JP2007273245A - 有機発光素子及び表示装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】有機発光素子からの十分な光取り出しを維持しつつ、外光反射を低減する。
【解決手段】光取り出し面側から順に、偏光シート11、プリズムシート12、位相シート13、および一対の電極間に配置された有機発光層を有する有機EL素子14を配置する。プリズムシートを2枚構成とした場合には、有機EL素子側に配置されたプリズムシートの頂角は、光取り出し面側に配置されたプリズムシートの頂角以下とすることが好ましい。さらに、各プリズムシートは、ピッチ方向が互いに直交するように配置することが好ましい。また、偏光シートの延伸方向と、光取り出し面側に配置されたプリズムシートのピッチ方向とを互いに直交させることが好ましい。
【選択図】図1

Description

本発明は有機発光素子及びこの有機発光素子を用いた自発光タイプの表示装置に係り、特に、発光画素からの光取り出し効率を向上させた有機発光素子及び表示装置に関するものである。
有機EL素子などの自発光素子では、発光素子から発射された光のうち、例えば素子基板と空気との界面において、臨界角よりも大きな角度で入射した光は全反射される。このため、実際は全発光の20%程度の光しか外部に取り出すことができないという問題があった。そこで、発光素子の光取り出し面に凹凸などを設けることで、光取り出し効率を向上させる技術が提案されている。
このような技術として、光源が自発光タイプの有機ELディスプレイの表面に、円偏光板、マイクロレンズを順に積層した技術が開示されている(特許文献1参照)。
また、光源が自発光タイプの有機EL素子の表面に、偏光分離再結合フィルム、円偏光板を順に積層した技術が開示されている(特許文献2参照)。
特開2002−216947号公報 特開2004−70094号公報
しかし、特許文献1に記載されている有機ELディスプレイは、マイクロレンズ表面で外光が反射することを防止できないため、外光反射を防止する効果を十分に得ることができない。
また、特許文献2に記載されている有機EL素子は、斜め方向から入射した外光の反射を十分に防ぐことができない。
そこで、本発明は、発光素子からの十分な光取り出しを維持しつつ、外光反射を低減することのできる有機発光素子を提供することを目的とする。
本発明の有機発光素子は、一対の電極間に配置された有機発光層を有する有機EL素子と、プリズムシートと、偏光シートと、位相シートとを有する有機発光素子である。この有機発光素子は、光取り出し面側から順に、偏光シート、プリズムシート、位相シート、および有機EL素子を配置したことを特徴とする。
本発明の有機発光素子では、光取り出し面側から順に、偏光シート、プリズムシート、位相シート、および有機EL素子を配置している。このような構成からなる有機発光素子では、偏光シート及び位相シートにより、外光反射を低減することができる。また、プリズムシートにより、光取り出しの効率を高めることができる。さらに、光取り出し面側から順に、偏光シート、プリズムシート、位相シートを配置することにより、プリズムシートが外光反射の低減に影響を与えることなく、良好な発光を得ることができる。
このように、本発明の有機発光素子によれば、十分な光取り出しを維持しつつ、外光反射を低減することができる。
以下、本発明の有機発光素子及びこれを用いた表示装置を実施するための最良の形態を説明する。なお、本発明の有機発光素子及びこれを用いた表示装置は、以下に説明する実施形態に限定されるものではない。
本発明の実施形態に係る有機発光素子は、光取り出し面側から順に、偏光シート、プリズムシート、位相シート、有機EL素子が配置されている。また、本発明の実施形態に係る表示装置は、この有機発光素子を複数有して構成されている。ここで、表示装置は矩形状のパネルからなり、該表示装置の長手方向と、光取り出し面側に配置されたプリズムシートのピッチ方向とが直交するように、該プリズムシートが配置されていることが好ましい。
次に、本発明の実施形態に係る有機発光素子を構成する部材について説明する。
有機EL素子とは、一対の電極間に配置された有機発光層を備えた積層体のことである。
偏光シートとは、あらゆる方向に振動している光から一定方向にのみ振動する直線偏光を取り出す機能を有するシートのことである。例えば、偏光シートとして、一軸に延伸されたポリビニルアルコールフィルムにヨウ素などの二色性色素を吸着配向したものが使用される。
位相シートとは、偏光シートによって偏光状態となった光に対して位相差を与えることにより、位相差を補償する機能を有するシートのことである。本実施形態の位相シートは、ほぼ1/4λの位相差を与え、直線偏光を円偏光に変換するとともに、円偏光を直線偏光に変換する機能を有している。位相シートの材料としては、例えばポリカーボネートの一軸延伸配向フィルムなどを用いることができる。
一般的に、偏光シートと位相シートとを組み合わせたものを円偏光板と称し、偏光シートと位相シートにより、外部から入射してくる光の反射を防ぐことができる。
プリズムシートとは、有機EL素子の光取り出し面と接する面の反対側に、凸部が複数設けられた光透過性を有する部材のことである。このプリズムシートの凸部の形状は、角錐、角錐台、三角柱などであることが好ましい。
凸部を角錐形状とすると、光取り出し方向への集光効果が大きいことが期待されるが、反面、シート成形用の金型作製や、シート製造プロセスが難しくなる難点がある。
これに対して凸部を三角柱形状としたプリズムシートは、バックライトの輝度上昇フィルムとしてすでに商品化されていることもあり、低コストで導入できる利点がある。
凸部の高さ、底面の形状は最適化され、凸部面の傾斜が所定の角度に近くなるように、錘状体、三角柱が敷き詰められている。具体的には、凸部の形状として、底辺が1μm乃至100μm、高さが0.1μm乃至200μm程度に設定される。凸部面の傾斜角度は、錘状体、三角柱の頂角で、30度乃至160度程度とすることができる。
ここで、回折の影響でシートが色味を帯びないようにするためには、1μm以上のピッチサイズの凸部とすることが好ましい。また、有機発光素子を用いた表示装置を観察する際に画像の滲みを感じないためには、画素ピッチを超えないサイズ(通常100μm程度)が好ましい。
なお、ピッチとは、隣り合う凸部の頂点間の距離のことである。図8を参照して、プリズムシートのピッチについて説明する。図8は、プリズムシートを上面から見た状態の概念図である。図8において、ピッチは符号dで示されている。また、ピッチ方向とは、図8に示すように、隣り合う凸部の頂点を結ぶ直線方向のことである。図8(a)に示すように、三角柱形状の凸部を有するプリズムシートの場合にはピッチ方向は1方向であるが、図8(b)に示すように角錐形状、あるいは角錐台形状の凸部を有するプリズムシートの場合にはピッチ方向は2方向となる。
このプリズムシートを作製するには、透明シートを用いて凸パターンを形成する。シート材料としては、ポリメタクリル酸メチル(PMMA)、ポリカーボネート(PC)、セルローストリアセテート(TAC)、ガラスなどを用いることができる。各シート材料の屈折率は、それぞれ1.49乃至1.57程度であり、ほぼ同様の値となっている。
凸部を形成するには、まず、フォトリソグラフィ技術を用いてレジスト凸パターンを形成し、電鋳技術を用いてパターン転写した凹金型を作製する。次に、この凹金型を用いて前記透明シートを加熱圧縮成形して凸部パターンを得ることができる。あるいは、光硬化性樹脂を用いてシート上に凸パターンを転写した後、この光硬化性樹脂を紫外線硬化するなどの工程により凸パターンを形成してもよい。
液晶用バックライトの輝度上昇フィルムなどとして用いられる三角柱凸パターンシートを作製するには、シリンダーの金型を用いる場合がある。具体的な作成工程は、まず、銅メッキなどで表面平坦処理を施したシリンダーを回転させて、ダイヤモンドバイトなどで所定の溝凹パターンを切削形成する。次に、このシリンダーを用いて印刷の要領で、凸パターンを形成する。すなわち、シリンダーの凹溝部に光硬化性樹脂を含ませ、シリンダーを回転させながら、透明シート面に光硬化性樹脂による凸部パターンを転写する。次に、紫外線を照射して凸部パターンを硬化する。この方式では、透明シート部材の厚さを数μmまで薄くしても良好な凸部パターン形状を得ることができ、金型の作製、プリズムシート作製ともに低コストとすることができるという利点がある。
以下、図面に基づいて、本発明の実施形態に係る有機発光素子を説明する。図1は本発明の実施形態に係る有機発光素子を示すもので、図1(a)は縦断面を示す模式図であり、図1(b)は立体的に表した概念図である。
本発明の実施形態に係る有機発光素子は、図1(a)及び図1(b)に示すように、光取り出し面側から順に、偏光シート11、プリズムシート12、位相シート13、および有機EL素子14を配置することにより構成されている。また、有機EL素子14は、図1(b)に示すように、一対の電極間に有機発光層を配置した構成となっている。
この有機発光素子において、有機EL素子14からの発光は、プリズムシート12を透過する際にプリズム面で屈折され、正面方向へ集光された後、偏光シート11を透過して、観察方向へ取り出される。
一方、有機発光素子の光取り出し面から入射した外光は偏光シート11を通過する。この際、一定方向にのみ振動する直線偏光が通過し、通過した偏光成分はプリズムシート12を透過し、位相シート13を通過して円偏光に変換された後、有機EL素子14の反射電極で反射される。なお、円偏光は、反射時に回転方向が反転する。この反射光は再び位相シート13を通過して、最初に偏光シート11を通過した直線偏光と直交する直線偏光に変換され、プリズムシート12を透過した後、偏光シート11に入射する。しかしながら、この直線偏光は偏光シート11で吸収されてしまうため、最終的に有機発光素子の光取り出し面の外側から入射した外光は、観察方向へは取り出されず、外光反射防止の効果を奏することができる。
有機発光素子の光取り出し面の外側から入射し偏光シート11を通過した外光は、プリズムシート12で一部反射するが、反射した光は偏光シートで吸収されるため観察方向へは取り出されず、外光反射防止の効果を奏することができる。すなわち、本実施形態の有機発光素子では、光取り出し面側から順に、偏光シート11、プリズムシート12、位相シート13が配置されているため、プリズムシート12で反射する光が偏光シート11で吸収されて、外光反射防止の効果を低減させることがない。
なお、本実施形態では、プリズムシートが1枚の有機発光素子について説明したが、プリズムシートは複数枚であってもよく、例えば2枚のプリズムシートを用いることができる。プリズムシートが複数枚である場合には、各プリズムシートが積層された状態にあることが好ましい。
また、有機EL素子は、公知の素子構成、素子材料を適宜利用することができる。特に、本発明の実施形態では、有機EL素子として、光取り出しを上部電極側から行うトップエミッション素子を用いている。
図2は、本発明の実施形態に係る有機発光素子の構造例を示す縦断面図である。
この有機EL素子は、駆動用回路などがあらかじめ設けられた基板21に対して、真空蒸着法で有機EL膜を形成したものである。
基板21にはあらかじめ50nmの厚さで100μm四方のCrからなる金属アノード電極22が、200μmピッチで2次元パターン形成されている。アノード電極材料としては、Crの他に反射率の高いAl,Agなどを用いてもよく、正孔注入性を高めるために、ITO,IZOなどの透明導電膜を金属アノード電極22の上に積層することも可能である。
以下、有機EL素子の製造工程を説明する。有機EL素子を製造するには、まず初めに、有機EL材料である正孔輸送層23として、α−NPDを20nmの厚さに積層する。次に、発光層24として、Alq3を30nmの厚さに積層する。次に、電子注入層25として、炭酸セシウムとAlq3の混合膜を50nmの厚さに積層する。
次に、透明カソード電極26として、ITO膜をスパッタ法により60nmの厚さに積層することにより、有機EL素子が製造される。
この素子構成では、Alq3分子のEL発光は、正孔輸送層23とAlq3発光層24の界面で起こることが知られている。
また、透明保護膜27として、カソード電極26の表面に、スパッタ法によりSiN膜を640nmの厚さに積層させることができる。この透明保護膜27を配置することにより、外部からの水分が有機層に侵入することを防ぐことができる。
透明保護膜27としては、例えば特開平11−97169号公報に開示されているように、ケイ素、ホウ素、ゲルマニウムなどを主成分とした酸化物、窒化物、硫化物材料の膜が適している。なお、酸素、水分などの遮断効果が得られる膜厚は、300nm乃至10μm程度である。また、膜応力を小さくすること及び成膜時間を短くして生産性を高めることを考えると、透明保護膜27の膜厚は300nm乃至5μm程度であることが望ましい。
以下、図面に基づいて、本発明の有機発光素子の具体的な実施例を説明する。
図9は、本発明の有機発光素子の具体的な実施例におけるプリズムシート、偏光シート、及び位相シートの断面を示す模式図である。本実施例は、プリズムシートが2枚の構成の有機発光素子となっている。
<プリズムシート、偏光シート、及び位相シートの貼り合わせ>
まず、プリズムシート、偏光シート、及び位相シートの貼り合わせについて説明する。
本実施例では、頂角45度、ピッチ15μmの三角柱プリズムパターンを逆波長分散位相板(サンリッツ製:厚さ70μmシート)上に成形し、これをシートAとした。つまり、シートAは、プリズムシートと位相シートを積層したものである。
同様に、シリンダー型を利用して、頂角90度、ピッチ15μmの三角柱プリズムパターンを形成し、これをシートBとした。この三角柱プリズムパターンは、50μmの厚さのTACシート上にアクリル系光硬化性樹脂を転写して、紫外線硬化により成形したものである。このシートBは、プリズムシートに相当する。
また、偏光シート(サンリッツ製:厚さ100μmシート)を用意し、これをシートCとした。
そして、シートBにシートCを重ねた。この際、偏光シートの延伸方向と、シートBのプリズムピッチ方向が直交するように、かつシートBの凹凸面が偏光シートC側となるように、シートBとシートCとを重ねた。このようにすることで、シートBとシートCとを重ねた際に、偏光シート側から見てプリズム面との干渉縞が見えにくくなる。なお、本実施例において、直交するようにとは、偏光シートの延伸方向とシートBのプリズムピッチ方向とが厳密に90度をなしていなくてもよく、20度程度の誤差があってもよい。
次に、重ね合わされたシートBとシートCに対して、シートB側に、シートAを重ねた。
この際、シートAのプリズムピッチ方向とシートBのプリズムピッチ方向が直交するように、かつシートAの凹凸面がシートB側となるようにして、重ね合わされたシートBとシートCに対して、シートAを重ねる。このようにして、シートB、シートC及びシートAが重ね合わされたものが、貼り合わせシートとなる。なお、本実施例において、直交するようにとは、シートAのプリズムピッチ方向とシートBのプリズムピッチ方向とが厳密に90度をなしていなくてもよく、数度の誤差があってもよい。
貼り合わせシート(A,B,C)を作成するには、各シートにあらかじめ粘着層を設けておき圧着してもよいし、減圧環境において加熱圧着してもよい。
プリズムシートが1枚の場合は、シートAは付加されず、シートBだけがある貼り合わせシート(B,C)を作製する。この場合はシートBの基材を位相シートとするか、有機発光素子側に、位相シートを挿入する。また3枚目以降のプリズムシートを付加する場合は、同様にして有機発光素子側に新たに付加すればよい。
<有機EL素子と貼り合わせシートとの貼り合わせ>
本実施例の有機発光素子は、有機EL素子と前記貼り合わせシートを貼り合わせることにより形成される。有機EL素子と貼り合わせシートを貼り合わせる際には、以下に説明するように重ねることが好ましい。なお、以下の説明においてパネルとは、複数の有機発光素子を有する表示装置のことであり、このパネルは矩形状をなしている。
有機発光素子の主たる観察方向が決まっている場合には、シートBのプリズムピッチ方向とパネルの横方向とが直交するように、有機EL素子と貼り合わせシートとを貼り合わせる。通常、横長の矩形パネルの場合には、正面から見て長手方向を横方向として観察する。なお、本実施例において、直交するようにとは、シートBのプリズムピッチ方向とパネルの横方向とが厳密に直交していなくてもよく、20度程度の誤差があってもよい。
<輝度向上のメカニズム及び作用>
次に、図3を参照して、本実施例の有機発光素子において、正面輝度が向上する理由について説明する。図3は、頂角45度のプリズムシートを貼り合わせた有機発光素子における取り出し発光強度の角度依存性を示す説明図である。
上述したように、従来の技術では、有機発光素子の光取り出し面から外部へ取り出される光の量は限定されている。すなわち、従来の技術では、位相シート(本実施例のシートAに相当)の表面が平面となっているために、この位相シートの表面で全反射されて取り出すことができない光成分がある。これに対して、本実施例では、シートA(逆波長分散位相板)の上部に、頂角45度のプリズム面が設けられているため、従来の技術では取り出すことができない光を含めて取り出すことができる。したがって、本実施例では、従来の技術と比較して垂直方向へ出射される光の成分が多くなる。
図3に示す発光特性と発光強度との関係は、有機EL素子に対して、シートAを光学オイル(シリコングリース:日硝産業製)で接着し、プレサイスゲージ社製の発光特性評価装置(EL−1003)を用いて、発光強度の角度依存を測定評価したものである。なお、図3では、正面方向を放射角度0度としている。
頂角45度のプリズムシートを貼り合わせた有機発光素子では、60度付近で発光強度が増大している。すなわち、貼り合わせを行わないREF素子と比較すると、全放射角度で積分した強度で、15%程度増加していた。従来の有機発光素子を用いた場合に、位相シートの表面が平面となっているため、この位相シートの表面で全反射されて取り出すことができない光成分が存在する。しかし、本実施例では、このような光成分を含めて取り出すことができたことを示している。
表1に、プリズム頂角を20度から170度まで変化させた場合における、発光強度の角度依存に関する調査結果を示す。
Figure 2007273245
表1から明らかなように、プリズム頂角が30乃至80度では、従来、全反射で取り出されなかった光成分に相当すると思われる放射角が60乃至80度付近の発光強度のピークが見られる。また、全放射角度で積分した強度も、プリズムの貼り合わせを行わないREF素子とくらべて5乃至30%ほど増加している。
また、頂角が50度より大きい場合には、正面方向の発光強度が増大するが、頂角が120度を超えると、斜め方向の発光強度の低下が大きくなる。さらに、頂角が150度を超えると、プリズムの貼り合わせを行わないREF素子の特性に近づいてゆく。また、全放射角度で積分した強度は、プリズムの貼り合わせを行わない平坦なREF素子と同じか、やや小さくなる。
そこで、光取り出し効率を向上させる観点から、シートAのプリズム頂角として、積分強度比がフラット面(Ref)より大きくなる30乃至80度程度であることが好ましいことが分かる。
また、プリズム頂角として100度乃至140度でも、従来の技術のように、位相シートの表面で全反射されて取り出すことができない光を含めて、正面方向へ出射される光の成分が、フラット面(Ref)より大きくなる効果を確認することができる。つまり、積分強度比が100%を下回らず、正面強度比も1を超えている。
シートAを透過した発光は、シートBに入射し、頂角90度のプリズム面を透過して、シートC(偏光シート)へ入射する。
例えば、有機EL素子からの光は、頂角90度のプリズム面を透過する際に、効率よく正面方向に集光される。
次に、図4を参照して、プリズム頂角が45度のシートAにシートBを重ね合わせた場合におけるシートBの90度プリズム面から取り出された発光強度の角度依存性を説明する。図4は、プリズム頂角が45度のシートAにシートBを重ね合わせた場合におけるシートBの90度プリズム面から取り出された発光強度の角度依存性を示す説明図である。
図4は、有機EL素子に対して、シートBを重ねたシートAを光学オイル(シリコングリース:日硝産業製)で接着し、プレサイスゲージ社製発光特性評価装置(EL−1003)を用いて、発光強度の角度依存を測定評価したものである。なお、シートAのプリズム頂角45度面では、放射角度が60度までの方向で、発光が効率良く取り出された。また、シートBのプリズム頂角90度面において、これらの発光が効率良く正面方向へ向けられていることが分かる。
結果として、有機EL素子にシートA、シートBを重ねたものは、有機EL素子だけのものに比べて、正面の発光強度が約1.5倍に増加している。
視野角特性の良い表示装置を実現するには、シートA及びシートBをそれぞれ透過した光が、斜め方向において強度が大きい角度特性を示す必要がある。
表1から明らかなように、頂角が50度より大きい場合には、正面方向の発光強度が増大するが、頂角が120度を超えると斜め方向の発光強度の低下が大きくなる。また、頂角が150度を超えると、プリズムの貼り合わせを行わない平坦なREF素子の特性に近づいていく。また、全放射角度で積分した強度は、プリズムの貼り合わせを行わない平坦なREF素子と同じか、やや小さくなる。
そこで、光取り出し効率を向上させる観点から、シートBのプリズム頂角として、正面強度比がフラット面(Ref)より大きくなる50乃至140度程度であることが好ましいことが分かる。さらに、シートBのプリズム頂角として、65度乃至140度程度であることが好ましく、65度乃至130度程度あることが一層好ましい。
有機発光素子の主たる観察方向が決まっている場合には、シートBのプリズムピッチ方向とパネルの横方向が直交するように、有機EL素子と貼り合わせシートとを貼り合わせることが好ましい。なお、本実施例において、直交するようにとは、シートBのプリズムピッチ方向とパネルの横方向とが厳密に直交していなくてもよく、20度程度の誤差があってもよい。
図4において、F(45)/R(90)で示すグラフが、有機EL素子と貼り合わせシートとを好ましい方向に貼り合わせたものである。一方、シートAのプリズムピッチ方向とパネルの横方向とがほぼ直交するように、有機EL素子と貼り合わせシートとを貼り合わせた場合が、R(45)/F(90)で示すグラフに相当する。
シートAのプリズムピッチ方向とパネルの横方向とがほぼ直交するように、有機EL素子と貼り合わせシートとを貼り合わせた場合(R(45)/F(90)で示すグラフ)には、シートAのプリズムピッチ方向とパネルの横方向が平行するように、有機EL素子と貼り合わせシートとを貼り合わせた場合(F(45)/R(90)で示すグラフ)と比較して、正面光強度はほぼ同じであるが、斜め方向への光強度の低下が大きく、表示装置としては不適であることが分かる。なお、上下方向で斜めから観察する場合には、図4で示す関係が反対になる。
上述した結果をまとめると、シートAでは、頂角が30乃至80度のプリズム面で、有機EL素子の外部へ発光を取り出す効果が大きい。また、シートBでは、シートAのプリズム面から出射した発光を、正面方向へ取り出す効果が期待される。ここでは、頂角が65乃至130度の組み合わせであることが好ましい。
この有機発光素子が複数画素からなる表示装置で、画素が矩形状である場合は、画素電極パターンとプリズムパターンの干渉縞が見える場合がある。画素の長手方向と前記光取り出し面側に配置されたプリズムシートBのピッチ方向とが一致するように、プリズムシートを配置すれば干渉縞は見えにくい。表示装置の画素配列の設計で、前記光取り出し面側に配置されたプリズムシートBのピッチ方向と画素の長手方向とが直交する場合は、プリズムシートBのピッチ方向が、直交方向から20度以上傾くように貼りあわせる。こうすれば干渉縞は目立たなくなる。
<外光反射防止向上のメカニズム及び作用>
シートBを透過した発光は、シートCに入射し、偏光として外部に取り出される。一方、有機発光素子の光取り出し面の外側から入射した外光はシートC(偏光板)を通過する。ここで、シートC(偏光板)として、P偏光成分だけが入射する偏光板を選択することが好ましい。なお、P偏光とは、光の振動面が入射面と平行な直線偏光のことである。また、S偏光とは、光の振動面が入射面と垂直な直線偏光のことである。
偏光成分は、シートBのプリズム面に入射する。外光の実効入射角度は、プリズム面が傾斜しているので、重畳されて大きな角度になる。例えば、頂角が60度のプリズム面に対して、正面方向から入射する外光は、実効的には斜め60度入射になり、プリズム面で複数回反射して、外光反射として観察される。特に、プリズム頂角が60度よりも小さなものは、外光反射が大きくなる(正面方向からの外光が60度以上の実効入射角度となり高い外光反射を示す。)
従来、有機EL素子に対して、円偏光板、プリズムシートを順次設けることにより、円偏光板の作用で外光反射を防止する技術があった。また、有機EL素子に対して、プリズム構造を有するシート、円偏光板を順次設けることにより、円偏光板の作用で外光反射を防止する技術があった。しかし、これらの従来技術では、外光反射防止効果に関して制約条件が存在する。本発明者は、本発明に係る有機発光素子のように、偏光板と位相板とを分けて、その間にプリズムシートを挟んだ構成とすることにより、外光反射防止効果が向上することを確認した。以下に、外光反射防止効果の向上について詳細に説明する。
表2は、P偏光と円偏光が空気層から屈折率1.5の平面に入射する際の、入射角度と反射率、反射時の位相変化の計算関係を示すものである。ここで、円偏光成分はP偏光とS偏光の平均値とする。
Figure 2007273245
表2から明らかなように、外光が斜め方向から入射した場合には、P偏光、円偏光ともに反射率が高くなる傾向を示すことが分かる。そこで、P偏光は円偏光に比べて反射率の上昇が小さいことから、シートBでの外光反射を抑えるため、P偏光を選択するのが好ましい(P偏光では、入射角度が65度まで反射率は3%以下である)。
シートBからの反射光が、シートCの偏光板を透過して表示装置外に出てしまうと、有機EL素子の発光と重なって映り込みが生じ、表示品質が低下する。P偏光では、反射時の位相変化が入射角55度を超えると位相反転して、シートCへの反射偏光はS偏光となり、偏光板で吸収されて外光反射は起こらない。すなわち、プリズムシートと空気との界面における反射は全ての入射角度で3%以内である。さらに、反射防止(AR)コート処理を施すことにより、外光反射を1%以内に抑制することも容易である。
一方、円偏光板を透過した円偏光は、入射角55度以下では反射率が5%程度となり、反射時に位相反転し、反射光は円偏光板を通過せず、外光反射は起こらない。
しかし、入射角60度を超えた入射光は、10%以上の高い反射率で円偏光板に戻る。このとき反射による位相変化は生じないので、円偏光板での反射光の吸収は生じない。このため、光取り出し面に円偏光板を配置した構成では、パネル正面方向からの外光反射を抑えることができるが、斜め方向から入射した外光の映り込みが大きく実用に適さないことが分かる。
同様に、有機EL素子に円偏光板を貼り付けて、光取り出し面にプリズムシートを設けた場合には、プリズム面での反射は円偏光の反射率特性と同じである。すなわち、入射角55度以下では反射率が5%程度で、入射角60度を超えた入射光は10%以上の高い反射率となる。この場合には、円偏光板による外光反射防止効果が無いので、プリズム面による外光反射が大きな問題となる。
実際に、本発明の実施例に係る有機発光素子を用いた表示装置と、円偏光板をプリズムシート上に貼った表示装置と、プリズムシートを円偏光板上に貼った表示装置とについて、それぞれを明所にて比較観察した。この結果、本発明の実施例に係る有機発光素子では、プリズムシートが見えにくいが、円偏光板を貼った表示装置では、いずれもプリズムシート自体が見えてしまうことを確認した。
シートBを透過した外光(P偏光)は、シートAのプリズム面に入射する。この入射光は、直線偏光状態であるため、反射および屈折による偏光状態の変化はほとんど無い。しかし、プリズム面に誘電体多層膜などからなる反射防止膜を設けておけば、反射の影響を排除することができる。
さらに、外光(P偏光)は、1/4λ位相板を通過することにより、円偏光に変換され、有機EL素子に入射する。そして、有機EL素子内の金属反射電極で反射された外光は、逆向きの円偏光に変換される。
さらに、円偏光とされた外光は、シートAの1/4λ位相板を通過することにより、S偏光に変換される。このS偏光に変換された外光は、シートBを通過して、シートCの偏光板に入射する。ここで、偏光板はS偏光を吸収する特性を有するため、最終的に有機発光素子に入射した外光はパネル内で吸収されて、外光反射が抑制される。
<プリズムシート面と発光面の間隔、画素ピッチとの関係及び使用条件>
プリズムシートには、上述したように均一な傾斜面が形成されている。この傾斜面で屈折して取り出される発光を有機発光素子の正面方向から観察すると、実際は正面より傾いた方向への発光が、屈折により正面方向に取り出されるため、実際の画素位置からずれた位置にあるように観察される。
ここで、図5を参照して、内部発光がプリズム面で屈折して取り出される様子を説明する。図5は、内部発光がプリズム面で屈折して取り出される様子を示す説明図である。
図5に示すように、発光面(パネル面)に対してθ1だけ傾いた発光が、プリズムシート内でθ2の傾きになり、頂角αのプリズム面に入射、屈折して空気界面に出射する場合を考える。
発光層の屈折率をn1(1.7と想定する)、プリズムシートの屈折率をn2(1.5と想定する)、空気層の屈折率をn3(1.0と想定する)とした場合に、
スネルの法則により、n1/n2=sin(θ1)/sin(θ2)の関係となる。
プリズム面は発光面に対して(90+α/2)度だけ傾いているので、発光はプリズム面に対して(α/2+θ2)の傾き角で入射する。
このプリズム面を基準にして、発光が空気層へ出射する角度をθ3とすると、
スネルの法則により、n2/n3=sin(α/2+θ2)/sin(θ3)の関係となる。
ここで、発光が空気層へ出射する角度を、発光面(パネル面)に対しての傾き角θ4とすると、θ4=θ3−(α/2)として求められる。
表3に、内部発光がプリズム構造の無い平滑面及び90度プリズム面から出射する際における出射角度特性を示す。
Figure 2007273245
表3から明らかなように、プリズム構造の無い平滑面からの出射では、従来から知られているように、40度付近の臨界角より大きな入射角度の発光は空気層へ出射できない。これに対して、頂角90度のプリズムシートでは、大部分の内部発光を取り出すことが可能である(但し、反射は除いて考える)。この際、約25度傾いた内部発光成分は、屈折によりパネル正面方向に取り出される。例えば、発光面とプリズム面の距離dが、100μmだけ離れていると、本来正面で見える発光が、d*cos(25度)=100*0.43=43μm横方向にずれて見えてしまうことになる。
次に、図6を参照して、プリズム頂角と正面取り出しになる発光傾き角との関係を説明する。図6は、プリズム頂角と正面取り出しになる発光傾き角との関係を示す説明図である。なお、図6では、プリズム頂角と、パネル正面方向に屈折して取り出される発光の傾き角(正面方向を0度とする)との関係を示している。
図6から明らかなように、プリズム角が小さい(尖っている)ほど、パネル正面方向に対して傾いた発光を正面方向で観察することになる。
次に、図7を参照して、プリズム頂角と発光部の横方向のずれ量との関係を説明する。図7は、プリズム頂角と発光部の横方向のずれ量との関係を示す説明図である。なお、図7では、発光面とプリズム面の間隔dを100μmとしたの場合における、パネル正面方向で観察した発光部の横方向へのずれ量(μm)と、プリズム頂角との関係を示している。
プリズム頂角が100度以上になれば、発光のずれ量は10乃至20%程度であり比較的少ないといえる。しかし、図7から明らかなように、プリズム頂角が70度以下では、発光のずれ量は50%以上になり、発光のずれが顕著なものとなる。
現在、市場で用いられている表示装置の画素ピッチは、100μm程度のものが多い。ここで、発光部のずれ量が画素ピッチを超える大きさになると、画像の滲みとして観察されて画質が低下する。
そこで、発光面とプリズム面との間隔dと、組み合わせるプリズムシートの頂角を選択することにより、このずれ量を抑えることが必要である。
本実施例のプリズムシートでは、発光面とシートAのプリズム面(頂角45度)までの距離が100μm程度以下であり、シートBのプリズム面(頂角90度)までの距離が170μm以下程度であったが、画像の滲みは観察されなかった。これに対して、シートAと有機EL素子の間に500μmの厚さのアクリル樹脂シートを挟んだものでは明らかに画像の滲みが観察された。
本発明の実施形態に係る有機発光素子を示すもので、(a)は縦断面を示す模式図であり、(b)は立体的に表した概念図である。 本発明の実施形態に係る有機発光素子の構造を示す縦断面図である。 頂角45度のプリズムシートを貼り合わせた有機発光素子における取り出し発光強度の放射角特性を示す説明図である。 頂角45度及び頂角90度のプリズムシートを積層した有機EL素子の放射角特性を示す説明図である。 内部発光がプリズム面で屈折して取り出される様子を示す説明図である。 プリズム頂角と正面取り出しになる発光傾き角との関係を示す説明図である。 プリズム頂角と発光部の横方向のずれ量との関係を示す説明図である。 プリズムシートを上面から見た状態の概念図である。 本発明の実施例におけるプリズムシート、偏光シート、及び位相シートの縦断面を示す模式図である。
符号の説明
11 偏光シート
12 プリズムシート
13 位相シート
14 有機EL素子

Claims (14)

  1. 一対の電極間に配置された有機発光層を有する有機EL素子と、プリズムシートと、偏光シートと、位相シートとを有する有機発光素子であって、
    光取り出し面側から順に、前記偏光シート、前記プリズムシート、前記位相シート、および前記有機EL素子を配置したことを特徴とする有機発光素子。
  2. 前記プリズムシートは、2枚配置されていることを特徴とする請求項1に記載の有機発光素子。
  3. 前記有機EL素子側に配置されたプリズムシートの頂角は、光取り出し面側に配置されたプリズムシートの頂角以下であることを特徴とする請求項2に記載の有機発光素子。
  4. 前記有機EL素子側に配置されたプリズムシートの頂角は、30度乃至80度の範囲に設定されており、光取り出し面側に配置されたプリズムシート頂角は、65度乃至140度の範囲に設定されていることを特徴とする請求項2または請求項3のいずれか1項に記載の有機発光素子。
  5. 前記2枚のプリズムシートは、そのピッチ方向が互いに直交するように配置されていることを特徴とする請求項2乃至請求項4のいずれか1項に記載の有機発光素子。
  6. 前記偏光シートの延伸方向と、光取り出し面側に配置されたプリズムシートのピッチ方向とが互いに直交するように、該偏光シートおよび該プリズムシートが配置されていることを特徴とする請求項2乃至請求項5のいずれか1項に記載の有機発光素子。
  7. 前記偏光シートは、P偏光を透過し、S偏光を吸収する性質を有することを特徴とする請求項1乃至請求項6のいずれか1項に記載の有機発光素子。
  8. 前記プリズムシートは、その凹凸面に反射防止処理が施されていることを特徴とする請求項1乃至請求項7のいずれか1項に記載の有機発光素子。
  9. 前記有機発光素子内に入射する外光及び前記有機発光素子が反射する外光は、円偏光であることを特徴とする請求項1乃至請求項8のいずれか1項に記載の有機発光素子。
  10. 前記光取り出し面側に配置されたプリズムシートの凹凸面と、前記有機発光素子の発光面との距離は、観察される発光画素の拡がりが前記有機発光素子の画素ピッチ以下になるように設定されていることを特徴とする請求項1乃至請求項9のいずれか1項に記載の有機発光素子。
  11. 前記有機EL発光素子は、光取り出しを上部電極側から行うトップエミッション素子であることを特徴とする請求項1乃至請求項10のいずれか1項記載の有機発光素子。
  12. 請求項1乃至請求項11のいずれか1項に記載の有機発光素子を複数有することを特徴とする表示装置。
  13. 前記表示装置は矩形状のパネルからなり、該表示装置の長手方向と、前記光取り出し面側に配置されたプリズムシートのピッチ方向とが直交するように、該プリズムシートが配置されていることを特徴とする請求項12に記載の表示装置。
  14. 前記表示装置の画素が矩形状であり、画素の長手方向と前記光取り出し面側に配置されたプリズムシートのピッチ方向とが略一致するように、該プリズムシートが配置されていることを特徴とする請求項13に記載の表示装置。
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