JP2007269576A - クラスターダイヤモンドの合成方法、及び合成装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】簡易な装置を用いて有機系爆薬からクラスターダイヤモンドを容易に効率よく合成する方法及び装置を提供する。
【解決手段】本発明のクラスターダイヤモンドの合成方法は、爆薬を爆発させる第1工程、爆発生成物を回収して回収物を精製する第2工程からなり、第1工程が、圧力容器1内の空間部2の略中央に、起爆手段3を有する有機系爆薬4を冷却剤7を介して袋体8に収容した状態で配置し、かつ前記袋体8の外側空間部を有機系爆薬4中の炭素原子に対して不活性なガス9で満たした条件下で、前記起爆手段3により有機系爆薬4を爆発させることを特徴とする。
【選択図】図1
【解決手段】本発明のクラスターダイヤモンドの合成方法は、爆薬を爆発させる第1工程、爆発生成物を回収して回収物を精製する第2工程からなり、第1工程が、圧力容器1内の空間部2の略中央に、起爆手段3を有する有機系爆薬4を冷却剤7を介して袋体8に収容した状態で配置し、かつ前記袋体8の外側空間部を有機系爆薬4中の炭素原子に対して不活性なガス9で満たした条件下で、前記起爆手段3により有機系爆薬4を爆発させることを特徴とする。
【選択図】図1
Description
本発明は、簡易な装置を用いて有機系爆薬を爆発させることによって爆薬中の炭素原子から直接ダイヤモンドを容易に効率よく合成することができるクラスターダイヤモンドの合成方法、及び合成装置に関するものである。
従来から爆薬を爆発させ、生成物を回収して、異物を分離し、硝酸や硫酸等で化学的に処理し、精製することにより、ダイヤモンドの凝集体、すなわちクラスターダイヤモンドを合成することは知られている。このクラスターダイヤモンドの一次粒子径の大きさはナノメータ(nm)サイズであり、精密研磨剤、減摩剤、潤滑剤、増強剤、コーティング剤等に利用されている。
前記クラスターダイヤモンドの合成方法としては、(1)圧力容器内を爆薬中の炭素原子に対して不活性なガスで満たし、その中で爆薬を爆発させる合成方法と、(2)水中で爆薬を爆発させる合成方法とがある。
このうち、(1)不活性ガスを用いた合成方法の場合、爆薬の爆発生成物を冷却するために冷却効果を有する不活性ガスを多く用いる必要があることから、必然的に圧力容器を大型にするか、または爆発時に圧力容器内を高圧にする必要があった。また、爆発によって生成する生成物(炭素質煤)が圧力容器の内壁面に付着し易くなるため、合成時の回収効率が悪くなり、またこれを連続で合成する場合には、生成した炭素質煤が、次の爆発時に容器内で舞い上がり沈降するまでに時間を要して作業効率が悪くなっていた。さらに、爆発時に発生する熱によって圧力容器内壁の温度が上昇し、連続で合成する場合にはさらに温度が上昇するために、圧力容器に悪影響を及ぼす等の問題があった。すなわち圧力容器本体の歪、O−リングの熱劣化による圧力容器の気密性の低下や、耐圧強度の低下等が生じるという問題があった。さらに、生成したダイヤモンドの酸化を抑止するために酸素濃度を1.0体積%以下程度にまで減少させなければならないなど、合成環境を整えるための操作に手間を要するなどの問題があった。
また、(2)水中で有機系爆薬を爆発させる合成方法も多く考えられている。例えば一端が開放された鉄製管体に水を満たして水中(水深1.2m)にて酸素バランス(OB)が負に調整された有機系爆薬組成物10gを吊して爆発させ、沈澱物を分離し、精製してダイヤモンドを合成する方法が知られている(例えば特許文献1参照)。この方法では精製後、爆薬の質量に対して1〜5%程度のダイヤモンドが得られるとされている。
さらに、ダイヤモンドの収量を向上させる方法として、予めダイヤモンド粉を40質量%以下で混在させた爆薬組成物10gを一端が開放された円筒に水を満たして水中(水深1m)に吊して爆発させ、沈澱物を分離し、精製してダイヤモンドを合成する方法も知られている(例えば特許文献2参照)。この方法では精製後、爆薬の質量に対して6%程度のダイヤモンドが得られるとされている。
しかしながら、前記特許文献1,2のように、圧力容器内空間部に貯水し、その中に爆薬を設置して爆発合成する場合、爆発時の衝撃波のエネルギーおよび仕事エネルギーが容器に対して多く与えられる。したがって、容器の耐圧性能を向上させる必要があり、爆薬を爆発させるには極めて大型でかつ質量の大きな圧力容器を必要とするため、その取扱いや補修等がより複雑で困難なものとなるという問題があった。また、特許文献2の合成方法では、爆薬に予め混在させておくダイヤモンド粉が必要となるという問題もあった。
また、爆薬の量を増加させてダイヤモンドの収量を向上させる方法として、直径が150mm、長さが450mm程度のプラスチック製容器に蒸留水を満たし、その中に500g程度の爆薬を入れ、これを内容積1m3の圧力容器の中央部に配置して爆薬を爆発させ、この操作を40回程度繰り返し行って、未精製の炭素質煤(黒色固体物)を爆薬の質量に対して19%程度収得し、これを分離・精製して爆薬の質量に対して約9%程度のダイヤモンドを合成する方法も知られている(例えば特許文献3参照)。
しかしながら、前記特許文献3にみられる冷却剤で満たしたプラスチック容器を使った合成方法では、爆発合成の反応場である圧力容器内の空間部に酸素や空気など、有機系爆薬組成中の炭素原子と反応する物質が存在することで、冷却が不十分なダイヤモンドが酸化され易いために、収率が低下するという問題があった。さらに特許文献3の合成方法では、プラスチック製容器が用いられた場合に回収する炭素質煤中にプラスチックに基づく破片が混入し、それが爆発回数を増やすことによって、ますます増加することから、分離工程に負荷がかかるという問題があり、極めて面倒であり、工業的には到底実施できないものであった。
さらに、下部が有底の円柱状爆発水槽部と上部が上方開放され、下方より上方に向かって拡径する円錐台形よりなる飛沫回収塔よりなる漏斗状の開放系耐圧容器を用いて容器内に収容された水中内で高性能爆薬を爆発させ、生成物を分離して精製するダイヤモンドの合成方法も知られている(例えば特許文献4)。
しかしながら、前記特許文献4に開示された方法では、複雑な圧力容器を用いる必要があり、また水中からダイヤモンド等を分離する操作が必要である等、生成したダイヤモンドの回収に時間がかかるという問題があった。
前記いずれの合成方法もダイヤモンドの収量が少なくなることから、工業的にはダイヤモンド生成後の精製等を含め、いかにして容易に効率よくダイヤモンドを得るかが大きな課題となっている。
そこで、本発明者らは、前記の従来技術の問題点に鑑み鋭意検討した結果、爆薬を爆発させる工程において、爆薬の周辺に冷却剤と不活性ガスの双方をこの順で配置することによって、比較的小型の圧力容器でもクラスターダイヤモンドを容易に効率よく合成することができることの知見を得て本発明を完成した。
本発明の目的は、簡易な装置を用いて有機系爆薬からクラスターダイヤモンドを容易に効率よく合成する方法を提供することにある。
そこで、本発明者らは、前記の従来技術の問題点に鑑み鋭意検討した結果、爆薬を爆発させる工程において、爆薬の周辺に冷却剤と不活性ガスの双方をこの順で配置することによって、比較的小型の圧力容器でもクラスターダイヤモンドを容易に効率よく合成することができることの知見を得て本発明を完成した。
本発明の目的は、簡易な装置を用いて有機系爆薬からクラスターダイヤモンドを容易に効率よく合成する方法を提供することにある。
本発明の第一の発明は、爆薬を爆発させる第1工程、爆発生成物を回収して回収物を精製する第2工程からなるクラスターダイヤモンドの合成方法において、第1工程が、圧力容器内の空間部略中央に、起爆手段を有する有機系爆薬を冷却剤を介して袋体に収容した状態で配置し、かつ前記袋体の外側空間部を有機系爆薬中の炭素原子に対して不活性なガスで満たした条件下で、前記起爆手段により有機系爆薬を爆発させることを特徴とするクラスターダイヤモンドの合成方法である。
本発明の第二の発明は、袋体の材質が炭化水素系高分子である前記クラスターダイヤモンドの合成方法である。
本発明の第三の発明は、有機系爆薬は炭素原子含有率が15質量%以上であり、酸素バランスが負で、爆轟圧が18GPa以上であり、爆轟温度が3000K以上であることを特徴とする前記クラスターダイヤモンドの合成方法である。
本発明の第四の発明は、第1工程を複数回連続的に行った後、第2工程を行うことを特徴とする前記クラスターダイヤモンドの合成方法である。
本発明の第五の発明は、圧力容器内の空間部略中央に、起爆手段を有する有機系爆薬を冷却剤を介して袋体に収容した状態で吊設し、かつ前記袋体の外側空間部を有機系爆薬中の炭素原子に対して不活性なガスで満たしたことを特徴とするクラスターダイヤモンドの合成装置である。
本発明の第六の発明は、圧力容器が開閉自在であるクラスターダイヤモンドの合成装置である。
本発明によれば以下のような格別の効果を奏する。
第一の発明によれば、爆薬を爆発させる第1工程が、圧力容器内の空間部の略中央に袋体を配置し、その袋体内には冷却剤が満たされ、その冷却剤中に起爆手段を有する有機系爆薬が収容され、その袋体外表面と圧力容器内壁との間の外側空間部には前記有機系爆薬中の炭素原子に対して不活性なガスで満たした条件下で、前記起爆手段により有機系爆薬を爆発させるクラスターダイヤモンドの合成方法であることから、冷却剤を満たした袋体と不活性ガスとの併用により、冷却剤で爆発生成物を冷却し、ダイヤモンドからグラファイトへの相転換を抑止すると共に、不活性ガスで、ダイヤモンド又はグラファイトから二酸化炭素若しくは一酸化炭素への酸化反応をも同時に抑止することによって、ダイヤモンドの収率が上がり、合成効率の向上にとってなお一層、有利となる。
第一の発明によれば、爆薬を爆発させる第1工程が、圧力容器内の空間部の略中央に袋体を配置し、その袋体内には冷却剤が満たされ、その冷却剤中に起爆手段を有する有機系爆薬が収容され、その袋体外表面と圧力容器内壁との間の外側空間部には前記有機系爆薬中の炭素原子に対して不活性なガスで満たした条件下で、前記起爆手段により有機系爆薬を爆発させるクラスターダイヤモンドの合成方法であることから、冷却剤を満たした袋体と不活性ガスとの併用により、冷却剤で爆発生成物を冷却し、ダイヤモンドからグラファイトへの相転換を抑止すると共に、不活性ガスで、ダイヤモンド又はグラファイトから二酸化炭素若しくは一酸化炭素への酸化反応をも同時に抑止することによって、ダイヤモンドの収率が上がり、合成効率の向上にとってなお一層、有利となる。
また、爆薬近傍に冷却剤を満たした袋体が存在することで、前記従来の(2)水槽内で爆発させる合成方法や(1)不活性ガスのみを用いた爆発合成方法とは異なり、爆発後の爆発生成物の回収が容易である。すなわち生成物が冷却剤、例えば水に混ざった形態で圧力容器の壁面や底に付着するためにこれを剥がし取る作業が容易となる。また、不活性ガスのみを用いた合成方法と比べて爆発時の音を小さくすることもでき、環境的にも、工業的な合成方法として有利である。さらに、前記特許文献3にみられる冷却剤で満たしたプラスチック容器を使った合成方法とは異なり、爆発合成の反応場である圧力容器内の空間部には酸素や空気など、有機系爆薬中の炭素原子と反応する物質が存在しないことで、生成後の冷却が不十分なダイヤモンドが酸化されることがなく、ダイヤモンドの収率を上げることができるとともに、酸化が起きないことから、袋体中の冷却剤量を減らすことができ、圧力容器の小型化につながる。
第二の発明によれば、冷却剤と有機系爆薬を収容する前記袋体の材質が炭化水素系の高分子であることから、有機系爆薬の形状に応じてその形状を自由に選択することができ、爆薬と袋体間の冷却剤の厚さをほぼ一定に保つことができるのでダイヤモンドの収率を低下させることがない。またプラスチック容器等を用いた場合と異なり、回収炭素質煤に不純物として混入する袋体に起因する割合を大幅に低減することができ、その後の分離、精製等の処理に有利である。
また袋体の材質を選択することにより、爆薬が爆発する際の爆発熱によって袋体が熱分解され易くなり、有毒ガスの発生を抑制することができるので、作業効率が向上する。
また袋体の材質を選択することにより、爆薬が爆発する際の爆発熱によって袋体が熱分解され易くなり、有毒ガスの発生を抑制することができるので、作業効率が向上する。
第三の発明によれば、爆薬を爆発させる工程で用いる前記有機系爆薬が、炭素原子含有率が15質量%以上、その酸素バランスが負であり、爆轟圧が18GPa以上、爆轟温度が3000K以上であることから、爆薬中の炭素原子を効率良くダイヤモンドに転換することができ、また酸素バランスが負であることから爆発時にダイヤモンドが酸化されて収率を低下させることがない。
ここで、炭素原子含有率とは、爆薬を構成している炭素原子の割合を表し、また酸素バランス(OB)とは、1gの爆薬が爆発したときに生じる化学平衡反応式における酸素の余剰量をg単位で表したものである。
ここで、炭素原子含有率とは、爆薬を構成している炭素原子の割合を表し、また酸素バランス(OB)とは、1gの爆薬が爆発したときに生じる化学平衡反応式における酸素の余剰量をg単位で表したものである。
第四の発明によれば、第1工程を複数回連続的に行った後、第2工程を行う前記クラスターダイヤモンドの合成方法であり、爆発毎に爆発生成物を回収する必要がなく、また連続的な爆発終了後は圧力容器の壁面や底に付着した爆発生成物を容易に回収することができるので、回収時に生じる爆発生成物の損失量を低減することができる。さらに、爆発毎に回収作業をしないため、作業時間を短縮できるので、効率よくクラスターダイヤモンドを合成することができ、工業的な合成方法として有利である。さらには、複数個の圧力容器を併用することで、複数箇所において、連続的にダイヤモンドを合成することが可能となり、より高効率な合成を行なうことが可能になる。
第五の発明によれば、有機系爆薬化合物や、その他の有機物質が爆発に際しての高温、高圧によってダイヤモンドに変換される原理を用いたものであって、簡易な装置を用いて有機系爆薬を爆発させることによって爆薬中の炭素原子から直接ダイヤモンドを容易に効率よく合成することができ、前述の格別の効果を奏する合成方法を容易に実施でき、工業生産を可能とするものである。
第六の発明によれば、開閉自在の圧力容器を用いるので、特に前記第四の発明のように複数回の第1工程(爆発)を行う場合に好適であり、工業的な合成装置として高効率な合成を行えるものである。
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
本発明のクラスターダイヤモンドの合成方法は、爆薬を爆発させる第1工程、爆発生成物を回収して回収物を精製する第2工程からなるクラスターダイヤモンドの合成方法において、第1工程が、圧力容器内の空間部の略中央に、起爆手段を有する有機系爆薬を冷却剤を介して袋体に収容して配置し、好ましくは冷却剤を入れた袋体中に起爆手段を有する有機系爆薬の全てが冷却剤で覆われる状態で配置し、かつ前記袋体の外側空間部を爆薬中の炭素原子に対して不活性なガスで満たした条件下で、前記起爆手段により有機系爆薬を爆発させることを特徴とするものである。
本発明のクラスターダイヤモンドの合成方法は、爆薬を爆発させる第1工程、爆発生成物を回収して回収物を精製する第2工程からなるクラスターダイヤモンドの合成方法において、第1工程が、圧力容器内の空間部の略中央に、起爆手段を有する有機系爆薬を冷却剤を介して袋体に収容して配置し、好ましくは冷却剤を入れた袋体中に起爆手段を有する有機系爆薬の全てが冷却剤で覆われる状態で配置し、かつ前記袋体の外側空間部を爆薬中の炭素原子に対して不活性なガスで満たした条件下で、前記起爆手段により有機系爆薬を爆発させることを特徴とするものである。
具体例を図面により説明する。
図1は本発明の爆発合成方法の第1工程を実施する一例を示す装置の概略図である。
図中、1は圧力容器であり、2は圧力容器内の空間部であり、3は有機系爆薬4を起爆するための起爆手段、この例では起爆用爆薬5と電気雷管6が用いられ、7は冷却剤であり、この例では蒸留水が用いられている。この冷却剤7と前記の有機系爆薬4は袋体8に収容されている。この例では袋体8の材質としてポリエチレン製の袋が用いられ、圧力容器1内の空間部2の略中央に配置されるように吊設されている。袋体8の外表面と圧力容器1の内壁との間(空間部2)には有機系爆薬中の炭素原子に対して不活性なガス9として、この例では窒素ガスが充填されている。
図1は本発明の爆発合成方法の第1工程を実施する一例を示す装置の概略図である。
図中、1は圧力容器であり、2は圧力容器内の空間部であり、3は有機系爆薬4を起爆するための起爆手段、この例では起爆用爆薬5と電気雷管6が用いられ、7は冷却剤であり、この例では蒸留水が用いられている。この冷却剤7と前記の有機系爆薬4は袋体8に収容されている。この例では袋体8の材質としてポリエチレン製の袋が用いられ、圧力容器1内の空間部2の略中央に配置されるように吊設されている。袋体8の外表面と圧力容器1の内壁との間(空間部2)には有機系爆薬中の炭素原子に対して不活性なガス9として、この例では窒素ガスが充填されている。
本発明に用いられる圧力容器1としては、安価な既存の鉄製又は鋼製の配管を使い、安価な既存のフランジ蓋付きの容器が用いられている。圧力容器1は、有機系爆薬4の爆発によって生じる衝撃のエネルギー及び仕事エネルギーに対して耐久性のある密閉容器であればよく、特にその材質については限定しないが、第2工程のダイヤモンドの精製工程を考慮すると、不純物であるシリカや重金属などの含有率の少ない材質、例えば炭素鋼を用いることが好ましい。また、複数回の第1工程(爆発)を行う場合には、特に開閉自在な圧力容器を用いることが好ましい。
また、空間部2の大きさ、即ち圧力容器1の内容量は、使用する有機系爆薬4の性能、例えば爆轟圧や爆轟温度等や、その使用量等に応じて適宜決めることができる。例えば爆薬量が180g程度の場合では0.09m3程度、爆薬量が400g程度の場合では0.12m3程度のものを好適に選択する。これは、従来技術に用いられる圧力容器サイズ、例えば爆薬量500g程度の場合に1.0m3程度であることと比較して、極めて小型であり、蓋の開閉がし易く作業時間を短縮することができ、運搬・据付け場所なども容易になり、合成作業効率を高くすることができる。
また、空間部2の大きさ、即ち圧力容器1の内容量は、使用する有機系爆薬4の性能、例えば爆轟圧や爆轟温度等や、その使用量等に応じて適宜決めることができる。例えば爆薬量が180g程度の場合では0.09m3程度、爆薬量が400g程度の場合では0.12m3程度のものを好適に選択する。これは、従来技術に用いられる圧力容器サイズ、例えば爆薬量500g程度の場合に1.0m3程度であることと比較して、極めて小型であり、蓋の開閉がし易く作業時間を短縮することができ、運搬・据付け場所なども容易になり、合成作業効率を高くすることができる。
上記圧力容器1を構成している各部材について簡単に説明すると、ボルト10は底板11及び蓋12をそれぞれフランジ部13に固定するためであり、O−リング14は圧力容器1内の密閉性を高めるためである。
また、凧糸などの吊材15及びフックボルト16は、袋体8を空間部2の略中央に配設(吊設)ための手段であり、これらに代えて他の配置手段を選定してもよい。
さらに、アイボルト17は蓋を開け閉めするために用いられ、緩衝材18は爆発時に生じる振動や衝撃などを和らげるために用いられ、この場合、厚み25mmの木製合板を用いている。
また、凧糸などの吊材15及びフックボルト16は、袋体8を空間部2の略中央に配設(吊設)ための手段であり、これらに代えて他の配置手段を選定してもよい。
さらに、アイボルト17は蓋を開け閉めするために用いられ、緩衝材18は爆発時に生じる振動や衝撃などを和らげるために用いられ、この場合、厚み25mmの木製合板を用いている。
本発明に用いられる有機系爆薬4としては、高性能爆薬として知られている公知の爆薬を用いることができ、例えばトリニトロトルエン(TNT)、トリニトロベンゼン(TNB)、トリメチレントリニトラミン(RDX)、テトラメチレンテトラニトラミン(HMX)、テトラニトロメチルアニリン(テトリル)、トリアミノトリニトロベンゼン(TATB)、ジアミノトリニトロベンゼン(DATB)、ヘキサニトロスチルベン(HNS)、ヘキサニトロアゾベンゼン(HNAB)、ヘキサニトロジフェニルアミン(HNDP)、ピクリン酸、ピクリン酸アンモニウム、ベンゾトリアゾール(TACOT)、エチレンジニトラミン(EDNA)、ニトログアニジン(NQ)、ペンタエリスリトールテトラナイトレート(ぺンスリット)、ベンゾトリフルオキサン(BTF)等であり、これらの一種又は二種以上の混合物が用いられる。二種以上の例としては、RDXとTNTとの混合物として知られているコンポジションBなどを使用することができる。
有機系爆薬4として、RDXとTNTとの混合物であるコンポジションBを用いた場合には、溶填により、所望の形状に成型することができる。
また、有機系爆薬4として、粉状体の爆薬、例えば平均粒径が100μm程度のものを用いる場合には、高分子等の有機系結合剤と併用することによって、所定形状に成型することができる。この有機系結合剤としては、コンポジット系推進薬のバインダ成分として知られている高分子、例えばポリブタジエン系(ポリブタジエン)、ポリウレタン系(ポリウレタン)、ポリエーテル系(ポリエチレングリコール)等の高分子物質を用いてもよいし、それ自身の燃焼熱が大きなポリマーとして知られている例えばグリシジルアジドポリマー(GAP)、ポリニトラトメチルメチルオキタセン、ポリグリシジルナイトレート等、或いはワックスを用いてもよい。この有機系結合剤の割合は1〜40質量%、粉状体の有機系爆薬4の割合が60〜99質量%程度である。
これらの有機系爆薬4は、炭素原子含有率が15質量%以上、好ましくは20〜35質量%、酸素バランスが負、好ましくは−0.2〜−0.6であり、爆轟圧が18GPa以上、好ましくは20〜30GPa、爆轟温度が3000K以上、好ましくは3000〜4000Kである。そのため、爆薬中の炭素原子を効率良くダイヤモンドに転換することができ、また酸素バランスが負であることから爆発時にダイヤモンドが酸化されて収率を低下させることがない。
また、有機系爆薬4として、粉状体の爆薬、例えば平均粒径が100μm程度のものを用いる場合には、高分子等の有機系結合剤と併用することによって、所定形状に成型することができる。この有機系結合剤としては、コンポジット系推進薬のバインダ成分として知られている高分子、例えばポリブタジエン系(ポリブタジエン)、ポリウレタン系(ポリウレタン)、ポリエーテル系(ポリエチレングリコール)等の高分子物質を用いてもよいし、それ自身の燃焼熱が大きなポリマーとして知られている例えばグリシジルアジドポリマー(GAP)、ポリニトラトメチルメチルオキタセン、ポリグリシジルナイトレート等、或いはワックスを用いてもよい。この有機系結合剤の割合は1〜40質量%、粉状体の有機系爆薬4の割合が60〜99質量%程度である。
これらの有機系爆薬4は、炭素原子含有率が15質量%以上、好ましくは20〜35質量%、酸素バランスが負、好ましくは−0.2〜−0.6であり、爆轟圧が18GPa以上、好ましくは20〜30GPa、爆轟温度が3000K以上、好ましくは3000〜4000Kである。そのため、爆薬中の炭素原子を効率良くダイヤモンドに転換することができ、また酸素バランスが負であることから爆発時にダイヤモンドが酸化されて収率を低下させることがない。
本発明に用いられる冷却剤7は、前述のように前記有機系爆薬4と共に袋体8に収容されるものであって、その際の冷却剤7としては、通常冷却効率の観点から液状の冷却剤を用いることが好ましく、例えば水、好ましくは不純物を含まない蒸留水が用いられる。なお、固体としての氷を用いてもよい。
また、用いる冷却剤7の量は、蒸留水を用いた場合、有機系爆薬4に対し、質量比率で1.5倍以上、好ましくは3〜20倍である。
また、用いる冷却剤7の量は、蒸留水を用いた場合、有機系爆薬4に対し、質量比率で1.5倍以上、好ましくは3〜20倍である。
本発明に用いられる袋体8は、前述のように前記構成の有機系爆薬4及び冷却剤7を収容するものであって、その材質としては、炭化水素系高分子材料が好ましく用いられ、具体的には例えばポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)等である。この袋体8として、例えばPEやPPの厚みが0.005〜0.100mm程度のフィルムからなるものを用いると、前記特許文献3におけるプラスチック製容器と比較して、回収する炭素質煤中に残存する量が著しく低減され、分離工程に負荷がかかることがない。
本発明に用いられる有機系爆薬中の炭素原子に対して不活性なガス9は、前述のように袋体8の外側に充填されるものであって、例えば二酸化炭素、窒素、アルゴンなどの不活性ガス等であり、経済性や取り扱い性等の観点から通常は窒素ガスを用いることが好ましい。また、使用される有機系爆薬4が爆発した際に生じる生成ガスを捕集して次の爆発時に用いてもよい。さらに、圧力容器1内は加圧或いは減圧してもよい。尚、これら不活性なガス9は、例えば前記不活性ガスに酸素など他のガス成分が若干量、例えば10体積%以下混在していてもよい。
以上の構成の圧力容器1、有機系爆薬4、その他の各材料を用いてクラスターダイヤモンドの合成方法について具体的に説明する。
(i)開閉自在の圧力容器1を開放した状態で内部の空間部2の略中央に、所定量の冷却剤7を満たした袋体8を配置する。袋体8の配置方法としては、圧力容器1内の適当な箇所に設けられたフックボルト16に凧糸などの吊材15を結び付け、この吊材15に吊すことによって配置する。
(ii)次に、この袋体8内の冷却剤7中に起爆手段3を有する所定の有機系爆薬4を吊して配置する。
尚、上記の袋体8の配置と、有機系爆薬4の配置は、予め有機系爆薬4の配置を行った後、袋体8を配置するようにしてもよい。
(iii)次いで、圧力容器1の蓋12をボルトで締めて密封する。
(iv)そして、真空ポンプにて圧力容器1内の空気を排出した後、有機系爆薬中の炭素原子に対して不活性なガスとして窒素ガス9を所定の圧力になるまで充填し、起爆手段3により有機系爆薬4を爆発させる。なお、圧力容器1は緩衝材18の上に配置するとともに、その転倒を防止するため、アイボルト17に、ワイヤースリングを通しチェーンブロックに掛けておく。
(v)爆発後、例えば5分経過後、蓋を開け、圧力容器の内壁面を水洗しながら、爆発生成物を取り出す(回収する)。
(vi)そして、回収した回収物は、濾過した後、残渣を公知の手段で、例えば硫酸と硝酸との混酸を用いて処理し、処理物を水洗して乾燥することによりクラスターダイヤモンドを得る。
(ii)次に、この袋体8内の冷却剤7中に起爆手段3を有する所定の有機系爆薬4を吊して配置する。
尚、上記の袋体8の配置と、有機系爆薬4の配置は、予め有機系爆薬4の配置を行った後、袋体8を配置するようにしてもよい。
(iii)次いで、圧力容器1の蓋12をボルトで締めて密封する。
(iv)そして、真空ポンプにて圧力容器1内の空気を排出した後、有機系爆薬中の炭素原子に対して不活性なガスとして窒素ガス9を所定の圧力になるまで充填し、起爆手段3により有機系爆薬4を爆発させる。なお、圧力容器1は緩衝材18の上に配置するとともに、その転倒を防止するため、アイボルト17に、ワイヤースリングを通しチェーンブロックに掛けておく。
(v)爆発後、例えば5分経過後、蓋を開け、圧力容器の内壁面を水洗しながら、爆発生成物を取り出す(回収する)。
(vi)そして、回収した回収物は、濾過した後、残渣を公知の手段で、例えば硫酸と硝酸との混酸を用いて処理し、処理物を水洗して乾燥することによりクラスターダイヤモンドを得る。
尚、連続で爆発させる場合、即ち前記(i)〜(iv)の第1工程を連続して実施する場合、爆発生成物を回収することなく前記の操作を繰り返し所定回数起爆後、爆発生成物を取り出し、前記(vi)の第2工程(精製)を行うことによってクラスターダイヤモンドを収率よく得ることができるので好ましい。
本発明のクラスターダイヤモンドの合成方法及び合成装置は、有機系爆薬化合物や、その他の有機物質が爆発に際しての高温、高圧によってダイヤモンドに変換される原理を用い、特に冷却剤を満たした袋体と不活性なガスとの併用により、簡易な装置を用いて有機系爆薬を爆発させることにより、ダイヤモンドからグラファイトへの相転換やダイヤモンド又はグラファイトから二酸化炭素若しくは一酸化炭素への酸化反応を抑止しつつ、有機系爆薬中の炭素原子から直接ダイヤモンドを容易に効率よく合成することができ、ダイヤモンドの収率が上るものである。
〔実施例1〕
はじめに合成用の爆薬供試体を準備した。ここでいう爆薬供試体とは、円柱状の合成用爆薬(有機系爆薬)180g(RDX60質量%及びTNT40質量%組成とし、炭素原子含有率20.3質量%、酸素バランス−0.43g、爆轟圧25.7GPa、爆轟温度3551Kである)に、角柱状の起爆用爆薬20g(RDX75質量%及びGAP25質量%)及び6号電気雷管をとりつけたものである。
第1工程として、前記図1の合成装置を用い、袋体として厚み0.05mm、容積1000cm3の持ち手の付いたポリエチレン製の袋の中に蒸留水800cm3を入れ、前述の爆薬供試体を袋体内部の中心位置に置いた。内容積0.09m3の鋼製の圧力容器内空間の中心部分に、上述の爆薬供試体をポリエチレン製の袋ごと、吊材として凧糸で吊下げて圧力容器の蓋を閉めた。さらに、真空ポンプにて容器内の空気を排出した後、炭素原子に対して不活性なガスとして窒素ガスを封入して圧力容器内を1気圧、酸素濃度約6体積%とした状態で爆薬供試体を起爆させた。起爆後、5分間静置した後、圧力容器の上蓋を開け、蒸留水を使って圧力容器内面を洗浄しながら黒色液状の爆発生成物を回収した。
第2工程として、図示しないが回収物は160μmメッシュサイズの篩に通して大きな固形異物を取り除いた後に塩酸で処理をした。その後、濾過して水分を取り除き、さらに硫酸と硝酸の混酸処理を施した後、再び濾過して、濾過ケーキがpH7程度になるまで、蒸留水で洗浄、濾過を繰り返した。その後、得られた濾過ケーキを150℃で乾燥させて乾燥物を得た。
この乾燥物をX線回折法により走査した結果、回折線から結晶子サイズが4〜6nmのクラスターダイヤモンドであることが確認された。また、粒度分布計で測定した高次凝集体の50%粒子径は150〜200nmであった。得られたクラスターダイヤモンドの質量は、爆薬量に対し、4.16質量%であった。尚、実作業に要した時間は、爆薬供試体準備から起爆終了までに約35分間、爆発生成物回収に約30分間、合計約65分間であった。
有機系爆薬の組成と容器雰囲気と爆発回数(実施回数)とダイヤ収率との関係を表1に示した。
はじめに合成用の爆薬供試体を準備した。ここでいう爆薬供試体とは、円柱状の合成用爆薬(有機系爆薬)180g(RDX60質量%及びTNT40質量%組成とし、炭素原子含有率20.3質量%、酸素バランス−0.43g、爆轟圧25.7GPa、爆轟温度3551Kである)に、角柱状の起爆用爆薬20g(RDX75質量%及びGAP25質量%)及び6号電気雷管をとりつけたものである。
第1工程として、前記図1の合成装置を用い、袋体として厚み0.05mm、容積1000cm3の持ち手の付いたポリエチレン製の袋の中に蒸留水800cm3を入れ、前述の爆薬供試体を袋体内部の中心位置に置いた。内容積0.09m3の鋼製の圧力容器内空間の中心部分に、上述の爆薬供試体をポリエチレン製の袋ごと、吊材として凧糸で吊下げて圧力容器の蓋を閉めた。さらに、真空ポンプにて容器内の空気を排出した後、炭素原子に対して不活性なガスとして窒素ガスを封入して圧力容器内を1気圧、酸素濃度約6体積%とした状態で爆薬供試体を起爆させた。起爆後、5分間静置した後、圧力容器の上蓋を開け、蒸留水を使って圧力容器内面を洗浄しながら黒色液状の爆発生成物を回収した。
第2工程として、図示しないが回収物は160μmメッシュサイズの篩に通して大きな固形異物を取り除いた後に塩酸で処理をした。その後、濾過して水分を取り除き、さらに硫酸と硝酸の混酸処理を施した後、再び濾過して、濾過ケーキがpH7程度になるまで、蒸留水で洗浄、濾過を繰り返した。その後、得られた濾過ケーキを150℃で乾燥させて乾燥物を得た。
この乾燥物をX線回折法により走査した結果、回折線から結晶子サイズが4〜6nmのクラスターダイヤモンドであることが確認された。また、粒度分布計で測定した高次凝集体の50%粒子径は150〜200nmであった。得られたクラスターダイヤモンドの質量は、爆薬量に対し、4.16質量%であった。尚、実作業に要した時間は、爆薬供試体準備から起爆終了までに約35分間、爆発生成物回収に約30分間、合計約65分間であった。
有機系爆薬の組成と容器雰囲気と爆発回数(実施回数)とダイヤ収率との関係を表1に示した。
〔実施例2,3〕
実施例2では、円柱状の合成用爆薬の組成をRDX5質量%及びTNT95質量%(炭素原子含有率36.0質量%、酸素バランス−0.71g、爆轟圧19.5GPa、爆轟温度3466K)として、前記実施例1と同じ操作を行なった。
その結果、使用した爆薬量に対して2.20質量%のクラスターダイヤモンドを得た。
さらに、実施例3では、円柱状の合成爆薬の組成をHMX80質量%及びGAP20質量%(炭素原子含有率20.3質量%、酸素バランス−0.42、爆轟圧30.1GPa、爆轟温度3297K)として、前記実施例1と同じ操作を行なった。
その結果、使用した爆薬量に対して5.11質量%のクラスターダイヤモンドを得た。
また、実作業に要した時間は、実施例2,3ともに前記実施例1と同じく、爆薬供試体準備から起爆終了までに約35分間、爆発生成物回収に約30分間、合計約65分間であった。
実験条件と結果を表1にそれぞれ示した。
実施例2では、円柱状の合成用爆薬の組成をRDX5質量%及びTNT95質量%(炭素原子含有率36.0質量%、酸素バランス−0.71g、爆轟圧19.5GPa、爆轟温度3466K)として、前記実施例1と同じ操作を行なった。
その結果、使用した爆薬量に対して2.20質量%のクラスターダイヤモンドを得た。
さらに、実施例3では、円柱状の合成爆薬の組成をHMX80質量%及びGAP20質量%(炭素原子含有率20.3質量%、酸素バランス−0.42、爆轟圧30.1GPa、爆轟温度3297K)として、前記実施例1と同じ操作を行なった。
その結果、使用した爆薬量に対して5.11質量%のクラスターダイヤモンドを得た。
また、実作業に要した時間は、実施例2,3ともに前記実施例1と同じく、爆薬供試体準備から起爆終了までに約35分間、爆発生成物回収に約30分間、合計約65分間であった。
実験条件と結果を表1にそれぞれ示した。
〔実施例4〕
合成用爆薬約180g(RDX60質量%及びTNT40質量%)に角柱状の起爆薬20g(RDX75質量%及びGAP25質量%)及び6号電気雷管を取りつけ、前記実施例1と同じ方法で、圧力容器内に設置し、起爆した。起爆後、5分間静置させたのち、爆発容器の上蓋を開け、爆発生成物を圧力容器内から取り出すことなく残したままで、同様に合成用爆薬を設置し、蓋を閉め、再び窒素雰囲気下にして起爆した。これらの操作を計7回繰り返し起爆を実施(合成用爆薬の総計量:1240g)して、最後に爆発生成物を回収・精製して64.7gのクラスターダイヤモンドを得た。
このダイヤモンドは、前記実施例1と同様に結晶子サイズが4〜6nm、凝集体で50%粒子径150〜200nmであった。得られたクラスターダイヤモンド量は、爆薬量に対し、5.22質量%であった。また、実作業に要した時間は、1回目の爆薬供試体準備から7回目の起爆終了までに約210分間、爆発生成物回収に約30分間、合計約240分間であった。1回あたり平均して約34分間となった。
実験条件と結果を表1に示した。
合成用爆薬約180g(RDX60質量%及びTNT40質量%)に角柱状の起爆薬20g(RDX75質量%及びGAP25質量%)及び6号電気雷管を取りつけ、前記実施例1と同じ方法で、圧力容器内に設置し、起爆した。起爆後、5分間静置させたのち、爆発容器の上蓋を開け、爆発生成物を圧力容器内から取り出すことなく残したままで、同様に合成用爆薬を設置し、蓋を閉め、再び窒素雰囲気下にして起爆した。これらの操作を計7回繰り返し起爆を実施(合成用爆薬の総計量:1240g)して、最後に爆発生成物を回収・精製して64.7gのクラスターダイヤモンドを得た。
このダイヤモンドは、前記実施例1と同様に結晶子サイズが4〜6nm、凝集体で50%粒子径150〜200nmであった。得られたクラスターダイヤモンド量は、爆薬量に対し、5.22質量%であった。また、実作業に要した時間は、1回目の爆薬供試体準備から7回目の起爆終了までに約210分間、爆発生成物回収に約30分間、合計約240分間であった。1回あたり平均して約34分間となった。
実験条件と結果を表1に示した。
〔実施例5,6〕
実施例5では、円柱状の合成爆薬の組成をRDX5質量%及びTNT95質量%として、前記実施例4と同じ操作を行なった。
その結果、使用した爆薬量に対して2.95質量%のクラスターダイヤモンドを得た。
さらに、実施例6では、円柱状の合成爆薬の組成をHMX80質量%及びGAP20質量%として、実施例4と同じ操作を行なった。
その結果、使用した爆薬量に対して5.78質量%のクラスターダイヤモンドを得た。
また、実作業に要した時間は、実施例5,6ともに前記実施例4と同じく、1回目の爆薬供試体準備から7回目の起爆終了までに約210分間、爆発生成物回収に約30分間、合計約240分間であった。1回あたり平均して約34分間となった。
実験条件と結果を表1にそれぞれ示した。
実施例5では、円柱状の合成爆薬の組成をRDX5質量%及びTNT95質量%として、前記実施例4と同じ操作を行なった。
その結果、使用した爆薬量に対して2.95質量%のクラスターダイヤモンドを得た。
さらに、実施例6では、円柱状の合成爆薬の組成をHMX80質量%及びGAP20質量%として、実施例4と同じ操作を行なった。
その結果、使用した爆薬量に対して5.78質量%のクラスターダイヤモンドを得た。
また、実作業に要した時間は、実施例5,6ともに前記実施例4と同じく、1回目の爆薬供試体準備から7回目の起爆終了までに約210分間、爆発生成物回収に約30分間、合計約240分間であった。1回あたり平均して約34分間となった。
実験条件と結果を表1にそれぞれ示した。
〔比較例1〜3〕
前記実施例4〜6の比較として比較例1〜3を実施した。比較例1〜3では、圧力容器内に窒素ガスを封入しない(空気1気圧、酸素濃度約20体積%)こと以外は、前記実施例4〜6と同じ爆薬組成物から同じ方法で生成物を得た。
その結果、比較例1では使用した爆薬量に対して4.49質量%のクラスターダイヤモンドを得た。同様に、比較例2では2.10質量%、比較例3では、4.62質量%のクラスターダイヤモンドを得た。
また、実作業に要した時間は、比較例1〜3ともに、1回目の爆薬供試体準備から7回目の起爆終了までに約190分間、爆発生成物回収に約30分間、合計約220分間であった。1回あたり平均して約32分間となった。
実験条件と結果を表1にそれぞれ示した。
前記実施例4〜6の比較として比較例1〜3を実施した。比較例1〜3では、圧力容器内に窒素ガスを封入しない(空気1気圧、酸素濃度約20体積%)こと以外は、前記実施例4〜6と同じ爆薬組成物から同じ方法で生成物を得た。
その結果、比較例1では使用した爆薬量に対して4.49質量%のクラスターダイヤモンドを得た。同様に、比較例2では2.10質量%、比較例3では、4.62質量%のクラスターダイヤモンドを得た。
また、実作業に要した時間は、比較例1〜3ともに、1回目の爆薬供試体準備から7回目の起爆終了までに約190分間、爆発生成物回収に約30分間、合計約220分間であった。1回あたり平均して約32分間となった。
実験条件と結果を表1にそれぞれ示した。
〔考察〕
空間部容積が0.09m3である圧力容器を用いた実施例4と比較例1から、圧力容器内の空間部に空気を満たして合成した場合と有機系爆薬中の炭素原子に対して不活性なガスとして窒素を満たした状態で合成した場合の結果を比較すると、180gの爆薬と小型の圧力容器を用いた場合でも、ダイヤ収率は、空気雰囲気下で合成した比較例1の4.49質量%よりも、窒素ガス雰囲気下で合成した実施例4の5.22質量%の方が高く、圧力容器内の空間部に窒素ガスを満たして合成することで、ダイヤ収率を16.3%高くすることができた。
また、同様に実施例5では比較例2に比べてダイヤ収率を40.5%高く、実施例6では比較例3に比べて収率を25.1%高くすることができた。
一方、1回あたりの合成作業に要した時間は、実施例4では約34分間であり、比較例1の約32分間と比較すると、窒素ガスの封入に要した僅か約2分間延長しているのみであり、この時間の合成作業全体に占める割合は極めて小さい。
同様に、実施例5と比較例2、及び、実施例6と比較例3も同じ傾向となった。
すなわち、圧力容器内の空間部に窒素ガスを満たすことで、作業時間を殆ど変えずにダイヤ収率を高くすることができ、高効率にダイヤを合成できることが明らかとなった。
空間部容積が0.09m3である圧力容器を用いた実施例4と比較例1から、圧力容器内の空間部に空気を満たして合成した場合と有機系爆薬中の炭素原子に対して不活性なガスとして窒素を満たした状態で合成した場合の結果を比較すると、180gの爆薬と小型の圧力容器を用いた場合でも、ダイヤ収率は、空気雰囲気下で合成した比較例1の4.49質量%よりも、窒素ガス雰囲気下で合成した実施例4の5.22質量%の方が高く、圧力容器内の空間部に窒素ガスを満たして合成することで、ダイヤ収率を16.3%高くすることができた。
また、同様に実施例5では比較例2に比べてダイヤ収率を40.5%高く、実施例6では比較例3に比べて収率を25.1%高くすることができた。
一方、1回あたりの合成作業に要した時間は、実施例4では約34分間であり、比較例1の約32分間と比較すると、窒素ガスの封入に要した僅か約2分間延長しているのみであり、この時間の合成作業全体に占める割合は極めて小さい。
同様に、実施例5と比較例2、及び、実施例6と比較例3も同じ傾向となった。
すなわち、圧力容器内の空間部に窒素ガスを満たすことで、作業時間を殆ど変えずにダイヤ収率を高くすることができ、高効率にダイヤを合成できることが明らかとなった。
また、実施例1と実施例4から、1回合成した場合と7回連続合成した場合の結果を比較すると、ダイヤ収率は、1回合成した実施例1の4.16質量%よりも、連続的に合成した実施例4の5.22質量%の方が高く、連続合成することでダイヤ収率を25.5%高くすることができた。
また、同様に実施例5では実施例2に比べてダイヤ収率を34.1%高く、実施例6では実施例3に比べて収率を13.1%高くすることができた。
さらに、1回あたりの合成作業に要した時間も、実施例1の65分間よりも実施例4の34分間のほうが短くなり、連続合成することで1回あたりの作業時間を47.7%に短縮することができた。
同様に、実施例2と5、および、実施例3と6も、同じ傾向となった。
すなわち、連続合成は1回合成に比べてダイヤ収率が高く、かつ作業時間が短いことから、連続合成によって高効率にダイヤを合成することができた。
また、同様に実施例5では実施例2に比べてダイヤ収率を34.1%高く、実施例6では実施例3に比べて収率を13.1%高くすることができた。
さらに、1回あたりの合成作業に要した時間も、実施例1の65分間よりも実施例4の34分間のほうが短くなり、連続合成することで1回あたりの作業時間を47.7%に短縮することができた。
同様に、実施例2と5、および、実施例3と6も、同じ傾向となった。
すなわち、連続合成は1回合成に比べてダイヤ収率が高く、かつ作業時間が短いことから、連続合成によって高効率にダイヤを合成することができた。
1:圧力容器
2:空間部
3:起爆手段
4:有機系爆薬
5:起爆用爆薬
6:電気雷管
7:冷却剤
8:袋体
9:有機系爆薬中の炭素原子に対して不活性なガス
10ボルト
11:底板
12:蓋
13:フランジ部
14:O−リング
15:吊材
16:フックボルト
17:アイボルト
18:緩衝材
2:空間部
3:起爆手段
4:有機系爆薬
5:起爆用爆薬
6:電気雷管
7:冷却剤
8:袋体
9:有機系爆薬中の炭素原子に対して不活性なガス
10ボルト
11:底板
12:蓋
13:フランジ部
14:O−リング
15:吊材
16:フックボルト
17:アイボルト
18:緩衝材
Claims (6)
- 爆薬を爆発させる第1工程、爆発生成物を回収して回収物を精製する第2工程からなるクラスターダイヤモンドの合成方法において、第1工程が、
圧力容器内の空間部略中央に、起爆手段を有する有機系爆薬を冷却剤を介して袋体に収容した状態で配置し、かつ前記袋体の外側空間部を有機系爆薬中の炭素原子に対して不活性なガスで満たした条件下で、前記起爆手段により有機系爆薬を爆発させることを特徴とするクラスターダイヤモンドの合成方法。 - 袋体の材質が炭化水素系高分子材料からなることを特徴とする請求項1に記載のクラスターダイヤモンドの合成方法。
- 有機系爆薬は炭素原子含有率が15質量%以上、酸素バランスが負であり、爆轟圧が18GPa以上、爆轟温度が3000K以上であることを特徴とする請求項1又は2に記載のクラスターダイヤモンドの合成方法。
- 第1工程を複数回連続的に行った後、第2工程を行うことを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載のクラスターダイヤモンドの合成方法。
- 圧力容器内の空間部略中央に、起爆手段を有する有機系爆薬を冷却剤を介して袋体に収容した状態で吊設し、かつ前記袋体の外側空間部を有機系爆薬中の炭素原子に対して不活性なガスで満たしたことを特徴とするクラスターダイヤモンドの合成装置。
- 圧力容器は開閉自在であることを特徴とする請求項5に記載のクラスターダイヤモンドの合成装置。
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---|---|---|---|
JP2006097864A JP2007269576A (ja) | 2006-03-31 | 2006-03-31 | クラスターダイヤモンドの合成方法、及び合成装置 |
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Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
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- 2006-03-31 JP JP2006097864A patent/JP2007269576A/ja active Pending
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