JP2007277067A - 導電性耐食部材及びその製造方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】本発明の導電性耐食部材は、金属イットリウム、炭素及び酸化イットリウムを含有してなる複合焼結体からなることを特徴とする。
【選択図】なし
Description
ところで、上記のハロゲン系腐食性ガス及びこれらのプラズマを用いる工程においては、エッチング電極等の様に耐食性に加えて導電性が要求される部材があるが、上記の酸化アルミニウム焼結体や酸化イットリウム焼結体は、耐食性こそ優れているものの、焼結体自体が絶縁性であるから、導電性が要求される部材には用いることができない。
そこで、耐食性と導電性を兼ね備えた部材として、酸化イットリウムに、金属イットリウム、炭素、窒化イットリウム、炭化イットリウム等の導電性物質を添加した酸化イットリウム系焼結体が提案されている(特許文献3参照)。
これらの複合焼結体では、前記金属イットリウムは粒界にて微細な網目状とされていることが好ましい。
前記混合粉末は、前記金属イットリウム粉末、前記酸化イットリウム粉末及び前記有機高分子を有機溶媒中にて混合・粉砕してなることが好ましい。
前記有機高分子は、不活性雰囲気中、500℃以下にて熱分解し炭化することが好ましい。
前記成形体を焼成する際の最高保持温度は、前記金属イットリウム粉末の融点以上の温度であることが好ましい。
その後、この成形体を焼成するので、酸化イットリウム粒子の周囲に金属イットリウム及び炭素を含む微細な網目状の粒界層が形成された複合焼結体を容易かつ安価に作製することができる。
なお、この形態は、発明の趣旨をより良く理解させるために具体的に説明するものであり、特に指定のない限り、本発明を限定するものではない。
本実施形態の導電性耐食部材は、金属イットリウム、炭素及び酸化イットリウムを含有してなる複合焼結体である。
ここで、炭素の添加量が0.2重量%未満では、焼成過程の低温領域で酸化イットリウム及び金属イットリウム共に焼結が進行し易くなり、金属イットリウムの融点(1520℃/常圧下)近傍で焼結が終了し、酸化イットリウム粒子の周囲に網目状の粒界層を形成することが難しくなるからであり、一方、炭素の添加量が1.0重量%を越えると、導電性は向上するものの、金属イットリウムと反応して耐食性に乏しい炭化イットリウムが粒界層中に生成し、耐食性が大きく低下するからである。
このような構造とすることで、酸化イットリウム粒子の周囲に、金属イットリウム及び炭素を含む微細な網目状の粒界層が形成され、この粒界層の厚みも極めて薄いものとなる。
これにより、粒界層は、ハロゲン系腐食性ガス及びこれらのプラズマに長時間曝されたとしても、消失して導電性が低下する虞が極めて小さく、この粒界層の消失に起因するパーティクルの発生も極めて小さい。
本実施形態の導電性耐食部材は、ハロゲン系腐食性ガス及びこれらのプラズマに対する優れた耐食性を有することはもちろんのこと、10Ω・cm〜102Ω・cm程度の導電性を兼ね備えている。
本実施形態の導電性耐食部材の製造方法は、金属イットリウム粉末と、酸化イットリウム粉末と、有機高分子とを含む混合粉末を成形して成形体とし、この成形体を熱処理して該成形体に含まれる有機高分子を炭化することにより、微細な炭化物とし、次いで、この成形体を焼成する方法である。
(1)混合粉末の作製
金属イットリウム粉末と、酸化イットリウム粉末と、有機高分子とを、それぞれ所定量、秤量し、その後、混合・粉砕し、混合粉末とする。
酸化イットリウム−金属イットリウムの二成分系では、金属イットリウムを主成分とする網目状の粒界層の厚みを薄くするためには、同一組成であっても金属イットリウムの粒径を小さくし、かつ酸化イットリウムの周囲の粒界層に均一に分散させることが必要である。この二成分系で金属イットリウム粉末が粒界層中に均一に分散するには、金属イットリウム粉末の平均粒径が目的とする粒界層の厚みと同等もしくはそれ以下であることが必要であり、これらを勘案すると、金属イットリウム粉末の平均粒径は125μm以下、より好ましくは50μm以下となる。
金属イットリウム粉末は、単独で微細化すると酸化及び発火の危険性があるので、酸化イットリウムと同時に有機溶媒を用いて混合・粉砕することが好ましい。
上記の混合粉末をステンレススチール、鋼等の金属からなる金型に充填し、成形機を用いて上下方向に加圧(一軸加圧)し、円板状、矩形板状、直方体状等の成形体とする。
上記の成形体を、不活性雰囲気下、500℃以下の最高保持温度(熱処理温度)にて所定時間(熱処理時間)保持し、この成形体に含まれる有機高分子を炭化し、微細な炭化物とする。
これにより、酸化イットリウム粒子の周囲に、有機高分子が炭化した微細な炭化物と金属イットリウム粒子とを含む網目状の微粒子層が形成される。
熱処理を施すことにより酸化イットリウム粒子の周囲に微細な炭化物と金属イットリウム粒子とを含む網目状の微粒子層が形成された成形体を、不活性雰囲気下、所定の最高保持温度(焼成温度)にて所定時間(焼成時間)保持することにより焼成し、金属イットリウム、炭素及び酸化イットリウムを含有してなる複合焼結体とする。
上記の熱処理、焼成を1つの工程で行えば、製造工程の短縮及び製造コストの削減を図ることができる。
加圧焼成は、ホットプレス法(HP法)、熱間静水圧加圧法(HIP(Hot Isostatic Pressing)法)等により行うことができる。
焼成温度は、緻密化が達成される温度であれば特に制限はないが、例えば、金属イットリウム(融点:1520℃/常圧下)の融点以上の温度とすれば、緻密な焼結体が得られるので好ましい。
金属イットリウムの融点は常圧下で1520℃であるが、焼成過程における圧力変化(加圧等)により変動する。加圧下では、概ね1520℃〜1800℃の温度範囲内である。
また、金属イットリウムの溶融体はマトリックスを構成する酸化イットリウム結晶粒子の粒界に侵入し偏析して、網目状の導電経路を形成するので、導電性成分である金属イットリウムの添加量が少量であっても、焼結体の抵抗率を顕著に低下させることができ、しかも、酸化イットリウムのハロゲン系腐食性ガス及びこれらのプラズマに対する耐食性を低下させることがない。
また、焼成時間は、緻密化が達成される時間であれば特に制限はないが、成形体内部の温度分布が均一化されるに十分な時間が好ましい。
そこで、低温で酸化イットリウムが緻密化するのを抑制するため、助剤として有機高分子が炭化した微細な炭化物を用いる。
この炭化物は、金属イットリウムの融点に到達するまで酸化イットリウムの緻密化を遅らせ、液相である金属イットリウムを粒界に浸透させることが可能となり、微細な網目状構造を形成することができる。
その後、この成形体を焼成するので、酸化イットリウム粒子の周囲に金属イットリウム及び炭素を含む微細な網目状の粒界層が形成された複合焼結体を容易かつ安価に作製することができる。
また、製造装置についても特殊な装置は必要なく、従来の粉末冶金用や焼成用の各種装置をそのまま使用することができる。
(実施例1)
酸化イットリウム粉末(日本イットリウム(株)社製、平均粒径:1.5μm)及び金属イットリウム粉末(日本イットリウム(株)社製、500μm以下)を、金属イットリウム粉末が4体積%、残部が酸化イットリウム粉末の組成比となるようにエタノールに加え、さらに分散剤・バインダとして有機高分子を加え、回転式ボールミルを用いて金属イットリウム粉末の平均粒径が50μm以下になるまで混合・粉砕を行った。
得られた混合粉末を一軸加圧成形した後、アルゴン(Ar)雰囲気下、焼成温度1600℃にて1時間、一軸加圧焼結し、直径50mm、厚み7.5mmの円板状の複合焼結体を作製した。
組成比を、金属イットリウム粉末が8体積%、残部が酸化イットリウム粉末と変更した他は、実施例1に準じて実施例2の複合焼結体を作製した。
組成比を、金属イットリウム粉末が10体積%、残部が酸化イットリウム粉末と変更した他は、実施例1に準じて実施例3の複合焼結体を作製した。
金属イットリウム粉末の平均粒径を250μm以下とした他は、実施例1に準じて比較例1の複合焼結体を作製した。
組成比を、金属イットリウム粉末が3体積%、残部が酸化イットリウム粉末と変更した他は、実施例1に準じて比較例2の複合焼結体を作製した。
有機高分子の添加量を減じた他は、実施例1に準じて複合焼結体中の炭素量を0.11重量%とした比較例3の複合焼結体を作製した。
実施例1〜3及び比較例1〜3の焼結体の体積固有抵抗値(Ω・cm)、焼結体の相対密度及び耐食性を測定した。
また、マトリックス結晶粒界の組成分析を実施し、粒界における金属イットリウムの析出状態を調べた。
以上の評価結果を表1に示してある。
(1)体積固有抵抗値
日本工業規格:JIS R 1650−2「ファインセラミックス熱電材料の測定方法−第2部:抵抗率」に規定された方法に準じて測定した。
(2)相対密度
複合焼結体の真密度(d0)をアルキメデス法により測定し、この真密度(d0)の理論密度(dr)に対する比(d0/dr)を百分率で表し、相対密度(%)とした。
複合焼結体を炭化ハロゲン系ガス・酸素・アルゴンの混合ガス中でプラズマに8時間暴露し、暴露面を走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて観察し、表面荒れを評価した。
評価基準は次のとおりである。
○:表面荒れが認められない
△:表面荒れがやや認められる
×:表面荒れが認められる
複合焼結体の一面を鏡面研磨し、この鏡面研磨面を電子線マイクロアナライザー(EPMA)を用いて組成分析し、酸化イットリウム結晶粒子の粒界における金属イットリウムの析出状態を評価した。
評価基準は次のとおりである。
A:金属イットリウムが微細に分散している。
B:金属イットリウムが一部で偏析している。
一方、比較例1の複合焼結体は、実施例1の複合焼結体と比べて相対密度が高く、緻密な焼結体であるものの、耐食性が劣り、また、体積固有抵抗値が10桁以上上昇し、導電性を示さなかった。
また、比較例2の複合焼結体は、実施例1の複合焼結体と比べて耐食性は同等であったが、体積固有抵抗値が10桁以上上昇し、導電性を示さなかった。
また、比較例3の複合焼結体は、実施例1の複合焼結体と比べて相対密度が高く、緻密な焼結体であるものの、耐食性がやや劣り、また、体積固有抵抗値が10桁以上上昇し、導電性を示さなかった。
Claims (9)
- 金属イットリウム、炭素及び酸化イットリウムを含有してなる複合焼結体からなることを特徴とする導電性耐食部材。
- 前記複合焼結体は、前記金属イットリウムを4体積%以上かつ10体積%以下、残部を前記酸化イットリウム及び不可避不純物とし、前記金属イットリウム及び前記酸化イットリウムの合計量に対して前記炭素を0.2重量%以上かつ1.0重量%以下添加してなることを特徴とする請求項1記載の導電性耐食部材。
- 前記金属イットリウムは粒界にて微細な網目状とされていることを特徴とする請求項2記載の導電性耐食部材。
- 金属イットリウム粉末と酸化イットリウム粉末と有機高分子とを含む混合粉末を成形して成形体とし、この成形体を熱処理して前記有機高分子を微細な炭化物とし、次いで、この成形体を焼成することを特徴とする導電性耐食部材の製造方法。
- 前記混合粉末は、前記金属イットリウム粉末を4体積%以上かつ10体積%以下、残部を前記酸化イットリウム粉末及び不可避不純物とし、前記金属イットリウム粉末及び前記酸化イットリウム粉末の合計量に対して前記有機高分子を、それに含まれる炭素に換算して0.2重量%以上かつ1.0重量%以下添加してなることを特徴とする請求項4記載の導電性耐食部材の製造方法。
- 前記金属イットリウム粉末の平均粒径は125μm以下であることを特徴とする請求項4または5記載の導電性耐食部材の製造方法。
- 前記混合粉末は、前記金属イットリウム粉末、前記酸化イットリウム粉末及び前記有機高分子を有機溶媒中にて混合・粉砕してなることを特徴とする請求項4、5または6記載の導電性耐食部材の製造方法。
- 前記有機高分子は、不活性雰囲気中、500℃以下にて熱分解し炭化することを特徴とする請求項4ないし7のいずれか1項記載の導電性耐食部材の製造方法。
- 前記成形体を焼成する際の最高保持温度は、前記金属イットリウム粉末の融点以上の温度であることを特徴とする請求項4ないし8のいずれか1項記載の導電性耐食部材の製造方法。
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