JP2007274926A - 大腸癌検査方法、そのためのプライマー及びキット - Google Patents
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Abstract
【課題】APC遺伝子の高頻度変異発現領域の変異を簡便かつ再現性よく検出し、より正確で効率的な大腸癌の遺伝子診断を可能にする新規な大腸癌の検査方法を提供する。
【解決手段】被験者から単離されたDNAサンプルに対し、特定な塩基配列を有するプライマーセットあるいはこれらと実質的に等価なプライマーセットを用いて、APC遺伝子 exon15の高頻度変異発現領域、K-ras遺伝子、p53遺伝子 exon5-8のがん化に関連した変異を解析することにより、大腸癌を検査する。
【選択図】なし
【解決手段】被験者から単離されたDNAサンプルに対し、特定な塩基配列を有するプライマーセットあるいはこれらと実質的に等価なプライマーセットを用いて、APC遺伝子 exon15の高頻度変異発現領域、K-ras遺伝子、p53遺伝子 exon5-8のがん化に関連した変異を解析することにより、大腸癌を検査する。
【選択図】なし
Description
本発明は、核酸配列変異分析による大腸癌の検査方法、そのためのプライマー及びキットに関する。より詳しくは、APC癌抑制遺伝子、p53遺伝子、K-ras遺伝子における体細胞突然変異を検出することにより、大腸癌を発症初期の段階で簡便に検査する方法、及びそのためのプライマー、キットに関する。
APC癌抑制遺伝子、p53遺伝子、K-ras遺伝子は、ある種のがんの発生に関係していることが知られている。特に、APC遺伝子の癌抑制機能に影響が予想されるexon15内の変異、p53 exon5-8のDNA結合能に関すると考えられる変異、K-ras遺伝子の特定の部位において体細胞的に誘導され活性化された突然変異は、腫瘍形成の過程において重要な原因事象であると考えられている。
そこで、近年いくつかの癌関連遺伝子突然変異検出用試験が、腫瘍形成経路におけるそれらの機能を解明するための手段として、さらにはがんの診断と予後における潜在的な用途のために開発されている。
大腸癌の癌化においても、APC遺伝子、K-ras遺伝子及びp53遺伝子で変異が起きることが報告されている(非特許文献1及び2)。従って、これらの変異を検出することで、大腸癌についての有効な検査を行うことができる。
変異を検出する有効な手段としては各遺伝子の塩基配列を決定する方法、及び塩基変異に由来するDNA鎖の立体構造変化を電気泳動的に検出する方法がある。しかし、塩基配列を決定する方法、すなわち配列解析には多大の労力が必要であり、しかも突然変異配列と正常配列の両方がPCR段階によって増幅されて感度が損なわれるので(正常な野生型DNA中で突然変異をもつゲノムDNAの数は極めて少ないと考えられる)、この方法による突然変異の検出には限界がある。例えば、電気泳動的に検出する方法であるSSCPによる変異検出は、変異DNA含有率10%程度から可能であるのに対し、配列解析による変異検出には変異DNA含有率30%以上を必要とする。このため、配列解析は多様な状態を示す臨床検査検体を多数扱うことには適さない。一方、SSCP等の電気泳動的に変異を検出する方法では遺伝子変異の塩基配列上の位置(構造を構成する周辺部の配列の影響)によっては検出が困難な場合があり、より高感度で高精度の変異検出法が切望されている。
大腸癌の発症機序として、APC遺伝子、K-ras遺伝子、p53遺伝子の順に変異が起こり、がん化が進むという可能性が提唱されている。すなわち大腸癌検診を遺伝子変異の検出で行うためには、特にAPC遺伝子での変異を効率よく検出できることが重要である。また、癌組織の染色体上のAPC遺伝子で高頻度に変異が検出される領域がexon15内にあることが知られている。
SSCP法は、GC(グアニン、シトシン)リッチなDNA断片の変異解析に効果的であるが、AT(アデニン、チミン)リッチなDNA断片の変異解析には適さない。これに対し、APC遺伝子の高頻度変異発現領域にある第1450番目のアミノ酸をコードする部位近傍はATリッチであるため、SSCPで変異を電気泳動的に検出することは困難という問題点があった。
Sudhir Srivastava, (2001), Clinical Cancer Research vol.7: p1118-1126
Milo Frattini, (2004), Clinical Cancer Research vol.10: p4015-4021
本発明は、従来検出が困難であったAPC遺伝子の高頻度変異発現領域の変異を簡便かつ再現性よく検出することで、より正確で効率的な大腸癌の遺伝子診断を可能にする新規な手段を提供することにある。
発明者らは、標準的基準で設計した2組のプライマーを用いてAPC遺伝子の高頻度変異発現領域を増幅し、SSCP法による変異検出を試みたが、第1429番、第1450番のアミノ酸をコードする部位の変異を検出することはできなかった。
そこで、発明者らは、多くの大腸癌で検出されているAPC遺伝子のコドン1450及びその周辺のATリッチな領域の変異を高感度に検出するための新規プライマー系を設計すべく鋭意検討した。
その結果、配列番号17に示す塩基配列、あるいはその連続する5塩基以上を含むTmが50℃以上となる塩基長(通常15-30塩基程度)の第一のプライマーと配列番号18に示す塩基配列、あるいはその連続する5塩基以上を含むTmが50℃以上となる塩基長(通常15-30塩基程度)の第二のプライマーからなるプライマーセットにより、APC遺伝子中の第1450番目のアミノ酸をコードする部位近傍の変異をSSCP法などの電気泳動法で検出することに成功した。このプライマーセットは、がん化により高頻度に起こる重要な変異である塩基番号85070におけるC/T変異を検出することができる。さらに、発明者らは、このプライマーセットに加えて、APC遺伝子内の高頻度変異検出領域における他の変異を解析するためのプライマーセット、及びp53遺伝子やK-ras遺伝子内の変異解析を行うためのプライマーセットの設計にも成功し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は、被験者から単離されたDNAサンプルに対し、配列番号17に示される塩基配列、あるいは前記配列内の連続した5塩基を含み、Tmが50℃以上となる塩基配列を有するプライマーと、配列番号18に示される塩基配列、あるいは前記配列内の連続した5塩基を含み、Tmが50℃以上となる塩基配列を有するプライマーからなるプライマーセットを用いて、APC遺伝子 exon15内の高頻度変異発現領域の変異を解析することを特徴とする、大腸癌の検査方法を提供する。
前記方法は、さらに、配列番号11と12、配列番号13と14、配列番号15と16、配列番号19と20、配列番号20と21、配列番号22と23、及び配列番号24と25に示される各塩基配列、あるいは前記配列内の連続した5塩基を含み、Tmが50℃以上となる各塩基配列をそれぞれ有するプライマーセットから選ばれるいずれか1以上を用いて、APC遺伝子 exon15内の高頻度変異発現領域に存在する他の変異を解析してもよい。
本発明の方法は、上記したAPC遺伝子 exon15内の高頻度変異発現領域に存在する変異を解析する工程に加えて、さらに、配列番号1と2、配列番号3と4、配列番号5と6、及び配列番号7と8に示される各塩基配列、あるいは前記配列内の連続した5塩基を含み、Tmが50℃以上となる各塩基配列をそれぞれ有するプライマーセットから選ばれる1以上を用いてp53遺伝子内の変異を解析する工程、ならびに、配列番号9と10、あるいは前記配列内の連続した5塩基を含み、Tmが50℃以上となる塩基配列を有するプライマーセットを用いてK-ras遺伝子内の変異を解析する工程を含んでいてもよい。
なお、Tmが50℃以上になる塩基長は通常15〜30塩基長である。
なお、Tmが50℃以上になる塩基長は通常15〜30塩基長である。
本発明の方法における変異解析は、例えば、SSCP法、DGGE法、HDA法、あるいはこれらの変法等によって行うことができる。
本発明は、本発明の方法で用いられる、配列番号1と2、配列番号3と4、配列番号5と6、配列番号7と8、配列番号9と10、配列番号11と12、配列番号13と14、配列番号15と16、配列番号17と18、配列番号19と20、配列番号20と21、配列番号22と23、又は配列番号24と25に示される塩基配列、あるいは前記配列内の連続した5塩基を含み、Tmが50℃以上となる塩基配列を有するプライマーセットも提供する。
特に、配列番号17に示される塩基配列、あるいは前記配列内の連続した5塩基を含み、Tmが50℃以上となる塩基配列を有するプライマーと、配列番号18に示される塩基配列、あるいは前記配列内の連続した5塩基を含み、Tmが50℃以上となる塩基配列を有するプライマーからなるプライマーセットは、がん化に最も強く関連するものの、従来検出困難であった、APC遺伝子のexon15内の塩基番号85070におけるC/T変異を検出することができる。
本発明は、上記したプライマーセットを含む、大腸癌の検査キットも提供する。本発明のキットは、配列番号17に示される塩基配列、あるいは前記配列内の連続した5塩基を含み、Tmが50℃以上となる塩基配列を有するプライマーと、配列番号18に示される塩基配列、あるいは前記配列内の連続した5塩基を含み、Tmが50℃以上となる塩基配列を有するプライマーからなるプライマーセットを必須の構成要件とし、さらに、必要に応じて、上記した他のプライマーセットから選ばれる1以上を含む。
本発明によれば、APC遺伝子の高頻度変異発現領域に存在するがん化に関連した変異を簡便かつ再現性よく検出することができる。この検出結果と、K-ras遺伝子、p53遺伝子 exon5-8内に存在するがん化に関連した変異の検出結果を合わせて解析すれば、より正確で効率的な大腸癌の遺伝子検査が可能となる。
1.DNAサンプル
本発明に供するDNAサンプルの由来は、特に限定されず、例えば、細胞、組織(生検試料等)、全血、血清、脳脊髄液、精液、唾液、喀痰、尿、糞便、毛髪、細胞培養物等、DNAを含むあらゆる検体を使用することができる。これらは、新鮮なものであってもよいし、固定したものであってもよい。前記検体からのDNAサンプルの調製(例えば、細胞の溶解、核酸の抽出と精製など)は、公知の方法に基づいて実施できる。DNAサンプルは、好ましくは、適切な処理によってDNAポリメラーゼの反応を実施が可能な形態としたうえで本発明の方法に供する。例えば、大腸癌の遺伝子検査では、特開2005-46065に記載の方法によって取得した自然排出便由来のサンプル等を好適に用いることができる。
本発明に供するDNAサンプルの由来は、特に限定されず、例えば、細胞、組織(生検試料等)、全血、血清、脳脊髄液、精液、唾液、喀痰、尿、糞便、毛髪、細胞培養物等、DNAを含むあらゆる検体を使用することができる。これらは、新鮮なものであってもよいし、固定したものであってもよい。前記検体からのDNAサンプルの調製(例えば、細胞の溶解、核酸の抽出と精製など)は、公知の方法に基づいて実施できる。DNAサンプルは、好ましくは、適切な処理によってDNAポリメラーゼの反応を実施が可能な形態としたうえで本発明の方法に供する。例えば、大腸癌の遺伝子検査では、特開2005-46065に記載の方法によって取得した自然排出便由来のサンプル等を好適に用いることができる。
取得されたDNAサンプルは、公知のPCR法を用いて増幅して用いる。この場合、取得されたDNAサンプルは、その量に応じて、本発明のプライマーセットを用いて直ちに増幅しても良いし、あるいはいわゆるNested-PCR法( V. T. Smit et al. Nucleic Acids Res. (1988) Vol. 16: 7773-7782.)を用いて他のプライマーを用いて第1回目の増幅を行った後、本発明のプライマーセットを用いて第2回目の増幅を行ってもよい。
2.プライマーセット
本発明のプライマーセットはそれぞれ、野生型のAPC癌抑制遺伝子中、大腸癌で報告されているexon 15内の高頻度変異発現領域、同じく大腸癌で変異が報告されているp53遺伝子のexon5-8やK-ras遺伝子のコドン12、13の特定領域を増幅し、当該領域に存在するがん化に関連した変異を感度よく検出できるものである。
本発明のプライマーセットはそれぞれ、野生型のAPC癌抑制遺伝子中、大腸癌で報告されているexon 15内の高頻度変異発現領域、同じく大腸癌で変異が報告されているp53遺伝子のexon5-8やK-ras遺伝子のコドン12、13の特定領域を増幅し、当該領域に存在するがん化に関連した変異を感度よく検出できるものである。
本発明のプライマーセットの塩基配列の一例は表1に示される。しかしながら、ここに示される配列に限定されず、これら配列内の連続した5塩基を含み、Tmが50℃以上となるような塩基配列を有するプライマーセット(以下、これらを「実質的に等価なプライマーセット」と呼ぶ)もまた、目的の変異を解析しうる限り、本発明のプライマーセットに含まれる。
本発明で用いられるプライマーの長さは、それが鋳型への正しいアニーリングが起こるのに十分、すなわちTmが50℃以上となるものであればよい。そのような塩基長は、通常15〜35塩基長であり、好ましくは22〜30塩基長である。
本発明のプライマーをPCRに用いる際には、これらプライマーの5’末端には蛍光等の標識を付加し、増幅産物の検出を容易ならしめることが望ましい。例えば異なる標識マーカー(蛍光色)で、ForwardプライマーとReverse プライマーを標識することにより、移動度差がわずかな変異バンドの検出や、片鎖あたり2本以上の複数バンドが見られる場合の変異バンド検出が可能になる。
プライマーの標識に用いられる蛍光分子としては、XRITC、フルオレセイン、ローダミン、テキサスレッド、FAM、JOE、TAMRA、ROX、HEX、TET、Cy3、Cy3.5、Cy5、Cy5.5、IRD40、IRD41、及びBODIPYが挙げられるが、これらに限定されるものではない。なお、「XRITC」はローダミン-β-イソチオシアネートの略称であり、「FAM」は5'−カルボキシ−フルオレセインの略称であり、「JOE」は2',7'−ジメトキシ−4',5'−ジクロロ−6−カルボキシ−フルオレセインの略称であり、「TAMRA」はN,N,N',N'−テトラメチル−6−カルボキシ−ローダミンの略称であり、「ROX」は6−カルボキシ−X−ローダミンの略称である。
一方、プライマーを蛍光標識することなくPCRあるいは電気泳動等を行い、その終了後に核酸染色することによって目的とするバンドを検出してもよい。
3.変異の検出方法
本発明のプライマーセットは、PCRによる増幅産物中の変異を電気泳動的に簡便に検出することができる。そのような電気泳動的変異検出方法としては、SSCP法、DGGE(Denaturing Gradient Gel Electrophoresis)法及びその変法、あるいはHDA(Heteroduplex Analysis)法などが挙げられるが、担体(ゲルポリマー)中で変異によるDNAの構造変化を検出しうる方法であればいずれの方法であってもよい。
本発明のプライマーセットは、PCRによる増幅産物中の変異を電気泳動的に簡便に検出することができる。そのような電気泳動的変異検出方法としては、SSCP法、DGGE(Denaturing Gradient Gel Electrophoresis)法及びその変法、あるいはHDA(Heteroduplex Analysis)法などが挙げられるが、担体(ゲルポリマー)中で変異によるDNAの構造変化を検出しうる方法であればいずれの方法であってもよい。
例えばSSCPで変異解析を行う場合、平板ゲルを用いたSSCPの場合では、図1に示すように変異無しサンプルに比べ変異ありサンプルでは泳動度の違いを示すバンドが現れる。また、キャピラリーを用いたSSCPの場合では、図2に示すように変異無しサンプルに比べ変異ありサンプルでは泳動度の違いを示すピークが現れる。このように、電気泳動的な検出方法では、きわめて簡便に遺伝子内の変異を検出することができる。
4.大腸癌の検査方法
大腸癌の発症機序として、APC遺伝子、K-ras遺伝子、p53遺伝子の順に変異が起こり、がん化が進むという可能性が提唱されている。すなわち大腸癌検診を遺伝子変異の検出で行うためには、特にAPC遺伝子での変異を効率よく検出できることが重要である。また、がん組織の染色体上のAPC遺伝子で高頻度に変異が検出される領域がexon15内にあることが知られている。特に、APC遺伝子のexon15内に存在する塩基番号85070でのC/T変異は、がん化に最も強く関連しているにもかかわらず、従来検出が困難であった。
大腸癌の発症機序として、APC遺伝子、K-ras遺伝子、p53遺伝子の順に変異が起こり、がん化が進むという可能性が提唱されている。すなわち大腸癌検診を遺伝子変異の検出で行うためには、特にAPC遺伝子での変異を効率よく検出できることが重要である。また、がん組織の染色体上のAPC遺伝子で高頻度に変異が検出される領域がexon15内にあることが知られている。特に、APC遺伝子のexon15内に存在する塩基番号85070でのC/T変異は、がん化に最も強く関連しているにもかかわらず、従来検出が困難であった。
本発明では、配列番号17と18に示される塩基配列を有するプライマーセットあるいはこれと実質的に等価なプライマーセットを用いて、がん化に最も強く関連しているにもかかわらず、従来検出が困難とされていたAPC遺伝子のexon15内の塩基番号85070におけるC/T変異等を検出することで、大腸癌患者をスクリーニングする。
必要に応じて、他の配列番号1〜16及び19〜25に示される塩基配列を有する各プライマーセット、あるいはこれらと実質的に等価なプライマーセットを用いて、APC遺伝子のexon15内に存在する他のがん化に関連した変異を解析する。さらに、配列番号9と10に示される塩基配列を有するプライマーセットあるいはこれと実質的に等価なプライマーセットを用いてK-ras遺伝子内のがん化に関連した変異を解析し、配列番号1〜8に示される塩基配列を有する各プライマーセットあるいはこれらと実質的に等価なプライマーセットを用いて、p53遺伝子 exon5-8内に存在するがん化に関連した変異を解析し、その結果を上記のAPC遺伝子 exon15内の変異解析結果とあわせて大腸癌の有無を判断すれば、より正確な検査が可能となる。
5.大腸癌の検査キット
本発明の大腸癌の検査キットは、前記した本発明のプライマーセットのほか、プライマーの標識、目的DNA断片の合成、DNA断片の検出等、本発明の検査方法の実施に必要な他の試薬、器具等を適宜含んでいてもよい。そのような試薬や器具としては、DNAキナーゼ、DNAポリメラーゼ、サーマルサイクラー、電気泳動器具等が挙げられる。
本発明の大腸癌の検査キットは、前記した本発明のプライマーセットのほか、プライマーの標識、目的DNA断片の合成、DNA断片の検出等、本発明の検査方法の実施に必要な他の試薬、器具等を適宜含んでいてもよい。そのような試薬や器具としては、DNAキナーゼ、DNAポリメラーゼ、サーマルサイクラー、電気泳動器具等が挙げられる。
以下、実験例により本発明を具体的に説明するが、本発明の技術的範囲はこれに限定されるものではない。
実施例1:標的遺伝子上の塩基変異の検出
1.材料及び方法
(1)テンプレートの作成
がん検体及び正常検体はがん患者の手術に際し切除された組織より入手した。これらの検体は、入手後ただちにエッペンドルフチューブに入れ、−80℃にてDNA抽出に供するまで保存した。DNA抽出はセパジーン(三光純薬株式会社)を用いて行った。
実施例1:標的遺伝子上の塩基変異の検出
1.材料及び方法
(1)テンプレートの作成
がん検体及び正常検体はがん患者の手術に際し切除された組織より入手した。これらの検体は、入手後ただちにエッペンドルフチューブに入れ、−80℃にてDNA抽出に供するまで保存した。DNA抽出はセパジーン(三光純薬株式会社)を用いて行った。
抽出したゲノムから、APC exon 15の高頻度変異発現領域を含む800塩基程度、p53の高度変異領域であるexon5、6、7、8及び K-rasのexon2、すなわち第12、13番目のアミノ酸をコードする領域をPCRで増幅し塩基配列解析を行い、変異を含むサンプルと含まないサンプルそれぞれを取得した(Matsushita 等、Gastroenterology, (2005)Vol. 129, Issue 6:1918-1927 参照)。
(2)SSCP用プライマーの調製
SSCPサンプル調整のためのプライマーはoligo ver.6.3(TaKaRa)、オンライン PCR primer設計ソフト等を用いて、目的のDNA断片、アニーリング温度にあわせて設計した。設計したプライマー配列と検出対象を表1にまとめて示す。各プライマーはそれぞれの5’末端に蛍光ラベル(ROX)を合成時に導入し、HPLC精製を行ったものを使用した。
SSCPサンプル調整のためのプライマーはoligo ver.6.3(TaKaRa)、オンライン PCR primer設計ソフト等を用いて、目的のDNA断片、アニーリング温度にあわせて設計した。設計したプライマー配列と検出対象を表1にまとめて示す。各プライマーはそれぞれの5’末端に蛍光ラベル(ROX)を合成時に導入し、HPLC精製を行ったものを使用した。
(3)PCR反応
PCR増幅を総体積30μl中で行った: dNTP それぞれ0.025mM 塩化カリウム 50mM 塩化マグネシウム 1.5mM Tris-HCl 10mM pH8.4 、ゼラチン 0.01% 、 Taqポリメラーゼ 1.0単位(AmpliTaq DNAポリメラーゼ,Perkin Elmer,米国コネティカット州)、ゲノムDNAサンプルおよそ10ngを鋳型とし、SSCP用プライマー各2 pmoleを用いた。
94℃で3分間鋳型DNAを熱変性した。PCRの1サイクルは、94℃で20秒間の変性、断片ごとに検討したアニール温度(好ましくは、反応溶液内で相補プライマー配列とゲノム断片との間に二重鎖形成が起こるようなハイブリダイジング条件)、50-68℃で40秒間のアニーリング、72℃で1分間の伸長からなる。最後のサイクル後、反応管を伸長温度で5分間維持した。増幅するPCR断片長は約150-380塩基とした。
PCR増幅を総体積30μl中で行った: dNTP それぞれ0.025mM 塩化カリウム 50mM 塩化マグネシウム 1.5mM Tris-HCl 10mM pH8.4 、ゼラチン 0.01% 、 Taqポリメラーゼ 1.0単位(AmpliTaq DNAポリメラーゼ,Perkin Elmer,米国コネティカット州)、ゲノムDNAサンプルおよそ10ngを鋳型とし、SSCP用プライマー各2 pmoleを用いた。
94℃で3分間鋳型DNAを熱変性した。PCRの1サイクルは、94℃で20秒間の変性、断片ごとに検討したアニール温度(好ましくは、反応溶液内で相補プライマー配列とゲノム断片との間に二重鎖形成が起こるようなハイブリダイジング条件)、50-68℃で40秒間のアニーリング、72℃で1分間の伸長からなる。最後のサイクル後、反応管を伸長温度で5分間維持した。増幅するPCR断片長は約150-380塩基とした。
(4)SSCP解析
PCRで増幅した断片を14%ポリアクリルアミドゲル(13.86%(W/V)アクリルアミド、1.4%(W/V)N,N’メチレンビスアクリルアミド)でTBEバッファー(89mM Boric acid、2mM EDTAを含む89mM Tris-HCl buffer, pH8.0)を用いて電気泳動した。解析はFMBIO等の蛍光スキャナーを用いた。電気泳動は平板ゲルにて行った。泳動条件は電界印加約70V/cmで一定とし、温度(5-30℃)と時間(2-4h)について断片ごとに最適分離条件を検討した。
PCRで増幅した断片を14%ポリアクリルアミドゲル(13.86%(W/V)アクリルアミド、1.4%(W/V)N,N’メチレンビスアクリルアミド)でTBEバッファー(89mM Boric acid、2mM EDTAを含む89mM Tris-HCl buffer, pH8.0)を用いて電気泳動した。解析はFMBIO等の蛍光スキャナーを用いた。電気泳動は平板ゲルにて行った。泳動条件は電界印加約70V/cmで一定とし、温度(5-30℃)と時間(2-4h)について断片ごとに最適分離条件を検討した。
なお、試料は配列解析によりすでに変異の内容が既知のものを用いた。また、変異位置の塩基番号は、NCBIのデータベースに登録されている以下の配列に基づき決定した。
p53遺伝子
>ref|NC_000017.9|NC_000017:c7531642-7512464 Homo sapiens chromosome 17, complete sequence
K-ras遺伝子
>ref|NC_000012.9|NC_000012:c25295121-25249447 Homo sapiens chromosome 12, complete sequence
APC遺伝子
>ref|NC_000005.8|NC_000005:112118469-112209533 Homo sapiens chromosome 5, complete sequence
p53遺伝子
>ref|NC_000017.9|NC_000017:c7531642-7512464 Homo sapiens chromosome 17, complete sequence
K-ras遺伝子
>ref|NC_000012.9|NC_000012:c25295121-25249447 Homo sapiens chromosome 12, complete sequence
APC遺伝子
>ref|NC_000005.8|NC_000005:112118469-112209533 Homo sapiens chromosome 5, complete sequence
2.結果
表1の配列1から10までのプライマーによるp53 exon5-8とK-rasコドン12、13の解析結果を表2に示す。また、表1の配列11から25のプライマーによるAPC遺伝子exon15内、高頻度変異発現領域の解析結果を表3に示す。表中、「変異」は{変異前DNA/変異後DNA}として表記した。「アミノ酸変異」はDNA変異の結果起こったアミノ酸の変化を{変化前アミノ酸(アミノ酸番号)変化後アミノ酸}として表記した。「変異検出」はSSCPのバンドパターン変化として変異が検出された場合(○)、変異が検出されなかった場合を(×)として表記した。
表1の配列1から10までのプライマーによるp53 exon5-8とK-rasコドン12、13の解析結果を表2に示す。また、表1の配列11から25のプライマーによるAPC遺伝子exon15内、高頻度変異発現領域の解析結果を表3に示す。表中、「変異」は{変異前DNA/変異後DNA}として表記した。「アミノ酸変異」はDNA変異の結果起こったアミノ酸の変化を{変化前アミノ酸(アミノ酸番号)変化後アミノ酸}として表記した。「変異検出」はSSCPのバンドパターン変化として変異が検出された場合(○)、変異が検出されなかった場合を(×)として表記した。
表2に示されるとおり、今回検討した試料の変異は配列1から10のプライマーセットにより全て検出可能であることが確認された。
表3に示されるとおり、配列19と20のプライマーセットにおいては塩基番号85070でのC/T変異(アミノ酸としてはコドン1450のRが停止コドンに変わる変異)が検出されなかった。配列20と21のプライマーセットにおいては塩基番号85070でのC/T変異、塩基番号85101での1塩基欠損変異(アミノ酸としてはコドン1460のAがVに変わる変異)が検出されなかった。配列22と23のプライマーセットにおいては塩基番号85101での1塩基欠損変異が検出されなかった。上記2セットで共通して検出されなかった塩基番号85070でのC/T変異は配列17と18のプライマーセットにより検出可能であった。以上の結果から、今回検討した試料の変異は、配列11から25のセットにより、塩基番号85101での1塩基欠損変異以外は、最も重要な塩基番号85070でのC/T変異を含めて全て検出可能であることが確認された。
ところで、塩基番号85070でのC/T変異はがんによって高頻度に起こることが知られている重要な変異である。これまでの知見から、APCはがん化転写因子作用をもつ細胞接着因子であるβ−カテニンの分解に機能しているとされる。しかし塩基番号85070でのC/T変異をもつAPC遺伝子からはβ−カテニン結合部分の大半を失った不完全なAPCたんぱく質のみが生産されうる。そのため不完全なAPCたんぱく質はβ−カテニンと結合できず、β−カテニンのがん化転写因子作用を抑制できなくなり、がん抑制遺伝子としての機能を失うと考えられている。
前述したようにこの塩基番号85070でのC/T変異はSSCP解析困難なAT(アデニン、チミン)が多い領域に存在しており、従来はSSCPでの検出は困難であった。しかし、配列17-18のプライマーセットを用いることで、このがん化に強く関係していると考えられる重要な変異がSSCPにより検出できることが示された。
3.検証
配列上SSCP解析が困難なAPCコドン1450付近の本特許のプライマーセットによる変異検出結果を、標準的基準で設計したプライマーによる変異検出結果と比較検証した。
配列上SSCP解析が困難なAPCコドン1450付近の本特許のプライマーセットによる変異検出結果を、標準的基準で設計したプライマーによる変異検出結果と比較検証した。
すなわち、APC解析用にAPCコドン1450が200塩基前後のPCR断片中央部になるよう塩基長や位置を検討して設計した配列17から19のプライマーセットと、広い範囲の変異を網羅するための配列20と21のプライマーセットによる検出結果を、標準的基準(塩基長20塩基程度、Tm50℃以上、DNA断片長300塩基程度という条件を設定してプライマー設計ソフトで自動設計)で設計した、以下のプライマー1と2、及びプライマー3と4の2セットによる検出結果と比較した。
プライマー1(Forward):5'-GACTGCAGGGTTCTAGTTTATC-3'(配列番号26)
プライマー2(Reverse):5'-TAGGTGCTTTATTTTTAGGTACTTC-3'(配列番号27)
プライマー3(Forward):5'-GCCCCAGTGATCTTCCAGATAG-3'(配列番号28)
プライマー4(Reverse):5'-GGAGGCATTATTCTTAATTCCACAT-3'(配列番号29)
プライマー1(Forward):5'-GACTGCAGGGTTCTAGTTTATC-3'(配列番号26)
プライマー2(Reverse):5'-TAGGTGCTTTATTTTTAGGTACTTC-3'(配列番号27)
プライマー3(Forward):5'-GCCCCAGTGATCTTCCAGATAG-3'(配列番号28)
プライマー4(Reverse):5'-GGAGGCATTATTCTTAATTCCACAT-3'(配列番号29)
結果を表4に示す。プライマーの設定上、検出不可能な位置の変異については対応する欄を交差斜線により除外した。
プライマー1と2、プライマー3と4の2セットでは検出できない変異が複数存在した。これに対し、配列17-21のプライマーを組み合わせて使用すると、配列上SSCPでの検出が困難とされるexon15内コドン1450付近の変異の多くが検出できた。とくに配列17-18の組み合わせは、細胞のがん化に強く関係するとされる塩基番号85070でのC/T変異(アミノ酸としてはコドン1450のRが停止コドンに変わる変異)を検出することができた。
表2-1から表2-4に示されるとおり、配列1-8のプライマーセットにより、今回検討したp53遺伝子exon5-8内の変異は全て検出可能であることが示された。また、表2-5に示されるとおり、配列9と10のプライマーセットにより、今回検討したK-ras遺伝子のコドン12、13内の変異は全て検出可能であることが示された。さらに、表3より、配列11-25のプライマーセットにより今回検討したAPC exon15内の変異のほとんどが検出可能であることが示された。
以上のことから、本発明の方法は、大腸癌の遺伝子診断に有効であることが、実際の臨床検体を用いた試験により実証された。
本発明によれば、従来検出が困難であったAPC遺伝子の高頻度変異発現領域の変異を簡便かつ再現性よく検出することができる。さらに、この結果と、K-ras遺伝子、p53遺伝子 exon5-8内に存在するがん化に関連した変異の検出結果を合わせて解析すれば、より正確で効率的な大腸癌の遺伝子検査が可能となる。よって、本発明は、大腸癌の早期診断を必要とする医療分野はもとより、がん化のメカニズムの解明等を目的とした研究分野において有用である。
配列番号1〜29−人工配列の説明:プライマー
Claims (10)
- 被験者から単離されたDNAサンプルに対し、配列番号17に示される塩基配列、あるいは前記配列内の連続した5塩基を含み、Tmが50℃以上となる塩基配列を有するプライマーと、配列番号18に示される塩基配列、あるいは前記配列内の連続した5塩基を含み、Tmが50℃以上となる塩基配列を有するプライマーからなるプライマーセットを用いて、APC遺伝子 exon15内の高頻度変異発現領域の変異を解析することを特徴とする、大腸癌の検査方法。
- さらに、配列番号11と12、配列番号13と14、配列番号15と16、配列番号19と20、配列番号20と21、配列番号22と23、及び配列番号24と25に示される各塩基配列、あるいは前記配列内の連続した5塩基を含み、Tmが50℃以上となる各塩基配列をそれぞれ有するプライマーセットから選ばれるいずれか1以上を用いて、APC遺伝子 exon15内の高頻度変異発現領域の変異を解析することを特徴とする、請求項1に記載の大腸癌の検査方法。
- さらに、配列番号1と2、配列番号3と4、配列番号5と6、及び配列番号7と8に示される各塩基配列、あるいは前記配列内の連続した5塩基を含み、Tmが50℃以上となる各塩基配列をそれぞれ有するプライマーセットから選ばれる1以上を用いてp53遺伝子内の変異を解析すること、及び/又は、
配列番号9と10に示される各塩基配列、あるいは前記配列内の連続した5塩基を含み、Tmが50℃以上となる塩基配列をそれぞれ有するプライマーセットを用いてK-ras遺伝子内の変異を解析することを特徴とする、請求項1又は2に記載の大腸癌の検査方法。 - 変異の解析がSSCP法、DGGE法、及びHDA法、ならびにこれらの変法から選ばれるいずれかの方法によって行われることを特徴とする、請求項1〜3のいずれか1項に記載の大腸癌の検査方法。
- 配列番号1と2、配列番号3と4、配列番号5と6、配列番号7と8、配列番号9と10、配列番号11と12、配列番号13と14、配列番号15と16、配列番号17と18、配列番号19と20、配列番号20と21、配列番号22と23、又は配列番号24と25に示される各塩基配列、あるいは前記配列内の連続した5塩基を含み、Tmが50℃以上となる各塩基配列をそれぞれ有するプライマーセット。
- 配列番号17に示される塩基配列、あるいは前記配列内の連続した5塩基を含み、Tmが50℃以上となる塩基配列を有するプライマーと、配列番号18に示される塩基配列、あるいは前記配列内の連続した5塩基を含み、Tmが50℃以上となる塩基配列を有するプライマーからなるプライマーセット。
- プライマーの塩基長が15〜30塩基長である、請求項5又は6に記載のプライマーセット。
- 配列番号17に示される塩基配列、あるいは前記配列内の連続した5塩基を含み、Tmが50℃以上となる塩基配列を有するプライマーと、配列番号18に示される塩基配列、あるいは前記配列内の連続した5塩基を含み、Tmが50℃以上となる塩基配列を有するプライマーからなるプライマーセットを含む、大腸癌の検査キット。
- さらに、配列番号1と2、配列番号3と4、配列番号5と6、配列番号7と8、配列番号9と10、配列番号11と12、配列番号13と14、配列番号15と16、配列番号19と20、配列番号20と21、配列番号22と23、及び配列番号24と25に示される塩基配列、あるいは前記配列内の連続した5塩基を含み、Tmが50℃以上となる塩基配列を有するプライマーセットから選ばれるいずれか1以上を含む、請求項8に記載の大腸癌の検査キット。
- プライマーの塩基長が15〜30塩基長である、請求項8又は9に記載の大腸癌の検査キット。
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JP2006103224A JP2007274926A (ja) | 2006-04-04 | 2006-04-04 | 大腸癌検査方法、そのためのプライマー及びキット |
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WO2010113529A1 (ja) | 2009-04-03 | 2010-10-07 | 国立大学法人山口大学 | 大腸腫瘍の検出方法 |
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- 2006-04-04 JP JP2006103224A patent/JP2007274926A/ja active Pending
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