JP2007270409A - 難燃性合成繊維および該難燃性合成繊維を用いた難燃性マットレス - Google Patents

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Abstract

【課題】従来の難燃性不織布では解決が困難であった課題、すなわち、加工性や風合い、触感が良好で意匠性が高く、米国タバコ試験16CFR part1632に合格するマットレス、さらには、米国タバコ試験16CFR part1632とともに米国カリフォルニア州燃焼試験TB603に合格するマットレスを提供する。
【解決手段】ハロゲン原子を17重量%以上含む重合体(1)100重量部に対し、150℃〜400℃で熱分解し塩基性ガスを発生する化合物(2)を3重量部以上含む難燃性合成繊維である。
【選択図】なし

Description

本発明は、高度な難燃性を必要とするベッド、マットレス等の寝具製品に関する。
近年、衣食住の安全性確保の要求が強まり、難燃素材の必要性が高まってきている。そのような中で、マットレス等の寝具に使用される素材への難燃性付与が強く要望されている。例えば、米国におけるマットレスの難燃規格に、タバコ試験16CFR part1632がある。
汎用的なマットレスにおいては使用時の快適さのために、マットレスを構成する内部構造体としてウレタンフォームなどの易燃性素材が用いられており、また内部構造体と側地の間には、嵩高性を持たせるために、汎用的な素材であるポリエステルをメイン素材として用いた不織布が用いられている。しかしながら、ポリエステルからなる不織布を用いたマットレスは、前記タバコ試験16CFR part1632を実施した際、タバコ熱により容易にポリエステルが溶融することで、内部構造体である易燃性のウレタンフォーム熱の伝わりを妨げることにより合格するが、ポリエステル自体は易燃性であるため、防炎性に劣るという問題があった。マットレスの防炎には、側地および不織布から内部構造体である前記易燃性素材への着炎を長時間に渉り防止することが重要である。また、その側地や不織布の防炎素材は、家具や寝具の快適さや嵩高性といった要件を損なわないものでなければならない。
従来、様々な難燃繊維や防災薬剤が検討されてきたが、前記タバコ試験と防炎性を併せもち、かつ、家具、寝具用素材の要件を充分に兼ね備えた難燃性側地や難燃性不織布は未だ提案されていない。
例えば、難燃繊維としてハロゲン含有繊維を単独で不織布として用いたマットレスは、熱源であるタバコの温度を下げる効果があるため、米国タバコ試験16CFR part1632に合格するが、不織布の加工方法が限定される他、充分な嵩高性に劣る等の問題があった。
さらに最近、マットレスに関する難燃規格として、米国カリフォルニア州燃焼試験TB603が発足された。この規格はマットレスにバーナー炎を一定時間放射した際、マットレスの燃焼により発生する熱量を規定値以内に収めるといった規格である。要求される不織布の性質としては、着火したマットレスの延燃を防ぐ防炎性能の他、バーナーの炎がマットレス内部構造体である木綿やウレタンフォームなどの易燃性素材に直接あたるのを防ぐ、不織布の炭化膜形成性能が求められる。このため、汎用的な素材であるポリエステルをメイン素材として用いた場合には、ポリエステルは炭化成分となりえないため、強制燃焼させた場合には溶融、燃焼により穴が空き、構造を維持することができず、前述のマットレスに用いられる木綿やウレタンフォームへの着炎を防ぐ耐火性能は全く不充分であった。
これら寝具用素材の欠点を改良し、一般的な特性として要求される、優れた風合、吸湿性、触感を有し、かつ、安定した難燃性を有する素材として、難燃剤を大量に添加した高度に難燃化した含ハロゲン繊維と、難燃化していない他の繊維とを組み合わせた難燃繊維複合体によるインテリア繊維製品(特許文献1)や寝具用繊維製品(特許文献2)が提案されている。しかしながら、これらの寝具製品を用いて米国タバコ試験16CFR part1632を実施すると、試験に合格しないケースが発生するため、米国タバコ試験16CFR part1632および米国カリフォルニア州燃焼試験TB603の両方の試験を満足するものとは言い難い技術であった。
また、本質的に難燃性である繊維と含ハロゲン繊維から嵩高さを有する難燃性不織布(特許文献3)やハロゲン含有ポリアクリロニトリル繊維と燃焼時にそれをサポートする繊維からなる難燃性不織布(特許文献4)、難燃性レーヨン繊維や難燃性アクリル繊維や難燃性メラミン繊維からなる難燃性不織布(特許文献5)が提案されている。しかし、これらの方法では高度に難燃化したハロゲン繊維は燃焼により繊維形態を維持できず燃焼時の炭化膜強度が不充分となり、マットレス、とりわけピロートップ型マットレスにおいてはマットレスの自重にボーダー部分の炭化膜が破壊され燃焼を食い止めることが困難であった。また、燃焼時に繊維形態を維持するために用いられる有機耐熱繊維や本質的に難燃性である繊維は一般的に高価でありコスト的に不利であるという問題点があった。
特開平05−106132号公報 特開平05−093330号公報 WO03/023108 US2004/0062912A1 US2004/0097156A1
本発明は、従来の難燃性不織布では解決が困難であった課題、すなわち、加工性や風合い、触感が良好で意匠性が高く、米国タバコ試験16CFR part1632に合格するマットレス、さらには、米国タバコ試験16CFR part1632とともに米国カリフォルニア州燃焼試験TB603に合格するマットレスを提供することを目的とする。
本発明者らは、鋭意検討を重ねた結果、ハロゲン原子を17重量%以上含む重合体100重量部に対し、150℃〜400℃で熱分解し塩基性ガスを発生する化合物を3重量部以上含む難燃性合成繊維を使用した不織布を使用することで、ハロゲン原子を17重量%以上含む重合体よりなる繊維より熱分解により発生する塩化水素を塩基性ガスにより中和することで、米国タバコ試験16CFR part1632に基づく方法でタバコ試験を実施した際、タバコの燃焼温度を下げ、内部構造体であるウレタンフォームへの熱の伝わりを抑え、米国タバコ試験16CFR part1632に合格できるとともに米国カリフォルニア州燃焼試験TB603にも合格できることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち本発明は、ハロゲン原子を17重量%以上含む重合体(1)100重量部に対し、150℃〜400℃で熱分解し塩基性ガスを発生する化合物(2)を3重量部以上含む難燃性合成繊維に関する。
前記重合体(1)のハロゲン含量が20〜86重量%であることが好ましい。
前記重合体(1)が、アクリロニトリル単位30〜70重量%、ハロゲン含有ビニル系単量体単位および/またはハロゲン含有ビニリデン系単量体単位70〜30重量%、ならびにこれらと共重合可能なビニル系単量体単位0〜10重量%を含むことが好ましい。
前記塩基性ガスが、アンモニアガスであることが好ましい。
前記化合物(2)がメラミン系化合物、尿素系化合物、グアニジン系化合物、アミド系化合物およびアンモニウム系化合物から選ばれる少なくとも一種であることが好ましい。
また、本発明は、前記難燃性合成繊維(A)20〜60重量%、ポリエステル系繊維(B)10〜40重量%および(C)難燃セルロース系繊維20〜60重量%を含む難燃性不織布を用いた難燃性マットレスにも関する。
難燃性不織布の目付けが250〜400g/m2であることが好ましい。
ポリエステル系繊維(B)が、融点が200℃を超えるポリエステル繊維または低融点バインダー繊維から選ばれた少なくとも1つの繊維であることが好ましい。
低融点バインダー繊維が、低融点ポリエステルのみからなる繊維、融点が200℃を超えるポリエステルおよび低融点ポリエステルを含む繊維、ならびに融点が200℃を超えるポリエステルおよび低融点ポリオレフィンを含む繊維よりなる群から選ばれた少なくとも1つの繊維であることが好ましい。
難燃セルロース系繊維(C)が、木綿、麻、レーヨン、ポリノジック、キュプラ、アセテートおよびトリアセテートよりなる群から選ばれた少なくとも1つのセルロース系繊維に対して、リン酸エステル系化合物、含ハロゲンリン酸エステル系化合物、縮合リン酸エステル系化合物、ポリリン酸塩系化合物、赤リン、アミン化合物、ホウ酸、ハロゲン化合物、臭化物、尿素−ホルムアルデヒド化合物、リン酸塩−尿素化合物、硫酸アンモニウムよりなる群から選ばれた少なくとも1つの難燃剤を6〜25重量%添加してなる繊維であることが好ましい。
難燃セルロース系繊維(C)が、ケイ酸またはケイ酸アルミニウムの難燃剤を20〜50重量%含有するセルロース繊維であることが好ましい。
本発明の難燃性不織布を用いたマットレスは、米国タバコ試験16CFR part1632において、塩基性ガスを発生することでハロゲン含有繊維より発生される塩酸を中和することで、塩酸によるウレタンフォームの分解を抑制し、内部構造体であるウレタンフォームの燃焼を妨げるとともに米国カリフォルニア州燃焼試験TB603に合格する、高度な難燃性を有することを可能とするものである。
本発明は、ハロゲン原子を17重量%以上含む重合体(1)100重量部に対し、150℃〜400℃で熱分解し塩基性ガスを発生する化合物(2)を3重量部以上含む難燃性合成繊維に関する。
本発明におけるハロゲン原子を17重量%以上含む重合体(1)のハロゲン含量としては、好ましくは下限が20重量%、より好ましくは26重量%、上限としては好ましくは86重量%、より好ましくは73重量%、さらに好ましくは48重量%である。前記ハロゲン含有量が17重量%未満の場合、繊維を難燃化することが困難になり、好ましくない。ハロゲン含有量の上限が86重量%であるのは、臭化ビニリデン単独重合体のハロゲン含有量が86重量%であるためであり、この値がハロゲン含有量の上限値となる。これ以上のハロゲン含有量を得るためには、さらにモノマー中のハロゲン原子を増やす必要があり、技術的に現実的ではなくなる。
前記のごときハロゲン原子を17重量%以上含む重合体(1)としては、例えばハロゲン原子を含有する単量体の重合体、前記ハロゲン原子を含有する単量体とハロゲン原子を含有しない単量体との共重合体、ハロゲン原子を含有する重合体とハロゲン原子を含有しない重合体とを混合したもの、ハロゲン原子を含有しない単量体または重合体を重合中ないし重合後に、ハロゲン原子を導入したハロゲン原子含有重合体などがあげられるが、これらに限定されるものではない。
このようなハロゲン原子を17重量%以上含む重合体の具体例としては、例えば塩化ビニル、塩化ビニリデン、臭化ビニル、臭化ビニリデン、フッ化ビニル、フッ化ビニリデンなどのハロゲン含有ビニル系またはビニリデン系単量体の単独重合体または2種以上の共重合体;アクリロニトリル−塩化ビニル、アクリロニトリル−塩化ビニリデン、アクリロニトリル−臭化ビニル、アクリロニトリル−フッ化ビニル、アクリロニトリル−塩化ビニル−塩化ビニリデン、アクリロニトリル−塩化ビニル−臭化ビニル、アクリロニトリル−塩化ビニリデン−臭化ビニル、アクリロニトリル−塩化ビニリデン−フッ化ビニリデンなどのハロゲン含有ビニル系またはビニリデン系単量体とアクリロニトリルとの共重合体;塩化ビニル、塩化ビニリデン、臭化ビニル、臭化ビニリデン、フッ化ビニル、フッ化ビニリデンなどのハロゲン含有ビニル系またはビニリデン系単量体の1種以上とアクリロニトリルおよびこれらと共重合可能なビニル系単量体との共重合体;アクリロニトリル単独重合体にハロゲン含有化合物を添加・重合させた重合体;ハロゲン含有ポリエステル;ビニルアルコールと塩化ビニルの共重合体;ポリエチレンやポリ塩化ビニルなどを塩素付加処理した重合体などがあげられるが、これらに限定されるものではない。また、前記単独重合体や共重合体を適宜混合して使用してもよい。
前記ハロゲン原子を17重量%以上含む重合体が、アクリロニトリル単位30〜70重量%、ハロゲン含有ビニル系単量体単位および/またはハロゲン含有ビニリデン系単量体単位70〜30重量%およびそれらと共重合可能なビニル系単量体単位0〜10重量%であることが好ましく、アクリロニトリル単位40〜60重量%、ハロゲン含有ビニル系単量体単位および/またはハロゲン含有ビニリデン系単量体単位60〜40重量%およびそれらと共重合可能なビニル系単量体単位0〜10重量%からなる重合体であることがより好ましい。この場合、得られる繊維が所望の性能(強度、難燃性、染色性など)を有しつつアクリル繊維の風合を有するため、特に好ましい。
ハロゲン含有ビニル系単量体単位およびハロゲン含有ビニリデン系単量体単位の重量比としては、0:100〜100:0の範囲で選択することができ、10:90〜90:10であることが好ましく、30:70〜70:30であることが好ましい。両者の重量比をこの範囲とすることにより、得られる繊維が所望の性能(強度、難燃性、染色性、白度など)を有し、かつアクリル繊維としての風合いも有することができる。
前記共重合可能なビニル系単量体としては、例えばアクリル酸、そのエステル、メタクリル酸、そのエステル、アクリルアミド、メタクリルアミド、酢酸ビニル、ビニルスルホン酸、その塩、メタリルスルホン酸、その塩、スチレンスルホン酸、その塩、2−アクリルアミド−2−メチルスルホン酸、その塩などがあげられ、それらの1種または2種以上が用いられる。また、そのうち少なくとも1種がスルホン酸基含有ビニル系単量体の場合には、染色性が向上するため好ましい。
前記アクリロニトリル単位およびハロゲン含有ビニル系単量体単位を含む共重合体の具体例としては、例えば塩化ビニル単位50部、アクリロニトリル単位49部、スチレンスルホン酸ソーダ単位1部よりなる共重合体、塩化ビニリデン単位47部、アクリロニトリル単位51.5部、スチレンスルホン酸ソーダ単位1.5部よりなる共重合体、塩化ビニリデン単位41部、アクリロニトリル単位56部、2−アクリルアミド−2−メチルスルホン酸ソーダ単位3部などがあげられる。これは、既知の重合方法で得ることができる。
本発明の難燃性合成繊維においては、150〜400℃で熱分解して塩基性ガスを発生する化合物(2)が配合される。これは、米国タバコ試験16CFR part1632において、ハロゲン含有繊維がタバコの熱で熱分解し塩化水素を発生し、マットレスに使用されるウレタンフォームに化学的ダメージを与え、そのダメージを受けたウレタンフォームが燃焼に至るのを、塩基性ガスを発生する化合物の熱分解により発生した塩基性ガスで中和を行なうことで、ウレタンフォームへの化学的ダメージを減少させるためである。なお、繊維への後加工、不織布への後加工によっても同様の効果を得ることは可能ではあるが、製造工程が増えること、後加工による場合には繊維本来の触感が失われること、製造工程や使用の過程において後加工の薬剤が脱落し効果が減少する恐れがあることから、繊維中に配合することが好ましい。
前記化合物(2)としては、150〜400℃で熱分解して塩基性ガスを発生するメラミン系化合物、尿素系化合物、グアニジン系化合物、アミド系化合物、アンモニウム系化合物から選ばれるものならいずれも用いることができる。メラミン系化合物の具体例としては、メラミン、ピロリン酸メラミン、ポリリン酸メラミン、硫酸メラミン、変性メラミン、メラミンシアヌレート、メラミン樹脂、変性メラミン樹脂、メラミン−尿素樹脂等が、尿素系化合物の具体例としては尿素、尿素樹脂、エチレン尿素樹脂等が、グアニジン系化合物の具体例としては塩酸グアニジン、硝酸グアニジン、炭酸グアニジン等が、アミド系化合物の具体例としてはアゾジカルボンアミド、ナイロン、変性ナイロン等が、アンモニウム系化合物の具体例としてはリン酸アンモニウム、ポリリン酸アンモニウム、ビステトラゾールジアンモニウム等があげられるが、これらに限定されるものではない。なかでも、紡糸性に影響を与えないという点から、メラミン系化合物、または尿素系化合物を用いることが好ましい。また、これらを組み合わせて使用しても何ら支障はない。
前記塩基性ガスを発生する化合物(2)の熱分解温度は150℃〜400℃である必要があり、好ましくは200℃〜350℃である。熱分解温度が150℃未満であると、塩基性ガスの発生が早すぎ、ハロゲン含有繊維より塩化水素が発生する前に塩基性ガスの発生が終了し、充分に中和の効果が得られないため好ましくない。また、熱分解温度が400℃を超えると、塩基性ガスの発生が遅すぎ、塩基性ガスが発生したときには既にウレタンフォームが化学的ダメージを受けているため好ましくない。
前記塩基性ガスとしては、窒素化合物の熱分解により発生するアンモニアガスである。窒素化合物は高温のオープンフレームにより燃焼させるとNOx化合物が主に生成するが、タバコ試験16CFR part1632の熱源であるタバコの燃焼のような低温でのくすぶりにおいては、塩基性ガスとしてアンモニアが多量に発生する。
前記塩基性ガスを発生する化合物の使用量は、ハロゲン原子を17重量%以上含む重合体(1)100重量部に対して3重量部以上であり、好ましくは3〜30重量部、さらに好ましくは3〜20重量部である。3重量部未満だと塩基性ガスの量が少なく、米国タバコ試験16CFR part1632において、ハロゲン含有繊維より発生する塩化水素を中和することが困難となり、マットレスに使用されるウレタンフォームの分解を促進し燃焼に至る。中和という観点からすると上限はないが、実用性、紡糸性、経済性の観点から30重量部未満とすることが好ましい。また、前記塩基性ガスを発生する化合物(2)が紡糸溶剤に溶解しない場合には固体として添加することとなるが、その場合の平均粒子径としては3μm以下であることが繊維の製造工程上におけるノズル詰りなどのトラブル回避、繊維の強度向上、繊維中での塩基性ガスを発生する化合物の分散などの点から好ましい。さらに前記塩基性ガスを発生する化合物は、ブロッキング性改善のために粒子表面に化学的修飾を施しても支障ない。このような化学的修飾としては、シロキサン処理などがあげられる。
本発明の難燃性合成繊維には、必要に応じて帯電防止剤、熱着色防止剤、耐光性向上剤、白度向上剤、失透性防止剤、着色剤、難燃剤といったその他添加剤を含有せしめても良い。例えば、難燃剤としては、ポリリン酸アンモニウム、ジブチルアミノホスフェートなどのP系化合物、酸化マグネシウム、水酸化マグネシウム、炭酸マグネシウムなどのMg系化合物、酸化第2スズ、メタスズ酸、オキシハロゲン化第2スズ、水酸化第1スズ、4塩化スズ、ZnSnO3、ZnSn(OH)6などのSn系化合物、酸化亜鉛、硼酸亜鉛などのZn系化合物、酸化モリブデンなどのMo系化合物、酸化チタン、チタン酸バリウムなどのチタン系化合物、硫酸メラミン、スルファミン酸グアニジンなどのN系化合物、水酸化アルミニウムなどのアルミニウム系化合物、酸化ジルコニウムなどのジルコニウム系化合物、錫酸マグネシウム、錫酸ジルコニウム、錫酸亜鉛、ヒドロキシ錫酸亜鉛などのスズ化合物などがあげられるがこれらに限定されるものではない。
さらに、本発明は難燃繊維不織布によって布張りされた、マットレス等の寝具製品を提供できる。ここで言う難燃性不織布とは、前記難燃性合成繊維(A)20〜60重量%、ポリエステル系繊維(B)10〜40重量%、および(C)難燃セルロース系繊維20〜60重量%を含有する難燃性不織布をいい、該不織布を用いたマットレスを米国タバコ試験16CFR part1632に基づきタバコ試験を実施した際、タバコの温度を下げ、内部構造体であるウレタンフォームへの熱の伝わりを抑え、米国タバコ試験16CFR part1632に合格するものであるとともに、不織布が炎に晒された際に不織布が繊維の形態を維持したまま炭化することで炎を遮蔽し、米国カリフォルニア州燃焼試験TB603に合格するものであることが好ましい。
マットレスとしては、例えば、金属製のコイルが内部に用いられたポケットコイルマットレス、ボックスコイルマットレス、あるいはスチレンやウレタン樹脂などを発泡させたインシュレーターが内部に使用されたマットレス等がある。本発明に使用される難燃繊維複合体による防炎性が発揮されることにより、前記マットレス内部の構造体への延焼が防止できるため、いずれの構造のマットレスおいても、難燃性と同時に優れた風合いや触感に優れたマットレスを得ることができる。
マットレス製品に対する本発明の難燃繊維複合体の用い方としては、表面の布地に織布やニットの形態で用いてもよいし、表面の布地と内部構造物、例えばウレタンフォームや詰め綿の間に織布やニット、不織布の形態で挟み込んでも良い。表面の布地に用いる場合には従来の表面の布地に替えて本発明の難燃繊維複合体よりなる布地を用いればよい。また、表面生地と内部構造物の間に織布やニットを挟む場合には、表面生地を2枚重ねる要領で挟み込んでも良いし、内部構造物を本発明の難燃繊維複合体よりなる織布やニットで覆っても良い。表面生地と内部構造物の間に炎遮蔽バリア用布織布として挟む場合には、内部構造物全体に、少なくとも表面の布地と接する部分については必ず内部構造物の外側に本発明の難燃繊維複合体よりなる不織布をかぶせ、その上から表面の布地を張ることになる。
本発明に用いうる難燃性不織布は炎遮蔽バリア用不織布として好適に用いられる。ここでいう炎遮蔽バリアとは、難燃性不織布が炎に晒された際に難燃性不織布が繊維の形態を維持したまま炭化することで炎を遮蔽し、反対側に炎が移るのを防ぐことであり、具体的にはマットレス、椅子、ソファー等の布張り家具等の表面生地と内部構造体であるウレタンフォームや詰め綿等との間に本発明の難燃性不織布をはさむことで、火災の際に内部構造物への炎の着火を防ぎ、被害を最小限に食い止めることができるものである。難燃性不織布の製造方法としては一般的なサーマルボンド法、ケミカルボンド法、ウォータージェット法、ニードルパンチ法、ステッチボンド法等の不織布作製方法が用いることが可能であり、複数の種類の繊維を混綿した後にカードにより開繊、ウェブ作製を行い、このウェブを不織布製造装置にかけることにより作製される。装置の簡便さからはニードルパンチ方式、ポリエステル系低融点バインダー繊維を用いる場合であればサーマルボンド方式による製造が一般的であるが、これらの方式に限定されるものではない。
本発明の難燃繊維複合体には、必要に応じて帯電防止剤、熱着色防止剤、耐光性向上剤、白度向上剤、失透性防止剤などを含有せしめてもよい。
このようにして得られる本発明の難燃繊維複合体は、所望の難燃性を有し、風合い、触感、吸湿性、意匠性などに優れた特性を有する。
本発明の難燃繊維複合体を用いてマットレス等の寝具製品を製造すると、本発明の難燃繊維複合体が有する優れた特性、すなわち優れた難燃性を有し、風合い、触感、吸湿性、意匠性などの優れた特性を有する布張り家具製品が得られる。
本発明の難燃性合成繊維は短繊維でも長繊維でもよく、使用方法において適宜選択することが可能であり、例えば他の天然繊維および化学繊維と複合させて加工するには複合させる繊維に近似なものが好ましく、繊維製品用途に使用される他の天然繊維および化学繊維に合わせて、1.7〜12dtex程度、カット長38〜128mm程度の短繊維が好ましい。
本発明の難燃性合成繊維がマットレスにおける米国タバコ試験16CFR part1632に対して高度に優れた難燃性を示す理由は、以下のように考えられる。熱可塑性樹脂100重量部に対し150℃〜400℃で熱分解し塩基性ガスを発生する化合物を3重量部以上を含有させた繊維をタバコの火に晒すと重合体の成分が熱分解し塩酸ガスを発生する。マットレスの構造体の一部であるウレタンフォームの熱分解を促進することでウレタンフォームが無炎燃焼を始め、最終的には16CFR part1632試験において不合格に至る。150℃〜400℃で熱分解し塩基性ガスを発生する化合物を含有することにより、この塩酸ガスを化学的に中和することが可能となり、その結果、ウレタンフォームは塩酸による分解促進がなされなくなるため、マットレスにおける米国タバコ試験16CFR part1632に対して高度に優れた難燃性を示すと考えられる。
本発明に用いるポリエステル系繊維(B)は、本発明の中綿に優れた嵩高性、耐久性を与えるための成分であると同時に、燃焼時に溶融することで、その溶融物が炭化膜を覆うことにより出来上がった炭化膜の強度を向上させる効果がある。
ポリエステル系繊維(B)の具体例としては、汎用的な融点が200℃を超えるポリエステル繊維、低融点バインダー繊維、難燃性ポリエステル繊維があげられ、これらは単独使用しても良く、2種類以上組み合わせて使用しても良い。低融点バインダー繊維としては低融点ポリエステル単一成分よりなる繊維、通常の融点が200℃を超えるポリエステルと低融点ポリエステルの複合よりなる繊維、通常の融点が200℃を超えるポリエステルと低融点ポリオレフィンの複合よりなる繊維よりなる群から選ばれた少なくとも1つの繊維であるのが好ましい。一般的に低融点ポリエステルの融点は概ね110〜200℃、低融点ポリプロピレンの融点は概ね140〜160℃、低融点ポリエチレンの融点は概ね95〜130℃であり、概ね110〜200℃程度で融解接着能力を有するものであれば特に限定はない。低融点バインダー繊維としては、例えば東レ(株)製のサフメット(4.4dtex×51mm、溶融温度110℃)があげられるがこれに限定されるものではない。
本発明に用いる難燃性セルロース系繊維(C)とは、難燃剤を用いて後加工等により難燃化した難燃剤を添付したセルロース系繊維や、セルロース系繊維に難燃剤としてケイ酸または/およびケイ酸アルミニウムを含有したケイ酸含有セルロース系繊維が使用される。本発明に用いる難燃性セルロース系繊維は、炎遮蔽性不織布の難燃性向上、強度維持のために使用される成分であり、優れた風合や吸湿性などの快適性を与えるとともに、燃焼時に炭化膜を形成するのに効果がある、強固な炭化膜を形成する際の主成分である。難燃性セルロース系繊維はセルロース系繊維に対して、自身が難燃性であるために燃焼による損失が少なく残存する炭化成分がセルロース系繊維に比べて多くなるために、強固な炭化膜を形成する際に必須となる成分である。
難燃性セルロース系繊維の基質であるセルロース系繊維の具体例としては、木綿、麻、レーヨン、ポリノジック、キュプラ、アセテートおよびトリアセテートがあげられ、これらは単独使用しても良く、2種類以上組み合わせて使用してもよい。
前記難燃剤を添加したセルロース系繊維に用いられるセルロース系繊維を後加工等により難燃化する際に用いられる難燃剤としては、トリフェニルホスフェート、トリクレジルホスフェート、トリキシレニルホスフェート、トリメチルホスフェート、トリエチルホスフェート、クレジルフェニルホスフェート、キシレニルジフェニルホスフェート、レゾルシノールビス(ジフェニルホスフェート)、2−エチルヘキシルジフェニルホスフェート、ジメチルメチルホスフェート、トリアリルホスフェート(レオフォス)、芳香族リン酸エステル、ホスホノカルボン酸アミド誘導体、テトラキス・ヒドロキシメチルホスホニウム誘導体、N−メチロールジメチルホスホノプロピオンアミドなどのリン酸エステル系化合物;トリス(クロロエチル)ホスフェート、トリスジクロロプロピルホスフェート、トリス−β−クロロプロピルホスフェート、クロロアルキルホスフェート、トリス(トリブロモネオペンチル)ホスフェート、ジエチル−N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)アミノメチルホスフェート、トリス(2,6−ジメチルフェニル)ホスフェートなどの含ハロゲンリン酸エステル系化合物;芳香族縮合リン酸エステル、含ハロゲン縮合リン酸エステルなどの縮合リン酸エステル系化合物;ポリリン酸アンモニウム・アミド、ポリクロロホスフォネートなどのポリリン酸塩系化合物;ポリリン酸カルバメートなどのポリリン酸エステル系化合物;赤リン、アミン化合物、ホウ酸、ハロゲン化合物、臭化物、尿素−ホルムアルデヒド化合物;含リンアミノプラストなどのリン酸塩−尿素化合物;硫酸アンモニウム、グアニジン系縮合物等があげられ、これらについては単独で使用しても良く、2種以上組み合わせても良い。これら難燃剤はセルロース系繊維に添付するがその添付量としては、炎遮蔽性不織布の難燃性を維持するために、セルロース系繊維に対しては6〜25重量%で、炎遮蔽性不織布全体に対して3重量%以上になるように添付し、また、炎遮蔽性不織布の風合いを損なわないという観点から炎遮蔽性不織布全体に対して35重量%以下になるように添付する。
前記ケイ酸含有セルロース系繊維は、難燃剤としてケイ酸または/およびケイ酸アルミニウムを繊維中に20〜50重量%含有するセルロース繊維であり、通常、1.7〜8dtex程度の繊度、38〜128mm程度のカット長を有しており、その具体例としては、例えばケイ酸を繊維中に約30重量%含有したサテリ(Sateri)社のヴィジル(Visil)が、またケイ酸アルミニウムを繊維中に約33%含有したサテリ(Sateri)社のヴィジルAP(Visil AP)があげられるが、これらに限定されるものではない。
本発明において、米国タバコ試験16CFR part1632に合格し、かつ、防炎性能に優れ、かつ、難燃性不織布の加工性を高めるには、マットレスに用いる難燃性不織布においてハロゲン含有繊維(A)、ポリエステル系繊維(B)、および難燃セルロース系繊維(C)を用いる。ハロゲン含有繊維(A)、ポリエステル系繊維(B)、および難燃セルロース系繊維(C)の割合は、前記タバコ試験合格範囲、防炎性能、および難燃性不織布の加工性、かつマットレス用素材の要件である、嵩高性、吸湿性により決定され、前述したように、難燃性合成繊維(A)20〜60重量%、ポリエステル系繊維(B)10〜40重量%、および(C)難燃セルロース系繊維20〜60重量%であり、好ましくはハロゲン含有繊維(A)20〜60重量%、ポリエステル系繊維(B)10〜25重量%、および難燃セルロース系繊維(C)20〜55重量%である。ハロゲン含有繊維(A)は自己消火性を示し、マットレスの防炎性能を付与する主要成分であり、さらには先述したように、米国タバコ試験16CFR part1632において、ハロゲン含有繊維がタバコの熱で熱分解し塩化水素を発生し、マットレスに使用されるウレタンフォームに化学的ダメージを与え、そのダメージを受けたウレタンフォームが燃焼に至るのを、塩基性ガスを発生する化合物の熱分解により発生した塩基性ガスで中和を行なうことで、ウレタンフォームへの化学的ダメージを減少させる成分である。難燃性不織布におけるハロゲン含有繊維(A)が60重量%を超えると、不織布の充分な嵩高性を得ることができず、また、汎用的な不織布の製造方法であるサーマルボンド法により難燃性不織布を作製することが困難となるため好ましくない。また、難燃性不織布におけるハロゲン含有繊維(A)が20重量%未満であると、充分な防炎性能を得ることができないので好ましくない。ポリエステル系繊維(B)は難燃性不織布に嵩高性を与える主要成分であるが、難燃性不織布におけるポリエステル系繊維(B)の割合が40重量%を超えると、充分な防炎性能が得られないので好ましくない。また、難燃性不織布におけるポリエステル系繊維(B)の割合が10重量%未満であると、不織布の充分な嵩高性を得ることができず、また、汎用的な不織布の製造方法であるサーマルボンド法により難燃性不織布を作製することが困難となるため好ましくない。難燃セルロース系繊維(C)は燃焼時、炭化膜を形成するため、優れた防炎性能を発揮するが、難燃性不織布における難燃セルロース系繊維(C)が60重量%を超えると、難燃性不織布におけるセルロース系繊維の割合が多くなり炎を上げる有炎燃焼ではなくタバコの熱により無炎燃焼を発生し、不織布全体の温度が上昇し、前記タバコ試験において内部構造体であるウレタンフォームなどの易燃性素材に伝わり燃え広がることにより、タバコ試験に合格しないケースが出てくるので好ましくない。また難燃セルロース系繊維(C)が20重量%未満であると、不織布全体における炭化成分の量が少なくなり良好な炭化膜が得られなくなる。
難燃性不織布の目付けは250〜400g/m2であることが好ましく、280〜380g/m2であることがより好ましい。目付けが250g/m2未満であると、不織布に充分なボリューム感があたえられないこと、米国タバコ試験16CFR part1632において充分な難燃性能を示さないケースがでてくること、米国カリフォルニア州燃焼試験TB603試験において良好な炭化膜を形成しにくいことから好ましくない。また、難燃性不織布の目付けが400g/m2を超えると、高い難燃性能を発揮するが、経済的な目付けとは言い難い。
本発明の難燃性不織布を用いてマットレスを製造すると、本発明の難燃性不織布が有する優れた特性、すなわち米国タバコ試験16CFR part1632に合格し、かつ防炎性能に優れ、かつ不織布の加工性に優れ、さらにはマットレス用素材の要件である、嵩高性を有するマットレスが得られる。
以下、実施をあげて本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はかかる実施例のみに限定されるものではない。
製造例1〜6、8、9および11
アクリロニトリル単位51重量%、塩化ビニリデン単位48重量%およびp−スチレンスルホン酸ソーダ単位1重量%よりなる共重合体(ハロゲン含有量:35重量%)をアセトンに樹脂濃度が30重量%になるように溶解させ、得られた樹脂溶解中の樹脂成分100重量部に対して表1に示す化合物を表1に示す割合で添加し、紡糸原液とした。紡糸原液をノズル孔径0.10mmおよび孔数1000ホールのノズルを用い、40重量%アセトン水溶液中へ押し出し、水洗した後120℃で乾燥し、ついで150℃で3倍に延伸した後、160℃で1分間熱処理し、さらにカット長64mmに切断することでハロゲン含有繊維を得た。なお、尿素、メラミンは試薬(和光純薬(株)製)を、アミノ樹脂(メラミン系)はミルベンレジンSM−607(昭和高分子(株)製)を、アミノ樹脂(尿素系)はサーモタイト3HSP(昭和高分子(株)製)を、硫酸メラミンはアピノン901((株)三和ケミカル製)を使用した。
Figure 2007270409
製造例7および10
アクリロニトリル単位51重量%、塩化ビニリデン単位48重量%およびp−スチレンスルホン酸ソーダ単位1重量%よりなる共重合体(ハロゲン含有量:35重量%)をアセトンに樹脂濃度が30重量%になるように溶解させ、紡糸原液とした。紡糸原液をノズル孔径0.10mmおよび孔数1000ホールのノズルを用い、40重量%アセトン水溶液中へ押し出し、水洗した後、ミルベンレジンSM−607(昭和高分子(株)製)を表1に示す割合で表面に塗布し、120℃で乾燥し、ついで150℃で3倍に延伸した後、160℃で1分間熱処理し、さらにカット長64mmに切断することでハロゲン含有繊維を得た。
<難燃性評価試験用不織布の作製方法>
ハロゲン含有繊維の製造例1〜10で作製したハロゲン含有繊維、熱融着ポリエステル繊維である東レ(TORAY)(株)製のサフメット(繊度4.4dtex、カット長51mm、融点110℃)、レーヨン繊維(ダイワボウ(株)製、1.5dtex、カット長38mm)、難燃セルロース系繊維(C)には、サテリ社(Sateri)製のヴィジル(Visil)、(繊度3.5dtex、カット長50mm)を用い、ハロゲン含有繊維、熱融着ポリエステル繊維、レーヨン繊維を所定の割合で混合した繊維をカードにより開繊した後、通常の熱融着方式により所定の目付けの不織布を作製した。
<難燃性評価用簡易マットレスの作製方法>
難燃性マットレスの難燃性は簡易マットレスを以下の方法で試料を作製して評価を実施した。簡易マットレスの断面構造を図1に示す。縦30cm×横45cm×厚さ1.9cm、密度22kg/m3のポリウレタンフォーム(1)(東洋ゴム工業(株)製タイプ360S)を2枚、縦30cm×横45cm×厚さ1.27cm、密度22kg/m3のポリウレタンフォーム(2)(東洋ゴム工業(株)製タイプ360S)を1枚、難燃性評価試験用不織布の作製方法により作製した不織布(3)を1枚、外層の表面生地(4)としてポリエステル製織布(目付け120g/cm2)を1枚、図2のように重ねた構造物をナイロン糸(5)を用いキルティングした。キルティング間隔は20cmとした。この構造物をヘムの間隔が9cmとなるようにカタン糸で縫製し、コの字構造の炎遮蔽物を作製した。炎遮蔽物は45cmの長さに切断し、ウレタンフォームに巻きつけ、難燃性評価用簡易マットレスを作製した。
<難燃性評価方法>
実施例における炎遮蔽性不織布の難燃性能は難燃性評価用簡易マットレスの作製の手順において作製した簡易マットレスを使用し、米国タバコ試験16CFR part1632および米国カリフォルニア州のベッドの燃焼試験方法Technical Bulletin 603(以下、TB603という)に基づいて実施した。
米国タバコ試験16CFR part1632試験方法を簡単に説明すると、マットレスの上にタバコを15cm以上の間隔で合計18本置き、タバコが燃え尽きた後に炭化範囲が2インチ以内であれば合格である。
米国カリフォルニア州のTB603燃焼試験方法を簡単に説明すると、ベッドの側面から42mmの所に垂直にT字型のバーナーを、ベッドの上面から39mmの所に水平にT字型のバーナーをセットし、燃焼ガスはプロパンガスを使用し、ガス圧力は101KPaで上面はガス流量12.9L/分、側面は6.6L/分で、着炎時間は上面は70秒間、側面は50秒間着炎し、観察時間はトータルで30分間である。最大熱放出量が200Kw未満であり、かつ初めの10分間の積算熱放出量が25MJ未満であれば合格である。
本発明における難燃性評価の判定基準としては、難燃性評価用簡易マットレスの作製の手順において作製した簡易マットレスのキルティングの溝部に両切りのタバコ(PALL MALL)を4箇所置き、米国タバコ試験16CFR part1632に基づく方法により試験を実施し、1箇所でも内部構造体へ延焼し、炭化範囲が2インチ以上となれば×、キルティングの裏面にダメージが及んだものを△、それ以外を○とした。
また、TB603に基づく方法により試験したとき、内部構造体へ延焼し、強制消火しなければならなかった場合を×、内部構造体へは着炎しないが試験用簡易マットレスの上面に着炎した炎が側面まで移動し、なおも自己消火しなかった場合は△、それ以外を○とした。
実施例1〜7
難燃性評価試験用不織布の作製方法で作製した不織布(ハロゲン含有繊維40部、熱融着ポリエステル繊維20部、レーヨン繊維40部)を用いて、難燃性評価用簡易マットレスの作製方法に基づきマットレスを作製し、難燃性評価方法にしたがって、難燃性評価を実施した。結果を表2に示す。
比較例1〜4
実施例1〜7と同様の方法で難燃性評価用簡易マットレスを作製し、難燃性評価方法にしたがって、難燃性評価を実施した。結果を表2に示す。
Figure 2007270409
実施例1〜7では、いずれの場合においても、米国タバコ試験16CFR part1632に基づく方法により難燃性評価試験を実施したとき、内部構造体への延焼が殆どなく、炭化範囲が2インチ以内となり、充分な難燃性能を得ることができた。また、実施例3と7において同等の結果が得られたことから、製造方法による性能への差はないことが確認された。
一方、比較例1においては塩基性ガスを発生する化合物が含まれていないために、内部構造体への延焼を食い止めることができなかった。比較例2および3においては塩基性ガスを発生する化合物を含有しているが、含有量が少なく、充分な効果が得られなかった。比較例4においては実施例1、2および5と同量の添加量であるが、分解温度が高すぎるために内部構造体への延焼を食い止めることができなかった。
実施例8〜21
表3に示す繊維の割合において、難燃性評価試験用不織布の作製方法で作製した不織布を用いて、難燃性評価用簡易マットレスの作製方法に基づきマットレスを作製し、難燃性評価方法にしたがって、難燃性評価を実施した。結果を表3に示す。
Figure 2007270409
実施例3および8〜13では、いずれの場合においても、米国タバコ試験16CFR part1632に基づく方法により難燃性評価試験を実施したとき、内部構造体への延焼が殆どなく、炭化範囲が2インチ以内となり、充分な難燃性能を得ることができた。
一方、比較例14および15においては難燃性繊維(A)の割合が少ないため米国タバコ試験16CFR part1632に基づく方法により難燃性評価試験を実施したときレーヨン繊維(C)が無炎燃焼し、内部構造体への延焼を食い止めることができなかった。実施例17および18においては難燃性繊維(A)の割合は充分であるがポリエステル繊維(B)の割合が多く、米国カリフォルニア州燃焼試験TB603試験において炭化膜に穴が開き、内部構造体への延焼を食い止めることができなかった。実施例19および20においては、炭化成分であるレーヨン繊維(C)の割合が少なく、米国カリフォルニア州燃焼試験TB603試験において充分な炭化膜を形成せず内部構造体への延焼を食い止めることができなかった。実施例21においてはレーヨン繊維(C)の割合が多すぎるために米国タバコ試験16CFR part1632に基づく方法により難燃性評価試験を実施したとき、レーヨン繊維(C)が無炎燃焼し、内部構造体への延焼を食い止めることができなかった。実施例16においては米国タバコ試験16CFR part1632および米国カリフォルニア州燃焼試験TB603試験に基づく方法による試験では良好な結果は示すが、難燃性繊維(A)の割合が多すぎ、不織布としてのボリューム感が少なく、むしろへたり感があり不織布としての商品性に劣るものであった。
難燃性評価用簡易マットレスの構造(断面図)である。
符号の説明
1、2 ポリウレタンフォーム
3 不織布
4 表面生地
5 ナイロン糸
6 基材

Claims (11)

  1. ハロゲン原子を17重量%以上含む重合体(1)100重量部に対し、150〜400℃で熱分解し塩基性ガスを発生する化合物(2)を3重量部以上含む難燃性合成繊維。
  2. 重合体(1)のハロゲン含量が20〜86重量%である請求項1記載の難燃性合成繊維。
  3. 重合体(1)が、アクリロニトリル単位30〜70重量%、ハロゲン含有ビニル系単量体単位および/またはハロゲン含有ビニリデン系単量体単位70〜30重量%、ならびにこれらと共重合可能なビニル系単量体単位0〜10重量%を含む請求項1または2記載の難燃性合成繊維。
  4. 前記塩基性ガスが、アンモニアガスである請求項1、2または3記載の難燃性合成繊維。
  5. 化合物(2)がメラミン系化合物、尿素系化合物、グアニジン系化合物、アミド系化合物およびアンモニウム系化合物から選ばれる少なくとも一種である請求項1、2、3または4記載の難燃性合成繊維。
  6. 請求項1、2、3、4または5記載の難燃性合成繊維(A)20〜60重量%、ポリエステル系繊維(B)10〜40重量%および難燃セルロース系繊維(C)20〜60重量%を含む難燃性不織布を用いた難燃性マットレス。
  7. 難燃性不織布の目付けが250〜400g/m2である請求項6記載の難燃性マットレス。
  8. ポリエステル系繊維(B)が、融点が200℃を超えるポリエステル繊維または低融点バインダー繊維から選ばれた少なくとも1つの繊維である請求項6または7記載の難燃性マットレス。
  9. 低融点バインダー繊維が、低融点ポリエステルのみからなる繊維、融点が200℃を超えるポリエステルおよび低融点ポリエステルを含む繊維、ならびに融点が200℃を超えるポリエステルおよび低融点ポリオレフィンを含む繊維よりなる群から選ばれた少なくとも1つの繊維である請求項8記載の難燃性マットレス。
  10. 難燃セルロース系繊維(C)が、木綿、麻、レーヨン、ポリノジック、キュプラ、アセテートおよびトリアセテートよりなる群から選ばれた少なくとも1つのセルロース系繊維に対して、リン酸エステル系化合物、含ハロゲンリン酸エステル系化合物、縮合リン酸エステル系化合物、ポリリン酸塩系化合物、赤リン、アミン化合物、ホウ酸、ハロゲン化合物、臭化物、尿素−ホルムアルデヒド化合物、リン酸塩−尿素化合物、硫酸アンモニウムよりなる群から選ばれた少なくとも1つの難燃剤を6〜25重量%添加してなる繊維である請求項6、7、8または9記載の難燃性マットレス。
  11. 難燃セルロース系繊維(C)が、ケイ酸またはケイ酸アルミニウムの難燃剤を20〜50重量%含有するセルロース繊維である請求項6、7、8、9または10記載の難燃性マットレス。
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JP2009291597A (ja) * 2008-05-07 2009-12-17 Kuraray Co Ltd 防球ネット
WO2011089902A1 (ja) * 2010-01-21 2011-07-28 株式会社カネカ 難燃繊維集合体及びその製造方法、並びに繊維製品
CN104452104A (zh) * 2014-10-15 2015-03-25 长兴百泓无纺布有限公司 一种汽车顶棚复合阻燃非织造布工艺

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