JP2007266303A - 機能性膜含有構造体及び圧電素子 - Google Patents

機能性膜含有構造体及び圧電素子 Download PDF

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Abstract

【課題】機能性膜と基板間の応力を緩和しつつ、機能性膜の特性低下を防止することができる機能性膜含有構造体及び圧電素子を提供する。
【解決手段】本発明による機能性膜含有構造体10は、基板12と機能性膜14の間に層状物質からなる応力緩和層16を有する。層状物質は、単種または複数種のシートが積み重なった結晶構造を有している化合物又は単体であり、シート間の結合力は、シートが帯電している場合は弱い静電力、帯電していない場合はファンデルワールス力である。したがって、積層方向に垂直に応力が働いた場合、シート間のすべりにより応力が緩和される。応力緩和機能をもつ層状物質として、例えば、Bi系層状酸化物、Cu系層状酸化物、Co系層状酸化物、Mn系層状酸化物、六方晶窒化硼素、グラファイト、及び遷移金属カルコゲナイドなどを用いることができる。
【選択図】 図1

Description

本発明は機能性膜含有構造体及び圧電素子に係り、特に基板の上に圧電体や焦電体、誘電体等に代表される機能性材料の膜(機能性膜)を形成してなる積層構造体の構成に関する。
近年、電子デバイスの小型化、高速化、集積化、多機能化等のニーズに伴い、圧電体や焦電体、誘電体のように、電界や磁界を印加することにより所定の機能を発現する機能性膜を含むデバイス素子の研究が進められている。
例えば、インクジェットプリンタにおいて高精細かつ高画質の印字を可能とするためには、インクジェットヘッドのノズルを微細化すると共に高集積化する必要がある。そのため各ノズルを駆動するための圧電アクチュエータについても、同様に微細化及び高集積化が求められている。
一般的に機能性膜の機能を十分に発揮させるためには、比較的高温での熱処理が必要である。その際、基板と機能性膜の熱膨張係数が大きく異なる場合には、熱応力が作用して膜がひび割れたり、基板から剥離したりするという問題がある。
このような技術課題に関連して、特許文献1では、電気−機械変換効果を示す圧電体層と、シリコン(Si)基板の間に、密着機能層、反応防止層及び膜応力緩和機能層から構成される中間層を設ける構成が提案され、特に、膜応力緩和機能層として、多孔質もしくは非晶質の金属酸化膜(好ましくは、イットリウムで安定化された酸化ジルコニウム膜)を用いる態様が開示されている。
特開平11−204849号公報
しかしながら、機能性素子に対する更なる集積化、高機能化の要請に伴い、より一層の応力緩和効果の向上、並びに機能性膜の特性低下の防止等を達成することが望まれている。
また、特許文献1に開示の技術では、多孔質の膜の上に、緻密な膜を形成することが困難である。多孔質中にはガスが入っており、その上に緻密な膜を形成するとガスの逃げ道がなくなるとともに、成膜時には熱が発生するため、膨張したり、剥離したりするという問題がある。その一方、非晶質は熱で結晶化し、結晶化すると応力緩和機能層として機能しなくなるという問題がある。
本発明はこのような事情に鑑みてなされたもので、機能性膜と基板との間の応力を効果的に緩和することができる機能性膜含有構造体及び圧電素子を提供することを目的とする。
本発明は前記目的を達成するために、基板上に機能性膜を有する機能性膜含有構造体であって、前記基板と前記機能性膜の間に層状物質を含有する層を有し、前記層状物質が応力緩和機能を有する物質であることを特徴とする。
層状物質とは、単種または複数種のシートが積み重なった結晶構造を有している化合物又は単体の総称である。そのシート間の結合力は、シートが帯電している場合は弱い静電力、帯電していない場合はファンデルワールス力である。したがって、積層方向に垂直に応力が働いた場合、シート間のすべりにより応力が緩和される。
本発明によれば、基板と機能性膜の間に介在させた層状物質を含有する層(応力緩和層)によって、機能性膜と基板間の熱応力や機能性膜自体の圧縮応力、或いは基板拘束による応力などが緩和されるため、これら応力による機能性膜の破壊や基板からの剥離等を防止することができるとともに、応力に起因する機能性膜の特性低下を防止することができる。
本発明の一態様として、前記応力緩和機能を有する物質が、ビスマス(Bi)系層状酸化物、銅(Cu)系層状酸化物、コバルト(Co)系層状酸化物、及びマンガン(Mn)系層状酸化物からなる群より選ばれる少なくとも1種を含むことを特徴とする。
これらの層状化合物は応力緩和機能を有しており、本発明の応力緩和層の材料として用いることができる。
本発明の他の態様として、前記応力緩和機能を有する物質が、六方晶窒化硼素であることを特徴とする。
六方晶窒化硼素は、グラファイトと同様の層状の結晶構造を有しており、本発明における応力緩和層の材料として用いることができる。
また、本発明の更に他の態様として、前記応力緩和機能を有する物質が、グラファイト及び遷移金属カルコゲナイドより選ばれる少なくとも1種を含むことを特徴とする。
層状構造を有する単体の代表的な例として、グラファイトがある。また、層状構造の遷移金属カルコゲナイドの代表的な例としては、二硫化モリブデン(MoS)などがある。
本発明の機能性膜含有構造体における前記基板としては、例えば、酸化物単結晶基板、半導体単結晶基板、ガラス基板、金属基板などを用いることが可能である。機能性膜の種類や成膜方法等に応じて適切な基板の材質が選択される。
本発明の機能性膜含有構造体における前記機能性膜としては、例えば、圧電性、焦電性又は強誘電性を有する膜、超伝導性を有する膜、磁性を有する膜、半導体性を有する膜などを挙げることができる。
また、本発明の他の態様は、前記機能性膜と前記応力緩和機能を有する物質の間に電極が形成されていることを特徴とする。
機能性膜を電子デバイス(機能性素子)として利用するための電極は、前記機能性膜と前記応力緩和機能を有する物質の間に形成する態様が好ましい。
本発明の他の態様は、前記機能性膜が、圧電膜であることを特徴とする。
さらに、本発明は、基板上に下部電極と上部電極とで挟まれた圧電膜が形成されてなる圧電素子であって、前記基板と前記下部電極の間に応力緩和機能をもった層状物質を有することを特徴とする圧電素子を提供する。
また、本発明において、層状物質を含有する層(応力緩和層)と基板若しくは電極(下部電極)との間で元素の拡散が生じる場合は、その間に拡散を抑止するための拡散バリア層を設ける態様が好ましい。
本発明によれば、基板と機能性膜の間に応力緩和機能をもつ層状物質を含有する層を導入したことにより、当該層状物質の層間のすべりによって応力を効果的に緩和できる。これにより、熱応力等による機能性膜の破壊や基板からの剥離等を防止することができるとともに、応力に起因する機能性膜の特性低下を防止することができる。また、基板の材料選択範囲が広がり、各種高機能性膜素子への適用が可能である。
以下添付図面に従って本発明の好ましい実施の形態について詳説する。
〔機能性膜含有構造体の構成例〕
図1は本発明の実施形態に係る機能性膜含有構造体の基本構成を示す断面図である。同図に示したように、本実施形態の機能性膜含有構造体10は、基板12と機能性膜14の間に層状物質からなる応力緩和層16を備えた積層構造体である。
基板12の材料は、特に限定されないが、例えば、基板12として、酸化物単結晶基板、半導体単結晶基板、セラミックス基板、ガラス基板、金属基板などが用いられる。
酸化物単結晶基板材料としては、具体的に、酸化マグネシウム(MgO)、アルミナ(Al)、酸化チタン(TiO)、酸化亜鉛(ZnO)、スピネル(アルミン酸マグネシウム、MgAl、チタン酸ストロンチウム(SrTiO)、ランタンアルミネート(アルミン酸ランタン、LaAlO)、ニオブ酸リチウム(LiNbO)、タンタル酸リチウム(LiTaO)等が挙げられる。これらの材料は酸化雰囲気において安定しているので、大気中において高温(例えば、酸化マグネシウムの場合には、1000℃程度)で熱処理することができる。
半導体単結晶基板の材料としては、具体的に、シリコン(Si)、ゲルマニウム(Ge)、ガリウム砒素(GaAs)、ガリウム燐(GaP)、インジウム燐(InP)等が挙げられる。これらの材料は還元雰囲気において安定しているので、還元雰囲気中において高温(例えば、シリコンの場合には、1000℃程度)で熱処理することができる。
セラミック基板の材料としては、アルミナ(Al)、ジルコニア(ZrO)、窒化アルミニウム(AlN)等が挙げられる。これらの材料は大気中において安定していると共に高い耐熱性を有しているので、大気中において高温(例えば、アルミナの場合には、1100℃程度)で熱処理することができる。また、安価なので、製造コストの低減を図ることができる。
ガラス基板の材料としては、具体的に、ケイ酸ガラス、ケイ酸アルカリガラス、ホウケイ酸ガラス、ソーダ石灰ガラス、鉛ガラス等が挙げられる。これらの材料は酸化雰囲気において安定しているので、大気中において高温(例えば、ケイ酸ガラスの場合には、900℃程度)で熱処理することができる。また、単結晶基板よりも安価なので、製造コストの低減を図ることができる。
金属基板の材料としては、具体的に、白金(Pt)、銅(Cu)、ニッケル(Ni)、鉄(Fe)等の金属、及び、ステンレス等の合金が挙げられる。これらの材料は還元雰囲気において安定しているので、還元雰囲気中において高温(例えば、白金の場合には、1000℃程度)で熱処理することができる。また、単結晶基板よりも安価なので、製造コストの低減を図ることができる。
基板材料は、製造目的とする機能性膜の成膜温度、熱処理(ポストアニール)温度、及び、熱処理雰囲気に応じて選択される。例えば、機能性膜が酸化物の場合には、酸化物の基板が用いられる。
機能性膜14を構成する機能性材料として例えば、次のような材料が用いられる。
メモリー素子に用いられる機能性膜の材料として、Pb(Zr,Ti)O、SrBi(Ta,Nb)、BiTi12等が挙げられる。
アクチュエータ等の圧電素子に用いられる機能性膜の材料として、Pb(Zr,Ti)O、Pb(Mg1/3Nb2/3)O、Pb(Zn1/3Nb2/3)O、Pb(Ni1/3Nb2/3)O等、及び、これらの固溶体が挙げられる。
赤外線センサ等の焦電素子に用いられる機能性膜の材料として、Pb(Zr,Ti)O、(Pb,La)(Zr,Ti)O等が挙げられる。
コンデンサ等の受動部品に用いられる機能性膜の材料として、BaSrTiO、(Pb,La)(Zr,Ti)O等が挙げられる。
光スイッチ等の光学素子に用いられる機能性膜の材料として、(Pb,La)(Zr,Ti)O、LiNbO等が挙げられる。
超伝導磁束量子干渉計(superconducting quantum interference device:SQUID)等の超伝導素子に用いられる機能性膜の材料として、YBaCu、BiSrCaCu10等が挙げられる。ここで、SQUIDとは、超伝導を利用した高感度の磁気センサ素子のことである。
太陽電池等の光電変換素子に用いられる機能性膜の材料として、アモルファスシリコンや化合物半導体が挙げられる。
磁気ヘッド等のマイクロ磁気素子に用いられる機能性膜の材料として、PdPtMn、CoPtCr等が挙げられる。
TFT等の半導体素子に用いられる機能性膜の材料として、アモルファスシリコン等が挙げられる。
製造目的とする機能性膜は、スバッタリング法、CVD法、ゾルゲル法、エアロゾルデポジション(aerosol deposition:AD)法等の公知の方法を用いることにより形成される。ゾルゲル法とは、加水分解による溶液成膜法であるが、ゾルゲル法の代わりに、熱分解による溶液成膜法である有機金属分解法(MOD法)などの他の化学溶液法によって化学溶液膜を形成するようにしてもよい。
エアロゾルデポジション(AD)法とは、原料の粉体(原料粉)を含むエアロゾルを生成し、それをノズルから基板に向けて噴射して原料粉を下層に衝突させることにより、原料を基板上に堆積させる成膜方法であり、噴射堆積法又はガスデポジション法とも呼ばれている。
応力緩和層16を構成する層状物質の具体例として、ビスマス(Bi)系層状酸化物、銅(Cu)系層状酸化物、コバルト(Co)系層状酸化物、マンガン(Mn)系層状酸化物などを挙げることができる。
図2は層状物質の構成を示す概略図である。なお、図2では、説明の便宜上3層のシートのみを示すが、シートの積層数はこれに限定されず、物質によって多様な形態があり得る。
図2に示すように、層状物質18は、単種または複数種のシート18A,18B,18Cが積み重なった結晶構造を有している化合物又は単体である。それぞれのシート間の結合力、すなわち、図2におけるシート18Aと18Bの間(符号19-1)、シート18Bと18Cの間(符号19-2 )の結合力は、シート18A〜Cが帯電している場合は弱い静電力、帯電していない場合はファンデルワールス力である。したがって、シート18A〜Cの積層方向に垂直に(図2の横方向に)応力が働いた場合、シート間19-1,19-2 でのシート同士の面方向のすべりにより応力が緩和される。
以下、代表的な層状物質の例について説明する。
[ビスマス(Bi)系層状酸化物]
本例の応力緩和層16として好適なビスマス(Bi)層状強誘電体の組成式は、(Bi2+(Am−13m+12−、またはBim−13m+3で表される。なお、これらの組成式中の記号mは層数を表す正の整数、記号AはNa、K、Pb、Ba、Sr、CaおよびBiから選ばれる少なくとも1つの元素、記号BはFe、Co、Cr、Ga、Ti、Nb、Ta、Sb、V、Mo、WおよびMnから選ばれる少なくとも1つの元素である。
図3にBi層状強誘電体の結晶構造図の例を示す。同(a)はBiWOの結晶構造図、(b)はSrBiTaの結晶構造図、(c)はBiTi12の結晶構造図である。
図示のように、Bi層状強誘電体は(Bi2+層と擬ペロブスカイト層の積層構造を有し、擬ペロブスカイト層中の八面体の数が異なるものが存在する。
このような層状物質を本例の応力緩和層(図1の符号16)として用いるには、図3の縦方向(結晶構造におけるc軸方向)が図1の応力緩和層16の膜厚方向(層の積層方向)と概ね一致していることが望ましい。
ただし、c軸方向の配向(c軸配向)が完全配向であることまでは要求されず、多少違う配向のものが含まれていてもよい。層状物質の層間のすべりによって応力緩和効果を得るという観点から、その許容範囲は、c軸配向度(配向率)で、50%以上、好ましくは70%以上、より好ましくは80%以上である。
ビスマス層状化合物のc軸方向の配向度Fは、次式(1)によって定義される。
[式1] F(%)=(P−P)/(1−P)×100 …(1)
式(1)において、P0は完全にランダムな配向をしている多結晶体のc軸のX線回折強度、すなわち、完全にランダムな配向をしている多結晶の(00l)面からの反射強度I(00l)の合計ΣI(00l)と、その多結晶体の各結晶面(hkl)からの反射強度I(hkl)の合計ΣI(hkl)との比({ΣI(00l)/ΣI(hkl)})である。また、式(1)において、Pはビスマス層状化合物のc軸のX線回折強度、すなわち、ビスマス層状化合物の(00l)面からの反射強度I(00l)の合計ΣI(00l)と、そのビスマス層状化合物の各結晶面(hkl)からの反射強度I(hkl)の合計ΣI(hkl)との比({ΣI(00l)/ΣI(hkl)})である。ここに、h,k,lはそれぞれ、0以上の任意の整数値をとることができる。
ここに、Pは既知の定数であるから、(00l)面からの反射強度I(00l)の合計ΣI(00l)と、各結晶面(hkl)からの反射強度I(hkl)の合計ΣI(hkl)が等しいとき、すなわち、P=1のときに、異方性を有する材料のc軸配向度Fは100%となる。
[銅(Cu)系層状酸化物]
図4〜6は、本例の応力緩和層16として好適な銅酸化物高温超伝導体の結晶構造図である。図4はBiSrCaCu10、図5はYBaCu7−δ、図6はLa2−χBaχCuOの各結晶構造である。
これらの図面に示したように銅酸化物高温超電導体は、CuOがc軸方向に積層された層状構造を有しており、CuO面の面間のすべりにより応力緩和機能を果たす。
なお、図6に示したLa2−χBaχCuOと同様の結晶構造を有するルテニウム酸化物(SrRuO)は、図6におけるLa(Ba)をSrに、CuをRuにそれぞれ置き換えた結晶構造であり、RuO面の面間のすべりにより応力緩和機能を果たすことからLa2−χBaχCuOと同様に、本例の応力緩和層16として用いることができる。
また、図には示さないが、他の銅酸酸化物高温超電導体として、TlBaCaCu、HgBaCaCuなどを用いることも可能である。
[コバルト(Co)系層状酸化物]
本例の応力緩和層16として好適なコバルト(Co)系層状酸化物の組成として、例えば、CaCoO、CaCo(Co−349)、NaCoに代表される熱電圧材料や、リチウムイオン電池正極材などに用いられているLi(Co,Mn)Oなどを挙げることができる。
図7はCaCo(Co−349)の結晶構造図である。図示のように、この物質は、Coのまわりに6個の酸素(O)を持つ八面体の構造がつながったCoO層のユニットと、岩塩(NaCl)の構造を有するCaCoO層のユニットとがc軸方向に沿って交互に積み重なった積層構造を有する。これら2つのユニット間(層間)のすべりにより応力緩和機能を果たす。
図8はリチウムコバルトマンガン酸化物の結晶構造図である。図示のように、この物質は、リチウム原子層と、遷移金属(ここでは、Co,Mn)層とが酸素原子層を介して交互に積み重なった層状構造を有しており、層間のすべりにより応力緩和機能を果たす。
[マンガン(Mn)系層状酸化物]
本例の応力緩和層16として好適なマンガン(Mn)系層状酸化物の組成として、例えば、LaSr3−XMn、LiNi0.5Mn0.5、LiMnに代表される磁性材料を挙げることができる。図9にLaSr3−XMnの結晶構造を示す。
磁性材料として知られるマンガン(Mn)系層状酸化物は、図示のように層状構造を有しており、本例の応力緩和層16として用いることができる。
応力緩和層16を構成する層状物質としては、上述に例示した酸化物に限定されず、例えば、六方晶窒化硼素、グラファイト、遷移金属カルコゲナイドなどを用いることができる。
無機層状物質には、大別して(1)層間に陽イオンを含み、負に帯電した結晶層との間に弱い静電力が作用するもの、(2)層間にイオンを含まず、結晶層は互いにファンデルワールス力の水素結合だけで積み重ねられて結晶構造を保持しているものがある。
また、無機層状物質の代表的なものとして図10の表に挙げるような例がある。図10の表中に例示される層状物質についても、本例の応力緩和層16として用いることが可能である。
[圧電アクチュエータの構造例]
図11は本発明の一実施形態としての圧電アクチュエータ(「圧電素子」に相当)の構造例を示す断面図である。なお、図11に示した層構造における各層の膜厚の比率は、図示の便宜上適宜修正してあり、実際の膜厚比率は同図の開示に限定されない。
図11に示す圧電アクチュエータ20は、エアロゾルデポジション法を用いて基板22上に圧電膜24を形成して作製されたd31モード圧電駆動アクチュエータであり、応力緩和層26として、図3で説明したc軸配向Bi層状構造化合物を用いたものである。
図11において、基板22はシリコン(Si)の単結晶基板(以下「Si基板」という)であり、当該Si基板22の上面に接して拡散バリア層28としてイットリア安定化ジルコニア(YSZ)膜が形成され、その上にc軸配向Bi層状構造化合物の応力緩和層26が形成される。そして、この応力緩和層26の上に下部電極30としての白金(Pt)、機能性膜としての圧電膜(PNN−PZT)24、上部電極32としての白金(Pt)の各層が順に積層された層構造により、本例の圧電アクチュエータ20が構成されている。
拡散バリア層28は、アニール処理時に、Si基板22中のシリコン(Si)が圧電体層(圧電膜24)に拡散するのを抑止したり、圧電体中の鉛(Pb)がSi基板22に拡散するのを抑止したりするSi拡散抑止中間層としての機能を果たす。拡散バリア層28の形成方法としては、電子ビーム蒸着法、レーザ蒸着法、スパッタリング法、CVD法、AD法など、各種の成膜手法を用いることができる。
なお、本例では、Si基板22と応力緩和層26の間に拡散バリア層28を設けているが、拡散バリア層28は、Si基板22と圧電膜24の間に介在させればよく、拡散バリア層28の形成位置(積層順)は図示の例に限定されない。例えば、応力緩和層26と下部電極30の中間に拡散バリア層28を形成する層構造も可能である。
下部電極30と上部電極32は、圧電膜24(圧電体層)に駆動用の電圧を印加するための電極対である。本例では、白金(Pt)を用いているが、電極の材料は、特に限定されず、Al,Ti,Auなど、周知の金属材料を用いることができる。また、電極の形成方法としては、スパッタリング法、蒸着法、リフトオフ法、AD法、イオンプレーティング法、ゾルゲル法、スクリーン印刷法など、各種の成膜手法を用いることができる。
下部電極30と上部電極32間に電圧を印加すると、これら電極間に挟まれている圧電膜24に電界が加わり、圧電膜24が変形する。この圧電膜24の変形(本例の場合、電界方向に垂直な方向に圧電体が縮むd31モードの変形)によってSi基板22の対応部分が変位する。
[実施例]
層状物質からなる応力緩和層の効果を調べるために、下記の手順で機能性膜構造体を作製した。
(ステップ1):基板の用意
本実施例では、基板材質をシリコン(Si)(熱膨張係数:約3×10−6/℃)とした。このSi基板22は図11で説明した圧電アクチュエータ20の振動板として機能させることを想定して、基板の厚みは、最終的には15μm程度のものとする。
基板の厚みは、最初から薄く(15μm程度に)加工してあってもよいし、当初は厚いものを用意し圧電膜成膜後にエッチング等で所望の厚さに(15μm程度に)薄く加工してもよく、使用する材料(材質)や応用により任意に選択可能である。
(ステップ2):拡散バリア層の作製
本実施例では、ステップ1で用意した上記Si基板22上にスパッタ法により拡散バリア層28としてYSZ膜(膜厚:1μm)を形成した。YSZ膜の成膜時の基板温度は700℃とした。
(ステップ3):応力緩和層の作製
本実施例では、拡散バリア層28の上にMOD法(Metal Organic Decomposition Process)によりc軸配向Bi層状化合物膜(膜厚:0.5μm)を形成した。MOD法は、化学溶液をスピンコート等により基板上に塗布し、これを熱分解することによって酸化物の膜を形成する手法である。
(ステップ4):電極形成
本実施例では、ステップ3で形成した応力緩和層26の上にスパッタ法により下部電極30としての白金(Pt)を0.2μm厚形成した。Pt電極成膜時の基板温度は300℃とした。
(ステップ5):圧電膜(機能性膜)の作製
本実施例では、下部電極30の上にエアロゾルデポジション法により圧電膜(PNN−PZT)24を10μm厚形成した。圧電膜24の成膜時の基板温度は室温とし、所定の膜厚(ここでは10μm)を成膜後に、室温に取り出した。PNN−PZTの熱膨張係数は約7〜8×10−6/℃であり、Si基板22の熱膨張係数(約3×10−6/℃)との差が比較的大きいにもかかわらず、熱応力によるひび割れや剥離は認められなかった。
なお、図11で説明した圧電アクチュエータ20を作製するには、更に圧電膜24のアニール処理を行い、アニール処理後に上部電極32を形成し、下部電極30と上部電極32の間に、所定の電界を印加することにより、圧電膜24のポーリング(分極処理)を行う。
[比較例]
上記した[実施例]におけるステップ3の工程を省略して、下記の手順で比較用の機能性膜構造体を作製した。
(ステップ1):基板の用意
実施例と同様に、基板材質をシリコン(Si)(熱膨張係数:約3×10−6/℃)とし、基板22の厚みは、最終的には15μm程度のものとした。
(ステップ2):拡散バリア層の作製
実施例と同様に、ステップ1で用意した上記Si基板22上にスパッタ法により拡散バリア層28としてYSZ膜(膜厚:1μm)を形成した。YSZ膜の成膜時の基板温度は700℃とした。
(ステップ3):電極形成
本比較例では、ステップ1で用意した上記Si基板22上にスパッタ法により白金(Pt)の電極膜を0.2μm厚形成した。Pt電極成膜時の基板温度は300℃とした。
(ステップ4):圧電膜(機能性膜)の作製
本比較例では、ステップ3で形成したPt電極上にエアロゾルデポジション法により圧電膜(PNN−PZT)を10μm厚形成した。この圧電膜の成膜時の基板温度は室温とし、所定の膜厚(ここでは10μm)を成膜後に、室温に取り出したところ、熱応力によるひび割れが認められた。
上記の実施例と比較例の対比から、層状物質による応力緩和層の応力緩和効果が確認された。
本発明の適用範囲は、圧電アクチュエータに限定されず、既述のとおり、メモリー素子、焦電素子、コンデンサ、インダクタ、光学素子、光電変換素子、マイクロ磁気素子、半導体素子など、様々な素子(機能性膜素子)について適用可能である。
本発明の実施形態に係る機能性膜含有構造体の基本構成を示す断面図 層状物質の構成を示す概略図 Bi層状強誘電体の例を示す結晶構造図 組成式:BiSrCaCuO10で表される銅酸化物高温超伝導体の結晶構造図 組成式:YBaCu7−δで表される銅酸化物高温超伝導体の結晶構造図 組成式:La2−χBaχCuOで表される銅酸化物高温超伝導体の結晶構造図 組成式:CaCo(Co−349)で表されるコバルト(Co)系層状酸化物の結晶構造図 組成式:Li(Co,Mn)Oで表されるリチウムコバルトマンガン酸化物の結晶構造図 組成式:LaSr3−XMnで表されるマンガン(Mn)系層状酸化物の結晶構造図 無機層状物質の代表的な例を記載した図表 本発明の一実施形態としての圧電アクチュエータの構造例を示す断面図
符号の説明
10…機能性膜含有構造体、12…基板、14…機能性膜、16…応力緩和層、20…圧電アクチュエータ、22…基板、24…圧電膜、28…拡散バリア層、30…下部電極、32…上部電極

Claims (7)

  1. 基板上に機能性膜を有する機能性膜含有構造体であって、
    前記基板と前記機能性膜の間に層状物質を含有する層を有し、前記層状物質が応力緩和機能を有する物質であることを特徴とする機能性膜含有構造体。
  2. 前記応力緩和機能を有する物質が、ビスマス(Bi)系層状酸化物、銅(Cu)系層状酸化物、コバルト(Co)系層状酸化物、及びマンガン(Mn)系層状酸化物からなる群より選ばれる少なくとも1種を含むことを特徴とする請求項1記載の機能性膜含有構造体。
  3. 前記応力緩和機能を有する物質が、六方晶窒化硼素であることを特徴とする請求項1記載の機能性膜含有構造体。
  4. 前記応力緩和機能を有する物質が、グラファイト及び遷移金属カルコゲナイドより選ばれる少なくとも1種を含むことを特徴とする請求項1記載の機能性膜含有構造体。
  5. 前記機能性膜と前記応力緩和機能を有する物質の間に電極が形成されていることを特徴とする請求項1乃至4の何れか1項に記載の機能性膜含有構造体。
  6. 前記機能性膜が、圧電膜であることを特徴とする請求項1乃至5の何れか1項に記載の機能性膜含有構造体。
  7. 基板上に下部電極と上部電極とで挟まれた圧電膜が形成されてなる圧電素子であって、
    前記基板と前記下部電極の間に応力緩和機能をもった層状物質を有することを特徴とする圧電素子。
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