JP2007263634A - 生理活性物質固定化用固相担体及びその使用方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】プラスチックからなる固相担体の固相表面にホスホリルコリン基及び生理活性物質を固定化する為の分子を有する高分子物質を有し、該分子がビオチン又はビオチン誘導体と反応しうる分子であることを特徴とする生理活性物質固定化用固相担体であり、好ましくは生理活性物質を固定化する為の分子がアビジン又はストレプトアビジン又はニュートラアビジンである生理活性物質固定化用固相担体。
Description
糖鎖は、非常に多様性に富んでおり、天然に存在する生物が有する様々な機能に関与する物質である。糖鎖は生体内でタンパク質や脂質などに結合した複合糖質として存在することが多く,生体内の重要な構成成分の一つである。生体内の糖鎖は細胞間情報伝達,タンパク質の機能や相互作用の調整などに深く関わっていることが明らかになりつつある。
(1)プラスチックからなる固相担体の固相表面にホスホリルコリン基及び生理活性物質を固定化する為の分子を有する高分子物質を有し、該分子がビオチン又はビオチン誘導体と反応しうる分子であることを特徴とする生理活性物質固定化用固相担体。
(2)固相担体の形態が、平板状基板、マイクロウェルプレート、微細流路を有する基板、又はマイクロビーズである(1)記載の生理活性物質固定化用固相担体。
(3)前記ホスホリルコリン基が2−メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリン基である(1)又は(2)記載の生理活性物質固定化用固相担体。
(4)生理活性物質を固定化する為の分子がアビジン又はストレプトアビジン又はニュートラアビジンである(1)〜(3)いずれか記載の生理活性物質固定化用固相担体。
(5)前記高分子物質がホスホリルコリン基を有する単量体及び生理活性物質を固定化する為の官能基を有する単量体を共重合して得られる高分子物質である(1)〜(4)いずれか記載の生理活性物質固定化用固相担体。
(6)前記高分子物質が更にブチルメタクリレート基を含む単量体との共重合体である(5)記載の生理活性物質固定化用固相担体。
(7)前記プラスチックがポリカーボネート、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、飽和環状ポリオレフィン、ポリペンテン、ポリアミド、又はそれらの共重合体よりなる群より選択された少なくとも1種である(1)〜(6)いずれか記載の生理活性物質固定化用固相担体。
(8)(1)〜(7)いずれか記載の生理活性物質固定化用固相担体に生理活性物質を固定化した固相担体。
(9)前記生理活性物質が、糖鎖、複合糖質、核酸、アプタマー、タンパク質、抗体、ペプチド、及び脂質から選択された少なくとも1種である(8)記載の固相担体。
(10)前記生理活性物質がビオチン又はビオチン誘導体が導入されたものである(8)又は(9)記載の固相担体。
(11)(1)〜(8)いずれか記載の生理活性物質固定化用固相担体の使用方法であって、
(a)固相表面に生理活性物質を固定化する工程、
(b)該生理活性物質と特異的に反応する別の物質を作用させる工程、及び
(c)該生理活性物質と特異的に反応した別の物質又は特異的に反応した該生理活性物質を蛍光、発光又は発色を用いて検出する工程、を含む生理活性物質固定化用固相担体の使用方法。
(12)前記生理活性物質と特異的に反応する別の物質が、核酸、アプタマー、タンパク質、抗体、ペプチド、糖鎖、複合糖質、及び脂質から選択された少なくとも1種である(11)記載の生理活性物質固定化用固相担体の使用方法。
(13)前記生理活性物質と特異的に反応する別の物質が、蛍光、発光、発色で検出可能な分子である(11)又は(12)記載の生理活性物質固定化用固相担体の使用方法。
(14)前記生理活性物質と特異的に反応する別の物質が、蛍光、発光、発色で検出可能な分子と反応しうる物質である(11)〜(13)いずれか記載の生理活性物質固定化用固相担体の使用方法。
本発明に使用する高分子物質は、ホスホリルコリン基を有する単量体及び該分子を有する単量体を共重合して得られる高分子物質であることが好ましい。更にホスホリルコリン基及び該分子以外に他の官能基や分子を含んでもよく、ブチルメタクリレート基を含む単量体との共重合体が好ましい。
生理活性物質を固定化する為の分子と高分子物質との結合はどのような形式でもよいが、共有結合や、高分子物質に導入したビオチンとの相互作用を用いる事が望ましい。
本発明の固相担体は、固相材質がプラスチックであることを特徴とする。
プラスチックとしては、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂を用いることができるが、熱可塑性樹脂の方が製造効率の観点から好ましい。熱可塑性樹脂としては、蛍光発生量の少ないものが好ましく、例えばポリエチレンやポリプロピレン等の直鎖状ポリオレフィン、ポリカーボネート、ポリスチレン、ポリアミド、環状ポリオレフィン、含フッ素樹脂等が挙げられる。耐熱性、耐薬品性、低蛍光性、成形性に特に優れる環状ポリオレフィンを用いることがより好ましい。ここで環状ポリオレフィンとは、環状オレフィン構造を有する重合体単独または環状オレフィンとα―オレフィンとの共重合体を水素添加した飽和重合体をさす。
これら樹脂は単独で用いてもよく、2種類またはそれ以上の共重合体あるいは混合物であってもよい。また、樹脂成分以外に繊維状、球状その他の形状を有する無機物あるいは有機物充填材、または各種添加剤成分を含んでもよい。
固相担体の形状としては、平板状基板、マイクロウェルプレート、マイクロビーズ、微細流路形状を有した基板等が挙げられる。
マイクロビーズ表面に生理活性物質を固定化させた担体の場合、基板やプレートに固定化させた場合に比べ生理活性物質を固定化できる表面積が大幅に増加するため、結果的に多くの検出目的となる、生理活性物質と特異的に反応する物質を捕獲でき、S/N比の増加が可能となる。
また微細流路内に生理活性物質を固定化した場合、生理活性物質が検出目的となる物質を捕獲できる頻度が相対的に増加するため、反応時間の短縮ができる。
さらには、生理活性物質を固定化したマイクロビーズを微細流路内に封入した場合、前記の利点の両方が達成できる。
本発明において生理活性物質を固相上に固定化する際には、生理活性物質を溶解又は分散させた液体を付着する方法が好ましい。生理活性物質を溶解又は分散した液体のpHは6.0〜8.0であることが好ましく、pH6.5〜7.5がより好ましい。この範囲外だと、生理活性物質や生理活性物質を固定化する分子が変性・分解する恐れがある。
生理活性物質付着後は、固相表面のホスホリルコリン基の特性により、界面活性剤を含む水や緩衝液で洗浄することで、生理活性物質と反応しうる別の物質の固相表面への非特異吸着を抑制することが可能となる。しかし、生理活性物質と反応しうる別の物質に固相表面の分子と反応しうるビオチン又はビオチン誘導体が含まれる場合、生理活性物質を固定化した以外の固相表面に残存する分子の不活性化処理を、ビオチン又はビオチン誘導体を有する他の化合物で行うことが好ましい。
固定化する生理活性物質にビオチン又はビオチン誘導体を導入する事で、基材表面に固定化された分子によって、効果的に目的の生理活性物質を固定化する事が可能となる。より反応性を高める為に、ビオチン又はビオチン誘導体の導入位置は生理活性物質の末端や外側であることが望ましい。生理活性物質の合成法が進歩してきた事で、任意の位置にビオチン又はビオチン誘導体を導入できるようになってきており、生理活性を発現する為に重要な部位に影響を及ぼさないような位置で生理活性物質を担体表面に固定化することが可能である。
(実施例)
ポリスチレン樹脂製の96ウェルマイクロプレート(住友ベークライト製 ELISA用プレートS MS-8496F)の各ウェルを2−メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリン−ブチルメタクリレート−p−ニトロフェニルカルボニルオキシエチルメタクリレート共重合体の0.3重量%エタノール溶液100mlに浸漬することにより、基材表面にホスホリルコリン基を有するポリマーを導入した。
次に、リン酸緩衝液を用いて1mg/mlに希釈し、pHが9.5に調整されたビオチンヒトラジド溶液100mlを添加したウェルと、pH9.5のリン酸緩衝液100mlのみを添加したウェルを準備し、37℃で一晩静置してビオチンをポリマーに固定化させた後に、純水で洗浄を行った。その後、ビオチンを固定化したウェルと、リン酸緩衝液のみを加えたウェルとに、リン酸緩衝液を用いて5.0mg/mlに希釈したストレプトアビジン(ケミコン社製、SA101)100mlを添加して30分静置してストレプトアビジンを固定化した。0.05%Tween20含有リン酸緩衝液で3回洗浄した後に、市販のビオチン標識ペルオキシダーゼ(ZYMED Laboratories社製、43−2040)をリン酸緩衝液を用いて0.5mg/mlに希釈し、100mlをウェルに添加して30分静置して固定化し酵素標識した。0.05%Tween20含有リン酸緩衝液で3回洗浄した後に、処理した各ウェルにおいて、ペルオキシダーゼ用発色キットT(住友ベークライト社製 ML−1120T)を用いて、過酸化水素を基質とする発色反応を行い、発色基質として用いたTMBZ(3,3‘,5,5’テトラメチルベンチジン)の吸光度を測定した。ビオチンヒドラジド溶液を加えたウェルの吸光度をシグナル値、リン酸緩衝液のみを入れたウェルの吸光度をバックグラウンド値(非特異吸着無し)として、その際のシグナル値、バックグラウンド値を表1に示す。
表面にカルボキシル基が直接結合した、ポリスチレン樹脂製の96ウェルマイクロプレート(住友ベークライト製 ELISA用プレートカルボ MS-8796F)を用いた。pH5.8のリン酸緩衝液を用いて調製した20mg/mlのWSC溶液100mlを各ウェルに添加し、37℃で2時間反応させた。純水でウェルを洗浄し、リン酸緩衝液を用いて1mg/mlに希釈し、pHが5.8に調整されたビオチンヒトラジド溶液100mlをウェルに添加して、37℃で一晩静置してビオチンを担体表面に固定化させた後に、純水で洗浄を行った。その後、ビオチンを固定化したウェルと、何も処理していないウェルとに、2.5%ウシ血清アルブミン溶液を100ml加え、1時間静置した。純水で洗浄した後に、ビオチンを固定化したウェルと、ウシ血清アルブミンのみを入れたウェルと、何も処理していないウェルとに、5.0mg/mlに希釈したストレプトアビジン(ケミコン社製、SA101)100mlをウェルに添加して1時間静置してストレプトアビジンを固定化した。0.05%Tween20含有リン酸緩衝液で3回洗浄した後に、市販のビオチン標識ペルオキシダーゼ(ZYMED Laboratories社製、43−2040)を0.5mg/mlに希釈し、100mlをウェルに添加して30分静置して固定化し酵素標識した。0.05%Tween20含有リン酸緩衝液で3回洗浄した後に、ペルオキシダーゼ用発色キット(住友ベークライト社製 ML−1120T)を用いて、過酸化水素を基質とする発色反応を行い、発色基質として用いたTMBZ(3,3‘,5,5’テトラメチルベンチジン)の吸光度を測定した。ビオチンヒドラジド溶液を加えたウェルの吸光度をシグナル値、ウシ血清アルブミンを加えたウェルの吸光度をバックグラウンド値(非特異吸着無し)、何も処理していないウェルの吸光度をバックグラウンド値(非特異吸着有り)として、その際のシグナル値、バックグラウンド値を表1に示す。
実施例は、シグナル値がブランク値に比べて高く、ブロッキング操作を行っていないにもかかわらず、タンパク質の非特異吸着を抑制する表面効果によって、ブランク値は有意に低かった。
比較例はBSAによるブロッキング操作を行わなかった場合はブランク値の上昇が見られ、タンパク質の非特異吸着が起こっていた。
Claims (14)
- プラスチックからなる固相担体の固相表面にホスホリルコリン基及び生理活性物質を固定化する為の分子を有する高分子物質を有し、該分子がビオチン又はビオチン誘導体と反応しうる分子であることを特徴とする生理活性物質固定化用固相担体。
- 固相担体の形態が、平板状基板、マイクロウェルプレート、微細流路を有する基板、又はマイクロビーズである請求項1記載の生理活性物質固定化用固相担体。
- 前記ホスホリルコリン基が2−メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリン基である請求項1又は2記載の生理活性物質固定化用固相担体。
- 生理活性物質を固定化する為の分子がアビジン又はストレプトアビジン又はニュートラアビジンである請求項1〜3いずれか記載の生理活性物質固定化用固相担体。
- 前記高分子物質がホスホリルコリン基を有する単量体及び生理活性物質を固定化する為の官能基を有する単量体を共重合して得られる高分子物質である請求項1〜4いずれか記載の生理活性物質固定化用固相担体。
- 前記高分子物質が更にブチルメタクリレート基を含む単量体との共重合体である請求項5記載の生理活性物質固定化用固相担体。
- 前記プラスチックがポリカーボネート、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、飽和環状ポリオレフィン、ポリペンテン、ポリアミド、及びそれらの共重合体よりなる群より選択された少なくとも1種である請求項1〜6いずれか記載の生理活性物質固定化用固相担体。
- 請求項1〜7いずれか記載の生理活性物質固定化用固相担体に生理活性物質を固定化した固相担体。
- 前記生理活性物質が、糖鎖、複合糖質、核酸、アプタマー、タンパク質、抗体、ペプチド、及び脂質から選択された少なくとも1種である請求項8記載の固相担体。
- 前記生理活性物質がビオチン又はビオチン誘導体が導入されたものである請求項8又は9記載の固相担体。
- 請求項1〜7いずれか記載の生理活性物質固定化用固相担体の使用方法であって、
(a)固相表面に生理活性物質を固定化する工程、
(b)該生理活性物質と特異的に反応する別の物質を作用させる工程、及び
(c)該生理活性物質と特異的に反応した別の物質又は特異的に反応した該生理活性物質を蛍光、発光又は発色を用いて検出する工程、を含む生理活性物質固定化用固相担体の使用方法。 - 前記生理活性物質と特異的に反応する別の物質が、核酸、アプタマー、タンパク質、抗体、ペプチド、糖鎖、複合糖質、及び脂質から選択された少なくとも1種である請求項11記載の生理活性物質固定化用固相担体の使用方法。
- 前記生理活性物質と特異的に反応する別の物質が、蛍光、発光、発色で検出可能な分子である請求項11又は12記載の生理活性物質固定化用固相担体の使用方法。
- 前記生理活性物質と特異的に反応する別の物質が、蛍光、発光、発色で検出可能な分子と反応しうる物質である請求項11〜13いずれか記載の生理活性物質固定化用固相担体の使用方法。
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