JP2007268641A - 回転工具、スローアウェイチップおよびスローアウェイチップの形成方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】 初期段階と初期段階以外との切削抵抗のばらつきを低減して、切削加工中に発生するびびりを抑えることができる回転工具を提供する。
【解決手段】 第1逃げ面17の研磨筋34がホルダ22の軸線L1に垂直な仮想平面L6に対して、略垂直に延びる。これによって切削方向に切断した第1逃げ面17の断面形状を微視的に見た場合に、研磨筋34による凹凸を少なくすることができる。したがってチップ23の第1逃げ面17と、被削材の被削面とが衝突する場合に、被削材の被削面が、研磨筋34に沿って移動することとなり、被削面が研磨筋34で生じる切削抵抗を小さくすることができる。これによって切削時の切削抵抗の急激な変動を少なくすることができ、切削加工中にエンドミル20または被削材にびびりが発生することを防ぐことができる。
【選択図】 図4
Description
本発明は、切刃を有するスローアウェイチップを着脱可能な回転工具、スローアウェイチップ、スローアウェイチップの形成方法に関する。
従来技術では、切刃を有するスローアウェイチップ(以下、単にチップと称する)と、ホルダとを含むスローアウェイエンドミルが存在する。特許文献1には、チップ単体をクランプして、クランプしたチップに対して、回転する砥石を接触させて、チップの外周を研磨するチップの研磨方法が開示されている。
図12は、逃げ面2に形成される研磨筋3を誇張して示すチップ1の側面図である。図12に示すように、チップ1は略板状に形成される。チップ1は、すくい面5と、底面4と、逃げ面2と、主切刃6とを有する。すくい面5は、チップ1の厚み方向一方A1に形成される。底面4は、チップ1の厚み方向他方A2に形成される。逃げ面2は、チップ1の幅方向C一方に形成される。主切刃6は、すくい面5と逃げ面2との交差稜線部に形成される。上述する従来技術を用いて研磨されることで、チップ1の逃げ面2には底面4に平行な方向に延びる複数の研磨筋3が形成される。微視的にみると、逃げ面2の表面には、研磨筋3に起因して周期的な凹凸が形成される。
図13は、図12に示すチップ1がホルダ11に装着されるエンドミル10を示す側面図である。エンドミル10は、チップ1と、チップ1を装着するホルダ11とを有する。図13では、チップ1の底面4がホルダ軸線L11に略平行に配置される。この場合、研磨筋3もまたホルダ軸線L11に略平行に配置される。
図14は、図13に示すエンドミル10における初期段階の切削状態を模式的に示す斜視図である。微視的に見た場合に、切削方向に切断した逃げ面2の断面形状に、研磨筋による周期的な凹凸が形成される。主切刃6は、切削方向に移動して被削材13に接触し、被削材13の一部を切り屑として削り取る。エンドミル10では、切削方向は、被削材13に対してホルダ軸線L11まわりに周方向一方に回転する方向となる。主切刃6によって切削された後の被削面は、逃げ面2上を通過する。切削作業における初期段階では、刃先部分に摩耗が生じることで、チップ1の逃げ面2と被削材13の被削面とが衝突する場合がある。
この場合、被削材13の被削面は、逃げ面2の研磨筋3の段差部分に順次接触して進むことになる。したがって初期段階における切削抵抗が大きい。また切削を継続することで、研磨筋3の段差部分が、被削材13との摩耗によって除去されて、切削抵抗が小さくなる。このように研磨筋3がホルダ軸線L11に略平行に延びる場合には、刃先部分の摩耗の進行によって、切削抵抗が不連続的に変化し、局部的に切削抵抗の大きな部位が生じるので、切削加工中にびびりが生じやすいという問題がある。
図15は、逃げ面2に形成される他の研磨筋3を誇張して示すチップ1aの側面図である。従来技術として、チップ1aの逃げ面2には、底面4に垂直な研磨筋3が形成される場合がある。図16は、図15に示すチップ1aがホルダ11に装着されるエンドミル10aを示す側面図である。エンドミル10aの主切刃6にアキシャルレーキを与えるために、チップ1aの底面4が、正のアキシャルレーキを有してホルダ軸線L11に対して傾斜して延びる場合がある。
この場合、底面4のうちでホルダ基端部寄りの部分7からホルダ軸線L11に平行に延びる直線L12と、底面4とで、傾斜角度α2を成す。研磨筋3が底面4に対して垂直であると、研磨筋3は、ホルダ軸線L11に垂直な仮想平面8に対して、前記傾斜角度α2の分だけ傾斜して延びることになる。
図17は、図16に示すエンドミル10aにおける初期の切削状態を模式的に示す斜視図である。この場合も、微視的に見た場合に、切削方向に切断した逃げ面2の断面形状に、研磨筋3による周期的な凹凸が形成される。切削作業における初期段階では、被削材13の被削面は、逃げ面2に形成される研磨筋3の段差部分に順次接触して進むことになる。したがって、初期段階と初期段階以外とで、切削抵抗が不連続的に変化し、局部的に切削抵抗の大きな部位が生じるので、切削加工中にびびりが生じやすいという問題がある。
したがって本発明の目的は、初期段階と初期段階以外との切削抵抗のばらつきを低減して、切削加工中に発生するびびりを抑えることができる回転工具を提供することである。
本発明は、略板状に形成され、厚み方向一方の面に形成されるすくい面と、すくい面に隣接してすくい面に対して傾斜する逃げ面と、前記すくい面と前記逃げ面との交差稜線部に形成される切刃と、厚み方向他方に形成される底面とを具備するスローアウェイチップと、
略円柱状に形成されて、基端部が切削装置に保持され、先端部の外周部分に、前記スローアウェイチップが着脱可能に装着されるホルダとを有する回転工具であって、
前記スローアウェイチップの逃げ面は、研磨加工して形成される研磨面として形成され、スローアウェイチップが前記ホルダに装着された状態では、スローアウェイチップの底面が、正のアキシャルレーキをもって傾斜するとともに、前記逃げ面に形成される研磨筋が、ホルダの軸線に垂直な仮想平面に対して、略平行に延びることを特徴とする回転工具である。
略円柱状に形成されて、基端部が切削装置に保持され、先端部の外周部分に、前記スローアウェイチップが着脱可能に装着されるホルダとを有する回転工具であって、
前記スローアウェイチップの逃げ面は、研磨加工して形成される研磨面として形成され、スローアウェイチップが前記ホルダに装着された状態では、スローアウェイチップの底面が、正のアキシャルレーキをもって傾斜するとともに、前記逃げ面に形成される研磨筋が、ホルダの軸線に垂直な仮想平面に対して、略平行に延びることを特徴とする回転工具である。
本発明に従えば、回転工具は、チップの底面が正のアキシャルレーキをもって傾斜する(ホルダの軸線に対して傾斜する)ことで、チップの切刃をホルダの軸線に対して傾斜させることができ、回転工具にアキシャルレーキを付与して切削抵抗を低減することができる。またアキシャルレーキを付与するために、底面をホルダ軸線に垂直に配置した状態で、切刃を底面に対して傾斜させる場合に比べて、チップ厚み方向寸法の減少を抑えることができ、チップの強度低下を防ぐことができる。また逃げ面が研磨されることで、逃げ面の凹凸を小さくすることができる。
さらに逃げ面の研磨筋は、ホルダの軸線に垂直な仮想平面に対して、略垂直に延びる。切削方向に切断した逃げ面の断面形状を微視的に見た場合に、逃げ面は、研磨筋による凹凸が少なくなる。したがって切削作業における初期段階で刃先部分に摩耗が生じて、チップの逃げ面と、被削材の被削面とが衝突する場合に、被削材の被削面が、研磨筋の延びる方向と略平行に移動することとなり、被削面が研磨筋の凹凸を乗り越えることに起因する切削抵抗変動を抑えることができる。
本発明は、前記逃げ面の算術平均粗さ(Ra)は、0.2μm以下に形成されることを特徴とする。
本発明に従えば、逃げ面の算術平均粗さが、0.2μm以下である。たとえば逃げ面の算術平均粗さが、0.2μmを超えると、被削面の表面粗さが粗くなってしまうとともに、切削作業における初期段階で急に刃先部分の摩耗が生じて逃げ面が急激に摩耗しやすく、初期段階における切削抵抗が大きくなる。これに対して本発明では、逃げ面の算術平均粗さが、0.2μm以下であるので、被削材の被削面が、逃げ面に接触したとしても、初期段階に刃先部分の急激な摩耗を防ぎ、切削抵抗の急激な変化をより確実に抑えることができる。
本発明は、スローアウェイチップは、ホルダに装着された状態で、厚み方向一方の面でかつホルダの先端部寄りに形成される副すくい面と、副すくい面に隣接して副すくい面に対して傾斜する副逃げ面と、前記副すくい面と前記副逃げ面との交差稜線部に形成される副切刃とをさらに具備し、
前記スローアウェイチップの副逃げ面は、研磨加工して形成される研磨面として形成され、スローアウェイチップが前記ホルダに装着された状態では、前記副逃げ面に形成される研磨筋が、チップの底面に対して略垂直に延びることを特徴とする。
前記スローアウェイチップの副逃げ面は、研磨加工して形成される研磨面として形成され、スローアウェイチップが前記ホルダに装着された状態では、前記副逃げ面に形成される研磨筋が、チップの底面に対して略垂直に延びることを特徴とする。
本発明に従えば、副逃げ面に形成される研磨筋が、チップの底面に対して略垂直に延びる。この場合、微視的に見た場合に、切削方向に切断した副逃げ面の断面形状について、研磨筋による凹凸を少なくすることができる。したがって切削作業における初期段階で副切刃の刃先部分に摩耗が生じて、チップの副逃げ面と、被削材とが衝突する場合に、被削材の被削面が、副逃げ面の研磨筋の延びる方向に沿って移動することとなり、被削面が研磨筋に接触することに起因する切削抵抗変動をさらに抑えることができる。
本発明は、前記回転工具の一部を構成するスローアウェイチップである。
本発明に従えば、本発明のチップがホルダに装着されることで、上述した回転工具を実現することができる。したがってチップの逃げ面に形成される研磨筋の影響による切削抵抗の変動を抑えることができる。
本発明に従えば、本発明のチップがホルダに装着されることで、上述した回転工具を実現することができる。したがってチップの逃げ面に形成される研磨筋の影響による切削抵抗の変動を抑えることができる。
本発明は、略板状に形成され、厚み方向一方の面に形成されるすくい面と、すくい面に隣接してすくい面に対して傾斜する逃げ面と、前記すくい面と前記逃げ面との交差稜線部に形成される切刃と、厚み方向他方に形成される底面とを具備してホルダに装着されることで回転工具の一部を構成するスローアウェイチップであって、
前記逃げ面は、研磨加工して形成される研磨面として形成され、前記逃げ面に形成される研磨筋は、厚み方向他方に向かうにつれて切刃の一方の端部から他方の端部に向かう方向に傾斜して延びることを特徴とするスローアウェイチップである。
前記逃げ面は、研磨加工して形成される研磨面として形成され、前記逃げ面に形成される研磨筋は、厚み方向他方に向かうにつれて切刃の一方の端部から他方の端部に向かう方向に傾斜して延びることを特徴とするスローアウェイチップである。
本発明に従えば、切刃の他方の端部が、ホルダの先端部寄りに装着されることで、ホルダの先端部からホルダの基端部に向かって近接するにつれて、ホルダの回転方向と反対の方向に傾斜する方向に沿って、チップの底面が装着される場合、研磨筋が底面に対して平行または垂直に延びる場合に比べて、研磨筋と、ホルダ軸線に垂直な仮想平面との成す角度を小さくすることができる。これによって微視的に見た場合に、切削方向に切断した逃げ面の断面形状について、研磨筋による凹凸を少なくすることができ、切削作業における初期段階での切削抵抗を小さくすることができる。
本発明は、厚み方向一方の面でかつ長手方向一方寄りに形成される副すくい面と、副すくい面に隣接して、副すくい面に対して傾斜する副逃げ面と、前記副すくい面と前記副逃げ面との交差稜線部に形成される副切刃とをさらに具備し、
前記副逃げ面は、研磨加工して形成される研磨面として形成され、前記副逃げ面に形成される研磨筋は、底面に対して略垂直に延びることを特徴とする。
前記副逃げ面は、研磨加工して形成される研磨面として形成され、前記副逃げ面に形成される研磨筋は、底面に対して略垂直に延びることを特徴とする。
本発明に従えば、チップの底面がホルダの略半径方向に延びて装着されることで、副逃げ面の研磨筋が、副切刃からホルダに同軸な仮想円に対する略接線方向に延びる。これによって微視的に見た場合に、切削方向に切断した副逃げ面の断面形状について、研磨筋による凹凸を少なくすることができる。したがって切削作業における初期段階での切削抵抗をさらに小さくすることができる。
本発明は、ホルダに装着されることで回転工具の一部を構成するスローアウェイチップの形成方法方法であって、
略板状に形成され、厚み方向一方の面に形成される基体すくい面と、基体すくい面に隣接して基体すくい面に対して傾斜する基体逃げ面とを具備する基体を準備するとともに、基体を装着可能な円柱状の治具を準備する準備工程と、
治具の外周部に基体を装着して、軸線まわりに治具を回転させながら、治具半径方向外方に離間した位置から砥石を治具に近接させて、砥石によって前記基体逃げ面を研磨して、厚み方向一方の面に形成されるすくい面と、すくい面に隣接してすくい面に対して傾斜する逃げ面と、前記すくい面と前記逃げ面との交差稜線部に形成される切刃とを具備するスローアウェイチップを形成する研磨工程とを有し、
前記治具は、ホルダの直径と略同一の直径を有するとともに、スローアウェイチップがホルダに装着されたときにホルダの軸線に対するスローアウェイチップの姿勢と、スローアウェイチップが治具に装着されたときに治具の軸線に対するスローアウェイチップの姿勢とが略同一に構成されることを特徴とするスローアウェイチップの形成方法である。
略板状に形成され、厚み方向一方の面に形成される基体すくい面と、基体すくい面に隣接して基体すくい面に対して傾斜する基体逃げ面とを具備する基体を準備するとともに、基体を装着可能な円柱状の治具を準備する準備工程と、
治具の外周部に基体を装着して、軸線まわりに治具を回転させながら、治具半径方向外方に離間した位置から砥石を治具に近接させて、砥石によって前記基体逃げ面を研磨して、厚み方向一方の面に形成されるすくい面と、すくい面に隣接してすくい面に対して傾斜する逃げ面と、前記すくい面と前記逃げ面との交差稜線部に形成される切刃とを具備するスローアウェイチップを形成する研磨工程とを有し、
前記治具は、ホルダの直径と略同一の直径を有するとともに、スローアウェイチップがホルダに装着されたときにホルダの軸線に対するスローアウェイチップの姿勢と、スローアウェイチップが治具に装着されたときに治具の軸線に対するスローアウェイチップの姿勢とが略同一に構成されることを特徴とするスローアウェイチップの形成方法である。
本発明に従えば、ホルダと略同一直径でかつ、ホルダに取り付けられるチップの姿勢と略同一姿勢でチップを装着可能な治具を用意する。研磨工程で、治具を軸線まわりに回転させながら、治具に装着した基体の基体逃げ面を研磨することによって、研磨後のチップの切刃を、ホルダに装着するとホルダの軸線の円柱面上に配置することができる。このようにして回転させた治具に砥石を接触させることで、砥石を複雑に移動させる必要がなく、逃げ面を容易に研磨することができる。
本発明は、治具は、前記ホルダのチップ装着可能枚数よりも多い数のスローアウェイチップを装着可能に構成されることを特徴とする。
本発明に従えば、ホルダのチップ装着枚数よりも多い数の基体を治具に装着させることで、一度の研磨工程で研磨可能な基体の枚数を増やすことができ、ホルダと同形状の治具を用いる場合に比べて、作業効率を向上することができる。また研磨時に生じる負荷が小さいので、ホルダのチップ装着枚数を超えた数の基体を治具にそれぞれ装着しても、治具が損傷することを防ぐことができる。
請求項1記載の本発明によれば、逃げ面が研磨されることで、研磨前に逃げ面に生じていた凹凸を小さくすることができ、被削材の被削面の表面粗さを小さくすることができる。さらに逃げ面の研磨筋が、ホルダの軸線に垂直な平面に略平行に延びることで、切削作業における初期段階の切削抵抗を小さくすることができる。これによって切削時の切削抵抗の急激な変動を少なくすることができ、切削加工中に回転工具または被削材にびびりが発生することを防ぐことができる。また、びびりによって生じる被削面の段差を小さくすることができ、被削材の品質を向上することができる。また切削抵抗の急激な変動をなくすことで、切削作業における初期段階と初期段階以外とで安定した切削を行うことができ、回転工具による加工精度を向上することができる。
請求項2記載の本発明によれば、逃げ面の算術平均粗さが0.2μm以下となることによって、被削材の被削面が、逃げ面に接触したとしても、被削面の表面粗さが粗くなることを防ぐことができる。また初期段階に逃げ面が急激に摩耗することを防いで、切削抵抗の急激な変化をより確実に抑えることができる。
請求項3記載の本発明によれば、副逃げ面の研磨筋が、底面に対して略垂直に延びることで、切削作業における切削抵抗の急激な変動をさらに少なくすることができる。これによって切削加工中に回転工具または被削材にびびりが発生することをさらに防ぐことができる。
請求項4記載の本発明によれば、本発明のチップがホルダに装着されることで、上述した回転工具を実現することができる。したがってチップの逃げ面に研磨筋が形成される場合でも、研磨筋の影響による切削抵抗の変動を抑えることができる。
請求項5記載の本発明によれば、チップの底面がホルダの軸線に対して傾斜して延びて装着される場合、研磨筋が底面に対して平行または垂直に延びる場合に比べて、研磨筋と、ホルダ軸線に垂直な仮想平面との成す角度を小さくすることができる。これによって切削方向に切断した逃げ面の断面形状について、研磨筋による凹凸を少なくすることができ、切削作業における初期段階での切削抵抗を小さくすることができる。また切削時の切削抵抗の急激な変動を少なくすることができ、切削加工中に回転工具または被削材にびびりが発生することを防ぐことができる。
請求項6記載の本発明によれば、チップがホルダに装着される場合、副逃げ面の研磨筋が、副切刃から底面に対して略垂直な方向に延びる。これによって切削方向に切断した副逃げ面の断面形状について、研磨筋による凹凸を少なくすることができ、切削作業における初期段階での切削抵抗をさらに小さくすることができる。
請求項7記載の本発明によれば、研磨後のチップの切刃を、ホルダに装着して、ホルダの軸線まわりに回転させると、切刃の回転軌跡がホルダ軸線に同軸なの円柱状となる。これによってホルダの軸線に垂直な被削面を形成することができ、加工品質を向上することができる。また従来技術のように、複雑な工程を必要とせずに、逃げ面を研磨することができるので、生産性を向上することができる。
請求項8記載の本発明によれば、治具にホルダのチップ装着枚数よりも多い数の基体を装着させることで、一度の研磨工程で研磨可能な基体の枚数を増やすことができ、ホルダと同形状の治具を用いる場合に比べて、作業効率を向上することができる。
図1は、本発明の実施の一形態であるスローアウェイチップ23を示す側面図である。図2は、スローアウェイチップ23を示す斜視図であり、図3は、本発明のスローアウェイエンドミル20を示す斜視図である。
エンドミル20は、スローアウェイチップ23(以下、チップ23という)と、チップホルダ22(以下、ホルダ22という)とを含んで構成される。チップ23には、切刃30,31が形成される。ホルダ22は、チップ23を着脱可能に装着する。本実施形態では、ホルダ22は、多数、具体的には3つのチップ23が装着可能に構成される。
ホルダ22は、略円柱状に形成される。ホルダ22の軸線方向基端部には被保持部28が形成される。被保持部28は、マシニングセンタ等のフライス盤に各種アーバーを介して保持される。またホルダ22の軸線方向先端部には、装着部24が形成される。装着部24は、外周面32および軸線方向先端面33からチップ23を部分的に突出させた状態で、チップ23を装着する。
フライス盤は、クランプした被削材と、保持したエンドミル20とを相対的に移動駆動する移動駆動手段と、保持したエンドミル20を、ホルダ22の中心軸線L1まわりに回転駆動する回転駆動手段とを含む。エンドミル20は、ホルダ22の中心軸線L1まわりに回転しながら被削材に接触することで、チップ23によって形成される切刃30,31が被削材を断続切削する。これによって被削材を予め定める形状に切削することができる。たとえばエンドミル20を用いて、被削材に溝加工および肩加工などを施すことができる。エンドミル20は、チップ23の切刃30,31が摩耗または欠損した場合には、チップ23を180度回転させて取り付けたり、新しいチップ23に取り替えたりすることによって、切削能力を回復することができる。
図2に示すように、チップ23は、大略的に板状に形成され、厚み方向に垂直な平面に投影した投影形状、いわゆる平面視の形状が略平行四辺形形状に形成される。前記平面視におけるチップ23の形状は、縁辺として形成される2組の対辺のうち、一方の対辺が他方の対辺よりも長い。またチップ23には、厚み方向Aに貫通する貫通孔50が形成される。貫通孔50は、チップ23をホルダ22に固定するための孔となり、略円柱状に形成される。貫通孔50は、チップ23の長手方向Bおよび幅方向Cにおける中央位置に形成される。チップ23は、貫通孔50の軸線を基準軸線L2として、その基準軸線L2に関して180度回転対称形状、言い換えると2回回転対称形状に形成される。したがって任意の方向からチップ23を見たときに、基準軸線L2まわりに180度回転させた状態と、回転させる前の状態とで、同一の形状となる。以下、2つの対称な部分については、いずれか一方の部分を説明し、他方の部分の説明を省略する場合がある。
以下、基準軸線L2が延びる方向を厚み方向Aと称する。またチップ23の厚み方向Aに対して垂直な方向のうち、基準軸線L2に垂直な投影面に投影した場合に厚み方向表面の長辺に沿って延びる方向を長手方向Bと称する。またチップ23の厚み方向Aおよび長手方向Bに対してともに垂直な方向を幅方向Cと称する。
チップ23は、厚み方向Aに延びる軸線に対して周方向に一周する側面89と、厚み方向一方A1の表面となる上面87と、厚み方向他方A2の表面となる底面88とが形成される。チップ23の底面88は、平坦状に形成され、基準軸線L2に垂直な平面となる。
チップ23は、上面87の縁辺のうちで互いに対向する一対の長辺が形成される2つの長辺部分14a,14bを有する。またチップ23は、上面87の縁辺のうちで互いに対向する一対の短辺が形成される2つの短辺部分15a,15bをそれぞれ有する。各長辺部分14a,14bには、第1切刃30がそれぞれ形成される。また各短辺部分15a,15bには、第2切刃31がそれぞれ形成される。各切刃30,31は、上面87と側面89とが交差する交差稜線部の一部であって、上面87の縁辺の一部を形成する。
2つのうち一方の長辺部分を第1長辺部分14aと称し、他方の長辺部分を第2長辺部分14bと称する。また2つのうち一方の短辺部分を第1短辺部分15aと称し、他方の短辺部分を第2短辺部分15bと称する。以下、長手方向Bのうち、第2短辺部分15bから第1短辺部分15aに進む方向を長手向一方B1とし、第1短辺部分15aから第2短辺部分15bに進む方向を長手方向他方B2とする。また幅方向Cのうち、第2長辺部分14bから第1長辺部分14aに進む方向を幅方向一方C1とし、第1長辺部分14aから第2長辺部分14bに進む方向を幅方向他方C2とする。
チップ23は、上面87の長辺と短辺とが交差する角部分のうち対角線上に相対する2つのコーナ部分13a,13bを有する。各コーナ部分13a,13bは、コーナ切刃32が形成される。コーナ切刃32は、予め定める曲率半径の円弧に沿って延びる。コーナ切刃32は、上面87と側面89とが交差する交差稜線の一部であって、上面87の縁辺の一部を形成する。
第1長辺部分14aと第1短辺部分15aとの間に形成される第1コーナ部分13aは、チップ23のうちで、長手方向一方B1側でかつ幅方向一方C1側に形成される。また第2長辺部分14bと第2短辺部分15bとの間に形成される第2コーナ部分13bは、チップ23のうちで、長手方向他方B2側でかつ幅方向他方C2側に形成される。
たとえば第1コーナ部分13aに形成されるコーナ切刃32の一端は、第1長辺部分14aの第1切刃30に連なり、コーナ切刃32の他端は、第1短辺部分15aの第2切刃31に連なる。このようにコーナ切刃32は、第1切刃30と第2切刃31とを連結する。言換えると、第1切刃30と第2切刃31とは、コーナ切刃32を介して連結される。本実施形態では、第1切刃30は、上面87の長辺のほぼ全体にわたって形成され、各第2切刃31は、上面87の短辺のうちコーナ切刃32寄りの一部に形成される。
チップ23がホルダ22に装着された状態で、2つのコーナ部分13a,13bのいずれか一方が、ホルダ20の軸線方向先端部寄りでかつ半径方向外方寄りに配置される。これによってチップ23がホルダ22に装着された状態で、2つの第1切刃30のうち一方がエンドミル20の主切刃となり、2つの第2切刃31のうち一方がエンドミル20の副切刃、すなわちサラエ刃となる。またチップ23がホルダ22に装着された状態で、チップ23の底面88が、ホルダ22に形成される着座面に当接する。
各長辺部分14a,14bには、厚み方向一方A1の表面に、第1切刃30に隣接する第1すくい面16a,16bがそれぞれ形成される。第1すくい面16a,16bは、隣接する第1切刃30からチップ幅方向Cに離反するにつれて、隣接する第1切刃30からチップ厚み方向他方A2に離反する方向に傾斜する。また各長辺部分14a,14bには、幅方向Cに露出する表面となる長辺側面に、第1切刃30に隣接する第1逃げ面17a,17bがそれぞれ形成される。第1逃げ面17a,17bは、隣接する第1切刃30からチップ厚み方向他方A2に離反するにつれて、隣接する第1切刃30からチップ幅方向Cに離反する方向に傾斜する。
この場合、第1長辺部分14aの第1すくい面16aは、隣接する第1切刃30からチップ幅方向他方C2に離反するにつれて、隣接する第1切刃30からチップ厚み方向他方A2に離反する方向に延びる。また第1長辺部分14aの第1逃げ面17aは、隣接する第1切刃30からチップ厚み方向他方A2に離反するにつれて、隣接する第1切刃30からチップ幅方向他方C2に離反する。
各短辺部分15a,15bには、厚み方向一方A1の表面に、第2切刃31に隣接する第2すくい面18a,18bがそれぞれ形成される。第2すくい面18a,18bは、隣接する第2切刃31からチップ長手方向Bに離反するにつれて、隣接する第2切刃31からチップ厚み方向他方A2に離反する方向に傾斜する。また各短辺部分15a,15bには、長手方向Bに露出する表面となる短辺側面に、第2切刃31に隣接する第2逃げ面19a,19bがそれぞれ形成される。第2逃げ面19a,19bは、隣接する第2切刃31からチップ厚み方向他方A2に離反するにつれて、隣接する第2切刃31からチップ長手方向Bに離反する方向に傾斜する。
この場合、第1短辺部分14aの第2すくい面18aは、隣接する第2切刃31からチップ長手方向他方B2に離反するにつれて、隣接する第2切刃31からチップ厚み方向他方A2に離反する方向に延びる。また第1短辺部分15aの第2逃げ面19aは、隣接する第2切刃31からチップ厚み方向他方A2に離反するにつれて、隣接する第2切刃31からチップ長手方向他方B2に離反する。
本実施形態では、チップ23は、各すくい面16a,16b,18a,18bおよび各逃げ面17a,17b,19a,19bが研磨加工して形成される。これによって各すくい面16,18および各逃げ面17,19に形成される凹凸を小さくすることができる。各すくい面16,18の凹凸を小さくすることで、非鉄系金属の切削加工、たとえばアルミ合金の切削加工において、すくい面16,18に切り屑が溶着することを防ぐことができる。また各逃げ面17,19の凹凸を小さくすることで、切削加工後の被削材の被削面に形成される凹凸を小さくすることができる。本実施形態では、研磨加工されることで、各逃げ面17,19の算術平均粗さ(Ra)は、0.2μm以下に形成される。
第1逃げ面17に形成される研磨筋34は、直線状に延び、互いに間隔をあけて複数並んで形成される。第1逃げ面17の研磨筋34は、底面88に対して傾斜して延びる。具体的には、第1逃げ面17の研磨筋34は、底面88から厚み方向一方A1に向かう方向に進むにつれて、隣接するコーナ部13に近接する長手方向Bに傾斜してそれぞれ延びる。たとえば図1に示すように、第1長辺部分14aの第1逃げ面17aの研磨筋34は、厚み方向一方A1に向かう方向に進むにつれて、長手方向一方B1に傾斜してそれぞれ延びる。
第1逃げ面17に形成される研磨筋34と、基準軸線L2に平行に延びる仮想線L3との成す設定角度βは、予め定める許容角度範囲内に設定される。また第2逃げ面19に形成される研磨筋は、直線状に延び、互いに間隔をあけて複数並んで形成される。第2逃げ面19の研磨筋は、底面88に対して略垂直に延びる。言い換えると基準軸線L2に対して平行に延びる。また第1すくい面16a,16bおよび第2すくい面18a,18bに形成される研磨筋については、特に規定されないが、各すくい面16,18の算術平均粗さ(Ra)は、0.2μm以下に形成されることが好ましい。
本実施形態では、第1切刃30は、少なくともコーナ切刃32寄りの部分について、隣接するコーナ切刃32から長手方向Bに沿って遠ざかるにつれて、コーナ切刃32を通過して基準軸線L2に垂直な仮想平面L4から、チップ厚み方向他方A2に漸次遠ざかる方向に滑らかに傾斜する。たとえば第1長辺部分14aの第1切刃30は、コーナ切刃32からチップ長手方向他方B2に進むにつれて、チップ厚み方向他方A2に進む方向に滑らかに傾斜する。
このように第1切刃30は、チップ捻れ角α1を有する捻れ形状に形成される。ここで、チップ捻れ角α1は、基準軸線L2に垂直な仮想直線L4と、第1切刃30との角度である。
さらに本実施形態では、チップ23がホルダ22に装着された状態で、ホルダ22が、その中心軸線L1まわりに回転した場合に、主切刃となる第1切刃30の回転軌跡が、中心軸線L1に同軸な略円柱状に形成される。このために、基準軸線L2に垂直な平面に投影したチップ23の投影形状である平面視のチップ形状では、第1切刃30の長手方向B中間位置が、第1切刃30の長手方向両端位置よりも、チップ幅方向外方Cに膨らんだ略円弧状に形成される。
このようにチップ23は、側面89と上面87とで構成される交差稜線の角部のうち、対角線状に相対する2つの角部にコーナ切刃32を形成し、そのコーナ切刃32を挟んで両隣に主切刃を形成するための第1切刃30と、副切刃を形成するための第2切刃31とを備える。また各切刃30〜32に上面87の隣接する領域には、一定のすくい角が付されたすくい面16,18をそれぞれ備え、各切刃30,32に隣接する側面89の領域には、一定の逃げ角が付された逃げ面17,19をそれぞれ備える。
主切刃を形成する第1切刃30の第1すくい面16および第1逃げ面17は、それぞれエンドミル20の主すくい面および主逃げ面となる。また副切刃を形成する第2切刃31の第2すくい面18および第2逃げ面19は、それぞれエンドミル20の副すくい面および副逃げ面となる。第1逃げ面17は、第1すくい面16に隣接して第1すくい面16に対して傾斜する。また第2逃げ面19は、第2すくい面18に隣接して第2すくい面18に対して傾斜する。
また第1切刃30は、捻れ角θを有する捻れ形状に形成されるとともに、長手方向B中間部が長手方向B両端部に比べてチップ幅方向Cに略円弧状に膨らむ。したがって第1切刃30は、長手方向B位置が変化するごとに、厚み方向Aおよび幅方向C位置が変化する複雑な3次元形状に形成される。第1すくい面16および第1逃げ面17のうちで、第1切刃30近傍の領域では、長手方向B位置が変化する毎に、厚み方向A位置および幅方向C位置が変化する複雑な3次元形状に形成される。
またホルダ22の軸線L1に沿う軸線方向であって、ホルダ22の基端部から先端部に進む方向を軸線方向一方X1と称し、ホルダ3の先端部から基端部に向かう方向を軸線方向他方X2と称する。またホルダ3の半径方向に沿って軸線L1から遠ざかる方向を半径方向外方Y1と称する。またホルダ22の半径方向に沿って軸線L1に向かう方向を半径方向内方Y2と称する。またホルダ22の回転方向となる方向を周方向一方R1と称し、ホルダ22の回転方向と反対方向を周方向他方R2と称する。
ホルダ22は、上述したように、軸線方向基端部に被保持部28が形成され、軸線方向先端部に装着部24が形成される。チップ23は、ホルダ22の外周面32および軸線方向先端面33から一部が突出した状態で、固定部材によって装着部24に固定される。本実施形態では、固定部材は外ねじが形成されるナット状のねじ部材86によって実現される。チップ23のホルダ22に対する装着位置の調整は、ねじ部材86を回動して行われ、ねじ部材86のヘッドをチップ23に当接させて、ねじ部材86をホルダ22に対して螺合させることで、チップ23がホルダ22に設定される所定位置に位置決めされる。
チップ23がホルダ22に装着された状態で、2つの第1切刃30のうち一方がエンドミル20の主切刃となり、2つの第2切刃31のうち一方がエンドミル20の副切刃となる。以下、主切刃に第1切刃30と同じ参照符号30を付する場合があり、副切刃に第2切刃31と同じ参照符号31を付する場合がある。主切刃30は、ホルダ22の外周面32からホルダ半径方向外方Y1に突出して、ホルダ軸線方向Xに延びる。また副切刃31は、ホルダ22の軸線方向先端面33からホルダ軸線方向一方X1に突出して、ホルダ半径方向Yに延びる。
ホルダ22の装着部24は、ホルダ3の外周面32および軸線方向先端面33から窪む溝40を形成する。この溝40は、チップ収容空間と切り屑収容空間とを含んで構成される空間である。チップ収容空間は、チップ23のほぼ全体が収容される空間となる。また切り屑収容空間は、チップ23によって削り取られた切り屑を一時的に収容する空間となる。切り屑収容空間は、チップ収容空間に対して軸線方向他方X2およびホルダ周方向一方R1に配置されて、外方に開放される。チップ23によって被削材から分離した切り屑は、切り屑収容空間に収容されたあと、切り屑収容空間に収容された状態で、軸線L1まわりに角変位し、切り屑収容空間から脱出する。
ホルダ22の装着部24は、チップ収容空間を規定するチップ収容空間形成部となる。具体的には、装着部24には、溝40に対して周方向他方R2の表面となる着座面41と、着座面41に隣接して着座面41に対して周方向一方R1に立設する側面とを有する。着座面41が形成される着座面部42は、着座面41から略垂直に窪むねじ孔が形成される。ねじ孔は、円柱状に形成される。着座面部のうちねじ孔形成部分には、内ねじが形成される。
チップ23の側面89の一部である当接面と、ホルダ22の装着部24に形成される側面とが当接するとともに、チップ23の底面88と、ホルダ22の着座面41とが当接した状態で、チップ23の貫通孔50と、装着部24のねじ孔とが略同一となる。厳密には、チップ2の当接面および底面88が、ホルダ22の装着部24の側面および着座面41にそれぞれ当接した状態で、チップ23の貫通孔50は、ねじ孔よりも、ホルダ22の側面から離れる方向に僅かに偏心している。この状態で、調整ねじ86を、チップ23の貫通孔50を通過させて、ねじ孔に螺進させることによって、チップ23の底面88のほぼ全面がホルダ22の着座面41に当接するとともに、チップ23の側面89の一部となる当接面が、ホルダ22の装着部24に形成される側面に押圧され、チップ23をホルダ22の装着部24に締結して装着することができる。
図4は、エンドミル20の一部を拡大して示す斜視図である。本実施形態では、着座面41は、平坦な平面に形成される。着座面41は、ホルダ22の軸線方向他方X2に進むにつれてホルダ22の周方向他方R2に進む方向に傾斜して延びる。言い換えると、着座面41は、着座面41のうちで軸線方向一方X1の縁辺を含み、ホルダ22の軸線L1に平行に延びる仮想直線L5に対して、軸線方向一方X1の縁辺から軸線方向他方X2に進むにつれて、ホルダ22の回転方向と反対方向に進む方向に傾斜する。着座面41のホルダ軸線方向一方X1の縁辺を通過して軸線方向Xに平行に延びる仮想平面L5と、着座面41との成す角度である傾斜角度α2が設定される。
したがってホルダ22に装着されるチップ23の底面88もまた、ホルダ22の先端部からホルダ22の基端部に向かって近接する方向に向かうにつれてホルダ22の軸線L1まわりに周方向他方R2に向かって傾斜して延びる。この場合、エンドミル20の主切刃30に設定されるアキシャルレーキθは、チップ捻れ角α1と、前記傾斜角度α2とを加算した値(α1+α2)となる。
チップ23が、そのチップ専用のホルダ22に装着される場合、第1切刃30に隣接する第1逃げ面17の研磨筋34に設定される前記設定角度β1は、チップ専用のホルダ22に設定される傾斜角度α2と略一致する(β1≒α2)。本実施形態では、チップ専用のホルダ22の着座面41における設定角度をα21とすると、チップ23の第1逃げ面17の研磨筋34の前記設定角度β1は、α21−0.25(度)≦β1≦α21+0.25(度)に設定されることが好ましい。この場合、第1逃げ面17の研磨筋34は、ホルダ22の軸線L1に垂直な仮想平面L6に対して、略平行に延びる。第1逃げ面17の研磨筋34が、前記仮想平面L6と成す角度は、±0.25(度)以内、言い換えると±15分以内に設定される。
またチップ23が、複数種類のチップホルダ22に装着可能となる場合、第1切刃30に隣接する第1逃げ面17の研磨筋34に設定される前記設定角度β2は、代表的なホルダに設定される傾斜角度α22と略一致する(β2≒α22)。この場合、第1逃げ面17の研磨筋34が、ホルダ22の軸線L1に垂直な仮想平面L6と成す角度は、±0.25(度)以内に設定されることが好ましい。本実施形態では、ホルダ22にチップ23が装着された状態で、第1逃げ面17の研磨筋34が、ホルダ22の軸線L1に垂直な仮想平面L6と成す角度は、少なくとも±5(度)以内に設定される。
ここで、代表的なホルダとは、注目するチップ23を装着可能な複数のホルダのうち、最大径ホルダと最小径のホルダとの間の中間径のホルダであってもよい。またチップが最も装着される可能性が高いホルダであってもよい。また予め定める選択基準に従って、複数種類のホルダ22から選択されてもよい。
また着座面41は、ホルダ22の半径方向内方Y2に進むにつれて、ホルダ半径方向に大略的に沿って延びる。第2逃げ面19の研磨筋は、底面88に垂直に延びる。これによってチップ23がホルダ22に装着される場合、副切刃となる第2切刃31に隣接する第2逃げ面19の研磨筋は、ホルダ22の軸線L1まわりに略周方向Rに延びる。
図5は、エンドミル20を用いた切削状態を示す断面図である。エンドミル20は、ホルダ軸線L1まわりに回転しながら、その先端部が、被削材51の上面52から予め定める軸線方向L1の切り込み量で切り込んだ状態で、ホルダ軸線L1に交差する方向に移動する。これによって主切刃30が、被削材51の側面54に回転接触して、被削材51の側面54を切削する。また副切刃31が、被削材51の底面53に回転接触して、被削材51の底面53に形成される凹凸を削り取る。
前述したように、ホルダ22の着座面41がホルダ軸線L1に対して傾斜することで、アキシャルレーキθを付与することができる。エンドミル20は、アキシャルレーキθが正となることで、主切刃30の切削抵抗を低減することができ、回転切削加工における主切刃40の切れ味を向上することができる。本実施形態では、前記チップ捻れ角α1と、前記傾斜角度α2とがともに正であるので、アキシャルレーキを大きくすることができ、主に切削に寄与する主切刃の切削抵抗をさらに削減することができる。またホルダ22の着座面41が傾斜することで、チップ23の底面88がホルダの軸線に対して傾斜して延びる。これによって、着座面41が傾斜しない場合にチップの捻れ角α1だけで同等のアキシャルレーキθを付与する場合に比べて、ホルダ基端部寄りのチップ厚み方向寸法の減少を抑えることができ、チップの強度低下を防ぐことができる。
また主切刃30の回転軌跡が略円柱状となるように、チップ23の第1切刃30の形状が設定される。これによって被削材51の側面54が、ホルダ軸線L1に対して垂直に近い形状とすることができ、被削材51の底面53に対して垂直に屹立した加工壁面を形成することができる。また各逃げ面17,19が研磨されることで、研磨前に逃げ面17に生じていた凹凸を小さくすることができ、被削材51の被削面の表面粗さを小さくすることができる。さらに各すくい面16,18が研磨されることで、切り屑の一部がすくい面16,18に溶着することを防ぐことができる。
図6は、エンドミル20における初期段階の切削状態を模式的に示す図である。図7は、図6の切断面線S7−S7で切断してエンドミル20を拡大して示す断面図である。図8は、比較例のエンドミル120を拡大して示す断面図である。比較例のエンドミル120は、第1逃げ面117に形成される研磨筋134が切削方向と交差して延びる状態を示し、本実施形態のエンドミル20と対応する部分については、本実施形態のエンドミル20に対応する部分の参照符号に100を付して記載する。
図6に示すように、本実施形態では、エンドミル20の主切刃30に隣接する第1逃げ面17の研磨筋34がホルダ22の軸線L1に垂直な仮想平面L6に対して、略平行に延びる。言い換えると、チップ23をホルダ22に装着した状態で、第1逃げ面17の研磨筋34が、エンドミル20の切削方向と略平行となる。
この場合、図7に示すように、切削方向に切断した第1逃げ面17の断面形状を微視的に見た場合に、研磨筋34が切削方向と平行に延びるので、切削方向に延びる軸線で切断した断面形状において、第1逃げ面17に生じる研磨筋34による凹凸を少なくすることができる。これに対して、図8に示すように、研磨筋134が切削方向と交差する方向に延びる場合、切削方向に延びる軸線で切断した断面形状において、第1逃げ面117に生じる研磨筋134による凹凸が大きくなる。
チップ23の第1逃げ面17には、逃げ角が付与されるので、被削材51の被削面55と、第1逃げ面17とが不所望に接触することが防がれる。しかしながらチップ摩耗前の切削作業における初期段階では、切削時に主切刃30の刃先部分に僅かな摩耗が生じる。この場合、被削材51と第1逃げ面17とが接触することになる。
本実施形態では、切削方向の断面形状における第1逃げ面34の研磨筋34による凹凸を少なくすることができるので、切削作業における初期段階で主切刃30の刃先部分に摩耗が生じて、チップ23の第1逃げ面17と、被削材51の被削面55とが衝突する場合に、被削面55が研磨筋34の段差部分で生じる切削抵抗を小さくすることができる。このように本実施形態では、切削作業における初期段階の切削抵抗を小さくするとともに、刃先部分の磨耗の進行による切削抵抗の増大が連続的となり、切削時の切削抵抗の急激な変動を少なくすることができる。
これによって削加工中にエンドミル20または被削材51にびびりが発生することを防ぐことができる。また、びびりによって生じる被削材51の被削面55の段差を小さくすることができ、被削材51の加工面の品質を向上することができる。また切削抵抗の急激な変動をなくすことで、切削作業における初期段階と初期段階以外とで安定した切削を行うことができ、エンドミル20による加工精度を向上することができるとともに、チップ23およびホルダ22の欠損を防いで寿命を延ばすことができる。
また本実施形態では、第1逃げ面17の算術平均粗さが、0.2μm以下に研磨される。たとえば第1逃げ面17の算術平均粗さが、0.2μmを超えると、被削面55の表面粗さが粗くなってしまうとともに、切削作業における初期段階で刃先部分の摩耗が生じやすい。また逃げ面17が急激に摩耗してしまい、切削作業における初期段階での切削抵抗が大きくなる。これに対して本実施形態では、第1逃げ面17の算術平均粗さが、0.2μm以下であるので、被削材51の被削面55が、第1逃げ面17に接触したとしても、被削面55の表面粗さが粗くなることを防ぐことができる。また各逃げ面17,19および各すくい面16,18を研磨することで、刃先部分をシャープに形成することができ、初期段階に刃先部分が急激に摩耗することを防いで、切削抵抗の急激な変化をより確実に抑えることができる。
また第1逃げ面17の研磨筋34と、ホルダ軸線L1に垂直な仮想平面L6とが成す角度が±10度の許容角度範囲にある。研磨筋34がホルダ軸線L1に垂直な仮想平面L6に対して+20度を超えるか−20度未満となる場合、切削抵抗の変動によるびびりが発生する。これに対して本実施形態では、第1逃げ面17の研磨筋34が仮想平面L6に対して±10度の許容角度範囲内となることで、切削抵抗の変動によるびびりを抑えることができる。これによって許容角度範囲内では、同一種類のチップ23を、ホルダ直径Dおよび着座面41の傾斜角度α2が異なって、チップ23の底面88の装着姿勢が異なる複数のホルダ22に装着することができ、切削抵抗の変動によるびびりを抑えつつ、チップ23の汎用性を向上することができる。またチップ23の種類を減らすことができ、チップ23の管理を容易にするとともに、チップ23の生産コストを低減することができる。
またチップ23が単一種類のホルダ22に装着される場合、第1逃げ面17の研磨筋34と、ホルダ軸線L1に垂直な仮想平面L6との成す角度が±0.25度の許容角度範囲にあることで、チップ23の底面88の傾斜がホルダ軸線L1に対して寸法誤差を有する場合でも、ホルダ22に装着されたチップ23の第1逃げ面17の研磨筋34が、ホルダ軸線L1に垂直な仮想平面L6に対して大きくずれることを防ぐことができ、切削作業における初期段階での切削抵抗の増加をより確実に防ぐことができる。
また本実施形態では、副逃げ面となる第2逃げ面19に形成される研磨筋が、ホルダ22の軸線まわりに略周方向Rに延びる。この場合、微視的に見た場合に、第2逃げ面に関して、切削方向に切断した場合、第2逃げ面19の研磨筋による凹凸を少なくすることができる。したがって切削作業における初期段階で副切刃31の刃先部分に摩耗が生じて、チップ23の第2逃げ面19と、被削材51の底面53とが衝突する場合に、切削抵抗をさらに小さくすることができる。これによって切削時の切削抵抗の急激な変動をさらに少なくすることができ、切削加工中にびびりが発生することをさらに防ぐことができる。
図9は、チップ23を形成するために用いられる治具222を示す斜視図である。また図10は、チップ研磨装置400の構成を示すブロック図である。本実施形態では、治具222に装着したチップ基体223を研磨加工して、第1逃げ面17を有するチップ23を形成する。チップ基体223は、チップを形成するための基材となる。
治具222は、円柱状に形成される。治具222は、チップ23が装着されるべきホルダ22の直径と略同一の直径を有するとともに、チップ23がホルダ33に装着されたときにホルダの軸線L1に対するチップ23の姿勢と、チップ23が治具222に装着されたときに治具222の軸線L222に対するチップ23の姿勢とが略同一に構成される。治具222は、チップ23が装着されるホルダ22自体を用いても実現可能である。
本実施形態では、チップ23が装着されるホルダ22のチップ装着可能枚数よりも多い数のチップ基体223を装着可能に構成される。具体的には、ホルダ22が3つのチップ23を装着可能である場合、治具222は、5つのチップ基体223を装着可能に構成される。治具222に装着されるチップ基体223は、チップ23とほぼ同じ形状に形成され、チップ23に比べて、研磨しろ分、若干大きく形成される。この他の構成については、チップ基体223とチップ23との形状は、実質的に同一となる。
チップ基体223とチップ23とで対応する構成については、チップ23の構成に200を加算した参照符号を用いて、同一の名称で称する。また治具222とホルダ22とで対応する構成については、ホルダ22の構成に200を加算した参照符号を用いて、同一の名称で称する。
治具222は、ねじ部材286によってチップ基体223を固定する装着部224を有する。治具222の装着部224は、チップ基体223の大部分を収容し、一部を、外周面232から半径方向外方Y2に突出させるとともに軸線方向一方側端面233から軸線方向一方X1に突出させた状態で装着する。治具222に装着されたチップ基体223は、2つのうち一方の第1切刃230が、外周面232から半径方向外方に突出して、軸線方向Xに延びる。また2つのうち一方の第2切刃231が、軸線方向一方側端面233から軸線方向一方X1に突出して、半径方向Yに延びる。
治具222は、チップ基体223の底面288が当接する着座面241を有し、着座面241は、平坦な平面上に延びる。着座面241は、治具222の軸線方向他方X2に進むにつれて治具222の周方向他方R2に進む方向に傾斜して延びる。本実施形態では、治具222に形成される装着部224が治具周方向Rに並ぶ数が、ホルダ22に形成される装着部24がホルダ周方向Rに並ぶ数よりも多く形成される。したがって治具222の先端部の肉厚が、ホルダ22の先端部の肉厚に比べて薄く形成される。この他の構成については、治具222とホルダ22との形状は、実質的に同一となる。
治具222とホルダ22とが同一材料によって形成されたとしても、研磨時に治具222に与えられる負荷は、切削時にホルダ22に与えられる負荷に比べて、充分に小さい。したがって治具222は、ホルダ22がチップ23を装着可能な数に比べて、装着可能なチップ基体223の数を増やすことができる。
研磨時の切削抵抗が生じても、研磨時において、第1逃げ面217の形成に悪影響が生じない程度の変形量以内となる形状でかつ、可及的にチップ基体223の装着枚数が多くなるように、治具222の形状が決定される。
また本実施形態では、治具222の先端部のみにチップ基体223を装着したが、第2逃げ面219の研磨を行わない場合には、治具222の軸線方向Xに装着部224を複数並べてもよい。これによって治具222に装着可能なチップ基体223の数をさらに増やすことができ、作業効率をさらに向上させることができる。
本実施形態では、チップ23の形成方法は、治具222と、チップ基体223とを準備する準備工程と、チップ基体223を研磨してチップ23を形成する研磨工程とを有する。研磨工程では、治具222に複数のチップ基体223を装着して、治具222をその軸線L222まわりに回転させて、砥石401に接触させることで、各チップ基体223の第1逃げ面217を研磨加工して、チップ23の第1逃げ面17を形成する。本実施形態では、研磨工程では、チップ研磨装置400を用いて、チップ基体223の研磨を行う。
チップ研磨装置400は、治具駆動手段402と、砥石駆動手段403とを含んで構成される。治具駆動手段402は、治具222を着脱自在に保持して、保持した治具222を軸線L222まわりに回転駆動する。また砥石駆動手段403は、砥石401を装着自在に保持して、保持した砥石401を治具222に対して相対移動する。本実施形態では、砥石401は、高さ寸法が短い略円錐台形状に形成される。砥石駆動手段403は、砥石401の軸線L401まわりに砥石401を回転駆動可能であるとともに、治具222の軸線L222と、砥石401の軸線L401とを平行に保ちつつ、砥石401を治具222に対して近接および離反する方向に移動駆動可能に構成される。砥石401の底面と側面とによって形成されるコーナ部404が、チップ基体223の基体逃げ面を研磨する。
研磨装置400は、チップ基体223が装着される治具222をその軸線L222まわりに回転させた状態で、砥石401をその軸線L401まわりに回転させる。次に、治具半径方向外方に離間した位置から砥石401を治具222に近接させて、砥石401のコーナ部404を、回転するチップ基体223の第1逃げ面217に接触させて、第1逃げ面217を研磨する。研磨状態を維持しつつ、砥石401および治具222のいずれか一方を、その軸線に平行に移動させることで、回転軌跡が円筒状となる研磨された第1逃げ面17を有するチップ23を形成することができる。
研磨装置400によって研磨されたチップ23は、第1逃げ面17が研磨面として形成され、第1逃げ面17に形成される研磨筋34が、チップ厚み方向一方A1に向かうにつれて、第1切刃の一方の端部から他方の端部に向かう方向に延びる。言い換えると、研磨筋34は、チップ厚み方向一方A1に向かうにつれて、コーナ切刃32に向かって傾斜する。さらに具体的には、チップ23がホルダ22に装着された状態で、第1逃げ面17に形成される研磨筋34が、ホルダ22の軸線L1に垂直な仮想平面に対して、略平行に延びて形成される。
同様に他の研磨装置によって、治具222に保持された状態で、治具222の軸線L222まわりに回転するチップ基体223の第2逃げ面219に、砥石を接触させることで、チップ基体223の第2逃げ面219を研磨する。これによって研磨された第2逃げ面19を有するチップ23を形成することができる。他の研磨装置によって研磨されるチップ23の第2逃げ面19に形成される研磨筋は、チップ23の底面88に対して略垂直に延びる。具体的には、チップ23がホルダ22に装着された状態で、第2逃げ面19に形成される研磨筋が、ホルダ22の軸線L1まわりに略周方向に延びる。
また可撓性を有する布状の研磨布を、チップ基体の各すくい面16,18に摺接させることによって、すくい面が研磨加工されたチップ23を形成することができる。すくい面16の研磨については、従来から用いられている周知の装置を適用することができる。
図11は、チップ基体223の研磨量を示す断面図である。チップ基体223は、略板状に形成され、厚み方向一方A1の面に形成される基体すくい面216と、幅方向Cの面に形成される基体逃げ面217とを具備する。基体逃げ面217は、基体すくい面216に隣接して、基体すくい面216に対して傾斜する。基体逃げ面217は、チップ23の第1逃げ面17とほぼ平行に延びる。また基体すくい面216は、チップ23の第1すくい面16とほぼ平行に延びる。
チップ基体223は、チップ23の形状とほぼ同じ形状で、チップ23の第1すくい面16および第1逃げ面17に削り代を追加した形状であって、焼結成形されることによって形成される。これによってチップ基体223は、チップ23の第1切刃30に対応する第1切刃230がすでに3次元形状に形成された状態で形成される。
このようなチップ基体223の第1逃げ面217を、図10に示す逃げ面研磨用研磨装置によって、チップ幅方向Cに研磨する。また、すくい面研磨用研磨装置によって、チップ厚み方向Aに研磨する。図11には、2点鎖線で、チップ基体223が研磨されて形成されるチップ23の外形を示す。
本実施形態では、予め焼結成形によってチップ基体223の形状が、チップ23の形状とほぼ同様の形状に形成されるので、研磨装置400によって研磨する研磨量は、非常に少ない。したがってNC研削装置を用いて、ブロック状のチップ基体223からチップ23を削り出す場合に比べて、チップ23を短時間で形成することができる。
またこのように治具222に装着して、治具222を軸線L222まわりに回転させながら、チップ基体223を研磨することによって、エンドミル20の主切刃30の回転軌跡がホルダ軸腺L1と同軸の円柱状となるような複雑な3次元形状の第1切刃30を、チップ23に簡単に形成することができる。
以上のような本実施形態は、本発明の例示であり、発明の範囲内において構成を変更することができる。たとえば本実施形態では、チップ23の第1切刃30は、チップ捻れ角α1を有するとしたが、チップ捻れ角α1を有しなくてもよい。言い換えると、第1切刃30は、底面88と平行に延びていてもよい。このような場合でも、エンドミル20として、装着された場合に、チップ23の底面88が、ホルダ22の軸線L1に対して傾斜して配置される場合に、適用可能である。したがってチップ23の形状には限定されず、ホルダ22に第1逃げ面17の研磨筋34の延びる方向が、ホルダ22の軸線L1に垂直な仮想平面L6に略平行であればよい。
また本実施形態では、第1逃げ面17および第2逃げ面19がともに、研磨されるとしたが、第1逃げ面17の研磨筋34の延びる方向が規定されていれば、主たる効果を達成することができる。したがって第2逃げ面19の研磨筋34は、任意の方向に延びてもよい。同様に各すくい面16,18についても、研磨されていなくてもよく、また研磨される場合についても研磨筋が延びる方向について限定されない。また図10に示す研磨装置400を用いる場合、専用の治具222を用いなくても、チップ23が装着されるホルダを治具222として用いてもよい。これによって第1切刃30の回転軌跡を、精度よく円柱状にすることができる。
また本実施形態では、図10に示すような研磨装置400を用いたが、チップの形状が単純である場合など、他の研磨装置を用いて、チップ基体223の第1逃げ面217を研磨してもよい。たとえば数値制御(Numerical Control、略称NC)研削盤を用いて、チップ基体223の底面288に対して、第1逃げ面17の研磨筋34が予め定める設定角度βとなるように、チップ基体223を研磨してもよい。
また本実施形態では、第1切刃30が曲線状に延びる場合について説明したが、第1切刃30が直線状に延びる場合であっても適用可能である。言い換えると、第1切刃30の回転軌跡が、円柱状とならない場合であっても、本発明を適用可能である。この場合、NC研削盤を用いて、第1逃げ面17の研磨筋34を容易に形成することができる。
またチップ23は、すくい面と逃げ面と第1切刃とが形成されるチップであり、回転するホルダに装着されるものであれば、その詳細な形状は、本実施形態に限定されない。この場合、チップ23の厚み方向A、長手方向Bおよび幅方向Cは、それぞれ第1方向A、第2方向Bおよび第3方向Cとして置き換えてもよく、チップ23の形状にかかわらずに設定可能である。たとえばチップ23の平面視が略平行四辺形形状でなくてもよく、3角形形状であってもよい。またチップ基体223についても同様である。チップ基体223は、焼結成形されたあとで、NC研削盤などを用いて、荒削りされたものであってもよい。
また本実施形態では、チップ23がホルダ22に装着される回転工具として、エンドミル20を用いたが、エンドミル以外の回転工具であってもよい。したがって第2切刃31が形成されない回転工具であっても、適用可能である。また回転工具とともに、ホルダ22に装着されるチップ単体も、本発明に含まれる。また本発明は、被削材として非鉄系材料、たとえばアルミ合金について好適に用いられるが、被削材が鉄系材料であってもよい。
14 第1切刃
15 第2切刃
16 第1すくい面
17 第1逃げ面
18 第2すくい面
19 第2逃げ面
20 エンドミル
22 ホルダ
23 チップ
87 上面
88 底面
89 側面
222 治具
223 チップ基体
15 第2切刃
16 第1すくい面
17 第1逃げ面
18 第2すくい面
19 第2逃げ面
20 エンドミル
22 ホルダ
23 チップ
87 上面
88 底面
89 側面
222 治具
223 チップ基体
Claims (8)
- 略板状に形成され、厚み方向一方の面に形成されるすくい面と、すくい面に隣接してすくい面に対して傾斜する逃げ面と、前記すくい面と前記逃げ面との交差稜線部に形成される切刃と、厚み方向他方に形成される底面とを具備するスローアウェイチップと、
略円柱状に形成されて、基端部が切削装置に保持され、先端部の外周部分に、前記スローアウェイチップが着脱可能に装着されるホルダとを有する回転工具であって、
前記スローアウェイチップの逃げ面は、研磨加工して形成される研磨面として形成され、スローアウェイチップが前記ホルダに装着された状態では、スローアウェイチップの底面が、正のアキシャルレーキをもって傾斜するとともに、前記逃げ面に形成される研磨筋が、ホルダの軸線に垂直な仮想平面に対して、略平行に延びることを特徴とする回転工具。 - 前記逃げ面の算術平均粗さ(Ra)は、0.2μm以下に形成されることを特徴とする請求項1記載の回転工具。
- スローアウェイチップは、ホルダに装着された状態で、厚み方向一方の面でかつホルダの先端部寄りに形成される副すくい面と、副すくい面に隣接して副すくい面に対して傾斜する副逃げ面と、前記副すくい面と前記副逃げ面との交差稜線部に形成される副切刃とをさらに具備し、
前記スローアウェイチップの副逃げ面は、研磨加工して形成される研磨面として形成され、スローアウェイチップが前記ホルダに装着された状態では、前記副逃げ面に形成される研磨筋が、チップの底面に対して略垂直に延びることを特徴とする請求項1または2記載の回転工具。 - 請求項1〜3のいずれか1つに記載の回転工具の一部を構成するスローアウェイチップ。
- 略板状に形成され、厚み方向一方の面に形成されるすくい面と、すくい面に隣接してすくい面に対して傾斜する逃げ面と、前記すくい面と前記逃げ面との交差稜線部に形成される切刃と、厚み方向他方に形成される底面とを具備してホルダに装着されることで回転工具の一部を構成するスローアウェイチップであって、
前記逃げ面は、研磨加工して形成される研磨面として形成され、前記逃げ面に形成される研磨筋は、厚み方向他方に向かうにつれて切刃の一方の端部から他方の端部に向かう方向に傾斜して延びることを特徴とするスローアウェイチップ。 - 厚み方向一方の面でかつ長手方向一方寄りに形成される副すくい面と、副すくい面に隣接して、副すくい面に対して傾斜する副逃げ面と、前記副すくい面と前記副逃げ面との交差稜線部に形成される副切刃とをさらに具備し、
前記副逃げ面は、研磨加工して形成される研磨面として形成され、前記副逃げ面に形成される研磨筋は、底面に対して略垂直に延びることを特徴とする請求項5記載のスローアウェイチップ。 - ホルダに装着されることで回転工具の一部を構成するスローアウェイチップの形成方法方法であって、
略板状に形成され、厚み方向一方の面に形成される基体すくい面と、基体すくい面に隣接して基体すくい面に対して傾斜する基体逃げ面とを具備する基体を準備するとともに、基体を装着可能な円柱状の治具を準備する準備工程と、
治具の外周部に基体を装着して、軸線まわりに治具を回転させながら、治具半径方向外方に離間した位置から砥石を治具に近接させて、砥石によって前記基体逃げ面を研磨して、厚み方向一方の面に形成されるすくい面と、すくい面に隣接してすくい面に対して傾斜する逃げ面と、前記すくい面と前記逃げ面との交差稜線部に形成される切刃とを具備するスローアウェイチップを形成する研磨工程とを有し、
前記治具は、ホルダの直径と略同一の直径を有するとともに、スローアウェイチップがホルダに装着されたときにホルダの軸線に対するスローアウェイチップの姿勢と、スローアウェイチップが治具に装着されたときに治具の軸線に対するスローアウェイチップの姿勢とが略同一に構成されることを特徴とするスローアウェイチップの形成方法。 - 治具は、前記ホルダのチップ装着可能枚数よりも多い数のスローアウェイチップを装着可能に構成されることを特徴とする請求項7記載のスローアウェイチップの形成方法。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2006096162A JP2007268641A (ja) | 2006-03-30 | 2006-03-30 | 回転工具、スローアウェイチップおよびスローアウェイチップの形成方法 |
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JP2006096162A JP2007268641A (ja) | 2006-03-30 | 2006-03-30 | 回転工具、スローアウェイチップおよびスローアウェイチップの形成方法 |
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JP2007268641A true JP2007268641A (ja) | 2007-10-18 |
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ID=38671969
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JP2006096162A Pending JP2007268641A (ja) | 2006-03-30 | 2006-03-30 | 回転工具、スローアウェイチップおよびスローアウェイチップの形成方法 |
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JP (1) | JP2007268641A (ja) |
Cited By (1)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
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WO2020196526A1 (ja) | 2019-03-27 | 2020-10-01 | 住友電工ハードメタル株式会社 | 切削インサート |
-
2006
- 2006-03-30 JP JP2006096162A patent/JP2007268641A/ja active Pending
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WO2020196526A1 (ja) | 2019-03-27 | 2020-10-01 | 住友電工ハードメタル株式会社 | 切削インサート |
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