JP2007269607A - 高強度コンクリート用セメントの製造方法および当該方法により得られた高強度コンクリート用セメント - Google Patents
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Abstract
【解決手段】 高強度コンクリート用セメントの製造方法は、セメントクリンカの送窯原料中に含まれる90μmを超える粒子中に存在するSiO2量が、送窯原料中の全SiO2量に対し27質量%以下となるように調整されるもので、特に送窯原料中のSiO2原料として、Al2O3および/またはFe2O3成分を含むケイ酸質原料を使用することで、セメント中に含まれるC2S鉱物へアルカリ成分を選択的に固溶させることが好適に可能となる。
【選択図】 図1
Description
一方、セメントには主として4種類、3CaO・SiO2(C3S)、2CaO・SiO2(C2S)、3CaO・Al2O3(C3A)および4CaO・Al2O3・Fe2O3(C4AF)のセメントクリンカ鉱物が含まれており、これら鉱物の含有量によって強度発現性および水和発熱特性が異なる。
また、セメント鉱物の1つであるC2Sは水和反応がエーライトに比べて強度発現が遅いため、長期強度を増加させるためにはC2Sの水和活性を高める必要がある。
しかし、セメントクリンカ鉱物組成やブレーン比表面積を変えると、セメントの水和発熱量が変化するので、JIS R 5210によって水和発熱量が制限されている中庸熱ポルトランドセメントや低熱ポルトランドセメントにおいては、これらの調整によって強度発現性を制御することは限界があるとともに、フレッシュコンクリートの流動性が変化してしまうという欠点がある。
また、低熱ポルトランドセメントや中庸熱ポルトランドセメントは、高強度/高流動コンクリートに用いられており、これらのコンクリートでは単位セメント量が600kg/m3以上にも達することから、コンクリート中の総アルカリ量を抑制するためには、低熱ポルトランドセメントや中庸熱ポルトランドセメントのアルカリ含有量抑制が重要となっている。
本発明の他の目的は、原料中の総アルカリ量を増加させることなく、セメント中に含まれるC2S鉱物へアルカリ成分を選択的に固溶させることで、所望する長期強度が得られる、簡便で経済的な高強度コンクリート用セメントの製造方法及び当該方法により得られた高強度コンクリート用セメントを提供することである。
また、本発明の他の目的は、本発明の高強度コンクリート用セメントの製造方法を用いて、所望する長期強度を有する高強度コンクリート用セメントを提供することである。
請求項2記載の高強度コンクリート用セメントの製造方法は、請求項1記載の高強度コンクリート用セメントの製造方法において、セメントクリンカを製造する際の送窯原料の粒度を変化させることにより、得られるセメントクリンカ中のC2S相へのアルカリ固溶量を調整することを特徴とする。
請求項4記載の高強度コンクリート用セメントの製造方法は、請求項1〜3いずれかの項記載の高強度コンクリート用セメントの製造方法において、SiO2原料として、アルカリ成分を0.5質量%以上含む原料を使用することを特徴とする。
請求項5記載の高強度コンクリート用セメントの製造方法は、請求項1〜4いずれかの項記載の高強度セメントの製造方法において、SiO2原料は石炭灰および/またはフライアッシュであることを特徴とする。
更に、請求項6記載の高強度コンクリート用セメントにおいて、C2S含有量が30質量%以上であることを特徴とする。
本発明の高強度コンクリート用セメントの製造方法は、セメントクリンカの送窯原料中に含まれる90μm以上の粒子中に存在するSiO2量が、送窯原料中の全SiO2量に対し27質量%以下、好適には25質量%以下、より好適には20質量%以下となるように調整される方法である。
上記したように、セメントクリンカの送窯原料中に含まれる90μm以上の粒子中に存在するSiO2量が、送窯原料中の全SiO2量に対し27質量%以下、好適には25質量%以下、より好適には20質量%以下とすることで、セメントクリンカ中の送窯原料中に含まれるSiO2量が所定の粒度以下の微粉側に一定量以上含まれるようになり、これにより、原料中の総アルカリ量を増加させることなく、C2Sへより多くアルカリ成分を固溶させることができることとなる。
従って、セメント製造時の操業やコンクリートの流動性および耐久性に悪影響を及ぼすことなく、C2Sの水和活性を高めて強度を上げることができるので、所望する強度を予め設計することができるとともに、得られるフレッシュコンクリートの流動性を良好に保持することができるようになる。
特に、セメントクリンカの送窯原料は、JIS篩にて粒度90μm残分を少なくすることで、粒度90μm残分中に含まれるSiO2含量が送窯原料中の全SiO2含量に対して27質量%以下となるように調整し、これにより所定の粒度以下の微粉側にSiO2が多く含まれるようにする。
更に、SiO2原料として、アルカリ成分を0.3質量%以上、好ましくは0.5質量%以上含む原料を使用することが、得られるクリンカ中のC2S相へのアルカリ固溶量を増大するのに有効である。
このようなSiO2原料としては、石炭灰および/またはフライアッシュ等が例示される。
かかる焼成条件は特に限定されず、通常セメントクリンカを焼成する条件、任意の公知の条件で焼成して、セメントクリンカを製造する。
即ち、セメントクリンカを製造する際の送窯原料の粒度を変化させると、得られるセメントクリンカ中のC2S相へのアルカリ成分の固溶状況が変化するようになる。
逆に送窯原料の粒度を増大させると、C2Sの粒径が大きくなり、アルカリ成分の固溶量が減少し、セメントクリンカ中のC2Sの分散性が悪くなり、群晶C2Sが生成し、水和反応性の低いC2Sが得られることとなる。
これは、送窯原料中の粒度の粗い部分に硬い珪石が偏在しており、かかる珪石が、粒径の大きなC2Sを生成するもととなっていると考えられ、この粒径の大きなC2Sは水和反応性が劣り、長期強度を増大させない原因となっている。
実施例1〜8・比較例1
表1の組成を有する中庸熱ポルトランドセメント用の送窯原料を粉砕し、表2に示すように、90μm残分(JIS篩)が約30質量%、約25質量%、約23質量%または約20質量%含有されるように各送窯原料を調整した。
実施例4〜6の送窯原料は融液相生成成分を含む珪酸質原料である石炭灰を含む送窯原料であり、実施例7〜8の送窯原料は融液相生成成分を含む珪酸質原料である徐冷滓を含む送窯原料を粉砕した。
調整された各送窯原料を用いて、実機にて焼成して、各中庸熱ポルトランドセメントクリンカを得た。
上記実施例1〜8及び比較例1で得られた各中庸熱ポルトランドセメントについてJIS R 5201「セメントの物理試験方法」に準拠して、水/セメント比が50質量%となるように水を加え、モルタルを調製した。
得られた各モルタルの水和熱、モルタル強度及びモルタル凝結時間を測定した。
その結果を表2及び図1に示す。
なお、表2中、水和熱、モルタル強度及び凝結時間の測定は以下の方法により測定した。
・ モルタル強度及び凝結時間; JIS R 5201「セメントの物理試験方法」に準拠して行った。
・ 水和熱; JIS R 5203「セメントの水和熱測定方法」に準拠して行った。
更に、クリンカの原料に、融液相生成成分を含む珪酸質原料を含有することで、得られるモルタルの強度、特に長期強度が向上することがわかる。
このように、送窯原料の粒径を変化させることにより、セメントクリンカ中に含有されるSiO2量が変化し、結果として中庸熱ポルトランドセメントの所望する長期強度を制御することが可能となる。
上記実施例1〜8及び比較例1で得られた各中庸熱ポルトランドセメントについて、各セメント中に含有される全アルカリ量(T)を図2に示す模式図のようにして、以下の手順でカルシウムシリケート相に含有される量(C)、間隙相に含有される量(M)、水溶性アルカリ量(A)に分配した。
なお、アルカリ成分はJIS R 5210「ポルトランドセメント」に定義されている通り、以下の式を用いて算出した。
Na2Oeq=Na2O+0.658×K2O
1)JIS R−5201「ポルトランドセメントの化学分析」により全アルカリ含有量(T)を定量する。
2)JCAS I−04「セメントの水溶性成分の分析方法」により水溶性アルカリ量(A)を定量する。
3)セメントをメタノールおよびサリチル酸を用いて、選択的にカルシウムシリケート相だけを溶解させ、その残渣(間隙相と水溶性アルカリ)の重量割合(W)と、JIS R 5201によるアルカリ含有量(R)とを定量する。
4)次いで、カルシウムシリケート相中のアルカリ含有量(C)を、C=T−W×Rで算出し、更に間隙相中のアルカリ含有量(M)を、M=W×R−Aで算出する。
上記実施例1〜8及び比較例1で得られた各中庸熱ポルトランドセメントについて、細骨材である砂として滋賀県野洲産川砂(表乾密度2.59g/cm3)、粗骨材である砂利として兵庫県西島産砕石(表乾密度2.63g/cm3)、高性能AE減水剤としポゾリス物産製、レオビルドSP−8SBsを用いて、下記表3に示す配合にて各材料を均一に混練して、コンクリートを調製した。
その結果を表4及び図3に示す。
なお、表4中、スランプフロー及びコンクリート強度の測定は以下の方法により測定した。
・ スランプフロー;JIS A 1150「コンクリートのスランプフロー試験方法」
・ 強度;JIS A 1108「コンクリートの圧縮強度試験方法」
更に、クリンカの原料に、融液相生成成分を含む珪酸質原料を含有することで、スランプフローが向上し、アルカリ分のC2S相への溶出が増大して、コンクリート強度を増進させることがわかる。
このように、送窯原料の粒径を変化させることにより、C2S相へのアルカリ成分の選択的固溶量が変化し、結果として中庸熱ポルトランドセメントや低熱ポルトランドセメントを用いたコンクリートの所望する長期強度を制御することが可能となる。
Claims (7)
- セメントクリンカの送窯原料中に含まれる90μmを超える粒子中に存在するSiO2量が、送窯原料中の全SiO2量に対し27質量%以下となるように調整することを特徴とする、高強度コンクリート用セメントの製造方法。
- 請求項1記載の高強度コンクリート用セメントの製造方法において、セメントクリンカを製造する際の送窯原料の粒度を変化させることにより、得られるセメントクリンカ中の2CaO・SiO2相へのアルカリ溶出量を調整することを特徴とする、高強度コンクリート用セメントの製造方法。
- 請求項1または2記載の高強度コンクリート用セメントの製造方法において、送窯原料中のSiO2原料として、Al2O3および/またはFe2O3成分を含むケイ酸質原料を使用することを特徴とする、高強度コンクリート用セメントの製造方法。
- 請求項1〜3いずれかの項記載の高強度コンクリート用セメントの製造方法において、SiO2原料として、アルカリ成分を0.5質量%以上含む原料を使用することを特徴とする、高強度コンクリート用セメントの製造方法。
- 請求項1〜4いずれかの項記載の高強度コンクリート用セメントの製造方法において、SiO2原料は石炭灰および/またはフライアッシュであることを特徴とする、高強度コンクリート用セメントの製造方法。
- 請求項1〜5いずれかの項記載の高強度コンクリート用セメントの製造方法によって製造された高強度コンクリート用セメント。
- 請求項6記載の高強度コンクリート用セメントにおいて、2CaO・SiO2含有量が30質量%以上であることを特徴とする、高強度コンクリート用セメント。
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