JP2007275054A - 胃癌腫のリンパ節転移の検出 - Google Patents

胃癌腫のリンパ節転移の検出 Download PDF

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Abstract

【課題】胃癌のマーカーの大半は、腫瘍組織および腫瘍細胞系のすべてにおいて一貫して発現されるわけでなく、組織学的検査で確認された胃癌からの転移を伴うリンパ節において、マーカーが検出されない場合がある。胃癌のリンパ節転移を遺伝子診断するために、十分な感度および精度を持つ、検査法と組成物を提供する。
【解決手段】胃癌腫からのリンパ節転移を診断する方法であって、a)患者から生体サンプルを入手する段階と、b)前記サンプル中のマーカーレベルを測定する段階とを含み、所定のカットオフレベルを上回るレベルが、胃癌腫からのリンパ節転移を示す、方法および検査キット。
【選択図】図1

Description

開示の内容
〔発明の背景〕
世界中で毎年ほぼ876,000例の胃癌が発生している(シブヤ、マザーズ他(Shibuya, Mathers et al.) 2002)。米国では、2005年の新たな胃癌の推定発症例および死亡例は、それぞれ、21,860例と11,550例である(ジェマル、マリー他(Jemal, Murray et al. )2005)。胃癌腫(gastric carcinoma)は、胃癌の中で最も多いタイプ(90%〜95%)であり、発現率の順に、リンパ腫、カルチノイドおよび間葉紡錘細胞腫瘍(mesenchymal spindle cell tumors)がこれに続く(クマール、コトラン他(Kumar, Cotran et al.) 2003)。
完全局所領域制御(complete local regional control)が、胃癌から助かるための主要な治療法であり、これは、完全またはほぼ全体的な胃切除術、センチネルリンパ節郭清術(sentinel lymph node dissection)、広範囲リンパ節郭清術、脾摘除術および膵摘除術など、転移により罹患した隣接組織の切除を含む(「ハートグリンク・アンド・ヴァン・ド・ヴェルデ2005(Hartgrink and van de Velde 2005)」;キタガワ、フジイ他(Kitagawa, Fujii et al.) 2005)。治癒的手術後に再発をきたした全患者のうち、患者の87.5%までは、局所再発または残存した限局リンパ節転移に起因している(サンガン、ボネンカンプ他(Songun, Bonenkamp et al.) 1996)。
胃-食道接合部(gastro-esophageal junction)(GEJ)癌腫患者148名に関する試験では、局所リンパ節の微小転移の存在が、予後不良の主要指標であると結論付けられた(へーレン、ケルダー他(Heeren, Kelder et al.) 2005)。現在普及している胃癌からのリンパ節転移の病期分類/診断は、触診および術中の凍結切片検査によって達成される。リンパ節の凍結切片検査は、74%の感度を示すことができる(キタガワ、フジイ他(Kitagawa, Fujii et al.) 2005)。
適切な遺伝子マーカーによって、RT-PCRまたは定量的PCRなどの遺伝子発現分析および検出技術は、胃癌の診断または予後の代替法を提供することができると考えられる。これらの方法は、転移検出検査に感度および精度の改良を提供する可能性を有する。これまでに報告された遺伝子マーカーは、CK19(マツダ、キタガワ他(Matsuda, Kitagawa et al.) 2004)、癌胎児性抗原(CEA)、サイトケラチン-20(CK-20)、および、MAGE-3(オカダ、フジワラ他(Okada, Fujiwara et al.) 2001), CK18、MUC1、hTRT (アジサカおよびミワ(Ajisaka and Miwa) 2003)を含む。不運なことに、発表されたデータが示すように、当該マーカーの大半は、被験腫瘍組織および腫瘍細胞系のすべてにおいて一貫して発現されるわけでない。組織学的検査で確認された胃癌からの転移を伴うリンパ節の15%(CEA)〜70%以上(MAGE-3)において、RT-PCRによってマーカーが検出されない場合がある(オカダ、フジワラ他(Okada, Fujiwara et al.) 2001)。膵臓、結腸、胃および肺の癌腫からの血中の播種性癌細胞に対するRT-PCR検査に、CK20がマーカーとして使用された(ショソフスキー、ルチャンスキー他(Chausovsky, Luchansky et al.) 1999;チェン、チェン他(Chen, Chen et al.) 2004)。
ここで、胃癌腫からの転移を伴うリンパ節において容易に検出可能なレベルで一貫して発現され、正常なリンパ節での背景発現(background expression)と鑑別されることができるマーカーが識別される。これらのマーカーは、胃癌腫、または、食道、膵臓および腸の癌腫などの類似細胞由来の癌腫からの播種性癌腫細胞の検出に有用である。
〔発明の概要〕
本発明のある態様では、胃癌腫からのリンパ節転移の検出のために、ある18個の遺伝子マーカーの組が識別される。これらのマーカー遺伝子は、正常な胃組織中に高レベルで発現され、当該発現は、様々な分化状態の胃癌腫中に十分に維持されるが、これらの遺伝子の背景発現レベルは、正常リンパ節では比較的低い。胃癌腫からの転移を伴うリンパ節では、これらの遺伝子マーカーの発現レベルは、正常なリンパ節の発現レベルよりも明らかに高い。
本発明の別の態様では、胃癌腫からのリンパ節転移の診断法は、患者からの生体サンプルの入手、および、一群のマーカーから選択された遺伝子の発現レベルの測定を含み、この場合、所定のカットオフレベルを上回る当該遺伝子発現レベルが、胃癌腫からの転移を表す。好ましくは、前記生体サンプルは、リンパ節サンプルである。
本発明の別の態様では、マーカーは、胃癌腫からのリンパ節転移を検出するアッセイにおいて、個々に、あるいは、組み合わせて使用されることができ、これは、臨床での意思決定に役立てるために使用することができる。
本発明の別の態様では、膵臓、食道または腸の癌腫など、胃癌腫と類似の発生源を有する癌腫の転移源を識別するアッセイにおいて、遺伝子マーカーが、個々に、または組み合わせて使用されることができる。
本発明の別の態様では、マーカーは、胃癌腫、または膵臓、食道もしくは腸の癌など、類似の組織起源の癌腫からの血中の播種性癌細胞の収集、検出、識別ために、個々に、または組み合わせて使用されることができる。
本発明の別の態様では、マーカーは、胃癌腫、または、膵臓、食道もしくは腸の癌などの類似の組織起源の癌腫からの転移の検出のための、免疫細胞化学検査で、個々に、または、組み合わせて使用される。
本発明のさらに別の態様では、マーカーは、術中にアッセイされることができる。術中アッセイは、胃から流出するリンパ節からのRNAの調製、1種類以上のマーカーに特有の定量的RT-PCR法の実施、および、マーカーの存在が所定のカットオフ値を超えるかどうかの判断の各段階を含む方法によって実施されることができる。当該カットオフ値は、絶対値、または、対照遺伝子の発現量に対応する数値であることができる。
本発明は、本明細書で提供される方法を実施するためのマイクロアレーまたは遺伝子チップを包含する。
〔発明の詳細な説明〕
本明細書で説明され、特許請求されている本発明の方法、組成物、用品およびキットは、1個以上のマーカーを含む。「マーカー」は、本明細書全体で使用されており、次のものを指す。
即ち、
a) 遺伝子および遺伝子発現産物で、mRNAおよび対応するcDNA、ペプチド、タンパク、前記のものそれぞれの断片および補体など。
b) a)との物理的または化学的相互作用を介して、遺伝子発現、または、遺伝子発現産物の存在を表すプローブ、抗体、リガンド、ハプテンおよびラベルなどの組成物であって、前記遺伝子、遺伝子発現産物または組成物が、
i)表2に示される遺伝子のいずれか
ii)遺伝子の組合せであって、そのそれぞれが、表2に示されている、遺伝子の組合せ
iii)表2に示されている遺伝子全部の組合せ
に一致する、プローブ、抗体、リガンド、ハプテンおよびラベルなどの組成物。
遺伝子は、当該遺伝子が配列ID番号(SEQ ID NO)によって指定された配列を含有する場合、当該配列に相当する。遺伝子の分節または断片は、当該遺伝子の配列であると識別するのに十分な参照配列またはその補体の一部を、この分節または断片が含有する場合に、当該遺伝子配列に相当する。遺伝子発現産物は、当該産物のRNA、mRNAまたはcDNAが、前記配列を有する組成物(例、プローブ)にハイブリダイズする場合、即ち、ペプチドまたはタンパクの場合に、前記配列に相当する。当該遺伝子発現産物は、前記のようなmRNAによってコード化される。遺伝子発現産物の分節または断片は、当該分節または断片が、参照遺伝子発現産物の一部またはその補体を、前記遺伝子または遺伝子発現産物の配列であると識別するのに十分に含有する場合、前記遺伝子または遺伝子発現産物の配列に相当する。
iiおよびiiiのマーカーが好ましい。ivおよびvのマーカーが最も好ましい。
サンプル調製
結節または他の組織では、組織中の転移および微小転移の分布は均一ではない。そのため、転移を見逃さないように、十分に大きなサンプルが入手される必要がある。本方法におけるサンプリングの問題に対するある手法は、大型組織サンプルを均質化することであり、その後、ホモジェネートの適当な部分が、分子検査用RNAを調製するために使用される。
好ましくは、本発明の方法で使用されるサンプルは、胃から流出するリンパ節からのリンパ節サンプルである。RT-PCRアッセイ用に当該サンプルを調製する有用な手順は、次のとおりである。即ち、均質化用のオムニホモジェナイザー(Omni homogenizer)および使い捨てプローブが使用された後、RNイージー(キアゲン)(RNeasy(Qiagen))キット試薬でRNAが精製される。
均質化
a)予め記録されていない場合は、サンプル重量をミリグラムで測定する。新しいパラフィン紙片を秤に載せ、風袋を計り、サンプル重量を計る。好ましくは、結節サンプルは、30 mgを超える。
b)新鮮なメスを使って、同一の結節からの全組織を直径約4 mmの小片に細断する。処理中、当該組織が汚染されないように注意する。
c)均質化(RLT)緩衝液をポリプロピレン均質化チューブに加える。好ましくは、組織100 mg当り均質化緩衝液2 mLを使用する。
d)清潔な鉗子を使って、前記組織を前記均質化緩衝液に移す。
e)新しい均質化プローブを手動ホモジェナイザー上に置く。
f)各結節を完全に均質化する。
g)標準キアゲン(Qiagen)プロトコルのRNA精製手順に従ってホモジェネートを処理する。RNAは、使用時まで、−65℃以下で保存される。
h)前記均質化プローブを処分する。
i)残りのホモジェネートを、後から使用できるように、−65℃以下で保存する。
診断アッセイ
本発明のマーカーは、胃癌腫がリンパ節に転移したか否か、どれが胃癌腫の臨床病期分類および患者の予後を示しているかなどの重要な臨床情報の提供に有用である。
総じて、この情報は、本明細書では、「診断情報(Diagnostic Information)」と呼ばれる。さらに、当該診断情報は、治療法提供の一要素としてのその情報の使用を含む。例えば、当該診断情報を有する医師は、癌がリンパ節に転移した徴候に基づいて自身の治療法(例、アジュバント療法)を決定することができる
本発明のマーカーを測定する好ましい方法は、タンパクまたはペプチドの遺伝暗号を指定することができる遺伝子によって産生されるmRNA量の測定を含む。これは、競合的な逆転写酵素PCR(competitive reverse transcriptase PCR)(RT-PCR)、リアルタイムRT-PCR、ノーザンブロット分析または同様の能力を有する他の検査法によって達成されることができる。本発明の多数のマーカーが同時に測定されなければならない場合、mRNA(RNA)から、増幅された相補的RNA(cRNA)を生成し、検査および分析のために、DNAマイクロアレーにそれを適用するのが好ましい。多数の異なるアレーの立体配置およびそれらの作製法は、当業者に周知であり、次のような米国特許に記述されている。即ち、米国特許第5,445,934号、第5,532,128号、第5,556,752号、第5,242,974号、第5,384,261号、第5,405,783号、第5,412,087号、第5,424,186号、第5,429,807号、第5,436,327号、第5,472,672号、第5,527,681号、第5,529,756号、第5,545,531号、第5,554,501号、第5,561,071号、第5,571,639号、第5,593,839号、第5,599,695号、第5,624,711号、第5,658,734号および第5,700,637号である。
マイクロアレー技術は、数千の遺伝子の定常状態mRNAレベルの同時測定を可能にし、それによって、抑制されていない細胞増殖の開始、停止または調節などの作用を識別する強力な手段を提示する。マイクロアレーチップの構成に差があるものの、下流データ分析とアウトプットは類似する。これらの分析成果は、典型的には、前記マイクロアレー上の既知の位置で核酸配列にハイブリダイズするサンプルから調製される標的配列の検出に使用されるプローブセットから受けるシグナルの強度の測定である。典型的には、当該シグナルの強度は、調製される標的の量、よって、サンプル細胞中に発現されるmRNA量に比例する。大多数の当該技術が利用可能で、有用である。好ましい遺伝子発現の測定法は、米国特許第6,271,002号、第6,218,122号、第6,218,114号および第6,004,755号に認められる。
ある実施態様では、遺伝子のポートフォリオが作成され、それによって、当該ポートフォリオ中の遺伝子の組合せが、個々の遺伝子または無作為に選択された遺伝子の組合せと比較して、感度および特異性の改良を示す。本発明の文脈上、当該ポートフォリオの感度は、好ましくは、正常状態に比較して、罹病状態での遺伝子の発現によって示される発現差(fold differences)に反映される。特異性は、好ましくは、ヒトが測定に関心を示すパラメーター(癌性、転移、再発の可能性など)との遺伝子発現のシグナリングの相関の統計的測定値に反映される。例えば、そのような測定値として、標準偏差を使用することができる。ポートフォリオへの包含に一群の遺伝子を考慮するに当たって、発現測定値の小さな標準偏差は、高めの特異性と相互に関連する。相関係数などの他の変動測定値も、この能力に使用されることができる。本発明は、特異性が、少なくとも約70%、好ましくは少なくとも約80%、さらに好ましくは少なくとも約90%の上記方法も包含する。本発明は、感度が、少なくとも約80%、好ましくは少なくとも90%である上記方法を包含する。
遺伝子発現レベルの分析は、マイクロアレーのシグナル強度を比較することによって実施されることができる。これは、対照サンプルに対する被験サンプルの遺伝子の発現強度の比の行列を作成することによって最も良く実施される。例えば、罹病組織からの遺伝子発現強度は、同種の良性の組織または正常組織から得られる発現強度と比較されることができる。これらの発現強度の比は、被験サンプルと対照サンプルの間の遺伝子の発現に何倍の変化があったか(fold-change)を表す。
本発明は、また、発現パターンの比較がパターン認識法で実施される上記方法を包含する。本発明のある方法は、診断の根拠となるさまざまな遺伝子の遺伝子発現プロファイル(またはポートフォリオ)の比較を含む。ポートフォリオを含む遺伝子それぞれの遺伝子発現プロファイルは、コンピューター読み取り可能媒体などの媒体中に入力される。これは、多数の形式を取ることができる。例えば、疾病を示唆するシグナル範囲(例、強度測定値)がインプットされる表が作成されることができる。次に、実際の患者データが、当該表中の数値と比較され、患者サンプルが正常であるか、良性であるか、罹病状態かを決定できる。さらに高度な実施態様では、発現シグナル(例、蛍光強度) パターンがデジタル方式またはグラフで記録される。その後、患者サンプルと合わせて使用される前記遺伝子ポートフォリオからの遺伝子発現パターンが前記発現パターンと比較される。
次に、パターン比較ソフトウェアが使用され、患者サンプルが、疾病を示すパターンを有するか否かを決定することができる。当然、これらの比較は、患者が疾病を経験する可能性がないか否かを決定する場合にも使用されることができる。その後、前記サンプルの発現プロファイルが、対照細胞のポートフォリオと比較される。当該サンプルの発現パターンが癌の発現パターンと一致する場合、(対抗する医学的考察がない場合)当該患者は、胃癌患者を治療するように治療される。当該サンプルの発現パターンが正常/対照細胞の発現パターンと一致すれば、患者は、癌に対して陰性と診断される。
転移と一致するパターンを患者サンプルによって生じるパターンと比較するには、多数の周知のパターン認識法が利用できる。次の参考文献が一部の例を提供する。即ち、「ウェイティッド・ヴォーティング(Weighted Voting)」:ゴルブ他(Golub et al.) (1999); 「サポート・ヴェクター・マシンズ(Support Vector Machines)」:スー他(Su et al.) (2001); およびラマズワミー他(Ramaswamy et al.) (2001);「K‐ニアレスト・ネイバーズ(K-nearest Neighbors)」:ラマズワミー(Ramaswamy) (2001); および 「コレレーション・コエフィシェンツ(Correlation Coefficients)」: ファント・ヴィア他(van 't Veer et al.) (2002)である。
好ましくは、上方および下方調節レベルは、ハイブリダイズされたマイクロアレープローブの強度測定値に何倍の変化があったかに基づいて鑑別される。そのような識別を行う(または、p-値を0.05未満にする)には、1.5倍の差が好ましい。即ち、遺伝子が、罹病細胞対正常細胞で差別的に発現されると言われる場合、罹病細胞は、正常細胞よりも少なくとも1.5倍高い、あるいは、1.5倍低い強度を生じると分かる。発現差が高いほど、診断または予後判定手段としての遺伝子使用は好ましい。本発明の遺伝子発現プロファイル用に選択される遺伝子は、臨床検査器具を使ったバックグラウンドを上回る量で正常または非調節遺伝子のシグナルと識別可能なシグナルを発生する発現レベルを有する。
非調節遺伝子およびノイズから調節遺伝子を確実に識別するために、統計値が使用されることができる。統計検定は、多様なサンプル群間で最も高い有意差がある遺伝子を見出す。スチューデントT-検定は、2群間の有意差を認めるのに使用されることができる頑健な統計検定の一例である。p-値が低いほど、遺伝子が異なる群間で差を示しているという証拠の説得力が高まる。それにもかかわらず、マイクロアレーは、一度に1個より多い遺伝子を測定するので、一度に数万回の統計検定が求められる場合がある。このため、偶然に小さなp-値を認めることは考えられず、シダックの補正(Sidak correction)、ならびに、無作為化/置換実験を使ったこれの調整が実施されることができる。T-検定による0.05未満のp-値は、遺伝子が著しく異なる証拠である。さらに説得力のある証拠は、シダックの補正が考慮された後の0.05未満のp-値である。各群の大量のサンプルに対して、無作為化/置換検査後の0.05未満のp-値は、有意差の最も説得力のある証拠である。
本発明は、本明細書で提供される方法を実施するためのマイクロアレーまたは遺伝子チップを包含する。当該マイクロアレーは、単離された核酸配列、その補体、または、その一部を含むことができ、組合せると、生体サンプル中の胃癌または再発リスクを特徴付けるのに十分なマーカーに相当する。当該マイクロアレーは、好ましくは、少なくとも1.5倍の過剰発現または過少発現を測定または特徴付け、統計的に有意なp-値の過剰または過少発現を提供し、あるいは、p-値は0.05未満である。好ましくは、当該マイクロアレーは、cDNAアレーまたはオリゴヌクレオチドアレーを含有し、1種類以上の内部対照試薬を含有することができる。
遺伝子発現プロファイルは、多数の方法でも示されることができる。最も一般的な方法の一つは、未加工の蛍光強度または強度比行列(raw fluorescence intensities or ratio matrix)を図式的な樹状図に配置することで、当該樹状図では、縦列(column)は被験サンプルを示し、横列(row)は遺伝子を示す。データは、類似発現プロファイルを有する遺伝子が互いに近接するように配列される。各遺伝子の発現比は、着色されて可視化される。例えば、1未満の比率(下方調節を表す)は、スペクトルの青色の部分で現れることができるが、1を超える比率(上方調節を表す)は、スペクトルの赤色の部分の色として現れることができる。当該データを表示するには、シリコン・ジェネティクス・インコーポレイティッド(Silicon Genetics, Inc.)の「ジーンスプリング(GENESPRING)」とパーテック・インコーポレイティッド(Partek, Inc.)の「ディスカバリー(DISCOVERY)」および「インファー(INFER)」ソフトウェアを含めた市販のコンピューターソフトウェアプログラムが利用できる。
本発明の調節遺伝子は、実施例に記述されている。差別的に発現された遺伝子は、転移状態でないリンパ節に比較して、胃癌腫からの転移が見られるリンパ節中で上方調節される。上方調節は、相対的用語であり、いくつかの基準に対して遺伝子の発現量に、検出可能な差(当該差の測定に使用される装置中のノイズの寄与を上回る)が認められることを意味する。この場合、当該基準は、胃癌腫からの転移のない正常なリンパ節中で測定されたマーカーの遺伝子発現である。次に、被験リンパ節サンプル中の対象遺伝子は、同一の測定法を使って、当該基準レベルに対して上方調節されるか、不変のままである。診断または予後は、再発の可能性および治療法のタイプの決定などの疾病/状態の問題の決定を含む。再発の可能性の決定は、既知の再発事象および/または、既知の再発していない事象に伴うパターン、または、識別のために設けられたカットオフ値(通常、PCRの場合、Ct)を超えるパターンとの被験パターンの比較を含む。
遺伝子は、群に分けることができ、それによって、当該群の遺伝子の組について得られる情報は、診断、予後または治療法選択などの臨床上適切な判断を下す確実な根拠を提供する。これらの遺伝子の組は、本発明のポートフォリオを形成する。大半の診断マーカーのように、正しい医学的判断を下すのに十分な最小数のマーカーを使用するのがのぞましいことが多い。これは、さらなる分析を待つ間の治療の遅れ、ならびに、時間や種々の資源の無駄使いを防止する。
遺伝子発現ポートフォリオを作成するある方法は、株式ポートフォリオの確立に汎用される平均分散アルゴリズムなどの最適化アルゴリズムの使用による。この方法は、米国特許公報第20030194734号に詳細に説明されている。基本的に、当該方法は、受け取るリターンの変動性を最小化しながら、リターン(例、発生されるシグナル)をその使用に備えて最適化する一組のインプット(金融上の適用では株式であり、本明細書では強度によって測定されるものとしての表現)の確立を必要とする。このような工程の実施に、多くの市販のソフトウェアプログラムが利用できる。本明細書全編で「ワンガー・ソフトウェア(Wagner Software)」と呼ばれる「ワンガー・アソシエイツ・ミーンーヴァリアンス・オプティマイゼーション・アプリケーション(Wagner Associates Mean-Variance Optimization Application)」が好ましい。このソフトウェアは、「ンガー・アソシエイツ・ミーンーヴァリアンス・オプティマイゼーション・ライブラリ(Wagner Associates Mean-Variance Optimization Library)」からの関数を使用して、効率的な境界(frontier)を決定するが、マーコウィッツが意味する最適ポートフォリオ(optimal portfolios in the Markowitz sense)が好ましい。この種のソフトウェアの使用は、マイクロアレーデータが変換されることを必要としており、それによって、意図された金融分析目的で当該ソフトウェアが使用される場合に株式リターンおよびリスク測定が用いられるようにインプットとしてマイクロアレーデータが処理されることができる。
ポートフォリオ選択法は、発見的規則(heuristic rules)の応用も含む。好ましくは、当該規則は、生物学と、臨床結果を生みだすために使用される技術の理解に基づいて公式化される。さらに好ましくは、当該規則は、最適化法からのアウトプットに応用される。例えば、ポートフォリオ選択の平均分散法は、癌である被験者に差別的に発現される多数の遺伝子のマイクロアレーデータに応用されることができる。本方法からのアウトプットは、最適化された遺伝子の組であると思われ、末梢血、ならびに、罹病組織中に発現される一部の遺伝子を含むことができる。前記検査法で使用されるサンプルが末梢血から採取され、癌の場合に差別的に発現される特定遺伝子も末梢血中に差別的に発現される場合、発見的規則が応用されることができ、それによれば、末梢血中に差別的に発現されるものを除いて、ポートフォリオが効率的な境界から選択される。当然、当該規則は、例えば、データの事前選択中に応用することによって、効率的な境界の形成前に応用されることができる。
問題の生物学に必ずしも関連しない他の発見的規則が応用されることができる。例えば、ポートフォリオの所定の割合だけが、特定の遺伝子または遺伝子群によって代表されることができる規則を応用できる。ワンガー・ソフトウェア(Wagner Software)などの市販のソフトウェアは、この種の発見的方法に容易に適合させることができる。これは、例えば、確度および精度以外の他の要因(例、予想ライセンス料)が、1個以上の遺伝子の算入の望ましさに影響を与える場合に、有用であることができる。
本発明の遺伝子発現プロファイルは、癌の診断、予後、または、治療モニタリングに有用な他の非遺伝子診断法と合わせて使用されることができる。例えば、ある状況では、上記の遺伝子発現主体の方法の診断能力を、血清タンパクマーカーなどの従来のマーカー(例、癌抗原27.29(「CA27.29」))からのデータと併用すると有益である。このような一方法では、治療患者から定期的に採血され、上記の血清マーカーの1つについて酵素免疫測定法に供される。当該マーカーの濃度が、腫瘍の復帰または治療不全を示唆する場合、遺伝子発現分析で調べることができるサンプル源が採取される。別法として、組織サンプルが、予め腫瘍が除去されている組織に隣接する領域から採取されることができる。この手法は、他の検査法が不明瞭な結果を生じる場合に特に有用になることができる。
本発明は、患者から生体サンプルを入手し、当該サンプルの遺伝子発現を測定し、測定によって得られる結果を使用して報告書を作成することによって、胃癌診断患者報告書およびそれにより得られる報告書の作成法を包含する。当該報告書は、患者の転帰および/または患者集団に対するリスクの確率の評価も含むことができる。
本発明は、マーカーに対応する少なくとも1個のマイクロアレープローブセットまたはPCRプライマー/プローブセットを含有する組成物を包含する。
本発明の用品は、治療、診断、予測(prognosticating)、および、その他、疾病評価に有用な遺伝子発現プロファイル表示物を、人または機械読み取り式使用説明書とともに含む。これらのプロファイル表示物は、コンピューター読み取り式媒体(磁気、光学など) などの機械によって自動読み取りがなされることができる媒体に縮小されている。例えば、本用品は、上記の遺伝子ポートフォリオの遺伝子発現プロファイルを比較するためのコンピューター使用説明書を有するCD ROMを含むことができる。本用品は、本用品にデジタル記録された遺伝子発現プロファイルも有することができ、患者のサンプルからの遺伝子発現データと比較されることができる。別法として、当該プロファイルは、様々な表示フォーマットに記録されることができる。グラフでの記録は、当該フォーマットの1つである。上記のパーテック・インコーポレイティッド(Partek, Inc.)の「ディスカバリー(DISCOVERY)」および「インファー(INFER)」ソフトウェアに組み入れられたものなどのクラスタリングアルゴリズムは、前記データの可視化に最も良く役立つことができる。
本発明に従った各種タイプの製造品は、遺伝子発現プロファイルを明らかにするために使用される媒体またはフォーマットされたアッセイである。これらは、例えば、マイクロアレーを含むことができ、当該マイクロアレーにおいて、配列補体またはプローブは、問題の遺伝子を示唆する配列が結合するマトリックスに固定され、当該遺伝子存在の読取り可能な決定因子を創出する。別法として、本発明に従った用品は、癌検出用に、問題の遺伝子のハイブリダイゼーション、増幅、および、発現レベルを示すシグナル発生を実施する試薬キットに作り上げることができる。
本発明は、胃癌腫からのリンパ節転移を決定するためにアッセイを実施するキットも包含する。本発明に従って製造されるキットは、フォーマットされたアッセイを含む。これらは、試薬、説明書、ならびに、核酸配列、それらの補体、または、その一部がアッセイされる培地などの当該アッセイ実施に必要とされる材料の全部または一部を含む。別のフォーマットで当該アッセイが実施されなければならない場合、当該キットは、そのフォーマット特有の成分を有することになる。例えば、当該フォーマットがPCR、ローリングサークル増幅法(RCA)、リガーゼ連鎖反応法(LCR)、鎖置換増幅法(SDA)、核酸配列主体増幅法(NASBA)などの増幅フォーマットである場合、当該キットは、当該技術に適した試薬および材料を含有することになる。
ある実施態様では、前記キットは、マーカーの増幅および検出用試薬を含む。任意に、当該キットは、リンパ節組織などの組織から核酸を抽出するためにサンプル調製試薬および/または用品(例、チューブ)を含む。当該キットは、サンプル汚染リスクを最小化する用品も含むことができる(例、使い捨てメス、リンパ節切除および調製用表面)。
好ましいキットでは、1-チューブQRT-PCR法に必要な試薬が含まれ、この試薬は、例えば、逆転写酵素、逆転者酵素プライマー、対応するPCRプライマーセット(好ましくは、マーカーおよび対照用)、Taqポリメラーゼなどの熱安定DNAポリメラーゼ、適切な検出試薬(スコーピオンプローブ、蛍光5'ヌクレアーゼアッセイ用プローブ、分子ビーコンプローブ、臭化エチジウムなどの二本鎖DNAに特有の単一染料プライマーまたは蛍光染料などであるが、それらに制約されない)などである。前記プライマーは、好ましくは、高濃度を生じる量である。熱安定DNAポリメラーゼは、様々な製造業者から一般的に市販されている。当該キット中のさらなる材料は、適切な反応チューブもしくはバイアル、任意にマグネシウムを含むワックスビーズなどのバリア組成物、必要な緩衝液およびdNTPなどの試薬を含めた逆転写酵素およびPCR各段階用の反応混合物(典型的には10X)、ヌクレアーゼ水またはリボヌクレアーゼのない水(nuclease-or RNase-free water)、リボヌクレアーゼ阻害剤、対照核酸および/または任意の追加緩衝液、化合物、補因子、イオン成分、タンパク、酵素、ポリマーなどを含むことができ、これらは、逆転者酵素および/またはQRT-PCR反応のPCR各段階中で使用されることができる。任意に、当該キットは、核酸抽出試薬および材料を含む。
ポリペプチドおよびタンパクなど、前記遺伝子マーカーの発現産物(それ自体、マーカーの定義に含まれる)をアッセイすることも可能である。当該アッセイに有用な方法は、サンプルのマーカーに向けられた抗体との接触を含む。これらの抗体は、マーカー検出用の非常に特異的なアッセイの開発に有用であり、検査が多様な形態で実施されることを可能にする。好ましくは、当該抗体は、標識付けされたモノクロナール抗体である。当該マーカーが分泌されたタンパクまたはポリペプチドである場合、正常発現レベルに比較して、罹病組織中で100〜1000倍の発現が認められることになる。当該アッセイ用キットは、標識付けされた抗体試薬など、当該アッセイ形態に典型的な試薬を含む。
特許請求される発明を説明するために、以下の実施例が提供されるが、この発明を制約されるものではない。本明細書で引用される全文献は、参照することによって本明細書に組み入れられている。
〔実施例1〕
マーカーの識別
胃癌腫10個、正常胃組織10個、および、組織学的に確認された正常リンパ節6個の新鮮に凍結されたサンプルが使用され、胃癌腫からのリンパ節転移の検出用遺伝子マーカーが識別された。標準的な販売会社推薦プロトコルに従って、これらの組織から、RNイージー・ミニ・キット(RNeasy Mini Kit)(キアゲン(Qiagen),カタログ番号74106)によってRNAが調製された。ビオチン標識aRNA標的が、RNA線状増幅によって調製された(アンビオン(Ambion), メッセージアンプIIaRNA増幅キット(MessageAmp II aRNA Amplification Kit), カタログ番号1751)。調製済み標的は、アフィメトリクスHG U133A(Affymetrix HG U133A)チップに適用され、標準的なアフィメトリクス(Affymetrix)推薦プロトコルに従って処理された。チップ結果が収集され、標的シグナル600(Target Signal of 600)に全体としてスケールが合わされた。マイクロアレー結果(HG U133Aチップセット)の階層的クラスタリングが実施され、当該チップ結果が、パーテック・プロ6.0(Partek Pro 6.0)を使って統計的に分析された。分散分析(ANOVA)および発現差分析(fold change analysis)が適用され、問題の遺伝子が識別された。胃癌腫からのリンパ節転移の検出用の候補マーカーとして、次の特性を有する遺伝子が選択された。即ち、a)正常な胃組織で安定して発現される、b)発現が胃癌腫中で安定して維持される、および、c)正常なリンパ節と胃癌腫の間の発現レベルに明確な差異がある。
20個のプローブセット(18個の遺伝子を代表する)が、上記の基準を満たした。正常なリンパ節群と胃癌腫/正常な胃組織との間の遺伝子シグナルレベルの顕著な差は、統計的に有意であった。マイクロアレー結果は、表1に要約され、プローブセット20個それぞれの平均シグナルおよび標準偏差が示される。マーカーに関する追加情報は、表2に示され、クラスタリング分析は、図1 (HG U133Aの全プローブセット)および図2(マーカーのみ)に示される。これらのマーカーの発現は、胃癌腫からの転移の場合、リンパ節中で増加する。表3に示されるように、マーカーは機能別に分類される。
Figure 2007275054
Figure 2007275054
Figure 2007275054
〔実施例2〕
確認試験(1)----マイクロアレー検査
実施例1で選択されたマーカーを検証するために確認試験が実施された。これらのマーカーは、各種の分化状態の胃癌腫からの転移を伴うリンパ節で当該マーカーの発現が維持されるか否かを決定するために検討された。この試験には、アフィメトリクス(Affymetrix)DNAマイクロアレー(HG U133A)が使用された。正常リンパ節6個および胃癌腫からの転移が確認されたリンパ節3個の組織が検査された。これらのサンプルから、上記のとおりにRNAが調製された。実施例1のように、ビオチン標識aRNA標的が調製された。標的は、アフィメトリクス(Affymetrix)HG U133チップに適用された。当該チップからの結果は、標的シグナル600にスケールが合わされ、分析された。
各プローブセットの平均シグナルおよび標準誤差が図3A、図3Bに表示される。
〔実施例3〕
確認試験(2)−リアルタイムRT-PCR検査
リアルタイムRT-PCRを使って、選択された遺伝子マーカーの性能を検証するために、試験が実施された。正常リンパ節10個および胃癌腫からの転移が組織学的に確認されたリンパ節16個が検査された(確認試験1のDNAマイクロアレーで検査された全サンプルを含む)。組織学的に確認された正常リンパ節10個は、7名の異なる患者からのリンパ節であった。胃癌腫からの転移が確認された16個のリンパ節は、13名の異なる患者からのリンパ節であった。リンパ節に転移した本来の癌腫の悪性度は、3個が完全分化型(6個のリンパ節に寄与)、7個が不完全分化型(7個のリンパ節に寄与)、3個が中程度分化型(3個のリンパ節に寄与)であった。
全RNAは、上記のとおりに調製された。cDNAは、販売会社推薦のプロトコルに従って、ハイ・キャパシティ・cDNAアーカイブ・キット(High Capacity cDNA Archive Kit)(ABI)で100μLの反応容積中の5μg RNAから最初に調製された。合成されたcDNA 2μLが、容積50μL中で、リアルタイムPCR反応(RT-PCR)に使用された。各RNAサンプルから、1個のcDNAが調製された。遺伝子マーカーのそれぞれについて、タックマン遺伝子発現アッセイ(TaqMan Gene Expression Assay)が、アプライド・バイオシステムズ・インコーポレイティッド(Applied Biosystems Inc)(ABI)から購入された。販売会社推薦の条件下、1回の反応(アッセイ)を各チューブ中で、アンプイレイスUNG(AmpErase UNG)(ABI)なしで、タックマン・ユニバーサルPCTマスター・ミックス(TaqMan Universal PCT Master Mix)と共にこれらのアッセイを使って、RT-PCR検査が実施された。生成された各cDNAについて、2回繰り返しまたは3回繰り返しのPCR反応が実施された。PCRは、ABI 7900 HT分析器上で行われた。
アッセイ(1個の遺伝子に1個のプライマー/プローブセット)毎のアッセイIDおよびコンテキスト配列(Context sequences)は、表4に示される。
Figure 2007275054
正常リンパ節(NLN)および胃癌腫からの転移が確認されたリンパ節(MLN)からのサンプル用のマーカー遺伝子それぞれについて、Ct値が収集された。遺伝子毎の未加工のCt値は、ハウスキーピング遺伝子HPRT1のCtに対して正規化された。複数回のRT-PCR実施にわたる未加工のCt値および正規化Ct値は、ともに、要約、分析された。両サンプル群(NLN、MLN)に対する各遺伝子の未加工Ctの平均値および標準誤差(average raw Ct and standard error)が、図4に示されるように算出された。両サンプル群(NLN、MLN)に対する各マーカー遺伝子の正規化Ctの平均値および標準誤差(average normalized Ct and standard error)は、図5に示されるように算出された。CYP3A7遺伝子については、Ct値は、NLN群の26回のPCR反応中16回、MLN群の35回のPCR反応中2回で未確定であったが、ハウスキーピング(構成的発現)遺伝子HPRT1の典型的Ct値は、同一cDNAから得られた。CYP3A7遺伝子のPCR検出率は、NLN群とMLN群の間で有意差があった(p<0.0001)。CYP3A7に関して、平均値、標準偏差、標準誤差およびANOVAの計算には、確定Ct値のみが使用された。ANOVAは、表5および表6に示されるように、未加工の、および正規化Ct値について実施され、当該2群(NLN、MLN)間の差の有意性が検証された。CYP3A7以外の被験遺伝子についてPCR反応のCt値が未確定であった事例はない。
Figure 2007275054
Figure 2007275054
CYP3A7(多数のPCR反応に認められる未確定Ct)を除いて、17個のマーカーの有意に増加した発現が、各種分化状態の胃癌腫から転移を伴うリンパ節16個全部(13名の患者から)に認められた。これらのマーカー遺伝子の背景発現レベルは、10個の被験正常リンパ節間では一貫しており、胃癌腫からの転移を伴うリンパ節のレベルよりも有意に低い。
前記の17個のマーカー(CYP3A7を除く)のそれぞれについて、受信者動作特性(Receiver Operating Characteristic、ROC)曲線が作成され、2種のサンプル群(MLN、NLN)に対する識別アッセイに当該マーカーが使用可能であることを示した。これらの曲線の分析の要約が、表7に示される。遺伝子マーカー毎のAUC(曲線下面積(Area Under Curve))が算出された。2個のカットオフCtが検討され、カットオフ値Ct毎の感度および特異性が、表7に示される。
Figure 2007275054
〔実施例4〕
抗体(机上)
C-末端マーカー誘導ペプチドが合成され、スカシ貝ヘモシアニン(keyhole limpet hemocyanin)に結合され、ポリクロナール抗体の産生のためのウサギの免疫化に使用される。ELISAで対応するペプチドに対する反応性について、血清がELISAで検討され、陽性バッチがアフィニティー精製される。精製抗体は、組織切片にペプチドエピトープを有するタンパクを特異的に検出する。これは、対応するペプチドが抗体と同時に添加される場合シグナルの完全廃棄(complete abolishment)によって実証される。免疫組織化学で十分に機能するこのポリクロナール抗体に加えて、自然の折りたたみタンパクを検出することのできるモノクロナール抗体が産生される。モノクロナール抗体を産生するには、哺乳類の細胞に産生され、自然折りたたみ(natural fold)と翻訳後修飾を確実にする精製抗原が生成される。当該抗原、マーカー-IgG定常部融合タンパク、は、マウス骨髄腫細胞に発現され、えさ(bait)としてFc部を使って分泌タンパクが精製される。この精製抗原は、C-末端ポリクロナール抗体による、および、他の抗-マーカーペプチド抗体によるウェスタンブロットで認識される。当該抗原は、陽性クローンから、IgG定常部の代わりにマーカーに対して反応する抗体を産生したクローンを選択することによって、マーカーに対するマウスモノクロナール抗体の生成に使用される。
マーカーの臨床識別用キットは、これらの、および、類似の抗体を用いて容易に構築されることができる。当該キットは、マーカー識別に向けられる抗体、適当なインジケーター試薬(例、酵素、標識など)、および、(任意に)希釈緩衝液、安定化剤および当該アッセイで典型的に使用される他の材料など、当該キットの臨床応用で有用な他の試薬を含む。当該キットは、癌を表すマーカー(Markers expressing cancers)を調べる、または経過観察するため、および、組織サンプル中のマーカータンパクの存在を調べるために、体液中のマーカーの検出に使用されるであろう。既述のように抗体を含むキットは、問題の組織の免疫細胞化学アッセイを実施する目的でも作られる。これらのキットは、転移を表すマーカータンパクの陽性染色を含む。
〔実施例5〕
酵素免疫測定法(机上)
マーカー用に免疫測定法が準備される。酵素免疫測定法(EIA)手順を展開するには、(イムノペルオキシダーゼ染色によって抗原を含有することが立証される)胃腫瘍検体の消化物を含む抗原標準品が使用される。ヒト原発性胃がん検体がプールされ、4℃の0.2%(w/v)デオキシコール酸ナトリウム含有10mMトリス緩衝液、pH 7.4、の10倍量中で均質化される。ホモジェネートは、速やかに37℃に加温され、次の試薬(最終濃度)が、攪拌下で添加される。即ち、1mMシステイン(シグマ(Sigma))、1 mM EDTA(シグマ(Sigma))、および、パパイン(0.8単位/mL)(インディアナ州インディアナポリスのベーリンガー‐マンハイム(Boehringer-Mannheim))である。5分後、5mMヨードアセトアミド(シグマ(Sigma))の添加によって消化が停止される。当該ホモジェネートは、4℃、100,000 Xgで1時間遠心分離され、その後、フッ化フェニルメチルスルフォニルとアミノカプロン酸をそれぞれ10 mM含有するpH7.4の10 mMトリス/0.9%NaCl溶解緩衝液に対して十分に透析される。当該ホモジェネートは、タンパク/mi 0.5 mgの濃度で小分けして凍結される。
マーカーを測定する免疫測定法用に作成される用量反応曲線は、臨床的に有意に低いレベルの濃度で直線性を示す。
実施例6で述べられる抗体の固相調製物は、CNBr-活性化セファロース(CNBr-activated Sepharose)(ファーマシア(Pharmacia))を使って調製される。マイクロタイタープレート(ヌンクIイムノプレーツ(Nunc I Immunoplates); ニューヨーク州グランドアイランドのグランド・アイランド・バイオロジカル社(Grand Island Biological Co.))は、4℃、50 mM炭酸塩-重炭酸塩緩衝液pH9.6中の抗体(200 μL/ウェル)で18時間被覆される。当該抗体溶液除去後、プラスチック上の残留タンパク結合部位は、200μLのアッセイ緩衝液[1%(v/v)ウサギ血清および1%(w/v)ウシアルブミン含有PBS]の添加によって遮断される。室温で1時間のインキュベーション後、被覆されたプレートは、アッセイ手順に直ちに使用される。
前記アッセイを実施するため、アッセイ緩衝液で希釈されたサンプルが、37℃で1〜5時間適用される。アッセイ緩衝液を使って3回洗浄した後、西洋ワサビペルオキシダーゼ(シグマ(Sigma), VI型)に共有結合で共役された抗体200μLが、各ウェルに37℃で1.5時間適用される。当該共役体は、10%(v/v)マウス血清含有PBS 1 mL当りイムノグロブリン0.5μgの濃度まで希釈される。上記のような洗浄処置後、ウェル1個当り基質200μLが、室温で0.5時間適用される。基質溶液は、pH5.0のクエン酸緩衝液1 mL当りo-フェニレンジアミン0.4 mgおよび0.003%過酸化水素を含有する。2N硫酸50μLの添加によって反応が停止され、酵素アッセイプレート読み取り機(ペンシルベニア州ピッツバーグのフィッシャー・サイエンティフィック社(Fisher Scientific Co.))を使って、吸光度が488nmでモニターされる。
結合酵素共役体の割合は、次式によって算出され、
(B−B0)(Bt−B0)(100)
式中、B=サンプルの吸光度、Bt=最大吸光度、および、B0=ブランクの吸光度である。各アッセイは、標準消化物と、アッセイ緩衝液で希釈された26倍希釈血清サンプルを使って、3回繰り返しで実施される。当該免疫測定法の特異性は、CEAに対する抗体および非免疫ウサギ血清を含めて、前記固相で各種抗体試薬を代用することによって調べられる。
上記サンプルに対応する癌患者から得られたサンプルも、評価される。マーカー値上昇率は、90%である。癌群からの平均値は、対照レベルよりも有意に高い(約250%高い)。
限られた原発性限局疾患の術後胃癌患者数を使って、マーカーの有意な減少が起こる。これらのデータは、マーカーレベルと腫瘍負荷(tumor load)の関係を表している。よって、本測定は、患者のモニタリングに価値がある。
〔実施の態様〕
(1) 胃癌腫からのリンパ節転移を診断する方法において、
a)患者から生体サンプルを入手する段階と、
b)前記サンプル中のマーカーレベルを測定する段階と、
を含み、
所定のカットオフレベルを上回るレベルが、胃癌腫からのリンパ節転移を示す、
方法。
(2) 実施態様1に記載の方法において、
前記マーカーが、遺伝子、遺伝子断片、またはそれらの補体である、
方法。
(3) 実施態様1に記載の方法において、
前記マーカーが、タンパク、タンパク断片、またはポリペプチドである、
方法。
(4) 実施態様1に記載の方法において、
別の診断法の使用、
をさらに含む、方法。
(5) 実施態様4に記載の方法において、
前記別の診断法が、血清アッセイを実施する段階を含む、
方法。
(6) 実施態様1に記載の方法において、
構成的に発現した遺伝子を測定する段階、
をさらに含む、方法。
(7) 実施態様1に記載の方法において、
少なくとも80%の感度を有する、
方法。
(8) 実施態様1に記載の方法において、
少なくとも70%の特異性を有する、
方法。
(9) 胃癌腫患者の治療法を決定または調整する方法において、
a.胃癌患者から生体サンプルを入手する段階と、
b.マーカーのサンプル中のレベルを測定する段階と、
を含み、
カットオフレベルを上回るか、または下回るレベルが、治療法が決定または調整される疾病または身体状態の経過と一致する、
方法。
(10) 実施態様9に記載の方法において、
前記マーカーが、遺伝子、遺伝子断片、またはそれらの補体である、
方法。
(11) 実施態様9に記載の方法において、
前記マーカーが、タンパク、タンパク断片、またはポリペプチドである、
方法。
(12) 実施態様9に記載の方法において、
構成的に発現した遺伝子を測定する段階、
をさらに含む、方法。
(13) 実施態様9に記載の方法において、
特異性が、少なくとも70%である、
方法。
(14) 実施態様9に記載の方法において、
感度が、少なくとも約80%である、
方法。
(15) 実施態様1に記載の方法において、
マイクロアレーで実施される、
方法。
(16) 実施態様9に記載の方法において、
マイクロアレーで実施される、
方法。
(17) 実施態様1に記載の方法において、
増幅法を使用することによって実施される、
方法。
(18) 実施態様17に記載の方法において、
前記増幅法が、PCRである、
方法。
(19) 実施態様18に記載の方法において、
前記PCRが、RT-PCRである、
方法。
(20) 実施態様9に記載の方法において、
増幅法を使用することによって実施される、
方法。
(21) 実施態様20に記載の方法において、
前記増幅法が、PCRである、
方法。
(22) 実施態様21に記載の方法において、
前記PCRが、RT-PCRである、
方法。
(23) 生体サンプルにおいて胃癌の診断を決定するためにアッセイを実施するためのキットにおいて、
マーカーを検出するための材料、
を含む、キット。
(24) 実施態様23に記載のキットにおいて、
マイクロアレー、および試薬、
を含む、キット。
(25) 実施態様23に記載のキットにおいて、
PCR試薬、
を含む、キット。
(26) 実施態様23に記載のキットにおいて、
説明書、
を含む、キット。
参照文献
Figure 2007275054

図1は、実施例1、マーカーの識別からの10個の胃癌腫、10個の正常胃組織および6個の正常リンパ節(LNとして示す)からのマイクロアレー結果(HGU133A、全プローブセットからのシグナル)の階層的クラスタリング分析を示す(正常リンパ節にチップ7個、チップ上で1個のサンプルが2回検査された)。 図2は、10個の胃癌腫、10個の正常胃組織および6個の正常リンパ節からのマイクロアレー結果(HGU133A、20個の選択されたマーカー遺伝子プローブセットからのシグナル)の階層的クラスタリング分析を示す(正常リンパ節にチップ7個、チップ上で1個のサンプルが2回検査された)。図表は、胃癌腫、正常胃組織および正常リンパ節のサンプル間の20個のプローブセット(18個の遺伝子を表す)のチップシグナルレベルを示す。正常リンパ節(LNとして示す)群と胃癌腫/正常胃組織の間の遺伝子シグナルレベルの明確な差が、実施例1、マーカーの識別から図示される。 図3は、確認試験(1)用に識別されたマーカー遺伝子シグナルの平均値および標準誤差を示す。これは、実施例2、確認試験(1)---マイクロアレー検査に述べられている正常リンパ節6個、および、胃癌腫からの転移が確認された3個のリンパ節のマイクロアレー試験を網羅する。 図3Bは、確認試験(1)用に識別されたマーカー遺伝子シグナルの平均値および標準誤差を示す。これは、実施例2、確認試験(1)---マイクロアレー検査に述べられている正常リンパ節6個、および、胃癌腫からの転移が確認された3個のリンパ節のマイクロアレー試験を網羅する。 図4は、6名の別々の患者からの10個の正常リンパ節、および、13名の別々の患者からの胃癌腫からの転移が組織学的に確認された16個のリンパ節の全体に及ぶPCR試験の未加工のCt結果のグラフである。各マーカー遺伝子についての未加工Ctの平均値および標準誤差が示されている。データは、実施例3、確認試験(2)---リアルタイムRT-PCR検査に述べられているとおりに入手された。 図5は、6名の別々の患者からの10個の正常リンパ節、および、13名の別々の患者からの胃癌腫の転移が組織学的に確認された16個のリンパ節の全体を網羅するPCR試験の正規化Ct結果のグラフである。Ct値は、ハウスキーピング遺伝子HPRT1 Ct結果に基づいて正規化された。各マーカー遺伝子についての正規化Ctの平均値および標準誤差が示されている。データは、実施例3、確認試験(2)---リアルタイムRT-PCR検査に従って入手された。

Claims (26)

  1. 胃癌腫からのリンパ節転移を診断する方法において、
    a)患者から生体サンプルを入手する段階と、
    b)前記サンプル中のマーカーレベルを測定する段階と、
    を含み、
    所定のカットオフレベルを上回るレベルが、胃癌腫からのリンパ節転移を示す、
    方法。
  2. 請求項1に記載の方法において、
    前記マーカーが、遺伝子、遺伝子断片、またはそれらの補体である、
    方法。
  3. 請求項1に記載の方法において、
    前記マーカーが、タンパク、タンパク断片、またはポリペプチドである、
    方法。
  4. 請求項1に記載の方法において、
    別の診断法の使用、
    をさらに含む、方法。
  5. 請求項4に記載の方法において、
    前記別の診断法が、血清アッセイを実施する段階を含む、
    方法。
  6. 請求項1に記載の方法において、
    構成的に発現した遺伝子を測定する段階、
    をさらに含む、方法。
  7. 請求項1に記載の方法において、
    少なくとも80%の感度を有する、
    方法。
  8. 請求項1に記載の方法において、
    少なくとも70%の特異性を有する、
    方法。
  9. 胃癌腫患者の治療法を決定または調整する方法において、
    a.胃癌患者から生体サンプルを入手する段階と、
    b.マーカーのサンプル中のレベルを測定する段階と、
    を含み、
    カットオフレベルを上回るレベルか、または下回るレベルが、治療法が決定または調整される疾病または身体状態の経過と一致する、
    方法。
  10. 請求項9に記載の方法において、
    前記マーカーが、遺伝子、遺伝子断片、またはそれらの補体である、
    方法。
  11. 請求項9に記載の方法において、
    前記マーカーが、タンパク、タンパク断片、またはポリペプチドである、
    方法。
  12. 請求項9に記載の方法において、
    構成的に発現した遺伝子を測定する段階、
    をさらに含む、方法。
  13. 請求項9に記載の方法において、
    特異性が、少なくとも70%である、
    方法。
  14. 請求項9に記載の方法において、
    感度が、少なくとも約80%である、
    方法。
  15. 請求項1に記載の方法において、
    マイクロアレーで実施される、
    方法。
  16. 請求項9に記載の方法において、
    マイクロアレーで実施される、
    方法。
  17. 請求項1に記載の方法において、
    増幅法を使用することによって実施される、
    方法。
  18. 請求項17に記載の方法において、
    前記増幅法が、PCRである、
    方法。
  19. 請求項18に記載の方法において、
    前記PCRが、RT-PCRである、
    方法。
  20. 請求項9に記載の方法において、
    増幅法を使用することによって実施される、
    方法。
  21. 請求項20に記載の方法において、
    前記増幅法が、PCRである、
    方法。
  22. 請求項21に記載の方法において、
    前記PCRが、RT-PCRである、
    方法。
  23. 生体サンプルにおいて胃癌の診断を決定するためにアッセイを実施するためのキットにおいて、
    マーカーを検出するための材料、
    を含む、キット。
  24. 請求項23に記載のキットにおいて、
    マイクロアレー、および試薬、
    を含む、キット。
  25. 請求項23に記載のキットにおいて、
    PCR試薬、
    を含む、キット。
  26. 請求項23に記載のキットにおいて、
    説明書、
    を含む、キット。
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