JP2007270607A - 車両用開閉体の制御装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】マスク期間を設けることなくモータ起動直後から物体の挟み込み判定が可能な車両用開閉体の制御装置を提供する。
【解決手段】本発明の車両用開閉体の制御装置は、開閉体(9)を駆動する直流モータ(3)の回転速度、加速度及び駆動電圧から推定負荷(P)を求める推定負荷算出手段(8b)と、モータの回転速度と駆動電圧からモータトルクを算出するモータトルク算出手段(8b)と、モータトルクの定常状態を基に基準トルクを算出しメモリに格納する基準トルク算出手段(8f)と、推定負荷、モータトルク及び基準トルクに基づいて物体の挟み込みを判定する挟み込み判定手段(8c)とを有し、挟み込み判定手段は、推定負荷が所定の閾値より大きい場合でも、推定負荷とモータトルクの少なくとも一方が基準トルクより小さい場合は物体の挟み込みはないものと判定する。
【選択図】図9

Description

本発明は、車両の窓やスライドドアなどの車両用開閉体の制御装置に関する。特に、直流モータで開閉体を駆動し、異物の挟み込みを検知することが可能な車両用開閉体の制御装置に関する。
従来、車両のウィンドウやスライドドアなどの車両用開閉体を直流モータで駆動制御する開閉体制御装置が知られている。そのような開閉体制御装置では、異物の挟み込みがあった場合にモータの回転を停止したり反転したりする必要がある。異物の挟み込みを検知するためにモータの負荷を検出することが考えられる。モータの負荷は、モータの端子電圧と電機子電流とから求めることができるが、電流検出に電流ピックアップコイルを用いたり、微少抵抗のシャント抵抗を用いたりすると部品点数が増加してコストアップになるなどの問題がある。そこで、モータの電圧、角速度及び角加速度からモータの負荷を推定し、推定負荷が所定の閾値を越えた状態が所定時間(マスク時間とも言う)以上続いた場合に異物の挟み込みがあると判定することが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
上記特許文献では、推定負荷Pは次式により求められる。
P=Bm(ω0−ω)+(Tm−Tm0)−Jm・dω…(1)
ここで、Bmはモータ内部負荷の粘性係数、ωは角速度、ω0は外部無負荷時の角速度定常値、Tmはモータトルク、Tm0は外部無負荷時のモータトルク、Jmはモータを含む装置(例えばウィンドウ開閉装置)の慣性モーメント、dωは角加速度である。
この式で(Tm−Tm0)を電圧と角速度とに分解して次式で表すことができる。
Tm=−a・ω+b・V+c…(2)
ここでa、b、cはモータに固有の定数であり、(2)式はモータ毎に関数化したり、マップにしたりして、ROMなどのメモリに記憶しておくことができる。
式(1)及び(2)から推定負荷Pを次のように表すこともできる。
P=(Bm+a)(ω0−ω)+b(V−V0)−Jm・dω…(3)
式(3)中で、(Bm+a)(ω0−ω)を角速度差演算項、b(V−V0)を電圧差演算項、Jm・dωを角加速度演算項(または慣性項)と呼ぶこともある。
特開2004−242425号公報 特開平9−328965号公報 特開平10−169310号公報 特開平9−125815号公報 特開2005−83052号公報
上記のような推定負荷に基づいた挟み込み判定では、開閉体の閉動作中に例えば車両が凹凸の多い悪路を走行しているときのように外乱が加わると、モータの角速度ωや角加速度dωが大きく変動して推定負荷Pが大きく変動し、それによって実際に異物が挟まっていないのに挟まっていると誤判定する恐れがある。そのため路面の特性に応じて挟み込みの推定に用いられる閾値を変更することが提案されている(特許文献2参照)。また別の文献では、外乱を検知した場合に、異物挟み込みを表す閾値を挟み込み検知感度が鈍くなるように補正することが提案されている(特許文献3参照)。しかしながら、振動性外乱の影響をより効果的に除去して信頼性の高い挟み込み判定を実現するため、より精度の高い外乱検知手法が求められている。
また、開閉体の閉動作の途中にドアを閉めた場合のように一時的に大きな衝撃が車両に加わった場合にも、推定負荷Pが急激に変動して、挟み込み誤判定が生じ得る。特許文献4には、ウィンドウ上昇移動中にドアスイッチによりドアの閉動作が行われたことを検知すると、挟み込み判定用の閾値を大きくすることが提案されている。しかしながらドアスイッチなどにより別途ドアの閉動作を検出する必要があるため装置が複雑化してしまう。また閾値を大きくしても、それを越える瞬時の大きな外乱があったときは誤判定が生じてしまう。
またモータ起動時には動作が安定しない、即ち、角速度ωや角加速度dωが大きく変動するため、やはり誤判定を生じ易い。そのため、モータ起動から所定の期間(マスク期間)は挟み込み検知及び判定を行わないようにしていたが、モータ起動時に既に異物が挟まれている場合には、挟み込み判定の開始がマスク期間後になってしまうため、挟み込み検出時には負荷が大きくなり過ぎる恐れがあった(特許文献5)。
また、モータの特性には個体毎の差異があり、使用している間に変化するため、精度良く挟み込みを速やかに検出するには、そのようなモータ特性の個体毎の差異や経年変化を考慮する必要がある。
更に、上記したような推定負荷が所定の閾値を越えた状態が所定時間以上続いた場合に異物の挟み込みがあると判定する場合、開閉体の移動速度が速い場合(即ち負荷上昇率が大きい場合)、挟み込み有りと判定した時点における負荷(挟み込み負荷と呼ぶ)が大きくなり過ぎる恐れがある。
本発明は上記のような問題点を解決するたのものであり、その主な目的は異物の挟み込みを精度良く且つ速やかに検出することが可能な直流モータを用いた車両用開閉体の制御装置を提供することである。
本発明の第2の目的は、マスク期間を設けることなくモータ起動直後から物体の挟み込み判定が可能な車両用開閉体の制御装置を提供することである。
このような課題を解決するために、本発明の車両用開閉体の制御装置は、開閉体を駆動するための直流モータの回転速度を検出する回転速度検出手段と、前記モータの駆動電圧を検出する電圧検出手段と、前記モータの回転速度から前記モータの加速度を算出する加速度算出手段と、前記モータの回転速度、加速度及び駆動電圧から推定負荷を求める推定負荷算出手段と、前記モータの回転速度と駆動電圧からモータトルクを算出するモータトルク算出手段と、前記モータトルクの定常状態を基に基準トルクを算出しメモリに格納する基準トルク算出手段と、前記推定負荷、モータトルク及び基準トルクに基づいて物体の挟み込みを判定する挟み込み判定手段とを有し、前記挟み込み判定手段は、前記推定負荷が所定の閾値より大きい場合でも、前記推定負荷と前記モータトルクの少なくとも一方が前記基準トルクより小さい場合は物体の挟み込みはないものと判定するものとした。
基準トルクは、前記推定負荷の変動幅が所定の範囲内にある状態が所定の時間続いたとき、その所定の時間内の前記モータトルクの平均値として前記基準トルク算出手段により算出することができる。
好適には前記基準トルク算出手段は、前記開閉体の開動作と閉動作の両方において前記基準トルクの算出を行うことができる。
また前記開閉体が上下方向に開閉動作し、前記開閉体の開動作が下方向への動作である場合、前記開動作において算出された基準トルクは、前記開閉体の閉動作においてなされる挟み込み判定に用いられるとき、前記開閉体の重量に基づいて補正されることが好ましい。
前記挟み込み判定手段は、前記推定負荷が前記所定の閾値を越えた状態が継続する持続時間が所定の基準時間を超えるか、または、前記推定負荷が前記所定の閾値を越えた状態にある間の前記開閉体の移動量が所定の基準移動量を超えた場合に、物体の挟み込みがあるものと判定することができる。
本発明によれば、上記したように、推定負荷が安定しているときのモータトルクの平均値として基準トルク(または定常トルク)を算出し、挟み込み判定手段は、推定負荷が所定の閾値より大きい場合でも、推定負荷とモータトルクの少なくとも一方が基準トルクを下回ったときは物体の挟み込みはないと判定する(即ち、推定負荷とモータトルクの両方が基準トルクを越えたときのみ物体の挟み込みの判定を行う)ものとしたことにより、モータ起動直後の不安定性のためにモータの角速度や角加速度が変動して推定負荷が大きくなってもそれを異物の挟み込みと誤検知するのを効果的に防止することができるので、モータ起動直後からマスク期間を設けることなく物体の挟み込み判定を行うことが可能である。
開閉体の開動作と閉動作の両方において基準トルクの算出を行うものとすると、基準トルクを常に最新の状態に維持することができ、判定精度が向上する。特に開閉体が上下方向に開閉動作し、開閉体の開動作が下方向への動作である場合、開動作において算出された基準トルクを開閉体の閉動作においてなされる挟み込み判定に用いるとき開閉体の重量に基づいて補正すると、補正された基準トルクを用いることで閉動作において一層精確な挟み込み判定が可能となる。
また挟み込み判定手段が、推定負荷が所定の閾値を越えた状態が継続する持続時間が所定の基準時間を超えるか、または、前記推定負荷が所定の閾値を越えた状態にある間の前記開閉体の移動量が所定の基準移動量を超えた場合に、物体の挟み込みがあるものとすることにより、開閉体の移動速度が遅い場合には持続時間に基づく挟み込み判定を行うことで挟み込みを確実に検知するとともに、開閉体の移動速度が速い場合には、開閉体の移動量に基づいて挟み込み判定を行うことで挟み込み負荷が過大になることなく挟み込み検知を行うことができる。
本発明の制御装置はさらに、前記開閉体の位置に対するモータトルクの変化を示すモータトルクマップを前記開閉体の閉動作毎に算出するモータトルクマップ算出手段(8e)を有するものとすることができ、前記挟み込み判定手段は、前記開閉体の位置に基づいて前記モータトルクマップを参照して得られるモータトルクを前記推定負荷から減算して前記推定負荷を調節し、この調節された推定負荷に基づいて前記物体の挟み込み判定を行うことができる。モータトルクマップ算出手段は、モータトルクの変化状態を基にモータトルクマップを算出することができる。好適には、モータトルクマップ算出手段は、所定期間毎にモータトルクの平均値を計算し、前記モータトルクの平均値を前記所定期間における更新されたモータトルクとすることができる。このようなモータトルクマップ算出手段により、モータ特性の個体差や経年変化、また開閉体の摺動負荷をモータトルクマップに反映することができる。そして、挟み込み判定手段は開閉体の位置に基づいてモータトルクマップを参照して得られるモータトルクを推定負荷から減算して推定負荷を調節し、この調節された推定負荷に基づいて物体の挟み込み判定を行うものとしたので、モータ特性の個体差や経年変化の影響を抑えて挟み込みによる負荷増加のみを検出し、精度良く挟み込み判定を行うことができる。
一実施例では、挟み込み判定手段は、前記推定負荷より前記モータトルクが大きいときの前記推定負荷と前記モータトルクの差分の絶対値のピーク値を慣性力ピーク値(Ipeak)として記憶し、前記推定負荷が前記モータトルクを上回ったとき、そのときの前記推定負荷と前記モータトルクの差分の絶対値が記憶されている前記慣性力ピーク値より小さい場合は挟み込みはないものと判定することができる。これにより、振動性外乱の影響により増大した推定負荷を物体の挟み込みと誤検知するのを防止し、信頼性の高い挟み込み検知を行うことができる。また、振動性外乱を考慮して挟み込み判定用の閾値(即ち、基準負荷PL)に余裕を持たせる必要がないため、挟み込み検知の感度を向上し、より迅速な挟み込み検知が可能となる。
推定負荷の変動幅が所定の期間、所定値以下であったとき慣性力ピーク値はクリアされるものとすると、振動性外乱がないときに振動性外乱があると誤認識して挟み込み検知を行わないのを回避することができる。
また前記挟み込み判定手段は、前記モータトルクに対する前記推定負荷の加速側の変動量を表すしきい値を設定し、前記推定負荷が前記モータトルクを上回ったとき、そのときの前記推定負荷と前記モータトルクの差分の絶対値が前記設定されたしきい値より小さい場合は挟み込みはないものと判定することができる。これにより、振動性外乱の影響により増大した推定負荷を物体の挟み込みと誤検知するのを防止し、信頼性の高い挟み込み検知を行うことができる。
本発明の好適実施例によると、前記挟み込み判定手段は、前記推定負荷が所定の閾値を越えた状態が所定のマスク量(tref、Dref)によって定められる期間継続したとき物体の挟み込みがあるものと判定し、前記所定のマスク量が前記推定負荷の変化率に応じて可変であるものとすることができる。これにより、外乱のために所定の閾値を越えるような大きな変動が推定負荷に生じた場合にも、外乱があったことを推定負荷の変化率から推定し、変化率に応じた適切なマスク量とすることで効果的に誤判定を防止することができる。
例えば、マスク量が所定の基準時間であり、挟み込み判定手段は推定負荷が所定の閾値を越えた状態が所定の基準時間継続したとき物体の挟み込みがあるものと判定し、所定の基準時間が推定負荷の変化率に応じて可変であるものとすることができる。このような推定負荷の変化率に応じて可変である基準時間により、大きな外乱によって生じ得る挟み込み誤判定を効果的に防止することができる。好適には、推定負荷の変動率が所定の値より小さいときは所定の基準時間を第1の基準時間とし、推定負荷の変動率が所定の値以上のときは所定の基準時間を第1の基準時間より大きな第2の基準時間とすることができ、それにより単純な構成で効果的に外乱発生時の誤判定を防止することができる。
別の方法として若しくはそれに加えて、マスク量が開閉体の所定の基準移動量であり、挟み込み判定手段は推定負荷が所定の閾値を越えた状態にある間の開閉体の移動量が所定の基準移動量を超えたとき物体の挟み込みがあるものと判定し、所定の基準移動量が推定負荷の変化率に応じて可変であるものとすることができる。このような推定負荷の変化率に応じて可変である基準移動量により、大きな外乱によって生じ得る挟み込み誤判定を効果的に防止することができる。好適には、推定負荷の変動率が所定の値より小さいときは所定の基準移動量を第1の基準移動量とし、推定負荷の変動率が所定の値以上のときは所定の基準時間を第1の基準時間より大きな第2の基準時間とすることができ、それにより単純な構成で効果的に外乱発生時の誤判定を防止することができる。
挟み込み判定手段が、推定負荷が所定の閾値を越えた状態が継続する持続時間が所定の基準時間を超えるか、または、前記推定負荷が所定の閾値を越えた状態にある間の前記開閉体の移動量が所定の基準移動量を超えた場合に、物体の挟み込みがあるものとする場合、所定の基準時間及び前記所定の基準移動量の少なくとも一方が前記推定負荷の変動率に応じて可変であることが好ましい。このような推定負荷の変化率に応じて可変である基準時間及び基準移動量により、外乱発生時の挟み込み誤判定を防止することができる。
以下、本発明の実施の形態を、図面を参照しながら説明する。図1は本発明に基づく車両用開閉体の制御装置の好適実施例として、本発明を自動車用パワーウィンドウ装置に適用した場合を示すブロック図である。
図に示されるように、制御部1には、運転席などに設けられたオート操作スイッチ2a及びマニュアル操作スイッチ2bの各開閉操作信号に応じて自動または手動開閉制御信号を出力するオート制御回路1aと、その開閉制御信号に応じて直流モータ3を正逆転駆動制御するためのモータ駆動制御回路としての駆動回路4と、モータ3の駆動電圧を検出する電圧検出回路5と、モータ3の回転に連動する回転速度検出手段としての回転センサ(またはロータリエンコーダ)6からのパルス信号の間隔に基づいてモータ3の回転速度を角速度として算出する角速度算出回路7と、制御部1の主制御を行うCPU8とが設けられている。
CPU8には、上記角速度算出回路7からの角速度信号に基づいて角加速度を算出する角加速度算出部8aと、駆動電圧と角速度と角加速度とに基づいてモータ3の外部負荷を推定する推定負荷算出手段として働くとともに駆動電圧及び角速度からモータ3のトルクを算出するモータトルク算出部としても機能する推定負荷/モータトルク算出部8bと、推定負荷に基づいて挟み込みの判定を行う判定部8cとが設けられている。なお、角加速度算出部8aと推定負荷/モータトルク算出部8bと判定部8cとは、CPU8内でのプログラム処理で行われるものであって良い。
そして、駆動回路4からの駆動信号応じてモータ3が正逆転して、例えばモータ3にリンクまたはワイヤなどを介して連結された被駆動体としてのウィンドウ9が開閉動作する。なお、オート制御回路1aでは、オート操作スイッチ2aの開/閉の信号が入力された場合には連続した開/閉制御信号を出力し、マニュアル操作スイッチ2bの開/閉信号が入力された場合には操作されている間だけ開/閉制御信号を出力する。またモータ3の制御としては定電圧制御やPWM制御を用いることができる。
CPU8には更に、角速度算出回路7からの角速度信号とモータの回転方向とから全閉から全開に至るウィンドウ9の位置を算出するウィンドウ9の位置算出部8dが設けられている。ウィンドウ9の位置算出部8dの機能もCPU8内でのプログラム処理で実現される。尚、ウィンドウ9の位置は回転センサ6からのパルスカウントによって、例えば全開位置を0カウント、全閉位置を2500カウントとし、全閉と全開の間は0カウントと2500カウントの間のカウント値とすることで表すことができる。
更に、CPU8はモータトルクマップ算出部8eと基準トルク算出部8fを含む。モータトルクマップ算出部8eは、後に詳述するように、推定負荷/モータトルク算出部8bからのモータトルク信号と位置算出部8dからのウィンドウ9の位置信号とを受信し、それらから、ウィンドウ9の位置に対するモータトルクの変化を示すモータトルクマップを算出(更新)する。基準トルク算出部8fは、後に詳述するように、推定負荷及びモータトルクを推定負荷/モータトルク算出部8bから受取、それらに基づき、定常モータトルクを示す基準トルクTrefを算出する。
このようにして構成されたパワーウィンドウ装置による閉動作時における挟み込み判定制御の好適実施例の概略フローを図2に示す。図2のフローは、例えば5msの一定周期でCPU8内のプログラム処理により行うものとすることができる。
まず、ステップST1ではモータ3の端子電圧V(実効値)を電圧検出回路5で検出してA/D変換し、ステップST2に進む。
ステップST2では、回転センサ6からの各パルス信号間の間隔から周期tを算出し、その値から角速度ω(=2π/t)を算出する。次のステップST3では、ステップST2で算出された角速度ωに基づいて角加速度dωを算出し、ステップST4に進む。
ステップST4では、推定負荷/モータトルク算出部8bにて、端子電圧Vと角速度ωと角加速度dωとに基づいて、モータ3の外部負荷となる推定負荷Pを上記した式(1)または(3)に基づいて求める。ここで図4に示すように、挟み込みがあったときの推定負荷Pは、モータのフリクション特性と挟み込みによる負荷増加とを合わせたものとなるが、モータのフリクション特性はモータ毎に異なり、また同一モータでも経年変化を生じ得る。そのため従来は、モータ特性の個体差や経年変化、またウィンドウ9の摺動負荷によって生じる推定負荷Pの変化を挟み込みと誤検知しないように十分な誤検知マージンを持った閾値を設定する(即ち、閾値を高めに設定する)必要があったが、それにより挟み込み確定時の負荷(挟み込み負荷)が高くなってしまうという問題があった。そのような問題を回避するため、ステップST4において、式(1)または(3)に基いて求めた推定負荷Pをモータトルクマップを用いて調節し、それを以下の処理で用いる推定負荷Pとすることが好ましい。モータトルクマップとは、図6に一例を示すように、外部無負荷時(即ち挟み込みがないとき)のウィンドウ9の位置に対するモータトルクの変化を示すものである。後に詳述するように、モータトルクマップをウィンドウ9の閉動作毎に算出することで、上記したようなモータ特性の個体差や経年変化、またウィンドウ9の摺動負荷をモータトルクマップに反映することができる。従って、適宜更新されるモータトルクマップからそのときのウィンドウ9の位置に対応するモータトルクを求め、それを式(1)または(3)から求められる推定負荷Pから減算したものを以下の処理で用いる推定負荷Pとすることで、モータ特性の個体差や経年変化、またウィンドウ9の摺動負荷に影響されることなく、挟み込みによる負荷増加のみを検出して、挟み込み判定を精度良く行うことが可能となる。このようなモータトルクマップを用いた推定負荷Pの補正は所望に応じて挟み込み判定部8cにおいて行うことができる。
ステップST4では、上記の式(2)に基づいてモータ3の端子電圧V及び角速度からモータトルクTmの算出もなされる。
ステップST5では、所定期間における推定負荷Pの変動幅を所定値と比較し、それが所定値以下の場合(即ち、dωが十分小さく、推定負荷PとモータトルクTmが概ね等しい定常状態にあると判断できる場合)、ステップST6に進みその所定期間におけるモータトルクTmの平均値を基準トルクTrefとしてメモリ(図示せず)に記憶する。この基準トルクTrefは後に詳述するように、モータ起動時の不安定性による挟み込み誤判定の防止に用いられる。尚、ステップST4においてモータトルクマップを用いて推定負荷Pを補正する場合、基準トルクTref及びモータトルクTmを推定負荷Pと比較するときまたはこれらを互いに比較するときには、同様の補正を基準トルクTref及びモータトルクTmについても行うとよい。
図3に示すように、この基準トルクTrefの算出及び記憶は、ウィンドウ9の開動作においても行うことが好ましく、開動作において得られた基準トルクTrefを次の閉動作におけるモータ3の起動直後の挟み込み検知に用いることができる。開動作がウィンドウ9の下方向への動作である場合、閉動作時にはウィンドウ9の重量分の負荷増を考慮して補正(例えば重量を加算)した基準トルクTrefを用いるとよい。
ステップST7では、上記したモータトルクマップの算出(更新)を行う。図5にステップST7で行われる処理の詳細フローを示す。図示されているように、ステップST71において回転センサ6からのパルスのカウント値Cを所定値(例えば64カウント)と比較し、所定値以上の場合ステップST72に進みモータトルクマップの算出をした後、ステップ73においてパルスカウント値Cをクリアする。即ち、モータトルクマップの算出は概ね64カウント毎になされる。尚、物体の挟み込みがあるときはモータトルクマップの更新をしないように、例えば、推定負荷Pが所定の基準負荷PL以上の場合はモータトルクマップの更新を行わない(即ちステップST7をスキップする)ものとしてもよい。
図6のモータトルクマップを参照すると、モータトルクTmはノイズ等の影響を除いて波形を滑らかにするための平均化処理が施されている。ステップST72では、このモータトルク平均をサンプリングして所定期間(64パルスエッジに相当する期間)に対する新たなモータトルクとすることで、モータトルクマップを更新する(図6の拡大図参照)。このようにモータトルクマップをモータ3またはウィンドウ9の閉作動毎に逐次更新することにより、モータ特性に個体差があったり経年変化したりしてもそれをモータトルクマップに反映することができる。
ステップST8では振動性外乱による挟み込み誤判定を防止するための処理を行う。図7に振動性外乱があった場合の推定負荷P及びモータトルクTmの挙動の一例を示す。尚、図7の例では、推定負荷Pのモータトルクマップによる補正は行っていない。図7の一番上のグラフに示されているように、振動性外乱がある場合、角速度ω及び角加速度dωなどが波状に変化することにより、モータトルクTmに対して推定負荷Pが上下に振動する。一般にモータトルクTmよりも推定負荷Pが小さい場合は角加速度dωが正、即ち、モータ加速中であり、モータトルクTmよりも推定負荷Pが大きい場合は角加速度dωが負、即ち、モータ減速中と考えられる。モータトルクTmを越えて推定負荷Pが大きくなった場合、異物挟み込みの可能性があるが、その直前において推定負荷PがモータトルクTmを同程度下回っていた場合にはそれは振動性外乱によるものであり、異物挟み込みによるものではないと判断することができる。そこで、ステップST8では、推定負荷PがモータトルクTmを下回ったとき、どの程度下回ったかを慣性力ピーク値Ipeakとして記憶し、推定負荷PがモータトルクTmを上回ったとき、それを記憶しておいた慣性力ピーク値Ipeakと比較し、Ipeak以下である場合には振動性外乱によるものであるとして後続の挟み込み判定処理を行わない(即ち、挟み込みはないものと判定する)。即ち、この実施例では慣性力ピーク値IpeakがモータトルクTmに対する推定負荷Pの加速側の変動量を表すしきい値として働く。
図8にステップST8で行われる処理の詳細フローを示す。図示されているように、ステップST81において推定負荷PとモータトルクTmとを比較し、P≦Tmの場合、ステップST82でTm−P(または|P−Tm|)を計算し、慣性力Iとする(図7の上から二番目のグラフ)。続いてステップST83及びST84では、慣性力ピーク値Ipeakを求める。即ち、ステップST83において慣性力Iと慣性力ピーク値Ipeakとを比較し、Ipeak<Iの場合のみステップST84に進みそのときの慣性力Iを新たな慣性力ピーク値Ipeakとする。ステップ85では所定期間における推定負荷Pの振動幅ΔPが所定値以下であるか否かを判定し、所定値以下である場合、ステップST86にて慣性力ピーク値Ipeakをクリアする。これは所定期間における推定負荷Pの変動幅が小さい場合は振動性外乱がないと考えられるからである。ステップST87では負荷推定値PからモータトルクTmと慣性力ピーク値Ipeakを減算し、それが0以下の場合は振動性外乱によるものと判定してステップST1に戻り、0より大きい場合は挟み込みの可能性ありとして次のステップST9に進む。図7の例では、その最下段のグラフにP−Tm−Ipeakが正になる場合のみが示されている。このように、モータトルクTmを越えて推定負荷Pが大きくなった場合でも、その直前において推定負荷PがモータトルクTmを同程度下回っていた場合にはそれは振動性外乱によるものとして後続の挟み込み判定を行わないことにより、誤判定を回避する、または誤判定の回数を大幅に低減することができる。
続いてステップST9では、後に詳述するように、挟み込み判定のためのマスク量(時間及びウィンドウ移動量)の選択を行い、ステップST10に進む。
ステップST10では、推定負荷Pを用いて挟み込み判定を行う。ステップST10で行われる処理の詳細フローを図9に示す。図示されているように、ステップST101において、推定負荷Pと所定の基準負荷PLとを比較し、P≧PLの場合ステップST102に進み、そうでない場合はステップST106に進む。ステップST102では推定負荷Pと、ステップST6で求めた基準トルクTrefとを比較し、P≧TrefのときステップST103に進み、そうでない場合はステップST106に進む。ステップST103ではモータトルクTmと基準トルクTrefとを比較し、Tm≧TrefのときステップST104に進み、そうでない場合はステップST106に進む。ステップST104ではステップST101、ST102、ST103の3つの条件が継続的に満たされている間の持続時間tconを所定の基準時間(またはマスク時間)trefと比較し、tcon≧trefの場合挟み込みありと判定してモータ3の停止または反転動作を行う。ステップST104でtcon≧trefでなかった場合、ステップST105で、ステップST101、ST102、ST103の3つの条件が継続的に満たされている間のウィンドウ9の移動量Dを所定の基準移動量(またはマスク移動量)Drefと比較し、D≧Drefのとき挟み込みありと判定してモータ3の停止または反転動作を行い、そうでない場合はステップST1に戻る。ステップST106では持続時間tcon及び移動量Dをクリアする(即ち値をゼロにする)。尚、ウィンドウ9の移動量Dはモータ3の回転量を表す回転センサ6からのパルス数によって好適に表すことができる。
上記のように本実施例では、推定負荷PとモータトルクTmの両方が基準トルク(定常トルク)Tref以上である場合のみ挟み込み判定処理を継続し、そうでないときは挟み込みはないものと判定する。図10の上側のグラフに示すように、モータ3の起動直後は動作が不安定であるため、挟み込みが発生しておらずモータトルクTmが上昇していなくても、角速度ωや角加速度dωの変動に伴いモータ負荷(推定負荷P)が大きく変動する。そのため推定負荷Pのみを見て挟み込み判定を行うと実際には挟み込みがないのに挟み込みありと判定する誤判定が生じやすい。そのため従来はモータ負荷が安定するまで挟み込み検知を行わないようにマスク期間を設けていた。しかしながら、図10の下側のグラフに示すようにモータ3の起動時に挟み込みが生じていた場合はモータ3の起動後すぐに負荷が上昇するため、マスク期間のために挟み込み判定が遅れ、挟み込み確定時の負荷(挟み込み負荷)が大きくなってしまうという問題があった。それに対し上記実施例では、推定負荷Pが所定の閾値PL以上であるという基準に加えて、推定負荷PとモータトルクTmの両方が基準トルク(定常トルク)Tref以上である場合のみ挟み込みの可能性ありと判断して挟み込み判定処理を継続するようにしたので、マスク期間なしにモータ3の起動直後から挟み込み検知を行っても、角速度ωや角加速度dωの変動による挟み込み誤検知をなくすまたは大幅に低減することができる。従って、モータ起動直後のマスク期間なしにモータ3の起動直後から好適に挟み込み検知を行うことが可能である。
また上記実施例では、ステップST104においてtcon≧trefが成り立つ場合に挟み込みを確定するのに加えて、ステップST105においてD≧Drefであった場合にも挟み込みがあったものと判定している。図11のグラフに示すように、推定負荷Pが基準負荷PLを越える状態が継続する時間tconのみに基づいて挟み込みの有無を判定すると、ウィンドウ9の移動速度が小さいとき(図11における実線)は挟み込み確定時の負荷増加ΔP1も小さく問題ないが、移動速度が大きい場合は負荷上昇速度も大きくなり(図11における想像線)、挟み込みが確定するまでの負荷増加ΔP2が過大になる恐れがある。上記実施例ではウィンドウ9の上昇速度が速い場合は、推定負荷Pが基準負荷PLを越えた状態の持続時間tcomが基準時間trefに達する前でも、推定負荷Pが基準負荷PLを越えてからのウィンドウ9の移動量Dが基準移動量Drefを越えれば挟み込みありと判定してモータ3の停止または反転を行うので、挟み込み確定までの負荷増加(例えば図11のΔP2′)を低く抑えることができる。
次にステップST9における判定用マスク量(即ち、基準時間tref及び基準移動量Dref)の選択について説明する。図12にステップST9で行われる処理の詳細フローを示す。図示されているように、ステップST91において推定負荷Pの変化率が所定値以上であるか否か判定し、所定値以上でないときステップST92に進み、第1の基準時間t1を判定用基準時間trefとするとともに、ステップ93で第1の基準移動量D1を判定用基準移動量Drefとする。ステップST91において推定負荷Pの変化率が所定値以上の場合はステップST94に進んで、第2の基準時間t2を判定用基準時間trefとするとともに、ステップST95で第2の基準移動量D2を判定用基準移動量Drefとする。ここで、t1<t2、D1<D2である。例えばt1を20ms、t2を60ms、D1を12カウント(パルス数)、D2を36カウント(パルス数)とすることができる。上記したステップST104、ST105の判定ではこのようにして選択された判定用基準時間tref及び判定用基準移動量Drefをそれぞれ用いて挟み込みの有無を判定する。尚、推定負荷Pの変化率は好適には以下の式で求めることができる:
推定負荷変化率=|前回推定負荷−今回推定負荷|÷(制御サイクル毎のパルス数)…(4)
図13は、例えば車両のドアを勢いよく閉めた場合のように車両に一過性の大きな衝撃が加わった場合の推定負荷Pの一例を示している。図示されているように推定負荷Pは大きな変化率で上昇し、ある時点で基準負荷PLを越え、そこから挟み込み判定処理がスタートする。このような大きな衝撃が加わった場合、比較的小さい第1の基準時間t1で判定すると、誤判定を生じ得る。しかしながら、上記したように推定負荷Pの変化率が所定値以上の場合、第1の基準時間t1より大きな第2の基準時間t2を判定に用いることで誤検知を防止することができる。基準移動量Dref(即ち、D1またはD2)についても同様である。
本発明を特定の実施形態に基づいて詳細に説明したが、これらの実施形態はあくまでも例示であって本発明はこれらの実施形態によって限定されるものではない。例えば、上記実施例は自動車のパワーウィンドウ装置に本発明を適用したが、自動車の電動スライドドアに本発明を適用することも可能である。
また、ステップST101における基準負荷PLがステップST102における基準トルクTrefより大きいか等しい場合は、推定負荷P≧基準負荷PLであれば必ず推定負荷P≧基準トルクTrefであるので、ステップST102を省略することもできる。
本発明に係る車両用開閉体の制御装置は、開閉体を駆動するモータの起動直後からマスク期間を設けることなく物体の挟み込み判定を行うことが可能であるので、例えば自動車のパワーウィンドウ装置のため制御装置として有用である。
本発明が適用された自動車用パワーウィンドウ装置のモータ駆動制御回路のブロック図。 本発明に基づく制御フローの概要を示す図。 ウィンドウ開動作における基準トルクTrefを求めるためのフロー図。 挟み込みが生じたときの推定負荷とモータフリクション特性の関係を示すグラフ。 モータトルクマップの更新過程を示すフロー図。 モータトルクマップの一例を示すグラフ。 振動性外乱があるときの推定負荷及びモータトルクの一例を示す波形図。 振動性外乱か否かを判定するための過程の詳細フロー図。 挟み込み判定過程の詳細フロー図。 モータ起動時の負荷変化の一例を示す波形図。 異なるウィンドウ移動速度に対する挟み込み検知を説明するためのグラフ。 挟み込み判定用閾値の選択過程の詳細を示すフロー図。 車両に大きな外乱が加わったときの推定負荷の一例を示すフロー図。
符号の説明
1 制御部
2a オート操作スイッチ、2b マニュアル操作スイッチ
3 モータ
4 駆動回路
5 電圧検出回路
6 回転センサ
7 角速度算出回路
8 CPU
8a 角加速度算出部、8b 推定負荷/モータトルク算出部、8c 判定部、8d 位置算出部、8e モータトルクマップ算出部、8f 基準トルク算出部
9 ウィンドウ

Claims (5)

  1. 直流モータで開閉体を駆動する車両用開閉体の制御装置であって、
    前記モータの回転速度を検出する回転速度検出手段と、
    前記モータの駆動電圧を検出する電圧検出手段と、
    前記モータの回転速度から前記モータの加速度を算出する加速度算出手段と、
    前記モータの回転速度、加速度及び駆動電圧から推定負荷を求める推定負荷算出手段と、
    前記モータの回転速度と駆動電圧からモータトルクを算出するモータトルク算出手段と、
    前記モータトルクの定常状態を基に基準トルクを算出しメモリに格納する基準トルク算出手段と、
    前記推定負荷、モータトルク及び基準トルクに基づいて物体の挟み込みを判定する挟み込み判定手段とを有し、
    前記挟み込み判定手段は、前記推定負荷が所定の閾値より大きい場合でも、前記推定負荷と前記モータトルクの少なくとも一方が前記基準トルクより小さい場合は物体の挟み込みはないものと判定することを特徴とする車両用開閉体の制御装置。
  2. 前記基準トルク算出手段は、前記開閉体の開動作と閉動作の両方において前記基準トルクの算出を行うことを特徴とする請求項1に記載の車両用開閉体の制御装置。
  3. 前記開閉体が上下方向に開閉動作し、前記開閉体の開動作が下方向への動作であり、前記開動作において算出された基準トルクは、前記開閉体の閉動作においてなされる挟み込み判定に用いられるとき、前記開閉体の重量に基づいて補正されることを特徴とする請求項2に記載の車両用開閉体の制御装置。
  4. 前記挟み込み判定手段は、前記推定負荷が前記所定の閾値を越えた状態が継続する持続時間が所定の基準時間を超えるか、または、前記推定負荷が前記所定の閾値を越えた状態にある間の前記開閉体の移動量が所定の基準移動量を超えた場合に、物体の挟み込みがあるものと判定することを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか一項に記載の車両用開閉体の制御装置。
  5. 前記基準トルクは、前記推定負荷の変動幅が所定の範囲内にある状態が所定の時間続いたとき、その所定の時間内の前記モータトルクの平均値として前記基準トルク算出手段により算出されることを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれか一項に記載の車両用開閉体の制御装置。
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