JP2005206402A - 焼結体及びその製造方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】焼結体は、金属イットリウム、炭素、窒化イットリウム、炭化イットリウムの群から選択された少なくとも1種と、酸化イットリウムとを含有してなる焼結体であって、前記金属イットリウムを0.5体積%以上かつ10体積%以下、前記酸化イットリウムを60体積%以上かつ99.5体積%以下、を含有する。
【選択図】 なし
Description
また、上記のハロゲン系腐食性ガス及びこれらのプラズマを用いる工程においては、例えばエッチング電極等の様な耐食性及び導電性が要求される部材があるが、現状では導電性と耐食性の双方を備えた材料に適切なものがないため、このエッチング電極等を構成するための材料として、耐食性が充分でないシリコンあるいはシリコン系化合物が用いられている(例えば、特許文献3、4参照)。
また、従来のシリコンあるいはシリコン系化合物は、ハロゲン系腐食性ガス及びこれらのプラズマに対して耐食性が不十分なものであるから、耐食性部材として用いた場合、消耗が激しく、これらの消耗に伴う部品交換が半導体製造のスループット低下に大きな影響を及ぼしているという問題点があった。
このように、ハロゲン系腐食性ガス及びこれらのプラズマに対する耐食性と導電性を兼ね備えた材料の出現が強く求められているが、このような材料はいまだに提案されていないのが現状である。
また、前記金属イットリウムを3体積%以上かつ5体積%以下とし、残部を前記酸化イットリウム及び不可避不純物とすれば、より好ましい。
これらの焼結体においては、前記金属イットリウムは粒界に偏析していることが好ましい。
前記混合粉を、前記金属イットリウムを3体積%以上かつ5体積%以下とし、残部を前記酸化イットリウム及び不可避不純物からなる混合粉とすれば、より好ましい。
また、この金属イットリウムは、粒界に偏析することで網目状の導電経路を形成するので、金属イットリウムの添加量が少量であっても焼結体の抵抗率を著しく低下させることができ、しかも、酸化イットリウムのハロゲン系腐食性ガス及びこのプラズマに対する耐食性を低下させることがない。
なお、この形態は、発明の趣旨をより良く理解させるために具体的に説明するものであり、特に指定のない限り、本発明を限定するものではない。
本発明の焼結体は、金属イットリウム、炭素、窒化イットリウム、炭化イットリウムの群から選択された少なくとも1種と、酸化イットリウムとを含有し、この酸化イットリウムがマトリックスを構成するとともに、導電性成分である金属イットリウム、炭素、窒化イットリウム、炭化イットリウムの群から選択された少なくとも1種が粒界を構成している。
この焼結体には、酸化イットリウムがマトリックスを構成する通常の焼結体構造の他、例えば、酸化イットリウム及び酸化ランタン等、複数種の金属酸化物がマトリックスを構成する複合焼結体構造も含まれる。
上記の炭素としては、グラファイトが好適である。
a.金属イットリウムの含有量が0.5体積%以上かつ10体積%以下
b.酸化イットリウムの含有量が60体積%以上かつ99.5体積%以下
(2)炭素、窒化イットリウム、炭化イットリウムのいずれかを含有する場合
a.炭素、窒化イットリウム、炭化イットリウムのいずれかの含有量が5体積%
以上かつ30体積%以下
b.酸化イットリウムの含有量が60体積%以上かつ95体積%以下
(3)金属イットリウム、炭素、窒化イットリウム、炭化イットリウムのうち2種以上
を含有する場合
導電性成分の含有量が増加するに従い導電性は向上するものの、ハロゲン系
腐食性ガス及びこれらのプラズマに対する耐食性が低下するので、所望の導電
性及び耐食性が得られるよう適宜調整する。
これらの成分の含有量は、ハロゲン系腐食性ガス及びこれらのプラズマに対する耐食性を損なわない範囲内であればよく、通常、30体積%以下が好ましく、より好ましくは25体積%以下である。
ここで、これらの成分の含有量が30体積%を超えると、ハロゲン系腐食性ガス及びこれらのプラズマに対する耐食性が低下する他、マトリックスの特性低下、例えば機械的強度の低下が著しくなるので好ましくない。
この焼結体は、金属イットリウムを0.5体積%以上かつ10体積%以下、酸化イットリウムを60体積%以上かつ99.5体積%以下、それぞれ含有し、この酸化イットリウムがマトリックスを構成するとともに、導電性成分である金属イットリウムが粒界を構成している。
これらの成分の含有量は、ハロゲン系腐食性ガス及びこれらのプラズマに対する耐食性を損なわない範囲内であればよく、通常、30体積%以下が好ましく、より好ましくは25体積%以下である。
これらの成分の含有量が30体積%を超えると、ハロゲン系腐食性ガス及びこれらのプラズマに対する耐食性が低下する他、マトリックスの特性低下、例えば機械的強度の低下が著しくなるので好ましくない。
この様な組成とすることにより、ハロゲン系腐食性ガス及びこれらのプラズマに対する優れた耐食性と、1×10−2Ω・cm程度の良好な導電性を兼ね備えた焼結体となる。
この金属イットリウムが焼結体中に存在する網目状の粒界に偏析することにより、この金属イットリウムが焼結体中で連続した導電経路を形成することになり、導電性成分である金属イットリウムを少量添加したにもかかわらず、ハロゲン系腐食性ガス及びこれらのプラズマに対する優れた耐食性を更に損なうことなく、優れた導電性を発現することとなる。
本発明の焼結体は、下記のいずれかの製造方法により作製することができる。
(1)常圧焼結法
金属イットリウム粉末、炭素粉末、窒化イットリウム粉末、炭化イットリウム粉末の群から選択された少なくとも1種と、酸化イットリウム粉末とを含有する混合粉を成形して成形体とし、この成形体を焼成する方法。
(2)加圧焼結法
金属イットリウム粉末、炭素粉末、窒化イットリウム粉末、炭化イットリウム粉末の群から選択された少なくとも1種と、酸化イットリウム粉末とを含有する混合粉を型に充填し、この混合粉を加熱及び加圧する方法。
(1)常圧焼結法
a.混合
金属イットリウム粉末、炭素粉末、窒化イットリウム粉末、炭化イットリウム粉末の群から選択された少なくとも1種と、酸化イットリウム粉末とを、それぞれ所定量、秤量し、その後、混合し、混合粉とする。
上記の混合粉中における導電性成分の含有量や、共存が許容されるその他の成分及びその含有量は、上記の焼結体において記載したとおりである。
これらの原料粉末の混合方法としては、公知の混合法を用いることができ、例えば、ボールミル、振動ミル等を用いた湿式混合法、あるいは自動乳鉢等を用いた乾式混合法を用いることができる。
上記の混合粉を鋼等の金属からなる金型に充填し、成形機を用いて上下方向に加圧(一軸加圧)し、円板状、矩形板状、直方体状等の成形体とする。
c.焼成
上記の成形体を、所定の雰囲気下、所定の最高保持温度(焼成温度)にて所定時間(焼成時間)保持することにより焼成し、焼結体とする。
焼成温度は、緻密化が達成される温度であれば特に制限はないが、例えば、混合粉を、金属イットリウムと酸化イットリウムとの混合粉とした場合、焼成温度を金属イットリウム(融点:1520℃/常圧下)の溶融温度以上の温度とすれば、緻密な焼結体が得られるので好ましい。
焼成時間は、緻密化が達成される時間であれば特に制限はないが、成形体内部の温度分布が均一化されるに十分な時間が好ましい。
a.混合
混合粉を作製する方法は、上記の常圧焼結法と全く同様である。
b.加熱・加圧
加熱・加圧は、ホットプレス法(HP法)、熱間静水圧加圧法(HIP(Hot Isostatic Pressing)法)等により行うことができる。
ここでは、ホットプレス法(HP法)について説明する。
上記の混合粉を黒鉛、アルミナ、炭化ケイ素等からなる型に充填し、この混合粉を一軸加圧しながら同時に加熱し、所定の最高保持温度(焼成温度)、所定の最高保持圧力(焼成圧力)にて所定時間(焼成時間)保持することにより焼成し、焼結体とする。
さらに、常圧焼結法に比べて、焼成温度を下げることができ、理論密度に近い焼結体を短時間で作製することができる。また、窒化物や炭化物等の難焼結性物質の焼結体を得ることができる。
ここでは、金属イットリウムを0.5体積%以上かつ10体積%以下、酸化イットリウムを60体積%以上かつ99.5体積%以下、それぞれ含有した混合粉を作製し、この混合粉を成形して所定形状の成形体とし、この成形体を金属イットリウム(融点:1520℃/常圧下)の溶融温度以上の温度にて焼成し、焼結体とする。
また、金属イットリウムの溶融体はマトリックスを構成する酸化イットリウム結晶粒子の粒界に侵入し偏析して、網目状の導電経路を形成するので、導電性成分である金属イットリウムの添加量が少量であっても、焼結体の抵抗率を顕著に低下させることができ、しかも、酸化イットリウムのハロゲン系腐食性ガス及びこれらのプラズマに対する耐食性を低下させることがない。
その理由は、焼結温度が1500℃未満であると、金属イットリウムが焼成過程で溶融せず、したがって、マトリックスを構成する酸化イットリウムの結晶粒子の粒界に偏析して導電経路を形成することが困難となり導電性が発現しないからであり、一方、焼成温度が1800℃超えると、金属イットリウムが蒸発し揮散してしまい、マトリックスを構成する酸化イットリウムの結晶粒子の粒界に偏析することができなくなるからである。また、焼結エネルギーコストも嵩むので好ましくない。
この金属イットリウムの溶融体はマトリックスを構成する酸化イットリウム結晶粒子の粒界に侵入し偏析して、網目状の導電経路を形成するので、導電性成分の添加量が比較的少量であっても焼結体の抵抗率を顕著に低下させることができ、マトリックスを構成する酸化イットリウムのハロゲン系腐食性ガス及びこれらのプラズマに対する優れた耐食性を損なうこともない。
(実施例1)
市販の酸化イットリウム粉末(日本イットリウム(株)社製、平均粒径:1.5μm)と、市販の金属イットリウム粉末(日本イットリウム(株)社製、20メッシュ通過品)とを、表1に示す組成比となるように秤量し、遊星型ボールミルを用いてエタノール溶媒中にて湿式混合を行った。
得られた混合粉を一軸加圧成形した後、アルゴン(Ar)雰囲気下、焼成温度1550℃にて2時間、常圧焼結し、直径60mm、厚み8mmの円板状の金属イットリウム含有酸化イットリウム焼結体を得た。
組成比を表1に示すように変更した他は、実施例1に準じて実施例2〜7の金属イットリウム含有酸化イットリウム焼結体を得た。
金属イットリウム粉末を市販のグラファイト粉末(東海カーボン(株)社製、平均一次粒径:30nm)に変更した他は、実施例1に準じて実施例8のグラファイト含有酸化イットリウム焼結体を得た。
金属イットリウム粉末を窒化イットリウム粉末(平均粒径:0.2μm)に変更した他は、実施例1に準じて実施例9の窒化イットリウム含有酸化イットリウム焼結体を得た。
金属イットリウム粉末を炭化イットリウム粉末(平均粒径:0.2μm)に変更した他は、実施例1に準じて実施例10の炭化イットリウム含有酸化イットリウム焼結体を得た。
組成比を表1に示すように変更した他は、実施例1に準じて比較例1〜3の金属イットリウム含有酸化イットリウム焼結体を得た。
実施例1〜10及び比較例1〜3の焼結体の体積固有抵抗値(Ω・cm)及び焼結体の相対密度を測定し、耐食性を調べた。
また、実施例1〜7及び比較例2、3については、マトリックス結晶粒界の組成分析を実施し、粒界における金属イットリウムの析出状態を調べた。
以上の評価結果を表1に示してある。
(1)体積固有抵抗値
日本工業規格:JIS C2141に規定された方法に準じて測定した。
(2)相対密度
焼結体の真密度(d0)をアルキメデス法により測定し、この真密度(d0)の理論密度(dr)に対する比(d0/dr)を百分率で表し、相対密度(%)とした。
CF4(20vol%)及びO2(80vol%)からなる混合ガスを減圧下(1.0torr)のチャンバー内に導入して発生させたプラズマに10時間暴露し、暴露面を走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて観察し、表面粗れを評価した。
評価基準は次のとおりである。
○:表面粗れが認められない
△:表面粗れがやや認められる
×:表面粗れが認められる
焼結体の一面を鏡面研磨し、この鏡面研磨面を電子線マイクロアナライザー(EPMA)を用いて組成分析し、酸化イットリウム結晶粒子の粒界における金属イットリウムの析出状態を評価した。
評価基準は次のとおりである。
A:少量の金属イットリウムが偏析し、断続的に析出している。
B:多量の金属イットリウムが偏析し、しかも連続的に析出している。
実施例1〜10の焼結体は、比較例1、2の焼結体と比較して耐食性はほぼ同様であるものの、導電性に優れていることが分かった。
また、実施例1〜10の焼結体は、比較例3の焼結体と比較して耐食性に優れていることが分かった。
このSEM像によれば、酸化イットリウム結晶粒子の粒界に金属イットリウムが偏析し、この偏析した金属イットリウムにより網目状の連続した導電経路が形成されていることが分かった。
Claims (10)
- 金属イットリウム、炭素、窒化イットリウム、炭化イットリウムの群から選択された少なくとも1種と、酸化イットリウムとを含有してなることを特徴とする焼結体。
- 前記金属イットリウムを0.5体積%以上かつ10体積%以下、前記酸化イットリウムを60体積%以上かつ99.5体積%以下、それぞれ含有してなることを特徴とする請求項1記載の焼結体。
- 前記金属イットリウムを3体積%以上かつ5体積%以下とし、残部を前記酸化イットリウム及び不可避不純物としたことを特徴とする請求項2記載の焼結体。
- 前記炭素、窒化イットリウム、炭化イットリウムの群から選択された少なくとも1種を5体積%以上かつ30体積%以下、前記酸化イットリウムを60体積%以上かつ95体積%以下、それぞれ含有してなることを特徴とする請求項1記載の焼結体。
- 前記金属イットリウムは粒界に偏析していることを特徴とする請求項1ないし4のいずれか1項記載の焼結体。
- 金属イットリウム粉末、炭素粉末、窒化イットリウム粉末、炭化イットリウム粉末の群から選択された少なくとも1種と、酸化イットリウム粉末とを含有する混合粉を成形して成形体とし、この成形体を焼成することを特徴とする焼結体の製造方法。
- 金属イットリウム粉末、炭素粉末、窒化イットリウム粉末、炭化イットリウム粉末の群から選択された少なくとも1種と、酸化イットリウム粉末とを含有する混合粉を型に充填し、この混合粉を加熱及び加圧することを特徴とする焼結体の製造方法。
- 前記混合粉を、前記金属イットリウムを0.5体積%以上かつ10体積%以下、前記酸化イットリウムを60体積%以上かつ99.5体積%以下、それぞれ含有した混合粉とし、
前記焼成または前記加熱の際の最高保持温度を、前記金属イットリウムの溶融温度以上の温度とすることを特徴とする請求項6または7記載の焼結体の製造方法。 - 前記混合粉を、前記金属イットリウムを3体積%以上かつ5体積%以下含有し、残部を前記酸化イットリウム及び不可避不純物からなる混合粉としたことを特徴とする請求項8記載の焼結体の製造方法。
- 前記混合粉を、前記炭素、窒化イットリウム、炭化イットリウムの群から選択された少なくとも1種を5体積%以上かつ30体積%以下、前記酸化イットリウムを60体積%以上かつ95体積%以下、それぞれ含有した混合粉とすることを特徴とする請求項6または7記載の焼結体の製造方法。
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