JP2007285826A - 排ガス分析装置 - Google Patents

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倫保 岩瀬
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Abstract

【課題】分析対象ガスの測定精度を向上させることができ、分析時間を短縮できる排ガス分析装置を提供する。
【解決手段】内燃機関から排出される排ガスにレーザ光を照射し、排ガス中を透過したレーザ光を受光し、受光されたレーザ光に基づいて排ガス中に含まれる成分の濃度や温度を測定して分析する排ガス分析装置は、排ガスが流通する経路中に装着され排ガスが通過する排ガス通過孔を有するセンサベース20を備えており、センサベースは、レーザ光を照射する光ファイバ25およびレーザ光を受光するディテクタ27と、照射部から照射されたレーザ光を排ガス通過孔に導光するセンサ孔23と、排ガス中を透過したレーザ光をディテクタ27に導光するセンサ孔24とを備えており、センサ孔23,24の少なくとも一部を透光性部材であるガラス体40で充填する。
【選択図】図5

Description

本発明は、自動車等の内燃機関から排出される排ガスの分析装置に係り、特に、排ガスが流れる経路中の排ガスにレーザ光を照射し、排ガス中を透過したレーザ光の光強度に基づいて排ガス中のガス成分の濃度や温度を測定して分析する排ガス分析装置に関する。
従来、この種の排ガス分析装置としては、エンジンに連なる排気管を流れる排ガス中のHC濃度を連続的に測定するためのNDIR(非分散型赤外分光法)型ガス分析計を備える車載型HC測定装置がある。この測定装置において、NDIR型ガス分析計のガス分析部はサンプルガスがセル内に供給され、赤外光源によってセルを照射し、光チョッパが所定の周期で回転している状態で、サンプルガスがセルに供給されることにより、検出器からHCおよびHOのそれぞれの濃度に対応した交流信号および比較信号としての交流信号が出力され、これらの信号からHCおよびHOの濃度を得ることができるものである(例えば、特許文献1参照)。
また、排ガスを分析する他の装置として、排ガスにレーザ光を照射し、排ガス中を透過したレーザ光を受光して光強度を測定し、排ガス中を透過することで減衰した光強度から排ガス中の特定の成分の濃度や温度を測定する排ガス分析装置がある。このような排ガス分析装置では、図7に示されるような構成によりレーザ光の光強度を測定している。すなわち、受光素子70を固定するセンサベース71には、レーザ光Rが通過できる光通過孔72が形成されている。光通過孔72には、排ガスの進入を防止しレーザ光を透過する光通過窓73が耐熱ガスケット74を挟んで挿入され、光通過窓73の上にガスケット75を挟んで固定リング76がねじ込まれている。この光通過窓73の入射面と出射面とは通常は迷光や干渉光を防止するため平行に形成されず、一方の面が中心軸に対して僅かに傾斜した傾斜面を有するウェッジ型に形成される。
また、センサベース71の上部にはセラミック製の台座77、断熱リング78を挟んでステンレス等の固定治具79が重ねられ、この固定治具79に受光素子70が固定される構成となっている。このような構成により、受光素子のセンサベース71の取付部から排ガスの漏洩を防いでレーザ光を受光することができる。なお、レーザ光を照射する光ファイバの取付部等の照射部も光通過窓を備える構成はほぼ同一となっており、排ガスの漏洩を防止してレーザ光を照射できるようになっている。
特開2004−117259号公報
ところで、前記構造の排ガス分析装置は、車両のエンジン等の内燃機関から排出される排ガスを配管や流路中で直接分析するための分析装置において、配管に取り付けられる測定セルに受光素子を固定する場合、受光素子の取り付け表面から測定セル内部に設けられた流路に向かって形成された光透過用孔が測定についての無効スペースとなり、測定精度が低下する要因となる。具体的には、温度等の影響により、無効スペース内に存在する酸素濃度を精度良く補正できず、測定精度が低下してしまう。
また、前記した他の排ガス分析装置においても、光通過孔内の無効スペースに存在する空気等のガスの影響を補正する必要があり、排ガス成分の濃度を算出する演算時間が多大となっている。さらに、光通過窓73の固定では、光通過窓の一方の面が傾斜面であることと、ガスケット74,75にねじり力が作用することにより、排ガスの漏洩を防止するための耐熱ガスケット74が破損しやすく、ガスケットが破損するとガス漏れが発生して測定精度が低下してしまう。そして、前記の照射部や受光部をセンサベース71に組み付けるとき、排ガスを通過させずレーザ光を通過させる光通過窓73の位置決めが難しく、位置ずれによる固定時の破損が発生しやすく、破損するとガス漏れの危険性が生じる。
本発明は、このような問題に鑑みてなされたものであって、その目的とするところは、分析対象ガスの測定精度を向上させることができ、分析時間を短縮できる排ガス分析装置を提供することにある。また、排ガス中にレーザ光を照射する照射部の取付けや、排ガス中を透過したレーザ光の光強度を測定する受光部の取付けが容易に行なえ、ガスケットの破損を防止して排ガスの漏洩を防止できる排ガス分析装置を提供することにある。
前記目的を達成すべく、本発明に係る排ガス分析装置は、内燃機関から排出される排ガスにレーザ光を照射し、排ガス中を透過したレーザ光を受光し、受光されたレーザ光に基づいて前記排ガス中に含まれる成分の濃度や温度を測定して分析する排ガス分析装置であって、この装置は、レーザ光を照射する照射部およびレーザ光を受光する受光部と、前記照射部から照射されたレーザ光を前記排ガスが流通する経路に導光する光通過孔と、排ガス中を透過したレーザ光を前記受光部に導光する光通過孔とを備えており、前記光通過孔の少なくとも一部を透光性部材で充填することを特徴としている。
前記のごとく構成された本発明の排ガス分析装置は、光通過孔の少なくとも一部を透光性部材で充填することで、排ガスの成分濃度や温度を測定するレーザ光が通過する光通過路内に滞留するガスの体積を低減できるため、排ガス中の成分の濃度や温度の測定精度を高めることができる。また、排ガス中を透過したレーザ光の光強度を測定し、分析対象ガスの濃度や温度を算出するとき、レーザ光が通過する途中の通路に存在するガスの影響を少なくできるため、補正演算が簡略となって演算時間を短縮でき、短時間で排ガス分析を完了できる。
従来の排ガス分析装置では、例えば、センサ部を構成するセンサベースに受光素子や光ファイバを組み付けるとき、光通路内に空気が充満してしまう。このような状態で測定を行なうと、排ガス中の成分の測定と共に充満している空気中の窒素や酸素も合わせて測定してしまうため、測定時に充満しているガスに対する補正を行なう必要がある。このガス補正を行なわない場合は排ガスの成分の他に窒素や酸素が加わって測定精度が劣化してしまう。本発明の排ガス分析装置は、レーザ光が通過する光通過孔内の少なくとも一部が透光性部材で充填されているため、光通過孔内に存在する空気等のガスの影響を少なくすることができる。
また、本発明に係る排ガス分析装置の好ましい具体的な態様としては、前記照射部および受光部は、前記経路中に支持され排ガスが通過する排ガス通過孔を有するセンサベースに固定されており、前記光通過孔は、前記排ガス通過孔と前記照射部および受光部とを連通することを特徴としている。この構成によれば、排ガスの流れる経路にセンサベースの排ガス通過孔を対応させ、排ガス通過孔と連通する光通過孔に照射部と受光部を固定できるため構成を簡略化できると共に、排ガスが流れる経路中にセンサベースを容易に設置することができる。
さらに、前記透光性部材は、前記排ガス通過孔に近接するガス対向面と、該ガス対向面から前記光通過孔に沿って延長され前記照射部および/または受光部に近接する素子対向面とを備えており、透光性部材はレーザ光の通過経路を充填していることを特徴としている。そして、前記透光性部材を構成する透光性材料は、光学ガラスまたはサファイヤで形成されていることが好ましい。
このように構成された排ガス分析装置は、排ガスが流通する排ガス通過孔に近接して透光性部材のガス対向面を備えているため、光通過孔内に排ガスが滞留せず、時々刻々変化する排ガスの状態をリアルタイムで測定することができる。そして、透光性部材は光通過孔に沿って延長され、素子対向面が照射部や受光部に近接し光通過孔のレーザ光の通過経路を充填しているため、光通過孔内に存在する空気等のガスを排除でき、受光された光強度の補正を省略することができ、測定精度の向上と、成分濃度等の算出時間の短縮を達成できる。また、透光性部材を光学ガラスあるいはサファイヤで形成することによりレーザ光の透過の際の減衰を少なくすることができ、高精度な測定が可能となる。
本発明に係る排ガス分析装置の他の態様としては、内燃機関から排出される排ガスにレーザ光を照射し、排ガス中を透過したレーザ光を受光し、受光されたレーザ光に基づいて前記排ガス中に含まれる成分の濃度や温度を測定して分析する排ガス分析装置は、排ガスが流通する経路中に装着され排ガスが通過する排ガス通過孔を有するセンサベースを備えており、このセンサベースは、該センサベースに台座を挟んで固定されレーザ光を照射する照射部およびレーザ光を受光する受光部と、前記照射部から照射されたレーザ光を前記排ガス通過孔に導光する光通過孔と、排ガス中を透過したレーザ光を受光部に導光する光通過孔と、該光通過孔を気密状態に塞ぐ透光性部材とを備えており、前記台座は、前記光通過孔内に挿入され前記透光性部材をセンサベースに押圧する筒状部を備えていることを特徴としている。
さらに、本発明に係る排ガス分析装置の好ましい具体的な他の態様としては、前記透光性部材は、耐熱性ガスケットを挟んで前記光通過孔と対接し、光通過孔を気密状態に塞ぐことを特徴としている。そして、前記台座は、セラミックスより形成されることが好ましい。このように構成された排ガス分析装置は、センサベースにレーザ光を照射する照射部と、レーザ光を受光する受光部とを取付けるとき、台座の筒状部が光通過孔内に挿入され、透光性部材から形成された光通過窓をセンサベースに押圧して気密状態に塞ぐため、ガスケット等のパッキングにねじり力が作用せず、ガスケット等の破損を防止することができる。特に、雲母等で形成された耐熱性ガスケットを使用する場合、ねじり力が作用すると割れやすいが、本発明では台座の筒状部により押圧して気密を確保するため、ガスケット等の破損を防止することができ排ガスの漏洩を防止することができる。台座をセラミックスより形成すると、排ガスの高熱を遮断できて好ましい。
本発明の排ガス分析装置は、排ガス分析に使用するレーザ光が通過する光通過孔の内部に滞留するガスの体積を低減することで滞留ガスによる光吸収の影響を取り除き、排ガス中に含まれる成分の濃度を精度良く測定することができる。また、排ガス中にレーザ光を照射する光ファイバ等の取付けと、排ガス中を透過したレーザ光の光強度を測定する受光素子の取付け構造を簡略化でき、取付け時のガスケットや光通過窓等の部品の破損も防止できるため、コストダウンとメンテナンス性を向上できるとともに、ガス漏れを防止できる。
以下、本発明に係る排ガス分析装置を自動車の内燃機関(エンジン)からの排ガス分析装置として用いた場合の一実施の形態を図面に基づき詳細に説明する。図1は、本実施形態に係る排ガス分析装置を自動車に搭載した要部構成図、図2は、図1の排ガス分析装置をエンジンベンチに搭載した状態の要部構成図、図3は、センサ部とその近傍を分解した状態で示す斜視図、図4はセンサ部の詳細図である。また、図5は、レーザ発振・受光コントローラの要部構成および信号解析装置を含む排ガス分析装置の全体構成を示すブロック図である。
図1〜3において、本実施形態の排ガス分析装置は、自動車1に設置されたエンジン(内燃機関)2から排出される排ガスを分析する装置である。また、図2に示すように、エンジンベンチ1Aに設置されたエンジン2の排ガスを分析する装置である。エンジン2の各気筒から排出される排ガスは、エキゾーストマニホルド3で合流され、排気管4を通して第1触媒装置5に導入され、さらに第2触媒装置6に導入され、そのあとマフラー7を通して排気パイプ8から大気中に放出される。排気経路は、エキゾーストマニホルド3、排気管4、第1触媒装置5、第2触媒装置6、マフラー7、排気パイプ8から構成され、エンジン2から排出された排ガスを2つの触媒装置5,6で浄化し、マフラー7により消音、減圧して大気中に放出する。なお、マフラーはメインマフラーとサブマフラーの2つを有するものでもよい。
排気経路を構成する複数の部材は、フランジ部同士を対接させてボルト等で接続されている。例えば、第1、第2触媒装置5,6は大径の本体部の上流、下流側に排気パイプ部が連結され、これらの排気パイプ部の端部にフランジ部F,Fが溶接等により固着されている。また、マフラー7は大径の本体部の上流、下流側に排気パイプ部が連結され、これらの排気パイプ部の端部にフランジ部F,Fが固着されている。なお、末端の排気パイプ8はマフラー7に直接溶接等により固着されている。このように、排気経路を構成する複数の部材はフランジ部Fにより接続され、排ガスが通過する断面形状が直径dの円形に形成されている。
本実施形態の排ガス分析装置10は、前記の排気経路の複数個所に設置された複数(図示の例では4個)のセンサ部11〜14を備えて構成される。第1のセンサ部11は第1触媒装置5より上流側のエンジン側の排気管4との間に設置され、第2のセンサ部12は第1触媒装置5の下流側に設置され、第3のセンサ部13は第2触媒装置6の下流側に設置されている。そして、第4のセンサ部14はマフラー7の下流の排気パイプ8に設置されている。センサ部14は排気パイプ8の途中に設置されても、排気パイプの末端の開口部に挿入して設置するものでもよい。また、第1のセンサ部11の上流側の、エキゾーストマニホルド3で合流する前の1気筒毎の排気管に別のセンサ部を設置してもよい。
排気管4や第1触媒装置5、第2触媒装置6、マフラー7はフランジ部F,Fをボルトで締め付けることで連結されており、排気経路を構成する部材の間に設置されるセンサ部11,12,13は、フランジ部F,Fで挟まれた状態で設置されている。フランジ部F,Fは、排気経路を構成する部材の両端部に形成され、フランジ部同士の接合面は排気経路の中心線に対して直角に交差している。この結果、センサ部11〜13はフランジ部F,Fに挟まれて排気経路を横切るように設置される。第4のセンサ部14は排ガスが大気中に放出される直前の分析を行なうものであり、マフラー7から突出する排気パイプ8の中間部にフランジ部F,Fで挟んで設置してもよい。なお、センサ部の設置数は任意に設定すればよい。
各センサ部11〜14は同一構成であり、1つのセンサ部11について図3、図4を参照して説明する。センサ部11は矩形状の薄板材から形成されたセンサベース20を有し、このセンサベースは中心部に排気パイプ部の円形断面の内径dとほぼ同じ直径d1の排ガス通過孔21が形成されており、排ガス通過孔内を排ガスが通過する。排ガス通過孔21は排ガスの導入路を構成する。板状のセンサベース20の厚さはレーザ光の照射部と受光部とを固定できる範囲で、できるだけ薄いことが好ましい。
具体的にはセンサベース20の厚さは、例えば5〜20mm程度が好適である。20mmを超えると排ガス流れに乱れが生じやすくなり無視できない圧力損失も生じやすい。5mmより薄いと測定用のレーザ光の照射部や受光部の取付固定が煩雑となる。なお、排ガス通過孔21の直径d1は排気パイプ部の円形断面の内径dと同じ寸法であることが望ましいが、例えば排気パイプ部の円形断面の内径dが30mmの場合、排ガス通過孔21の直径d1は、30±1〜2mm程度であれば誤差として許容される。センサベース20を構成する板材としては金属板材やセラミック製の板材を用いているが、材質については特に問わない。
センサベース20はフランジ部F,Fに挟まれた状態で固定され、フランジ部F,Fとセンサベース20との間にはガスケット22,22が挟まれた状態で図示していないボルト、ナット等により固定される。ガスケット22は適宜の材料で形成され、排気パイプ部の内径と同じ直径の排ガス通過孔が開けられている。この構成により、フランジ部F,Fの間にセンサベース20を挟んで排気経路を接続しても、排ガスが途中で漏れることはなく、排気経路の長さの増加も少ない。図3は、排気管4の下流端に溶接されたフランジ部Fと、触媒装置5の上流側の排気パイプ部5aの端部に溶接されたフランジ部Fとの間に、ガスケット22,22を挟んでセンサベース20が固定される構成を示している。
センサベース20には、板厚の中央を端面から排ガス通過孔に向けて貫通する2つのセンサ孔23,24が形成されている。センサ孔23は排ガス通過孔21に向けて開口しており、照射されたレーザ光が排ガス通過孔21を通して受光部に到達できるように形成された照射光通過孔を構成している。また、センサ孔24は排ガス通過孔21に向けて開口しており、レーザ光が受光部に到達できるように形成された透過光通過孔を構成しており、センサ孔23,24は排ガスの流れる方向と直交して開口している。
センサ部11はレーザ光を照射する照射部として光ファイバ25とコリメータレンズ26がセンサ孔23に固定され、光ファイバ25から照射され排ガス通過孔21内に存在する排ガス中を透過したレーザ光を受光する受光部として、ディテクタ27がセンサ孔24に固定されている。すなわち、センサ部11は、照射側の光ファイバ25から排気経路を横切るように照射されたレーザ光が、2つのミラー30,31で反射され、排ガス中を透過して減衰し、ディテクタ27で受光される構成となっており、ミラーは照射されたレーザ光を反射してディテクタに導光している。
2つのミラー30,31は、図4に詳細に示すようにセンサベース20の中心部の円形の排ガス通過孔21外に、排ガス通過孔を挟持する対向位置において各々取り付けられており、ミラーの反射面が互いに平行となるようにして2枚配置され、測定用のレーザ光を反射させるように上下に設置固定される。すなわち、ミラー30,31は排ガス通過孔21の外周に、排ガス通過孔を挟んで対向して平行状態に配置されている。ミラー30,31は排ガス通過孔21の外周側に平行に形成された2つの挿入溝32,33内に着脱可能に固定されており、光ファイバ25およびコリメータレンズ26から排ガス通過孔21に向けて照射されたレーザ光をディテクタ27に到達させる機能を有している。ミラー30,31は厚さが数mm程度の長方形状の基板状に形成され、基板の一方の面に金やプラチナの薄膜が反射面として形成され、その上に保護層として、MgFやSiOの薄膜が形成されている。なお、保護膜は形成しなくてもよい。
センサベース20の排ガス通過孔21の外周に形成された挿入溝32,33は、ミラー30,31が緩く挿入できる程度の大きさに設定されている。挿入溝32,33はセンサベース20を貫通して両面側に開口しても、あるいは片面側に開口して他面側が閉塞している形状でもよい。ミラー30,31は挿入溝32,33内で取付ビス34によりスペーサを介して固定されている。ミラーが熱ショック等により破損した場合は、取付ビス34を緩めることで取り外して新しいミラーを固定することができる。また、ミラーが汚れたときに、センサベース20から取り外して清掃することもできる。
ミラー30,31は取付ビス34によりスペーサ(図示せず)を挟んで固定されているため、エンジンの振動や排気管等の排気経路の振動でミラーが振動することを防止している。ミラーと取付ビスとの熱膨張の差を吸収するためスペーサが挟まれており、緩衝材として機能している。スペーサとしては耐環境性に優れ、弾性変形するものが好ましい。例えば、雲母系やカーボン系、銅等の板材が好ましい。このように、ミラーはスペーサを介して取付ビスで固定されることにより、800℃程度の高温状態でも振動することなく、安定して固定される。
ミラー30,31は石英、若しくはサファイヤ、セラミック等の母材の表面に反射材をコーティングして作製する。コーティング材としては、金や酸化チタン等のレーザ波長に合った反射率の高いものを選択することが好ましい。また、反射材を保護するコーティングとしてSiO等の透明で耐熱性に優れ、耐環境性に優れたものを最上面に形成することが好ましい。耐熱性に優れ、反射率の高いミラーを用いることで精度良い測定が可能となる。また、反射材として酸化チタンを用いるときは、酸化チタンが単独で耐環境性に優れ、光触媒として汚れ防止に有効であるため保護膜を形成する必要がなく、そのままの状態で測定することが好ましい。
排ガス通過孔21の内周面とミラーを固定する挿入溝32,33との間には、測定用のレーザ光がミラーに到達できるように光通過孔が形成されている。光通過孔としては貫通するスリットや、貫通する光通過孔等が形成される。本実施形態では、排気経路に直交する方向に幅が数mm程度の光通過スリット35,35が排ガス通過孔21の内周面から挿入溝32,33まで貫通して形成され、光通過スリットは排ガス通過孔21の内周面とミラー30,31とを貫通している。この構成により、測定用の赤外レーザ光が照射部である光ファイバ25からセンサ孔23を通して排ガス通過孔21内に照射されると上方の光通過スリット35を通して上方のミラー31に到達し、上方のミラーで下方に反射され、次いで下方の光通過スリット35を通して下方のミラー30に到達し、下方のミラーで上方に反射され、上下で反射を繰返したあとセンサ孔24を通して上方に固定されたディテクタ27に受光される構成となっている。
センサベース20にはミラー30,31に近接して水平方向に取付孔36,36が形成され、これらの取付孔にはヒータ37,37が固定ねじにより固定されている。ヒータ37,37はミラーの結露を防止するものであり、例えば排ガス中の水蒸気がミラー表面に付着しても、ヒータに通電することでミラーを加熱して水分を気化させ、水蒸気がミラー表面に付着するのを防止している。ミラー30,31の加熱温度は水分の露点温度以上が好ましい。ミラーの結露を防止することで反射率を向上させ、レーザ光の反射による減衰を防止している。
ここで、光通過孔の詳細について図5を参照して説明する。照射光通過孔を構成するセンサ孔23、および透過光通過孔を構成するセンサ孔24は、直径の異なる段付孔で形成されている。すなわち、センサ孔23,24は直径の小さい貫通孔が排ガス通過孔21に連通しており、直径の大きい貫通孔がセンサベース20の外部に連通している。センサ孔23,24は排ガス通過孔21側を小径とすることで、排ガスの流れを乱すことが少なく、しかも排ガスが常時入れ替わり滞留しないように、小径部の深さが小さく設定されている。センサベース20の厚さが15〜20mm程度の場合、センサ孔の小径部の直径は6〜8mm程度が好ましい。また、センサ孔23,24はセンサベース20の外周側を大径とすることで、光ファイバ25やコリメータレンズ26等の照射部、およびディテクタ27等の受光部の取付けを容易としている。
光通過孔を構成するセンサ孔23,24は、固定される照射部と受光部が異なるだけなので、受光部としてディテクタ27を固定する一方のセンサ孔24の構成について詳細に説明する。センサ孔24はレーザ光が通過する光通過路を構成しており、光通過孔の少なくとも一部を透光性材料として光学ガラスで形成した段付円柱状のガラス体40で充填している。すなわち、センサ孔24の途中の段部には雲母系の耐熱ガスケット41が配置され、このガスケット41と接触するようにガラス体40がセンサ孔24の大径部内に挿入され、内部空間を充填している。この構成により、センサ孔24の閉じられた内部空間には空気等のガスが充満しない。
ガラス体40は、図5において下方の入射面40aおよび上方の出射面40bが研磨され、外周面はフリンジ対策のために梨地面に形成されている。なお、入射面40aと出射面40bとは平行に形成されず、一方の面が中心軸に対して1度程度の傾斜面となっており、本実施形態では出射面40bが傾斜面となっている。受光部のセンサ孔24を充填するガラス体40は下方の入射面40aがガス対向面であり、上方の出射面40bがディテクタ27と対向する素子対向面となっている。照射部のセンサ孔23を充填するガラス体40は入射面と出射面とが逆であり、下方の素子対向面が入射面となり、上方のガス対向面が出射面となっている。
前記のように、センサ孔23,24の排ガス通過孔21に連通する小径部は深さが小さく設定されているため、大径部から挿入されるガラス体40は排ガス通過孔21に近接して配置され、ガラス体の入射面40aは排ガス通過孔21と近接する。この結果、センサ孔の小径部に排ガスが滞留して入れ替わらないということがなく、排ガスの状態が変化した場合でもセンサ孔内の排ガスも追従して時々刻々変化するため、リアルタイムで排ガスの状態を正確に測定することができる。また、ガラス体40の出射面40bはディテクタ27と近接し、好ましくは接触しており、センサ孔24のレーザ光の通過経路を充填している。この構成により、センサ孔24を通過するレーザ光の通過経路は透光性部材からなるガラス体40で充填され、センサ孔を通過するレーザ光は空間を殆ど通らずガラス体中を通過する。また、他方の光通過孔であるセンサ孔23でも、光ファイバおよびコリメータレンズから照射されたレーザ光は空間を通らず、通過経路を充填しているガラス体中を通過する。
そして、ガラス体40の中間の段部40cにはガスケットとして、銅ガスケット42が外嵌されている。この中間の段部と入射面40aとは平行状態に形成されている。センサ孔24の外部の設置面には、ガラス体40をセンサベース20に固定するための台座43が固定され、この台座からセンサ孔24内に延出する筒状部43aが一体的に形成され、この筒状部43aが銅ガスケット42に接触する構成となっている。筒状部43aの長さおよびガラス体40の段部の位置は、台座43がセンサベース20の設置面に密着するように止めねじ45で固定されたとき、銅ガスケット42がガラス体40の段部を密着して押圧すると共に、耐熱ガスケット41がガラス体40とセンサ孔24の段部に密着し、排ガスがセンサ孔24内に進入できないように設定されている。入射面40aと中間の段部40cとを平行に形成し、出射面40bを1度程度の傾斜面とすることで、2つのガスケット41,42は平行に設置され、気密状態を安定させることができると共に、ガスケットの破損等を防止できる。
台座43の表面にセラミックス等の断熱材からなる円環状の断熱リング46が配置され、この断熱リングの表面にディテクタ27を固定する支持リング47が固定される。支持リングはステンレススチール等の金属板材から形成され、台座43および断熱リング46を貫通する止めねじ48でセンサベース20に固定される。支持リング47には円周上に複数のねじ孔が形成され、これらのねじ孔により受光素子であるディテクタ27を固定する。また、図示していない他方のセンサ孔23に固定される支持リングには、照射部として光ファイバ25およびコリメータレンズ26が固定される。このように、ディテクタ27は断熱リング46を挟んだ状態でセンサベース20に固定されるため、排ガスの高熱が直接ディテクタ26に伝達されず、信頼性や耐久性を向上させることができる。
複数のセンサ部11〜13(14)を構成するセンサベース20のセンサ孔23,24に、排ガスの漏洩を防止すると共に、測定用のレーザ光を透過させるガラス体等の各種の部品を組み込む動作について説明する。先ず、センサ孔23,24の大径の開放端から雲母系の耐熱ガスケット41を挿入する。このあと、センサ孔内に透光性材料から形成したガラス体40を挿入し、ガスケット41と対接させる。次いで、ガラス体40の小径部に銅ガスケット42を外嵌させ、台座43の筒状部43aをセンサ孔23,24内のガラス体小径部外周に挿入する。この状態で台座43を止めねじ45によりセンサベース20に固定すると、筒状部43aは銅ガスケット42を押圧し、ガラス体40は雲母系のガスケット41を押圧し、センサ孔23,24への排ガスの進入を防止してレーザ光を導光させることができる。
このように、測定用のレーザ光を排ガス通過孔に導く光通過孔であるセンサ孔23と、排ガス中に照射されたレーザ光の透過レーザ光をディテクタ27に導く光通過孔であるセンサ孔24に、排ガスが漏洩せずレーザ光を通過させるガラス体40を固定する際に、衝撃に弱く、固定時に割れやすい耐熱ガスケット41にはねじり力が作用せず、押圧力のみが作用して気密状態に保持されるため、破損や破壊は確実に防止され気密状態も安定する。また、部品点数が少なく構成され、組込みが容易であるため作業時間を短縮でき、筒状部43aによる押圧面である段部40cと耐熱ガスケット41が接触する入射面40aとが平行であるためガラス体40の位置決めも容易に行える。
そして、センサベース20のセンサ孔23,24に、排ガスの漏洩を防止するガラス体40を固定したあと、断熱リング46、支持リング47を挟んで照射部の台座43に止めねじ48を用いて光ファイバ25とコリメータレンズ26を固定して照射部を構成する。また、受光部の台座43に同様に止めねじ48を用いてディテクタ27を固定する。なお、排ガスにレーザ光を照射する照射部と、排ガス中を透過したレーザ光を受光する受光部とは上下反対に配置してもよいことは勿論である。また、図3に示すセンサ部11を90度回転させてレーザ光を水平方向に照射するように構成してもよい。
このように構成されたセンサベース20のレーザ光の照射部およびレーザ光の受光部において、レーザ光を排ガス通過孔21に導光するセンサ孔23と、排ガス中を透過したレーザ光をディテクタ27に導光するセンサ孔24は、レーザ光が通過する通路内の空間の大部分がガラス体40により充填され、空間の容積が殆どゼロに設定されている。このため、ディテクタ27を取付ける組立時に、センサ孔24に空気が殆ど入らず、この空間内に存在するガスを無視することができる。また、センサ孔23に光ファイバ25やコリメータレンズ26を取付けるとき、センサ孔23の内部に空気が殆ど入らず、この空間内に存在するガスを無視することができる。
センサ孔23,24の内部空間に透光性部材としてガラス体40が充填されていないと、ガラス体40とディテクタ27との空間や、ガラス体40と光ファイバ25との空間内に空気が存在し、例えば排ガス成分として酸素を測定する場合に、排ガス中の酸素の成分は燃焼排ガスのため1%程度であるが、この空間内の酸素の量が13%程度と多量であるため、透過レーザ光の光強度を大幅に補正する必要が生じる。他の排ガス成分についても同様な補正が必要となる。しかし、本実施形態では、空間内に空気は殆ど存在しないため、レーザ光の通過経路の途中に存在するガスに対する補正は不要となり、演算時間を短縮することができ、排ガスのリアルタイム分析が可能となる。
このようにセンサベース20に固定された光ファイバ25やコリメータレンズ26、およびディテクタ27はレーザ発振・受光コントローラ50に接続され、レーザ発振・受光コントローラ50から出射される赤外レーザ光が光ファイバ25を通してセンサベース20の排ガス通過孔21内に照射され、排ガス中を透過した赤外レーザ光が受光側のディテクタ27で受光され、信号線28を介してレーザ発振・受光コントローラ50に入力される構成となっている。光ファイバ25から照射された発光強度と、排ガス中を透過してディテクタ27で受光された受光強度等が、分析装置であるパーソナルコンピュータ60に供給される。このように、排ガス分析装置10は、複数のセンサ部11〜14と、レーザ発振・受光コントローラ50と、パーソナルコンピュータ60とを備えて構成される。
ここで、レーザ発振・受光コントローラ50について、図6を参照して説明する。レーザ発振・受光コントローラ50は、複数の波長の赤外レーザ光を照射する照射装置として、複数のレーザダイオードLD1〜LD5に、図示していないファンクションジェネレータ等の信号発生器から複数の周波数の信号を供給し、レーザダイオードLD1〜LD5は各周波数に対応してそれぞれ複数の波長の赤外レーザ光を照射する。レーザ発振・受光コントローラ50の信号発生器から出力される複数の周波数の信号がレーザダイオードLD1〜LD5に供給されて発光し、例えばLD1は波長が1300〜1330nm程度、LD2は1330〜1360nmというように、検出しようとする成分ガスのピーク波長が存在する波長帯が連続するような波長帯の赤外レーザ光を発生させるように設定されている。
排ガス中を透過させる赤外レーザ光の波長は、検出する排ガスの成分に合わせて設定され、一酸化炭素(CO)、二酸化炭素(CO)、アンモニア(NH)、メタン(CH)、水(HO)を検出する場合は、5つの波長の赤外レーザ光を使用する。例えば、アンモニアを検出するのに適した波長は1530nmであり、一酸化炭素を検出するのに適した波長は1560nmであり、二酸化炭素を検出するのに適した波長は1570nmである。また、メタンを検出するのに適した波長は1680nmであり、水を検出するのに適した波長は1350nmである。さらに、他の排ガスの成分の濃度を検出する場合は、排ガス成分の数に合わせて異なる波長の赤外レーザ光を使用する。なお、ガス濃度の検出は、同じ成分でも異なる波長である場合があり、異なる波長の中から選択して用いるようにしてもよい。
各レーザダイオードLD1〜LD5から照射された赤外レーザ光は光ファイバ51…により分波器52…に導光され、センサ部の数に合わせて分波器52…により分波される。図6では3つのセンサ部11〜13に合わせて各レーザダイオードLD1〜LD5から照射されたレーザ光は3つに分波される。そして分波器52…で分波されたレーザ光は、分波器53A…、53B…、53C…により信号光と測定光に分けられる。分波器53A…はセンサ部11用であり、分波器53B…はセンサ部12用、分波器53C…はセンサ部13用である。センサ部11用の5つの分波器53A…で分けられた信号光は光ファイバを通して合波器54Aで合波され、合波された複数の波長帯の信号光は光ファイバ56Aを通して差分型光検出器57Aに導光される。一方、5つの分波器53A…で分けられた測定光は光ファイバを通して合波器55Aで合波され、光ファイバ25Aによりセンサ部11の照射部に導光される。
また、分波器52…で分波された赤外レーザ光は、センサ部12用の5つの分波器53B…により信号光と測定光に分けられ、信号光は合波器54Bで複数の波長帯を合波した信号光となり、光ファイバ56Bを通して差分型光検出器57Bに導光される。5つの分波器53B…により分けられた測定光は合波器55Bで合波され、光ファイバ25Bによりセンサ部12の照射部に導光される。さらに、分波器52…で分波された赤外レーザ光は、センサ部13用の5つの分波器53C…により信号光と測定光に分けられ、信号光は合波器54Cで複数の波長帯の信号光となり、光ファイバ56Cを通して差分型光検出器57Cに導光される。5つの分波器53C…により分けられた測定光は合波器55Cで合波され、光ファイバ25Cによりセンサ部13の照射部に導光される。
図6では、3つのセンサ部11〜13を示しているが、さらに多くのセンサ部14…を設置する場合は、分波器52でさらに多くのレーザ光に分波し、分波したレーザ光をさらに多くの分波器53…で測定光と信号光に分波し、信号用のレーザ光を合波器54…で合波してから差分型光検出器57…に導光すると共に、測定用のレーザ光を合波器55…で合波してから、さらに多くのセンサ部14…に導光する。
また、排ガス分析装置10は、測定用の赤外レーザ光をミラー30,31で反射させ排ガス中の透過距離を大きくするように構成されており、ミラー30,31で繰り返し反射された測定用のレーザ光がディテクタで受光される構成となっている。センサ部11〜13の受光部に接続された受光側のディテクタ27A,27B,27Cはレーザ発振・受光コントローラ50の差分型光検出器57A,57B,57Cに信号線28A,28B,28Cを介して接続される。また、合波器54A,54B,54Cで合波された信号光は光ファイバ56A,56B,56Cを通して差分型光検出器57A,57B,57Cに導光される。
3つの差分型光検出器57A,57B,57Cでは、排ガス中を透過して減衰した透過レーザ光と、排ガス中を透過していない信号レーザ光との差を取る構成となっている。信号レーザ光はフォトダイオード等に入力され、電気信号に変換される。差分型光検出器で算出された信号光と測定光の差分に相当する電気信号は、例えば図示していないプリアンプで増幅され、A/D変換器を介して分析装置であるパーソナルコンピュータ60に入力される。パーソナルコンピュータ60では、入力された信号から排ガス中に含まれる成分の濃度や、排ガスの温度、圧力等を算出して排ガスを分析する。
本実施形態の排ガス分析装置10では、光ファイバ25およびコリメータレンズ26から照射されたレーザ光はセンサ孔23を通して排ガスが流通している排ガス通過孔21内に照射され、上方のミラー30で下方に反射され、次いで下方のミラー31で上方に反射され、反射を繰り返して下方のミラー31からセンサ孔24内に進入し、ディテクタ27で受光される。このとき、センサ孔23,24内は、透光性材料からなるガラス体40で充填され、センサ孔23,24内に存在するガスの体積はゼロ、あるいは極めて少なくなっている。そして、センサ孔内のレーザ光はガラス体40内を通過し、無効スペース中を殆ど通過しないため、ディテクタ27で測定された透過レーザ光強度を、途中に存在するガスに対して補正する必要がなくなり、排ガス中の成分の濃度算出時間を短縮できるとともに、測定精度を高めることができる。また、センサ孔内の少なくとも一部を透光性部材で充填することで、この空間に存在するガスの影響を減らすことができ、測定精度を向上させることができる。
本発明の排ガス分析装置10は、前記したように、例えば赤外レーザ光を排ガス中に透過させ、入射光の強度と排ガス中を透過したあとの透過光の強度に基づいて排ガスの成分の濃度を算出し、排ガスを分析するものである。すなわち、排ガスの成分の濃度Cは、以下の数式(1)から算出される。
C=−ln(I/I)/kL…(1)
この数式(1)において、Iは透過光強度、Iは入射光強度、kは吸収率、Lは透過距離である。したがって、信号光である入射光強度(I)に対する透過光強度(I)の比、シグナル強度(I/I)に基づいて排ガスの成分の濃度Cは算出される。透過光強度Iは、ディテクタ27(27A,27B,27C)を通して出力され、入射光強度Iは、光ファイバ56A,56B,56Cを通して差分型光検出器57A,57B,57C内のフォトダイオード等の光電変換器から出力される。本実施形態では入射光強度Iとして、排ガス中を透過しない信号光強度を用いている。
前記の如く構成された本実施形態の排ガス分析装置10の動作について以下に説明する。エンジンが作動している状態で、排ガス分析装置10を作動させる。エンジン2から排出された排ガスは排気経路であるエキゾーストマニホルド3で合流され、排気管4を通して第1触媒装置5に導入され、さらに第2触媒装置6に導入され、そのあとマフラー7を通して排気パイプ8から大気中に放出される。そして、排気経路中に設置されたセンサ部11〜14のセンサベース20に形成された排ガス通過孔21を排ガスが通過する。排ガスの特定成分の濃度等を測定するときは、排ガス通過孔21内にレーザ光を照射して、排ガス中を透過したレーザ光の光強度を測定する。
すなわち、レーザ発振・受光コントローラ50の信号発生器を作動させて各レーザダイオードLD1〜LD5に信号を供給して各レーザダイオードLD1〜LD5から所定の波長の赤外レーザ光を発光させる。各レーザダイオードLD1〜LD5から発光された赤外レーザ光は、光ファイバ51…を通して分波器52…に至り、ここでセンサ部の数に合わせて分波される。このあと、分波された赤外レーザ光は分波器53A…,53B…,53C…で測定光と信号光に分波される。
1つのセンサ部11について詳細に説明すると、5つの分波器53Aで分波された信号光は合波器54Aで合波されて信号用レーザ光となり、差分型光検出器57Aに導光される。また、5つの分波器53Aで分波された測定光は合波器55Aで合波されて測定用レーザ光となり、センサ部11の照射部に光ファイバ25Aを通して導光される。他のセンサ部12,13についても、同様に分波器52…で分波されたあと、分波器53B…,53C…で信号光と測定光に分波され、合波器54B,54Cで合波されて、信号光は差分型光検出器57B,57Cに導光され、合波器55B,55Cで合波されて、測定光がセンサ部12,13に導光される。
そして、センサ部11〜13の光ファイバ25(25A,25B,25C)から照射された測定用の赤外レーザ光は、照射光通過孔であるセンサ孔23を通して排ガスが通過している排ガス通過孔21内に照射される。赤外レーザ光は排気経路である排ガス通過孔21内を横切り、光通過スリット35を通してミラー30に到達し上方のミラー30で下方に反射され、ついで光通過スリット35を通してミラー31に到達し下方のミラー31で上方に反射され、反射を繰返すことで排ガス中の透過距離が大きくなり、最後にセンサ孔24を通してディテクタ27(27A,27B,27C)で受光される。すなわち、測定用の赤外レーザ光は排ガス中を透過して減衰され、減衰された透過光が受光部であるディテクタで受光され、透過光(測定光)の光強度が測定される。
排ガス中を通り減衰して受光部に到達した測定用の赤外レーザ光はディテクタ27A,27B,27Cで電気信号として出力され、信号線28(28A,28B,28C)を介して差分型光検出器57A,57B,57Cに供給される。一方、信号用レーザ光は差分型光検出器57A,57B,57Cに供給され、差分型光検出器では、複数の波長成分毎に透過光(測定光)と信号光の差を取り、透過光のうちの特定ガス成分のピーク波長が検出された吸収スペクトルが検出される。このようにして、差分型光検出器からの出力が分析装置であるパーソナルコンピュータ60に入力される。パーソナルコンピュータ60は、入力された吸収スペクトルの複数の周波数帯ごとのピーク波長に基づいて、排ガスの成分の濃度や温度、圧力を算出して測定し分析する。特に、本実施形態の排ガス分析装置10は、エンジン2から排出直後の800℃程度の排ガスから、排気経路最終の100℃程度の排ガスまで測定可能であり、エンジン2の冷えた状態の排ガスでも測定することができる。
このように、本実施形態の排ガス分析装置10は、排ガス中に照射されるレーザ光の照射部を構成する光通過孔であるセンサ孔23と、排ガス中を透過したレーザ光を受光する受光部を構成する光通過孔であるセンサ孔24には、透光性材料からなるガラス体40が充填されており、無効スペースが構成されないため、この空間内に存在するガスに対する補正を行わなくても測定精度を高めることができる。また、補正が不要であるため、成分のガス濃度や温度等の演算時間を短縮することができ、リアルタイムで排ガスを分析することができる。
また、センサ孔23,24を気密状態に塞ぐ光通過窓としてガラス体40を固定するとき、ガラス体40とセンサ孔との間に挿入される耐熱ガスケット41には台座43の筒状部43aにより押圧力が作用してねじり力が作用しないため、耐熱ガスケットの破壊や破損を防止することができる。このため、組立が容易となると共に、排ガスの漏洩を防止でき、排ガス分析の精度を高めることができる。
以上、本発明の一実施形態について詳述したが、本発明は、前記の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の精神を逸脱しない範囲で、種々の設計変更を行うことができるものである。例えば、光通過孔の排ガス漏洩を防止するガスケットとして耐熱性の雲母系ガスケットと、金属製の銅ガスケットを使用する例を示したが、材質や数量は適宜設定することができる。また、金属製ガスケットを排ガス通過孔側に配置してもよい。
光通過孔の少なくとも一部を充填する透光性部材を構成する材料として光学ガラスの代わりに人工サファイヤを用いてもよい。また、前記の実施形態では、照射部から照射したレーザ光を2つのミラーにより反射を繰り返して排ガス中の透過距離を長くする構成としたが、ミラーを使用せずに排ガス中を透過したレーザ光を直接、受光素子で受光するように構成してもよい。
本発明の活用例として、この排ガス分析装置を用いてボイラー等の燃焼装置の排ガス分析を行うことができ、自動車の排ガス分析の他に船舶や発電機等で使用する内燃機関の排ガス分析の用途にも適用できる。また、ガソリンエンジンの排ガス分析の他にディーゼルエンジンの排ガス分析を行なうことができ、さらに他の内燃機関の排ガス分析の用途にも適用できる。
本発明に係る排ガス分析装置を車両に搭載した一実施形態の要部構成図。 本発明に係る排ガス分析装置をエンジンベンチに搭載した他の実施形態の要部構成図。 1つのセンサ部の要部の分解した状態の斜視図を含む排ガス分析装置の要部構成図。 (a)は図3のセンサ部の正面図、(b)は(a)のセンサベース部分のA−A線断面図、(c)は(a)のセンサベース部分のB−B線断面図。 (a)は図4のC−C線に沿う光通過孔部分の要部を示す断面図、(b)は(a)の要部の分解状態を示す斜視図。 レーザ発振・受光コントローラの要部構成および信号解析装置を含む排ガス分析装置の全体構成を示すブロック図。 従来の排ガス分析装置における光通過孔部分の要部を示す断面図。
符号の説明
1:自動車、1A:エンジンベンチ、2:エンジン(内燃機関)、3:エキゾーストマニホルド(排気経路)、4:排気管(排気経路)、5:第1触媒装置(排気経路)、6:第2触媒装置(排気経路)、7:マフラー(排気経路)、8:排気パイプ(排気経路)、10:排ガス分析装置、11〜14:センサ部、20:センサベース、21:排ガス通過孔、23:センサ孔(照射光通過孔)、24:センサ孔(透過光通過孔)、25,25A〜25C:光ファイバ(照射部)、26,26A〜26C:コリメータレンズ(照射部)、27,27A〜27C:ディテクタ(受光部)、30,31:ミラー、35:光通過スリット、40:ガラス体(透光性部材)、40a:入射面(ガス対向面)、40b:出射面(素子対向面)、41,42:ガスケット、43:台座、43a:筒状部、50:レーザ発振・受光コントローラ、52:分波器、53A〜53C:分波器、54A〜54C,55A〜55C:合波器、57A〜57C:差分型光検出器、60:パーソナルコンピュータ(分析装置)、R:レーザ光

Claims (7)

  1. 内燃機関から排出される排ガスにレーザ光を照射し、排ガス中を透過したレーザ光を受光し、受光されたレーザ光に基づいて前記排ガス中に含まれる成分の濃度や温度を測定して分析する排ガス分析装置であって、
    該装置は、レーザ光を照射する照射部およびレーザ光を受光する受光部と、前記照射部から照射されたレーザ光を前記排ガスが流通する経路に導光する光通過孔と、排ガス中を透過したレーザ光を前記受光部に導光する光通過孔とを備えており、
    前記光通過孔の少なくとも一部を透光性部材で充填することを特徴とする排ガス分析装置。
  2. 前記照射部および受光部は、前記経路中に支持され排ガスが通過する排ガス通過孔を有するセンサベースに固定されており、
    前記光通過孔は、前記排ガス通過孔と前記照射部および受光部とを連通することを特徴とする請求項1に記載の排ガス分析装置。
  3. 前記透光性部材は、前記排ガス通過孔に近接するガス対向面と、該ガス対向面から前記光通過孔に沿って延長され前記照射部および/または受光部に近接する素子対向面とを備えており、前記透光性部材はレーザ光の通過経路を充填していることを特徴とする請求項1または2に記載の排ガス分析装置。
  4. 前記透光性部材は、光学ガラスまたはサファイヤで形成されていることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の排ガス分析装置。
  5. 内燃機関から排出される排ガスにレーザ光を照射し、排ガス中を透過したレーザ光を受光し、受光されたレーザ光に基づいて前記排ガス中に含まれる成分の濃度や温度を測定して分析する排ガス分析装置であって、
    該装置は、排ガスが流通する経路中に装着され排ガスが通過する排ガス通過孔を有するセンサベースを備えており、
    該センサベースは、該センサベースに台座を挟んで固定されレーザ光を照射する照射部およびレーザ光を受光する受光部と、前記照射部から照射されたレーザ光を前記排ガス通過孔に導光する光通過孔と、排ガス中を透過したレーザ光を前記受光部に導光する光通過孔と、該光通過孔を気密状態に塞ぐ透光性部材とを備えており、
    前記台座は、前記光通過孔内に挿入され前記透光性部材を前記センサベースに押圧する筒状部を備えていることを特徴とする排ガス分析装置。
  6. 前記透光性部材は、耐熱性ガスケットを挟んで前記光通過孔と対接し、該光通過孔を気密状態に塞ぐことを特徴とする請求項5に記載の排ガス分析装置。
  7. 前記台座は、セラミックスより形成されることを特徴とする請求項5または6に記載の排ガス分析装置。
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