以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。
《発明の実施形態1》
本実施形態1は、本発明に係る冷凍装置によって構成された空調機(10)である。
図1および図2に示すように、本実施形態の空調機(10)は、冷媒回路(11)を備えている。この冷媒回路(11)には、圧縮機(20)と、膨張機(30)と、室外熱交換器(14)と、室内熱交換器(15)と、第1四方切換弁(12)と、第2四方切換弁(13)とが接続されている。冷媒回路(11)には、冷媒として二酸化炭素(CO2)が充填されている。また、圧縮機(20)と膨張機(30)は、概ね同じ高さに配置されている。
上記冷媒回路(11)の構成について説明する。圧縮機(20)は、吐出管(26)が第1四方切換弁(12)の第1のポートに接続され、吸入管(25)が第1四方切換弁(12)の第2のポートに接続されている。膨張機(30)は、流出管(36)が第2四方切換弁(13)の第1のポートに接続され、流入管(35)が第2四方切換弁(13)の第2のポートに接続されている。室外熱交換器(14)は、一端が第1四方切換弁(12)の第3のポートに接続され、他端が第2四方切換弁(13)の第4のポートに接続されている。室内熱交換器(15)は、一端が第2四方切換弁(13)の第3のポートに接続され、他端が第1四方切換弁(12)の第4のポートに接続されている。
上記室外熱交換器(14)は、冷媒を室外空気と熱交換させるための空気熱交換器である。室内熱交換器(15)は、冷媒を室内空気と熱交換させるための空気熱交換器である。第1四方切換弁(12)と第2四方切換弁(13)は、それぞれ、第1のポートと第3のポートが連通し且つ第2のポートと第4のポートが連通する状態(図1に実線で示す状態)と、第1のポートと第4のポートが連通し且つ第2のポートと第3のポートが連通する状態(図2に実線で示す状態)とに切り換わるように構成されている。
図3にも示すように、圧縮機(20)は、いわゆる低圧ドームタイプの全密閉型圧縮機である。この圧縮機(20)は、縦長の円筒形に形成された圧縮機ケーシング(24)を備えている。圧縮機ケーシング(24)の内部には、圧縮機構(21)と電動機(23)と駆動軸(22)とが収容されている。圧縮機構(21)は、いわゆるロータリ式の容積型流体機械を構成している。圧縮機ケーシング(24)内では、圧縮機構(21)の上方に電動機(23)が配置されている。駆動軸(22)は、上下方向へ延びて、圧縮機構(21)と電動機(23)を連結している。
上記圧縮機ケーシング(24)には、上述した吸入管(25)と吐出管(26)が設けられている。吸入管(25)は、圧縮機ケーシング(24)の胴部の上端付近を貫通しており、終端が圧縮機ケーシング(24)内における電動機(23)の上側の空間に開口している。吐出管(26)は、圧縮機ケーシング(24)の胴部の下端付近を貫通しており、始端が圧縮機構(21)へ直に接続されている。圧縮機構(21)は、吸入管(25)を通じて圧縮機ケーシング(24)内へ導入された冷媒を吸い込んで圧縮し、圧縮後の冷媒を吐出管(26)へ送り出す。つまり、圧縮機ケーシング(24)内が低圧空間に構成され、圧縮された高圧の冷媒は、圧縮機ケーシング(24)内ではなく直接圧縮機ケーシング(24)外へ吐出される。
上記圧縮機ケーシング(24)の底部には、潤滑油としての冷凍機油が貯留されている。つまり、圧縮機ケーシング(24)内には、油溜り(27)が形成されている。
上記駆動軸(22)は、油溜り(27)から圧縮機構(21)へ冷凍機油を供給する給油機構を構成している。駆動軸(22)の内部には、図示しないが、軸方向へ延びる給油通路が形成されている。この給油通路は、駆動軸(22)の下端に開口すると共に、いわゆる遠心ポンプを構成している。駆動軸(22)の下端は、油溜り(27)に浸かった状態となっている。駆動軸(22)が回転すると、遠心ポンプ作用によって油溜り(27)から給油通路へ冷凍機油が吸い込まれる。給油通路へ吸い込まれた冷凍機油は、圧縮機構(21)へ供給されて圧縮機構(21)の潤滑に利用される。
上記膨張機(30)は、縦長の円筒形に形成された膨張機ケーシング(34)を備えている。膨張機ケーシング(34)の内部には、膨張機構(31)と発電機(33)と出力軸(32)とが収容されている。膨張機構(31)は、いわゆるロータリ式の容積型流体機械を構成している。膨張機ケーシング(34)内では、膨張機構(31)の下方に発電機(33)が配置されている。出力軸(32)は、上下方向へ延びて、膨張機構(31)と発電機(33)を連結している。
上記膨張機ケーシング(34)には、上述した流入管(35)と流出管(36)が設けられている。流入管(35)および流出管(36)は、いずれも膨張機ケーシング(34)の胴部の上端付近を貫通している。流入管(35)は、終端が膨張機構(31)へ直に接続されている。流出管(36)は、始端が膨張機構(31)へ直に接続されている。膨張機構(31)は、流入管(35)を通って流入した冷媒を膨張させ、膨張後の冷媒を流出管(36)を通じて膨張機ケーシング(34)外へ直接送り出す。つまり、膨張機(30)において、流入管(35)を流れる冷媒は、膨張機ケーシング(34)の内部空間へは流れ込まずに膨張機構(31)だけを通過する。
上記膨張機ケーシング(34)の底部には、潤滑油としての冷凍機油が貯留されている。つまり、膨張機ケーシング(34)内には、油溜り(37)が形成されている。
上記出力軸(32)は、油溜り(37)から膨張機構(31)へ冷凍機油を供給する給油機構を構成している。出力軸(32)の内部には、図示しないが、軸方向へ延びる給油通路が形成されている。この給油通路は、出力軸(32)の下端に開口すると共に、いわゆる遠心ポンプを構成している。出力軸(32)の下端は、油溜り(37)に浸かった状態となっている。出力軸(32)が回転すると、遠心ポンプ作用によって油溜り(37)から給油通路へ冷凍機油が吸い込まれる。給油通路へ吸い込まれた冷凍機油は、膨張機構(31)へ供給されて膨張機構(31)の潤滑に利用される。
上記圧縮機ケーシング(24)と膨張機ケーシング(34)の間には、油流通管(42)が設けられている。この油流通管(42)は、油流通路を構成している。油流通管(42)の一端は、圧縮機ケーシング(24)の側面の下部に接続されている。そして、この油流通管(42)の一端は、駆動軸(22)の下端よりも所定値だけ高い位置で圧縮機ケーシング(24)の内部空間に開口している。通常の運転状態において、圧縮機ケーシング(24)内の油溜り(27)の油面は、油流通管(42)の一端よりも上に位置している。一方、油流通管(42)の他端は、膨張機ケーシング(34)の側面の下部に接続されている。そして、この油流通管(42)の他端は、出力軸(32)の下端よりも所定値だけ高い位置で膨張機ケーシング(34)の内部空間に開口している。通常の運転状態において、膨張機ケーシング(34)内の油溜り(37)の油面は、油流通管(42)の他端よりも上に位置している。
上記油流通管(42)には、油量調節弁(52)が設けられている。この油量調節弁(52)は、外部からの信号に応じて開閉する電磁弁である。膨張機ケーシング(34)の内部には、油面センサ(51)が収容されている。この油面センサ(51)は、膨張機ケーシング(34)内の油溜り(37)の油面高さを検出するものであって、油面検出器を構成している。空調機(10)には、コントローラ(53)が設けられている。このコントローラ(53)は、油面センサ(51)の出力信号に基づいて油量調節弁(52)を制御する制御手段を構成している。
本実施形態では、油流通管(42)における冷凍機油の流通状態を調節するための調節手段(50)が、油量調節弁(52)と油面センサ(51)とコントローラ(53)とによって構成されている。また、油量調節弁(52)は、油面センサ(51)の出力に応じて操作される制御弁を構成している。
また、本実施形態の冷媒回路(11)には、分岐流入管(38)と連絡管(41)が設けられている。
具体的に、上記分岐流入管(38)の一端は、膨張機ケーシング(34)の胴部を貫通しており、終端が膨張機ケーシング(34)の内部空間における膨張機構(31)と発電機(33)の間に開口している。分岐流入管(38)の他端は、圧縮機(20)の吸入管(25)の途中に接続されている。つまり、分岐流入管(38)は、圧縮機(20)の吸入側の配管と膨張機ケーシング(34)との間に接続され、第1四方切換弁(12)の第2のポートから圧縮機(20)へ向かう低圧冷媒(吸入冷媒)の一部を膨張機ケーシング(34)内へ導入する分岐通路を構成している。
上記連絡管(41)は、圧縮機ケーシング(24)と膨張機ケーシング(34)との間に接続されている。連絡管(41)の一端は、圧縮機ケーシング(24)の内部空間における圧縮機構(21)と電動機(23)の間に開口している。連絡管(41)の他端は、膨張機ケーシング(34)の内部空間における発電機(33)の下側の空間に開口している。つまり、連絡管(41)は、圧縮機ケーシング(24)の内部空間と膨張機ケーシング(34)の内部空間とを連通させている。
上記膨張機(30)において、分岐流入管(38)を通じて膨張機ケーシング(34)内へ流れた低圧冷媒は、連絡管(41)を通って圧縮機ケーシング(24)内へ導入される。このように、本実施形態の冷媒回路(11)は、圧縮機(20)の吸入冷媒の一部が膨張機ケーシング(34)内を通過した後に圧縮機ケーシング(24)内へ戻るように構成されている。これにより、圧縮機ケーシング(24)および膨張機ケーシング(34)は、内部が低圧冷媒で満たされ、内圧が概ね等しくなる。つまり、本実施形態において、分岐流入管(38)および連絡管(41)は、両ケーシング(24,34)内を均圧させる手段としての均圧通路(40)を構成している。
−運転動作−
次に、上記空調機(10)の動作について、図1および図2を参照しながら説明する。ここでは、空調機(10)の冷房運転時および暖房運転時の動作について説明し、続いて圧縮機(20)と膨張機(30)の油量を調節する動作について説明する。
〈冷房運転〉
冷房運転時には、第1四方切換弁(12)および第2四方切換弁(13)が図1に実線で示す状態に設定され、冷媒回路(11)で冷媒が循環して蒸気圧縮冷凍サイクルが行われる。この冷媒回路(11)で行われる冷凍サイクルは、その高圧が冷媒である二酸化炭素の臨界圧力よりも高い値に設定されている。
上記圧縮機(20)では、電動機(23)によって圧縮機構(21)が回転駆動される。圧縮機構(21)は、圧縮機ケーシング(24)の内部空間から吸い込んだ冷媒を圧縮する。この圧縮された高圧冷媒は、吐出管(26)を通って圧縮機(20)から吐出される。圧縮機(20)から吐出された冷媒は、室外熱交換器(14)へ送られて室外空気へ放熱する。室外熱交換器(14)で放熱した高圧冷媒は、膨張機(30)へ流入する。
上記膨張機(30)では、流入管(35)を通って膨張機構(31)へ流入した高圧冷媒が膨張し、それによって発電機(33)が回転駆動される。発電機(33)で発生した電力は、圧縮機(20)の電動機(23)へ供給される。膨張機構(31)で膨張した冷媒は、流出管(36)を通って膨張機(30)から送り出される。膨張機(30)から送り出された冷媒は、室内熱交換器(15)へ送られる。室内熱交換器(15)では、流入した冷媒が室内空気から吸熱して蒸発し、室内空気が冷却される。室内熱交換器(15)から出た低圧冷媒は、第1四方切換弁(12)を介して吸入管(25)へ流れる。この低圧冷媒の一部は、分岐流入管(38)へ分岐し、膨張機ケーシング(34)内へ流入する。一方、低圧冷媒の残りは、圧縮機ケーシング(24)内へ吸い込まれ、再び圧縮機構(21)によって圧縮される。
上記分岐流入管(38)から膨張機ケーシング(34)内へ流入した低圧冷媒は、連絡管(41)を通って圧縮機ケーシング(24)内へ吸い込まれ、吸入管(25)から吸い込まれた低圧冷媒と混合する。このように、低圧冷媒の一部は、圧縮機ケーシング(24)内へ吸入される前に、膨張機ケーシング(34)内を通過する。これにより、膨張機ケーシング(34)の内圧が圧縮機ケーシング(24)の内圧とほぼ等しくなる。
〈暖房運転〉
暖房運転時には、第1四方切換弁(12)および第2四方切換弁(13)が図2に実線で示す状態に設定され、冷媒回路(11)で冷媒が循環して蒸気圧縮冷凍サイクルが行われる。冷房運転時と同様に、この冷媒回路(11)で行われる冷凍サイクルは、その高圧が冷媒である二酸化炭素の臨界圧力よりも高い値に設定されている。
上記圧縮機(20)では、電動機(23)によって圧縮機構(21)が回転駆動される。圧縮機構(21)は、圧縮機ケーシング(24)の内部空間から吸い込んだ冷媒を圧縮する。この圧縮された高圧冷媒は、吐出管(26)を通って圧縮機(20)から吐出される。圧縮機(20)から吐出された冷媒は、室内熱交換器(15)へ送られる。室内熱交換器(15)では、流入した冷媒が室内空気へ放熱し、室内空気が加熱される。室内熱交換器(15)で放熱した高圧冷媒は、膨張機(30)へ流入する。
上記膨張機(30)では、流入管(35)を通って膨張機構(31)へ流入した高圧冷媒が膨張し、それによって発電機(33)が回転駆動される。発電機(33)で発生した電力は、圧縮機(20)の電動機(23)へ供給される。膨張機構(31)で膨張した冷媒は、流出管(36)を通って膨張機(30)から送り出される。膨張機(30)から送り出された冷媒は、室外熱交換器(14)へ送られる。室外熱交換器(14)では、流入した冷媒が室外空気から吸熱して蒸発する。室内熱交換器(15)から出た低圧冷媒は、第1四方切換弁(12)を介して吸入管(25)へ流れる。この低圧冷媒の一部は、分岐流入管(38)へ分岐し、膨張機ケーシング(34)内へ流入する。一方、低圧冷媒の残りは、圧縮機ケーシング(24)内へ吸い込まれ、再び圧縮機構(21)によって圧縮される。
上記分岐流入管(38)から膨張機ケーシング(34)内へ流入した低圧冷媒は、連絡管(41)を通って圧縮機ケーシング(24)内へ吸い込まれ、吸入管(25)から吸い込まれた低圧冷媒と混合する。このように、低圧冷媒の一部は、圧縮機ケーシング(24)内へ吸入される前に、膨張機ケーシング(34)内を通過する。これにより、膨張機ケーシング(34)の内圧が圧縮機ケーシング(24)の内圧とほぼ等しくなる。
〈油量調節動作〉
先ず、上記圧縮機(20)の運転中には、圧縮機ケーシング(24)内の油溜り(27)から圧縮機構(21)へ冷凍機油が供給される。圧縮機構(21)へ供給された冷凍機油は圧縮機構(21)の潤滑に利用されるが、その一部は圧縮後の冷媒と共に吐出管(26)を通って圧縮機(20)の外部へ流出する。
また、上記膨張機(30)の運転中には、膨張機ケーシング(34)内の油溜り(37)から膨張機構(31)へ冷凍機油が供給される。膨張機構(31)へ供給された冷凍機油は膨張機構(31)の潤滑に利用されるが、その一部は膨張後の冷媒と共に流出管(36)を通って膨張機(30)の外部へ流出する。
このように、空調機(10)の運転中には、圧縮機(20)や膨張機(30)から冷凍機油が流出してゆく。圧縮機(20)や膨張機(30)から流出した冷凍機油は、冷媒と共に冷媒回路(11)内を循環し、再び圧縮機(20)や膨張機(30)へ戻ってくる。
上記膨張機(30)では、冷媒回路(11)内を流れる冷凍機油が冷媒と共に流入管(35)を通って膨張機構(31)へ流入する。ところが、膨張機構(31)で膨張した冷媒は、流出管(36)を通って膨張機ケーシング(34)の外部へ直接送り出されるため、冷凍機油もそのまま膨張機ケーシング(34)の外部へ送り出されてしまう。つまり、膨張機(30)では、冷媒回路(11)内を流れる冷凍機油が膨張機構(31)へ流入するが、この冷凍機油は膨張機ケーシング(34)内の油溜り(37)へ戻ることなくそのまま膨張機(30)から送り出される。
ところが、本実施形態では、吸入管(25)を流れる冷凍機油の一部が冷媒と共に分岐流入管(38)を通って膨張機ケーシング(34)内へ流入し、残りの冷凍機油が冷媒と共に圧縮機ケーシング(24)内へ流入する。膨張機ケーシング(34)内へ流入した冷凍機油は、発電機(33)の回転子と固定子の間に形成された隙間や、固定子と膨張機ケーシング(34)の間に形成された隙間などを通過する間に冷媒と分離され、油溜り(37)へ向かって流れ落ちる。冷凍機油が分離された冷媒は、連絡管(41)を通って圧縮機ケーシング(24)内へ流入する。つまり、膨張機(30)では、冷凍機油が流出管(36)から流出すると同時に、分岐流入管(38)から冷凍機油が膨張機ケーシング(34)内の油溜り(37)に戻される。
一方、上記圧縮機(20)では、吸入管(25)から圧縮機ケーシング(24)内へ流入した冷凍機油が電動機(23)の回転子と固定子の間に形成された隙間や、固定子と圧縮機ケーシング(24)の間に形成された隙間などを通過する間に冷媒と分離される。分離後の冷凍機油は、油溜り(27)へ向かって流れ落ちる。つまり、圧縮機(20)では、冷凍機油が吐出管(26)から流出すると同時に、吸入管(25)から冷凍機油が圧縮機ケーシング(24)内へ戻って油溜り(27)に貯留される。
このように、本実施形態では、分岐流入管(38)および連絡管(41)を設けることにより、冷媒回路(11)内を流れる冷凍機油が圧縮機(20)のみへ戻されるのではなく、膨張機(30)へも分配されて戻される。そして、この冷凍機油の分配量は、低圧冷媒の分配量に応じて概ね変化する。つまり、圧縮機(20)へ多くの冷媒を分配した場合は、膨張機(30)よりもその分多くの冷凍機油が圧縮機(20)の油溜り(27)へ戻され、逆に膨張機(30)へ多くの冷媒を分配した場合は、圧縮機(20)よりもその分多くの冷凍機油が膨張機(30)の油溜り(37)へ戻される。また、圧縮機(20)と膨張機(30)との冷媒の分配量を同じとした場合は、圧縮機(20)と膨張機(30)とへ概ね同じ量の冷凍機油が戻される。
しかしながら、圧縮機(20)および膨張機(30)において、冷凍機油の流出量と戻り量とが常に均衡するとは限らない。そこで、コントローラ(53)が油面センサ(51)の出力信号に基づいて油量調節弁(52)を操作する。
具体的に、上記膨張機(30)において、冷凍機油の戻り量がその流出量に比べて少ないと、膨張機ケーシング(34)内における冷凍機油の貯留量が次第に減少し、油溜り(37)の油面が低下する。即ち、この場合、圧縮機(20)に冷凍機油が偏在していることになる。そして、コントローラ(53)は、油面センサ(51)の出力信号に基づいて膨張機ケーシング(34)内の油溜り(37)の油面高さが所定の下限値以下になったと判断すると、油量調節弁(52)を開く。油量調節弁(52)が開くと、圧縮機ケーシング(24)内の油溜り(27)と膨張機ケーシング(34)内の油溜り(37)が互いに連通する。この状態において、膨張機ケーシング(34)内の油溜り(37)の油面高さは、圧縮機ケーシング(24)内の油溜り(27)の油面高さよりも低くなっている。そうすると、圧縮機ケーシング(24)および膨張機ケーシング(34)の内圧がほぼ等しくなっているので、圧縮機ケーシング(24)内の油溜り(27)から冷凍機油が油流通管(42)を通って膨張機ケーシング(34)内の油溜り(37)へ流れる。そして、コントローラ(53)は、油面センサ(51)の出力信号に基づいて油溜り(37)の油面位置が所定の基準値にまで上昇したと判断すると、油量調節弁(52)を閉じる。これにより、圧縮機(20)および膨張機(30)の双方において、冷凍機油の貯留量が確保される。
また、上記膨張機(30)において、冷凍機油の戻り量がその流出量に比べて多いと、膨張機ケーシング(34)内における冷凍機油の貯留量が次第に増大し、油溜り(37)の油面が上昇する。即ち、この場合、膨張機(30)に冷凍機油が偏在していることになる。そして、コントローラ(53)は、油面センサ(51)の出力信号に基づいて膨張機ケーシング(34)内の油溜り(37)の油面高さが所定の上限値以上になったと判断すると、油量調節弁(52)を開く。この状態において、膨張機ケーシング(34)内の油溜り(37)の油面高さは、圧縮機ケーシング(24)内の油溜り(27)の油面高さよりも高くなっている。したがって、圧縮機ケーシング(24)および膨張機ケーシング(34)の内圧はほぼ等しいため、膨張機ケーシング(34)内の油溜り(37)から冷凍機油が油流通管(42)を通って圧縮機ケーシング(24)内の油溜り(27)へ流れる。そして、コントローラ(53)は、油面センサ(51)の出力信号に基づいて油溜り(37)の油面位置が所定の基準値にまで低下したと判断すると、油量調節弁(52)を閉じる。これにより、圧縮機(20)および膨張機(30)の双方において、冷凍機油の貯留量が確保される。
−実施形態1の効果−
本実施形態によれば、分岐流入管(38)および連絡管(41)を設けて低圧冷媒の一部を膨張機ケーシング(34)内を通過させるようにすると共に、圧縮機ケーシング(24)の油溜り(27)と膨張機ケーシング(34)の油溜り(37)とを連通させる油流通管(42)を設けるようにした。このため、流出した冷媒回路(11)内の冷凍機油を圧縮機(20)と膨張機(30)とに分配して戻すことができると共に、圧縮機ケーシング(24)内と膨張機ケーシング(34)内を均圧させることができる。したがって、圧縮機(20)および膨張機(30)の一方に冷凍機油が偏在して過剰な状態となっても、その一方から冷凍機油が不足している他方へ油流通管(42)を通じて冷凍機油を供給することができる。その結果、圧縮機(20)および膨張機(30)において冷凍機油の貯留量を充分に確保することができるので、圧縮機構(21)や膨張機構(31)の潤滑不良による損傷を防止し、空調機(10)の信頼性を確保することができる。
また、膨張機ケーシング(34)内を通過する低圧冷媒は低温であるため、膨張機ケーシング(34)内を比較的低温にすることができ、膨張機構(31)において侵入する熱量を抑制することができる。したがって、膨張後の冷媒のエンタルピを低下させることができる。その結果、蒸発器として機能する熱交換器(14,15)において冷媒の吸熱量を確保することができ、より高い蒸発能力を得ることができる。
《発明の実施形態2》
本実施形態2の空調機(10)は、上記実施形態1の冷媒回路(11)に油分離器(60)および返油管(61)を追加すると共に、上記実施形態1における分岐流入管(38)に代えて新たな分岐流入管(39)を設けたものである。ここでは、本実施形態の空調機(10)について、上記実施形態1と異なる点を説明する。
図4に示すように、上記油分離器(60)は、圧縮機(20)の吸入側に配置されている。この油分離器(60)は、圧縮機(20)へ吸入される冷媒と冷凍機油を分離するためのものである。具体的に、油分離器(60)は、縦長円筒形の密閉容器状に形成された本体部材(65)を備えている。この本体部材(65)には、入口管(66)と出口管(67)とが設けられている。入口管(66)は、本体部材(65)から横方向へ突出しており、本体部材(65)の側壁部の上部を貫通している。出口管(67)は、本体部材(65)から上方向へ突出しており、本体部材(65)の頂部を貫通している。油分離器(60)は、入口管(66)が第1四方切換弁(12)の第2のポートに接続され、出口管(67)が圧縮機(20)の吸入管(25)に接続されている。
上記返油管(61)は、油分離器(60)と膨張機ケーシング(34)との間に接続されている。返油管(61)の一端は、油分離器(60)の本体部材(65)の底部に接続されている。返油管(61)の他端は、膨張機ケーシング(34)の底部に接続されている。つまり、油分離器(60)の本体部材(65)の内部空間は、返油管(61)を介して膨張機ケーシング(34)内の油溜り(37)と連通している。この返油管(61)は、油分離器(60)の本体部材(65)から膨張機ケーシング(34)内の油溜り(37)へ冷凍機油を導くための返油通路を構成している。
上記分岐流入管(39)の一端は、上記実施形態1と同様に、膨張機ケーシング(34)の胴部を貫通し、その終端が膨張機ケーシング(34)の内部空間における膨張機構(31)と発電機(33)の間に開口している。分岐流入管(39)の他端は、油分離器(60)の出口管(67)と繋がる吸入管(25)の途中に接続されている。即ち、油分離器(60)は、圧縮機(20)の吸入側の配管における分岐流入管(39)の接続位置より上流に設けられている。また、分岐流入管(39)は、油分離器(60)から圧縮機(20)へ向かう低圧冷媒(吸入冷媒)の一部を膨張機ケーシング(34)内へ導入する分岐通路を構成している。膨張機ケーシング(34)内へ流入した低圧冷媒は、連絡管(41)を通って圧縮機ケーシング(24)内へ導入される。そして、分岐流入管(39)および連絡管(41)は、圧縮機ケーシング(24)内と膨張機ケーシング(34)内とを均圧させる均圧通路(40)を構成している。つまり、本実施形態の冷媒回路(11)も、上記実施形態1と同様に、圧縮機(20)の吸入冷媒の一部が膨張機ケーシング(34)内を通過してから圧縮機ケーシング(24)内へ戻るように構成されている。
−運転動作−
本実施形態の空調機(10)における冷房運転中および暖房運転中の動作は、上記実施形態1の空調機(10)で行われる動作と同じである。ここでは、本実施形態の空調機(10)で行われる油量調節動作について説明する。
上記圧縮機(20)から冷媒と共に吐出された冷凍機油は、冷媒回路(11)内を流れて膨張機(30)の流入管(35)から膨張機構(31)へ流入する。膨張機構(31)へ流入した冷凍機油は、膨張機ケーシング(34)内の油溜り(37)から膨張機構(31)へ供給された冷凍機油と共に、流出管(36)を通って膨張機(30)から流出する。この膨張機構(31)から流出した冷凍機油は、冷媒回路(11)内を冷媒と共に流れて油分離器(60)へ流入する。
上記油分離器(60)の本体部材(65)内へ流入した冷凍機油は、冷媒と分離されて本体部材(65)内の底部に溜まる。油分離器(60)で分離された冷媒は、圧縮機(20)の吸入管(25)へ流出する。吸入管(25)へ流出した冷媒の一部は、分岐流入管(39)を通って膨張機ケーシング(34)内へ流入した後、連絡管(41)を通って圧縮機ケーシング(24)内へ流入する。吸入管(25)の残りの冷媒は、圧縮機ケーシング(24)内へそのまま流入する。これにより、圧縮機ケーシング(24)内と膨張機ケーシング(34)内が均圧される。一方、油分離器(60)の本体部材(65)内に溜まった冷凍機油は、返油管(61)を通って膨張機ケーシング(34)内の油溜り(37)へ供給される。このように、本実施形態では、圧縮機(20)から流出した冷凍機油と膨張機(30)から流出した冷凍機油の両方が膨張機ケーシング(34)内の油溜り(37)へ一旦集められる。
上記コントローラ(53)は、膨張機ケーシング(34)内の油溜り(37)の油面高さが所定の上限値以上になったと判断すると、油量調節弁(52)を開き、膨張機ケーシング(34)内の冷凍機油を油流通管(42)を通じて圧縮機ケーシング(24)内へ供給する。コントローラ(53)は、膨張機ケーシング(34)内の油溜り(37)の油面位置が所定の基準値にまで低下したと判断すると、油量調節弁(52)を閉じる。このように、コントローラ(53)が油量調節弁(52)を操作することで、膨張機ケーシング(34)内の油溜り(37)へ集められた冷凍機油が圧縮機ケーシング(24)内の油溜り(27)へ分配される。
−実施形態2の効果−
本実施形態によれば、圧縮機(20)の吸入側に油分離器(60)を配置するようにしたので、冷媒回路(11)を流れる冷凍機油を圧縮機(20)の手前で捕集できる。このため、冷媒と共に圧縮機ケーシング(24)内へ流入する冷凍機油の量を削減できる。つまり、圧縮機構(21)へ吸い込まれる冷凍機油の量を削減することができる。したがって、圧縮機構(21)において1回当たりの吸入容積は決まっているため、冷媒と共に圧縮機構(21)へ吸い込まれる冷凍機油の量を削減することで、その分だけ圧縮機構(21)へ吸い込まれる冷媒の量を増やすことができる。その結果、圧縮機(20)の性能を充分に発揮させることができる。
−実施形態2の変形例−
本変形例は、上記実施形態2の冷媒回路(11)において、油分離器(60)を膨張機ケーシング(34)ではなく圧縮機ケーシング(24)に接続するようにしたものである。
図5に示すように、本変形例の冷媒回路(11)では、油分離器(60)の本体部材(65)と圧縮機ケーシング(24)とが返油管(62)によって接続されている。この返油管(62)は、一端が油分離器(60)の本体部材(65)の底部に接続され、他端が圧縮機ケーシング(24)の底部に接続されている。つまり、油分離器(60)の本体部材(65)の内部空間は、返油管(62)を介して圧縮機ケーシング(24)内の油溜り(27)と連通している。この返油管(62)は、油分離器(60)の本体部材(65)から圧縮機ケーシング(24)内の油溜り(37)へ冷凍機油を導くための返油通路を構成している。
本変形例の冷媒回路(11)において、圧縮機(20)から冷媒と共に吐出された冷凍機油は、冷媒回路(11)内を流れて膨張機(30)の流入管(35)から膨張機構(31)へ流入し、膨張機ケーシング(34)内の油溜り(37)から膨張機構(31)へ供給された冷凍機油と共に、流出管(36)を通って膨張機(30)から流出する。膨張機構(31)から流出した冷凍機油は、冷媒回路(11)内を冷媒と共に流れて油分離器(60)へ流入し、冷媒と分離される。この油分離器(60)で分離された冷凍機油は、返油管(62)を通って圧縮機ケーシング(24)内の油溜り(27)へ供給される。つまり、本変形例では、圧縮機(20)から流出した冷凍機油と膨張機(30)から流出した冷凍機油の両方が圧縮機ケーシング(24)内の油溜り(27)へ一旦集められる。
上記コントローラ(53)は、膨張機ケーシング(34)内の油溜り(37)の油面高さが所定の下限値以下になったと判断すると、油量調節弁(52)を開き、圧縮機ケーシング(24)内の冷凍機油を油流通管(42)を通じて膨張機ケーシング(34)内へ供給する。コントローラ(53)は、膨張機ケーシング(34)内の油溜り(37)の油面位置が所定の基準値にまで上昇したと判断すると、油量調節弁(52)を閉じる。このように、コントローラ(53)が油量調節弁(52)を操作することで、圧縮機ケーシング(24)内の油溜り(27)へ集められた冷凍機油が膨張機ケーシング(34)内の油溜り(37)へ分配される。
《発明の実施形態3》
本実施形態3の空調機(10)は、上記実施形態1の冷媒回路(11)に油分離器(70)および返油管(71)を追加したものである。ここでは、本実施形態の空調機(10)について、上記実施形態1と異なる点を説明する。
図6に示すように、上記油分離器(70)は、圧縮機(20)の吐出側に配置されている。この油分離器(70)自体は、上記実施形態2の油分離器(60)と同様に構成されている。つまり、この油分離器(70)は、本体部材(65)と入口管(66)と出口管(67)とを備えている。油分離器(70)は、入口管(66)が圧縮機(20)の吐出管(26)に接続され、出口管(67)が第1四方切換弁(12)の第1のポートに接続されている。
上記返油管(71)は、油分離器(70)と膨張機ケーシング(34)との間に接続されている。返油管(71)の一端は、油分離器(70)の本体部材(65)の底部に接続されている。返油管(71)の他端は、膨張機ケーシング(34)の底部に接続されている。つまり、上記実施形態2と同様に、この返油管(71)は、油分離器(70)の本体部材(65)から膨張機ケーシング(34)内の油溜り(37)へ冷凍機油を導くための返油通路を構成している。なお、本実施形態の返油管(71)には、冷凍機油を減圧するためのキャピラリチューブ(73)が設けられている。
−運転動作−
本実施形態の空調機(10)における冷房運転中および暖房運転中の動作は、上記実施形態1の空調機(10)で行われる動作と同じである。ここでは、本実施形態の空調機(10)で行われる油量調節動作について説明する。
上記圧縮機(20)から冷媒と共に吐出された冷凍機油は、油分離器(70)の本体部材(65)へ流入し、冷媒と分離されて底部に溜まる。本体部材(65)に溜まった冷凍機油は、返油管(71)を通って膨張機ケーシング(34)内の油溜り(37)へ供給される。一方、膨張機(30)から冷媒と共に流出して吸入管(25)へ流れた冷凍機油は、一部が分岐流入管(38)から膨張機ケーシング(34)内へ流入し、残りが圧縮機ケーシング(24)内へ流入する。圧縮機ケーシング(24)および膨張機ケーシング(34)へ流入したそれぞれの冷凍機油は、冷媒と分離されて油溜まり(27,37)へ貯留される。なお、本実施形態においても、膨張機ケーシング(34)内へ流入した冷媒が連絡管(41)を通じて圧縮機ケーシング(24)内へ流入するので、圧縮機ケーシング(24)内と膨張機ケーシング(34)内が均圧される。
このように、本実施形態では、圧縮機(20)から流出した冷凍機油が油分離器(70)および返油管(71)を順に通って膨張機ケーシング(34)内へ戻される一方、膨張機(30)から流出した冷凍機油が圧縮機ケーシング(24)内と膨張機ケーシング(34)内とに分配されて戻される。ところが、本実施形態においても、圧縮機(20)および膨張機(30)において冷凍機油の流出量と戻り量とが均衡するとは限らないため、コントローラ(53)によって油量調節弁(52)が操作される。
つまり、上記コントローラ(53)は、膨張機ケーシング(34)内の油溜り(37)の油面高さが所定の上限値以上になったと判断すると、油量調節弁(52)を開き、その後膨張機ケーシング(34)内の油溜り(37)の油面位置が所定の基準値にまで低下したと判断すると、油量調節弁(52)を閉じる。また、コントローラ(53)は、膨張機ケーシング(34)内の油溜り(37)の油面高さが所定の下限値以下になったと判断すると、油量調節弁(52)を開き、その後膨張機ケーシング(34)内の油溜り(37)の油面位置が所定の基準値にまで上昇したと判断すると、油量調節弁(52)を閉じる。このように、コントローラ(53)が油量調節弁(52)を操作することで、圧縮機(20)および膨張機(30)のそれぞれにおいて冷凍機油の貯留量が確保される。
−実施形態3の効果−
本実施形態では、圧縮機(20)の吐出側に配置した油分離器(70)で冷凍機油を捕集している。ここで、油分離器(70)を通過した直後の冷媒は、冷房運転時には室外熱交換器(14)へ流れ、暖房運転時には室内熱交換器(15)へ流れる。したがって、室外熱交換器(14)および室内熱交換器(15)のうちガスクーラとして機能する方へ流入する冷凍機油の量を削減することができる。その結果、本実施形態によれば、ガスクーラとして機能する熱交換器(14,15)において、冷媒と空気の熱交換が冷凍機油によって阻害されるのを抑制でき、この熱交換器(14,15)の性能を充分に発揮させることができる。
−実施形態3の変形例−
本変形例は、上記実施形態3の冷媒回路(11)において、油分離器(70)を膨張機ケーシング(34)ではなく圧縮機ケーシング(24)に接続するようにしたものである。
図7に示すように、本変形例の冷媒回路(11)では、油分離器(70)の本体部材(65)と圧縮機ケーシング(24)とが返油管(72)によって接続されている。この返油管(72)は、一端が油分離器(70)の本体部材(65)の底部に接続され、他端が圧縮機ケーシング(24)の底部に接続されている。また、返油管(72)には、流入する冷凍機油を減圧するためのキャピラリチューブ(73)が設けられている。この返油管(72)は、油分離器(70)の本体部材(65)と圧縮機ケーシング(24)内の油溜り(27)とを連通させる返油通路を構成している。
本変形例の冷媒回路(11)において、圧縮機(20)から冷媒と共に吐出された冷凍機油は、油分離器(70)で冷媒と分離され、その後、返油管(72)を通じて圧縮機ケーシング(24)内の油溜り(27)へ送り返される。また、膨張機(30)から冷媒と共に流出した冷凍機油は、上記実施形態3と同様に、圧縮機ケーシング(24)内と膨張機ケーシング(34)内とに分配されて戻される。そして、本変形例においても、コントローラ(53)が油面センサ(51)の出力信号に基づいて油量調節弁(52)を操作する。これにより、圧縮機(20)および膨張機(30)のそれぞれにおいて冷凍機油の貯留量が確保される。
《発明の実施形態4》
本実施形態4の空調機(10)は、上記実施形態1の冷媒回路(11)に油分離器(75)と返油管(76)とを追加したものである。ここでは、本実施形態の空調機(10)について、上記実施形態1と異なる点を説明する。
図8に示すように、油分離器(75)は、膨張機(30)の流出側に配置されている。この油分離器(75)自体は、上記実施形態2の油分離器(60)と同様に構成されている。つまり、この油分離器(75)は、本体部材(65)と入口管(66)と出口管(67)とを備えている。油分離器(75)は、入口管(66)が膨張機(30)の流出管(36)に接続され、出口管(67)が第2四方切換弁(13)の第1のポートに接続されている。
上記返油管(76)は、油分離器(75)と膨張機ケーシング(34)との間に接続されている。具体的に、返油管(76)の一端は、油分離器(75)の本体部材(65)の底部に接続されている。返油管(76)の他端は、膨張機ケーシング(34)の底部に接続されている。つまり、上記実施形態2と同様に、返油管(76)は、油分離器(75)の本体部材(65)と膨張機ケーシング(34)内の油溜り(37)を連通させる返油通路を構成している。
−運転動作−
本実施形態の空調機(10)における冷房運転中および暖房運転中の動作は、上記実施形態1の空調機(10)で行われる動作と同じである。ここでは、本実施形態の空調機(10)で行われる油量調節動作について説明する。
上記圧縮機(20)から冷媒と共に吐出された冷凍機油は、冷媒回路(11)内を流れて膨張機(30)の流入管(35)から膨張機構(31)へ流入する。膨張機構(31)へ流入した冷凍機油は、膨張機ケーシング(34)内の油溜り(37)から膨張機構(31)へ供給された冷凍機油と共に、流出管(36)を通って膨張機(30)から流出する。膨張機(30)から流出した冷凍機油は、膨張後の気液二相状態の冷媒と共に油分離器(75)の本体部材(65)内へ流入する。この本体部材(65)の内部では、下部に液冷媒と冷凍機油の混合物が溜まり、上部にガス冷媒が溜まる。また、本実施形態では、冷凍機油の比重が液冷媒の比重よりも大きくなっている。このため、本体部材(65)内の液溜まりでは、その底層ほど冷凍機油の割合が多くなり、その上層ほど液冷媒の割合が多くなる。
上記油分離器(75)の出口管(67)は、下端部が本体部材(65)内の液溜まりに浸かった状態となっている。この液溜まりの上層に存在する液冷媒は、出口管(67)を通って本体部材(65)から流出し、冷房運転時には室内熱交換器(15)へ、暖房運転時には室外熱交換器(14)へそれぞれ流れる。
上記油分離器(75)の本体部材(65)内に溜まった冷凍機油は、返油管(76)を通って膨張機ケーシング(34)内の油溜り(37)へ供給される。つまり、本実施形態では、圧縮機(20)から流出した冷凍機油と膨張機(30)から流出した冷凍機油の両方が膨張機ケーシング(34)内の油溜り(37)へ一旦集められる。なお、本実施形態においても、吸入管(25)における低圧冷媒の一部が膨張機ケーシング(34)内を通過して圧縮機ケーシング(24)内へ流入するので、圧縮機ケーシング(24)内と膨張機ケーシング(34)内が均圧される。
上記コントローラ(53)は、膨張機ケーシング(34)内の油溜り(37)の油面高さが所定の上限値以上になったと判断すると、油量調節弁(52)を開く。この状態において、膨張機ケーシング(34)内の油溜り(37)の油面高さは、圧縮機ケーシング(24)内の油溜り(27)の油面高さよりも高くなっている。したがって、膨張機ケーシング(34)内の冷凍機油は、油流通管(42)を通って圧縮機ケーシング(24)内へ流入する。そして、コントローラ(53)は、膨張機ケーシング(34)内の油溜り(37)の油面位置が所定の基準値にまで低下したと判断すると、油量調節弁(52)を閉じる。このように、コントローラ(53)が油量調節弁(52)を操作することで、膨張機ケーシング(34)内の油溜り(37)へ集められた冷凍機油が圧縮機ケーシング(24)内の油溜り(27)へ分配される。
−実施形態4の効果−
本実施形態では、膨張機(30)の流出側に配置した油分離器(75)で潤滑油を捕集している。ここで、膨張機(30)から送り出されて油分離器(75)を通過した直後の冷媒は、冷房運転時には室内熱交換器(15)へ流れ、暖房運転時には室外熱交換器(14)へ流れる。したがって、室外熱交換器(14)および室内熱交換器(15)のうち蒸発器として機能する方へ流入する冷凍機油の量を削減することができる。その結果、本実施形態によれば、蒸発器として機能する熱交換器(14,15)において、冷媒と空気の熱交換が冷凍機油によって阻害されるのを抑制でき、この熱交換器(14,15)の性能を充分に発揮させることができる。
−実施形態4の変形例−
本変形例は、上記実施形態4の冷媒回路(11)において、油分離器(75)を膨張機ケーシング(34)ではなく圧縮機ケーシング(24)に接続するようにしたものである。
図9に示すように、本変形例の冷媒回路(11)では、油分離器(75)の本体部材(65)と圧縮機ケーシング(24)が返油管(77)によって接続されている。この返油管(77)は、一端が油分離器(75)の本体部材(65)の底部に接続され、他端が圧縮機ケーシング(24)の底部に接続されている。つまり、この返油管(77)は、油分離器(75)の本体部材(65)と圧縮機ケーシング(24)内の油溜り(27)を連通させる返油通路を構成している。
本変形例の冷媒回路(11)において、圧縮機(20)や膨張機(30)から流出した冷凍機油は、油分離器(75)で冷媒と分離され、返油管(77)を通じて圧縮機ケーシング(24)内の油溜り(27)へ送り返される。つまり、本変形例では、圧縮機(20)から流出した冷凍機油と膨張機(30)から流出した冷凍機油の両方が圧縮機ケーシング(24)内の油溜り(27)へ一旦集められる。
上記コントローラ(53)は、膨張機ケーシング(34)内の油溜り(37)の油面高さが所定の下限値以下になったと判断すると、油量調節弁(52)を開いて圧縮機ケーシング(24)内の冷凍機油を膨張機ケーシング(34)内へ供給する。そして、コントローラ(53)は、膨張機ケーシング(34)内の油溜り(37)の油面位置が所定の基準値にまで上昇したと判断すると、油量調節弁(52)を閉じる。このように、コントローラ(53)が油量調節弁(52)を操作することで、圧縮機ケーシング(24)内の油溜り(27)へ集められた冷凍機油が膨張機ケーシング(34)内の油溜り(37)へ分配される。
《その他の実施形態》
上記実施形態については、以下のような構成としてもよい。
−第1変形例−
上記の各実施形態では、図10に示すように、油流通管(42)の途中に調整手段としてのキャピラリチューブ(54)を設けるようにしてもよい。なお、図10に示す冷媒回路(11)は、上記実施形態1において本変形例を適用したものである。
上記油流通管(42)にキャピラリチューブ(54)を設けると、油流通管(42)を流れる冷凍機油の流速がある程度以下に抑えられる。このため、圧縮機ケーシング(24)の内圧と膨張機ケーシング(34)の内圧とが過渡的に相違してしまった状態においても、圧縮機(20)および膨張機(30)の一方から他方へ冷凍機油が油流通管(42)を通って移動してしまうのを防ぐことができ、圧縮機(20)と膨張機(30)の両方において冷凍機油の貯留量を確保することができる。
−第2変形例−
上記の各実施形態では、図11に示すように、調整手段を省略するようにしてもよい。なお、図11に示す冷媒回路(11)は、上記実施形態1において本変形例を適用したものである。
本変形例において、圧縮機ケーシング(24)内の油溜り(27)と膨張機ケーシング(34)内の油溜り(37)とは、油流通管(42)によって常に連通した状態となる。油流通管(42)では、圧縮機ケーシング(24)内の油溜り(27)と膨張機ケーシング(34)内の油溜り(37)のうち、油面位置の高い方から低い方へ冷凍機油が流通する。そして、圧縮機ケーシング(24)内の油溜り(27)と膨張機ケーシング(34)内の油溜り(37)の油面高さが同じになると、油流通管(42)での冷凍機油の流動が停止する。
このように、本変形例では、何ら制御を行うことなく、圧縮機ケーシング(24)と膨張機ケーシング(34)における冷凍機油の貯留量を平均化することができる。したがって、本変形例によれば、圧縮機(20)や膨張機(30)の信頼性を確保しつつ、冷媒回路(11)の複雑化を最小限に抑えることができる。
−第3変形例−
上記の各実施形態では、図12に示すように、油面センサ(51)を膨張機ケーシング(34)内ではなく圧縮機ケーシング(24)内に設けるようにしてもよい。なお、図12に示す冷媒回路(11)は、上記実施形態1に本変形例を適用したものである。
本変形例のコントローラ(53)は、圧縮機ケーシング(24)内の油溜り(27)の油面高さが所定の下限値以下になったと判断すると、油量調節弁(52)を開く。この状態において、圧縮機ケーシング(24)内の油溜り(27)の油面高さは、膨張機ケーシング(34)内の油溜り(37)の油面高さよりも低くなっている。したがって、膨張機ケーシング(34)内の冷凍機油は、油流通管(42)を通って圧縮機ケーシング(24)内へ流入する。そして、コントローラ(53)は、圧縮機ケーシング(24)内の油溜り(27)の油面位置が所定の基準値にまで上昇したと判断すると、油量調節弁(52)を閉じる。
また、コントローラ(53)は、圧縮機ケーシング(24)内の油溜り(27)の油面高さが所定の上限値以上になったと判断すると、油量調節弁(52)を開く。この状態において、圧縮機ケーシング(24)内の油溜り(27)の油面高さは、膨張機ケーシング(34)内の油溜り(37)の油面高さよりも高くなっている。したがって、圧縮機ケーシング(24)内の冷凍機油は、油流通管(42)を通って膨張機ケーシング(34)内へ流入する。そして、コントローラ(53)は、圧縮機ケーシング(24)内の油溜り(27)の油面位置が所定の基準値にまで低下したと判断すると、油量調節弁(52)を閉じる。
−第4変形例−
上記の各実施形態では、圧縮機構(21)と膨張機構(31)のそれぞれがロータリ式の流体機械によって構成されているが、圧縮機構(21)と膨張機構(31)を構成する流体機械の形式は、これに限定されるものではない。例えば、圧縮機構(21)と膨張機構(31)のそれぞれがスクロール式の流体機械によって構成されていてもよい。また、圧縮機構(21)と膨張機構(31)は、互いに異なる形式の流体機械によって構成されていてもよい。
−第5変形例−
上記の各実施形態では、圧縮機(20)の駆動軸(22)や膨張機(30)の出力軸(32)に形成された給油通路によって遠心ポンプを構成しているが、駆動軸(22)や出力軸(32)の下端に機械式ポンプ(例えばギア式ポンプやトロコイド式ポンプ)を連結し、駆動軸(22)や出力軸(32)で機械式ポンプを駆動して圧縮機構(21)や膨張機構(31)への給油を行うようにしてもよい。
上記各実施形態のように圧縮機(20)が低圧ドームタイプである場合、圧縮機ケーシング(24)の内圧と膨張機ケーシング(34)の内圧が冷凍サイクルの低圧と概ね等しくなるため、遠心ポンプでは充分な給油量を確保しにくいことも有り得る。したがって、圧縮機(20)や膨張機(30)に機械式の給油ポンプを設けるのが望ましい。
なお、以上の実施形態は、本質的に好ましい例示であって、本発明、その適用物、あるいはその用途の範囲を制限することを意図するものではない。