JP2007267660A - 抗癌剤のスクリーニング方法 - Google Patents

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健之 杉浦
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Abstract

【課題】癌を診断する新しい手段ならびに癌細胞の増殖を阻害する新しい手段を提供する。
【解決手段】 TRIM31が癌を診断するマーカーとして有用であることを見出した。TRIM31の発現及び/又は機能を阻害することにより癌細胞の増殖を阻害することができると考えられる。以上の知見に基づき、本願は、TRIM31の発現及び/又は機能を阻害することによる癌細胞の癌細胞の増殖を阻害する方法、ならびにTRIM31の発現及び/又は機能の阻害を指標とする、癌細胞の増殖を阻害する活性を有する化合物のスクリーニング方法を提供するものである。

【選択図】 なし

Description

本発明は、TRIM31を阻害することを特徴とする癌細胞の増殖を阻害する方法に関する。また、ある細胞が癌細胞であるかどうか判定するためのマーカーとしてのTRIM31の利用に関する。さらに、TRIM31を阻害する化合物を選抜することを特徴とする、癌細胞の増殖を阻害する活性を有する化合物の同定方法に関する。さらにまた、TRIM31のE3ユビキチンリガーゼとしての使用に関する。
ユビキチンープロテアソームは、蛋白質の分解を制御するシステムであり、成体内における蛋白質の安定化に重要な役割を果たしていることが明らかとなってきている。ユビキチン活性化酵素(E1)、ユビキチン結合酵素(E2)、及びユビキチン連結酵素(E3リガーゼ)は、共同して標的蛋白質のユビキチン化を触媒する。ユビキチン化された標的蛋白質は、プロテアソームにて分解を受ける。特にE3リガーゼは、基質蛋白質へのユビキチンの付加反応において、蛋白の認識とポリユビキチン鎖付加に関与する重要な酵素であることが知られている。したがって、E3リガーゼは蛋白質の分解制御を通じて様々な細胞機能の調節に関わっていると考えられている。
E3リガーゼには様々なファミリーがあることが知られている。RING(really interesting gene)フィンガー領域はE3リガーゼのモチーフの一例である。RINGフィンガー領域を有する蛋白質群の中でも、RING−B Box−Coiled−Coilの3重構造を有する、Tripartite Motif(TRIM)ファミリー(RBCCファミリーとも呼称される)は、重要なE3リガーゼファミリーであると提唱されている(非特許文献1)。
TRIMファミリーの一員であるTRIM31については、クロモソーム6p21−23に位置し、自己相互作用することが知られている(非特許文献2)。しかしながら、TRIM31がE3リガーゼとして機能するとの報告はない。
G. Meroni and G. Diez-Roux. BioEssays 27(11):1147-1157 (2005) A. Reymond et al. The EMBO Journal 20(9):2140-2151 (2001)
本発明の目的は、癌細胞の増殖を阻害する新たな手段を提供することにある。また、癌細胞を同定する新たな手段を提供することにある。さらに、癌細胞が増殖することに基づき発症する疾病・疾患を治療しうる医薬品をスクリーニングする方法を提供し、それらの疾病・疾患を治療する手段を提供することにある。
本発明の発明者は、胃癌患者の癌組織では、正常の胃組織と比較してTRIM31遺伝子の発現が亢進していることを見出した。さらに、TRIM31が細胞内でミトコンドリアに局在すること、並びに、ユビキチン結合酵素(E2)としてUbcH5B及び/又はUbcH5Cを用いた場合にTRIM31がE3リガーゼとして機能し、自己ユビキチン化活性を示すことを見出した。これらの知見に基づき、TRIM31の発現及び/又は機能を阻害する活性を有する化合物が、癌を予防・治療する化合物として有用であることを見出し、本発明を完成した。
すなわち、本発明は、癌細胞の増殖を阻害する方法であって、TRIM31の発現及び/又は機能を阻害する工程を含む方法を提供するものである。
また本発明は、被検組織が癌であるか否かを判定する方法であって、以下の(1)及び(2)の工程を含む方法;
(1)被検組織と健常組織、それぞれにおけるTRIM31の発現を測定する工程、及び(2)被検組織におけるTRIM31の発現と健常組織におけるTRIM31の発現を比較し、TRIM31の発現量が健常組織より高かった被検組織を癌であると判定する工程、を提供するものである。
また本発明は、本発明の方法で用いるキットであって、配列番号5に記載の塩基配列からなるポリヌクレオチド、配列番号6に記載の塩基配列からなるポリヌクレオチド、配列番号7に記載の塩基配列からなるポリヌクレオチド、配列番号8に記載の塩基配列からなるポリヌクレオチド及び抗TRIM31抗体からなる群から選ばれる少なくとも一つを含むキットを提供するものである。
さらに本発明は、TRIM31の発現及び/又は機能を阻害する化合物を含有する抗腫瘍剤を提供するものである。
さらにまた、本発明は、癌細胞の増殖を阻害する化合物の同定方法であって、TRIM31の発現及び/又は機能を阻害する化合物を選択する工程を含む方法を提供するものである。
本発明はまた、配列番号1又は配列番号2に記載のアミノ酸配列からなるユビキチンE3リガーゼを提供するものである。
本発明により、早期の段階で癌の診断が可能となるので、治療効果、医療費を含め、癌医療に多大なる貢献をし得ることが期待できる。さらにまた、癌細胞の増殖を阻害し、癌の進行の遅延あるいは治療に使用できる、新しいメカニズムの化合物を見出し、提供することができるようになる。
以下、本発明について発明の実施の態様をさらに詳しく説明する。
本明細書においては単離された若しくは合成の完全長蛋白質;単離された若しくは合成の完全長ポリペプチド;又は単離された若しくは合成の完全長オリゴペプチドを意味する総称的用語として「蛋白質」という用語を使用することがある。ここで蛋白質、ポリペプチド若しくはオリゴペプチドはペプチド結合又は修飾されたペプチド結合により互いに結合している2個以上のアミノ酸を含むものである。以降、アミノ酸を表記する場合、1文字又は3文字にて表記することがある。
(TRIM31)
「TRIM31」としては、例えば、GenBankデータベースにアクセッションナンバーNM_007028として登録されている遺伝子によりコードされる蛋白質を例示することができる。さらにまた、そのスプライシングバリアントとして、GenBankにアクセッションナンバーNM_052816として登録されている遺伝子によりコードされる蛋白質も本願におけるTRIM31の一例である。NM_007028の核酸配列を配列表の配列番号1に、それによりコードされる蛋白質を配列番号2に記載する。またNM_052816の核酸配列を配列番号3に、それによりコードされる蛋白質を配列番号4に記載する。
TRIM31は、配列番号2又は配列番号4に記載のアミノ酸配列で表される蛋白質に制限されず、該蛋白質と配列相同性を有し、かつ該蛋白質と同様の構造的特徴及び生物学的機能を有する蛋白質である限りにおいていずれの蛋白質も包含される。
配列番号2又は配列番号4に記載のアミノ酸配列で表される蛋白質と配列相同性を有する蛋白質には、該アミノ酸配列において、1個以上、例えば1〜100個、好ましくは1〜30個、より好ましくは1〜20個、さらに好ましくは1〜10個、特に好ましくは1〜数個のアミノ酸の欠失、置換、付加又は挿入といった変異が存するアミノ酸配列で表される蛋白質が含まれる。変異の程度及びそれらの位置等は、該変異を有する蛋白質が、配列番号2又は4に記載のアミノ酸配列で表される蛋白質と同様の構造的特徴及び生物学的機能を有するものである限り特に制限されない。変異を有する蛋白質は天然に存在するものであってよく、また人工的に変異を導入したものであってもよい。
なお、これらTRIM31をコードする遺伝子とは、上記TRIM31をコードする遺伝子をすべて包含するものとして理解されるべきものであり、例えば配列番号1や配列番号3に記載の核酸配列を有するポリヌクレオチドを例示することができるが、該ポリヌクレオチドによりコードされる蛋白質と相同性を有し、同様の構造的特徴や生物学的機能を有する蛋白質をコードするポリヌクレオチドである限りにおいていずれのポリヌクレオチドも包含される。変異を有するポリヌクレオチドは天然に存在するものであってよく、また人工的に変異を導入したものであってもよい。
配列番号2又は4に記載のアミノ酸配列で表される蛋白質をコードするポリヌクレオチドと配列相同性を有するポリヌクレオチドには、該ポリヌクレオチドの塩基配列において、1個以上、例えば1〜300個、好ましくは1〜90個、より好ましくは1〜60個、さらに好ましくは1〜30個、特に好ましくは1〜数個のヌクレオチドの欠失、置換、付加又は挿入といった変異が存する塩基配列で表されるポリヌクレオチドが含まれる。
配列相同性は、通常、塩基配列の全体で50%以上、好ましくは少なくとも70%であることが適当である。より好ましくは70%以上、さらに好ましくは80%以上、さらにより好ましくは90%以上、またさらにより好ましくは95%以上であることが適当である。
TRIM31をコードする遺伝子は、ヒト由来の蛋白質又は核酸であることが好ましいが、該ヒト由来の蛋白質と同質の機能を有し、かつ構造的相同性を有する哺乳動物由来の蛋白質、例えばマウス、ウマ、ヒツジ、ウシ、イヌ、サル、ネコ、ラット又はウサギ等に由来する蛋白質又は核酸であることができる。
(TRIM31の発現及び/又は機能の阻害)
TRIM31の発現及び/又は機能の阻害は、既知のTRIM31遺伝子の核酸配列やアミノ酸配列の情報をもとに適宜実施することができる。さらにまた、後述する実施例5に記載するように、本発明者はTRIM31には自己ユビキチン化活性があることを明らかとした。したがって、それらTRIM31遺伝子に関する情報や機能に関する情報に基づいて容易にTRIM31の発現及び/又は機能を阻害する化合物のスクリーニングを実施することが出来る。このようにして選抜された化合物を癌細胞に有効用量供することにより、本発明の癌細胞の増殖を阻害する方法を実施することができる。TRIM31の発現及び/又は機能を阻害する、具体的な手段の一例について以下に記す。
「TRIM31の発現」とは、TRIM31をコードするDNAの遺伝子情報がmRNAに転写されることを意味する、さらに、転写されたmRNAが当該mRNAに対応するアミノ酸配列を持つTRIM31蛋白質として翻訳されることをも意味する。
「TRIM31の発現の阻害」は、TRIM31の発現を阻害する化合物を用いて実施できる。このような化合物として、好ましくはTRIM31の発現を特異的に阻害する化合物、より好ましくはTRIM31の発現を特異的に阻害する低分子量化合物を挙げることができる。TRIM31の発現を特異的に阻害するとは、当該発現を強く阻害するが、他の蛋白質の発現は阻害しないか、弱く阻害することを意味する。低分子量化合物とは、ペプチド、ペプチド様物質、ポリペプチド、ポリヌクレオチド、有機化合物、及び無機化合物が含まれ、その分子量が好ましくは10000以下、より好ましくは5000以下、さらに好ましくは1000以下、さらにより好ましくは500以下の化合物を意味する。TRIM31を発現している細胞において、TRIM31mRNAをノーザンブロッティングやRT−PCR等汎用の技術を用いて定量することにより、あるいはTRIM31蛋白質の発現をウェスタンブロッティング等の方法により定量することにより、TRIM31の発現を阻害する化合物を選抜することができる。
TRIM31の発現を阻害する化合物として、TRIM31の発現をRNA干渉の手法により低下又は消失させ得るsiRNA(small interfering RNA)を例示できる(エルバシ(Elbashir S.M.ら、「ネイチャー(Nature)」、2001年、第411巻、p.494−498;及びパディソン(Paddison P.J.)ら、「ジーンズ アンド ディベロプメント(Genes and Development)」、2002年、第16巻、p.948−958)。
TRIM31のsiRNAは、TRIM31mRNAの部分配列からなるRNA(センスRNA)と該RNAの塩基配列に相補的な塩基配列からなるRNA(アンチセンスRNA)とを、TRIM31mRNAの配列に基づいて設計し、自体公知の化学合成法により合成し、得られた両RNAをハイブリダイゼーションさせることにより製造できる。siRNAを構成するセンスRNA及びアンチセンスRNAは、それぞれ数個ないし10数個程度のヌクレオチドからなることが好ましい。また、それぞれ、その3’末端に、オーバーハング配列と呼ばれる1個ないし数個の塩基配列からなるヌクレオチドを結合させることが好ましい。オーバーハング配列は、RNAをヌクレアーゼから保護する作用を有する。オーバーハング配列は、該RNAのRNA干渉効果を阻害しない限りにおいて特に制限されず、好ましくは1個ないし10個、より好ましくは1個ないし4個、さらに好ましくは2個のヌクレオチドからなるものをいずれも用いることができる。
具体的には、デオキシチミジル酸からなる配列(例えばTT)、ウリジル酸からなる配列(例えばUU)、デオキシチミジル酸に続いて任意のヌクレオチドが結合した配列(例えばTN)といった配列を例示できる。合成を安価に行えること及びヌクレアーゼ耐性がより強いことから、より好ましくは、2つのデオキシチミジル酸からなる配列をオーバーハング配列として用いる。オーバーハング配列は、センスRNA及びアンチセンスRNA、それぞれの3’末端のリボース3’水酸基部位にジエステル結合により結合させる。siRNA、TRIM31の発現をRNA干渉の手法により低下又は消失させ得るものであればいずれを用いることもできる。siRNAの設計・構築方法は、当業者によく知られている、いずれの方法を用いることもできる。
蛋白質の発現をRNA干渉の手法により低下又は消失させ得るsiRNAとしてまた、shRNAを例示できる。shRNAは、ヘアピン構造を有する短鎖二重鎖RNAであり、siRNAと同様、RNA干渉により遺伝子の発現を抑制する(パディソン(Paddison P.J.)ら、「ジーンズ アンド ディベロプメント(Genes and Development)」、2002年、第16巻、p.948−958)。shRNAは、センスRNAとアンチセンスRNAとが例えばオリゴヌクレオチド等により連結され、センスRNA由来部分とアンチセンスRNA由来部分が二重鎖を形成するため、ヘアピン様構造を呈する。shRNAは、センスRNAとアンチセンスRNAに加え、これら2つのRNAを連結しかつループ構造を形成するようなオリゴヌクレオチドを含むR
NAを、TRIM31mRNAの塩基配列に基づいて設計して、自体公知の方法により製造することができる。好ましくは、センスRNAの3’末端とループ構造を形成するオリゴヌクレオチドの5’末端とが結合し、さらにループ構造を形成するオリゴヌクレオチドの3’末端とアンチセンスRNAの5’末端とが結合したオリゴヌクレオチドであることが望ましい。ループ構造を形成するオリゴヌクレオチドとは、センスRNAとアンチセンスRNAの間に存在して両RNAを連結でき、それ自体がループ構造を形成するものを意味する。このようなオリゴヌクレオチドの設計は、文献(パディソン(Paddison P.J.)ら、「ジーンズ アンド ディベロプメント(Genes and Development)」、2002年、第16巻、p.948−958)の記載を参考にして実施できる。好ましくは4個ないし23個、より好ましくは4個ないし8個のヌクレオチドからなるものが望ましい。例えば、TTCAAGAGA(Ambion社製又はOligoengine社製)、AACGTT、TTAA、CAAGCTTC等の配列を挙げることができる。ヘアピン構造を有する二重鎖の形成は、センスRNA由来部分とアンチセンスRNA由来部分とを慣用の方法でアニーリングすることにより実施できる。
また、TRIM31の発現を阻害する化合物として、TRIM31遺伝子のアンチセンスオリゴヌクレオチドを例示できる。
TRIM31の発現を阻害する機能を有するsiRNA、shRNA、及びアンチセンスオリゴヌクレオチドの選択は、適当な細胞にTRIM31遺伝子とsiRNA、shRNA、及びアンチセンスオリゴヌクレオチドのいずれか1つとをコトランスフェクション(共遺伝子導入)し、TRIM31の発現をノーザンブロッティング、RT−PCR等の自体公知の方法により検出し、TRIM31の発現が阻害されるか否かを確認することにより実施できる。
内在性TRIM31の発現阻害も、TRIM31の発現を阻害する機能を有するsiRNA、shRNA、及びアンチセンスオリゴヌクレオチドを、適当な遺伝子工学的手法、例えばリポフェクションにより細胞内に導入することにより達成できる。
なお、本明細書では、阻害効果を有する化合物(例えば競合阻害効果を有する低分子化合物等)を阻害剤と称する。
(TRIM31の機能の阻害)
「TRIM31の機能」とは、TRIM31が備えている働きを意味する。TRIM31の機能として、ユビキチン合成酵素(E3リガーゼ)活性を例示できる。
「E3リガーゼ活性」とは、蛋白質のユビキチン化において、標的蛋白質を認識し、ユビキチン活性化酵素(E1)により活性化され、ユビキチン結合酵素(E2)に結合したユビキチンを、標的蛋白質に結合させる作用を意味する。具体的には、例えば、TRIM31が基質となる蛋白質(以下、基質蛋白質と称することがある)と結合し、ユビキチンが基質となる蛋白質に結合する反応を触媒する活性を意味する。「ユビキチン化」とは基質蛋白質にユビキチンが結合することを意味する。
「TRIM31の機能を阻害する」とは、TRIM31が備えている働きを低減させる又は消失させることを意味する。TRIM31の機能を阻害することとして、TRIM31のE3リガーゼ活性を阻害することを例示できる。
TRIM31の機能の阻害は、TRIM31の機能を阻害する化合物を用いて実施できる。このような化合物として、好ましくはTRIM31の機能を特異的に阻害する化合物、より好ましくはTRIM31の機能を特異的に阻害する低分子量化合物を挙げることができる。TRIM31の機能を特異的に阻害するとは、当該機能を強く阻害するが、他の蛋白質の機能は阻害しないか、弱く阻害することを意味する。TRIM31の機能を阻害する化合物としては、例えばTRIM31と基質蛋白質との結合を阻害する化合物やTRIM31のE3リガーゼ活性を阻害する化合物を例示できる。TRIM31のE3リガーゼ活性を阻害する化合物は、例えば後述する実施例5に記載するようなTRIM31の自己ユビキチン化活性を測定する測定系、あるいは一般的に知られているE3リガーゼ活性の測定系を用いて取得できる。
具体的には、TRIM31と基質蛋白質との結合を阻害する化合物として、TRIM31の不活性変異体を例示できる。「TRIM31の不活性変異体」とは、TRIM31の変異体であって、E3リガーゼ活性がTRIM31と比較して減弱した又は消失した不活性変異体を意味する。好ましい不活性型TRIM31として、TRIM31にアミノ酸の欠失、置換、付加又は挿入等の変異が導入されたTRIM31変異体であって、基質と結合はするが、E3リガーゼ活性を示さないTRIM31変異体を例示できる。このような不活性型TRIM31は、野生型のTRIM31と拮抗して基質蛋白質と結合することにより、該蛋白質に対するTRIM31の作用を阻害できる。不活性型TRIM31は、天然に存在するものであってもよく、人工的に変異を導入したものであってもよい。不活性型TRIM31における変異部位として、TRIM31のアミノ酸配列においてE3リガーゼ活性に必要な部位を例示でき、例えば、31番目のシステイン、33番目のヒスチジン等を挙げることができる。不活性型TRIM31は、TRIM31のアミノ酸配列に基づいて所望の蛋白質を設計して公知の方法で製造し、取得した蛋白質の中からTRIM31と他の蛋白質との結合を阻害するものを、後述する化合物の同定方法に記載の方法を用いて選別することによっても取得できる。
TRIM31と基質蛋白質の結合を阻害する化合物としてまた、TRIM31と基質蛋白質とが結合する部位のアミノ酸配列からなるポリペプチドを例示できる。このようなポリペプチドは、蛋白質間の結合を競合的に阻害することができる。このようなポリペプチドは、TRIM31又はTRIM31の基質蛋白質のアミノ酸配列から設計し、自体公知のペプチド合成法により合成したものから、TRIM31と該基質蛋白質との結合を阻害するものを選択することにより取得できる。このように特定されたポリペプチドに、1〜数個のアミノ酸の欠失、置換、付加又は挿入等の変異を導入したものも本発明の範囲に包含される。このような変異を導入したポリペプチドは、TRIM31と該基質蛋白質の結合を阻害するものが好ましい。変異を有するポリペプチドは天然に存在するものであってよく、また人工的に変異を導入したものであってもよい。これらポリペプチドは、後述する一般的な製造方法により取得できる。
TRIM31と基質蛋白質の結合を阻害する化合物としてまた、TRIM31を認識する抗体であって、TRIM31と該基質蛋白質の結合を阻害する抗体及びそのフラグメントを例示できる。かかる抗体は、TRIM31自体、又はこれらの断片、好ましくはTRIM31と該他の蛋白質が結合する部位のアミノ酸配列からなるポリペプチドを抗原として自体公知の抗体作製法により取得できる。
TRIM31と基質蛋白質の結合を阻害する化合物としてさらにまた、TRIM31を特異的に認識するアプタマーであって、TRIM31と基質の結合を阻害するアプタマーを例示できる。アプタマーは、核酸アプタマー又はペプチドアプタマーのいずれであってもよい。かかるアプタマーは、公知の方法(例えば、ハーマン(Hermann T.)ら、「サイエンス(Science)」、2000年、第287巻、第5454号、p.820−825;バーグスタラー(Burgstaller P.)ら、「カレント オピニオン イン ドラッグ ディスカバリー アンド ディベロプメント(Current Opinion in Drug Discovery and Development)」、2002年、第5巻、第5号、p.690−700;及びホップ−セイラー(Hoppe−Seyler F.)ら、2002年、「カレント モレキュラー メディシン(Current Molecular Medicine)」、2004年、第4巻、第5号、p.529−538)に記載された方法)を用いて取得することができる。
これらTRIM31と基質蛋白質との結合を阻害する化合物は、結果として、TRIM31が基質蛋白質にユビキチンを付加するE3リガーゼ活性を低減させる効果を奏する。
TRIM31のE3リガーゼ活性を阻害する化合物は、TRIM31が基質蛋白質と結合し基質蛋白質をユビキチン化する活性を阻害する化合物であり得る。例えば、TRIM31のE3リガーゼ活性を阻害する化合物として、TRIM31に特異的に結合しそのプロテアーゼ活性を阻害する抗体又はそのフラグメントを例示できる。また、TRIM31に特異的に結合しそのE3リガーゼ活性を阻害する活性を有するアプタマーを例示できる。抗体あるいはアプタマーは上述の方法で取得でき、TRIM31のE3リガーゼ活性に対するこれら候補化合物の阻害活性を後述する化合物の同定方法に記載の方法で測定することにより、TRIM31のE3リガーゼ活性を阻害する活性を有する抗体あるいはアプタマーを選出することができる。
(癌細胞)
本発明の対象となる癌細胞について、特に制限はないが、後述する実施例1あるいは実施例2に示したように、TRIM31が消化器系の癌、特に胃癌において高発現していることから、胃癌が本発明の対象となる癌として好適である。あるいは、腺癌に対しても本発明を好ましく適用することができる。
(癌であるか否かを判定する方法)
本発明者は、後述する実施例1及び2で示したように、TRIM31の発現は、健常な胃組織と比較して癌組織において顕著に上昇していることを見出した。したがって、TRIM31は、ある組織(被検組織)が癌であるかどうかを判定するマーカーとして有用である。
より具体的には、(1)被検組織と健常組織それぞれにおけるTRIM31の発現を測定する工程、及び(2)被検組織におけるTRIM31の発現と健常組織におけるTRIM31の発現を比較し、TRIM31の発現量が健常組織より高かった被検組織を癌であると判定する工程を含む判定方法を提供するものである。
健常組織としては、被検組織と同じ組織、あるいは被検組織が由来した組織を選択することが望ましく、同じ被験者の同じ組織における健常部位と思われる部分であることがさらに望ましい。しかしながら、健常組織は必ずしも被検組織と同じ被験者から採取されたものである必要はなく、例えば健康な組織から抽出された入手可能な市販品(cDNAライブラリーや総RNAとして市販されているものを含む。)を用いても構わない。
組織におけるTRIM31の発現は、組織から調製したRNAサンプルにおけるTRIM31mRNAの発現量を、例えばRT−PCRやノーザンブロッティングのような手法により定量することによっても測定出来るし、免疫学的手法を用いて、当該組織におけるTRIM31蛋白質の発現量を定量することよっても測定することができる。
胃癌においては、当該組織はバイオプシー等により採取できる。
採取した組織におけるTRIM31mRNAの発現量は、自体公知のいずれの方法を用いて測定しても良いが、例えばRT−PCRの技術を用いれば簡便に定量することができる。その時、例えば、配列番号5に記載の核酸配列からなるオリゴヌクレオチドと配列番号6に記載の核酸配列からなるオリゴヌクレオチドを組み合わせてプライマーとして用いることも出来るし、配列番号7に記載の核酸配列からなるオリゴヌクレオチドと配列番号8に記載の核酸配列からなるオリゴヌクレオチドを組み合わせてプライマーとして用いることも可能である。
TRIM31の蛋白質としての発現を定量する方法に制限はなく、一般的に知られている方法、いずれを用いることも可能であり、免疫学的手法を用いて測定することもできる。例えば、採取した組織を免疫組織学的に検討する場合、当該組織をパラフィン包埋又は凍結した上、検討用の切片を作成してもよい。あるいは、組織から抽出した蛋白質をウェスタンブロッティングやELISA、RIA等の方法で定量してもよい。用いる方法に制限は無く、免疫学的測定法として一般的に知られているいずれの方法を用いることも可能である。これらの方法において用いるTRIM31を特異的に認識する抗体は、当業者に良く知られている方法を用いて取得することが出来る。あるいは市販の抗体を用いてもよい。
例えば後述する実施例1に示すように、慢性胃炎においてもTRIM31の高い発現が認められた。慢性胃炎は悪化すると癌になることが知られている。さらに、本発明の判定方法を用いれば、極微量の組織によって、その組織が癌であることが判定できる。したがって、本発明の判定方法は、癌の早期発見においても非常に有効な手段である。
また、TRIM31が癌細胞において特異的に発現していたことから、TRIM31は癌免疫療法の標的蛋白質にもなり得ると考えられる。
(試薬キット)
本願はさらに、上記の癌の判定方法で用いる試薬キットを提供する。本キットは、TRIM31の発現を測定するのに必要な試薬を含むキットであり、例えば、配列番号5に記載の塩基配列からなるポリヌクレオチド、配列番号6に記載の塩基配列からなるポリヌクレオチド、配列番号7に記載の塩基配列からなるポリヌクレオチド、配列番号8に記載の塩基配列からなるポリヌクレオチド及び抗TRIM31抗体からなる群から選ばれる少なくとも一つを含むものであることができる。本キットはこの他に所望により、緩衝液やその他の試薬を含めて提供されるものであることもできる。
(抗腫瘍剤)
本発明に係る抗腫瘍剤は、TRIM31の発現及び/又は機能を阻害する化合物を有効成分として抗腫瘍活性を示すのに有効な用量含む。
有効成分であるTRIM31の発現及び/又は機能を阻害する化合物として、具体的には、上述したTRIM31に対するRNA干渉作用を有する短鎖二重鎖RNAを例示できる。
本発明に係る抗腫瘍剤は、医薬であることもできるし、試薬でもあり得る。
医薬である場合、通常、有効成分に加えて1種又は2種以上の医薬用担体を含む医薬組成物として製造することが好ましい。
本発明に係る医薬製剤中に含まれる有効成分の量は、広範囲から適宜選択される。通常、約0.00001〜70重量%、好ましくは0.0001〜5重量%程度の範囲とするのが適当である。
医薬用担体は、製剤の使用形態に応じて一般的に使用される、充填剤、増量剤、結合剤、付湿剤、崩壊剤、滑沢剤、希釈剤及び賦形剤を例示できる。これらは得られる製剤の投与形態に応じて適宜選択して使用される。
より具体的には、水、医薬的に許容される有機溶剤、コラーゲン、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、カルボキシビニルポリマー、アルギン酸ナトリウム、水溶性デキストラン、カルボキシメチルスターチナトリウム、ペクチン、キサンタンガム、アラビアゴム、カゼイン、ゼラチン、寒天、グリセリン、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ワセリン、パラフィン、ステアリルアルコール、ステアリン酸、ヒト血清アルブミン、マンニトール、ソルビトール、ラクトースを例示できる。これらは、本医薬組成物の剤形に応じて適宜1種類又は2種類以上を組合わせて使用される。
所望により、通常の蛋白質製剤に使用され得る各種の成分、例えば安定化剤、殺菌剤、緩衝剤、等張化剤、キレート剤、界面活性剤、及びpH調整剤等を適宜使用することもできる。
安定化剤は、ヒト血清アルブミンや通常のL−アミノ酸、糖類、セルロース誘導体を例示できる。これらは単独で又は界面活性剤等と組合わせて使用できる。特にこの組合わせによれば、有効成分の安定性をより向上させ得る場合がある。L−アミノ酸は、特に限定はなく、例えばグリシン、システイン、グルタミン酸等のいずれでもよい。糖類も特に限定はなく、例えばグルコース、マンノース、ガラクトース、果糖等の単糖類、マンニトール、イノシトール、キシリトール等の糖アルコール、ショ糖、マルトース、乳糖等の二糖類、デキストラン、ヒドロキシプロピルスターチ、コンドロイチン硫酸、ヒアルロン酸等の多糖類等及びそれらの誘導体等のいずれでもよい。セルロース誘導体も特に限定はなく、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシ
プロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム等のいずれでもよい。
界面活性剤も特に限定はなく、イオン性界面活性剤及び非イオン性界面活性剤のいずれも使用できる。界面活性剤には、例えばポリオキシエチレングリコールソルビタンアルキルエステル系、ポリオキシエチレンアルキルエーテル系、ソルビタンモノアシルエステル系、脂肪酸グリセリド系等が包含される。
緩衝剤としては、ホウ酸、リン酸、酢酸、クエン酸、ε−アミノカプロン酸、グルタミン酸及び/又はそれらに対応する塩(例えばそれらのナトリウム塩、カリウム塩、カルシウム塩、マグネシウム塩等のアルカリ金属塩やアルカリ土類金属塩)を例示できる。
等張化剤としては、塩化ナトリウム、塩化カリウム、糖類、グリセリンを例示できる。
キレート剤としては、エデト酸ナトリウム、クエン酸を例示できる。
本発明に係る医薬及び医薬組成物は、溶液製剤として使用できる他に、これを凍結乾燥化し保存し得る状態にした後、用時、水や生理的食塩水等を含む緩衝液等で溶解して適当な濃度に調製した後に使用することもできる。
医薬及び医薬組成物の用量範囲は特に限定されず、含有される成分の有効性、投与形態、投与経路、疾患の種類、対象の性質(体重、年齢、病状及び他の医薬の使用の有無等)、及び担当医師の判断等応じて適宜選択される。一般的には適当な用量は、例えば対象の体重1kgあたり約0.01μg〜100mg程度、好ましくは約0.1μg〜1mg程度の範囲であることが好ましい。しかしながら、当該分野においてよく知られた最適化のための一般的な常套的実験を用いてこれらの用量の変更を行うことができる。上記投与量は1日1回〜数回に分けて投与することができ、数日又は数週間に1回の割合で間欠的に投与してもよい。
本発明の医薬組成物を投与するときは、該医薬組成物を単独で使用してもよく、あるいは目的の疾患の防止及び/又は治療に必要な他の化合物又は医薬と共に使用してもよい。例えば、他の抗腫瘍用医薬や抗炎症用医薬の有効成分等を配合してもよい。
投与経路は、全身投与又は局所投与のいずれも選択することができる。この場合、疾患、症状等に応じた適当な投与経路を選択する。例えば、非経口経路として、通常の静脈内投与、動脈内投与の他、皮下、皮内、筋肉内等への投与を挙げることができる。あるいは経口経路で投与することもできる。さらに、経粘膜投与又は経皮投与も可能である。癌疾患に用いる場合は、腫瘍に注射等により直接投与することも可能である。
投与形態は、各種の形態が目的に応じて選択できる。その代表的なものは、錠剤、丸剤、散剤、粉末剤、細粒剤、顆粒剤、カプセル剤等の固体投与形態や、水溶液製剤、エタノール溶液製剤、懸濁剤、脂肪乳剤、リポソーム製剤、シクロデキストリン等の包接体、シロップ、エリキシル等の液剤投与形態が含まれる。これらはさらに投与経路に応じて経口剤、非経口剤(点滴剤、注射剤)、経鼻剤、吸入剤、経膣剤、坐剤、舌下剤、点眼剤、点耳剤、軟膏剤、クリーム剤、経皮吸収剤、経粘膜吸収剤等に分類され、それぞれ通常の方法に従い、調合、成形、調製することができる。
(同定方法)
本発明の一態様は、癌細胞の増殖を阻害する化合物を同定する方法に関する。
本発明の発明者は、すでに述べたように、TRIM31の発現が癌細胞において極めて高いこと、及びTRIM31がE3リガーゼとして機能することを見出した。これらの知見は、TRIM31の発現及び/又は機能を阻害する化合物、たとえばTRIM31のE3リガーゼ活性を阻害する活性を有する化合物を、抗癌作用を有する化合物として同定できることを明示する。したがって、癌細胞の増殖を阻害する化合物を、TRIM31の発現及び/又は機能を阻害する活性を指標にして同定することができると本発明者は考えている。
本発明に係るこれら化合物の同定方法は、例えば、TRIM31の発現を抑制する化合物を選抜すること、TRIM31と基質蛋白質との結合を阻害する化合物を選抜すること、あるいはTRIM31による基質蛋白質のユビキチン化活性を阻害する化合物を選抜することにより実施することができる。
これら、TRIM31の発現を抑制する化合物の選抜、TRIM31と基質蛋白質との結合を阻害する化合物の選抜、TRIM31による基質蛋白質のユビキチン化を阻害する化合物の選抜等は、上述のとおり、TRIM31の遺伝子や機能・活性が知られていることから、これらの情報に基づいて、一般的な方法を用いて実施することができる。
所望の活性を有する化合物を選抜するための試験系に供する被検化合物としては、例えば化学ライブラリーや天然物由来の化合物、又はTRIM31の一次構造や立体構造に基づいてドラッグデザインして得られた化合物等を挙げることができる。あるいは、TRIM31と基質の結合部位又はTRIM31と基質の結合部位のアミノ酸配列からなるポリペプチドの構造に基づいてドラッグデザインして得られた化合物等も被検化合物として好適である。
例えば、TRIM31の発現を抑制する化合物は、TRIM31の発現を測定できる試験系を用いて選抜することができる。
TRIM31の発現をmRNAの発現として測定できる試験系として、具体的には、TRIM31をコードする遺伝子の上流にあるTRIM31をコードする遺伝子のTRIM31mRNAへの転写を制御する領域(プロモーター領域)を含む発現ベクターをトランスフェクションした細胞を用いる実験系を例示できる。例えば、TRIM31をコードする遺伝子のプロモーター領域の下流に、該遺伝子の代わりにレポーター遺伝子を連結したベクターを作成し、該ベクターを導入した細胞、例えば真核細胞等を用いた実験系を例示できる。このような実験系において、該細胞を被検化合物で処理したときのレポーター遺伝子の発現量を、被検化合物で該細胞を処理しないときのレポーター遺伝子の発現量とを比較する。被検化合物で処理した該細胞のレポーター遺伝子の発現量が、被検化合物で処理しない該細胞のレポーター遺伝子の発現量と比較して低減又は消失する場合、該被検化合物はTRIM31の発現を阻害すると判定できる。レポーター遺伝子としては、レポーターアッセイで一般的に用いられている遺伝子を使用でき、ルシフェラーゼ、β−ガラクトシダーゼ又はクロラムフェニコールアセチルトランスフェラーゼ等の酵素をコードする遺伝子を例示できる。レポーター遺伝子の発現の検出は、その遺伝子産物の活性、例えば、上記例示したレポーター遺伝子の場合は酵素活性を検出することにより実施できる。あるいは、TRIM31遺伝子のプロモーター領域の下流にTRIM31遺伝子を結合したベクターを遺伝子導入した細胞を被検化合物で処理し、細胞を回収し、適当な方法で細胞を溶解して細胞溶解物を調製し、該細胞溶解物中に含まれるTRIM31又はTRIM31mRNAを検出してもよい。細胞を被検化合物で処理したときに検出されるTRIM31の量又はTRIM31mRNAが、細胞を被検化合物で処理しないときに検出されるTRIM31又はTRIM31mRNAの量と比較して低減又は消失する場合には、被検化合物はTRIM31の発現を阻害すると判定できる。TRIM31を元来発現している細胞を用いることももちろん可能である。
TRIM31の発現を蛋白質として検出する場合、自体公知の蛋白質の検出方法、例えばウェスタンブロッティング等の方法により、TRIM31を直接的に検出することにより実施できる。また、発現の指標となるシグナルを実験系に導入して該シグナルを検出することにより、TRIM31の測定をより簡便に実施できる。発現の指標となるシグナルとして、例えば、標識物質を例示できる。標識物質でTRIM31を標識し、該標識物質を測定することにより、TRIM31の測定を容易に実施できる。標識物質として、FLAG−tag、Myc−tag及びHA−tag等のタグペプチド類が好ましく例示できる。標識物質の検出は、自体公知の検出方法を用いて実施できる。例えば、タグペプチド類は、抗タグペプチド抗体により検出できる。このとき、抗タグペプチド抗体として、HRPやALP等の酵素、放射性同位元素、蛍光物質又はビオチン等で標識した抗体を用いることにより検出がより容易に実施できる。あるいは、上記酵素、放射性同位元素、蛍光物質、ビオチン等で標識した二次抗体を用いてもよい。
また、TRIM31と基質との結合を阻害する化合物の選抜は、具体的には以下のような方法にて実施することができる。
TRIM31としては、TRIM31をコードする遺伝子を遺伝子工学的手法で発現させた細胞や生体試料から調製したもの、無細胞系合成産物又は化学合成産物であってよく、あるいはこれらからさらに精製されたものであってもよい。また、TRIM31は、TRIM31をコードする遺伝子を含む細胞において発現しているものであり得る。
TRIM31としては、上述のように、その構成アミノ基又はカルボキシル基等を、例えばアミド化修飾する等、機能の著しい変更を伴わない限りにおいて改変したものを用いることができる。また、N末端側やC末端側に別の蛋白質等を、直接的に又はリンカーペプチド等を介して間接的に遺伝子工学的手法等を用いて付加することにより標識化したものであってもよい。好ましくは、本蛋白質の基本的な性質が阻害されないような標識化が望ましい。付加する蛋白質等として、GST、β−ガラクトシダーゼ、HRP又はALP等の酵素類、His−tag、Myc−tag、HA−tag、FLAG−tag又はXpress−tag等のタグペプチド類、フルオレセインイソチオシアネート(fluorescein isothiocyanate)又はフィコエリスリン(phycoerythrin)等の蛍光色素類、マルトース結合蛋白質、免疫グロブリンのFc断片あるいはビオチンを例示できるが、これらに限定されない。また、放射性同位元素により標識することもできる。標識化に用いる物質は、1つ又は2つ以上を組合せて付加できる。これら標識化に用いた物質自体、又はその機能を測定することにより、本蛋白質を容易に検出又は精製でき、また、例えば本蛋白質と他の蛋白質との相互作用を検出できる。
本発明において使用できる、蛋白質、ポリペプチド及びポリペプチドに変異を導入する手段は自体公知であり、例えばウルマーの技術(ウルマー(K.M.Ulmer)、「サイエンス(Science)」、1983年、第219巻、p.666−671)を利用して実施できる。このような変異の導入において、当該の基本的な性質(物性、機能又は免疫学的活性等)を変化させないという観点から、例えば、同族アミノ酸(極性アミノ酸、非極性アミノ酸、疎水性アミノ酸、親水性アミノ酸、陽性荷電アミノ酸、陰性荷電アミノ酸及び芳香族アミノ酸等)の間での相互の置換は容易に想定される。さらに、これら利用できるポリペプチドは、その構成アミノ基又はカルボキシル基等を、例えばアミド化修飾する等、機能の著しい変更を伴わない程度に改変することができる。
これらのTRIM31遺伝子あるいはTRIM31は、汎用の遺伝子工学的手法を用いて取得することができる。遺伝子工学的手法として、公知の方法がいずれも使用できる。公知の方法として、成書に記載の方法(サムブルック(Sambrook)ら編、「モレキュラークローニング,ア ラボラトリーマニュアル 第2版」、1989年、コールドスプリングハーバーラボラトリー;村松正實編、「ラボマニュアル遺伝子工学」、1988年、丸善株式会社;ウルマー(Ulmer,K.M.)、「サイエンス(Science)」、1983年、第219巻、p.666−671;エールリッヒ(Ehrlich,H.A.)編、「PCRテクノロジー,DNA増幅の原理と応用」、1989年、ストックトンプレス等を参照)を例示できる。
これら遺伝子工学的な手法でTRIM31を取得するために用いるTRIM31をコードする遺伝子は、例えば、各遺伝子の発現が認められる適当な起源から、自体公知のクローニング方法等を用いて容易に取得できる。これら遺伝子の起源として、該遺伝子の発現が確認されている各種の細胞や組織、又はこれらに由来する培養細胞を例示できる。
起源からの全RNAの分離、mRNAの分離や精製、cDNAの取得とそのクローニング等はいずれも常法に従って実施できる。また、市販されているcDNAライブラリーをソースとして用いることもできる。所望のクローンをcDNAライブラリーから選択する方法も特に制限されず、慣用の方法を使用できる。例えば、目的のDNA配列に選択的に結合するプローブを用いたプラークハイブリダイゼーション法、コロニーハイブリダイゼーション法等やこれらを組合せた方法を挙げることができる。ここで用いるプローブとして、TRIM31をコードする遺伝子の塩基配列に関する情報に基づいて化学合成されたDNA等が一般的に使用できる。また、該遺伝子の塩基配列情報に基づき設計したセンスプライマー、アンチセンスプライマーをこのようなプローブとして使用できる。cDNAライブラリーからの目的クローンの選択は、例えば公知の蛋白質発現系を利用して各クローンについて発現蛋白質の確認を行い、その生物学的機能を指標にして実施できる。
遺伝子の取得にはその他、PCR(ウルマー(Ulmer,K.M.)、「サイエンス(Science)」、1983年、第219巻、p.666−671;エールリッヒ(Ehrlich,H.A.)編、「PCRテクノロジー,DNA増幅の原理と応用」、1989年、ストックトンプレス;サイキ(Saiki R.K.)ら、「サイエンス(Science)」、1985年、第230巻、p.1350−1354))によるDNA/RNA増幅法が好適に利用できる。cDNAライブラリーから全長のcDNAが得られ難いような場合には、RACE法(「実験医学」、1994年、第12巻、第6号、p.35−)、特に5’−RACE法(フローマン(Frohman M.A.)ら、「プロシーディングス オブ ザ ナショナル アカデミー オブ サイエンシズ オブ ザ ユナイテッド ステーツ オブ アメリカ(Proceedings of The National Academy of Sciences of The United States of America)」、1988年、第85巻、第23号、p.8998−9002)等の採用が好適である。PCRに使用するプライマーは、DNAの塩基配列情報に基づいて適宜設計でき、常法に従って合成により取得できる。増幅させたDNA/RNA断片の単離精製は、常法により実施できる。例えばゲル電気泳動法等によりDNA/RNA断片の単離精製を実施できる。
遺伝子は、その機能、例えばコードする蛋白質の発現や、発現された蛋白質の機能が阻害されない限りにおいて、5’末端側や3’末端側に、例えばGST、β−ガラクトシダーゼ、HRP又はALP等の酵素類、His−tag、Myc−tag、あるいはHA−tag、FLAG−tag又はXpress−tag等のタグペプチド類等の遺伝子が、1つ又は2つ以上付加されたDNAであることができる。これら遺伝子の付加は、慣用の遺伝子工学的手法により実施できる。
ベクターDNAは宿主中で複製可能なものであれば特に限定されず、宿主の種類及び使用目的により適宜選択される。ベクターDNAは、天然に存在するものを抽出したもののほか、複製に必要な部分以外のDNAの部分が一部欠落しているものでもよい。代表的なものとして、プラスミド、バクテリオファージ及びウイルス由来のベクターDNAを例示できる。プラスミドDNAとして、大腸菌由来のプラスミド、枯草菌由来のプラスミド、酵母由来のプラスミドを例示できる。バクテリオファージDNAとして、ラムダファージを例示できる。ウイルス由来のベクターDNAとして、レトロウイルス、ワクシニアウイルス、アデノウイルス、パポバウイルス、SV40、鶏痘ウイルス、及び仮性狂犬病ウイルス等の動物ウイルス由来のベクター、あるいはバキュロウイルス等の昆虫ウイルス由来のベクターを例示できる。その他、トランスポゾン由来、挿入エレメント由来、酵母染色体エレメント由来のベクターDNAを例示できる。あるいは、これらを組合せて作成したベクターDNA、例えばプラスミド及びバクテリオファージの遺伝学的エレメントを組合せて作成したベクターDNA(コスミドやファージミド等)を例示できる。また、目的により発現ベクターやクローニングベクター等、いずれを用いることもできる。
ベクターDNAには、目的遺伝子の機能が発揮されるように遺伝子を組込むことが必要であり、少なくとも目的遺伝子配列とプロモーターとをその構成要素とする。これら要素に加えて、所望によりさらに、複製そして制御に関する情報を担持した遺伝子配列、例えば、リボソーム結合配列、ターミネーター、シグナル配列、エンハンサー等のシスエレメント、スプライシングシグナル、及び選択マーカー等から選択した1つ又は複数の遺伝子配列を自体公知の方法により組合せてベクターDNAに組込むことができる。選択マーカーとして、例えばジヒドロ葉酸還元酵素遺伝子、アンピシリン耐性遺伝子、ネオマイシン耐性遺伝子を例示できる。
ベクターDNAに目的遺伝子配列を組込む方法は、自体公知の方法を適用できる。例えば、目的遺伝子配列を適当な制限酵素により処理して特定部位で切断し、次いで同様に処理したベクターDNAと混合し、リガーゼによって再結合する方法が用いられる。あるいは、目的遺伝子配列に適当なリンカーをライゲーションし、これを目的に適したベクターのマルチクローニングサイトへ挿入することによっても、所望の組換えベクターが得られる。
ベクターDNAの宿主細胞への導入は、自体公知の手段が応用でき、例えば成書に記載されている標準的な方法(サムブルック(Sambrook)ら編、「モレキュラークローニング,ア ラボラトリーマニュアル 第2版」、1989年、コールドスプリングハーバーラボラトリー)により実施できる。より好ましい方法として、遺伝子の安定性を考慮するならば染色体内へのインテグレート法を挙げることができるが、簡便には核外遺伝子を利用した自律複製系を使用できる。具体的な方法として、リン酸カルシウムトランスフェクション、DEAE−デキストラン媒介トランスフェクション、マイクロインジェクション、陽イオン脂質媒介トランスフェクション、エレクトロポレーション、形質導入、スクレープ負荷(scrape loading)、バリスティック導入(ballistic introduction)及び感染を例示できる。
具体的には例えば、TRIM31を含むベクターDNAをトランスフェクションした形質転換体を培養し、次いで得られる培養物から目的とする蛋白質を回収することによりこれら蛋白質を製造できる。形質転換体の培養は、各々の宿主に最適な自体公知の培養条件及び培養方法で実施できる。培養は、形質転換体により発現されるTRIM31自体又はその機能を指標にして実施できる。あるいは、宿主中又は宿主外に産生されたTRIM31自体又はその蛋白質量を指標にして培養してもよく、培地中の形質転換体量を指標にして継代培養又はバッチ培養を行ってもよい。
目的とする蛋白質が形質転換体の細胞内あるいは細胞膜上に発現する場合には、形質転換体を破砕して目的とする蛋白質を抽出する。また、目的とする蛋白質が形質転換体外に分泌される場合には、培養液をそのまま使用するか、遠心分離処理等により形質転換体を除去した培養液を用いる。
形質転換体を作製するための宿主として、原核生物及び真核生物のいずれも使用できる。原核生物として、例えば大腸菌(エシェリヒアコリ(Escherichia coli))等のエシェリヒア属、枯草菌等のバシラス属、シュードモナスプチダ(Pseudomonas putida)等のシュードモナス属、リゾビウムメリロティ(Rhizobium meliloti)等のリゾビウム属に属する細菌を例示できる。真核生物として、サッカロミセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)、シゾサッカロミセスポンベ(Schizosaccharomyces pombe)等の酵母、Sf9やSf21等の昆虫細胞、あるいはサル腎由来細胞(COS細胞、Vero細胞)、チャイニーズハムスター卵巣細胞(CHO細胞)、マウスL細胞、ラットGH3細胞、ヒトHEK293T細胞等の動物細胞を例示できる。好ましくは動物細胞を用いる。
TRIM31は、所望により、その物理的性質、化学的性質等を利用した各種分離操作方法により精製及び/又は分離できる。分離及び/又は精製は、本蛋白質の機能を指標にして実施できる。分離操作方法として、例えば硫酸アンモニウム沈殿、限外ろ過、ゲルクロマトグラフィー、イオン交換クロマトグラフィー、アフィニティークロマトグラフィー、高速液体クロマトグラフィー、透析法等を単独で又は適宜組合せて使用できる。好ましくは、本蛋白質のアミノ酸配列情報に基づき、これらに対する特異的抗体を作成し、該抗体を用いて特異的に吸着する方法、例えば該抗体を結合させたカラムを利用するアフィニティクロマトグラフィーを用いることが推奨される。
蛋白質あるいはペプチドはまた、一般的な化学合成法により製造できる。例えば、成書(「ペプチド合成」、丸善株式会社、1975年及び「ペプチドシンテシス(Peptide Synthesis)」、インターサイエンス(Interscience)、ニューヨーク(New York)、1996年)に記載の方法により、これら蛋白質を製造できるが、これらに限らず公知の方法が広く利用できる。蛋白質の化学合成方法として、固相合成方法や液相合成方法等が知られているがいずれを用いることもできる。このような蛋白質合成法は、より詳しくは、アミノ酸配列情報に基づいて、各アミノ酸を1個ずつ逐次結合させて鎖を延長させていくいわゆるステップワイズエロンゲーション法と、アミノ酸数個からなるフラグメントを予め合成し、次いで各フラグメントをカップリング反応させるフラグメントコンデンセーション法とを包含し、本蛋白質の合成は、そのいずれによっても実施できる。上記蛋白質合成において用いられる縮合法も、常法に従うことができ、アジド法、混合酸無水物法、DCC法、活性エステル法、酸化還元法、DPPA(ジフェニルホスホリルアジド)法、DCC+添加物(1−ヒドロキシベンゾトリアゾール、N−ヒドロキシサクシンアミド、N−ヒドロキシ−5−ノルボルネン−2,3−ジカルボキシイミド等)法、ウッドワード法を例示できる。また、市販のアミノ酸合成装置を用いてペプチドを製造することができる。
「基質」とは、酵素によって触媒作用を受ける化合物又は分子を意味する。本発明における「TRIM31の基質」は、TRIM31によってユビキチン化され、さらにユビキチン化量が定量出来る分子であれば特に制限はない。天然の基質蛋白質を基質として使用することも出来るし、適当な人工基質を用いてもよい。天然の基質蛋白質としては、TRIM31自身を例示することができる。TRIM31は自己結合していることが知られており(非特許文献2)、また、実施例5においても、自己ユビキチン化活性を有することが示されている。
「TRIM31と基質の結合」とは、TRIM31と基質とが、複合体を形成するように、水素結合、疎水結合又は静電的相互作用等の非共有結合により相互作用することを意味する。ここでの結合とは、TRIM31と基質とがその一部分において結合すれば足りる。例えば、TRIM31又は基質を構成するアミノ酸の中に、結合に関与しないアミノ酸が含まれていてもよい。また、本蛋白質と他の蛋白質により形成される複合体には、これら蛋白質とは別種の蛋白質が含まれていてもよい。本蛋白質と他の蛋白質との結合の測定は、ウェスタンブロッティング、免疫沈降法、プルダウン法、ツーハイブリッド法及び蛍光共鳴エネルギー転移法等の自体公知の方法又はこれらの方法を組合わせることにより実施できる。
TRIM31と基質との結合を阻害する化合物の選抜は、具体的には、TRIM31と基質を共存させて、TRIM31と基質とを結合させる試験系を用いて実施できる。このような試験系において、被検化合物とTRIM31を接触させ、TRIM31と基質との結合を検出することができるシグナル及び/又はマーカーを使用する系を用いて、このシグナル及び/又はマーカーの存在若しくは不存在又は変化を検出し、被検化合物がTRIM31と基質との結合を阻害するか否かを決定することにより、結合を阻害する活性を有する化合物を選抜することができる。
被検化合物はTRIM31と基質との結合反応に共存させることもできるし、被検化合物を予めTRIM31と接触させ、その後にTRIM31と基質の結合反応を行うこともできる。TRIM31と基質との結合により生じるシグナル又は結合のマーカーが、被検化合物をTRIM31と接触させたときに、被検化合物を接触させなかったときと比較して低下あるいは消失する等の変化を示す場合、当該被検化合物はTRIM31と基質の結合を阻害する活性を有する化合物として選抜され、その化合物を抗癌作用を有する化合物であると同定できる。
TRIM31と基質の結合の検出は、自体公知の蛋白質の検出方法、例えば免疫沈降法、プルダウン法、ツーハイブリッド法、ウェスタンブロッティング及び蛍光共鳴エネルギー転移法等の方法又はこれらの方法を組合わせて、TRIM31と基質により形成される複合体を検出することにより実施できる。TRIM31と基質により形成される複合体の検出を容易にするために、TRIM31及び/又は基質は、適当な標識物質により標識されたものを用いることが好ましい。標識物質として、FLAG−tag、Myc−tag及びHA−tag等のタグペプチド類が好ましく例示できる。標識物質の検出は、自体公知の検出方法を用いて実施できる。例えば、タグペプチド類は、抗タグペプチド抗体により検出できる。このとき、抗タグペプチド抗体として、HRPやALP等の酵素、放射性同位元素、蛍光物質又はビオチン等で標識した抗体を用いることにより検出がより容易に実施できる。あるいは、上記酵素、放射性同位元素、蛍光物質、ビオチン等で標識した二次抗体を用いてもよい。
例えば、MBPが付加されたTRIM31をコードする遺伝子を含む適当なベクター及びHis−tagが付加されたユビキチンをコードする遺伝子を含む適当なベクターをトランスフェクションした細胞を用いて実施できる。該細胞を、被検化合物で処理した後、細胞を回収し、適当な方法で細胞を溶解して細胞溶解物を調製し、該細胞溶解物中に含まれるTRIM31と基質により形成された複合体を検出する。細胞溶解物中に含まれる該複合体の測定は、一方の蛋白質に付加されたタグペプチドに対する抗体を用いた免疫沈降の後に、もう一方の蛋白質に付加されたタグペプチドに対する抗体を用いてウェスタンブロッティングを行うことにより実施できる。被検化合物で処理したときに検出されるTRIM31と基質により形成された複合体の量が、細胞を被検化合物で処理しないときに検出される複合体の量と比較して低減又は消失する場合には、被検化合物はTRIM31と基質の結合を阻害すると判定できる。
TRIM31と基質の結合を阻害する化合物の同定方法はまた、公知のツーハイブリッド(two−hybrid)法を用いて実施できる。例えば、TRIM31とDNA結合蛋白質を融合蛋白質として発現するプラスミド、基質と転写活性化蛋白質を融合蛋白質として発現するプラスミド、及び適切なプロモーター遺伝子に接続したlacZ等レポーター遺伝子を含有するプラスミドを酵母や真核細胞等の細胞に導入し、該細胞を被検化合物で処理したときのレポーター遺伝子の発現量を、被検化合物で該細胞を処理しないときのレポーター遺伝子の発現量とを比較する。被検化合物で処理した該細胞のレポーター遺伝子の発現量が、被検化合物で処理しない該細胞のレポーター遺伝子の発現量と比較して低減又は消失する場合、該被検化合物はTRIM31と基質の結合を阻害すると判定できる。
これらの同定方法により選抜される化合物は、TRIM31と基質との結合を阻害する化合物である。
TRIM31の機能、特にE3リガーゼ活性を阻害する化合物を選抜する工程は、TRIM31、基質及びその他の反応に必要な因子が共存する、TRIM31による基質にユビキチンが付加される反応を観察できる試験系を用いて実施できる。このような実験系において、被検化合物とTRIM31を接触させ、TRIM31による基質のユビキチン化を検出することができるシグナル及び/又はマーカーを使用する系を用いて、このシグナル及び/又はマーカーの存在若しくは不存在又は変化を検出し、被検化合物がTRIM31による基質のユビキチン化を阻害するか否かを決定することにより、TRIM31による基質のユビキチン化を阻害する化合物を選抜できる。
TRIM31のユビキチン活性の測定を実施する場合、ユビキチン活性を測定する時に用いる一般的な基質として当業者に知られている適当な基質を用いたり、市販のキットを使用したりして付加したユビキチンを定量することに実施することができる。
TRIM31による基質のユビキチン化を阻害する化合物は、TRIM31と基質蛋白質とを共存させて、基質に結合したユビキチン量を定量できるような試験系を用いて選抜することができる。このような試験系において、被検化合物とTRIM31、E2、ユビキチン及び基質とを接触させ、TRIM31による基質のユビキチン化を検出することができるシグナル及び/又はマーカーを使用する系を用いて、このシグナル及び/又はマーカーの存在若しくは不存在又は変化を検出し、被検化合物がTRIM31による基質のユビキチン化を阻害するか否かを決定することにより、TRIM31による基質のユビキチン化を阻害する化合物を同定できる。
被検化合物はTRIM31によるユビキチン化反応に共存させることもできるし、被検化合物を予めTRIM31及び/又は基質と接触させ、その後にTRIM31によるユビキチン化反応を行うこともできる。TRIM31による基質のユビキチン化により生じるシグナル又はユビキチン化のマーカーが、被検化合物をTRIM31及び/又は基質と接触させたときに、被検化合物を接触させなかったときと比較して低下あるいは消失する等の変化を示す場合、当該被検化合物はTRIM31による基質のユビキチン化を阻害すると判定できる。
ユビキチン化された蛋白質の検出は、例えば、ユビキチン化された蛋白質に対する抗体を用いてウエスタンブロッティングにより実施できる。また、ユビキチン化された蛋白質の検出は、脱ユビキチン化反応に放射性同位体標識したATP、例えば[γ−32P]ATPを用いて、脱ユビキチン化された蛋白質に転移された[γ−32P]の放射活性を測定することにより実施できる。
ユビキチン結合酵素(E2)としては、TRIM31と共に機能し得るE2酵素であれば特に制限無く使えるが、TRIM31として配列番号2に記載のアミノ酸配列を有する蛋白質を用いた場合、UbcH5BとUbcH5CをE2酵素として好ましく使用することができる。
その他、一般的にE3リガーゼ阻害剤のスクリーニングで用いられている方法であれば、いずれも用いることができるが、ELISA法や、特に高速で多検体をスクリーニングする場合には、蛍光共鳴エネルギー転移アッセイ(FRET Assay)を応用した測定系、DELFIAアッセイ、化学発光(ECL)を応用した測定系、SPAアッセイ系等を好適に使用できる(Yi Sun. Methods in Enzymol 399:654-663(2005))。この時、自己ユビキチン化を検出してもよいし、基質蛋白質のユビキチン化を定量してもよい。
このような方法によって選抜された、TRIM31による基質のユビキチン化を阻害する化合物には、TRIM31と基質の結合を阻害する化合物が含まれることが予想される。
以上のような、TRIM31と基質との結合を阻害する化合物の選抜あるいはTRIM31の脱ユビキチン活性を阻害する化合物の選抜においては、TRIM31と基質とを試験管内(インビトロ、in vitro)で共存させる方法、及び本蛋白質と基質蛋白質とを細胞で発現させて両蛋白質を共存させる方法、いずれも利用できる。
in vivoの試験系として、TRIM31、基質及びユビキチンを共に発現している真核細胞又は培養細胞株を用いた試験系が好ましく例示できる。また、TRIM31や基質を発現させた真核細胞又は培養細胞株を用いることができる。細胞におけるこれら蛋白質の発現は、TRIM31をコードするポリヌクレオチドを含む適当なベクター及び/又は基質をコードするポリヌクレオチドを含む適当なベクターを用いて慣用の遺伝子工学的手法でこれらベクターを細胞にトランスフェクションすることにより達成できる。TRIM31をコードする遺伝子を含む組換えベクターと共にたとえば基質をコードする遺伝子を含む組換えベクターを同時に宿主に導入することもできる。
簡便な系としては、インビトロの試験系を用いるのが望ましい。
インビトロの試験系においては、TRIM31とともに、基質、ユビキチン活性化酵素(E1)、ユビキチン結合酵素(E2)及びユビキチンを基質のユビキチン化が観察できるような緩衝液中において共存させることにより実施できる。基質のユビキチン化は、後述する実施例のように、ユビキチンあるいはユビキチンを標識したタグペプチドに対する抗体を用いて測定できる。
このとき用いるTRIM31は、その性質や機能に影響がない限りにおいて、N末端側やC末端側に別種の蛋白質やポリペプチドを、直接的に又はリンカーペプチド等を介して間接的に、遺伝子工学的手法等を用いて付加したものであってもよい。別種の蛋白質やポリペプチドとして、グルタチオンS−トランスフェラーゼ(GST)、β−ガラクトシダーゼ、HRP又はALP等の酵素類、His−tag、Myc−tag、あるいはHA−tag、FLAG−tag又はXpress−tag等のタグペプチド類を例示できる。さらに、TRIM31はその構成アミノ基又はカルボキシル基等を、例えばアミド化修飾する等、機能の著しい変更を伴わない限りにおいて改変できる。好ましくは、本蛋白質の基本的な性質が阻害されないような標識化あるいは改変が望ましい。
本発明の同定方法において使用する、ユビキチン活性化酵素(E1)、ユビキチン結合酵素(E2)及びユビキチンもTRIM31に準じた手法で、遺伝子工学的に取得することができる。
自己ユビキチン化活性を観察する場合、好ましくはTRIM31として、配列番号2に記載のアミノ酸配列を有する蛋白質あるいは標識された当該蛋白質用いることが出来るが、その場合ユビキチン結合酵素(E2)としては、UbcH5B及び/又はUbcH5Cを好適に使用することができる。
上記のような方法によって選抜された抗癌作用を有する化合物を、癌細胞に供し、その抗癌作用を確認することにより、細胞内に取り込まれ成体内においてTRIM31を阻害することが可能な、医薬品としてより望ましい性質を持った化合物を同定することもできる。
以下、本発明を実施例に基づき具体的に説明するが、本発明は下記の実施例に限定されない。
(正常胃組織と比較し、胃腺癌組織において発現が亢進している遺伝子の同定)
《材料と方法》
正常組織と比較し、癌組織において発現が亢進している遺伝子は、バイオエクスプレス(GeneLogic社)のマイクロアレイデータベースの利用により同定した。マイクロアレイデータベースには正常胃組織71サンプル、胃腺癌組織39サンプルの発現プロファイルデータが含まれていた。発現プロファイルデータはアフィメトリクスヒト遺伝子オリゴチップHG-U133を用いた各細胞内の発現データベースとして格納されている。正常胃組織内での発現量よりも胃腺癌内での発現量が多い遺伝子のうち1つが、ヌクレオチドデータベース(DDBJ/EMBL/GenBank)に遺伝子の全長の塩基配列が登録されている、TRIM31であることを同定した。71サンプルの正常胃組織細胞内におけるTRIM31の発現平均量に対する39サンプルの胃腺癌細胞内における同遺伝子の発現平均量の比は3.18で、有意水準は1.6×10-9であった(図1)。参考のため、さらに正常胃組織細胞内におけるTRIM31遺伝子の発現平均量と、慢性胃炎組織41サンプルでの同遺伝子の発現量の比を求めたところ、その値は2.88(有意水準9.5×10-6)となり、TRIM31は胃腺癌のみならず、前癌状態ともいえる慢性胃炎の段階から発現が亢進していることがわかった(図1)。
(正常胃組織と胃腺癌組織におけるTRIM31の発現量比較)
TRIM31の発現が胃癌で亢進していることを確認するため、市販の胃癌患者正常及び癌組織由来RNAあるいはcDNAを購入し、PCRにより発現量を解析した。
マイクロアレイデータベースのプローブ配列情報に相当する遺伝子として、公共ヌクレオチドデータベース(DDBJ/EMBL/GenBanK)中には、TRIM31の塩基配列が2種類登録されていた。1つはリングフィンガー、B-Box、Coiled-coilら3つのドメインをもつTRIMファミリーに属するTRIM31遺伝子(NM_007028、配列番号1に記載の核酸配列、以下、TRIM31αと記すこともある。)で、もう1つはこの遺伝子のスプライシングバリアント(NM_052816、配列番号3に記載の核酸配列、TRIM31variantと記すこともある。)であった。両者の発現を区別するため2組のプライマーを設計した。TRIM31α遺伝子のみを増幅するプライマーとしては、センスプライマーとして配列表の配列番号5に記載の塩基配列からなるオリゴヌクレオチド、及びアンチセンスセンスプライマーとして配列表の配列番号6に記載の塩基配列からなるオリゴヌクレオチドの組み合わせを用いた。TRIM31αのみならず、TRIM31variantも認識可能な共通のプライマーとしては、センスプライマーとして配列表の配列番号7に記載の塩基配列からなるオリゴヌクレオチドとアンチセンスセンスプライマーとして配列表の配列番号8に記載の塩基配列からなるオリゴヌクレオチドを組み合わせて使用した。また、配列表の配列番号9、10に記載の塩基配列からなるプライマーを用い、内部コントロールとしてグリセルアルデヒド三リン酸脱水素酵素(G3PDH)を検出した。PCRは、Ex Taq HS (TAKARA)を酵素として使用し、94℃ 3分処理の後、94℃ 30秒、60℃ 30秒、72℃ 1分を25回(G3PDH)あるいは30回(TRIM31)、最後に72℃、3分処理する条件で行った。患者のサンプルとしてヒト胃癌及び対応正常組織cDNA(66歳男性患者)あるいはヒト胃癌及び対応正常組織全RNA(63歳男性患者)(ともにBioChainより購入)を用いた。両サンプルとも、一人の患者の胃癌組織及び近接した正常胃組織由来である。RNAの場合、まず0.5μgの全RNAサンプルからRNA PCR Kit (AMV) Ver.3.0(タカラバイオ)を用いて、ランダム 9マーのDNAをプライマーとしてcDNAを合成し、その1/10量をPCRに使用した。PCR反応終了後、2%アガロースゲルで電気泳動し、エチジウムブロマイド染色により増幅産物を検出した。
結果を図2に示す。図2から明らかなように、患者1では対照のG3PDHの発現量は同等であったが、特異的・共通どちらのプライマーの組み合わせを用いた場合であってもTRIM31遺伝子の発現量の上昇が認められた。患者2では、TRIM31と思われるバンド(L)以外に短いバンド(S)が得られた。そこで、患者1のバンドも含め、全てのバンドを切り出し、pCR2.1-TOPO ベクター(インビトロジェン)へクローニングした後、ABI3100(パーキンエルマー)により塩基配列を決定した。患者1のバンド及び患者2のLは予想通りTRIM31遺伝子の配列と一致したが、Sの配列は、既にGenBankに登録されているバリアント配列(NM_052816)ではなく、TRIM31遺伝子の新規スプライシングバリアントであることが明らかとなった。配列番号13と配列番号8のオリゴヌクレオチドをプライマーに使用してPCRにより取得した当該スプライシングバリアントの全長の遺伝子配列を、配列表の配列番号33に記す。実施例1で得られた結果と一致して、TRIM31遺伝子の発現が胃癌患者で亢進していることが確認された。
(TRIM31の哺乳類細胞での発現)
TRIM31遺伝子を細胞で発現するため、まずcDNAをクローニングした。そこで、酵素にはKOD Plus (東洋紡)、鋳型はQuick Clone human XG Colon Adenocarcinoma cDNA (BD バイオサイエンスクロンテック) 、プライマーとしては、配列番号11に記載の塩基配列からなるオリゴヌクレオチドと配列表の配列番号12に記載の塩基配列からなるオリゴヌクレオチドを使用し、94℃ 8分処理後、94℃ 15秒、65℃ 5秒、68℃ 1.5分を35回、最後に68℃ 15分処理する条件でPCR反応を行った。得られた増幅産物及びpEF1/V5HisB ベクター(インビトロジェン)をEcoRIとNotIで処理して連結した後、配列決定をし、取得したクローンとNM_007028が同一であることを確認した。こうして作製したベクター、あるいは空ベクター5μgを10 cm プレート中、D10培地(10%牛胎児血清添加DMEM培地(インビトロジェン))で培養した293T細胞へFuGENE6(ロシュダイアグノティックス)により遺伝子導入した。24時間後、細胞を回収し、800μlのRIPA 緩衝液(Tris-HCl (pH7.5)、150 mM NaCl、1% NP40、0.05% SDS、0.05% デオキシコール酸)に懸濁し,ソニケーションの後、遠心分離 (10000 × g)により上清を得た。この上清を20μlの抗V5抗体アガロース(シグマ)と混合し、4℃にて2時間反応させた。ビーズをRIPA緩衝液で3回洗った後、60μlのSDSサンプルバッファーに懸濁し,このうち15μlを抗V5抗体(1:5000、インビトロジェン) によるウエスタン解析に供試した。ECL (アマシャムバイオサイエンス)により検出した結果、TRIM31を導入した細胞だけが、TRIM31蛋白質の推定分子量(50 kDa)の位置に主要なバンドと、さらに高分子側にラダーを示した(図3)。このラダーはユビキチン化したTRIM31蛋白質と思われる。よって、TRIM31が蛋白質として発現することが確認できた。
(TRIM31の細胞内局在)
TRIM31遺伝子によりコードされる蛋白質の細胞内での局在を調べるため、MGFP融合TRIM31発現ベクターを作製した。phMGFP(プロメガ)をNheI-XbaIで処理して得たhMGFP配列断片をpCI-3’HA(pCIベクター(プロメガ)の3’側にHAタグを付加したベクター)のNheIサイトへ導入し、結合した断片の方向性を確認した。KOD Plus (東洋紡)を酵素、上記の哺乳類細胞発現用ベクターを鋳型、さらに配列番号13に記載の塩基配列からなるオリゴヌクレオチドと配列表の配列番号14に記載の塩基配列からなるオリゴヌクレオチドをプライマーとして加え、94℃ 3分処理後、94℃ 30秒、55℃ 30秒、68℃ 1分30回、最後に68℃で15分間処理の条件でPCRを行った。増幅産物をEcoRIで処理し、上で作製したMGFPを含むpCI-3’HAベクターのEcoRIサイトへ挿入した。得られたプラスミドの当該部分配列を決定し、挿入断片の配列と方向性を確認した。このベクター1 μgを3.5 cmプレート中、D10培地で培養したCOS1細胞へFuGENE6により遺伝子導入した。20 時間培養後、MitoTracker Orange CMTMRos (Molecular Probes、1:2000)で室温15分処理した。さらに細胞を10%ホルマリンで固定(4℃ 30分)し、Hoechst33248(同人化学研究所)で核染色した後、プレパラートを作製した。図4Aが示すように、蛍光顕微鏡観察の結果からTRIM31-hMGFP融合蛋白質はミトコンドリアに局在することがわかった。TRIM31遺伝子がコードする蛋白質もミトコンドリアに局在すると考えられる。
続いて、MGFP融合蛋白質を用いた実験の結果を確認するため、生化学的方法による分画を行い、TRIM31遺伝子によりコードされる蛋白質の局在を調べた。このため、新たな哺乳類細胞発現用ベクターを構築した。上記のV5タグ付加TRIM31発現用ベクターをEcoRI-NotIで処理し、得られた断片を同酵素で処理したpCI-3’FLAG(pCIベクターの3’末にFLAGタグを付加したベクター)と連結した。このベクターを10 cmプレート2枚で培養した293T細胞へ5 μgずつ遺伝子導入した。一晩培養後、PBSで洗い、750 μl 緩衝液A (20 mM HEPES (pH 7.5)、10 mM KCl、1.5 mM MgCl2、2 mM 2-ME、250 mM スクロース、EDTAフリー・プロテアーゼ阻害剤カクテル (ロシュダイアグノティックス))に懸濁した。ホモジナイズを40 ストローク行った後、4℃で500 × gの条件で5分遠心し、上清 (細胞質及びミトコンドリア混合物)と沈殿(核)に分画した。上清はさらに4℃で15000回転 3分遠心し、上清(細胞質画分)、沈殿(ミトコンドリア画分)に分けた。ミトコンドリア画分は100 μlの0.1% SDS含有TBS(20 mM Tris-HCl (pH 7.5)、150 mM NaCl)に懸濁した。また沈殿(核)は750 μl 緩衝液B(20 mM HEPES (pH 7.5)、450 mM NaCl、1.5 mM MgCl2、25% グリセロール、2 mM 2-ME、阻害剤カクテル)に懸濁し、10 秒ボルテックスした後、4℃ にて1時間転倒攪拌した。さらに4℃で15 000回転 10分遠心し、この上清を核画分とした。得られた核、細胞質、ミトコンドリアの各画分の蛋白質濃度を測定 (Pierce BCAキット)し、それぞれ10 μgをウエスタン解析に供試した。一次抗体として、マウス抗FLAG-M2抗体 (1: 5000、シグマ)、ウサギ抗Cytochrome C 抗体(1: 2000、BD バイオサイエンスクロンテック)、二次抗体として抗マウスIgG-Alexa680 (1:10000、Molecular Probes)、抗ウサギIgG-Idye800CW (1:10000、Rockland)を各々用い、Odyssey(LI-COR)で検出した。その結果は、TRIM31遺伝子によりコードされる蛋白質がミトコンドリア画分に局在していることを支持するものであった (図4B)。
(TRIM31のユビキチンリガーゼ活性)
TRIM31は配列中にリングフィンガードメインを含むので、ユビキチンリガーゼ(E3)活性をもつ可能性がある。そこで、TRIM31によりコードされる蛋白質をN末マルトース結合蛋白質(MBP)融合蛋白質として大腸菌で発現・精製し、活性の有無を検討した。大腸菌発現用ベクターを構築するため、まず実施例3に記載したのと同じ条件で、配列表の配列番号15に記載の塩基配列からなるプライマーと配列表の配列番号16に記載の塩基配列からなるプライマーを加えてPCRを行った。増幅産物をEcoRI-NotIで処理し、同酵素で処理したpFastBacHTcベクター(インビトロジェン)と連結させた。このベクターをXbaI消化、続いてKlenow fragment (タカラバイオ)による平滑化、最後にEcoRI消化で断片を切り出し、他方、pTrcHisC(インビトロジェン)をHindIII消化、さらにKlenow fragmentによる平滑化、最後にEcoRI消化したベクターと連結した。鋳型としてこのベクター、プライマーとして配列表の配列番号17に記載の塩基配列からなるオリゴヌクレオチドと配列表の配列番号18に記載の塩基配列からなるオリゴヌクレオチドを加え、KOD Plusを用いて94℃ 2分処理後、94℃ 15秒、60℃ 30秒、68℃ 1分を35回、最後に68℃ 3分の条件でPCRを行い、TRIM31遺伝子を増幅した。増幅産物をpCR4Blunt-TOPO ベクター(インビトロジェン)へ組み込んだ後、pMAL-cX2(New England Biolabs、NEB)のEcoRI-HindIIIサイトに連結し、MBP融合TRIM31発現用ベクターを構築した。
一方、31番目のシステインをセリンに、33番目のヒスチヂンをグルタミンに変換したTRIM31配列は以下の方法で作製した。KOD Plus を酵素として用い、哺乳類細胞発現用ベクターを鋳型、配列表の配列番号19、20に記載の塩基配列からなるオリゴヌクレオチド、あるいは配列表の配列番号21、22に記載の塩基配列からなるオリゴヌクレオチドを一対のプライマーとして、94℃で5分処理後、94℃ 30秒、60℃ 30秒、68℃ 8分、最後に68℃で15分処理の条件で2通りのPCRを行った。生成した2種の増幅産物はKlenow fragmentで平滑化、T4ポリヌクレオチドキナーゼ (東洋紡)でリン酸化を行った後、EcoRI(前のPCR産物)あるいは NotI(あとのPCR産物)で処理した。これら2断片とEcoRI-NotIで処理したpEF1/V5HisBを混合し3断片ライゲーションを行い、変異導入TRIM31ベクターを構築した。得られたベクターより、変異の入ったEcoRI-BamHI断片を切り出し、上で作製した野生型TRIM31−MBP融合蛋白質発現ベクターの発現断片と入れ替えた。変異の導入は塩基配列の決定により確認した。
野生型あるいは変異型TRIM31-MBP融合蛋白質発現ベクターを保持した大腸菌BL21(DE3)(インビトロジェン)を100μg/mlのアンピシリン及び0.2%グルコースを含んだLB培地中、37℃で対数増殖期(OD600およそ0.6)まで培養し、IPTGを終濃度0.1 mMで添加した後、25℃で一晩発現誘導を行い、菌体を回収した。菌体を1/20量の緩衝液C(20 mM Tris-HCl(pH8.0)、200 mM NaCl、0.05 mM ZnCl2、阻害剤カクテル)に懸濁し、凍結融解を3度繰り返した。超音波処理後、遠心分離により回収した上清を可溶性画分とし、10倍量の緩衝液Cで平衡化したAmyloseレジン(NEB)へ添加した。4℃、一晩転倒混和後、10倍量の緩衝液Cで4℃にてレジンを3回洗浄した。10 mM マルトースを含む緩衝液Cで結合蛋白質を溶出(4℃ 10分)し、等量の2×SDS サンプルバッファーと混合、加熱後SDS-PAGE(5-20%)で泳動し、さらにCBB染色を行った。精製MBP融合TRIM31蛋白質濃度は、同時に泳動した濃度既知のBSAとバンドの濃さを比較し、決定した。リガーゼアッセイの対照としたMBP(MBP−βgalα断片)も、pMAL-cX2ベクターを用いて同様に発現・精製した。
E2(UbcH5B、UbcH5C、UbcH7、UbcH8)遺伝子は以下のようにクローニングした。UbcH5Bはヒト骨格筋cDNA(BD バイオサイエンスクロンテック、以下のcDNAも同様)を鋳型、配列表の配列番号23、24に記載の塩基配列からなるオリゴヌクレオチドをプライマー、UbcH5Cは胎盤cDNAを鋳型、配列表の配列番号25、26に記載の塩基配列からなるオリゴヌクレオチドをプライマー、UbcH7は睾丸cDNAを鋳型、配列表の配列番号27、28に記載の塩基配列からなるオリゴヌクレオチドをプライマー、UbcH8は肺cDNAを鋳型として、配列表の配列番号29、30に記載の塩基配列からなるオリゴヌクレオチドをプライマーとして使用した。UbcH8の場合のみ5%DMSOを反応系に加え、KOD Plus を酵素として94℃ 2分処理後、94℃ 30秒、68℃ 4分を40回、最後に68℃ 3分処理の条件でPCRを行った。増幅産物はpCR4Blunt-TOPOへクローニング後、BamHI/XhoIで消化し、同酵素で消化した大腸菌発現用ベクターpGEX4T-1と連結した。さらにここからE2遺伝子BamHI/XhoI断片を切り出し、同様に処理したpTrcHisAへ連結し、Hisタグ付加E2大腸菌発現用ベクターを作製した。
これら各々のE2発現用ベクターを保持した大腸菌BL21(DE3)を100μg/ml アンピシリン含有LB培地で37℃一晩培養後、IPTGを終濃度0.5 mMで添加し、37℃ 4時間発現誘導を行い、菌体を回収した。1/20量の結合用緩衝液(緩衝液D(20m M Tris-HCl(pH8.0)、500 mM NaCl、阻害剤カクテル)に10 mM イミダゾールを添加したもの)に懸濁し、超音波処理した。遠心分離により回収した上清を可溶性画分とし、結合用緩衝液で平衡化したProbondレジン(インビトロジェン)と混合した。4℃ 一晩転倒混和後、結合用緩衝液で4℃にてレジンを3回洗浄した。4℃にて50、100、150、200、250 mM イミダゾールを含む緩衝液Dで結合蛋白質を溶出し、各画分を等量の2×SDSサンプルバッファーと混合、加熱後SDS-PAGE (4-20%)を行い、最後にCBBで染色した。UbcH5Bは150、200、250 mM、UbcH5Cは100、150、200 mM、UbcH7は100、150、200 mM、UbcH8は150、200 mMイミダゾール溶出画分をあわせ、Slide-A-Lyzer (PIERCE)を用いてTBSに対して透析後、精製蛋白質を回収した。回収蛋白質はSDS-PAGE(4-20%)に供試し、同時に泳動した濃度既知のBSAとバンドの濃さを比較することでそれぞれのE2濃度を決定した。
次にユビキチンcDNAをクローニングした。KOD Plusを酵素として使用し、ヒト睾丸cDNAを鋳型、配列表の配列番号31に記載の塩基配列からなるプライマーと配列表の配列番号32に記載の塩基配列からなるプライマーを用い、94℃で2分処理後、94℃ 15秒、55℃ 30秒、68℃ 20秒を30回、最後に68℃ 7分処理の条件でPCRを行った。増幅産物をpCR4Blunt-TOPOへクローニングし、塩基配列を確認した。このベクターをBamHIとNotIで処理し、ユビキチン配列断片をpcDNA3.1His(インビトロジェン)に組み込んだ。生成したベクターを鋳型として、KOD Plusを酵素として、さらに配列表の配列番号31に記載の塩基配列からなるプライマーと配列表の配列番号32に記載の塩基配列からなるプライマーを用い、94℃ 5分、55℃ 30秒、68℃ 30秒を30回、最後に68℃で15分処理の条件でPCRを行い、増幅産物は精製後、BamHIで切断した。一方、pTrcHisAをHindIIIで処理し、Klenow fragmentで平滑化した後、さらにBamHIで処理し、上記のBamHI処理増幅産物断片と連結し、Hisタグ付加ユビキチン大腸菌発現用ベクターとした。
このベクターを保持した大腸菌BL21(DE)をLB培地で37℃ 一晩培養した。翌日、これを300 mlのLB培地へ植え継ぎ、37℃でOD600=0.87まで培養した。これにIPTGを終濃度1.0 mMで添加し37℃で一晩培養した。集菌し、ペレットを20 mlの緩衝液E (20 mM Tris塩酸(pH 7.5)、450 mM NaCl、1% NP-40)に懸濁した。1分3回のソニケーションにより菌体を破砕した後、4℃で6500回転10分の遠心分離を行い、可溶画分を得た。この可溶画分に20μlのProbondレジンを混合し、4℃にて2時間反応させた。緩衝液Eでビーズを3度洗い、溶出液(500 mM イミダゾールを添加した緩衝液E)により結合蛋白質の溶出を行った。4-20%SDSゲルで電気泳動を行い、強いバンドの検出された画分を混合しTBSで透析した。こうして得られた精製蛋白質をin vitro E3 アッセイ用ユビキチンとした。
E3(ユビキチンリガーゼ)アッセイは、反応液(110 mM Tris-HCl(pH8.0)、3 mM MgCl2、1.2 mM DTT、2.5 mM ATP、100 ng Hisタグ付加ユビキチン、50 ng ウサギE1(Calbiochem)、10% DMSO)に500 ng E2(各Hisタグ付加E2)と50ng E3(野生型あるいは変異型TRIM31-MBP融合蛋白質、ないしは対照としてMBP)を添加して20 μlとし、37℃で2時間行った。一部サンプルには2.5 mM, N,N,N',N'-tetrakis(2-pyridylmethyl)ethylenediamine (TPEN、Carbiochem)を添加した。反応終了後、SDSサンプルバッファーを加え100℃ 5分処理し、SDS-PAGE(4-20%)で分離した後、抗Ub抗体(1:1000、SantaCruz)を用いたウェスタン解析を行った。その結果、UbcH5BとUbcH5Cを使用したときのみ高分子側シフトが観察された(図5A)。この2種のE2を用い、さらに活性を精査したところ(図5B)、MBP単独ではシフトはおこらず、活性基に変異を導入したTRIM31でも高分子バンドは消失した。さらに、TPEN (Zn2+のキレート剤)の添加でも活性は消失し、この高分子バンドはTRIM31のリングフィンガー部位に依存したユビキチンリガーゼ活性によるものであることが確認された。
本発明は、癌細胞の増殖を阻害することにより癌の進行を遅延あるいは治療する、新しい手段として利用できる。あるいは本発明により、癌の早期診断を行うことが出来るようになる。
TRIM31の各種組織における発現パターンをマイクロアレイによる組織別遺伝子発現データベース、バイオエクスプレスを用いて解析した図である。正常胃組織(Normal)、慢性胃炎(chronic inflammation)、胃腺癌(adenocarcinoma)サンプルを用いた。括弧内の数字はサンプル数、各ドットはアレイでの強度を、各バーはその平均値を示す。 胃癌患者組織サンプルにおけるTRIM31の発現を示す図である。胃癌患者の癌組織(Tumor)と近接する正常胃組織(Normal)由来のcDNA(患者1)あるいはRNA(患者2)をサンプルとして用い、2種類(αTRIM31特異的(specific)、あるいはバリアントと共通(common))のプライマーによりRT-PCR解析を行った。上段にTRIM31、下段に対照であるグリセルアルデヒド三リン酸脱水素酵素遺伝子の発現を示した。患者2のLで示したバンドはTRIM31に対応し、Sで示したバンドはデータベースに登録されたものとは別の配列であるTRIM31のスプライシングバリアントである。 TRIM31の哺乳類細胞における発現を示す図である。V5タグを付加したTRIM31発現ベクター(TRIM31-V5)あるいは空ベクター(Empty)を293T細胞で発現し、抗V5抗体で免疫沈降後、抗V5抗体でウエスタン解析した。矢印はTRIM31のバンド位置を、括弧で括られた領域はそのユビキチン化ラダーを示している。 (A)TRIM31の細胞内局在を示す図である。COS1細胞にTRIM31とMGFP融合蛋白質発現ベクターを遺伝子導入し、MitoTrackerでミトコンドリア染色(右)、Hoechst33248で核染色(左)を行った後、MGFP融合蛋白質のシグナル(中央)を蛍光顕微鏡により観察した。(B)TRIM31の局在を細胞分画により示した図である。FLAGタグを付加したTRIM31発現ベクターを293T細胞に遺伝子導入し、核・細胞質・ミトコンドリアに分画し、抗FLAG抗体でウエスタン分析した。チトクロームCはミトコンドリアマーカーとして使用した。いずれの結果も、TRIM31がミトコンドリアに局在していることを示している。 TRIM31のユビキチンリガーゼ活性を示す図である。(A)TRIM31のE2選択性を示している。(B)TRIM31のユビキチンリガーゼ活性のリングフィンガー部位依存性を示す図である。各レーンはそれぞれ、MBP蛋白質(MBP)、TRIM31蛋白質とMBPの融合蛋白質(TRIM31)、TRIM31のリングフィンガー部位に変異を入れた蛋白質とMBPの融合蛋白質(TRIM31Mut)、TRIM31蛋白質とMBPの融合蛋白質の反応液にTPENを添加した場合(TRIM31+TPEN)、である。
配列番号1:TRIM31遺伝子の核酸配列。
配列番号2:TRIM31のアミノ酸配列。
配列番号3:バリアントTRIM31遺伝子の核酸配列。
配列番号4:バリアントTRIM31のアミノ酸配列。
配列番号5:TRIM31mRNAのみを検出し、バリアントTRIM31mRNAは検出しない、RT−PCR用センスプライマー。
配列番号6:TRIM31mRNAのみを検出し、バリアントTRIM31mRNAは検出しない、RT−PCR用アンチセンスプライマー。
配列番号7:TRIM31mRNAとバリアントTRIM31mRNAを検出する、RT−PCR用センスプライマー。
配列番号8:TRIM31mRNAとバリアントTRIM31mRNAを検出する、RT−PCR用アンチセンスプライマー。
配列番号9:G3PDHmRNAを検出するためのRT−PCR用センスプライマー。
配列番号10:G3PDHmRNAを検出するためのRT−PCR用アンチセンスプライマー。
配列番号11:TRIM31遺伝子をクローニングするために用いたセンスプライマー。
配列番号12:TRIM31遺伝子をクローニングするために用いたアンチセンスプライマー。
配列番号13:hMGFP融合cDNA増幅に使用するPCR用センスプライマー。
配列番号14:MGFP融合cDNA増幅に使用するPCR用アンチセンスプライマー。
配列番号15:TRIM31cDNA増幅に使用するPCR用センスプライマー。
配列番号16:TRIM31cDNA増幅に使用するPCR用アンチセンスプライマー。
配列番号17:MBP融合TRIM31蛋白質発現用のcDNA増幅に使用するPCR用センスプライマー。
配列番号18:MBP融合TRIM31蛋白質発現用のcDNA増幅に使用するPCR用アンチセンスプライマー。
配列番号19:MBP融合変異TRIM31(C31S)蛋白質発現用のcDNA増幅に使用するPCR用センスプライマー。
配列番号20:MBP融合変異TRIM31(C31S)蛋白質発現用のcDNA増幅に使用するPCR用アンチセンスプライマー。
配列番号21:MBP融合変異TRIM31(H33Q)蛋白質発現用のcDNA増幅に使用するPCR用センスプライマー。
配列番号22:MBP融合変異TRIM31(H33Q)蛋白質発現用のcDNA増幅に使用するPCR用アンチセンスプライマー。
配列番号23:UbcH5BcDNA増幅に使用するPCR用センスプライマー。
配列番号24:UbcH5BcDNA増幅に使用するPCR用アンチセンスプライマー。
配列番号25:UbcH5CcDNA増幅に使用するPCR用センスプライマー。
配列番号26:UbcH5CcDNA増幅に使用するPCR用アンチセンスプライマー。
配列番号27:UbcH7cDNA増幅に使用するPCR用センスプライマー。
配列番号28:UbcH7cDNA増幅に使用するPCR用アンチセンスプライマー。
配列番号29:UbcH8cDNA増幅に使用するPCR用センスプライマー。
配列番号30:UbcH8cDNA増幅に使用するPCR用アンチセンスプライマー。
配列番号31:ユビキチンcDNA増幅に使用するPCR用センスプライマー。
配列番号32:ユビキチンcDNA増幅に使用するPCR用アンチセンスプライマー。
配列番号33:TRIM31スプライシングバリアントのDNA配列。

Claims (22)

  1. 癌細胞の増殖を阻害する方法であって、TRIM31の発現及び/又は機能を阻害する工程を含む方法。
  2. TRIM31の発現及び/又は機能を阻害する工程が、TRIM31の発現及び/又は機能を阻害するのに有効な用量のTRIM31の発現及び/又は機能を阻害する化合物で該細胞を処置する工程である、請求項1に記載の方法。
  3. 癌細胞が消化器系の組織に発生した癌細胞である、請求項1又は2に記載の方法。
  4. 消化器系の組織が胃である、請求項3に記載の方法。
  5. 癌細胞が腺癌由来の癌細胞である、請求項1から4のいずれか1項に記載の方法。
  6. 被検組織が癌であるか否かを判定する方法であって、以下の(1)及び(2)の工程を含む方法;
    (1)被検組織と健常組織、それぞれにおけるTRIM31の発現を測定する工程、及び
    (2)被検組織におけるTRIM31の発現と健常組織におけるTRIM31の発現を比較し、TRIM31の発現量が健常組織より高かった被検組織を癌であると判定する工程。
  7. TRIM31の発現を測定する工程がRT−PCRを用いる工程である、請求項6に記載の方法。
  8. RT−PCRのプライマーとして、配列番号5に記載の塩基配列からなるポリヌクレオチドと配列番号6に記載の塩基配列からなるポリヌクレオチドを使用する、請求項7に記載の方法。
  9. RT−PCRのプライマーとして、配列番号7に記載の塩基配列からなるポリヌクレオチドと配列番号8に記載の塩基配列からなるポリヌクレオチドを使用する、請求項7に記載の方法。
  10. TRIM31の発現を測定する工程が免疫学的手法を用いる工程である、請求項6に記載の方法。
  11. 免疫学的手法がTRIM31を特異的に認識する抗体を用いる手法である、請求項10に記載の方法。
  12. 被検組織が消化器系の組織である、請求項6から11のいずれか1項に記載の方法。
  13. 消化器系の組織が胃である請求項12に記載の方法。
  14. 請求項6から13のいずれか1項に記載の方法で用いるキットであって、配列番号5に記載の塩基配列からなるポリヌクレオチド、配列番号6に記載の塩基配列からなるポリヌクレオチド、配列番号7に記載の塩基配列からなるポリヌクレオチド、配列番号8に記載の塩基配列からなるポリヌクレオチド及び抗TRIM31抗体からなる群から選ばれる少なくとも一つを含むキット。
  15. TRIM31の発現及び/又は機能を阻害する化合物を含有する抗腫瘍剤。
  16. 癌細胞の増殖を阻害する化合物の同定方法であって、TRIM31の発現及び/又は機能を阻害する化合物を選択する工程を含む方法。
  17. 請求項16に記載の方法であって、以下の(1)から(4)の工程を含む方法;
    (1)被検化合物を用意する工程、
    (2)被検化合物の存在下又は非存在下、TRIM31、ユビキチン活性化酵素(E1)、ユビキチン結合酵素(E2)、ユビキチン、及びTRIM31の基質が共存する条件下における基質のユビキチン化を測定する工程、
    (3)被検化合物存在下におけるユビキチン化された基質の量と被検化合物非存在下におけるユビキチン化された基質の量を比較する工程、及び
    (4)被検化合物存在下における基質のユビキチン化が、被検化合物非存在下における基質のユビキチン化と比較して少なかった被検化合物を選択し、当該被検化合物を癌細胞の増殖阻害活性がある化合物であると判定する工程。
  18. 請求項17に記載の(1)から(4)の工程により同定された化合物を癌細胞に供し、当該被検化合物が癌細胞の増殖を阻害する効果を示すことを確認する工程をさらに含む、請求項17に記載の方法。
  19. TRIM31の基質がTRIM31である、請求項17又は18に記載の同定方法。
  20. ユビキチン連結酵素(E2)が、UbcH5B及び/又はUbcH5Cである、請求項17から19のいずれか1項に記載の同定方法。
  21. 配列番号1又は配列番号2に記載のアミノ酸配列からなるユビキチンE3リガーゼ。
  22. 配列番号1又は配列番号2に記載のアミノ酸配列からなる蛋白質のユビキチンE3リガーゼとしての使用。
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