響制御荷重Fac(ν)(ω)と補正された構造制御荷重Fsc(ν)(ω)を逆フーリエ変換して時間軸に戻し、D/A変換のうえ増幅してFac(t)とFsc(t)を得て、Fac(t)にてスピーカSP1を駆動し、Fsc(t)にて加振器SP2を駆動する。
DERa(ω)=[{Eac0sc0(ω)・Esc0Δ(ν)(ω)}/{Eac0ac0(ω)・Esc0sc0}−{Eac0Δ(ν)(ω)/Eac0ac0(ω)}]、
DERs(ω)=[{Esc0ac0(ω)・Eac0Δ(ν)(ω)}/{Esc0sc0(ω)・Eac0ac0}−{Esc0Δ(ν)(ω)/Esc0sc0(ω)}]、
を求めて、DERa(ω)とDERs(ω)とを用いて、音響制御荷重及び構造制御荷重に対するそれぞれの補正音響制御荷重、
ΔFac(ν)(ω)=ERIa(ω)・DERa(ω)・Fac0(ω)、
ΔFsc(ν)(ω)=ERIs(ω)・DERs(ω)・Fsc0(ω)、
を求める。これを用いて補正された音響制御荷重Fac(ν)(ω)と補正された構造制御荷重Fsc(ν)(ω)を、
Fac(ν)(ω)=Fac(ν−1)(ω)+ΔFac(ν)(ω)
Fsc(ν)(ω)=Fsc(ν−1)(ω)+ΔFsc(ν)(ω)
によって求めて、補正された音響制御荷重Fac(ν)(ω)と補正された構造制御荷重Fsc(ν)(ω)を逆フーリエ変換して時間軸に戻し、D/A変換のうえ増幅してFac(t)とFsc(t)を得て、Fac(t)にてスピーカSP1を駆動し、Fsc(t)にて加振器SP2を駆動する。
ここで、ΔFac(ν)(ω)及びΔFsc(ν)(ω)は音圧の変化分{Pk(ν)(ω)−Pk(ν−1)(ω)}に対して、音響ポテンシャルエネルギーを最小にする修正音響制御荷重ベクトル及び修正構造制御荷重ベクトルに対応する修正音響制御荷重であって、Fac(t)及びFsc(t)は協働して車室内の音響ポテンシャルエネルギーEPが最小になるように常に補正されて、車室内の音響は最小に維持されることになり、これが繰り返される。
次に、スピーカSP1が図3の車室天井部分に設けられ、且つ加振器SP2が図3のバルクヘッドセンタに設けられた音響1点加振制御と構造1点加振制御の構造音響同時加振制御の場合について、その効果を説明する。
図6(a)及び(b)は音響制御加重Facの振幅及び位相を制御周波数領域について示し、図7(a)は構造制御荷重Fscの振幅及び位相を制御周波数領域について示している。図8(a)は制御時の音響ポテンシャルエネルギーを実線及び無制御時の音響ポテンシャルエネルギーを破線で制御周波数領域について示し、図8(b)は制御時と無制御時との音響ポテンシャルエネルギーの差を示している。図8(a)及び(b)において数字は音響共鳴固有モードの次数を示し、200Hzまでの音響ポテンシャルエネルギーを約14dB低減できていることを示している。
次に加振器SP2が図3のバルクヘッドセンタに設けられた構造1点加振制御の場合について説明する。
図9(a)及び(b)は構造制御加重Fscの振幅及び位相を制御周波数領域について示している。図10(a)は制御時の音響ポテンシャルエネルギーレベルを実線及び無制御時の音響ポテンシャルエネルギーレベルを破線で制御周波数領域について示し、図10(b)は制御時と無制御時との音響ポテンシャルエネルギーレベルの差を示している。
以上説明した本発明の実施の第2の形態に係る能動騒音低減装置において、スピーカSP1と機械的加振器SP2が各々1個の場合について例示して説明したが、音響制御荷重ベクトルの成分の数や構造制御荷重ベクトルの成分の数については規定しておらず、音響制御荷重ベクトルの成分の数や構造制御荷重ベクトルの成分の数が複数あっても差し支えなく、スピーカSPの数及び機械的加振器SP2の数は各々複数あってもよい。これは、後記する本発明の実施の第4の形態に係る能動騒音低減装置の場合においても同様である。
次に、本発明の実施の第3の形態に係る能動騒音低減装置について説明する。本発明の実施の第3の形態に係る能動騒音低減装置は本発明の実施の第1の形態に係る能動騒音低減装置に対応しており、本発明の実施の第1の形態に係る能動騒音低減装置と重複する部分の説明は省略してある。
図11は本発明の実施の第3の形態に係る能動騒音低減装置の構成を示す模式ブロック図である。
本発明の実施の第3の形態でも室内は車室内の場合を例示している。本発明の実施の第3の形態では、車室内の音圧を検出する為の音圧検出点に音圧検出手段としてk個のマイクロホンM1、M2、…、Mkを備え、室内に設けられ且つ駆動により発生する音響制御荷重に基づいて室内を加振する音響加振手段としてのスピーカSP1を備えている。ここで、kは制御対象周波数域内における音響共鳴固有モードの数nより大きい数である。各マイクロホンM1、M2、…、Mkから出力されるk個の音圧検出信号を増幅器4にて増幅し、増幅出力をA/D変換器5にてデジタル信号に変換し、A/D変換出力信号をデジタルシグナルプロセッサからなる演算制御装置71に入力し、演算制御装置71からの出力信号をD/A変換器9に供給してアナログ信号に変換し、D/A変換出力信号を増幅器10にて増幅のうえ増幅出力信号をスピーカSP1に供給しスピーカSP1を駆動して、車室内の音響ポテンシャルエネルギーEPを最小値に制御する。
ここで、増幅器4の入力側で、例えば、演算制御装置71の制御の下に、マイクロホンからの出力信号のスキャンニングを行って、増幅器4の出力をA/D変換し、演算制御装置71で処理を行う。
演算制御装置71は機能的に、A/D変換器5によりA/D変換された入力信号をフーリエ変換するフーリエ変換手段711と、フーリエ変換出力を受けて周波数領域における演算を予め行う演算手段712と、演算手段712による演算結果をフーリエ逆変換するフーリエ逆変換手段713と、フーリエ逆変換手段713による変換結果と演算制御装置71に時系列的に順次入力されるA/D変換出力とを畳み込み演算する畳み込み演算手段714とを備えている。
フーリエ変換手段711では、A/D変換された入力信号をフーリエ変換して、周波数領域に変換した信号として出力する。
演算手段712では、フーリエ変換手段711において周波数領域に変換された入力信号を受けて、スピーカSP1を駆動して予め定めた音響制御荷重を発生させたときにおける、各マイクロホンM1、M2、…、Mkからの出力信号のフーリエ変換出力信号を音圧ベクトルとして予め求めておくと共に、k個のマイクロホンM1、M2、…、Mkから出力されるフーリエ変換された音圧検出信号に基づく、k個のマイクロホン位置におけるn個の音響固有モードベクトル成分からなる音響共鳴固有モードマトリックス、該音響共鳴固有モードマトリックスと音圧ベクトルとに基づく音響モード係数ベクトル及び前記予め定めた音響制御荷重に基づく音響ポテンシャルエネルギーから得られ且つ外乱による音圧ベクトルに乗算されて音響制御荷重を得る係数マトリックスを予め求めておく演算を行う。
フーリエ逆変換手段713では、演算手段712における演算によって予め求めた前記係数マトリックスをフーリエ逆演算して、時間領域の係数マトリックスに変換した信号として出力する。
畳み込み演算手段714では、フーリエ逆変換により時間領域に変換された前記係数マトリックスと演算制御装置71に入力された時間領域における音圧ベクトルとを畳み込み演算して畳み込み演算出力を音響制御荷重信号とし、且つ演算制御装置71に入力された時間領域における音圧ベクトルと時系列的に次に演算制御装置71に入力される時間領域における音圧ベクトルとの間の変化分とフーリエ逆変換により時間領域に変換された前記係数マトリックスとを畳み込み演算して、この畳み込み演算出力を補正量とし該補正量によって前記音響制御荷重信号を補正した補正音響制御荷重信号を求める演算を行い、補正音響制御荷重信号をD/A変換器9へ出力する。
以上のように、フーリエ変換手段711におけるフーリエ変換、演算手段712による周波数領域における演算及びフーリエ逆変換手段713におけるフーリエ逆変換は予め求めておく演算であり、それぞれ1回で済み、フーリエ逆変換により時間領域に変換された前記係数マトリックスを用いて、前記係数マトリックスと順次入力されてくる時間軸領域における音圧ベクトルとの畳み込み演算を畳み込み演算手段714によって繰り返して行い、その都度、補正音響制御荷重信号を得ることができ、この補正音響制御荷重信号による加振手段であるスピーカの駆動に基づく加振制御によって車室内の騒音を低減することができる。
演算制御装置71の作用についてさらに説明する。なお、以下の説明において、第1及び第2の形態において説明した既出の記号はそのまま用いて、重複を避けるため、その説明は省略する。また、説明の都合上以下において、演算制御装置71による音響制御荷重による制御と、後記の演算制御装置71Aによる音響制御荷重及び構造制御荷重の両方による制御とについて説明する。
(31)式における音響制御荷重ベクトルFac、構造制御荷重ベクトルFscの右辺におけるERIa、DERIa、ERIs、DERIsは総てスカラー量であるため、(31)式における右辺の積の順序を入れ替えても、音響制御荷重ベクトルFac、構造制御荷重ベクトルFscの値は変わらない。つまり、音響制御荷重ベクトルFac、構造制御荷重ベクトルFscは(34)式によって示すことができる。
ただし、(30)式におけるDERIa、DERIsは(35)式で示される。これは(30)式の後部2式からも明らかである。また、(29)式から音響ポテンシャルエネルギーEac0d、Esc0dは(36)式で示される。
(33.2)式、又は(33.3)式において、音響モード係数ベクトルpeをn個の未知の音響モード係数からなる外乱による音響モード係数ベクトルpdと設定し直し、音圧ベクトルPeをn個以上のk個の音圧測定点の音圧を成分とする外乱による音圧ベクトルPdと設定し直すと、音響共鳴固有モードマトリックスΨeはk行、n列のマトリックスとなるから、最小二乗法により音響モード係数ベクトルpdは後記の(37.1)式から求めることができる。
n=kの場合は、音響共鳴固有モードマトリックスΨeは(n、n)の正方マトリックスとなるから、音響モード係数ベクトルpdは後記の(37.2)式から求めることができる。
k≧nの場合、(37.1)式において音圧ベクトルPdに掛かる係数マトリックス{ΨeT・Ψe}―1・ΨeTを(38)式の如くΨelms―1と定義する。
すると、(36)式の音響ポテンシャルエネルギーEac0d、Esc0dは(37.1)式の音響モード係数ベクトルpdを用いて、(39)式となる。
(39)式を(35)式に代入して整理すると、DERa、DERsは(40)式のようになる。
(40)式を(34)式に代入し、外乱による音圧ベクトルPdに乗算することにより音響制御荷重ベクトルFac、構造制御荷重ベクトルFscを得ることができる係数マトリックスを、Fac0に関しては係数マトリックスHac0と定義し、Fsc0に関しては係数マトリックスHsc0と定義する。ただし、係数マトリックスHac0、Hsc0、外乱Pdは全て角周波数ωの関数であり、これを明示するために、改めてこれらを係数マトリックスHac0(ω)、係数マトリックスHsc0(ω)、外乱Pd(ω)と表記すると、係数マトリックスHac0(ω)、Hsc0(ω)は(41)式に示すようになる。
すると(34)式で示される音響制御荷重ベクトルFac(ω)、構造制御荷重ベクトルFsc(ω)は(41)式を用いて(42)式で示される。
以上は、本発明の実施の第1及び第2の形態の方法による場合の説明でもあるが、畳み込み演算を用いても音響制御荷重、構造制御荷重を求めることができる。
ここで、係数マトリックスHac0(ω)、係数マトリックスHsc0(ω)、外乱Pd(ω)はある特定の角周波数ωを確定したときの値を示しているに過ぎず、制御対象域の全ての離散周波数に対する値の集合ではない。
また、係数マトリックスHac0(ω)、係数マトリックスHsc0(ω)は、予め定めておいた量から求めておくことができる量であるが、Pd(ω)は、時事刻々変化する測定音から求める必要がある量である。従って、係数マトリックスHac0(ω)、係数マトリックスHsc0(ω)、外乱Pd(ω)に基づいて音響制御荷重ベクトルFac、構造制御荷重Fscを求めるためには時々刻々変化する外乱の変化量によって補正する必要がある。
フーリエ逆変換を示す記号をIFTで示すと、係数マトリックスHac0(ω)及び係数マトリックスHsc0(ω)は、フーリエ逆変換して時間領域でも求めておくことができる。係数マトリックスHac0(ω)及び係数マトリックスHsc0(ω)に対して時間領域でのマトリックスを係数マトリックスhac0(t)及び係数マトリックスhsc0(t)で示すと(43)式に示す如くになる。ただし(t)は時間領域の量であることを示す記号である。また、係数マトリックスhac0(t)は騒音低減系おける係数マトリックスHac0(ω)に対応するインパルス応答、係数マトリックスhsc0(t)は騒音低減系における係数マトリックスHsc0(t)に対応するインパルス応答でもある。
(42)式における外乱Pd(ω)に対して、フーリエ変換する前の時間領域上の外乱による時々刻々変化する音圧測定点の音圧ベクトルをqd(t)とすると、時間領域における音響制御荷重ベクトルfac(t)、構造制御荷重ベクトルfsc(t)は畳み込み演算を用いることにより(44)式で求めることができる。ただし、*は畳み込み演算を示す記号であり、τは離散間隔時間を示す記号でt≫τ≫0である。
離散時間領域における音響制御荷重fac(kk)、構造制御荷重fsc(kk)は(44)式から畳み込み演算を用いて(45)式で求めることができる。
ここで、畳み込み演算をFIRフィルタで実現した場合を想定して、
kkは離散時間領域での現時刻
nnは離散時間領域での時刻
N+1は1サンプル出力を得るための積和の回数、すなわち音圧ベクトルに対するFIRフィルタの次数
fac(kk)は現時刻kkにおける音響制御荷重
fsc(kk)は現時刻kkにおける構造制御荷重
qd(kk−nn)は標本化した時刻における音圧測定点の音圧ベクトルの離散時間データ
hac0(nn)、hsc0(nn)は時刻nnにおけるhac0(t)、hsc0(t)の値を示し、これらは時不変FIRフィルタの係数を構成する。
kkは離散時間領域での現時刻
nnは離散時間領域での時刻
N+1は1サンプル出力を得るための積和の回数、すなわち音圧ベクトルに対するFIRフィルタの次数
fac(kk)は現時刻kkにおける音響制御荷重
fsc(kk)は現時刻kkにおける構造制御荷重
qd(kk−nn)は標本化した時刻における音圧測定点の音圧ベクトルの離散時間データ
hac0(nn)、hsc0(nn)は時刻nnにおけるhac0(t)、hsc0(t)の値を示し、これらは時不変FIRフィルタの係数を構成する。
(nn)を0〜Nとして、kk回目の標本化によって得られ音圧測定点の音圧ベクトルから求めた時刻(kk−nn)における音圧測定点の音圧ベクトルの離散時間データqd(kk−nn)と時不変FIRフィルタの係数hac0(nn)、時不変FIRフィルタの係数hsc0(nn)とから、(45)式を用いて音響制御荷重fac(kk)、構造制御荷重fsc(kk)を求め、これらを用いて音響ポテンシャルエネルギーを最小にする。
このために、実際にはkk回目の標本化によって得られた音圧測定点の音圧ベクトルから求めた時刻(kk−nn)における音圧測定点の音圧ベクトルの離散時間データqd(kk−nn)の時間的変化分をdqd(kk)として、
dqd(kk)=qd(kk−nn)−qd((kk−1)−nn)
によって求め、この時間的変化分をdqd(kk)と係数マトリックスhac0(nn)、hsc0(nn)と畳み込み演算することによって、(46)式に示す如く、時間的変化分をdqd(kk)に対する音響制御荷重の時間的変化分dfac(kk)、構造制御荷重の時間的変化分dfsc(kk)である音響制御荷重の補正量dfac(kk)、構造制御荷重の補正量dfac(kk)を(46)式から求める。
dqd(kk)=qd(kk−nn)−qd((kk−1)−nn)
によって求め、この時間的変化分をdqd(kk)と係数マトリックスhac0(nn)、hsc0(nn)と畳み込み演算することによって、(46)式に示す如く、時間的変化分をdqd(kk)に対する音響制御荷重の時間的変化分dfac(kk)、構造制御荷重の時間的変化分dfsc(kk)である音響制御荷重の補正量dfac(kk)、構造制御荷重の補正量dfac(kk)を(46)式から求める。
(46)式で求めた音響制御荷重の補正量dfac(kk)、構造制御荷重の補正量dfac(kk)によって(45)式の音響制御荷重fac(kk)、構造制御荷重fsc(kk)を補正して、補正された音響制御荷重Cfac(kk)によって音響加振手段を駆動し、補正された構造制御荷重Cfsc(kk)によって音響加振手段を駆動することによって音響ポテンシャルエネルギーが最小化されて、騒音低減がなされる。
補正された音響制御荷重Cfac(kk)、補正された構造制御荷重Cfsc(kk)は、
Cfac(kk)=fac(kk)+dfac(kk)、
Cfsc(kk)=fsc(kk)+dfsc(kk)、
である。
Cfac(kk)=fac(kk)+dfac(kk)、
Cfsc(kk)=fsc(kk)+dfsc(kk)、
である。
なお、上記においては、音響制御荷重と構造制御荷重とを併せて説明したが、音響制御荷重による騒音低減、構造制御荷重による騒音低減をそれぞれ実行してもよく、音響制御荷重と構造制御荷重とを共に用いて音響構造連成系に対して適用することもできる。
次に、本発明の実施の第4の形態に係る能動騒音低減装置について説明する。本発明の実施の第4の形態に係る能動騒音低減装置は、本発明の実施の第2の形態に係る能動騒音低減装置に対応しており、本発明の実施の第4の形態に係る能動騒音低減装置では、本発明の実施の第2及び第3の形態に係る能動騒音低減装置において既に説明してあって重複する部分の説明は省略してある。
図12は本発明の実施の第4の形態に係る能動騒音低減装置の構成を示す模式ブロック図である。
本発明の実施の第4の形態に係る能動騒音低減装置では、スピーカSP1に加えて構造加振手段として機械的加振器SP2を加えた音響構造同時加振制御の場合である。車室内の音圧を検出するためにk個の音圧検出点に音圧検出手段としてのマイクロホンM1、M2、…、Mkを備え、車室に設けられた加振手段としてのスピーカSP1と車室壁面に設けられた加振手段としての加振器SP2とを備えている。
各マイクロホンM1、M2、…、Mkから出力されるk個の音圧検出信号を増幅器4にて増幅し、増幅出力をA/D変換器5にてデジタル信号に変換し、A/D変換出力信号をデジタルシグナルプロセッサからなる演算制御装置71Aに入力し、演算制御装置71Aからの出力信号をD/A変換器9に供給してアナログ信号に変換し、D/A変換出力信号を増幅器10にて増幅のうえ増幅出力信号をスピーカSP1と加振器SP2に供給しスピーカSP1及び加振器SP2を駆動して、車室内の音響ポテンシャルエネルギーEPを最小値に制御する。
ここで、増幅器4の入力側で、例えば、演算制御装置71Aの制御の下に、マイクロホンからの出力信号のスキャンニングを行って、増幅器4の出力をA/D変換し、演算制御装置71Aで処理を行う。さらに、演算制御装置71AからスピーカSP1へ出力するときと加振器SP2へ出力するときとに同期して演算制御装置71Aの制御の下に増幅器10の出力をスピーカSP1へ加振器SP2へと振り分ける。
演算制御装置71Aは機能的に、A/D変換器5によりA/D変換された入力信号をフーリエ変換するフーリエ変換手段711Aと、フーリエ変換出力を受けて周波数領域における演算を予め行う演算手段712Aと、演算手段712Aによる演算結果をフーリエ逆変換するフーリエ逆変換手段713Aと、フーリエ逆変換手段713Aによる変換結果と演算制御装置71Aに時系列的に順次入力されるA/D変換出力とを畳み込み演算する畳み込み演算手段714Aとを備えている。
フーリエ変換手段711Aでは、A/D変換された入力信号をフーリエ変換して、周波数領域に変換した信号として出力する。
演算手段712Aでは、フーリエ変換手段711において周波数領域に変換された入力信号を受けて、スピーカSP1を駆動して予め定めた音響制御荷重を発生させたときにおける、各マイクロホンM1、M2、…、Mkからの出力信号のフーリエ変換出力信号を第1音圧ベクトルとして予め求め、加振記SP2を駆動して予め定めた構造制御荷重を発生させたときにおける、各マイクロホンM1、M2、…、Mkからの出力信号のフーリエ変換出力信号を第2音圧ベクトルとして予め求め、且つ制御周波数範囲内におけるフーリエ変換された各マイクロホンM1、M2、…、Mkからの出力に基づく音響固有モードベクトル成分からなる前記室内の音響共鳴固有モードマトリックス、前記音響共鳴固有モードマトリックスと第1音圧ベクトルとに基づく第1音響モード係数ベクトル、前記予め定めた音響制御荷重に基づく第1音響ポテンシャルエネルギー、前記予め定めた構造制御荷重に基づく第2音響ポテンシャルエネルギー、前記予め定めた構造制御荷重による影響を受けた音響制御荷重に基づく第3音響ポテンシャルエネルギー及び前記予め定めた音響制御荷重による影響を受けた構造制御荷重に基づく第4音響ポテンシャルエネルギーから得られ且つ外乱による第1音圧ベクトルに乗算されて音響制御荷重を得る第1係数マトリックスを予め求め、前記音響共鳴固有モードマトリックス、前記音響共鳴固有モードマトリックスと第2音圧ベクトルとに基づく第2音響モード係数ベクトル及び前記第1乃至第4音響ポテンシャルエネルギーから得られ且つ外乱による第2音圧ベクトルに乗算されて構造制御荷重を得る第2係数マトリックスを予め求めておく演算を行う。
フーリエ逆変換手段713Aでは、演算手段712Aにおける演算により予め求めた前記第1係数マトリックス及び前記第2係数マトリックスをフーリエ逆変換して、時間領域の第1係数マトリックス及び第2係数マトリックスに変換した信号として出力する。
畳み込み演算手段714Aでは、フーリエ逆変換手段713Aにより時間領域に変換された前記第1係数マトリックスと演算制御装置71Aに入力されてくる時間領域における音圧ベクトルとを畳み込み演算して該畳み込み演算出力を音響制御荷重とし、フーリエ逆変換手段713Aにより時間領域に変換された前記第2係数マトリックスと演算制御装置71Aに入力されてくる時間領域における音圧ベクトルとを畳み込み演算して該畳み込み演算出力を構造制御荷重とし、演算制御装置71Aに入力されてくる時間領域における音圧ベクトルと時系列的に次に演算制御装置71Aに入力されてくる時間領域における音圧ベクトルとの間の変化分を求め、該変化分とフーリエ逆変換手段713Aにより時間領域に変換された前記第1係数マトリックスとを畳み込み演算して該畳み込み演算出力を補正量とし且つ該補正量によって前記音響制御荷重を補正した補正音響制御荷重を求め、前記変化分と畳み込み演算手段714Aにより時間領域に変換された前記第2係数マトリックスとを畳み込み演算して該畳み込み演算出力を補正量とし且つ該補正量によって前記構造制御荷重を補正した補正構造制御荷重を求める演算を行い、補正音響制御荷重及び補正構造制御荷重をD/A変換器9へ出力して補正音響制御荷重に基づいてスピーカSP1を駆動し、且つ前記補正構造制御荷重に基づいて加振器SP2を駆動する。
以上、フーリエ変換手段711Aにおけるフーリエ変換、演算手段712Aによる周波数領域における演算及びフーリエ逆変換手段713Aにおけるフーリエ逆変換は、それぞれ1回で済み、フーリエ逆変換により時間軸領域に変換された前記係数マトリックスを用いて、前記係数マトリックスと順次入力されてくる時間軸領域における音圧ベクトルとの畳み込み演算を畳み込み演算手段714Aによって繰り返して行い、その都度、補正音響制御荷重及び補正構造制御荷重を得ることができ、この補正音響制御荷重によるスピーカSP1及び補正構造制御荷重による加振器SP2の駆動に基づく加振制御によって車室内の騒音を低減することができる。
次に、演算制御装置71Aの作用について説明する。なお、以下の説明において、第1、第2及び第3の形態において説明した既出の記号はそのまま用いて、重複を避けるためその説明は省略する。また、説明の都合上以下において、演算制御装置71による音響制御荷重による制御の説明の際に、演算制御装置71Aによる音響制御荷重及び構造制御荷重の両方による制御について説明した。
本発明の実施の第4の形態に係る能動騒音低減装置においても、(34)式から(45)式による経過を経て、離散時間領域における音響制御荷重fac(kk)、構造制御荷重fsc(kk)を求める。次いで、kk回目の標本化によって得られた音圧測定点の音圧ベクトルから求めた時刻(kk−nn)における音圧測定点の音圧ベクトルの離散時間データqd(kk−nn)の時間的変化分dqd(kk)を、
dqd(kk)=qd(kk−nn)−qd((kk−1)−nn)
によって求める。
dqd(kk)=qd(kk−nn)−qd((kk−1)−nn)
によって求める。
この時間的変化分dqd(kk)と係数マトリックスhac0(nn)、hsc0(nn)と畳み込み演算することによって、時間的変化分dqd(kk)に対する音響制御荷重の時間的変化分dfac(kk)、構造制御荷重の時間的変化分dfsc(kk)である音響制御荷重の補正量dfac(kk)、構造制御荷重の補正量dfac(kk)を(46)式から求める。
(46)式で求めた音響制御荷重の補正量dfac(kk)、構造制御荷重の補正量dfac(kk)によって(45)式の音響制御荷重fac(kk)、構造制御荷重fsc(kk)を補正して、補正された音響制御荷重Cfac(kk)(=fac(kk)+dfac(kk))によってスピーカSP1を駆動し、補正された構造制御荷重Cfsc(kk)(=fsc(kk)+dfsc(kk))によって加振器SP2を駆動することにより、音響ポテンシャルエネルギーが最小化されて、騒音低減がなされる。
以上、本発明の実施の第3及び第4の形態に係る能動騒音低減装置によって説明したように、畳み込み演算を用いることによっても、騒音低減をすることができる。この場合、制御荷重を全てフーリエ変換とフーリエ変換した量の演算とフーリエ逆変換した量から求める場合に比較して、上記の場合は、畳み込み演算が必要になるが時々刻々変化する音響外乱荷重、構造外乱荷重による音圧測定点の音圧ベクトルに対して、その都度、フーリエ変換やフーリエ逆変換を行う演算が不要となるため、その分騒音低減のための制御系の応答速度が向上する場合もある。
1…車室 4、10…増幅器
5…A/D変換器 6…フーリエ変換器
7、7A、71、71A…演算制御装置 8…フーリエ逆変換器
9…D/A変換器 711、711A…フーリエ変換手段
712、712A…演算手段 713、713A…フーリエ逆変換手段
714、714A…畳み込み演算手段
M1、M2、Mk…マイクロホン SP1…スピーカ
SP2…加振器
5…A/D変換器 6…フーリエ変換器
7、7A、71、71A…演算制御装置 8…フーリエ逆変換器
9…D/A変換器 711、711A…フーリエ変換手段
712、712A…演算手段 713、713A…フーリエ逆変換手段
714、714A…畳み込み演算手段
M1、M2、Mk…マイクロホン SP1…スピーカ
SP2…加振器
Claims (5)
- 室内の音圧検出のための音圧検出手段と、室内音を加振励起する加振手段と、前記音圧検出手段からの出力信号を入力するフーリエ変換器と、該フーリエ変換器からの出力を入力する演算制御装置と、該演算制御装置からの出力を入力として出力に基づき加振手段を駆動するフーリエ逆変換器とを備え、
演算制御装置は、加振手段を駆動して予め定めた制御荷重を発生させたときにおける音圧検出手段からの出力信号のフーリエ変換出力を音圧ベクトルとして予め求め、且つ制御周波数範囲内における前記室内の音響共鳴固有モードマトリックスと、該音響共鳴固有モードマトリックスと前記音圧ベクトルに基づく音響モード係数ベクトルと、前記予め定めた制御荷重に基づく音響ポテンシャルエネルギーとを予め求めておいて、
入力されてくるフーリエ変換出力に基づく音圧ベクトルと時系列的にその直前に入力されたフーリエ変換出力に基づく音圧ベクトルとの差と前記予め求めておいた音響共鳴固有モードマトリックスとを用いて音響モード係数ベクトルの変化分を求め、該音響モード係数ベクトルの変化分に基づく音響ポテンシャルエネルギーの変化分を求め、音響ポテンシャルエネルギーの変化分と前記予め求めておいた音響ポテンシャルエネルギーとの比に基づいて制御荷重を発生する出力の補正を行い、該補正された出力をフーリエ逆変換器へ送出する
ことを特徴とする能動騒音低減装置。 - 制御対象周波数域内において、室内音を近似する音響共鳴固有モードの数nより大きい数であるk個の室内音圧検出のための音圧検出手段と、室内に設けられ且つ駆動により発生する音響制御荷重に基づいて室内を加振する音響加振手段と、前記各音圧検出手段からのk個の出力信号を入力するA/D変換器と、該A/D変換器からの出力を入力するフーリエ変換器と、該フーリエ変換器からの出力を入力する演算制御装置と、該演算制御装置からの出力を入力するフーリエ逆変換器と、フーリエ逆変換器からの出力を入力とし且つ出力に基づき音響加振手段を駆動するD/A変換器とを備え、
演算制御装置は、音響加振手段を駆動して予め定めた音響制御荷重を発生させたときにおける各音圧検出手段からの出力信号のフーリエ変換出力を音圧ベクトルとして予め求め、且つフーリエ変換された各音圧検出手段からのk個の出力信号に基づくn個の音響固有モードベクトル成分からなる音響共鳴固有モードマトリックスと、前記音響共鳴固有モードマトリックスと前記音圧ベクトルに基づく音響モード係数ベクトルと、前記予め定めた音響制御荷重に基づく音響ポテンシャルエネルギーとを予め求めておいて、
入力されてくるフーリエ変換出力に基づく音圧ベクトルと時系列的にその直前に入力されたフーリエ変換出力に基づく音圧ベクトルとの差と前記予め求めておいた音響共鳴固有モードマトリックスとを用いて音響モード係数ベクトルの変化分を求め、該音響モード係数ベクトルの変化分に基づく音響ポテンシャルエネルギーの変化分を求め、音響ポテンシャルエネルギーの変化分と前記予め求めておいた音響ポテンシャルエネルギーとの比に基づいて音響制御荷重を発生する出力の補正を行い、補正された出力をフーリエ逆変換器へ送出する
ことを特徴とする能動騒音低減装置。 - 制御対象周波数域内において、室内音を近似する音響共鳴固有モードの数nより大きい数であるk個の室内音圧検出のための音圧検出手段と、室内に設けられ且つ駆動により発生する音響制御荷重に基づいて室内を加振する音響加振手段と、室構造体に設けられ且つ駆動により発生する構造制御荷重に基づいて室内を加振する構造加振手段と、前記各音圧検出手段からのk個の出力信号を入力するA/D変換器と、該A/D変換器からの出力を入力するフーリエ変換器と、該フーリエ変換器からの出力を入力する演算制御装置と、該演算制御装置からの出力を入力するフーリエ逆変換器と、フーリエ逆変換器からの出力を入力とし且つ出力に基づき音響加振手段と構造加振手段とを駆動するD/A変換器とを備え、
演算制御装置は、予め定めた音響制御荷重を発生させたときにおける各音圧検出手段からの出力信号のフーリエ変換出力を第1音圧ベクトルとして予め求め、予め定めた構造制御荷重を発生させたときにおける各音圧検出手段からの出力信号のフーリエ変換出力を第2音圧ベクトルとして予め求め、
フーリエ変換された各音圧検出手段からのk個の出力信号に基づいてn個の音響固有モードベクトル成分からなる音響共鳴固有モードマトリックスと、前記音響共鳴固有モードマトリックスと第1音圧ベクトルとに基づく第1音響モード係数ベクトルと、前記音響共鳴固有モードマトリックスと第2音圧ベクトルとに基づく第2音響モード係数ベクトルと、前記予め定めた音響制御荷重に基づく第1音響ポテンシャルエネルギーと、前記予め定めた構造制御荷重に基づく第2音響ポテンシャルエネルギーと、前記予め定めた構造制御荷重による影響を受けた音響制御荷重に基づく第3音響ポテンシャルエネルギーと、前記予め定めた音響制御荷重による影響を受けた構造制御荷重に基づく第4音響ポテンシャルエネルギーとを予め求めておいて、
入力されてくるフーリエ変換出力に基づく音圧ベクトルと時系列的にその直前に入力されたフーリエ変換出力に基づく音圧ベクトルとの差と前記予め求めておいた音響共鳴固有モードマトリックスとを用いて音響モード係数ベクトルの変化分を求め、
前記第1、第2、第3及び第4音響ポテンシャルエネルギーと前記第1音響モード係数ベクトルと前記音響モード係数ベクトルの変化分とに基づく音響ポテンシャルエネルギーの変化分に基づく音響制御荷重の補正を行って補正された音響制御荷重を発生する出力を求め、該出力をフーリエ逆変換器へ送出して音響加振手段を駆動し、
前記第1、第2、第3及び第4音響ポテンシャルエネルギーと前記第2音響モード係数ベクトルと前記音響モード係数ベクトルの変化分とに基づく音響ポテンシャルエネルギーの変化分に基づく構造制御荷重の補正を行って補正された構造制御荷重を発生する出力を求め、該出力をフーリエ逆変換器へ送出して構造加振手段を駆動する
ことを特徴とする能動騒音低減装置。 - 室内の音圧検出のための音圧検出手段と、室内音を加振励起する加振手段と、前記音圧検出手段からの出力信号を入力とし且つ出力に基づき加振手段を駆動する演算制御装置とを備え、
演算制御装置は、
音圧検出手段からの出力信号をフーリエ変換するフーリエ変換手段と、
加振手段を駆動して予め定めた制御荷重を発生させたときにおける音圧検出手段からの出力信号のフーリエ変換出力を音圧ベクトルとして予め求め、且つ制御周波数範囲内における音響固有モードベクトル成分からなる前記室内の音響共鳴固有モードマトリックス、該音響共鳴固有モードマトリックスと前記音圧ベクトルに基づく音響モード係数ベクトル及び前記予め定めた制御荷重に基づく音響ポテンシャルエネルギーから得られ且つ外乱による音圧ベクトルに乗算されて制御荷重を得る係数マトリックスを予め求めておく演算手段と、
該演算手段により求めた前記係数マトリックスをフーリエ逆変換するフーリエ逆変換手段と、
前記フーリエ逆変換手段により時間領域に変換された前記係数マトリックスと前記演算制御装置に入力されてくる時間領域における音圧ベクトルとを畳み込み演算して該畳み込み演算出力を制御荷重とし、前記演算制御装置に入力されてくる時間領域における音圧ベクトルと時系列的に次に前記演算制御装置に入力されてくる時間領域における音圧ベクトルとの間の変化分を求め、該変化分と前記フーリエ逆変換手段により時間領域に変換された前記係数マトリックスとを畳み込み演算して該畳み込み演算出力を補正量とし且つ該補正量によって前記制御荷重を補正した補正制御荷重を求める畳み込み演算手段とを有し、
前記補正制御荷重に基づいて前記加振手段を駆動することを特徴とする能動騒音低減装置。 - 室内の音圧検出のための音圧検出手段と、室内に設けられ且つ駆動により発生する音響制御荷重に基づいて室内を加振する音響加振手段と、室構造体に設けられ且つ駆動により発生する構造制御荷重に基づいて室内を加振する構造加振手段と、前記各音圧検出手段からの出力を入力とし且つ出力に基づき音響加振手段と構造加振手段を駆動する演算制御装置とを備え、
演算制御装置は、
音圧検出手段からの出力信号をフーリエ変換するフーリエ変換手段と、
音響加振手段を駆動して予め定めた音響制御荷重を発生させたときにおける各音圧検出手段からの出力信号のフーリエ変換出力を第1音圧ベクトルとして予め求め、構造加振手段を駆動して予め定めた構造制御荷重を発生させたときにおける各音圧検出手段からの出力信号のフーリエ変換出力を第2音圧ベクトルとして予め求め、且つ制御周波数範囲内におけるフーリエ変換された各音圧検出手段からの出力に基づく音響固有モードベクトル成分からなる前記室内の音響共鳴固有モードマトリックス、前記音響共鳴固有モードマトリックスと第1音圧ベクトルとに基づく第1音響モード係数ベクトル、前記予め定めた音響制御荷重に基づく第1音響ポテンシャルエネルギー、前記予め定めた構造制御荷重に基づく第2音響ポテンシャルエネルギー、前記予め定めた構造制御荷重による影響を受けた音響制御荷重に基づく第3音響ポテンシャルエネルギー及び前記予め定めた音響制御荷重による影響を受けた構造制御荷重に基づく第4音響ポテンシャルエネルギーから得られ且つ外乱による第1音圧ベクトルに乗算されて音響制御荷重を得る第1係数マトリックスを予め求め、前記音響共鳴固有モードマトリックス、前記音響共鳴固有モードマトリックスと第2音圧ベクトルとに基づく第2音響モード係数ベクトル及び前記第1乃至第4音響ポテンシャルエネルギーとから得られ且つ外乱による第2音圧ベクトルに乗算されて構造制御荷重を得る第2係数マトリックスを予め求めておく演算手段と、
該演算手段により求めた前記第1係数マトリックス及び前記第2係数マトリックスをフーリエ逆変換するフーリエ逆変換手段と、
前記フーリエ逆変換手段により時間領域に変換された前記第1係数マトリックスと前記演算制御装置に入力されてくる時間領域における音圧ベクトルとを畳み込み演算して該畳み込み演算出力を音響制御荷重とし、前記フーリエ逆変換手段により時間領域に変換された前記第2係数マトリックスと前記演算制御装置に入力されてくる時間領域における音圧ベクトルとを畳み込み演算して該畳み込み演算出力を構造制御荷重とし、前記演算制御装置に入力されてくる時間領域における音圧ベクトルと時系列的に次に前記演算制御装置に入力されてくる時間領域における音圧ベクトルとの間の変化分を求め、該変化分と前記フーリエ逆変換手段により時間領域に変換された前記第1係数マトリックスとを畳み込み演算して該畳み込み演算出力を補正量とし且つ該補正量によって前記音響制御荷重を補正した補正音響制御荷重を求め、前記変化分と前記フーリエ逆変換手段により時間領域に変換された前記第2係数マトリックスとを畳み込み演算して該畳み込み演算出力を補正量とし且つ該補正量によって前記構造制御荷重を補正した補正構造制御荷重を求める畳み込み演算手段とを有し、
前記補正音響制御荷重に基づいて前記音響加振手段を駆動し且つ前記補正構造制御荷重に基づいて前記構造加振手段を駆動することを特徴とする能動騒音低減装置。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2007010656A JP2007286595A (ja) | 2006-03-24 | 2007-01-19 | 能動騒音低減装置 |
Applications Claiming Priority (2)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2006083613 | 2006-03-24 | ||
JP2007010656A JP2007286595A (ja) | 2006-03-24 | 2007-01-19 | 能動騒音低減装置 |
Publications (1)
Publication Number | Publication Date |
---|---|
JP2007286595A true JP2007286595A (ja) | 2007-11-01 |
Family
ID=38758358
Family Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
---|---|---|---|
JP2007010656A Pending JP2007286595A (ja) | 2006-03-24 | 2007-01-19 | 能動騒音低減装置 |
Country Status (1)
Country | Link |
---|---|
JP (1) | JP2007286595A (ja) |
Cited By (2)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP2017105442A (ja) * | 2015-12-10 | 2017-06-15 | 現代自動車株式会社Hyundai Motor Company | ハイブリッド車両の能動振動制御方法および装置 |
US11570545B2 (en) | 2020-11-12 | 2023-01-31 | Kabushiki Kaisha Toshiba | Acoustic inspection apparatus and acoustic inspection method |
-
2007
- 2007-01-19 JP JP2007010656A patent/JP2007286595A/ja active Pending
Cited By (2)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP2017105442A (ja) * | 2015-12-10 | 2017-06-15 | 現代自動車株式会社Hyundai Motor Company | ハイブリッド車両の能動振動制御方法および装置 |
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