JP2007270163A - 希土類永久磁石の製造方法およびその原料合金 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】粒界相において、添加物であるAlが合金全体に均一に分散しているのではなく、粒界相部分におけるAl量が他の部分よりも少ない分布となっている急冷薄帯合金を用いることで、高い保磁力が得られる第2時効処理温度の範囲を広げる。熱処理温度の適正範囲の幅を広げることで、量産時における熱処理炉内における温度分布のばらつきにかかわらず、安定して高い保持力を有したR−T−B系希土類永久磁石を得ることが可能となり、量産性を向上させることができる。
【選択図】図2
Description
希土類永久磁石の製造方法の一例として粉末冶金法がある。粉末冶金法は低コストでの製造が可能なことから広く用いられている。粉末冶金法では、原料合金を粗粉砕及び微粉砕し、数μmの微粉砕粉末を得る。このようにして得られた微粉砕粉末を磁場中で磁場配向させ、磁場がかかった状態のままプレス成形を行い、得られた成形体を熱処理することで、焼結体を得ている。そして、所定形状への加工、さらに必要に応じて表面処理を行うことで、R−T−B系希土類永久磁石は製造されている。
従来、このストリップキャスト合金の粒径等をコントロールすることによって、磁気特性の向上を図る試みがなされていた(例えば、特許文献1〜3参照。)。
成形後の成形体を熱処理する過程では、量産用の大型炉を用いるわけであるが、大型であるが故に、試験用の小型炉に比較し、炉内温度分布の均一性に劣る。このため、試験によって得られた適正範囲内の条件で炉の温度設定等を行っても、炉内の位置によっては、温度がその適正範囲から外れてしまうことがある。その結果、その部分で熱処理が行われたR−T−B系希土類永久磁石は、適正範囲から外れているため、高い磁気特性(特に保磁力HcJ)が得られないことになる。
したがって、同じ組成の原料合金であっても、保磁力の熱処理温度依存性が大きい材料は生産効率が悪いため、熱処理温度の適正範囲の幅が少しでも広くなるのが量産性の面で好ましい。
本発明は、このような技術的課題に基づいてなされたもので、熱処理温度の適正範囲の幅を広げ、量産性を向上させることのできる希土類永久磁石の製造方法およびその原料合金を提供することを目的とする。
この知見に基づいてなされた本発明は、R−T−B(R:希土類元素の1種又は2種以上、T:Fe、又はFe及びCo、B:ホウ素)系希土類永久磁石の製造方法であって、粒界相におけるAlの含有量が他の領域よりも少ない原料合金を粉砕する粉砕工程と、粉砕工程を経た粉砕粉末を磁場中で成形する成形工程と、成形工程で得られた成形体を焼結する焼結工程と、焼結工程で得られた焼結体を熱処理する時効処理工程と、を備えることを特徴とする。このような原料合金を用いることで、高い保磁力を得ることのできる適正な熱処理温度の幅(以下、これを適正温度幅と称することがある。)を広げることが可能となる。
このとき、熱処理として、焼結工程における焼結温度よりも低い温度領域における第一の熱処理と、第一の熱処理における温度領域よりも低い温度領域における第二の熱処理と、を行う場合、特に低温側の第二の熱処理における適正温度幅を広げることが可能となる。
このような原料合金は、溶湯をロール上で急冷することで形成した薄帯状である。
また、最終的に得られる希土類永久磁石は、R2T14B相からなる主相結晶粒と、主相結晶粒よりRを多く含む粒界相とを備えるものである。
なお、粉砕工程では、R2T14B結晶粒を主体とする低R合金からなる原料合金片と、低R合金よりRを多く含む高R合金からなる原料合金片を粉砕し、成形工程では、低R合金および高R合金を粉砕して得た粉砕粉末を磁場中で成形するようにしても良い。
まず、希土類永久磁石の製造方法について説明する。ここでまず、本発明の適用対象の磁石について説明する。
本発明はR−T−B(Rは希土類元素の1種又は2種以上、TはFe又はFe及びCo)で示されるネオジム系永久磁石について適用することが望ましい。もちろん、これに限らず、他の希土類永久磁石に本発明を適用することも有効である。
本発明が適用されるR−T−B系永久磁石は、Coを5.0wt%以下(0を含まず)、望ましくは0.1〜3.0wt%含有することができる。CoはFeと同様の相を形成するが、キュリー温度の向上、粒界相の耐食性向上などに効果がある。
以下、各工程の内容を説明する。
<原料合金作製>
R−T−B系永久磁石の原料合金は、真空又は不活性ガス、望ましくはAr雰囲気中でストリップキャスト法により作製することができる。ストリップキャスト法は、原料金属をArガス雰囲気などの非酸化性雰囲気中で溶解して得た溶湯を回転するロールの表面に噴出させる。ロールで急冷された溶湯は、薄板または薄片(鱗片)状に急冷凝固される。この急冷凝固された合金は、結晶粒径が1〜50μmの均質な組織を有している。
また混合法としては、Rの含有量が異なるR2T14B結晶粒を主体とする2種類以上の合金を混合する方法や、重希土類(Dy,Tbなど)の含有量が異なるR2T14B結晶粒を主体とする2種類以上の合金を混合する方法を適用することができる。
これに対し、組成の異なる2種類以上の合金を用いない場合を1合金法と称し、この1合金法を適用し、R−T−B系希土類永久磁石を得る場合もある。
このような急冷薄帯合金は、例えば、溶湯をロール上に噴出させ、ロールから剥離するときの合金の温度をコントロールすることで得られる。例えば、ロールから剥離するときの合金の温度を、850〜1100℃とすることで、上記のような分布の急冷薄帯合金を得ることができる。他に、急冷薄帯合金の組成分布をコントロールする因子としては、溶湯の温度、ロール上での合金の厚さ、ロールの周速、ロールの表面状態等がある。
得られた急冷薄帯合金は粉砕工程に供される。混合法による場合には、低R合金及び高R合金は別々に又は一緒に粉砕される。粉砕工程には、粗粉砕工程と微粉砕工程とがある。まず、急冷薄帯合金を、粒径数百μm程度になるまで粗粉砕する。粗粉砕は、スタンプミル、ジョークラッシャー、ブラウンミル等を用い、不活性ガス雰囲気中にて行うことが望ましい。粗粉砕に先立って、急冷薄帯合金に水素を吸蔵させた後に放出させることにより粉砕を行うことが効果的である。水素放出処理は、希土類永久磁石として不純物となる水素を減少させることを目的として行われる。水素放出のための加熱保持の温度は、200℃以上、望ましくは350℃以上とする。保持時間は、保持温度との関係、急冷薄帯合金の厚さ等によって変わるが、少なくとも30分以上、望ましくは1時間以上とする。水素放出処理は、真空中又はArガスフローにて行う。なお、水素吸蔵処理、水素放出処理は必須の処理ではない。この水素粉砕を粗粉砕と位置付けて、機械的な粗粉砕を省略することもできる。
以上のようにして得られた微粉砕粉(磁性材料)を、磁場中成形し、成形体を得る。本実施の形態では、加圧方向と印加する磁界の方向が直交する直交磁界成形法を用いる。加圧方向と印加する磁界の方向が平行な成形法である平行磁界成形法を用いることもできる。
磁場中成形における成形圧力は30〜300MPa(0.3〜3ton/cm2)の範囲とすればよい。成形圧力が低いほど配向性は良好となるが、成形圧力が低すぎると成形体の強度が不足して成形体のハンドリング時に問題が生じるので、この点を考慮して上記範囲から成形圧力を選択する。磁場中成形で得られる成形体の最終的な相対密度は、50〜65%が好ましい。
本発明において印加する磁場は、800〜1600kA/m(10〜20kOe)程度とすればよい。印加する磁場は静磁界に限定されず、パルス状の磁界とすることもできる。また、静磁界とパルス状磁界を併用することもできる。パルス状の磁界を用いる場合は、2400kA/m(30kOe)程度の高い磁界を使用することが可能である。
磁場中成形によって得られた成形体を真空又は不活性ガス雰囲気中で焼結し、R−T−B系永久磁石を得る。焼結温度は、組成、粉砕方法、平均粒径と粒度分布の違い等、諸条件により調整する必要があるが、1000〜1200℃で1〜10時間程度焼結すればよい。
焼結後、得られた焼結体に時効処理を施すことができる。この工程は、保磁力(HcJ)を制御する重要な工程であり、不活性ガス雰囲気中あるいは真空中で時効処理を施すことが好ましい。この時効処理としては、2段時効処理が好ましい。1段目の時効処理工程(第一の熱処理)では、700〜900℃の範囲内に0.5〜3時間保持する。次いで、室温〜200℃の範囲内にまで急冷する第1急冷工程を設ける。2段目の時効処理工程(第二の熱処理)では、500〜700℃の範囲内に0.5〜3時間保持する。次いで、室温まで急冷する第2急冷工程を設ける。時効処理を1段で行う場合には、500〜900℃の時効処理を施すとよい。
このようにして熱処理温度の適正範囲の幅を広げることができるので、量産時における熱処理炉内における温度分布のばらつきにかかわらず、安定して高い保磁力を有したR−T−B系希土類永久磁石を得ることが可能となり、量産性を向上させることが可能となる。
ストリップキャスト法により、次に示す2種類の急冷薄帯合金を作製した。
(1)低R合金:30wt%Nd−0.2wt%Al−1.2wt%B−bal.Fe
(2)高R合金:45wt%Nd−0.2wt%Al−10wt%Co−1.0wt%Cu−bal.Fe
このとき、(1)の低R合金は、溶湯温度、ロール面上における合金厚さ、ロールの周速、溶湯をロールに供給するためのタンディッシュのロールに対する位置等を変えることで、ロール面上から剥離されるときの急冷薄帯合金の温度(ストリップ剥離温度)が表1となるようにした。
その結果を図2、図3に示す。これらの図において、Fe量が少なく、かつNd量が多い箇所(図中点線で囲んだ部分)が、Nd−リッチ相、すなわち粒界相である。
なお、表1中における平均結晶粒径は、Nd−リッチ相の間隔により求めた。
これらの図3において、ストリップ剥離温度を850℃未満とした比較例1においては、Al量が、Nd−リッチ相においても他の領域と変わらず、合金全体にほぼ均一に分散している。これに対し、図2に示したように、ストリップ剥離温度を850℃以上とした実施例においては、Al量が、Nd−リッチ相において、他の領域よりも明らかに落ち込んでいることがわかる。
なお、高R合金である合金(1)と低R合金である合金(2)との混合比率(重量比)は、90:10である。
磁場中成形で得られた成形体を焼結した。焼結は、真空中、1060℃で4時間保持する条件とした。次いで得られた焼結体に900℃×1時間と510〜590℃×1時間(ともにAr雰囲気中)の2段時効処理を施した。
その結果、図4(a)に示す絶対値データから分かるように、結晶粒径を細かくすることで保磁力の絶対値は向上するものの、第2時効処理温度の適正幅は広がらない。図4(b)に示すように、第2時効処理温度を530℃とした場合の保磁力を基準として比較すると、比較例1、2の急冷薄帯合金を用いた場合、第2時効処理温度が550℃を超えると保磁力が急激に低下しているのに対し、実施例の急冷薄帯合金を用いた場合、第2時効処理温度が570℃を超えるまで、保磁力が低下していないことがわかる。
つまり、粒界相においてAl量が落ち込んでいる急冷薄帯合金を用いることで、高い保磁力が得られる第2時効処理温度の範囲を広げることができることがわかる。
実施例1と同様にして、実施例と比較例1の低R合金、高R合金の2種類の急冷薄帯合金を作製し、これを粗粉砕、微粉砕し、磁場中成形により得た成形体を焼結した。
次いで得られた焼結体に510〜590℃×1時間(ともにAr雰囲気中)のみの1段の時効処理を施した。
その結果、図5に示すように、比較例1の急冷薄帯合金を用いた場合、時効処理温度が550℃を超えると保磁力が急激に低下しているのに対し、実施例の急冷薄帯合金を用いた場合、時効処理温度が570℃を超えるまで、保磁力が低下していないことがわかる。
ストリップキャスト法により、次に示す急冷薄帯合金を1合金法により作製した。
27wt%Nd−4.5wt%Dy−0.2wt%Al−1.5wt%Co-0.1wt%Cu−1.0wt%B−bal.Fe
このとき、実施例1と同様の手法で、ロール面上から剥離されるときの急冷薄帯合金の温度(ストリップ剥離温度)が900、850℃となるように制御した。
磁場中成形で得られた成形体を焼結した。焼結は、真空中、1090℃で4時間保持する条件とした。次いで得られた焼結体に850℃×1時間と520〜590℃×1時間(ともにAr雰囲気中)の2段時効処理を施した。
その結果、図6(a)に示すように、ストリップ剥離温度が850℃の急冷薄帯合金を用いた場合、第2時効処理温度が570℃を超えると保磁力が急激に低下しているのに対し、ストリップ剥離温度が900℃の急冷薄帯合金を用いた場合、第2時効処理温度が580℃を超えるまで、保磁力が低下していないことがわかる。
つまり、ストリップ剥離温度を高めて900℃とすることで、高い保磁力が得られる第2時効処理温度の範囲を広げることができることがわかる。
(1)高Dy合金:25.5wt%Nd−6wt%Dy−0.2wt%Al−1.5wt%Co−0.1wt%Cu-1.0wt%B−bal.Fe
(2)低Dy合金:28.5wt%Nd−3wt%Dy−0.2wt%Al−1.5wt%Co−0.1wt%Cu-1.0wt%B−bal.Fe
このとき、(1)、(2)の両合金は、溶湯温度、ロール面上における合金厚さ、ロールの周速、溶湯をロールに供給するためのタンディッシュのロールに対する位置等を変えることで、ロール面上から剥離されるときの急冷薄帯合金の温度(ストリップ剥離温度)が、900、850℃となるように制御した。
となるように、ナウターミキサーで30分間混合した。
なお、高Dy合金である合金(1)から得られた微粉末と低Dy合金である合金(2)から得られた微粉末との混合比率は50:50であった。
磁場中成形で得られた成形体を焼結した。焼結は、真空中、1090℃で4時間保持する条件とした。次いで得られた焼結体に850℃×1時間と520〜590℃×1時間(ともにAr雰囲気中)の2段時効処理を施した。
その結果、図6(b)に示すように、ストリップ剥離温度が850℃の急冷薄帯合金を用いた場合、第2時効処理温度が560℃を超えると保磁力が急激に低下しているのに対し、ストリップ剥離温度が900℃の急冷薄帯合金を用いた場合、第2時効処理温度が580℃を超えるまで、保磁力が低下していないことがわかる。
つまり、ストリップ剥離温度を高めて900℃とすることで、高い保磁力が得られる第2時効処理温度の範囲を広げることができることがわかる。
Claims (6)
- R−T−B(R:希土類元素の1種又は2種以上、T:Fe、又はFe及びCo、B:ホウ素)系希土類永久磁石の製造方法であって、
粒界相におけるAlの含有量が他の領域よりも少ない原料合金を粉砕する粉砕工程と、
前記粉砕工程を経た粉砕粉末を磁場中で成形する成形工程と、
前記成形工程で得られた成形体を焼結する焼結工程と、
前記焼結工程で得られた焼結体を熱処理する熱処理工程と、
を備えることを特徴とする希土類永久磁石の製造方法。 - 前記熱処理は、前記焼結工程における焼結温度よりも低い温度領域における第一の熱処理と、
前記第一の熱処理における温度領域よりも低い温度領域における第二の熱処理と、を行うことを特徴とする請求項1に記載の希土類永久磁石の製造方法。 - 前記原料合金は、溶湯をロール上で急冷することで形成した薄帯状であることを特徴とする請求項1または2に記載の希土類永久磁石の製造方法。
- 前記希土類永久磁石は、R2T14B相からなる主相結晶粒と、前記主相結晶粒よりRを多く含む粒界相とを備えることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の希土類永久磁石の製造方法。
- 前記粉砕工程では、R2T14B結晶粒を主体とする低R合金からなる原料合金片と、低R合金よりRを多く含む高R合金からなる原料合金片を粉砕し、
前記成形工程では、前記低R合金および前記高R合金を粉砕して得た前記粉砕粉末を磁場中で成形することを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載の希土類永久磁石の製造方法。 - R−T−B(R:希土類元素の1種又は2種以上、T:Fe、又はFe及びCo、B:ホウ素)系希土類永久磁石の原料合金であって、
粒界相におけるAlの含有量が他の領域よりもプアであり、Rの含有量が前記他の領域よりもリッチであることを特徴とする希土類永久磁石の原料合金。
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