JP2007284627A - 加圧ゲル化用エポキシ樹脂組成物およびこれを用いた加圧ゲル化法注形品 - Google Patents

加圧ゲル化用エポキシ樹脂組成物およびこれを用いた加圧ゲル化法注形品 Download PDF

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Yasuhisa Kanezashi
康寿 金指
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圭祐 島上
Takumi Sakamoto
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Abstract

【課題】特殊な加熱装置を必要とすることなく、加圧ゲル化法によるエポキシ樹脂注形品の着色を防止する。
【解決手段】本発明の加圧ゲル化用エポキシ樹脂組成物は、
(a) 1分子当り2個以上の1,2-エポキシ基を有するエポキシ樹脂、
(b) メチルヘキサヒドロ無水フタル酸、
(c) アルキルアンモニウムクロライド、
(d) 充填剤として無機充填材
を配合することを特徴とする。この加圧ゲル化用エポキシ樹脂組成物を金型内に注入し、硬化が完了するまで硬化時の収縮分に相当する樹脂組成物を加圧補給して硬化させて、加圧ゲル化法によりエポキシ樹脂注形品を製造する。
【選択図】図1

Description

本発明は、例えばガス絶縁開閉装置の絶縁スペーサとして使用されるエポキシ樹脂注形品に関するものであって、特に、注形品の着色を防止した加圧ゲル化用エポキシ樹脂組成物およびこの樹脂組成物を使用して加圧ゲル化法により製造した注形品に係るものである。
エポキシ樹脂注型品は固体絶縁物としての電気絶縁性や機械的特性に優れている。このため従来から、高電圧で使用される電気機器内の構造絶縁物をはじめ、様々な分野で利用されている。エポキシ樹脂注型品はエポキシ樹脂 に硬化剤と充填剤を配合し、加熱硬化して製造するのが一般的である。その製造方法としては近年、加圧ゲル化法が適用されている。
加圧ゲル化法とは、反応性の高いエポキシ樹脂を使用し、金型の温度を樹脂温度より数段高くした状態で金型に樹脂を注入し、硬化が完了するまで硬化時の収縮分に相当する樹脂を加圧補給し続ける製造方法である。このような加圧ゲル化法に採用することにより、高品質で信頼性の高いエポキシ樹脂注型品を短時間で大量生産することが可能となっている。
ところで、前記のような加圧ゲル化法によるエポキシ樹脂を用いた注形品の製造は、金型内に注入した樹脂を加熱硬化した後、金型から離型するというプロセスで行なわれている。その場合、耐熱性が特に要求される注形品を製造するには、離型後の注形品を更に130℃から160℃という高温で加熱硬化させてエポキシ樹脂の反応率を高めるポストキュアプロセスが追加される。このポストキュアでは、注形品の表面が空気中の酸素と反応して着色する現象が生じやすい。
また、金型内での硬化プロセスを短縮するために加圧ゲル化法が適用される場合は、120℃から150℃という高温で、短時間にエポキシ樹脂の反応を行なわせるため、収縮で金型から離れた部分の樹脂表面が空気中の酸素と反応して、部分的に着色する現象が生じることがある。これらの着色は、注形品の電気的性能や機械的性能にはほとんど影響を与えないが、注形品の商品価値を低下させる欠点がある。
この着色性を改善するために、特許文献1には無酸素加熱装置を用いる方法が開示されている。すなわち、樹脂注形後の金型を気密室に格納し、次いでエア抜き装置で室内の空気を排気する。室外のガス供給装置からエポキシ樹脂と反応しないガスを加熱装置経由で吹き込み、所定温度に昇温し気密室へ送気して加熱硬化させ、着色のほとんどない製品を製造することが示されている。
特開平7-40356号公報
しかしながら、特許文献1の方法では、特殊な気密性に優れた無酸素加熱装置が必要であり、加熱対象となる金型が多数ある場合には経済性に劣るという問題があった。また、この方法は金型内での硬化プロセスでの着色性改善には有効であっても、耐熱性が特に要求される注形品を製造する場合に行なうポストキュアプロセスでの問題解決にはならない。
本発明は、上記の事情にかんがみてなされたものであり、注形品の金型内硬化プロセスおよび離型後のポストキュアプロセスにおいて、特殊な加熱装置を必要とすることなく、製品の着色を防止し、経済的にも優れた硬化物が得られることを特徴とする加圧ゲル化用エポキシ樹脂組成物およびこれを用いた加圧ゲル化法注形品を提供しようとするものである。
上記の目的を達成するために、本発明の加圧ゲル化用エポキシ樹脂組成物は、
(a) 1分子当り2個以上の1,2-エポキシ基を有するエポキシ樹脂、
(b) メチルヘキサヒドロ無水フタル酸、
(c) アルキルアンモニウムクロライド、
(d) 充填剤として無機充填材
を配合することを特徴とする。また、このエポキシ樹脂組成物を使用して加圧ゲル化法により製造された加圧ゲル化法注形品も本発明の一態様である。
本発明における成分(a) は1分子当り2個以上の1,2-エポキシ基を有する一般的なエポキシ樹脂で良く、代表的には液状または固形のビスフェノールAジグリシジルエーテル、ビスフェノールFジグリシジルエーテル、脂環式ジグリシジルエステル、のいずれかを単独あるいは混合して用いる。固形のエポキシ樹脂は融点が室温以上で250℃までの融点を有する化合物であって良い。好ましくは融点が50ないし150℃の範囲内である。このような固体のエポキシ樹脂は公知であり、市販されている。
また、耐熱性を要求される場合はこれらのエポキシ樹脂に加えて、ビフェニル型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、トリスヒドロキシフェニルメタン型エポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂、アルキル置換3官能型エポキシ樹脂、テトラフェニロールエタン型4官能エポキシ樹脂などの耐熱附与エポキシ樹脂のいずれかを単独または混合して用いることが好ましい。
本発明における成分(b) はメチルヘキサヒドロ無水フタル酸単独、またはメチルヘキサヒドロ無水フタル酸とヘキサヒドロ無水フタル酸の混合物を用いる。メチルヘキサヒドロ無水フタル酸には3−メチルヘキサヒドロ無水フタル酸、4−メチルヘキサヒドロ無水フタル酸、または3−メチルヘキサヒドロ無水フタル酸と4−メチルヘキサヒドロ無水フタル酸の混合物などがある。特に高耐熱を必要とする注形品には4−メチルヘキサヒドロ無水フタル酸を用いる。
本発明における成分(b) には、ゴム粒子を分散したメチルヘキサヒドロ無水フタル酸単独、またはメチルヘキサヒドロ無水フタル酸とヘキサヒドロ無水フタル酸の混合物を用いることができる。ゴム粒子は例えば、シリコーンゴム、シリコーンゲル、MBSゴム、アクリルゴムなどを用い、好ましくはアクリルゴムまたはMBSゴムまたはシリコーンゴムをコアとし、外皮にアクリルゴムまたは架橋化ゴムのシェルを有するコア−シェルゴムを用いる。
本発明における成分(c) は、アルキルアンモニウムクロライドを用いる。アルキルアンモニウムクロライドとしては、オクタデシルトリメチルアンモニウムクロライド、ドデシルトリメチルアンモニウムクロライド、、ヘキサデシルトリメチルアンモニウムクロライド、テトラデシルジメチルベンジルアンモニウムクロライド、オクタデシルジメチルベンジルアンモニウムクロライドなどを用いることができる。
本発明における成分(d) の材質は、特に限定されない。例えば、アルミナ、シリカ、ドロマイト、三水和アルミナ、窒化ホウ素、窒化アルミ、弗化アルミ、弗化カルシウムなどが適用可能であり、これらは単独でも、混合しても使用できる。
本発明によれば、無酸素加熱装置のような特殊の装置を使用することなく、加圧ゲル化法によるエポキシ樹脂注形品の着色を防止することができる。
以下、本発明の実施の形態を図1を参照して説明する。なお、この実施形態は、本発明をガス絶縁開閉装置やガス絶縁母線において高電圧導体を支持する絶縁スペーサに適用したものである。
図1において、1は固定側の金型で、固定側の金型固定板2に固定されている。3は前記固定側の金型1に対向する可動側の金型で、同じく可動側の金型固定板4に固定されている。可動側の金型3を取り付けた可動側の金型固定板4は、油圧シリンダー5により矢印Xに沿って固定側の金型固定板2側に押圧され、可動側の金型3を固定側の金型1に押し付け、図示しないクランプなどによって型締めされ、金型6が形成されている。
7は金型6の下部中央部に形成された樹脂注入口、8は前記樹脂注入口7から金型6内に樹脂9を注入する樹脂注入ノズル、10は前記樹脂注入ノズル8に図示しない樹脂貯蔵タンクから樹脂9を供給するための注入ホース、11は金型6内において樹脂9中に埋め込まれ、注型される埋め込み金物である。
このような金型を使用して、加圧ゲル化法によりエポキシ樹脂注形品を製造するには次のようにする。まず、金型6の温度を樹脂温度より数段高く成るように図示しない加熱装置により加熱しておく。次に、樹脂注入ノズル8を矢印Yに沿って上昇させ、樹脂注入ノズル8の先端を金型6の樹脂注入口7に接続する。樹脂注入ノズル8が樹脂注入口7に接続されると金型6内部に設けた図示しない注入弁が開き樹脂注入が可能な状態となる。
この状態で、前記(a) ないし(d) の成分を有するエポキシ樹脂組成物9が、樹脂貯蔵装置またはタンクから注入ホース10、樹脂注入ノズル8を経由して金型6内に圧入される。金型6内に注入された樹脂9は、樹脂注入口7上部の製品部へと順次注入されていく。
樹脂9の加熱硬化の過程において、樹脂の収縮分を補給するため補給用の樹脂を適度な注入圧力(一例として2〜4bar)で金型6内に加圧補給していく。本実施形態では、電気炉で加圧ゲル化法の硬化条件に準じて135℃、30分の型内硬化を行ない、最終的には、樹脂9に金型6から取り出すために必要な外力に耐えうるだけの強度が付与された段階で注入圧力を解放する。
このようにして、注形品が硬化した後は、離型後電気炉で150℃、24時間のポストキュアを行なった。これにより、前記エポキシ樹脂組成物の硬化時におけるガラス転移温度として140℃以上を確保した。すなわち、現在のガス絶縁開閉装置用絶縁スペーサの耐熱性としての最高スペックは連続使用耐熱温度が115℃である。絶縁スペーサの連続使用耐熱温度は正確にはクリープ特性によって評価されるが、エポキシ樹脂の硬化物において、連続使用耐熱温度115℃を満足するのは、ガラス転移温度140℃が目安となる。ガス絶縁開閉装置の小型化において、絶縁スペーサの連続使用耐熱温度が高いことは必要不可欠であり、今後更に耐熱温度向上の要求が強くなることが考えられる。本発明では、ガラス転移温度を140℃以上とすることでこのような要望を満足することが可能となる。更に、ガラス転移温度が高いほど高温でのポストキュアが必要であり、より着色しやすいという理由にもよる。
前記の実施形態に示した本発明のエポキシ樹脂組成物およびこれを使用して加圧ゲル化法により製造したエポキシ樹脂注形品について、その作用効果を確認するための実施例について、比較例と共に説明する。
(1)第1実施例
エポキシ樹脂としてエピコート828(ビスフェノールAタイプ、エポキシ当量190、ジャパンエポキシ製)、硬化剤としてHN5500E(3−メチルヘキサヒドロ無水フタル酸と4−メチルヘキサヒドロ無水フタル酸の混合物、日立化成製)、硬化促進剤としてカチオンM2−100(テトラデシルジメチルベンジルアンモニウムクロライド、日本油脂製)、充填剤として平均粒径12μmのアルミナを用いて特性評価モデルを作製した。これらの混合樹脂を120℃で予熱した型の中に注形し、0.5Torrで10分間真空脱泡する。電気炉で加圧ゲル化法の硬化条件に準じて135℃、30分の型内硬化を行ない、離型後電気炉で150℃、24時間のポストキュアを行なった。
(2)第1比較例
エポキシ樹脂としてエピコート828(ビスフェノールAタイプ、エポキシ当量190、ジャパンエポキシ製)、硬化剤としてHN2200(メチルテトラヒドロ無水フタル酸、日立化成製)、硬化促進剤としてカオライザーNo.20(ベンジルジメチルアミン、花王石鹸製)、充填剤として平均粒径12μmのアルミナを用いて特性評価モデルを作製した。これらの混合樹脂を120℃で予熱した型の中に注形し、0.5Torrで10分間真空脱泡する。電気炉で加圧ゲル化法の硬化条件に準じて135℃、30分の型内硬化を行ない、離型後電気炉で150℃、24時間のポストキュアを行なった。
(3)第2実施例
エポキシ樹脂としてエピコート828(ビスフェノールAタイプ、エポキシ当量190、ジャパンエポキシ製)およびアラルダイトCY179(脂環式エポキシ樹脂、ハンツマン製)の重量比85/15の混合物、硬化剤としてクインハードHH400(4−メチルヘキサヒドロ無水フタル酸、日本ゼオン製)、硬化促進剤としてカチオンAB−600(オクタデシルトリメチルアンモニウムクロライド、日本油脂製)、充填剤として平均粒径15μmのシリカを用いて特性評価モデルを作製した。これらの混合樹脂を120℃で予熱した型の中に注形し、0.5Torrで10分間真空脱泡する。電気炉で加圧ゲル化法の硬化条件に準じて135℃、30分の型内硬化を行ない、離型後電気炉で150℃、24時間のポストキュアを行なった。
(4)第2比較例
エポキシ樹脂としてエピコート828(ビスフェノールAタイプ、エポキシ当量190、ジャパンエポキシ製)およびアラルダイトCY179(脂環式エポキシ樹脂、、ハンツマン製)の重量比85/15の混合物、硬化剤としてクインハード200(メチルテトラヒドロ無水フタル酸、日本ゼオン製)、硬化促進剤としてDBU(1,8−ジアザ−ビシクロ−(5,4,0)ウンデセン、サンアボット製)、充填剤として平均粒径15μmのシリカを用いて特性評価モデルを作製した。これらの混合樹脂を120℃で予熱した型の中に注形し、0.5Torrで10分間真空脱泡する。電気炉で加圧ゲル化法の硬化条件に準じて135℃、30分の型内硬化を行ない、離型後電気炉で150℃、24時間のポストキュアを行なった。
(5)実施例の効果
分光測色計CM−1000(ミノルタ製)を用いて、L表色系(JIS−Z−8729)で、金型内硬化後およびポストキュア後の樹脂表面を測色した。更に、第2実施例の金型内硬化後サンプルを標準とした色差を測定した。また、樹脂の耐熱性を示す指標として、DSC−50(島津製作所製)を用いて中点法(JIS−K−7121)でガラス転移温度を測定した。実施例および比較例のサンプルについて、その試験結果を表1および2に示す。
Figure 2007284627
Figure 2007284627
第1実施例および第2実施例は、金型硬化後の目立った色の差がなく、ポストキュア後の最終的な色の差もほとんど判別がつかないのに対し、第1比較例および第2比較例はともに着色があり、特にポストキュア後黄色〜茶色の劣化色が目立った。第1比較例および第2比較例の外観は部分的な色の濃淡があり、製品価値が失われている。数値(L,a,bおよび色差)で判定した結果も、表1,2のようにこの結果を良く表現している。
更に、ポストキュア後のガラス転移温度も第1実施例および第2実施例が140℃以上となるのに対し、第1比較例および第2比較例はともに140℃以下であり、耐熱性においても本実施形態の優位性が示されている。
本発明によるエポキシ樹脂注形品の製造方法を示す断面図。
符号の説明
1…固定側の金型
2…固定側の金型固定板
3…可動側の金型
4…可動側の金型固定板
5…油圧シリンダー
6…金型
7…樹脂注入口
8…樹脂注入ノズル
9…エポキシ樹脂
10…注入ホース
11…埋め込み金物

Claims (6)

  1. (a) 1分子当り2個以上の1,2-エポキシ基を有するエポキシ樹脂、
    (b) メチルヘキサヒドロ無水フタル酸、
    (c) アルキルアンモニウムクロライド、
    (d) 充填剤として無機充填材
    を配合したことを特徴とする加圧ゲル化用エポキシ樹脂組成物。
  2. 前記(b) の成分が、メチルヘキサヒドロ無水フタル酸とヘキサヒドロ無水フタル酸の混合物であることを特徴とする請求項1に記載の加圧ゲル化用エポキシ樹脂組成物。
  3. 前記(b) の成分のメチルヘキサヒドロ無水フタル酸が、4−メチルヘキサヒドロ無水フタル酸であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の加圧ゲル化用エポキシ樹脂組成物。
  4. 前記(b) の成分が、メチルヘキサヒドロ無水フタル酸にゴム粒子を分散したことを特徴とする請求項1、請求項2または請求項3に記載の加圧ゲル化用エポキシ樹脂組成物。
  5. 前記請求項1ないし請求項4のいずれか1項に記載の加圧ゲル化用エポキシ樹脂組成物を金型内に注入し、硬化が完了するまで硬化時の収縮分に相当する樹脂組成物を加圧補給して硬化させたことを特徴とする加圧ゲル化法注形品。
  6. 前記エポキシ樹脂組成物の硬化時におけるガラス転移温度が140℃以上であることを特徴とする請求項5に記載の加圧ゲル化法注形品。
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