JP2007265845A - 溶融炭酸塩型燃料電池用セパレータおよびその製造方法、並びに、それを用いた溶融炭酸塩型燃料電池 - Google Patents

溶融炭酸塩型燃料電池用セパレータおよびその製造方法、並びに、それを用いた溶融炭酸塩型燃料電池 Download PDF

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Abstract

【課題】溶融炭酸塩型燃料電池動作温度の600℃において熱膨張が小さい金属材料をエッチング加工しセパレータを作製することにより、反りが無く、MEAとの接触電気抵抗が小さい薄型の溶融炭酸塩型燃料電池用セパレータおよびそれを用いた燃料電池を提供すること。
【解決手段】Coが16.5〜17.5wt%、Niが28.5〜29.5wt%含有され、残部がFeおよび不可避の不純物からなる、ガス流路を備えた溶融炭酸塩型燃料電池用セパレータであって、
前記ガス流路以外の表面の中心線平均粗さ(Ra)(JISB0601)を0.3μm〜0.8μmとすること。
【選択図】図1

Description

本発明は、溶融炭酸塩型燃料電池用セパレータおよびそれを用いた燃料電池に関し、更に詳しくは、電解質電極接合体(MEA)との接触抵抗が低い薄型の溶融炭酸塩型燃料電池用セパレータおよびその製造方法、並びに、それを用いた溶融炭酸塩型燃料電池(MCFC)に関する。
溶融炭酸塩型燃料電池は、電解質の一方の面にアノード(燃料極)、他方の面にカソード(酸化剤極)を設けた電解質電極接合体(以下MEAと記述する)を、セパレータを介して複数個積層した構造になっている。
アノードに対向するセパレータ表面には、燃料ガスを流通させるための凹溝状の燃料ガス流路が設けられている。
また、カソードに対向するセパレータ表面には、酸化剤ガスを流通させるための凹溝状の酸化剤ガス流路が設けられている。
そして、燃料ガス流路に水素を主体とした改質ガス(又は水素ガス)を供給すると共に、酸化剤ガス流路に酸化剤ガス(通常は空気)を供給し、電解質膜を介して燃料ガス中の水素と酸化剤ガス中の酸素とにより下記の電気化学反応を生じさせて起電力を得るようにしたものである。
アノード;2H+2CO 2−→2CO+2HO+4e (1)
カソード;O+2CO+4e→2CO 2− (2)
セパレータは、隣り合う単電池セルの燃料ガス流路と酸化剤ガス流路を仕切り、燃料ガスと酸化剤ガスの相互流入を防止するものである。
また、セパレータは、MEAで発生した電子を、外部回路へ供給するための供給路としての役割を有する。
従来、セパレータの材料としては、カーボンが汎用されてきた。
しかし、カーボン製のセパレータは、脆いため機械的な衝撃、振動に弱い。
このため、セパレータには数mm程度の厚さが必要となり、燃料電池の薄型化の障害となっている。(特許文献1参照)
そこで、近年、燃料電池の薄型化を実現するために、薄くても強度が確保できる金属板をプレス成形してなるセパレータを用いる試みがなされている。(特許文献2参照)
しかし、セパレータの母材として、金属板を用いた場合、黒鉛系のセパレータを用いた場合に比べて、セパレータと電解質電極接合体(MEA)との接触電気抵抗が大きくなってしまう。
そこで、近年、セパレータと電解質電極接合体(MEA)との接触電気抵抗を小さくするために、SUS製の金属基薄板をプレス成形してなるセパレータの表面に金めっきを施す試みがなされている。(特許文献3参照)
特開2001−6703号公報 特開2002−190305号公報 特開2004−296381号公報
しかし、溶融炭酸塩型燃料電池を動作温度の600℃において長時間運転した場合、プレス成形の際にセパレータに残留した応力が開放されてセパレータに反りが生じ、MEAとセパレータとの間に隙間ができ、MEAとセパレータとの接触不良(接触電気抵抗増大)を引き起こし、結果として燃料電池の出力が低下するという問題が発生じていた。
本発明の課題は、溶融炭酸塩型燃料電池動作温度の600℃において熱膨張が小さい金属材料をエッチング加工しセパレータを作製することにより、反りが無く、MEAとの接触電気抵抗が小さい薄型の溶融炭酸塩型燃料電池用セパレータおよびそれを用いた燃料電池を提供するものである。
請求項1に記載の発明は、Coが16.5〜17.5wt%、Niが28.5〜29.5wt%含有され、残部がFeおよび不可避の不純物からなる、ガス流路を備えた溶融炭酸塩型燃料電池用セパレータであって、
前記ガス流路以外の表面の中心線平均粗さ(Ra)(JISB0601)が0.3μm〜0.8μmであることを特徴する溶融炭酸塩型燃料電池用セパレータである。
請求項2に記載の発明は、電解質の一方の面上にアノードが配置され、前記電解質の前記アノードと反対側の面上にカソードが配置された電解質電極接合体(MEA)を、請求項1に記載の溶融炭酸塩型燃料電池用セパレータを介して複数個積層してなることを特徴とする溶融炭酸塩型燃料電池である。
請求項3に記載の発明は、前記電解質が、LiAlO2、LiCOおよびKCOを有することを特徴とする請求項2に記載の溶融炭酸塩型燃料電池である。
請求項4に記載の発明は、前記アノードが、Ni、Cr、LiCO、および、KCOからなることを特徴とする請求項2または請求項3に記載の溶融炭酸塩型燃料電池である。
請求項5に記載の発明は、前記カソードが、NiOからなる多孔質体であることを特徴とする請求項2または請求項4のいずれか1項に記載の溶融炭酸塩型燃料電池である。
請求項6に記載の発明は、所定パターンに従って一部金属面を露出させているレジスト膜が積層されている金属板をエッチングして、金属露出部分にガス流路および外形輪郭線を形成する請求項1に記載の溶融炭酸塩型燃料電池用セパレータの製造方法において、
前記ガス流路および前記外形輪郭線が、ハーフエッチング状態にて、前記金属板の表裏対称になるように形成されることを特徴とする溶融炭酸塩型燃料電池用セパレータの製造方法である。
請求項7に記載の発明は、前記金属板が、Coが16.5〜17.5wt%、Niが28.5〜29.5wt%含有され、残部がFeおよび不可避の不純物からなるFe−Co−Ni基合金からなることを特徴とする請求項6に記載の溶融炭酸塩型燃料電池用セパレータの製造方法である。
請求項8に記載の発明は、前記レジスト膜が、カゼインと重クロム酸アンモニウムからなる水溶性の感光性樹脂であることを特徴とする請求項6または請求項7に記載の溶融炭酸塩型燃料電池用セパレータの製造方法である。
請求項1の発明は、Coが16.5〜17.5wt%、Niが28.5〜29.5wt%含有され、残部がFeおよび不可避の不純物からなる、ガス流路を備えた溶融炭酸塩型燃料電池用セパレータであって、
前記ガス流路以外の表面の中心線平均粗さ(Ra)(JISB0601)を0.3μm〜0.8μmとすることにより、熱膨張およびMEAとの接触電気抵抗が小さい薄型の溶融炭酸塩型燃料電池用セパレータを作製することができるものである。
Coが16.5〜17.5wt%、Niが28.5〜29.5wt%含有され、残部がFeおよび不可避の不純物からなる金属板は、熱膨張が非常に少ない(平均熱膨張係数=7.9×10−6/K〜8.0×10−6/K(0〜600℃))ので、溶融炭酸塩型燃料電池の動作温度起因のセパレータの反りが発生し難い。
また、セパレータのガス流路以外の表面の中心線平均粗さ(Ra)(JISB0601)が、Ra>0.8μmの場合には、セパレータ表面が粗すぎるために、MEAとセパレータの接触部分が少なくなり、接触電気抵抗が大きくなってしまう。
また、Ra<0.3μmの場合には、セパレータ表面が平滑すぎるために、セパレータに僅かにでも反りが生じると、MEAとセパレータの接触部分が極端に少なくなり、接触電気抵抗が大きくなってしまうことが懸念される。
請求項6の発明は、所定パターンに従って一部金属面を露出させているレジスト膜が積層されている金属板をエッチングして、金属露出部分にガス流路および外形輪郭線を形成する請求項1に記載の溶融炭酸塩型燃料電池用セパレータの製造方法において、
前記ガス流路および前記外形輪郭線を、ハーフエッチング状態にて、前記金属板の表裏対称になるように形成することにより、反りが生じ難い溶融炭酸塩型燃料電池用セパレータを作製することができるものである。
請求項8の発明は、前記レジスト膜を、カゼインと重クロム酸アンモニウムからなる水溶性の感光性樹脂とすることにより、Fe−Co−Ni基合金のエッチング加工をすることができるものである。
Fe−Co−Ni基合金以外の金属板、例えば、Fe−C基合金のエッチング加工に用いるレジスト膜の材料としては、ポリビニルアルコールと重クロム酸アンモニウムからなる水溶性の感光性樹脂が用いられているが、この感光性樹脂とFe−Co−Ni基合金との密着性は悪い。
レジスト膜とFe−Co−Ni基合金の密着性を改良するためにポリビニルアルコールでなくカゼインを用いる。
重クロム酸アンモニウムは、架橋剤である。
また、レジスト膜を水溶性にすることにより、パターン現像の際に(特殊な薬品でなく)水を用いることができるものである。
本発明の、溶融炭酸塩型燃料電池用セパレータの作製方法を、図1を基に説明する。
まず、金属薄板1に付着している異物等を洗浄し、その後、金属薄板1とフォトレジスト膜10との密着性を上げるために、酸性溶液を用いて金属薄板1を整面する。(図1(a)参照)
金属薄板1の材料としては、Coが16.5〜17.5wt%、Niが28.5〜29.5wt%含有され、残部がFeおよび不可避の不純物からなり、表面の中心線平均粗さ(Ra)(JISB0601)が0.3μm〜0.8μmであるFe−Co−Ni基合金を用いることができる。
Coが16.5〜17.5wt%、Niが28.5〜29.5wt%含有され、残部がFeおよび不可避の不純物からなる金属板は、熱膨張が非常に小さい(平均熱膨張係数=7.9×10−6/K〜8.0×10−6/K(0〜600℃))ので、溶融炭酸塩型燃料電池の動作温度起因の反りが発生し難く、MEAとの接触電気抵抗が小さい薄型の溶融炭酸塩型燃料電池用セパレータを作製する材料としては最適である。
Fe−Co−Ni基合金の厚さは、0.090mm〜0.350mmが好ましい。
特開2002−151097号公報によると、通常、燃料電池用のセパレータは200〜300μm程度の板厚のSUS等の薄金属板で構成され、薄金属板には、多数の微小高さ(約0.5〜1.0mm)の突条又は突起が略全面に亙って形成されている、との記載がある。
本発明のセパレータは、通常のセパレータの半分以下の厚さである。
洗浄法としては、65〜75℃に加温したアルカリ脱脂液に金属薄板1を浸漬する方法を用いることができる。
酸性溶液としては、希硫酸、希硝酸または希塩酸などを用いることができる。
整面の方法としては、55〜65℃に加温した酸性溶液に、アルカリ脱脂液で洗浄した金属薄板1を浸漬し、その後、水洗し、その後、乾燥する方法を用いることができる。
次に、金属薄板1の表裏両面にフォトレジスト膜10を形成する。(図1(b)参照)
フォトレジスト膜10の材料としては、カゼインと重クロム酸アンモニウムからなる水溶性感光性樹脂を用いることができる。
水溶性感光性樹脂の粘度は、10〜900cpsが好ましく、20〜600cpsであれば更に好ましい。
粘度10cps未満の水溶性感光性樹脂を用いると、加工中に金属薄板1が振動した場合に、水溶性感光性樹脂の塗布ムラが発生し易い。
また、粘度900cpsを超える水溶性感光性樹脂は、固形分が多すぎ、フォトレジスト膜10の膜厚コントロールが困難となる。
フォトレジスト膜10の形成方法としては、金属薄板1の巾方向が鉛直方向になるように搬送しながら上方部からフォトレジスト材料を金属薄板1の表裏両面に掛け流し、その後、乾燥するフロー法、または、金属薄板1をフォトレジスト材料に浸漬し、その後、乾燥する浸漬法などを用いることができる。
フォトレジスト膜10の厚さは、6μm〜30μmを用いることができ、好ましくは、7〜8μmを用いることができる。
次に、セパレータのガス流路および外形輪郭線形成用の遮光部2を有するパターン形成用マスク3を2枚用いて、金属薄板1の厚さ方向から見た場合に、パターン形成用マスク各々のパターンが重なるように、金属薄板1の表裏面に形成されたフォトレジスト膜10に密着させる。(図1(c)参照)
次に、フォトレジスト膜10を露光硬化させて、水性溶媒に対して不溶化である水性溶媒不溶化フォトレジスト層10´を形成する。(図1(d)参照)
露光硬化方法としては、出力2.5〜3.5kWの超高圧水銀灯を用いて、パターン形成用マスク3を介して、フォトレジスト膜10に1500〜1700mJ/cmの紫外線を照射する方法を用いることができる。
次に、パターン形成用マスク3を外す。(図1(e)参照)
次に、露光されていない未硬化のフォトレジスト膜10を現像して除去する。(図1(f)参照)
現像する方法としては、未硬化のフォトレジスト膜10を水性溶媒等にて0.05〜0.35MPaの圧力でスプレー現像して除去する方法を用いることができる。
スプレーの圧力が0.05MPaより小さいと、未硬化のフォトレジスト膜10が完全に除去しきれないことが懸念される。
また、スプレーの圧力が0.35MPaより大きいと、金属薄板1が変形することが懸念される。
次に、水性溶媒不溶化フォトレジスト層10´(紫外線硬化したフォトレジスト層)の硬膜処理を行う。
硬膜処理方法としては、水性溶媒不溶化フォトレジスト層10´(紫外線硬化したフォトレジスト層)に対して、30〜40℃下で、濃度30〜40g/リットルの無水クロム酸溶液を0.05〜0.35MPaの圧力でスプレーし、その後、145〜155℃の雰囲気中において1.5〜2.5分間乾燥し、その後、180〜220℃の雰囲気中において1〜2分間ベーキングする方法を用いることができる。
硬膜処理が不十分であった場合、水性溶媒不溶化フォトレジスト層10´(紫外線硬化したフォトレジスト層)の耐エッチング性および金属薄板1への密着性が悪くなり、次工程のエッチング処理において、形状不良が生じることが懸念される。
水性溶媒不溶化フォトレジスト層10´(紫外線硬化したフォトレジスト層)の耐エッチング性が悪くなることで、エッチング中にエッチング液が水性溶媒不溶化フォトレジスト層10´(紫外線硬化したフォトレジスト層)中に浸透して金属薄板1に接触することにより、金属薄板1に不要なエッチングが入り、形状不良が発生する場合がある。
また、水性溶媒不溶化フォトレジスト層10´(紫外線硬化したフォトレジスト層)の金属薄板1への密着性が悪くなることで、エッチング中に水性溶媒不溶化フォトレジスト層10´(紫外線硬化したフォトレジスト層)が金属薄板1から剥がれ、剥がれた水性溶媒不溶化フォトレジスト層10´(紫外線硬化したフォトレジスト層)が金属薄板1の他の部位に付着し、その部分のエッチングを阻害することが懸念される。
次に、セパレータのガス流路および外形輪郭線をエッチングにより形成する。(図1(g)参照)
エッチングの方法としては、金属薄板1に、70〜80℃下において、比重1.510〜1.515の塩化第二鉄を0.25〜0.35MPaの圧力でスプレーし、その後、水洗する方法を用いることができる。
次に、水性溶媒不溶化フォトレジスト層10´(紫外線硬化したフォトレジスト層)を剥膜して、その後、セパレータの外形輪郭線を切欠として金属薄板1からセパレータの外形輪郭線以内の部分を抜き出して(溶融炭酸塩型燃料電池用)セパレータ1´を得る。(図1(h)参照)
剥膜の方法としては、液温70〜90℃、25〜35重量%のNaOH水溶液を0.05〜0.35MPaの圧力でスプレーし、その後、水洗し、その後、乾燥する方法を用いることができる。
図2は、本発明の溶融炭酸塩型燃料電池の説明図である。
400は集電体、1´は本発明の溶融炭酸塩型燃料電池用セパレータ、100はアノード、200は電解質、300はカソードである。
集電体400の材料としては、SUS板、Cu板などを用いることができる。
アノード100の作製方法としては、気孔率が60〜70%、平均細孔径が4〜5μmの、5〜15wt%Crを含有するNi粉末に、平均粒径0.5〜1.0μmのNi粉末を塗布し、800〜840℃で0.5〜1.5時間、水素気流中で焼結し多孔質体を形成し、その後、CO雰囲気中において、LiCO(60〜65mol%)、KCO(35〜40mol%)からなる混合炭酸塩を多孔質体に塗布(50〜60mg/cm)し、その後、550〜650℃に昇温する方法を用いることができる。
電解質200の作製方法としては、まず、エチルアルコール、ブチルアルコール、ポリビニルブチラール等の混合溶液に、一次粒径0.1〜0.3μmのアルミン酸リチウムを加えボールミルを用いて分散し、その後、ブチルアルコールと平均粒径30〜50μmのアルミナ繊維の混合物をボールミルで解砕した基板補強繊維を加え、その後、攪拌してスラリーを作製し、その後、スラリーをドクターブレード機で薄板状の多孔質シートに成形し、これを950〜1050℃で焼成して電解質基体を作製した後、LiCO(60〜65mol%)、KCO(35〜40mol%)からなる混合炭酸塩を電解質基体に含浸する方法を用いることができる。
カソード300としては、気孔率65〜75%、平均孔径10〜15μmのNiO多孔質体を用いることができる。
(溶融炭酸塩型燃料電池用セパレータの作製)
まず、Coが17.0wt%、Niが29.0wt%含有され、残部がFeおよび不可避の不純物からなり、表面の中心線平均粗さ(Ra)(JISB0601)が0.3μmであり、厚さが0.300±0.004mmである、11cm角形状のFe−Co−Ni基合金板を、70℃に加温したアルカリ脱脂液(ヘンケルジャパン社製、ペルシーLK)7%水溶液に2分間浸漬し、Fe−Co−Ni基合金板表面の防錆油およびその他異物を除去した。
次に、Fe−Co−Ni基合金板を60℃に加温した0.1Nの希硫酸に1分間浸漬し、その後、水洗し、その後、乾燥してFe−Co−Ni基合金板を整面した。
次に、水100重量部、カゼイン12.6重量部、重クロム酸アンモニウム0.5重量部からなる、粘度500cpsのフォトレジストを調整した。
次に、50℃下において、フォトレジストにFe−Co−Ni基合金板を浸漬し、その後、乾燥して、厚さ7.0±0.4μmのフォトレジスト膜を形成した。
次に、長さ10.006cm×巾60μmの長方形パターンを4本組み合わせてなる正方矩形状の外形輪郭線を形成するのに用いるパターンと、このパターンの内側に形成された、長さ9.994cm×巾60μmの長方形が500μmピッチで平行に並んでいるガス流路を形成するのに用いるパターンが遮光部となっているパターン形成用マスク(図3参照)を2枚用いて、Fe−Co−Ni基合金板の厚さ方向から見た場合に、パターン形成用マスク各々のパターンが重なるように、Fe−Co−Ni基合金板の表裏面に形成されたフォトレジスト膜にパターン形成用マスクを真空密着させ、その後、Fe−Co−Ni基合金板表裏面上のフォトレジスト膜から1mの距離に配置した出力3kWの超高圧水銀ランプを用いて、フォトレジスト膜に対して1600mJ/cmの紫外線を照射し、フォトレジスト膜を露光した。
次に、液温35℃の純水を0.1MPaの圧力で90秒間スプレーして、現像を行った。
次に、液温25℃、濃度32g/リットルの無水クロム酸溶液を0.05〜0.35MPaの圧力でスプレーし、その後、150℃下で2分間乾燥し、その後、200℃下で1.5分間バーニングし、水性溶媒不溶化フォトレジスト層(紫外線硬化したフォトレジスト層)を硬膜処理した。
次に、水性溶媒不溶化フォトレジスト層(紫外線硬化したフォトレジスト層)から300mm離れた位置に配置したノズルより、液温75℃、比重1.512の塩化第二鉄を0.3MPaの圧力で噴射し、その後、水洗することにより、Fe−Co−Ni基合金板のエッチングを行った。
最後に、水性溶媒不溶化フォトレジスト層(紫外線硬化したフォトレジスト層)に対して、液温80℃、30重量%のNaOH水溶液を0.2MPaの圧力で3分間スプレーすることにより、水性溶媒不溶化フォトレジスト層(紫外線硬化したフォトレジスト層)を剥膜し、その後、水洗し、その後、乾燥し、その後、セパレータの外形輪郭線を切欠としてFe−Co−Ni基合金板からハーフエッチング板を抜き出すことにより、溶融炭酸塩型燃料電池用セパレータを得た。
(溶融炭酸塩型燃料電池用セパレータの反り量の測定)
溶融炭酸塩型燃料電池用セパレータを溶融炭酸塩型燃料電池の動作温度である600℃に昇温した後、平板に載置し、平板から最も離れたセパレータ箇所と平板との垂直距離をレーザ変位計で測定し、その測定値から溶融炭酸塩型燃料電池用セパレータの厚さを差し引いた値を反り量とした。
溶融炭酸塩型燃料電池用セパレータの反り量は0.1μmであった。
(溶融炭酸塩型燃料電池用アノードの作製)
気孔率が65%、平均細孔径が4.5μmの、10wt%Crを含有するNi粉末に、平均粒径0.8μmのNi粉末を吸引塗布し、820℃で1時間、水素気流中で焼結して多孔質体を形成し、その後、CO雰囲気中において、LiCO(63mol%)、KCO(37mol%)からなる混合炭酸塩を多孔質体に塗布(55mg/cm)し、その後、600℃に昇温して、溶融炭酸塩型燃料電池用アノードを得た。
(溶融炭酸塩型燃料電池用セパレータと溶融炭酸塩型燃料電池用アノードとの接触電気抵抗値の測定)
2枚の厚さ18μmのCu箔(ジャパンエナジー社製、BHY−22B−T)を用いて溶融炭酸塩型燃料電池用セパレータを挟み込んだ積層体と、
2枚の厚さ18μmのCu箔(ジャパンエナジー社製、BHY−22B−T)を用いて溶融炭酸塩型燃料電池用アノードを挟み込んだ積層体と、
厚さ18μmのCu箔(ジャパンエナジー社製、BHY−22B−T)、溶融炭酸塩型燃料電池用セパレータ、融炭酸塩型燃料電池用アノード、厚さ18μmのCu箔(ジャパンエナジー社製、BHY−22B−T)の順に積層した積層体
の各々を圧力2kg/cmで圧着し、各々の銅箔よりリード線を引き出して3種類のサンプルを作製し、各々のサンプルの電圧を4端子法によって測定した。
得られた電圧測定値より、溶融炭酸塩型燃料電池用セパレータと融炭酸塩型燃料電池用アノード間の電圧降下を求め、下式より、接触電気抵抗値を求めた。
接触電気抵抗値[mΩ・cm]=(電圧降下[mV]×接触面積[cm])/電流[A]
接触電気抵抗値は、10[mΩ・cm]であった。
(溶融炭酸塩型燃料電池用セパレータと溶融炭酸塩型燃料電池用カソード(気孔率70%、平均孔径12μmのNiO多孔質体)との接触電気抵抗値の測定)
上記アノードと溶融炭酸塩型燃料電池用セパレータとの接触電気抵抗値の測定法と同じ方法を用いて、カソードと溶融炭酸塩型燃料電池用セパレータとの接触電気抵抗値を測定した。
接触電気抵抗値は、19[mΩ・cm]であった。
(溶融炭酸塩型燃料電池用電解質の作製)
まず、エチルアルコール750ml、ブチルアルコール250ml、ポリビニルブチラール100mlの混合溶液に、一次粒径0.2μmのアルミン酸リチウム950gを加えボールミルを用いて10時間分散した。
次に、ブチルアルコール300mlと平均粒径40μmのアルミナ繊維250gの混合物をボールミルで5時間解砕した基板補強繊維を加え、その後、10時間攪拌してスラリーを作製し、その後、スラリーをドクターブレード機で薄板状の多孔質シートに成形し、これを1000℃で焼成して電解質基体を作製した後、LiCO(63mol%)、KCO(37mol%)からなる混合炭酸塩を電解質基体に含浸して溶融炭酸塩型燃料電池用電解質を作製した。
(溶融炭酸塩型燃料電池の作製)
溶融炭酸塩型燃料電池用アノード、溶融炭酸塩型燃料電池用電解質、溶融炭酸塩型燃料電池用カソードの順に積層してMEAを形成し、その後、溶融炭酸塩型燃料電池用セパレータを介して、MEAを2体積層し、その後、両端に溶融炭酸塩型燃料電池用セパレータを配置し、その後、最外層両側にSUS304からなる集電体を配置し、その後、MEAの厚さ方向に対して、面圧1.5kg/cmにて、ボルトとナットで締結して燃料電池を得た。
(溶融炭酸塩型燃料電池の出力の測定)
東陽テクニカ社製燃料電池評価システムを用い、600℃下において、アノード側には純水素ガスを0.1L/minで流し、カソード側には空気を0.2L/minで流した状態で、電圧に対するセル当たりの出力(図4参照)、および、電圧0.4Vにおける出力の経時的な変化(図5参照)を確認した。
最大出力は、1.02W/セルであり、1000時間の運転中において安定した出力特性を示していた。
表面の中心線平均粗さ(Ra)(JISB0601)が0.6μmのFe−Co−Ni基合金を用いた以外は、実施例1と同様に溶融炭酸塩型燃料電池用セパレータ、アノードを作製し、溶融炭酸塩型燃料電池用セパレータの反り量、溶融炭酸塩型燃料電池用セパレータとアノードとの接触電気抵抗値、および、溶融炭酸塩型燃料電池用セパレータとカソードとの接触電気抵抗値を測定した。
溶融炭酸塩型燃料電池用セパレータの反り量は、0.1μmであった。
溶融炭酸塩型燃料電池用セパレータとアノードとの接触電気抵抗値は、8[mΩ・cm]であった。
溶融炭酸塩型燃料電池用セパレータとカソードとの接触電気抵抗値は、8[mΩ・cm]であった。
次に、実施例1と同様に溶融炭酸塩型燃料電池を作製し、電圧に対するセル当たりの出力(図4参照)、および、電圧0.4Vにおける出力の経時的な変化(図5参照)を確認した。
最大出力は、1.05W/セルであり、1000時間の運転中において安定した出力特性を示していた。
表面の中心線平均粗さ(Ra)(JISB0601)が0.8μmのFe−Co−Ni基合金を用いた以外は、実施例1と同様に溶融炭酸塩型燃料電池用セパレータ、アノードを作製し、溶融炭酸塩型燃料電池用セパレータの反り量、溶融炭酸塩型燃料電池用セパレータとアノードとの接触電気抵抗値、および、溶融炭酸塩型燃料電池用セパレータとカソードとの接触電気抵抗値を測定した。
溶融炭酸塩型燃料電池用セパレータの反り量は、0.1μmであった。
溶融炭酸塩型燃料電池用セパレータとアノードとの接触電気抵抗値は、8[mΩ・cm]であった。
溶融炭酸塩型燃料電池用セパレータとカソードとの接触電気抵抗値は、8[mΩ・cm]であった。
次に、実施例1と同様に溶融炭酸塩型燃料電池を作製し、電圧に対するセル当たりの出力(図4参照)、および、電圧0.4Vにおける出力の経時的な変化(図5参照)を確認した。
最大出力は、0.99W/セルであり、1000時間の運転中において安定した出力特性を示していた。
<比較例1>
表面の中心線平均粗さ(Ra)(JISB0601)が0.1μmのFe−Co−Ni基合金を用いた以外は、実施例1と同様に溶融炭酸塩型燃料電池用セパレータ、アノードを作製し、溶融炭酸塩型燃料電池用セパレータの反り量、溶融炭酸塩型燃料電池用セパレータとアノードとの接触電気抵抗値、および、溶融炭酸塩型燃料電池用セパレータとカソードとの接触電気抵抗値を測定した。
溶融炭酸塩型燃料電池用セパレータの反り量は、0.1μmであった。
溶融炭酸塩型燃料電池用セパレータとアノードとの接触電気抵抗値は、50[mΩ・cm]であった。
溶融炭酸塩型燃料電池用セパレータとカソードとの接触電気抵抗値は、79[mΩ・cm]であった。
次に、実施例1と同様に溶融炭酸塩型燃料電池を作製し、電圧に対するセル当たりの出力(図4参照)、および、電圧0.4Vにおける出力の経時的な変化(図5参照)を確認した。
最大出力は、0.79W/セルであり、1000時間の運転中において不安定な出力特性を示していた。
<比較例2>
表面の中心線平均粗さ(Ra)(JISB0601)が1.1μmのFe−Co−Ni基合金を用いた以外は、実施例1と同様に溶融炭酸塩型燃料電池用セパレータ、アノードを作製し、溶融炭酸塩型燃料電池用セパレータの反り量、溶融炭酸塩型燃料電池用セパレータとアノードとの接触電気抵抗値、および、溶融炭酸塩型燃料電池用セパレータとカソードとの接触電気抵抗値を測定した。
溶融炭酸塩型燃料電池用セパレータの反り量は、0.1μmであった。
溶融炭酸塩型燃料電池用セパレータとアノードとの接触電気抵抗値は、51[mΩ・cm]であった。
溶融炭酸塩型燃料電池用セパレータとカソードとの接触電気抵抗値は、80[mΩ・cm]であった。
次に、実施例1と同様に溶融炭酸塩型燃料電池を作製し、電圧に対するセル当たりの出力(図4参照)、および、電圧0.4Vにおける出力の経時的な変化(図5参照)を確認した。
最大出力は、0.75W/セルであり、1000時間の運転中において不安定な出力特性を示していた。
本発明の、溶融炭酸塩型燃料電池用セパレータおよびその製造方法、並びに、それを用いた溶融炭酸塩型燃料電池は、家庭用発電システムに利用できる。
本発明の溶融炭酸塩型燃料電池用セパレータの作製方法を説明するための断面図である。 本発明の溶融炭酸塩型燃料電池を説明するための断面図である。 本発明の溶融炭酸塩型燃料電池用セパレータの作製に用いるパターン形成用マスクのパターンを説明するための図である。 本発明の溶融炭酸塩型燃料電池の、電圧に対するセル当たりの出力を説明するための図である。 本発明の溶融炭酸塩型燃料電池の、電圧0.4Vにおける出力の経時的な変化を説明するための図である。
符号の説明
1・・・・・金属薄板
1´・・・・(溶融炭酸塩型燃料電池用)セパレータ
2・・・・・セパレータのガス流路および外形輪郭線形成用の遮光部
3・・・・・パターン形成用マスク
4・・・・・ガス流路
10・・・・(未硬化の)フォトレジスト膜
10´・・・水性溶媒不溶化フォトレジスト層(紫外線硬化したフォトレジスト層)
100・・・アノード
200・・・電解質
400・・・集電体
300・・・カソード

Claims (8)

  1. Coが16.5〜17.5wt%、Niが28.5〜29.5wt%含有され、残部がFeおよび不可避の不純物からなる、ガス流路を備えた溶融炭酸塩型燃料電池用セパレータであって、
    前記ガス流路以外の表面の中心線平均粗さ(Ra)(JISB0601)が0.3μm〜0.8μmであることを特徴する溶融炭酸塩型燃料電池用セパレータ。
  2. 電解質の一方の面上にアノードが配置され、前記電解質の前記アノードと反対側の面上にカソードが配置された電解質電極接合体(MEA)を、請求項1に記載の溶融炭酸塩型燃料電池用セパレータを介して複数個積層してなることを特徴とする溶融炭酸塩型燃料電池。
  3. 前記電解質が、LiAlO2、LiCOおよびKCOを有することを特徴とする請求項2に記載の溶融炭酸塩型燃料電池。
  4. 前記アノードが、Ni、Cr、LiCO、および、KCOからなることを特徴とする請求項2または請求項3に記載の溶融炭酸塩型燃料電池。
  5. 前記カソードが、NiOからなる多孔質体であることを特徴とする請求項2または請求項4のいずれか1項に記載の溶融炭酸塩型燃料電池。
  6. 所定パターンに従って一部金属面を露出させているレジスト膜が積層されている金属板をエッチングして、金属露出部分にガス流路および外形輪郭線を形成する請求項1に記載の溶融炭酸塩型燃料電池用セパレータの製造方法において、
    前記ガス流路および前記外形輪郭線が、ハーフエッチング状態にて、前記金属板の表裏対称になるように形成されることを特徴とする溶融炭酸塩型燃料電池用セパレータの製造方法。
  7. 前記金属板が、Coが16.5〜17.5wt%、Niが28.5〜29.5wt%含有され、残部がFeおよび不可避の不純物からなるFe−Co−Ni基合金からなることを特徴とする請求項6に記載の溶融炭酸塩型燃料電池用セパレータの製造方法。
  8. 前記レジスト膜が、カゼインと重クロム酸アンモニウムからなる水溶性の感光性樹脂であることを特徴とする請求項6または請求項7に記載の溶融炭酸塩型燃料電池用セパレータの製造方法。
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Cited By (3)

* Cited by examiner, † Cited by third party
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JP2010059493A (ja) * 2008-09-04 2010-03-18 Sumitomo Metal Mining Co Ltd ニッケル微粉及びその製造方法
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CN105858591A (zh) * 2016-03-29 2016-08-17 中国科学院高能物理研究所 一种金属微结构及其制作方法

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